説明

自律運転乗物用の制御及びシステム

ナビゲーション及び制御システムは、乗物の位置及び進行方向を示すポジション信号を生成するように構成される1つ以上のポジションセンサを含む。このシステムは、入力を有し、乗物の動作を制御する出力を生成する1つ以上の動作制御機構を含み、動作制御機構から離れた内蔵式自律型制御器を含む。自律型制御器は、ポジションセンサからポジション信号を受信し、乗物の更新された移動経路を定める動作制御信号を生成するように構成されるプロセッサと、ポジションセンサ、動作制御機構、及びプロセッサの間で通信を行うプログラマブルインタフェースとを含む。プログラマブルインタフェースは、ポジションセンサからのプロセッサへの入力を正規化し、動作制御機構への入力として加えられる適合する動作制御信号を生成するように構成され、それによって内蔵式自律型制御器は、様々な異なるセンサ及び異なる動作制御機構と共に動作するように構成可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、代理人整理番号284361USの下で2006年3月16日に出願した「NAVIGATION AND CONTROL SYSTEM FOR AUTONOMOUS VEHICLES」と題した米国特許出願第11/376,160号に関連している。本出願の内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、統合化センサ、そして自律運転乗物を制御及び指図するコンピュータベースのアルゴリズムシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
現代の乗物においては、運転手が、速度、操舵、障害物及び危険の認識、そして障害物及び危険の回避など乗物の安全動作に関して多数の決定を行うので、運転手は、乗物の制御システムの不可欠な構成要素のままである。しかし、これら機能の全てを行うための運転手の能力は、運転手の疲労などの肉体的要因、運転手の機能障害、運転手の不注意、または上手く危険を回避するために運転手によって必要とされる反応時間を減少させる視界などの他の要因により損なわれる場合がある。
【0004】
さらに、例えば、戦争状況の中、または中毒の危険もしくは核放射線の危険が存在する状況の中など、環境的に危険な周囲状況の中では、運転手は、危険に曝されている。実際、イラクの道路脇の爆弾は、人命が失われるまさに現代の一例であるが、このことは、多くの場合、軍隊に物資を届ける補給トラックが無人であれば避けられ得る。
【0005】
他のより普通の環境においては、運転手が医療緊急事態に見舞われた場合、または例えば運転手が運転状態中に見当識を失うことになった場合に生じることになるものであるが、運転手が見当識を失うことになったり、または乗物を身体的に操ることができないことになったりする場合がある。そのような方向感覚を失わせる環境または身体機能を奪う環境の一例は、運転手(もしくは船の船長)が、近づきつつある危険(または船が近づきつつある危険)に気付き、危険に反応する能力にハンディがある場合に、雪、霧、雨、及び/または夜間の灯りが無い状況下で車または船を運転または操舵することであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】Jenkinsらの米国特許第5,644,386号
【特許文献2】Andressenの米国特許第5,870,181号
【特許文献3】Krasutskyらの米国特許第5,200,606号
【特許文献4】Ruffらの米国特許第6,844,924号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】H. Wang、J. Kearney、J. Cremer、及びP. Willemsen、「Steering Autonomous Driving Agents Through Intersections in Virtual Urban Environments」、2004 International Conference on Modeling, Simulation, and Visualization Methods, (2004)
【非特許文献2】R. Frezza、G. Picci、及びS. Soatto、「A Lagrangian Formulation of Nonholonomic Path Following」、The Confluence of Vision and Control、(A. S. Morseら(編)、Springer Verlag、1998)
【非特許文献3】J. Shirazi、Java(登録商標) Performance Tuning、(OReilly & Associates、2000)
【非特許文献4】J. Witt、C. Crane III、及びD. Armstrong、「Autonomous Ground Vehicle Path Tracking」、Journal of Robotic Systems、(21(8), 2004)
【非特許文献5】C. Crane III、D. Armstrong Jr.、M. Torrie、及びS. Gray、「Autonomous Ground Vehicle Technologies Applied to the DARPA Grand Challenge」、International Conference on Control, Automation, and Systems、(2004)
【非特許文献6】T. Berglund、H. Jonsson、及びI. Soderkvist、「An Obstacle-Avoiding Minimum Variation B-spline Problem」、International Conference on Geometric Modeling and Graphics、(2003年7月)
【非特許文献7】D. Coombs、B. Yoshimi、T. Tsai、及びE. Kent、「Visualizing Terrain and Navigation Data」、NISTIR 6720、(2001年3月1日)
【非特許文献8】A. Kelly、「A 3d State Space Formulation of a Navigation Kalman Filter for Autonomous Vehicles」、CMU Robotics Institute, Tech. Rep.、1994
【非特許文献9】Drakunov, S.V.、「Sliding-Mode Observers Based on Equivalent Control Method」、Proceedings of the 31st IEEE Conference on Decision and Control (CDC)、Tucson、Arizona、1992年12月16日〜18日、2368-2370頁
【非特許文献10】Riekert及びSchunck「Zur fahrmechanik des gummibereiften kraftfahrzeugs」、in Ingenieur Archiv、vol. 11、1940、210-224頁
【非特許文献11】D. Bernstein、A students guide to classical control、IEEE Control Systems Magazine、vol. 17、96-100頁(1997)
【非特許文献12】DeCarlo R、及びS. Zak、S.V. Drakunov、「Variable Structure and Sliding Mode Control」、chapter in The Control Handbook a Volume in the Electrical Engineering Handbook Series、CRC Press, Inc.、1996
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、乗物の操縦中の人間の欠如(deficiencies)に対処するにせよ、人間による操縦が好ましくない環境的に危険な状況にあるにせよ、乗物の経路中の静止物体及び移動物体、または経路に入ってくる移動物体を乗物が識別するシステム及び方法を有する必要性がある。
【0009】
自律運転乗物、及びレーザ検出、及び視覚化システムの開発に関する、以下の参照論文などの多数の論文が報告されており、それら全ては、参照により本明細書に組み込まれる。
1)H. Wang、J. Kearney、J. Cremer、及びP. Willemsen、「Steering Autonomous Driving Agents Through Intersections in Virtual Urban Environments」、2004 International Conference on Modeling, Simulation, and Visualization Methods, (2004)
2)R. Frezza、G. Picci、及びS. Soatto、「A Lagrangian Formulation of Nonholonomic Path Following」、The Confluence of Vision and Control、(A. S. Morseら(編)、Springer Verlag、1998)
3)J. Shirazi、Java(登録商標) Performance Tuning、(OReilly & Associates、2000)
4)J. Witt、C. Crane III、及びD. Armstrong、「Autonomous Ground Vehicle Path Tracking」、Journal of Robotic Systems、(21(8), 2004)
5)C. Crane III、D. Armstrong Jr.、M. Torrie、及びS. Gray、「Autonomous Ground Vehicle Technologies Applied to the DARPA Grand Challenge」、International Conference on Control, Automation, and Systems、(2004)
6)T. Berglund、H. Jonsson、及びI. Soderkvist、「An Obstacle-Avoiding Minimum Variation B-spline Problem」、International Conference on Geometric Modeling and Graphics、(July, 2003)
7)D. Coombs、B. Yoshimi、T. Tsai、及びE. Kent、「Visualizing Terrain and Navigation Data」、NISTIR 6720、(2001年3月1日)
8)Jenkinsらの米国特許第5,644,386号
9)Andressenの米国特許第5,870,181号
10)Krasutskyらの米国特許第5,200,606号
11)Ruffらの米国特許第6,844,924号
【0010】
こうした研究にも関わらず、適当な視覚化、障害物識別、そして障害物回避のシステム及び方法は、特に都市部での自律的な方向調整(autonomous direction)に関して、乗物の動作を制限する問題なしに実現されていない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施例では、ナビゲーション及び制御システムは、乗物の位置及び進行方向を示すポジション信号を生成するように構成される1つまたは複数のポジションセンサを含む。このシステムは、入力を有し、乗物の動作を制御する出力を生成する1つまたは複数の動作制御機構を含むと共に、動作制御機構から遠隔配置される内蔵式自律型制御器を含む。自律型制御器は、ポジションセンサからポジション信号を受信し、乗物の更新された移動経路を定める動作制御信号を生成するように構成されるプロセッサと、ポジションセンサ、動作制御機構、及びプロセッサの間で通信を行うプログラマブルインタフェースとを含む。プログラマブルインタフェースは、ポジションセンサからのプロセッサへの入力を正規化し、動作制御機構への入力として加えられる適合する動作制御信号を生成するように構成され、それによって内蔵式自律型制御器は、様々な異なるセンサ及び異なる動作制御機構と共に動作するように構成可能である。
【0012】
本発明の一実施例では、乗物をナビゲーション及び制御する方法は、乗物の位置及び進行方向を示すポジション信号を生成する段階と、プログラマブルインタフェースによってポジション信号を正規化して、正規化されたポジション信号を生成する段階と、正規化されたポジション信号から動作制御信号を生成する段階と、プログラマブルインタフェースによって動作制御信号を正規化して、乗物の更新された移動経路に沿って乗物の動作を制御する正規化された動作制御信号を生成する段階とを含む。
【0013】
前述の全般的な本発明の説明と以下の詳細な説明は共に、例示的なものであり、本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【0014】
本発明のより完全な理解、及び本発明の多くの付随的な利点は、そのことが、添付図面と併せて検討する場合に以下の詳細な説明を参照することによってより良く理解されるときに、容易に得られよう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】二次元(2D)のスキャンが、乗物の所定の軸に直交する平面のセクタ内で行われる、本発明の一実施例による自律乗物の概略説明図である。
【図1B】三次元(3D)のスキャンが、スキャンを乗物の所定の軸に直交する平面から外へ移動させることによって行われる、本発明の一実施例による自律乗物の概略説明図である。
【図2】本発明の一実施例によるエミッタ及び検出器システムの概略説明図である。
【図3A】(1)本発明の一実施例における一方のレーザスキャナシステムによってスキャンされる一方のエリアの概略図である。(2)本発明の一実施例における別のレーザスキャナシステムによってスキャンされる相補的なエリアの概略図である。
【図3B】スキャニングシステム及び光学画像化システムを含む本発明の一実施例による自律乗物の概略説明図である。
【図4A】本発明の統合自律乗物システムプラットフォームを示すハードウェア概略図である。
【図4B】本発明の自律乗物を制御する複数のプロセッサの相互接続を示す機能概略図である。
【図4C】自律乗物システムプラットフォームの構成に関してユーザに与えられるグラフィカルディスプレイのスクリーンショットである。
【図5A】その中ではGPS信号が完全に失われているトンネルを通って移動するときに、本発明の自律乗物の動作中にステアリング制御器から集められたデータのグラフである。
【図5B】その中ではGPS信号が完全に失われているトンネルを通って移動するときに、本発明の自律乗物の動作中にステアリング制御器から集められたデータのグラフである。
【図5C】その中ではGPS信号が完全に失われているトンネルを通って移動するときに、本発明の自律乗物の動作中にステアリング制御器から集められたデータのグラフである。
【図6A】本発明の一実施例による可変構造オブザーバアルゴリズムの利用の説明図である。
【図6B】元の速度計画、及び観測した障害物を考慮に入れる補正経路を示す例示的なS−T線図である。
【図6C】一実施例のVPP計算プロセスを示すフローチャートである。
【図7】都市環境における本発明の乗物のステアリング制御器についての標準偏差を示すグラフである。
【図8】ヘアピンターンを含むスラロームコースを一定速度30km/時で通り抜ける間でも、計画経路から25cm未満の標準偏差が本発明の自律乗物によって維持されることを示すグラフである。
【図9】本発明のレーザスキャニングシステムからの速度値のフィルタリングの図である。
【図10】自律乗物の軌跡の予測についての完全に非ホロノミックなモデルの概略図である。
【図11】自律乗物の軌跡の予測についての一部非ホロノミックなモデルの概略図である。
【図12】AVSコンソールの概略図である。
【図13】本発明に適しているコンピュータシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここで、いろいろな図の全体を通じて同じ参照数字が同一または対応する部分を示している図面、より詳細には図1Aを参照すると、図1Aは、一実施例における、乗物10の上部に取り付けられた画像化センサ8を示しており、二次元(2D)のスキャンが、ここでは説明のために「垂直」スキャン平面と呼ばれる乗物10の所定の軸に直交する平面11のセクタ内で行われる。この画像化センサ及びその動作は、米国特許出願第11/376,160号により詳細に説明されている。この画像化センサは、本発明に使用できる画像化センサの一例に過ぎない。
【0017】
それでも、ここでの説明は、本発明の応用例についてのあるコンテクストを与えるために画像化センサ8の動作を簡単に概説する。一実施例では、画像化センサ8は、画像化センサ8から乗物10の周りの環境の中にレーザパルス(または光)14を送出する(図2に示すような)エミッタ12を含む。図1Aに示すように、レーザ(または光)パルス14は、垂直スキャン平面11の中に放出される。三次元(3D)画像を作成するために、平面11の内外で画像化センサ8をパン(首振り)させて、図1Bに示すように3Dスキャニング体積16を作成する。画像化センサ8は、物体22から反射した光を検出することによって乗物10近くの環境中の(図1Bに示すような)物体22を検出する。
【0018】
本発明の一実施例では、自律乗物10は、以下で詳細に説明する2つのレーザスキャナシステム40を使用する。
【0019】
図2に示すように、画像化センサ8は、エコー信号20の戻りを検出する検出器18を含む。画像化センサ8は、レーザパルス14のタイミング及び放出を制御し、レーザパルス14の放出をエコー信号20の受信と関連付けるためにプロセッサ24を利用する。プロセッサ24は、乗物に搭載されていてもよく、または画像化センサ8の一部であってもよい。例示的なプロセッサ及びその機能の詳細は後で提供される。
【0020】
例示的な例では、エミッタ12からのレーザパルス14は、ビーム拡大器13a及びコリメータ13bを通過する。レーザパルス14は、固定ミラー15aで回転ミラー26に反射され、次いでレンズ27a及び望遠鏡27bを通じて送られて、直径1〜10mmを有するレーザパルス14のビームを形成し、合成三次元視野について対応する分解能を与える。望遠鏡27bは、物体22から反射した光を集める働きをする。
【0021】
