説明

荷電ビーム装置及び荷電ビーム加工方法

【課題】加速電圧を下げたSTEM観察での電子ビームの試料透過能力の低下やイオンビームの照射により生じるダメージ層の悪影響を防ぎ、試料の所望の領域への損傷を最小限にしてダメージ層を効果的に除去すること、および薄膜試料の厚さがより薄くなっても最適な加工終了時点を検出して加工失敗を防ぐ。
【解決手段】仕上げ加工に使用するイオンビームのエネルギーを低くすると共に、試料への入射角度を試料形状に合わせて最適化し、STEM像の着目する要素の変化をモニタして加工の終了時点を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体デバイスの基板から取り出した微細試料に、FIB(Focused Ion Beam:集束イオンビーム)を用いた特定個所の微細加工を利用して、その加工面を作製し、かつその加工面を走査透過型電子顕微鏡(STEM:Scanning Transmission Electron Microscopy)、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscopy)、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscopy)などで観察する荷電ビーム装置及び荷電ビーム加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
FIB装置とSTEMの組み合わせに関する技術は、特許文献1に開示されている。FIB加工により作製されたSTEM観察用試料は、イオンビーム軸と電子ビーム軸の交点に置かれ、FIBによる追加工とSTEM観察ができることが示されている。イオンビーム軸と電子ビーム軸は鋭角交差であり、FIB追加工とSTEM観察間でSTEM試料は両軸に垂直な回転軸周辺で回転させる。
【0003】
一方、TEM試料作製に関する技術が、特許文献2に開示されている。そこではFIBで薄膜加工するTEM試料の膜厚を調べるために、その試料断面と垂直な方向から電子ビームを照射し、電子ビーム照射強度と試料を透過した電子ビームとの強度比を検出している。ここでの透過電子ビームは、STEM信号である散乱角のきわめて小さい透過ビームと透過散乱した散乱ビームとを区別した検出は行っておらず、STEM観察観点からの試料膜厚モニターにはなっていない。
【0004】
同種の技術は、特許文献3にも開示されている。また、特許文献4においては、TEM装置の試料室にTEMの電子ビーム軸と直角方向にFIB照射系を配置し、FIB加工で作製したTEM試料を大気に取り出すことなく、そのままTEM観察できるのが特徴で、FIB追加工時などのスループットの悪さを解決する装置として開示されている。そこでは試料膜厚の制御としてTEM像モニターについても開示されている。
【0005】
また、特許文献5では、TEM装置の電子ビーム照射系軸に対しFIB照射系軸を斜め方向(<90度)に取り付け、FIB加工中試料のその場TEM観察例が開示されている。しかし、FIBは試料面に対し斜め入射となっているため、FIB入射軸とほぼ平行に加工作製する断面薄膜試料に比べ、ビーム損傷が深く形成されるという欠点がある。
【0006】
また、STEM装置の照射電子ビームのエネルギーは、従来はTEMと同じく200keV程度と高エネルギーであったが、最近では、非特許文献1に報告されているように、30keVと従来のSEMと同じエネルギー領域でSTEM観察が行われるようになった。電子ビームの照射エネルギーが低下すると薄膜試料の透過能力も低下するため、低エネルギーSTEM装置では一般的にFIB加工で作製する薄膜試料に高精度の膜厚管理が要求されている。
【0007】
試料の仕上げ加工に関しては、試料の加工断面を垂直に加工するための技術が特許文献6に開示されている。加工の仕上げ段階で試料を3度から6度傾斜させることで垂直な断面を得るのであるが、イオンビームの照射により生じるダメージ層への対策は言及されていない。また、特許文献7には、ビームの電流密度分布の影響を更に減らすために、試料表面位置にイオンビームの最小錯乱円がくるようにして、入射角16は90度に近づく(試料断面から見ると、垂直入射に近づく方向)ようにすることが示されている。
【特許文献1】特開2004−228076号公報
【特許文献2】特開平6−231720号公報
【特許文献3】特開平8−5528号公報
【特許文献4】特開平6−231719号公報
【特許文献5】特開平7−92062号公報
【特許文献6】特許第3488075号公報
