説明

表示装置及び表示装置の製造方法

【課題】TFTの信頼性向上を図りつつ、良好なコントラスト特性を得ることのできる表示装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の表示装置は、透光性基板と、前記透光性基板の一部に形成された不純物ドープ層と、前記不純物ドープ層及び前記透光性基板上に形成された絶縁膜と、前記絶縁膜上に形成された複数のTFTを含むTFT回路と、前記TFT回路により駆動される複数のシャッターを有するシャッターアレイと、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メカニカルシャッターを用いた表示装置及び表示装置の製造方法
に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を応用したメカニカルシャッター(以下「MEMSシャッター」、或いは単に「シャッター」という。)を用いた表示装置が注目されてきている。MEMSシャッターを用いた表示装置(以下「MEMS表示装置」という。)とは、画素ごとに設けたMEMSシャッターを、TFTを用いて高速で開閉することによってシャッターを透過する光の量を制御し、画像の明暗の調整を行う表示装置である。MEMS表示装置においては時間階調方式を採用し、赤色、緑色及び青色のLEDバックライトからの光を順次切り替えることにより、画像の表示を行うことが主流である。よって、MEMS表示装置は、液晶表示装置に用いられる偏光フィルムやカラーフィルタなどを必要とせず、液晶表示装置と比較してバックライトの光の利用効率は約10倍、消費電力は1/2以下になり、また、色再現性が優れている点に特徴がある。
【0003】
MEMS表示装置においては、MEMSシャッターを駆動するためのスイッチング素子、及びスイッチング素子を駆動するゲートドライバやデータドライバを構成するTFTが、アパーチャ層の形成された基板上に形成される。また、基板上にはTFTへ外部からの信号を供給するための端子が同時に形成される。このようなTFT及び端子の形成された基板上には、TFT及び端子を覆うパッシベーション膜(絶縁膜)が形成され、そのパッシベーション膜上に、端子と電気的に接続されるMEMSシャッターが形成される。
【0004】
以下、図9乃至図11を参照し、MEMSシャッターの配置される基板の構成について説明する。図9は、アパーチャ層250の形成された基板204上に、複数のMEMSシャッター202が画素201ごとに配置された構成を図示している。図10は、図9に示した基板204の構成を示す斜視図であり、図11は、図10に示した基板204の構成を示す断面図である。
【0005】
図11に図示したように、基板204は、光を遮光するアパーチャ層250と光を透過させる光透過部254とが、ガラス基板などの透明基板206上に形成されて構成される。アパーチャ層250は、MEMS表示装置のコントラストの低下を防ぐために、バックライトからの光を遮光しつつ、表示装置の内部で反射された不要な光の出射を抑えるように構成される。アパーチャ層250は、例えば、図11に図示したように、高屈折率層258、低屈折率層260、金属反射層262、光吸収層264が順に積層された構造を有し、光を透過させる誘電体層268により覆われる。このとき、基板206上に形成された誘電体層268のアパーチャ層250と重畳しない部分が光透過部254として形成される。このような構成を有する基板204上に、図9に図示したように、MEMSシャッター202及びMEMSシャッター202を駆動するためのアクチュエータ203、トランジスタ210、キャパシタ212、ゲートライン207、データライン208などが画素201ごとに対応して形成され、アクティブマトリクス回路が形成される。MEMSシャッター202は、それぞれ複数の開口部214を有し、この開口部214を透過した光が、基板204に形成された光透過部254を透過した後、人間の目に視認されるように構成される。
【0006】
従来のMEMS表示装置においては、アパーチャ層250を、Al、Cr、Au、Ag、Cu、Ni,Ta、Ti、Nd、Nb、W、Moなどの金属とその合金を用いて、基板206への蒸着およびパターニングにより形成するものがある(例えば、特許文献1参照。)。また、アパーチャ層250は、ブラックマトリクスとして機能するものであってもよく、その材料として、MoCr、MoW、MoTi、MoTa、TiW、TiCrやそれらの合金またはNiやCrの単純金属の粗面を有する構造を用いるものがある。他にも、アモルファスまたは多結晶のSi、Ge、CdTe、InGaAsなどの半導体材料、コロイド黒鉛(炭素)、SiGeなどの合金、CuO、NiO、Cr、AgO、SnO、ZnO、TiO、Ta、MoO、CrN、TiN、またはTaNを含む、金属酸化物または窒化物を用いるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2008−533510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、アパーチャ層250を上述したような金属膜や金属リッチな酸化膜で形成すると、基板204上にアクティブマトリクス回路を形成する際に、特にアモルファスシリコンをレーザ照射によってpoly−Si化(低温ポリシリコン化)する際に、溶融・結晶化のための熱が逃げ易く、良好な特性を有する低温ポリシリコン膜を得ることができないという問題があった。
