説明

薄型スピンドルモータ

【課題】少なくとも磁気ヘッド可動部における磁気シールド板を除し、磁気シールド分の薄型化をしたスピンドルモータを提供すること。
【解決手段】ロータハブ40の記録ディスクを載置する載置部42aとステータ80の上面との軸方向間隙が0.2mm以上であり、前記ステータ80の上面およびインシュレータ90の上に固定されたFPC100の巻線83の引き出し線部83aとの接続を行う接続部102には、隣り合うティース部81間の間隙よりも周方向に広い突出部102aを有し、この突出部102aを折り曲げつつ、ティース部81間に挿入し、ティース部81の巻線83の下側に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ディスクを回転駆動させるスピンドルモータ、特に記録ディスク径が1inch以下の記録ディスクを回転駆動させる薄型および小型のスピンドルモータ、およびこのスピンドルモータを搭載した記録ディスク駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録ディスク駆動装置、特にハードディスク駆動装置(以下、HDDと称する)の携帯音楽および携帯電話への搭載に際して、このHDDの小型化・薄型化が熱望されている。特に携帯電話への搭載では、HDDの記録ディスク径は1inch以下が採用されており、HDDのスピンドルモータ回転中心軸方向の高さも数mmである。そのため、これ以上の大幅な薄型化は困難であり、さらに僅かでも薄型化を図るためにマイクロオーダーでの小型化・薄型化の要求が多くなってきている。そのため、このHDDに搭載するスピンドルモータに関してもマイクロオーダーでの小型化・薄型化が進んでいる。
【0003】
一般に薄型のスピンドルモータのステータ上面と記録ディスクとの間には、ステータおよびステータに対向するマグネットからの漏洩磁束を防ぐ磁気シールド板が配置されている(このようなスピンドルモータの例として、例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−253632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、1inch以下のスピンドルモータの薄型化を行う場合、記録ディスクの配置高さを低くする。その際、磁気シールド板がステータの上側に配置されているために記録ディスクおよび記録ディスクを読み書きする磁気ヘッドを低く配置することができない。しかし磁気シールド板がなければ磁束漏洩を生じ、記録ディスクおよび磁気ヘッドに影響を与える可能性があるとされていた。また磁気シールド板は、ステータの上側に配置されているフレキシブル回路基板を抑える役目も果たしているので、磁気シールド板を取り除いた場合、このフレキシブル回路基板の固定方法が問題となってしまう。そのため、薄型化は困難を極めていた。
【0006】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、少なくとも磁気ヘッド可動部における磁気シールド板を除し、薄型化したスピンドルモータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1によれば、中心軸と同軸に配置され、記録ディスクを載置する載置部を有するとともに外周部に環状マグネットを配置した回転体と、該回転体を外囲し、前記環状マグネットと半径方向に間隙を介して対向するステータと、これらを収容する上面に開口した凹部を有するベースと、前記ステータの軸方向上側に配置される可撓性の回路基板とを具備するスピンドルモータにおいて、
前記載置部と前記ステータ上面との間隙は0.2mm以上であり、
前記ステータは、複数の積層された鋼板のティース部に巻線を巻回して形成され、
前記回路基板には、前記巻線の引き出し線が接続され、隣り合う前記ティースのそれぞれの前記巻線間よりも周方向幅が広い接続部が形成され、該接続部は隣り合う前記ティースのそれぞれの前記巻線間に位置し、下方に折り曲げられて前記ステータより軸方向下側に配置されることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項1に従えば、回路基板の接続部をティース間に配置し、その接続部を下方に折り曲げて、ステータより軸方向下側に配置し、固定することにより、本来、僅かでも薄型化できるようにティース間に配置したために固定できなかった接続部を固定することができる。これにより、モータの薄型化を図りつつ、回路基板、特に接続部を固定することができる。さらにステータより下側に配置することにより、接続部が巻線間に係るようにとまるので、そのステータの下側に保持することができる。したがって、モータ外部からの振動および衝撃等に対してもこの回路基板は動くことがなく、接続部において、接続部が動くことに起因する巻線の引き出し部の断線を防ぐことができる。
