説明

蛍光体、発光素子、発光装置及び蛍光体の製造方法

【課題】ブロードな発光スペクトルの赤外光を発する蛍光体、これを用いた発光素子及び発光装置、並びに蛍光体の製造方法を提供する。
【解決手段】SnがドーピングされたGaAsを液相成長法により成長した後、GaAsにNiをイオン注入法によりドーピングし、この後、GaAsに熱処理を施してイオン注入によるダメージを取り除くことにより、良好なドナー・アクセプタ・ペアの発光特性を有するNi及びSnドープのGaAs蛍光体が製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光励起により赤外光を発する蛍光体、これを用いた発光素子及び発光装置、並びに蛍光体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、赤外光を発する発光素子として、GaAs系、InGaAsP系等の発光ダイオード(LED)、レーザダイオード(LD)等が知られている(例えば、特許文献1参照)。現在、市販されているGaAs系発光ダイオード(LED)のうち、発光ピーク波長として代表的なものは880nm、950nm等である。一方、InGaAsP系LED、レーザーダイオード(LD)等のうち、発光波長として代表的なものは、1.3μm、1.5μm等である。GaAs系とInGaAsP系の中間の領域の光を発光する素子は殆ど無い。
【0003】
また、通常の発光ダイオードはエレクトロルミネッセンスを利用し発光するので、発光スペクトルの半値幅がたかだか20nmと広くない。近年、応用上の観点より、広い発光波長範囲を持つ赤外発光素子が求められている。例えば、光干渉断層撮影装置(OCT)用光源では、発光スペクトルが広いと分解能が向上するという利点があり、発光スペクトルの広い光源が強く求められている。また、近赤外光を用いた光学的試料分析装置に関しては、従来では、複数個の発光ダイオードを組み合わせることにより、所望のスペクトル範囲をカバーする光源を得ていたが、LEDの発光スペクトルがより広くなれば、少ない個数のLEDを組み合わせるだけで必要な発光スペクトルの範囲をカバーすることが可能となる。このことは、単に使用するLEDの数の減少に効果があるばかりではなく、LEDの駆動回路など付帯の回路を減らす効果もあり、分析装置の小型化ならびに省電力化にも有効であるという利点を持つ。
【特許文献1】特開2007−158181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、広域の発光スペクトルの赤外光を発する蛍光体、これを用いた発光素子及び発光装置、並びに蛍光体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明は、Ni及びSnがドーピングされ、光励起によりドナー・アクセプタ・ペアによって発光するGaAsを含む蛍光体が提供される。
【0006】
上記蛍光体において、Niの濃度が1017/cm〜1018/cmであり、Snの濃度が1018/cm〜1019/cmであることが好ましい。
【0007】
また、前記目的を達成するため、本発明は、上記蛍光体の製造方法であって、Niのドーピングをイオン注入により行う蛍光体の製造方法が提供される。
【0008】
上記蛍光体の製造方法において、Niをドーピングした後、熱処理を行うことが好ましい。
【0009】
上記蛍光体の製造方法において、液相成長法によりSnがドーピングされたGaAsを成長した後、Niをドーピングすることが好ましい。
【0010】
また、前記目的を達成するため、上記蛍光体からなる蛍光板と、前記蛍光体を励起する励起光を発する発光素子と、を備えた発光装置が提供される。
【0011】
上記発光装置において、前記蛍光板に設けられ、前記発光素子により励起されると前記蛍光体から発せられる赤外光を所定方向へ反射する赤外光反射部を備えた構成としてもよい。
【0012】
上記発光装置において、前記蛍光板に設けられ、前記GaAsを透過した前記励起光を前記GaAs側へ反射する励起光反射部を備えた構成としてもよい。
【0013】
上記発光装置において、前記蛍光板の前記蛍光体及び前記発光素子が内側となるように配置され、前記励起光を反射する一対の励起光反射部を備えた構成としてもよい。
【0014】
また、前記目的を達成するため、Ni及びSnがドーピングされたGaAs蛍光基板と、前記GaAs蛍光基板上に形成され、前記GaAs蛍光基板を励起する励起光を発する活性層を有する半導体積層構造と、を備えた発光素子が提供される。
【0015】
上記発光素子において、前記励起光により励起されると前記GaAs蛍光基板から発せられる赤外光を反射する赤外光反射層を備えた構成としてもよい。
【0016】
上記発光素子において、前記励起光を前記GaAs蛍光基板側へ反射する励起光反射層を備えた構成としてもよい。
【0017】
上記発光素子において、前記GaAs蛍光基板及び前記活性層が内側となるように配置され、前記励起光を反射する一対の励起光反射層を備えた構成としてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、GaAsにNi及びSnを同時にドーピングしたので、所定波長の光により励起されると、Niをアクセプタ及びSnをドナーとしたドナー・アクセプタ・ペア(DAP)の発光により、広域の発光スペクトルの赤外光を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、本発明のNi及びSnがドープされたGaAsからなる蛍光体の発光スペクトルの一例を示すグラフである。図1のグラフは、室温(28℃)にて取得されたものである。
【0020】