本発明の一実施例では、検出器18は、物体から反射されて検出器に戻るレーザ光を背景光から区別するために、放出光の波長の光だけを検出するように構成される。したがって、本発明の一実施例では、画像化センサ8は、レーザパルス14を送出し、物体が検出器18の感度の範囲内であれば、このレーザパルス14が物体22によって反射され、検出器18によって測定されることによって動作する。レーザパルスの放出と受信との間の経過時間により、プロセッサ24を使用して物体22と検出器18との間の距離を計算することが可能になる。本発明の一実施例では、光学系(すなわち、13a、13b、15a、26、27a、及び27b)は、ビームを図1Aに示すセクタの中に瞬間的に向けるように構成され、検出器18は、図1Aに示すそれぞれの角度方向αに対応する所定の角度位置で受信信号を受信するためのフィールドプログラマブルゲートアレイである。
【0022】
回転ミラー26によって、レーザパルス14は、図1Aに例示するように平面11内で放射状セクタαをくまなく掃引される。本発明の一実施例では、画像化センサ8の前の視野内で物体のマッピングを達成するために、回転ミラー26は、30〜90度の角変位にわたって、毎秒100〜10000度の角速度で回転させられる。
【0023】
三次元(3D)画像を作成するために、本発明の一実施例では、平面11の内外で画像化センサ8をパン(または首振り)させて、図1Bに示すように3Dスキャニング体積16を作成する。説明のために、図1Bは、(垂直スキャン方向に)角度α及び(水平スキャン方向に)角度βによってスキャニング体積16を定める。前述の通り、角度αは、毎秒100〜1000度の角速度で30〜70度である。角度β(すなわち、パン角度)は、毎秒1〜150度のパン速度で1〜270度である。典型的には、組み合わせた画像化センサ8は、毎秒3回以上3Dスキャニング体積16を完全にスキャンすることができる。
【0024】
本発明の一実施例では、乗物からの物体の距離及び乗物からの物体の方向に基づいて視野内の物体の地理空間位置を計算するために、瞬間的な乗物ポジションの地理空間ポジションデータが、プロセッサ24によって利用される。図2に示すように、プロセッサ24は、毎秒何回も乗物の位置、進行方向、高度、及び速度をプロセッサ24に伝送する、例えば全地球測位システム(GPS)及び/または慣性航行システム(INS:inertial navigational system)などのリアルタイム測位装置25と通信する。典型的には、リアルタイム測位装置25は、乗物10に取り付けられ、(乗物の位置、進行方向、高度、及び速度などの)データを乗物10にある全ての画像化センサ8(及び全てのプロセッサ24)に伝送する。
【0025】
市販のGPSユニット及びINSユニットの場合、プロセッサ24は、10cmより良い精度まで視野内の物体のポジションを決定することができる。本発明の一実施例では、乗物の経路内の障害物のマップを作成するために、プロセッサ24は、GPSポジション、LADAR測定値、及び偏向角データを関連付ける。マップの精度は、測位装置25からのデータの精度に依存する。以下は、そのようなデータの精度についての説明のための例であり、すなわち、ポジション10cm、前進速度0.07km/時、加速度0.01%、ロール/ピッチ0.03度、進行方向0.1度、横方向速度0.2%である。
【0026】
本発明の一実施例では、(市販の統合された)カルマンフィルタは、全てのデータを通じてプロセッサ24への入力をソートする。カルマンフィルタは、ノイズデータの反復測定に基づいてシステムの状態を推定する既知の方法である。この場合には、カルマンフィルタは、各タイプのセンサに固有のノイズのタイプを考慮に入れ、次いで実際のポジションの最適推定値を構築することによって、よりさらに精確に乗物ポジションを推定することができる。そのようなフィルタリングは、A. Kelly、「A 3d State Space Formulation of a Navigation Kalman Filter for Autonomous Vehicles」、CMU Robotics Institute, Tech. Rep.、1994によって記載されており、その内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0027】
測距測定を行うために、市販のコンポーネントが、エミッタ12及び検出器18に用いられてもよい。一実施例では、エミッタ12、検出器18、及び関連した光学系が、レーザレーダ(LADAR:laser radar)システムを構成するが、例えば、光検出測距(LIDAR:light detection and ranging)センサ、レーダ、またはカメラなどの正確な距離測定を行うことができる他のシステムが、本発明に使用されてもよい。LIDAR(光検出測距、またはレーザ画像化検出測距)は、レーザパルスを用いて物体または表面までの距離を決定する技術である。
【0028】
図3A(1)は、本発明の一実施例における一方のレーザスキャナシステムによってスキャンされる一方のエリアの概略図である。図3A(2)は、本発明の一実施例における別のレーザスキャナシステムによってスキャンされる相補的なエリアの概略図である。各レーザスキャナシステム40は、センサの前で例えば270°の弧を掃引するようにレーザパルス14を放出するために、回転ミラーと併せて4つのレーザを使用する。本発明は、厳密に270°の弧を掃引することに限定されるものではなく、180°〜270°〜360°の他の弧の範囲が使用されてもよい。この例では、ビームは、ミラーが、真正面に向けられる(directly ahead)とき、及び両側にちょうど0°に向けられるときに、0.8°だけずらされる4つの異なるスキャン平面上のユニットから発する。このように複数のレーザを使用することによって、スキャナシステム40は、乗物が操縦中にピッチ及びロールするときでも十分な視野を維持することができる。
【0029】
スキャナシステム40は、地面から異なる高さに取り付けられてもよい。例えば、センサを0.5メートルという比較的低い高さに取り付けることによって、センサは、乗物上でセンサがより高く上に取り付ける場合よりも効果的により小さい障害物を検出することができる。一方、いくつかの水平に取り付けたセンサは、それらのスキャン平面がしばしば、乗物がピッチしているときに地面によって遮られるので、低く取り付けられるときはそれほど効果的でない。
【0030】
従来、完全な360°のスキャナ範囲を必要とした乗物は、乗物の前部で1つのスキャナシステム、及び乗物の後部で1つのスタンドアロン型のスキャナを使用した。2つのECU(前部センサ用に1つ、及び後部センサ用に1つ)を用いるこの手法は、システムが単一障害点に対して弱いままである。本発明は、完全な360°の視野をそれぞれが有する2つのスキャナを使用することによって単一障害点の問題に対処し、それによって周囲環境の冗長ビュー(redundant view)を提供する。各スキャナシステムは、図3A(1)及び図3A(2)に示すように、それ自体のECUと共に、乗物の前隅の一方にあるセンサと、乗物の反対の後隅にあるセンサとを有する。実際には、図3Bは、スキャニングシステム(例えば、2つのレーザスキャナシステム40など)及び光学画像化システム42を含む本発明の一実施例による自律乗物の概略説明図である。
【0031】
いくつかの重大な技術的な課題が、都市部で動作する自律乗物に提示されている。これら課題は、本発明の革新的なハードウェア及びソフトウェアの設計によって対処される。1)GPSデータは、都市環境に存在するビルディング及び他の障害物によりしばしば利用できないことになる。自律乗物のミッションの要素の多くは、GPS座標によって特定されるので、本発明ではGPSデータを補完するために、追加の位置推定情報が使用され得る。2)都市環境では、静止した障害物と共に多くの移動中の乗物が存在している。本発明の一実施例では、乗物のソフトウェアは、他の乗物を追跡し、他の乗物と交信し、他の乗物の移動を時々予測する。3)自律乗物は、当てはまる交通法全てに常に従わなければならない。4)都市環境における自律乗物は時々、他の乗物の追い越し、駐車、Uターンの実行、対向車線の車の流れを通り抜ける左折の実行(右側通行の場合)、及び交通渋滞の通り抜けなどの高度な操縦を行う。5)都市環境の一部のエリアでは、道路は、まばらな一連のウェイポイント(waypoint)だけで特定されることになり、本発明の自律乗物は、センサを利用して、辿る適切な経路を検出する。
【0032】
これら課題は、特に交差点において、この環境中の自律乗物と他の乗物の両方の状態を追跡するソフトウェアシステムによって本発明において対処される。
【0033】
システムコンポーネント
【0034】
作業乗物:2005年の“Ford Escape Hybrid(フォードエスケープハイブリッド)”(商標)(以下、作業乗物(working vehicle)と呼ばれる)が、本発明の画像化センサ8を備えるように改良された。この作業乗物は、電気エンジンがほぼ常に動作し、ガスエンジンが、余分な馬力の供給または電気エンジンのバッテリの再充電を、自動的に開始及び停止する、ハイブリッド駆動システムを使用した。330ボルトのバッテリによって電力が供給される作業乗物の電気系統は、1300ワットを超える電力を作業乗物に取り付けた装置に供給する。
【0035】
この作業乗物は、車を物理的に制御するために、“Electronic Mobility Controls(EMC)”社から市販されているアドバンスド電気自動車インタフェース技術(AEVIT:Advanced Electronic Vehicle Interface Technology)の「ドライブバイワイヤ」システムを利用した。このAEVITシステムは、ステアリングホイールを回し、ギアを切り換え、スロットルを働かせ、ブレーキを働かせるのに冗長なサーボ及びモータを使用する。EMC社(EMC Corporation)から市販されているこの解決策は、ステアリングコラム、ブレーキペダル、スロットルワイヤ、緊急ブレーキ、及びオートマチックトランスミッションに取り付けたアクチュエータ及びサーボを含む。AEVITシステムは、乗物のターンシグナル及び点火を制御することもできる。電子式運転支援制御システムを用いることによって、乗物の全ての面が、1つの完全に統合したシステムによって制御され、全般的な複雑さを減少させ、障害点をなくす。電子式運転支援制御システムは、起動されると、乗物の主ブレーキシステムを働かせ、次いで乗物の点火をオフにする自律乗物用の緊急停止(Eストップ)機構も設けていた。最後に、わずかに遅れた後、乗物の緊急ブレーキが働かされ、この緊急ブレーキが保持される。これにより、Eストップコマンドを受信すると乗物が効果的に停止でき、乗物が坂にある場合でも停止したままにすることができることが、確かなものとなる。これら能力は、本発明において任意とみなされる。
【0036】
ハードウェアプラットフォーム:本発明の自律乗物システム(AVS:Autonomous Vehicle System)プラットフォームは、様々な自律運転応用例のために設計されたものである。AVSプラットフォームは、ハードウェア層及びソフトウェア層を含む。ハードウェア層は、プリント配線板または他の内蔵式の配線及び装置の構造体(self-contained wiring and device construct)を含み、このプリント配線板または他の内蔵式の配線及び装置構造体は、GPS受信機または障害物センサなどの外界センサへの電力供給、及び、GPS受信機または障害物センサなどの外界センサとの通信の両方を行うための配線と、入力を有し、乗物の動作を制御する出力を生成する動作制御機構とを含む。一実施例では、この目的のために、特定用途向け集積回路(ASIC)が使用され得る。
【0037】
図4Aは、本発明の統合自律乗物システムプラットフォームを示すハードウェア概略図である。図4Aは、ユーザまたはプログラムインタフェース52、コンピュータ53、54、フィールドプログラマブルゲートアレイデバイス56、安全無線58、ハードウェアウォッチドッグ60、イーサネット(登録商標)リンク装置62、配電コンポーネント64、緊急停止(Eストップ)論理デバイス66、内部及び外部のコントローラエリアネットワーク(CAN:controller area networks)68、デジタル及びアナログの入出力装置70、ならびにRS−232ポート及びRS−422ポート80を備えるAVSプリント配線板50を特に示す。プリント配線板上へこれらコンポーネントを統合することによって、自律乗物システム(AVS)プラットフォームは、幅広い様々なセンサと、センサデータを処理し自律乗物を指示する計算能力とを統合するためのハードウェアを提供する。また、物理配線の大部分を、手による配線ではなくプリント配線板上に実装することによって、本発明のAVSプラットフォーム中のハードウェア層は、信頼性の向上を示した。
【0038】
さらに、本発明以前は、自律乗物は、特定のセンサならびに駆動制御及びステアリング制御のために特別に設計または改造されていた。大抵がプロトタイプであるこれらの乗物は、自動車の技術者が気付いていた既知の課題への特定の解決を何度も目標として、産業がこれら乗物を開発したときに、自律乗物の開発における特定の問題に対処するために使用された。したがって、そのときには、より普遍的な自律乗物制御プラットフォームを生み出す現実的なはずみとなるものはなかった。さらに、どの種類のセンサ及びどの種類の駆動制御システムを組み込むかという未解決の問題によって、自律乗物を感知及び制御するための無数の選択肢に性能が適合可能であるシステムの設計がそうした普遍的な解決策を検討するには、フィールドがあまりにも未熟である状態に取り残された。
【0039】
したがって、本発明の一実施例では、ユーザまたはプログラムインタフェース52によって、ユーザは、特定のセンサ及び特定のドライブステアリング制御のための構成可能なインタフェース装置をプログラムすることができる。例えば、AVSプリント配線板50を自律乗物に装着する技術者は、自律乗物上の特定のセンサ一式のためのフィールドプログラマブルゲートアレイデバイス56(すなわち、構成可能なインタフェース装置)をプログラムし、特定の駆動制御及びステアリング制御、例えば、AEVITドライブバイワイヤシステム(すなわち、動作制御機構)に必要とされる制御などのためにプログラムすることになる。別の例では、現場技師または整備技師が、自律乗物に新しいセンサを装着し、そのときに新たに装着したセンサに適合するようにフィールドプログラマブルゲートアレイデバイス56を再プログラムしてもよい。
【0040】
一実施例におけるプリント配線板50は、安全無線58用のEストップ無線と、(図4Aに示すコンピュータのうちの1つを構成する)AEVITドライブバイワイヤシステムとに接続されていた。一実施例におけるハードウェア層は、ハードウェアの動作を監視するプログラマブル論理デバイス(すなわち、ハードウェアウォッチドッグ60)を含み、故障したコンポーネントの(例えば、配電コンポーネント64を介して)電源を切って電源を再投入することができ、またはもし致命的なエラーが検出されたら(例えば、Eストップ論理デバイス60介して)乗物を停止することさえもできる。一実施例では、AVSハードウェア層は、コンピュータ53、54用に、QNXハードリアルタイムオペレーティングシステム(QNX hard real-time operating system)を実行する“Intel(登録商標) Core Duo”コンピュータを備える。これらコンピュータが、AVSソフトウェアプラットフォームを実行するために使用された。
【0041】
イントラシステム通信:図4Bは、コントローラエリアネットワーク(CAN)とAVSソフトウェア/ハードウェアとセンサとの間のプロセスの関係を示す機能概略図である。AVSプラットフォームの個々のコンポーネント内の通信は、含まれるメッセージの致命度(criticality)及び時間の正確さ(punctuality)に基づいてセグメント化されてもよい。一実施例では、AVSソフトウェアとドライブバイワイヤシステムとの間の乗物制御メッセージは、独立したコントローラエリアネットワーク(CAN)を介して伝送され得る。一実施例におけるCAN68は、統合された優先システムを有し、この統合された優先システムは、予測可能なリアルタイム通信(例えば、駆動信号及び制御信号)を実現するとともに、電磁干渉に対するロバスト性を提供する。本発明のある優先制御システムでは、緊急制御、及び必要ならば乗物の停止は、最高の優先度を得ると共に、CANバス上の任意の他の通信に取って代わる。数少ない緊急メッセージの存在がなければ、計画ソフトウェアとドライブバイワイヤシステムとの間の制御通信が、所定の時間の間、第2の優先度として妨げられずに生じ得る。
【0042】
一実施例では、プリント配線板50上で、分離したCANバスが、車載用に特別に設計されたセンサ(例えば、センサ信号)との通信に用いられ、これは、他の形態の通信が可能であってもなくてもよい。制御ネットワークをセンサに専念させることによって、制御パケットは、入力センサパケットを先取することが防止される。加えて、この分離は、センサネットワーク上の不調の装置が制御CANバスを混乱させることにより自律乗物の安全動作が損なわれる可能性がある場合、そのような混乱を防止するのに役立つ。
【0043】
一実施例では、プリント配線板50上で、センサと計画コンピュータ53、54との間のより高帯域の通信が、イーサネット(登録商標)リンク装置62を介して行われる。AVSプラットフォームに結合された高精度のセンサは、イーサネット(登録商標)リンク装置62によってもたらされる高帯域、少ない待ち時間、及び耐故障性によく適している大量のデータを生成することができる。一実施例では、位置推定センサからのポジションデータと障害物スキャナからの物体データの両方が、それらのデータの確定的伝送(deterministic transmission)の必要性を否定するタイムスタンプを含む。センサから見た周囲の状況(センサの世界観:sensors’ view of the world)のいずれか1つを復元するために、ポジションデータ及び障害物データは、トリップ計画コンピュータ(trip planning computer)53、54内で再構築及び再配列され得る。
【0044】