【0009】
さらに1inch以下のような小型モータの場合、回転トルクが小さいので、ロータマグネットの磁力は小さくてもよい。したがって、ロータマグネットおよびこれと対向するステータ間での磁束漏洩が少なくなる。よって、ステータの上面から記録ディスク載置面までの距離が0.2mm以上であれば、記録ディスクに致命的な影響を与えることがなくなる。その結果、従来、磁気漏洩を防ぐ目的で必要であった磁気シールド板を削除することができる。
【0010】
本発明の請求項2によれば、請求項1に係り、前記回路基板の前記接続部は、前記接続部が配置される前記ティース間において前記ステータの前記巻線の下面と前記ベースとの少なくともどちらか一方に固定されることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項2に従えば、接続部をベースもしくは巻線の下面に固定することにより、接続部を安定して固定することができる。さらに両方ともに固定を行うと、固定面積が大きく、より安定した接続部の固定を図ることができる。
【0012】
本発明の請求項3によれば、請求項1および請求項2のいずれかに係り、前記回路基板の軸方向上側には前記回路基板を前記ステータに固定させるための絶縁部材にて構成されたシールがさらに配置され、前記回路基板の少なくとも一部を当接固定していることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項3に従えば、回路基板の軸方向上側に絶縁部材にて構成されたシールが当接固定されることにより、このシールにて回路基板を固定する。これにより回路基板の浮きを防止することができる。
【0014】
本発明の請求項4によれば、中心軸と同軸に配置され、記録ディスクを載置する載置部を有するとともに外周部に環状マグネットを配置した回転体と、該回転体を外囲し、前記環状マグネットと半径方向に間隙を介して対向するステータと、これらを収容する上面に凹部を有するベースと、前記ステータの軸方向上側に配置される可撓性の回路基板とを具備するスピンドルモータにおいて、前記載置部と前記ステータ上面との間隙は0.2mm以上であり、前記回路基板の軸方向上側には前記回路基板を前記ステータに固定するための絶縁部材にて構成されたシールが少なくとも前記回路基板全体を覆うように前記回路基板と当接し、固定配置されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項4に従えば、絶縁部材にて構成されたシールが回路基板全体を覆うことにより、回路基板をステータに固定することができ、特にこのシールによって、接続部もシールと当接することによって固定することができるので、接続部の短絡を防ぎつつも回路基板の安定した固定を図ることができる。
【0016】
さらに1inch以下のような小型モータの場合、回転トルクが小さいので、ロータマグネットの磁力は小さくてもよい。したがって、ロータマグネットおよびこれと対向するステータ間での磁束漏洩が少なくなる。よって、ステータの上面から記録ディスク載置面までの距離が0.2mm以上であれば、記録ディスクに致命的な影響を与えることがなくなる。その結果、従来、磁気漏洩を防ぐ目的で必要であった磁気シールド板を削除することができる。
【0017】
本発明の請求項5によれば、請求項3および請求項4のいずれかに係り、前記シールはその内径が回転体の外径よりも大きい円環状にて形成されたことを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項5に従えば、シールを円環状にすることにより、回転体周りの空間が一様となるので回転体の回転による空気の流れが安定して、回転精度の向上を図ることができる。
【0019】
本発明の請求項6によれば、請求項3乃至請求項5のいずれかに係り、前記シールの軸方向厚さは、0.1mm以下であることを特徴とする。
【0020】
本発明の請求項6によれば、このシールを0.1mm以下の薄さのものを用いることによりスピンドルモータの薄型化を図ることができる。
【0021】
本発明の請求項7によれば、記録ディスク装置であって、磁気記録層を有する記録ディスクと、前記磁気記録層に情報を記録するとともに前記磁気記録層に記録された情報を再生するための磁気ヘッドと、前記磁気ヘッドを前記記録ディスクに対して移動させるための移動手段と、前記磁気ディスクを回転駆動させるための請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のブラシレスモータとを備えたことを特徴とする。
【0022】
本発明の請求項7に従えば、記録ディスク駆動装置の薄型化を図りつつも、信頼性の高い記録ディスク駆動装置を提供することができる。
【0023】