図1に示すように、Ni及びSnがドープされたGaAsからなる蛍光体は、約880nm以下の波長の外部光源によって励起し、主として1.1μm〜1.4μmの波長で発光する。尚、蛍光体は、例えば板状、粉末状等にして用いることができるし、他の材料に混入させて用いることもできる。蛍光体は、Ni及びSnがドープされたGaAsを含んでいれば、波長変換作用を得ることができる。ここで、図1のグラフは、波長514.5nmのArイオンレーザを入射したときの発光を測定した数値で表す。図1に示すように、Ni及びSnがドーピングされたGaAs蛍光体は、外部光源に励起されると、1.25μmがピーク波長の波長変換光を発する。
【0021】
ここで、GaAs蛍光体の発光効率を高めるためには、GaAsのバンド端から緩和される電子−正孔対を受け入れるのに十分な不純物準位の状態密度を確保することが望ましい。この点を考慮すると、Ni及びSnの不純物濃度がいずれも、1015/cm以上である態様が好ましく、1016/cm以上である態様がより好ましく、1017/cm以上であると特に好ましい。一方、不純物濃度が高すぎる場合には発光効率が落ちる傾向にあるため、1020/cm以下が好ましい。尚、Snについては、GaAs結晶の劣化を考慮すると、1019/cm以下が好ましい。
【0022】
尚、Ni及びSnの濃度は任意であるが、GaAs蛍光体を効率良く発光させるためには、Niの濃度がSnの濃度よりも小さいことが好ましい。具体的には、Niの濃度が1017/cm〜1018/cmであり、Snの濃度が1018/cm〜1019/cmである態様が好ましく、図1のグラフはかかる濃度にて測定されたグラフである。
【0023】
GaAs半導体のバンドギャップエネルギは1.43eVであり、不純物の添加により、バンド中に様々な準位を作ることができる。そして、GaAsのバンド端の波長が867nmであことから、このバンド端の波長より短い波長により励起することが可能である。
【0024】
ここで、GaAs蛍光体の蛍光作用について、図2を参照して説明する。図2は、GaAs蛍光体へ入射した光が蛍光に変換される様子を模式的に示した説明図である。
【0025】
GaAs蛍光体は、主にGaAs結晶で構成されているため、GaAs結晶のバンドギャップエネルギーEが形成されている。GaAs蛍光体に光を入射させると、GaAs蛍光体が励起され、自由電子a並びに自由正孔bが生じる。このとき、自由電子aのエネルギーは伝導帯E1にあり、自由正孔bのエネルギーは荷電子帯E2にある。
【0026】
しかし、数nsから数μsの短時間のうちに、自由電子aは束縛エネルギーEに抗してドナー準位Nへ緩和し、ドナー電子a’となる。同様に、自由正孔bは束縛エネルギーEに抗してアクセプタ準位Nへと緩和し、アクセプタ正孔b’となる。さらに、エネルギーギャップが緩和されたドナー電子a’とアクセプタ正孔b’が再結合し、その遷移エネルギー(E−E−E)に相当するエネルギーを有する光子cがGaAs蛍光体の外部へ放出される。GaAs蛍光体の外部へ放出される光子cの波長は、遷移エネルギー(E−E−E)に依存する。本実施形態においては、アクセプタ不純物であるNiが2つのアクセプタ準位Nを作り、2つの遷移エネルギーが生じることから、蛍光のピーク波長が2つとなると考えられる。
【0027】
本実施形態のGaAs蛍光体は、SnがドープされたGaAsを得るGaAs作製工程と、作製されたGaAsにNiのドーピングを行うNiドープ工程とSn及びNiがドープされたGaAsに熱処理を施す熱処理工程と、を含んで製造される。
【0028】
GaAs作製工程では、GaAsの作製に液相成長法(LPE(Liquid Phase Epitaxy)法)が用いられる。これにより、安価で簡便に比較的膜厚の大きいSnドープGaAsを得ることができ、Snのドーピング濃度の制御も良好に行うことができる。具体的には、Gaを所定温度に熱して液体とし、As及びSnを加えて溶かした後、成長基板を入れて所定温度(例えば二十数度程度)だけ徐冷することにより、SnがドープされたGaAs結晶が成長基板上に成長する。GaAs中のSnの濃度は、加えるSnの量により調整することができる。このとき、Snは偏析が強い材料であるので、Gaの液体中に十分な量のSnを含有させて、偏析を抑制する必要がある。成長基板は任意であるが例えばGaAs蛍光基板を用いることができる。尚、液相成長法の他に、気相成長法(VPE(Vapor Phase Epitaxy)法)、有機金属気相成長法(OMVPE(OrganoMetallic Vapor Phase Epitaxy)法)、分子線成長法(MBE(Molecular Beam Epitaxy)法)等を用いてSnドープのGaAsを作製してもよい。
【0029】
Niドープ工程では、Niのドーピングにイオン注入法が用いられる。尚、Niについては、Niが極めて高い偏析性を持つため、液相成長法によりGaAs中へのドーピングは極めて困難である。具体的には、所定のチャンバー内にSnドープのGaAsを固定し、GaAsに負の電圧をかけてプラズマ中の正の電荷のNiイオンをGaAsに向かって加速することにより、GaAs中にNiが注入される。GaAs中のNiの濃度及び深さは、注入されるNiイオンの量及び速度により調整することができる。このとき、イオン注入によって、GaAsの結晶は、構造的にダメージを受けており、この状態では良好なDAP発光作用を得ることはできない。尚、イオン注入法以外の方法によりNiを物理的にGaAsに注入してもよいし、熱拡散法によってNiをドーピングするようにしてもよい。
【0030】
