説明

複合成形品及びその製造方法

【課題】ガーニッシュ本体部とクッション部とを接合して一体化したピラーガーニッシュにおいて、ガーニッシュ本体部からクッション部が剥がれ難くする。
【解決手段】ガーニッシュ本体部14の凹状リブ部20(クッション部15の棒状部26との接合部)に2つの突出部27を設け、クッション部15を射出成形する際に2つの突出部27を凹状リブ部20の表面から離れる方向に対して交差する方向に変形(傾斜又は湾曲又は屈曲)させることで、クッション部15の棒状部26のうちの突出部27と凹状リブ部20との間に、凹状リブ部20の表面から離れる方向において突出部27に対してアンダーカット形状となるアンダーカット部28を形成する。これにより、ガーニッシュ本体部14の凹状リブ部20の突出部27とクッション部15の棒状部26のアンダーカット部28とが係合状態となり、凹状リブ部20から棒状部26が剥がれ難くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1部材と第2部材とを接合して一体化した複合成形品及びその製造方法に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
自動車のピラーに沿って装着されるピラーガーニッシュにおいては、例えば、特許文献1(特開2007−69517号公報)に記載されているように、硬質のポリマー材料の射出成形によりガーニッシュ本体部を成形した後、クッション部を成形するための射出成形型内にガーニッシュ本体部をセットした状態で軟質のポリマー材料を射出して充填することで、クッション部を成形すると共にガーニッシュ本体部にクッション部を接合して、ガーニッシュ本体部とクッション部とを一体化したピラーガーニッシュを製造するようにしたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−69517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1のピラーガーニッシュは、例えば、クッション部のうちの射出ゲートから射出されるポリマー材料を導入する棒状部分(射出通路)や、クッション部のうちのピラーガーニッシュの端末に相当する部分が、射出成形時や車両への取付作業時に他の部材に当たったり引っ掛かったりし易く、その際、ガーニッシュ本体部からクッション部が離れる方向に強い力が加わると、ガーニッシュ本体部からクッション部が剥がれる不具合が発生するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、第1部材と第2部材とを接合して一体化した複合成形品において、第1部材から第2部材が剥がれ難くすることができ、複合成形品の品質を向上できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、第1のポリマー材料からなる第1部材と第2のポリマー材料からなる第2部材とを接合して一体化した複合成形品であって、第1部材のうちの第2部材と接合する接合部に、該接合部の表面から突出する少なくとも1つの突出部が一体的に設けられ、該突出部の少なくとも一部が接合部の表面から離れる方向に対して交差する方向に傾斜又は湾曲又は屈曲しており、第2部材のうちの突出部と接合部との間に、該接合部の表面から離れる方向において突出部に対してアンダーカット形状となるアンダーカット部が形成されている構成としたものである。
【0007】
この構成では、第2部材のうちの突出部と接合部との間に、接合部の表面から離れる方向において突出部に対してアンダーカット形状となるアンダーカット部が形成されているため、第1部材の突出部と第2部材のアンダーカット部とが係合状態となり、第1部材から第2部材が離れる方向に外力が加わっても、第1部材から第2部材が剥がれ難くすることができて第2部材の剥がれを防止することができ、複合成形品の品質を向上させることができる。
【0008】
この場合、請求項2のように、第1部材は、第2部材よりも剛性が高くて硬くすると良い。このようにすれば、第1部材の突出部と第2部材のアンダーカット部との係合をより強固にすることができ、第2部材の剥がれ防止効果を高めることができる。
【0009】
