説明

融雪装置

【課題】 構成部材が少なくて済み、設置が容易で、設置後のメンテナンスが不要であり、しかもエネルギー効率がよく、消費電力が少なくて済み、橋梁等の建造物に積もった雪を溶かすのに適した融雪装置を提供する。
【解決手段】 建造物である橋梁の一構成部材である上弦材2の上面板20自体を、誘導電流が発生する導電性材料により形成し、かつその下方に、上面板20に誘導電流を発生させて誘導加熱させるコイル21を近接させて配設し、コイル21を、電源供給手段に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁等の建造物用の融雪装置に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導加熱を利用して、舗道や建物の敷地に積もった雪を溶かすようにした融雪装置は公知である(例えば特許文献1〜3参照)。
従来のこの種の融雪装置は、支持板上に、平型巻線としたコイルと、導電性の発熱板とを重ねて載置し、上記コイルに、電源供給手段より供給された高周波電流を通電することにより、発熱板に誘導電流を生起させ、その誘導電流によって発熱板を加熱(誘導加熱)し、その熱によって、発熱板上に積もった雪を溶かすようにしている。
【特許文献1】特開2001−20210号公報
【特許文献2】特開2002−227159号公報
【特許文献3】特開2002−235302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述のような装置は、いずれも地面への降雪を対象としており、建造物、特に橋梁等に積もった雪を対象としたものではない。
橋梁等の場合、融雪したい積雪部分が、上弦材や支材等のように、高所にあって、近づくのが危険な部分が多く、そのため設置後のメンテナンスが不要であること、設置が容易で、構成部材が少ないこと、エネルギー効率がよく、消費電力が少なくて済むこと等が要求される。
【0004】
本発明は、このような要望に鑑み、構成部材が少なくて済み、設置が容易で、設置後のメンテナンスが不要であり、しかもエネルギー効率がよく、消費電力が少なくて済み、橋梁等の建造物に積もった雪を溶かすのに適した融雪装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によると、上記課題は次のようにして解決される。
(1) 建造物の一部の上面に位置する建造物構成部材自体を、誘導電流が発生する導電性材料により形成し、かつその下方に、前記建造物構成部材に誘導電流を発生させて誘導加熱させるコイルを近接させて配設し、前記コイルを、電源供給手段に接続する。
【0006】
(2) 建造物の一部の上面に位置する建造物構成部材上に、誘導電流が発生する導電性材料よりなる発熱板と、その下方に近接させて配設され、前記発熱板に誘導電流を発生させて誘導加熱させるコイルと、該コイルに電流を供給する電源供給手段とを備える誘導加熱装置における前記発熱板とコイルとを配設する。
【0007】
(3) 上記(2)項において、コイルを建造物構成部材に近接させて平行に配設し、前記建造物構成部材を、コイルに通電することにより生じる磁力線を導く平板状のコアとして用いる。
【0008】
(4) 上記(1)または(2)項において、コイルを平型巻線とし、かつコイルの下方に、コイルに通電することにより生じる磁力線を導く平板状のコアを、コイルと平行に近接させて配設する。
【0009】
(5) 上記(3)または(4)項において、コアを、電磁鋼板によりする。
【0010】
(6) 上記(1)〜(5)項のいずれかにおいて、建造物を橋梁とする。
【0011】
(7) 上記(6)項において、建造物構成部材を、橋梁の上弦材とする。
【0012】
(8) 上記(6)項において、建造物構成部材を、橋梁の支材とする。
【0013】
(9) 上記(1)項、上記(1)項に従属する(4)項、または上記(1)項に従属する(4)項にさらに従属する(5)項において、建造物を橋梁とし、かつ建造物構成部材を円筒形の支材とし、その上壁部分の下方に、平型巻線としたコイルを、弦をなすように配設する。
【0014】
(10) 上記(1)項、上記(1)項に従属する(4)項、または上記(1)項に従属する(4)項にさらに従属する(5)項において、建造物を橋梁とし、かつ建造物構成部材を円筒形の支材とし、その上壁部分の下面に、円弧状とした平型巻線を、内接するように配設する。
