説明

自由回転環状体型ブレーキ装置

【課題】交通機関の車輪や工作機械の回転軸等の回転部分と静止部分との間に自由回転環状体を介装することにより、各摩擦摺動部分における相対回転数を低下させ、制動に伴う発熱量を低減させつつ制動力を高める。
【解決手段】変速機等に内蔵されているリングギヤ35とプラネタリキャリヤ32との間に第1の自由回転環状体50および第2の環状体60を介装し、押動手段70によってこれらを押動して摩擦係合させることにより、回転軸23の回転を制動可能な自由回転環状体型ブレーキ装置を構成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種交通機関の車輪や工作機械等における回転軸の回転を制動するための自由回転環状体型ブレーキ装置に関し、より詳しくは、遊星歯車機構と組み合わせることによりその適用可能範囲をさらに拡げるとともに、部品点数の増加および既存の機械の改造を最小限に抑え、さらには車輪や回転軸の回転を滑らかにかつ少ない発熱量で制動可能とする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
本願発明の発明者らは、自動車や鉄道車両等の各種交通機関および工作機械等における回転軸の回転を制動するための新規な構造のブレーキ装置を開発し、先に出願している(下記、特許文献1,2を参照)。
【0003】
このブレーキ装置の構造について図34を参照しつつ概説すると、回転軸1には、その軸線方向にスライド自在な第1の回転体2が一体に回転するように支持されている。
また、回転軸1に固設されて一体に回転する第1歯車3には、支持腕4に支持された支軸5上で回転自在な第2歯車6と噛み合っている。
そして、支軸5上で第2歯車6と一体に回転する第3歯車7は、回転軸1上に相対回転自在に支持されている第4歯車8と噛み合っている。
さらに、第4歯車8には一体に回転する第2の回転体9が連設され、回転軸1上で回転自在となっている。
そして、第1の回転体2の回転数N1は回転軸1の回転数に等しいが、第2の回転体9の回転数N2は、第1〜第4歯車3,6,7,8における減速作用あるいは増速作用によって第1の回転体2の回転数N1とは異なっている。
【0004】
このとき、図34中に矢印Pで示したように、第1の回転体2を第2の回転体9に向かって軸線方向に押動し、その摩擦面2aと第2の回転体9の摩擦面9aとを摩擦接触させると、第1および第2の回転体2,9間に制動力が作用する。
この制動力は、第1歯車3と第2歯車6との間の相対回転を制動するように作用する。
そして、第1歯車3と第2歯車6との間の相対回転数がゼロになると、第1歯車3と第2歯車6とは一体化し、第2歯車6は回転軸1の軸線回りに公転しようとする。
ところが、第2歯車6は、静止部分である支持腕4および支軸5によって支持されているから、回転軸1の軸線回りに公転することはできず、したがって回転軸1は回転できなくなって停止する。
すなわち、この先願に係るブレーキ装置は、静止部分である支持腕4および支軸5によって回転軸1の回転を制動する構造である。
そして、その制動力の大きさは、第1および第2の回転体2,9間に生じる摩擦力を増減することによって制御することができる。
【0005】
さらに、第1〜第4歯車3,6,7,8における減速比あるいは増速比を調整することにより、例えば第1の回転体2が1000rpmで回転しているときに、第2の回転体9の回転数を1100rpmとすることができる。
このとき、1000rpmで回転している第1の回転体2と静止部分である支持腕4あるいは支軸5との間に制動力を作用させると、1000rpmの回転数差を吸収しなければならないが、1000rpmで回転している第1の回転体2と1100rpmで回転している第2の回転体9との間に制動力を作用させると、100rpmの回転数差を吸収すれば良く、制動力を作用させる際に生じる衝撃力および発熱量の大きさは後者の方が大幅に小さい。
すなわち、この先願に係るブレーキ装置は、制動時に発生する衝撃力を緩和できるばかりでなく、摩擦に伴う発熱を抑制することもできるのである。
【0006】
【特許文献1】特開2003−222167号公報
【特許文献2】特開2003−222166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した先願に係るブレーキ装置は、回転軸1の回転を制動するために、第1〜第4の歯車3,6,7,8と、静止部分としての支持腕4および支軸5とを必要としている。
これに伴い、既存の交通機関や工作機械等にこのブレーキ装置を組み込もうとすると、構造の大幅な変更や部品点数の増加は避けられない。
【0008】
そこで本発明の目的は、上述した先願に係るブレーキ装置をさらに改良し、既存の交通機関や工作機械等にこのブレーキ装置を組み込むときに生じる部品点数の増加や改造を最小限に抑えることができるとともに、構造が簡単で小型軽量かつ低コストでありながら、優れた性能を有するブレーキ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための請求項1に記載した手段は、
遊星歯車機構(30)と同軸に配設された回転軸(23)の回転を制動するためのブレーキ装置であって、
前記遊星歯車機構(30)を構成するサンギヤ(31)、プラネタリギヤ(34)、リングギヤ(35)のうちのいずれか1つを回転不能に固定する固定手段(20)と、
前記サンギヤ(31)、プラネタリギヤ(34)、リングギヤ(35)のうち前記固定手段(20)によって固定されていないもののうちいずれか一方(34)と前記回転軸(23)とを接続して前記回転軸(23)によって回転駆動されるようにする接続手段(32)と、
前記サンギヤ(31)、プラネタリギヤ(34)、リングギヤ(35)のうち前記固定手段(20)によって固定されていないもののうちいずれか他方(35)と一体に回転する従動手段(35a)と、
前記回転軸(23)と同軸で前記回転軸(23)の軸線方向に変位自在に、かつ前記回転軸(23)の回りに回転自在に配設された第1の自由回転環状体(50)と、
前記回転軸(23)と同軸にかつ前記軸線方向に変位自在に支持されて前記接続手段(32)および前記従動手段(35a)のうちいずれか一方と一体に回転する第1の環状体(60)と、
前記固定手段(20)、前記接続手段(32)、前記従動手段(35a)のいずれかに向かって前記第1の環状体(60)および前記第1の自由回転環状体(50)を前記軸線方向に一体に押動し、これらの環状体を互いに密着させて摩擦係合させる、前記固定手段(20)に支持された押動手段(70)と、を備えることを特徴とする自由回転環状体型ブレーキ装置(100,200,300,500,600)である。
【0010】
すなわち、請求項1に記載した自由回転環状体型ブレーキ装置においては、遊星歯車機構(30)を構成するサンギヤ(31)、プラネタリギヤ(34)、リングギヤ(35)の3つの要素のうち、例えばサンギヤ(31)を固定手段(20)に固定して回転不能とすると、残りの2つの要素(34,35)、したがって接続手段(32)と従動手段(35a)とが相対回転する。
そこで、第1の自由回転環状体(50)および第1の環状体(60)を用いて接続手段(32)と従動手段(35a)とを摩擦係合させ、その相対回転を制動すると、接続手段(32)および従動手段(35a)の固定手段(20)に対する相対回転を制動することができるから、接続手段(32)を介して回転軸(23)の回転を制動することができる。
言い換えると、請求項1に記載したブレーキ装置においては、遊星歯車機構の相対回転する2つの要素(接続手段および従動手段)と第1の自由回転環状体(50)および第1の環状体(60)とが、図34に示した先願に係るブレーキ装置における第1および第2の回転体2,9に相当し、かつ固定手段(20)が支持腕4および支軸5に相当している。
これにより、各種交通機関や工作機械等の動力伝達系に設けられている既存の遊星歯車機構をそのまま活用しつつ、第1の自由回転環状体(50)、第1の環状体(60)、および押動手段(70)とを追加することにより、その回転軸(23)を制動するブレーキ装置を構成することができる。
【0011】
また、回転軸(23)とその周囲の静止部分(20)との間で制動をかけると、相対回転数の大きい部分を制動することになり、制動に伴って発生する衝撃力や発熱量も大きくなる。
そして、発熱に伴って摩擦係数が変動するため、制動力の大きさを一定に保つことが困難となる。
これに対して、請求項1に記載したブレーキ装置は、遊星歯車機構(30)において相対回転数の小さい2つの回転要素間で制動をかけることによって回転軸(23)を制動するものであるから、制動に伴って発生する衝撃力や発熱量を小さくすることができる。
これにより、摩擦係数の変動を抑制して安定した制動力を得ることができるばかりでなく、発熱に伴うフェード現象の発生もなく、長時間にわたって一定な制動力を得ることができる。
さらに、第1の自由回転環状体(50)および第1の環状体(60)の摩耗を最小限に抑えることができるから、長い寿命時間を確保することもできる。
【0012】
また、請求項2に記載した手段は、請求項1に記載した自由回転環状体型ブレーキ装置に対し、
前記回転軸(23)と同軸にかつ前記の軸線方向に変位自在に前記押動手段(70)に支持された第2の環状体(75,76)を追加するとともに、
前記押動手段(70)が、前記第1の自由回転環状体(50)、前記第1の環状体(60)および前記第2の環状体(75,76)を前記軸線方向に一体に押動し、互いに密着させて摩擦係合させるように構成したことを特徴としている。
【0013】
すなわち、請求項2に記載した自由回転環状体型ブレーキ装置(100,200,300,500,600)は、第2の環状体(75,76)を用いて、接続手段(32)および従動手段(35a)のうちのいずれか一方(35a)と固定手段(20)とを摩擦係合させるものであるから、接続手段(32)および従動手段(35a)と固定手段(20)との間の相対回転、したがって回転軸(23)の回転をさらに強力に制動することができる。
【0014】
また、請求項3に記載した手段は、請求項2に記載した自由回転環状体型ブレーキ装置に対し、
前記回転軸(23)と同軸で前記軸線方向に変位自在に、かつ前記回転軸(23)の回りに回転自在に、前記第2の環状体(75,76)と前記第1の環状体(60)との間に配設された第2の自由回転環状体(80)を追加するとともに、
前記押動手段(70)が、前記第2の環状体(75,76)、前記第2の自由回転環状体(80)、前記第1の環状体(60)、および前記第1の自由回転環状体(50)を前記軸線方向に一体に押動し、互いに密着させて摩擦係合させるように構成したことを特徴としている。
【0015】
すなわち、請求項3に記載したブレーキ装置(300)は、第1の環状体(60)と第2の環状体(75,76)との間に第2の自由回転環状体(80)を配設したものである。
そして、この第2の自由回転環状体(80)は、第1の環状体(60)と第2の環状体(75,76)との間、したがって接続手段(32)および従動手段(35a)のうちのいずれか一方(35a)と固定手段(20)との間において自由に相対回転することができるから、接続手段および従動手段のうちのいずれか一方(35a)と固定手段(20)との間の相対回転速度差が大きい場合でも、この相対回転速度差を滑らかに吸収することができる。
さらに、第2の自由回転環状体(80)を介装したことによって第1の環状体(60)と第2の環状体(75,76)との間に摩擦摺動面が追加されるから、接続手段および従動手段のうちのいずれか一方(35a)と固定手段(20)との間における摩擦制動力が増加することになり、接続手段(32)および従動手段(35a)の固定手段(20)に対する相対回転、したがって回転軸(23)の回転をより一層強力に制動することができる。
【0016】
また、請求項4に記載した手段は、請求項3に記載した自由回転環状体型ブレーキ装置に対し、
前記回転軸(23)と同軸にかつ前記軸線方向に変位自在に支持されて、前記接続手段(32)および前記従動手段(35a)のうちいずれか他方(32)と一体に回転する、前記第1の自由回転環状体(50)あるいは前記第2の自由回転環状体(80)と前記固定手段(20)との間に配設された第3の環状体(90)を追加するとともに、
前記押動手段(70)が、前記第2の環状体(75,76)、前記第3の環状体(90)、前記第2の自由回転環状体(80)、前記第1の環状体(60)、および前記第1の自由回転環状体(50)を前記軸線方向に一体に押動し、互いに密着させて摩擦係合させるように構成したことを特徴とする。
【0017】
すなわち、請求項4に記載したブレーキ装置(500)は、接続手段(32)および従動手段(35a)のうちいずれか他方と一体に回転する第3の環状体(90)を追加したものである。
これにより、第1の自由回転環状体(50)あるいは第2の自由回転環状体(80)と固定手段(20)の間に摩擦摺動面が追加されるから、接続手段および従動手段のうちのいずれか他方(32)と固定手段(20)との間における摩擦制動力が増加することになり、接続手段(32)および従動手段(35a)の固定手段(20)に対する相対回転、したがって回転軸(23)の回転をさらに強力に制動することができる。
【0018】
また、請求項5に記載した手段は、請求項1〜4のいずれかに記載した自由回転環状体型ブレーキ装置において、前記第1の自由回転環状体(50)が、前記軸線方向に積層されて相互に摺動自在な複数の環状部材(51,52,53,54)から構成されていることを特徴とする。
【0019】
すなわち、請求項5に記載したブレーキ装置(100,200,300,500,600)においては、第1の自由回転環状体(50)を構成する互いに積層された複数の環状部材のうち、隣接する環状部材同士が少ない回転速度差で相互に摺動することができる。
これにより、接続手段(32)と従動手段(35a)との間の回転速度差が大きい場合でも、第1の自由回転環状体(50)の全体として、この大きな回転速度差を滑らかに吸収することができる。
さらに、接続手段(32)、従動手段(35a)、および固定手段(20)のいずれか一つと第1の環状体(60)との間に多くの摩擦摺動面が追加されるから、接続手段(32)、従動手段(35a)、固定手段(20)の間における摩擦制動力が増加することになり、回転軸(23)の回転をより強力に制動することができる。
【0020】
また、請求項6に記載した手段は、請求項3〜5のいずれかに記載した自由回転環状体型ブレーキ装置において、前記第2の自由回転環状体(80)が、前記軸線方向に積層されて相互に摺動自在な複数の環状部材(81,82,83,84,85)から構成されていることを特徴とする。
【0021】
すなわち、請求項6に記載したブレーキ装置(300,500,600)においては、第1の環状体(60)と第2の環状体(75,76)との間に、回転軸(23)の軸線方向に積層されて相互に摺動自在な複数の環状部材(81,82,83,84:全体で見れば第2の自由回転環状体(80)が介装されることになる。
そして、積層された複数の環状部材は、隣接する環状部材同士が少ない回転速度差で相互に摺動することができる。
これにより、接続手段および従動手段のうちのいずれか一方(35a)と固定手段(20)との間における回転速度差が大きい場合でも、第2の自由回転環状体(80)の全体として、この大きな回転速度差を滑らかに吸収することができる。
さらに、第1の環状体(60)と第2の環状体(75,76)との間に多くの摩擦摺動面が追加されるから、接続手段(32)、従動手段(35a)、固定手段(20)の間における摩擦制動力が増加することになり、回転軸(23)の回転をさらに強力に制動することができる。
【0022】
また、請求項7に記載した手段は、請求項5または6に記載した自由回転環状体型ブレーキ装置において、
前記複数の環状部材の1つ(51,81)が前記回転軸(23)と同軸な円筒部分(51a,81a)を有しており、かつ他の環状部材(52,53,54,82,83,84)が前記円筒部分(51a,81a)の外周面に摺動自在に外嵌されていることを特徴とする。
なお、前記円筒部分は、回転軸(23)、接続手段(32)、従動手段(35a)、あるいは固定手段(20)に対し、軸受(55,85)を用いて回転自在に支持することができる。
【0023】
すなわち、請求項7に記載したブレーキ装置(100,200,300,500,600)によれば、第1の自由回転環状体(50)および第2の自由回転環状体(80)を構成する複数の環状部材のそれぞれを、簡単な構造でかつ確実に、回転自在に支持することができる。
【0024】
また、請求項8に記載した手段は、請求項1乃至7のいずれかに記載した自由回転環状体型ブレーキ装置において、
前記遊星歯車機構(30)が、前記サンギヤ(31)を前記固定手段に固定し、前記プラネタリギヤ(34)を前記回転軸(23)によって回転駆動して、前記リングギヤ(35)から増速された回転駆動力を取り出すように構成されていることを特徴とする。
【0025】
すなわち、請求項8に記載したブレーキ装置(100)は、増速作用を行う遊星歯車機構、例えば自動車の変速機に設けられているオーバードライブ装置に並設するものである。
これにより、既存のオーバードライブ装置をそのまま流用して本発明のブレーキ装置を構成することができるから、自動車の変速機等を大幅に改造する必要なしに組み込むことが可能となり低コストなブレーキ装置とすることができる。
【0026】
