説明

車両システム

【課題】インパネの実装面積の増大やコスト増加を抑えることができ、異常発生を確実に乗員に知らせることができる車両システムを提供すること。
【解決手段】車両に搭載されたバッテリ5と、このバッテリ5を充電する車両用発電機3と、バッテリ5の充放電電流を検出するバッテリ電流検出装置6とを備えている。バッテリ電流検出装置6は、バッテリの充放電電流を検知するバッテリ電流検出手段と、端子電圧を検知するバッテリ電圧検出手段と、温度を検知するバッテリ温度検出手段と、車両用発電機3を制御するとともに各検出手段の異常の有無を判定するマイコン64と、デジタル通信によって車両用発電機3との間で信号を送受信する通信コントローラ72等とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車やトラック等に搭載されるバッテリの状態に基づいて車両用発電機の発電状態を制御する車両システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、バッテリの充放電電流を検出する電流センサとバッテリ電圧を検出する電圧センサの異常をデータ処理部が検知し、表示器にて報知するセンサ異常検出装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、バッテリ温度を温度センサで検出し、その温度に基づいて車両用発電機の発電量を制御するとともに、そのバッテリ温度センサの異常をECUが検出し、ワーニングランプにて報知する車両用発電機の制御装置が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2003−68366号公報(第2−4頁、図1−4)
【特許文献2】特開2007−97336号公報(第3−4頁、図1−2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述した特許文献1、2に開示された構成では、データ処理部やECUにおいて異常を検出したときに、表示器やワーニングランプにて車両の乗員に異常が発生した旨を報知しているが、異常発生を報知するために表示器やワーニングランプをわざわざ追加しなければならず、インパネ(インストルメントパネル)の実装面積の増大やコスト増加につながるという問題があった。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、インパネの実装面積の増大やコスト増加を抑えることができ、異常発生を確実に乗員に知らせることができる車両システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明の車両システムは、車両に搭載されたバッテリと、このバッテリを充電する車両用発電機と、バッテリの充放電電流を検出するバッテリ電流検出装置とを備えており、バッテリ電流検出装置は、バッテリの充放電電流を検知するバッテリ電流検出手段と、バッテリの端子電圧を検知するバッテリ電圧検出手段と、バッテリの温度を検知するバッテリ温度検出手段と、バッテリ電流検出手段、バッテリ電圧検出手段、バッテリ温度検出手段の各検知結果に基づいて車両用発電機を制御する発電制御手段と、デジタル通信によって車両用発電機との間で信号を送受信する通信手段と、バッテリ電流検出手段、バッテリ電圧検出手段、バッテリ温度検出手段の異常の有無を判定し、通信手段を介して異常の発生を通知する異常情報を送信する異常判定手段とを備えている。また、上述した車両用発電機は、バッテリ電流検出装置から異常情報を受信したときに、異常発生を表示器を用いて車両の乗員に通知する異常通知手段を備えることが望ましい。
【0006】
車両用発電機に接続された表示器を用いて各検出手段の異常を通知することができるため、この異常通知のために専用の表示器を備える必要がなく、インパネの実装面積の増大やコスト増加を抑えることができるとともに、異常発生を確実に乗員に知らせることができる。また、デジタル通信で異常情報を送受信することにより、ノイズの影響を低減することが可能になる。さらに、ECU等を用いずに異常発生を通知することができるため、ECU等の処理負担を軽減することができる。
【0007】
