説明

距離測定装置及び飛翔体位置測定装置

【課題】 鳥類等の飛翔体までの距離及び位置を簡易に測定する。
【解決手段】 レーザー距離計10の接眼レンズ11にリレーレンズ20を介してビデオカメラ30を装着した構成であり、レーザー距離計10の接眼レンズ11に表示される飛翔体の画像をビデオカメラ30のモニタ画面31に表示させることができる。従って、観測者は、レーザー距離計10の接眼レンズ11をのぞき込み、アイポイント位置を保ちながらレーザーを照射する必要はなく、ビデオカメラ30のモニタ画面31を見ながら、レーザー距離計10を操作して飛翔体を追尾でき、飛翔体を追尾しながらのレーザー照射作業が容易となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鳥類などのように、空中を決まった軌道を描くことなく予測不可能な動きをする飛翔体までの距離を測定する距離測定装置、並びに、この距離測定装置を利用して飛翔体の位置を測定する飛翔体位置測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、空港等への鳥類の飛来を防止するに当たって、複数台のカメラを用いて鳥類の位置を特定する技術が開示されている。各カメラ相互間の距離について、特許文献1には具体的な記載はないが、100m以上(通常1km〜5kmの範囲)離れて飛行する飛翔体の位置情報を得るためには、例えば、4km四方の領域を撮影できるように焦点距離の極めて短い超広角レンズ(例えば、35mm判換算で28mm未満)を装着した2台のカメラを遠距離(通常60m〜6km)離して設置し、ステレオ撮影を行っている。
【0003】
一方、特許文献2、3に示されているように、所定の目標物体までの距離をレーザー光を照射して測定する装置が知られている。すなわち、レーザ光を目標物体に投射した時と目標物体からの反射レーザ光を受光した時の時間差から、目標物体までの距離を測定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−4858号公報
【特許文献2】特開2009−174866号公報
【特許文献3】特開2008−96181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示された技術の場合、飛翔体を撮影可能なカメラの設置場所を遠距離離れた位置に2箇所確保する必要がある。しかし、山間部などでは、このような撮影条件を満たす場所を2箇所確保することが困難な場合も多い。また、飛翔体が鳥類などの場合には、予定の撮影対象領域から外れた領域を飛行することも多く、その場合に、カメラの設置場所を遠距離離れた位置で新たに2箇所確保することは容易ではない。さらに、遠距離離れているため、撮影装置はもとより、操作に要する作業人員も、1台のカメラで撮影する場合の2倍必要となる。
【0006】
カメラ1台で飛翔体の2次元画像を撮影し、その画像情報と飛翔体までの距離を組み合わせることで飛翔体の位置情報を得ることが考えられ、この場合において、簡易な距離測定装置として特許文献2、3に示されたようなレーザー距離計を用いることが考えられる。しかしながら、特許文献2、3に示されたレーザー距離計は、あくまで目標物体が静止していることを前提としている。
【0007】
鳥類などの飛翔体は一定の軌道ではなく予測不可能な動きをするため、その距離を測定する際には、接眼レンズをのぞきながら鳥類の動きに合わせてレーザーを照射する必要がある。しかし、正しいアイポイント位置を保ちながら予測不可能な動きをする鳥類に所定時間に亘りレーザーを照射し続けることは困難であった。その一方、動いている鳥類の距離データを逐次記憶していくに当たって、例えば、距離データがレーザー距離計の側面の液晶モニタに表示されるタイプでは、観測者は接眼レンズから目を離さなければ距離を把握することができない。従って、接眼レンズをのぞいて飛翔体を追尾しながら測定結果を瞬時に把握できるように、接眼レンズ内に距離データがデジタル表示されるものが望ましい。しかし、接眼レンズ内に表示される測定結果を、飛翔体の追尾を続けながら、短い時間間隔で人手により筆記し記録していくことは非常に面倒であり、また、測定時間が日中数時間に亘ることも多く、そのような長時間に亘って記録していくことは尚更困難な作業であった。