また、請求項9に記載した手段は、請求項8に記載した自由回転環状体型ブレーキ装置に対し、
前記回転駆動力を出力する出力軸(24)と、
前記回転軸(23)を前記出力軸(24)に接続した状態と前記リングギヤ(35)を前記出力軸(24)に接続した状態とを選択的に切り換え可能な切換手段(40)と、を追加したことを特徴としている。
【0027】
すなわち、請求項9に記載したブレーキ装置(100)は、回転軸(23)に出力軸(24)を接続した直結状態と、遊星歯車機構のリングギヤ(35)に出力軸(24)を接続したオーバードライブ状態とを切り換えることができるように構成されているから、そのまま自動車の変速機に組み込んでオーバードライブ装置として用いることができる。
また、直結状態およびオーバードライブ状態のいずれにおいても、回転軸(23)の回転を確実に制動することができる。
【0028】
また、請求項10に記載した手段は、請求項9に記載した自由回転環状体型ブレーキ装置において、前記出力軸(24)が、自動車のプロペラシャフト(104)および終減速機(105)を介して左右の駆動輪(106L,106R)に接続されることを特徴としている。
【0029】
すなわち、請求項10に記載したブレーキ装置(100)においては、回転軸(23)の回転に制動をかけることにより、自動車のプロペラシャフト(104)および終減速機(105)を介して左右の駆動輪(106L,106R)の両方に同時にブレーキをかけることができるから、左右の駆動輪に個別にブレーキを設ける必要がない。
また、自動車の終減速機における減速比は1:3〜1:10程度であるから、回転軸の回転にかける制動力が小さくとも、大きな制動力を左右の駆動輪に作用させることができる。
さらに、終減速機(105)に組み込まれている差動歯車機構を介して左右の駆動輪に等しい制動力を負荷することができるから、制動が片効きすることもなく、走行安定性を高めることができる。
【0030】
また、請求項11に記載した手段は、請求項1〜7に記載した自由回転環状体型ブレーキ装置において、前記遊星歯車機構(30)が、電気自動車の駆動輪の内側に配設されたインホイールモータ(11)の駆動出力を減速するための減速機構として構成されていることを特徴とする。
【0031】
すなわち、電気自動車の駆動輪の内側に配設されるインホイールモータ(11)は、一般的に、電気モータと減速機としての遊星歯車機構(12)とを組み合わせたものであるが、このインホイールモータ自体には駆動輪(15)の回転を制動する機能はなく、従来自動車に使用しているディスクブレーキあるいはドラムブレーキ(13)をそのまま併用する必要がある。
このとき、本発明のブレーキ装置(400)をこのインホイールモータの遊星歯車機構(30)に並設すると、インホイールモータ(11)によって駆動輪(15)の回転を制動できることになるから、ディスクブレーキあるいはドラムブレーキ(13)を不要とすることができる。
これに伴い、ディスクブレーキあるいはドラムブレーキの分の重量をなくすことができるから、電気自動車のインホイールモータにおいて問題となっている「ばね下重量の増加」の問題を大きく改善することができる。
【0032】
また、請求項12に記載した手段は、請求項2乃至11のいずれかに記載した自由回転環状体型ブレーキ装置において、
前記第1の環状体(60)が、前記接続手段(32)および前記従動手段(35a)のうち前記固定手段(20)に対する相対回転速度差が大きい方と一体に回転するように支持されていることを特徴とする。
【0033】
すなわち、遊星歯車機構(30)のリングギヤ(35)を回転不能に固定しつつ、回転軸(23)によってプラネタリキャリヤ(32)を回転駆動し、サンギヤ(31)を従動回転させると、サンギヤ(31)の回転数は回転軸(23)の回転数を大きく上回ることになり、遊星歯車機構(30)は増速機構として作用する。
同様に、遊星歯車機構(30)のサンギヤ(31)を回転不能に固定しつつ、回転軸(23)によってプラネタリキャリヤ(32)を回転駆動し、リングギヤ(35)を従動回転させると、リングギヤ(35)の回転数は回転軸(23)の回転数を上回ることになり、遊星歯車機構(30)は増速機構として作用する。
これにより、従動手段と固定手段との間の相対回転数は、回転軸(23)したがって接続手段と固定手段との間の相対回転数よりも大幅に高くなる。
このとき、従動手段と一体に回転するように支持した第1の環状体(60)と固定手段に支持されている第2の環状体(75,76)との間の相対回転数はかかなり高くなるから、両環状体を接触させると従動手段は急激に減速されることになり、回転軸(23)の制動特性を敏感なものとすることができる。
したがって、この構造の自由回転環状体型ブレーキ装置(200,240)は、例えばスポーツ車両のように敏感なブレーキ特性を必要とする用途に適したものとなる。
【0034】
また、請求項13に記載した手段は、請求項2乃至11のいずれかに記載した自由回転環状体型ブレーキ装置において、
前記第1の環状体(60)が、前記接続手段(32)および前記従動手段(35a)のうち前記固定手段(20)に対する相対回転速度差が小さい方と一体に回転するように支持されていることを特徴とする。
【0035】
すなわち、遊星歯車機構(30)のリングギヤ(35)を回転不能に固定しつつ、回転軸(23)によってサンギヤ(31)を回転駆動し、プラネタリキャリヤ(32)を従動回転させると、プラネタリキャリヤ(32)の回転数は回転軸(23)の回転数を大きく下回ることになり、遊星歯車機構(30)は減速機構として作用する。
同様に、遊星歯車機構(30)のサンギヤ(31)を回転不能に固定しつつ、回転軸(23)によってリングギヤ(35)を回転駆動し、プラネタリキャリヤ(32)を従動回転させると、プラネタリキャリヤ(32)の回転数は回転軸(23)の回転数を下回ることになり、遊星歯車機構(30)は減速機構として作用する。
これにより、プラネタリキャリヤ(32)したがって従動手段と固定手段との間の相対回転数は、回転軸(23)したがって接続手段と固定手段との間の相対回転数よりも大幅に低くなる。
このとき、従動手段と一体に回転するように支持した第1の環状体(60)と固定手段に支持されている第2の環状体(75,76)との間の相対回転数はかなり小さくなるから、両環状体を接触させると従動手段は緩やかに減速されることになり、回転軸(23)の制動特性を穏やかなものとすることができる。
したがって、この構造のブレーキ装置250は、鉄道車両のようにスムーズなブレーキ特性を必要とする用途に適したものとなる。
【0036】
また、請求項14に記載した手段は、請求項1乃至13のいずれかに記載した自由回転環状体型ブレーキ装置に対し、
前記回転軸(23)から前記接続手段(32)への回転駆動力の伝達を断接する、前記回転軸(23)と前記接続手段(32)との間に介装されたクラッチ(601)と、
このクラッチ(601)の作動を制御するクラッチ制御手段と、を追加するとともに、
前記クラッチ制御手段は、前記回転軸(23)の制動を表す信号が入力したときに前記クラッチ(601)を作動させて前記回転軸(23)と前記接続手段(32)とを接続させるように構成したことを特徴とする。
【0037】
すなわち、請求項14に記載した自由回転環状体型ブレーキ装置(600)においては、例えば車両の運転者がブレーキペダルを踏み込むことによって制動を表す信号が得られるまでは、クラッチ(601)が切れており、回転軸(23)と接続手段(32)とは切り離されている。
これにより、回転軸(23)と遊星歯車機構(30)との接続が断たれるから、遊星歯車機構(30)が回転慣性質量として作用して回転軸(23)の回転数の増減を妨げることがなく、かつ遊星歯車機構(30)の内部の摩擦損失が回転軸に負荷されることもない。
これに対して、車両の運転者がブレーキペダルを踏み込むことによって回転軸(23)の制動を表す信号が得られると、クラッチ(601)が作動して回転軸(23)と遊星歯車機構(30)を接続するから、ブレーキペダルの踏込操作にともなって押動手段(70)が作動するとことに伴い、本来のブレーキ装置として動作することになる。
【0038】
また、請求項15に記載した手段は、請求項1乃至14のいずれかに記載した自由回転環状体型ブレーキ装置に対し、前記環状体が互いに接触した状態を維持するように前記環状体を前記軸線方向に一体に付勢する付勢手段を追加したことを特徴とする。
【0039】
すなわち、請求項15に記載したブレーキ装置(600)においては、付勢手段(602)の作用によって第1および第2の環状体や、第1および第2の自由回転環状体等が互いに接触した状態に維持されるから、押動手段(70)を作動させると直ちにブレーキ作用が生じることになる。
なお、請求項14に記載したクラッチ(601)を併用することにより、回転軸(23)と遊星歯車機構(30)との接続を断つことができるから、付勢手段が及ぼす付勢力によって各環状体の間にわずかに作用する摺動摩擦がブレーキ力として回転軸(23)に作用することを確実に防止することができる。
【0040】
また、請求項16に記載した自由回転環状体型ブレーキ装置は、
静止部分(701)によって回転自在に支持された回転軸(702)と、
前記回転軸(702)と一体に回転する第1の回転体(703)と、
前記回転軸(702)と同軸にかつ前記回転軸(702)の軸線方向に変位自在に、さらに前記静止部分(701)によって回転不能に支持された固定体(704)と、
前記回転軸(702)に対して同軸にかつ相対回転自在に、さらに前記回転軸(702)の軸線方向に変位自在に前記第1の回転体(703)と前記固定体(704)との間に介装された第2および第3の回転体(705,706)と、
前記第1〜第3の回転体(703,705,706)と前記固定体(704)との間にそれぞれ介装された第1〜第3の自由回転環状体(720,721,722)と、
前記第2および第3の回転体(705,706)がそれぞれ前記第1の回転体(703)とは異なる回転数で回転するように前記回転軸(702)の回転を前記第2および第3の回転体(705,706)にそれぞれ伝達する、前記静止部分(701)に支持された回転伝達機構(710)と、
前記第1の回転体(703)および前記固定体(704)によって、前記第2および第3の回転体(705,706)および前記第1〜第3の自由回転環状体(720,721,722)を一体に挟持するべく、前記第1の回転体(703)および前記固定体(704)の少なくともいずれか一方を前記軸線方向に押動する、前記静止部分(20)に支持された押動手段(730)と、
を備えることを特徴とする。
【0041】
すなわち、請求項16に記載した自由回転環状体型ブレーキ装置においては、回転伝達機構(710)の作用によって、第1〜第3の回転体(703,705,706)および固定体(704)を相対回転させることができる。
そして、押動手段(730)を作動させることにより、第1の回転体(703)と固定体(704)によって第2,第3の回転体(705,706)および第1〜第3の自由回転環状体(720,721,722)を一体に挟持し、各回転体と各自由回転環状体および固定体を摩擦係合させることにより、回転軸(702)の回転を制動することができる。
このとき、回転しない固定体(704)と第3の回転体(706)とが第3の自由回転環状体(722)を間に挟んだ状態で互いに摩擦係合するので、固定体(704)と第3の回転体(706)との間の相対回転数を調整することにより、回転軸(702)の回転を制動するときのブレーキ特性を変化させることができる。
具体的に説明すると、固定体(704)と第3の回転体(706)との間の相対回転数を高く設定すると、両者の摩擦係合による第3の回転体(706)の回転数の低下が急激なものとなるから、回転軸(702)の回転を制動するときのブレーキ特性を敏感なものにできる。
これに対し、固定体(704)と第3の回転体(706)との間の相対回転数を低く設定すると、両者の摩擦係合による第3の回転体(706)の回転数の低下が緩やかなものになるから、回転軸(702)の回転を制動するときのブレーキ特性を穏やかなものにできる。
【0042】
また、請求項17に記載した手段は、請求項16に記載した自由回転環状体型ブレーキ装置において、
前記回転伝達機構(710)が、前記第2の回転体(705)の回転数が前記第1の回転体(703)の回転数よりも高く、かつ前記第3の回転体(706)の回転数が前記第2の回転体(705)の回転数よりも高くなるように構成されていることを特徴とする。
【0043】
すなわち、請求項17に記載した自由回転環状体型ブレーキ装置においては、固定体(704)と第3の回転体(706)との間の相対回転数を高く設定しながら、第1の回転体(703)と第3の回転体(706)との間の相対回転を、第2の回転体(705)、第1および第2の自由回転環状体(720,721)の相対回転によって滑らかに吸収することができる。
これにより、摩擦係数の変動を抑制して安定した制動力を得ることができるばかりでなく、発熱に伴うフェード現象の発生も少なく長時間にわたって一定な制動力を得ることができ、さらには第1〜第3の回転体と第1および第2の自由回転環状体の寿命を長くすることができる。
【0044】
また、請求項18に記載した手段は、請求項16に記載した自由回転環状体型ブレーキ装置において、
前記回転伝達機構(710)が、前記第2の回転体(705)の回転数が前記第1の回転体(703)の回転数よりも低く、かつ前記第3の回転体(706)の回転数が前記第2の回転体(705)の回転数よりも低くなるように構成されていることを特徴とする。
【0045】
すなわち、請求項18に記載した自由回転環状体型ブレーキ装置においては、固定体(704)と第3の回転体(706)との間の相対回転数を低く設定しながら、第1の回転体(703)と第3の回転体(706)との間の相対回転を、第2の回転体(705)、第1および第2の自由回転環状体(720,721)の相対回転によって滑らかに吸収することができる。
これにより、摩擦係数の変動を抑制して安定した制動力を得ることができるばかりでなく、発熱に伴うフェード現象の発生も少なく長時間にわたって一定な制動力を得ることができ、さらには第1〜第3の回転体と第1および第2の自由回転環状体の寿命を長くすることができる。
【0046】
また、請求項19に記載した手段は、請求項16乃至18のいずれかに記載した自由回転環状体型ブレーキ装置において、
前記第1〜第3の自由回転環状体が、前記軸線方向に同軸に積層されて相互に摺動自在な複数の環状部材から構成されていることを特徴とする。
【0047】
すなわち、請求項19に記載した自由回転環状体型ブレーキ装置(700,750)においては、第1〜第3の自由回転環状体(720,721,722)が互に摺動自在な複数の環状部材から構成される。
これにより、隣接する回転体同士あるいは回転体と固定体との間の相対回転数が大きい場合でも、この大きな相対回転数を滑らかに吸収することができる。
さらに、隣接する回転体同士あるいは回転体と固定体との間に多くの摩擦摺動面が追加されるから、回転軸(702)の回転をさらに強力に制動することができる。
【0048】
また、請求項20に記載した手段は、請求項5,6,18,19のいずれかに記載した自由回転環状体型ブレーキ装置に、前記複数の環状部材のうち隣接する環状部材同士が異なる回転速度で回転するようにそれらの間に作用する摺動摩擦の大きさを制御する摺動摩擦制御手段を追加したことを特徴とする。
【0049】
すなわち、請求項20に記載したブレーキ装置は、第1の回転体(32)と第2の回転体(60)とを摩擦係合させてその相対回転を制動することにより回転軸(23)の回転を制動するものであるが、第1および第2の回転体を摩擦係合させるために用いる複数の環状部材にその特徴がある。
すなわち、複数の環状部材(51,52,53,54)には、隣接する環状部材同士が異なる回転速度で回転するようにその摩擦摺動の大きさを制御するための摺動摩擦制御手段が設けられている。
これにより、例えば第1の回転体(32)が1000rpmで回転し、第2の回転体(60)が1100rpmで回転し、両者の間に4つの環状部材(51,52,53,54)が介装されているときに、第1の回転体(32)に隣接する第1の環状部材が1020rpmで回転し、第2の環状体が1040rpmで回転し、第3の環状体が1060rpmで回転し、第2の回転体(60)に隣接する第4の環状体が1080rpmで回転するように制御することができる。
そして、例えば第1〜第3の環状部材が互いに固着して第1の回転体と一体に1000rpmで回転し、第4の環状部材が第2の回転体と一体に1100rpmで回転することを防止することができる。
したがって、第1の回転体(32)と第2の回転体(60)との間の回転数差が大きい場合でも、複数の環状部材の全体によってこの大きな回転速度差を滑らかに吸収できる。
さらに、隣接する環状部材同士の回転数差を小さく保つことができるから、摺動摩擦に伴う発熱や摩耗の発生を最大限に抑制することができる。
加えて、第1の回転体(32)と第2の回転体(60)との間に多数の摩擦摺動面を設けることができるから、第1の回転体と第2の回転体とを摩擦係合させるための大きな摩擦力を得ることができる。
【0050】
また、請求項21に記載した手段は、請求項20に記載したブレーキ装置において、
前記摺動摩擦制御手段が、前記複数の環状部材(51,52,53,54)のうち隣接する環状部材をそれぞれ形成している金属材料の硬度を、隣接する環状部材同士において異ならせることによって構成されていることを特徴とする。