また、上述した異常判定手段は、バッテリ電流検出手段、バッテリ電圧検出手段、バッテリ温度検出手段の異常の有無とともに、バッテリの異常の有無と、バッテリと車両用発電機とを接続する充電線の外れの有無を検知し、異常情報にはこれらの異常の有無を含ませることが望ましい。広範囲に異常の有無を判定することが可能になり、バッテリを充電する充電系の信頼性を向上させることができる。
【0008】
また、上述した車両用発電機は、バッテリ電流検出手段、バッテリ電圧検出手段、バッテリ温度検出手段の異常と、バッテリ異常あるいは充電線外れとで、表示器の表示態様を異ならせることが望ましい。これにより、緊急度が異なる異常の内容に応じた表示を行うことができる。例えば、バッテリ異常や充電線外れはバッテリ上がりやエンジン始動が困難になるおそれがあるため緊急度が高く、一方、各検出手段の異常は最適充電ができなくなる程度であって緊急度が低く、これらを識別可能とすることにより、車両の乗員に与える不安を軽減することができる。
【0009】
また、上述した異常判定手段は、バッテリ電流検出手段、バッテリ電圧検出手段、バッテリ温度検出手段の各検知結果が所定値1より大きいか、あるいは所定値1より小の所定値2よりも小さい状態が所定時間継続したときに異常が発生した旨の判定を行うことが望ましい。また、上述した異常判定手段は、バッテリ電圧検出手段によって検出された電圧値が所定値3よりも小さく、かつ、バッテリ電流検出手段によって検出された電流値が所定値4よりも大きい状態が所定時間継続したときにバッテリ内部短絡を内容とするバッテリ異常が発生した旨の判定を行い、バッテリ電流検出手段によって検出された電流値が0Aであり、かつ、車両用発電機に異常がない状態が所定時間継続したときにバッテリオープンを内容とするバッテリ異常が発生した旨の判定を行うことが望ましい。また、上述した異常判定手段は、バッテリ電圧検出手段によって検出された電圧値と車両用発電機の発電電圧値との差が所定値5よりも大きい状態が所定時間継続したときに充電線外れが発生した旨の判定を行うことが望ましい。これにより、容易かつ確実に各種の異常の有無を判定することが可能となる。
【0010】
また、上述した車両用発電機は、異常判定手段によって異常が発生した旨の判定がなされたときに、発電制御手段による発電制御に代えて、自立的な発電制御を行うことが望ましい。これにより、各種の異常に伴う誤った発電制御を回避することができ、適正な発電制御を継続することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を適用した一実施形態の車両システムについて、図面を参照しながら説明する。図1は、一実施形態の車両システムの全体構成を示す図である。図1に示す車両システムは、エンジン2、車両用発電機(ALT)3、バッテリ(BATT)5、バッテリ電流検出装置(S)6、表示器7を含んで構成されている。
【0012】
車両用発電機3は、ベルトを介してエンジン2によって回転駆動されて発電を行い、バッテリ5に対する充電電力や各種の電気負荷(図示せず)に対する動作電力を供給する。この車両用発電機3には、励磁電流を調整することにより出力電圧を制御する車両用発電制御装置4が内蔵されている。バッテリ電流検出装置6は、バッテリ5の近傍に配置されており、バッテリ5の充放電電流の計測やその他の動作(詳細は後述する)を行う。例えば、バッテリ電流検出装置6は、バッテリ5の端子あるいは筐体に取り付けられている。表示器7は、車両用発電制御装置4に接続されており、発電異常の警告やその他の通知(詳細は後述する)に用いられる。
【0013】
図2は、バッテリ電流検出装置6と車両用発電制御装置4の詳細構成を示す図である。図2に示すように、車両用発電制御装置4は、パワートランジスタ10、環流ダイオード12、発電機回転数検出部14、発電電圧検出部16、発電率検出部18、発電状態信号格納部20、通信コントローラ22、ドライバ24、発電制御信号格納部26、電圧制御部28、負荷応答制御部30、アンド回路32、ドライバ34、46、発電機異常検出部40、PWM(パルス幅変調)処理部42、トランジスタ48を含んで構成されている。
【0014】
