説明

自動車用部品

【課題】固体伝播や空気伝播により自動車車内の居住空間に伝播するNVH(N:「Noise(騒音)」、V:「Vibration(振動)」及びH:「Harshness(ごつごつした感じ)」)を充分に低減させることができ、自動車の防音性及び制振性を改善することできる優れた防音性及び制振性を有する自動車用部品を提供する。
【解決手段】音エネルギー及び/又は振動エネルギーを吸収、低減、抑制することが可能な粒子が配合された樹脂組成物からなる自動車用部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた防音性及び制振性を有する自動車用部品に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車車内の居住空間を考えたとき、自動車の防音性及び制振性を改善するには、NVHの低減が重要であると言われている。ここで、Nは「Noise(騒音)」、Vは「Vibration(振動)」、Hは「Harshness(ごつごつした感じ)」を意味する。
これらのNVHの種類としては、主に、風切り音、ハーシュネス、シェイク、ロードノイズ、エンジンノイズ及びこもり音等が考えられる。
【0003】
風切り音は、自動車ボディーの凹凸が主な発生源であり、これは、例えば、ボディーの表面を滑らかにすること、ウェザーストリップのような伝達経路の部品を用いること、及び、車内の吸音材で共鳴を防ぐこと等で低減できることが知られている。
ハーシュネスは、路面の突起が主な発生源であり、これは、例えば、ゴムで支持するサスペンションで伝達軽減させること、車内の制振材で振動を小さくしたりすることで低減できることが知られている。
また、シェイク及びロードノイズは、タイヤパターンが主な発生源であり、これらは、例えば、ゴムで支持するサスペンションで伝達軽減させることで低減できることが知られている。
更に、エンジンノイズ及びこもり音は、エンジンが主な発生源であり、これらは、発生源での低減はさておき、例えば、ゴムで支持するサスペンションで伝達軽減させること、車内の制振材で振動を小さくすること、及び、遮音材でパネルの振動を抑えることで低減できることが知られている。
【0004】
このようなNVHは、いずれの方法で低減させる場合であっても固体伝播、空気伝播とも低減対象であり、自動車のパネル類の振動低減・減衰能の向上、新規な遮音材の設置(中間層、表面、空いている空間等)シール部分の遮音、内装材の遮音・吸音性能の向上が求められている。
【0005】
現在、NVHの低減には主に防音・制振シートを自動車のパネル類等の部品に貼り付けることが行われおり、現状用いられている防音・制振シートとしては、例えば、基板の表面にアスファルトとエラストマーとの混合材料等からなる粘性体である制振材を形成した構造の単層型制振材;基板の表面に上述の制振材が形成され、更にこの制振材の上に、高い弾性率を有する金属板又は樹脂やエラストマーからなる拘束層を設けた拘束層付制振材;フェルト、発泡ウレタン、ポリエステル繊維不織布、グラスウール等からなる多孔質体である吸音材;空気等のばね定数の低い材料やガラスウール等の多孔質体を2重壁間に有する二重壁構造の遮音材等が知られている。
【0006】
また、このような防音・制振シートの性能向上のための1つの手段として、粒子を用いる方法が知られている。音エネルギーや振動エネルギーを吸収、低減、抑制可能な粒子としては、例えば、比重が重い粒子、中空粒子(多孔又は単孔)、鈴構造粒子、コアシェル粒子等が用いられている。
このような粒子を用いた防音材(シート)としては、例えば、粒子凝集型多孔体層(特許文献1参照)、軽量細粒と有機バインダーとを含む軽量材(特許文献2参照)、硫酸バリウム粒子を用いた塩化ビニル樹脂の射出成形体(特許文献3参照)等が開示されている。
【0007】
しかしながら、このような粒子を用いた防音シートは、該防音シートを自動車のパネル等の部材に貼り付ける際に、被貼付部の形状に合わせて切る、置く、貼るといった工程が必要であり作業的に煩雑で、特に天井のような高い部分や奥まった隅の部分等に対しては、作業スペース的にも材料保管スペース的にも不利であった。また、材料的に充分な厚みや重量が求められるため、限られた空間・材料では遮音性能が充分でなかった。更に、質量対比効果が小さいこと、際立った防音・制振効果が得られないという問題もあった。
【特許文献1】特開2002−088941号公報
