説明

薄膜バルク弾性波発振器、および、その製造方法

【課題】数100MHzから10GHz付近までの高周波数領域において、高い周波数純度の原発振が得られ、スプリアスが少なく信頼性の高い小型で使い易い、薄膜バルク弾性波発振器、および、その製造方法を提供すること。また、広帯域化された可変周波数範囲を有する電圧可変発振器、および、その製造方法を提供する。
【解決手段】微細加工技術を用いて基板上にトランジスタやキャパシタンスの回路素子が形成された回路素子部と、回路素子部の上層であって基板及び該回路素子部と音響的に分離する為の高音響インピーダンス材料で構成される薄膜と低音響インピーダンス材料で構成される薄膜とを交互に積み重ねて構成された音響ミラー層と、該音響ミラー層の直上に薄膜形成技術を用いて形成された圧電体薄膜を上部電極層と下部電極層とで挟み込んだ構造とされかつ基板側と音響的に分離された薄膜バルク弾性波共振子とからなり、回路素子と薄膜バルク弾性波共振子とを微細加工技術を用いて配線接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜バルク弾性波発振器、および、その製造方法に関し、特に、トランジスタ等のアクティブ素子と薄膜バルク弾性波共振子を同一基板上に集積した高周波発振器、電圧可変高周波発振器、およびそれらの発振器を内部に含む半導体集積回路、および、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発振器は、様々な装置又は回路において、クロック源、周波数変換用局部発振器、その他の用途で頻繁に使用される素子である。
【0003】
最も精度の良い発振源を必要とする時計や携帯電話の用途には、水晶を用いた発振器が使われている。水晶振動子は、結晶成長した後に特定の角度で結晶面をカットした後電極を両面に蒸着して作成する。振動子の厚みや形状で周波数が決まること、および水晶中音響波の速度が比較的遅いため、現在の技術では高周波領域では、155MHz程度の周波数を発生することが上限となっている。
【0004】
低周波から高周波まで広い周波数範囲で発振させることが可能な発振器として、インダクタとキャパシタを用いたLC発振器、および抵抗とキャパシタを用いたRC発振器が、様々な回路・用途で使われている。ただし、これらの発振器は、発振の周波数純度や温度安定性が悪く、用途によっては充分な性能が出せないことも多い。
【0005】
数100kHz帯から数10MHzにかけて水晶振動子程の精度は必要としないが広範囲の同調ができて、LC発振器やRC発振器よりも周波数純度が高い発振を得るために、PZT等の強誘電体材料を用いたセラミック発振器が使われている。
【0006】
また、数100MHz帯から1GHzにかけての高周波領域で周波数純度の高い発振を得る場合には、SAW振動子を用いた発振器が使われる。
【0007】
さらに、高い周波数のGHz帯では、誘電体共振子や同軸線路、マイクロストリップ線路で構成する共振器を用いた発振器が使われている。誘電体や線路を用いた発振器はサイズを小型化することが難しく、また、LC発振器を除いてシリコン基板上にトランジスタ回路と一緒に作りこむことは難しい。
【0008】
【特許文献1】米国特許5,075,641号明細書
【非特許文献1】IEEE Microwave Symposium Digest, Vol.2,2003,p717−720
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、薄膜堆積技術の進歩により、結晶性の良い圧電材料薄膜を成長させることが可能になってきた。この技術を用いて高周波の薄膜バルク弾性波フィルタ及び薄膜バルク弾性波デュプレクサ(分波器)が作製されている。
【0010】
非特許文献1は、アクティブ素子と共振子は別々に作製された後にアルミ基板上で接続して、2GHzで実際に発振することが観測されている例である。
【0011】
特許文献1に記載されているように、発振器についても、アクティブ素子と薄膜バルク弾性波共振子を同一基板に作りこんだ発振器が提案されている。
【0012】
しかし、薄膜バルク弾性波共振子の下側を、裏面からのエッチングで削り中空にしている為構造上脆くて信頼性の確保が難しい点、製造する上で歩留まり向上が難しい点、発振器にとって有害なスプリアス振動を生じやすい点、共振器の下には配線も含めて何も配置できない点、といった欠点がある。
【0013】
そこで、本発明の目的は、集積化・小型化が可能で、信頼性の高い、薄膜バルク弾性波発振器、および、その製造方法を提供することにある。
【0014】
また、本発明の他の目的は、数100MHzから10GHz付近までの高周波帯において、外付け振動子が不要で、周波数純度が高い、薄膜バルク弾性波発振器、および、その製造方法を提供することにある。
【0015】
さらに、本発明の他の目的は、広い周波数可変範囲をもつことが可能な、薄膜バルク弾性波発振器、および、その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、薄膜バルク弾性波発振器であって、基板上に、少なくともトランジスタ素子および容量素子を含む回路素子が形成された回路素子部と、該回路素子部に、高音響インピーダンス材料で構成される薄膜と低音響インピーダンス材料で構成される薄膜とが交互に積み重ねることによって音響ミラー層が形成された音響ミラー部と、前記音響ミラー部の前記音響ミラー層が形成された領域の直上に、圧電体薄膜と、該圧電体薄膜を上下方向から挟む2つの電極部とからなる薄膜バルク弾性波共振子が形成され、かつ、該薄膜バルク弾性波共振子は前記音響ミラー層を介して前記基板側の前記回路素子に対して音響的に分離して構成された共振子部とを具え、前記回路素子部の前記回路素子と、前記共振部の前記薄膜バルク弾性波共振子とを電気的に配線接続することによって、薄膜バルク弾性波発振器を構成する。
【0017】
前記容量素子は、前記薄膜バルク弾性波共振子の発振周波数を所定値に設定するための、固定容量素子又は可変容量素子としてもよい。
【0018】
前記薄膜バルク弾性波共振子が1個又は複数個からなる場合において、該薄膜バルク弾性波共振子の総面積は、発振回路を構成する前記可変容量素子の容量値の最大値と最小値との積の平方根値に前記圧電体薄膜のバルク弾性波速度を積算し、該積算値を該圧電体薄膜の誘電率と共振周波数との積の2倍で除算した値の、7分の1から3倍までの範囲としてもよい。
【0019】
前記圧電体薄膜は、窒化アルミニウムとしてもよい。
【0020】
前記回路素子は、シリコンMOSトランジスタ、シリコンバイポーラトランジスタ、又は、シリコンゲルマニウムトランジスタとしてもよい。
【0021】
前記薄膜バルク弾性波共振子と前記容量素子との間の配線接続距離が、前記薄膜バルク弾性波共振子と前記トランジスタ素子との間の配線接続距離よりも長くなるように設定してもよい。
【0022】
前記薄膜バルク弾性波共振子を複数個用い、該各薄膜バルク弾性波共振子を並列に接続してもよい。
【0023】
前記各薄膜バルク弾性波共振子による機械的振動および容量結合の変化が発振周波数特性に影響を及ぼさない領域であって、該各薄膜バルク弾性波共振子が前記回路素子の直上に配設してもよい。
【0024】
前記薄膜バルク弾性波共振子の前記2つの電極部に前記容量素子をそれぞれ接続する場合において、一方の容量素子の容量値又は素子数に対して、他方の容量素子の容量値又は素子数を非対称にしてもよい。