また、請求項3のように、突出部は、2つ以上設けられ、少なくとも2つの突出部が異なる方向に傾斜又は湾曲又は屈曲しているようにしても良い。このようにすれば、異なる方向の外力に対して第2部材の剥がれ防止効果を持たせることができる。
【0010】
本発明は、第1部材と第2部材とを接合して一体化した種々の複合成形品に適用可能であるが、例えば、請求項4のように、車両のピラーに沿って装着されるピラーガーニッシュに適用しても良い。このようにすれば、ピラーガーニッシュの品質を向上させることができる。
【0011】
本発明の複合成形品を製造する場合には、請求項5のように、第2部材と接合する接合部の表面から突出する少なくとも1つの突出部が一体的に設けられた第1部材を準備する第1部材準備工程と、第2部材を射出成形するための開閉可能な射出成形型が開いているときに該射出成形型内に第1部材をセットする第1部材セット工程と、射出成形型を閉じて該射出成形型の成形面と第1部材とによって第2部材成形用キャビティを形成するキャビティ形成工程と、第2部材成形用キャビティ内に加熱溶融した第2のポリマー材料を射出して充填することで第2部材を成形すると共に第1部材と第2部材とを接合して一体化する第2部材成形工程と、第2部材を硬化又は固化させる処理工程とを含み、第2部材成形工程において、第2部材成形用キャビティ内に第2のポリマー材料を射出して充填する際に、第2のポリマー材料の流動によって突出部の少なくとも一部を接合部の表面から離れる方向に対して交差する方向に変形させた後に、処理工程において、突出部が変形した状態で第2部材を硬化又は固化させることで、第2部材のうちの突出部と接合部との間に該接合部の表面から離れる方向において突出部に対してアンダーカット形状となるアンダーカット部を形成するようにすると良い。このようにすれば、本発明の複合成形品を効率良く製造することができる。
【0012】
この場合、請求項6のように、突出部は、第2部材成形工程において第2のポリマー材料の流動方向に沿うように設けられているようにしても良い。このようにすれば、第2のポリマー材料の流動性を確保しながら広範囲に亘って突出部を変形させてアンダーカット部を形成することができる。
【0013】
或は、請求項7のように、突出部は、第2部材成形工程において第2のポリマー材料の流動方向に対して交差する方向に沿うように設けられているようにしても良い。このようにすれば、第2のポリマー材料の熱と圧力を突出部に安定して加えることができ、突出部を安定して変形させることができる。
【0014】
また、請求項8のように、突出部は、連続した突条となるように設けられているようにしても良い。このようにすれば、突出部を断続的に設ける場合に比べて突出部を成形し易くすることができる。
【0015】
更に、請求項9のように、突出部は、2つ以上設けられ、第2部材成形工程において第2のポリマー材料の流動によって少なくとも2つの突出部が異なる方向に変形するようにしても良い。このようにすれば、異なる方向の外力に対して第2部材の剥がれ防止効果を持たせることができる。
【0016】
また、請求項10のように、突出部は、第2部材成形工程において第2部材成形用キャビティのうちの第2のポリマー材料の射出ゲートと直結した部分に位置するように設けられているようにしても良い。このようにすれば、第2のポリマー材料の熱と圧力が高い状態で、第2のポリマー材料の熱と圧力を突出部に加えることができ、突出部を容易に変形させることができる。
【0017】
更に、請求項11のように、第1のポリマー材料は、第2のポリマー材料の射出成形時の温度よりも低い温度で熱変形可能な材料を用いるようにすると良い。このようにすれば、第2部材(第2のポリマー材料)の射出成形時の温度が突出部(第1のポリマー材料)の熱変形可能な温度よりも高くなるため、突出部を確実に変形させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は本発明の実施例1におけるピラーガーニッシュが装着された状態を示す車両のフロントピラー及びその周辺部の斜視図である。
【図2】図2はピラーガーニッシュの裏面図である。
【図3】図3はピラーガーニッシュの要部の斜視図である。
【図4】図4はガーニッシュ本体部の突出部及びその周辺部のクッション部成形前の状態を示す側面図である。