【0008】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、予測不可能な動きをする飛翔体の距離を容易に測定できる距離測定装置を提供することを課題とする。また、本発明は、この距離測定装置を用いると共に、2次元画像を得るための1台のカメラを併用することで、飛翔体の位置情報を簡易な構成で取得でき、設置作業、撮影作業の容易化を図ることができる飛翔体位置測定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するため、本発明の距離測定装置は、飛翔体までの距離を測定し、接眼レンズに前記飛翔体までの距離データを表示するレーザー距離計と、前記レーザー距離計の接眼レンズのアイポイント位置に片側の焦点位置が合致するように取り付けられるリレーレンズと、前記リレーレンズの反対側の焦点位置にレンズが位置するように取り付けられ、撮影した飛翔体の画像を表示するモニタ画面と前記画像を記憶する記憶部を備え、前記レーザー距離計の接眼レンズに現れる前記飛翔体の画像を前記モニタ画面に表示すると共に、前記記憶部にその画像を記憶させるビデオカメラとを有することを特徴とする。
前記ビデオカメラは、前記レーザー距離計の接眼レンズに現れる飛翔体の画像を、該接眼レンズに表示される前記飛翔体までの距離データと共に前記記憶部に記憶する構成であることが好ましい。
【0010】
また、本発明の距離測定装置は、飛翔体までの距離を測定し、接眼レンズに前記飛翔体までの距離データを表示する複数のレーザー距離計と、前記各レーザー距離計の接眼レンズのアイポイント位置に片側の焦点をもつようにレーザー距離計毎に取り付けられるリレーレンズと、前記各リレーレンズの反対側の焦点位置にレンズが位置するようにリレーレンズ毎に取り付けられ、撮影した飛翔体の画像を表示するモニタ画面と前記画像を記憶する記憶部を備え、前記レーザー距離計の接眼レンズに現れる前記飛翔体の画像を前記モニタ画面に表示すると共に、前記記憶部にその画像を記憶させるビデオカメラとを有することを特徴とする。
前記各ビデオカメラは、前記レーザー距離計の接眼レンズに現れる飛翔体の画像を、該接眼レンズに表示される前記飛翔体までの距離データと共に前記記憶部に記憶させる構成であり、前記各ビデオカメラに記憶された複数の距離データをもとに、前記飛翔体までの距離を求める距離算出手段を有することが好ましい。
【0011】
また、本発明の距離測定装置は、飛翔体までの距離を測定し、接眼レンズに前記飛翔体までの距離及び測定時刻を表示する複数のレーザー距離計と、前記各レーザー距離計の接眼レンズのアイポイント位置に片側の焦点をもつようにレーザー距離計毎に取り付けられるリレーレンズと、前記各リレーレンズの反対側の焦点位置にリレーレンズ毎に設けられる光伝送系を介して接続され、撮影した飛翔体の画像を表示するモニタ画面と前記画像を記憶する記憶部を備え、前記レーザー距離計の接眼レンズに現れる前記飛翔体の画像を前記モニタ画面に表示すると共に、前記記憶部にその画像を記憶させるビデオカメラとを有することを特徴とする。
前記ビデオカメラは、前記各レーザー距離計の接眼レンズに現れる飛翔体の画像を、該接眼レンズに表示される前記飛翔体までの各距離データと共に前記記憶部に記憶させる構成であり、前記ビデオカメラに記憶された複数の距離データをもとに、前記飛翔体までの距離を求める距離算出手段を有することが好ましい。また、前記光伝送系は、ミラー若しくはプリズムを組み合わせてなるか、又は光ファイバから構成することができる。
【0012】