【0025】
前記薄膜バルク弾性波共振子が複数個からなる場合において、該各薄膜バルク弾性波共振子が互いに異なる共振周波数を持ってもよい。
【0026】
前記薄膜バルク弾性波共振子の少なくとも一方の前記電極部に、前記容量素子を接続してもよい。
【0027】
半導体基板上の集積回路の一部としてもよい。 本発明は、微細加工技術および薄膜形成技術を用いて、薄膜バルク弾性波発振器を作製する製造方法であって、基板上に、少なくともトランジスタ素子および容量素子を含む回路素子からなる回路素子部を形成する工程と、前記回路素子部の上部に、高音響インピーダンス材料で構成される薄膜と低音響インピーダンス材料で構成される薄膜とを交互に積み重ねることによって構成された音響ミラー層を有する音響ミラー部を形成する工程と、前記音響ミラー部の前記音響ミラー層が形成された領域の直上に、圧電体薄膜と、該圧電体薄膜を上下方向から挟む2つの電極部とからなる薄膜バルク弾性波共振子を形成し、該薄膜バルク弾性波共振子を前記音響ミラー層を介して前記基板側の前記回路素子に対して音響的に分離することによって共振子部を構成する工程と、前記回路素子部の前記回路素子と、前記共振子部の前記薄膜バルク弾性波共振子とを電気的に配線接続する工程とを具えることによって、薄膜バルク弾性波発振器の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、微細加工技術を用いて基板上にトランジスタやキャパシタンスの回路素子が形成された回路素子部と、回路素子部の上層であって該回路素子部とは音響的に分離された領域に高音響インピーダンス材料で構成される薄膜と低音響インピーダンス材料で構成される薄膜とを交互に積み重ねて構成された音響ミラー層と、該音響ミラー層の直上に薄膜形成技術を用いて形成された圧電体薄膜を上部電極層と下部電極層とで挟み込んだ構造とされかつ基板側と音響的に分離された薄膜バルク弾性波共振子とからなり、回路素子と薄膜バルク弾性波共振子とを微細加工技術を用いて配線接続することによって、発振回路と共振子とを同一基板上に作り込むようにしたので、集積化・小型化した使い易いワンチップ発振器および電圧可変発振器を作製することができる。
【0029】
また、本発明によれば、数100MHzから10GHz付近までの高周波数帯において、高い周波数純度の原発振が得られ、かつ、スプリアスが少なく信頼性の高い、発振器を作製することができる。
【0030】
さらに、本発明によれば、分割して作製した複数の共振子を並列接続することにより、広帯域な周波数可変範囲をもつ薄膜バルク弾性波電圧可変発振器を作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
[第1の例]
本発明の第1の実施の形態を、図1〜図4に基づいて説明する。
<断面構造>
図1は、本発明に係る薄膜バルク弾性波発振器100の構造の1例を示す。
【0032】
薄膜バルク弾性波発振器100は、基板1(ここでは、シリコン基板)上に回路素子111が形成された回路素子部110と、回路素子部110上に音響ミラー層121が形成された音響ミラー部120と、音響ミラー部120上に薄膜バルク弾性波共振子131が形成された共振子部130とに大別される。
【0033】
以下、各部の構成について具体的に説明する。
【0034】
(回路素子部)
回路素子部110には、シリコン基板1上に、少なくともトランジスタ素子および容量素子を含む回路素子111が形成されている。
【0035】
本例では、シリコン基板1上に、トランジスタ2、キャパシタンス3、配線層4が形成されている。このシリコン基板1にはウェル2a構造が形成されており、ゲート酸化、ゲート形成を行い、その後、ソース・ドレイン形成を行うことによってトランジスタとしてのMOSトランジスタ2を構成している。
【0036】
(音響ミラー部)
音響ミラー部120は、回路素子部110の上部に位置している。ただし、図1の例では音響ミラー層121は、回路素子111が形成された領域の直上には当らない領域に対応して、高音響インピーダンス材料で構成される薄膜5aと低音響インピーダンス材料で構成される薄膜5bとが交互に積み重ねることによって形成されている。この音響ミラー層121は、共振子の弾性波が基板1側に漏れるのを防ぐ役割を果たしており、その機能については後述する。
【0037】
(共振部)
共振部130は、音響ミラー部120の音響ミラー層121が形成された領域の直上に、圧電体薄膜からなる圧電体層7と、下部電極6と、上部電極8とからなる薄膜バルク弾性波共振子131が形成されている。
【0038】
この薄膜バルク弾性波共振子131は、音響ミラー層121を介して基板1及び該基板上の回路素子111に対して音響的に分離された構造となっている。
【0039】
上部電極8の上側は、空気層の中空パッケージとすることにより、自由端として音響エネルギーを閉じ込めた構造となっている。また、下部電極6の下側は、音響ミラー層121を用いた反射構造によって弾性波を閉じ込める構造になっている。
【0040】
圧電体層7の圧電体材料としては、窒化アルミニウム、酸化亜鉛が有用である。この2つの材料だけに限られる訳ではないが、特に、窒化アルミニウムが高周波数領域での低損失、温度特性、シリコン半導体素子の製造ラインに入れても問題無い材料であること等の理由で好ましい。
【0041】
下部電極6は、白金、モリブデン、アルミニウム、ルテニウム、タングステン等の中から目的に応じて選択することができる。
【0042】
上部電極8は、アルミニウム、モリブデン等の中から目的に応じて選択することができる。
【0043】
(配線部)
回路素子部110の回路素子111と、共振部130の薄膜バルク弾性波共振子131とは、電気的に配線接続される。図1の例の場合、薄膜バルク弾性波共振子131の一方の電極部、すなわち下部電極6又は上部電極8には、容量素子としてのキャパシタンス3が接続される。
【0044】
本例では、上部電極8の電極に、キャパシタンス3が接続されている場合の例である。
【0045】
以上のようにして、シリコン基板1上に、薄膜バルク弾性波共振子131を形成して、基板側の回路素子111と共振子側の上下電極8,6とを配線接続した構造になっている。
【0046】
<レイアウト>
図2は、図1の薄膜バルク弾性波発振器100のレイアウトの1例を示す。
21は、薄膜バルク弾性波共振子(図1の薄膜バルク弾性波共振子131)である。
22は、インバータ(図1のトランジスタ2等からなる)である。
23は、キャパシタンス(図1のキャパシタンス3等からなる)である。
24は、ポリシリコン抵抗である。
25,26は、出力ドライバ等の周辺回路、および、電極用のパッドである。
【0047】
薄膜バルク弾性波共振子21およびキャパシタンス23は、インバータ22の近くに配置して、配線抵抗や寄生容量を小さくすることが好ましい。しかし、その一方で、周波数調整用のキャパシタンス23は、薄膜バルク弾性波共振子21による機械的振動や寄生容量を介した結合が干渉して位相雑音特性を悪化させることを避けることが必要である。
【0048】
従って、キャパシタンス23と薄膜バルク弾性波共振子21との間の距離は、キャパシタンス23とインバータ22との間の距離に比べて長くとることが好ましい。
【0049】
<回路例>
