説明

表面実装用の水晶発振器

【課題】水晶片に対する電磁シールドを維持しつつ、ICチップを収容する実装基板の機械的強度が保たれ、ICチップ内の電子回路が浮遊容量の影響を受けにくく、かつ、ICチップ内の電子回路が機械的なダメージを受けることがない、表面実装用の水晶発振器を提供する。
【解決手段】積層セラミックからなる実装基板2の底壁層2aを第1の層2a1と第2の層2a2の2層構成としてこれら層2a1,2a2の積層面に金属膜からなる中間層14を設ける。ICチップ1は底壁層2aに対してバンプ6を用いた超音波熱圧着で固着する。中間層14では、ICチップ1の回路形成領域に対応して開口部を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶振動子とこの水晶振動子を用いる発振回路を含むIC(集積回路)チップとを一体化させた表面実装用の水晶発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子とこの水晶振動子を用いる発振回路を集積したICチップとを一体化させた表面実装用の水晶発振器は、小型・軽量であることから、特に携帯型の電子機器、例えば携帯電話機において、周波数や時間の基準源として広く内蔵されている。表面実装用の水晶発振器の1つのタイプとして、特許文献1に示されるように、水晶片を容器内に密閉封入して水晶振動子を構成し、ICチップを別の容器に収容したものをこの水晶振動子に接合することにより一体のものとした接合型の表面実装用水晶発振器がある。図6(a)は従来の接合型の表面実装用水晶発振器の一例を示す断面図であり、図6(b)はその組立断面図であり、(c)はその側断面図である。図6(a)は、水晶片8の長辺を横から見た断面図に相当し、図6(c)は水晶片8の短辺を横から見た断面図に相当する。
【0003】
図示される水晶発振器は、ICチップ1を収容した実装基板2と水晶片8を密閉封入した水晶振動子3とを備え、実装基板2が水晶振動子3に底面に接合されているものである。実装基板2は、平面形状が略長方形の平板状の部材であって、その一方の主面には、ICチップ1を収容するための凹部が形成されている。
【0004】
実装基板2は、略長方形の平板状の底壁層2aと、底壁層2a上に枠状に設けられた枠壁層2bとからなる積層セラミックから構成されており、枠壁層2bによって実装基板2の凹部の側壁が形成されている。枠壁層2bの上面の4隅部、すなわち実装基板2の凹部を囲む開口端面の4隅部には、実装基板2を水晶振動子3の底面に電気的かつ機械的に接合するための接合端子5が形成されている。底壁層2aは、図示下側すなわち実装基板2の外底面を構成する第1の層2a1と、枠壁等2bに接することとなる第2の層2a2とを積層した構成のものであり、第1の層2a1と第2の層2a2とが積層する面のほぼ全面には、金属膜からなる中間層14が設けられている。中間層14はICチップ1及び水晶片8に対する電磁シールドとして機能するものであり、詳細については後述する。底壁層2aの第1の層2a1図示下面すなわち実装基板1の外底面の4隅部には、この水晶発振器をセット基板上に表面実装する際に用いられる実装端子4が設けられている。これらの4つの実装端子4は、例えば、電源端子、接地端子、発振出力端子、AFC(自動周波数制御)端子である。AFC端子は、ICチップ1に対してAFC信号を供給するために用いられる端子である。
【0005】
ICチップ1は、略長方形の形状を有し、水晶振動子3を用いる発振回路を少なくとも含む電子回路を半導体基板に集積化したものである。ICチップ1は、発振回路のほかに、水晶振動子3の周波数温度特性を補償する温度補償機構を備えていてもよい。ICチップ1においては発振回路や温度補償機構などの電子回路が半導体基板の一方の主面に通常の半導体装置製造プロセスによって形成されているので、半導体基板の一対の主面のうちこれらの電子回路が形成されている方の主面のことを、ICチップの回路機能面と呼ぶことにする。回路機能面には、ICチップ1を外部回路に接続するための複数のIC端子も形成されている。IC端子には、電源端子、接地端子、発振出力端子、AFC端子、水晶振動子と接続するための一対の水晶接続端子などが含まれる。
【0006】
