説明

表面処理材料、基板、基板表面の処理方法、薄膜トランジスタ及び半導体デバイスの製造方法

【課題】本発明の目的は、有機半導体層、または導電膜等薄膜の高精度で生産効率の高いパターニング方法を提供することにある。また、移動度の高い高性能の有機TFTと、高精度で生産効率の高い有機TFTの製造方法を提供することにある。
【解決手段】酸の存在下で分解する保護基を分子内に有することを特徴とする表面処理材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体層または導電膜等薄膜の生産効率の高いパターニング方法を提供する表面処理材料とこれにより処理された基板及びこれを用いた半導体デバイスの製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
情報端末の普及に伴い、コンピュータ用のディスプレイとしてフラットパネルディスプレイに対するニーズが高まっている。また、情報化の進展に伴い、従来、紙媒体で提供されていた情報が電子化される機会が増え、薄くて軽い、手軽に持ち運びが可能なモバイル用表示媒体として、電子ペーパーあるいはデジタルペーパーへのニーズも高まりつつある。
【0003】
一般に平板型のディスプレイ装置においては液晶、有機EL、電気泳動などを利用した素子を用いて表示媒体を形成している。またこうした表示媒体では画面輝度の均一性や画面書き換え速度などを確保するために、画像駆動素子として薄膜トランジスタ(TFT)により構成されたアクティブ駆動素子を用いる技術が主流になっている。
【0004】
ここでTFT素子は、通常、ガラス基板上に、主にa−Si(アモルファスシリコン)、p−Si(ポリシリコン)などの半導体薄膜や、ソース、ドレイン、ゲート電極などの金属薄膜を基板上に順次形成していくことで製造される。このTFTを用いるフラットパネルディスプレイの製造には通常、CVD、スパッタリングなどの真空系設備や高温処理工程を要する薄膜形成工程に加え、精度の高いフォトリソグラフ工程が必要とされ、設備コスト、ランニングコストの負荷が非常に大きい。さらに、近年のディスプレイの大画面化のニーズに伴い、それらのコストは非常に膨大なものとなっている。
【0005】
近年、従来のTFT素子のデメリットを補う技術として、有機半導体材料を用いた有機TFT素子の研究開発が盛んに進められている。この有機TFT素子は低温プロセスで製造可能であるため、軽く、割れにくい樹脂基板を用いることができ、さらに、樹脂フィルムを支持体として用いたフレキシブルなディスプレイが実現できる。また、大気圧下で、印刷や塗布などのウェットプロセスで製造できる有機半導体材料を用いることで、生産性に優れ、非常に低コストのディスプレイが実現できる。
【0006】
移動度の高い良質な有機TFTを製造するためには、ゲート絶縁膜と有機半導体層の良好な界面を形成する必要があり、オクタデシルトリクロロシラン(OTS)やヘキサメチルジシラザン(HMDS)等の表面処理剤でゲート絶縁膜表面を修飾し、自己組織化単分子膜(SAM膜)を形成する試みが行われている(例えば、特許文献1、2、3参照。)。
【0007】
しかしながら、これらの方法では、移動度が未だ低いこと、また、表面処理を施すと有機半導体の溶液をはじき、塗布性が大幅に低下してしまい、良好な有機半導体層を設けることができない、有機半導体のパターンを精度よく形成できないなどの問題が生じていた。
【0008】
また、ゲート絶縁膜の表面処理層(SAM膜)に光分解型の材料を用いて、露光部を親水処理化して、親水性の電極材料(溶液、銀ペーストなど)を供給し、有機半導体薄膜、また、電極等を形成するものがある(特許文献4)。
【0009】
しかしながら、これらの方法を用いても、感光波長が短く感度が低いために露光やパターニングの方法が煩雑になる、有機TFTのキャリア移動度などの性能が劣化するなどの不具合があった。
【特許文献1】特開2004−327857号公報
【特許文献2】国際公開第04/114371号パンフレット
【特許文献3】特開2005−158765号公報
【特許文献4】特開2005−79560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って本発明の目的は、有機半導体層、または導電膜等薄膜の高精度で生産効率の高いパターニング方法を提供することにある。また、移動度の高い高性能の有機TFTと、高精度で生産効率の高い有機TFTの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記課題は以下の手段により達成されるものである。
【0012】
1.酸の存在下で分解する保護基を分子内に有することを特徴とする表面処理材料。
【0013】
2.前記1に記載の表面処理材料が接着または結合した表面、及び前記表面に酸を供給する膜を有することを特徴とする基板。
【0014】
3.前記酸を供給する膜が、光または熱の作用で酸を発生することを特徴とする前記2に記載の基板。
【0015】
4.前記酸を供給する膜が、光酸発生剤を含有することを特徴とする前記3に記載の基板。
【0016】
5.前記酸を供給する膜が光酸発生剤を分光増感する機能を有する色素を含有することを特徴とする前記4に記載の基板。
【0017】
6.前記1に記載の表面処理材料がゲート絶縁膜の表面に接着、または結合したことを特徴とする薄膜トランジスタ。
【0018】
7.前記3に記載の基板中の酸を供給する膜に対し、像様に光または熱を作用させることで、像様に酸を発生させた後、前記酸を供給する膜を除去することを特徴とする基板表面の処理方法。
【0019】
8.前記7に記載の基板表面の処理方法を用いて、酸を像様に形成した領域に、半導体膜または電極のパターンを形成することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、キャリア移動度が高い有機半導体層の形成が生産効率よく行えると同時に、電極膜等の導電性薄膜のパターンを高精度に再現性よく得られる方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0022】
先ず、本発明に係わる酸の存在下で分解する保護基を分子内に有する表面処理材料について説明する。
【0023】
本発明において、表面処理材料は、シリカ表面等の膜形成面と化学的に反応して結合を形成することで所謂自己組織化単分子膜を形成して膜表面の表面エネルギーを変化させる。
【0024】
ここで自己組織化膜とは、膜形成面の構成原子と結合可能な官能基を有する化合物(例えば、前記官能基が直鎖分子に結合されている化合物)を、気体又は液体の状態で膜形成面と共存させることにより、前記官能基が膜形成面の構成原子と吸着乃至結合して、直鎖分子を外側に向けて形成された緻密な単分子膜である。この単分子膜は、化合物の膜形成面に対する自発的な化学吸着によって形成されることから、自己組織化膜と称される。
【0025】
尚、自己組織化膜については、A.Ulman著「An Introduction to Ultrathin Organic Film from Langmuir−Blodgett to Self−Assembly」(Academic Press Inc.Boston,1991)の第3章に詳しい。
【0026】
本発明においては、このような自己組織化膜(SAM膜)の形成によって基板の表面状態を調製する。即ち、自己組織化単分子膜を形成することで基板上の薄膜形成材料と親和性を有する状態とする。
【0027】
このような膜形成面と反応して自己組織化単分子膜(SAM膜)を形成する表面処理材料として、本発明においては、酸の存在下で分解する保護基を分子内に有する表面処理材料を用いる。
【0028】
本発明において、膜形成面の構成分子と結合可能な官能基としてはアルコキシシラン、ハロゲノシラン等の基が好ましく表面処理材料化合物としては、所謂シランカップリング剤が好ましい。
【0029】
本発明の表面処理材料は、下記一般式で表される化合物が好ましい。
【0030】
(X)3Si−(L1)−Y−R