また、本発明の飛翔体位置測定装置は、上記したいずれかの距離測定装置と、前記距離測定装置によって距離を測定する飛翔体の2次元画像を取得するカメラと、前記距離測定装置から得られる前記飛翔体の距離データと、前記カメラにより得られる前記飛翔体の2次元画像とを用いて、前記飛翔体の位置情報を求める飛翔体位置演算手段とを具備することを特徴とする。前記カメラのレンズとしては、ズームレンズを用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の距離測定装置は、レーザー距離計の接眼レンズにリレーレンズを介してビデオカメラを装着した構成であり、レーザー距離計の接眼レンズに表示される飛翔体の画像をビデオカメラのモニタ画面に表示させることができる。従って、観測者は、レーザー距離計の接眼レンズをのぞき込み、アイポイント位置を保ちながらレーザーを照射する必要はなく、ビデオカメラのモニタ画面を見ながら、レーザー距離計を操作して飛翔体を追尾でき、飛翔体を追尾しながらのレーザー照射作業が容易となる。また、レーザー距離計として、接眼レンズ内に距離データが表示されるものを用いることにより、飛翔体の画像と共に距離データも画像データとしてビデオカメラの記憶部に記憶できる。それにより、距離データを筆記する作業を行う必要がなく、レーザー照射作業が距離データの記録作業によって妨げられることがない。
【0014】
また、本発明の飛翔体位置測定装置は、上記距離測定装置を用いているため、ビデオカメラに飛翔体の2次元画像と距離データが映像として記憶される。このため、この距離データを、測定時刻を基準として、飛翔体の2次元画像を撮影するカメラの画像情報と組み合わせることにより、飛翔体の位置情報を容易に求めることができる。従って、所定距離離れた位置に設置した2台のカメラを用いて位置情報を取得する従来の構成と比較して、飛翔体位置測定装置全体の構成を簡素化でき、設置作業、撮影作業の容易化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る距離測定装置の全体構成を示した概念図である。
【図2】図2は、上記実施形態においてレーザー距離計の接眼レンズ及びビデオカメラのモニタ画面に表示される画像の一例を模式的に示した図である。
【図3】図3(a),(b)は、本発明の第2実施形態に係る距離測定装置の全体構成を示した概念図である。
【図4】図4(a)は、本発明の第3実施形態に係る距離測定装置の全体構成を示した概念図であり、図4(b)はビデオカメラのモニタ画面に表示される画像の一例を模式的に示した図である。
【図5】図5は、本発明の飛翔体位置測定装置の一の実施形態に係る全体構成を示した図である。
【図6】図6は、図5に示した飛翔体位置測定装置のカメラで撮影される画像の一例を示した図である。
【図7】図7は、飛翔体の高度の求め方を説明するための図である。
【図8】図8(a),(b)は、飛翔体の所定時間の連続撮影を行って飛行高度及び飛行軌跡を求める方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る距離測定装置1を示す図であり、レーザー距離計10と、リレーレンズ20と、ビデオカメラ30とを備えて構成されている。
【0017】
レーザー距離計10は、飛翔体にレーザー光を照射し、その反射光を受光して飛翔体までの距離を測定するものであり、その測定結果である距離データが、接眼レンズ11内にデジタル表示されるものを用いることが好ましい。また、例えば、風力発電所の周辺に飛来する渡り鳥の影響を調査する場合においては、少なくとも数百m〜数千mの距離の範囲で調査することが必要であることから、その範囲の距離を測定可能であるものが望ましい。本実施形態で用いるレーザー距離計10は、これらの条件を満たす限り、全く限定されるものではなく、市販のものを用いることができる。
【0018】
リレーレンズ20は、例えば、アクロマートレンズを2組用いて構成され、片側の焦点位置Aがレーザー距離計10の接眼レンズ11のアイポイント位置となるように調整して、該接眼レンズ11に取り付けられる。
【0019】