【特許文献2】特開2002−193649号公報
【特許文献3】特開2004−197040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記現状に鑑み、優れた防音性及び制振性を有する自動車用部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、音エネルギー及び/又は振動エネルギーを吸収、低減、抑制することが可能な粒子と、樹脂バインダーとを含有する樹脂組成物からなる自動車用部品である。
以下に本発明を詳述する。
【0010】
本発明の自動車用部品は、音エネルギー及び/又は振動エネルギーを吸収、低減、抑制することが可能な粒子と、樹脂バインダーとを含有する樹脂組成物からなる。
上記音エネルギー及び/又は振動エネルギーを吸収、低減、抑制可能な粒子(以下、本発明に係る粒子ともいう)の構造としては特に限定されないが、コアシェル粒子が好適である。
【0011】
上記コアシェル粒子とは、表面層側部分(シェル部分)の成分と該表面層側の成分以外の内部部分(コア部分)の成分とが異なるような構造の粒子をいう。なお、上記内部部分の成分は、更に同様のコアシェル構造をとってもよい。このようなコアシェル粒子は、隣り合う組成が異なる構造であることにより、エネルギーの伝播抵抗が発生する。
【0012】
上記コアシェル粒子のシェル部分は、その内部に1つ以上の独立空孔を有する構造であり、その外形としては特に限定されず、任意の形状が挙げられるが、球状であることが好ましい。
【0013】
ここで、「独立空孔」とは、上記シェル部分の内部に形成された空孔がシェル部分の表面に露出していないことを意味する。
上記空孔の形状としては特に限定されず、上記シェル部分の外形に合わせて適宜決定される。例えば、上記シェル部分の外形が球状である場合、上記空孔も球状であることが好ましい。
【0014】
上記シェル部分を構成する材料としては、後述するコア部分を構成する材料が高粘性流体等の液状物質である場合に、該液状物質をその内部に密封できる材質であれば特に限定されず、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、にかわ、カゼイン、アルブミン、デンプン及びその誘導体、セルロース誘導体、トラガントガム、アルギン酸ナトリウム等の多糖類、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、塩化ビニリデン等の重合体やこれらの共重合体、ポリビニルアルコール(ポバール)、エチレン・ビニルアルコール共重合体(エバール)、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、尿素樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
【0015】
また、上記シェル部分を構成する材料は、架橋された架橋樹脂であることが好ましい。例えば、上記シェル部分がゼラチンからなる場合、架橋ゼラチンであることが好ましく、このような架橋ゼラチンは、ホルムアルデヒド、グルタールアルデヒドや尿素を架橋剤として用いてゼラチンを架橋することで得ることができる。
また、上記シェル部分がアクリロニトリル、メタアクリロニトリル、塩化ビニリデン等の重合性モノマーを重合させて得られる重合体や共重合体である場合、多官能重合性モノマーを架橋剤として用いて架橋された架橋体であることが好ましい。
【0016】
上記シェル部分が架橋樹脂から構成されている場合、上記シェル部分を構成する架橋樹脂のゲル分率の好ましい下限は70%である。このようなゲル分率を有するシェル部分は、架橋密度が充分に高く、成形加工に際して強い剪断力が加わっても製造するコアシェル粒子の破壊を抑制することができる。より好ましい下限は80%、更に好ましい下限は90%である。
【0017】
なお、本明細書において、ゲル分率は、熱水、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)等の上記シェル部分を溶解することができる溶剤に、コアシェル粒子を潰した破砕物を加えて攪拌した分散液(上記コアシェル粒子が後述するシェル部分の空孔内に金属粉又はガラス粉等の核物質を含有する鈴構造粒子である場合、該核物質を遠心分離した分離液)に含まれる未溶解物を乾燥させ、未溶解物の乾燥重量を測定し下記式(1)によって算出した値である。
【0018】
