説明

薄板の成形方法および薄板の成形システム

【課題】射出成形された薄板に加圧して、生産性を追及しつつ許容範囲内の薄板を成形することができる薄板の成形方法および薄板の成形システムを提供する。
【解決手段】薄板の成形システム11は、射出成形機12により成形された薄板Lを、ゲートカット装置13により射出成形中または射出成形後にゲートカットを行い、積み重ね装置15によりゲートカットした薄板Lを直接または他部材Pを介して複数枚積み重ねし、加圧装置16により加圧した状態で一定時間保持し、反りが許容範囲内の薄板Lを成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形された薄板の成形方法および前記薄板の成形システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に射出成形(射出圧縮成形およびその一分野の射出プレスを含む)された導光板等の薄板は、キャビティ内に溶融樹脂を射出して成形した際の内部応力の残存、温度分布による収縮差、取出時に加えられる物理的な力、および取出後の吸湿等により、成形後にも反りが発生する。しかし従来の導光板は、板厚が2〜10mmと比較的厚いものが多く、反りが発生しにくかった。そして特許文献1に記載されるように、導光板に反り防止用の溝を設けることにより反りを防止することも行われてきた。しかし導光板がより一層薄肉化してくると導光板自体を反り防止に適した形状にすることは困難となり、より一層反りの問題がクローズアップされるようになってきた。
【0003】
また導光板ではないが薄板の反りを防止するものとしては、特許文献2、特許文献3に記載されたものが知られている。特許文献2は、歪み矯正型を用いて射出成形型によって成形された薄板の成形歪に逆方向の向きの荷重を加えて、歪の矯正を行うものである。しかしながら特許文献2に示されるような大きな成形歪みは、射出成形工程で解決すべき問題であって通常は射出成形機から取出された直後の薄板には大きな反りは発生していない。そして成形後に発生する反りは、射出成形された直後の成形歪みと必ずしも一致するとは限らない。従って成形歪みを矯正する方向に荷重をかけることが良好な平面性を有する薄板を得るために有効でない場合があった。また特許文献2では、薄板1枚づつに対して矯正を行うので1枚の薄板の矯正にかけられる時間は射出成形工程に要する時間内で行うことになる。しかしながら前記のような短時間で、成形歪の方向と逆方向の向きの荷重を加えても、成形後に発生する反りは一定時間をかけて発生するので、良好な平面性を有する薄板を得ることは困難であった。更に薄板の一部の部分に荷重がかけられるので、導光板等の微細な転写面を有する光学成形品については、転写面が傷がつくなどの問題があった。そして更には、薄板がアクリル等の比較的割れ易い樹脂材料を用いた板厚1.0mm以下の透明樹脂製の光学成形品の場合は、一部の部分のみに強い荷重をかけると薄板が割れる可能性があるという問題があった。
【0004】
また特許文献3は、射出成形に関するものや導光板に関するものではないが複数の薄板を重ねた状態で加圧し、反りを矯正する薄板供給装置が開示されている。この装置によれば一対の薄板押圧装置により基板の反っている両端面を押圧し、収納ラックの移動により反りを矯正するので複数枚が同時に矯正できる。しかし押圧装置により基板の全面を押圧するものではないので基板全体が良好な平面性を有することができず、押圧された部分のみに強い負荷が加わえられることによる特許文献2と同様の問題を有するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2006−85526号公報(0164、図43)
【特許文献2】特開2007−290313号公報(請求項1、図4)
【特許文献3】特開平5−167292号公報(0014、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では上記の問題を鑑みて、射出成形された薄板に加圧して反りを許容範囲内にする際に、生産性を追及しつつ反りが許容範囲内の薄板を成形することができる薄板の成形方法および薄板の成形システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の薄板の成形方法は、射出成形された薄板を加圧して反りが許容範囲内の薄板を成形する薄板の成形方法であって、射出成形中または射出成形後に薄板のゲートカットを行い、ゲートカットした薄板を直接または他部材を介して複数枚積み重ねし、加圧装置により加圧した状態で一定時間保持し、反りが許容範囲内の薄板を成形することを特徴とする。
【0008】