ビデオカメラ30は、リレーレンズ20の反対側の焦点位置Bに該ビデオカメラ30のレンズが位置するように調整して取り付けられる。ビデオカメラ30は、撮影した飛翔体の画像を表示するモニタ画面31と画像を記憶する記憶部(メモリ)32を備えている。ビデオカメラ30を設けることにより、レーザー距離計10の接眼レンズ11のアイポイント位置で見られる画像がモニタ画面31に表示されると共に、記憶部32にその画像データが記憶される。図2に示したように、レーザー距離計10の接眼レンズ11には、目標物体である飛翔体だけでなく、飛翔体までの距離データがデジタル表示されるため、ビデオカメラ30のモニタ画面31には、飛翔体の画像と共に、デジタル表示された距離データが表示されると共に、それらが画像データとして記憶部32に記憶される。
【0020】
本実施形態によれば、ビデオカメラ30のモニタ画面31に、飛翔体の画像が表示されるため、観測者はその表示される画像を見ながら飛翔体を追尾でき、飛翔体にレーザー光を照射することが容易となる。そして、レーザー距離計10の接眼レンズ11内に表示される距離データがビデオカメラ30に画像データとして記憶されるため、長時間に亘り計測しても、飛翔体までの距離データを、観測者の手を煩わせることなく確実に記憶することができる。その結果、観測者は予測不可能な動きをする飛翔体の追尾に専念でき、観測精度も向上する。なお、ビデオカメラ30には時計機能が内蔵されているため、ビデオカメラ30の記憶部32には、その時計から得られる時刻データも距離データと合わせて記憶できる。従って、距離データと時刻データとをマッチングさせることにより、飛翔体までの距離の時系列変化を求めることができる。また、レーザー距離計10の接眼レンズ11内に時刻データがデジタル表示されるものであれば、ビデオカメラ30には、距離データと共に時刻データも画像として記憶されることになるため、その2つのデータを用いて飛翔体までの距離の時系列変化を求めるようにすることもできる。
【0021】
図3は、本発明の距離測定装置の第2実施形態を示した図である。本実施形態の距離測定装置100では、レーザー距離計10とビデオカメラ30を複数台用い、そのそれぞれをリレーレンズ20を介して連結した構成である。なお、レーザー距離計10、リレーレンズ20及びビデオカメラ30の個々の構成は上記第1実施形態と同様である。
【0022】
鳥類のように予測不可能な動きをする場合、第1実施形態のようにレーザ距離計10が1台のみでは追尾しきれない場合がある。そこで、本実施形態では、第1実施形態の距離測定装置1を複数台にて構成したものである。
【0023】
組み合わせは任意であり、例えば、第1実施形態に係る距離測定装置1を支持テーブル2に複数平行に設定したり(図3(a))、縦横に配置したりすることができる(図3(b))。複数のレーザー距離計10を用いた場合、距離データが複数得られ、各ビデオカメラ30の記憶部32には複数の距離データが記憶されることになる。そこで、コンピュータプログラムからなる距離算出手段50を設け、複数の距離データをこの距離算出手段50により演算処理し、飛翔体までの距離を求めるようにすることができる。
【0024】
距離算出手段50は、例えば、複数のレーザー距離計10のレーザー光が目的とする飛翔体に照射されている場合にはその平均値をとることにより、飛翔体までの距離データを求める。その一方、複数の距離データのうち、一部のデータが他のデータと大きく異なっていた場合、その一部のデータはレーザー光が飛翔体から外れて他の物体に照射されて反射されたものと考えられる。そこで、距離算出手段50は、このように、複数の距離データの中で、大きく異なった値が出力されている場合にはそのデータを除外するよう所定の閾値を設定し、その他のデータを用いて飛翔体までの距離を特定するようにすることもできる。
【0025】
図4(a)は、本発明の距離測定装置の第3実施形態を示した図である。本実施形態の距離測定装置200は、レーザー距離計10を複数有し、そのそれぞれにリレーレンズ20を設けている点で第2実施形態と同様であるが、リレーレンズ20の像を光伝送系40を介して、1つのビデオカメラ30に集めている点で異なる。ビデオカメラ30では、図4(b)に示したように、例えば、複数の光伝送系40を介して送られてくる像を、モニタ画面31上に複数の領域31a〜31dに分割して表示して記憶する。このようにすることで、ビデオカメラ30の使用台数を減らすことができ、第2実施形態よりもコストダウンを図ることができる。なお、距離算出手段50による処理は上記第2実施形態と同様の構成とすることができる。
