説明

自動車用羊毛製品及びその製造方法

【課題】自動車用羊毛製品及びその製造方法において、羊毛を主体(60重量%〜80重量%)として、羊毛の大きな空隙率による断熱性・防音性と、不燃性・吸湿性・VOC吸着性とを十分に生かすこと。
【解決手段】原料となる羊毛2とバインダー繊維3としてのポリ乳酸繊維とを計量・混合し(S10)、混合物を開繊機内で開繊して(S11)、開繊された繊維がカード機へ供給されてカードウェブに形成され(S12)、成形機において積層されてフリースとして連続的に成形され(S13)、更に加熱機に供給されてポリ乳酸繊維の融点以上に加熱され、ポリ乳酸繊維は溶融して羊毛繊維同士を接着するバインダーとして機能し(S14)、カレンダーロールによって更に高温での加熱及び加圧が行われ(S15)、一旦冷却された後(S16)、再び加熱され(S17)、プレス成形されて(S18)、所定形状の自動車用羊毛製品1が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱性及び防音性に優れていて長期間の使用に耐える強度を有し、自動車用断熱材及び自動車用防音材として応用することができる自動車用羊毛製品及びその製造方法に関するものである。なお、本明細書・特許請求の範囲・図面及び要約書において、「自動車用羊毛製品」とは、羊毛を主体としてなる内張り部品(ドアトリム等のトリム・ピラーガーニッシュ等のガーニッシュ)・インナーパネル・リアパッケージ・天井基材・座席シート材・チャイルドシートその他の自動車内装材・衝撃吸収材・吸音材等をいうものとする。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用断熱材、住宅用断熱材等の断熱材としては、グラスウールやロックウール、アルミナ質繊維、ジルコニア質繊維、シリカ・アルミナ質繊維等の工業無機繊維を主成分とした断熱材が多く用いられてきたが、これらの工業無機繊維を内蔵した断熱材は切断や切欠き作業の際に粉塵が発生し、取扱いを誤ると作業者の皮膚に針状の無機繊維が刺さって皮膚炎を起こしたり、呼吸によって気管や肺に取り込まれて呼吸器系に障害を与えたりする恐れがあるため、作業時には防塵マスク・防塵服の着用が必須であり、細心の注意を払う必要があった。
【0003】
そこで、近年、これらの工業無機繊維を内蔵した断熱材に代わる断熱材として、天然物である羊毛を主体とした断熱材が開発されつつある。羊毛は天然材料であり、タンパク質からなるため、廃棄する際にも腐食して生分解することから環境負荷物質とならず、VOC(揮発性有機化合物)等の有害物質を発生する恐れもない。それどころか、逆に羊毛の表面を覆っているキューティクル(スケール)の中にVOCを吸着して無毒化する性質を持っているため、住宅用断熱材や自動車用断熱材の素材として極めて好ましい。
【0004】
更に、自重の約30%の水分を取り込んだり発散したりする特性を有しており、吸湿性・調湿性に優れている。そして、羊毛自体は難燃性であり、直火を当てると燃えるものの直火を当てるのを止めると直ちに消火し、基本的に不燃性であることからも、住宅建材や自動車部材の用途に極めて適していると言える。
【0005】
そこで、羊毛を主体とした断熱材として、特許文献1に、羊毛を主材としてこれにポリエステル繊維を混合してマット状に形成した羊毛層と、合成樹脂発泡体からなる樹脂層とを、一体に積層して形成した断熱材の発明が開示されている。これによって、羊毛層は天然物である羊毛を主材としているため、無臭で刺激性がなく粉塵やアレルギーの発生、VOCの発生を防止でき、非常に扱い易い断熱材となるとともに、廃材は有機系の肥料として使うことができリサイクルが容易で、しかも、これにポリエステル繊維を混合することによって、保形性・弾力性・平面性・強度を向上させることができるとしている。
【特許文献1】特開平11−152808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の断熱材は、羊毛層が羊毛を主材としてこれにポリエステル繊維を混合してマット状に形成したものであることから、ポリエステル繊維を少なからず含有しており、更にこれに合成樹脂発泡体からなる樹脂層を一体に積層して形成した断熱材であるため、不燃性に劣る。また、ポリエステル繊維及び合成樹脂発泡体は、吸湿性・VOC吸着性及び生分解性を有しないため、これらの点においても羊毛を主体とした断熱材に比較して劣るという問題点があった。
【0007】
そこで、本発明は、かかる問題点を解決すべくなされたものであって、羊毛を主体(60重量%〜80重量%)とした自動車用羊毛製品とすることによって、羊毛の大きな空隙率による断熱性・防音性と、羊毛の不燃性・吸湿性・VOC吸着性とを十分に生かすことができ、生分解性及びリサイクル性にも優れた自動車用羊毛製品及びその製造方法の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明に係る自動車用羊毛製品は、羊から刈り取った原毛を洗浄・乾燥してなる羊毛及び/またはリサイクルウール(再生羊毛)を洗浄・乾燥してなる羊毛をバインダーで接合して成形してなる自動車用羊毛製品であって、前記羊毛は、NZS8716法で測定した前記羊毛のかさ高性を示すバルク(Bulk)値が15cm3 /gを超えて40cm3 /g以下の範囲内、好ましくは25cm3 /g〜40cm3 /gの範囲内、より好ましくは30cm3 /g〜35cm3 /gの範囲内で、かつ、平均繊維長が10mm〜300mmの範囲内、好ましくは20mm〜100mmの範囲内であり、前記バインダーとして機能するバインダー繊維の割合は、前記羊毛と前記バインダー繊維の合計量を100重量%として20重量%〜40重量%の範囲内であり、前記羊毛を前記バインダー繊維と混合して一旦成形して羊毛マットとした後に、該羊毛マットを前記バインダー繊維の軟化温度以上に加熱し、その後プレスして所定の形状に成形してなるものである。
【0009】
ここで、バインダー繊維としては、ポリ乳酸繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、等を主成分とした公知の熱溶融性繊維を用いることができる。また、「羊から刈り取った原毛を洗浄・乾燥してなる羊毛」は、一般に「バージン・ウール(新毛)」と呼ばれるものであり、リサイクルウール(再生羊毛)のように織成されたり染色されたりして損傷を受けてはいないため、羊毛を構成するキューティクル(スケール)も損傷せず残っており、キューティクルによる調湿効果及び空気中のVOC(揮発性有機化合物)の吸収・無毒化効果にも優れているため、羊から刈り取った原毛を洗浄・乾燥してなる羊毛(バージン・ウール)のみをバインダー繊維で成形してなる自動車用羊毛製品であることが、より好ましい。
【0010】
更に、「NZS8716法で測定した羊毛のかさ高性を示すバルク(Bulk)値」とは、ウール・リサーチ・オーガナイゼーション・オブ・ニュージーランド(WRONZ)のNZS8716法に基づいて、試料として羊毛10gを採取してカーディングを施し、測定機器としてWRONZのAuto-Bulkometerを使用して、10gf/cm2 の圧力を30秒間かけた後に回復させ、この圧縮・回復を5回繰り返した後、最後に30gf/cm2 の圧力をかけて回復させた羊毛の体積を測定して、羊毛のかさ高性をcm3 /gの単位で表した値である。また、「平均繊維長」は、IWTO(国際羊毛繊維機構)のIWTO5−60に基づいて測定した値である。
【0011】