熱処理工程では、所定の雰囲気下で、所定の温度条件で、GaAsを熱処理して結晶性の改善を図る。これにより、Niのイオン注入によるGaAsのダメージを取り除き、結晶層の品質を回復することができる。具体的には、所定のチャンバー内にN等の不活性ガスを充填し、チャンバー内に固定されたGaAsをヒータ等により加熱することにより熱処理を行う。熱処理の温度条件としては、熱処理時間は20秒〜1分で、熱処理温度は700℃〜900℃が好ましく、例えば、1分間で昇温し30秒間熱処理を行うことができる。尚、熱処理の時間が短ければ、1000℃で処理ことも可能である。この条件であれば、熱処理時にNi原子が拡散しても、Niを所定の濃度に保ちつつ、イオン注入によるダメージを回復させることができる。以上の工程を経て、Sn及びNiがドープされ、光励起により良好なDAP発光を得ることができるGaAs蛍光体が製造される。
【0031】
図3は、本発明の第1の実施形態の発光素子を示し、(a)は発光素子の概略構成図、(b)は発光素子の動作説明図である。
【0032】
図3(a)に示すように、本実施形態の発光素子100は、LEDであり、Ni及びSnがドープされたGaAs蛍光基板110と、このGaAs蛍光基板110に形成された半導体積層構造120と、を有している。半導体積層構造120は、GaAs蛍光基板の上方に形成される第1導電型の第1層130と、第1層130の上方に設けられる活性層140と、活性層140の上方に設けられる第2導電型の第2層150と、を有している。GaAs蛍光基板110の下方には第1電極160が形成され、第2層150の上方には第2電極170が形成されており、各電極160,170に電圧を印加することにより、活性層140はGaAs蛍光基板110を励起可能な波長領域の光を発する。第1電極160の中心部には、光取り出し用の窓が形成されている。第1層130及び第2層150は、適宜、バッファ層、コンタクト層、電流拡散層を設けた構成としてもよく活性層140は多重量子井戸構造としてもよい。また、第2層150を構成する複数の層のいずれかの層内に中間層を導入してもよい。
【0033】
ここで、Ni及びSnがドープされたGaAs蛍光基板110を用い、活性層がGaAs蛍光基板110を励起する光を発すれば、発光素子100の構成は任意である。半導体積層構造120は、液相成長法、気相成長法、有機金属気相成長法、分子線成長法等を用いてGaAs蛍光基板110上に直接成長されてもよいし、他の成長基板上に成長された後に支持基板としてのGaAs蛍光基板110に接合されたものであってもよい。半導体積層構造120に用いる半導体材料として、例えば、AlINGaN系、AlGaN系、InGaN系、GaN系、ZnSe系、GaP系、InGaP系、GaAsP系、AlGaInP系、AlGaAs系等を用いることができる。第1電極160及び第2電極170は、任意の金属材料を選択することができ、例えばAuが用いられる。
【0034】
AlGaAs系材料を用いる場合、気相エピタキシャル成長によりGaAs蛍光基板110上に良好な結晶品質の半導体積層構造120を成長させることができ、組成として、例えば、活性層140をAl0.1Ga0.8As1.0とし、第1層130及び第2層150をAl0.5Ga0.5As1.0とすると、発光波長は800nmとなる。尚、GaP系、InGaP系、GaAsP系、AlGaInP系、AlGaAs系等の材料であっても、GaAs蛍光基板110上に直接成長させて良好な結晶品質の半導体積層構造120を得ることができる。
【0035】
以上のように構成された発光素子100では、図3(b)に示すように、各電極160,170に電圧を印加することにより、活性層140はGaAs蛍光基板110を励起可能な波長領域の励起光Aを発する。活性層140から発せられた励起光Aは、一部が発光素子100の外部へ放射され、他の一部がGaAs蛍光基板110へ入射する。GaAs蛍光基板110へ励起光Aが入射すると、GaAs蛍光基板110が励起されて赤外光Bが発せられる。このようにして、励起光Aと赤外光Bの混合光が外部へ放射される。赤外光Bは、前述のように、0.9μm〜1.4μmで発光することから、1つの発光素子100により幅広い発光スペクトルを実現することができる。また、励起光Aとして赤外光Bより短い赤外光を用いれば、より広い範囲の赤外領域を1つの発光素子100によりカバーすることができる。従って、発光素子100を光干渉断層撮影装置用光源に用いることにより分解能が向上するし、光学的試料分析装置に用いればLED素子の数を減らして、分析装置の小型化ならびに省電力化を図ることができる。
【0036】
図4は第2の実施形態の発光素子を示し、(a)は発光素子の概略構成図、(b)は発光素子の動作説明図である。
【0037】
図4(a)に示すように、この発光素子200は、第1の実施形態の発光素子100の構成に加え、GaAs蛍光基板110と第1層130の間に赤外光Bを選択的に反射する赤外光反射層としての第1反射層210を備えている。第1反射層210の構成は任意であるが、多層反射膜(DBR膜)とすることが好ましい。第1反射層210の構成は任意であるが、多層反射膜(DBR膜)とすることが好ましい。例えば、半導体積層構造120をAlGaAs系材料とする場合、反射層210をAlAs/Al0.2Ga0.8As1.0の多層膜構造とすることができる。
【0038】
これにより、図4(b)に示すように、GaAs蛍光基板110から発せられる赤外光Bのうち、第1反射層210へ入射するものが当該第1反射層210で反射される。ここで、第1反射層210は、励起光Aに対しては透明であるので、励起光AのGaAs蛍光基板110への入射が阻害されるようなことはない。従って、GaAs蛍光基板110の下方(図4中下側)から赤外光Bを効率良く取り出すことができる。
【0039】
図5は第3の実施形態の発光素子を示し、(a)は発光素子の概略構成図、(b)は発光素子の動作説明図である。
【0040】