パワートランジスタ10は、車両用発電機3内の励磁巻線3Aに直列に接続されており、オンされたときに励磁巻線3Aに励磁電流が供給される。環流ダイオード12は、励磁巻線3Aに並列に接続されており、パワートランジスタ10がオフされたときに励磁巻線3Aに流れる励磁電流を環流させる。
【0015】
発電機回転数検出部14は、車両用発電機3の回転数を検出する。例えば、車両用発電機3の固定子巻線を構成する相巻線に現れる相電圧の周波数を監視することにより、車両用発電機3の回転数検出が行われる。発電電圧検出部16は、車両用発電機3の出力端子電圧を発電電圧として検出する。発電率検出部18は、車両用発電機3の稼働状態(発電状態)を示す発電率を検出する。例えば、パワートランジスタ10と励磁巻線3Aの接続点であるF端子の電圧を監視し、パワートランジスタ10がオンされる相対的な割合としてのオンデューティを発電率として検出する。発電機異常検出部40は、車両用発電機3の異常(例えば、固定子巻線、励磁巻線、整流装置の断線や短絡等)を検出し、この検出結果を示す発電機異常情報を出力する。
【0016】
発電状態信号格納部20は、発電率検出部18、発電電圧検出部16、発電機回転数検出部14のそれぞれによって検出された発電率(t1)、発電電圧(t2)、回転数(t3)のそれぞれの検出値や発電機異常検出部40から出力される発電機異常情報(t4)が含まれる発電状態信号を格納する。通信コントローラ22は、この発電状態信号をデジタル通信用の所定のフォーマットに変換して変調処理を行う。変調された信号(デジタル変調信号)は、ドライバ24から通信線を介してバッテリ電流検出装置6に向けて送信される。
【0017】
上述したドライバ24は、反対にバッテリ電流検出装置6から通信線を介して送られてくるデジタル変調信号を受信するレシーバの機能も備えている。また、上述した通信コントローラ22は、ドライバ24で受信したデジタル変調信号に対して復調処理を行う機能も備えている。復調処理によって得られた発電制御信号は、発電制御信号として発電制御信号格納部26に格納される。この発電制御信号には、発電電圧指示値(r1)、負荷応答制御指示値(r2)、表示器信号(r3)が含まれる。電圧制御部28は、発電電圧が発電電圧指示値で指定された所定の調整電圧値になるように制御する動作を行っており、この制御に必要な信号を出力する。負荷応答制御部30は、負荷応答制御指示値で指定された割合で発電率を増加させる負荷応答制御を行っており、この制御に必要な信号を出力する。アンド回路32には電圧制御部28と負荷応答制御部30のそれぞれから出力される信号が入力されており、これらの論理積信号が駆動信号としてドライバ34に入力される。ドライバ34は、アンド回路32から入力される駆動信号に応じてパワートランジスタ10を駆動する。
【0018】
PWM処理部42は、表示器信号が入力されたときにこの信号をパルス幅変調して通知信号を生成する。ドライバ46は、PWM処理部42から出力される通知信号に応じてトランジスタ48を駆動し、L端子に接続された表示器7の点灯等を行う。
【0019】
また、図2に示すように、バッテリ電流検出装置6は、シャント抵抗50、増幅器52、60、アナログ−デジタル変換器(A/D)54、62、82、抵抗56、58、マイコン(マイクロコンピュータ)64、ドライバ70、通信コントローラ72、発電状態信号格納部74、発電制御信号格納部76、温度検出部80、電源回路84、コンデンサ86、88を含んで構成されている。
【0020】
シャント抵抗50は、バッテリ5の充放電電流検出用の抵抗であり、一方端がバッテリ5の負極端子に接続され、他方端が接地されている。増幅器52は、例えば差動増幅器であって、シャント抵抗50の両端電圧を増幅する。この増幅された電圧は、アナログ−デジタル変換器54によってデジタルデータに変換されてマイコン64に入力される。
【0021】
抵抗56、58は、バッテリ5の端子電圧(バッテリ電圧)検出用の分圧回路を構成しており、この分圧回路の一方端がバッテリ5の正極端子に接続され、他方端が接地されている。増幅器60は、例えば演算増幅器であって、抵抗56、58からなる分圧回路の出力側に接続されたバッファとして機能する。増幅器60の出力電圧(図2に示す構成では抵抗56、58の接続点に現れる分圧電圧に等しい)は、アナログ−デジタル変換器62によってデジタルデータに変換されてマイコン64に入力される。