一実施例では、プリント配線板50上で、フィールドプログラマブルゲートアレイデバイス56は、データがコンピュータ53、54に伝送される前に、ポジション及び移動の情報を集め、慣性系におけるドリフト及びGPSシステムの機能停止を補償することができる。次いで、補正データは、イーサネット(登録商標)及びCANを介してコンピュータ53、54に送信される。この補正データは、専用CANバスを介して障害物スキャナにも伝送される。乗物のポジション、速度及び向きが、スキャナの障害物データを補正するのを場合によっては助けるために使用できるように、このデータは、障害物スキャナに送信される。次いで、コンピュータ53、54は、障害物、ロボットの位置、及びミッションのウェイポイントを同じ座標のセットに関連付けることができる。フィールドプログラマブルゲートアレイデバイス56は、ポジションセンサ、動作制御機構、及びプロセッサの間で通信を行うことができ、1)ポジションセンサまたは物体センサからのプロセッサへの入力を正規化し、2)動作制御機構(例えば、上述のアドバンスド電気自動車インタフェース技術(AEVIT:Advanced Electronic Vehicle Interface Technology)など)への入力として加えられる適合する動作制御信号を生成することができる。このように、プリント配線板50(すなわち、内蔵式自律型制御器)は、様々な異なるセンサ及び異なる動作制御機構と共に動作するように構成可能である。
【0045】
したがって、統合プリント回路プラットフォームの実施例は、新規な構成を通じて本発明の自律乗物に独特の能力をもたらし、この新規な構成は、自律乗物に搭載されているセンサから入力を受信し、ある到着地から別の到着地までの移動経路を識別し、静止障害物及び移動障害物、ならびに移動経路に沿ったウェイポイントを識別し、静止障害物と移動障害物の両方を避けるように移動経路を補正するように構成されるプロセッサを備える。この統合プリント回路プラットフォームは、機能的に中心の位置にプログラマブル装置を含み、このプログラマブル装置は、自律乗物センサからの入力、ならびに駆動制御及びステアリング制御への出力の両方を受け付けると共に正規化する能力を提供する。このようにして、プラットフォームは、1)プリント配線板上に様々な入出力装置を備え、2)ユーザが、プラットフォームを、センサ及びステアリング制御の特定のセット用に「カスタマイズする」ことを可能にする、インタフェースを与えることによって、幅広い様々な自律乗物センサに対応する能力を提供する。
【0046】
上記の通り、ユーザまたはプログラムインタフェース52は、FPGA56が自律乗物に備えられている様々なセンサならびに駆動制御及びステアリング制御に対応するようにプログラムされることを可能にする機構を、ユーザに提供する。図4Cは、ユーザインタフェースにアクセスするとユーザに与えられるグラフィカルディスプレイ70のスクリーンショットである。グラフィカルディスプレイ70は、例えば、電圧(V)、乗物CANフィードバック、EMC CANフィードバック、及び比例ゲイン制御などの欄をユーザが選択することを可能にする調整部を含む。図4Bに示すように、ユーザまたはプログラムインタフェース52は、コンピュータ53または54の一方(または両方)との交信、あるいはフィールドプログラマブルゲートアレイデバイス56との直接交信によって、自律乗物システムプラットフォームをユーザが設定することを可能にする。
【0047】
センサ:自律乗物は、いかなる環境でも安全にナビゲートするために、周囲環境の精確な描写(picture)及び自律乗物自体のグローバルポジションを必要とする。都市環境で動作する場合は、課題が追加される。以下は、本発明の様々な実施例において本発明の自律乗物に装着される様々なタイプのセンサを説明する。
【0048】
位置センサまたはポジションセンサ:都市部に入る自律乗物またはロボットの課題の1つは、自律乗物またはロボット周囲の世界のマップを構築し、マップ内で自律乗物またはロボット自体の位置を突き止めることにある。障害物及び車線検出センサから集められるデータについては、世界内のどこかの絶対位置または乗物に対するどこかの位置が参照される。乗物の位置、進行方向、及び速度についての精確な情報がなければ、他のデータは、無益になり得る。世界内でルートを計画すること、及び車の流れと併せてルートを計画することは、乗物について集められた全情報を一組のグローバル座標に変換することによって、単純化される。この変換を行うためには、データが集められたときの乗物の位置を正確に知ることが必要である。この情報から、自律乗物の周囲のエリアのマップを作成することができ、このマップから自律乗物の経路を計画することができる。
【0049】
基本的には、自律乗物の経路の計画、及びセンサから集められるデータの合成には、正確な位置推定情報が必要である。上記の作業乗物は、乗物位置推定を行うために(すなわち、ポジショニングデータを与えるために)、“Oxford Technical Solutions”社製のRT3000(商標)測位装置を利用した。RT3000(商標)は、10センチメートル以下の位置決め精度、及び0.1度以内までの進行方向測定値精度を与えるために、Omnistar(商標)HPディファレンシャルGPS信号を使用する。RT3000(商標)の統合慣性航行システム(INS)は、RT3000(商標)が実質的に性能劣化なしで30秒までのGPSの機能停止を耐え抜くことを可能にする。INSは、加速度及びロールの情報を与える。慣性系内の加速度計及びジャイロスコープに加えて、フォードエスケープハイブリッドのリアのABS車輪速度センサのうちの1つからアンチブレーキシステム(ABS:anti-braking system)のインタフェースボードを介して入力される車輪速度が、RT3000センサに与えられる。AVSインタフェースボードは、“Ford Escape”のABSセンサから“Ford Escape”のECUへの通信信号を読み、通信信号をGPSが使用できる信号に変換する。RT3000センサは、カルマンフィルタリングとRT3000センサに内部で与えられるアルゴリズムとの組み合わせを用いて各ソースからのデータを内部的に統合する。
【0050】
RT3000センサは、本発明において、効果的な位置推定センサの一例として使用されている。GPS信号が一部または完全に失われることになる場合でも、RT3000センサは、失った信号を適切に補償することができる。図5A〜図5Cは、自律乗物が、その中では10〜15秒の間GPS信号が完全に失われているトンネルを通って移動する間に、ステアリング制御器から集められたデータを示す。GPS信号の再取得時に乗物がたった50センチメートルだけ所望の経路から外れていたことは、RT3000センサの信頼性と、制御システムの能力がRT3000センサから発するデータに関連してよく働いていることの両方を語っている。これらの図では、Y誤差は、制御システムアルゴリズムへの入力信号であり、経路誤差は、乗物の中心線が所望の経路から外れている実際の量であり、ステアリング角は、乗物のフロントタイヤの角度である。Y誤差信号が増大すると、ステアリング角は、実際の経路誤差を最小にしようとするように調整される。
【0051】
障害物または物体センサ:概して上述したような一実施例では、本発明の自律乗物は、自律乗物の主要な障害物回避センサとして、2つのIbeo ALASCA XTフュージョンシステムセンサ(Ibeo Automobile Sensor GmbH、Merkurring 20, 22143 Hamburg, Deutschland)を使用する。各ALASCA XTフュージョンシステムセンサは、2つのIbeo ALASCA XTレーザスキャナと、1つのIbeo電子制御装置(ECU)を含む。作業乗物中の各ALASCA XTレーザスキャナは、センサの前の270°の弧を掃引するための回転ミラーと併せて4つのアイセーフレーザ(eye-safe laser)を使用した。ALASCA XTレーザスキャナの4つのビームは全て、ミラーが、ちょうど真正面に向けられているときに、そして両側にちょうど0°に向けられているときに、0.8°だけずらされる4つの異なるスキャン平面上のユニットから発する。
【0052】
この実例におけるALASCA XTレーザスキャナは、その視野の柔軟性のため、地面から約0.5メートルという高さで乗物に強固に取り付けられた。他の高さも本発明に適している。0.5メートルという比較的低い高さにセンサを取り付けることによって、センサは、乗物上でセンサがより高く上に取り付ける場合よりも効果的により小さい障害物を検出することができる。一部の水平に取り付けたセンサは、それらのスキャン平面がしばしば、乗物がピッチしているときに地面によって遮られるので、この低さに取り付けられるときはそれほど効果的でない。
【0053】
ALASCA XTレーザスキャナは、単一のレーザビームから複数のエコーを検出するその能力により、幅広い天候条件で動作することができる。ビームが、1枚のガラスまたは雨滴などの透明な物体に到達する場合、ビームは、部分エコーを生成し、この部分エコーは、レーザスキャナによってそのようなものとして認識され、そのようなものとしてみなされる。この複数ターゲット能力(Multi-Target Capability)により、ALASCA XTレーザスキャナは、暴風雨など多くの異なるタイプの悪天候で動作することが可能になる。
【0054】
ALASCA XTレーザスキャナの別な利点は、乗物の周囲の物体のマップを作成するために、2つのALASCA XTセンサからレーザの角度及び測距情報を取り入れる電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)の能力である。フィルタリングして雨滴や地面などの関心のないレーザのエコーを取り除いた後、ALASCA XTレーザスキャナ制御システムは、両レーザスキャナからのデータを組み合わせ、次いでエコーの群の周りでポリゴンを適合させる。次に、ECUのソフトウェアアルゴリズムは、各障害物の速度ベクトルを計算し、それ自体の固有の識別番号で各障害物を識別する。通信オーバーヘッドを減少させるために、ECUは、特定の優先度分類アルゴリズムを満たす障害物を伝えるだけである。本発明の一実施例では、自律乗物は、この分類のための主要な基準として物体速度と乗物からの距離の両方に基づくアルゴリズムを使用する。得られるポリゴンは、CANを介してコンピュータ53、54に伝送される。本実施例では、この処理の全ては、ALASCA XTレーザスキャナのECU上でローカルに行われるので、コンピュータ53、54は、この追加の処理オーバーヘッドを免れる。
【0055】
両方の障害物検出システム40から返される障害物について集めたものは、乗物の障害物データベース(obstacle repository)の中に取り入れられる。一方のスキャナシステムが、障害物のリストを返すことができない場合には、乗物は、その視野のいずれも失うことなく他方のスキャナシステムが切れ目なく動作し続ける。一方のスキャナシステムの障害が検出されると、AVSプラットフォームのハードウェア層は、リカバリが再起動で行われるかどうか確かめるためにシステムをリブートすることができる。
【0056】
本発明の別の実施例では、“Velodyne”社のLIDAR(例えば、モデルHDL−64E、360度の水平視野及び26.8度の垂直視野を提供する64個の要素のLIDARセンサ)が、障害物検出器40として使用される。このLIDARシステムは、5〜15Hzのフレームレートで、毎秒130万個のデータ点にわたっていることを特色とする。LIDARシステムが生成する点群は、地形情報及び環境情報をもたらす。距離データと強度データの両方は、イーサネット(登録商標)出力パケットペイロードに与えられる。HDL−64Eは、環境についての情報に関して実に独占的に信頼され得るものであり、したがって、上記の他方のセンサに冗長性を与える。HDL−64Eセンサは、64個の等間隔の角度の細分(約0.4°)で26.8度の垂直視野(仰角)、及び+2°〜−24.8°で360度の視野(方位角)、及び0.09度の角度分解能(方位角)を与える64個のレーザを利用する。HDL−64Eの精度は、2cm未満である。HDL−64Eは、5〜15Hz(ユーザ選択可能)のレートで視野を更新し、舗装道路について50メートルのレンジ(約0.10の反射率)、そして車及び葉について120メートルのレンジ(約0.80の反射率)を有する。
【0057】
車線/道路検出センサ:まばらに集まっているウェイポイントだけで車線/道路を識別する場合、場合によっては、自律乗物は、適切な車線/道路を見つけ、これに従わなければならない。この問題に対処するために、ビデオによる車線検出システム、例えば、“Iteris”社(Iteris, Inc.、Santa Ana、California)製のモデルLDWは、本発明の自律乗物の一実施例において画像化デバイス42として用いられた。“Iteris”社のLDWシステムは、光学センサ及び画像処理システムを使用して、車線マーキングを検出及び追跡する。LDWシステム中の画像化センサは、LDWシステムが車線マーキングを探す乗物の前方のエリアの二次元のデジタル化画像を作成する。作業乗物では、画像化センサは、フロントガラスの上部に装着されたが、前方を向く他のポジションも適当である。このビデオによる車線検出システムは、左右の車線マーキングの位置、左右の車線マーキングのタイプ(実線、破線など)、車線内の乗物の角度、及び車線の曲率を自律乗物に提供する。この情報は、CAN68bを介して毎秒25回のレートでAVSプラットフォームソフトウェアに与えられる。ビデオによる車線検出システムからのこの情報を使用して、現在の車線のモデルを構築し、この現在の車線のモデルは、車線モデルにより良く従うように乗物の計画経路を調整するために、乗物のソフトウェアシステムによって使用され得る。
【0058】
ソフトウェアプラットフォーム:自律乗物が都市環境で上手く動作するために必要なソフトウェアの容量及び複雑さは、ソフトウェアのアーキテクチャを容易に圧倒し得る。
【0059】
AVSソフトウェアプラットフォームは、多くの異なるタイプの自律乗物応用例に用いることができる汎用自律型応用例のフレームワークとして設計された。AVSソフトウェアプラットフォームは、(多くの他の基本的な自律乗物に必要なものと共に)センサ統合機能、障害物回避機能、ナビゲーション機能、安全システム、イベントロギングシステム、位置推定機能、リアルタイム乗物監視機能、及びネットワーク統合機能を提供する。
【0060】
作業乗物におけるAVSソフトウェアプラットフォームは、Java(登録商標)プログラミング言語を使用したが、本発明は、このプログラミング言語に限定されない。Java(登録商標)のプラットフォーム非依存性のため、同じコードベースが、信頼できると共に繰り返し可能な結果を伴って様々なハードウェアシステム上で実行することができる。下記のようなAVSソフトウェアフレームワークは、自律乗物応用例の設計の複雑さを低減するために、いくつかの異なるソフトウェア設計パターンまたは設計原理を使用する。これら設計パターンのそれぞれは、エンタープライズアプリケーション開発におけるソフトウェア開発の複雑さを低減し、そのソフトウェア開発の信頼性を改善することに成功していることが証明されている。
【0061】
本発明のAVSソフトウェアフレームワークに使用される主要なソフトウェア設計原理の1つは、「関心の分離」のパラダイムであり、この「関心の分離」のパラダイムは、大きな問題を、解決がより容易になるように設計される一組のゆるく結びついた下位の問題に分割することによって開発の複雑さを低減する。したがって、ソフトウェアシステムは、重複する量を最小にしてできる限り多くの別々のコンポーネントに分けられる。ソフトウェアを機能的に分離したコンポーネントに分けることによって、あるコンポーネントにおける軽い障害は、他のコンポーネントに悪影響を及ぼさないはずである。
【0062】
AVSソフトウェアフレームワークは、制御の反転(IoC:Inversion of Control)コンテナを中心としたアーキテクチャを用いて実現されている。制御の反転は、フレームワークが、個々のアプリケーションコンポーネントの実行を調整及び制御するコンテナとして動作する設計パターンである。アプリケーションではなくフレームワークが、コンポーネント同士をつなぎ、アプリケーション内の適切なコンポーネントへのルーティングイベントに関与するので、IoCフレームワークは、プリケーション設計を単純化する。AVSフレームワークではIoCコンテナが、スレッドスケジューリング、ログサービス、コンピューティングクラスタにわたってのアプリケーション資産の分散、耐故障性、及びネットワーク通信などの適切なリアルタイム自律乗物アプリケーションに必要なサービス全てを提供する。
【0063】
AVSソフトウェアフレームワークのスレッドスケジューリング能力は、自律乗物アプリケーションの開発を大きく向上させた。最も効果的である関心の分散のパラダイムのために、コンポーネントは、できる限り切り離されるべきである。理想的には、コンポーネントは、あるコンポーネント中の障害が、後のコンポーネントが打ち切られることになる実行を引き起こさないように、逐次的ではなく並列に実行しているべきである。AVSソフトウェアフレームワークは、複数のコンピュータにわたってでもそれ自体の実行スレッドとして各コンポーネントを自動実行し、分離したコンポーネント同士の間のデータの共用を透過的に調整する。AVSソフトウェアフレームワークは、これら制御システムのそれぞれが、精確な乗物制御のために正確なタイミングを必要とするので、自律乗物の動作に必要とされる多くの制御システムにとって有益である多くの異なるレベルのプロセッサの負荷の下で、設定した頻度でこれらコンポーネントを実行することもできる。
【0064】
一実施例におけるAVSソフトウェアフレームワークは、(図4Aに示すわずか2つのコンピュータ53、54の代わりに)1つまたは複数のコア埋込み型コンピュータ上で実行できる。実際には、3つのコア埋込み型コンピュータが、分散クラスタとして動作していた。クラスタ中の各コンピュータは、予め設定した時間的制約の内で自律型応用例の決定論的実行をサポートするために、AVSソフトウェアフレームワークのリアルタイム機能と結合されたハードリアルタイムオペレーティングシステムを実行する。リアルタイムサポートがイネーブルされると、プロセスの動作周波数は、大幅に安定する。AVSソフトウェアフレームワークのリアルタイム能力により、自律型応用例が、より首尾一貫して挙動し、ソフトウェアの問題の場合でも、安全監視装置及び低レベルドライブアルゴリズムなどのより高い優先度のコンポーネントが、適切に実行することが可能になることを確かにすることができる。
【0065】
ソフトウェア実装:ソフトウェアロジックが、AVSソフトウェアフレームワークのためのモジュールとして実装された。AVSソフトウェアフレームワークは、それ自体が独立した実行スレッドで、これらモジュールをそれぞれ実行することができ、AVSソフトウェアフレームワークは、複数のコンポーネント間の依存性を自動管理する。以下のサブセクションは、本発明において利用されるソフトウェアモジュールを説明する。
【0066】
ルート計画:環境のマッピング及び長距離のルート計画は、自律乗物の設計における重要事項である。利用した設計モデルは、論理マッピング及びルート計画からビジュアルマッピングを分離する。車載コンピュータによって実行される論理マッピング機能は、交差点コンポーネントの識別、センサにより見える陸標のマッピング、及び未定義マップエリアの補正を含む。未定義マップエリアエリアは、ロボット(すなわち、自律乗物)に与えられるマップが、現実世界の環境に十分に関係付けられていない領域からなる。この場合には、ロボットは、ロボットの移動経路に沿ってエリアを調査及び識別しなければならない。
