説明

車両の衝撃吸収構造

【課題】タイヤ荷重伝達部材を有効に利用して車両衝突時の入力を車輪を介して効率よく車体構造材に逃がすことができ、もって十分な衝撃吸収作用を達成できる車両の衝撃吸収構造を提供する。
【解決手段】フロントサイドメンバ1の前端の取付ブラケット12にバンパリンフォース15を脱着可能に取り付け、取付ブラケット12を車幅方向外側に延設して、その前輪7と相対向する後面にタイヤ荷重伝達部材18を固定し、オフセット大の前突時に、バンパリンフォース15の端部と共に取付ブラケット12を後方に変形させてタイヤ荷重伝達部材18を前輪7に衝突させ、前輪7から車体構造材側に衝突時の入力を伝達する。タイヤ荷重伝達部材18の断面中心(一点鎖線Lで示す)を前輪の中心Cの剛性が高いホイール部7aに指向させることにより、入力伝達を効率よく行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の衝撃吸収構造に係り、詳しくは障害物に対して車幅方向に大きくオフセットした衝突形態を想定して、車輪を介して衝突による入力を車体構造材に逃がすことにより衝撃を吸収する衝撃吸収構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の衝突形態には種々のものがあり、その中には相手車両等の障害物に対して車幅方向に大きくオフセットした前突や後突がある。この種の衝突形態では自車両と障害物とのラップ量が小さいことから、肝心のサイドメンバは直接的に障害物と衝突することなく、より車幅方向外側に位置するバンパリンフォースの端部が障害物と衝突して片持ち支持的に変形するだけのため、衝撃吸収作用に関して改良の余地があった。
【0003】
そこで、この種の衝突形態を想定した対策として、前突時の入力を車輪に伝達することにより衝撃吸収作用を得るものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。当該特許文献1の技術では、バンパリンフォースの両端後面に鋼板製のタイヤ荷重伝達部材を取り付け、バンパリンフォースの後方への変形に伴って前突時の入力をタイヤ荷重伝達部材を介して車輪側に逃がして衝撃吸収作用を得ている。
【特許文献1】特開2005−119537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般的にバンパリンフォースは他車や歩行者との衝突を考慮して車輪中心より高い位置に設置されるため、上記特許文献1の技術では、タイヤ荷重伝達部材の高さも車輪中心より高くなる。このため、車両の衝突時にタイヤ荷重伝達部材は車輪に対して真っ向から衝突することなく、車輪の上部、即ち、剛性を有するホイール部ではなくゴム製のタイヤに衝突することになる。
【0005】
車両前突時の入力を車輪に伝達したときの衝撃吸収作用は、入力を車輪からサスペンションを介してサイドメンバ等の車体構造材に逃がしたり、或いは、入力を車輪からサイドシル等の車体構造材に逃がしたりすることにより発揮されるが、このようにゴム製のタイヤを介して入力伝達が行われるため入力を車体構造材に効果的に逃がすことができなかった。よって、この特許文献1の技術ではタイヤ荷重伝達部材を有効に利用しているとは言い難く、十分な衝撃吸収作用が得られないという問題を抱えていた。
【0006】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、タイヤ荷重伝達部材を有効に利用して車両衝突時の入力を車輪を介して効率よく車体構造材に逃がすことができ、もって十分な衝撃吸収作用を達成することができる車両の衝撃吸収構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、車両の前後方向に延設されたサイドメンバの端部に設けられてバンパリンフォースが取り付けられると共に、車幅方向外側に延設されて一側面がバンパリンフォースの端部と相対向し、他側面が車輪と相対向する取付ブラケットと、取付ブラケットの他側面に基端側を固定され、先端側を車輪の略中心に指向させたタイヤ荷重伝達部材とを備えたものである。
【0008】
障害物に対して車両が車幅方向の何れかに大きくオフセットした衝突形態では、衝突による衝撃がバンパリンフォースの端部に集中するため、端部が片持ち支持的に車輪に向けて変形し始める。このとき、バンパリンフォースの端部は取付ブラケットの一側面に衝突して取付ブラケットを車輪に向けて変形させ、この取付ブラケットと一体でタイヤ荷重伝達部材が車輪に向けて変位する。
【0009】