請求項2の発明に係る自動車用羊毛製品は、請求項1の構成において、前記羊毛を前記バインダー繊維と混合して一旦成形して羊毛マットとした後に、前記羊毛マットの製品の表面となる側に第2のバインダー繊維を付着させて、前記バインダー繊維の軟化温度及び前記第2のバインダー繊維の軟化温度以上に加熱し、その後プレスして所定の形状に成形してなるものである。
【0012】
ここで、「第2のバインダー繊維」としては、ポリ乳酸繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、等を主成分とした公知の熱溶融性繊維を用いることができる。なお、第2のバインダー繊維の太さは、羊毛の太さよりも細いことが好ましい。ここで、「羊毛の太さ」は、JIS−L−1081に基づいて、自動繊度測定機によって測定した平均繊度の値によって示される。ここでいう自動繊度測定機としては、例えばバイヤー社製FDA−200がある。自動繊度測定機は、主に羊毛繊維の繊度(繊維の太さ)をレーザー光で試料を走査することによって自動測定する装置である。
【0013】
請求項3の発明に係る自動車用羊毛製品は、請求項1または請求項2の構成において、前記バインダー繊維及び/または前記第2のバインダー繊維は、ポリ乳酸繊維であるものである。
【0014】
請求項4の発明に係る自動車用羊毛製品は、請求項1または請求項2の構成において、前記バインダー繊維及び/または前記第2のバインダー繊維は、ポリエステル繊維であるものである。
【0015】
請求項5の発明に係る自動車用羊毛製品は、請求項1乃至請求項4のいずれか1つの構成において、前記自動車用羊毛製品の密度は、10kg/m3 〜100kg/m3 の範囲内、より好ましくは50kg/m3 〜80kg/m3 の範囲内であるものである。
【0016】
請求項6の発明に係る自動車用羊毛製品は、請求項1乃至請求項5のいずれか1つの構成において、前記バインダー繊維は、融点の異なる二種類の繊維からなるものである。
【0017】
請求項7の発明に係る自動車用羊毛製品は、請求項6の構成において、前記バインダー繊維は、前記融点の異なる二種類の繊維のうち融点の高いものが芯部を構成し融点の低いものが鞘部を構成する芯鞘構造を有するものである。
【0018】
請求項8の発明に係る自動車用羊毛製品の製造方法は、羊から刈り取った原毛を洗浄・乾燥してなる羊毛及び/またはリサイクルウール(再生羊毛)を洗浄・乾燥してなる羊毛をバインダーで接合して成形してなる自動車用羊毛製品の製造方法であって、前記羊毛は、NZS8716法で測定した前記羊毛のかさ高性を示すバルク(Bulk)値が15cm3 /gを超えて50cm3 /g以下の範囲内、好ましくは25cm3 /g〜40cm3 /gの範囲内、より好ましくは30cm3 /g〜35cm3 /gの範囲内で、かつ、平均繊維長が10mm〜300mmの範囲内、好ましくは20mm〜100mmの範囲内であり、前記羊毛を前記バインダーとして機能するバインダー繊維と混合して混合繊維とする混合工程と、前記混合繊維をほぐして開繊繊維とする開繊工程と、前記開繊繊維をカーディングしてカードウェブとするカーディング工程と、前記カードウェブを積層してフリースとする積層工程と、前記フリースを前記バインダー繊維の融点以上に加熱しながら圧縮して前記バインダー繊維を溶融させて前記羊毛を接合するバインダーとし、前記フリースをマットとする加熱成形工程と、前記マットを加圧して所定厚さ及び/または密度の羊毛マットとする加圧工程と、前記羊毛マットを前記バインダー繊維の軟化点以上に加熱する加熱工程と、前記加熱された羊毛マットをプレス成形して所定形状の羊毛製品とするプレス成形工程とを具備し、前記バインダー繊維の割合は、前記羊毛と前記バインダー繊維の合計量を100重量%として20重量%〜40重量%の範囲内であるものである。
【0019】
ここで、バインダー繊維としては、ポリ乳酸繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、等を主成分とした公知の熱溶融性繊維を用いることができる。また、「羊から刈り取った原毛を洗浄・乾燥してなる羊毛」は、一般に「バージン・ウール(新毛)」と呼ばれるものであり、リサイクルウール(再生羊毛)のように織成されたり染色されたりして損傷を受けてはいないため、羊毛を構成するキューティクル(スケール)も損傷せず残っており、キューティクルによる調湿効果及び空気中のVOC(揮発性有機化合物)の吸収・無毒化効果にも優れているため、羊から刈り取った原毛を洗浄・乾燥してなる羊毛(バージン・ウール)のみをバインダー繊維で成形してなる自動車用羊毛製品であることが、より好ましい。
【0020】
更に、「NZS8716法で測定した羊毛のかさ高性を示すバルク(Bulk)値」とは、ウール・リサーチ・オーガナイゼーション・オブ・ニュージーランド(WRONZ)のNZS8716法に基づいて、試料として羊毛10gを採取してカーディングを施し、測定機器としてWRONZのAuto-Bulkometerを使用して、10gf/cm2 の圧力を30秒間かけた後に回復させ、この圧縮・回復を5回繰り返した後、最後に30gf/cm2 の圧力をかけて回復させた羊毛の体積を測定して、羊毛のかさ高性をcm3 /gの単位で表した値である。また、「平均繊維長」は、IWTO(国際羊毛繊維機構)のIWTO5−60に基づいて測定した値である。
【0021】
請求項9の発明に係る自動車用羊毛製品の製造方法は、請求項8の構成において、前記加熱工程と前記プレス成形工程の代わりに、前記羊毛マットの製品の表面となる側に第2のバインダー繊維を付着させて、前記バインダー繊維の軟化温度及び前記第2のバインダー繊維の軟化温度以上に加熱する工程と、前記加熱された羊毛マット及び前記第2のバインダー繊維をプレス成形して所定形状の羊毛製品とする工程とを具備するものである。
【0022】
ここで、「第2のバインダー繊維」としては、ポリ乳酸繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、等を主成分とした公知の熱溶融性繊維を用いることができる。なお、第2のバインダー繊維の太さは、羊毛の太さよりも細いことが好ましい。ここで、「羊毛の太さ」は、JIS−L−1081に基づいて、自動繊度測定機によって測定した平均繊度の値によって示される。ここでいう自動繊度測定機としては、例えばバイヤー社製FDA−200がある。自動繊度測定機は、主に羊毛繊維の繊度(繊維の太さ)をレーザー光で試料を走査することによって自動測定する装置である。
【0023】
請求項10の発明に係る自動車用羊毛製品の製造方法は、請求項8または請求項9の構成において、前記バインダー繊維及び/または前記第2のバインダー繊維は、ポリ乳酸繊維であるものである。
【0024】
請求項11の発明に係る自動車用羊毛製品の製造方法は、請求項8または請求項9の構成において、前記バインダー繊維及び/または前記第2のバインダー繊維は、ポリエステル繊維であるものである。
【0025】
請求項12の発明に係る自動車用羊毛製品の製造方法は、請求項8乃至請求項11のいずれか1つの構成において、前記自動車用羊毛製品の密度は、10kg/m3 〜100kg/m3 の範囲内、より好ましくは50kg/m3 〜80kg/m3 の範囲内であるものである。
【0026】
請求項13の発明に係る自動車用羊毛製品の製造方法は、請求項8乃至請求項12のいずれか1つの構成において、前記バインダー繊維は、融点の異なる二種類の繊維からなるものである。
【0027】