ゲル分率(%)=未溶解物の乾燥重量/シェル部分の重量×100 (1)
【0019】
上記コア部分を構成する材料としては、上記シェル部分を構成する材料と異なる材料であれは特に限定されず、上記シェル部分を構成する材料を考慮して適宜選択される。
具体的には、例えば、合成樹脂類等の固体状物質、液状物質、空気を含むガス状物質等、及び、これらに上記シェル部分とは独立に運動できる核物質を有するもの等が挙げられる。
【0020】
本発明の自動車用部品において、上記コア部分は、上記液状物質、なかでも、高粘性流体からなることが好適である。
上記高粘性流体としては特に限定されず、例えば、鉱物油、石油オイル、シリコーンオイル、可塑剤等が挙げられる。
【0021】
上記高粘性流体は、B型粘度計を用いて測定した25℃における粘度の好ましい下限が500mPa・s、好ましい上限が1万mPa・sである。500mPa・s未満であると、上記高粘性流体の粘性抵抗が低く、本発明の自動車用部品に伝播した振動エネルギーの損失が起こりにくくなり、充分な制振性や防音性が得られないことがある。1万mPa・sを超えると、上記高粘性流体の摩擦抵抗が高く自由運動が拘束されるため、本発明の自動車用部品に伝播した振動エネルギーの損失が起こりにくくなり、充分な制振性や防音性が得られないことがある。
【0022】
B型粘度計を用いて測定した25℃における粘度が上記範囲となる高粘性流体としては特に限定されず、例えば、東亜合成社製のアクリルオリゴマー可塑剤(「UP−1000」粘度:1000mPa・s(25℃))、「UP−1070」粘度:3800mPa・s(25℃)、鉱油(粘度:1000mPa・s(25℃))、新日本石油社製「日石ハイゾールSAS−LH」粘度:5000mPa・s(25℃))、グリセリン(粘度:約1000mPa・s(25℃))等が挙げられる。
【0023】
また、本発明の自動車用部品は、その使用環境温度が高くなった場合であっても、制振性や防音性が低下しないことが必要である。そのため、上記高粘性流体は、B型粘度計を用いて測定した40℃における粘度の好ましい下限が180mPa・s、好ましい上限が1万mPa・sである。上記高粘性流体の40℃における粘度がこのような範囲内にあることで、本発明の自動車用部品は、高温環境下であっても充分な制振性や防音性を有することとなる。
【0024】
B型粘度計を用いて測定した40℃における粘度が上記範囲となる高粘性流体としては特に限定されず、例えば、東亜合成社のアクリルオリゴマー可塑剤(「UP−1000」粘度:約450mPa・s(40℃)、「UP−1070」粘度:約500mPa・s(40℃))、鉱油(粘度:約500mPa・s(40℃)、新日本石油社製「日石ハイゾールSAS−LH」粘度:180mPa・s(40℃))、グリセリン粘度:約460mPa・s(40℃)、信越化学工業社製のシリコーンオイル(ジメチルシリコーンオイル「KF96−1000」粘度:約450mPa・s(40℃)、メチルフェニルシリコーンオイル「KF50−1000」粘度:約450mPa・s(40℃))等が挙げられる。
【0025】
このようなシェル部分とコア部分とからなるコアシェル粒子は、例えば、オリフィス法等の機械的方法;insitu重合法、相分離法等の物理化学的方法;界面重合法等の化学的方法等、従来公知の方法で製造することができる。
【0026】
また、本発明の自動車用部品において、上記コアシェル粒子のコア部分は、上記シェル部分とは独立に運動できる核物質を有するものであることが好ましい(以下、このような構造のコアシェル粒子を鈴構造粒子ともいう)。このような鈴構造粒子は、基体であるシェル部分の運動とは独立で、コア部分にある核物質が運動できることにより、核物質が自由に位置や形を変えることができるため、鈴構造粒子に外部から音や振動エネルギーが伝播したときに、音や振動エネルギーの伝達ロスが起こり、エネルギー損失になる。その結果、このような鈴構造粒子を含有する自動車用部品は、音・振動の低減を図ることができる。
【0027】
上記鈴構造粒子のコア部分内に有する核物質を構成する材料としては特に限定されないが、金属粉又はガラス粉が好適に用いられる。
上記金属粉としては、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛等の金属微粒子や、磁性粉として汎用されている酸化鉄、二酸化マンガン、二酸化クロム、フェライト、鉄、ニッケル、鉄−ニッケル合金等の磁性微粒子が挙げられる。