図5(a)に示すように、この発光素子300は、第1の実施形態の発光素子100の構成に加え、GaAs蛍光基板110の下面並びに第2層150と第2電極170の間に励起光Aを選択的に反射する励起光反射層としての第2反射層310を備え、2つの第2反射層310により光共振構造をとっている。また、発光素子300は、第2層150の上面に形成された第2反射層310と第2電極170の間に赤外光Bを選択的に反射する第1反射層210を備えている。第2反射層310は、多層反射膜(DBR膜)により形成することができ、例えば、半導体積層構造120をAlGa1−xAsの材料とする場合、AlAs/AlyGa1−yAs(ただし、y>x)の多層膜構造とすることができる。
【0041】
これにより、図5(b)に示すように、活性層140から発せられる励起光Aは、各第2反射層310間で共振し、各第2反射層310間に位置するGaAs蛍光基板110を効率良く励起することができる。さらに、GaAs蛍光基板110から発せられる赤外光Bのうち、第1反射層210へ入射するものが当該第1反射層210で反射される。このとき、各第2反射層310は、赤外光Bに対して透明であるので、赤外光Bの第1反射層210への入射、第1反射層210から外部への出射等が阻害されるようなことはない。従って、GaAs蛍光基板110の下方(図5中下側)から赤外光Bを効率良く取り出すことができる。
【0042】
図6は第4の実施形態の発光素子を示し、(a)は発光素子の概略構成図、(b)は発光素子の動作説明図である。
【0043】
図6(a)に示すように、この発光素子400は、第1の実施形態の発光素子100の構成に加え、GaAs蛍光基板110の下面並びに第2層150と第2電極170の間に励起光Aを選択的に反射する第2反射層310を備え、2つの第2反射層310により光共振構造をとっている。また、発光素子300は、GaAs蛍光基板110の下面に形成された第2反射層310の下面に赤外光Bを選択的に反射する第1反射層210を備えている。第2反射層310は、多層反射膜(DBR膜)により形成することができ、例えば、半導体積層構造120をAlGa1−xAsの材料とする場合、AlAs/AlyGa1−yAs(ただし、y>x)の多層膜構造とすることができる。
【0044】
これにより、図6(b)に示すように、活性層140から発せられる励起光Aは、各第2反射層310間で共振し、各第2反射層310間に位置するGaAs蛍光基板110を効率良く励起することができる。さらに、GaAs蛍光基板110から発せられる赤外光Bのうち、第1反射層210へ入射するものが当該第1反射層210で反射される。このとき、各第2反射層310は、赤外光Bに対して透明であるので、赤外光Bの第1反射層210への入射、第1反射層210から外部への出射等が阻害されるようなことはない。従って、GaAs蛍光基板110の上方(図6中上側)から赤外光Bを効率良く取り出すことができる。
【0045】
図7は第5の実施形態の発光装置を示し、(a)は発光装置の概略構成図、(b)は発光装置の動作説明図である。
【0046】
図7(a)に示すように、この発光装置500は、Ni及びSnがドープされたGaAs蛍光板510と、GaAs蛍光板510を励起する励起光源としてのLED素子520と、を備えている。発光装置500は、GaAs蛍光板510とLED素子520を収容する凹部530aを有する本体530と、凹部530aに一部が露出しLED素子520へ電力を供給する一対のリード540と、凹部530a内に充填される封止部材550と、を備えている。封止部材550は、例えばエポキシ樹脂、シリコーン等の透明樹脂や、ガラス等の透明な無機材料を用いることができる。
【0047】
各リード540は、導電性の金属からなり、凹部530aの底部に露出しており、LED素子520が一方のリード540に搭載されて電気的に接続されている。本実施形態においては、LED素子520と他方のリード540とはワイヤ550により電気的に接続されている。
【0048】
LED素子520の組成、発光波長は任意であるが、GaAs蛍光体510を励起するため、880nm以下の波長の光を発する必要がある。また、励起効率の観点からは、LED素子520のピーク波長は、867nm以下とすることが好ましい。LED素子520の一例として、AlGaAs系材料の活性層を有し、ピーク波長が800nmで、750nm〜850nmの光を発するものが挙げられる。また、LED素子520は、例えば、InGaP系材料の活性層を有し、ピーク波長が630nmで、600nm〜660nmの光を発するものであってもよい。さらに、LED素子520は、例えば、GaN系材料の活性層を有し、ピーク波長が525nmで、500nm〜550nmの光を発するものであってもよい。尚、LED素子520は、フリップチップ型、フェイスアップ型とを問わないし、その個数も任意である。
【0049】
本体530は、絶縁性材料からなり、凹部530aの内面は、開口へ向かって拡がるテーパ状をなしている。また、凹部530aの平面視形状は、任意であり、例えば円形状であっても多角形状であってもよい。また、本体530の外形形状も任意である。
【0050】
GaAs蛍光板510は、凹部530aの内面に設けられ、LED素子520から発せられた光を波長変換する。本実施形態においては、GaAs蛍光板510は、凹部530a側に露出しNi及びSnがドープされたGaAsからなる波長変換層510aと、本体530の内面側に位置しGaAsからなる下地層510bと、を有している。尚、下地層510bの組成は任意である。
【0051】