【図5】図5は図4のA−A断面図である。
【図6】図6はガーニッシュ本体部の突出部及びその周辺部のクッション部成形後の状態を示す断面図(図4のA−A断面図相当)である。
【図7】図7はクッション部の射出成形型の平面図である。
【図8】図8はクッション部の射出成形型の断面図である。
【図9】図9は実施例2のガーニッシュ本体部の突出部及びその周辺部のクッション部成形前の状態を示す側面図である。
【図10】図10は実施例3のピラーガーニッシュの要部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を具体化した幾つかの実施例を説明する。
【実施例1】
【0020】
本発明の実施例1を図1乃至図8に基づいて説明する。
図1に示すように、車両のフロントピラー11に沿って長尺なピラーガーニッシュ12(複合成形品)が装着され、このピラーガーニッシュ12によってフロントピラー11と窓板13(フロントガラス)との間を覆うようになっている。
【0021】
図2及び図3に示すように、ピラーガーニッシュ12は、ガーニッシュ本体部14(第1部材)の外面にクッション部15(第2部材)を射出成形してガーニッシュ本体部14とクッション部15とを接合して一体化したものである。
【0022】
ガーニッシュ本体部14は、クッション部15よりも剛性が高くて硬質の本体部成形用のポリマー材料(第1のポリマー材料)で成形されている。この本体部成形用のポリマー材料としては、例えば、ロックウェル硬度117のAES樹脂(アクリロニトリルエチレンプロピレンスチレン樹脂)が用いられ、他にもPP(ポリプロピレン)、硬質PVC(塩化ビニル)等の熱可塑性合成樹脂が使用可能である。
【0023】
一方、クッション部15は、ガーニッシュ本体部14よりも軟質のクッション部成形用のポリマー材料(第2のポリマー材料)で成形されている。このクッション部成形用のポリマー材料(第2のポリマー材料)としては、例えば、ショアA硬度83のTPO(オレフィン系熱可塑性エラストマー)が用いられ、他にもTPS(スチレン系熱可塑性エラストマー)、軟質PVC等の熱可塑性合成樹脂が使用可能である。
【0024】
また、本体部成形用のポリマー材料は、クッション部成形用のポリマー材料の射出成形時の温度(例えば250℃)よりも低い温度で熱変形可能な材料が用いられる。
尚、本体部成形用のポリマー材料やクッション部成形用のポリマー材料としては、ガーニッシュ本体部14やクッション部15としての性能を満足できるポリマー材料をそれぞれ任意に選択できるが、互いに相溶性を有するポリマー材料を選択するとガーニッシュ本体部14とクッション部15とがクッション部15の成形によって接合し易くなるため、必要な接合強度を確保し易い。
【0025】
図3に示すように、ガーニッシュ本体部14は、装飾頭部16と、この装飾頭部16を受け支える脚部17と、この脚部17のピラー側の縁部から車内側へ突出するリブ18とが一体的に形成され、ガーニッシュ本体部14の内部には、中空部19が形成されている。また、リブ18の長手方向の複数箇所には、窓板側へ凹んだ凹状リブ部20や、クリップ等を係合保持するための係合孔21が形成されている。
【0026】
一方、クッション部15は、ガーニッシュ本体部14のピラー側に接合されるピラー側リップ部22と、ガーニッシュ本体部14の窓板側に接合される窓板側リップ部23と、ガーニッシュ本体部14の上側端末及び下側端末に接合される上側端末リップ部24及び下側端末リップ部25(図2参照)と、ガーニッシュ本体部14の凹状リブ部20に接合される棒状部26とが一体的に形成されている。この棒状部26は、後述する射出ゲート35から射出されるクッション部成形用のポリマー材料を導入する射出通路に相当する部分である。
【0027】
ピラー側リップ部22は、ガーニッシュ本体部14の装飾頭部16のピラー側の裏面等に接合され、窓板側リップ部23は、ガーニッシュ本体部14の脚部17の窓板側の裏面等に接合される。棒状部26は、ガーニッシュ本体部14の凹状リブ部20のピラー側の側面等に接合される。
【0028】