本発明の請求項8によれば、中心軸と同軸に配置され、磁気記録層を有する記録ディスクを載置する載置部を有するとともに外周部に環状マグネットを配置した回転体と、該回転体を外囲し、前記環状マグネットと半径方向に間隙を介して対向するステータと、これらを収容する上面に凹部を有するベースと、前記ステータの軸方向上側に配置される可撓性の回路基板と、該回路基板の軸方向上側に配置される切り欠き部を有するシールド板と、前記磁気記録層に情報を記録するとともに前記磁気記録層に記録された情報を再生するための磁気ヘッドと、前記磁気ヘッドを前記記録ディスクに対して移動させるための移動手段とを具備する記録ディスク駆動装置において、前記載置部と前記ステータ上面との間隙は0.2mm以上であり、前記移動手段は前記シールド板の切り欠き部の範囲内のみ移動可能であることを特徴とする。
【0024】
本発明の請求項8に従えば、1inch以下のような小型モータの場合、回転トルクが小さいので、ロータマグネットの磁力は小さくてもよい。したがって、ロータマグネットおよびこれと対向するステータ間での磁束漏洩が少なくなる。よって、ステータの上面から記録ディスク載置面までの距離が0.2mm以上であれば、記録ディスクに致命的な影響を与えることがなくなる。そのため、磁気ヘッド可動部においてシールド板に切り欠き部を有することにより、シールド板より下側に磁気ヘッドを配置することができるので、記録ディスク駆動装置の薄型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に従えば、スピンドルモータおよび記録ディスク装置の薄型化を図りつつも信頼性の高いスピンドルモータおよび記録ディスク駆動装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
<記録ディスク駆動装置>
本発明に係る記録ディスク駆動装置1の実施例の一形態に関して図1を参照して説明する。図1は記録ディスク駆動装置1の断面図である。
【0027】
記録ディスク駆動装置1は、略矩形状をしたハウジング2からなり、ハウジング2の内部は、塵・埃等が極度に少ないクリーンな空間を形成しており、その内部には、環状凹部2aが形成され、そこに情報を記録する円板状のハードディスク3が装着されたスピンドルモータ4が配設されている。またこのハウジング2と後述するベース10とは一体的に成形されていてもよい。
【0028】
また、ハウジング2の内部には、ハードディスク3に対して情報を読み書きするヘッド移動機構5が配置され、このヘッド移動機構5は、ハードディスク3上の情報を読み書きする磁気ヘッド5a、この磁気ヘッド5aを支えるアーム5bおよび磁気ヘッド5aおよびアーム5bをハードディスク3上の所要の位置に移動させるアクチュエータ部5cにより構成される。
【0029】
このような記録ディスク駆動装置1のスピンドルモータ4として、本願発明のスピンドルモータを適用することで、十分な機能を確保した上で記録ディスク駆動装置1の小型且つ薄型化を実現できると共に、信頼性並びに耐久性の高い記録ディスク駆動装置を提供することができる。
【0030】
<スピンドルモータの全体構造>
本発明に係るスピンドルモータの実施例の一形態を図2に示す。図2は軸方向の模式断面図である。また明細書中の上下は、図面の上下方向に対応する。
【0031】
図2を参照して、ベース10は非磁性体のステンレス鋼をプレス等の塑性加工にて成形したものであり、一部に軸方向下側が底面となる略環状凹部11が形成されている。この略環状凹部11の中央部には、軸方向上側に向う円筒部12が形成されている。この円筒部12の内周面には、略円筒形状のハウジング20が固定されている。さらにハウジング20の内周面には、含油多孔質部材を焼結等にて成形された軸受スリーブ30が固定されている。
【0032】
ロータハブ40は、軸体41と円筒部42とこれらを連結する蓋部43にて形成されている。軸体41は、軸受スリーブ30と半径方向に微少間隙を介し対向して挿入され、軸受スリーブ30に回転自在に支持されている。軸体41には貫通孔が形成されており、軸体41の下端面には、キャップ50が嵌合されている。このキャップ50は円板部51と中央の突部52とから構成され、この突部52と軸体41の貫通孔が嵌合する。また円板部51は軸受スリーブ30の外径より若干小さい外径を有し、この軸受スリーブ30の下端面と軸方向に微少間隙を介して対向する。さらにキャップ50の下側にはプレート60がハウジング20の下端部に固定され、ハウジング20の下側に蓋をする。
【0033】
ロータハブ40の円筒部42は、蓋部43より垂下しハウジング20を外囲する。そして円筒部42の外周面の一部には、記録ディスク(図示せず)を載置する載置部42aが半径方向外側に延びるように形成されている。その載置部42aの外周面の下側には半径方向に延びるように円環突出部42bが形成されている。この円環突出部42bと円環突出部42bより下側に形成されている円筒部42とを当接するようにロータマグネット70が固定されている。これらロータハブ40とロータマグネット70とが回転体となる。また蓋部43の下面とハウジング20の上面とは軸方向に微少間隙を形成している。