上記金属粉又はガラス粉の形状としては特に限定されず、例えば、無定形の粉末状であっても、球状の微粒子であってもよい。
【0028】
このような鈴構造粒子の構造としては、例えば、シェル部分内に1つのコア部分を有し、そのコア部分中に上記シェル部分とは独立に運動できる1つの核物質を有する構造;シェル部分内に1つのコア部分を有し、そのコア部分中に基体であるシェル部分とは独立に運動できる2つ以上の核物質を有する構造;シェル部分内に2つ以上のコア部分を有し、その各コア部分中に基体であるシェル部分とは独立に運動できる核物質を1つ又は2つ以上有する構造等が挙げられる。なお、コア部分中に2つ以上の核物質を有する場合、各々の核物質は異なる材料からなるものであってもよく、また、シェル部分内に2つ以上のコア部分を有する場合、各々のコア部分中の核物質の数は異なってもよい。
【0029】
更に、上記鈴構造粒子において、上記コア部分は、上述した合成樹脂類等の固体状物質、液状物質、ガス状物質と上記核物質とからなることが好ましく、なかでも、液状物質、特に上述した高粘性流体と核物質とからなることが好ましい。このような構造の鈴構造粒子を含有する本発明の自動車用部品は、制振性及び防音性が非常に優れたものとなるからである。
【0030】
このようなコア部分が核物質と高粘性流体とからなるコアシェル粒子を製造する方法としては、例えば、金属粉やガラス粉等の核物質を含む高粘性流体を、シェル部分を形成するポリマーの原料となるモノマー成分とともに、ラウリル硫酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、コロイダルシリカ、ジオキサン、アルコール、アラビアゴム等の相分離誘起剤を加えた水と混合し、ホモジナイザー等の分散装置を用いて分散させた、金属粉やガラス粉等の核物質を含む高粘性流体からなる液滴の表面にシェル部分を形成するポリマーの原料となるモノマー成分の膜が形成されたマイクロカプセル状の液滴を調製し、このマイクロカプセル状の液滴のシェル部分を形成するポリマーの原料となるモノマー成分を重合する方法等が挙げられる。
なお、マイクロカプセル状の液滴を調製する工程において、水分散液とせずに有機溶剤を用いて有機溶剤中に分散させマイクロカプセル状の液滴を形成してもよい。
【0031】
本発明に係る粒子の粒子径としては特に限定されないが、好ましい下限は0.5μm、好ましい上限は500μmである。0.5μm未満であると、本発明の自動車用部品に得られる制振効果や防音効果が高くなく、500μmを超えると、本発明の自動車用部品の強度を低下させる恐れがある。より好ましい下限は10μm、より好ましい上限は400μm、更に好ましい下限は50μm、更に好ましい上限は300μmである。
【0032】
本発明の自動車用部品は、上述した本発明に係る粒子と樹脂バインダーとを含有する樹脂組成物からなる。
上記樹脂バインダーとしては、例えば、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ブチルサクシネート樹脂、セルロース樹脂、エチレン酢ビ(EVA)等の熱可塑性樹脂;ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ケイ素樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂等の熱硬化性樹脂;スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、オレフィン系エラストマー(TPO)、ウレタン系エラストマー等のエラストマー類;PC、PPE、PA、PET、PBT、PEEK、POM、PI、LCP、TPEE等のエンプラ樹脂;繊維強化樹脂FRP、金属強化樹脂MRP;ポリ乳酸樹脂等の植物由来の樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独、複合、積層、混合等の形態で用いることができる。また、ポリマーアロイの形態でも用いることもできる。
【0033】
上記樹脂組成物の組成としては特に限定されないが、本発明に係る粒子の配合量の好ましい下限は5重量%、好ましい上限は95重量%である。5重量%未満であると、本発明の自動車用部品に充分な制振性や防音性を付与することができないことがあり、95重量%を超えると、樹脂組成物の強度を低下させる恐れがある。より好ましい下限は10重量%、より好ましい上限は60重量%であり、更に好ましい下限は20重量%、更に好ましい上限55重量%である。