また、図4乃至図6に示すように、ガーニッシュ本体部14の凹状リブ部20のうちのクッション部15(棒状部26)との接合部には、凹状リブ部20の表面(凹状リブ部20のピラー側の側面)から突出する複数(例えば2つ)の突出部27が一体的に設けられている。ここで、図4及び図5はクッション部15の射出成形前の状態を示す図であり、図6はクッション部15の射出成形後の状態を示す図である。
【0029】
本実施例1では、図4及び図5に示すように、2つの突出部27がそれぞれ連続した突条となるように設けられ、突出部27を断続的に設ける場合に比べて突出部27を成形し易くするようになっている。突出部27は、後述するクッション部成形工程においてクッション部成形用のポリマー材料の流動方向(図4に矢印Iで示す方向)に対して交差する方向(図5に矢印Fで示す方向)に突出した状態でクッション部成形用のポリマー材料の流動方向に沿って延びるように設けられている。また、図5に示すように、突出部27は、高さ寸法hが幅寸法tよりも大きくなるように形成され、幅方向に変形(傾斜又は湾曲又は屈曲)し易い形状になっている。
【0030】
更に、図6に示すように、突出部27は、後述するクッション部成形工程においてクッション部成形用のポリマー材料の流動によって2つの突出部27が凹状リブ部20(接合部)の表面から離れる方向(図6に矢印Fで示す方向)に対して交差する方向で且つ互いに異なる方向(2つの突出部27の先端側が互いに離れる方向)に変形するようになっている。これにより、クッション部15の射出成形後は、2つの突出部27が凹状リブ部20の表面から離れる方向に対して交差する方向で且つ互いに異なる方向に変形(傾斜又は湾曲又は屈曲)した状態となり、クッション部15(棒状部26)のうちの突出部27と凹状リブ部20との間に、該凹状リブ部20の表面から離れる方向において突出部27に対してアンダーカット形状(突出部27と係合状態となるような形状)となるアンダーカット部28が形成されている。
【0031】
次に、図7及び図8を用いてピラーガーニッシュ12の製造方法について説明する。
ピラーガーニッシュ12を製造する場合には、まず、本体部成形工程(第1部材準備工程)を実行する。この本体部成形工程では、ガーニッシュ本体部14を射出成形するための射出成形型(図示せず)のキャビティ内に本体部成形用のポリマー材料を射出して充填すると共に中空部形成用のガス(例えば窒素ガス)を注入するガスアシスト射出成形をフルショット法又はショートショット法で行うことで中空部19を有すると共に突出部27が設けられたガーニッシュ本体部14を成形する。
【0032】
この後、クッション部15を射出成形する。図7に示すように、クッション部15を射出成形するための射出成形型29は、2つのピラーガーニッシュ12(右側フロントピラー用のピラーガーニッシュと左側フロントピラー用のピラーガーニッシュ)のクッション部15を同時に成形できるようになっている。図8に示すように、射出成形型29は、固定型30と、この固定型30に対して上下方向に移動可能な可動型31と、固定型30に対して左右方向に移動可能な2つのスライド型32,33等から構成され、射出成形型29内にガーニッシュ本体部14をセット(載置)した状態で該射出成形型29を閉じたときに、ガーニッシュ本体部14の外面(クッション部15が成形される部分以外の部分)を挟持してガーニッシュ本体部14を固定すると共に、射出成形型29の成形面とガーニッシュ本体部14とによってクッション部15を成形するためのクッション部成形用キャビティ34が形成されるようになっている。
【0033】
この射出成形型29には、クッション部成形用のポリマー材料を射出するピラー側の射出ゲート35と窓板側の射出ゲート36とがそれぞれクッション部成形用キャビティ34の長手方向に沿って複数箇所に設けられている。ピラー側の射出ゲート35は、クッション部成形用キャビティ34のうちの棒状部26を成形する部分(射出通路)34aにクッション部成形用のポリマー材料を射出するように設けられ、窓板側の射出ゲート36は、クッション部成形用キャビティ34のうちの窓板側リップ部23を成形する部分34cにクッション部成形用のポリマー材料を射出するように設けられている。突出部27は、後述するクッション部成形工程においてクッション部成形用キャビティ34のうちの棒状部26を成形する部分34a(つまり射出ゲート36と直結した部分)に位置するように設けられ、2つの突出部27の中間位置の真上にピラー側の射出ゲート35が位置するようになっている。