【0034】
軸体41と軸受スリーブ30との微少間隙、軸受スリーブ30とキャップ50の円板部51との微少間隙、および蓋部43とハウジング20との微少間隙内には、潤滑油が実質的に途切れることなく充填されている。これら微少間隙内には動圧溝が形成されているので、この微少間隙において動圧が発生し、回転体を軸方向および半径方向に支持している。
【0035】
ベース10の円環凹部11の内周面には、ステータ80が固定されている。このステータ80は、半径方向内側に放射状に延びるティース部81が複数形成され、これらを連結するコアバック部82が一体的に形成されている。ティース部81には、巻線83が巻回されている。さらにステータ80のコアバック部82の内周側には、絶縁体であるインシュレータ90が固定されている。このティース部81の内周面とロータマグネット70とは半径方向に微少間隙を介して対向している。また特に1inch以下の記録ディスクを回転駆動させるスピンドルモータにおいては、回転駆動に必要なトルクが小さく、それに伴い、ロータマグネット70の磁力も小さく済む。そのために、ロータマグネット70とティース部81とから発生する漏洩磁束も少なくなる。その結果、ステータ80の巻線83の上端面とロータハブ40の載置部42aの上面との軸方向間隙が0.2mm以上であれば、ロータマグネット70とティース部81との磁束漏洩が、記録ディスクおよび磁気ヘッド部に影響を与えない。0.2mm以上の軸方向間隙があれば、従来必要であった磁束漏洩を防ぐ磁気シールド板を必要としなくなる。スピンドルモータの薄型化を図るためには、この軸方向間隙を0.2mm〜1.2mm程度に設定することが好適である。
【0036】
インシュレータ90の上側に当接配置するようにフレキシブル回路基板100(以下、FPC100と称する)が例えば、接着にて固定されている。
【0037】
外部電源よりFPC100を経由してステータ80に通電されることにより、ステータ80に磁場が発生し、この磁場とロータマグネット70との相互作用により回転トルクを発生させ、回転駆動する。
【0038】
<主要部>
次に本発明の主要部であるベース10、ステータ80、インシュレータ90、およびFPC100との関係について図3乃至図5を参照して説明する。
【0039】
まずステータ80とインシュレータ90との取りつけについて説明する。ステータ80のコアバック部82における各ティース部81間の内周縁には、それぞれ突出部82aが形成されており、その突出部82aの上面には、凹部が形成されている。この凹部は貫通孔でもよい。
【0040】
インシュレータ90は、ステータ80のコアバック部82の内側に沿って形成配置され、コアバック部82の突出部82aに対応する突部91が形成されている。さらに突出部82aの凹部に対応するように、突部91には突起が形成されている。この凹部と突起とが係合することにより、ステータ80とインシュレータ90とは固定される。
【0041】
次に図3を参照してFPC100の形状について説明する。ステータ80のコアバック部82に沿うような形状の本体部101を有するFPC100がインシュレータ90の上側に固定されている。このFPC100は、ステータ80の巻線83が巻回後、引き出された引き出し部83aと接続するための接続部102がティース81間に配置されるように本体部101から半径方向内側に延びて形成されている。本実施例のスピンドルモータは3相駆動であるので、U相、V相、W相、およびコモンの4ヶ所の接続部102が形成されている。そして接続部102から引かれ銅箔にて形成されたランド部103はそれぞれ本体部101を経由して外部接続部104に繋がる。この外部接続部104より外部電源を供給し、ランド部103および接続部102を経由して巻線83に通電される。
【0042】
また接続部102の両側には、周方向に延びる突出部102aが形成される。この突出部102aは隣り合うティース部81間の間隙よりも周方向に広い幅を有している。これにより、この突出部102aは、ティース部81に巻回された巻線83の下面若しくは側面と当接することができ、この当接部を接着固定することにより、FPC100を保持することができる。この当接部は粘着材を接続部103の裏面に塗布して固定してもよいが、接着剤による固定の方が長期間に渡り信頼を置くことができる。またFPC100を固定することにより外部衝撃等によってもその固定位置を保持することができるので、巻線83が移動して切れる危険性がなくなる。本体部101に関しても、裏面に粘着剤を塗布して固定してもよいが、上記のように接着剤による固定の方が長期間に渡り信頼を置くことができるので好適である。