【0067】
本発明の一実施例では、既存のマップを座標データに変換することは、測量などの他の方法よりも、ステアリング方向を得るのにより効率的なやり方であることが示された。場合によっては、既存のマップは、利用できない可能性がある。自律乗物が、「クローズした」コース(すなわち、物理的な境界またはソフトウェアが指示した境界によって設定したコース)上を動作するように設計されている場合、人間による乗物の制御が、自律乗物が、クローズしたコースをマップ出力しながら、自律乗物を普通に制御するために使用されてもよい。自律乗物は、自律乗物のGPS、障害物スキャナ、及び車線検出センサからの情報を関係付けることによって指定したコースをマップ出力することができる。
【0068】
コース、及びこのコースに沿ったウェイポイントを示す論理マップが得られると、この論理マップは、例えばルートネットワーク定義ファイル(RNDF:Route Network Definition File)形式で車載コンピュータ53、54に与えられるが、他の形式が使用されてもよい。2パスパーサ(two-pass parser)は、ウェイポイントの参照の全てが有効であることを検証する前に、ウェイポイントの全てを識別する。マップは、RNDF形式のオブジェクト指向適合物に記憶され、RNDFファイルから導かれるマップの特徴についての拡張を含む。
【0069】
RNDFのデータから得られる第1の導かれた特徴は、ストップウェイポイント、及び出口ウェイポイント/入口ウェイポイントを交差点にグループ化することである。以下は、例示的なマッピング/ウェイポイントアルゴリズムである。まず、アルゴリズムは、いずれかのストップウェイポイントを選び、次いでこの点から離れる出口と、この点に至る入口との全てを見つける。次に、交差点の出口ごとに、この出口に続くウェイポイントが入口である場合、入口/出口のペアが、交差点に加えられる。同様に、交差点の入口ごとに、入口に先立つウェイポイントが出口ウェイポイントである場合、出口/入口のペアが、交差点に加えられる。最後に、任意のストップまたは出口が、交差点の境界から一定の距離の範囲内である場合、これらストップまたは出口も、交差点に加えられる。各ストップまたは出口が、1つの交差点に単に属することを確かなものとする準備が行われる。
【0070】
RNDF内のデータから得られる第2の導かれた特徴は、ウェイポイント間の移動に関連したコストの記憶である。あるウェイポイントから次のウェイポイントまで運転するのに要する時間は、最適ルートを選ぶのに使用される基準値(metrics)の主要な候補である。時間基準値(Time metrics)は、ウェイポイント、出口、及びゾーンの対象に記憶される。ウェイポイントごとの初期コストは、区間の最大制限速度をウェイポイントとその前のウェイポイントとの間の距離で除する(割る)ことによって楽観的に計算される。ウェイポイントが、車線の始めにある場合、ウェイポイントは、ゼロのコストを有する。出口のコストは、入口の区間の速度に、一定のペナルティを加えたものに基づいて計算される。
【0071】
本発明のあるルート発見アルゴリズムは、ロボット(すなわち、自律乗物)がその環境に関してより多くのものを調査するとき、ロボット(すなわち、自律乗物)が、ルートの計画においてより効率的になることを可能にする学習のコンポーネントを含んでもよい。ウェイポイント間を、交差点を通って、及びゾーンを横切って移動するのに要する時間を記録することによって、移動時間を最適化するルートを計算することができる。移動時間の記録は、複数のルートにわたって使用される所与のRNDFのために維持される。交通パターン(traffic pattern)が時間とともに変化すると、新しい渋滞エリアが指し示され、古い観測記録は、信憑性が失われる。幾何学的に重みが減少する式1に示す重み付き平均の数式が、特定の移動ユニットのコストを計算するために使用される。最新の観測記録は、0.5の重みを有し、前の各観測記録の重みは、半分に減少する。
【0072】
Sn=サンプル
N=サンプル数
N=1:合計S0
N>1:合計=S0*1/(21)+S1*1/(22)+...+SN-2*1/(2N-1)+SN-1*1(2N)・・・(1)
【0073】
本発明の一実施例において、チェックポイント間の最適ルートは、Aヒューリスティックガイド探索として知られている探索アルゴリズムを適用することによって求められる。他のアルゴリズムが、同じように使用されてもよい。A探索アルゴリズムは、調査経路の優先度つきキューを維持する。優先度は、経路の現在のコスト(g(x))及びゴールまでの推定コスト(h(x))によって求められる。ルート計画のためのAの実施においては、g(x)は、すでに調査した移動ユニットについての観測した平均移動時間の合計である。ヒューリスティックh(x)は、ゴールチェックポイントまでの直線距離をコースの最大制限速度によって除したものである。このヒューリスティックは、最短ルートがまず調査される挙動に影響を及ぼす。Aアルゴリズムは、シミュレーションと実際の試験の両方で精確なルートを生成することが証明されている。
【0074】
可変構造オブザーバ(VSO:Variable Structure Observer):VSOのメイン機能は、自律乗物の近くの環境内(約150メートル内)の静止障害物及び移動障害物の全てについての座標及び軌跡の情報統合、及び予測を行うことである。可変構造オブザーバアルゴリズムは、複数の静止物体及び移動物体を追跡する。可変構造オブザーバアルゴリズムは、センサデータが一時的に失われる場合、またはセンサデータが一時的に信頼できなくなる場合でも、乗物の状況認識を改善し、乗物の知的運転及びナビゲーションを維持する能力を提供する。これは、別の乗物が自律乗物の前の交差点を走り抜けているときなど、一方の障害物が別の障害物によって一時的に隠される場合に非常に役立つ。
【0075】
図6Aは、本発明の一実施例によるVSOアルゴリズムの利用の説明図である。具体的には、図6Bが、自律乗物の計画経路(すなわち、PPと名付けられた曲線)が、一連の移動中の小さい長方形82として示されるレーダが追跡した乗物(移動障害物)の経路と交差するときのシナリオにある、開発した可変構造オブザーバの実例である。この例では、レーダビーム(すなわち、左下隅から延びる角度変位する線)は、2台のトレーラ84(すなわち、より大きい長方形)によって妨げられている。トレーラ84によって妨げられることにより、追跡した移動障害物82がレーダ画面から消えるとき、可変構造オブザーバは、移動中の乗物の予測されるポジションを生成するため、そのモデルを実行することによってメモリ中に移動障害物82を維持する。自律乗物の経路に沿った速度計画は、移動障害物が経路に交差するときの時間を考慮する。破線の円形領域内で重なった長方形は、不確かさによる予測されるポジションの誤差を表す。したがって、可変構造オブザーバは、データの流れが遮られるときでも衝突を防ぐ。開発した可変構造オブザーバにより、無制限の個数の移動障害物を追跡することが可能であり、その個数は、システムの計算能力によってのみ制限される。
【0076】
VSOの原理は、(Drakunov, S.V.、「Sliding-Mode Observers Based on Equivalent Control Method」、Proceedings of the 31st IEEE Conference on Decision and Control (CDC)、Tucson、Arizona、1992年12月16日〜18日、2368-2370頁)に示唆されたスライディングモードオブザーバのアイデアに基づいており、その内容全体は、参照により本明細書に組み込まれ、可変構造システムの一般理論に基づいている。その原理は、下記通り説明することができ、すなわち、障害物がセンサシステムによって検出されると、予備的データ処理を使用して障害物のポジション、幾何学的形状、及び速度ベクトルを識別する。VSOアルゴリズムは、障害物の「識別名」、及び障害物の動きの数学モデルを自動的に作成することになる。
【0077】
そのため、識別された障害物についての状態ベクトル[ポジション、幾何学的形状、形状、速度など]が生成される。状態ベクトル(すなわち、障害物のパラメータ)は、入ってくるセンサデータのストリームに基づいて絶えず更新される。センサデータが一時的に失われる場合、VSOアルゴリズムは、一時的に見えなくなった乗物が、安全に停止するか、または障害物を回避することを可能にするために、センサデータが再取得されるまで、障害物のポジション及び速度の予測を(シミュレーションによって)与え続けることになる。
【0078】
未来の時間に進めるようVSOアルゴリズムを実行することによって、VSOは、経路計画及び速度計画のために、現在のポジションだけでなく、この障害物の将来のポジションも予測することができる。ある種のルールに従う。例えば、識別された物体が、自律乗物と同じ道路に沿って移動する移動物体である場合、VSOは、識別された物体がこの道路上に留まると仮定する。例えば、識別された物体が、自律乗物と同じ道路に沿って移動しており、ほぼ一定の速度で移動している移動物体である場合、VSOは、識別された物体が、この道路上に留まり、(そこで他の物体が邪魔をしない限り)同じ速度で持続すると仮定する。VSOは、近くの環境中の全ての障害物の状態ベクトルを、環境とともに動的に変化する乗物の動作環境についての1つの可変構造モデルにまとめる。VSOが、このエリアに入る障害物の新しいモデルを加え、障害物がこのエリアから離れたときに障害物を取り除くので、オブザーバの状態ベクトルの次元は、絶えず変化する。
【0079】
本発明の一実施例における可変構造オブザーバは、スライディングモードを用いたシステムの理論に基づいている。スライディングモードの使用は、非線形の数学により理解されるものであり、システムの時間挙動を解析するために他の「システム」に使用されてきた。本発明の可変構造オブザーバでは、スライディングモードが、不確かさの存在下で強く非線形のシステムについての観測データから状態ベクトルを再構築するのに用いられる。ルート計画の文脈の中でのVSOの利用に関するより詳細な説明は、以下に含まれている。
【0080】
実際の実施では、VSOは、別の利点をもたらす。乗物の動きの数学モデルを、その計算に含むことによって、VSOは、センサデータに生じ得る変動を自動的にフィルタにより除去する。このことは、レーザスキャナセンサにとって特に重要であるが、このことは(これらセンサが計算する)速度ベクトルが、かなりのジッタを含み得るからである。
【0081】
経路計画:本発明の経路計画アルゴリズムは、障害物を回避し、計画した回廊内で乗物をルーチン的に操舵する。一実施例では、これらアルゴリズムは、理由もなく、計画した回廊から乗物を逸脱させることはない。しかし、何らかの理由で乗物がルートの回廊を離れるのであれば、ナビゲーションシステムは、これを検出し、回廊に戻るように安全なルートを与える。ウェイポイントが見失われる場合、ナビゲーションシステムは、経路上の次の可能性のあるウェイポイントに単に進むことになる。経路が障害物によって遮られている場合、経路計画システムは、障害物の周りに経路を決定することになる。
【0082】
本発明の一実施例における経路計画は、計画ルートの中心に追従すると共に、経路が乗物の航行に無理がないものであることをさらに確保するように設計される3次bスプラインを使用することによって達成される。この保証は、経路に沿った任意の点での曲率が、乗物がうまく追従できる最大曲率未満であることを意味する。加えて、新しいポジションにステアリングホイールを切るために乗物を停止してから続行する必要がないように、この曲率は継続が維持される。Bスプラインは、その経路の得られる曲線形状が容易に調整できることを主たる理由として、経路計画アルゴリズムに用いるために選ばれた。回廊の中心に追従する初期経路が作成された後に、この経路を障害物データベース(obstacle repository)と照合して、この経路が安全な経路であるかどうかを判定する。この経路が安全でない場合には、簡易アルゴリズムは、このスプラインが、有効な最大曲率を引き続き保ちつつ、分かっている全ての障害物を回避するまで、曲線の問題箇所で制御点を生成及び調整する。この時点で、経路は、安全でもあり、運転可能でもある。
【0083】
本発明の経路計画は、詳細度(LOD:Level of Detail)ベースの障害物回避アルゴリズムを、障害物の周りに経路を計画するためのいくつかの計画アルゴリズムと共に使用することもできる。本発明の一実施例におけるLOD解析により、異なる詳細度で同じアルゴリズムを実行することが可能になる。(例えば、大きい安全なマージンに対応するために)例えば、あまり詳細にせずに実行し、一方で、(例えば、より小さい安全なマージンに対応するために)有効な経路を見つけるまで詳細を反復的に増大させる。経路計画アルゴリズムは、有効な経路が求まるまでいくつかの異なるパラメータを用いて実行する。初期パラメータは、安全なマージン(例えば、障害物からの乗物のクリアランス、または障害物同士の間のクリアランス)を使用し、一方、最終パラメータは、障害物の周りに安全なマージンを使用しない。このことは、大きい誤差マージン(例えば、乗物横のクリアランス)で障害物を回避する経路が利用できる場合、経路計画ソフトウェアは、その経路を選択することを確かなものにする。さもなければ、計画アルゴリズムは、有効な経路が求まるまで障害物の周りの安全なマージンを減少させ続けることになる。
【0084】
本発明は、乗物の推力、及び乗物に対する外力などの要因に対応する。システム同定は、本発明によって使用される方法であり、この方法によれば、システムを同定するパラメータは、システムへの入力信号をシステムの応答に関連付けて、実際の乗物のシステムと同じように(または似たように)挙動する伝達関数を明らかにすることによって、決定されることができる。例えば、乗物の速度を制御しようとするときは、入力はブレーキ及びアクセルのポジションであり、出力は乗物の速度である。システムのモデルは、伝達関数H(s)によって以下のように記述することができる。
【0085】
y(s)=H(s)u(s),・・・(8)
【0086】
ただし、u(s)は、システム入力(ブレーキ及びアクセルのポジション)であり、y(s)は、システム出力(速度)である。システム同定は、乗物システムの伝達関数H(s)にたどり着くために乗物推進システムからの現実世界のデータに適用され、例えば、伝達関数が正確である確信が得られるまで作業乗物の実験的試験を受けた。
【0087】
したがって、本発明による乗物の速度制御は、アクセル及びブレーキの関数に対応しただけでなく、物理的なエンジンシステム中の多くの他の要因にも対応した。例えば、作業乗物がガス電気ハイブリッドエンジンを備えていたので、工場で装着済みで触れることができない、燃料効率について調整済の車載コンピュータによって、2つの推進システムの結合を制御した。それゆえに、要求されるペダルのポジション、及び実現した実際のポジションのマッピングは、線形ではなく、ソフトウェア中で経験的な決定(empirical determination)によってマッピングし直さなければならなかった。本発明の一実施例では、乗物の速度は、集積型比例微分(PD)制御器によって制御される。この制御器は、以前の出力、ならびに現在の誤差、及び誤差の微分係数に基づいて制御器の出力を決める。時間領域において、制御器は、以下のように記述することができる。
【0088】
u(t2)=(t2-t1)(Kpe(t2)+Kde'(t2))+u(t1)・・・(9)
【0089】
ただし、K及びKは、調整可能な係数(tunable coefficient)であり、u(t)は時間tでの制御器の出力であり、e(t)は時間tでの誤差である。この誤差は、目標出力から実際の出力を差し引いたものとして定義された。実際の出力は、RT3000(商標)によって伝えられ、目標速度は、経路計画アルゴリズムから導かれた。
【0090】
集積型PD制御器は、上記の導出した伝達関数に対して設計及び調整された。例えば、最適性能に必要とされる(PD制御器の比例制御(proportionate control)のための)重みは、初めに、導出した伝達関数の計算モデルに対して導出され、次いで乗物上での動作時に調整される。
【0091】
アクセル及びステアリングホイールの制御は、経路計画システムから共に独立した2つの別々のプロセスを用いて作業乗物において実現された。経路が経路計画アルゴリズムによって決定されたら、加速度及びステアリングを排他的に使用して選ばれた経路に留まる。経路は、生成時に実行可能性についてチェックされるので、与えられる全ての経路は、乗物により実現可能であると制御システムによって仮定された。このように(ただし、本発明は、他の開始時の仮定を用いてもよい)、選択された経路に従うために最良の進み方を決めることは、制御システムの負担になる。
【0092】
一実施例における作業乗物用のステアリング制御器は、“Riekert及びSchunck、「Zur fahrmechanik des gummibereiften kraftfahrzeugs」、in Ingenieur Archiv、vol. 11、1940、210-224頁”によって記載された古典的なシングルトラックモデル(single-track model)またはバイシクルモデル(bicycle model)に基づいた進み遅れ制御器であったが、その内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。進み補償器は、システムの応答性を増加させ、遅れ補償器は、定常誤差を(無くすことはないが)減少させる。進み遅れ補償器は、システムの周波数応答に基づいていた。進み遅れ補償器は、“D. Bernstein、A students guide to classical control、IEEE Control Systems Magazine、vol. 17、96-100頁(1997)”によって記載されたものに類似するものであったが、その内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。作業乗物において得られた制御器は、2つの進み及び遅れ関数に0.045である低周波ゲインを乗じる畳み込みであった。適応推定パラメータが使用された。適用推定は、まず理論関数を適用することによって得られる値(パラメータ)のセットを使用し、次いでパラメータが完成されるまで現実世界のシナリオ(例えば、深い砂、起伏の多い地形、及び他の地形タイプ)の中でこのパラメータを繰り返して試験及び修正する。
【0093】
【数1】