【0015】
(11) 上記(1)〜(5)項のいずれかにおいて、建造物を歩道橋とし、かつ建造物構成部材を、前記歩道橋の階段または斜路部の踏み板とする。
【0016】
(12) 上記(1)〜(5)項のいずれかにおいて、建造物を家屋とし、かつ建造物構成部材を、前記家屋の屋根の表面材とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、次のような効果を奏することができる。
請求項1記載の発明によると、建造物構成部材自体を、誘導加熱装置における発熱板として使用するようにしているので、構成部材が少なくて済み、しかも、実質的にコイルのみを建造物構成部材の下方に配設して、それに、適所に設けた電源供給手段からの配線を接続するだけでよいので、設置が容易であり、さらに、設置後のメンテナンスが不要であるので、橋梁等の建造物に積もった雪や凍結部を溶かすのに最適である。
また、建造物構成部材自体を発熱体として発熱させるので、その上に積もった雪を効果的に溶かすことができるだけでなく、着雪、着氷、凍結、氷柱の形成等を確実に防止することができる。なお、以下の説明で、「雪を溶かす」または「融雪」というときは、着雪、着氷、凍結、氷柱の形成等の防止をも含むものとする。
【0018】
請求項2記載の発明によると、発熱板とコイルとを組み合わせたものをセットとしておき、それを建造物構成部材上に載置して、適宜止着し、コイルに、適所に設けた電源供給手段からの配線を接続するだけでよいので、設置が容易であり、さらに、設置後のメンテナンスが不要であるので、橋梁等の建造物に積もった雪を溶かすのに最適である。
【0019】
請求項3および4記載の発明によると、コイルに通電することにより生じる磁力線が平板状のコアに導かれることにより、磁力線が拡散するのが防止され、エネルギー効率がよくなるので、消費電力が少なくて済む。
【0020】
請求項5記載の発明によると、コアを、電磁鋼板により形成したことにより、磁力線が強力にコアに導かれ、エネルギー効率がよくなり、消費電力を低減することができる。
【0021】
請求項6記載の発明によると、橋梁の一部の構成部材を誘導加熱装置における発熱板として使用することにより、従来困難とされていた橋梁の融雪を実現することができとともに、その融雪を効果的に行うことができる。
【0022】
請求項7および8記載の発明によると、橋梁の上弦材や支材を誘導加熱装置における発熱板として使用することにより、橋梁の上部にある近づくのに危険な部分の積雪を、広範囲にわたって効率よく溶かすことができる。
【0023】
請求項9および10記載の発明によると、円筒形の支材にも、誘導加熱装置を支障なく組み込むことができ、その上部に積もった雪を効果的に溶かすことができる。
【0024】
請求項11記載の発明によると、歩行者の転倒や転落の危険性のある歩道橋の階段または斜路部の踏み板の積雪や凍結を効果的に防止することができる。
【0025】
請求項12記載の発明によると、家屋の屋根の雪下ろしを、人手に頼ることなく効果的に行うことができるとともに、積雪の防止を図ることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を、添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の融雪装置を設けようとする建造物の一つである橋梁の一例を示す外観斜視図である。なお、路面の長手方向を前後方向とする。
この橋梁(1)は、側面視が上方に向かって凸形の円弧状をなす左右1対の上弦材(アーチリブ)(2)(2)を、左右方向を向く複数の支材(3)と、前後1対の橋門構(4)(4)とにより互いに連結し、左右の上弦材(2)(2)から垂下する複数の吊材(5)をもって、前後方向を向く左右1対の補剛桁(6)(6)を吊支し、左右の補剛桁(6)(6)間に、前後方向を向く複数の縦桁(7)と、左右方向を向く複数の床桁(8)とを格子状に構築して、その上に路面(9)を形成し、左右の補剛桁(6)(6)の前後の端部に上弦材(2)(2)の前後の端部を結合し、かつそれらの下端を支承(10)により支持するようにしたものよりなっている。