請求項14の発明に係る自動車用羊毛製品の製造方法は、請求項13の構成において、前記バインダー繊維は、前記融点の異なる二種類の繊維のうち融点の高いものが芯部を構成し融点の低いものが鞘部を構成する芯鞘構造を有するものである。
【発明の効果】
【0028】
請求項1の自動車用羊毛製品においては、バインダーとして機能するバインダー繊維の割合が、羊毛とバインダー繊維の合計量を100重量%として20重量%〜40重量%の範囲内であり、羊毛が主体(60重量%〜80重量%)の製品となっている。また、NZS8716法によって測定された原料となる羊毛のかさ高性を示すバルク(Bulk)値が15cm3 /gを超えて50cm3 /g以下の範囲内であることから、羊毛の空隙率が大きいのみならず、羊毛中に天然のクリンプ(縮れ毛)が多く弾性力に富み、自動車用羊毛製品に加工された場合に細かい安定した空気層を保持することができるとともに、厚みの保持力と弾力回復性に優れたものとなり、断熱材・防音材等として適したものとなる。
【0029】
すなわち、NZS8716法によって測定された羊毛のかさ高性を示すバルク値が15cm3 /g以下の場合には、羊毛の空隙率が小さくなるとともに、羊毛中に天然のクリンプが少ししか存在せず、自動車用羊毛製品に加工された場合に細かい空気層を保持することができず、厚みの保持力と弾力回復性に劣るものとなる恐れがあるため、好ましくない。一方、羊毛のバルク値が50cm3 /gを超える場合には、特殊な種類の羊から刈り取った羊毛しか用いることができず、原料コストが大幅に上昇するために、やはり好ましくない。
【0030】
なお、NZS8716法によって測定された羊毛のかさ高性を示すバルク値が25cm3 /g〜40cm3 /gの範囲内であれば、羊毛中に天然のクリンプがより多く存在し、自動車用羊毛製品に加工された場合に、より確実に細かい安定した空気層を保持することができるとともに、厚みの保持力と弾力回復性により優れたものとなるため、より好ましい。更に、NZS8716法によって測定された羊毛のかさ高性を示すバルク値が30cm3 /g〜35cm3 /gの範囲内であれば、羊毛中に天然のクリンプが更に多く存在し、自動車用羊毛製品に加工された場合に、より一層確実に細かい安定した空気層を保持することができるとともに、厚みの保持力と弾力回復性により一層優れたものとなるため、より一層好ましい。
【0031】
更に、羊毛の平均繊維長が10mm〜300mmの範囲内であることから、羊毛の太さが適切な範囲内となり、羊毛中に天然のクリンプ(縮れ毛)が多く弾力性に富み、自動車用羊毛製品に加工された場合に細かい安定した空気層を保持することができるとともに、厚みの保持力と弾力回復性に優れたものとなり、住宅等の断熱材・防音材等として適したものとなる。
【0032】
なお、羊毛の平均繊維長が20mm〜100mmの範囲内であれば、羊毛中に天然のクリンプがより多く存在し、自動車用羊毛製品に加工された場合に、より確実に細かい安定した空気層を保持することができるとともに、厚みの保持力と弾力回復性により優れたものとなるため、より好ましい。
【0033】
このように、所定の範囲内のバルク値及び平均繊維長を有する羊毛を原料として用いるとともに、羊毛が主体の自動車用羊毛製品とすることによって、羊毛の大きな空隙率による断熱性・防音性と羊毛の不燃性、更には調湿性・VOC吸着性とを十分に生かした、極めて優れた自動車用の断熱材や防音材として応用することができ、バインダー繊維を混合することによって成形性にも優れた自動車用羊毛製品を得ることができる。
【0034】
このようにして、羊毛を主体(60重量%〜80重量%)とした自動車用羊毛製品とすることによって、羊毛の大きな空隙率による断熱性・防音性と、羊毛の不燃性・吸湿性・VOC吸着性とを十分に生かすことができ、生分解性及びリサイクル性にも優れた自動車用羊毛製品となる。
【0035】
請求項2の自動車用羊毛製品においては、羊毛マットの製品の表面となる側に第2のバインダー繊維を付着させて、バインダー繊維の軟化温度及び第2のバインダー繊維の軟化温度以上に加熱し、その後プレスして所定の形状に成形してなることから、請求項1に係る発明の効果に加えて、製品の表面が第2のバインダー繊維で覆われて羊毛が表面に出ないために、より平滑な表面の自動車用羊毛製品を確実に得ることができる。
【0036】
請求項3の自動車用羊毛製品においては、バインダー繊維及び/または第2のバインダー繊維が生分解性を有するポリ乳酸繊維であることから、自動車用羊毛製品を構成する材料の大部分または全てが生分解性を有するため、廃棄処分しても環境負荷物質とならず、しかも羊毛は天然素材であり、ポリ乳酸繊維も植物を原料として製造される天然物由来の素材であるため、内装材等として自動車に使用された場合に、人体に有害な物質を放出する恐れが全くなく、非常に環境に優しい自動車用羊毛製品となる。
【0037】
請求項4の自動車用羊毛製品においては、バインダー繊維及び/または第2のバインダー繊維がポリエステル繊維であることから、自動車用羊毛製品を構成する材料の大部分または全てが低コストの繊維材料となるため、非常に低コストで製造できる自動車用羊毛製品となる。
【0038】
請求項5の自動車用羊毛製品においては、自動車用羊毛製品の密度が10kg/m3 〜100kg/m3 の範囲内であることから、空隙率が大きく、かつ、強度的にも優れたものとなり、自動車の断熱材・防音材として使用するのに極めて適した自動車用羊毛製品となる。すなわち、自動車用羊毛製品の密度が10kg/m3 未満であると、空隙率については大きくなるが、密度が小さ過ぎて強度的に不足する可能性があり、一方、自動車用羊毛製品の密度が100kg/m3 を超えると、密度が大き過ぎて空隙率が不足する可能性があり、また製造も困難となる。
【0039】
なお、自動車用羊毛製品の密度が50kg/m3 〜80kg/m3 の範囲内であれば、空隙率についてもより適切な範囲となって断熱性及び防音性に優れた自動車用羊毛製品となるとともに、強度的にも充分な値が得られるため、より好ましい。
【0040】
請求項6の自動車用羊毛製品においては、バインダー繊維が融点の異なる二種類の繊維から構成されているため、羊毛とバインダー繊維とを混合して成形する段階において、まず融点の低い繊維の融点以上に加熱しながら圧縮することによって、羊毛同士が溶融した融点の低いバインダー繊維で接合され、かつ、その時点では融点の高い繊維はまだ繊維状態を保っていることから、羊毛が空隙率の高い状態を保つことができ、自動車用羊毛製品の製造工程における成形がより容易になる。
【0041】
請求項7の自動車用羊毛製品においては、バインダー繊維が融点の異なる二種類の繊維のうち融点の高いものが芯部を構成し融点の低いものが鞘部を構成する芯鞘構造を有することから、融点の異なる二種類の繊維が必ず均一な分布を有することになり、しかも融点の低い繊維が外側に位置するため、羊毛とバインダー繊維とを混合して成形する段階において、まず融点の低い繊維の融点以上に加熱しながら圧縮することによって、羊毛同士が溶融した融点の低いバインダー繊維で接合され、かつ、その時点では融点の高い繊維はまだ繊維状態を保っていることから、羊毛が空隙率の高い状態を保つことができ、自動車用羊毛製品の製造工程における成形がより容易になるとともに、細かい安定した空気層の均一な分布を確実に保持することができる。
【0042】