実装基板2の凹部の底面、すなわち凹部による第2の層2a2の露出面には、IC端子に対応して回路端子11が設けられている。IC端子のうちの電源端子、接地端子、発振出力端子、AFC端子に対応する回路端子は、それぞれ、不図示の導電路を介して、対応する実装端子4に電気的に接続している。ICチップ2の1対の水晶接続端子に対応する回路端子は、不図示の導電路を介して、例えば略長方形の実装基板2の一方の短辺の両端にある接合端子5に電気的に接続している。残りの2個の接合端子5は、例えば、実装基板2に設けられたスルーホールを介して、実装端子4のうちの接地端子と電気的に接続する。中間層14も実装基板に設けられたスルーホールを介して実装端子4のうちの接地端子と電気的に接続する。
【0007】
ICチップ1は、その回路機能面が実装基板2の凹部の底面に向かい合うようにして、フリップチップボンディングの技術を使用して、実装基板2の凹部底面に固着されている。具体的には、バンプ6を用いる超音波熱圧着によりIC端子を回路端子11に電気的・機械的に接続することによって、ICチップ1を実装基板2の凹部底面に固着する。
【0008】
一方、水晶振動子3は、凹部を有する積層セラミックからなる容器本体7内に水晶片8を収容し、凹部を取り囲む開口端面に対して金属カバー9を接合することによって、凹部内に水晶片8を密閉封入したものである。図示されたものでは、開口端面に設けられた金属厚膜あるいは金属リング15に対して、シーム溶接やビーム溶接によって金属カバー9が接合されている。容器本体7の外底面の4隅部は、実装基板2の接合端子5に対応する外部端子10が設けられている。容器本体7の凹部の底面には、水晶片8を保持するための1対の水晶保持端子12が設けられている。
【0009】
水晶片8は、例えば略長方形のATカットの水晶片であり、その両方の主面にそれぞれ励振電極(不図示)が設けられるともに、これらの励振電極からは、水晶片8の一端部の両側に向けて、すなわち一方の短辺の両端部に向けて、それぞれ引出電極(不図示)が延出されている。引出電極が延出された水晶片8の一端部両側を導電性接着剤13などで固着することにより、水晶片8が水晶保持端子12に対して電気的・機械的に接続し、水晶片8が容器本体7の凹部内に保持されている。
【0010】
容器本体7において、1対の水晶保持端子12は、容器本体7の外底面における一方短辺の両端にある1対の外部端子10に対して、不図示の導電路を介して電気的に接続する。容器本体7の外底面における他方の短辺の両端にある外部端子10は、容器本体7に設けられたビアホールなどを介して金属カバー9と電気的に接続する。
【0011】
このような構成では、実装基板2の接合端子5と水晶振動子3の外部端子10とを半田などを用いて接続することにより、実装基板2と水晶振動子3とが電気的かつ機械的に接続し、表面実装用水晶発振器として完成することになる。このとき、水晶振動子3における水晶保持端子12は、外部端子10、接合端子5及び回路端子11を介してIC端子に電気的に接続することになるから、水晶片8がICチップ1内の発振回路と電気的に接続することになる。同様に金属カバー9が実装端子4中の接地端子と電気的に接続し、底壁層2a内に形成されている中間層14も、実装端子4中の接地端子と電気的に接続する。
【0012】
この構成では、セット基板に搭載したときに接地電位に接続されることとなる金属カバー9及び中間層14によって水晶片8及びICチップ1が上下方向から挟まれており、金属カバー9及び中間層14が電磁シールドとして機能することになるので、外部からの電磁波ノイズが水晶片8やICチップ1に入来することがなくなって、水晶発振器が安定して動作するようになる。
【特許文献1】特許第2960374号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら上述した従来の接合型の表面実装用水晶発振器では、その水晶発振器が搭載される機器の小型化が進行するにつれて、平面サイズのみならず高さ(セット基板に搭載した場合の部品高)も小さくする必要がある。そのため、図6に示した構成においては、ICチップ1の実装基板2へのフリップチップボンディングに用いるバンプ6の直径も小さくなる傾向にあり、その結果、ICチップ1の回路機能面と実装基板2の凹部の内底面すなわち底壁層2aの露出面との間隔(隙間)も、例えば30μmと小さくなりつつある。
【0014】
ICチップの回路機能面には発振回路などが形成されているが、ICチップの回路機能面と凹部の内底面との間隔が小さくなると、回路機能面に形成されている発振回路などの電子回路と、底壁層2a内に形成されている中間層14との距離も短くなり、これらの間の浮遊容量が無視できなくなる。この浮遊容量が大きすぎると、ICチップ1内の発振回路などの電子回路の動作に悪影響が及ぼされる。