【0022】
温度検出部80は、バッテリ5の温度を検出する。例えば、温度に対応する電圧が出力される。この出力電圧は、アナログ−デジタル変換器82によってデジタルデータに変換されてマイコン64に入力される。マイコン64は、アナログ−デジタル変換器54、62、82等から入力されるデータに基づいてバッテリ5の状態(例えば充電状態)を演算処理するとともに、バッテリ5の状態に基づいて車両用発電機3の調整電圧である発電電圧指示値や、車両用発電制御装置4によって車両用発電機3に対する負荷応答制御を実施する際の制御パラメータとなる負荷応答制御指示値を決定する。マイコン64は、これらの発電電圧指示値や負荷応答制御指示値を含む発電制御信号を出力する。電源回路84は、マイコン64やその他の回路の動作に必要な電力を供給する。
【0023】
ドライバ70、通信コントローラ72は、通信線を介して車両用発電制御装置4との間で信号の送受信を行うためのものであり、車両用発電制御装置4内に備わったドライバ24および通信コントローラ22と基本的に同じ動作を行う。車両用発電制御装置4から通信線を介して送られてきたデジタル変調信号(発電状態信号)をドライバ70によって受信すると、通信コントローラ72によって復調処理が行われ、得られた発電状態信号が発電状態信号格納部74に格納される。また、マイコン64から出力される発電制御信号が発電制御信号格納部76に格納されると、通信コントローラ72は、この発電制御信号をデジタル通信用の所定のフォーマットに変換して変調処理を行う。変調された信号(デジタル変調信号)は、ドライバ70から通信線を介して車両用発電制御装置4に向けて送信される。
【0024】
シャント抵抗50、増幅器52、アナログ−デジタル変換器54によってバッテリ電流検出手段が構成されている。抵抗56、58、増幅器60、アナログ−デジタル変換器62によってバッテリ電圧検出手段が構成されている。温度検出部80、アナログ−デジタル変換器82によってバッテリ温度検出手段が構成されている。本実施形態では、マイコン64は、これらの各検出手段の異常の有無や、バッテリ異常および充電線外れの有無を検知する動作を行っており、上述した発電電圧指示値や負荷応答制御指示値の他に、これらの異常の有無を示す異常情報を含む発電制御信号を出力する。また、上述したマイコン64が発電制御手段、異常判定手段に、ドライバ70、通信コントローラ72が通信手段にそれぞれ対応する。
【0025】
本実施形態の車両システムはこのような構成を有しており、次にその動作を説明する。図3は、車両用発電制御装置4の動作手順を示す流れ図である。バッテリ電流検出装置6の各検出手段(電流検出手段、電圧検出手段、温度検出手段)の異常を検知したか否かによって動作が分岐する(ステップ100)。バッテリ電流検出装置6から車両用発電制御装置4に送られてくるデータに含まれる「異常情報」を調べることにより、各検出手段の異常の有無を知ることができる。いずれかの検出手段の異常を検知した場合(ステップ100で肯定判断)には、PWM処理部42からドライバ46に所定のハイ/ローパターンのPWM信号を入力し、L端子に接続された表示器7を点滅あるいは減光させたり、徐々に明るくする表示を繰り返すなど、通常の点灯(後述するステップ106の点灯)と識別可能な表示態様で表示器7を表示させる(ステップ101)。
【0026】
次に、車両用発電機3の発電制御が、バッテリ電流検出装置6から送られてくる発電電圧指示値や負荷応答制御指示値を用いない自律制御に切り替えられる(ステップ102)。例えば、電圧制御部28で用いる発電電圧指示値や負荷応答制御部30で用いる負荷応答制御指示値として予め決められた値が用いられる。
【0027】