請求項8の自動車用羊毛製品の製造方法においては、まず混合工程において羊毛がバインダーとして機能するバインダー繊維と略均一に混合され、羊毛中にバインダー繊維が略均一に分散した状態となり、開繊工程において羊毛とバインダー繊維がほぐされて、カーディング工程においてカーディングされてカードウェブとなり、更に積層工程において積層されてフリースとなる。
【0043】
そして、加熱成形工程においてバインダー繊維の融点以上に加熱されながら圧縮されることによって、バインダー繊維が溶融してバインダーとして羊毛同士を接合して、マット状に成形される。ここで、原料の羊毛は、NZS8716法によって測定された羊毛のかさ高性を示すバルク(Bulk)値が15cm3 /gを超えて50cm3 /g以下の範囲内であることから、羊毛の空隙率が大きいのみならず、羊毛中に天然のクリンプ(縮れ毛)が多く弾性力に富むため、加熱成形工程において圧縮されても細かい安定した空気層を保持することができるとともに、厚みの保持力と弾力回復性に優れたマットとなる。
【0044】
すなわち、NZS8716法によって測定された羊毛のかさ高性を示すバルク値が15cm3 /g以下の場合には、羊毛の空隙率が小さくなるとともに、羊毛中に天然のクリンプが少ししか存在せず、圧縮された場合に細かい空気層を保持することができず、厚みの保持力と弾力回復性に劣るものとなる恐れがあるため、好ましくない。一方、羊毛のバルク値が50cm3 /gを超える場合には、特殊な種類の羊から刈り取った羊毛しか用いることができず、原料コストが大幅に上昇するために、やはり好ましくない。
【0045】
なお、NZS8716法によって測定された羊毛のかさ高性を示すバルク値が25cm3 /g〜40cm3 /gの範囲内であれば、羊毛中に天然のクリンプがより多く存在し、圧縮された場合に、より確実に細かい安定した空気層を保持することができるとともに、厚みの保持力と弾力回復性により優れたものとなるため、より好ましい。更に、NZS8716法によって測定された羊毛のかさ高性を示すバルク値が30cm3 /g〜35cm3 /gの範囲内であれば、羊毛中に天然のクリンプが更に多く存在し、圧縮された場合に、より一層確実に細かい安定した空気層を保持することができるとともに、厚みの保持力と弾力回復性により一層優れたものとなるため、より一層好ましい。
【0046】
更に、羊毛の平均繊維長が10mm〜300mmの範囲内であることから、羊毛の太さが適切な範囲内となり、羊毛中に天然のクリンプが多く弾力性に富み、加熱成形工程において圧縮されても細かい安定した空気層を保持することができるとともに、厚みの保持力と弾力回復性に優れたマットとなる。
【0047】
なお、羊毛の平均繊維長が20mm〜100mmの範囲内であれば、羊毛中に天然のクリンプがより多く存在し、圧縮された場合に、より確実に細かい安定した空気層を保持することができるとともに、厚みの保持力と弾力回復性により優れたものとなるため、より好ましい。
【0048】
そして、加圧工程においてマットが更に加圧されて所定厚さ及び/または密度の羊毛マットとされ、加熱工程において羊毛マットがバインダー繊維の軟化点以上に加熱され、最後にプレス成形工程において加熱された羊毛マットがプレス成形されて、所定形状の自動車用羊毛製品が製造される。こうして製造された自動車用羊毛製品は、バインダー繊維の割合が、羊毛とバインダー繊維の合計量を100重量%として20重量%〜40重量%の範囲内であり、羊毛が主体(60重量%〜80重量%)の製品となっている。
【0049】
このように、所定の範囲内のバルク値及び平均繊維長を有する羊毛を原料として用いるとともに、羊毛が主体の自動車用羊毛製品とすることによって、羊毛の大きな空隙率による断熱性・防音性と羊毛の不燃性、更には調湿性・VOC吸着性とを十分に生かした、極めて優れた自動車用の断熱材や防音材として応用することができ、バインダー繊維を混合することによって成形性にも優れた自動車用羊毛製品を得ることができる。
【0050】
このようにして、羊毛を主体(60重量%〜80重量%)とした自動車用羊毛製品とすることによって、羊毛の大きな空隙率による断熱性・防音性と、羊毛の不燃性・吸湿性・VOC吸着性とを十分に生かすことができ、生分解性及びリサイクル性にも優れた自動車用羊毛製品の製造方法となる。
【0051】
請求項9の自動車用羊毛製品の製造方法においては、羊毛マットの製品の表面となる側に第2のバインダー繊維を付着させて、バインダー繊維の軟化温度及び第2のバインダー繊維の軟化温度以上に加熱し、その後プレスして所定の形状に成形してなることから、請求項8に係る発明の効果に加えて、製品の表面が第2のバインダー繊維で覆われて羊毛が表面に出ないために、より平滑な表面の自動車用羊毛製品を確実に得ることができる製造方法となる。
【0052】
請求項10の自動車用羊毛製品の製造方法においては、バインダー繊維及び/または第2のバインダー繊維が生分解性を有するポリ乳酸繊維であることから、自動車用羊毛製品を構成する材料の大部分または全てが生分解性を有するため、廃棄処分しても環境負荷物質とならず、しかも羊毛は天然素材であり、ポリ乳酸繊維も植物を原料として製造される天然物由来の素材であるため、内装材等として自動車に使用された場合に、人体に有害な物質を放出する恐れが全くなく、非常に環境に優しい自動車用羊毛製品の製造方法となる。
【0053】
請求項11の自動車用羊毛製品の製造方法においては、バインダー繊維及び/または第2のバインダー繊維がポリエステル繊維であることから、自動車用羊毛製品を構成する材料の大部分または全てが低コストの繊維材料となるため、非常に低コストで製造できる自動車用羊毛製品の製造方法となる。
【0054】
請求項12の自動車用羊毛製品の製造方法においては、自動車用羊毛製品の密度が10kg/m3 〜100kg/m3 の範囲内であることから、空隙率が大きく、かつ、強度的にも優れたものとなり、自動車の断熱材・防音材として使用するのに極めて適した自動車用羊毛製品の製造方法となる。すなわち、自動車用羊毛製品の密度が10kg/m3 未満であると、空隙率については大きくなるが、密度が小さ過ぎて強度的に不足する可能性があり、一方、自動車用羊毛製品の密度が100kg/m3 を超えると、密度が大き過ぎて空隙率が不足する可能性があり、また製造も困難となる。
【0055】
なお、自動車用羊毛製品の密度が50kg/m3 〜80kg/m3 の範囲内であれば、空隙率についてもより適切な範囲となって断熱性及び防音性に優れた自動車用羊毛製品となるとともに、強度的にも充分な値が得られるため、より好ましい自動車用羊毛製品の製造方法となる。
【0056】
請求項13の自動車用羊毛製品の製造方法においては、バインダー繊維が融点の異なる二種類の繊維から構成されているため、羊毛とバインダー繊維とを混合して成形する段階において、まず融点の低い繊維の融点以上に加熱しながら圧縮することによって、羊毛同士が溶融した融点の低いバインダー繊維で接合され、かつ、その時点では融点の高い繊維はまだ繊維状態を保っていることから、羊毛が空隙率の高い状態を保つことができ、自動車用羊毛製品の製造工程における成形がより容易になる。
【0057】
請求項14の自動車用羊毛製品の製造方法においては、バインダー繊維が融点の異なる二種類の繊維のうち融点の高いものが芯部を構成し融点の低いものが鞘部を構成する芯鞘構造を有することから、融点の異なる二種類の繊維が必ず均一な分布を有することになり、しかも融点の低い繊維が外側に位置するため、羊毛とバインダー繊維とを混合して成形する段階において、まず融点の低い繊維の融点以上に加熱しながら圧縮することによって、羊毛同士が溶融した融点の低いバインダー繊維で接合され、かつ、その時点では融点の高い繊維はまだ繊維状態を保っていることから、羊毛が空隙率の高い状態を保つことができ、自動車用羊毛製品の製造工程における成形がより容易になるとともに、細かい安定した空気層の均一な分布を確実に保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