ここにおいて、Xはアルコキシ基、ハロゲン原子、イソシアナート基から選ばれる基を表し、アルコキシ基としては炭素数1〜4の低級アルコキシ基が好ましい。ハロゲン原子のうち好ましいのは塩素原子である。またここにおいてL1は、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、アルキン−ジイル基、アリーレン基、またこれらの組み合わせからなる基から選ばれる2価の連結基を表す。
【0031】
−Y−Rは酸により分解、除去される基を表し、Yは加水分解性であればいかなる基でも構わないが、好ましくは、オキシカルボニルオキシ基、アセタール(ケタール)結合基、またシロキサン結合基等である。
【0032】
アセタール(ケタール)結合基とは以下の構造により表される基であって、
−O−C(R1)(R2)−O−
1、R2はそれぞれ水素原子、アルキル基(炭素原子数1〜6が好ましい)、またアルキレン基(炭素原子数1〜6が好ましい)、アリール基、好ましくはフェニル基を表し、それぞれ置換基を有していてもよい。また、R1、R2は互いに結合してシクロヘキサン環、シクロペンタン等の4〜7員の炭素環を形成してもよい。
【0033】
又、シロキサン結合とは以下の構造により表される基であり、
−O−Si(R1)(R2)−O−
ここにおいて、R1、R2はそれぞれアルキル基(炭素原子数1〜6が好ましい)を表す。
【0034】
又前記一般式で表される化合物において、Rは、前記分解性の基であるYを介して結合する炭素数1〜22までの、アルキル、アルケニル、アルキニル基、アルケニル基、またアリール基であり、更にこれらの基で互いに置換されていてもよい。これらのアルキル、アルケニル、アルキニル基として、好ましくは炭素数4〜22までのアルキル、アルケニル、アルキニル基、アルケニル基、であり、またアリール基としてはフェニル基、ナフチル基が好ましい。またこれらの基は更にアルコキシ基、アリールオキシ基等の基、また、フッ素原子等により置換していてもよい。
【0035】
これらの表面処理材料は、加水分解性基(Y)を有しており、酸との接触により(存在下で)−Y−R基が除去されて、代わりにヒドロキシ基を末端に生成する。
【0036】
これらの表面処理材料の例を以下に挙げる。
【0037】
【化1】

【0038】
これらの表面処理材料の代表的合成例を以下に示す。他の化合物もシランカップリング剤の合成において知られた同様の公知の方法により合成できる。
【0039】
(表面処理材料例示化合物7の合成)
【0040】
【化2】

【0041】
1,1−ジメトキシシクロヘキサン(0.5モル)、フェニルセロソルブ(0.5モル)及びp−トルエンスルホン酸(TsOH)80mgを攪拌しながら100℃で1時間反応させ、その後、150℃まで徐々に温度を上げ、更に150℃で4時間反応させた。反応により生成するメタノールはこの間に留去した。冷却後、更に5−ヘキセン−1−オール(0.5モル)を追加し、再び100℃で1時間反応させた後、150℃まで徐々に温度を上げ、更に150℃で4時間反応させた。冷却後、テトラヒドロフラン(THF)500ml及び無水炭酸カリウム2.5gを加えて攪拌し濾過した。濾液から溶媒を減圧留去し、粘稠な油状の中間体を得た。
【0042】
次いで、前記中間体(0.2モル)と、トリメトキシシラン(0.3モル)と、THF(テトラヒドロフラン)250mlと、テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金(0.2モル)とを窒素下で混合し、50℃で8時間反応させた。冷却後、THFを減圧留去した後、再びヘキサンで希釈した後、セライト濾過を行い、(テトラキストリフェニルホスフィン)白金を除去し、再びヘキサンを減圧留去する。例示化合物7を粘稠な油状物質として得た。
【0043】
これらの表面処理材料は、以下に示すように、アルコキシシラン或いはトリクロルシランが酸化珪素等の水酸基を有する膜形成面と反応して化学的に結合すると考えられる。このようにして形成された自己組織化単分子膜(SAM膜)は表面処理材料自身が酸により分解する基を分子内に有しているために、酸成分と接触すると分解を受けて末端にヒドロキシ基を有する自己組織化単分子膜となる。
【0044】
【化3】

【0045】
これにより基板(膜形成面)の表面エネルギーは大きな変化を被り、例えば、塗布、インクジェット等の溶液プロセスで有機半導体層、また電極等を形成するとき、その親和性が大きく変化するために位置精度の高い形成が可能となる。
【0046】
本発明の表面処理材料を用いて、例えばゲート絶縁層、また基板表面に自己組織化単分子膜を形成するには、これらの表面処理材料溶液を、スピンコート法やスクリーン印刷法、インクジェット法、各種コーターを用いた塗布、浸漬法、スプレー法、など各種の溶液プロセスを用いて塗布し、洗浄、乾燥することによって形成することができる。また気化出来る場合には加温気化接触させ反応させることも出来る。
【0047】
加水分解性の保護基を介して、例えばアルキル基等、疎水性の高い基を有する本発明の表面処理材料による表面処理は基板表面の表面エネルギーを大きく低下させる。
【0048】
所定の領域に酸を発生させる機構を組み込むことで、所定の領域において発生した酸と接触した基板表面の自己組織化単分子膜は、加水分解によって、疎水性の基が脱保護され除去されることで、末端にヒドロキシ基を有する自己組織化単分子膜を形成する。
【0049】
これにより、酸発生領域においては表面エネルギーが高くなり、前記半導体溶液、また電極材料等に対する親和性が向上する。
【0050】
従って、酸発生をパターン通り行うことで、例えば、溶液プロセスによる有機半導体層の形成、また電極材料の適用により電極層を形成する際に、これを高精度に、再現性よく行える。また、自己組織化単分子膜(SAM膜)を用いて有機半導体層を形成するために有機半導体層の有機半導体材料の配向性が向上するため、移動度の高い優れた半導体薄膜が得られる。
【0051】
酸は、前記表面処理材料による自己組織化単分子膜を形成した基板上に、所望のパターン状に酸を供給する方法によればいかなる方法でもよい。例えば、酸の供給はインクジェット法、また印刷法等によってもよい。
【0052】
位置精度や液ハジキへの対処のためには熱或いは光により酸を発生する化合物を含有する含浸層を用いることが望ましい。熱或いは光により酸を発生する化合物を含む薄膜を基板上に形成し、熱或いは光により酸を発生する薄膜として、これに熱或いは光のパターンを照射して、照射部において酸を発生させればよい。
【0053】
光又は熱により酸を発生する化合物としては、プロトン酸を発生しうる材料を用いるが、プロトン酸を発生しうる材料としては、カルボン酸、スルホン酸、燐酸などの酸成分を含有する層や、光酸発生剤、熱酸発生剤など、熱或いは光により、酸を発生しうる材料がある。これらの材料を含有する層を前記基板上に形成されたSAM膜に接して形成し、例えば、加熱により前記プロトン酸を発生しうる材料を含有する層にプロトン酸を供給する機能を付与する。
【0054】
酸発生源には、膜の形成性という観点から、ノボラック、レゾール、ビニルフェノールの重合体などのフェノール樹脂、アクリル酸成分を含むアクリル樹脂、ポリスチレンスルホン酸など、プロトン酸を含有する公知の樹脂を用いるか、光酸発生剤を含有するフェノール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等各種の樹脂層を用いることが好ましい。
【0055】
本発明においては、光酸発生剤を用いるのが好ましく、光酸発生剤としては、例えばジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩などのオニウム塩類、ハロゲン置換アルキル基を有するトリアジン類やハロゲン置換アルキル基を有するオキサジアゾール類など光開始剤として知られるハロゲン化水素酸を形成しうる有機ハロゲン化合物、o−ナフトキノンジアジト−4−スルホン酸ハロゲニドとその誘導体などのオルトキノン−ジアジド化合物類など、各種の公知化合物及び混合物が挙げられ、ハロゲン置換アルキル基を有するs−トリアジン類およびオキサジアゾール類が特に好ましい。その具体例としては、以下の2−ハロメチル−1,3,4−オキサジアゾール系化合物、2−ハロメチル−1,3,4−オキサジアゾール系化合物が挙げられる。