【0094】
【数2】

【0095】
離散化された制御器は、(12)及び(13)に示すように実装されたものであり、ただし、xは、状態ベクトルであり、
【0096】
【数3】

【0097】
は、時間についての状態ベクトルの微分であり、uは入力ベクトルであり、δは、中心線に対してタイヤで測定したときの出力ステアリング角である。状態ベクトルxは、[y Ψ]として定義され、ただしyは、仮想センサから参照経路までの距離を示し、Ψは、乗物のヨーレートである。仮想センサは、乗物の中心線に沿った乗物の前方に所与の距離だけ突出した点である。この点は、ルックアヘッド点(look-ahead point)と一般に呼ばれ、ルックアヘッド点からRT3000までの距離は、ルックアヘッド距離(look-ahead distance)と呼ばれる。
【0098】
【数4】

【0099】
制御器への入力ベクトルuは、[y]として定義される。制御器の出力は、中心線に対してタイヤで測定したステアリング角である。
【0100】
作業乗物のステアリング及び制御システムは、ステアリングホイール角と得られたタイヤの角度との間の関係が線形であり、乗物の重心の位置がフロント軸とリア軸との間の中点にあると仮定した。乗物が不安定になるのを防ぐために、安全の尺度としてy信号の大きさが監視された。乗物がひどく経路から外れていることを意味する所与のしきい値をyが超えたら、乗物の速度は、2マイル毎時に落とされた。これにより乗物が、所望の経路上へ戻ることを可能にし、可能性がある転覆を防いだ。
【0101】
このようにして、ルート計画モジュールを使用して自律乗物が一般に従うべきグローバルルートを作成するが、速度及び経路プランナ(VPP:Velocity and Path Planner)という名のローカル経路計画モジュールを使用して、グローバルルートを現在の局所経路に変換する。この局所経路は、乗物の計画ポジションと乗物の計画目標速度の両方を含む。局所経路は、乗物の状態と周囲環境の両方が変化するとき、毎秒何回も再生成することができる。
【0102】
VPPは、可変構造オブザーバ(VSO:Variable Structure Observer)からの情報を使用して、自律乗物の時間空間軌跡及び速度プロファイルを、計画及び更新する。このVPPは、適切なルート計画(すなわち、静止した障害物から離れるよう操舵すること)によって静止した障害物を回避することを目的とすると共に、(必要ならば障害物を回避するために完全に停止することになることを含めて)自律乗物の速度を調整して自律乗物の計画経路を横切ろうとする移動障害物を回避することを目的とする。最適経路計算は、障害物の時間空間特性及び障害物の将来のポジションを含む拡張領域内で行われる。軌跡の計算は、この議論を簡単化するために、ここではこの形式で示される3つの論理ステップにおいて行われる。
【0103】
第1のステップ中、VPPは、グローバルルートから与えられたGPS点に基づいて(x,y)空間の軌跡を計算する。次いでこれらの点は、3次以上のスプライン補間を使用して計算される滑らかな曲線によって結ばれる。
【0104】
第2のステップでは、VPPは、拡張時間空間領域{x(t),y(t),t(t)}内で時間最適軌跡を計算し、これは速度の制約(最大制限速度及び最小制限速度)を満たし、任意の既知の障害物または検出した障害物を回避するものである。最適軌跡、または前述の制約のある準最適軌跡は、変分法、ベルマンの動的計画法、及びポントリャーギンの最小原理の組み合わせを用いて計算される。ポントリャーギンの最小原理は、制御変数及び状態変数の制約がある場合に時間最適制御に必要な条件を与える。この計算は、上記のようなスライディングモードアルゴリズムを用いて行われる。図6Bは、(斜め線の)元の速度計画、及び観測した障害物(すなわち、楕円形)を考慮に入れる(右に逸れて元の速度経路と平行に斜めに進む線の)補正経路を示す例示的な距離対時間のS−T線図である。このグラフでは、sは、経路に沿った距離を表し、時間は、経路に沿ってその点にあることになる予想時間である。
【0105】
第3のステップでは、VPPは、速度及び乗物の安全を保ちつつ、加速度/減速度の制約を満たすステップ2において計算された軌跡に最も近い軌跡のオンラインの準最適計算を使用する。この時点で、乗り心地が安全動作を妨げない場合、乗り心地が考慮に入れられてもよい。この軌跡の計算は、一実施例におけるスライディングモードのアルゴリズムを使用して、速度及び経路プランナによって実行される。
【0106】
この速度及び経路プランナは、乗物の速度を変えることによって空間時間領域(S−T領域)内のあらゆるタイプの障害物の回避を可能にする。数学的な解がなく、乗物が減速によって障害物を回避することができない場合、障害物が回避可能であるならば、次に進路変更操縦を実施して障害物を回避する。このタイプの進路変更操縦は、例えば別の乗物が不規則に挙動していない場合に容認可能である。
【0107】
VPPの結果は、車線変更または他の経路を変える操縦を試みるべきかどうかを判定するために繰り返して評価される。VPPのゴールの1つは、最適速度を実現することであり得ると共に、そのため計画アルゴリズムは、他の乗物がとても長い間停止している場合、または自律乗物が自律乗物の前の他の乗物によってもう十分に減速させられている場合にも、別の乗物を通過しようと試みることになる。
【0108】
より一般的には、本発明のVPPアルゴリズムは、図6Cに示されることができる。具体的には、図6Cは、一実施例のVPP計算プロセスを示すフローチャートである。このプロセスは、(例えば、数値的なスプライン(numerical spline)として表される)目的とする移動経路計画を受け取り、次いで経路パラメータ(例えば、距離、接線ベクトル、ヨー角など)を計算することによって開始するものとして概念化することができる。次に、このプロセスは、計算された経路パラメータに基づいて実行される曲率の計算を考慮に入れると共に、フォワードスライディングモードリミッタ計算とバックワードスライディングモードリミッタ計算(forward and backward sliding mode limiter calculations)の両方の実行において加速度/減速度の制約を考慮に入れる。速度計画が作成される。
【0109】
ここで、目的とする移動経路計画、及び計算された速度計画を有するプロセスは、移動経路に沿った時間分布の計算に進む。続いて、このプロセスは、目的とする移動経路を横切る移動障害物を回避するために移動障害物データを検討して空間時間領域速度計画を再計算すると共に、それによって修正した速度計画を作成する。修正した速度計画が、所定のまたは予め設定した加速度/減速度の制約を満たす場合、本実施例における移動障害物を回避する修正した速度計画が容認される。そうでなければ、このプロセスは、フォワードスライディングモードリミッタ計算により新しい速度計画を再び計算し始めることによって反復する。
【0110】
ステアリング制御システム:経路が、曲率及び速度に関連したいくらかの制約を満たす限り、ソフトウェア計画モジュールは、何らかの経路を生成させることができる。乗物は、高レベルの精度で経路に精確に従うことができる。この高レベルの運転精度により、計画モジュールは、障害物が密集した場をうまく縫って通り抜ける経路を生成することができる。複数の計画モジュールは、冗長性のために使用され得ると共に、一度に複数の候補経路を生成するためにも使用され得る。複数の経路が生成される場合、ベストスコアの経路が使用される(スコアは、最短時間、最短距離、障害物の最小の散らかり(least cluttered with obstacles)など多くの異なるやり方で計算できる)。
【0111】
また、経路計画コンポーネントは、乗物が生成された経路を精確に運転できるときに最も効果的に動作するので、本発明の自律乗物の開発中、ステアリング制御器に特に重点が置かれた。以下、本発明の高性能ステアリングアルゴリズムをより詳細に説明する。図7〜図9に、高性能ステアリングアルゴリズムに関して実現された結果が示される。
【0112】
図7は、都市環境における本発明の乗物のステアリング制御器についての標準偏差を示すグラフである。図7は、乗物のステアリング制御器が、都市環境でも、非常に高い精度、そして高い速度で運転することができ、自律乗物が、都市のコースを曲がりくねって進む間、より高い安定した速度を実現することが可能になることを示す。都市で運転中、GPSからの信号は、高いビル及び木がGPS信号に与え得る影響によりかなりノイズを伴い得る。このノイズは、高速での自律運転を、都市環境ではよりずっと困難にさせ得る。
【0113】
図8は、ヘアピンターンを含む難しいスラロームコースを一定速度30km/時で運転する間でも、本発明のステアリング制御器が、経路からの標準偏差を25cm未満に維持できることを示す。乗物のタイヤが、地面に対してスライド/スリップしているので、このタイプの精度は、ヘアピンターンの間に高速で実現するのが困難であり、このことは、これらの操縦中、ステアリング制御アルゴリズムによって説明されなければならない追加の変数になる。
【0114】
精度の高い運転性能に加えて、統計的な平均化及びフィルタリング法を用いるデータフィルタリングアルゴリズムは、本発明の自律乗物にある障害物センサのノイズを低減することが示されている。図9は、レーザスキャニングシステムからの速度値のフィルタリングの結果を示す。図9は、レーザスキャナによって与えられた速度値が、かなりのノイズを含んでおり、このノイズが上手く取り除かれたことを示す。
【0115】
高性能ステアリングアルゴリズム:本発明の一実施例では、新規な自律乗物ステアリング方法が提供される。この方法は、ステアリングコマンドを生成するために、次のような、地面上の経路に沿った移動点(x(s),y(s))を含む。ステアリングを実行する方法は、経路に沿った移動点の原点からの距離についての制御された時間の関数s(t)に基づいている。関数s(t)及びステアリング角
【0116】
【数5】

【0117】
の制御は、地面上の移動点(x(s(t)),y(s(t)))からの実際の乗物ポジション(x(t),y(t))のベクトル誤差
【0118】
【数6】

【0119】
【数7】

【0120】
が、例えば、形式
【0121】
【数8】

【0122】
、ただし、ゲインk>0、またはより一般的な
【0123】
【数9】

【0124】
である、所望の漸近的に安定な微分方程式を満たすように選ばれる。結果として、この誤差は、ゼロに収束し、したがって、経路に沿った乗物のロバストなステアリングを与える。この方法の実現可能な実施の1つを以下に与えるが、ただし、制御器のゲインkの選択は、最適な収束条件に基づいている。
【0125】
完全に非ホロノミックなモデル(図10参照)の場合、フロントタイヤとリアタイヤの両方の横滑りがないと考えられる。リアディファレンシャルからの距離xで乗物の長手方向軸上に位置する点のX−Y座標を記述する非ホロノミックなモデルの運動学的部分は、
【0126】
【数10】

【0127】
であり、ただしx、yはグローバルフレーム中の読み出し点の座標であり、θはヨー角であり、
【0128】
【数11】

【0129】
はフロント進行方向角度であり、vはフロント速度である。後輪速度は、
【0130】
【数12】

【0131】
である。
【0132】
ここで、前輪が滑らないまま後輪が横滑りする可能性を考えることにする。図11を参照されたい。
【0133】
経路に沿った距離sの関数としての所望の経路は、
【0134】
【数13】

【0135】
である。経路の始めからの仮想点の距離は、s(t)である。時間tでの仮想点のXYポジションは、
【0136】
【数14】

【0137】
である。仮想点からの現在の乗物ポジションのベクトル誤差は、
【0138】
【数15】

【0139】
である。誤差に関する体系(System for the error)は、
【0140】
【数16】

【0141】
であり、ただし、wは、経路に沿った仮想点の速度であり(これは仮想制御である)、
【0142】
【数17】

【0143】
は、仮想点の進行方向(単位)ベクトルであり、
【0144】
【数18】

【0145】
である。速度が与えられたときの誤差の最大の収束速度(maximum rate of convergence)の条件から仮想制御を選ぶと、(2)の中の第1の式の右辺は、
【0146】
【数19】

【0147】
であり、そして、
【0148】
【数20】

【0149】
である。これは、指数の比率(exponential rate)kによるゼロへの誤差の収束を保証し、すなわち、
【0150】
【数21】

【0151】
である。(3)から、タイヤの角度
【0152】
【数22】

【0153】
が、
【0154】
【数23】

【0155】
を満たすべきことを得る。(4)の両辺の2乗したノルムをとると、
【0156】
【数24】

【0157】
が得られる。kが与えられると、この式から、wが、
【0158】
【数25】

【0159】
と分かり、ただし、
【0160】
【数26】

【0161】
は点xの速度であることに留意されたい。一方、wについて(5)を微分し、ゼロに対するkの微分をとることによって、(5)からkの最適値が分かり、
【0162】
【数27】

【0163】
である。最適点(wopt)で、k’(wopt)=0である。簡単に分かり得るように、この最適条件は、エリアw≧0、k≧0において最大である。実際には、式(5)は、wk平面上の二次曲線Aw+2Bwk+Ck=Dを表す。
【0164】
【数28】

【0165】
なので、それよりB<ACであり、したがって、これは楕円であることになる。よって、kopt(kの最適値)>0が最大である。
【0166】
(7)から、
【0167】
【数29】

【0168】
したがって、
【0169】
【数30】

【0170】
であり、または(5)から、
【0171】
【数31】

【0172】
であり、これは、
【0173】
【数32】

【0174】
を与える。誤差E(t)は、ゼロに収束するので、koptの値は、とても大きくなり得る。kを制限するために、近似最適値を使用することができる。
【0175】
【数33】