以上のように構成された発光装置500によれば、図7(b)に示すように、LED素子520から励起光Aが発せられると、励起光Aの一部がGaAs蛍光板510へ入射する。GaAs蛍光板510へ入射した励起光Aは、GaAs蛍光板510の波長変換層510aにて赤外光Bに変換される。これにより、本体530の凹部530aからは励起光Aと赤外光Bの混合光が発せられる。赤外光Bは、前述のように、0.9μm〜1.4μmで発光することから、1つの発光装置500により幅広い発光スペクトルを実現することができる。また、励起光Aとして赤外光Bより短い赤外光を用いれば、より広い範囲の赤外領域を1つの発光装置500によりカバーすることができる。従って、発光装置500を光干渉断層撮影装置用光源に用いることにより分解能が向上するし、光学的試料分析装置に用いればLED素子の数を減らして、分析装置の小型化ならびに省電力化を図ることができる。
【0052】
図8は第6の実施形態の発光装置を示し、(a)は発光装置の概略構成図、(b)は発光装置の動作説明図である。
【0053】
図8(a)に示すように、この発光装置502は、GaAs蛍光板512の構成が第5の実施形態の発光装置500と異なっている。本実施形態のGaAs蛍光板512は、凹部530a側に露出しNi及びSnがドープされたGaAsからなる波長変換層510aと、本体530側に位置しGaAsからなる下地層510bと、波長変換層510aと下地層510bの間に形成され赤外光Bを反射する赤外光反射部としての第1反射層512cと、を有している。第1反射層512cは、赤外光Bを選択的に反射する多層反射膜(DBR膜)としてもよいし、赤外光Bのみならず励起光A等も反射する材料としてもよい。
【0054】
以上のように構成された発光装置502によれば、図8(b)に示すように、LED素子520から励起光Aが発せられると、励起光Aの一部がGaAs蛍光板512へ入射する。GaAs蛍光板512へ入射した励起光Aは、GaAs蛍光板512の波長変換層510aにて赤外光Bに変換される。そして、赤外光Bのうち、第1反射層512cへ向かうものについては第1反射層512cで凹部530a側へ反射される。これにより、赤外光Bを効率良く発光装置502から取り出すことができる。尚、第1反射層512cが赤外光Bに加えて励起光Aを反射する場合は、波長変換層510aにて波長変換されることなく透過した励起光Aを波長変換層510aへ再入射させることができ、波長変換層510aにおける発光効率を向上することができる。
【0055】
図9は第7の実施形態の発光装置を示し、(a)は発光装置の概略構成図、(
b)は発光装置の動作説明図である。
【0056】
図9(a)に示すように、この発光装置504は、GaAs蛍光板514の構成が第5の実施形態の発光装置500と異なっている。本実施形態のGaAs蛍光板514は、凹部530a側に露出しNi及びSnがドープされたGaAsからなる波長変換層510aと、本体530側に位置しGaAsからなる下地層510bと、波長変換層510aと下地層510bの間に形成され励起光を反射する励起光反射部としての第2反射層514dと、を有している。第2反射層514dは、励起光Aを選択的に反射する多層反射膜(DBR膜)としてもよいし、励起光Aのみならず赤外光B等も反射する材料としてもよい。
【0057】
以上のように構成された発光装置504によれば、図9(b)に示すように、LED素子520から励起光Aが発せられると、励起光Aの一部がGaAs蛍光板514へ入射する。GaAs蛍光板514へ入射した励起光Aは、GaAs蛍光板514の波長変換層510aにて赤外光Bに変換される。そして、励起光Aのうち、波長変換層510aにて変換されなかったものについては、第2反射層514dにより波長変換層510aへ再入射させることができ、波長変換層510aにおける発光効率を向上することができる。
【0058】
図10は第8の実施形態の発光装置を示し、(a)は発光装置の概略構成図、(b)は発光装置の動作説明図である。
【0059】
図10(a)に示すように、この発光装置600は、GaAs蛍光板510を本体530の内面でなく凹部530aの開口530bを塞ぐように設けている点が主に第5の実施形態の発光装置500と異なっている。発光装置600は、本体530の開口530bに段状部が形成されており、この段状部に板状のGaAs蛍光板510が載置されている。GaAs蛍光板510は、波長変換層510aが凹部530aの内部を指向し、下地層510bが装置外部側となるよう配置される。尚、凹部530a内に封止部材550は充填されておらず、凹部530a内は空気等の気体によって満たされている。
【0060】
以上のように構成された発光装置600によれば、図10(b)に示すように、LED素子520から励起光Aが発せられると、励起光Aの大部分がGaAs蛍光板510へ直接的に、又は本体530の内面で反射した後に間接的に入射する。GaAs蛍光板510へ入射した励起光Aは、波長変換層510aにて赤外光Bに変換された後、装置外部へ放射される。ここで、GaAs蛍光板510における波長変換層510aを比較的厚くする等し、励起光Aの全てが波長変換されるようにすれば、赤外光Bのみを外部へ放出することができる。また、GaAs蛍光板510における波長変換層510aを比較的薄くする等し、励起光Aの全てが波長変換されないようにすれば、励起光Aと赤外光Bの混合光を装置外部へ放射することができる。
【0061】
図11は第9の実施形態の発光装置を示し、(a)は発光装置の概略構成図、(b)は発光装置の動作説明図である。
【0062】
図11(a)に示すように、この発光装置602は、GaAs蛍光板612の構成が第8の実施形態の発光装置600と異なっている。本実施形態のGaAs蛍光板612は、凹部530a側に露出し赤外光Bを選択的に反射する第1反射層512cと、第1反射層512cに隣接して形成されNi及びSnがドープされたGaAsからなる波長変換層510aと、装置外部側に位置しGaAsからなる下地層510bと、を有している。第1反射層512cは、多層反射膜(DBR膜)とすることが好適である。