本発明の薄板の成形システムは、射出成形された薄板を加圧して反りが許容範囲内の薄板を成形する薄板の成形システムであって、射出成形機の後工程または射出成形機に取付けられた成形金型内に設けられ薄板のゲートカットを行うゲートカット装置と、
ゲートカットされた薄板を直接または他部材を介して複数枚積み重ねする積み重ね装置と、
積み重ねられた薄板を加圧した状態で一定時間保持する加圧装置と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の薄板の成形方法および薄板の成形システムは、射出成形機により射出成形中または射出成形後に薄板のゲートカットを行い、積み重ね装置によりゲートカットした薄板を直接または他部材を介して複数枚積み重ねし、加圧装置により加圧した状態で一定時間保持することにより、生産性を追及しつつ反りが許容範囲内の薄板を成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は実施例1の導光板の成形システムの概略平面図である。
【図2】図2は実施例1の導光板の成形システム(射出成形機を除く)の概略正面図である。
【図3】図3は実施例1の導光板の成形システムの積み重ね装置の一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
射出成形機から取出され射出成形機が置かれた雰囲気よりも高温状態のゲートカットされた薄板を直接または緩衝材を介して複数枚積み重ねし、射出成形機が置かれた雰囲気下で加圧装置により一定時間加圧して、反りが許容範囲内の薄板を成形する。特には射出プレスを含む射出圧縮成形により成形されたアクリル等の成形後に反りが発生し易い材料から成形された板厚が薄くて略均等の透明樹脂からなる光学成形品を対象とする。
【実施例1】
【0012】
実施例1の導光板の成形システムと導光板の成形方法について、図1ないし図3を参照して説明する。薄板の成形システムである導光板の成形システム11は、射出成形機12とその一側に形成されたゲートカット装置13、導光板を載置しつつ搬送する搬送装置14、導光板等を積み重ねる積み重ね装置15、および導光板Lを加圧して平坦にするかまたは平坦な状態を保つ加圧装置16等からなる。
【0013】
射出成形機12には、図示しない材料乾燥装置と材料自動供給装置等が付設される。そして射出成形機12のベッド上には、射出装置17と型締装置18が配設されている。型締装置18の固定盤19には成形金型20の一方の固定金型21が配設され、可動盤22には成形金型20の他方の可動金型23が配設されている。そして前記成形金型20は、図示しない温調装置から冷却媒体が流されて温調されている。また前記射出成形機12と成形金型20は、射出プレスを含む射出圧縮成形が可能となっている。実施例1の成形金型20のキャビティ37では、対角寸法14インチ、板厚0.7mm(均等厚)であって少なくとも一方の面に転写面を有する導光板Lが1個取りされる。なお透明樹脂からなる光学成形品である導光板の取数とサイズ、形状、樹脂材料等は限定されない。
【0014】
射出成形機12の一側には、ゲートカット装置13が設けられている。また型締装置18には成形された導光板Lをゲートカット装置13へ移送する図示しない取出装置が設けられている。またゲートカット装置13の一側には、ゲートカットされた導光板LをパレットP上に載置して搬送する搬送装置14と、ゲートカット装置13から搬送装置14へ導光板Lを移送する図示しない移送装置が設けられている。なお射出成形機12の後工程に導光板Lのゲートカット装置13を設けずに、成形金型20の内部にゲートカット装置を設け、型内でゲートカットを行うようにしてもよい。その場合は、射出成形機12から取出装置によって搬送装置14へ直接導光板Lが取出される。また搬送装置14は、導光板Lを縦方向に立てて載置し両面を雰囲気に晒した状態で載置した後にパレットPに載置するものでもよい。その方が両面を均等に冷却させることができる。
【0015】
図3に示されるパレットPは樹脂製であって、実施例1では2枚の導光板Lの全面が載置される載置部P1とその両側の保持部P2が設けられ、保持部P2は載置部P1よりも一段高くなっている。載置部P1についてはその表面および裏面ともに高い平面度となっている。なお他部材であるパレットPは樹脂製に限定されず、金属、ガラス、木製等でもよい。搬送装置14は、ベルトコンベアからなり、その始端部14aにはパレットPを1枚づつベルトコンベア上に供給するパレット供給装置24が配設されている。また図2に示されるように搬送装置14の終端部14b近傍にはパレットPと導光板Lを1枚づつ積み重ね装置15に供給するパレット送り装置25が設けられている。積み重ね装置15は導光板Lを載置したパレットPを鉛直方向に複数枚積み重ねる装置であり、実施例1では20枚程度の導光板Lを載置したパレットPが積み重ねられる。