【0176】
を導入する、ただし、
【0177】
【数34】

【0178】
は、小さい定数であり(これによりkが境界付けられることを保証する)、kopt≒vkとなる。(8)を(6)に代入すると、wの近似最適値:wopt≒vwを得ることになり、ただし、
【0179】
【数35】

【0180】
である。したがって、
【0181】
【数36】

【0182】
である。(4)から、
【0183】
【数37】

【0184】
を得る。この式から、
【0185】
【数38】

【0186】
を得る。これらの式の右辺側で、
【0187】
【数39】

【0188】
であり、これは、進行方向角度
【0189】
【数40】

【0190】
にも依存する。そこで、
【0191】
【数41】

【0192】
を表現する1つの方法は、2つの式を除算して
【0193】
【数42】

【0194】
を得ることである。
【0195】
その結果、
【0196】
【数43】

【0197】
となる。
【0198】
ここで、前輪が滑らないまま後輪が横滑りする可能性を考える。図11を参照されたい。
【0199】
この場合には、リア点の速度vは、車の長手方向軸に必ずしも真っ直ぐに並ばない。重心は、乗物の標準的な基準点の1つであるが、実際には、任意の点が、回転の基点(base for rotation)とみなされ得る。この例では、システムが非ホロノミックであるので、重心ではなく、前輪の間の点を考えることが、より便利である。それに応じて、基準点としての重心は、スリップを伴う制御されたコーナーリングに使用されることができる。
【0200】
次いで、
【0201】
【数44】

【0202】
を得る。したがって、
【0203】
【数45】

【0204】
であり、ただし、最後の式の第2項は、遠心力の近似式を表す。この数式では、
【0205】
【数46】

【0206】
は、おおよそ、瞬間旋回半径である。
【0207】
【数47】

【0208】
と仮定することができ、ただし、
【0209】
【数48】

【0210】
である。
【0211】
見て分かるように、Flateral(lateral:横方向)は、変数σの不連続関数である。そのようなシステムでは、スライディングモードの現象が、生じ得る(例えば、“DeCarlo R、及びS. Zak、S.V. Drakunov、「Variable Structure and Sliding Mode Control」、chapter in The Control Handbook a Volume in the Electrical Engineering Handbook Series、CRC Press, Inc.、1996”を参照されたい。その内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる)。このシステムでは、スライディングモードは、横方向摩擦力の十分なマージンがある場合に生じる。すなわち、
【0212】
【数49】

【0213】
である。スライディングモードでは、
【0214】
【数50】

【0215】
であり、システムの第1の式(10)は、(1)になる。スライディングモードでは、横方向の力は、等価制御法(例えば、上記参考文献参照)を用いて見つけることができ、このことは、スライディングモードにおける不連続関数は、等式
【0216】
【数51】

【0217】
から得られる等価な値によって置き換えられ得ることを示す。
【0218】
式を微分することにより、
【0219】
【数52】

【0220】
を得る。ここから、
【0221】
【数53】

【0222】
である。この数式及び不等式(13)は、速度及び/またはステアリング角を操作することによってスリップを制御する(所望のモーメントで開始及び阻止する)ために用いられる。
【0223】
(自然状態の低い横方向摩擦力または人工的に作り出した摩擦力により)スリップが生じる場合、後述のステアリングアルゴリズムが使用される。仮想点速度は、(1)の代わりに修正したモデル(10)を考慮に入れる先のケースと同じように計算される。結果として、
【0224】
【数54】