【0034】
射出成形機の射出ノズル(図示せず)から射出されて加熱溶融したクッション部成形用のポリマー材料は、ランナー37→スプルー38,39→射出ゲート35,36→クッション部成形用キャビティ34の経路で流動する。その際、ピラー側の射出ゲート35から射出された溶融ポリマー材料は、クッション部成形用キャビティ34のうちの棒状部26を成形する部分34aを通ってピラー側リップ部22を成形する部分34bに充填され、窓板側の射出ゲート36から射出された溶融ポリマー材料は、クッション部成形用キャビティ34のうちの窓板側リップ部23を成形する部分34cに充填される。更に、溶融ポリマー材料は、ピラー側リップ部22を成形する部分34bや窓板側リップ部23を成形する部分34cから上側端末リップ部24を成形する部分(図示せず)や下側端末リップ部25を成形する部分(図示せず)にも充填される。
【0035】
尚、射出ノズル先端の温度は、クッション部成形用のポリマー材料の射出成形に適した温度(例えば250℃)に設定される。また、クッション部成形用キャビティ34のうちのピラー側リップ部22を成形する部分34bと窓板側リップ部23を成形する部分34cとを直接連通させる連通流路を設けるようにして射出ゲート35,36のいずれかを省略しても良い。また、ポリマー材料を射出成形型内で加熱可能なホットランナーを用いるようにしても良い。
【0036】
ピラーガーニッシュ12を製造する場合には、前述した本体部成形工程を実行してガーニッシュ本体部14を射出成形した後、クッション部15を射出成形するための射出成形型29が開いているときに該射出成形型内29の所定位置にガーニッシュ本体部14をセットするガーニッシュ本体部セット工程(第1部材セット工程)を実行する。
【0037】
この後、射出成形型29を閉じて、ガーニッシュ本体部14の外面(クッション部15が成形される部分以外の部分)を挟持してガーニッシュ本体部14を固定すると共に、射出成形型29の成形面とガーニッシュ本体部14とによってクッション部成形用キャビティ34を形成するキャビティ形成工程を実行する。
【0038】
この後、クッション部成形用キャビティ34内に加熱溶融したクッション部成形用のポリマー材料を射出して充填することでクッション部15を成形すると共にガーニッシュ本体部14にクッション部15を接合して、ガーニッシュ本体部14とクッション部15とを一体化するクッション部成形工程(第2部材成形工程)を実行する。
【0039】
このクッション部成形工程において、クッション部成形用キャビティ34内にクッション部成形用のポリマー材料を射出して充填する際に、クッション部成形用のポリマー材料の流動によって、2つの突出部27を凹状リブ部20の表面から離れる方向(図6に矢印Fで示す方向)に対して交差する方向で且つ互いに異なる方向(2つの突出部27の先端側が互いに離れる方向)に変形(傾斜又は湾曲又は屈曲)させる。
【0040】
この場合、突出部27は、クッション部成形用キャビティ34のうちの棒状部26を成形する部分34a(つまり射出ゲート36と直結した部分)に位置するように設けられているため、クッション部成形用のポリマー材料の熱と圧力が高い状態で、クッション部成形用のポリマー材料の熱と圧力を突出部27に加えることができ、突出部27を容易に変形させることができる。しかも、本体部成形用のポリマー材料は、クッション部成形用のポリマー材料の射出成形時の温度よりも低い温度で熱変形可能な材料を用いているため、クッション部15(クッション部成形用のポリマー材料)の射出成形時の温度が突出部27(本体部成形用のポリマー材料)の熱変形可能な温度よりも高くなり、突出部27を確実に変形させることができる。
【0041】
この後、クッション部15(クッション部成形用のポリマー材料)を硬化又は固化させる処理工程を実行する。この処理工程において、突出部27が変形した状態でクッション部15を硬化又は固化させることで、クッション部15(棒状部26)のうちの突出部27と凹状リブ部20との間に、凹状リブ部20の表面から離れる方向において突出部27に対してアンダーカット形状となるアンダーカット部28を形成する。
【0042】