【0009】
また、アパーチャ層250をガラス基板からなる基板206上に金属酸化膜や窒化膜を用いて形成し、エッチングにより光透過部254を形成する場合は、エッチング液が基板206を溶かす作用があるため、基板206に含まれるアルカリ金属が溶出してTFTを形成する半導体層の働きを低下させる虞があり、光透過部254を形成するプロセスを難しいものにするという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は上述した問題を鑑みてなされてものであり、TFTを形成する基板上に、イオン注入法によって減光層(例えば、後述の不純物ドープ層)を形成することにより、TFTの信頼性向上を図りつつ、良好なコントラスト特性を得ることのできる表示装置及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態によると、透光性基板と、前記透光性基板の一部に形成された不純物ドープ層と、前記不純物ドープ層及び前記透光性基板上に形成された絶縁膜と、前記絶縁膜上に形成された複数のTFTを含むTFT回路と、前記TFT回路により駆動される複数のMEMSシャッターを有するMEMSシャッターアレイと、を備えることを特徴とする表示装置が提供される。
【0012】
また、本発明の一実施形態によると、透光性基板の一部に不純物ドープ層を形成し、前記不純物ドープ層及び前記透光性基板上に絶縁膜を形成し、前記絶縁膜上に、複数のTFTを有するTFT回路と、前記複数のTFTにそれぞれ接続される複数のMEMSシャッターとを形成することを特徴とする表示装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の表示装置及びその製造方法によると、TFTを形成する基板上に、イオン注入法によって減光層を形成することにより、TFTの信頼性向上を図りつつ、良好なコントラスト特性を得ることのできる表示装置及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る表示装置を示す図であり、(a)は、表示装置の斜視図であり、(b)は、表示装置の平面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る表示装置の回路ブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る表示装置に用いるMEMSシャッターの概略構成を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る表示装置の構成例を示す断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る表示装置の製造工程を示す断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る表示装置に用いる基板の構成例を示す平面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る表示装置の構成例を示す断面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る表示装置の構成例を示す断面図である。
【図9】従来の表示装置に用いるMEMSシャッターの形成された基板の概略構成を示す斜視図である。
【図10】図9に示した従来の表示装置に用いる基板の構成例を示す斜視図である。
【図11】図10に示した従来の表示装置に用いる基板の構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の表示装置の実施形態について説明する。なお、本発明の表示装置は、以下の実施形態に限定されることはなく、種々の変形を行ない実施することが可能である。
【0016】
図1(a)及び(b)に本発明の一実施形態に係る表示装置100を示す。図1(a)は、表示装置100の斜視図であり、(b)は、表示装置100の平面図である。本実施形態に係る表示装置100は、基板110及び対向基板140を有している。基板110は、表示部101a、駆動回路101b、101c及び101d、並びに端子部101eを有している。基板110と対向基板140とは、シール材等を用いて接合される。