【0051】
すなわち、請求項21に記載したブレーキ装置においては、隣接している環状部材同士の金属材料硬度が異なるので、回転軸(23)の軸線方向に圧縮されたときの馴染み具合が異なることになるから、両者が固着して一体に回転することを防止して、例えば接続手段(32)と第1の環状体(60)との間に介装された複数の環状部材(51,52,53,54)がそれぞれ異なる回転数で回転するようにすることができる。
なお、隣接する環状部材の金属材料硬度は、HRC硬度で2〜10、好ましくは5〜7の差があるように設定する。
【0052】
また、請求項22に記載した手段は、請求項21に記載したブレーキ装置において、
前記複数の環状部材(51,52,53,54)が、前記硬度の高い環状部材と前記硬度の低い環状部材とを交互に並べたものであることを特徴としている。
【0053】
すなわち、請求項22に記載したブレーキ装置においては、硬度の高い環状体と硬度の低い環状体とを交互に並べることにより、例えば接続手段(32)と第1の環状体(60)との間に複数の環状部材(51,52,53,54)を介装する場合においても、隣接する環状部材同士が固着して一体に回転することを防止できる。
【0054】
また、請求項23に記載した手段は、請求項21に記載したブレーキ装置において、
前記複数の環状部材(51,52,53,54)が、前記回転軸(23)の軸線方向に前記硬度の低い順に前記環状部材を並べたものであることを特徴とする
【0055】
すなわち、請求項23に記載したブレーキ装置においては、硬度の低い順に環状部材を並べるから、例えば複数の環状部材(51,52,53,54)の個々の回転数が、接続手段(32)の側から第1の環状体(60)の側へと順に変化するように設定することができる。
【0056】
また、請求項24に記載した手段は、請求項20に記載したブレーキ装置において、
前記摺動摩擦制御手段が、前記複数の環状部材(51,52,53,54)のうち隣接する環状部材同士の直径方向の寸法を異ならせることによって構成されていることを特徴とする。
【0057】
すなわち、請求項24に記載したブレーキ装置においては、隣接する環状部材同士の外径寸法あるいは内径寸法が異なるので、回転軸(23)の軸線方向に圧縮されたときの各環状部材の外周部分あるいは内周部分の弾性変形量がそれぞれ異なるから、両者が固着して一体に回転することを防止し、例えば接続手段(32)と第1の環状体(60)との間に介装された複数の環状部材がそれぞれ異なる回転数で回転するようにすることができる。
【0058】
また、請求項25に記載した手段は、請求項24に記載したブレーキ装置において、
前記複数の環状部材(51,52,53,54)が、前記直径方向の寸法の大きい環状部材と前記直径方向の寸法の小さい環状部材とを交互に並べたものであることを特徴とする。
【0059】
すなわち、請求項25に記載したブレーキ装置においては、直径方向の寸法の大きい環状部材と直径方向の寸法の小さい環状部材とを交互に並べることにより、例えば接続手段(32)と第1の環状体(60)との間に複数の環状部材(51,52,53,54)を介装する場合においても、隣接する環状部材同士が固着して一体に回転することを防止できる。
【0060】
また、請求項26に記載した手段は、請求項24に記載したブレーキ装置において、
前記複数の環状部材(51,52,53,54)が、前記回転軸(23)の軸線方向に前記直径方向の寸法の小さい順に環状部材を並べたものであることを特徴とする。
【0061】
すなわち、請求項26に記載したブレーキ装置においては、直径方向の寸法の小さい順に環状部材を並べるから、複数の環状部材の個々の回転数が、例えば接続手段(32)の側から第1の環状体(60)の側へと順に変化するように設定することができる。
【0062】
また、請求項27に記載した手段は、請求項20に記載したブレーキ装置において、
前記摺動摩擦制御手段が、前記複数の環状部材(51,52,53,54)のうち隣接する環状部材同士の軸線方向の寸法を異ならせることによって構成されていることを特徴とする。
【0063】
すなわち、請求項27に記載したブレーキ装置においては、隣接する環状部材同士の軸線方向寸法が異なるので、回転軸(23)の軸線方向に圧縮されたときの弾性変形量が異なることになるから、両者が固着して一体に回転することを防止して、例えば接続手段(32)と第1の環状体(60)との間に介装された複数の環状部材(51,52,53,54)がそれぞれ異なる回転数で回転するようにすることができる。
【0064】
また、請求項28に記載した手段は、請求項27に記載したブレーキ装置において、
前記複数の環状部材(51,52,53,54)が、前記軸線方向の寸法の大きい環状部材と前記軸線方向の寸法の小さい環状部材とを交互に並べたものであることを特徴とする。
【0065】
すなわち、請求項28に記載したブレーキ装置においては、軸線方向の厚みの大きい環状体と厚みの小さい環状体とを交互に並べるので、例えば接続手段(32)と第1の環状体(60)との間に複数の環状部材(51,52,53,54)を介装する場合においても、隣接する環状部材同士が固着して一体に回転することを防止できる。
【0066】
また、請求項29に記載した手段は、請求項27に記載したブレーキ装置において、
前記複数の環状部材(51,52,53,54)が、前記回転軸(23)の軸線方向に、前記軸線方向の寸法の小さい順に前記環状部材を並べたものであることを特徴とする。
【0067】
すなわち、請求項29に記載したブレーキ装置においては、軸線方向寸法の小さい順に環状部材を並べるから、複数の環状部材(51,52,53,54)の個々の回転数が、例えば接続手段(32)の側から第1の環状体(60)の側へと順に変化するように設定することができる。
【0068】
また、請求項30に記載した手段は、請求項20に記載したブレーキ装置において、
前記摺動摩擦制御手段が、前記複数の環状部材(51,52,53,54)のうち隣接する環状体同士の摩擦摺動面にそれぞれ凹設した凹部の面積を異ならせることによって構成されていることを特徴とする。
【0069】
すなわち、請求項30に記載したブレーキ装置においては、隣接している環状部材同士の凹部面積が異なるので、回転軸(23)の軸線方向に圧縮されたときの弾性変形量が異なることになるから、両者が固着して一体に回転することを防止し、例えば接続手段(32)と第1の環状体(60)との間に介装された複数の環状部材がそれぞれ異なる回転数で回転するようにすることができる。
【0070】
また、請求項31に記載した手段は、請求項30に記載したブレーキ装置において、
前記複数の環状部材が、前記凹部の面積の大きい環状部材と前記凹部の面積の小さい環状部材とを交互に並べたものであることを特徴とする。
【0071】
すなわち、請求項31に記載したブレーキ装置においては、その摩擦摺動面に凹設された凹部の面積が大きい環状部材と小さい環状部材とを交互に並べるので、例えば接続手段(32)と第1の環状体(60)との間に複数の環状部材(51,52,53,54)を介装する場合においても、隣接する環状部材同士が固着して一体に回転することを防止できる。
【0072】
また、請求項32に記載した手段は、請求項30に記載したブレーキ装置において、
前記複数の環状部材(51,52,53,54)が、前記回転軸(23)の軸線方向に前記凹部の面積の小さい順に前記環状体を並べたものであることを特徴とする。
【0073】
すなわち、請求項32に記載したブレーキ装置においては、その摩擦摺動面に凹設された凹部の面積の小さい順に環状部材を並べるから、例えば複数の環状部材(51,52,53,54)の個々の回転数が、接続手段(32)の側から第1の環状体(60)の側へと順に変化するように設定することができる。
【0074】
また、請求項33に記載した手段は、交通機関の車輪(14,852)の回転を制動するためのブレーキ装置(800,850)であって、
前記車輪と一体に回転するブレーキディスク(806,853,854)と、
このブレーキディスクに向かってブレーキパッド(813,814,864,865)を押動する押動手段(812,863)と、
前記ブレーキディスクと前記ブレーキパッドとの間において前記ブレーキディスクと同軸にかつ相対回転自在に介装された自由回転環状体(820,870)と、を備えることを特徴とする。
【0075】
すなわち、請求項33に記載したブレーキ装置(800,850)は、自動車や、鉄道、航空機の車輪の回転を制動するために用いられているディスクブレーキ装置に自由回転環状体を組み合わせたものである。
このとき、一般的なディスクブレーキ装置においては、例えば時速200キロメートル/時で走行している自動車の車輪、したがってブレーキディスクは約2000回転/分の回転数で回転しているから、この車輪の回転を制動するときのブレーキパッドとブレーキディスクとの間の相対回転数は2000回転/分である。
これに対して、本発明のブレーキ装置においては、ブレーキディスクとブレーキパッドとの間に自由回転環状体が相対回転自在に介装されているから、ブレーキディスクが2000回転/分の回転数で回転しているときに、自由回転環状体をそれよりも低い回転数で回転させることができる。例えば、ブレーキパッドと自由回転環状体との間の相対回転数を1000回転/分、自由回転環状体とブレーキディスクとの間の相対回転数を1000回転/分とすることもできる。
【0076】
一方、ブレーキパッドに発生する熱量は、自動車の走行速度の2乗、したがってブレーキディスクとブレーキパッドとの間の相対回転数の2乗に比例するから、相対回転数を半減させることにより1/4に減少する。
これにより、フェード現象の発生を抑制することができるばかりでなく、ブレーキパッドの摩耗も低減させることができる。
【0077】
他方、一般的なディスクブレーキ装置においては、ブレーキパッドとブレーキディスクとの間にしか摩擦摺動面が存在しない。
これに対して、請求項33に記載したブレーキ装置においては、ブレーキパッドと自由回転環状体との間、および自由回転環状体とブレーキディスクとの間の2カ所に摩擦摺動面が存在する。
これにより、押動手段(一般的には油圧作動のピストンあるいはキャリパ)がブレーキパッドを押動する力が一定であるとすると、一般的なディスクブレーキ装置に対して2倍の制動力が得られることになる。
言い換えると、必要な制動力が一定であるとすると、押動手段がブレーキパッドを押動する力をより低減できることを意味している。
したがって、ブレーキパッドに発生する熱量をさらに低減させ、かつブレーキパッドの摩耗もさらに低減させることが可能となる。
【0078】
なお、請求項33に記載したブレーキ装置に用いる自由回転環状体は、請求項19〜請求項32に記載したものと同一の構成とすることができる。
しかしながら、より一層効果的な自由回転環状体が請求項34に記載されている。
すなわち、請求項34に記載の手段は、請求項33に記載したブレーキ装置において、前記自由回転環状体(820,870)が、前記ブレーキパッド(813,814,864,865)の側の側面が摩擦摺動面であり、かつ反対側の側面に相手側と摩擦係合する摩擦材(822a,823a,872a,873a)が設けられた、少なくとも一つの環状部材(822,823,872,873)を有していることを特徴とする。
【0079】
すなわち、請求項34に記載した自由回転環状体を用いるブレーキ装置には、ブレーキディスクと環状部材との間に摩擦材、言い換えるとブレーキライニングが存在する。
したがって、ブレーキパッドの摩擦材の摩擦係数と、各環状部材における摩擦材の摩擦係数とを異ならせることにより、ブレーキディスクに対する各環状部材の相対回転数を制御できることになる。
【0080】
また、請求項35に記載した手段は、請求項34に記載したブレーキ装置において、
複数の前記環状部材(822,823,872,873)が前記ブレーキディスクの軸線方向に同軸に積層されており、
かつ前記複数の環状部材の各摩擦材(822a,823a,872a,873a)の摩擦係数は、前記ブレーキパッド(813,814,864,865)の側ほど高く、前記ブレーキディスク(806,853,854)の側ほど低くなるように設定されていることを特徴とする。
【0081】
すなわち、請求項35に記載したブレーキ装置によれば、ブレーキディスクの回転数が最も高く、かつ複数の環状部材の各回転数がブレーキパッドの側に向かって次第に減少するように構成することができる。
これにより、ブレーキパッドと摩擦摺動する環状部材の回転数を、ブレーキディスクの回転数に対して大幅に低下させることができるから、ブレーキパッドに発生する熱量を低減させ、かつブレーキパッドの摩耗をさらに低減させることができる。
【0082】
また、請求項36に記載した手段は、請求項35に記載したブレーキ装置において、
前記ブレーキパッド(813,814,864,865)と摩擦摺動する前記環状部材(822,872)における摩擦材(822a,872a)の摩擦係数が、前記ブレーキパッド(813,814,864,865)の摩擦材における摩擦係数より低く設定されていることを特徴とする。
【0083】
すなわち、請求項36に記載したブレーキ装置によれば、ブレーキディスクとブレーキパッドとの間に複数の環状部材が存在するときに、ブレーキパッドによって複数の環状部材を確実に相対回転させることができる。
【0084】
また、請求項37に記載したブレーキ装置は、請求項33乃至36のいずれかに記載した自由回転環状体型ブレーキ装置において、
前記ブレーキディスク(806,853,854)に、前記環状部材(822,823,872,873)の内周面が摺動自在に外嵌する、自己潤滑性の材料から製作された支持部材(821,871)が設けられていることを特徴とする。
【0085】
すなわち、請求項37に記載したブレーキ装置によれば、一般的に鋳鉄から製造されているブレーキディスクと自由回転環状体の内周面との間の摩擦を減少させ、自由回転環状体をブレーキディスクに対して滑らかに相対回転させることができる。
【0086】
また、請求項38に記載したブレーキ装置は、請求項33乃至37のいずれかに記載した自由回転環状体型ブレーキ装置において、
前記自由回転環状体の内周部分を前記ブレーキディスクに向かって付勢する付勢手段(826,874)が設けられていることを特徴とする。
【0087】
すなわち、請求項38に記載したブレーキ装置によれば、ブレーキディスクの回転軸線に対する自由回転環状体(820,870)の姿勢を安定させることができる。
これにより、自由回転環状体820,870を回転軸に対して垂直に保持し、その傾斜に起因するブレーキジャダーの発生を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0088】
以上の説明から明らかなように、本発明のブレーキ装置は、各種交通機関や工作機械等の動力伝達系に設けられている既存の遊星歯車機構をそのまま活用しつつ、第1および第2の環状体と押動手段とを追加することにより、その回転軸を制動するブレーキ装置を構成することができる。
これにより、部品点数の増加および既存の機械の改造を最小限に抑えることができるから、その適用可能範囲を大きく拡げることができる。
【0089】
また、本発明のブレーキ装置は、遊星歯車機構における回転数差の小さい2つの回転要素の間で制動をかけることによって回転軸を制動するものである。
これにより、回転軸とその周囲の静止部分との間のように、回転数差の大きい部分の間で制動する場合に比較し、制動に伴って発生する衝撃力や発熱量を小さくすることができる。
さらに、発熱に伴う摩擦係数の変動を抑制して安定した制動力を得ることができるばかりでなく、発熱に伴うフェード現象の発生もなく、長時間にわたって一定な制動力を得ることができ、第1および第2の環状体の摩耗を最小限に抑えて長い寿命時間を確保することができるから、優れた性能を有するブレーキ装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0090】
以下、図1乃至図29を参照し、本発明に係る自由回転環状体型ブレーキ装置の各実施形態について詳細に説明する。
なお、以下の説明においては、同一の部分には同一の符号を用いて重複した説明を省略するとともに、回転軸23の軸線が延びる方向を軸線方向と言う。
【0091】
第1実施形態
まず最初に図1〜図6を参照し、本発明による自由回転環状体型ブレーキ装置の第1実施形態について詳細に説明する。
【0092】
図1に示した本第1実施形態の自由回転環状体型ブレーキ装置100は、自動車の変速機に内蔵されるオーバードライブ装置を構成するもので、ケーシング20に収納された遊星歯車機構30と、駆動出力の切り換えを行う切換手段40と、遊星歯車機構30のプラネタリキャリヤとリングギヤとを摩擦係合させるための第1の自由回転環状体50および第1の環状体60と、第1の自由回転環状体50および第1の環状体60をプラネタリキャリヤの側に押動して摩擦摺動させるための押動手段70とを備えている。
【0093】
遊星歯車機構30は、有底円筒状のケーシング(固定手段)20の底壁21によってサンギヤ31を回転不能に支持するとともに、入力軸(回転軸)23にプラネタリキャリヤ(接続手段)32を接続して回転駆動するようにし、かつこのプラネタリキャリヤ32に植設した支軸33によって複数のプラネタリギヤ34を回転自在に支持することにより、増速された回転駆動力をリングギヤ35の連接部分(従動手段)35aから取り出すように構成されている。