【0056】
【化4】

【0057】
【化5】

【0058】
本発明において、酸発生源を構成するには、これら光酸発生剤を例えば、フェノール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂など各種の樹脂と混合した状態(溶解或いは分散)で、前記SAM膜に接するように薄膜状に形成する。有機バインダーとしては、成膜性がよく不活性な樹脂であれば特に限定はなく例えば、ポリメチルメタクリレート等のアクリル(メタクリル)樹脂、ポリ塩化ビニル等のビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等、また、ポリビニルアルコール、ゼラチン等の水溶性樹脂も用いられる。ノボラック、レゾール、ビニルフェノールの重合体などのフェノール樹脂、アクリル酸成分を含むアクリル樹脂等も好ましく用いられる。
【0059】
光酸発生剤の酸発生源薄膜中での含有量は、その化学的性質及び本発明の酸発生層の組成あるいは物性によって広範囲に変えることができるが、層の固形分の全質量に対して約0.1〜約20質量%の範囲が適当であり、好ましくは0.2〜10質量%の範囲である。
【0060】
光酸発生剤を分解させるための、露光手段としては、キセノンランプ、水銀ランプ、蛍光灯、各種のレーザーなど、任意の方法を用いることができる。
【0061】
また、光酸発生剤を含む層に、各種の増感色素を添加し、分光増感させてもよい。酸発生の効率を向上させることができる。このような増感色素としては、シアニン系色素、スクアリウム系色素、メロシアニン色素、クロコニウム系色素、アズレニウム系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ポリメチン系色素、ナフトキノン系色素、チオピリリウム系色素、ジチオール金属錯体系色素、アントラキノ系色素、インドアニリン金属錯体系色素、分子間CT色素等が挙げられる。例えば、波長700nm以上に吸収を持つ赤外吸収色素、たとえば下記のシアニン系色素(別紙)を用い、半導体レーザーで照射することにより、任意の領域に選択的に酸を発生させることができる。
【0062】
好ましい赤外に吸収を有する色素として、以下に示すものがあげられる。
【0063】
【化6】

【0064】
【化7】

【0065】
また、特開平9−171254等に記載の赤外吸収色素も挙げられる。これらの層中には、カーボンブラック、磁性粉などの光熱変換剤を含んでもよい。また、熱酸発生剤を含んでもよい。
【0066】
膜表面に酸を供給するこのような膜に、光熱変換剤の吸収波長に適合した任意の高密度エネルギー光を照射することで、熱的に酸を発生させる方法を用いることができる。例えば700以上に吸収ピークを有する赤外線吸収剤を用いて、キセノンランプ、ハロゲンランプ、水銀ランプなどによるフラッシュ露光をフォトマスクを介して行うか、半導体レーザー光等を照射することで、酸を発生させることができる。
【0067】
このような方法を用いて、本発明においては、自己組織化単分子膜が形成された基板上に、有機半導体材料、また、電極材料を位置精度よく配置できる。
【0068】
以下、自己組織化単分子膜(SAM膜)が形成された基板上に、有機半導体層、また、電極を形成する工程について以下説明する。
【0069】
図1(1)〜図1(7)に、1例としてコロナ放電処理、酸化ケイ素膜等下引き済みのポリエーテルスルホン樹脂フィルム(200μm)上に、CVD法を用いて酸化ケイ素層を形成した基板1を用いて、基板上に有機半導体層パターンを形成する方法について説明する。
【0070】
まず、基板1の酸化ケイ素層表面に、本発明に係わる表面処理材料による表面処理を全体に行ってその表面に自己組織化単分子膜(SAM膜)2を形成させる(図1(1))。次いで、その表面に、例えば光酸発生剤(例えば前記例示化合物(23))を含有するノボラック樹脂層を塗設して感光層3を設ける(図1(2))。
【0071】
更にその後、マスク露光或いはレーザー露光により半導体チャネル形成領域に露光を行う(図1(3))。感光層の露光領域3’において、光酸発生剤から酸が放出されSAM膜2に供給され、SAM膜を形成する表面処理材料中の分解性基は対応した領域において酸により分解して、末端ヒドロキシ基となり、親水性領域2’が形成される。感光層を例えばバインダーごと溶解除去することで、露光された領域のみ親水性領域2’となって基板表面は露出する(図1(4))。親水性領域2’の表面エネルギーは周囲の領域とは異なり、表面エネルギーが高まるので、親水性領域を含む周辺に、例えばインクジェット法により有機半導体溶液例えばトルエン溶液等を供給すると、表面エネルギーの変化した親水性領域に有機半導体溶液は集まり(図1(5)〜(6))、乾燥後、自己組織化単分子膜上の親水性領域にのみ有機半導体層4が形成する(図1(7))。これにより、高精度で再現性よく、配向性の高いキャリア移動度の高い有機半導体薄膜が形成される。
【0072】
酸の供給はIJなどの印刷法で行ってもよいが、位置精度や液ハジキへの対処のために、含浸層を用いることが望ましい。
【0073】
本発明の方法により形成される有機薄膜トランジスタの例を図2に挙げる。
【0074】
基板1上にゲート電極G、ゲート絶縁層Iを形成し、ゲート絶縁層G上に上記の工程を用いて有機半導体層4を形成し、その後、ソース電極S、ドレイン電極Dをパターニング形成、例えばフォトリソグラフィー法によりレジストを形成後、次にマスクを介して、金を蒸着することで、ソース電極S、ドレイン電極Dを形成し、図2(a)の薄膜トランジスタが形成される。尚、2はゲート絶縁層I上に形成された本発明に係わる表面処理材料を用い形成されたSAM膜であり、2’は酸により分解した親水性領域を示す。
【0075】
又、本発明に係わる表面処理材料を用いる方法は、電極或いはバスライン等配線回路形成にも適用でき、例えば、後述の電極材料中、金属ナノ粒子、金属粉体ペースト、或いは分散液等、導電性ポリマー溶液等、溶液プロセスを用いる場合には、例えば、図1(4)により形成したSAM膜中の親水性領域に電極材料溶液或いは分散液を適用すれば、同様に電極パターンが形成される。
【0076】
例えば図2(b)に、ソース電極、ドレイン電極を本発明のSAM膜を用いる方法で形成した薄膜トランジスタの例を示すが、基板1上にゲート電極Gおよびゲート絶縁層Iとして酸化珪素層を有する基板を用いて、この上にこれらの方法によりソース電極S、ドレイン電極D及び配線回路等をインクジェット法により金属ナノ粒子を用いて形成する。更に、有機半導体層4をソース電極S、ドレイン電極D間の半導体チャネル領域に、例えば蒸着、或いは有機半導体材料溶液を印刷法等の溶液プロセスにより形成することでトップコンタクト型の有機薄膜トランジスタが形成される。
【0077】
本発明に係わる表面処理材料により表面処理された酸による分解前の基板表面の水の接触(20℃)角は70度以上であることが好ましい。この領域におけるトルエンの接触角が、酸により分解した領域におけるトルエンの接触角に対して大きいことが精度の高いパターニングが可能となるために好ましく、さらに、有機薄膜トランジスタにおいて、より高い電界効果移動度を得る上で好ましい。
【0078】
基板の表面粗さなどの影響もあるが、分解を受けた領域のトルエンの接触角は3〜20度、さらに5〜15度がより好ましい。また分解前の基板表面のトルエンの接触角(20℃)は、15〜100度、さらに20〜90度がより好ましい。
【0079】
シランカップリング剤を用いた表面処理方法については、特開2004−327857号公報、同2005−32774号公報、同2005−158765号公報の各公報等に開示されているような公知の方法を適用することができる。例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition、化学蒸着)法等の気相法、スピンコート法やディップコート法等の液相法、更にスクリーン印刷法、マイクロモールド法、マイクロコンタクト法、インクジェット法等の印刷法などを適用することができる。
【0080】