【0026】
光伝送系40としては、リレーレンズ20からビデオカメラ30までの間に複数のミラーを組み合わせたもの、複数のプリズムを組み合わせたもの、又は、光ファイバ等を用いることができる。
【0027】
次に、図5に基づき本発明の飛翔体位置測定装置500の実施形態について説明する。飛翔体位置測定装置500は、上記した第1〜第3実施形態で説明した距離測定装置1,100,200のいずれかと、飛翔体の2次元画像を得るカメラ510とを組み合わせたものである。
【0028】
カメラ510は、例えば、CCD撮像素子を備えたカメラやC−MOS撮像素子を備えたカメラから構成される。カメラ510の設置点は、鳥類等の飛翔体が飛行する領域が撮影できる場所が選択される。なお、カメラ510により撮影する際に、飛翔体と共に、高さが既知の固定物体、例えば、地面や建築物の屋上等を同一画面内に含めることができる場所にカメラ510が設置されると、後述のように飛翔体の高度を求めるのに役立つ。
【0029】
カメラ510のレンズとしては単焦点のものを使用することもできるが、単焦点レンズでは、鳥などのように撮影対象が常時移動する物体の場合、最適な望遠性や画角を持つレンズの選択、交換の手間などがかかるという問題がある。そのため、ズームレンズ511を用いることが好ましい。この場合、ズームレンズ511のプロファイルとして必要となる、タル型、糸巻き型などの歪み情報とカメラの画素の変換係数(1/pixel)は次のようにして求める。すなわち、ズームレンズ511を調整して、ある焦点距離fで撮影対象である鳥等の飛翔体の撮影を実施した後、この焦点距離fで所定のキャリブレーションターゲットを用いて現場で求めるようにする。なお、予備計測などを行うことによって、予め目的の飛翔体を撮影する際の焦点距離fが判明している場合には、その焦点距離fを用いて飛翔体の撮影前にキャリブレーションを行うこともできる。
【0030】
飛翔体位置測定装置500は、撮影した飛翔体の位置を求めるためのコンピュータプログラムである飛翔体位置演算手段520を有している。飛翔体位置演算手段520は、距離測定装置1,100,200から得られる飛翔体の距離データと、カメラ510により得られる飛翔体の2次元画像上の位置情報とを、それぞれの測定時刻をもとにマッチングさせ、飛翔体の位置情報(地図上の位置情報、高度も含めた位置情報)を求める。なお、飛翔体位置演算手段520と距離算出手段50は、同じコンピュータに設定されていても良いし、異なるコンピュータに設定されていても良い。
【0031】
本実施形態によれば、カメラ510によって、所定の飛翔体を捉えたならば撮影を開始し、同時に距離測定装置1,100,200によりカメラ510の設置点から当該飛翔体までの距離Lを測定する。飛翔体位置演算手段520は、距離測定装置1,100,200から得られる飛翔体の距離データと、カメラ510により得られる飛翔体の2次元画像上の位置情報とを、それぞれの測定時刻をもとにマッチングさせる。例えば、カメラ510により撮影した所定時刻における2次元画像において、図6に示したように中心点から飛翔体までの離隔画素数(pixel)Xを求める。さらに、Xを水平方向成分Xx(pixel)および垂直方向成分Xy(pixel)に分ける。一方、この画像データの測定時刻における飛翔体までの距離Lを距離測定装置1,100,200から得る。
【0032】
この距離Lに、上記したようなキャリブレーションにより求めた使用したレンズ(ズームレンズ)の変換係数(1/pixel)を掛け、さらに、この変換係数とXxおよびXyをそれぞれ掛けると、中心点から飛翔体までの水平方向および垂直方向の実際の距離が求められる。そして、(Xx×Xx+Xy×Xy)の平方根から、中心点及び飛翔体間の実際の距離が求められる。従って、カメラ510の設置点の地図上の座標が既知であれば、カメラ510の仰角とレーザー距離計10,100,200により測定される距離Lとにより中心点の座標を求め、さらに、中心点及び飛翔体間の実際の距離から、飛翔体の地図上の位置が求められる。