【0063】
以上のように構成された発光装置602によれば、図11(b)に示すように、LED素子520から励起光Aが発せられると、励起光Aの大部分がGaAs蛍光板612へ直接的に、又は本体530の内面で反射した後に間接的に入射する。GaAs蛍光板612へ入射した励起光Aは、第1反射層512cを透過して波長変換層510aへ入射し、波長変換層510aにて赤外光Bに変換される。そして、赤外光Bのうち、凹部530a側へ向かうものについては第1反射層512cで装置外部側へ反射される。これにより、赤外光Bを効率良く発光装置602から取り出すことができる。
【0064】
図12は第10の実施形態の発光装置を示し、(a)は発光装置の概略構成図、(b)は発光装置の動作説明図である。
【0065】
図12(a)に示すように、この発光装置604は、GaAs蛍光板614の構成が第8の実施形態の発光装置600と異なっている。本実施形態のGaAs蛍光板614は、凹部530a側に露出しNi及びSnがドープされたGaAsからなる波長変換層510aと、装置外部側に位置し励起光Aを選択的に反射する第2反射層514dと、波長変換層510aと第2反射層514dの間に位置しGaAsからなる下地層510bと、を有している。第2反射層514dは、多層反射膜(DBR膜)とすることが好適である。
【0066】
以上のように構成された発光装置604によれば、図12(b)に示すように、LED素子520から励起光Aが発せられると、励起光Aの大部分がGaAs蛍光板614へ直接的に、又は本体530の内面で反射した後に間接的に入射する。GaAs蛍光板614へ入射した励起光Aは、波長変換層510aにて赤外光Bに変換される。励起光Aのうち波長変換層510aを透過したものについては、下地層510bを透過した後、第2反射層514dで凹部530a側に反射され、波長変換層510aへ再入射する。これにより、励起光Aが装置外部へ出射することはなく、赤外光Bへの波長変換を効率良く行って、赤外光Bのみを発光装置604から取り出すことができる。
【0067】
図13は第11の実施形態の発光装置を示し、(a)は発光装置の概略構成図、(b)は発光装置の動作説明図である。
【0068】
図13(a)に示すように、この発光装置606は、GaAs蛍光板616の構成が第8の実施形態の発光装置600と異なっている。本実施形態のGaAs蛍光板616は、凹部530a側に露出し赤外光Bを選択的に反射する第1反射層512cと、装置外部側に位置し励起光Aを選択的に反射する第2反射層514dと、第1反射層512cと第2反射層514dの間に位置しNi及びSnがドープされたGaAsからなる波長変換層510aと、を有している。尚、GaAsからなる下地層510bは、波長変換層510aと第2反射層514dの間に形成されている。第1反射層512c及び第2反射層514dは、多層反射膜(DBR膜)とすることが好適である。
【0069】
以上のように構成された発光装置606によれば、図13(b)に示すように、LED素子520から励起光Aが発せられると、励起光Aの大部分がGaAs蛍光板616へ直接的に、又は本体530の内面で反射した後に間接的に入射する。GaAs蛍光板616へ入射した励起光Aは、第1反射層512cを透過して波長変換層510aにて赤外光Bに変換される。励起光Aのうち波長変換層510aを透過したものについては、下地層510bを透過した後、第2反射層514dで凹部530a側に反射され、波長変換層510aへ再入射する。これにより、励起光Aが装置外部へ出射することはなく、赤外光Bへの波長変換を効率良く行うことができる。そして、赤外光Bのうち、凹部530a側へ向かうものについては第1反射層512cで装置外部側へ反射される。これにより、赤外光Bを効率良く発光装置606から取り出すことができる。
【実施例】
【0070】
[Snドーピング]
Ni及びSnがドープされたGaAs蛍光体を作製するにあたり、まず、液相成長法を用いてSnがドープされた複数のGaAsの試料体を作製した。成長基板としてはGaAs蛍光基板を使用した。Snは偏析が強い材料であるので、GaAsにSnをドーピングするためにはメルト中に大量のSnを含有させる必要がある。実験条件を表1に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
試料番号1から3の試料体にて、成長層の表面平坦性を調べたところ、いずれも良好な結果が得られた。これらの試料体の中では試料番号3の試料体が最も平坦性が優れていた。また、これらの試料体のホール測定を行って、試料体のキャリア濃度を調べた結果を図14に示す。
【0073】
図14は、横軸をメルト中のSnの割合とし、縦軸を電子の濃度としたグラフである。
図14に示すように、直線性の良い良好なドーピング曲線が得られた。SnはIV族原子であるためGaAs結晶中では両性不純物として振る舞うが、図14に示すように良好なn型のドーピング特性が得られた。
【0074】
[Niドーピング]
次に、GaAs蛍光基板上の(001)面に、SnがドープされたGaAs層を成長させて、Niのドーピングを行った。尚、GaAs層は、厚さが20μmで、Snの濃度を2×1018/cmとした。このSnドープGaAs層に、イオン注入法によりNiを打ち込んだ。具体的に、イオン注入量を3×1014/cmとし、加速電圧を1300keVとし、注入角を7°とし、電流を5nA/cmとしてNiを打ち込んだ。図15に、熱処理前の試料体の二次イオン質量分析(SIMS)によるGaAs結晶中のNiの濃度分布を示す。図15に示すように、表面から約1μm程度の深さに5×1018/cm程度のピークの濃度を持つNiが打ち込まれた。尚、この状態では、イオン注入によるGaAs結晶のダメージが大きく、欠陥等が大量に発生して結晶が劣化しているものと考えられる。そこで、Niを活性化させ、良好なDAP発光を得るために熱処理を行った。