中でも本発明に好ましく用いられる方法としては、表面処理剤の溶液に基体を浸漬、または表面処理剤の溶液を基体に塗布して乾燥する湿式法が好ましい。
【0081】
(湿式法)
湿式法では、例えば、基体を表面処理剤の1質量%トルエン溶液に10分浸漬後、乾燥する、またはこの溶液を基体上に塗布して、乾燥する。
【0082】
(プラズマCVD法、大気圧プラズマCVD法)
表面処理剤(プラズマCVD法では薄膜形成材料を原料ともいう)を含む反応ガスを50℃〜500℃の範囲で加熱された基体上に供給し、熱的反応により薄膜を形成する熱CVD法や、前述の大気圧プラズマ法の装置と放電ガス、反応ガスを用いて、0.01Pa〜100Paの減圧下で行う一般的なプラズマCVD法を用いてもよいが、移動度の向上、薄膜の均一性、薄膜の形成速度、非真空系での効率的生産という観点から大気圧プラズマ法が好ましい。
【0083】
次いで、本発明に係わる薄膜トランジスタの各構成要素の詳細について順次説明する。
【0084】
《有機半導体層》
本発明に係る有機半導体層について説明する。
【0085】
(有機半導体材料)
前記有機半導体チャネルを構成する本発明に係る有機半導体材料は、半導体として機能するものであれば、どのような有機化合物を選択してもよい。有機半導体材料としては、例えば、特開平5−55568号公報等にて開示されているペンタセンやテトラセンといったアセン類、特開平4−167561号公報等に開示されている鉛フタロシアニンを含むフタロシアニン類、特開2004−319982号公報等に開示されているベンゾポルフィリン等のポルフィリン類、その他、ペリレンやそのテトラカルボン酸誘導体、テトラチアフルバレン類等といった低分子量化合物や、特開平8−264805号公報等に開示されているα−チエニールもしくはセクシチオフェンと呼ばれるチオフェン6量体を代表例とする芳香族オリゴマー、またポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリ−p−フェニレンビニレンといった共役高分子など(これらの多くは「アドバンスド・マテリアル」(Advanced Material)誌2002年、第2号99頁に記載されている)が一般的に知られている。その中でも、有機半導体材料として低分子量化合物を用いた場合に本発明の効果がより発揮され、特に、重量平均分子量が5000以下の低分子量有機半導体材料を用いると、高移動度で駆動する有機薄膜トランジスタを得る上でより好ましい。
【0086】
前述した有機半導体材料の中でも、低分子量化合物として、例えば、ピレン、コロネン、オバレン等やその誘導体、アントラセン、ペンタセン等やその誘導体(アセン類)、ルブレンやその誘導体等に代表される縮合多環式炭化水素類、ベンゾジチオフェン、アントラジチオフェン等やその誘導体等に代表されるヘテロ原子を含む縮合多環式芳香族化合物類、チオフェンオリゴマー等が好ましい例として挙げられる。ペンタセン類の例としては、国際公開第03/16599号パンフレット、国際公開第03/28125号パンフレット、米国特許第6,690,029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基をもったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.Amer.Chem.Soc.,vol127.No14.4986等に記載のアセン類及びその誘導体等が挙げられる。
【0087】
これらの中でも特に、J.Amer.Chem.Soc.,vol127.No14.4986等に記載されるようなエチニル置換基を有する縮合多環式芳香族化合物類が好ましく用いられる。
【0088】
これらの例としては下記の有機半導体化合物が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0089】
【化8】

【0090】
また、本発明においては、有機半導体層(有機半導体膜ともいう)に、例えば、アクリル酸、アセトアミド、ジメチルアミノ基、シアノ基、カルボキシル基、ニトロ基等の官能基を有する材料や、ベンゾキノン誘導体、テトラシアノエチレン及びテトラシアノキノジメタンやそれらの誘導体等のように電子を受容するアクセプターとなる材料や、例えば、アミノ基、トリフェニル基、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、フェニル基等の官能基を有する材料、フェニレンジアミン等の置換アミン類、アントラセン、ベンゾアントラセン、置換ベンゾアントラセン類、ピレン、置換ピレン、カルバゾール及びその誘導体、テトラチアフルバレンとその誘導体等のように電子の供与体であるドナーとなるような材料を含有させ、所謂ドーピング処理を施してもよい。
【0091】
前記ドーピングとは電子授与性分子(アクセプター)または電子供与性分子(ドナー)をドーパントとして該薄膜に導入することを意味する。従って,ドーピングが施された薄膜は、前記の縮合多環芳香族化合物とドーパントを含有する薄膜である。本発明に用いるドーパントとしては公知のものを採用することができる。
【0092】
《有機半導体材料(有機半導体分子ともいう)の分子量》
本発明に係る有機半導体材料としては、半導体として機能するものであれば、どのような有機化合物を選択してもよいが、分子量100〜5000の範囲が好ましい。
【0093】
ここで、分子量は、当該業者周知の質量分析装置を用いて測定するが、分子量分布を示す化合物(オリゴマーや高分子等)の分子量(本願では、オリゴマー、高分子の分子量としては、重量平均分子量Mwを用いる。)、該分子量分布の測定は、市販のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)法などを用いて測定する。
【0094】
(重量平均分子量(Mw)の測定及び分子量分布(Mw/Mn)について)
本発明に係る有機半導体材料の分子量は、上記のように100〜5000の範囲が好ましい。更に、前記有機半導体材料が、オリゴマー、高分子のように分子量分布(Mw/Mn)を有するような場合、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比率(分子量分布)は、3以下であることが好ましい。
【0095】
本発明に係る有機半導体材料の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)の測定は、THF(テトラヒドロフラン)をカラム溶媒として用いるGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて分子量測定を行うことができる。
【0096】
本発明に係る有機半導体材料の重量平均分子量(Mw)の測定について説明する。
【0097】
具体的には、測定試料を1mgに対してTHF(脱気処理を行ったものを用いる)を1ml加え、室温下にてマグネチックスターラーを用いて撹拌を行い、充分に溶解させる。ついで、ポアサイズ0.45μm〜0.50μmのメンブランフィルターで処理した後に、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)装置に注入する。
【0098】
GPC測定条件は、40℃にてカラムを安定化させ、THF(テトラヒドロフラン)を毎分1mlの流速で流し、1mg/mlの濃度の試料を約100μl注入して測定する。
【0099】
カラムとしては、市販のポリスチレンジェルカラムを組み合わせて使用することが好ましい。例えば、昭和電工社製のShodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807の組合せや、東ソー社製のTSKgelG1000H、G2000H、G3000H、G4000H、G5000H、G6000H、G7000H、TSK guard column等の組合せ等が好ましい。
【0100】
検出器としては、屈折率検出器(RI検出器)、あるいはUV検出器が好ましく用いられる。試料の分子量測定では、試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて作成した検量線を用いて算出する。検量線作成用のポリスチレンとしては10点程度用いることが好ましい。