【0225】
を得ることになり、ただし、
【0226】
【数55】

【0227】
は、以前と同じである。
【0228】
【数56】

【0229】
したがって、
【0230】
【数57】

【0231】
である。
【0232】
ミッションマネージャ:本発明の自律乗物内での、かなりの量のより高レベルの処理及び意思決定は、ミッションマネージャモジュールによって扱われる。ミッションマネージャモジュールは、適切な動作のために各コンポーネントを監視するのに加えて、AVSアーキテクチャ内の全ての他のコンポーネント間で調整を行う。ミッションマネージャモジュール自体は、コンポーネントの実装から独立して動作するように設計されており、それにより、あるタイプのセンサを異なる設計のセンサに置き換えることは、乗物の適切な動作に影響を及ぼすことにならない。このソフトウェアの能力は、ユーザまたはプログラムインタフェース52及びFPGA56によって提供される構成可能なハードウェアの能力を補完する。
【0233】
本発明の一実施例では、有限状態機械(FSM:Finite State Machine)が利用され、この有限状態機械(FSM)が、指示された経路をうまく完走するために必要な一連のイベントを通じて自律乗物の指示を担っている。FSMは、乗物が占め得る状態のセット及び状態間の移り変わりによって定められる。これら状態は、運転、通過、交差点での停車等などのイベントを含む。これら状態のそれぞれから、FSMは、「出口(exit)」の明確なセットを含み、この出口は、乗物が、一方の状態から他方の状態へ進むために実行し得る移り変わりである。そのような出口は、乗物が所望の経路を妨げるときに生じる可能性があり、これにより乗物は、「運転」状態から「通過」状態へ変化させられ得る。
【0234】
FSMは、交通法を含むことができ、そのようなものとして、規則は一般に、規則が適用されることがとても特別な状況を含む。乗物の行動は、一度に1つの状態によってしか制御することができないので、一実施例におけるFSMは、時系列的な一連の挙動及びこれら挙動の開始の理由を生成し、それらはバグ及び論理エラーについて後で解析できる。
【0235】
加えてAVSミッションマネージャは、与えられたミッションデータファイル(MDF:Mission Data File)及びルートネットワーク定義ファイル(RNDF:Route Network Definition File)に基づいて高レベルの計画を実行するミッションプランナのコンポーネントを監視してもよい。MDFの所定のチェックポイントに沿ってウェイポイントからウェイポイントまで乗物をナビゲートするグローバル計画が作成されると、この計画への修正が、ミッションプランナによって追跡及び検証される。一実施例では、主要道路または他のルートに沿った道路脇の装置が、装置の地理空間座標を配信していてもよく、自律乗物は、自律乗物がそのポジションを確認するために、道路脇の装置から受信信号を受信し処理する。したがって、乗物の物体センサは、乗物から離れたコンポーネント装置を含むことができる。
【0236】
ミッションマネージャのさらに別の機能は、あるコンポーネントから別のコンポーネントへの要求が、乗物の安全動作に悪影響を及ぼさないことを確かのものとすることである。例えば、ステアリング制御モジュールから送られるステアリングコマンドは、まず、乗物のアクチュエータに渡される前に、ミッションマネージャによって乗物の状況(速度、ロールなど)に適切なものとして検証される。ミッションマネージャは、更に、一時停止コマンドを検出し、ミッションマネージャは、乗物の滑らかな停止を調整する。
【0237】
ミッションマネージャのさらに別の機能は、ミッションマネージャの自律乗物のすぐ近くで動作している他の自律乗物を監視することである。他の自律乗物を監視するやり方の1つは、各自律乗物に、それ自体の位置を同じネットワーク上の任意の他の自律乗物に伝えさせることである。この能力は、各自律乗物(またはポジション情報を配信する他の非自律乗物でさえも)が、互いに通信するところまでよく及び得る。そのような応用例の1つは、有限コース経路及び追跡すべき有限個の乗物が存在する鉱山採掘の応用例にあろう。
【0238】
経路の視覚化:AVSコンソールは、自律乗物及びその環境のリアルタイム表示と、前の自律乗物の走行の再生とを共に可能にするAVSプラットフォームのコンポーネントである。図12は、リアルタイム表示80を示すAVSコンソールの概略図である。
【0239】
AVSソフトウェアプラットフォーム内の各内部モジュールは、ロギングモジュールによって一定の間隔で問い合わせされる。この間隔は、個々のモジュールごとにデータが時間に敏感な程度に応じて、特定の応用例に適切と考えられる任意の要因に応じて、1Hz未満〜250Hzで変わり得る。
【0240】
AVSプラットフォームは、モジュールがどのようにそのデータのログをとるべきかについて標準バイナリフォーマットを与える。まず、モジュールは、その内部状態が変化した最終時間を表す8バイトのタイムスタンプを書き込む。次に、このジュールは、モジュールを識別するために使用される2バイトの数字の識別名を書き込む。次に、このモジュールは、モジュールのデータの長さを含む4バイトの整数を書き込むべきである。最後に、このモジュールは、そのデータをメモリに書き込むことができる。
【0241】
ロギングモジュールは、モジュールごとにデータを取り、データをプロセッサのディスクドライブに逐次書き込む。AVSコンソールは、後で、自律乗物の再生を助けるためにTCP接続を介してこのデータを取り出す。加えて、AVSコンソールは、AVSからリアルタイムにこのデータを取り出すために、UDP通信とTCP通信の組み合わせを使用する。AVSコンソールは、自律的に動作するように存在することは必要とされていないが、それが存在すれば、AVSコンソールは、自律乗物及びその環境のリアルタイムビューを表示することになる。
【0242】
ロギングモジュールは、AVSコンソールからのTCP接続を待機し、そして任意の要求されたモジュールのデータをこの同じTCP接続によってAVSコンソールに送信する。加えて、一部のモジュールについてのデータは、特定の応用例に適切と考えられる任意の要因に応じて、連続的なUDP放送として自律乗物と同じイーサネット(登録商標)ネットワーク上の任意のコンピュータに送信される。
【0243】
AVSコンソールは、OpenGLフレームワークで構築された3Dディスプレイを含む。モジュールごとのデータは、AVSコンソールによって処理され、次いで3Dディスプレイに表示される。表示されるデータのタイプは、特定のモジュールに依存する。常に表示される標準データは、乗物、及び自律乗物によって現在感知されている任意の障害物と共に、自律乗物のポジション、姿勢、及び速度を含む。前の走行を再生するために、AVSコンソールは、以前記憶したデータを読むことができ、このデータを3Dディスプレイにロードすることができる。
【0244】
コンピュータ実装:図13は、本発明のプロセッサ24(または後述の特定のプロセッサのいずれか)を実装できるコンピュータシステム1201の一実施例を示す。コンピュータシステム1201は、上記の任意または全ての機能を実行するようにプログラム及び/または構成される。さらに、各機能は、乗物に搭載されている異なるコンピュータの間で分割されてもよい。これらコンピュータは、通信ネットワーク1216(後述)を介して互いに通信することができる。コンピュータシステム1201は、情報を伝達するためのバス1202または他の通信機構、及び情報を処理するためにバス1202と結合された内部プロセッサ1203を備える。コンピュータシステム1201は、内部プロセッサ1203によって実行される情報及び命令を記憶するためにバス1202に結合されたランダムアクセスメモリ(RAM)または他の動的記憶装置(例えば、ダイナミックRAM(DRAM)、スタティックRAM(SRAM)、及びシンクロナスDRAM(SDRAM))などのメモリ1204を備える。加えて、メモリ1204は、内部プロセッサ1203による命令の実行中に、一時的変数または他の中間情報を記憶するために使用されることもできる。好ましくは、コンピュータシステム1201は、内部プロセッサ1203のための静的な情報及び命令を記憶するためにバス1202に結合された、例えば、リードオンリメモリ(ROM)1205または他の静的記憶装置(例えば、プログラマブルROM(PROM)、消去可能PROM(EPROM)、及び電気的消去可能PROM(EEPROM))などの不揮発性メモリを備える。
【0245】
コンピュータシステム1201は、特定用途向け論理デバイス(例えば、特定用途向け集積回路(ASIC))または構成可能論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA))を備えてもよい。コンピュータシステムは、“Texas Instruments”社製のTMS320シリーズのチップ、“Motorola”社製のDSP56000、DSP56100、DSP56300、DSP56600、及びDSP96000シリーズのチップ、“Lucent Technologies”社製のDSP1600、及びDSP3200シリーズ、または“Analog Devices”社製のADSP2100、及びADSP21000シリーズなどの1つまたは複数のデジタルシグナルプロセッサ(DSP)を備えてもよい。デジタル領域に変換されたアナログ信号を処理するように特に設計された他のプロセッサが、(以下の実施例に詳述するように)同様に使用されてもよい。
【0246】
コンピュータシステム1201は、メインメモリ1204などのメモリに収容された1つまたは複数の命令の1つまたは複数のシーケンスを実行する内部プロセッサ1203に応じて本発明の処理ステップの一部または全部を実行する。そのような命令は、ハードディスク1207またはリムーバブルメディアドライブ1208などの別のコンピュータ可読媒体からメインメモリ1204に読み込まれてもよい。そのような命令は、USBフラッシュドライブまたはジャンプドライブ(jump drive)などの別のコンピュータ可読媒体からメインメモリ1204に読み込まれてもよい。そのようなドライブは、大部分のコンピュータオペレーティングシステムの下でフロッピー(登録商標)ディスクまたはハードドライブとして働くことができる固体メモリ装置である。マルチプロセッシング装置中の1つまたは複数のプロセッサを用いてメインメモリ1204に収容された命令のシーケンスを実行することもできる。代替実施例では、ハードワイヤード回路が、ソフトウェア命令の代わりに、またはソフトウェア命令と組み合わせて使用され得る。したがって、実施例は、ハードウェア回路とソフトウェアの任意の特定の組み合わせに限定されない。
【0247】
上述の通り、コンピュータシステム1201は、本発明の教示によりプログラムされる命令を保持し、データ構造、テーブル、レコード、または他の本明細書に記載のデータを収容するための少なくとも1つのコンピュータ可読媒体またはメモリを含む。本発明に適しているコンピュータ可読媒体の例は、コンパクトディスク、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、テープ、光磁気ディスク、PROM(EPROM、EEPROM、フラッシュEPROM)、DRAM、SRAM、SDRAM、もしくは任意の他の磁気媒体、コンパクトディスク(例えば、CD−ROM)、もしくは任意の他の光媒体、パンチカード、紙テープ、もしくは穴のパターンを有する他の物理的な媒体、搬送波(後述)、またはコンピュータにより読み出し可能な任意の他の媒体である。
【0248】
コンピュータ可読媒体のいずれか1つ、またはコンピュータ可読媒体の組み合わせに記憶されるとき、本発明は、コンピュータシステム1201を制御し、本発明を実施する1つまたは複数の装置を駆動し、コンピュータシステム1201が、人間のユーザ(例えば、運転手)と対話することを可能にするソフトウェアを含む。そのようなソフトウェアは、デバイスドライバ、オペレーティングシステム、開発ツール、及びアプリケーションソフトウェアを含み得るが、それらに限定されない。そのようなコンピュータ可読媒体は、本発明の実施において実行される処理の全部または一部(処理が分散している場合)を実行するための本発明のコンピュータプログラム製品をさらに含む。本発明のコンピュータコードデバイスは、任意の解釈可能または実行可能なコード機構であってもよく、スクリプト、解釈可能なプログラム、ダイナミックリンクライブラリ(DLL)、Java(登録商標)クラス、及び完全実行可能プログラムを含むが、それらに限定されない。また、本発明の処理の一部は、性能、信頼性及び/または費用をより良くするために分散されてもよい。
【0249】
用語「コンピュータ可読媒体」は、本明細書で用いられる場合、実行するために内部プロセッサ1203に命令を与えることに関与する任意の媒体を指す。コンピュータ可読媒体は、不揮発性媒体、揮発性媒体、及び伝送媒体を含めて多くの形態をとり得るが、それらに限定されない。不揮発性媒体は、ハードディスク1207またはリムーバブルメディアドライブ1208などの例えば、光ディスク、磁気ディスク、及び光磁気ディスクを含む。揮発性媒体は、メインメモリ1204などの動的メモリを含む。伝送媒体は、バス1202を構成する電線を含めて、同軸ケーブル、銅線、及び光ファイバを含む。伝送媒体は、電波及び赤外線データ通信の間に生成されるもののような音波及び光波の形態をとることもできる。
【0250】
様々な形態のコンピュータ可読媒体が、実行するために内部プロセッサ1203への1つまたは複数の命令の1つまたは複数のシーケンスを実行することに関与してもよい。例えば、命令は、当初ディスク上で遠隔コンピュータに運ばれてもよい。バス1202に結合された赤外線検出器は、赤外線信号で運ばれるデータを受信し、このデータをバス1202上に置くことができる。バス1202は、このデータをメインメモリ1204まで運び、内部プロセッサ1203は、メインメモリ1204から命令を取り出し、この命令を実行する。適宜、メインメモリ1204によって受信された命令は、内部プロセッサ1203による実行前または実行後に記憶装置1207または1208に記憶されてもよい。
【0251】
例えば、本発明の一実施例では、コンピュータ可読媒体は、乗物内のプロセッサ上で実行するためのプログラム命令を含み、このプログラム命令は、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、乗物の位置及び進行方向を示すポジション信号を受信させる。受信されたポジション信号は、プログラマブルインタフェースによって正規化されて、正規化されたポジション信号を生成する。プロセッサは、正規化されたポジション信号から動作制御信号を生成し、動作制御信号をプログラマブルインタフェースに出力して、乗物の更新された移動経路に沿って乗物の動作を制御する正規化された動作制御信号を生成する。
【0252】
本発明の一実施例では、コンピュータ可読媒体は、乗物内のプロセッサ上で実行するためのプログラム命令を含み、このプログラム命令は、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、方向制御命令及び速度制御命令のうちの少なくとも1つをドライブバイワイヤ形式で乗物に供給させるか、またはウェイポイントの位置のプロセッサ内の記憶に基づいて物体の存在及び位置を決定させるか、または移動経路に沿って回避するために、静止物体または移動物体を識別することによって、ウェイポイント同士の間に乗物を向けさせる。
【0253】
自動車業界内のドライブバイワイヤ技術では、電気機械アクチュエータ、そしてペダル及びステアリング感覚のエミュレータなどのヒューマンマシンインタフェースを用いて、伝統的な機械制御システム及び油圧制御システムを電子制御システムに置き換える。したがって、ステアリングコラム、中間シャフト、ポンプ、ホース、流体、ベルト、冷却器、ならびにブレーキブースタ及びマスタシリンダなどの伝統的なコンポーネントは、乗物からなくなっている。一実施例における本発明は、自律乗物システムプラットフォーム、FPGA、及び入出力モジュールが、自律乗物のステアリング、ブレーキング、及び推力に影響を及ぼす電子制御システムとの接続をもたらすので、ドライブバイワイヤ能力を助ける。
【0254】
本発明の一実施例では、コンピュータ可読媒体は、乗物内のプロセッサ上で実行するためのプログラム命令を含み、このプログラム命令は、プロセッサによって実行されると、物体までの各距離、物体への各方向、乗物の進行方向、及び乗物の地理空間ポジションに基づいて、プロセッサに、乗物に対する物体の位置を地理空間座標に変換させる。物体位置のこの変換を達成するために、上記のGPSシステム及びINSシステムからの入力は、プロセッサ24によって使用され得る。
【0255】
本発明の一実施例では、コンピュータ可読媒体は、乗物内のプロセッサ上で実行するためのプログラム命令を含み、このプログラム命令は、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、複数の障害物のうちの1つの障害物のポジション、速度、及び幾何学的形状を識別させ、時間内に識別された障害物のポジション及び速度を予測させ、識別された障害物の将来のポジションを推定させる。ルート発見アルゴリズムは、2つのウェイポイントの間の記録された交通パターン(traffic pattern)に基づいて、2つのウェイポイントの間の乗物のルートを決定することができる。一実施例では、ルート発見アルゴリズムは、2つのウェイポイントの間の移動時間の記録、2つのウェイポイントの間の渋滞エリアの履歴、及び渋滞のリアルタイム報告のうちの少なくとも1つに基づいてルートを決定することができる。一実施例では、ルート発見アルゴリズムは、2つのウェイポイントの間のいくつかの特定の移動ルートについての各重み付き平均に基づいてルートを決定することができ、各重み付き平均は、2つのウェイポイントの間の移動時間の記録、2つのウェイポイントの間の渋滞エリアの履歴、渋滞のリアルタイム報告のうちの少なくとも1つを含む。
【0256】
本発明の一実施例では、コンピュータ可読媒体は、乗物内のプロセッサ上で実行するためのプログラム命令を含み、このプログラム命令は、プロセッサによって実行されると、プロセッサ24に、あるウェイポイントから別のウェイポイントへの方向を与える1つまたは複数のウェイポイントの論理マップに(マップ記憶エリア内において)アクセスさせる。論理マップは、ウェイポイントの地理空間座標、乗物の移動経路に沿った道路の交差点についての交差点ウェイポイント、及び異なるウェイポイントの間の移動に関連した(記録または計算された)時間を含むことができる。プロセッサ24は、物体ポジションとウェイポイントの地理空間座標との比較によって、物体のうちの1つが、障害物、または前記ウェイポイントのうちの1つであるかどうかを判定するための障害物識別アルゴリズムがプログラムされてもよい。
【0257】
さらに、本発明のコンピュータ可読媒体は、特定の場所に関連した地理情報を詳述するプログラム命令、経路計画アルゴリズム(下記の通り)、ナビゲーション命令、乗物に装着した画像センサに対する特定の命令、コマンドの命令、ならびに/または立体カメラもしくは乗物車輪速度センサなどの追加のセンサからのデータの受信、または運転手入力制御装置もしくは他の車載装置(後述のものなど)からのデータの受信、経路計画アルゴリズム、乗物の推力及び使用中の自律乗物に対する外力の応答、そして使用中の自律乗物についてのステアリング制御の応答に関してのデータを含む特定化された乗物の伝達関数を含むことができる。
【0258】
例えば、本発明の様々な実施例におけるプログラム命令は、セクタのうちの1つから画像を供給するカメラからの入力を、プロセッサに処理させるように構成される。画像に基づいてプロセッサは、自律乗物の移動経路のための車線を認識する。プロセッサは、識別された車線に障害物があるかどうかを判定することができると共に、障害物の周りに回避経路を決定することができる。
【0259】
コンピュータシステム1201は、更に、バス1202に結合された通信インタフェース1213を含む。通信インタフェース1213は、例えば、ローカルエリアネットワーク(LAN)1215、またはプロセッサ24にソフトウェアをダウンロード中のインターネット、もしくは乗物に搭載されている複数のコンピュータの間の内部ネットワークなど別の通信ネットワーク1216に少なくとも一時的に接続されるネットワークリンク1214に結合している双方向データ通信を行う。例えば、通信インタフェース1213は、任意のパケット交換LANに取り付けるためのネットワークインタフェースカードであってもよい。別の例として、通信インタフェース1213は、非対称デジタル加入者線(ADSL)カード、サービス総合デジタル網(ISDN)カード、または対応するタイプの通信回線へのデータ通信接続を行うためのモデムであってもよい。無線リンクが、車載コンピュータ、画像センサ、車輪速度センサ、生体計測センサ、及び/または運転手コマンド入力装置のいずれかとデータ交換を行うための通信インタフェース1213の一部として実装されることもできる。任意のそのような実装では、通信インタフェース1213は、様々なタイプの情報を表すデジタルデータストリームを運ぶ電気信号、電磁信号、または光信号を送受信する。
【0260】
典型的には、ネットワークリンク1214は、車載コンピュータ、画像センサ、車輪速度センサ、生体計測センサ、及び/または運転手コマンド入力装置のいずれかとデータ交換を行うために、他のデータ装置へのデータ通信を1つまたは複数のネットワークを介して行う。例えば、ネットワークリンク1214は、ローカルエリアネットワーク1215(例えば、LAN)を介して、または通信ネットワーク1216を介して通信サービスを提供するサービスプロバイダによって運営される設備を介して、別のコンピュータへの一時的な接続を行うことができる。図13に示すように、計算システム1201は、ローカルネットワーク1215及び通信ネットワーク1216を介して入力装置1217と通信することができ、ローカルネットワーク1215及び通信ネットワーク1216は、例えば、デジタルデータストリームを運ぶ電気信号、電磁信号、または光信号、及び関連した物理層(例えば、CAT5ケーブル、同軸ケーブル、光ファイバなど)を使用する。コンピュータシステム1201に、及びコンピュータシステム1201から、デジタルデータを運ぶ、様々なネットワークを通じての信号、ならびにネットワークリンク1214上及び通信インタフェース1213を通じての信号は、ベースバンド信号または搬送波ベースの信号に実装され得る。ベースバンド信号は、デジタルデータビットのストリームを記述する非変調電気パルスとしてデジタルデータを運び、ただし、用語「ビット」は、シンボルを意味し、各シンボルが少なくとも1つまたは複数の情報ビットを運ぶと広く解釈されるべきである。デジタルデータを使用して、導電媒体を通じて伝搬されるか、または伝搬媒質を通じて電磁波として伝送される、振幅偏移変調信号、位相偏移変調信号、及び/または周波数偏移変調信号などで搬送波を変調することもできる。したがって、デジタルデータは、「有線」通信チャンネルを通じて非変調のベースバンドデータとして送信されるか、及び/または搬送波を変調することによってベースバンドとは異なる所定の周波数バンド中で送信されてもよい。コンピュータシステム1201は、ネットワーク1215及び1216、ネットワークリンク1214、ならびに通信インタフェース1213を介して、プログラムコードを含めたデータを送受信することができる。また、ネットワークリンク1214は、乗物に搭載されている様々なGPSシステム及びINSシステムに、LAN1215を介して接続を行うことができる。本発明の様々な実施例における入力装置1217は、入力をプロセッサ24に与えると共に、本発明において述べられた画像センサ、車輪速度センサ、生体計測センサ、及び/または運転手コマンド入力装置を概略的に表す。
【0261】
応用分野
本発明は、本発明が一次モードまたは二次モードでそれぞれ働く、自律運転乗物と人が運転する乗物との両方に広範囲にわたる応用を有する。
【0262】
一般に、上記の様々な特質を有する本発明は、様々な運転可能機器(driveable unit)に備えることができる。本発明の一実施例におけるそうした機器は、動力付きの陸上乗物(陸上車)または船舶であり、これには、例えば、自動車、トラック、スポーツ汎用車、装甲乗物、ボート、船、バージ船、タンカ、及び装甲艦が含まれる。船艇については、視界が限られていて他の船艇を回避することが望まれる天候条件または夜間条件においてナビゲートしているときだけでなく、ドック(dock)構造及びロック(lock)構造の船艇への損傷を最小にするためにドック構造(dock structure)とロック構造(lock structure)との間の船艇の制御が重要である場合、ドッキング動作(docking operation)時及びロック動作(lock operation)時にも、本発明は使用されることができる。
【0263】