上弦材(2)と支材(3)または橋門構(4)との間、および補剛桁(6)と床桁(8)との間には、ブレースの作用をする上横構(11)および下横構(12)がそれぞれ設けられている。
【0027】
この橋梁(1)は、路面(9)が橋桁の下部にあるので下路橋であり、また、上弦材(2)が、人が入れる程度の角筒状をなすローゼ桁となっているので、ローゼ橋でもある。因みに、上弦材(2)の断面形状が小さく、人が入れないものは、ランガー桁である。
【0028】
図2は、上記の上弦材(2)に、本発明の融雪装置の第1の実施形態を装着した縦断正面図、図3は、その左上部を拡大して示す拡大縦断正面図である。
この例では、橋梁(1)の構成部材である上弦材(2)の上面板(20)を、誘導電流が発生する導電性材料、具体的には、例えばG3101、G3106、G3114(JIS)等の鋼板により形成して発熱体または発熱板とし、かつその下方に、上面板(20)に誘導電流を発生させて誘導加熱させる左右方向に3列としたコイル(21)を近接させて配設し、この各コイル(14)を、配線(22)を介して、高周波電流を供給する電源供給手段(23)にそれぞれ接続してある。
【0029】
具体的には、上面板(20)の下面に、前後方向を向く左右1対の垂下片(24)(24)を設けることにより、上弦材(2)の左右の側板(25)(25)間における上面板(20)の下面を三等分し、そのそれぞれの下方に、図4に示すように、耐熱電線を平面視長円形をなすように平らに巻回して平形巻線としたコイル(14)を、ゴムまたは軟質もしくは硬質合成樹脂材料よりなる絶縁体(26)により薄板状に被包してなるコイルモジュール(27)を、その上面が、直接、または押工材(図示略)を介して間接的に上面板(20)の下面に密接するようにして配設してある。
【0030】
各コイルモジュール(27)は、上弦材(2)の内部の仕切り板(図示略)等に各端部が固着された前後方向を向く左右1対のチャンネル材(28)(28)上に支持され、かつねじ(29)をもって止着された水平の支持板(30)上に、例えば珪素鋼板等の電磁鋼板からなる平板状のコア(31)を介して載置され、コア(31)を挟んで支持板(30)にねじ(32)をもって締着されている。
【0031】
コア(31)は、コイル(14)に通電することにより、コイル(14)と直角方向(上下方向)に生じる磁力線を、コア(31)の板面に沿う左右方向に導き(その意味ではヨークとして作用している)、発熱体である上面板(20)と協働して、循環距離の短い磁力線の閉ループを形成し、磁力線が拡散するのを防止することができる。それによって、上面板(20)側の磁束密度が高まり、上面板(20)の誘導加熱効率が高まる。
コア(31)の両端末は、上面板(20)と同材質とした垂下片(24)または側板(25)に接触させるか、または近接させるのがよい。
【0032】
この例では、上面板(20)の下方に、3列のコイルモジュール(27)を配設してあるが、中央のコイルモジュール(27)を省略して実施したり、上面板(20)の左右幅に合わせて、コイルモジュール(27)の列数を適宜増減して実施するのがよい。
【0033】
コイルモジュール(27)と、コア(31)と、上面板(20)により形成した発熱板と、電源供給手段(23)とによって、コイル(14)に通電することにより、上面板(20)に誘導電流を生じさせて、上面板(20)を誘導加熱するようにした誘導加熱装置(33)が形成されている。
また、図2に示すように、この誘導加熱装置(33)と、電源供給手段(23)を制御する制御装置(34)とにより、上面板(20)上に積もった雪(35)を溶かしたり、凍結部分を解かしたりする融雪装置(36)が形成されている。
【0034】
電源供給手段(23)は、例えば50ヘルツ〜2キロヘルツの周波数の交流電流を発生しうるインバータ装置付のものとするのがよい。積雪量や外気温等に応じて、この周波数を変化させることにより、コイル(21)に投入する電力を変化させることができる。また、コイル(21)に印加する電圧を変化させることによっても、コイル(21)に投入する電力を変化させることができる。
【0035】