【0033】
また、図7に示したように、カメラ510によって、目的とする飛翔体と共に、高さが既知の固定物体(例えば、地面)が同じ画面に入るように撮影することにより、飛翔体の高度Hが求められる。すなわち、飛翔体と固定物体(地面)が共に撮影された画像データから、飛翔体及び固定物体(地面)間の離隔画素数(pixel)を求める。そして、この画像データの測定時刻における飛翔体までの距離Lを距離測定装置1,100,200から得る。
【0034】
この距離Lに、上記したようなキャリブレーションにより求めた使用したレンズ(ズームレンズ)の変換係数(1/pixel)を掛け、さらに、飛翔体及び固定物体(地面)間の離隔画素数(pixel)を掛けると、飛翔体及び固定物体(地面)間の実際の距離(飛行高度)Hが求まる。この距離(飛行高度)Hは、固定物体が、飛翔体の下方に位置する地面であればそのまま飛翔体の飛行高度として採用されるが、固定物体が、例えば、高さが既知の鉄塔や建物の頂部である場合、その頂部までの高さに両者間の距離を足して、飛行高度が求められることになる。カメラから固定物体と飛翔体までの距離が異なる場合、固定物体が飛翔体までの距離にあった場合を仮定して、固定物体の高さを補正すれば良い。なお、固定物体が飛翔体の上方に位置している場合でも、両者間の距離を固定物体の高さから差し引き等することで飛行高度は算出可能である。
【0035】
また、カメラ510で飛翔体を撮影する場合、所定時間、飛翔体を連続撮影することが好ましい。連続撮影する時間が長すぎると、変換係数(1/pixel)の変化が大きくなり、測定精度が低下する。また、飛翔体(特に、鳥類)が旋回したりするなど飛行軌跡が安定しない。このため、変換係数がほぼ一定とみなせる時間内や、飛行軌跡が線形とみなせる時間内とすることが好ましい。例えば、図8(a)に示したように、カメラ510及び距離測定装置1,100,200から飛翔体までの距離を1kmとした場合、その10%、すなわち100mの範囲で飛翔体(鳥類)が変位しても、変換係数(1/pixel)の変化は飛行高度の測定精度に影響のない十分小さな範囲内に収まる。この場合、飛翔体Aである鳥類の飛行速度が10〜20m/s前後とすると、連続撮影の時間は5〜10秒間に設定すればよい。撮影時間を5〜10秒間にすることにより、その飛行軌跡は、図8(b)に示したようにほぼ線形なものが得られる。
【0036】
なお、この際に用いられるカメラ510の設置点から飛翔体までの距離は、変換係数がほぼ一定と見なせるため、連続撮影を開始した時点に測定した距離、連続撮影の終了時点の距離、その中間時点の距離、あるいは、それらの平均の距離等のいずれであってもよい。また、粒子追跡法(PTV)の手法を応用し、飛翔体を粒子とみなして微小時間間隔で連続撮影すると共に、カメラ510の設置点から飛翔体までの距離もその度に測定し、逐次、飛翔体の位置及び飛行高度を求めることも可能である。
【0037】
このように所定時間の連続撮影を行うと、飛行軌跡が1本の線になるため、飛翔体位置演算手段520の指令によって、ディスプレイやプリンタなどの表示装置に出力させれば、飛翔体の飛行軌跡を表示できる(図8(b)参照)。また、例えば、2秒間隔で、5秒間の連続撮影を複数回行った飛行軌跡を出力すれば、飛翔体がある時間帯において水平飛行した後に旋回した、などといった解析が可能になり、例えば、鳥類の種類毎にこれらのデータを蓄積していけば、鳥類の種類の特定による飛行高度、飛行軌跡の予測に役立つ。
【符号の説明】
【0038】
1,100,200 距離測定装置
10 レーザー距離計
20 リレーレンズ
30 ビデオカメラ
31 モニタ画面
50 距離算出手段
500 飛翔体位置測定装置
510 カメラ
511 ズームレンズ