【0034】
上記樹脂組成物は、一般的な添加剤着色剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、相溶化剤、柔軟性付与剤、ケナフ等の環境対応添加剤等が配合されていてもよい。更に、機能付加する際に添加するもの、磁性、蛍光発色剤、電磁波吸収剤、層状ケイ酸塩などのナノコンポジット等の併用も可能である。
【0035】
また、本発明の自動車用部品は、中央加振法により測定した1000Hzの損失係数の下限が0.08であることが好ましい。0.08未満であると、本発明の自動車用部品の制振性や防音性が不充分となることがある。より好ましい下限は0.09である。なお、「1000Hz」としたのは下記の理由による。
自動車や車両で対象とする80〜8000Hzの領域では、一般の材料特性は概略、測定周波数(Hz)の対数と材料の損失係数(η)の対数とが一次式の関係にある。一方、騒音や聴感特性の物理では、1000Hzを中心とした表記が用いられている。よって、1000Hzの損失係数の値でもって材料の制振性や防音性の指標となる損失係数のレベルを表現できる。そこで、本明細書では、1000Hzの値を代表値として用いた。
【0036】
上記樹脂組成物からなる本発明の自動車部品としては、具体的には、例えば、上記樹脂組成物を射出成形法、押出成形法、中空成形法、真空・圧空成形法、パウダースラッシュ成形法、圧縮・トランスファー成形法、発泡成形法、RIM成形法、スタンピング成形法、サンドイッチ成形法、ガスインジェクション成形法、多層ブロー成形法等の成形法で成形することで得られる部品・製品や、自動車の製造に用いられる塗料、接着剤、シーリング材等が挙げられる。
【0037】
上記射出成形法により得られる本発明の自動車用部品としては、例えば、エアクリーナーケース、タイミングベルトカバー、ラジエータタンク、ラジエータファン、キャニスタケース、インテークマ二ホールド、シリンダヘッドカバー、タイミングベルトカバーシール、レゾネータ、エンジンカバー、ウォータインレット、オイルフィラーダクト、オイルフィラーキャップ、フューエルストレーナ、インタクーラタンク、オイルリザーブタンク、バキュームタンク、サージタンク、ハイテンションコードカバー、LLCリザーブタンク、オイルレベルゲージ、オイルストレーナ、フューエルインジャクタ、フューエルデリバリーパイプ、クーリングファン、プラグシール、オイルセパレーター、ブローバイパイプ、エレメントホルダー、過給機継手ダクト、インタークーラーホース、吸気チャンバー、ポンプインペイラー、サーモスタットカバー、LLCアウトレットダクト、LLCホースコネクター、カムスプロケット、テンショナープッシュ、ベルトアイドラー、チェーンガイド、デリバリーパイプ、フィルターハウジング、インヒビターS/W、シールリング、スピードメータギア、スピードメータホルダー、アキュームレータピストン、ガバナギア、エアブリザーホース、トルクコンバータステーター等のエンジン関連部品;ディストリビュータキャップ、ディストリビュータローター、イグニッションコイルボビン、エアフローメータハウジング、コネクタ、センサハウジング、フューズブロック、スイッチケース、角度センサーホルダー、ユニットケース、ハーネスコネクター等のエンジン電飾部品;ステアリングホイール、ステアリングコラムカバー、ホイールカバー・キャップ、ボールジョイント用ベアリング、シフトレバーノブ、シフトレバーベースプレート、アクセルペダル、オイルシール、マスターバック用ダストカバー、シフトレバーベース等の足廻り部品;ボディーパネル、フェンダー、バンパー、マッドガード、モール、ミラーケース、ラジエータグリル、ドアハンドル、マーク・エンブレム、リヤスポイラー、ミラーフレーム、ドアロックケース、ホイールキャップ、ライナー等のボディー・外装品;インストルメントパネル、トリム類、コンソールボックス、グローブボックス、ドアポケット、メーターパネル、ピラー、空調ダクト、アシストグリップ、アッシュトレイ、スリップジョイント、ワイパレバー、ベンチレータフィン等の内装品;ランプハウジング、ランプレンズ、リレーケース、ランプリフレクター等の車体伝装品;カーエアコン、ヒーターケース、クリップ類、ファスナー、バネ、バンパサポート等が挙げられる。
【0038】
上記押出成形法により得られる本発明の自動車用部品としては、例えば、マッドガード、モール、グラスチャンネル等のボディー・外装品;トリム等の内装品;電線被覆等の車体電装品;ケーブル被覆、シール材、フレオンホースインナ、フューエルチューブ等が挙げられる。