タイヤ荷重伝達部材の先端側は車輪の略中心、即ちホイール部に指向していることから、衝突時の入力はバンパリンフォースの端部、取付ブラケット、タイヤ荷重伝達部材を介して剛性の高いホイール部に伝達された後、ホイール部から車輪を支持するサスペンションを介してサイドメンバ等の車体構造材に、或いはホイール部からサイドシル等の車体構造材に効率よく逃がされ、何れの場合も確実に衝撃吸収作用が奏される。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1において、車両のフロントピラーの下端またはリヤピラーの下端と連続する車体構造材にジョイント部材の一端を連結し、ジョイント部材の他端をタイヤ荷重伝達部材に上方から連結したものである。
衝突時の入力を伝達可能な剛性を確保することによりタイヤ荷重伝達部材はかなりの重量を有し、このタイヤ荷重伝達部材の基端側を片持ち支持する取付ブラケットは大きな負担を受けるが、車体構造材からジョイント部材を介してタイヤ荷重伝達部材が支持されるため、取付ブラケットの負担が軽減される。また、結果として取付ブラケット、タイヤ荷重伝達部材及びジョイント部材を介してサイドメンバと車体構造材とが結合されるため、サイドメンバの端部の上下方向の位置変位が車体構造材により抑制され、これにより車体剛性の向上及びNVH(ノイズ・バイブレーション・ハーシュネス)性能の向上が達成される。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または2において、取付ブラケットのバンパリンフォースの端部に対する対向面に、車両の衝突時の入力がバンパリンフォースを介して伝達されたときに変形を伴って入力を取付ブラケットに伝達する予備伝達部材を設けたものである。
従って、車両の衝突に伴ってバンパリンフォースの端部が車輪に向けて変形し始めると、予備伝達部材が変形して衝撃を吸収しながら取付ブラケットに入力を伝達することから、より早期にタイヤ荷重伝達部材を介して入力を車輪に伝達可能となる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように請求項1の発明の車両の衝撃吸収構造によれば、タイヤ荷重伝達部材を有効に利用して車両衝突時の入力を車輪を介して効率よく車体構造材に逃がすことができ、もって十分な衝撃吸収作用を達成することができる。
請求項2の発明の車両の衝撃吸収構造によれば、請求項1に加えて、タイヤ荷重伝達部材を支持する取付ブラケットの負担を軽減して破損を防止できると共に、サイドメンバの端部の上下方向の位置変位を抑制して車体剛性やNVH性能を向上することができる。
【0013】
請求項3の発明の車両の衝撃吸収構造によれば、請求項1または2に加えて、より早期にタイヤ荷重伝達部材を介して入力を車輪に伝達し、これにより車輪から車体構造材への入力伝達を一層早めて、車室の変形量を減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した車両の衝撃吸収構造の一実施形態を説明する。
図1は本発明の衝撃吸収構造が適用された車両の前部を示す側面図、図2は同じく衝撃吸収構造が適用された車両の前部左側を示す平面図、図3は取付ブラケット周辺を示す斜視図である。なお、図1,2は主に車体構造材の相互関係を示しており、フロントフェンダー、ドア、ボンネット等の外装材は省略されている。また、図3は各部材の板厚を省略して表現している。
【0015】
車両の前部には、左右方向(車幅方向)に所定間隔をおいて一対のフロントサイドメンバ1が配設されている。両フロントサイドメンバ1は閉断面構造をなして車両後方に延設され、フロントサイドメンバ1の後端はダッシュパネル2の下部に接続されると共に、フロア3の下面に設けられたサイドメンバ4に連続している。左右のフロントサイドメンバ1の前部の間にはフロントエンドクロスメンバ5が固定され、フロントエンドクロスメンバ5の上部の左右両側にはそれぞれアッパフレーム6(車体構造材)の前端が接続されている。両アッパフレーム6は車両の左右両側で後方に向けて延設されてダッシュパネル2の上部に接続され、このダッシュパネル2によりエンジンルームE1と車室E2とが区画されている。また、左右のアッパフレーム6とフロントサイドメンバ1との間には図示しないインナパネルがそれぞれ形成され、このインナパネルによりエンジンルームE1の左右両側にタイヤハウスE3が区画されている。
【0016】