この後、射出成形型29を開いて、ガーニッシュ本体部14とクッション部15とを接合して一体化したピラーガーニッシュ12を取り出す取出工程を実行する。これにより、ピラーガーニッシュ12の製造が完了する。
【0043】
以上説明した本実施例1では、ガーニッシュ本体部14の凹状リブ部20(クッション部15の棒状部26との接合部)に2つの突出部27を設けておき、クッション部15を射出成形する際に2つの突出部27を凹状リブ部20の表面から離れる方向に対して交差する方向に変形(傾斜又は湾曲又は屈曲)させることで、クッション部15の棒状部26のうちの突出部27と凹状リブ部20との間に、凹状リブ部20の表面から離れる方向において突出部27に対してアンダーカット形状となるアンダーカット部28を形成するようにしたので、ガーニッシュ本体部14の凹状リブ部20の突出部27とクッション部15の棒状部26のアンダーカット部28とが係合状態となる。これにより、射出成形時や車両への取付作業時に、ガーニッシュ本体部14の凹状リブ部20からクッション部15の棒状部26が離れる方向に外力が加わっても、凹状リブ部20から棒状部26が剥がれ難くすることができて棒状部26の剥がれを防止することができ、ピラーガーニッシュ12の品質を向上させることができる。
【0044】
また、本実施例1では、ガーニッシュ本体部14は、クッション部15よりも剛性が高くて硬質の材料で成形されているため、ガーニッシュ本体部14の突出部27とクッション部15のアンダーカット部28との係合をより強固にすることができ、クッション部15(棒状部26)の剥がれ防止効果を高めることができる。
【0045】
更に、本実施例1では、2つの突出部27が異なる方向に変形(傾斜又は湾曲又は屈曲)しているため、異なる方向の外力に対してクッション部15(棒状部26)の剥がれ防止効果を持たせることができる。
【0046】
また、本実施例1では、クッション部成形工程においてクッション部成形用のポリマー材料の流動方向に沿うように突出部27を設けるようにしたので、クッション部成形用のポリマー材料の流動性を確保しながら広範囲に亘って突出部27を変形させてアンダーカット部28を形成することができる。
【実施例2】
【0047】
次に、図9を用いて本発明の実施例2を説明する。但し、前記実施例1と実質的に同一部分については説明を省略又は簡略化し、主として前記実施例1と異なる部分について説明する。
【0048】
本実施例2では、図9に示すように、2つの突出部40は、クッション部成形工程においてクッション部成形用のポリマー材料の流動方向(図9に矢印Iで示す方向)に対して交差する方向(斜め方向)に沿って延びるように設けられている。更に、2つの突出部40は、クッション部成形用のポリマー材料の流動方向の上流側から下流側に進むに従って両者の間隔が狭くなると共にそれぞれの幅寸法も細くなるように形成されている。これにより、上流側では突出部40同士の間隔が広いため、クッション部成形用のポリマー材料の流動を妨げ難く、下流側に進むに従って突出部40同士の間隔が狭くなるため、突出部40に安定して圧力を加えることができると共に、下流側に進むに従って突出部40の幅寸法が細くなるため、突出部40を変形させ易くすることができる。
【0049】
以上説明した本実施例2では、クッション部成形工程においてクッション部成形用のポリマー材料の流動方向に対して交差する方向に沿って延びるように突出部40を設けるようにしたので、クッション部成形用のポリマー材料の熱と圧力を突出部40に安定して加えることができ、突出部40を安定して変形させることができる。
【実施例3】
【0050】
次に、図10を用いて本発明の実施例3を説明する。但し、前記実施例1と実質的に同一部分については説明を省略又は簡略化し、主として前記実施例1と異なる部分について説明する。
【0051】
上記各実施例1,2では、ガーニッシュ本体部14の凹状リブ部20に突出部27,40を設けるようにしたが、本実施例3では、図10に示すように、ガーニッシュ本体部14の脚部17のうちのクッション部15(窓板側リップ部23)との接合部に、脚部17の表面(脚部17の窓板側の裏面)から突出する複数(例えば2つ)突出部41を設けるようにしている。クッション部15の射出成形後は、2つの突出部41が脚部17の表面から離れる方向に対して交差する方向で且つ互いに異なる方向に変形(傾斜又は湾曲又は屈曲)した状態となり、クッション部15(窓板側リップ部23)のうちの突出部41と脚部17との間に、該脚部17の表面から離れる方向において突出部41に対してアンダーカット形状(突出部41と係合状態となるような形状)となるアンダーカット部42が形成されている。