【0016】
図3に示されるようにパレット積み重ね装置15は、搬送装置14の終端部14b側の両側に2本づつ設けられた循環式のチェーン26に保持用の爪部27が設けられ、爪部27によりパレットPの保持部P2を保持する。そしてチェーン26が下方に向けて移動して、加圧装置16へ向うコンベア28に近づくと前記チェーン26が外側に移動してパレットP等の保持を解消する。積み重ね装置15の保持を解消されたパレットPと導光板Lのうちの最初の1枚は、コンベア28上に載置され、その上に次々にパレットPと導光板Lが積み重ねられる。そしてパレットPと導光板Lが所定枚数積み重ねられるとコンベア28は加圧装置16に間欠移動される。なおゲートカット装置13から導光板Lを移送する多軸ロボット等の移送装置が積み重ね装置を兼用し、導光板LとパレットPまたは導光板Lのみを積み重ねるようにしてもよい。
【0017】
実施例1では加圧装置16は、上方にエアシリンダ29によって昇降する平坦板30と、コンベア28の下方の固定された平坦板31が設けられており、両方の平坦板30,31の間で積み重ねられたパレットPと導光板Lのうち少なくとも導光板Lの全面を加圧する。加圧板である平坦板30と平坦板31は、導光板Lの中央部に対応する部分に穴があるものを除外するものではないが全面をカバーすることが望ましく、少なくとも四隅部は加圧可能でであることが望まれる。エアシリンダ29は図示しないレギュレータを介して高圧エアの供給装置に接続され、加圧力が制御可能となっている。実施例1の加圧装置16は加熱された雰囲気下で加圧を行うものではない。なお加圧装置16は、積み重ねられた導光板L等を、加圧した状態で一定時間保持可能なものであれば種類を選ばず、ロータリ式やバッチ式であって積み重ねられた導光板L等を最初から最後まで加圧保持するものでもよい。また加圧装置16の加圧駆動手段は、エアシリンダ29の他に油圧シリンダや電動機を用いたものでもよく、積み重ねられた導光板L等に重量物を用いて荷重を加えるものでもよい。更に加圧する方向についても、導光板Lを立てた状態で重ねて水平方向に加圧してもよい。
【0018】
そして積み重ねられた導光板L等は、複数の加圧ステージ16a,16b,16cで加圧された後、積み重ね解消装置32へ送られる。積み重ね解消装置32は、積み重ねられたパレットPの両側の保持部P2の間に爪部を挿入し、全てのパレットPを保持し、一旦チェーンを上昇させてから水平移動するとともにコンベア28のない位置で、再びチェーンが下方に向けて移動し、図3と同じ構造により、リターンコンベア33の載置位置33a上に導光板Lが載置されたパレットPを1枚づつ載置する。そして導光板Lは、リターンコンベア33の途中の積降位置33bで、積み降し装置34によって取出され、仕上装置35へ移送される。導光板Lが取出されたパレットPは、再びリターンコンベア33の終端近傍位置33cからパレット供給装置24によって上方へ運ばれ搬送装置14へ送られる。
【0019】
次に実施例1の導光板の成形システム11を用いた導光板Lの成形方法について説明する。まず射出成形機12の射出装置17に乾燥されたアクリル樹脂(PMMA)のペレットが供給される。使用されるアクリル樹脂は、導光板専用グレードの流動性と透過率等の光学性能に特に優れたものであり、対角寸法が8インチ以上の大型の導光板Lに特に好適に用いられている。しかしアクリル樹脂は、吸湿しやすく、内部応力により配向が不均一になると成形時または成形後に反りや割れが発生しやすいという問題がある。なお導光板Lの樹脂材料としては、アクリル樹脂の他、ポリカーボネート、ゼオノアやシクロオレフィンポリマー等のオレフィン系樹脂(いずれもポリマーブレンドされたものを含む)等を用いてもよい。
【0020】
アクリル樹脂を用いる場合の射出装置17の加熱筒36の温度は、より望ましくは一例として230℃〜290℃である。またアクリル樹脂は、前記のように吸湿しやすいので、加熱筒36内を真空状態に吸引して水分を更に除去するようにしてもよい。成形金型20に送られる冷却媒体の温度はより望ましくは一例として40℃〜90℃程度である。(キャビティ37内における溶融樹脂の流動性および転写性を良好にしたい場合は、金型温度を高くするが、成形サイクル時間が長くなりその後の収縮による反りも発生しやすくなる。また金型温度を低くした場合は、成形サイクル時間の短縮や反りの点では有利であるが、キャビティ37内における溶融樹脂の流動性および転写性の点で不利である。)そして射出装置17から成形金型20のキャビティ37内に溶融樹脂が射出充填されて対角寸法14インチ、板厚0.7mm(均等厚)であって少なくとも一方の面に転写面を有する導光板Lが成形される。成形サイクル時間は実施例1では30秒(より望ましくは一例として15秒〜40秒の範囲)である。