【0075】
[熱処理]
イオン注入を行った試料体の結晶性を改善するために、窒素雰囲気にて、昇温時間1分、熱処理時間30秒の熱処理を行った。熱処理温度は、750℃、850℃及び950℃の3条件で行った。図16から図18にこれらの温度で熱処理をおこなった試料体のNi濃度分布に関するSIMSの測定結果を示す。図16から図18に示すように、熱処理により試料体の結晶性は大きく改善されるが、同時にNiも熱拡散しNiの濃度分布が大きく変化した。尚、図16から図18の深さ0.0μm近傍でNiの濃度が高くなっているのは表面吸着物の影響である。
【0076】
図16は、熱処理条件が750℃の試料体の二次イオン質量分析(SIMS)によるGaAs結晶中のNiの濃度分布を示す。図16に示すように、750℃で熱処理した試料体では、Niの濃度のピーク値は、5×1017/cm程度であり、この濃度が1.2μm程度の深さまで保たれる分布となった。
【0077】
図17は、熱処理条件が850℃の試料体の二次イオン質量分析(SIMS)によるGaAs結晶中のNiの濃度分布を示す。図17に示すように、850℃で熱処理した試料体では、Niの濃度のピーク値は、4×1017/cm程度であり、濃度が1×1016/cm以下になる位置が表面から1.7μm程度であった。
【0078】
図18は、熱処理条件が950℃の試料体の二次イオン質量分析(SIMS)によるGaAs結晶中のNiの濃度分布を示す。図18に示すように、950℃で熱処理した試料体では、Niの濃度のピーク値は、1×1017/cm程度にまで減少し、濃度が1×1016/cm以下になる位置も表面から0.7μm程度と小さくなった。
【0079】
[光学測定]
熱処理をおこなった各試料体の光学的特性を、フォトルミネッセンス測定により評価した。励起光源としては波長514.5nmのArイオンレーザを用い、励起強度300mWで測定を行った。尚、各試料体は、液体窒素温度(77K)に冷却して測定を行った。図19にフォトルミネッセンス測定による各試料体の発光スペクトルを示す。
【0080】
図19に示すように、750℃と850℃の熱処理を行った試料体で、ピークA及びピークBの2つのピークがあらわれた。ピークAは1.0μm付近に中心波長を持ち、ピークBは1.2μm付近に中心波長を持っている。また、950℃の熱処理を行った試料体では、0.95μm付近に中心波長を持つピークCがあらわれた。これは以下に説明する理由によるものと考えられる。
【0081】
図20には、GaAs結晶中における試料体のDAP発光の説明図である。
図20に示すように、NiはGaAs結晶中にて、NA1とNA2の2つのアクセプタ準位を作るものと考えられる。これらが、Snのドナー準位NとDAP発光を形成し、1.0μmと1.2μmの2つのピーク波長を有して発光したものと考えられる。また、Snはドナー準位Nのみでなく、アクセプタ準位NA3も形成するので、SnをドナーとするとともにSnをアクセプタとしてDAP発光を形成すると、0.95μmのピーク波長を有して発光するものと考えられる。そして、DAP発光の捕獲断面積は、Sn−NiのDAP発光の方が、Sn−SnのDAP発光より大きいので、両方が混在するときは、Sn−NiのDAP発光が優勢となるためと考えられる。尚、図20に示すように、熱処理を行っていない試料体では、殆ど発光は観測されず、熱処理が施されない状態では、結晶性が悪いことがうかがえる。
【0082】
このように、GaAs結晶中にSnとNiを同時にドーピングすることにより、1.0μm及び1.2μmをピーク波長として、0.9μm〜1.4μmのDAP発光を得ることができた。また、室温においても、図1に示すように、1.25μmをピーク波長として、1.1μ〜1.4μmのDAP発光を得ることができている。図1のグラフにおいて、ピークAが無くなっているのは、この発光に関与するアクセプタ準位が熱的に励起され、この準位のホールが減少しているからである。また、図1のグラフにおいて、ピークBが長波長にずれているのは、母体結晶のバンドギャップの温度依存性によるものである。すなわち、温度が上昇すると、GaAsのバンドギャップが小さくなり、これに伴って、DAP発光も小さいエネルギーとなって長波長側へシフトするからである。
【0083】
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。例えば、発光素子としてLED素子でなくLD素子等の他の素子を用いることができるし、発光装置としてトップビュータイプでなく砲弾型等の他の型を用いることができる。さらに、発光装置に内側に発光素子及びGaAs蛍光板の波長変換層が位置するように一対の励起光反射部を設けてもよい。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明のNi及びSnがドープされたGaAsからなる蛍光体の発光スペクトルの一例を示すグラフである。
【図2】GaAs蛍光体へ入射した光が蛍光に変換される様子を模式的に示した説明図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の発光素子を示し、(a)は発光素子の概略構成図、(b)は発光素子の動作説明図である。
【図4】本発明の第2の実施形態の発光素子を示し、(a)は発光素子の概略構成図、(b)は発光素子の動作説明図である。
【図5】本発明の第3の実施形態の発光素子を示し、(a)は発光素子の概略構成図、(b)は発光素子の動作説明図である。