【0017】
図2に本発明の一実施形態に係る表示装置100の回路ブロック図を示す。図2に示す本発明の一実施形態に係る表示装置100には、コントローラ103から画像信号及び制御信号が供給される。また、図2に示す本発明の一実施形態に係る表示装置100には、コントローラ103によって制御されるバックライト150から光が供給される。なお、コントローラ103及びバックライト150を含んで本発明の表示装置100を構成するようにしてもよい。
【0018】
図2に示すとおり、表示部101aは、ゲート線(G1、G2、・・・、Gn)とデータ線(D1、D2、・・・、Dm)との交点に対応する位置に、マトリクス状に配置されたMEMSシャッター130a、スイッチング素子(TFT)104、及び保持容量105を有する画素106を有している。駆動回路101b、101cは、データドライバであり、スイッチング素子104へデータ線(D1、D2、・・・、Dm)を介してデータ信号を供給する。駆動回路101dは、ゲートドライバであり、スイッチング素子104へゲート線(G1、G2、・・・、Gn)を介してゲート信号を供給する。なお、本実施形態においては、図1に示すように、データドライバである駆動回路101b、101cが、表示部101aを挟むように配置されているが、この構成に限定されるものではない。スイッチング素子104は、データ線(D1、D2、・・・、Dm)から供給されるデータ信号に基づきMEMSシャッター130aを駆動する。
【0019】
ここで、図3を参照して、MEMSシャッター130aの構成について説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る表示装置100に用いるMEMSシャッター130aの構成を示す図である。説明の便宜上、図3には、一つのMEMSシャッター130aを示すが、本発明の一実施形態に係る表示装置100には、基板110上に図3に示すMEMSシャッター130aがマトリクス状に配置される。
【0020】
MEMSシャッター130aは、シャッター131、第1バネ136a、136b、136c、136d、第2バネ137a、137b、137c、137d、及びアンカー部138a、138b、138c、138d、139a、139bを有している。シャッター131は複数の開口部134を有しており、シャッター131本体は遮光部となる。また、基板110には、複数の光透過部114が形成されている。基板110は、図1に図示した対向基板140が光を透過させる開口部(図1に図示せず)を有していることから、対向基板140の開口部と基板110の光透過部114とが平面方向に概略重なり合うように配置され、シール材等を介して基板110に対向基板140が接合される。表示装置100は、対向基板140の背面から供給されて対向基板140の開口部を透過する光が、シャッター131の開口部134を透過し、基板110の光透過部114を透過した後、人間の目に視認されるように構成される。なお、本実施形態に示すMEMSシャッター130aは、本発明の表示装置100に用いることのできるMEMSシャッターの一例に過ぎず、スイッチング素子で駆動することのできるMEMSシャッターであれば図示した構成に限らず、如何なる態様のものでも用いることができる。
【0021】
シャッター131の一方の側は、第1バネ136a、136bを介してアンカー部138a、138bに接続されている。アンカー部138a、138bは、第1バネ136a、136bとともに、シャッター131を基板110の表面から浮遊した状態に支持する機能を有する。アンカー部138aは第1バネ136aと電気的に接続されており、且つ、アンカー部138bは第1バネ136bと電気的に接続されている。アンカー部138a、138bには、スイッチング素子104からバイアス電位が供給され、第1バネ136a、136bにバイアス電位が供給される。また、第2バネ137a、137bは、アンカー部139aに電気的に接続されている。アンカー部139aは、第2バネ137a、137bを基板110の表面から浮遊した状態に支持する機能を有する。アンカー部139aには、グランド電位が供給され、第2バネ137a、137bにグランド電位が供給される。尚、アンカー部139aには、上記グランド電位の替りに所定の電位を供給する構成でもよい。(以下の説明でのグランド電位でも同様である。)
【0022】