以下、本発明の実施の形態に係る自動車用羊毛製品について、図面を参照しつつ説明する。なお、各実施の形態において、同一の記号及び同一の符号は同一または相当する部分を意味し、実施の形態相互の同一の記号及び同一の符号は、それら実施の形態に共通する部分であるから、ここでは重複する詳細な説明を省略する。
【0059】
実施の形態1
まず、本発明の実施の形態1に係る自動車用羊毛製品について、図1乃至図9を参照して説明する。
【0060】
図1は本発明の実施の形態1に係る自動車用羊毛製品の製造方法の概略を示すフローチャートである。図2は本発明の実施の形態1に係る自動車用羊毛製品の供試体1の吸音性についての試験結果を示すグラフである。図3は本発明の実施の形態1に係る自動車用羊毛製品の供試体2の吸音性についての試験結果を示すグラフである。図4は本発明の実施の形態1に係る自動車用羊毛製品の供試体3の吸音性についての試験結果を示すグラフである。
【0061】
図5は本発明の実施の形態1に係る自動車用羊毛製品の実施例1としての内張り部品(トリム、ガーニッシュ)を示す斜視図である。図6(a)は本発明の実施の形態1に係る自動車用羊毛製品の実施例2としてのダッシュボードを示す斜視図、(b)は(a)のA−A断面図である。図7(a)は本発明の実施の形態1に係る自動車用羊毛製品の実施例3としてのボンネットシート及び実施例4としての天井部材が用いられた自動車ボディーを示す斜視図、(b)は(a)のB−B断面図、(c)は(a)のC−C断面図である。図8は本発明の実施の形態1に係る自動車用羊毛製品の実施例5としての座席シート材を示す一部断面斜視図である。図9は本発明の実施の形態1に係る自動車用羊毛製品の実施例6としてのチャイルドシートを示す斜視図である。
【0062】
最初に、本実施の形態1に係る自動車用羊毛製品の製造方法について、図1を参照して説明する。まず、原料となる羊毛2(羊から刈り取った原毛を洗浄・乾燥してなるバージン・ウール)とバインダー繊維3としてのポリ乳酸繊維とを計量・混合して(ステップS10)、この混合物を開繊機のフィードコンベアへ供給して開繊機内で開繊して、密着していた繊維同士がほぐされる(ステップS11)。このとき、開繊機にはダクトによって風圧が供給されて、開繊が促進される。
【0063】
ここで、羊毛2としては、NZS8716法で測定したバルク値が35cm3 /gである、羊から刈り取った原毛を洗浄・乾燥してなる羊毛(バージン・ウール)を使用した。NZS8716法で測定したバルク値が35cm3 /gである羊毛が得られる羊の種類としては、スーパーダウン種・ダウン種・ダウンクロス種・シャボー種等が挙げられる。また、バインダー繊維3としては、ポリ乳酸(PLA)繊維である、東レ(株)製のエコディア(登録商標)を使用した。バインダー繊維3の配合割合は、羊毛2とバインダー繊維3の合計量を100重量%として、30重量%とした。
【0064】
バルク(Bulk)値の測定は、ウール・リサーチ・オーガナイゼーション・オブ・ニュージーランド(WRONZ)のNZS8716法に基づいて、試料として羊毛10gを採取してカーディングを施し、測定機器としてWRONZのAuto-Bulkometer(試験用のピストンの直径:49mm)を使用して、10gf/cm2 の圧力を30秒間かけた後に回復させ、この圧縮・回復を5回繰り返した後、最後に30gf/cm2 の圧力を30秒間かけた後に、圧力を取り去ってから30秒後の回復させた羊毛の体積を測定することによって行った。
【0065】
また、羊毛2の太さは32μmであり、より好ましい29μm〜38μmの範囲内であった。ここで、「羊毛の太さ」は、JIS−L−1081に基づいて、自動繊度測定機(バイヤー社製FDA−200)によって測定した平均繊度の値である。バイヤー社製FDA−200自動繊度測定機は、主に羊毛繊維の繊度(繊維の太さ)をレーザー光で試料を走査して自動測定する装置である。更に、羊毛2の平均繊維長は、IWTO(国際羊毛繊維機構)のIWTO5−60に基づいて測定したところ、60mmであった。
【0066】
また、東レ(株)製のエコディア(登録商標)は、融点が10℃〜20℃異なる二種類のポリ乳酸繊維からなり、融点の高いポリ乳酸繊維が芯部を構成し、融点の低いポリ乳酸繊維が鞘部を構成する芯鞘構造を有するものである。
【0067】
次に、この開繊された繊維がカード機へ供給されて、カードウェブに形成される(ステップS12)、すなわちカーディングが行われる。形成されたカードウェブは、所定幅・所定厚さのフリースとして予備押圧コンベアにおいて積層されて(ステップS13)、加熱コンベア(成形機)に連続的に供給されて、加熱成形される(ステップS14)。
【0068】
この加熱コンベアは上コンベアと下コンベアとからなり、これらの上下コンベアはパンチングメタル(網目状多穴プレート)によって構成されている。これらのパンチングメタルの穴から、上コンベアと下コンベアの間を通るフリースの繊維層間に熱風を強制的に通過させて加熱する構造であって、具体的には、上コンベアの穴から熱風を吹き出して下コンベアの穴から熱風を吸引する循環方式となっている。そして、フリースを一定厚さに押圧しながら加熱するために、加熱コンベアの入口側から出口側に向かって、上コンベアと下コンベアの間隔が次第に狭くなっている。
【0069】
この加熱コンベアの熱風によって、フリースは150℃〜180℃の範囲内に加熱され、最初入口に入った時点では、バインダー繊維3としてのエコディアの鞘部を構成する融点の低いポリ乳酸繊維の融点以上に加熱されて、鞘部を構成するポリ乳酸繊維のみが溶融して羊毛繊維同士を接着するバインダーとして機能する。この時点では、まだ芯部を構成する融点の高いポリ乳酸繊維は溶融していないため、羊毛が空隙率の高い状態を保つことができ、この状態で加熱コンベアの中を進むに従って次第に圧縮されて行くことになる。
【0070】
そして、出口付近に到達して所定の厚さに圧縮される時点においては、マット状態となったフリースは、内部までエコディアの芯部を構成する融点の高いポリ乳酸繊維の融点以上に加熱されて、バインダー繊維3としてのエコディアは芯部まで完全に溶融する。このようにして、羊毛2の細かい安定した空気層の均一な分布を確実に保持することができる。
【0071】
この加熱成形処理に続いて、1対の内部水循環水冷方式ロールからなるカレンダーロールによって冷却されながら加圧(プレス)が行われ、マット内部の余熱によってポリ乳酸繊維が完全に溶融するとともにマットの厚さが所定の値に固定されて(ステップS15)、マットの内部に残存した高音部が風冷式の冷却ゾーンで冷却され(ステップS16)、不織布状態の羊毛マットが得られる。
【0072】
この羊毛マットが、加熱工程において、バインダー繊維3としてのポリ乳酸繊維の軟化点以上の温度(180℃)に再び加熱され(ステップS17)、プレス成形工程において、加熱された羊毛マットがプレス成形されて所定形状の羊毛製品となり(ステップS18)、必要なトリミングが施されて(ステップS19)、本実施の形態1に係る自動車用羊毛製品1が得られる。得られた自動車用羊毛製品1の密度は、30kg/m3 (0.03g/cm3)であった。
【0073】