制御装置(34)は、降雪または積雪を検出する降雪センサや、外気温センサ(いずれも図示略)等に接続され、それらの検出情報に基づいて、電源供給手段(23)を自動的に、および手動操作によっても操作しうるようにしたもので、例えば、降雪またはその予兆を検出した時点で、そのときの外気温度に応じて、周波数および電圧を、外気温度が低いほど高くするような関係で調節して、各コイル(21)に通電させる。
【0036】
それによって、各コイル(21)に適量の電力(主に高周波電流)が供給され、発熱板である上面板(20)に誘導電流を発生させ、上面板(20)を直接誘導加熱して、その上に積もった、または積もろうとする雪を溶かしたり、凍結部分を解凍したりすることができる。
【0037】
図2〜図4に示す第1の実施形態は、上弦材(2)が、内部に人が入れるローゼ桁である場合に適したものであるが、上弦材(2)が、内部が密閉されて、内部に人が入れないランガー桁のような場合には、図5に示すような本発明の融雪装置の第2の実施形態を用いるのがよい。
なお、図5において、第1の実施形態におけるのと同様の部材には、同一の符号を付して図示し、それらについての詳細な説明は省略する(第3以後の実施形態においても同様とする)。
【0038】
この例では、上弦材(2)の上面板(20)上に、合成樹脂製発泡体よりなる断熱材(40)、コア(31)、コイル(21)を含むコイルモジュール(27)、発熱板(41)を順次積み重ね、発熱板(41)の両側部下面より垂下する脚片(42)(42)の下端部を、ねじ(43)をもって上弦材(2)の両側板(25)に固着してある。
【0039】
発熱板(41)の材質は、コイル(21)に通電することにより、誘導電流が発生し、誘導加熱されるようなものであれば、どのようなものでもよいが、上述した上弦材(2)の上面板(20)と同一材質とすることもできる。
【0040】
両脚片(42)(42)も発熱板(41)と同一材質とし、かつコア(31)の両端を両脚片(42)(42)に接触させるか、または近接させると、循環距離の短い磁力線の閉ループを形成し、磁力線が拡散するのを防止することができる。
【0041】
この例では、断熱材(40)と、コア(31)と、コイル(21)を含むコイルモジュール(27)と、発熱板(41)と、脚片(42)(42)等と、図示を省略した電源供給手段とにより、誘導加熱装置(45)が形成され、また、これと、図示を省略した制御装置とにより、融雪装置(46)が形成され、第1の実施形態とほぼ同様の作用及び効果を奏することができる。
相違点としては、第2の実施形態においては、発熱板(41)が誘電加熱されて、その上に積もった雪等を溶かし、上弦材(2)の上面板(20)は何ら加熱されることはなく、誘導加熱装置(45)は、断熱材(40)を介して、上面板(20)から断熱されている点だけである。
【0042】
図6は、本発明の融雪装置の第3の実施形態を示す。
この例では、上弦材(2)の上面板(20)を、コアとして用いるのに適した材質のもの、例えば珪素鋼板等の電磁鋼板により形成し、それをコアとして用いて、その上に、コイル(21)を含むコイルモジュール(27)と、発熱板(41)とを互いに密接するように積み重ね、発熱板(41)の両側部下面より垂下する脚片(42)(42)の下端部を、ねじ(43)をもって上弦材(2)の両側板(25)に固着している。
【0043】
この例では、図5に示す第2の実施形態のものより、断熱材(40)とコア(31)とを省略して実施できるので、構造を簡素化できる利点がある。
【0044】
図7は、図1に示す橋梁(1)の支材(3)に、本発明の融雪装置の第4の実施形態と第5の実施形態とを装着した例を示す。
この支材(3)は、図7において水平板状をなす上下部フランジ(50)(51)の中央部同士を、上下方向を向く基片(52)をもって結合し、かつ基片(52)の中間部から両側方にガセットプレート(53)(53)が張り出すようにした、ほぼ王の字状の断面形状をなしている。
【0045】
上部フランジ(50)には、第1の実施形態におけるのと同様の原理の第4の実施形態の融雪装置(36)が、また各ガセットプレート(53)には、第2の実施形態におけるのと同様の原理の第5の実施形態の融雪装置(45)がそれぞれ装着されている。
【0046】
すなわち、上部フランジ(50)は、第1の実施形態における上弦材(2)の上面板(20)と同様に、誘導電流が発生する導電性材料により形成され、その下面に、コイル(21)を含むコイルモジュール(27)とコア(31)とが、上下に重ねて、かつ基片(52)に止着したブラケット(54)と、上部フランジ(50)の側端部に係止した締付金具(55)とをもって支持されている。