また、シャッター131の他方の側は、第1バネ136c、136dを介してアンカー部138c、138dに接続されている。アンカー部138c、138dは、第1バネ136c、136dとともに、シャッター131を基板110の表面から浮遊した状態に支持する機能を有する。アンカー部138cは第1バネ136cと電気的に接続されており、且つ、アンカー部138dは第1バネ136dと電気的に接続されている。アンカー部138c、138dには、スイッチング素子104からバイアス電位が供給され、第1バネ136c、136dにバイアス電位が供給される。また、第2バネ137c、137dは、アンカー部139bに電気的に接続されている。アンカー部139bは、第2バネ137c、137dを基板110の表面から浮遊した状態に支持する機能を有する。アンカー部139bは第2バネ137c、137dと電気的に接続されている。アンカー部139bには、グランド電位が供給され、第2バネ137c、137dにグランド電位が供給される。
【0023】
上述したように、本実施形態においては、スイッチング素子104からアンカー部138a、138bにバイアス電位が供給され、第1バネ136a、136bにバイアス電位が供給され、且つ、アンカー部139aには、グランド電位が供給され、第2バネ137a、137bにグランド電位が供給される。第1バネ136a、136bと第2バネ137a、137bとの間の電位差により、第1バネ136aと第2バネ137aとが静電駆動され、互いが引き寄せあうように移動し、且つ、第1バネ136bと第2バネ137bとが静電駆動され、互いが引き寄せあうように移動し、シャッター131が移動する。
【0024】
また、同様に、スイッチング素子104からアンカー部138c、138dにバイアス電位が供給され、第1バネ136c、136dにバイアス電位が供給され、且つ、アンカー部139bには、グランド電位が供給され、第2バネ137c、137dにグランド電位が供給される。第1バネ136c、136dと第2バネ137c、137dとの間の電位差により、第1バネ136cと第2バネ137cとが静電駆動され、互いが引き寄せあうように移動し、且つ、第1バネ136dと第2バネ137dとが静電駆動され、互いが引き寄せあうように移動し、シャッター131が移動する。
【0025】
このようにシャッター131を静電力により駆動させることにより、シャッター131を高速動作させることが可能となる。従って、表示装置100は、シャッター131の位置を高速駆動により変化させて開口部134を透過する光の量を制御することにより、階調表示が可能となる。また、バックライト150から放射される光をR、G、B三色の順次駆動(フィールド・シーケンシャル駆動)とすることにより、カラー表示をすることも可能となる。この場合、液晶表示装置で必要な偏光板やカラーフィルタが不要となるので、バックライト150の光を減衰させることなく利用することも可能となる。
【0026】
なお、本実施形態においては、シャッター131の両側に第1バネ、第2バネ及びアンカー部を接続し配置した例について説明したが、本発明の表示装置100はこの構成に限定されるものではない。例えば、シャッター131の一方側に第1バネ、第2バネ及びアンカー部を接続し配置し、シャッター131の他方側には第1バネ及びアンカー部のみを接続し配置し、他方側の第1バネ及びアンカー部はシャッターを基板から浮遊した状態に支持する機能を持たせ、シャッター131の一方側の第1バネ及び第2バネを静電駆動し、シャッター131を動作させるようにしてもよい。
【0027】
(第1の実施形態)
以下、図4乃至図7を参照し、本発明の第1の実施形態に係る表示装置100の構成及びその製造方法について説明する。
【0028】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る表示装置100の構成を示す断面図である。表示装置100は、減光層112(不純物ドープ層)を有する基板110、TFT回路層120、MEMSシャッターアレイ130、対向基板140、及びバックライト150を備える。
【0029】
図4に図示したように、基板110は、TFT回路層120、MEMSシャッターアレイ130、対向基板140、及びバックライト150の前面に配置され、表示装置100は、基板110側が表示画面側となるように構成される。基板110は、ガラス基板111の表層部に形成された減光層112と、減光層112の形成されていない部分である光透過部114とを含む。基板110の減光層112の形成された面上には、絶縁性及び透光性を有する保護膜113が形成され、保護膜113上に形成されるTFT回路層120に不純物を混入させないようにする。
【0030】
基板110上には、TFT回路層120が形成される。TFT回路層120は、複数のMEMSシャッター130a(図3参照)のそれぞれに対応して形成される複数のTFTを備え、複数のTFTは、それぞれ、半導体層128、ソース電極121、ゲート電極122、ドレイン電極123、及び制御電極線124a、124bを含む。半導体層128とゲート電極122の間にはゲート絶縁膜125が形成され、制御電極線124a、124bは層間絶縁膜126によって絶縁性が保たれる。また、TFT回路層120の表面上には保護膜127が形成されて絶縁性が保たれる。ゲート絶縁膜125、層間絶縁膜126、及び保護膜127は、絶縁性及び透光性を有するものを用いる。