【0039】
上記中空成形法により得られる本発明の自動車用部品としては、例えば、ラジエータタンク、ダクト、フューエルタンク、インテークマ二ホールド、多層フューエルタンク、オイルリザーブタンク、ブレーキリザーブタンク、フィラーパイプ等のエンジン関連部品;等速ジョイントブーツ等の足廻り部品;バンパーリインフォースメント、ウォッシャータンク、エアスポイラー等のボディー・外装品;トリム類、シートフレーム、シートバック、インストルメントパネル等の内装品等が挙げられる。
【0040】
上記真空・圧空成形法により得られる本発明の自動車用部品としては、例えば、バッテリートレイ等のエンジン電装品;シートフレーム、インストルメントパネル表皮、トリム表皮、ダッシュボード表皮、ドア表皮、フロアマット、サンドバイザー等の内装品;クーラー・ヒーターケース等が挙げられる。
【0041】
上記パウダースラッシュ成形法により得られる本発明の自動車用部品としては、例えば、インストルメントパネル表皮、トリム表皮等の内装品等が挙げられる。
【0042】
上記圧縮・トランスファー成形法により得られる本発明の自動車用部品としては、例えば、シリンダヘッドカバー等のエンジン関連部品;バッテリートレイ等のエンジン電装品;エンジントランスミッションアンダーカバー、バンパーリインフォースメント、エアスポイラー、サンルーフハウジング等のボディー・外装品;トリム類、成形天井、ダッシュサイレンサー等の内装品;シール材等が挙げられる。
【0043】
上記発泡成形法により得られる本発明の自動車用部品としては、例えば、インストルメントパネルパッド、シートクッション・パッド、ヘッドレスト、アームレスト、成形天井等の内装品等が挙げられる。
【0044】
上記RIM成形法により得られる本発明の自動車用部品としては、例えば、ステアリングホイール等の足廻り部品;バンパー、エアスポイラー等のボディー・外装品;エアコンドアー等の内装品等が挙げられる。
【0045】
上記スタンピング成形法により得られる本発明の自動車用部品としては、例えば、ドアトリム、アームレスト、インストルメントパネル、ルーフケース等の内装品等が挙げられる。
【0046】
上記サンドイッチ成形法により得られる本発明の自動車用部品としては、例えば、ドアミラーボディ、バンパー、ドアハンドル、マットガード、サイドモール等のボディー・外装品等が挙げられる。
【0047】
上記ガスインジェクション成形法により得られる本発明の自動車用部品としては、例えば、アシストグリップ、グリルガード、ルーフレール、バンパー、ドアトリム、ドアモジュール等のボディー・外装品;インストルメントパネル、カップホルダー等の内装品等が挙げられる。
【0048】
上記多層ブロー成形法により得られる本発明の自動車用部品としては、例えば、ポリアミド多層燃料タンク、EVOH多層燃料タンク等のエンジン関連部品等が挙げられる。
【0049】
上記樹脂組成物を構成する樹脂と上述した製造方法との関係には特に制約はなく、製造する本発明の自動車用部品の形状、形態によって適宜最適な方法が選択される。
例えば、上記樹脂組成物を構成する樹脂がポリプロピレン樹脂の場合、射出成形法、押出し成形法、ブロー成形法、真空・圧縮成形法、プレス成形法等が用いられ、これらの成形法は、溶融温度の観点から、200℃以上の成形温度で用いられる。
また、上記樹脂組成物を構成する樹脂が塩化ビニル樹脂である場合、射出成形法、押出し成形法、真空・圧縮成形法等が用いられる。
【0050】
本発明の自動車用部品が塗料である場合、該塗料としては、自動車に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、メタリック塗装用ベースコート、マイカ塗料、表面加工用塗料、粉体塗料等が挙げられる。これらの塗料は、樹脂組成的には、ウレタン樹脂系、アクリル樹脂系、エポキシ系、ポリエステル系等であるが、更にフッ素樹脂系、シリコン系等も用いられる。
上記塗料に配合する上述の本発明に係る粒子の量としては特に限定されないが、好ましい下限は5重量%、好ましい上限は30重量%である。
【0051】