【0047】
上部フランジ(50)により形成された発熱板と、コイル(21)を含むコイルモジュール(27)と、コア(31)と、図示を省略した電源供給手段とにより、第1の実施形態におけるのと同様の誘導加熱装置(33)が形成されている。
【0048】
また、各ガセットプレート(53)上には、図5に示したのと同様の断熱材(40)、コア(31)、コイル(21)を含むコイルモジュール(27)、発熱板(41)が順次積み重ねられ、それらと図示を省略した電源供給手段とにより、第2の実施形態におけるのと同様の誘導加熱装置(44)が形成されている。
この誘導加熱装置(44)は、発熱板(41)に固着した取付片(56)を、基片(52)にねじ(57)をもって固着することにより、支材(3)に固定されている。
【0049】
したがって、支材(3)における上部フランジ(50)上の雪は、融雪装置(36)により、また各ガセットプレート(53)上に積もろうとする雪は、融雪装置(45)によりそれぞれ効果的に溶かすことができる。
(58)は上横構、(59)は、その各端部をガセットプレート(53)に固着するためのボルトナットである。
【0050】
なお、上部フランジ(50)上に融雪装置(45)を設けたり、各ガセットプレート(53)の下方に融雪装置(36)を取り付けたり、または、下部フランジ(51)にも、融雪装置(36)または融雪装置(45)を装着したりしてもよい。
【0051】
図7に示した支材(3)は、橋梁(1)における左右の上弦材(2)(2)の頂部同士を連結するクラウン部用のものであるが、そこから前後に離れた左右の上弦材(2)(2)の部分同士を連結する格点部用の支材(3)は、頂部から離れるほど全体が前後方向(図7の図面上の左右方向)に傾斜する。そのような格点部用の支材(3)においては、下方に位置する方のガセットプレート(53)への融雪装置(45)等の装着は省略してもよい。
【0052】
図8および図9は、円筒形とした支材(3)に、本発明の融雪装置の第6の実施形態を装着した例を示す。
この例では、円筒形の支材(3)の上壁部分の下方に、平型巻線としたコイル(21)を含む平板状の複数のコイルモジュール(27)とコア(31)とを、上下に重ねて、かつそれぞれが円筒形の支材(3)の内面に対して互いに近接する弦をなすようにして、配設してある。
【0053】
各コイルモジュール(27)とコア(31)とは、互いに重ね合わせた状態で、各端部が上弦材(2)またはその他の固定体に固着された1対のチャンネル材(28)(28)上に支持され、かつねじ(29)をもって止着された水平の支持板(30)上に載置され、支持板(30)にねじ(32)をもって締着されている。
【0054】
コイルモジュール(27)の直線状の上面と、支材(3)の上壁部分の弧状の下面との間の空間(60)には、適宜スペーサ(61)を設けるのがよい。この空間(60)の最大離間距離は、20mm以内に納めておくのが望ましい。
【0055】
この例のような構成とすると、円筒形の支材(3)にも、誘導加熱装置(33)を支障なく組み込むことができ、その上部に積もった雪を効果的に溶かすことができる。
【0056】
図10は、円筒形とした支材(3)に、本発明の融雪装置の第7の実施形態を装着した例を示す。
この例では、円筒形の支材(3)の上壁部分の下方に、その下面の曲率とほぼ同じ曲率となるように湾曲させた、平型巻線としたコイル(21)を含む板状のコイルモジュール(27)とコア(31)と支持板(30)とを、上下に重ねて、かつ支材(3)の上壁部分の下面にコイルモジュール(27)の上面が密接するようにして、配設してある。それらの支持構造は、図9に示すものと同様である。
【0057】
このような構成とすると、図9におけるような空間(60)をなくすことができ、発熱体である支材(3)の誘導加熱効率を高めることができる。その他の効果は、第8の実施形態と同様である。
【0058】
図11は、歩道橋(70)の階段(71)の各踏み板(72)に、本発明の融雪装置の第8の実施形態を装着した例を示す。