【0015】
また、積層セラミックからなる実装基板2は、複数層の未焼成のセラミックシートを積層して焼成することによって得られるものであるが、図6に示した構成のものでは、底壁層2aの第1の層2a1と第2の層2a2との積層面において金属膜である中間層14が広範囲に設けられている。セラミックと金属との接合強度は一般にセラミック同士の接合強度よりも低いので、このように中間層14が広い面積で設けられている構成では、実装基板2の機械的強度が不十分なものとなりやすい。また、実装基板2を焼成で形成する際にセラミックシートが不均等に収縮することにより、実装基板2の凹部の内底面に部分的に凸形状となる場合がある。ICチップ1と凹部の内底面との距離を小さくした場合にこのような凸形状が生じると、この凸形状がICチップ1の回路機能面に当接することとなり、回路機能面に形成されている電子回路がダメージを受けて正常に動作しなくなることも考えられる。
【0016】
そこで本発明の目的は、水晶片に対する電磁シールドを維持しつつ、小型に形成した場合であっても、ICチップを収容する実装基板の機械的強度が保たれ、ICチップ内の電子回路が浮遊容量の影響を受けにくく、かつ、実装基板の凹部の内底面に形成される凸形状によってICチップ内の電子回路がダメージを受けることがない、表面実装用の水晶発振器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の表面実装用の水晶発振器は、上面に設けられた金属カバーによって水晶片を密閉封入する容器を有し、水晶片に電気的に接続する外部端子を該容器の外底面に備える水晶振動子と、一方の主面に外部端子に対応する接合端子を備え、他方の主面に少なくとも接地端子を含む複数の実装端子を備える実装基板と、実装基板の一方の主面に形成された凹部内に収容され、水晶片を用いる発振回路が集積化されたICチップと、を有し、実装基板は、積層セラミックからなり、底壁層と、開口部を有して底壁層上に形成された枠壁層とを有し、開口部によって凹部が構成され、凹部の底面にICチップがフリップチップボンディングにより固着され、ICチップは複数の実装端子及び接合端子に電気的に接続し、底壁層は第1の層及び第2の層を積層してなり、第1の層と第2の層との積層面に金属膜からなる中間層が設けられ、中間層は開口部を有してICチップにおける回路形成領域に対応する領域には中間層が設けられておらず、金属カバー及び中間層は接地端子に電気的に接続することを特徴とする。
【0018】
あるいは本発明の表面実装用の水晶発振器は、水晶片と、水晶片を用いる発振回路が集積化されたICチップと、ICチップを収容する第1の凹部を一方の主面に有し水晶片を収容する第2の凹部を他方の主面に有する実装基板と、実装基板は、積層セラミックからなり、底壁層と、開口部を有して底壁層の一方の主面上に形成されて第1の凹部を形成する第1の枠壁層と、開口部を有して底壁層の他方の主面上に形成されて第2の凹部を形成する第2の枠壁層と、を有し、2の凹部の底面には一対の水晶保持端子が設けられて水晶片はに接合し、2の凹部の開口端面に金属カバーが接合してカバーによって水晶片が第2の凹部内に密閉封入され、第1の凹部の開口端面には少なくとも接地端子を含む複数の実装端子が形成され、1の凹部の底面にICチップがフリップチップボンディングにより固着され、ICチップは複数の実装端子及びに電気的に接続し、底壁層は第1の層及び第2の層を積層してなり、第1の層と第2の層との積層面に金属膜からなる中間層が設けられ、中間層は開口部を有してICチップにおける回路形成領域に対応する領域には中間層が設けられておらず、カバー及び中間層は接地端子に電気的に接続することを特徴とする。
【0019】
本発明の表面実装用の水晶発振器において、フリップチップボンディングは、例えば、バンプを用いた超音波熱圧着である。
【発明の効果】
【0020】