【0052】
尚、突出部41は、ガーニッシュ本体部14の射出成形型の型抜き方向に対して交差する方向に突出するように設けると、型抜きを妨げるため、ガーニッシュ本体部14の射出成形型の型抜き方向に沿った方向に突出するように設けることが好ましく、このようにすれば、ガーニッシュ本体部14の成形と同時に突出部41を成形することができる。
【0053】
以上説明した本実施例3では、クッション部15の窓板側リップ部23のうちの突出部41と脚部17との間に、脚部17の表面から離れる方向において突出部41に対してアンダーカット形状となるアンダーカット部42を形成するようにしたので、ガーニッシュ本体部14の脚部17の突出部41とクッション部15の窓板側リップ部23のアンダーカット部42とが係合状態となり、これにより、射出成形時や車両への取付作業時に、ガーニッシュ本体部14の脚部17からクッション部15の窓板側リップ部23が離れる方向に外力が加わっても、脚部17から窓板側リップ部23が剥がれ難くすることができて窓板側リップ部23の剥がれを防止することができる。
【0054】
尚、突出部の形状、方向、数等は、上記各実施例1〜3で説明したものに限定されず、適宜変更しても良く、例えば、クッション部成形用のポリマー材料の流動方向に沿って突出部を断続的に設けるようにしたり、或は、クッション部成形用のポリマー材料の流動方向に対して交差する方向(斜め方向や直角方向)に沿って突出部を断続的に設けるようにしても良い。また、一部の突出部をクッション部成形用のポリマー材料の流動方向に沿って設け、他の突出部をクッション部成形用のポリマー材料の流動方向に対して交差する方向に沿って設けるようにしても良い。また、突出部を直線形状ではなく湾曲形状(例えば円弧形状)又は屈曲形状(例えばV字形状)に設けるようにしても良い。
【0055】
また、上記各実施例1〜3では、ガーニッシュ本体部をガスアシスト射出成形により成形するようにしたが、これに限定されず、ガーニッシュ本体部の成形方法を適宜変更しても良く、例えば、通常の射出成形や押出成形により中空部を有していないガーニッシュ本体部を成形するようにしても良い。また、ガーニッシュ本体部は、ピラーガーニッシュの製造ラインで製造するようにしても良いが、外部から入手するようにしても良い。
【0056】
その他、本発明は、自動車のフロントピラーに沿って装着されるピラーガーニッシュに限定されず、例えば、センターピラーやリアピラーに沿って装着されるピラーガーニッシュ、側部車体パネルに装着されるボディサイドモールディング、ホイールアーチに沿って装着されるホイールアーチモールディング(マッドガードを含む)、ドア開口窓の下縁に沿って装着されるベルトモールディング等、第1部材と第2部材とを接合して一体化した複合成形品であれば、本発明を適用して実施できる。
【符号の説明】
【0057】
12…ピラーガーニッシュ(複合成形品)、14…ガーニッシュ本体部(第1部材)、15…クッション部(第2部材)、16…装飾頭部、17…脚部、18…リブ、20…凹状リブ部、22…ピラー側リップ部、23…窓板側リップ部、26…棒状部、27…突出部、28…アンダーカット部、29…射出成形型、34…クッション部成形用キャビティ(第2部材成形用キャビティ)、35,36…射出ゲート、40…突出部、41…突出部、42…アンダーカット部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のポリマー材料からなる第1部材と第2のポリマー材料からなる第2部材とを接合して一体化した複合成形品であって、
前記第1部材のうちの前記第2部材と接合する接合部に、該接合部の表面から突出する少なくとも1つの突出部が一体的に設けられ、該突出部の少なくとも一部が前記接合部の表面から離れる方向に対して交差する方向に傾斜又は湾曲又は屈曲しており、