【特許文献7】特許第3597761号公報
【非特許文献1】Journal Electron Microscopy 51(1):53−57(2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これまで多くはFIB加工とSTEM観察を別々の装置で行っており、FIB装置で加工作製したSTEM用薄膜試料は、一旦、FIB装置から取り出した後にSTEM装置に入れて観察する必要があった。そのため、STEM観察とFIB追加工の繰り返しによって観察個所を更に特定しながらでの薄膜化加工のニーズにはスループットの観点から十分に応えられていなかった。しかしながら、最近はFIB加工とSTEM観察を一体化した装置が出されスループットの改善が計られている。
【0009】
STEM像観察の観点からは、加速電圧を下げた観察が普及するにつれて電子ビームの試料に対する透過に関して課題が顕在化してきた。電子ビームのエネルギーが低下すると、電子ビームが薄膜試料を透過する能力が低下するため、この透過能力の低下を補うために薄膜試料の厚さをより薄くする必要がある。試料厚さが薄くなるほどイオンビームによる試料加工は難しくなり、加工の終了検出の失敗による所望領域の損失の危険性も高くなる。通常、イオンビームの照射によりイオンビームの照射を受けた試料表面(加工により生成した断面も同様である)近傍には結晶構造がアモルファス化したダメージ層が生じる。このダメージ層はSTEM観察の像質の低下を招いてしまうため、より薄くなった試料の所望領域への損傷を減らした上でダメージ層を除去する必要がある。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、所望の領域への損傷を最小限にしてダメージ層を効果的に除去することと、より薄膜試料の厚さが薄くなった試料の加工失敗を防ぐための加工終了ポイントの検出であり、これらの課題を解決する装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の荷電ビーム装置は、イオンビームを発生させると共に集束させ試料上を走査させるイオン光学系と、電子ビームを発生させると共に集束させ前記試料上を走査させる電子光学系と、前記試料を透過した電子を検出する透過電子検出器と、前記試料から発生する二次電子を検出する二次電子検出器と、前記試料を配置する試料保持機構と、各ユニットを制御する制御部とを具備し、仕上げ加工に用いる前記イオンビームのエネルギーは主加工に用いる前記イオンビームのエネルギーよりも低いエネルギーであり、かつ前記仕上げ加工に用いる前記イオンビームの前記試料への入射角は前記主加工に用いる前記イオンビーム前記試料への入射角とは異なる角度に設定可能であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の荷電ビーム装置は、少なくとも走査透過型電子顕微鏡(STEM)観察を行うことができ、前記試料に対し前記イオンビームによる加工と前記電子ビームによる観察を連続的あるいは断続的に行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、仕上げ加工に使用するイオンビームのエネルギーを低くすると共に、試料への入射角度を試料形状に合わせて最適化することで効果的にダメージ層を除去できる。イオンビームのエネルギーを下げることでスパッタリング能力を減少させることができ、新たに生じるイオンビームの照射によるダメージ層の生成を減らすと共に、既に主加工で生じてしまった試料表面近傍のダメージ層に続く内部(試料表面から見ると、ダメージ層の下部分)への影響を減らして、ダメージ層を選択的かつ効率的に除去できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の実施例1の荷電粒子ビーム装置の試料が仕上げ加工時の状態である概略構成図である。図2は、試料が主加工時の状態である荷電粒子ビーム装置の概略構成図である。主に図1を使用して説明する。図1に示された荷電ビーム装置の実施例1は、イオンビームを発生させると共に集束させ試料上を走査させるイオン光学系1と、電子ビームを発生させると共に集束させ試料上を走査させる電子光学系2と、試料を透過した電子を検出する透過電子検出器3と、試料から発生する二次電子を検出する二次電子検出器4と、試料10を配置する試料保持機構5と、各ユニットを制御する制御部6を真空容器20に搭載し、オペレータに各観察像、測定データや操作GUIなどを知らしめる表示部21とを具備している。