容器本体においてICチップがフリップチップボンディングで固着されることになる底壁層内に設けられる中間層に、ICチップにおける回路形成領域に対応する開口部を設けることにより、回路形成領域に対向する位置には中間層が形成されないこととなるので、回路形成領域内の発振回路などの電子回路と中間層との間の浮遊容量の発生を抑制することができて、発振回路などの電子回路が安定して動作し、また、セラミック層と金属膜とが接合する部分の面積が減少するので容器本体の機械的強度が増す。さらに、中間層が形成されない領域では底壁層の表面がわずかに窪むので、この領域に凸形状が生じてもその凸形状がICチップの回路形成領域に当接することがなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明の第1の実施形態の表面実装用水晶発振器を示す側断面図であり、図2はICチップの回路機能面を説明する平面図であり、図3は図1に示す水晶発振器における実装基板を説明する図であって、(a)は実装基板の上面図であり、(b)は底壁層の平面図であり、(c)は底壁層において第1の層と第2の層の間に形成される中間層の配置を示す平面図であり、(d)は実装基板の底面図である。これらの図において、図6におけるものと同じ構成要素については同じ参照符号が付与されており、これらについての説明は省略または簡略化する。図1は、上述の図6(c)と同様に、略長方形の水晶片8の短辺を横から見た図に相当する。
【0022】
第1の実施形態の表面実装用水晶発振器は、図6に示した従来の接合型の表面実装用水晶発振器と同様のものであるが、底壁層2aにおいて第1の層2a1と第2の層2a2との積層面に金属膜として形成される中間層14の形状において図6に示したものと異なっている。なお、水晶片8が密閉封入されている水晶振動子3の構成は図6に示したものと同一である。
【0023】
図2はICチップ1の回路機能面を示している。本実施形態ではICチップ1は、発振回路のほかに、水晶振動子3の周波数温度特性を補償する温度補償機構を備えるものであり、本実施形態の水晶発振器は温度補償型水晶発振器である。略長方形のICチップ1において、発振回路や温度補償機構などの電子回路は回路機能面のほぼ中央の領域に形成されており、回路機能面の外周部にはこれらの電子回路は形成されない。回路機能面のうち電子回路が形成されている領域を回路形成領域とすると、図2に示したものでは、回路機能面のほぼ中央部の略長方形の領域が回路形成領域17であり、回路形成領域17を取り囲むように、複数のIC端子16が配置している。図示したものでは、8個のIC端子16が、1列当たり4個ずつ2列になって配置している。IC端子16は、回路形成領域17に形成されている電子回路に接続するものであって、ここに示したものでは、電源端子、接地端子、発振出力端子、AFC端子、水晶振動子と接続するための一対の水晶接続端子、温度補償機構に対して温度補償データを書き込むために用いられる1対の書込端子がIC端子16として設けられている。
【0024】
本実施形態の水晶発振器では、実装基板2の凹部の内底面に図6に示したものと同様にフリップチップボンディングでICチップ1を固着させた場合に回路形成領域17の直下となる位置には、中間層14は設けられていない。言い換えれば、底壁層2aの第1の層2a1と第2の層2a2との積層面に金属膜として設けられる中間層14には、後述の図3(c)に示すように、回路形成領域17に対応して略長方形の開口が設けられている。
【0025】
次に、本実施形態の表面実装用水晶発振器で用いられる実装基板2についてさらに詳しく説明する。
【0026】
図3(a)は実装基板2の上面図であり、枠壁層2bの上面の4角部にそれぞれ接合端子5が形成されていることを示している。枠壁層2bに囲まれた部分が凹部であり、図3(a)では凹部内にICチップ1が固着されていることが示されている。図3(b)は、底壁層2aの上面、すなわち第2の層2a2の上面を示している。図示2点鎖線は枠壁層2bの内壁の形成位置を示している。図3(b)に示すように、第2の層2a2の上面に8個の回路端子11が1列4個ずつ2列に並んで設けられている。これらの回路端子のうち図示左端の2個は、ICチップ1の水晶接続端子に対応するものであって、枠壁層2bに形成されたビアホールを介して枠壁層2bの上面の接合端子5に電気的に接続している。図示左端から2つ目の2個の回路端子11は、ICチップ1のAFC端子及び電源端子に対応するものであり、図示右端から2つ目の2個の回路端子11は、ICチップ1の1対の書込端子に対応するものである。図示右端の2個の回路端子11のうち図示上側にあるものは、ICチップ1の出力端子に対応し、図示下側にあるものは接地端子に対応するものである。これらの回路端子11のうち、AFC端子、電源端子、発振出力端子及び接地端子に対応するものは、導電路により第2の層2a2の上面の4角部に引き出されており、実装基板2の外側面に形成された導電路を介して、実装基板2の外底面のそれぞれの実装端子4に電気的に接続している。
【0027】