一方、いずれの検出手段の異常を検知しない場合(ステップ100で否定判断)には、バッテリ異常または充電線外れを検知したか否かによって動作が分岐する(ステップ103)。バッテリ電流検出装置6から車両用発電制御装置4に送られてくるデータに含まれる「異常情報」を調べることにより、バッテリ異常や充電線外れの有無を知ることができる。バッテリ異常や充電線外れのいずれも発生していない場合(ステップ103で否定判断)には、PWM処理部42からドライバ46に常時ローレベルの信号を入力し、L端子に接続された表示器7が消灯される(ステップ104)。その後、車両用発電機3に対して、バッテリ電流検出装置6から送られてくる発電電圧指示値や負荷応答制御指示値を用いた通常の充電制御が行われる(ステップ105)。
【0028】
また、バッテリ異常あるいは充電線外れが検知された場合(ステップ103で肯定判断)には、PWM処理部42からドライバ46に常時ハイレベルあるいはオンデューティが100%に近い所定パターンのPWM信号を入力し、L端子に接続された表示器7が点灯される(ステップ106)。その後、ステップ102に移行して自律制御が行われる。
【0029】
図4は、バッテリ電流検出装置6において各検出手段の異常の有無を判定する動作手順を示す流れ図である。マイコン64は、バッテリ測定電流値Ib、バッテリ測定電圧値Vb、バッテリ温度Tbを読み込むと(ステップ200)、これらの値が所定値1より大、または、所定値2より小であるか否かを判定する(ステップ201)。なお、この判定は読み込んだ値が所定の範囲から外れるか否かを調べるものであり、所定値1、2は、読み込んだ3つの値(バッテリ測定電流値Ib、バッテリ測定電圧値Vb、バッテリ温度Tb)のそれぞれに対応したものが予め用意されている。読み込んだ値が所定範囲から外れている場合にはステップ201の判定において肯定判断が行われ、次に、マイコン64は、読み込んだ値が所定範囲から外れている状態で所定時間経過したか否かを判定する(ステップ202)。所定時間経過した場合には肯定判断が行われ、マイコン64は、所定範囲を外れている値に対応する検出手段に異常が発生していると判定する(ステップ203)。
【0030】
一方、読み込んだ値が所定範囲から外れていない場合(ステップ201の判定において否定判断)や所定時間が経過していない場合(ステップ202の判定において否定判断)には、マイコン64は、いずれの検出手段にも異常が発生していない旨の判定を行う(ステップ204)。バッテリ電流検出装置6から車両用発電制御装置4に送られる発電制御信号の「異常情報」には、上述したステップ203、204における判定結果が含まれる。
【0031】
図5は、バッテリ電流検出装置6においてバッテリ異常(バッテリ内部短絡)の有無を判定する動作手順を示す流れ図である。マイコン64は、読み込んだバッテリ測定電圧値Vbが所定値3未満であるか否か(ステップ300)、バッテリ測定電流値Ibが所定値4よりも大きいか否か(ステップ301)を判定する。いずれの判定でも肯定判断の場合には、次に、マイコン64は、この状態で所定時間経過したか否かを判定する(ステップ302)。所定時間経過した場合には肯定判断が行われ、マイコン64は、バッテリ内部短絡が発生していると判定する(ステップ303)。一方、ステップ300、301、302のいずれかにおいて否定判断が行われた場合には、マイコン64は、バッテリ5が正常である(バッテリ内部短絡が発生していない)と判定する(ステップ304)。
【0032】
図6は、バッテリ電流検出装置6においてバッテリ異常(バッテリオープン)の有無を判定する動作手順を示す流れ図である。マイコン64は、読み込んだバッテリ測定電流値Ibが0Aであるか否か(ステップ400)、車両用発電制御装置4から送られてきた発電状態信号の発電機異常信号が異常を示していないか否か(ステップ401)を判定する。いずれの判定でも肯定判断の場合には、次に、マイコン64は、この状態で所定時間経過したか否かを判定する(ステップ402)。所定時間経過した場合には肯定判断が行われ、マイコン64は、バッテリオープンが発生していると判定する(ステップ403)。一方、ステップ400、401、402のいずれかにおいて否定判断が行われた場合には、マイコン64は、バッテリ5が正常である(バッテリオープンが発生していない)と判定する(ステップ404)。
【0033】