なお、リングギヤ35には連接部分35aが連設されており、その円筒部分35bは軸受36によって入力軸23上に回転自在に支持されている。
【0094】
切換手段40は、図3に示したように、入力軸23の後端に凸設された噛合歯41と、出力軸24の前端に凸設された軸線方向に長く延びる噛合歯42と、リングギヤ35の連接部分35aの後端に凸設されている噛合歯43と、これらの噛合歯41,42,43上で軸線方向にスライド可能なスリーブ44と、このスリーブ44を軸線方向に往復させる図示されないシフタとから構成されている。
図3に示したように、スリーブ44が入力軸23の噛合歯41と出力軸24の噛合歯との上に位置するときには、入力軸23と出力軸24とが直結され、入力軸23に入力した回転駆動力がそのまま出力軸24に伝達される。
これに対して、図5に示したように、スリーブ44がリングギヤ35側の噛合歯43と出力軸24の噛合歯との上に位置するときには、遊星歯車機構30によって増速された回転駆動力が出力軸24に伝達される。
【0095】
第1の自由回転環状体50は、図3に示したように、ほぼ同一寸法の4枚の板状円形環状部材51,52,53,54を軸線方向に積層して構成したもので、そのうちの1つの環状部材51の内周部分には入力軸23と同軸な円筒部分51aが連設され、リングギヤ35に連設されている円筒部分35bの外周面上に軸受55を介して回転自在に支持されている。
そして、他の環状部材52,53,54は、円筒部分51aの外周面上に摺動回転自在に支持されている。
なお、図示の都合上、図1においては環状部材52が描かれていない。
【0096】
板状円形環状部材51,52,53,54を形成している材料は、それぞれ炭素鋼、あるいはニッケル、クロム、モリブデンを含む合金鋼であるが、そのHRC硬度はわずかに異なっている。
すなわち、環状部材51,52のHRC硬度が56〜59であるのに対し、環状部材53,54のHRC硬度は52〜55であり、硬度の高い環状部材51,53と硬度の低い環状部材53,54とを軸線方向に交互に並べた構成となっている。
【0097】
第1の環状体60は、図3に示したように、リングギヤ35の連設部分35aを貫通して軸線方向にスライド自在な、円周方向に等間隔に配設された複数の支軸61と、第1の自由回転環状体50と同軸に隣接するように支軸61の一端に固着された1枚の板状円形環状部材62と、支軸61の他端に入力軸23と同軸に固着された1枚の厚板円形環状部材63とから構成され、リングギヤ35と一体に回転するようになっている。
なお、板状円形環状部材61,62は、第1の自由回転環状体50と同様に炭素鋼あるいはニッケル、クロム、モリブデンを含む合金鋼から形成されており、かつそのHRC硬度は56〜59に設定されている。
これにより、硬度の高い環状部材54と硬度の低い環状部材62とが軸線方向に交互に並んでいる。
【0098】
押動手段70は、図1に示したように、円筒状のケーシング20の開放端を閉鎖している蓋体22に設けられており、入力軸23と同軸に蓋体22に連設されている円筒部分22aの外周面上に回動自在に支持された板状円形環状部材である第1のカムプレート71と、この第1のカムプレート71の外周面に接続されて半径方向外側に延びるレバー72と、第1のカムプレート71と同軸に隣接して円筒部分22aの外周面上に回動自在に配設された第2のカムプレート73とを有している。
【0099】
レバー72を手動によりあるいは電動サーボを用いて円周方向に揺動させて第1のカムプレート71を回動させると、第2のカムプレート73が蓋体22の側に変位し、この第2のカムプレートの側面に突設されて蓋体22を貫通している複数のプッシュロッド74がケーシング20の内側に進入する。
すると、入力軸23と同軸にプッシュロッド74の先端に固着されている厚板円形環状部材75が第1の環状体60の側に変位し、その前面に同軸に固着されている板状円形環状部材76が第1の環状体60の環状部材63の側面と摺動接触する。
なお、以下の説明においては、環状部材75,76を合わせて第2の環状体と呼ぶ。
【0100】
また、環状部材76は、第1の自由回転環状体50と同様に炭素鋼あるいはニッケル、クロム、モリブデンを含む合金鋼から形成され、そのHRC硬度は52〜55に設定されている。
これにより、硬度の高い環状部材63と硬度の低い環状部材76とが軸線方向に交互に並んでいる。
【0101】
次に図2〜図6を参照し、本第1実施形態のブレーキ装置(オーバードライブ装置)100の作動について説明する。
【0102】
図2に示したように、自動車のエンジン101から出力された回転駆動力は、変速機102において変速された後、変速機102に連設されたトランスファケース103に内蔵されている本第1実施形態のブレーキ装置(オーバードライブ装置)100を介してプロペラシャフト104に伝達される。
そして、プロペラシャフト104に入力した回転駆動力は、終減速機105において減速された後に内蔵されている図示されない差動歯車機構を介して左右の駆動輪106L,106Rに分配される。
【0103】
このとき、図3に示したように、切換手段40のスリーブ44が入力軸23の噛合歯41および出力軸24の噛合歯42の上に位置すると、変速機102から出力された回転駆動力は、入力軸23から出力軸24を介してプロペラシャフト104へと直接伝達される(直結走行状態)。
また、図5に示したように、切換手段40のスリーブ44がリングギヤ35側の噛合歯43および出力軸24の噛合歯42の上に位置すると、変速機102から出力された回転駆動力は遊星歯車機構30において増速されてから出力軸24に伝達される(オーバードライブ走行状態)。
【0104】
これとは反対に、自動車の運転者がアクセルペダルの踏み込みを止めて自動車が惰性で走行している状態のときには、左右一対の駆動輪106L,106Rが終減速機105およびプロペラシャフト104を介して出力軸24を回転駆動する。
【0105】
このとき、図4に示したように、切換手段40によって入力軸23と出力軸24とが直結されている場合には、入力軸23によってプラネタリキャリヤ32が回転駆動されるので、プラネタリキャリヤ32とリングギヤ35の連設部分35aとが相対回転し、同時にケーシング20の蓋体22とリングギヤ35の連設部分35aとが相対回転する。
また、図6に示したように、切換手段40によってリンクギヤ35の連設部分35aと出力軸24とが接続されている場合には、出力軸24によってリングギヤ35が回転駆動されるので、リングギヤ35の連設部分35aとプラネタリキャリヤ32とが相対回転し、同時にケーシング20の蓋体22とリングギヤ35の連設部分35aとが相対回転する。
【0106】
この状態において、押動手段70のレバー72を揺動させてプッシュロッド74をケーシング20の内部に進入させると、図4および図6に示したように、第2の環状体75,76が第1の環状体60および第1の自由回転環状体50をプラネタリキャリヤ32に押圧する。
これに伴い、リングギヤ35の連設部分35aと一体に回転する第1の環状体60と、第1の自由回転環状体50およびプラネタリキャリヤ32との間に摺動摩擦が発生するから、リングギヤ35の連設部分35aとプラネタリキャリヤ32とが摩擦係合し、リングギヤ35とプラネタリキャリヤ32との相対回転が抑制される。
【0107】
同時に、リングギヤ35の連設部分35aと一体に回転する第1の環状体60と、ケーシング20の蓋体22に支持されて回転することがない第2の環状体75,76との間に摺動摩擦が発生するから、リングギヤ35の連設部分35aとケーシング20とが摩擦係合し、ケーシング20に固定されているサンギヤ31とリングギヤ35との相対回転もまた抑制される。
【0108】
これにより、サンギヤ31,プラネタリキャリヤ32、およびリングギヤ35の相対回転が制動されるから、プラネタリキャリヤ32に接続されている入力軸23およびリングギヤ35の連設部分35aは、それぞれケーシング20に対して相対回転することができず、その回転が制動される。
したがって、入力軸23あるいはリングギヤ35の連設部分35aに接続される出力軸24、プロペラシャフト104、終減速機105を介して、左右一対の駆動輪106L,106Rの回転を制動することができる。
【0109】
すなわち、本第1実施形態の自由回転環状体型ブレーキ装置100は、エンジン101が出力する回転駆動力によって左右一対の駆動輪106L,106Rを駆動するときには、直結走行あるいはオーバードライブ走行を可能とするオーバードライブ装置として機能する。
これに対して、自動車が惰性走行しているときには、押動手段70のレバー72を操作することにより、左右一対の駆動輪106L,106Rの回転を制動するブレーキ装置として機能する。
【0110】
このとき、左右一対の駆動輪106L,106Rと出力軸24との間には終減速機105が介装されている。
これにより、このブレーキ装置100が発生させる制動力は、終減速機105における約1:3〜1:10の減速比の分だけ増大されて各駆動輪106L,106Rに伝達されるから、大きな制動力を各駆動輪106L,106Rに作用させることができる。
【0111】
また、このブレーキ装置100が発生させる制動力は、終減速機105に内蔵されている差動歯車機構によって左右の駆動輪106L,106Rに等しく分配される。
これにより、1つのブレーキ装置100によって左右の駆動輪106L,106Rを制動することができるから、各駆動輪106L,106Rに個別に設けるブレーキ装置を省略することができる。
【0112】
また、本第1実施形態のブレーキ装置100は、図2に示したようなFR車(フロントエンジンフロントドライブ車)のトランスファケース103に元々内蔵されているオーバードライブ走行用の遊星歯車機構30を流用するものであるから、部品点数の増加を最小限に抑えることができる。
また、トランスファケース103内の空きスペースに、第1の自由回転環状体50他の部品を組み込むものであるから、このようなFR車の改造を最小限に抑えることができる。
【0113】
また、左右一対の駆動輪106L,106Rによって入力軸23が回転駆動される直結走行状態においては、プラネタリキャリヤ32とリングギヤ35の連設部分35aとの間の相対回転速度が高まる。
しかしながら、第1の自由回転環状体50は、軸線方向に積層された複数の板状円形環状部材51,52,53,54から構成されており、かつ第2の環状体の環状部材62を含めて、硬度が高いものと低いものとが軸線方向に交互に並ぶように配設されている。
これにより、押動手段70によりプラネタリキャリヤ32に向けて押動されて軸線方向に圧縮されたときに、隣接する環状部材同士の馴染み具合がそれぞれ異なるから、隣接する環状部材同士が固着して一体に回転することはなく、それぞれ異なる回転数で回転する。
【0114】
したがって、第1の自由回転環状体50および第1の環状体60は、その全体として、プラネタリキャリヤ32とリングギヤ35の連設部分35aとの間の大きな回転速度差を滑らかに吸収することができる。
さらに、隣接する環状部材同士の間に発生する摩擦熱も少ないから、第1の自由回転環状体50および第1の環状体60の全体における発熱量も小さい。
加えて、リングギヤ35の連設部分35aとプラネタリキャリヤ32との間に多くの摩擦摺動面が追加されるから、プラネタリキャリヤ32とリングギヤ35の連設部分35aとを摩擦係合させるための摩擦力を増大させることができる。
【0115】
なお、本第1実施形態においては、各環状部材51,52,53,54,62が互いに固着して一体に回転することなく異なる速度で自由に回転できるようにするために、隣接する環状部材の材料硬度をわずかに異ならせている。
また、硬度の低い順あるいは硬度の高い順に軸線方向に並ぶように、複数の環状部材を配設することもできる。
しかしながら、この目的を達成するための手段は、材料硬度に差を設けることだけではない。
【0116】
具体的に説明すると、各環状部材51,52,53,54,62の外径寸法を異ならせて、外径の大きい環状部材と外径の小さい環状部材とを隣接させることによっても、目的を達成することができる。
なお、各環状部材の外周面を摺動自在に支持する場合には、各環状部材51,52,53,54,62の内径寸法を異ならせて、内径の大きい環状部材と内径の小さい環状部材とを隣接させる。
あるいは、外径寸法が大きい順あるいは小さい順に軸線方向に並ぶように、各環状部材51,52,53,54,62を配設することもできる。
この場合には、押動手段70によりプラネタリキャリヤ32に向けて押動されて軸線方向に圧縮されたときの、各環状部材の外周部分あるいは内周部分の弾性変形量がそれぞれ異なるから、隣接する環状部材同士が固着して一体に回転することはなく、それぞれ異なる回転数で回転することになる。
【0117】
さらに、各環状部材51,52,53,54,62の軸線方向寸法(厚み)を異ならせて、厚みの大きい環状部材と厚みの小さい環状部材とを隣接させることによっても、目的を達成することができる。
あるいは、軸線方向寸法が大きい順あるいは小さい順に軸線方向に並ぶように、各環状部材51,52,53,54,62を配設することもできる。
この場合には、押動手段70によりプラネタリキャリヤ32に向けて押動されて軸線方向に圧縮されたときの、各環状部材の弾性圧縮変形量がそれぞれ異なるから、隣接する環状部材同士が固着して一体に回転することはなく、それぞれ異なる回転数で回転することになる。
【0118】
加えて、各環状部材51,52,53,54,62の摩擦摺動面に凹部を凹設するとともに、これらの凹部の総面積が大きい環状部材と小さい環状部材とを隣接させることによっても、目的を達成することができる。
ここで言う凹部とは、例えばゴルフボールの表面に凹設されている円形のディンプルに相当するものであるが、その形状は円形には限定されず、楕円形、長円形、矩形、長い溝とすることもできる。
そして、凹部の面積は、各環状体の摩擦摺動面上において計測した面積を言う。
この場合には、押動手段70によりプラネタリキャリヤ32に向けて押動されて軸線方向に圧縮されたときの、各環状部材の摩擦摺動面のうち凹部に隣接する部分の弾性変形量がそれぞれ異なるから、隣接する環状部材同士が固着して一体に回転することはなく、それぞれ異なる回転数で回転することになる。
なお、凹部の総面積が大きい順あるいは小さい順に軸線方向に並ぶように、各環状部材51,52,53,54,62を配設することもできる。
【0119】
第2実施形態
次に図7および図8を参照し、本発明による自由回転環状体型ブレーキ装置の第2実施形態について説明する。
【0120】
上述した第1実施形態のブレーキ装置100は、エンジン101から左右一対の駆動輪106L,106Rに至る動力伝達経路の途中に設けられていた。
これに対し、本第2実施形態のブレーキ装置200は、空転する回転軸23に並設されて、この回転軸23の回転を制動するように構成されている。
【0121】
すなわち、工作機械や試験機等においては、回転軸の回転を制動し、あるいはこの回転軸に所望の制動トルクを負荷することが求められている。
このとき、本第2実施形態のブレーキ装置200は、上述した第1実施形態のブレーキ装置100から切換手段40を省いた点を除いて構造が同一であり、押動手段70を操作することによって回転軸23の回転を制動し、所望の制動トルクを回転軸23に負荷することができる。
【0122】
特に、第1の自由回転環状体50は、軸線方向に積層された複数の板状円形環状部材51,52,53,54から構成されており、隣接する板状円形環状部材同士は少ない回転速度差で互いに摺動するから、第1の自由回転環状体50の全体における発熱量は小さい。
また、遊星歯車機構30を潤滑する潤滑油により、複数の板状円形環状部材51,52,53,54もまた潤滑されるから、長時間にわたって連続運転しても過熱するおそれがない。
さらに、リングギヤ35の連設部分35aとプラネタリキャリヤ32との間に多くの摩擦摺動面が形成されているため、簡単かつ小型な構造でありながら、大きな制動トルクを回転軸に負荷することができる。
加えて、押動手段70が各環状部材51,52,53,54,62を軸線方向に押動する力を微調整することにより、所望の値の制動トルクを回転軸23に正確に負荷することができる。
【0123】
したがって、本第2実施形態のブレーキ装置200は、回転軸の駆動および停止を煩雑に繰り返す必要のある工作機械や、高いトルクを連続的に吸収し続け無ければならない試験機、特にF1レース車両に用いる高出力エンジンのためのトルク試験機等におけるブレーキ装置、あるいは新幹線の走行モータに内蔵されるブレーキ装置として好適に用いることができる。
【0124】
第1変形例
次に図9を参照し、第2実施形態の自由回転環状体型ブレーキ装置200の第1変形形について説明する。
【0125】
上述した第2実施形態の自由回転環状体型ブレーキ装置200における遊星歯車機構30は、サンギヤ31を回転不能に支持するとともに、回転軸23にプラネタリキャリヤ(接続手段)32を接続して一体に回転するようにし、かつこのプラネタリキャリヤ32に植設した支軸33によって複数のプラネタリギヤ34を回転自在に支持することによりプラネタリギヤ34を回転駆動して、リングギヤ35の連接部分(従動手段)35aから増速された回転駆動力を取り出すように構成されていた。
そして、リングギヤ35の連接部分35aによって第1の環状体60を支持することにより、第1の環状体60が回転軸23の回転数よりも高い回転数で回転するようにしていた。