520 飛翔体位置演算手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛翔体までの距離を測定し、接眼レンズに前記飛翔体までの距離データを表示するレーザー距離計と、
前記レーザー距離計の接眼レンズのアイポイント位置に片側の焦点位置が合致するように取り付けられるリレーレンズと、
前記リレーレンズの反対側の焦点位置にレンズが位置するように取り付けられ、撮影した飛翔体の画像を表示するモニタ画面と前記画像を記憶する記憶部を備え、前記レーザー距離計の接眼レンズに現れる前記飛翔体の画像を前記モニタ画面に表示すると共に、前記記憶部にその画像を記憶させるビデオカメラと
を有することを特徴とする距離測定装置。
【請求項2】
前記ビデオカメラは、前記レーザー距離計の接眼レンズに現れる飛翔体の画像を、該接眼レンズに表示される前記飛翔体までの距離データと共に前記記憶部に記憶する構成である請求項1記載の距離測定装置。
【請求項3】
飛翔体までの距離を測定し、接眼レンズに前記飛翔体までの距離データを表示する複数のレーザー距離計と、
前記各レーザー距離計の接眼レンズのアイポイント位置に片側の焦点をもつようにレーザー距離計毎に取り付けられるリレーレンズと、
前記各リレーレンズの反対側の焦点位置にレンズが位置するようにリレーレンズ毎に取り付けられ、撮影した飛翔体の画像を表示するモニタ画面と前記画像を記憶する記憶部を備え、前記レーザー距離計の接眼レンズに現れる前記飛翔体の画像を前記モニタ画面に表示すると共に、前記記憶部にその画像を記憶させるビデオカメラと
を有することを特徴とする距離測定装置。
【請求項4】
前記各ビデオカメラは、前記レーザー距離計の接眼レンズに現れる飛翔体の画像を、該接眼レンズに表示される前記飛翔体までの距離データと共に前記記憶部に記憶させる構成であり、
前記各ビデオカメラに記憶された複数の距離データをもとに、前記飛翔体までの距離を求める距離算出手段を有する請求項3記載の距離測定装置。
【請求項5】
飛翔体までの距離を測定し、接眼レンズに前記飛翔体までの距離及び測定時刻を表示する複数のレーザー距離計と、
前記各レーザー距離計の接眼レンズのアイポイント位置に片側の焦点をもつようにレーザー距離計毎に取り付けられるリレーレンズと、
前記各リレーレンズの反対側の焦点位置にリレーレンズ毎に設けられる光伝送系を介して接続され、撮影した飛翔体の画像を表示するモニタ画面と前記画像を記憶する記憶部を備え、前記レーザー距離計の接眼レンズに現れる前記飛翔体の画像を前記モニタ画面に表示すると共に、前記記憶部にその画像を記憶させるビデオカメラと
を有することを特徴とする距離測定装置。
【請求項6】
前記ビデオカメラは、前記各レーザー距離計の接眼レンズに現れる飛翔体の画像を、該接眼レンズに表示される前記飛翔体までの各距離データと共に前記記憶部に記憶させる構成であり、
前記ビデオカメラに記憶された複数の距離データをもとに、前記飛翔体までの距離を求める距離算出手段を有する請求項5記載の距離測定装置。
【請求項7】
前記光伝送系が、ミラー若しくはプリズムを組み合わせてなるか、又は光ファイバから構成される請求項5又は6記載の距離測定装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1に記載の距離測定装置と、
前記距離測定装置によって距離を測定する飛翔体の2次元画像を取得するカメラと、
前記距離測定装置から得られる前記飛翔体の距離データと、前記カメラにより得られる前記飛翔体の2次元画像とを用いて、前記飛翔体の位置情報を求める飛翔体位置演算手段と
を具備することを特徴とする飛翔体位置測定装置。
【請求項9】
前記カメラにズームレンズが装着されている請求項8記載の飛翔体位置測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−203056(P2011−203056A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69733(P2010−69733)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】