射出開始時の可動金型23の位置は、型締完了よりも僅かに手前の位置にあって、キャビティ37の容積が拡大されている。そしてキャビティ37内に溶融樹脂が射出充填されると可動金型23のコアブロックが前進して溶融樹脂を圧縮する射出プレス成形が行われる。なお射出後にキャビティ37が僅かに開いた後圧縮する射出圧縮成形を行うようにしてもよい。これら射出圧縮成形やその一分野である射出プレス成形は、キャビティ37の間隔が広がった状態で射出されるので、導光板Lの内部応力が軽減される。内部応力が大きい薄肉の導光板Lは、成形金型20から取出された際は平坦であっても、時間経過とともに反りが発生する。また特にアクリルを用いた場合は、配向のムラ等が大きいと反りの発生が顕著となったり割れたりしやすい。なお射出成形機12で成形される導光板Lを僅かに反りのある状態で成形し、搬送装置14による搬送中に上面と下面の冷却による収縮差により平坦にする場合もある。
【0021】
射出成形機12の成形金型20から取出された導光板Lは、ゲートカット装置13でレーザー等によりゲートが切断される。最初にゲートを切断する理由は、板厚0.1mm〜1.0mm以下(実施例1では0.7mm)の導光板Lでは、ゲートやランナの方が板厚が大きくて熱容量も大きいので、ゲートを切断しないと導光板Lの温度分布がゲート側の方が反対側よりも高温となり反りの原因となるからである。そしてゲートが切断された導光板Lは、搬送装置14上の樹脂製のパレットPに2枚づつ載置される。なお載置枚数は限定されないが、実施例1で複数枚載置するのは、加圧装置16での加圧時間を長くするためである。射出成形機12の回りは工場内の雰囲気(空調されたクリーンルームの場合が多い)となっている。取出された直後の50℃〜80℃程度の導光板Lは、搬送装置14上でパレットPや雰囲気により熱が奪われて30℃〜60℃程度まで降温されるが、それでも射出成形機12が置かれた雰囲気よりも高温状態である。
【0022】
そしてパレットPに載置された導光板Lは、積み重ね装置15で積み重ねられ加圧装置16へ送られる。加圧装置16ではエアシリンダ29により平坦板30,31の間で、30kg(面圧0.025kg/cm)程度の荷重がパレットPと導光板Lに加えられる。面圧については、より望ましくは、0.025kg/cm〜1kg/cmであり、更に圧力を高めてもよいが効果は変わらない。またむしろ転写面を有する導光板等の光学製品では、1kg/cmよりも高い圧力を加えると転写面に悪影響を与える場合がある。またアクリル製の導光板等の場合には、圧力が高すぎると割れる可能性がある。なお面圧については、導光板Lの状態に応じてエアシリンダ29へ供給する高圧エアをレギュレータにより制御して最適に制御できる。実施例1においては射出成形機12が置かれた雰囲気下で加圧装置16により加圧も行なわれ、加圧を行っている間も冷却が進行する。従って本発明は、熱変形温度よりも10℃〜30℃低温化で行うアニーリング工程とは相違し、余分や熱をかけてエネルギーをロスしたり、導光板等を劣化させることがない。
【0023】
実施例1における加圧装置16による加圧時間は、各加圧ステージ毎に20分であり、3ステージで合計1時間である。加圧時間については一つに加圧ステージで1時間としてもよく、生産性を追及しつつ良好な平面度とするためのより望ましい時間(合計時間)は、一例として30分〜3時間程度である。また加圧する際の積み重ね枚数は、実施例1では20枚であるが、積み重ね枚数は限定されない。ただし積み重ね枚数が少ないと所望の加圧時間を確保するためには加圧装置16の数を大幅に増やす必要があり効率が悪い。また積み重ね枚数が多すぎると最初に積み重ねた導光板Lと最後に積み重ねた導光板Lで、温度差や重量による圧力差が発生するので、10枚〜100枚程度の積み重ね枚数がより望ましい。また導光板Lの積み重ね方(向き)についてはゲート跡が重なるように積み重ねてもよいし、ゲート跡の向きが交互になるように積み重ねてもよい。導光板Lが略対称形であって一定位置に反りが発生するような場合は、交互に積み重ねる方が反りをキャンセルする上で望ましい。また成形金型で導光板の2個取を行う場合は、別のキャビティで成形された導光板を混ぜて積み重ねた方が、同一キャビティの同一部分で成形された部分を重ねるよりも、交互に積み重ねた場合と同様に反りをキャンセルすることが期待できる。また楔形導光板の場合も交互に積み重ねることが望ましい。
【0024】