これにより、押動手段70を作動させて第1の環状体60と第2の環状体75,76とを摩擦係合させたときに生じる第1の環状体60の回転数の低下は比較的に急激であり、回転軸23の回転を制動するときのブレーキ特性が敏感なものになっていた。
【0126】
これに対して、本第1変形例の自由回転環状体型ブレーキ装置210における遊星歯車機構30Aは、サンギヤ31を回転不能に支持するとともに、リングギヤ35の連接部分35cを回転軸23に接続してリングギヤ35を回転駆動するようにし、かつプラネタリキャリヤ32の円筒状の連接部分(従動手段)32aを軸受37によって回転軸23上に回転自在に支持する構造となっている。
そして、リングギヤ35の連接部分35aによって第1の環状体60を支持することにより、第1の環状体60が回転軸23と等しい回転数で回転するようにしている。
【0127】
これにより、本第1変形例の自由回転環状体型ブレーキ装置210における第1の環状体60と第2の環状体75,76との間の相対回転数は、第2実施形態の自由回転環状体型ブレーキ装置200におけるそれよりも小さい。
したがって、押動手段70を作動させて第1の環状体60と第2の環状体75,76とを摩擦係合させたときに生じる第1の環状体60の回転数の低下は、第2実施形態の自由回転環状体型ブレーキ装置200におけるそれよりも緩やかであるから、回転軸23の回転を制動するときのブレーキ特性を穏やかなものにすることができる。
【0128】
第2変形例
本第2変形例の自由回転環状体型ブレーキ装置220における遊星歯車機構30Bは、プラネタリギヤ34の支軸33を回転軸23の周りに回転不能に支持するとともに、リングギヤ35の連接部分35cを回転軸23に接続してリングギヤ35を回転駆動するようにし、かつサンギヤ31の円筒状の連接部分(従動手段)31aを軸受38によって回転軸23上に回転自在に支持する構造となっている。
そして、リングギヤ35の連接部分35aによって第1の環状体60を支持することにより、第1の環状体60が回転軸23と等しい回転数で回転するようにしている。
【0129】
これにより、押動手段70を作動させて第1の環状体60と第2の環状体75,76とを摩擦係合させたときに生じる第1の環状体60の回転数の低下は、第1変形例の自由回転環状体型ブレーキ装置210におけるそれと全く同じであるから、回転軸23の回転を制動するときのブレーキ特性を穏やかなものにすることができる。
【0130】
第3変形例
本第3変形例の自由回転環状体型ブレーキ装置230における遊星歯車機構30Cは、プラネタリギヤ34の支軸33を回転軸23の周りに回転不能に支持するとともに、サンギヤ31を回転軸23に接続して回転駆動するようにし、かつリングギヤ35の連接部分(従動手段)35aを軸受36によって連接部分31a上に回転自在に支持する構造となっている。
そして、リングギヤ35の連接部分35aによって第1の環状体60を支持することにより、第1の環状体60が、回転軸23とは反対方向に低い回転数で回転するようにしている。
【0131】
これにより、押動手段70を作動させて第1の環状体60と第2の環状体75,76とを摩擦係合させたときに生じる第1の環状体60の回転数の低下は、上述した第1および第2変形例におけるそれよりもさらに緩やかであるから、回転軸23の回転を制動するときのブレーキ特性をさらに穏やかなものにすることができる。
【0132】
第4変形例
本第4変形例の自由回転環状体型ブレーキ装置240における遊星歯車機構30Dは、リングギヤ35を回転不能に支持するとともに、回転軸23にプラネタリキャリヤ(接続手段)32を接続して一体に回転するようにし、かつこのプラネタリキャリヤ32に植設した支軸33によって複数のプラネタリギヤ34を回転自在に支持することによりプラネタリギヤ34を回転駆動して、サンギヤ31の連接部分(従動手段)31aから増速された回転駆動力を取り出すように構成されている。
そして、サンギヤ31の連接部分31aによって第1の環状体60を支持することにより、第1の環状体60が回転軸23の回転数よりもかなり高い回転数で回転するようにしている。
【0133】
これにより、押動手段70を作動させて第1の環状体60と第2の環状体75,76とを摩擦係合させたときに生じる第1の環状体60の回転数の低下は、上述した第2実施形態の自由回転環状体型ブレーキ装置200におけるそれよりもさらに急激であるから、回転軸23の回転を制動するときのブレーキ特性をさらに敏感なものとすることができる。
【0134】
第5変形例
本第5変形例の自由回転環状体型ブレーキ装置250における遊星歯車機構30Eは、リングギヤ35を回転不能に支持するとともに、サンギヤ31の連接部分31aを回転軸23に接続してサンギヤ31が回転駆動されるようにし、かつプラネタリキャリヤ(従動手段)32を軸受39によって回転軸23上に回転自在に支持した構造となっている。
そして、回転軸23に接続した第2の接続部31dによって第1の環状体60を支持し、第1の環状体60が回転軸23の回転数と等しい回転数で回転するようにしている。
【0135】
これにより、押動手段70を作動させて第1の環状体60と第2の環状体75,76とを摩擦係合させたときに生じる第1の環状体60の回転数の低下は、第1および第2変形例の自由回転環状体型ブレーキ装置210,220におけるそれと全く同じであるから、回転軸23の回転を制動するときのブレーキ特性を穏やかなものにすることができる。
【0136】
第3実施形態
次に図14を参照し、第3実施形態のブレーキ装置について説明する。
【0137】
本第3実施形態のブレーキ装置300は、上述した第2実施形態のブレーキ装置200に対し、第1の環状体60と第2の環状体75,76との間に第2の自由回転環状体80を追加した構造となっている。
【0138】
第2の自由回転環状体80は、第1の自由回転環状体50と同一構造であり、ほぼ同一寸法の4枚の板状円形の環状部材81,82,83,84を軸線方向に積層して構成したもので、そのうちの1つの環状部材81の内周部分には円筒部分81aが連設され、リングギヤ35に連設されている円筒部分35bの外周面上に軸受85を介して回転自在に支持されている。
そして、他の環状部材82,83,84は、円筒部分81aの外周面上に摺動回転自在に支持されている。
なお、各環状部材81,82,83,84を形成している金属材料の硬度の設定もまた第1の自由回転環状体50と同一となっている。
【0139】
これにより、押動手段70のレバー72を揺動させてプッシュロッド74をケーシング20の内部に進入させると、図9に示したように、第2の環状体75,76が、第2の自由回転環状体80、第1の環状体60、および第1の自由回転環状体50をプラネタリキャリヤ32に押圧する。
これに伴い、リングギヤ35の連設部分35aと一体に回転する第1の環状体60、自由に回転できる第1の自由回転環状体50、およびプラネタリキャリヤ32の間に摺動摩擦が発生するから、リングギヤ35の連設部分35aとプラネタリキャリヤ32とが摩擦係合し、リングギヤ35とプラネタリキャリヤ32との相対回転が制動される。
【0140】
同時に、リングギヤ35の連設部分35aと一体に回転する第1の環状体60と、自由に回転可能な第2の自由回転環状体80,およびケーシング20の蓋体22に支持されて回転することがない第2の環状体75,76との間に摺動摩擦が発生するから、リングギヤ35の連設部分35aとケーシング20とが摩擦係合し、ケーシング20に固定されているサンギヤ31とリングギヤ35との相対回転もまた制動される。
【0141】
これにより、サンギヤ31,プラネタリキャリヤ32、およびリングギヤ35の相対回転が制動されるから、プラネタリキャリヤ32に接続されている回転軸23はケーシング20に対して相対回転することができず、その回転が制動される。
【0142】
このとき、第2の自由回転環状体80は、軸線方向に積層された複数の板状円形環状部材81,82,83,84から構成されており、隣接する板状円形環状部材同士は少ない回転速度差で互いに摺動するから、第2の自由回転環状体80の全体における発熱量は小さい。
また、遊星歯車機構30を潤滑する潤滑油により、複数の板状円形環状部材81,82,83,84もまた潤滑されるから、長時間にわたって連続運転しても過熱するおそれがない。
さらに、第1の環状体60と第2の環状体75,76との間に多くの摩擦摺動面が形成されているため、大きな制動トルクを回転軸23に負荷することができる。
【0143】
次に図15〜図19を参照し第3実施形態のブレーキ装置の変形例について説明する。
【0144】
第1変形例
図10に示した第1変形例のブレーキ装置310は、上述した第3実施形態のブレーキ装置300に対し、リングギヤ35が回転軸23に接続されて一体に回転し、かつプラネタリキャリヤ32が自由に回転する点において異なっている。
【0145】
すなわち、リングギヤ35に連設された第2の連設部分(接続手段)35cが回転軸23に接続され、リングギヤ35が回転軸23と一体に回転する。
また、プラネタリキャリヤ32には回転軸23と同軸な円筒部分32aが連設され、回転軸23に対し軸受37によって回転自在に支持されている。
さらに、リングギヤ35の連設部分35aは軸受36によって、また第1および第2の自由回転環状体50,80は軸受55,85によって、それぞれプラネタリキャリヤ32の円筒部分32aの外周面上に回転自在に支持されている。
【0146】
このような構造のブレーキ装置310においても、押動手段70のレバー72を操作すして第2の環状体75,76、第2の自由回転環状体80、第1の環状体60、第1の自由回転環状体50をプラネタリキャリヤ32に押圧し、相互に摩擦摺動させることにより、第3実施形態のブレーキ装置300と全く同様に回転軸23の回転を制動することができる。
【0147】
第2変形例
図11に示した第2変形例のブレーキ装置320は、上述した第1変形例のブレーキ装置310に対し、プラネタリギヤ34の支軸33がケーシング20に固定され、かつサンギヤ31が回転軸23に対して回転自在となっている点が異なっている。
【0148】
すなわち、サンギヤ31には回転軸23と同軸な円筒部分31aが連設され、回転軸23に対し軸受38によって回転自在に支持されている。
また、サンギヤ31には、第1変形例のブレーキ装置310におけるプラネタリキャリヤ32と同一形状の縦壁部分31bが連設されている。
さらに、リングギヤ35の連設部分35aは軸受36によって、また第1および第2の自由回転環状体50,80は軸受55,85によって、サンギヤ31の円筒部分31aの外周面上に回転自在に支持されている。
【0149】
このような構造のブレーキ装置320においても、押動手段70のレバー72を操作すして第2の環状体75,76、第2の自由回転環状体80、第1の環状体60、第1の自由回転環状体50をサンギヤ31に連設した縦壁部分31bに押圧し、相互に摺動させることにより、第3実施形態のブレーキ装置300と全く同様に回転軸23の回転を制動することができる。
【0150】
第3変形例
図12に示した第3変形例のブレーキ装置330は、上述した第2変形例のブレーキ装置320に対し、サンギヤ31が回転軸23に接続されて一体に回転し、かつリングギヤ35を回転軸23に接続していた連設部分35cが除かれている点が異なっている。
【0151】
すなわち、サンギヤ31には連設部分(接続手段)31cが連設されて回転軸23に接続され、回転軸23と一体に回転するように構成されている。
このような構造のブレーキ装置330においても、押動手段70のレバー72を操作すして第2の環状体75,76、第2の自由回転環状体80、第1の環状体60、第1の自由回転環状体50をサンギヤ31に連設した縦壁部分31bに押圧し、相互に摺動させることにより、第3実施形態のブレーキ装置300と全く同様に回転軸23の回転を制動することができる。
【0152】
第4変形例
図13に示した第4変形例のブレーキ装置340は、上述した第3実施形態のブレーキ装置300(図9)に対し、リングギヤ35がケーシング20に固定され、かつサンギヤ31が回転軸23の回りで自由に回転できるように構成されている点において異なっている。
【0153】
すなわち、サンギヤ31には回転軸23と同軸な円筒部分31aが連設され、回転軸23に対し軸受38によって回転自在に支持されている。
また、プラネタリギヤ34の支軸33には、第1の環状体60と同軸に隣接する厚板円形環状部分32aが固着されている。
さらに、リングギヤ35には連設部分35dが連設されて、ケーシング20に接続されている。
【0154】
このような構造のブレーキ装置340においても、押動手段70のレバー72を操作すして第2の環状体75,76、第2の自由回転環状体80、第1の環状体60、第1の自由回転環状体50をプラネタリギヤ34の支軸33に連設した環状部分32aに押圧し、相互に摺動させることにより、第3実施形態のブレーキ装置300と全く同様に回転軸23の回転を制動することができる。
【0155】
第5変形例
図14に示した第5変形例のブレーキ装置350は、上述した第4変形例のブレーキ装置340に対し、サンギヤ31が回転軸23に接続されて一体に回転し、かつプラネタリキャリヤ32が回転軸23の回りで自由に回転できるように構成されている点において異なっている。
【0156】
すなわち、プラネタリキャリヤ32には、回転軸23と同軸な円筒部分32bが連設され、回転軸23に対し軸受39によって回転自在に支持されている。
また、プラネタリギヤ34の支軸33に連設されている厚板円形環状部分32aには、回転軸23と同軸な円筒部分32bが連設され、回転軸23に対し軸受32cによって回転自在に支持されている。
さらに、第1の環状体60は、回転軸23と一体に回転する縦壁部分31eによって支持されて、回転軸23と一体に回転しつつ、第1の自由回転環状体50の側に変位できるようになっている。
加えて、縦壁部分31eには回転軸23と同軸な円筒部分31fが連設され、その外周面上に軸受85を介して第2の自由回転環状体80が回転自在に支持されている。
【0157】
このような構造のブレーキ装置350においても、押動手段70のレバー72を操作すして第2の環状体75,76、第2の自由回転環状体80、第1の環状体60、第1の自由回転環状体50をプラネタリギヤ34の支軸33に連設した環状部分32aに押圧し、相互に摺動させることにより、第3実施形態のブレーキ装置300と全く同様に回転軸23の回転を制動することができる。
【0158】
第4実施形態
次に図20および図35を参照し、本発明に係る遊星歯車機構に並設するブレーキ装置の第4実施形態について説明する。
【0159】
一般的に、電気自動車の駆動輪の内側に配設されるインホイールモータは、図35に示したように電気モータ11と減速機としての遊星歯車機構と12を組み合わせたものであるが、このインホイールモータ自体には駆動輪の回転を制動する機械的な機構が組み込まれておらず、自動車に従来使用しているディスクブレーキあるいはドラムブレーキ13をそのまま併用する必要があった。
これにより、電気自動車のインホイールモータで駆動される駆動輪は、ホイール14およびタイヤ15の重量を含めると、その「ばね下重量」が大幅に増加するため、乗り心地が悪化するばかりでなく、路面に対する追従性が低下して駆動性能の低下につながっていた。
【0160】
このとき、図20に示した第4実施形態のブレーキ装置400は、このようなインホイールモータに組み込んだものである。
このブレーキ装置400は、押動手段70が電動サーボSに置き換えられている点を除き、図14に示したブレーキ装置350とほぼ同一の構造を有している。
これにより、電気モータ11が出力する回転駆動力を遊星歯車機構30によって減速してホイール14に伝達することができるとともに、電気自動車が惰性走行するときには、ホイール14の回転を制動することができる。
【0161】
したがって、本第4実施形態のブレーキ装置400を電気自動車のインホイールモータに組み込むと、ディスクブレーキあるいはドラムブレーキ13を併用する必要が無くなるから、その分の重量を排除して、電気自動車のインホイールモータにおいて問題となっている「ばね下重量」増加の問題を大きく改善することができる。
また、ディスクブレーキあるいはドラムブレーキの併用を止めると、その作動に必要な油圧配管も不要となるから、ブレーキシステムの全体構造を簡略化することができる。
特に、電動サーボSを用いてブレーキ装置400を作動させる場合には、電気配線を配設するだけで良いから、電気自動車の車体構造を簡略化することもできる。
さらに、ディスクブレーキあるいはドラムブレーキが無くなると、このブレーキ装置40に対する外径の制約が無くなるから、電気モータ11をホイール14の側に寄せることが可能となる。
【0162】
加えて、本第4実施形態のブレーキ装置400は、電気自動車ばかりでなく、新幹線の駆動用の電気モータにも併用することができる。
すなわち、新幹線の場合には、走行速度が約20km/h以下となってからディスクブレーキ装置によって車輪軸を制動するようになっている。
したがって、現在、新幹線の車輪軸に設けられているディスクブレーキ装置を、本第4実施形態のブレーキ装置400に置き換えれば、車台重量を大幅に減少させることができる。
【0163】
第5実施形態
次に図21を参照し、第5実施形態のブレーキ装置について説明する。
【0164】
本第5実施形態のブレーキ装置500は、上述した第3実施形態のブレーキ装置300に対し、第3の環状体90を追加した構造となっている。