この例では、各踏み板(72)を、第1の実施形態における上弦材(2)の上面板(20)と同様に、誘導電流が発生する導電性材料により形成し、その下方に、平型巻線のコイル(21)を含むコイルモジュール(27)とコア(31)と側面視ほぼL字状の支持板(72)とを、上下に重ねて、かつ踏み板(72)の下面にコイルモジュール(27)の上面が密接するようにして、さらに支持板(72)の各端部を、踏み板(72)の下面と上下の踏み板(72)(72)間に配設した垂直板(74)の背面とにそれぞれ固着することにより配設し、それらと、図示を省略した電源供給手段とにより、第1の実施形態におけるのと同様の誘導加熱装置(33)を形成している。
【0059】
したがって、この例では、誘導加熱装置(33)により、歩道橋の構成部材である踏み板(72)自体が発熱板として誘導加熱され、その上に積もった雪を溶かしたり、踏み板(72)の凍結を防止して、歩行者の安全を確保することができる。
【0060】
なお、各踏み板(72)上に、第2の実施形態における誘導加熱装置(44)を載置して固定し、その発熱体(41)の上面に滑り止め加工を施して、これを新たな踏み板とし、第2の実施形態におけるのと同様の原理で、この発熱体(41)を誘導加熱させるようにしたり、歩道橋の斜路部の踏み板(図示略)にも、上述した本発明の融雪装置の第8の実施形態等を適用したりすることもできる。
【0061】
図12は、家屋(80)の屋根(81)に、本発明の融雪装置の第9の実施形態を装着した例を示す。
この例では、屋根(81)の表面材(82)を、第1の実施形態における上弦材(2)の上面板(20)と同様に、誘導電流が発生する導電性材料により形成し、その下方に、平型巻線のコイル(21)を含むコイルモジュール(27)とコア(31)と支持板(83)とを、上下に重ねて、かつ表面材(82)の下面にコイルモジュール(27)の上面が密接するようにして、さらに支持板(83)がもや(84)により支持されるようにして配設し、それらと、図示を省略した電源供給手段とにより、第1の実施形態におけるのと同様の誘導加熱装置(33)を形成している。
【0062】
この例では、誘導加熱装置(33)により、屋根(81)の表面材(82)が、発熱板として誘導加熱され、その上に積もった雪を溶かすことができるので、人力により、屋根(81)の雪下ろしをする必要がなくなる。
【0063】
なお、誘導加熱装置(33)により加熱して融雪する部分を、屋根全体でなく、屋根の水みち部分、庇部分等に限定し、水みち部分の凍結の防止を図ったり、庇部分からの氷柱の生成およびその落下を防止したりするようにしてもよい。
【0064】
本発明は、上述した第1〜第9の実施形態の他にも、幾多の変形が可能である。例えば、第1〜第3の実施形態は、橋梁(1)の上弦材(2)だけでなく、支材(3)、橋門構(4)、舗道面その他の橋梁(1)の構成部材、歩道橋(70)の階段(71)その他の構成部材、家屋(80)の屋根(81)その他の構成部材にも広く適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、上述した橋梁(1)、歩道橋(70)、家屋(80)以外の建造物にも、広く適用することができる。
例えば、上述の第1〜第3の実施形態を、家屋のシャッター扉、水門の扉等に適用し、それらの扉の表面に付着した雪の付着や凍結を防止するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明を適用しようとする橋梁の一例を示す外観斜視図である。
【図2】図1に示す橋梁の上弦材に、本発明の融雪装置の第1の実施形態を装着した縦断正面図である。
【図3】図2の左上部を拡大して示す拡大縦断正面図である。
【図4】コイルモジュールの一部を破断して示す斜視図である。
【図5】ランガー桁とした橋梁の上弦材に、本発明の融雪装置の第2の実施形態を装着した縦断正面図である。
【図6】ランガー桁とした橋梁の上弦材に、本発明の融雪装置の第3の実施形態を装着した縦断正面図である。
【図7】橋梁の支材に、本発明の融雪装置の第4の実施形態と第5の実施形態とを装着した拡大縦断側面図である。
【図8】橋梁の円筒形の支材に、本発明の融雪装置の第6の実施形態を装着した縦断側面図である。
【図9】同じく、その一部の拡大縦断側面図である。
【図10】橋梁の円筒形の支材に、本発明の融雪装置の第7の実施形態を装着した、図9と同様の部分の拡大縦断側面図である。