【0043】
次にFPC100の本体部101とインシュレータ90とのシール110を使用した固定について図4を参照して説明する。図4のa)は上面図である。図4のb)はシール110の他の実施例を示した上面図である。
【0044】
FPC100の半径方向外側には、円弧状の薄膜状のシール110がFPC100の上側およびベース10の一部に当接するように固定されている。従来、磁性を有するステンレス鋼の磁気シールド板をFPC100を固定するために配置していた。しかし、この磁気シールド板は導電性であるためにFPC100の接続部102と接触してしまうと短絡が発生してしまう。それを回避するために、磁気シールド板とFPC100との間には、絶縁性を有するポリエステル樹脂等の絶縁シートをさらに挿入していた。そのため、軸方向の高さが磁気シールド板と絶縁シートとを加算した高さとなり、スピンドルモータの薄型化にとって障害であった。より具体的には、磁気シールド板の厚さが100μm、絶縁シートの厚さが70μmであり、合計170μmの厚さを従来では必要としていた。それと比較して本発明のシール110は、FPC100を固定すればよいので、磁気ヘッド部までシール110を成形していない。そのため、磁気ヘッド部の軸方向高さを従来の磁気シールド板と絶縁ポリエステルとの厚さ170μm分下げることができ、スピンドルモータの薄型化を実現することができる。
【0045】
またシール110とFPC100およびベース10の一部との固定方法は、シール110の裏面に粘着剤を予め塗布し、FPC100およびベース10の一部に当接することにより固定する。他の方法として、信頼性向上のため、接着剤による固定も考えられる。作業容易性およびスピンドルモータの価格低減を考慮した場合には、粘着剤が好適である。シール110とベース10との当接面積を十分に取ることができれば、粘着剤でも信頼性を向上させることができる。このシール110によってFPC100が固定されるので、FPC100の本体部101の浮き等が発生しなくなる。さらに、このシール110の軸方向厚さを0.1mm以下(100μm以下)にすることにより、従来と比較して70μm分下げることができるので、スピンドルモータの薄型化を図ることができる。
【0046】
シール110は図4のb)のように円形でもよい。円形にすることにより、回転体の回転による空気流が安定して、回転精度が向上する効果を発揮する。さらにスピンドルモータの外部に漏洩する可能性のあるコンタミネ−ション等を防ぐこともでき、信頼性の高いスピンドルモータを提供することができる。
【0047】
またこのシール110は、FPC100全体を覆う形状でもよい。シール110のFPC100の当接面全体に粘着剤を塗布し、粘着剤によってFPC100と当接し覆うことにより、FPC100は固定されるので、FPC100を接着する必要がなくなる。したがって、接着工程を削減することができ、容易にFPC100を固定することができる。これは作業容易性およびスピンドルモータの価格低減を考慮に入れる場合は好適である。また信頼性を向上させるためにシール110のFPC100の当接面に接着剤を塗布してもよい。
【0048】
さらにFPC100の接続部102をティース部81の巻線83の下側に配置することにより、さらに信頼性を向上させることができる。この場合、FPC100はインシュレータ90と固定する必要はないが、FPC100の裏面に粘着剤を塗布することによりステータ80と固定することにより、さらに信頼性を向上させることができる。
【0049】
またこのシール110は、各接続部102において、それぞれ導通を図ってしまうと短絡してしまうので、絶縁部材にて構成されることが望ましい。
【0050】
図5は、FPC100の接続部102をステータ80の巻線83の下側に折り曲げ、突出部102aをベース10に接着する工程を示した図である。この図5を参照して、FPC100の接続部102の固定方法について説明する。図5のa)乃至c)は各工程を示した図である。
【0051】
図5のa)を参照して、ステータ80の上側にFPC100の接続部101が配置されるようにFPC100を固定する。この状態にて各接続部101に巻線83からの引き出し線を各接続部101内に形成されているランド部101aに当接させ、半田により固定する。
【0052】
次にこれら接続部101を下側に折り曲げるとティース部81間より周方向に広い突出部102aが上方向に折り曲がり、そして接続部101はティース部81間に収容される(図5のb)参照)。さらに接続部101を下側に折り曲げることにより、突出部102aは、ティース部81の巻線83の下側に位置する。その際、折り曲げられていた突出部102aは復元力により巻線83の下側に入り込むことにより、折り曲げられた接続部101の復元を抑え、保持することができる(図5のc)参照)。そして保持した状態にて、ティース部81間の接続部101が保持されている場所に接着剤を流し込む。これにより、接着剤はベース10と接続部101間および巻線83と突出部102a間に流れ込み充填する。これにより、接続部101は突出部102aの上面と巻線83の下面および接続部101の下面とベース10とを接着固定することができる。したがって、接着固定面積が大きいので固定強度が高い。これは、高い耐衝撃性が求められる携帯用HDDに好適である。