また、本実施の形態1に係る自動車用羊毛製品1の熱伝導率を測定したところ、0.035W/m・Kであり、羊毛そのものの熱伝導率と同一の値であって、極めて断熱性に優れていることが明らかになった。したがって、断熱性及び耐熱性に優れていることから、例えば、自動車のエンジンルームのボンネット側に用いられる防音材としても、好適に用いることができる。
【0074】
更に、本実施の形態1に係る自動車用羊毛製品1の防音特性を測定した。自動車用羊毛製品1から供試体3点(供試体1乃至供試体3)を採取し、JIS−A−1405−1(音響管による吸音率及びインピーダンスの測定−第1部)の定在波比法に従って、垂直入射吸音率測定装置によって吸音率を測定した。供試体3点(供試体1乃至供試体3)の測定結果を、図2乃至図4に示す。図2乃至図4に示されるように、本実施の形態1に係る自動車用羊毛製品1は、特に周波数650Hz〜5000Hzの周波数帯において非常に吸音性に優れており、防音材として適していることが明らかとなった。
【0075】
また、本実施の形態1に係る自動車用羊毛製品1は、羊毛2及び生分解性樹脂繊維であるポリ乳酸繊維3のみから構成されているため、廃棄しても自然に生分解されて環境負荷物質とならず、更にリサイクル性にも優れている。
【0076】
本実施の形態1に係る自動車用羊毛製品1のより具体的な実施例について、図5乃至図9を参照して説明する。
【0077】
図5に示されるのは、本実施の形態1に係る自動車用羊毛製品1の実施例1としての内張り部品(トリム、ガーニッシュ)が使用された自動車ボディー4の一部である。この自動車ボディー4においては、フロントピラーガーニッシュ5a,ルーフサイドレールガーニッシュ5b,ルーフサイドインナーガーニッシュ5c,カウルサイドトリム6,センターピラーガーニッシュ7,リアシートサイドガーニッシュ8,ラッゲージサイドトリム9,ラッゲージリアトリム10の各内張り部品が、いずれも本実施の形態1に係る自動車用羊毛製品1によって構成されている。
【0078】
したがって、これらの実施例1としての内張り部品5a,5b,5c,6,7,8,9,10は、吸音性及び断熱性に優れているため室内を快適に保つことができ、また羊毛の吸湿性及びVOC吸着性によって室内の空気を清浄化する機能をも有しており、更に羊毛の弾力性によって衝撃を吸収する働きをも有している。
【0079】
図6(a)に示されるのは、本実施の形態1に係る自動車用羊毛製品1の実施例2としてのダッシュボード15である。図6(b)に示されるように、このダッシュボード15は、自動車用羊毛製品1の実施例2としてのダッシュボード本体15aと、その表面に貼られた樹脂層15bとから構成されている。
【0080】
したがって、実施例2としてのダッシュボード15は、吸音性及び断熱性に優れているため室内を快適に保つことができ、また羊毛の吸湿性及びVOC吸着性によって室内の空気を清浄化する機能をも有しており、更に羊毛の弾力性によって衝撃を吸収する働きをも有している。
【0081】
図7(a)に示されるのは、本実施の形態1に係る自動車用羊毛製品1の実施例3としてのボンネットシート及び実施例4としての天井部材が用いられた自動車ボディー4の一部である。図7(a),(b)に示されるように、自動車ボディー4のボンネット(フード)16は、鋼板製の表板16aのエンジンルーム側(裏側)に自動車用羊毛製品1の実施例3としてのボンネットシート17が貼られ、それをリブ18で押さえた構成となっている。
【0082】
したがって、実施例3としてのボンネットシート17は、耐熱性に優れているためエンジンルーム側に直接用いることができ、吸音性に優れているためエンジン音を吸収して走行時の騒音を低減することができる。
【0083】
また、図7(a),(c)に示されるように、自動車ボディー4のルーフは、鋼板製の表板20の室内側(裏側)に自動車用羊毛製品1の実施例4としての天井部材21が貼られ、その表面に樹脂シート22が貼られた構成となっている。
【0084】
したがって、実施例4としての天井部材21は、吸音性及び断熱性に優れているため室内を快適に保つことができ、また羊毛の吸湿性及びVOC吸着性によって室内の空気を清浄化する機能をも有しており、更に羊毛の弾力性によって衝撃を吸収する働きをも有している。
【0085】
図8に示されるのは、本実施の形態1に係る自動車用羊毛製品1の実施例5としての座席シート材27を用いた座席シート25である。図8に示されるように、この座席シート25は、鋼板製の芯材28に自動車用羊毛製品1の実施例5としての座席シート材27を取り付けて、座席シート材27の表面をカバー材26で覆った構成となっている。
【0086】
したがって、実施例5としての座席シート材27は、吸音性及び断熱性に優れているため乗員が快適に座ることができ、また羊毛の吸湿性によって乗員の発する汗を吸い取ることができ、羊毛のVOC吸着性によって室内の空気を清浄化する機能をも有しており、更に羊毛の弾力性によって衝撃を吸収して、快適な座り心地を得ることができる。
【0087】
図9に示されるのは、本実施の形態1に係る自動車用羊毛製品1の実施例6としてのチャイルドシート30である。図9に示されるように、このチャイルドシート30は、ベルト部分32以外の本体31の全てを本実施の形態1に係る自動車用羊毛製品1で構成したものである。
【0088】
したがって、実施例6としてのチャイルドシート30は、吸音性及び断熱性に優れているため幼児が快適に座ることができ、また羊毛の吸湿性によって幼児の発する汗を吸い取ることができ、羊毛のVOC吸着性によって室内の空気を清浄化する機能をも有しており、更に羊毛の弾力性によって衝撃を吸収して、快適な座り心地を得ることができる。
【0089】
このようにして、本実施の形態1に係る自動車用羊毛製品1においては、羊毛を主体(70重量%)とした自動車用羊毛製品とすることによって、羊毛の大きな空隙率による断熱性・防音性と、羊毛の不燃性・調湿性・VOC吸着性とを十分に生かすことができ、生分解性及びリサイクル性にも優れた自動車用羊毛製品となる。
【0090】
実施の形態2
次に、本発明の実施の形態2に係る自動車用羊毛製品について、図10を参照して説明する。図10は本発明の実施の形態2に係る自動車用羊毛製品の製造方法の概略を示すフローチャートである。
【0091】
図10に示されるように、本実施の形態2に係る自動車用羊毛製品の製造方法は、大部分は上記実施の形態1に係る自動車用羊毛製品1の製造方法と同様である。異なるのは、本実施の形態2に係る自動車用羊毛製品の製造方法においては、加熱工程とプレス成形工程の代わりに、羊毛マットの製品の表面となる側に第2のバインダー繊維を付着させて、バインダー繊維の軟化温度及び第2のバインダー繊維の軟化温度以上に加熱する工程と、加熱された羊毛マット及び第2のバインダー繊維をプレス成形して所定形状の羊毛製品11とする工程とを具備する点である。
【0092】
本実施の形態2においても、自動車用羊毛製品の原料としては、上記実施の形態1と同様に、NZS8716法で測定したバルク値が35cm3 /gである、羊から刈り取った原毛を洗浄・乾燥してなる羊毛(バージン・ウール)2を使用した。また、ポリ乳酸繊維である東レ(株)製のエコディア(登録商標)の代わりに、同様の芯鞘構造を有するポリエステル繊維であるユニチカ(株)製のメルティ(登録商標)を、バインダー繊維13として使用した。バインダー繊維13の配合割合は、羊毛2とバインダー繊維13の合計量を100重量%として、25重量%とした。
【0093】