電子ビームと試料10とが交差する位置に存在する電子ビームの光軸13に垂直な平面11を境として、二次電子検出器4は電子光学系2の存在する空間側に配置され、透過電子検出器3電子光学系2の存在する空間と反対側の空間に配置されている。試料保持機構5は、イオンビームの光軸12と電子ビームの光軸13とを含む平面に対して垂直方向の回転軸14に従い試料10を回転することができる。また、回転軸14に垂直で、かつ試料10の加工断面とほぼ平行な回転軸15に対して試料10を回転することができる。試料10は仕上げ加工時の状態を示しており、仕上げ加工に用いるイオンビームの試料10への入射角16は、3度以上90度以下(加工断面に対しては、ほぼ水平入射(3度)からほぼ垂直入射(90度)の間となる)である。本実施例1ではおよそ30度に示してある。尚、図2に示すように主加工では入射角16はほぼ0度、すなわち試料面に対して垂直入射となる。イオン光学系1と電子光学系2(あるいはイオンビームの光軸12と電子ビームの光軸13)との配置角度18は0度以上90度以下である。0度とは、イオン光学系1と電子光学系とが同一であるハイブリッド光学系という特殊な場合である。
【0016】
試料10は、主加工により薄膜形状にする。この主加工は加工性能とスループットを重視しており、イオンビームのエネルギーは30kVから40kVの高いエネルギーに設定される。半導体デバイス等の内部を分析する場合には、試料面に対して垂直の断面を形成して断面観察をしたり分析をしたりすることが多く、一般に主加工のイオンビームの入射角は0度(試料面に対して垂直入射)に設定する。通常、イオンビームを照射すると、イオンビームの照射を受けた試料表面(加工により生成した断面も同様である)近傍には結晶構造がアモルファス化したダメージ層が生じる。
【0017】
図3に、イオンビームの照射を受けた試料表面(加工により生成した断面も同様である)近傍に結晶構造がアモルファス化したダメージ層が発生した状態を概略的に示した試料10の断面図を示す。主加工の終了した薄膜試料の内部構造は、試料10の観察や分析などを行う所望の表面30(ここでは加工断面に相当)から試料内部に向かってイオンビームの照射により発生したダメージ層31が存在し、さらにその内部に表面や構造などを観察・分析したい所望の領域32が存在する構成となっている。加速電圧が数百kVのSTEM観察では、たとえダメージ層31が存在しても電子ビームは所望の領域32を透過することができ、結晶構造の観察や元素分析といったことは可能である。しかし、ダメージ層31はSTEM像のノイズ成分となり、本質的に邪魔な存在である。また、加速電圧が数十kV以下のSTEM観察では、電子ビームの試料透過能力が低下してしまうため、この透過能力の低下を補うために薄膜試料の厚さを更に薄くしなければならない。薄膜試料の厚さを薄くしてゆくとダメージ層31の大きさは同じままで、所望の領域32が薄くなってゆく。即ち、ノイズ成分の発生源の大きさは変わらないままで所望の情報源が減ってしまうのでダメージ層31の悪影響がより大きくなってしまう。従って、所望の領域32を傷めることを最小限にしてダメージ層31を除去しなければならない。
【0018】
そこで、ダメージ層31の発生を少なくするために、仕上げ加工に用いるイオンビームのエネルギーを主加工に使用するイオンビームのエネルギーよりも低くする。本実施例1では5kV以下にする。イオンビームのエネルギーを下げるとスパッタリング能力が減少するため、試料表面のごく近傍しか加工されない。したがって、ダメージ層の下部にある所望の領域32に影響を与えずダメージ層31を選択的に加工、すなわち除去でき、所望の領域を傷めることなく残すことができる。ダメージ層31の除去が進み、所望の領域32が試料表面に接近してきてもイオンビームのエネルギーが低いため所望の領域32への新たなダメージ層の生成は抑えられる。結果として最小限のダメージで所望の領域32を試料表面に露出させることができる。
【0019】
以上はイオンビームのエネルギーを低くすることで得られる利点であるが、欠点もある。それは、スパッタリング能力の低下に伴う加工スループットの低下である。この欠点を補うために、スパッタリング速度の角度依存性を利用する。エネルギーを低くしたイオンビームによる仕上げ加工では、イオンビームの入射角16が3度以上90度以下(加工断面に対しては、ほぼ水平入射(3度)からほぼ垂直入射(90度))となるように試料保持機構5により試料10を回転軸14にそって回転し、イオンビームを基準に見て傾斜させて仕上げ加工を行うことでスループットの低下を抑える。これはまた、ビーム径が増大したイオンビームを効率的に利用すること、加工領域底部からのバックスパッタ粒子の影響低減の効果もある。ビーム径が増大したイオンビームで、従来のようにビームの裾部分のみを用いて仕上げ加工を行うのでは加工に使用しない無駄部分が多すぎて非効率である。イオンビームのエネルギーを下げるとビーム径が増大し、ビーム電流密度の分布形状も鈍り集束状態の悪いブロードビームに近づくため、ビーム全体を利用した方が効率的である。最適な入射角16は、試料10の加工部分の形状により加工底部から加工断面に帰ってくるバックスパッタの状態が変わるため、試料形状により変化する。