図3は、図1の薄膜バルク弾性波発振器100の回路構成の1例を示す。
ここでは、水晶発振器でもよく使われる、ピアース発振回路を例に挙げる。
13は、インバータ(図2のインバータ22)であり、反転増幅を行う機能を持つ。
14は、抵抗であり、増幅器のゲインの制御に用いる。
15は、薄膜バルク弾性波共振子(図1の薄膜バルク弾性波共振子131)であり、出力側から特定成分だけを取り出し、入力側にフィードバックする役割を果たす。
16は、キャパシタンス(図1のキャパシタンス3)である。
【0050】
薄膜バルク弾性波共振子15とキャパシタンス16との作用により、フィードバック信号が180度位相反転する周波数において発振が成長していき、飽和値に達した後一定の安定した発振になる。
【0051】
共振子又はインダクタとキャパシタを用いた発振回路の基本形としては、本例の他にも、コルピッツ発振回路、ハートレー発振回路、およびこれらの変形回路等を用いることができ、用途・目的に応じて使い分けることが可能である。
【0052】
<周波数依存性>
図4は、図3に示す薄膜バルク弾性波発振器100において、共振周波数近傍のアドミッタンスの周波数依存性を示す。
【0053】
図4において、左側のアドミッタンス最大になる点17が共振点であり、右側のアドミッタンスが最小、インピーダンスが最大となる点18を反共振点という。
【0054】
共振点17と反共振点18との間が、共振子がインダクタとして動作する領域になる。発振周波数は、主に共振子で決まるが、発振回路のキャパシタンスの影響でも発振周波数が変化する。
【0055】
<圧電効果>
図1の薄膜バルク弾性波共振子131を構成する圧電体層7の圧電効果について説明する。
【0056】
圧電体の持つ圧電効果により、図1の外部から上下電極8,6間に電圧を印加した場合、上下電極8,6と圧電体層7とで構成される共振子に、弾性波(音響波)が誘起される。
【0057】
電極も含めた圧電体構造の厚みが、弾性波の半波長に等しい周波数条件等で定在波が立ち、共振現象を起こして、共振子はインダクタとしての性質を示す。それ以外の周波数領域では、主にキャパシタの性質を示す。その特性から狭い特定の周波数で発振を起こすことに適しており、通常のLC発振回路に比べて遥かにQ値が高く、純度の高い発振が得られる。
【0058】
また、弾性波は、電磁波に比べて5〜6桁速度が遅い為波長が短く、電磁波をそのまま扱う素子よりも、遥かに小さな素子で共振現象を起こすことが可能になる。
【0059】
本例のように、シリコン基板1上に薄膜バルク弾性波共振子131を形成すれば、従来の圧電振動子と発振回路とを別々に作成して繋げる場合よりも、一層小型で、信頼性が高く、使い勝手の良い発振器を作製することが可能になる。
【0060】
<音響ミラー効果>
図1の音響ミラー部120を構成する音響ミラー層121による音響ミラー効果について説明する。
【0061】
図1の薄膜バルク弾性波発振器100の例では、弾性波を閉じ込めるために、音響ミラー層121を使う場合の例を示した。
【0062】
その一方で、従来技術でも説明したように、下部電極6の下方部分を、表面マイクロマシニング技術を用いて中空にすることによっても、同様の発振器を作成することが可能である。
【0063】
しかし、本発明のように、薄膜バルク弾性波共振子131の下方を音響ミラーとして構成する方が、以下の3つの理由に基づいて、より好ましいと考えられる。
【0064】
第1の理由は、音響ミラーで閉じ込める方式の方が、スプリアスと呼ばれる余計な発振を抑制できることがある。スプリアスは発振の品質を下げる要因になるが、下部が中空で共振子を端で支える構造ではスプリアスが発生し易く、その抑制が難しいのに対して、音響ミラー方式ではほとんど問題にならない。
【0065】
第2の理由は、中空部が無い構造の方が落下や衝撃に対する耐性が高く、信頼性の面で有利である。これは持ち運ぶことの多い携帯機器では重要な特性である。
【0066】
第3の理由は、共振子をトランジスタ回路の中の発振特性に影響を与えない部分の上に作りこむことにより、更に小型の発振器チップができることである。一方、中空構造の場合には、共振子の下には回路構造の一部を置くことはできない。ある程度試行錯誤が必要とはいえ、回路と共振子を重ねた構造を作ることができて一層の小型化が可能なことも、この音響ミラーを用いた発振器の利点の一つである。周知のように、小型化は携帯機器等に入れる際の実装上大変有利なだけでなく、半導体素子や部品の場合、同一ウェハから多数の製品を作ることができるので、製品1個当たりのコストを下げる上でも大変有効な手段である。
【0067】
ただし、音響ミラー層121を用いた閉じ込めの場合、音響ミラーの厚みを介して配線を行わなければならない。この部分が厚いと、薄膜バルク弾性波共振子131とトランジスタ2との間の接続が難しくなるので、できるだけ薄く、かつ、高性能の音響ミラーを作製することが重要になる。
【0068】
この作製のためには、高音響インピーダンス材料で構成される薄膜5aと低音響インピーダンス材料で構成される薄膜5bとの音響インピーダンス差が大きく、かつ、これら両方の材料の音響速度が低いものを選択することが重要となる。
【0069】
[第2の例]
本発明の第2の実施の形態を、図5〜図6に基づいて説明する。なお、前述した第1の例と同一部分については、その説明を省略し、同一符号を付す。
【0070】
<断面構造>
図5は、前述した第1の例の図1に示した薄膜バルク弾性波発振器100の変形例を示す。
【0071】
本例は、回路素子111であるトランジスタ素子を、バイポーラトランジスタ12により構成した例である。
【0072】
シリコン基板1に埋め込みn+層10を形成し、その埋め込みn+層10上にエピ層11を成長させ、そのエピ層11上にコレクタ、ベース、エミッタからなるバイポーラトランジスタ12を形成している。
【0073】
発振回路に用いるトランジスタとしては、シリコンバイポーラトランジスタでも、シリコンMOSトランジスタでも、シリコンゲルマニウム・ヘテロジャンクション・バイポーラトランジスタでも、その他シリコン基板上に形成できる高速トランジスタであれば構わない。用途や目的に応じて、最適なトランジスタを選べばよい。
【0074】
また、回路素子111である容量素子としてのオンチップキャパシタンス3は、シリコン酸化膜等の誘電体層をポリシリコン層で挟み込んで形成されている。
【0075】
しかし、容量素子は、このような形成方法に限るものではなく、MOS容量や、さらにメタル間に挟んで形成したり、表面マイクロマシニング技術を用いて形成してもよい。
【0076】
また、回路素子111である抵抗素子としてのポリシリコン抵抗24は、シリコン酸化膜上にポリシリコンを成膜し、その後、所定の抵抗率になるようにドーズ量を調節してドーパントをイオン注入で打ち込み、アニールをかけた後、パターンの形成を行う。レイアウト時にそのパターンの長さおよび幅を調節することにより、所望の抵抗値を得ることができる。
【0077】
<レイアウト>
図6は、図5の薄膜バルク弾性波発振器100のレイアウトの1例を示す。
【0078】
本例では、複数に分割した薄膜バルク弾性波共振子21の一部を、他の回路素子、例えばポリシリコン抵抗24の直上に配置して構成した場合の1例である。図6のレイアウト上でトランジスタ部(インバータ)22の下側に配置されている2個の共振子は、ポリシリコン抵抗24と上下に重ねて配置されている。その他のレイアウトの基本的な構成は、前述した図2のレイアウトの例と同様である。