本発明は、航空機への応用もある。特に高速航空機への応用は、飛行機が修正行動をとることができる飛行機から十分な距離で物体の存在を決定するための検出器の感度及び精度に依存することになる。しかし、速度が高くない空港の進入(approach:アプローチ)及び離陸において、本発明は有益である。例えば、離陸及び着陸においては、ランウェイエリアの終わりにしばしばいる鳥の群れが、エンジンに危険をもたらすかに懸念がもたれてきた。鳥は、少し離れていると肉眼では見ることが困難であると共に、航空機のレーダによって検出することが困難である。また、本発明は、操縦士の視界からたびたび隠される障害物が存在する応急の(間に合わせの)エリアにしばしば着陸するヘリコプタ、特に救援ヘリコプタへの応用例がある。
【0264】
他の応用分野には、軽飛行体(lighter-than-air vehicle)(例えば、自律気象観測気球、例えば遠隔制御小型航空機を含む自律国境パトロールシステム)、他の小型偵察機、及び水陸両用車(例えばホバークラフトなどを含めた水陸強襲乗物など)が含まれる。
【0265】
本発明の一実施例では、運転可能機器は、運転手に支援された制御のない自律乗物、またはコンピュータ支援制御を用いて運転手により制御された乗物であり得る。自律乗物は、本発明の一実施例によれば、運転手が危険に曝されることになる上記の環境的に危険な状況において応用を見出している。本発明の運転手により制御された乗物は、運転手が医療緊急事態に見舞われた場合、または例えば運転手が悪運転条件下で見当識を失うことになる場合に生じることになるような、運転手が、見当識を失うことになったり、または乗物を身体的に操ることができないことになったりする場合がある、上記のより普通な環境において応用を見出している。したがって、本発明の一実施例では、プロセッサ24は、運転手の機能障害の場合、または経路障害物が差し迫っている場合、または運転手が要求する場合に乗物を制御するように構成される。
【0266】
本発明の本実施例の説明のための例として、自律乗物は、運転手が運転しているところの観察を通じて、所定の経路と比較して、運転手の機能障害を認識することができる。乗物の現在の経路と所定の経路とが類似していない場合、自律乗物は、例えば、最近、運転手がステアリングホイールを切ったか、及び/またはブレーキもしくはスロットルを踏んだか確かめるためにチェックを行うことができる。運転手が、クルーズコントロールをオンにして長い直線道路上を運転している場合には、運転手は、積極的にステアリングホイールを切るまたはブレーキもしくはスロットルを働かせることができないかもしれないので、比較とステアリング及びブレーキのチェックの両方が、意思決定プロセスに含まれてもよい。同じ理屈によって、運転手は、運転手が積極的に車を操舵している限り、自律乗物の経路と一致しない経路を運転している可能性がある。自律乗物が引き継ぎを行う必要がある場合、本発明の一実施例における自律乗物は、まず、自律乗物が引き継ぎを行うことを運転手に可聴的及び可視的に警報し、次いで次に、引き継ぎを行い、可能な限り滑らかに及び安全に乗物を安全な停止ポジションに導く。運転手が、制御権を取り戻すことを望む場合、本発明の自律乗物は、一実施例では、運転手が制御を再開するための押しボタンまたは他の入力装置を提供している。本発明の別の実施例では、運転手は、自律乗物に制御権を明け渡すためにやはりボタンを押す(またはコマンド入力する)ことができる。したがって、本発明は、様々な実施例において協働的な自律運転モードを提供する。
【0267】
本発明の別の実施例では、生体計測センサが、別の入力装置を示し得る。本実施例では、生体計測センサは、運転手が積極的に運転しているかを、例えば、乗物のステアリングホイールに構築された心拍モニタからのプロセッサ24への入力を通じて判定する。本発明に適している心拍モニタの一例は、運動器具に使用されるハートレートであり、一実施例においてこれは、ステアリングホイールに統合されることになり、または代替として運転手によって着用されてもよく、そしてプロセッサ24と無線通信を行ってもよい。プロセッサ24が、長時間の間(例えば5秒)、心拍の完全な喪失または非常に低い心拍を検出する場合、プロセッサ24は、乗物の制御権をとるように構成される。車が適切な制御下にあるときに運転手の通常の心拍を監視することによって、プロセッサは、例えば、居眠り運転をしている、脳卒中を起こした、または心臓発作を起こしたことにより、運転手が機能を損なっているかを判定するための根拠を有する。本実施例は、(上述の)協働的な動作モードでやはり実施されてもよい。前述の通り、本発明の一実施例では、乗物の引き継ぎを行う前に可聴警報が発せられ、乗物を安全停止に導く。運転手が、実際には機能を損なっていない場合、運転手は、プロセッサ24から制御権を取り返すためには、ボタン(または他の入力装置)を押すだけでよい。
【0268】
本発明の別の実施例では、自律乗物は、所定のコース上を繰り返して運転されてもよい。例えば、人間の運転手が、自律乗物を記録モードに変えるボタンを押す。人間は、その人が、自律乗物にそのコースを走行させたいように正確に乗物を運転する。次いで、人間の運転手が再びボタンを押すと、自律乗物は、とても高いレベルの信頼性及び繰り返し精度で記録したコースを何度も運転する。(繰り返し精度は、自動車試験装置の課題である)。この能力は、更に、現在多くの人間の運転手がこの仕事を行っている、乗物がオフロードを危険な状況の中で何日間も続けて運転される乗物の耐久試験において、人間の身体は比較的弱いという理由から、役立つものである。この能力は、長距離にわたって一貫した速度で乗物を運転するのにも役立つ。例えば、この能力は、燃費性能についてレーストラック上で、主要道路速度で乗物を試験するのに役立つであろう。
【0269】
本発明の別の実施例では、運転可能機器は、(例えば、ラップトップで実行する)マッピングプログラムと併せて使用されてもよく、ユーザは、到着地を選択することができる。この時点で、自律ナビゲーションソフトウェアは、マッピングソフトウェアにアクセスし、GPSウェイポイントではなく、「メインストリートで左に曲がれ」のような人間の指図において、(ソフトウェアが通常するように)ルートを生成することになる。この時点で、自律乗物は、通常動作で進んでそのルートに従う。一実施例では、マッピングソフトウェアは、道幅及び制限速度など追加の情報を自律ナビゲーションプログラムに提供するようにカスタマイズされる。
【0270】
本発明のナビゲーション及び制御システムについての他の応用分野には、1)例えば畑からの作物の収穫、耕起、草刈り等などの繰り返し作業または予測した経路上の作業を実行する農業機器(例えば、ガーデニング機器)、2)通常は脱出を妨げる灯りが無い通路または煙が充満した通路を通じて、例えば、貨物または人を輸送できる例えば動力付き荷車を含む採掘機器、3)洞窟探査機器、4)視程阻害によって緊急車両が前方に進む(後述の通り)ことを妨げる必要はない例えば消防車、救急車、及びレスキュー隊車両などの緊急車両または警察車両、あるいは乗物の有人化により運転手を危険に曝す危険な環境状況中で動作する乗物、5)パレット、箱などを格納する/取り出すために使用される倉庫管理機器、ならびに6)玩具が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0271】
本発明の自律乗物を警察乗物に適用する例示のための例としては、ニューオリンズのコーズウェイ橋(24マイルの長さで世界で最も長い橋)上では、かなりの霧シーズンがあることが挙げられる。濃い霧の朝には、通行車は、35マイル毎時で運転する警察の車によって橋全体にわたって付き添われる。低い速度は、非常に短い視界のために必要とされる。極度の霧の朝には、付き添いさえも不可能なので、この橋は閉鎖される。付き添いにおいて先導する警察の車が、上記の協働的なモードで動作する本発明の自律乗物であれば、警察の車は、特にRIEGL(商標)画像化センサが使用される場合に、いずれのタイプの霧でも、安全に付き添うことができる。同じことが、夜間の運転に当てはまる。本発明の自律乗物は、暗闇によって影響を受けない。
【0272】
本発明に関する多数の修正形態及び変更形態が、上記教示に鑑みて実現可能である。したがって、添付の特許請求の範囲内で、本明細書に特に記載したもの以外の別のやり方で本発明を実施することができることを理解されたい。
【符号の説明】
【0273】
8 画像化センサ
10 乗物、自律乗物
11 平面、垂直スキャン平面
12 エミッタ
13a ビーム拡大器
13b コリメータ
14 レーザパルス(または光)
15a 固定ミラー15a
16 3Dスキャニング体積
18 検出器
20 エコー信号
22 物体
24 プロセッサ
25 リアルタイム測位装置
26 回転ミラー
27a レンズ
27b 望遠鏡
40 レーザスキャナシステム、スキャナシステム
42 光学画像化システム、画像化デバイス
50 AVSプリント配線板
52 ユーザまたはプログラムインタフェース
53 コンピュータ、車載コンピュータ
54 コンピュータ、車載コンピュータ
56 フィールドプログラマブルゲートアレイデバイス、FPGA
58 安全無線
60 ハードウェアウォッチドッグ
62 イーサネット(登録商標)リンク装置
64 配電コンポーネント
66 緊急停止(Eストップ)論理デバイス
68 内部及び外部のコントローラエリアネットワーク(CAN)
70 デジタル及びアナログの入出力装置
80 RS−232ポート及びRS−422ポート
82 一連の移動中の小さい長方形
82 移動障害物
84 トレーラ
1201 コンピュータシステム
1202 バス
1203 内部プロセッサ
1204 メモリ、メインメモリ
1205 リードオンリメモリ(ROM)
1207 ハードディスク、記憶装置
1208 リムーバブルメディアドライブ、記憶装置
1213 通信インタフェース
1214 ネットワークリンク
1215 ローカルエリアネットワーク(LAN)、ネットワーク
1216 通信ネットワーク、ネットワーク
1217 入力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナビゲーション及び制御システムであって、
乗物の位置及び進行方向を示すポジション信号を生成するように構成される1つまたは複数のポジションセンサと、
入力を有し、前記乗物の動作を制御する出力を生成する1つまたは複数の動作制御機構と、
前記動作制御機構から遠隔配置される内蔵式自律型制御器とを備え、
前記内蔵式自律型制御器が、
前記ポジションセンサから前記ポジション信号を受信し、前記乗物の更新された移動経路を定める動作制御信号を生成するように構成されるプロセッサ、ならびに
前記ポジションセンサ、前記動作制御機構、及び前記プロセッサの間で通信を行い、前記ポジションセンサからの前記プロセッサへの入力を正規化し、前記動作制御機構への前記入力として加えられる適合する動作制御信号を生成するように構成されるプログラマブルインタフェースを備え、
それによって前記内蔵式自律型制御器が、様々な異なるセンサ及び異なる動作制御機構と共に動作するように構成可能である
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記乗物の移動経路に関して物体を示す物体信号を生成するように構成される1つまたは複数の物体センサをさらに備え、
前記プロセッサが、前記物体センサから前記物体信号を受信し、前記乗物の前記移動経路に関して静止している物体及び移動している物体を、前記物体信号から識別し、識別された前記静止物体及び前記移動物体ならびに前記ポジション信号を考慮して前記更新された移動経路を定める動作制御信号を生成するように構成される
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プログラマブルインタフェースが、前記ポジションセンサ、前記物体センサ、前記動作制御機構、及び前記プロセッサの間で通信を行うように構成され、前記物体センサからの前記プロセッサへの入力を正規化するように構成される
ことを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記物体センサが、前記ビームを生成し、前記物体からの前記ビームの反射を検出するように構成される光検出測距装置を備える
ことを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記物体センサが、前記ビームを生成し、前記物体からの放出ビームの波長における反射を検出するように構成されるレーザレーダ装置を備える
ことを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
前記物体センサが、物体が識別される前記移動経路の画像を提供するように構成されるカメラを備える
ことを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項7】
プログラミング命令を前記プログラマブルインタフェースに入れるように構成されるプログラムインタフェースをさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記プロセッサが、方向制御命令及び速度制御命令のうちの少なくとも1つをドライブバイワイヤ形式で前記動作制御機構に供給し、それによって前記プロセッサが、エンジンのスロットリング、乗物のステアリング、及び乗物のブレーキングのうちの少なくとも1つを電気的に制御するように構成される
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記移動経路に沿ったウェイポイントの論理マップを記憶するように構成されるマップ記憶エリアをさらに備え、
前記論理マップが、あるウェイポイントから別のウェイポイントへの方向、前記ウェイポイントの地理空間座標、前記乗物の移動経路に沿った道路の交差点、及び異なるウェイポイントの間の移動に関連した時間のうちの少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記プロセッサが、物体ポジションと前記ウェイポイントの前記地理空間座標との比較によって前記乗物付近の物体が前記ウェイポイントであるかどうかを判定するための障害物識別アルゴリズムによってプログラムされる
ことを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記ポジションセンサが、全地球測位システム装置、または慣性航行システムのうちの少なくとも1つを備える
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記プロセッサが、
前記乗物付近の物体のポジション、速度、及び幾何学的形状を識別し、時間内に前記識別された物体の前記ポジション及び前記速度を予測し、前記識別された物体の将来のポジションを推定するように構成される可変構造オブザーバを備える
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記プロセッサが、
前記移動経路に関して、2つのウェイポイントの間の交通パターンの記録に基づいて、前記2つのウェイポイントの間の前記乗物のルートを決定するように構成されるルート発見アルゴリズムを含む
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記ルート発見アルゴリズムが、前記2つのウェイポイントの間の移動時間の記録、前記2つのウェイポイントの間の渋滞エリアの履歴、及び渋滞のリアルタイム報告のうちの少なくとも1つに基づいて前記ルートを決定するように構成される
ことを特徴とする請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記ルート発見アルゴリズムが、前記2つのウェイポイントの間のいくつかの特定の移動ルートについての各重み付き平均に基づいて前記ルートを決定するように構成され、
各重み付き平均が、前記2つのウェイポイントの間の前記移動時間の記録、前記2つのウェイポイントの間の前記渋滞エリアの履歴、及び前記渋滞のリアルタイム報告のうちの前記少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記移動経路の画像を提供するように構成されるカメラをさらに備え、
前記画像に基づいて、前記プロセッサが、自律乗物の前記移動経路のための車線を識別する
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記プロセッサが、前記識別された車線に障害物があるかどうかを判定するように構成される
ことを特徴とする請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記プロセッサが、静止物体または移動物体のうちの少なくとも1つの周りに回避経路を決定するように構成される
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記プロセッサが、前記静止物体または前記移動物体との衝突の見込みを予測することによって、前記回避経路を決定するように構成され、
第1の行動として、前記回避経路について第1の解決策が存在するかどうかを判定するために、乗物の速度が、前記移動経路に沿って修正され、
第2の行動として、前記第1の解決策が存在しなければ、前記回避経路について第2の解決策が存在するかどうかを判定するために、前記スライディングモードアルゴリズムにおける進路変更操縦が、前記移動経路に沿って実施され、
第3の行動として、前記第1の解決策または前記第2の解決策が存在しなければ、前記乗物が停止させられる
ことを特徴とする請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記プロセッサが、前記静止物体及び前記移動物体を回避するために最適軌跡を予測するためのスライディングモードプログラムを利用する仮想経路解析に基づいて前記回避経路を決定するように構成され、
前記スライディングモード解析が、1)前記移動経路からの前記乗物の移動点(x(s),y(s))、2)前記移動経路からの前記乗物の距離s(t)、及び3)前記移動点(x(s(t)),y(s(t)))からの実際の乗物ポジション(x(t),y(t))の誤差ベクトルE(t)に基づいてステアリングコマンドを生成するようにプログラムされ、
前記誤差ベクトルE(t)が、前記乗物を、前記移動経路から逸脱させるか、または前記移動経路への進入路から逸脱させることができる時間に依存する非線形の要因に対応する
ことを特徴とする請求項18に記載のシステム。
【請求項21】
乗物をナビゲーション及び制御する方法であって、
乗物の位置及び進行方向を示すポジション信号を生成する段階と、
プログラマブルインタフェースによって前記ポジション信号を正規化して、正規化されたポジション信号を生成する段階と、
前記正規化されたポジション信号から動作制御信号を生成する段階と、
前記プログラマブルインタフェースによって前記動作制御信号を正規化して、前記乗物の更新された移動経路に沿って前記乗物の動作を制御する正規化された動作制御信号を生成する段階と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項22】
乗物を含む運転可能な装置であって、
前記乗物が、
乗物の位置及び進行方向を示すポジション信号を生成するように構成される1つまたは複数のポジションセンサと、
入力を有し、前記乗物の動作を制御する出力を生成する1つまたは複数の動作制御機構と、
少なくとも1つの前記動作制御機構から遠隔配置される内蔵式自律型制御器とを備え、
前記内蔵式自律型制御器が、
前記ポジションセンサから前記ポジション信号を受信し、前記乗物の更新された移動経路を定める動作制御信号を生成するように構成されるプロセッサ、ならびに
前記ポジションセンサ、前記動作制御機構、及び前記プロセッサの間で通信を行い、前記ポジションセンサからの前記プロセッサへの入力を正規化し、前記動作制御機構への前記入力として加えられる適合する動作制御信号を生成するように構成されるプログラマブルインタフェースを備え、
それによって前記内蔵式自律型制御器が、様々な異なるセンサ及び異なる動作制御機構と共に動作するように構成可能である
ことを特徴とする装置。
【請求項23】
前記乗物が、陸上乗物を含む
ことを特徴とする請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記陸上乗物が、自動車、トラック、スポーツ汎用車、レスキュー乗物、農業乗物、採鉱乗物、伴走乗物、玩具乗物、偵察乗物、テストトラック乗物、及び装甲乗物のうちの少なくとも1つ含む
ことを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記乗物が、船艇を含む
ことを特徴とする請求項22に記載の装置。
【請求項26】
前記船艇が、ボート、船、バージ船、タンカ、水陸両用車、ホバークラフト、及び装甲船のうちの少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記乗物が、運転手に支援された制御のない自律乗物を含む
ことを特徴とする請求項22に記載の装置。
【請求項28】
前記乗物が、コンピュータ支援制御を用いて運転手により制御された乗物を含む
ことを特徴とする請求項22に記載の装置。
【請求項29】
前記プロセッサが、運転手の機能障害を認識するように構成される
ことを特徴とする請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記プロセッサが、生体計測センサから、または前記乗物の運転手制御の解析から、運転手の機能障害を認識するように構成される
ことを特徴とする請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記プロセッサが、入力コマンドがある場合に、前記乗物を制御するように構成される
ことを特徴とする請求項28に記載の装置。
【請求項32】
乗物内のプロセッサ上で実行するためのプログラム命令を含むコンピュータ可読媒体であって、前記プログラム命令が、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
乗物の位置及び進行方向を示すポジション信号を受信し、プログラマブルインタフェースによって前記ポジション信号を正規化して、正規化されたポジション信号を生成し、
前記正規化されたポジション信号から動作制御信号を生成し、
前記動作制御信号を前記プログラマブルインタフェースに出力して、前記乗物の更新された移動経路に沿って前記乗物の動作を制御する正規化された動作制御信号を生成する
という機能を実行させることを特徴とするコンピュータ可読媒体。
【請求項33】
ナビゲーション及び制御システムであって、
入力を有し、乗物の動作を制御する出力を生成する1つまたは複数の動作制御機構と、
1)移動経路からの前記乗物の移動点(x(s),y(s))、2)前記移動経路からの前記乗物の距離s(t)、及び3)前記移動点(x(s(t)),y(s(t)))からの実際の乗物ポジション(x(t),y(t))の誤差ベクトルE(t)に基づいてステアリングコマンドを生成するように構成されるプロセッサと
を備え、
前記誤差ベクトルE(t)が、前記乗物を、前記移動経路から逸脱させるか、または前記移動経路への進入路から逸脱させることができる時間に依存する非線形の要因に対応する
ことを特徴とするシステム。
【請求項34】
前記プロセッサが、形式“d/dtE(t)=−kE(t)”の微分方程式を満たし、最適移動方向についてゼロに収束する前記誤差ベクトルE(t)に基づいて、前記乗物の移動方向を決定するように構成される
ことを特徴とする請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
前記移動経路に沿った前記移動点(x(s),y(s))の決定における前記プロセッサが、前記決定において、前輪速度、後輪速度、中間の滑り度、及び乗物のスリップのうちの少なくとも1つを含む前記非線形の要因を含む
ことを特徴とする請求項33に記載のシステム。
【請求項36】
前記移動経路に沿った前記移動点(x(s),y(s))の決定における前記プロセッサが、前記決定において、前記非線形の要因を説明するための前記移動経路に対するs(t)の時間微分を含む
ことを特徴とする請求項33に記載のシステム。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A(1)】
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【図3A(2)】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図13】
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【公表番号】特表2012−507088(P2012−507088A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533404(P2011−533404)
【出願日】平成21年10月26日(2009.10.26)
【国際出願番号】PCT/US2009/062059
【国際公開番号】WO2010/048611
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(511099629)グレイ・アンド・カンパニー・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】