これに伴い、プラネタリキャリヤ(接続手段)32の連接部分32aを延設して半径方向に延びるフランジ部32cを形成するとともに、このフランジ部32cによって第3の環状体90を回転軸23の軸線方向に変位自在に支持して、第3の環状体90が回転軸23と一体に回転するようにしている。
【0165】
第3の自由回転環状体80は、第1の環状体60とほぼ同じ構造であり、プラネタリキャリヤ32のフランジ部32cを貫通して軸線方向にスライド自在な、円周方向に等間隔に配設された複数の支軸501と、第2の自由回転環状体80と同軸に隣接するように支軸501の一端に固着された1枚の環状部材502と、支軸501の他端に固着されたもう1枚の環状部材503とを有しており、プラネタリキャリヤ32と一体に回転するようになっている。
なお、プラネタリキャリヤ32の円筒状連設部分32dの外周面上には、1枚の環状部材504が摺動回転自在に支持されており、第2の環状体75,76と第3の環状体90とが滑らかに摺動できるようになっている。
【0166】
これにより、押動手段70のレバー72を揺動させてプッシュロッド74をケーシング20の内部に進入させると、図21に示したように、第2の環状体75,76が、第3の環状体90、第2の自由回転環状体80、第1の環状体60、および第1の自由回転環状体50をプラネタリキャリヤ32に押圧する。
すると、ケーシング20の蓋体22とプラネタリキャリヤ32のフランジ部32cとが摩擦係合するとともに、プラネタリキャリヤ32のフランジ部32cとリングギヤ35の連接部分35aとが摩擦係合し、かつリングギヤ35の連接部分35aとプラネタリキャリヤ32とが摩擦係合する。
【0167】
すなわち、本第5実施形態の自由回転環状体型ブレーキ装置500は、前述した第3実施形態の自由回転環状体型ブレーキ装置300に対して第3の環状体90を追加することにより、固定手段22と接続手段32cとの間、および接続手段32cと従動手段35aとの間に摩擦摺動面を追加したものである。
したがって、第3実施形態の自由回転環状体型ブレーキ装置300よりもさらに強力に回転軸23の回転を制動することができる。
【0168】
次に図22〜図26を参照し、第5実施形態のブレーキ装置の各変形例について説明する。
【0169】
第1変形例
図22に示した第1変形例のブレーキ装置510は、図15に示した自由回転環状体型ブレーキ装置310に第3の環状体90を追加したものである。
これに伴い、プラネタリキャリヤ(従動手段)32の連接部分32aを延設して半径方向に延びるフランジ部32cを形成するとともに、このフランジ部32cに第3の環状体90の複数の支軸501を回転軸23の軸線方向に変位自在に挿通し、第3の環状体90がプラネタリキャリヤ32と一体に回転するようにしている。
【0170】
これにより、押動手段70のレバー72を揺動させてプッシュロッド74をケーシング20の内部に進入させると、図22に示したように、第2の環状体75,76が、第3の環状体90、第2の自由回転環状体80、第1の環状体60、および第1の自由回転環状体50をプラネタリキャリヤ32に押圧する。
すると、ケーシング20の蓋体22とプラネタリキャリヤ32のフランジ部32cとが摩擦係合するとともに、プラネタリキャリヤ32のフランジ部32cとリングギヤ35の連接部分35aとが摩擦係合し、かつリングギヤ35の連接部分35aとプラネタリキャリヤ32とが摩擦係合するから、図15に示したブレーキ装置310よりもさらに強力に回転軸23の回転を制動することができる。
【0171】
このとき、遊星歯車機構30Aは減速機構として作用するから、プラネタリキャリヤ(従動手段)32の回転数は回転軸23の回転数よりも低い。
これにより、プラネタリキャリヤ32と一体に回転するように支持した第3の環状体90とケーシング(固定手段)20に支持されている第2の環状体75,76との間の相対回転数は、上述した第5実施形態のブレーキ装置500におけるそれよりも低くなるから、両環状体を接触させると第3の環状体90は緩やかに減速されることになり、回転軸23の制動特性は穏やかなものとすることができる。
【0172】
第2変形例
図23に示した第2変形例のブレーキ装置520は、図16に示した自由回転環状体型ブレーキ装置320に第3の環状体90を追加したものである。
これに伴い、サンギヤ(従動手段)31の連接部分31aを延設して半径方向に延びるフランジ部31cを形成するとともに、このフランジ部31cに第3の環状体90の複数の支軸501を回転軸23の軸線方向に変位自在に挿通し、第3の環状体90がサンギヤ31と一体に回転するようにしている。
【0173】
これにより、押動手段70のレバー72を揺動させてプッシュロッド74をケーシング20の内部に進入させると、図23に示したように、第2の環状体75,76が、第3の環状体90、第2の自由回転環状体80、第1の環状体60、および第1の自由回転環状体50をサンギヤ31の連接部分31bに押圧する。
すると、ケーシング20の蓋体22とサンギヤ31のフランジ部31cとが摩擦係合するとともに、サンギヤ31のフランジ部31cとリングギヤ35の連接部分35aとが摩擦係合し、かつリングギヤ35の連接部分35aとサンギヤ31の連接部分31bとが摩擦係合するから、図16に示したブレーキ装置320よりもさらに強力に回転軸23の回転を制動することができる。
【0174】
このとき、遊星歯車機構30Bは逆転増速機構として作用するから、サンギヤ(従動手段)31の回転数は回転軸23の回転数よりも高い。
これにより、サンギヤ31の連接部分31cと一体に回転するように支持した第3の環状体90とケーシング(固定手段)20に支持されている第2の環状体75,76との間の相対回転数は、上述した第5実施形態のブレーキ装置500におけるそれよりも高くなるから、両環状体を接触させると第3の環状体90が急激に減速されることになり、回転軸23の制動特性は敏感なものとすることができる。
【0175】
第3変形例
図24に示した第3変形例のブレーキ装置530は、図17に示した自由回転環状体型ブレーキ装置330に第3の環状体90を追加したものである。
これに伴い、第1の自由回転環状体50とプラネタリギヤ34との間において、サンギヤ(従動手段)31の連接部分31aを延設して半径方向に延びるフランジ部31cを形成するとともに、このフランジ部31cに第3の環状体90の複数の支軸501を回転軸23の軸線方向に変位自在に挿通し、第3の環状体90がサンギヤ31と一体に回転するようにしている。
また、プラネタリギヤ34を回転自在に支持している支軸33がケーシング20の底壁22に直接固定されており、かつその先端にプラネタリキャリヤ32に相当する環状部材33aが一体に固着されている。
さらに、この環状部材33aと第3の環状体90との間には、第1の自由回転環状体50における環状部材52,53と同様な環状部材505,506が介装されている。
【0176】
これにより、押動手段70のレバー72を揺動させてプッシュロッド74をケーシング20の内部に進入させると、図24に示したように、第2の環状体75,76が、第2の自由回転環状体80、第1の環状体60、第1の自由回転環状体50、および第3の環状体90をプラネタリキャリヤ32に相当する環状部材33aに押圧する。
すると、ケーシング20の蓋体22とリングギヤ35の連接部分35aとが摩擦係合するとともに、リングギヤ35の連接部分35aとサンギヤ31のフランジ部31cとが摩擦係合し、かつサンギヤ31のフランジ部31cとケーシング20の底壁22とが摩擦係合するから、図17に示したブレーキ装置330よりもさらに強力に回転軸23の回転を制動することができる。
【0177】
このとき、遊星歯車機構30Cは逆転減速機構として作用するから、リングギヤ(従動手段)35の回転数は回転軸23の回転数よりもかなり低い。
これにより、リングギヤ35と一体に回転するように支持した第2の自由回転環状体80とケーシング(固定手段)20に支持されている第2の環状体75,76との間の相対回転数は、上述した第5実施形態のブレーキ装置500におけるそれよりも低くなるから、両環状体を接触させると第3の環状体90は緩やかに減速されることになり、回転軸23の制動特性は穏やかなものとすることができる。
一方、サンギヤ31の連接部分31cと一体に回転するように支持した第3の環状体90とケーシング(固定手段)20との間の相対回転数は、上述した第5実施形態のブレーキ装置500におけるそれに等しい。
したがって、本第3変形例の自由回転環状体型ブレーキ装置530の全体で見ると、回転軸23の制動特性を穏やかなものとすることができる。
【0178】
第4変形例
図25に示した第4変形例のブレーキ装置540は、図18に示した自由回転環状体型ブレーキ装置340に第3の環状体90を追加したものである。
これに伴い、プラネタリギヤ34を回転自在に支持している支軸541がプラネタリキャリヤ32を貫通して回転軸23の軸線方向に変位できるようにするととともに、この支軸541の第1の自由回転環状体50側の端部には環状部材542を固着し、かつ反対側の端部には環状部材543を固着して、この第3の環状体90がプラネタリキャリヤ32、したがって回転軸23と一体に回転するようにしている。
さらに、環状部材543とケーシング20の底壁21との間には、第1の自由回転環状体50における環状部材52,53と同様な環状部材544,545が介装されている。
【0179】
これにより、押動手段70のレバー72を揺動させてプッシュロッド74をケーシング20の内部に進入させると、図25に示したように、第2の環状体75,76が、第2の自由回転環状体80、第1の環状体60、第1の自由回転環状体50、および第3の環状体90をケーシング20の底壁21に押圧する。
すると、ケーシング20の蓋体22とサンギヤ31のフランジ部31cとが摩擦係合するとともに、サンギヤ31のフランジ部31cとプラネタリキャリヤ32とが摩擦係合し、さらにプラネタリキャリヤ32とケーシング20の底壁21とが摩擦係合するから、図18に示したブレーキ装置340よりもさらに強力に回転軸23の回転を制動することができる。。
【0180】
このとき、第3の環状体90はプラネタリキャリヤ32、したがって回転軸23と一体に回転するので、第3の環状体90とケーシング20の側壁(固定手段)21との間の相対回転数は回転軸23の回転数に等しい。
また、上述した第5実施形態のブレーキ装置500においても、第3の環状体90とケーシング20の蓋体(固定手段)22との間の相対回転数は、回転軸23の回転数に等しい。
【0181】
一方、本第4変形例における遊星歯車機構30Dは増速機構として作用するから、サンギヤ(従動手段)31の回転数は回転軸23の回転数よりもかなり高い。これにより、サンギヤ31と一体に回転するように支持されている第1の環状体60とケーシング20の蓋体(固定手段)22との間の相対回転数もまたかなり高い。
これに対して、上述した第5実施形態のブレーキ装置500における遊星歯車機構30もまた増速機構として作用するため、リングギヤ35の回転数は回転軸23の回転数よりも高い。しかしながら、リングギヤ35と一体に回転する第1の環状体60は、回転軸23と一体に回転するプラネタリキャリヤ32に対して相対回転するものであり、その相対回転数はそれほど高くない。
したがって、本第4変形例の自由回転環状体型ブレーキ装置540の全体で見ると、回転軸23の制動特性は第5実施形態のブレーキ装置500に対してより敏感なものとすることができる。
【0182】
第5変形例
図26に示した第5変形例のブレーキ装置550は、図19に示した自由回転環状体型ブレーキ装置350に第3の環状体90を追加したものである。
これに伴い、プラネタリギヤ34を回転自在に支持している支軸541がプラネタリキャリヤ32を貫通して回転軸23の軸線方向に変位できるようにするととともに、この支軸541の第1の自由回転環状体50側の端部には環状部材542を固着し、かつ反対側の端部には環状部材543を固着して、この第3の環状体90がプラネタリキャリヤ32と一体に回転するようにしている。
さらに、環状部材543とケーシング20の底壁21との間には、第1の自由回転環状体50における環状部材52,53と同様な環状部材544,545が介装されている。
【0183】
これにより、押動手段70のレバー72を揺動させてプッシュロッド74をケーシング20の内部に進入させると、図26に示したように、第2の環状体75,76が、第2の自由回転環状体80、第1の環状体60、第1の自由回転環状体50、および第3の環状体90をケーシング20の底壁21に押圧する。
すると、ケーシング20の蓋体22とサンギヤ31のフランジ部31cとが摩擦係合するとともに、サンギヤ31のフランジ部31cとプラネタリキャリヤ32とが摩擦係合し、さらにプラネタリキャリヤ32とケーシング20の底壁21とが摩擦係合するから、図19に示したブレーキ装置350よりもさらに強力に回転軸23の回転を制動することができる。
【0184】
このとき、本第5変形例の遊星歯車機構30Eは減速機構として作用するので、プラネタリキャリヤ32と一体に回転する第3の環状体90とケーシング20の側壁(固定手段)21との間の相対回転数は、回転軸23の回転数よりもかなり低い。
また、サンギヤ31のフランジ部31cと一体に回転する第1の環状体60と、ケーシング20の蓋体(固定手段)22との間の相対回転数は、回転軸23の回転数に等しい。
【0185】
これに対して、上述した第4変形例のブレーキ装置540においては、第3の環状体90とケーシング20の側壁(固定手段)21との間の相対回転数が回転軸23の回転数に等しい。さらに、サンギヤ31のフランジ部31cと一体に回転する第1の環状体60とケーシング20の蓋体(固定手段)22との間の相対回転数は、回転軸23の回転数よりもかなり高い。
したがって、本第5変形例の自由回転環状体型ブレーキ装置550の全体で見ると、回転軸23の制動特性は第4変形例のブレーキ装置540よりも穏やかなものとすることができる。
【0186】
すなわち、第5実施形態およびその第1〜第4変形例に示したように、本発明の自由回転環状体型ブレーキ装置は、遊星歯車機構の構成および各環状体の配置を変えることにより、回転軸23の回転を制動するときのブレーキ特性を自在に変更することができるのである。
【0187】
第6実施形態
次に図27を参照し、第6実施形態の自由回転環状体型ブレーキ装置について説明すると、本第6実施形態のブレーキ装置600は、上述した第5実施形態のブレーキ装置500に対し、クラッチ手段601および付勢手段602を追加したものである。
【0188】
クラッチ手段601は、回転軸23とプラネタリキャリヤ32との間に介装されており、回転軸23からプラネタリキャリヤ(接続手段)32への回転駆動力の伝達を断接する機能を有している。
そして、回転軸23の回転の制動を表す信号が得られるまでは、クラッチ601が切れており、回転軸23とプラネタリキャリヤ32とは切り離されている。
これにより、回転軸23と遊星歯車機構30との接続が断たれるから、遊星歯車機構30が回転慣性質量として作用して回転軸23の回転数の増減を妨げることがなく、かつ遊星歯車機構30の内部の摩擦損失が回転軸23に負荷されることもない。
これに対して、回転軸23の制動を表す信号が得られると、クラッチ手段601が作動して回転軸23と遊星歯車機構30とを接続するから、押動手段70の作動に連動し、本来のブレーキ装置として動作することになる。
【0189】
また、付勢手段602は、第2の環状体75,76、第3の環状体90,第2の自由回転環状体90、第1の環状体60、および第1の自由回転環状体50が、互いに接触した状態を維持するようにこれらの環状体を回転軸23の軸線方向に一体に付勢するようになっている。
これにより、押動手段70のレバー72を揺動させてプッシュロッド74をケーシング20の内部に進入させると、各環状体が直ちに摩擦係合してブレーキ作用が生じさせる。
なお、クラッチ手段601が設けられているため、各環状体の間にわずかに作用している摺動摩擦がブレーキ力として回転軸23に作用することを確実に防止することができる。
【0190】
第7実施形態
次に図28および図29を参照し、第7実施形態の自由回転環状体型ブレーキ装置について説明する。
【0191】
上述した第1〜第6実施形態の自由回転環状体型ブレーキ装置は、いずれも遊星歯車機構30を用いるものであった。
これに対し、本第7実施形態の自由回転環状体型ブレーキ装置700は、複数の平歯車あるいは複数のはすば歯車を組み合わせた構造の回転伝達機構を用いるものである。
【0192】
具体的に説明すると、本第7実施形態のブレーキ装置700は、静止部分701によって回転自在に支持された回転軸702、この回転軸702と一体に回転する円板状の第1の回転体703、および回転軸702と同軸にかつ回転軸702の軸線方向に変位自在に静止部分701によって回転不能に支持された環状の固定体704を備えている。
また、第1の回転体703と固定体704との間には、回転軸702に対して同軸にかつ相対回転自在に、さらに回転軸702の軸線方向に変位自在に支持されたそれぞれ円板状の第2〜第4の回転体705,706,707が介装されている。
なお、第2〜第4の回転体705,706,707は、その外周面に平歯を有する平歯車として形成されている。
【0193】