図7は、バッテリ電流検出装置6において充電線外れの有無を判定する動作手順を示す流れ図である。マイコン64は、バッテリ測定電圧値Vbと車両用発電制御装置4から送られてきた発電状態信号に含まれる発電電圧値Vaとを読み込み(ステップ500)、発電電圧値Vaとバッテリ測定電圧値Vbとの差が所定値5よりも大きいか否かを判定する(ステップ501)。大きい場合には肯定判断が行われ、次に、マイコン64は、この状態で所定時間経過したか否かを判定する(ステップ502)。所定時間経過した場合には肯定判断が行われ、マイコン64は、充電線外れが発生していると判定する(ステップ503)。一方、ステップ501、502のいずれかにおいて否定判断が行われた場合には、マイコン64は、充電線が正常である(充電線外れが発生していない)と判定する(ステップ504)。
【0034】
図8は、車両用発電制御装置4からバッテリ電流検出装置6に向けて送信される発電状態信号のフレームフォーマットを示す図である。図8に示す送信フレームには、車両用発電制御装置4内の発電状態信号格納部20に格納された発電率、発電機回転数、発電電圧、発電機異常情報が含まれる。
【0035】
図9は、バッテリ電流検出装置6から車両用発電制御装置4に向けて送信される発電制御信号のフレームフォーマットを示す図である。図9に示す送信フレームには、バッテリ電流検出装置6内の発電制御信号格納部76に格納された発電電圧指示、負荷応答制御指示、異常情報が含まれる。
【0036】
このように、本実施形態の車両システムでは、車両用発電機3に接続された表示器7を用いて各検出手段の異常を通知することができるため、この異常通知のために専用の表示器を備える必要がなく、インパネの実装面積の増大やコスト増加を抑えることができるとともに、異常発生を確実に乗員に知らせることができる。また、デジタル通信で異常情報を送受信することにより、ノイズの影響を低減することが可能になる。さらに、ECU等を用いずに異常発生を通知することができるため、ECU等の処理負担を軽減することができる。
【0037】
また、各検出手段の異常の有無とともに、バッテリ異常や充電線外れを検知した場合にも表示器7を用いた通知を行っているため、広範囲に異常の有無を判定することが可能になり、バッテリ5を充電する充電系の信頼性を向上させることができる。また、各検出手段の異常と、バッテリ異常あるいは充電線外れとで、表示器7の表示態様を異ならせており、緊急度が異なる異常の内容に応じた表示を行うことができる。
【0038】
また、異常発生時に、バッテリ電流検出装置6による発電制御に代えて、車両用発電機3による自立的な発電制御を行うことにより、各種の異常に伴う誤った発電制御を回避することができ、適正な発電制御を継続することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】一実施形態の車両システムの全体構成を示す図である。
【図2】バッテリ電流検出装置と車両用発電制御装置の詳細構成を示す図である。
【図3】車両用発電制御装置の動作手順を示す流れ図である。
【図4】バッテリ電流検出装置において各検出手段の異常の有無を判定する動作手順を示す流れ図である。
【図5】バッテリ電流検出装置においてバッテリ異常(バッテリ内部短絡)の有無を判定する動作手順を示す流れ図である。
【図6】バッテリ電流検出装置においてバッテリ異常(バッテリオープン)の有無を判定する動作手順を示す流れ図である。
【図7】バッテリ電流検出装置において充電線外れの有無を判定する動作手順を示す流れ図である。
【図8】車両用発電制御装置からバッテリ電流検出装置に向けて送信される発電状態信号のフレームフォーマットを示す図である。
【図9】バッテリ電流検出装置から車両用発電制御装置4に向けて送信される発電制御信号のフレームフォーマットを示す図である。
【符号の説明】
【0040】
2 エンジン
3 車両用発電機(ALT)
4 車両用発電制御装置
5 バッテリ(BATT)
6 バッテリ電流検出装置(S)
7 表示器
10 パワートランジスタ
14 発電機回転数検出部
16 発電電圧検出部
18 発電率検出部
20、74 発電状態信号格納部
22、72 通信コントローラ
24、34、46、70 ドライバ
26、76 発電制御信号格納部
28 電圧制御部
30 負荷応答制御部
40 発電機異常検出部
42 PWM(パルス幅変調)処理部
48 トランジスタ