本発明の自動車用部品が接着剤又はシーリング材である場合、該接着剤又はシーリング材としては、自動車の製造において用いられるものであれば特に限定されず、例えば、ヘミング用接着剤、ウエルドボンド用接着剤、スポットシーラー、マスチック接着剤、板金補強材、高剛性発泡充填材等の車体工程用;ボディーシーラー、アンダーコート等の塗装工程用;ダイレクトグレージング用接着剤、ドアインサイドスクリーンシーラー、サイドプロテクター用接着剤、ウェザーストリップゴム用接着剤、高剛性発泡充填材等艤装工程用;成型天井用接着剤、ドアトリム用接着剤、座席シート用接着剤、フロアマット用接着剤等の内装部品用接着剤;ランプ用接着剤、ブレーキ用接着剤、フィルター用接着剤、駆動用ガスケット等が挙げられる。また、両面テープ、ビニルテープ、布テープ、ブチルテープ等の粘着テープ類も挙げられる。
上記接着剤の代表的な例としては、例えば、ヘミング用接着剤に用いられるエポキシ樹脂に上記樹脂組成物を5〜30重量%添加してなるものが挙げられる(具体的な使用例としては、特開平11−61072号公報参照)。
【発明の効果】
【0052】
本発明によれば、優れた防音性及び制振性を有する自動車用部品を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0054】
(実施例1)
(1)鈴構造粒子(A)の製造
濃度3.6%アラビアゴム水溶液100mLに、pH6に調整した濃度3.6%のゼラチン水溶液100mLを加え、50℃に昇温した。
次いで、予め準備した核物質用原料液(酸化鉄(マグネタイト、粒径0.3μm)30重量部、及び、石油オイル(新日本石油社製「日石ハイゾールSAS−296」)70重量部)50mLを加え、攪拌しながら冷却することにより核物質用原料液滴の表面にゼラチン−アラビアゴムの重合体膜が析出させた。
次いで、グルタールアルデヒドを含む水溶液を添加してゼラチン膜を架橋させ、鈴構造粒子を調製した。得られた鈴構造粒子は、架橋ゼラチンからなるシェル部分内に核物質であるマグネタイトと高粘性流体である石油オイルとを含有する構造であり、その平均粒子径は399μm、標準偏差は130μmであった。なお平均粒子径の測定は、堀場製作所社製のレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置により測定した。
その後、得られた鈴構造粒子を48メッシュ(300μmの目開き)の篩でふるい、粒子径が300μmを超えるものを除去し、粒子径が300μm以下でシェル部分内に核物質と高粘性流体とを有する構造の鈴構造粒子(A)を得た。
【0055】
(2)コアシェル粒子の製造
核物質用原料に代えて、石油オイル(新日本石油社製「日石ハイゾールSAS−LH 」90重量部と、新日本石油社製「日石ハイゾールSAS−296 」10重量分とからなるコア材料を用いた以外は、(1)と同様にしてコアシェル粒子を得た。
【0056】
(3)鈴構造粒子(B)の製造
核物質用原料の組成を、酸化鉄(マグネタイト、粒径0.3μm)12重量、石油オイル(新日本石油社製「日石ハイゾールSAS−LH 」79.2重量部、新日本石油社製「日石ハイゾールSAS−296 」8.8重量部とした以外は、(1)と同様にしてシェル部分内に核物質と高粘性流体とを有する構造の鈴構造粒子(B)を得た。
【0057】
(実施例1)
三井化学製「LA880」(オレフィン系エラストマー)60重量%に鈴構造粒子(A)を40重量%混練して樹脂組成物を調製し、この樹脂組成物を用いて射出成形によりドアトリムの基材部分を成形した。
成形したドアトリムの基材部分の一部を切り出し、180℃プレスにて再成形加工し、300×25×5mmの試料を作製した。
【0058】
(実施例2)
鈴構造粒子(A)に代えて、コアシェル粒子を用いた以外は、実施例1と同様にしてドアトリムの基材部分を成形し、更に試料を作製した。
【0059】
(実施例3)
鈴構造粒子(A)に代えて、鈴構造粒子(B)を用いた以外は、実施例1と同様にしてドアトリムの基材部分を成形し、更に試料を作製した。
【0060】
(比較例1)
三井化学製「LA880」(オレフィン系エラストマー)のみを用いて射出成形によりドアトリムの基材部分を成形し、更に試料を作製した。
【0061】
(損失係数の測定)
20℃の環境下で、実施例1〜3及び比較例1で作製した試料をリオン社製の損失係数測定器を用いて、周波数1000Hz近辺における損失係数(η)を求めた。その結果を表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
(実施例4)