【0031】
TFT回路層120の形成された基板110上には、MEMSシャッターアレイ130が形成される。MEMSシャッターアレイ130は、マトリクス状に配置された複数のシャッター131及び制御電極132a、132bを含む。なお、図4に図示した制御電極132a、132bは、図3に図示した第2バネ137a、137b、137c、137dに対応する。図4に図示したように、複数のシャッター131及び制御電極132a、132bは、基板110の表面から浮遊した状態に形成される。複数のシャッター131及び制御電極132a、132bは、それぞれが対応するTFTの制御電極線124a、124bから電位を供給され、その電位差によりシャッター131が駆動される。上述したように、シャッター131は複数の開口部134(図3に図示)を有し、シャッター131を高速に駆動してシャッター131の位置を変化させることにより、開口部134を透過する光の量を制御する。
【0032】
対向基板140は、図4に図示したように、ガラス基板141上に反射膜142及び光吸収膜143が順に積層された構造を有し、反射膜142及び光吸収膜143をエッチングして除去することにより形成された複数の開口部144を有する。上述したように、対向基板140と基板110とは、シール材等を用いて接合される。このとき、ガラス基板141に形成された開口部144は、基板110に形成された光透過部114と平面方向に概略重なり合うように配置され、対向基板140の背面に配置されたバックライト150からの光を透過させる。なお、基板110と対向基板140とをシール材により接合した後、基板110と対向基板140との間の空間に、シリコンオイル等のダンピング材を封入してもよい。ダンピング材は、シャッター131の動作を妨げることなく、且つ腐食等を起こさないように所望の粘性を有する材料や封入条件を選択し得る。
【0033】
バックライト150は、光源151、導光板152、反射膜153、及び拡散板154を備える。図4に図示したように、光源151は、導光板152の側面に隣接して配置され、光源151から出射された光が導光板152の内部で反射・拡散された後、対向基板140に向かって放射される。光源151からの光を有効利用するために、導光板152の表面上には拡散板154が配置され、導光板152の底面には反射膜153が配置される。光源151としては、赤色、緑色及び青色のLEDバックライトを用いて順次駆動させてもよい。なお、バックライト150は、図示したエッジライト方式に限らず、仕様に応じて多様な形態に変更し得る。
【0034】
光源151から発せられた光は、導光板152および拡散板154を通じて対向基板140に向かう。対向基板140の反射膜142で反射された光は再びバックライト150に戻り、導光板152の反射膜153によって反射されて再利用される。シャッター131がバックライト150からの光を透過させる開状態の場合、開口部144及び光透過部114を通った光161は人間の目に明るい画素として認識される。一方、シャッター131が閉状態の場合、開口部144を通った光162はシャッター131によって遮られるため、人間の目には暗い画素として認識される。このようなシャッター131の開閉動作を高速に切り替えて表示画面側に放射される光量を制御することにより、人間の目に画像として認識させることが可能となる。
【0035】
外部から入射される入射光163は、図4に図示したように、表示装置100の内部で反射されて反射光164となる。このとき、入射光163が基板110の減光層112に入射されると、入射光163は減光層112によって減衰され、反射光164は入射光163に比べて十分に強度の弱い光となる。従って、光源151からの光161は反射光164に対して良好なコントラストを確保することが可能となる。しかし、基板110に減光層112が形成されていない場合は、入射光163が半導体層128や制御電極線124a、124bにより反射して強い反射光となるため、コントラストが低下し、見づらいディスプレイとなる。このため、減光層112の透過率は70%以下が良く、これにより、反射光164の強度を入射光163のおよそ50%以下とすることができる。さらに、減光層112の透過率は30%以下が望ましく、これにより、反射光164の強度を入射光163のおよそ10%以下とすることができる。
【0036】
このような減光層112を備えた基板110の製造方法について、以下、図5を参照して説明する。図5は、本発明の一実施形態に係る表示装置100に用いられる基板110の製造工程を示した断面図である。
【0037】