図10に示されるように、まず、原料となる羊毛2とバインダー繊維13としてのポリエステル繊維とを計量・混合して(ステップS20)、この混合物を開繊機のフィードコンベアへ供給して開繊機内で開繊して、密着していた繊維同士をほぐす(ステップS21)。このとき、開繊機にはダクトによって風圧が供給されて、開繊が促進される。続いて、開繊された繊維がカード機へ供給されて、カードウェブに形成される(ステップS22)、すなわちカーディングが行われる。形成されたカードウェブは、予備押圧コンベアにおいて、より厚くなるように、フリースとして多層に積層される(ステップS23)。
【0094】
積層されたフリースは、加熱コンベアから構成される成形機に連続的に供給されて、加熱成形される(ステップS24)。すなわち、入口側から出口側に行くに従って次第に上下の間隔が狭くなっているコンベアで圧縮されながら、加熱コンベアの熱風によって、フリースは150℃〜180℃の範囲内に加熱され、最初入口に入った時点では、バインダー繊維13としてのメルティの鞘部を構成する融点の低いポリエステル繊維の融点以上に加熱されて、鞘部を構成するポリエステル繊維のみが溶融して羊毛繊維同士を接着するバインダーとして機能する。
【0095】
この時点では、まだ芯部を構成する融点の高いポリエステル繊維は溶融していないため、羊毛が空隙率の高い状態を保つことができ、この状態で加熱コンベアの中を進むに従って次第に圧縮されて行くことになる。そして、出口付近に到達して所定の厚さに圧縮される時点においては、マット状態となったフリースは、内部までメルティの芯部を構成する融点の高いポリエステル繊維の融点以上に加熱されて、バインダー繊維13としてのメルティは芯部まで完全に溶融する。このようにして、羊毛2の細かい安定した空気層の均一な分布を確実に保持することができる。
【0096】
続いて、1対の内部水循環水冷方式ロールからなるカレンダーロールによって冷却されながら加圧(プレス)が行われ、マット内部の余熱によってポリエステル繊維が完全に溶融するとともにマットの厚さが所定の値に固定される(ステップS25)。マットの内部に残存した高音部が風冷式の冷却ゾーンで冷却された後(ステップS26)、得られた羊毛マットの表面側に第2のバインダー繊維14が付着される(ステップS27)。
【0097】
ここで、第2のバインダー繊維14としては、一般に入手できる通常のポリエステル繊維を使用した。そして、羊毛マットと第2のバインダー繊維14とが加熱されて(ステップS28)、プレス成形機でプレス成形され(ステップS29)、必要なトリミングが施されて(ステップS30)、所定形状の本実施の形態2に係る自動車用羊毛製品11が得られる。得られた自動車用羊毛製品11の厚さは10mm、密度は30kg/m3 (0.03g/cm3)であった。
【0098】
この自動車用羊毛製品11の熱伝導率を測定したところ0.035W/m・Kであり、羊毛そのものの熱伝導率と同一の値であって、極めて断熱性に優れていることが明らかになった。また、本実施の形態2に係る自動車用羊毛製品11の防音特性を測定したところ、上記図2乃至図4に示される実施の形態1に係る自動車用羊毛製品1と同様の吸音性を有することが確認され、防音材としても適していることが明らかとなった。
【0099】
このようにして、本実施の形態2に係る自動車用羊毛製品11及びその製造方法においては、羊毛2を主体(75重量%)とした自動車用羊毛製品11とすることによって、羊毛2の大きな空隙率による断熱性・防音性と、羊毛2の不燃性・吸湿性・VOC吸着性とを十分に生かすことができ、更に製品の表面が第2のバインダー繊維14の溶融体で覆われて羊毛2が表面に出ないために、より平滑な表面の自動車用羊毛製品11を確実に得ることができる。
【0100】
したがって、本実施の形態2に係る自動車用羊毛製品11を、上記実施の形態1の実施例2に係るダッシュボード15に応用する場合には、表面が平滑であるため、表面に樹脂層15bを設ける必要がなく、製造工程をより簡略化することができる。同様に、本実施の形態2に係る自動車用羊毛製品11を、上記実施の形態1の実施例4としての天井部材21に応用する場合にも、表面が平滑であるため、表面に樹脂シート22を貼る必要がなく、製造工程をより簡略化することができる。
【0101】
上記各実施の形態においては、羊毛2として、NZS8716法で測定したバルク値が35cm3 /gで平均繊維長が60mmであり、羊毛の太さが32μmであって、羊から刈り取った原毛を洗浄・乾燥してなる羊毛(バージン・ウール)を使用した場合について説明したが、これに限られるものではなく、NZS8716法で測定したバルク値が15cm3 /gを超えて50cm3 /g以下の範囲内で、羊毛の平均繊維長が10mm〜300mmの範囲内の羊毛であれば、その他の種類のバージン・ウールや、リサイクルウールを洗浄・乾燥してなる羊毛を使用しても良い。
【0102】
また、上記各実施の形態においては、バインダー繊維3としてポリ乳酸繊維である東レ(株)製のエコディア(登録商標)を使用した場合、バインダー繊維13としてポリエステル繊維であるユニチカ(株)製のメルティ(登録商標)を使用した場合について説明したが、バインダー繊維3,13としてはこれらに限られるものではなく、その他のポリ乳酸繊維を始めとして、その他のポリエステル繊維、アクリル繊維、等を使用することもできる。
【0103】
更に、上記各実施の形態においては、バインダー繊維3の配合割合を羊毛2とバインダー繊維3の合計量に対して30重量%とした場合、バインダー繊維13の配合割合を羊毛2とバインダー繊維13の合計量に対して25重量%とした場合について説明したが、これらに限られるものではなく、バインダー繊維の配合割合が羊毛とバインダー繊維の合計量に対して20重量%〜40重量%の範囲内であれば良い。
【0104】
また、上記各実施の形態においては、バインダー繊維3,13として、融点の異なる二種類の繊維のうち融点の高いものが芯部を構成し融点の低いものが鞘部を構成する芯鞘構造を有する東レ(株)製のエコディア(登録商標)・ユニチカ(株)製のメルティ(登録商標)を使用した場合のみについて説明したが、バインダー繊維3,13としてはこれに限られるものではなく、融点の異なる二種類の繊維を別々に混合したものでも良く、更には1種類のバインダー繊維のみを用いることもできる。
【0105】
なお、本発明においては、羊毛をバインダー繊維と混合して成形してなる自動車用羊毛製品及びその製造方法について開示しているが、より広く考えた場合には、羊毛以外の獣毛、例えばカシミア・キャメル・アンゴラ・アルパカ等を同様に用いて、或いは羊毛にこれらの獣毛の適量を混合してマットを製造しても、同様の作用効果を得ることができる場合があるものと考えられる。
【0106】
自動車用羊毛製品のその他の部分の構成、形状、数量、材質、太さ、厚さ、大きさ、製造方法、製造条件等についても、自動車用羊毛製品の製造方法のその他の工程についても、上記各実施の形態に限定されるものではない。なお、本発明の実施の形態で挙げている数値は、その全てが臨界値を示すものではなく、ある数値は実施に好適な好適値を示すものであるから、上記数値を若干変更してもその実施を否定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】図1は本発明の実施の形態1に係る自動車用羊毛製品の製造方法の概略を示すフローチャートである。
【図2】図2は本発明の実施の形態1に係る自動車用羊毛製品の供試体1の吸音性についての試験結果を示すグラフである。