【0079】
このように配置することにより、チップ面積を小さくして、小型で、コスト競争力のある薄膜バルク弾性波発振器を作製することができる。
【0080】
[第3の例]
本発明の第3の実施の形態を、図7〜図8に基づいて説明する。なお、前述した各例と同一部分については、その説明を省略し、同一符号を付す。
【0081】
<電圧可変発振器>
図7は、薄膜バルク弾性波電圧可変発振器200の構成の1例を示す。
【0082】
薄膜バルク弾性波電圧可変発振器200は、前述した図1の薄膜バルク弾性波発振器100と同様に、トランジスタ素子としてMOSトランジスタ2を用いて構成されているが、以下、図1の構成と異なる部分について説明する。
【0083】
本例では、容量素子として、可変容量素子を用いる。
【0084】
ここでは、可変容量素子として、MOSバラクタにより構成した例を示す。MOSバラクタは、ゲート酸化膜を挟んで、印加バイアスによりゲートと基板1との間の容量が変化することを利用した素子である。
【0085】
可変容量素子としては、MOSバラクタに限定されるものではなく、ダイオードバラクタにより構成したり、表面マイクロマシニング技術を用いて作製された可変容量素子を用いてもよい。
【0086】
<回路例>
図8は、図7の薄膜バルク弾性波電圧可変発振器200の回路構成の1例を示す。
【0087】
薄膜バルク弾性波電圧可変発振器200は、前述した図3とほぼ同じ構成であるが、キャパシタの代わりに、電圧可変容量素子としてのバラクタ19(例えば、図7のMOSバラクタ20等)を接続する。
【0088】
電圧制御によって、バラクタ19のキャパシタンス値が変わると、発振周波数がこのキャパシタンス値によりシフトすることを利用して、電圧で周波数を制御することが可能な発振器を作成できる。
【0089】
また、図8の回路には含まれていないが、薄膜バルク弾性波共振子15に直列にオンチップインダクタを接続することにより、可変周波数の範囲を一段と広げることができる。ただし、オンチップインダクタのQ値は低いので、発振の純度が低下してしまうという点を留意する必要がある。
【0090】
[第4の例]
本発明の第4の実施の形態を、図9に基づいて説明する。なお、前述した各例と同一部分については、その説明を省略し、同一符号を付す。
【0091】
<電圧可変発振器>
図9は、前述した第3の例の図7に示した薄膜バルク弾性波発振器200の変形例を示す。
【0092】
薄膜バルク弾性波電圧可変発振器200は、前述した図7の薄膜バルク弾性波発振器200と同様に、可変容量素子(例えば、図7のMOSバラクタ20、図8のバラクタ19等)を用いて構成されているが、以下、図7の構成と異なる部分について説明する。
【0093】
本例では、トランジスタ素子として、前述した第2の例の図5に示したようなバイポーラトランジスタ12を用いる。
【0094】
このような構成により、第3の例と同様に電圧で周波数を制御することが可能な発振器を、バイポーラトランジスタ12を用いて作成できる。
【0095】
[第5の例]
本発明の第5の実施の形態を、図10〜図12に基づいて説明する。なお、前述した各例と同一部分については、その説明を省略し、同一符号を付す。
【0096】
本例は、複数の薄膜バルク弾性波共振子を並列接続した回路の例である。
【0097】
以下の説明では、薄膜バルク弾性波共振子として電圧可変可能な薄膜バルク弾性波電圧可変発振器を用い、容量素子として可変容量素子を用いた回路を例に挙げる。
【0098】
図10は、薄膜バルク弾性波電圧可変発振器300の回路構成の1例を示す。
【0099】
薄膜バルク弾性波電圧可変発振器300は、複数の薄膜バルク弾性波共振子42が並列接続されている。
【0100】
各薄膜バルク弾性波共振子42は、前述した第1の例ないし第3の例と同様な構成であり、例えば、図3の薄膜バルク弾性波共振子15(図1の薄膜バルク弾性波共振子131)と同様に構成することができる。
【0101】
容量素子は、前述した第3の例と同様に、可変容量素子20(例えば、図7のMOSバラクタ20、図8のバラクタ19等)を用いて構成されている。
【0102】
なお、その他の構成として、インバータ13、抵抗14は、前述した図3の薄膜バルク弾性波発振器100と同様である。
【0103】
<可変周波数範囲の拡大化>
薄膜バルク弾性波共振子42を用いて、可変周波数範囲の拡大化を図ることができる理由について説明する。
【0104】
図11は、薄膜バルク弾性波共振子42の等価回路を模式的に示す。
37は、直列共振インダクタンスLである。
38は、直列共振キャパシタンスCである。
39は、直列共振抵抗Rである。
40は、並列共振キャパシタンスCである。
41は、並列共振抵抗Rである。
【0105】
図11に示した薄膜バルク弾性波共振子42の等価回路は、修正バターワース・ファン・ダイクモデルと呼ばれる。
【0106】
一般に、電圧可変発振器の特性に関しては、発振の立ち上がりが早いこと、低消費電力、耐プッシング性等用途に応じて様々な要求がある。その中でも、以下の2種類の要求が重要となる。
【0107】
第1の要求は、可変周波数範囲は狭くてもよいが、薄膜バルク弾性波共振子のQ値を上げ、高い純度の発振を提供することである。
【0108】
Q値は、等価回路の直列共振インダクタンスL、直列共振キャパシタンスC、直列共振抵抗Rを用いると、数式1のように表される。
【0109】
【数1】

【0110】
この場合には、Rの値を小さくできる範囲でCを小さくLを大きくすることが効果的になる。Cは共振子面積と電気機械結合定数に比例するので、共振子の面積を大きくする必要はない。
【0111】
第2の要求は、薄膜バルク弾性波共振子42のQ値は余り上げる必要は無いが、可変周波数範囲を広げたいというものである。
【0112】
この場合には、薄膜バルク弾性波共振子42の共振周波数f、有効電気機械結合定数Keff、並列共振キャパシタンスC、2個のバラクタを直列接続した場合の最大キャパシタンスCLmax、最小キャパシタンスCLminを用いると、可変周波数Δfは、数式2のように近似的に表せる。
【0113】
【数2】

【0114】
この数式2から、有効電気機械結合定数Keffを大きく、最大キャパシタンスCLmaxをできるだけ大きく、最小キャパシタンスCLminをできるだけ小さくする方が良いことが理解できるが、さらに薄膜バルク弾性波共振子42の並列共振キャパシタンスCが小さすぎると、分子を小さくするので可変周波数幅は小さくなり、大きすぎると、C/(C*C)で分母が大きくなるので可変周波数幅が小さくなり、C値に関しては最適値が存在する。
【0115】
図12は、並列共振キャパシタンスCの値と、可変周波数幅Δfとの関係の1例を示す。
【0116】
可変周波数幅の極大値をとるC値は、数式2でΔfをCで偏微分して0になる値を求めることにより、数式3が得られる。
【0117】
【数3】

【0118】
薄膜バルク弾性波電圧可変発振器300が広いチューニング範囲を得るために好ましいC値の範囲は、低C値側は最大チューニング範囲の半分のチューニング範囲となるC0maxの7分の1、高C値側は面積が増加してしまう不利な点を加味して最大チューニング範囲の4分の3のチューニング範囲となるC0maxの3倍までの範囲と考えられる。