50 シャント抵抗
64 マイコン(マイクロコンピュータ)
80 温度検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたバッテリと、このバッテリを充電する車両用発電機と、前記バッテリの充放電電流を検出するバッテリ電流検出装置とを備える車両システムにおいて、
前記バッテリ電流検出装置は、
前記バッテリの充放電電流を検知するバッテリ電流検出手段と、
前記バッテリの端子電圧を検知するバッテリ電圧検出手段と、
前記バッテリの温度を検知するバッテリ温度検出手段と、
前記バッテリ電流検出手段、前記バッテリ電圧検出手段、前記バッテリ温度検出手段の各検知結果に基づいて前記車両用発電機を制御する発電制御手段と、
デジタル通信によって前記車両用発電機との間で信号を送受信する通信手段と、
前記バッテリ電流検出手段、前記バッテリ電圧検出手段、前記バッテリ温度検出手段の異常の有無を判定し、前記通信手段を介して異常の発生を通知する異常情報を送信する異常判定手段と、
を備えることを特徴とする車両システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記車両用発電機は、前記バッテリ電流検出装置から前記異常情報を受信したときに、異常発生を表示器を用いて車両の乗員に通知する異常通知手段を備えることを特徴とする車両システム。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記異常判定手段は、前記バッテリ電流検出手段、前記バッテリ電圧検出手段、前記バッテリ温度検出手段の異常の有無とともに、前記バッテリの異常の有無と、前記バッテリと前記車両用発電機とを接続する充電線の外れの有無を検知し、前記異常情報にはこれらの異常の有無を含ませることを特徴とする車両システム。
【請求項4】
請求項3において、
前記車両用発電機は、前記バッテリ電流検出手段、前記バッテリ電圧検出手段、前記バッテリ温度検出手段の異常と、バッテリ異常あるいは充電線外れとで、前記表示器の表示態様を異ならせることを特徴とする車両システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記異常判定手段は、前記バッテリ電流検出手段、前記バッテリ電圧検出手段、前記バッテリ温度検出手段の各検知結果が所定値1より大きいか、あるいは所定値1より小の所定値2よりも小さい状態が所定時間継続したときに異常が発生した旨の判定を行うことを特徴とする車両システム。
【請求項6】
請求項3または4において、
前記異常判定手段は、前記バッテリ電圧検出手段によって検出された電圧値が所定値3よりも小さく、かつ、前記バッテリ電流検出手段によって検出された電流値が所定値4よりも大きい状態が所定時間継続したときにバッテリ内部短絡を内容とするバッテリ異常が発生した旨の判定を行い、前記バッテリ電流検出手段によって検出された電流値が0Aであり、かつ、前記車両用発電機に異常がない状態が所定時間継続したときにバッテリオープンを内容とするバッテリ異常が発生した旨の判定を行うことを特徴とする車両システム。
【請求項7】
請求項3または4において、
前記異常判定手段は、前記バッテリ電圧検出手段によって検出された電圧値と前記車両用発電機の発電電圧値との差が所定値5よりも大きい状態が所定時間継続したときに充電線外れが発生した旨の判定を行うことを特徴とする車両システム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかにおいて、
前記車両用発電機は、前記異常判定手段によって異常が発生した旨の判定がなされたときに、前記発電制御手段による発電制御に代えて、自立的な発電制御を行うことを特徴とする車両システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−173231(P2009−173231A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16086(P2008−16086)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】