【0053】
<主要部の他の実施例1>
次に図6を参照して、FPC100のそれぞれのティース部81間に配置された接続部102が連結されている場合について説明する。本体部101および外部接続部103の形状は同一であるので、接続部102周辺に関してのみ説明する。図6のa)は、FPC100の全体を示した上面図であり、b)およびc)は、連結部102bの他の実施例である。
【0054】
図6のa)を参照して、FPC100より半径方向内側に延びる接続部102は隣り合う接続部102が連結する連結部102bをそれぞれ有する。ただし両端に配置された接続部102は近接した側のみに連結部102bを有する。この形状のFPC100の固定方法は、本体部101については前述の通りであるが、接続部102に関しては、連結部102bをステータ80のティース部81の巻線83の下側に各々挿入することにより固定する。これにより、外部衝撃等の影響に対しても、連結部102bと巻線83とが当接し、軸方向の移動を規制する。その結果、前述のような突出部102aを接着固定する工程を削除することができ、容易な方法にて接続部101の固定配置を行うことができる。
【0055】
尚、連結部102bは、巻線83の下側に配置するために、ティース部81間より若干周方向に長く形成することが好適である。周方向に長く形成するとは、例えば、図6のb)のように隣り合う接続部102を本体部101と同じ曲率にて形成するのではなく、連結部102bを半径方向外側に湾曲させて形成することである。また例えば、図6のc)のように連結部102bを半径方向内側に湾曲させて形成することである。
【0056】
<主要部の他の実施例2>
次に図7を参照して、磁気シールド板120の磁気ヘッド5aのみに切り欠きを設けた実施例について説明する。図7はスピンドルモータの上面図である。
【0057】
磁気シールド板120は、磁気ヘッド5aの可動部のみに切り欠き121が形成された磁性を有するステンレス鋼をプレス等の塑性加工にて円弧状に成形されている。この磁気シールド板120は、図示しない絶縁シートを介してFPC100の浮きを抑えるようにベース10に接着等にて固定される。磁気シールド板120が磁気ヘッド5aの可動部において切り欠き121が設けられていることより、磁気ヘッド5aを軸方向下側に配置することができる。前述のように絶縁シートと磁気シールド板との合計の厚さは170μm程度であるので、この170μm程度の薄型化を実現することができる。
【0058】
以上、本発明に係るスピンドルモータの実施例の一形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、種々の変形が可能である。
【0059】
例えば、本発明の実施例において、軸受を流体動圧軸受としたが、これに限定されることなく、回転体を回転自在に支持できればよいので、ボールベアリングでもよい。
【0060】
また例えば、本発明の実施例におけるFPC100の突出部101aの形状は図4および図5に示されているが、これに限定されることはなく、ステータ80のティース部81における巻線83の下側と突出部101aが周方向に重なり、当接する部分があればよい。例えば、接続部101の両端の一部が突起状になっていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係る記録ディスク駆動装置の実施例の一形態を示した模式断面図である
【図2】本発明に係るスピンドルモータの実施例の一形態を示した模式断面図である
【図3】本発明に係るスピンドルモータの実施例の一形態を示した上面図である
【図4】本発明に係るシールの他の実施例を示した図である
【図5】本発明に係るFPCの接続部の固定工程を示した図である
【図6】本発明に係るFPCの他の形状を示した図である
【図7】本発明に係るスピンドルモータの他の実施例の一形態を示した上面図である
【符号の説明】
【0062】
1 記録ディスク駆動装置
5 ヘッド移動機構
5a 磁気ヘッド
5b アーム
10 ベース
20 ハウジング
30 軸受スリーブ
40 ロータハブ
42a 載置部
50 キャップ
60 プレート
70 ロータマグネット
80 ステータ
81 ティース部
82 コアバック部
83 巻線
90 インシュレータ
100 FPC
101 本体部
102 接続部
102a 突出部
103 外部接続部
110 シール