【0101】
本発明では、下記の測定条件にて分子量測定を行った。
【0102】
(測定条件)
装置:東ソー高速GPC装置 HLC−8220GPC
カラム:TOSOH TSKgel Super HM−M
検出器:RI及び/またはUV
溶出液流速:0.6ml/分
試料濃度:0.1質量%
試料量:100μl
検量線:標準ポリスチレンにて作製:標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルを用いて検量線(校正曲線ともいう)を作成、分子量の算出に使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔にすることが好ましい。
【0103】
《有機半導体層の形成方法》
本発明に係る有機半導体層の形成方法について説明する。
【0104】
有機半導体層を形成する方法としては、公知の方法で形成することができ、例えば、真空蒸着、MBE(Molecular Beam Epitaxy)、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、スパッタ法、CVD、レーザー蒸着、電子ビーム蒸着、電着、スピンコート、ディップコート、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法、及びLB法等、またスクリーン印刷、インクジェット印刷、ブレード塗布等の方法を挙げることができる。
【0105】
この中で生産性の点で、有機半導体層を塗布により形成することが好ましい。塗布法としては、有機半導体の溶液を用いて簡単、且つ精密に薄膜が形成できるスピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット印刷等が好まれる。
【0106】
なお、Advanced Material誌1999年第6号、480〜483頁に記載のように、ペンタセン等前駆体が溶媒に可溶であるものは塗布により形成した前駆体の膜を熱処理して目的とする有機材料の薄膜を形成してもよい。
(塗布に用いられる有機溶媒)
有機半導体液滴を作製する際に使用される有機溶媒は、芳香族炭化水素、芳香族ハロゲン化炭化水素、脂肪族炭化水素または脂肪族ハロゲン化炭化水素が好ましく、芳香族炭化水素、芳香族ハロゲン化炭化水素または脂肪族炭化水素がより好ましい。
【0107】
芳香族炭化水素の有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、メチルナフタレン等を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されない。
【0108】
芳香族ハロゲン化炭化水素の有機溶媒としては、例えば、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジブロモベンゼン、m−ジブロモベンゼン、o−ジヨードベンゼン、m−ジヨードベンゼン、クロロトルエン、ブロモトルエン、ヨードトルエン、ジクロロトルエン、ジブロモトルエン、ジフルオロトルエン、クロロキシレン、ブロモキシレン、ヨードキシレン、クロロエチルベンゼン、ブロモエチルベンゼン、ヨードエチルベンゼン、ジクロロエチルベンゼン、ジブロモエチルベンゼン、クロロシクロペンタジエン、クロロシクロペンタジエン等を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されない。
【0109】
脂肪族炭化水素の有機溶媒としては、例えば、オクタン、4−メチルヘプタン、2−メチルヘプタン、3−メチルヘプタン、2,2−ジメチルヘキサン、2,3−ジメチルヘキサン、2,4−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン、3,3−ジメチルヘキサン、3,4−ジメチルヘキサン、3−エチルヘキサン、2,2,3−トリメチルペンタン、2,2,4−トリメチルペンタン、2,3,3−トリメチルペンタン、2,3,4−トリメチルペンタン、2−メチル−3−エチルペンタン、3−メチル−3−エチルペンタン、デカン、2,2,3,3−テトラメチルヘキサン、2,2,5,5−テトラメチルヘキサン、3,3,5−トリメチルヘプタン、ノナン、2,2,5−トリメチルヘキサン、4−エチルヘプタン、2,3−ジメチルヘプタン、2−メチルオクタン、ドデカン、ヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,2−ジメチルペンタン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、3,3−ジメチルペンタン、3−エチルペンタン、2,2,3−トリメチルブタン等の鎖状脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロペンタン、p−メンタン、デカリン、シクロヘキシルベンゼン等の環状脂肪族炭化水素等を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されない。本発明に用いられる脂肪族炭化水素としては環状脂肪族炭化水素が好ましい。
【0110】
脂肪族ハロゲン化炭化水素の有機溶媒としては、例えば、クロロホルム、ブロモホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジフルオロエタン、フルオロクロロエタン、クロロプロパン、ジクロロプロパン、クロロペンタン、クロロヘキサン等を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されない。
【0111】
本発明で用いられるこれらの有機溶媒は、1種類あるいは2種類以上混合して用いてもよい。また、有機溶媒は50℃〜250℃の沸点を有するものが好ましい。
【0112】
(有機半導体層の膜厚)
これら有機半導体層の膜厚としては特に制限はないが、得られたトランジスタの特性は、有機半導体層の膜厚に大きく左右される場合が多く、その膜厚は有機半導体により異なるが、一般に1μm以下、特に10〜300nmが好ましい。
【0113】
《絶縁層》
本発明の有機薄膜トランジスタのゲート電極の絶縁層としては、種々の絶縁膜を用いることができるが、特に比誘電率の高い無機酸化物皮膜が好ましい。無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウム等が挙げられる。それらのうち好ましいのは、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタンである。窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の無機窒化物も好適に用いることができる。
【0114】
上記皮膜の形成方法としては、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、大気圧プラズマ法等のドライプロセスや、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法等の塗布による方法、印刷やインクジェット等のパターニングによる方法等のウェットプロセスが挙げられ、材料に応じて使用できる。
【0115】
ウェットプロセスは、無機酸化物の微粒子を任意の有機溶剤あるいは水に必要に応じて界面活性剤等の分散補助剤を用いて分散した液を塗布、乾燥する方法や、酸化物前駆体、例えば、アルコキシド体の溶液を塗布、乾燥する、所謂ゾルゲル法が用いられる。
【0116】
これらのうち好ましいのは、上述した大気圧プラズマCVD法である。
【0117】
絶縁層が陽極酸化膜または該陽極酸化膜と絶縁膜とで構成されることも好ましい。陽極酸化膜は封孔処理されることが望ましい。陽極酸化膜は、陽極酸化が可能な金属を公知の方法により陽極酸化することにより形成される。
【0118】