【0119】
電極の効果があるので近似的ではあるが、C値と薄膜バルク弾性波共振子42との面積は、数式4のような比例関係にある。
【0120】
【数4】

【0121】
ここで、Sは薄膜バルク弾性波共振の面積、vpiezoは圧電体薄膜内のバルク弾性波速度、εは圧電体の比誘電率、εは真空の誘電率、fは共振周波数を表す。
【0122】
【数5】

【0123】
【数6】

【0124】
発振回路の可変容量の最大キャパシタンスをCLmax、最小キャパシタンスをCLminとして得られた数式5のSminと、数式6のSmaxの範囲に収まるように、薄膜バルク弾性波共振子42をレイアウトすることによって、幅広いチューニング範囲を持つ薄膜バルク弾性波電圧可変発振器300が得られる。
【0125】
発振させたい周波数と圧電体材料にもよるが、広い可変周波数にしようとすると、Cが大きい薄膜バルク弾性波共振子が必要になる。
【0126】
共振子の面積を広げることによって、1個の共振子のみからなる回路構成でもその様な共振子を作製することは可能で選択肢の1つの方法と考えられる。
【0127】
しかし、本例の図10に示した回路のように、複数個の薄膜バルク弾性波共振子42を作製し、これら複数個の共振子を並列に接続することによって、C値を増加したことと等価な効果を得ることが可能である。
【0128】
従って、複数個の薄膜バルク弾性波共振子42を並列接続することによって、レイアウト上の自由度を向上させ、所望とする回路作製を実現するための選択肢を多様化することができる。
【0129】
図10の回路において共振子の数がN個の場合、寄生成分を除くと、1個の共振子の場合と比較して、並列共振キャパシタンスCはN倍、直列共振キャパシタンスCはN倍、直列共振インダクタンスLは1/N倍になる。
【0130】
1個の共振子の面積は、数式5と数式6の範囲で定めた共振子面積の1/Nのサイズでも、共振子をN個並列に接続することにより、中心周波数を保ったまま、可変周波数範囲を拡大した薄膜バルク弾性波電圧可変発振器300を作製できる。
【0131】
このような回路構成が薄膜バルク弾性波発振器に最適なのは、1個の共振子を作製する場合でも、複数の共振子を作製する場合でも、プロセス工程数は変わらず、レイアウトの変更だけでよいことから判断すると、この複数の共振子に分けて並列接続する回路構成は、結晶から切り出す共振子の場合とは異なる薄膜バルク弾性波発振器の特徴の1つである。
【0132】
また、複数の共振子に分けて並列接続する回路構成のもう1つの特徴は、前述した第1の例で説明したように回路部の上に共振子を置く場合にも有効になる。
【0133】
薄膜バルク弾性波共振子からの機械振動や、共振子の電極の電位変化が容量結合を通して位相ノイズ等の発振特性に影響を与える可能性があるが、その影響を受け難い回路が広い範囲で存在することは少なく、いくつかの部分に分かれて存在することが多い。
【0134】
このような場合にも、適切なサイズに分割した共振子を適切な場所に配置することによって、チップの面積を小型化する有効な手段となる。
【0135】
例えば、図3、図8、図10の各回路の場合には、薄膜バルク弾性波共振子と共にフィードバックループを形成するキャパシタンスや、バラクタを避けるのが好ましい。
【0136】
[第6の例]
本発明の第6の実施の形態を、図13〜図15に基づいて説明する。なお、前述した各例と同一部分については、その説明を省略し、同一符号を付す。
【0137】
<回路例>
本例は、薄膜バルク弾性波共振子の2つの電極部に容量素子をそれぞれ接続する場合において、一方の容量素子の容量値又は素子数に対して、他方の容量素子の容量値又は素子数を非対称にして構成した例である。
【0138】
図13は、薄膜バルク弾性波発振器400の回路構成の1例を示す。
【0139】
薄膜バルク弾性波発振器400の基本的な構成は、前述した図3の回路と同様であり、以下、異なる部分について説明する。
15は、薄膜バルク弾性波共振子(図1の薄膜バルク弾性波共振子131)である。
19は、電圧可変容量素子である。
44は、寄生容量成分である。
【0140】
(非対称回路の特性)
通常は電圧可変容量を大きくすることが、可変周波数範囲を広げる上で有効な手段であるが、高周波数領域の発振器においては、一概にその方向が好ましいとも言えない。
【0141】
前述した図3の回路構成において、負性抵抗(インバータと電圧可変容量を含めた回路の複素インピーダンスの実部)は、数式7の様に表せる。
【0142】
【数7】

【0143】
ここで、gmはインバータに用いたトランジスタの相互コンダクタンス、C1,C2は薄膜バルク弾性波共振子の左端と右端にそれぞれ接続した電圧可変容量素子の容量値、r1,r2はそれぞれ電圧可変容量素子の寄生抵抗を表す。
【0144】
負性抵抗がゼロを越えて正の抵抗になると発振は生じない。また、負性抵抗値が負であっても、数Ωまで低下した場合には発振の立ち上りに時間が長くかかる、若しくは安定に発振しなくなる等の問題が生ずる。
【0145】
周波数が高くなると数式7の第4項の分母が大きくなり、また、トランジスタの相互コンダクタンスが低下するので、負性抵抗値が負の大きな値を保てなくなり、減少する。
【0146】
このようなトランジスタの遮断周波数で制限される周波数領域において可変周波数範囲を広げる場合には、電圧可変容量素子よりもむしろ負性抵抗値で発振周波数範囲が制限されるので、電圧可変容量素子の寄生抵抗r1やr2を小さくする、又は、C1又はC2を小さくすることにより、却って発振周波数の上限を高周波数側に伸ばして、周波数の可変範囲を大きくすることができる。
【0147】
電圧可変容量素子19を複数個接続した場合には、薄膜バルク弾性波共振子15の片側の電極に接続される電圧可変容量素子の数を減らすか、又は、図13の例に示すように、インバータ入力側の電圧可変容量素子19を省いてしまうと、片側の配線部分の寄生抵抗が無くなり、インバータ入力側のキャパシタンスは寄生容量成分だけになる。
【0148】
これにより、C1の値が大幅に小さくなり、負性抵抗は高い周波数まで大きい値を維持できるようになり、発振可能な周波数範囲を高周波まで持っていくことができる。これは発振器の負荷容量を小さくすることで発振周波数をより高い周波数まで拡大できる構成例である。MOSトランジスタのゲート抵抗が影響し始める周波数領域では対称性を維持しつつある程度の発振余裕を保つことは難しいが(C1、C2の負荷容量をともに小にして対称性を保持)、本方法によれば比較的容易に実現できる。このような非対称な回路の特性をシミュレーションによって確認したものを、以下の図14と図15に示す。
【0149】
図14は、薄膜バルク弾性波共振子15に接続するMOS型電圧可変容量素子に3Vを印加した場合において、シミュレーションで求めた負性抵抗の周波数依存性を示す。
【0150】
図15は、薄膜バルク弾性波共振子15に接続するMOS型電圧可変容量素子に0Vを印加した場合において、シミュレーションで求めた負性抵抗の周波数依存性を示す。
【0151】
図14および図15は、図13の回路において、インバータ13をNMOSとPMOSのトランジスタ、電圧可変容量素子19をMOSバラクタによって構成した例である。
【0152】
薄膜バルク共振子の両端にMOSバラクタを接続した場合と、片側(出力側)だけにMOSバラクタを接続した場合の比較を行っている。
【0153】