まず、図5(a)に図示したように、ガラス基板111を準備する。ガラス基板111としては、0.2mm〜0.5mmの厚みを有し、透明又は透光性を有するものを用いる。例えば、石英ガラス、高シリカガラス、ソーダライムガラスなどを用いることができる。
【0038】
次に、図5(b)に図示したように、ガラス基板111上にレジスト層301を形成し、図5(c)に図示したように、フォトリソグラフィ技術を用いてレジスト層301のパターン化を行う。レジスト層301は、光透過部114が形成される部分にのみ残り、減光層112が形成される部分は除去されるようにパターンを形成する。
【0039】
次に、図5(d)に図示したように、イオン注入法によってガラス基板111にイオン302を打ち込むことにより、減光層112を形成する。イオン302に用いる元素としては、Cu、Mn、Cr、Fe、V、C、Al、Ti、Nbなどを用いることができ、それらの合金や酸化物をイオン源として用いてもよい。加速電圧は、10keV〜200keVとし、イオンのドーズ量を、1014cm−2〜1017cm−2とする。このようなイオン注入法により、ガラス基板111の表面から10nm〜800nmの範囲に不純物元素を埋め込むことが可能となる。
【0040】
次に、レジスト層301を取り除くことにより、図5(e)に図示したように、イオン302が打ち込まれた部分に減光層112が形成され、レジスト層301によってイオン302が打ち込まれなかった部分が光透過部114となる。従来のエッチングによる光透過部114の製造方法と比べて、エッチング液によりガラス基板111に含まれるアルカリ金属等の成分を溶出させることがないため、光透過部114をより容易に形成することができる。
【0041】
次に、図5(f)に図示したように、減光層112の形成されたガラス基板111の面上に、保護膜113を形成する。保護膜113は、絶縁性及び透光性を有するSiO、SiNなどの材料を用いて形成する。保護膜113を形成することにより、減光層112の製造時にガラス基板111に埋め込まれたイオン302がTFT回路層120に混入することを防ぎ、良好なTFT特性を維持することが可能となる。
【0042】
以上のプロセスにより、本発明の第1の実施形態に係る減光層112及び光透過部114を備えた基板110が形成される。基板110に形成された減光層112によれば、透過率を70%以下とすることができるため、反射光164の強度を、入射光163の強度の約49%(0.7×0.7=0.49)以下とすることが可能となる。これにより、良好なコントラスト特性を有する表示装置100を提供することが可能となる。
【0043】
また、図5に図示して説明した減光層112の製造工程において、図6に図示したように、減光層112の形成と同時に、ガラス基板111上に複数の位置合わせマーク115、117を形成しても良い。図6に図示した位置合わせマーク115、117は、TFT回路層120を形成するためのフォトリソグラフィ工程に用いるフォトマスクの位置合わせマークである。図6には、基板110の形成される位置119を点線で図示している。基板110の形成される位置119上にそれぞれTFT回路層120及びMEMSシャッターアレイ130を形成し、対向基板140を接合した後、各々をカッティングして切り離すことにより、表示装置100を形成してもよい。
【0044】
このように、減光層112の形成と同時に同じ材料を用いて、以後のTFT回路層120の製造プロセスに用いられる位置合わせマーク115、117を予めガラス基板111上に形成しておくことにより、簡易な工程で、減光層112及び光透過部114とTFT回路層120とを精度良く位置合わせすることが可能となる。従って、精度及び歩留りを向上させた表示装置100を提供することが可能となる。
【0045】
基板110を形成した後、一般に用いられるプロセスによってTFT回路層120を形成する。TFT回路層120の半導体層128として、基板110の保護膜113上にアモルファスシリコンを成膜した後、レーザーアニールにより低温ポリシリコン化する。このとき、ガラス基板111に形成された減光層112の熱伝導率は、上述した減光層112の製造方法により、元のガラス基板111の熱伝導率とほぼ変わらないものとすることができるため、減光層112を金属膜や金属リッチな膜として形成した場合と比較して、アモルファスシリコンを溶融・結晶化させてポリシリコン膜を形成する際に、熱を逃がさずに溶融・結晶化させることが可能となる。これにより、良好な特性を有する低温ポリシリコン膜を得ることができる。従って、安定して動作するTFT回路層120を備えた表示装置100を製造することが可能となる。
【0046】