前記第2部材のうちの前記突出部と前記接合部との間に、該接合部の表面から離れる方向において前記突出部に対してアンダーカット形状となるアンダーカット部が形成されていることを特徴とする複合成形品。
【請求項2】
前記第1部材は、前記第2部材よりも剛性が高くて硬いことを特徴とする請求項1に記載の複合成形品。
【請求項3】
前記突出部は、2つ以上設けられ、少なくとも2つの突出部が異なる方向に傾斜又は湾曲又は屈曲していることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合成形品。
【請求項4】
車両のピラーに沿って装着されるピラーガーニッシュとして用いられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の複合成形品。
【請求項5】
第1のポリマー材料からなる第1部材と第2のポリマー材料からなる第2部材とを接合して一体化した複合成形品を製造する方法であって、
前記第2部材と接合する接合部の表面から突出する少なくとも1つの突出部が一体的に設けられた第1部材を準備する第1部材準備工程と、
前記第2部材を射出成形するための開閉可能な射出成形型が開いているときに該射出成形型内に前記第1部材をセットする第1部材セット工程と、
前記射出成形型を閉じて該射出成形型の成形面と前記第1部材とによって第2部材成形用キャビティを形成するキャビティ形成工程と、
前記第2部材成形用キャビティ内に加熱溶融した第2のポリマー材料を射出して充填することで前記第2部材を成形すると共に前記第1部材と前記第2部材とを接合して一体化する第2部材成形工程と、
前記第2部材を硬化又は固化させる処理工程とを含み、
前記第2部材成形工程において、前記第2部材成形用キャビティ内に前記第2のポリマー材料を射出して充填する際に、前記第2のポリマー材料の流動によって前記突出部の少なくとも一部を前記接合部の表面から離れる方向に対して交差する方向に変形させた後に、前記処理工程において、前記突出部が変形した状態で前記第2部材を硬化又は固化させることで、前記第2部材のうちの前記突出部と前記接合部との間に該接合部の表面から離れる方向において前記突出部に対してアンダーカット形状となるアンダーカット部を形成することを特徴とする複合成形品の製造方法。
【請求項6】
前記突出部は、前記第2部材成形工程において前記第2のポリマー材料の流動方向に沿うように設けられていることを特徴とする請求項5に記載の複合成形品の製造方法。
【請求項7】
前記突出部は、前記第2部材成形工程において前記第2のポリマー材料の流動方向に対して交差する方向に沿うように設けられていることを特徴とする請求項5に記載の複合成形品の製造方法。
【請求項8】
前記突出部は、連続した突条となるように設けられていることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の複合成形品の製造方法。
【請求項9】
前記突出部は、2つ以上設けられ、前記第2部材成形工程において前記第2のポリマー材料の流動によって少なくとも2つの突出部が異なる方向に変形することを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載の複合成形品の製造方法。
【請求項10】
前記突出部は、前記第2部材成形工程において前記第2部材成形用キャビティのうちの前記第2のポリマー材料の射出ゲートと直結した部分に位置するように設けられていることを特徴とする請求項5乃至9のいずれかに記載の複合成形品の製造方法。
【請求項11】
前記第1のポリマー材料は、前記第2のポリマー材料の射出成形時の温度よりも低い温度で熱変形可能であることを特徴とする請求項5乃至10のいずれかに記載の複合成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−143900(P2012−143900A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2227(P2011−2227)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000219705)東海興業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】