【0020】
ビームの電流密度分布の影響を更に減らすには、特許文献7に示すように試料表面位置にイオンビームの最小錯乱円がくるようにして、入射角16は90度に近づく(試料断面から見ると、垂直入射に近づく方向)ようにすれば良い。例えば、試料の薄膜部の両側を加工する場合には、回転軸14にそって試料10を回転するか、回転軸15にそって試料10を回転すればよい。どちらの回転軸を使用するかは、試料形状により決まる。また、ピラー状に加工する場合には、何れかの回転軸に沿って試料10を回転し続ければよい。
【実施例2】
【0021】
図4は、試料保持機構5の構成を示す実施例2である。試料保持機構5は、駆動軸を具備する試料ステージ7と、試料10を固定する試料ホルダ8と、試料10を取り上げるマニピュレート機構9から構成される。イオンビームの光軸12と電子ビームの光軸13とを含む平面に対して垂直方向の回転軸14、あるいは回転軸14に垂直かつ試料10の加工断面とほぼ平行な回転軸15あるいはその両方に対して試料10を回転することができる機能は、試料ステージ7に具備してもマニピュレート機構9に具備しても良いし、その両方に具備してもよい。本実施例2では、試料10の回転機能は試料ステージ7に具備している。
【0022】
高精度な仕上げ加工を実現するには、ダメージ層の削減に加えて仕上げ加工の終了時点を正確に検出する必要がある。特に、加速電圧が数十kVのSTEM観察用試料を作成する場合には、従来よりも薄片試料の薄膜部を薄くするので、必然的に所望の領域32が減少してしまい、仕上げ加工の実行過多による試料損失の危険性が高くなる。また、試料損失を恐れる余り、確認作業を増やすために加工と観察のサイクルを過剰に行うとスループットが落ちてしまう。
【実施例3】
【0023】
そこで、図5の実施例3では、仕上げ加工に用いるイオンビームの入射角16を最適化し、電子ビームの試料10の所望の観察面への入射角17がほぼ90度(すなわち所望の観察面(加工断面)への電子ビームの入射角はほぼ0度)となるようにイオン光学系1と電子光学系2(あるいはイオンビームの光軸12と電子ビームの光軸13)との配置角度18を調整してある。一例を挙げると、従来のTEM試料形状では入射角16は18度から30度、配置角度18は60度から72度となる。入射角17をほぼ90度とするのは、基本的にSTEM観察試料は、所望の領域あるいは観察面が電子ビームに対してほぼ垂直となるように製作するからである。したがって、注目するものが所望の格子面となった場合には、この限りではない。図5の実施例3を用いて、初めから所望のSTEM像を観察しながら仕上げ加工を行い、STEM像が理想の状態になった時点で仕上げ加工を終了すれば、たとえ薄膜試料の薄膜厚さが薄くなろうとも理想状態で仕上げ加工を終了することができる。仕上げ加工の実行過多による試料損失も過剰な加工と観察のサイクルによるスループット低下も防ぐことができる。
【0024】
仕上げ加工時に連続的あるいは断続的にSTEM観察をし、STEM像が所望の鮮明さとなったところで仕上げ加工を終了することで、仕上げ加工の行い過ぎによる所望領域の消失あるいは不十分な加工による観察像の不明瞭化を回避できる。これにより所望領域の消失による試料の作り直しや加工不十分による余計な追加工の手間がなくなり、最短時間で所望の試料が得られる。特に、イオン光学系と電子光学系の配置角度を仕上げ加工に用いるイオンビームの入射角に合わせて配置すれば、所望の断面を所望の角度でSTEM観察しながら仕上げ加工が行えるので、より効率的かつ高精度なものとなる。
【0025】
STEM像の変化を自動検出する場合には、STEM像の輝度、コントラスト、SN比、像分解能の何れか一つあるいは任意の複数の組み合わせを用いて検出すればよい。また、オペレータがリアルタイムで確認する場合には、表示装置21に表示されるSTEM像を見て判断すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例1の荷電粒子ビーム装置の概略構成図(試料は仕上げ加工の状態)である。