MOSバラクタを省いた場合には、MOSトランジスタの寄生容量分だけが残る。このシミュレーションでは、この寄生容量はMOSバラクタの最小容量の約1/30と見積もっている。
【0154】
図14は、MOSバラクタに3Vを印加した場合、図15は、MOSバラクタに0V印加した場合であり、横軸は周波数(GHz)、縦軸は発振器の負性抵抗(Ω)である。
【0155】
破線45は、通常のMOSバラクタを共振子の両端に接続した場合の従来例である。実線46は、片側だけにMOSバラクタを接続した場合の本発明の例である。
【0156】
前者45の従来例場合は、800MHzを越えるところで、負性抵抗値が低下してしまい、安定な発振が難しくなる。これに対して、後者46の本発明の場合は、2.5GHz近くまで負性抵抗が維持できることがわかる。
【0157】
薄膜バルク弾性波発振器400は、1GHz以上の高周波数領域で発振できることが特徴の1つなので、プロセス(最小ゲート長)を変更せずに、46の本発明のように、負性抵抗を高周波側に伸ばすことができることは、実際に設計する場合において大変有用なことである。
【0158】
[第7の例]
本発明の第7の実施の形態を、図16〜図21に基づいて説明する。なお、前述した各例と同一部分については、その説明を省略し、同一符号を付す。
【0159】
本例は、第1の例〜第6の例で説明した薄膜バルク弾性波発振器100〜400の製造方法を説明する例である。
【0160】
<製法の概要>
図16は、本発明の薄膜バルク弾性波発振器100〜400を作製するための製造方法の概要を示す。
【0161】
ここでは、図1の薄膜バルク弾性波発振器100を用いて説明する。
【0162】
ステップS1では、基板1上に、少なくともトランジスタ素子2および容量素子3を含む回路素子111からなる回路素子部110を形成する。
【0163】
ステップS2では、回路素子部110の上部に、高音響インピーダンス材料で構成される薄膜5aと低音響インピーダンス材料で構成される薄膜5bとを交互に積み重ねることによって構成された音響ミラー層121を有する音響ミラー部120を形成する。
【0164】
ステップS3では、音響ミラー部120の音響ミラー層121が形成された領域の直上に、圧電体薄膜7と、圧電体薄膜7を上下方向から挟む2つの上下電極8,6とからなる薄膜バルク弾性波共振子131を形成し、薄膜バルク弾性波共振子131を音響ミラー層121を介して基板1側の回路素子111に対して音響的に分離することによって共振子部130を構成する。
【0165】
ステップS4では、回路素子部110の回路素子111と、共振子部130の薄膜バルク弾性波共振子131とを電気的に配線接続する。また、多くの場合薄膜バルク弾性波共振子131の少なくとも一方の電極8又は6に、容量素子3を接続する。
【0166】
これにより、図1の薄膜バルク弾性波発振器100を作製することができる。
【0167】
<製造例>
以下、微細加工技術および薄膜形成技術を用いて、薄膜バルク弾性波発振器を製造する例について説明する。
【0168】
図17は、図16の製造方法を製造工程毎に詳細に説明したフローチャートである。
【0169】
図18〜図21は、図17の製造プロセスに対応した薄膜バルク弾性波発振器100の断面構造を示す説明図である。この場合、製造プロセスは、MOSプロセスでもバイポーラプロセスでも構わないが、ここではMOSプロセスの例を挙げて説明する。
【0170】
(回路素子部)
回路素子部110の作製について説明する。
回路素子部110の作製は、図17のステップS10〜ステップS20に従って行う。
ステップS10〜ステップS12では、シリコン基板1上に素子分離形成領域を形成した後、Pウェル、Nウェルを形成する。
ステップS13〜ステップS14では、ゲート酸化膜を形成し、ポリシリコンのゲートを形成する。
ステップS15〜ステップ16では、キャパシタンス3、LDDを形成する。
ステップS17〜ステップ19では、ソース・ドレインの拡散層を形成し、シリサイド化の処理を行い、トランジスタ2の配線層を形成する。
ステップS20では、配線層上の表面平坦化を行う。
【0171】
図18は、回路素子部110の表面平坦化時の断面図である。
【0172】
27はメタル配線層、28はシリコン酸化膜の層間膜で、28をCMP(化学機械的研磨法)で平坦化する。
薄膜バルク弾性波共振子131を形成する際に、下地の平坦性は重要なので、犠牲シリコン酸化膜厚みとCMPの研磨厚みを調整して0.1〜0.2μ程度までの平坦性を実現することが望ましい。
【0173】
(音響ミラー部)
音響ミラー部120の作製について説明する。
【0174】
音響ミラー部120の作製は、図17のステップS21〜ステップS22に従って行う。
ステップS21では、音響ミラー層121を形成する。
ステップS22では、音響ミラー層121上の表面平坦化を行う。
【0175】
図19は、音響ミラー層121の形成時の断面図を示す。
【0176】
29が高音響インピーダンス材料で構成される薄膜(5a)、30が低音響インピーダンス材料で構成される薄膜(5b)を表す。両者共にその材質固有の音響波速度があるが、中心周波数の1/4波長程度の厚みでそれぞれの層を形成する。
【0177】
高音響インピーダンス材料で構成される薄膜29と低音響インピーダンス材料で構成される薄膜30とを交互に積み重ねることによって、特定の周波数帯域の音響波を効率良く反射させることができる。
【0178】
低音響インピーダンス材料で構成される薄膜30は、現状ではシリコン酸化膜が最も適している。高音響インピーダンス材料で構成される薄膜29は、いくつか候補があり、タングステン、窒化アルミニウム、酸化タンタル等の密度が高く硬めの材料が適している。
【0179】
高音響インピーダンス層は、コンタクト部を除きウエハ全面に形成する場合と、エッチングでパターンを形成しながら形成する場合がある。
【0180】
図19の例では、共振子と発振回路とを配線で結ぶ際に邪魔にならないように、共振子を形成する部分にだけ、音響ミラー層121を形成している。
【0181】
この例では、平坦化してから音響ミラー層121を形成しているが、それに加えて下部電極6の形成直前に平坦化を行うことも有効な方法である。
【0182】
(共振子部)
共振子部130の作製について説明する。
共振子部130の作製は、図17のステップS23〜ステップS27に従って行う。
ステップS23では、下部電極6を成膜する。
ステップS24では、下部電極6のパターンを形成する。
ステップS25では、圧電体薄膜7を成膜する。
ステップS26では、上部電極8を成膜する。
ステップS27では、上部電極8、圧電体薄膜7のパターンを形成する。
【0183】
図20は、圧電体層の形成時の断面図を示す。
【0184】
31は下部電極、32は圧電体薄膜を示す。下部電極31は、前述したように白金、モリブデン、アルミニウム、ルテニウム、タングステン等を使うことができる。スパッタ等の薄膜堆積法を用いてウェハ全面に堆積した後に、リソグラフィー技術を用いてパターン形成をする。
【0185】
下部電極31は、圧電体薄膜32の成膜の際の下地となり、圧電体薄膜32の品質に大きな影響を与えるので、適切な材料と条件を選択する必要がある。圧電体薄膜32が窒化アルミニウムの場合、アルミニウムターゲットをスパッタして、同時にプラズマ中に窒素を導入して活性化させ、両者をウェハ上で反応させる反応性プラズマスパッタリング法により、c軸方向に結晶性が良く、特性の良い窒化アルミニウム薄膜を成長させることができる。