図3(c)は、第1の層2a1の上面図であって、第1の層2a1と第2の層2a2との積層面における中間層14の配置を示している。図示斜線部が中間層14の形成領域である。中間層14には、ICチップ1の回路形成領域17に対応して開口部が設けられている。中間層14は、第1の層2a1の上面の1つの角部に引き出され、実装基板2の外側面に形成された導電路のうちの接地端子用の導電路に電気的に接続することにより、実装端子4のうちの接地端子に電気的に接続する。また中間層14は、第2の層2a2及び枠壁層2bに形成されたビアホールを介して、接地用の接合端子5にも電気的に接続している。
【0028】
図3(d)は、実装基板2の外底面を示しており、4角部にそれぞれ実装端子4が設けられていることを示している。これらの実装端子4は、それぞれ、接地端子、電源端子、AFC端子及び発振出力端子であり、上述したように、実装基板2の外側面と第2の層2a2の上面に形成された導電路を介して、対応する回路端子11に電気的に接続している。さらに本実施形態の水晶発振器では、実装基板2の外底面のそれぞれの長辺の中央部に、ICチップ1内の温度補償機構に温度補償データを書き込むためのデータ書込端子18も設けられている。データ書込端子18は、第1の層2a1及び第2の層2a2に形成されたビアホールを介して、書込端子用の回路端子11に電気的に接続している。
【0029】
このような実装基板2は、第1の層2a1、第2の層2a2及び枠壁層2bにそれぞれ対応する未焼成のセラミックシートを積層し、焼成することが製造される。これらの未焼成のセラミックシートには、あらかじめ、実装端子4、導電路、接合端子5、回路端子11及び中間層14などに対応する金属膜パターンが形成されている。
【0030】
ICチップ1は、その回路機能面がこのようにして製造された実装基板2の凹部の底面に向かい合うようにして、バンプ6を用いる超音波熱圧着によりIC端子を回路端子11に電気的・機械的に接続することによって、実装基板2の凹部底面に固着される。別途製造されている水晶振動子3に対して、ICチップ1を搭載した実装基板2を接合することによって、本実施形態の表面実装用の水晶発振器が完成する。
【0031】
本実施形態の水晶発振器では、ICチップ1の回路形成領域17に対向する位置には中間層14は形成されていない。したがって、ICチップ1の回路機能面と実装基板2の凹部の内底面との間隔が小さくなっても、回路形成領域17内の回路において中間層14との間で大きな浮遊容量が発生することがなくなり、発振回路などの電子回路が確実な動作が維持される。図6に示した従来のものと比べ、中間層14の面積が小さくなって、その分、第1の層2a1と第2の層2a2とが直接接合する部分の面積が大きくなっている。セラミック相互の接合の方がセラミックと金属との接合よりも強度が大きいので、本実施形態の水晶発振器は従来のものに比べて機械的強度が向上している。
【0032】
また、底壁層2aは、中間層14に対応する金属膜パターンを介在させて第1の層2a1と第2の層2a2に対応するセラミックシートを積層し、焼成することによって形成されるので、中間層14における開口部分では、第2の層2a2の表面が少し窪むことになる。このような窪みがあると、焼成時の不均一な収縮等によって第2の層2a2に凸形状部が形成されるような場合であっても、窪んだ分だけその凸形状の高さが低くなり、凸形状がICチップ1の回路形成領域17に当接することが防がれることになる。したがって、本実施形態によれば、水晶発振器の信頼性をさらに高めることができる。
【0033】
上述した構成では、第2の層2a2の上面において2列に並んで配置している回路端子11のうち、配置の端部にある回路端子11を発振出力端子に対応する回路端子として、この回路端子11から第2の層2a2の最も近い角部に導電路を延ばすようにしている。その結果、発振出力が通過することとなる導電路はその大半で中間層14の上を通過することとなり、発振出力への外来ノイズの影響を防ぐことができるようになる。
【0034】