回転伝達機構710は、静止部分701に連結された左右一対の支持腕711によって支持されて回転軸702と平行に延びる支軸712と、この支軸712上に回転自在に外嵌された筒状の歯車支持体713とを有している。
そして、この歯車支持体713の端部に固定されている小径の平歯車714は、回転軸702と一体に回転する大径の平歯車715と噛み合っており、回転軸702の回転を歯車支持体713に伝達できるようになっている。
【0194】
さらに、歯車支持体713には外径の異なる第1〜第3の平歯車716,717,718がそれぞれ固定されており、第2〜第4の回転体705,706,707の外周面に刻設されている平歯と噛み合うようになっている。
これにより、回転軸702の回転によって、第2〜第4の回転体705,706,707を回転させることができる。
なお、第2〜第4の回転体705,706,707の外径および第1〜第3の平歯車716,717,718の外径は、第2の回転体705の回転数が第1の回転体703の回転数よりも高く、かつ第3の回転体706の回転数が第2の回転体705の回転数よりも高く、さらに第4の回転体707の回転数が第3の回転体706の回転数よりも高くなるように設定されている。
【0195】
また、第1〜第4の回転体703,705,706,707と固定体704との間には、前述した第1の自由回転環状体50と同一構造の第1〜第4の自由回転環状体720,721,722,723がそれぞれ介装されている。
これにより、第1の回転体703と固定体704との間の相対回転数は、各回転体と各自由回転環状体との間の摩擦摺動によって滑らかに吸収することができる。
【0196】
さらに、固定体704には、第1実施形態のブレーキ装置100におけるものと同様な構造の、静止部分701に支持された押動手段730が並設されており、矢印Pで示したように、固定体704を第1の回転体703に向かって軸線方向に押動できるようになっている。
【0197】
すなわち、本第7実施形態の自由回転環状体型ブレーキ装置700においては、回転軸702が回転すると、第1〜第4の回転体703,705,706,707、および固定体704がそれぞれ相対回転する。
そして、押動手段730を作動させることにより固定体704を第1の回転体703に向かって押動すると、第1の回転体703と固定体704とによって第2〜第4の回転体705,706,707および第1〜第4の自由回転環状体720,721,722,723を一体に挟持し、各回転体と各自由回転環状体および固定体とを一体に摩擦係合させて回転軸702の回転を制動することができる。
このとき、各回転体703,705,706,707および固定体704の間の相対回転は、各自由回転環状体720,721,722,723との摩擦摺動によって滑らかに吸収することができる。
これにより、摩擦係数の変動を抑制して安定した制動力を得ることができるばかりでなく、発熱に伴うフェード現象の発生も少なく長時間にわたって一定な制動力を得ることができ、さらには第1〜第4の回転体と第1〜第4の自由回転環状体の寿命を長くすることができる。
【0198】
さらに、本第7実施形態のブレーキ装置700においては、第2の回転体705の回転数が第1の回転体703の回転数よりも高く、かつ第3の回転体706の回転数が第2の回転体705の回転数よりも高く、さらに第4の回転体707の回転数が第3の回転体706の回転数よりも高くなるように設定されている。
これにより、第4の自由回転環状体723を介して第4の回転体707と固定体704とを摩擦係合させると、第4の回転体707の回転数の低下が急激なものとなるから、回転軸702の回転を制動するときのブレーキ特性を敏感なものとすることができる。
【0199】
これに対して、図29に示した変形例の自由回転環状体型ブレーキ装置750においては、第2の回転体705の回転数が第1の回転体703の回転数よりも低く、かつ第3の回転体706の回転数が第2の回転体705の回転数よりも低く、さらに第4の回転体707の回転数が第3の回転体706の回転数よりも低くなるように、回転伝達機構710の構成が変更されている。
これにより、第4の自由回転環状体723を介して第4の回転体707と固定体704とを摩擦係合させたときの、第4の回転体707の回転数の低下を緩やかなものとすることができるから、回転軸702の回転を制動するときのブレーキ特性を穏やかなものとすることができる。
【0200】
第8実施形態
次に図30〜図34を参照し、第8実施形態の自由回転環状体型ブレーキ装置について説明する。
【0201】
図30に示した本第8実施形態の自由回転環状体型ブレーキ装置800は、自動車のディスクブレーキ装置に自由回転環状体を組み合わせた構造となっている。
具体的に説明すると、ナックルハウジング801に保持されているユニット軸受802により回転自在に支持されているハブ803は、駆動軸804によって回転駆動されるとともに、その円盤状部分803aに植設されているハブボルト805によってブレーキディスク806および前輪14を一体に支持している。
【0202】
前輪14の回転は、ブレーキディスク806の摺動部分806aを、ディスクブレーキ装置810を用いて車軸の軸線方向に締め付けることにより制動される。
ディスクブレーキ装置810は、ナックルハウジング801に支持されているキャリパ811と、このキャリパ811の先端部分811aおよびピストン812にそれぞれ取り付けられたブレーキパッド813,814とを有している。
一般的なディスクブレーキ装置においては、ブレーキパッド813,814とブレーキディスク806の摺動部分806aの両側面とが直接的に摩擦摺動するが、本第8実施形態のブレーキ装置800においては、ブレーキパッド813,814とブレーキディスク806の摺動部分806aとの間に、自由回転環状体820がそれぞれ介装されている。
【0203】
自由回転環状体820は、図31に拡大して示したように、ブレーキディスク806の円筒状部分806bの外周面のうち摺動部分806aの両側近傍にそれぞれ外嵌された、自己潤滑性材料、例えば二硫化モリブデンを含有している焼結金属等から製造された筒状部材821を有している。
そして、これらの筒状部材821の外周面には、鋼板等から円環状に形成された第1および第2の環状体822,823の内周面がそれぞれ回転自在に外嵌され、ブレーキディスク806に対して同軸にかつ滑らかに相対回転できるように保持されている。
また、筒状部材821の近傍には、コイルばね等を内蔵した付勢手段826がそれぞれ配設され、ブレーキディスク806の摺動部分806aに向かって第1および第2の環状体822,823を付勢している。
【0204】
第1の環状体822は、その一方の側面がディスクブレーキ装置810のブレーキパッド813,814の表面とそれぞれ摩擦摺動する摺動面となっているが、その他方の側面には第1の摩擦ライニング822aが固着されている。
第2の環状体823は、その一方の側面が第1の摩擦ライニング822aと摩擦摺動する摺動面となっているが、その他方の側面には第2の摩擦ライニング823aが固着されている。
このとき、ブレーキパッド813,814の摩擦係数が第1の摩擦ライニング822aのそれより高く、かつ第1の摩擦ライニング822aの摩擦係数が第2の摩擦ライニング823aのそれより高くなるように、それぞれ摩擦材の構成材料が選択されている。
【0205】
これにより、ディスクブレーキ装置810によって前輪14の回転を制動すると、ブレーキパッド813,814と第1の環状体822の摩擦摺動面との間、第1の摩擦ライニング822aと第2の環状体823の摩擦摺動面との間、および第2の摩擦ライニング823aとブレーキディスク806の摺動部分806aとの間の、合計6つの接触部分に摩擦摺動が発生する。
これに対して、一般的なディスクブレーキ装置においては、ブレーキパッド813,814とブレーキディスク806の摺動部分806aとの間の合計2つの接触部分に摩擦摺動が発生するにすぎない。
したがって、ディスクブレーキ装置810のピストン812がブレーキパッド814を押圧する力が等しい場合、本第8実施形態のブレーキ装置800においては、約3倍の制動力を得ることができる。
言い換えると、同一の制動力を得る場合には、ディスクブレーキ装置810のピストン812がブレーキパッド814を押圧する力は概ね1/3で済むことになる。
【0206】
また、第1および第2の環状体822,823は、ブレーキディスク806に対して相対回転自在に保持されており、かつブレーキパッド813,814の摩擦係数が第1の摩擦ライニング822aのそれより高く、さらに第1の摩擦ライニング822aの摩擦係数が第2の摩擦ライニング823aのそれより高いから、ディスクブレーキ装置810によって前輪14の回転を制動すると、第1および第2の環状体822,823の間には相対回転が生じる。
このとき、ブレーキディスク806,第1の環状体822,第2の環状体823の間の各相対回転数は、ブレーキパッド813,814、第1および第2の摩擦ライニング822a,823aの摩擦係数の設定によって変化させることができる。
例えば、時速60キロメートルの速度で走行している車両の前輪14の回転数は約600回転/分であるが、ディスクブレーキ装置810によって前輪14を制動するときに、第2の環状体823の回転数が約400回転/分、第1の環状体822の回転数が約200回転/分となるように設定することができる。
【0207】
さらに説明すると、一般的なディスクブレーキ装置においては、ブレーキディスク806とブレーキパッド813,814との間で、約600回転/分の相対回転を吸収しなければならない。
これに対して、本第8実施形態のブレーキ装置800においては、ブレーキディスク806と第2の環状体823との間で約200回転/分の相対回転を吸収し、第2の環状体823と第1の環状体822との間で約200回転/分の相対回転を吸収し、第1の環状体822とブレーキパッド813,814との間で約200回転/分の相対回転を吸収するように設定することができる。
【0208】
このとき、ディスクブレーキ装置810のピストン814による押圧力が一定であると、摩擦摺動に伴う発熱レベルは、概ね相対回転数の2乗に比例する。
したがって、相対回転数が約600回転/分の場合と約200回転/分の場合では、発熱レベルは約1/9に減少するから、摩擦摺動面の数が3倍に増えていることを勘案しても、本第8実施形態のブレーキ装置800における発熱量は、一般的なディスクブレーキ装置における発熱レベルの約1/3に減少させることができる。
【0209】
加えて、本第8実施形態のブレーキ装置800においては、その摩擦摺動部分の合計の数が一般的なディスクブレーキ装置におけるそれの3倍であることから、等しい制動力を得るためには、ディスクブレーキ装置810のピストン814による押圧力は概ね1/3で済むことになる。
したがって、ピストン814による押圧力が小さくて済む分だけ、本第8実施形態のブレーキ装置800における発熱レベルはさらに低下することになる。
これにより、発熱に伴うフェード現象の発生を抑制することができるばかりでなく、ブレーキパッド813,814や第1および第2の摩擦ライニング822a,823aの摩耗も減少させることができる。
【0210】
すなわち、本第8実施形態のブレーキ装置は、ブレーキディスク806とブレーキパッド813,814との間に、ブレーキディスク806に対して相対回転自在な第1および第2の環状体822,823を介装したことにより、摩擦摺動面の合計数を増加させて高い制動力を得ることができるばかりでなく、各摩擦摺動面における相対回転数を低下させて制動に伴う発熱を抑制することができるという、従来のディスクブレーキ装置においては到底得ることができない優れた作用効果を奏するものである。
【0211】
また、本第8実施形態のブレーキ装置800においては、前輪14の回転の制動に伴って発生する発熱のレベルが一般的なディスクブレーキ装置よりも大幅に低い。
これにより、ブレーキディスク806を「ベンチレーテッド・ディスク」とする必要がなく、図30に示したような「ソリッド・ディスク」とすることができる。
この場合、ブレーキディスクの軸線方向の厚みが大幅に減少するから、余ったスペースに自由回転環状体820のためのスペースとして確保することができる。
これにより、既存の車両におけるディスクブレーキ装置を、本第8実施形態のブレーキ装置800に容易に置き換えることができる。
【0212】
さらに、本第8実施形態のブレーキ装置800,850においては、自由回転環状体820,870の内周部分に付勢手段826,874がそれぞれ設けられているから、自由回転環状体820の姿勢を安定させることができる。
これにより、自由回転環状体820,870を回転軸に対して垂直に保持し、その傾斜に起因するブレーキジャダーの発生を確実に防止することができる。
【0213】
なお、本第8実施形態のブレーキ装置においては、自由回転環状体820が2つの環状体822,823を有しているが、必要とする制動力、車輪の回転数、発熱レベルに応じて環状体の数を増減できることは言うまでもない。
【0214】
さらに、本第8実施形態のブレーキ装置800を適用する車両の重量や走行速度によっては、摩擦ライニング822a,823aを持たない環状部材を用いることができる。
この場合の自由回転環状体は、前述した各実施形態における自由回転環状体50,80とほぼ同様の構造とすることができることは、この分野の当業者に取っては自明なことである。
【0215】
変形例
次に図32および図33を参照し、第8実施形態のブレーキ装置の変形例について説明する。
【0216】
図32に示した自由回転環状体型ブレーキ装置850は、鉄道車両の車輪の回転を制動するためのディスクブレーキ装置に自由回転環状体を組み合わせた構造となっている。
車軸851に外嵌されている車輪852の両側面には、ブレーキディスク853,854がボルトナット855によって一体に固定されている。
また、台車枠に固定されているディスクブレーキ装置860のキャリパーは一対のアーム861,862を有しており、その一方のアーム861に設けられているピストン863と他方のアーム862にはそれぞれブレーキパッド864,865が取り付けられている。
そして、ブレーキディスク853,854とブレーキパッド864,865との間に、自由回転環状体870がそれぞれ介装されている。
【0217】
自由回転環状体870は、図33に拡大して示したように、ボルトナット855によって車輪852に対して同軸に固定されている、自己潤滑性材料、例えば二硫化モリブデンを含有している焼結金属等から製造された環状支持部材871を有している。
そして、環状支持部材871の外周面には、鋼板等から円環状に形成された第1および第2の環状体872,873の内周面がそれぞれ回転自在に外嵌され、ブレーキディスク853,854に対して同軸にかつ滑らかに相対回転できるように保持されている。
さらに、環状支持部材871の先端部分には、コイルばね等を内蔵した付勢手段874がそれぞれ配設され、ブレーキディスク853,854に向かって第1および第2の環状体872,873をそれぞれ付勢している。
【0218】
第1の環状体872は、その一方の側面がディスクブレーキ装置860のブレーキパッド864,865の表面とそれぞれ摩擦摺動する摺動面となっているが、その他方の側面には第1の摩擦ライニング872aが固着されている。
第2の環状体873は、その一方の側面が第1の摩擦ライニング872aと摩擦摺動する摺動面となっているが、その他方の側面には第2の摩擦ライニング873aが固着されている。
そして、ブレーキパッド864,865の摩擦係数が第1の摩擦ライニング872aのそれより高く、第1の摩擦ライニング872aの摩擦係数が第2の摩擦ライニング873aのそれより高くなるように、それぞれ構成材料が選択されている。
【0219】
これにより、ディスクブレーキ装置860によって車輪852の回転を制動すると、ブレーキパッド864,865と第1の環状体872との各接触面、第1の摩擦ライニング872aと第2の環状体873との各接触面、および第2の摩擦ライニング873aとブレーキディスク853,854と接触面の合計6つの接触面において摩擦摺動が発生する。
したがって、上述したブレーキ装置850と全く同様に、少ない発熱量で車輪852の回転を確実に制動することができる。
【0220】
以上、本発明に係る自由回転環状体型ブレーキ装置の各実施形態ついて詳しく説明したが、本発明は上述した実施形態によって限定されるものではなく、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した第1実施形態のブレーキ装置100においては、レバー72を揺動させることによりブレーキを作動させる構造となっているが、電動サーボあるいは油圧サーボを用いて各環状体を押動することができることは言うまでもない。
さらに、上述した第1実施形態においては、いわゆるFR(フロントエンジンリアドライブ)車を例にとって説明しているが、FF(フロントエンジンフロントドライブ)車や4WD(4輪駆動)車に本発明を適用できることは言うまでもない。
加えて、第8実施形態のブレーキ装置800,850は、自動車や鉄道車両に限定されず、他の交通機関、例えば航空機の車輪の回転を制動するために用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0221】
【図1】第1実施形態のブレーキ装置を組み込んだオーバードライブ装置を示す要部破断斜視図。
【図2】図1のオーバードライブ装置を組み込んだ自動車の動力伝達系を模式的に示す図。