エンジンルームE1内には図示しないエンジンが搭載され、エンジンはエンジンマウントを介してフロントサイドメンバ1上に固定されている。タイヤハウスE3内には図示しないサスペンションに支持されて前輪7が収容され、サスペンションのロアアームの基端は、両フロントサイドメンバ1間に架設されたサスペンションメンバ8に連結され、サスペンションのストラットの上部はアッパフレーム6に連結されている。
【0017】
アッパフレーム6の後端は、ダュシュパネル2の箇所でフロントピラーアッパ9(フロントピラー)の下端及びフロントピラーロア10の上端に接続され、フロントピラーアッパ9は後方斜め上方に延設されてルーフと連続している。また、フロントピラーロア10はダッシュパネル2の左右両側に沿って下方に延設されて、フロア3の左右両側で閉断面構造をなすサイドシル11の前端と接続されている。
【0018】
両フロントサイドメンバ1の前端には、四角板状の高張力鋼板からなる取付ブラケット12が配設され、この取付ブラケット12の後面は、フロントサイドメンバ1の前端に形成されたフランジ部1aがスポット溶接されている(溶接箇所を図3に×印で示す)。
取付ブラケット12の前側には、前後方向に延びる閉断面構造をなすクラッシュボックス13が配設され、クラッシュボックス13の後端に形成されたフランジ部13aがボルト14(図3に一点鎖線で示す)により取付ブラケット12の前面に脱着可能に固定されている。左右のクラッシュボックス13の前側にはバンパリンフォース15が左右方向に延設され、このバンパリンフォース15は両クラッシュボックス13の前端に対して溶接され、これにより車両前部にバンパリンフォース15が支持されている。なお、クラッシュボックス13はフロントサイドメンバ1に比較して剛性が低く設定され、これにより車両の前突時にはフロントサイドメンバ1に先行してクラッシュボックス13が変形するように配慮されている。
【0019】
左右の取付ブラケット12はそれぞれ車幅方向の外側に延設されて延設部12aが形成され、延設部12aの前面はバンパリンフォース15の左右の端部と相対向し、延設部12aの後面は前輪7と相対向している。延設部12aの前面には、鋼板から製作された予備伝達部材17が配設されている。予備伝達部材17は上下方向に連続する半円断面をなすように湾曲形成されると共に、その左右両側にフランジ部17aが形成され、これらのフランジ部17aを延設部12aの前面に対してスポット溶接されている(溶接箇所を図3に×印で示す)。
【0020】
左右の取付ブラケット12の延設部12aの後面には、鋼板から製作されたタイヤ荷重伝達部材18が配設され、タイヤ荷重伝達部材18の前端18a(基端側)は取付ブラケット12に対してスポット溶接により固定されている。タイヤ荷重伝達部材18は四角断面をなして後方斜め下方に向けて延設され、その断面中心(図1に一点鎖線Lで示す)は車両の側面視において前輪7の中心Cに指向している。また、タイヤ荷重伝達部材18の断面積は後方に向けて次第に拡大し、その後端18b(先端側)は閉塞されて閉断面構造をなすと共に、前輪7のタイヤ外周に対して所定のクリアランス(サスペンションによる前輪7の上下動や操舵時に干渉しない程度)をもって相対向している。
【0021】
図1,2に示すように、上記アッパフレーム6は前後方向の中程から前方に向けて二股状に分岐し、以下、この分岐箇所をジョイント部材19と称する。ジョイント部材19はアッパフレーム6から前方斜め下方に向けて円弧状に延設され、ジョイント部材19の下端は上記タイヤ荷重伝達部材18の上面18cに上方より当接してスポット溶接されている。なお、本実施形態では、ジョイント部材19をアッパフレーム6と一体的に形成したが、例えば別部品として製作してボルト或いはスポット溶接によりアッパフレーム6と結合してもよい。
【0022】
本実施形態の車両の衝撃吸収構造は以上のように構成されており、次に車両前突時の各部材の変形状況について説明する。なお、以下の説明では、図2に示すように、障害物A(例えば、相手車両)に対して自車が右側に大きくオフセットして前突した場合を想定するが、当然ながら左側へのオフセット衝突でも変形状況は同様である。
前突による衝撃は主にバンパリンフォース15の左端に集中するため、左端が片持ち支持的に後方に変形し始める。まず、バンパリンフォース15の左端は前方より予備伝達部材17に衝突し、予備伝達部材17は変形して衝撃を吸収しながら取付ブラケット12に入力を伝達する。この入力伝達により取付ブラケット12が後方への変形を開始し、取付ブラケット12と一体でタイヤ荷重伝達部材18が後方に向けて変位し、その後端18bが前輪7のタイヤ外周に衝突する。そして、タイヤ荷重伝達部材18から前輪7への入力は、前輪7を支持するサスペンションを介してサイドメンバ等の車体構造材に逃がされたり、或いは前輪7が後方に押されてサイドシル11に衝突した時点でサイドシル11等の車体構造材に逃がされたりする。