プロピレン単独重合体60重量%、タルク(平均粒子径6μm)20重量%、炭酸カルシウム(オレイン酸表面処理、平均粒子径0.8μm)10重量%、及び、耐衝撃組成物としてエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)10重量%を混合して得られた樹脂原料を2軸混練押出し機に供給し、ストランドを押出し、カットしてペレットを得た。
得られたペレットを単軸押出し機に供給し、押出し機の途中のサイドフィーダーより鈴構造粒子(A)を樹脂原料のペレットに対し40重量%になるよう供給し、ウェザーストリップの形状をした金型出口より押出しウェザーストリップ成形物を得た。
得られたウェザーストリップ成形物をプレス成形にて再成形加工し、300×25×5mmの試料を作製した。
【0064】
(比較例2)
鈴構造粒子(A)を添加しなかった以外は、実施例4と同様にしてウェザーストリップ成形物を成形し、更に試料を作製した。
【0065】
(損失係数の測定)
20℃の環境下で、実施例4及び比較例2で作製した試料をリオン社製の損失係数測定器を用いて、周波数1000Hz近辺における損失係数(η)を求めた。その結果を表2に示す。
【0066】
【表2】

【0067】
(実施例5)
St−Ac共重合樹脂60重量%、コアシェル粒子40重量%を混練した樹脂組成物(0.87g/cm)からなる塗料組成物を調製した。
得られた塗料組成物を鋼板(180mm×10mm、厚み0.8mm)に3mm厚で塗布し試料を作製した。
【0068】
(比較例3)
St−Ac共重合樹脂のみ(1.15g/cm)からなる塗料組成物を調製し、この塗料組成物を鋼板(180mm×10mm、厚み0.8mm)に3mm厚で塗布し試料を作製した。
【0069】
(損失係数の測定)
20℃の環境下で、実施例5及び比較例3で作製した試料をリオン社製の損失係数測定器(RION sound and vibration signal analyzer SA−74)を用いて、周波数1000Hz近辺における損失係数(η)を求めた。その結果を表3に示す。
【0070】
【表3】

【0071】
表1〜3に示したように、鈴構造粒子(A)又は(B)、コアシェル粒子を用いて製造した実施例にかかる試料の損失係数は、いずれも同様の方法で製造した比較例にかかる試料の損失係数よりも高く、音エネルギー、振動エネルギーを充分に低下させることのできる防音性及び制振性に優れるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明によれば、優れた防音性及び制振性を有する自動車用部品を提供することができる。なお、自動車部品以外にも二輪車、航空機、電車、住宅等にも提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音エネルギー及び/又は振動エネルギーを吸収、低減、抑制することが可能な粒子と、バインダー樹脂とを含有する樹脂組成物からなることを特徴とする自動車用部品。
【請求項2】
音エネルギー及び/又は振動エネルギーを吸収、低減、抑制することが可能な粒子は、コアシェル粒子であることを特徴とする請求項1記載の自動車用部品。
【請求項3】
コアシェル粒子は、鈴構造粒子であることを特徴とする請求項2記載の自動車用部品。
【請求項4】
バインダー樹脂は、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、PE樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ乳酸樹脂、ブチルサクシネート樹脂、セルロース樹脂、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、オレフィン系エラストマー及びウレタン系エラストマーからなる群より選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の自動車用部品。
【請求項5】
中央加振法により測定した1000Hzの損失係数が0.08以上であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の自動車部品。


【公開番号】特開2006−335279(P2006−335279A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−164172(P2005−164172)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】