【0186】
(配線部)
配線部の作製について説明する。
【0187】
配線部の作製は、図17のステップS28に従って行う。
【0188】
ステップS28では、回路素子部110のトランジスタ部と、共振子部130との配線を行う。
【0189】
図21は、共振子部130とトランジスタ部を結ぶ配線工程の断面図を示す。
【0190】
33は、上部電極である。圧電体薄膜32を形成した後、その上に上部電極33を形成する。
【0191】
材料はアルミニウム又は耐エレクトロマイグレーション性を向上させる為の添加物を含んだアルミニウム合金が望ましいが、他にモリブデン等を使用することもできる。上部電極33を形成後、リソグラフィー技術を用いてパターン形成を行う。
【0192】
図21の例では、このタイミングで圧電体薄膜32のエッチング、および、メタル配線層と接続をするためのホールを開けるためのシリコン酸化膜エッチングを行う。共振子部130の上部電極33を保護層34で覆った後、厚いアルミニウム配線層35を全面に堆積する。
【0193】
次に、フォトレジスト36で残す部分を保護した上で、エッチングで配線不要部を除去する。これにより、最終的に共振子―トランジスタ回路間の配線を形成し、保護層34を除去する。
【0194】
以上の工程により、共振子部130をトランジスタ部からなる回路素子部110と同一基板1に形成し、その間を配線接続することによって、アクティブ素子等の回路素子を動作させることが可能になる。
【0195】
[第8の例]
本発明の第8の実施の形態を、図22基づいて説明する。なお、前述した各例と同一部分については、その説明を省略し、同一符号を付す。
【0196】
本例は、薄膜バルク弾性波共振子が複数個からなる場合において、該各薄膜バルク弾性波共振子が互いに異なる共振周波数を持つ場合の例である。
【0197】
前述した第1の例〜第7の例は、複数の共振子(薄膜バルク弾性波共振子131)の共振周波数が同一の場合について述べてきた。
【0198】
しかし、図22に示すように、上部電極33の上に共振周波数のシフトを惹き起こす為の部材43、例えばシリコン酸化膜を成膜するステップと、その材料をフォトレジスト36を用いて選択的にエッチングするステップを追加することによって、共振周波数をシフトした共振子を得ることができる。
【0199】
このように異なる共振周波数の共振子をトランジスタで構成される選択スイッチと接続して回路内で切り替える、又は組み合わせることによって、広帯域化した発振器を構成することも可能になる。
【0200】
以上の例以外にも、複数の共振子を別の目的で使用することも可能である。その場合にも、素子の配置を工夫することによって、小型化が可能になる。
【0201】
[第9の例]
本発明の第9の実施の形態について説明する。なお、前述した各例と同一部分については、その説明を省略し、同一符号を付す。
【0202】
本例は、半導体基板上の集積回路の一部として、前述した第1の例〜第8の例の薄膜バルク弾性波発振器を構成した場合の例である。
【0203】
前述した第1の例〜第8の例では、薄膜バルク弾性波発振器100、および、薄膜バルク弾性波電圧可変発振器200,300,400について述べてきたが、これらの回路は、他の半導体集積回路と接続して使われる場合もあれば、他の半導体集積回路と同時に一体的に製造された方が好ましい場合も多い。
【0204】
前述した第7の例および第8の例で説明した方法は、単体の薄膜バルク弾性波発振器100、および、薄膜バルク弾性波電圧可変発振器200,300,400だけでなく、その一部に薄膜バルク弾性波発振器100、および、薄膜バルク弾性波電圧可変発振器200,300,400を含む半導体集積回路に対しても同様に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0205】
【図1】本発明の第1の実施の形態である、薄膜バルク弾性波発振器の構造の1例を示す断面図である。
【図2】薄膜バルク弾性波共振子と周波数調整用容量素子とを離間したレイアウトの1例を示す平面図である。
【図3】薄膜バルク弾性波発振器の回路構成の1例を示す回路図である。
【図4】薄膜バルク弾性波共振子のアドミッタンスの周波数特性の1例を示す説明図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態である、薄膜バルク弾性波発振器の構造の1例を示す断面図である。
【図6】複数に分割した薄膜バルク弾性波共振子を他の素子上に配置したレイアウトの1例を示す平面図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態である、薄膜バルク弾性波電圧可変発振器の構造の1例を示す断面図である。
【図8】薄膜バルク弾性波電圧可変発振器の回路構成の1例を示す回路図である。
【図9】本発明の第4の実施の形態である、薄膜バルク弾性波電圧可変発振器の構造の1例を示す断面図である。
【図10】本発明の第5の実施の形態である、並列に接続した薄膜バルク弾性波発振器の回路構成の1例を示す回路図である。
【図11】薄膜バルク弾性波の等価回路を示す回路図である。
【図12】可変周波数範囲と並列共振キャパシタンスの関係の1例を示す説明図である。
【図13】本発明の第6の実施の形態である、薄膜バルク弾性波共振子の片側の電圧可変容量素子を省いた薄膜バルク弾性波発振器の1例を示す回路図である。
【図14】薄膜バルク弾性波共振子に接続するMOS型電圧可変容量素子に3Vを印加した場合において、シミュレーションで求めた負性抵抗の周波数依存性を示す説明図である。
【図15】薄膜バルク弾性波共振子に接続するMOS型電圧可変容量素子に0Vを印加した場合において、シミュレーションで求めた負性抵抗の周波数依存性を示す説明図である。
【図16】本発明の第7の実施の形態である、薄膜バルク弾性波発振器の製造方法の概略を示すフローチャートである。
【図17】薄膜バルク弾性波発振器の製造工程を示すフローチャートである。
【図18】回路素子部の表面平坦化時の製造工程を示す断面図である。
【図19】音響ミラー形成時の製造工程を示す断面図である。
【図20】圧電体層形成時の製造工程を示す断面図である。
【図21】配線工程時の製造工程を示す断面図である。
【図22】本発明の第8の実施の形態である、共振周波数をシフトするための製造工程の1例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0206】
1 シリコン基板
2 トランジスタ部(MOSトランジスタ)
3 キャパシタンス部
4 トランジスタ間メタル配線層
5a 高音響インピーダンス材料で構成される薄膜
5b 低音響インピーダンス材料で構成される薄膜
6 下部電極
7 圧電体薄膜
8 上部電極
9 共振子―トランジスタ間メタル配線層
10 n+埋め込み層
11 エピ成長層
12 トランジスタ部(バイポーラトランジスタ)
13 インバータ増幅回路(負性抵抗部)
14 抵抗
15 薄膜バルク弾性波共振子
16 キャパシタンス
17 共振点
18 反共振点
19 電圧可変容量素子
20 電圧可変容量素子(MOSバラクタ)
21 薄膜バルク弾性波共振子
22 インバータ用トランジスタ領域
23 キャパシタンス