【図3】図3は本発明の実施の形態1に係る自動車用羊毛製品の供試体2の吸音性についての試験結果を示すグラフである。
【図4】図4は本発明の実施の形態1に係る自動車用羊毛製品の供試体3の吸音性についての試験結果を示すグラフである。
【図5】図5は本発明の実施の形態1に係る自動車用羊毛製品の実施例1としての内張り部品(トリム、ガーニッシュ)を示す斜視図である。
【図6】図6(a)は本発明の実施の形態1に係る自動車用羊毛製品の実施例2としてのダッシュボードを示す斜視図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図7】図7(a)は本発明の実施の形態1に係る自動車用羊毛製品の実施例3としてのボンネットシート及び実施例4としての天井部材が用いられた自動車ボディーを示す斜視図、(b)は(a)のB−B断面図、(c)は(a)のC−C断面図である。
【図8】図8は本発明の実施の形態1に係る自動車用羊毛製品の実施例5としての座席シート材を示す一部断面斜視図である。
【図9】図9は本発明の実施の形態1に係る自動車用羊毛製品の実施例6としてのチャイルドシートを示す斜視図である。
【図10】図10は本発明の実施の形態2に係る自動車用羊毛製品の製造方法の概略を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0108】
1,11 自動車用羊毛製品
2 羊毛
3,13 バインダー繊維
14 第2のバインダー繊維

【特許請求の範囲】
【請求項1】
羊から刈り取った原毛を洗浄・乾燥してなる羊毛及び/またはリサイクルウール(再生羊毛)を洗浄・乾燥してなる羊毛をバインダーで接合して成形してなる自動車用羊毛製品であって、
前記羊毛は、NZS8716法で測定した前記羊毛のかさ高性を示すバルク(Bulk)値が15cm3 /gを超えて40cm3 /g以下の範囲内で、かつ、平均繊維長が10mm〜300mmの範囲内であり、
前記バインダーとして機能するバインダー繊維の割合は、前記羊毛と前記バインダー繊維の合計量を100重量%として20重量%〜40重量%の範囲内であり、
前記羊毛を前記バインダー繊維と混合して一旦成形して羊毛マットとした後に、該羊毛マットを前記バインダー繊維の軟化温度以上に加熱し、その後プレスして所定の形状に成形してなることを特徴とする自動車用羊毛製品。
【請求項2】
前記羊毛を前記バインダー繊維と混合して一旦成形して羊毛マットとした後に、前記羊毛マットの製品の表面となる側に、第2のバインダー繊維を付着させて、前記バインダー繊維の軟化温度及び前記第2のバインダー繊維の軟化温度以上に加熱し、その後プレスして所定の形状に成形してなることを特徴とする請求項1に記載の自動車用羊毛製品。
【請求項3】
前記バインダー繊維及び/または前記第2のバインダー繊維は、ポリ乳酸繊維であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の自動車用羊毛製品。
【請求項4】
前記バインダー繊維及び/または前記第2のバインダー繊維は、ポリエステル繊維であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の自動車用羊毛製品。
【請求項5】
前記自動車用羊毛製品の密度は、10kg/m3 〜100kg/m3 の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の自動車用羊毛製品。
【請求項6】
前記バインダー繊維は、融点の異なる二種類の繊維からなることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の自動車用羊毛製品。
【請求項7】
前記バインダー繊維は、前記融点の異なる二種類の繊維のうち融点の高いものが芯部を構成し融点の低いものが鞘部を構成する芯鞘構造を有することを特徴とする請求項6に記載の自動車用羊毛製品。
【請求項8】
羊から刈り取った原毛を洗浄・乾燥してなる羊毛及び/またはリサイクルウール(再生羊毛)を洗浄・乾燥してなる羊毛をバインダーで接合して成形してなる自動車用羊毛製品の製造方法であって、
前記羊毛は、NZS8716法で測定した前記羊毛のかさ高性を示すバルク(Bulk)値が15cm3 /gを超えて50cm3 /g以下の範囲内で、かつ、平均繊維長が10mm〜300mmの範囲内であり、
前記羊毛を前記バインダーとして機能するバインダー繊維と混合して混合繊維とする混合工程と、
前記混合繊維をほぐして開繊繊維とする開繊工程と、
前記開繊繊維をカーディングしてカードウェブとするカーディング工程と、
前記カードウェブを積層してフリースとする積層工程と、
前記フリースを前記バインダー繊維の融点以上に加熱しながら圧縮して前記バインダー繊維を溶融させて前記羊毛を接合するバインダーとし、前記フリースをマットとする加熱成形工程と、
前記マットを加圧して所定厚さ及び/または密度の羊毛マットとする加圧工程と、
前記羊毛マットを前記バインダー繊維の軟化点以上に加熱する加熱工程と、
前記加熱された羊毛マットをプレス成形して所定形状の羊毛製品とするプレス成形工程とを具備し、
前記バインダー繊維の割合は、前記羊毛と前記バインダー繊維の合計量を100重量%として20重量%〜40重量%の範囲内であることを特徴とする自動車用羊毛製品の製造方法。
【請求項9】
前記加熱工程と前記プレス成形工程の代わりに、前記羊毛マットの製品の表面となる側に第2のバインダー繊維を付着させて、前記バインダー繊維の軟化温度及び前記第2のバインダー繊維の軟化温度以上に加熱する工程と、前記加熱された羊毛マット及び前記第2のバインダー繊維をプレス成形して所定形状の羊毛製品とする工程とを具備することを特徴とする請求項8に記載の自動車用羊毛製品の製造方法。
【請求項10】
前記バインダー繊維及び/または前記第2のバインダー繊維は、ポリ乳酸繊維であることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の自動車用羊毛製品の製造方法。
【請求項11】
前記バインダー繊維及び/または前記第2のバインダー繊維は、ポリエステル繊維であることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の自動車用羊毛製品の製造方法。
【請求項12】
前記自動車用羊毛製品の密度は、10kg/m3 〜100kg/m3 の範囲内であることを特徴とする請求項8乃至請求項11のいずれか1つに記載の自動車用羊毛製品の製造方法。
【請求項13】
前記バインダー繊維は、融点の異なる二種類の繊維からなることを特徴とする請求項8乃至請求項12のいずれか1つに記載の自動車用羊毛製品の製造方法。
【請求項14】
前記バインダー繊維は、前記融点の異なる二種類の繊維のうち融点の高いものが芯部を構成し融点の低いものが鞘部を構成する芯鞘構造を有することを特徴とする請求項13に記載の自動車用羊毛製品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−37704(P2010−37704A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205667(P2008−205667)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(505331384)長尾商事株式会社 (2)
【出願人】(508241750)
【Fターム(参考)】