【図6】本発明の第4の実施形態の発光素子を示し、(a)は発光素子の概略構成図、(b)は発光素子の動作説明図である。
【図7】本発明の第5の実施形態の発光装置を示し、(a)は発光装置の概略構成図、(b)は発光装置の動作説明図である。
【図8】本発明の第6の実施形態の発光装置を示し、(a)は発光装置の概略構成図、(b)は発光装置の動作説明図である。
【図9】本発明の第7の実施形態の発光装置を示し、(a)は発光装置の概略構成図、(b)は発光装置の動作説明図である。
【図10】本発明の第8の実施形態の発光装置を示し、(a)は発光装置の概略構成図、(b)は発光装置の動作説明図である。
【図11】本発明の第9の実施形態の発光装置を示し、(a)は発光装置の概略構成図、(b)は発光装置の動作説明図である。
【図12】本発明の第10の実施形態の発光装置を示し、(a)は発光装置の概略構成図、(b)は発光装置の動作説明図である。
【図13】本発明の第11の実施形態の発光装置を示し、(a)は発光装置の概略構成図、(b)は発光装置の動作説明図である。
【図14】横軸をメルト中のSnの割合とし、縦軸を電子の濃度としたグラフである。
【図15】熱処理前の試料体の二次イオン質量分析(SIMS)によるGaAs結晶中のNiの濃度分布を示すグラフである。
【図16】熱処理条件が750℃の試料体の二次イオン質量分析(SIMS)によるGaAs結晶中のNiの濃度分布を示すグラフである。
【図17】熱処理条件が850℃の試料体の二次イオン質量分析(SIMS)によるGaAs結晶中のNiの濃度分布を示すグラフである。
【図18】熱処理条件が950℃の試料体の二次イオン質量分析(SIMS)によるGaAs結晶中のNiの濃度分布を示すグラフである。
【図19】フォトルミネッセンス測定による各試料体の発光スペクトルを示すグラフである。
【図20】GaAs結晶中における試料体のDAP発光の説明図である。
【符号の説明】
【0085】
100 発光素子
110 GaAs蛍光基板
120 半導体積層構造
130 第1層
140 活性層
150 第2層
160 第1電極
170 第2電極
200 発光素子
210 第1反射層
300 発光素子
310 第2反射層
400 発光素子
500 発光装置
502 発光装置
510 GaAs蛍光板
510a 波長変換層
510b 下地層
512 GaAs蛍光板
512c 第1反射層
514d 第2反射層
520 LED素子
530 本体
530a 凹部
530b 開口
540 リード
550 封止材料
600 発光装置
602 発光装置
604 発光装置
606 発光装置
612 GaAs蛍光板
614 GaAs蛍光板
616 GaAs蛍光板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ni及びSnがドーピングされ、光励起によりドナー・アクセプタ・ペアによって発光するGaAsを含む蛍光体。
【請求項2】
Niの濃度が1017/cm〜1018/cmであり、
Snの濃度が1018/cm〜1019/cmである請求項1に記載の蛍光体。
【請求項3】
請求項2に記載の蛍光体の製造方法であって、
Niのドーピングをイオン注入により行う蛍光体の製造方法。
【請求項4】
Niをドーピングした後、熱処理を行う請求項3に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項5】
液相成長法によりSnがドーピングされたGaAsを成長した後、
Niをドーピングする請求項4に記載の蛍光体の製造方法。
【請求項6】
請求項1または2に記載の蛍光体からなる蛍光板と、
前記蛍光体を励起する励起光を発する発光素子と、を備えた発光装置。
【請求項7】
前記蛍光板に設けられ、前記発光素子により励起されると前記蛍光体から発せられる赤外光を所定方向へ反射する赤外光反射部を備えた請求項6に記載の発光装置。
【請求項8】
前記蛍光板に設けられ、前記GaAsを透過した前記励起光を前記GaAs側へ反射する励起光反射部を備えた請求項6または7に記載の発光装置。
【請求項9】
前記蛍光板の前記蛍光体及び前記発光素子が内側となるように配置され、前記励起光を反射する一対の励起光反射部を備えた請求項6または7に記載の発光装置。
【請求項10】
Ni及びSnがドーピングされたGaAs蛍光基板と、
前記GaAs蛍光基板上に形成され、前記GaAs蛍光基板を励起する励起光を発する活性層を有する半導体積層構造と、を備えた発光素子。
【請求項11】
前記励起光により励起されると前記GaAs蛍光基板から発せられる赤外光を反射する赤外光反射層を備えた請求項10に記載の発光素子。
【請求項12】
前記励起光を前記GaAs蛍光基板側へ反射する励起光反射層を備えた請求項10または11に記載の発光素子。
【請求項13】
前記GaAs蛍光基板及び前記活性層が内側となるように配置され、前記励起光を反射する一対の励起光反射層を備えた請求項10または11に記載の発光素子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2010−98194(P2010−98194A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269190(P2008−269190)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、独立行政法人科学技術 振興機構、革新技術開発研究事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(599002043)学校法人 名城大学 (142)
【出願人】(501397920)旭光電機株式会社 (45)
【Fターム(参考)】