【図2】本発明の実施例1の荷電粒子ビーム装置の概略構成図(試料は主加工の状態)である。
【図3】仕上げ加工時の試料薄膜部の概略断面図である。
【図4】本発明の実施例2の荷電粒子ビーム装置の試料保持機構の概略構成例(試料は仕上げ加工の状態)である。
【図5】本発明の実施例3の荷電粒子ビーム装置の概略構成例(試料は仕上げ加工の状態)である。
【符号の説明】
【0027】
1 イオン光学系
2 電子光学系
3 透過電子検出器
4 二次電子検出器
5 試料保持機構
6 制御部
7 試料ステージ
8 試料ホルダ
9 マニピュレート機構
10 試料
11 電子ビームと試料とが交差する位置に存在する電子ビームの光軸に垂直な平面
12 イオンビームの光軸
13 電子ビームの光軸
14 イオンビームの光軸と電子ビームの光軸とを含む平面に対して垂直方向の回転軸
15 イオンビームの光軸と前記電子ビームの光軸とを含む平面に対して垂直方向の回転軸に垂直かつ前記試料の加工断面とほぼ平行な回転軸
16 仕上げ加工に用いるイオンビームの試料への入射角
17 電子ビームの試料の所望の観察面への入射角
18 前記イオン光学系と前記電子光学系との配置角度(あるいは前記イオンビームの光軸と前記電子ビームの光軸との配置角度)
20 真空容器
21 表示部
30 所望の表面
31 ダメージ層
32 所望の立体領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンビームを発生させると共に集束させ試料上を走査させるイオン光学系と、電子ビームを発生させると共に集束させ前記試料上を走査させる電子光学系と、前記試料を透過した電子を検出する透過電子検出器と、前記試料から発生する二次電子を検出する二次電子検出器と、前記試料を配置する試料保持機構と、各ユニットを制御する制御部とを具備する荷電ビーム装置において、
仕上げ加工に用いる前記イオンビームのエネルギーは主加工に用いる前記イオンビームのエネルギーよりも低いエネルギーであり、かつ前記仕上げ加工に用いる前記イオンビームの前記試料への入射角は前記主加工に用いる前記イオンビーム前記試料への入射角とは異なる角度に設定可能であることを特徴とする荷電ビーム装置。
【請求項2】
請求項1に記載の荷電ビーム装置において、
前記仕上げ加工に用いる前記イオンビームの前記試料への入射角は試料の加工断面に対してほぼ水平入射の3度以上から垂直入射の90度以下であることを特徴とする荷電ビーム装置。
【請求項3】
請求項1に記載の荷電ビーム装置において、
前記仕上げ加工に用いる前記イオンビームのエネルギーは5kV以下であることを特徴とする荷電ビーム装置。
【請求項4】
請求項1に記載の荷電ビーム装置において、
少なくとも走査透過型電子顕微鏡(STEM)観察を行うことができ、前記試料に対し前記イオンビームによる加工と前記電子ビームによる観察を連続的あるいは断続的に行うことを特徴とする荷電ビーム装置。
【請求項5】
請求項4に記載の荷電ビーム装置において、
前記イオンビームによる前記試料の加工の進行度合いはSTEM像の変化を用いて検出されることを特徴とする荷電ビーム装置。
【請求項6】
請求項4に記載の荷電ビーム装置において、
前記イオンビームによる前記試料の加工の終了はSTEM像の変化を用いて検出されることを特徴とする荷電ビーム装置。
【請求項7】
請求項5に記載の荷電ビーム装置において、
前記電子ビームによるSTEM像の変化は輝度、コントラスト、SN比、像分解能の何れか一つあるいは任意の複数の組み合わせを用いて検出されることを特徴とする荷電ビーム装置。
【請求項8】
請求項1に記載の荷電ビーム装置において、
前記試料保持機構は試料ステージ、試料ホルダ、マニピュレート機構の何れか一つ以上で構成され、少なくとも前記イオンビームの光軸と前記電子ビームの光軸とを含む平面に対して垂直方向の回転軸に従い前記試料を回転することができることを特徴とする荷電ビーム装置。
【請求項9】
請求項8に記載の荷電ビーム装置において、
前記回転軸に加えて少なくとも前記イオンビームの光軸と前記電子ビームの光軸とを含む平面に対して垂直方向の回転軸に垂直で、かつ前記試料の加工断面とほぼ平行な回転軸に対して前記試料を回転することができることを特徴とする荷電ビーム装置。
【請求項10】
請求項1に記載の荷電ビーム装置において、
仕上げ加工段階で、前記電子ビームの前記試料の所望の観察面への入射角がほぼ90度となる、あるいは前記電子ビームの前記試料の注目する格子面への入射角がほぼ0度となるように前記電子光学系を配置することを特徴とする荷電ビーム装置。