図4は、本実施形態の水晶発振器における電磁シールドの効果を説明する図である。図4は、水晶片8の長辺を横から見た断面図に相当する。ICチップ内の電子回路については回路構成を工夫するなどによって外来の電磁波ノイズの影響を受けにくくすることは可能であるので、水晶発振器において外来ノイズに対する電磁シールドを設ける場合には、水晶振動子を構成する水晶片に対する電磁シールドを第1に考えるべきことになる。本実施形態の水晶発振器では、ICチップ1の回路形成領域17に対応して中間層14に開口が形成されており、この開口の位置で中間層14による電磁シールドは設けられないことになる。しかしながら、半導体基板からなるICチップ1自体を水晶片8に対する電磁シールドとして機能させることが可能であるので、図4に示すように、水晶片8は、図示上方向からは金属カバー9によってシールドされ、図示下方向からは中間層14とICチップ1とによってシールドされることになる。図4において太矢印は外来ノイズを示している。結局、本実施形態の水晶発振器は、水晶片8に関して言えば、図6に示した従来のものと同等の電磁シールド特性を有することとなり、外来ノイズによる影響を受けにくいものとなっている。
【0035】
次に、本発明の第2の実施形態の表面実装用の水晶発振器について説明する。
【0036】
表面実装用の水晶発振器としては、第1の実施形態で示した接合型のもののほかに、両方の主面にそれぞれ凹部が形成された容器本体あるいは実装基板を使用し、一方の主面の凹部に水晶片を密閉封入して水晶振動子を構成するとともに、他方の主面の凹部にICチップを格納した、いわゆる二室型のものがある。二室型の水晶発振器においても本発明を適用することができる。図5は、二室型のものとして構成された本発明の第2の実施形態の表面実装用の水晶発振器を示している。図5において、上述の第1の実施形態におけるものと同じ構成要素には同一の参照符号が付与されており、これらについての説明は省略または簡略化する。なお図5では、説明のため、図1に示すものとは逆に、実装基板の図示下側の面にICチップが固着されるものとしている。
【0037】
図5に示した水晶発振器は、図1に示した水晶発振器の積層セラミックからなる実装基板2において、底壁層2aの2つの面のうち、枠壁層2bが設けられない方に面に第2の枠壁層2cを設け、上述と同様に枠壁層2bの底面にICチップ1を固着するともに、底壁層2aと第2の枠壁層2cとによって形成された凹部20b内に水晶片8を収容したものである。水晶片8としては上述と同様のものが使用され、水晶片8を保持するための一対の水晶保持端子12は凹部20bの内底面において第2の枠壁層2c上に形成されている。凹部20bを取り囲む開口端面に対して金属カバー9を接合することによって、凹部20b内に水晶片8が密閉封入されている。金属カバー9は、上述と同様に、凹部20bの開口端面に設けられた金属厚膜あるいは金属リング15に対してシーム溶接やビーム溶接によって接合されている。
【0038】
水晶発振器をセット基板上に表面実装する際に用いられる実装端子4は、枠壁層2bの上面すなわちICチップ1を取り囲む凹部20aの開口端面の4角部に形成されている。凹部20aの内底面には上述と同様に回路端子11が設けられており、水晶接続端子に対応する回路端子11は、底壁層2aに形成された導電路(不図示)を介して水晶保持端子12と電気的に接続している。ICチップ1は、第1の実施形態で使用されているものと同様のものであって、バンプ6を用いた超音波熱圧着によって回路端子11に接合することによって、凹部20a内に収容されている。
【0039】
この構成においても、底壁層2aは第1の層2a1と第2の層2a2からなり、第1の層2a1と第2の層2a2の積層面には、金属膜からなり実装端子4にうちの接地端子に電気的に接続する中間層14が形成されている。中間層14には、ICチップ1の回路形成領域17に対応して開口部が設けられている。この水晶発振器でも、ICチップ1の回路形成領域17に対向する位置には中間層14は形成されていないことにより、ICチップ1の回路機能面と実装基板2の凹部20aの内底面との間隔が小さくなっても、回路形成領域17内の回路において中間層14との間で大きな浮遊容量が発生することがなくなり、発振回路などの電子回路が確実な動作が維持される。また、中間層14に開口部を設けない場合に比べ、水晶片8に対する電磁シールドの効果は維持しつつ、実装容器2の機械的強度を向上させることができる。第2の層2aの表面は、中間層14の開口部の位置すなわちICチップ1の回路形成領域17の位置において少し窪むので、焼成による容器本体の形成時に不均等な収縮によって凸形状が形成されるような場合であっても、この凸形状がICチップの回路形成領域17に当接することを防ぐことができる。
【0040】
以上、本発明に基づく表面実装用水晶発振器について、温度補償機構がICチップに内蔵された温度補償型水晶発振器の場合を例に挙げて説明したが、温度補償機構を備えないICチップを用いる表面実装用水晶発振器にも本発明が適用できることは当然のことである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1の実施形態の表面実装用水晶発振器を示す側断面図である。