【図3】図1に示したブレーキ装置の構造を模式的に示す断面図。
【図4】図1に示したブレーキ装置の作動を模式的に示す断面図。
【図5】図1に示したブレーキ装置の構造を模式的に示す断面図。
【図6】図1に示したブレーキ装置の作動を模式的に示す断面図。
【図7】第2実施形態のブレーキ装置の構造を模式的に示す断面図。
【図8】第2実施形態のブレーキ装置の作動を模式的に示す断面図。
【図9】第2実施形態のブレーキ装置の第1変形例の構造を模式的に示す断面図。
【図10】第2実施形態のブレーキ装置の第2変形例の構造を模式的に示す断面図。
【図11】第2実施形態のブレーキ装置の第3変形例の構造を模式的に示す断面図。
【図12】第2実施形態のブレーキ装置の第4変形例の構造を模式的に示す断面図。
【図13】第2実施形態のブレーキ装置の第5変形例の構造を模式的に示す断面図。
【図14】第3実施形態のブレーキ装置の構造を模式的に示す断面図。
【図15】第3実施形態のブレーキ装置の第1変形例の構造を模式的に示す断面図。
【図16】第3実施形態のブレーキ装置の第2変形例の構造を模式的に示す断面図。
【図17】第3実施形態のブレーキ装置の第3変形例の構造を模式的に示す断面図。
【図18】第3実施形態のブレーキ装置の第4変形例の構造を模式的に示す断面図。
【図19】第3実施形態のブレーキ装置の第5変形例の構造を模式的に示す断面図。
【図20】第4実施形態のブレーキ装置を組み込んだ電気自動車のインホイールモータの構造を模式的に示す断面図。
【図21】第5実施形態のブレーキ装置の構造を模式的に示す断面図。
【図22】第5実施形態のブレーキ装置の第1変形例の構造を模式的に示す断面図。
【図23】第5実施形態のブレーキ装置の第2変形例の構造を模式的に示す断面図。
【図24】第5実施形態のブレーキ装置の第3変形例の構造を模式的に示す断面図。
【図25】第5実施形態のブレーキ装置の第4変形例の構造を模式的に示す断面図。
【図26】第5実施形態のブレーキ装置の第5変形例の構造を模式的に示す断面図。
【図27】第6実施形態のブレーキ装置の構造を模式的に示す断面図。
【図28】第7実施形態のブレーキ装置の構造を模式的に示す要部断面側面図。
【図29】第7実施形態のブレーキ装置の変形例の構造を模式的に示す要部断面側面図。
【図30】第8実施形態のブレーキ装置の構造を模式的に示す要部断面図。
【図31】図30の要部を拡大して示す図。
【図32】第8実施形態のブレーキ装置の変形例の構造を模式的に示す要部断面図。
【図33】図32の要部を拡大して示す図。
【図34】先願に係るブレーキ装置の構造を模式的に示す側面図。
【図35】電気自動車の従来のインホイールモータの構造を模式的に示す断面図。
【符号の説明】
【0222】
1 回転軸
2 第1の回転体
3,6,7,8 歯車
4 支持腕
5 支軸
9 第2の回転体
10 電気自動車の従来のインホイールモータ
11 電気モータ
12 減速機構
13 ドラムブレーキ
14 ホイール
15 タイヤ
20 ケーシング(固定手段)
23 入力軸(回転軸)
24 出力軸
30 遊星歯車機構
31 サンギヤ
32 プラネタリキャリヤ
33 支軸
34 プラネタリギヤ
35 リングギヤ
40 切換手段
50 第1の自由回転環状体
60 第1の環状体
70 押動手段
75,76 第2の環状体
80 第2の自由回転環状体
90 第2の環状体
S 電動サーボ
100 第1実施形態のブレーキ装置
200 第2実施形態のブレーキ装置
300 第3実施形態のブレーキ装置
400 第4実施形態のブレーキ装置
500 第5実施形態のブレーキ装置
600 第6実施形態のブレーキ装置
700 第7実施形態のブレーキ装置
800 第8実施形態のブレーキ装置
806 ブレーキディスク
810 ディスクブレーキ装置
812 ピストン
820 自由回転環状体
822,823 環状部材
822a,823a 摩擦ライニング
852 鉄道車両の車輪
853,854 ブレーキディスク
860 ディスクブレーキ装置
865 ピストン
870 自由回転環状体
872,873 環状部材
872a,873a 摩擦ライニング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊星歯車機構と同軸に配設された回転軸の回転を制動するためのブレーキ装置であって、
前記遊星歯車機構を構成するサンギヤ、プラネタリギヤ、リングギヤのうちのいずれか1つを回転不能に固定する固定手段と、
前記サンギヤ、プラネタリギヤ、リングギヤのうち前記固定手段によって固定されていないもののうちいずれか一方と前記回転軸とを接続して前記回転軸によって回転駆動されるようにする接続手段と、
前記サンギヤ、プラネタリギヤ、リングギヤのうち前記固定手段によって固定されていないもののうちいずれか他方と一体に回転する従動手段と、
前記回転軸と同軸で前記回転軸の軸線方向に変位自在に、かつ前記回転軸の回りに回転自在に配設された第1の自由回転環状体と、
前記回転軸と同軸にかつ前記軸線方向に変位自在に支持されて前記接続手段および前記従動手段のうちいずれか一方と一体に回転する第1の環状体と、
前記固定手段、前記接続手段、前記従動手段のいずれかに向かって前記第1の環状体および前記第1の自由回転環状体を前記軸線方向に一体に押動し、これらの環状体を互いに密着させて摩擦係合させる、前記固定手段に支持された押動手段と、
を備えることを特徴とする自由回転環状体型ブレーキ装置。
【請求項2】
前記回転軸と同軸にかつ前記の軸線方向に変位自在に前記押動手段に支持された第2の環状体をさらに備え、
前記押動手段は、前記第1の自由回転環状体、前記第1の環状体および前記第2の環状体を前記軸線方向に一体に押動し、互いに密着させて摩擦係合させることを特徴とする請求項1に記載した自由回転環状体型ブレーキ装置。
【請求項3】
前記回転軸と同軸で前記軸線方向に変位自在に、かつ前記回転軸の回りに回転自在に、前記第2の環状体と前記第1の環状体との間に配設された第2の自由回転環状体をさらに備え、
前記押動手段は、前記第2の環状体、前記第2の自由回転環状体、前記第1の環状体、および前記第1の自由回転環状体を前記軸線方向に一体に押動し、互いに密着させて摩擦係合させることを特徴とする請求項2に記載した自由回転環状体型ブレーキ装置。
【請求項4】
前記回転軸と同軸にかつ前記軸線方向に変位自在に支持されて、前記接続手段および前記従動手段のうちいずれか他方と一体に回転する、前記第1の自由回転環状体あるいは前記第2の自由回転環状体と前記固定手段との間に配設された第3の環状体をさらに備え、 前記押動手段は、前記第2の環状体、前記第3の環状体、前記第2の自由回転環状体、前記第1の環状体、および前記第1の自由回転環状体を前記軸線方向に一体に押動し、互いに密着させて摩擦係合させることを特徴とする請求項3に記載した自由回転環状体型ブレーキ装置。
【請求項5】
前記第1の自由回転環状体は、前記軸線方向に同軸に積層されて相互に摺動自在な複数の環状部材から構成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載した自由回転環状体型ブレーキ装置。
【請求項6】
前記第2の自由回転環状体は、前記軸線方向に同軸に積層されて相互に摺動自在な複数の環状部材から構成されていることを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載した自由回転環状体型ブレーキ装置。
【請求項7】
前記複数の環状部材の1つが前記回転軸と同軸な円筒部分を有しており、かつ他の環状部材が前記円筒部分の外周面に摺動自在に外嵌されていることを特徴とする請求項5または6に記載した自由回転環状体型ブレーキ装置。
【請求項8】
前記遊星歯車機構は、前記サンギヤを前記固定手段に固定し、前記プラネタリギヤを前記回転軸によって回転駆動して、前記リングギヤから増速された回転駆動力を取り出すように構成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載した自由回転環状体型ブレーキ装置。
【請求項9】
前記回転駆動力を出力する出力軸と、
前記回転軸を前記出力軸に接続した直結状態と前記リングギヤを前記出力軸に接続した増速状態とを選択的に切り換え可能な切換手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項8に記載した自由回転環状体型ブレーキ装置。
【請求項10】
前記出力軸が、自動車のプロペラシャフトおよび終減速機を介して左右の駆動輪に接続されていることを特徴とする請求項9に記載した自由回転環状体型ブレーキ装置。
【請求項11】
前記遊星歯車機構が、電気自動車の駆動輪の内側に配設されたインホイールモータの駆動出力を減速するための減速機構として構成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載した自由回転環状体型ブレーキ装置。
【請求項12】
前記第1の環状体は、前記接続手段および前記従動手段のうち前記固定手段に対する相対回転速度差が大きい方と一体に回転するように支持されていることを特徴とする請求項2乃至11のいずれかに記載した自由回転環状体型ブレーキ装置。
【請求項13】
前記第1の環状体は、前記接続手段および前記従動手段のうち前記固定手段に対する相対回転速度差が小さい方と一体に回転するように支持されていることを特徴とする請求項2乃至11のいずれかに記載した自由回転環状体型ブレーキ装置。
【請求項14】
前記回転軸から前記接続手段への回転駆動力の伝達を断接する、前記回転軸と前記接続手段との間に介装されたクラッチと、
このクラッチの作動を制御するクラッチ制御手段と、をさらに備え、
前記クラッチ制御手段は、前記回転軸の制動を表す信号が入力したときに前記クラッチを作動させて前記回転軸と前記接続手段とを接続させることを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載した自由回転環状体型ブレーキ装置。
【請求項15】
前記環状体が互いに接触した状態を維持するように前記環状体を前記軸線方向に一体に付勢する付勢手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載した自由回転環状体型ブレーキ装置。
【請求項16】
静止部分によって回転自在に支持された回転軸と、
前記回転軸と一体に回転する第1の回転体と、
前記回転軸と同軸にかつ前記回転軸の軸線方向に変位自在に、さらに前記静止部分によって回転不能に支持された固定体と、
前記回転軸に対して同軸にかつ相対回転自在に、さらに前記回転軸の軸線方向に変位自在に前記第1の回転体と前記固定体との間に介装された第2および第3の回転体と、
前記第1〜第3の回転体と前記固定体との間にそれぞれ介装された第1〜第3の自由回転環状体と、
前記第2および第3の回転体がそれぞれ前記第1の回転体とは異なる回転数で回転するように前記回転軸の回転を前記第2および第3の回転体にそれぞれ伝達する、前記静止部分に支持された回転伝達機構と、
前記第1の回転体および前記固定体によって、前記第1〜第3の回転体および前記第1〜第3の自由回転環状体を一体に挟持するべく、前記第1の回転体および前記固定体の少なくともいずれか一方を前記軸線方向に押動する、前記静止部分に支持された押動手段と、
を備えることを特徴とする自由回転環状体型ブレーキ装置。
【請求項17】
前記回転伝達機構は、前記第2の回転体の回転数が前記第1の回転体の回転数よりも高く、かつ前記第3の回転体の回転数が前記第2の回転体の回転数よりも高くなるように構成されていることを特徴とする請求項16に記載した自由回転環状体型ブレーキ装置。
【請求項18】
前記回転伝達機構は、前記第2の回転体の回転数が前記第1の回転体の回転数よりも低く、かつ前記第3の回転体の回転数が前記第2の回転体の回転数よりも低くなるように構成されていることを特徴とする請求項16に記載した自由回転環状体型ブレーキ装置。
【請求項19】
前記第1〜第3の自由回転環状体は、前記軸線方向に同軸に積層されて相互に摺動自在な複数の環状部材から構成されていることを特徴とする請求項16乃至18のいずれかに記載した自由回転環状体型ブレーキ装置。
【請求項20】
前記複数の環状部材のうち隣接する環状部材同士が異なる回転速度で回転するようにそれらの間に作用する摺動摩擦の大きさを制御する摺動摩擦制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項5,6,18,19のいずれかに記載した自由回転環状体型ブレーキ装置。
【請求項21】
前記摺動摩擦制御手段は、前記複数の環状部材のうち隣接する環状部材をそれぞれ形成している金属材料の硬度を異ならせることによって構成されていることを特徴とする請求項20に記載した自由回転環状体型ブレーキ装置。
【請求項22】
前記複数の環状部材は、前記硬度の高い環状部材と前記硬度の低い環状部材とを交互に並べたものであることを特徴とする請求項21に記載した自由回転環状体型ブレーキ装置。
【請求項23】
前記複数の環状部材は、前記回転軸の軸線方向に前記硬度の低い順に前記環状部材を並べたものであることを特徴とする請求項21に記載した自由回転環状体型ブレーキ装置。
【請求項24】
前記摺動摩擦制御手段は、前記複数の環状部材のうち隣接する環状部材同士の直径方向の寸法を異ならせることによって構成されていることを特徴とする請求項20に記載した自由回転環状体型ブレーキ装置。
【請求項25】
前記複数の環状部材は、前記直径方向の寸法の大きい環状部材と前記直径方向の寸法の小さい環状部材とを交互に並べたものであることを特徴とする請求項24に記載した自由回転環状体型ブレーキ装置。
【請求項26】
前記複数の環状部材は、前記回転軸の軸線方向に前記直径方向の寸法の小さい順に前記環状体を並べたものであることを特徴とする請求項24に記載した自由回転環状体型ブレーキ装置。
【請求項27】
前記摺動摩擦制御手段は、前記複数の環状部材のうち隣接する環状部材同士の軸線方向の寸法を異ならせることによって構成されていることを特徴とする請求項20に記載した自由回転環状体型ブレーキ装置。
【請求項28】
前記複数の環状体部材は、前記軸線方向の寸法の大きい環状部材と前記軸線方向の寸法の小さい環状部材とを交互に並べたものであることを特徴とする請求項27に記載した自由回転環状体型ブレーキ装置。
【請求項29】
前記複数の環状部材は、前記回転軸の軸線方向に前記軸線方向の寸法の小さい順に前記環状体を並べたものであることを特徴とする請求項27に記載した自由回転環状体型ブレーキ装置。
【請求項30】
前記摺動摩擦制御手段は、前記複数の環状体部材のうち隣接する環状部材同士の摩擦摺動面にそれぞれ凹設した凹部の面積を異ならせることによって構成されていることを特徴とする請求項20に記載した自由回転環状体型ブレーキ装置。
【請求項31】
前記複数の環状部材は、前記凹部の面積の大きい環状部材と前記凹部の面積の小さい環状部材とを交互に並べたものであることを特徴とする請求項30に記載した自由回転環状体型ブレーキ装置。
【請求項32】
前記複数の環状部材は、前記回転軸の軸線方向に前記凹部の面積の小さい順に前記環状部材を並べたものであることを特徴とする請求項30に記載した自由回転環状体型ブレーキ装置。
【請求項33】
交通機関の車輪と一体に回転するブレーキディスクと、
このブレーキディスクに向かってブレーキパッドを押動する押動手段と、
前記ブレーキディスクと前記ブレーキパッドとの間において前記ブレーキディスクと同軸にかつ相対回転自在に介装された自由回転環状体と、
を備えることを特徴とする自由回転環状体型ブレーキ装置。
【請求項34】
前記自由回転環状体は、前記ブレーキパッドの側の側面が摩擦摺動面であり、かつ反対側の側面に相手側と摩擦係合する摩擦材が設けられた、少なくとも一つの環状部材を有していることを特徴とする請求項33に記載した自由回転環状体型ブレーキ装置。
【請求項35】
複数の前記環状部材が前記ブレーキディスクの軸線方向に同軸に積層されており、
かつ前記複数の環状部材の各摩擦材の摩擦係数は、前記ブレーキパッドの側ほど高く、前記ブレーキディスクの側ほど低くなるように設定されている、
ことを特徴とする請求項34に記載した自由回転環状体型ブレーキ装置。
【請求項36】
前記ブレーキパッドと摩擦摺動する前記環状部材における摩擦材の摩擦係数は、前記ブレーキパッドの摩擦材における摩擦係数より低く設定されていることを特徴とする請求項35に記載した自由回転環状体型ブレーキ装置。
【請求項37】
前記ブレーキディスクには、前記環状部材の内周面が摺動自在に外嵌する、自己潤滑性の材料から製作された支持部材が設けられていることを特徴とする請求項33乃至36のいずれかに記載した自由回転環状体型ブレーキ装置。
【請求項38】
前記自由回転環状体の内周部分を前記ブレーキディスクに向かって付勢する付勢手段が設けられていることを特徴とする請求項33乃至37のいずれかに記載した自由回転環状体型ブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2007−255695(P2007−255695A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−143272(P2006−143272)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(591173383)ホンマ科学株式会社 (2)
【Fターム(参考)】