陽極酸化処理可能な金属としては、アルミニウムまたはタンタルを挙げることができ、陽極酸化処理の方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。陽極酸化処理を行うことにより、酸化被膜が形成される。陽極酸化処理に用いられる電解液としては、多孔質酸化皮膜を形成することができるものならばいかなるものでも使用でき、一般には硫酸、燐酸、蓚酸、クロム酸、ホウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸等、あるいはこれらを2種類以上組み合わせた混酸あるいそれらの塩が用いられる。陽極酸化の処理条件は使用する電解液により種々変化するので一概に特定し得ないが、一般的には電解液の濃度が1〜80質量%、電解液の温度5〜70℃、電流密度0.5〜60A/dm2、電圧1〜100ボルト、電解時間10秒〜5分の範囲が適当である。好ましい陽極酸化処理は電解液として硫酸、燐酸またはホウ酸の水溶液を用い、直流電流で処理する方法であるが、交流電流を用いることもできる。これらの酸の濃度は5〜45質量%であることが好ましく、電解液の温度20〜50℃、電流密度0.5〜20A/dm2で20〜250秒間電解処理するのが好ましい。
【0119】
また有機化合物皮膜としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、あるいはアクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂、及びシアノエチルプルラン等を用いることもできる。
【0120】
有機化合物皮膜の形成法としては、前記ウェットプロセスが好ましい。
【0121】
無機酸化物皮膜と有機酸化物皮膜は積層して併用することができる。また、これら絶縁膜の膜厚としては一般に50nm〜3μm、好ましくは100nm〜1μmである。
【0122】
これらの有機、無機の皮膜は前記表面処理剤による表面処理を受けるとき、皮膜表面は、また、例えばシランカップリング剤中のアルコキシシラン、ハロゲノシラン等の基と反応性をもつ水酸基、アミノ基等の反応性基を有することが好ましい。
【0123】
後述の支持体、基板についても同様であり、例えばシリコン基板等の場合には、表面に熱酸化膜を形成したり、また、表面がシランカップリング剤に対する反応性基をもたない基板の場合、基板上に、酸化珪素層等ヒドロキシ基を有する材料層を形成することが好ましい。
【0124】
《支持体》
支持体を構成する基体材料としては、種々の材料が利用可能であり、例えば、ガラス、石英、酸化アルミニウム、サファイア、チッ化ケイ素、炭化ケイ素等のセラミック基体、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、ガリウム燐、ガリウム窒素等半導体基体、紙、不織布等を用いることができる。
【0125】
中でも、本発明に係る基板は、樹脂からなることが好ましく、例えば、プラスチックフィルムシートを用いることができる。プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ボリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。
【0126】
プラスチックフィルムを用いることで、ガラス基体を用いる場合に比べて軽量化を図ることができ、可搬性を高めることができるとともに衝撃に対する耐性を向上できる。
【0127】
《電極材料》
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて、ソース電極またはドレイン電極を形成する電極材料としては導電性材料であれば特に限定されず、公知の電極材料にて形成される。
【0128】
電極材料としては導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、酸化スズ・アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペースト及びカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が用いられる。
【0129】
また、ドーピング等で導電率を向上させた公知の導電性ポリマー、例えば、導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチオフェン(ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体等)も好適に用いられる。
【0130】
ソース電極またドレイン電極を形成する材料としては、上に挙げた中でも半導体層との接触面において電気抵抗が少ないものが好ましく、p型半導体の場合は特に白金、金、銀、ITO、導電性ポリマー及び炭素が好ましい。
【0131】
ソース電極またドレイン電極とする場合は、上記の導電性材料を含む溶液、ペースト、インク、分散液等の流動性電極材料を用いて形成したもの、特に導電性ポリマー、または白金、金、銀、銅を含有する金属微粒子を含む流動性電極材料が塗布或いは印刷等により電極パターンを形成でき好ましい。
【0132】
また、溶媒や分散媒体としては、有機半導体へのダメージを抑制するため水を60%以上、好ましくは90%以上含有する溶媒または分散媒体であることが好ましい。
【0133】
金属微粒子を含有する流動性電極材料としては、例えば、公知の導電性ペースト等を用いてもよいが、好ましくは粒子径が1nm〜50nm、好ましくは1nm〜10nmの金属微粒子を必要に応じて分散安定剤を用いて、水や任意の有機溶剤である分散媒中に分散した材料である。
【0134】
金属微粒子の材料としては、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、亜鉛等を用いることができる。
【0135】
このような金属微粒子の分散物の製造方法として、ガス中蒸発法、スパッタリング法、金属蒸気合成法等の物理的生成法や、コロイド法、共沈法等の、液相で金属イオンを還元して金属微粒子を生成する化学的生成法が挙げられるが、好ましくは、特開平11−76800号公報、同11−80647号公報、同11−319538号公報、特開2000−239853号公報等に示されたコロイド法、特開2001−254185号公報、同2001−53028号公報、同2001−35255号公報、同2000−124157号公報、同2000−123634号公報の各公報等に記載されたガス中蒸発法により製造された金属微粒子の分散物である。
【0136】
これらの金属微粒子分散物を用いて電極を成形し、溶媒を乾燥させた後、必要に応じて100〜300℃、好ましくは150〜200℃の範囲で形状様に加熱することにより、金属微粒子を熱融着させ、目的の形状を有する電極パターンを形成するものである。
【0137】
電極また配線等の導電パターンの形成方法は、上記を原料として蒸着やスパッタリング等の方法を用いて導電性薄膜を形成することができる。公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて電極形成してもよく、アルミニウムや銅等の金属箔上に熱転写、インクジェット等により、レジストを形成しエッチングする方法等もある。また導電性ポリマーの溶液あるいは分散液、金属微粒子を含有する分散液等を直接インクジェット法によりパターニングしてもよいし、塗工膜からリソグラフやレーザーアブレーション等により形成してもよい。
【0138】
更に導電性ポリマーや金属微粒子を含有する導電性インク、導電性ペースト等を凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等の印刷法でパターニングする方法も用いることができる。
【0139】
また、無電解メッキ法による電極形成法は、電極を設ける部分にメッキ剤と作用して無電解メッキを生じさせる触媒を配した後に、メッキ剤を接触させるものである。
【0140】
これにより前記触媒とメッキ剤とが接触し、前記部分に無電解メッキが施されて、電極が形成される。電極形成に無電解メッキを利用する方法は、低抵抗の電極を煩雑な工程なしに簡便、低コストで形成することができる。
【0141】
本発明に係わる電極また配線等の導電パターンの形成は流動性材料を用いる溶液プロセスにより形成されることが好ましい。
【0142】
《保護層》