【0023】
ここで、本実施形態では、タイヤ荷重伝達部材18の断面中心が前輪7の中心C、即ちホイール部7aに指向していることから、タイヤ荷重伝達部材18からの入力は、例えば特許文献1の技術のように車輪上部のゴム製のタイヤに伝達されることなく、剛性の高いホイール部7aに伝達され、このホイール部7aを介して上記フロントサイドメンバ1やサイドシル11等に効率よく伝達される。加えて特許文献1の技術では、タイヤ荷重伝達部材18が車輪のタイヤ外周に対して斜めに衝突するため、入力の一部が上方に分力されて無駄になり車輪に伝達される入力が減少するのに対し、本実施形態では、タイヤ荷重伝達部材18が前輪7のタイヤ外周に真っ向から衝突するため、無駄を生じることなく入力を前輪7に伝達でき、この要因も入力伝達の効率化に貢献する。
【0024】
また、前輪7のホイール部7aを介した入力伝達は効率がよいだけでなく、入力がタイヤ荷重伝達部材18からフロントサイドメンバ1やサイドシル11に伝達されるまでの空走距離(入力を伝達することなく各部材が相互に位置変位する距離)を減少させる作用も奏する。即ち、前突時の障害物Aは、バンパリンフォース15、取付ブラケット12、タイヤ荷重伝達部材18、前輪7等を順次後方に押し退けながら自車に侵入し、フロントサイドメンバ1やサイドシル11等の車体構造材への入力伝達により侵入を阻止されるため、フロントサイドメンバ1やサイドシル11に早期に入力伝達するほど、自車への障害物Aの侵入量、ひいては車室E2の変形量を減少できる。
【0025】
前輪7のホイール部7aはタイヤと比較して変形が極めて少ないため、タイヤ荷重伝達部材18からの入力はホイール部7aを介して最小の空走距離でフロントサイドメンバ1やサイドシル11側に伝達される。よって、自車への障害物Aの侵入量が減少し、障害物Aの大きな侵入による車室変形を想定した対策、例えばフロントピラーアッパ9の補強等を不要とすることができ、これによる車両重量の増大を未然に防止できるという効果もある。
【0026】
一方、上記のように取付ブラケット12上に予備伝達部材17を配置しているため、前突に伴ってバンパリンフォース15の左端が後方に変形したときには、予備伝達部材17を介して取付ブラケット12側に早期に入力が伝達される。即ち、予備伝達部材17によりバンパリンフォース15と取付ブラケット12との間の空走距離が減少されるため、結果としてタイヤ荷重伝達部材18から前輪7への入力伝達がより早期に開始され、ひいては上記したフロントサイドメンバ1やサイドシル11への入力伝達を一層早めて、車室E2の変形量を減少させることができる。
【0027】
また、アッパフレーム6とタイヤ荷重伝達部材18とをジョイント部材19により連結していることから、図1に示すように、タイヤ荷重伝達部材18は取付ブラケット12により片持ち支持されるだけでなく、ジョイント部材19を介してアッパフレーム6にも支持される。これにより取付ブラケット12の負担が軽減され、例えば取付ブラケット12自体の破損や取付ブラケット12とタイヤ荷重伝達部材18とを結合するスポット溶接箇所の剥離等のトラブルを未然に防止することができる。
【0028】
また、図4はフロントサイドメンバ1、アッパフレーム6、取付ブラケット12、タイヤ荷重伝達部材18、ジョイント部材19の関係を示した模式図であるが、ジョイント部材19を設けることで、フロントサイドメンバ1の前部とアッパフレーム6の前部とが取付ブラケット12、タイヤ荷重伝達部材18及びジョイント部材19を介して相互に結合されることになる。周知のようにフロントサイドメンバ1の前部は図4に矢印で示す上下方向に位置変位し易く、車体剛性の低下の要因になると共に、車両走行時にはNVH(ノイズ・バイブレーション・ハーシュネス)性能を低下させる要因にもなるが、フロントサイドメンバ1の前端の上下方向の位置変位がジョイント部材19を介してアッパフレーム6により抑制されるため、車体剛性及びNVHを共に向上させることができる。
【0029】
一方、本実施形態では、特許文献1の技術のようにバンパリンフォースの端部に直接的にタイヤ荷重伝達部材を固定することなく、バンパリンフォース15を支持する取付ブラケット12にタイヤ荷重伝達部材18を固定している。この構成のため、車両の整備・補修に際してバンパリンフォース15を脱着するときには、重量物であるタイヤ荷重伝達部材18を車両側に残したまま、通常の車両と同様にバンパリンフォース15のみを容易に脱着でき、作業性の低下を未然に防止できるという効果もある。
【0030】