以上のように、本発明の第1の実施形態に係る表示装置100及びその製造方法によれば、ガラス基板111の表層部にイオン注入法によって減光層112を形成することにより、以後の工程で基板110上に形成されるTFT回路層120の信頼性向上を図ることができるため、高精細で安定動作の可能な表示装置100を提供することができる。また、基板110に形成された減光層112により、外部からの入射光163の強度を減衰させて、反射光164の強度を入射光163と比べて50%以下の弱い光とすることができるため、良好なコントラスト特性を有する表示装置100を提供できる。
【0047】
また、表示装置100は、図7に図示したように、光源151をオフにした反射モードにおける表示方法であっても良好なコントラスト特性を維持することができる。シャッター131が開状態の場合には、外部からの外光165が光透過部114と開口部144とを透過し、反射膜153で反射して光166となり、光166が人間の目に入ることで明るい画素として認識される。外部からディスプレイに入射した入射光163は反射して反射光164となるが、減光層112によって減衰されて入射光163に比べて十分に強度の弱い光となる。従って、図4に図示した表示装置100と同様に、光166が反射光164に対して良好なコントラストを確保することができるため、良好なコントラスト特性を有する表示装置100を提供できる。
【0048】
(第2の実施形態)
以下、図8を参照し、本発明の第2の実施形態に係る表示装置100の構成及びその製造方法について説明する。
【0049】
図8は、本発明の第2の実施形態に係る表示装置100の構成を示す断面図である。表示装置100は、減光層112を有する基板110、TFT回路層120、MEMSシャッターアレイ130、対向基板140、及びバックライト150を備える。
【0050】
なお、第2の実施形態に係る表示装置100において、基板110、TFT回路層120、MEMSシャッターアレイ130、及びバックライト150の構成は、第1の実施形態に係る表示装置100と同じ構成を有するものであるため、以下、第1の実施形態に係る表示装置100と同様の構成を有するものについては詳細な説明について省略する。
【0051】
第2の実施形態に係る表示装置100は、第1の実施形態に係る表示装置100と異なり、バックライト150は、対向基板140の背面側ではなく、基板110の背面側に配置され、バックライト150からの光161は、基板110の開口部114及びシャッター131の開口部134を透過した後、対向基板140に形成された光透過部118を透過し、人間の目に画像として認識されるように構成される。従って、図8に図示したように、本実施形態においては、表示装置100は対向基板140側が表示画面側となるように構成される。
【0052】
図8に図示したように、対向基板140は、ガラス基板141上に減光層116及び光透過部118が形成された構成を有する。本実施形態において、対向基板140は、第1の実施形態に係る表示装置100に用いられる基板110と同様の材料及び製造方法を用いて形成されるため、図5(e)に図示した減光層112及び光透過部114を備えたガラス基板111と同様の構成を有する。従って、図8に図示したように、外部から入射される入射光163は、表示装置100の内部で反射されて反射光164となるが、減光層112によって減衰されるため、反射光164は入射光163に比べて十分に強度の弱い光となる。これにより、第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、良好なコントラスト特性を有する表示装置100を提供できる。
【0053】
また、第2の実施形態に係る表示装置100は、シャッター131が閉状態である場合に、バックライト150からの光がシャッター131により遮られるとTFT回路層120とMEMSシャッターアレイ130との間で光が乱反射し、散乱光167がTFT回路層120に入射してしまうことがある。しかし、基板110に形成される減光層112により、散乱光167の強度を減衰させることができるため、TFT回路層120に直接的に強い強度の光が入射されることを防ぐことができる。これにより、TFT回路層120の誤動作を防止することができる。
【0054】
また、第2の実施形態に係る表示装置100においても、基板110に形成される減光層112は、第1の実施形態と同様の材料及び製造方法を用いて形成されるため、基板110上にTFT回路層120の半導体層128を形成する際に、良好な特性を有する低温ポリシリコン膜を形成することが可能となる。従って、TFT回路層120の信頼性向上を図ることができる。また,第2の実施形態に係る表示装置100における対向基板140の減光層116の代わりに,黒色樹脂膜やCrなどの金属膜を用いた光吸収層を配置しても良い。その場合でも入射光163の反射を防ぐことができ,良好なコントラスト特性を有する表示装置100を提供できる。
【0055】