【図11】歩道橋の階段に、本発明の融雪装置の第8の実施形態を装着した縦断側面図である。
【図12】家屋の屋根に、本発明の融雪装置の第9の実施形態を装着した縦断正面図である。
【符号の説明】
【0067】
(1)橋梁
(2)上弦材
(3)支材
(4)橋門構
(5)吊材
(6)補剛桁
(7)縦桁
(8)床桁
(9)路面
(10)支承
(11)上横構
(12)下横構
(20)上面板
(21)コイル
(22)配線
(23)電源供給手段
(24)垂下片
(25)側板
(26)絶縁体
(27)コイルモジュール
(28)チャンネル材
(29)ねじ
(30)支持板
(31)コア
(32)ねじ
(33)誘導加熱装置
(34)制御装置
(35)雪
(36)融雪装置
(40)断熱材
(41)発熱板
(42)脚片
(43)ねじ
(44)誘導加熱装置
(45)融雪装置
(50)上部フランジ
(51)下部フランジ
(52)基片
(53)ガセットプレート
(54)ブラケット
(55)締着具
(56)取付片
(57)ねじ
(58)上横構
(59)ボルトナット
(60)空間
(61)スペーサ
(70)歩道橋
(71)階段
(72)踏み板
(73)支持板
(74)垂直板
(80)家屋
(81)屋根
(82)表面材
(83)支持板
(84)もや

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の一部の上面に位置する建造物構成部材自体を、誘導電流が発生する導電性材料により形成し、かつその下方に、前記建造物構成部材に誘導電流を発生させて誘導加熱させるコイルを近接させて配設し、前記コイルを、電源供給手段に接続したことを特徴とする融雪装置。
【請求項2】
建造物の一部の上面に位置する建造物構成部材上に、誘導電流が発生する導電性材料よりなる発熱板と、その下方に近接させて配設され、前記発熱板に誘導電流を発生させて誘導加熱させるコイルと、該コイルに電流を供給する電源供給手段とを備える誘導加熱装置における前記発熱板とコイルとを配設したことを特徴とする融雪装置。
【請求項3】
コイルを建造物構成部材に近接させて平行に配設し、前記建造物構成部材を、コイルに通電することにより生じる磁力線を導く平板状のコアとして用いた請求項2記載の融雪装置。
【請求項4】
コイルを平型巻線とし、かつコイルの下方に、コイルに通電することにより生じる磁力線を導く平板状のコアを、コイルと平行に近接させて配設した請求項1または2記載の融雪装置。
【請求項5】
コアを、電磁鋼板により形成した請求項3または4記載の融雪装置。
【請求項6】
建造物を橋梁とした請求項1〜5のいずれかに記載の融雪装置。
【請求項7】
建造物構成部材を、橋梁の上弦材とした請求項6記載の融雪装置。
【請求項8】
建造物構成部材を、橋梁の支材とした請求項6記載の融雪装置。
【請求項9】
建造物を橋梁とし、かつ建造物構成部材を円筒形の支材とし、その上壁部分の下方に、平型巻線としたコイルを、弦をなすように配設した請求項1、請求項1に従属する請求項4、または請求項1に従属する請求項4にさらに従属する請求項5記載の融雪装置。
【請求項10】
建造物を橋梁とし、かつ建造物構成部材を円筒形の支材とし、その上壁部分の下面に、円弧状とした平型巻線を、内接するように配設した請求項1、請求項1に従属する請求項4、または請求項1に従属する請求項4にさらに従属する請求項5記載の融雪装置。
【請求項11】
建造物を歩道橋とし、かつ建造物構成部材を、前記歩道橋の階段または斜路部の踏み板とした請求項1〜5のいずれかに記載の融雪装置。
【請求項12】
建造物を家屋とし、かつ建造物構成部材を、前記家屋の屋根の表面材とした請求項1〜5のいずれかに記載の融雪装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−2517(P2006−2517A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182187(P2004−182187)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(592180225)株式会社楢崎製作所 (9)
【出願人】(591041369)多田電機株式会社 (13)
【Fターム(参考)】