本発明の有機薄膜トランジスタ上には保護層を設けることも可能である。保護層としては前述した無機酸化物または無機窒化物等が挙げられ、前記大気圧プラズマ法で形成するのが好ましい。これにより有機薄膜トランジスタの耐久性が向上する。
【0143】
《有機薄膜トランジスタ素子の製造》
有機薄膜トランジスタは、基板上に有機半導体層で連結されたソース電極とドレイン電極を有し、その上に絶縁層を介してゲート電極を有するトップゲート型と、基体上に先ずゲート電極を有し、絶縁層を介して有機半導体膜で連結されたソース電極とドレイン電極を有するボトムゲート型に大別される。本発明の有機薄膜トランジスタは、これらトップゲート型またボトムゲート型のいずれでもよい。
【0144】
また、本発明の有機薄膜トランジスタ(TFT)は、複数の有機薄膜トランジスタが配置される薄膜トランジスタ素子シートであってもよい。
【0145】
薄膜トランジスタ素子シートは、マトリクス配置された多数の有機薄膜トランジスタを有する。各有機薄膜トランジスタのゲート電極のゲートバスライン、各有機薄膜トランジスタのソース電極に連結するソースバスライン等を含み、各有機薄膜トランジスタのドレイン電極には、液晶、電気泳動素子等出力素子が接続され、表示装置における画素を構成する。また、これを駆動するは垂直駆動回路、水平駆動回路が配置されている。薄膜トランジスタ素子シートの作製に本発明に係わる方法は用いることができる。
【0146】
本発明の有機薄膜トランジスタにおいては、支持体がプラスチックフィルムの場合、無機酸化物及び無機窒化物から選ばれる化合物を含有する下引き層、及びポリマーを含む下引き層の少なくとも一方を有することが好ましい。
【0147】
下引き層に含有される無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウム等が挙げられる。また無機窒化物としては窒化ケイ素、窒化アルミニウム等が挙げられる。
【0148】
それらのうち好ましいのは、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、窒化ケイ素である。
【0149】
本発明において、無機酸化物及び無機窒化物から選ばれる化合物を含有する下引き層は上述した大気圧プラズマ法で形成されるのが好ましい。
【0150】
ポリマーを含む下引き層に用いるポリマーとしては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロース樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノキシ樹脂、ノルボルネン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニルとビニルアルコールの共重合体、部分加水分解した塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、塩素化ポリ塩化ビニル、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体、ポリアミド樹脂、エチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン−アクリロニトリル樹脂等のゴム系樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂等を挙げることができる。
【0151】
(好ましい実施の形態)
以下、本発明の好ましい実施形態を挙げて本発明を具体的に説明する。本発明はこれらに限定されない。
【0152】
(実施形態1)
本発明に係わる表面処理材料を用いた有機薄膜トランジスタ(TFT)の製造における好ましい実施の態様、各工程を説明する。
【0153】
図3に、SAM膜を用いて有機半導体層を形成するTFT作製の各工程を示す概略断面図を示す。
【0154】
先ず、基板1として樹脂支持体;ポリエーテルスルホン樹脂フィルム(200μm)を用い、この上に、先ず、50W/m2/minの条件でコロナ放電処理を施した。その後以下のように接着性向上のため下引き層を形成した。
【0155】
(下引き層の形成)
下記組成の塗布液を乾燥膜厚2μmになるように塗布し、90℃で5分間乾燥した後、60W/cmの高圧水銀灯下10cmの距離から4秒間硬化させた。
【0156】
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート単量体 60g
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート2量体 20g
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート3量体以上の成分 20g
ジエトキシベンゾフェノンUV開始剤 2g
シリコーン系界面活性剤 1g
メチルエチルケトン 75g
メチルプロピレングリコール 75g
さらにその層の上に下記条件で連続的に大気圧プラズマ処理して厚さ50nmの酸化ケイ素膜を設け、これらの層を下引き層1aとした(図3(1))。大気圧プラズマ処理装置は、特開2003−303520号公報に記載の図6に準じた装置を用いた。
【0157】
(使用ガス)
不活性ガス:ヘリウム98.25体積%
反応性ガス:酸素ガス1.5体積%
反応性ガス:テトラエトキシシラン蒸気(ヘリウムガスにてバブリング)0.25体積%
(放電条件)
放電出力:10W/cm2
(電極条件)
ここでは、パール工業製高周波電源を用い、周波数13.56MHzで放電させた。
【0158】
電極は、冷却水による冷却手段を有するステンレス製ジャケットロール母材に対して、セラミック溶射によるアルミナを1mm被覆し、その後、テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により封孔処理を行い、表面を平滑にしてJIS B 0601で規定される表面粗さの最大値(Rmax)5μmとした誘電体(比誘電率10)を有するロール電極であり、アースされている。一方、印加電極としては、中空の角型のステンレスパイプに対し、上記同様の誘電体を同条件にて被覆した。
【0159】
〈ゲートバスラインおよびゲート電極の形成〉
次いで、ゲートバスラインおよびゲート電極Gを形成する。
【0160】
即ち、上記の下引き層1a上に、下記組成の光感応性樹脂組成液1を塗布し、100℃にて1分間乾燥させることで、厚さ2μmの光感応性樹脂層を形成したのち、発振波長830nm、出力100mWの半導体レーザーで200mJ/cm2のエネルギー密度でゲートバスラインおよびゲート電極のパターンを露光し、アルカリ水溶液で現像してレジスト像を得た。さらにその上に、スパッタ法により、厚さ300nmのアルミニウム皮膜を一面に成膜した後、MEKで上記光感応性樹脂層の残存部を除去することで、ゲートバスラインおよびゲート電極Gを作製する(図3(2))。
【0161】
(光感応性樹脂組成液1)
色素A 7部
ノボラック樹脂(フェノールとm−、p−混合クレゾールとホルムアルデヒドを共縮合さ
せたノボラック樹脂(Mw=4000、フェノール/m−クレゾール/p−クレゾールのモル比がそれぞれ5/57/38)) 90部
クリスタルバイオレット 3部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 1000部
【0162】
【化9】

【0163】
また感光性樹脂を用いたレジスト形成によるパターニングではなく、静電吸引型インクジェット装置と無電解メッキ法との組み合わせによる本発明の方法を用い、ゲートバスラインおよびゲート電極のパターンを無電解メッキ法により形成してもよい。
【0164】
次いで、以下の陽極酸化皮膜形成工程により、平滑化、絶縁性向上のための補助的絶縁膜として、ゲート電極に陽極酸化被膜を形成した(図では省略)。
【0165】
(陽極酸化被膜形成工程)
ゲート電極を形成したのち基板をよく洗浄し、10質量%リン酸アンモニウム水溶液中で、2分間、30Vの低電圧電源から供給される直流を用いて、陽極酸化皮膜の厚さが120nmになるまで陽極酸化をおこなった。よく洗浄した後に、1気圧、100℃の飽和した蒸気チャンバーの中で、蒸気封孔処理を施した。この様にして陽極酸化被膜を有するゲート電極を下引き処理したポリエーテルスルホン樹脂フィルム上に作製した。