以上のように、本発明の第2の実施形態に係る表示装置100によれば、第1の実施形態に係る表示装置100と同様に、良好なコントラスト特性を有し、且つ高精細で安定動作が可能な表示装置100を提供することができる。
【0056】
以上、本発明の第1及び第2の実施形態に係る表示装置100及びその製造方法によれば、TFTを形成する基板110において、イオン注入法によって減光層112を形成することにより、TFTの信頼性向上を図りつつ、良好なコントラスト特性を得ることのできる表示装置100を提供することができる。
【符号の説明】
【0057】
100 表示装置
110 基板
111 ガラス基板
112 減光層
113 保護膜
114 光透過部
120 TFT回路層
121 ソース電極
122 ゲート電極
123 ドレイン電極
124a、124b 制御電極線
125 ゲート絶縁膜
126 層間絶縁膜
127 保護膜
128 半導体層
130 MEMSシャッターアレイ
131 シャッター
132a、132b 制御電極
140 対向基板
141 ガラス基板
142 反射膜
143 光吸収膜
144 開口部
150 バックライト
151 光源
152 導光板
153 反射膜
154 拡散板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基板と、
前記透光性基板の一部に形成された不純物ドープ層と、
前記不純物ドープ層及び前記透光性基板上に形成された絶縁膜と、
前記絶縁膜上に形成された複数のTFTを含むTFT回路と、
前記TFT回路により駆動される複数のシャッターを有するシャッターアレイと、
を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記不純物ドープ層は、Cu、Mn、Cr、Fe、V、C、Al、Ti、Nbのうちいずれかの元素を含むことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記不純物ドープ層は、前記基板の表面から10nm〜800nmの範囲に含まれることを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記不純物ドープ層は、光の透過率が70%以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記不純物ドープ層は、イオン注入法により形成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記透光性基板と接合される複数の開口部を有する対向基板と、
前記透光性基板及び前記対向基板の背面に配置されるバックライトと、をさらに備え、
前記対向基板の前記開口部と、前記透光性基板の前記不純物ドープ層が形成されていない部分との重なる部分に、前記バックライトから供給される光を透過させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項7】
透光性基板の一部に不純物ドープ層を形成し、
前記不純物ドープ層及び前記透光性基板上に絶縁膜を形成し、
前記絶縁膜上に、複数のTFTを有するTFT回路と、前記複数のTFTにそれぞれ接続される複数のシャッターとを形成することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記不純物ドープ層は、Cu、Mn、Cr、Fe、V、C、Al、Ti、Nbのうちいずれかを含むイオン源を用いて、イオン注入法により形成されることを特徴とする請求項7に記載の表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記不純物ドープ層は、加速電圧を10keV〜200keVとし、イオンのドーズ量を、1014cm−2〜1017cm−2としたイオン注入法により形成されることを特徴とする請求項8に記載の表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記絶縁膜上にアモルファスシリコンを成膜し、前記アモルファスシリコンにレーザーを照射してポリシリコン膜を形成し、前記ポリシリコン膜を用いて前記TFT回路を形成することを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一項に記載の表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−37293(P2013−37293A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175307(P2011−175307)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(502356528)株式会社ジャパンディスプレイイースト (2,552)
【Fターム(参考)】