24 ポリシリコン抵抗
25 出力ドライバー等の周辺回路
26 電源/GND/出力パッド及び静電破壊防止回路
27 メタル配線層
28 酸化シリコン層間膜
29 高音響インピーダンス層
30 低音響インピーダンス層
31 下部電極
32 圧電体薄膜
33 上部電極
34 上部電極保護層
35 共振子―トランジスタ間配線層
36 フォトレジスト
37 直列共振インダクタンス
38 直列共振キャパシタンス
39 直列共振抵抗
40 並列共振キャパシタンス
41 並列共振抵抗
42 複数の薄膜バルク弾性波共振子の並列接続
43 共振周波数をシフトするために付加した膜
44 寄生容量成分
45 両側にMOSバラクタを接続した場合の特性曲線(破線)
46 片側だけにMOSバラクタを接続した場合の特性曲線(実線)
100 薄膜バルク弾性波発振器
110 回路素子部
111 回路素子
120 音響ミラー部
121 音響ミラー層
130 共振子部
131 薄膜バルク弾性波共振子
200,300,400 薄膜バルク弾性波電圧可変発振器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜バルク弾性波発振器であって、
基板上に、少なくともトランジスタ素子および容量素子を含む回路素子が形成された回路素子部と、
前記回路素子部の上部に、高音響インピーダンス材料で構成される薄膜と低音響インピーダンス材料で構成される薄膜が交互に積み重ねることによって音響ミラー層が形成された音響ミラー部と、
前記音響ミラー部の前記音響ミラー層が形成された領域の直上に、圧電体薄膜と、該圧電体薄膜を上下方向から挟む2つの電極部とからなる薄膜バルク弾性波共振子が形成され、かつ、該薄膜バルク弾性波共振子は前記音響ミラー層を介して前記基板及び前記基板側の前記回路素子に対して音響的に分離して構成された共振子部と
を具え、
前記回路素子部の前記回路素子と、前記共振部の前記薄膜バルク弾性波共振子とを電気的に配線接続したことを特徴とする薄膜バルク弾性波発振器。
【請求項2】
前記容量素子は、前記薄膜バルク弾性波共振子の発振周波数を所定値に設定するための、固定容量素子又は可変容量素子からなることを特徴とする請求項1記載の薄膜バルク弾性波発振器。
【請求項3】
前記薄膜バルク弾性波共振子が1個又は複数個からなる場合において、該薄膜バルク弾性波共振子の総面積は、発振回路を構成する前記可変容量素子の容量値の最大値と最小値との積の平方根値に前記圧電体薄膜のバルク弾性波速度を積算し、該積算値を該圧電体薄膜の誘電率と共振周波数との積の2倍で除算した値の、7分の1から3倍までの範囲であることを特徴とする請求項2記載の薄膜バルク弾性波発振器。
【請求項4】
前記圧電体薄膜は、窒化アルミニウムからなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の薄膜バルク弾性波発振器。
【請求項5】
前記回路素子は、シリコンMOSトランジスタ、シリコンバイポーラトランジスタ、又は、シリコンゲルマニウムトランジスタからなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の薄膜バルク弾性波発振器。
【請求項6】
前記薄膜バルク弾性波共振子と前記容量素子との間の配線接続距離が、前記薄膜バルク弾性波共振子と前記トランジスタ素子との間の配線接続距離よりも長くなるように設定したことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の薄膜バルク弾性波発振器。
【請求項7】
前記薄膜バルク弾性波共振子を複数個用い、該各薄膜バルク弾性波共振子を並列に接続したことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の薄膜バルク弾性波発振器。
【請求項8】
前記各薄膜バルク弾性波共振子による機械的振動および容量結合の変化が発振周波数特性に影響を及ぼさない領域であって、該各薄膜バルク弾性波共振子が前記回路素子の直上に配設したことを特徴とする請求項7記載の薄膜バルク弾性波発振器。
【請求項9】
前記薄膜バルク弾性波共振子の前記2つの電極部に前記容量素子をそれぞれ接続する場合において、一方の容量素子の容量値又は素子数に対して、他方の容量素子の容量値又は素子数を非対称にしたことを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の薄膜バルク弾性波発振器。
【請求項10】
前記薄膜バルク弾性波共振子が複数個からなる場合において、該各薄膜バルク弾性波共振子が互いに異なる共振周波数を持つことを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の薄膜バルク弾性波発振器。
【請求項11】
前記薄膜バルク弾性波共振子の少なくとも一方の前記電極部に、前記容量素子を接続したことを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の薄膜バルク弾性波発振器。
【請求項12】
半導体基板上の集積回路の一部として、請求項1ないし11記載の薄膜バルク弾性波発振器を構成したことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項13】
微細加工技術および薄膜形成技術を用いて、薄膜バルク弾性波発振器を作製する製造方法であって、
基板上に、少なくともトランジスタ素子および容量素子を含む回路素子からなる回路素子部を形成する工程と、
前記回路素子部の上部に、高音響インピーダンス材料で構成される薄膜と低音響インピーダンス材料で構成される薄膜とを交互に積み重ねることによって構成された音響ミラー層を有する音響ミラー部を形成する工程と、
前記音響ミラー部の前記音響ミラー層が形成された領域の直上に、圧電体薄膜と、該圧電体薄膜を上下方向から挟む2つの電極部とからなる薄膜バルク弾性波共振子を形成し、該薄膜バルク弾性波共振子を前記音響ミラー層を介して前記基板及び前記基板側の前記回路素子に対して音響的に分離することによって共振子部を構成する工程と、
前記回路素子部の前記回路素子と、前記共振子部の前記薄膜バルク弾性波共振子とを電気的に配線接続する工程と
を具えたことを特徴とする薄膜バルク弾性波発振器の製造方法。
【請求項14】
前記容量素子は、前記薄膜バルク弾性波共振子の発振周波数を所定値に設定するための、固定容量素子又は可変容量素子からなることを特徴とする請求項13記載の薄膜バルク弾性波発振器の製造方法。
【請求項15】
前記圧電体薄膜は、窒化アルミニウムからなることを特徴とする請求項13又は14記載の薄膜バルク弾性波発振器の製造方法。
【請求項16】
前記回路素子は、シリコンMOSトランジスタ、シリコンバイポーラトランジスタ、又は、シリコンゲルマニウムトランジスタからなることを特徴とする請求項13ないし15のいずれかに記載の薄膜バルク弾性波発振器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2007−214782(P2007−214782A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−31196(P2006−31196)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】