120 磁気シールド板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸と同軸に配置され、記録ディスクを載置する載置部を有するとともに外周部に環状マグネットを配置した回転体と、
該回転体を外囲し、前記環状マグネットと半径方向に間隙を介して対向するステータと、
これらを収容する上面に開口した凹部を有するベースと、
前記ステータの軸方向上側に配置される可撓性の回路基板と、
を具備するスピンドルモータにおいて、
前記載置部と前記ステータ上面との間隙は0.2mm以上であり、
前記ステータは、複数の積層された鋼板のティース部に巻線を巻回して形成され、
前記回路基板には、前記巻線の引き出し線が接続され、隣り合う前記ティースのそれぞれの前記巻線間よりも周方向幅が広い接続部が形成され、該接続部は隣り合う前記ティースのそれぞれの前記巻線間に位置し、下方に折り曲げられて前記ステータより軸方向下側に配置されることを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項2】
前記回路基板の前記接続部は、前記接続部が配置される前記ティース間において前記ステータの前記巻線の下面と前記ベースとの少なくともどちらか一方に固定されることを特徴とする請求項1に記載のスピンドルモータ。
【請求項3】
前記回路基板の軸方向上側には、前記回路基板を前記ステータに固定させるための絶縁部材にて構成されたシールがさらに配置され、前記回路基板の少なくとも一部と当接していることを特徴とする請求項1乃至請求項2のいずれかに記載のスピンドルモータ。
【請求項4】
中心軸と同軸に配置され、記録ディスクを載置する載置部を有するとともに外周部に環状マグネットを配置した回転体と、
該回転体を外囲し、前記環状マグネットと半径方向に間隙を介して対向するステータと、
これらを収容する上面に凹部を有するベースと、
前記ステータの軸方向上側に配置される可撓性の回路基板と、
を具備するスピンドルモータにおいて、
前記載置部と前記ステータ上面との間隙は0.2mm以上であり、
前記回路基板の軸方向上側には、前記回路基板を前記ステータに固定するための絶縁部材にて構成されたシールが少なくとも前記回路基板全体を覆うように配置されていることを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項5】
前記シールはその内径が回転体の外径よりも大きい円環状にて形成されたことを特徴とする請求項3および請求項4のいずれかに記載のスピンドルモータ。
【請求項6】
前記シールの軸方向厚さは、0.1mm以下であることを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれかに記載のスピンドルモータ。
【請求項7】
磁気記録層を有する記録ディスクと、
前記磁気記録層に情報を記録するとともに前記磁気記録層に記録された情報を再生するための磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドを前記記録ディスクに対して移動させるための移動手段と、
前記磁気ディスクを回転駆動させるための請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のブラシレスモータとを備えたことを特徴とする、
記録ディスク駆動装置。
【請求項8】
中心軸と同軸に配置され、磁気記録層を有する記録ディスクを載置する載置部を有するとともに外周部に環状マグネットを配置した回転体と、
該回転体を外囲し、前記環状マグネットと半径方向に間隙を介して対向するステータと、
これらを収容する上面に凹部を有するベースと、
前記ステータの軸方向上側に配置される可撓性の回路基板と、
該回路基板の軸方向上側に配置される切り欠き部を有するシールド板と、
前記磁気記録層に情報を記録するとともに前記磁気記録層に記録された情報を再生するための磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドを前記記録ディスクに対して移動させるための移動手段と、
を具備する記録ディスク駆動装置において、
前記載置部と前記ステータ上面との間隙は0.2mm以上であり、前記移動手段は前記シールド板の切り欠き部の範囲内のみ移動可能であることを特徴とする記録ディスク駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−296079(P2006−296079A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−112837(P2005−112837)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(000232302)日本電産株式会社 (697)
【Fターム(参考)】