加圧装置16で所定時間の加圧が終了した導光板Lはリターンコンベア33上でパレットPから降ろされ、次の仕上装置35に送られ、ゲートの仕上処理が行われる。ただしフィルムゲートの場合はゲート部分の熱容量が小さいので、加圧装置16で加圧した後にゲート切断と仕上を同時に行ってもよい。そして仕上されて工場内の雰囲気温度となった導光板は、梱包される。なお実施例1で対角寸法14インチ、板厚0.7mmの導光板の反りに関する規格は、平面に対して各部において0.03mmの反りが発生しているかどうかをシム等の薄板が平面との間に挿入可能かどうかにより検査し、挿入不可能の場合に良品(許容範囲内)と判断される。そして本発明の加圧処理した導光板は、非常に良好な平面度となり歩留まりが向上した。なお導光板等の光学成形品に関する規格は、一方への反りはある程度許容されても他方への反りは全く許容されない場合もあるが、その場合も射出成形およびその後の冷却縮、および加圧装置の加圧板の形状や加圧時間を調整することにより前記規格に対応する成形品を成形することができる。
【実施例2】
【0025】
上記の実施例1の導光板の成形システム11は、パレットPを循環させるシステムについて記載したが、一部または全部人手を用いパレットPを自動循環させないシステムであってもよい。またパレットP以外の他部材を介して導光板Lを複数枚積み重ね加圧するものでもよい。導光板Lを加圧する際に挟む他部材の例としては、パレット以外に紙、布、金属板、樹脂板、木板、およびガラス等のセラミック板等であってもよい。更に導光板Lを他部材を介さずに直接接触するように積み重ねてして加圧を行うものでもよい。導光板を直接積み重ねる場合は、射出成形機12やゲートカット装置13でゲートカットされた導光板Lをそのまま積み重ね装置により積み重ねてもよいし、導光板Lの材料や種類によっては一旦搬送装置14の上で30℃〜70℃前後まで冷却してから積み重ねるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、導光板以外にも射出成形された薄板全般の反りを許容範囲内として成形することができる。特には光拡散板、レンズ等の透明樹脂からなる光学成形品や、アクリル製ガラスや車輌用樹脂窓材などに有効である。また薄板は、必ずしも全てが平面からなる薄板には限定されず、曲面を有する薄板や曲面が許容される薄板の場合は、あるべき許容範囲内となるように所定時間加圧がなされる。また薄板の板厚は、必ずしも均等板厚の薄板に限定はされない。また薄板の材料は、主として樹脂材料が想定されるが、射出成形されたものであれば、他の紙、木等の有機材料、セラミック等の無機材料、マグネシウムやアルミニウム等の金属材料であってもよい。
【符号の説明】
【0027】
11 導光板の成形システム(薄板の成形システム)
12 射出成形機
13 ゲートカット装置
14 搬送装置
15 積み重ね装置
16 加圧装置
20 成形金型
29 エアシリンダ(加圧駆動手段)
30 平坦板(加圧板)
L 導光板
P パレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形された薄板を加圧して反りが許容範囲内の薄板を成形する薄板の成形方法であって、
射出成形中または射出成形後に薄板のゲートカットを行い、
ゲートカットした薄板を直接または他部材を介して複数枚積み重ねし、
加圧装置により加圧した状態で一定時間保持し、
反りが許容範囲内の薄板を成形することを特徴とする薄板の成形方法。
【請求項2】
射出成形機から取出され、射出成形機が置かれた雰囲気よりも高温状態の薄板を、前記雰囲気下で加圧して、反りが規格内の薄板を成形することを特徴とする請求項1に記載の薄板の成形方法。
【請求項3】
前記薄板は、板厚が1.0mm以下の透明樹脂からなる光学成形品であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の薄板の成形方法。
【請求項4】
射出成形された薄板を加圧して反りが許容範囲内の薄板を成形する薄板の成形システムであって、
射出成形機の後工程または射出成形機に取付けられた成形金型内に設けられ薄板のゲートカットを行うゲートカット装置と、
ゲートカットされた薄板を直接または他部材を介して複数枚積み重ねする積み重ね装置と、
積み重ねられた薄板を加圧した状態で一定時間保持する加圧装置と、を備えたことを特徴とする薄板の成形システム。
【請求項5】
前記薄板は、板厚が1.0mm以下の透明樹脂からなる光学成形品であることを特徴とする請求項4に記載の薄板の成形システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−167594(P2010−167594A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10126(P2009−10126)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(000155159)株式会社名機製作所 (255)
【Fターム(参考)】