【0166】
次いで、さらにフィルム温度200℃にて、上述した大気圧プラズマ法の使用ガスを用い厚さ30nmの酸化ケイ素層を設け、前記の陽極酸化膜(アルミナ膜)を併せゲート絶縁層Iを形成した(図3の(3))。
【0167】
(使用ガス)
不活性ガス:ヘリウム98.25体積%
反応性ガス:酸素ガス1.5体積%
反応性ガス:テトラエトキシシラン蒸気(ヘリウムガスにてバブリング)0.25体積%
(放電条件)
放電出力:10W/cm2
次に、表面処理材料(例示化合物2)の1質量%トルエン溶液に上記ゲート絶縁層を設けた基板を10分浸漬後、引き上げ30分間乾燥(50℃)した。次いで基板をトルエンで洗浄後さらに乾燥した。これにより、ゲート絶縁層I表面のヒドロキシル基と表面処理材料が反応して結合が生じ、SAM膜2がゲート絶縁層I表面全体に形成された(図3(4))。
【0168】
次いで、以下の感光層塗布液を乾燥後の膜厚が1.5g/m2となるように回転塗布機を用いて100℃で塗布して10分間乾燥し感光層3を形成した(図3(5))。
【0169】
(感光層塗布液)
バインダーB 60部
光酸発生剤A(2−トリクロロメチル−5−〔β−(2−ベンゾフリル)ビニル〕−1,3,4−オキサジアゾール) 5部
赤外線吸収剤 IR18 2部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 1000部
ノニオン活性剤(ポリエチレングリコール分子量2000) 0.5部
尚、バインダーBは、フェノールとm−,p−混合クレゾールとホルムアルデヒドとの共縮合化合物(Mn=500、Mw=2500、フェノール:m−クレゾール:p−クレゾールのモル比が20:48:32)であるノボラック樹脂である
【0170】
【化10】

【0171】
次に、半導体レーザー(波長830nm、出力500mW)で感光層表面に露光を行った。レーザー光径はピークにおける強度の1/e2で13μmであった。また、解像度は走査方向、副走査方向とも2000DPI(1インチ=2.5cm当たりのドット数)とし、基板上の半導体チャネル領域に露光を行った(図3(6))。感光層の光照射領域3’において酸が発生しSAM膜2上の対応する領域には親水性領域2’が形成された。
【0172】
次いで、感光層をプロピレングリコールモノメチルエーテルで洗い流すことで除去し、ゲート絶縁層上のSAM膜を露出させた(図(7))。
【0173】
光照射領域にはSAM膜が発生した酸によって分解して親水性領域が形成された。
【0174】
次に、半導体材料として、有機半導体1を用いて、表面処理されたゲート絶縁層上に有機半導体層を形成した。即ち、有機半導体1のトルエン溶液(0.5質量%)を調製し、ピエゾ方式のインクジェット法を用いて、チャネルを形成すべき大凡の領域に吐出し(図3(8))、窒素ガス中で50℃で3分乾燥した。乾燥、即ち溶媒の蒸発に従って第2の領域に液滴が集まり、正確に基板上の第1の領域に接した第2の領域のみに膜厚20nmの有機半導体層4が形成された(図3(9))。
【0175】
【化11】

【0176】
次にマスクを介して、金を蒸着することで、ソース電極S、ドレイン電極Dを形成し、図3(10)に示される薄膜トランジスタが形成された。
【0177】
以上、本発明の有機半導体素子、TFTシートの製造方法における好ましい実施の態様を示したが、この様に、本発明により、配向性の高い有機半導体薄膜が、精度よく基板上の所定位置に安定に形成されるため、キャリア移動度の高い有機薄膜トランジスタ及びTFTシートを得ることが可能である。
【0178】
(実施形態2)
次いで好ましい実施の形態である本発明に係わるSAM膜を用いた電極の作製例について説明する。
【0179】
実施形態1と同様にゲート電極、ゲート絶縁層、SAM膜を作製し、更に同様に感光層を形成した(図3(5))。
【0180】
次いで、同じ半導体レーザーを用いて基板上のソース電極、ドレイン電極およびソースバスライン領域にパターン状に露光を行った。
【0181】
露光領域に発生した酸により、SAM膜2中に親水性領域2’が形成される(図4(1))。
【0182】
露光後、5分放置した後プロピレングリコールモノメチルエーテルで感光層を除去して、ゲート絶縁層上のSAM膜2において電極形成領域を親水化した(図4(2))。
【0183】
次に、ソース電極、ドレイン電極領域上に金ナノ粒子インクをインクジェット法により堆積後、100℃で10分間加熱して乾燥した(図4(3)〜(4))。乾燥と共に親水化領域に金ナノ粒子インクは集まり親水化領域上にソース電極S、ドレイン電極Dがそれぞれ位置精度よく形成された(厚み100nm)。
【0184】
この上から更に真空蒸着機を用いてペンタセンの蒸着膜(厚さ25nm)を形成し有機半導体層を形成した(図4(5))。ボトムゲートボトムコンタクト型の薄膜トランジスタが形成された。
【0185】
(有機薄膜トランジスタの評価)
実施形態1及び2で作製した有機薄膜トランジスタについて、I−V特性の飽和領域からキャリア移動度を求めたところ、移動度が0.4cm2/Vs以上であり、pチャネルエンハンスメント型FETとして良好に動作した。
【0186】
また、有機半導体薄膜、また、電極の塗布形成においても、また位置精度が良好で特性の再現性もよいことがわかった。
【0187】
本発明に係わる方法は、基板表面に自己組織化単分子膜(SAM膜)を配置して、パターン状に発生させた酸により表面エネルギーを変化させることで、電極又半導体チャネルを位置精度、再現性よく形成することができ、また、有機半導体層の形成においては自己組織化単分子膜を用いより配向性の高い移動度の大きい半導体層が形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0188】
【図1】SAM膜が形成された基板上に、有機半導体材料層を形成する工程を説明する図である。
【図2】本発明の方法により形成される有機薄膜トランジスタの例を示す図である。
【図3】SAM膜を用いて有機半導体層を形成するTFT作製の各工程を示す概略断面図である。
【図4】SAM膜を用いて電極の作製を行うTFT作製の各工程の概略断面図である。
【符号の説明】
【0189】
1 基板
2 自己組織化単分子膜(SAM膜)
3 感光層
4 有機半導体層
G ゲート電極
I ゲート絶縁層
S ソース電極
D ドレイン電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸の存在下で分解する保護基を分子内に有することを特徴とする表面処理材料。
【請求項2】
請求項1に記載の表面処理材料が接着または結合した表面、及び前記表面に酸を供給する膜を有することを特徴とする基板。
【請求項3】
前記酸を供給する膜が、光または熱の作用で酸を発生することを特徴とする請求項2に記載の基板。
【請求項4】
前記酸を供給する膜が、光酸発生剤を含有することを特徴とする請求項3に記載の基板。
【請求項5】
前記酸を供給する膜が光酸発生剤を分光増感する機能を有する色素を含有することを特徴とする請求項4に記載の基板。
【請求項6】
請求項1に記載の表面処理材料がゲート絶縁膜の表面に接着、または結合したことを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項7】
請求項3に記載の基板中の酸を供給する膜に対し、像様に光または熱を作用させることで、像様に酸を発生させた後、前記酸を供給する膜を除去することを特徴とする基板表面の処理方法。
【請求項8】
請求項7に記載の基板表面の処理方法を用いて、酸を像様に形成した領域に、半導体膜または電極のパターンを形成することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−170515(P2008−170515A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−1154(P2007−1154)
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】