【図2】ICチップの回路機能面を示す平面図である。
【図3】(a)は実装基板の上面図であり、(b)は底壁層の平面図であり、(c)は底壁層において第1の層と第2の層の間に形成される中間層の配置を示す平面図であり、(d)は実装基板の底面図である。
【図4】図1に示す表面実装用水晶発振器における電磁シールドの効果を説明する図である。
【図5】本発明の第2の実施形態の表面実装用水晶発振器を示す側断面図である。
【図6】(a),(b),(c)は、それぞれ従来の接合型の表面実装用水晶発振器の断面図、組立断面図及び側断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1…ICチップ、2…実装基板、2a…底壁層、2a1…第1の層、2a2…第2の層、2b,2c…枠壁層、3…水晶振動子、4…実装端子、5…接合端子、6…バンプ、7…容器本体、8…水晶片、9…金属カバー、10…外部端子、11…回路端子、12…水晶保持端子、13…導電性接着剤、14…中間層、15…金属リング、16…IC端子、17…回路形成領域、18…データ書込端子、20a,20b…凹部、21…容器本体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に設けられた金属カバーによって水晶片を密閉封入する容器を有し、前記水晶片に電気的に接続する外部端子を該容器の外底面に備える水晶振動子と、
一方の主面に前記外部端子に対応する接合端子を備え、他方の主面に少なくとも接地端子を含む複数の実装端子を備える実装基板と、
前記実装基板の前記一方の主面に形成された凹部内に収容され、前記水晶片を用いる発振回路が集積化されたICチップと、
を有し、
前記実装基板は、積層セラミックからなり、底壁層と、開口部を有して前記底壁層上に形成された枠壁層とを有し、前記開口部によって前記凹部が構成され、前記凹部の底面に前記ICチップがフリップチップボンディングにより固着され、前記ICチップは前記複数の実装端子及び前記接合端子に電気的に接続し、
前記底壁層は第1の層及び第2の層を積層してなり、前記第1の層と前記第2の層との積層面に金属膜からなる中間層が設けられ、前記中間層は開口部を有して前記ICチップにおける回路形成領域に対応する領域には前記中間層が設けられておらず、
前記金属カバー及び前記中間層は前記接地端子に電気的に接続する、表面実装用の水晶発振器。
【請求項2】
水晶片と、
前記水晶片を用いる発振回路が集積化されたICチップと、
前記ICチップを収容する第1の凹部を一方の主面に有し前記水晶片を収容する第2の凹部を他方の主面に有する実装基板と、
前記実装基板は、積層セラミックからなり、底壁層と、開口部を有して前記底壁層の一方の主面上に形成されて前記第1の凹部を形成する第1の枠壁層と、開口部を有して前記底壁層の他方の主面上に形成されて前記第2の凹部を形成する第2の枠壁層と、を有し、
前記第2の凹部の底面には一対の水晶保持端子が設けられて前記水晶片は前記水晶保持端子に接合し、
前記第2の凹部の開口端面に金属カバーが接合して前記金属カバーによって前記水晶片が前記第2の凹部内に密閉封入され、
前記第1の凹部の開口端面には少なくとも接地端子を含む複数の実装端子が形成され、
前記第1の凹部の底面に前記ICチップがフリップチップボンディングにより固着され、前記ICチップは前記複数の実装端子及び前記水晶保持端子に電気的に接続し、
前記底壁層は第1の層及び第2の層を積層してなり、前記第1の層と前記第2の層との積層面に金属膜からなる中間層が設けられ、前記中間層は開口部を有して前記ICチップにおける回路形成領域に対応する領域には前記中間層が設けられておらず、
前記金属カバー及び前記中間層は前記接地端子に電気的に接続する、表面実装用の水晶発振器。
【請求項3】
前記フリップチップボンディングはバンプを用いた超音波熱圧着である、請求項1または2に記載の表面実装用の水晶発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−246696(P2009−246696A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−91003(P2008−91003)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】