さらに、取付ブラケット12へのタイヤ荷重伝達部材18の固定は、オフセット大の前突時の衝撃吸収にフロントサイドメンバ1をより大きく貢献させる利点もある。即ち、このときの取付ブラケット12は、上記のようにタイヤ荷重伝達部材18と共に後方に変形して前輪7への入力伝達を行う一方、一部の入力をフロントサイドメンバ1にも伝達する。よって、前突時の入力の一部はバンパリンフォース15から取付ブラケット12を介して直接的にフロントサイドメンバ1に伝達され、伝達された入力をフロントサイドメンバ1は圧縮荷重として受けて抗する。従って、特許文献1の技術のようにバンパリンフォースの端部にタイヤ荷重伝達部材を固定した場合に比較して、フロントサイドメンバ1をより有効に利用して一層大きな衝撃吸収作用を発揮させることができる。
【0031】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態ではオフセット大の前突を想定して前輪7に対してタイヤ荷重伝達部材18を設けた衝撃吸収構造として具体化したが、同様の原理を後輪(車輪)に適用することによりオフセット大の後突(主に自車に対する後続車の追突)に対応することもできる。
【0032】
具体的には、サイドメンバ1の後端に取付ブラケット12を介してリヤバンパのバンパリンフォース15を取り付けると共に、取付ブラケット12を車幅方向外側に延設して、そのバンパリンフォース15の端部との対向面に予備伝達部材17を設けると共に、後輪との対向面にタイヤ荷重伝達部材18を固定する。また、リヤピラーの下端と連続するアッパフレーム(車体構造材)とタイヤ荷重伝達部材18とをジョイント部材19により連結する。この場合でも、後続車の追突時において上記実施形態と同様の種々の利点を得ることができる。
【0033】
また、上記実施形態では、アッパフレーム6からタイヤ荷重伝達部材18を支持するジョイント部材19、及び取付ブラケット12の前面の予備伝達部材17を備えたが、これらの部材を省略してもよい。また、アッパフレーム6から円弧状に延設した形状にジョイント部材19を形成し、上下方向に連続する半円断面をなすように予備伝達部材17を形成したが、これらの形状に関しても任意に変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の衝撃吸収構造が適用された車両の前部を示す側面図である。
【図2】同じく本発明の衝撃吸収構造が適用された車両の前部左側を示す平面図である。
【図3】取付ブラケット周辺を示す斜視図である。
【図4】サイドメンバ、アッパフレーム、取付ブラケット、タイヤ荷重伝達部材、ジョイント部材の関係を示した模式図である。
【符号の説明】
【0035】
1 フロントサイドメンバ
6 アッパフレーム(車体構造材)
7 前輪(車輪)
9 フロントピラーアッパ(フロントピラー)
12 取付ブラケット
15 バンパリンフォース
17 予備伝達部材
18 タイヤ荷重伝達部材
19 ジョイント部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前後方向に延設されたサイドメンバの端部に設けられてバンパリンフォースが取り付けられると共に、車幅方向外側に延設されて一側面が上記バンパリンフォースの端部と相対向し、他側面が車輪と相対向する取付ブラケットと、
上記取付ブラケットの他側面に基端側を固定され、先端側を上記車輪の略中心に指向させたタイヤ荷重伝達部材と
を備えたことを特徴とする車両の衝撃吸収構造。
【請求項2】
車両のフロントピラーの下端またはリヤピラーの下端と連続する車体構造材にジョイント部材の一端を連結し、該ジョイント部材の他端を上記タイヤ荷重伝達部材に上方から連結したことを特徴とする請求項1記載の車両の衝撃吸収構造。
【請求項3】
上記取付ブラケットの上記バンパリンフォースの端部に対する対向面に、上記車両の衝突時の入力が上記バンパリンフォースを介して伝達されたときに変形を伴って該入力を上記取付ブラケットに伝達する予備伝達部材を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の車両の衝撃吸収構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−222037(P2008−222037A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−63402(P2007−63402)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】