【請求項11】
請求項1に記載の荷電ビーム装置において、
前記イオン光学系と前記電子光学系との配置角度、あるいは前記イオンビームの光軸と前記電子ビームの光軸との配置角度は0度以上90度以下であることを特徴とする荷電ビーム装置。
【請求項12】
イオン光学系によりイオンビームを発生させると共に集束させ試料上を走査させ、電子光学系により電子ビームを発生させると共に集束させ前記試料上を走査させ、透過電子検出器により前記試料を透過した電子を検出し、二次電子検出器により前記試料から発生する二次電子を検出し、試料保持機構により前記試料を配置し、制御部により各ユニットを制御する荷電ビーム装置における荷電ビーム加工方法において、
仕上げ加工に用いる前記イオンビームのエネルギーを主加工に用いる前記イオンビームのエネルギーよりも低いエネルギーとし、かつ前記仕上げ加工において、前記イオンビームの前記試料への入射角を前記主加工における前記イオンビームの前記試料への入射角とは異なる角度に設定することを特徴とする荷電ビーム加工方法。
【請求項13】
請求項12に記載の荷電ビーム加工方法において、
前記仕上げ加工において、前記イオンビームの前記試料への入射角を試料の加工断面に対してほぼ水平入射の3度以上から垂直入射の90度以下とすることを特徴とする荷電ビーム加工方法。
【請求項14】
請求項13に記載の荷電ビーム加工方法において、
前記荷電ビーム装置は、少なくとも走査透過型電子顕微鏡(STEM)観察を行うことができ、前記試料の加工の終了はSTEM像の変化を用いて検出されることを特徴とする荷電ビーム加工方法。
【請求項15】
イオンビームを発生させると共に集束させ試料上を走査させるイオン光学系と、電子ビームを発生させると共に集束させ前記試料上を走査させる電子光学系と、前記試料を透過した電子を検出する透過電子検出器と、前記試料から発生する二次電子を検出する二次電子検出器と、前記試料を配置する試料保持機構と、各ユニットを制御する制御部を具備し、前記試料保持機構がステージ、試料ホルダ、マニピュレート機構の何れか一つ以上で構成され、少なくとも前記イオンビームの光軸と前記電子ビームの光軸とを含む平面に対して垂直方向の回転軸に従い前記試料を回転することができる荷電ビーム装置を用いた荷電ビーム加工方法において、
前記仕上げ加工における前記イオンビームの光軸と所望の観察面との角度は、前記試料保持機構の前記垂直方向の回転軸に従い前記試料を回転することで3度以上90度以下にすることを特徴とする荷電ビーム加工方法。
【請求項16】
請求項15に記載の荷電ビーム加工方法において、
前記荷電ビーム装置の前記試料保持機構は、更に、前記垂直方向の回転軸に垂直で、かつ前記試料の加工断面とほぼ平行な回転軸に対して前記試料を回転することができ、前記仕上げ加工における前記イオンビームの光軸と所望の観察面との角度は、前記垂直方向の回転軸及び前記試料の加工断面とほぼ平行な回転軸とに従い前記試料を回転することで3度以上90度以下にすることを特徴とする荷電ビーム加工方法。
【請求項17】
請求項15に記載の荷電ビーム加工方法において、
前記仕上げ加工に用いる前記イオンビームのエネルギーは5kV以下とすることを特徴とする荷電ビーム加工方法。
【請求項18】
請求項15に記載の荷電ビーム加工方法において、
少なくとも走査透過型電子顕微鏡(STEM)観察を行い、前記試料に対し前記イオンビームによる加工と前記電子ビームによる観察を連続的あるいは断続的に行うことを特徴とする荷電ビーム加工方法。
【請求項19】
請求項18に記載の荷電ビーム加工方法において、
前記イオンビームによる前記試料の加工の進行度合いあるいは前記試料の加工の終了はSTEM像の変化を用いて検出することを特徴とする荷電ビーム加工方法。
【請求項20】
請求項19に記載の荷電ビーム加工方法において、
前記電子ビームによるSTEM像の変化は輝度、コントラスト、SN比、像分解能の何れか一つあるいは任意の複数の組み合わせを用いて検出することを特徴とする荷電ビーム加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−193977(P2007−193977A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−8702(P2006−8702)
【出願日】平成18年1月17日(2006.1.17)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】