説明

車両ナビゲーション装置および仮道路地図データの登録方法

【課題】 仮道路の地図データを生成したとき、利用者がその地図データの信頼性に問題があることを認識した上で、場合に応じてフレキシブルに仮道路を利用することが可能な車両ナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】 車両ナビゲーション装置1では、仮道路地図データ生成部52は、ロケータ部57、マップマッチング部54、道路逸脱判定部53の処理結果に基づき、仮道路地図データを生成する。生成された仮道路地図データは、仮道路地図データ登録部51によって地図データベース65に登録される。その登録に際し、仮道路地図データには仮道路フラグが付され、また、仮道路が接続する公式道路のリンクは、複数のリンクに分割され、分割後のリンクデータが分割済フラグを付して地図データベース65に登録される。また、分割前のリンクデータは、分割済フラグを付して地図データベース65に残される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路を走行する車両に搭載される車両ナビゲーション装置およびその車両ナビゲーション装置における仮道路地図データ登録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、道路を走行する車両に搭載された車両ナビゲーション装置においては、最新の地図データを利用したとしても、現実の地物との相違をなくすことができないという問題があった。ちなみに、車両ナビゲーション装置のメーカでは、1年に1〜2回、新しい地図データをユーザに提供しており、また、通信型のナビゲーション装置では、地図サーバに最新の地図データを備え、最新の地図データを車上のナビゲーション装置に送信している。しかしながら、地物の変化を地図データに反映するには、その地物の変化を検証する地道な作業が必要であり、その検証のために、その地物の変化を地図データに反映するには一定のタイムラグが生じてしまう。従って、少なくともそのタイムラグの間は、地図データと現実の地物との間に相違をなくすことができない。
【0003】
特許文献1には、例えば、地図にない新設された道路などを実際に走行することによって、車両ナビゲーション装置がその走行した道路の地図データを生成する地図情報更新装置および方法が開示されている。この地図情報更新装置および方法によれば、車両が地図にない道路を走行した場合には、走行することにより、GPSなどの測位装置によって得られる車両の走行軌跡に基づき地図にない道路の地図データを生成し、生成した道路の地図データをその後の地図表示などにおいて利用するとしている。
【特許文献1】特開2004−205379号公報(段落0020〜段落0060、図1〜図14)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている地図情報更新装置および方法においては、地図にない道路に対応して新たに生成された道路の地図データを記憶する記憶部と、もとの道路の地図データを記憶する記憶部とが異なっている。また、地図にない道路の地図データを生成しても、もとの道路の地図データを変更することをしていない。すなわち、もとの道路の地図データには、新たに生成された道路の地図データへリンクすべきデータが含まれていない。従って、特許文献1に開示されている地図情報更新装置および方法によっては、新たな道路を地図表示することはできても、誘導経路の算出には利用することができない。
【0005】
また、特許文献1に基づき生成される道路の地図データは、車両が走行するだけで生成されるデータであり、特別なデータの検証などが行われるわけではない。従って、その地図データの信頼性については、問題がないとは言い切れないので、その地図データを利用する、つまり、新たに生成された地図データの道路を走行するにあたっては利用者に注意を喚起すべきである。しかしながら、特許文献1に示されている車両ナビゲーション装置では、そのような注意喚起を行うような機能は開示されていない。
【0006】
以上の従来技術の問題に鑑み、本発明では、もとの地図データに含まれない道路(以下、仮道路という)を走行することによってその仮道路の地図データを生成したときには、その仮道路を含んだ形ででも、または、含まない形ででも誘導経路を算出することが可能な仮道路の地図データの登録方法を実現するとともに、仮道路を利用(走行)するにあたっては、利用者がその地図データの信頼性に問題があることを認識した上で、場合に応じてフレキシブルに仮道路を利用(走行)することが可能な車両ナビゲーション装置を提供できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の車両ナビゲーション装置は、車両の現在位置を測位する測位手段と、道路の地図データを記憶した地図データ記憶手段と、地図データ記憶手段に記憶されている地図データに基づき目的地までの誘導経路を算出する誘導経路算出手段と、車両の現在位置を前記地図データに含まれる近傍の道路位置に一致するように修正するマップマッチング手段と、車両の現在位置近隣の地図データを表示する地図データ表示手段とを備え、測位手段により得られる車両の現在位置とマップマッチング手段によりマップマッチングされた車両位置との距離を算出し、その算出された距離が所定距離以上になったときに、車両が前記地図データ記憶手段に記憶されている道路から逸脱して走行していると判定する道路逸脱判定手段と、その道路逸脱判定手段により車両が地図データ記憶手段に記憶されている道路から逸脱して走行していると判定されたときには、その車両が前記地図データ記憶手段に記憶されている道路から逸脱しないで走行していると判定されるまで、測位手段により得られる車両の走行軌跡の位置データに基づき仮道路の地図データを生成する仮道路地図データ生成手段と、その仮道路地図データ生成手段により生成された仮道路地図データに仮道路地図データであることを示す仮道路フラグを付し、仮道路フラグを付した仮道路地図データを前記地図データ記憶手段に登録する仮道路地図データ登録手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
さらに、その仮道路地図データ登録手段は、仮道路に接続する道路区間が仮道路との接続点により複数の道路区間に分割される場合には、仮道路に接続する道路区間の地図データをその接続点により複数の道路区間の地図データに分割し、その分割した複数の道路区間の地図データに分割済フラグを付し、その分割済フラグを付した道路区間の地図データを地図データ記憶手段に登録するとともに、地図データ記憶手段において前記分割した道路区間の分割前の道路区間の地図データに分割前フラグを付す変更を行うことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、車両ナビゲーション装置において前記仮道路地図データ登録手段が仮道路地図データを地図データ記憶手段に登録する仮道路地図データ登録方法である。
【0010】
本発明によれば、車両が、地図データ記憶手段にその地図データが記憶されていない道路を走行すると、車両ナビゲーション装置において、その道路を仮道路としてその仮道路の地図データが生成される。そして、仮道路の地図データにはそれが仮道路地図データであることを示す仮道路フラグが付加され、地図データ記憶手段に登録される。従って、仮道路を他の道路と区別することが容易となるので、車両ナビゲーション装置は、仮道路を他の道路と識別可能なように表示したり、仮道路を通過中にそれが仮道路であることを示すメッセージを告知したりすることができるようになる。そのため、車両のドライバ、つまり、車両ナビゲーション装置の利用者は、仮道路を信頼性に問題がある道路と認識し、場合に応じてその仮道路を利用したり利用しなかったりするフレキシブルな利用の仕方をすることができるようになる。
【0011】
また、本発明によれば、仮道路に接続する道路区間がその仮道路との接続点によって複数の道路区間に分割される場合には、その道路区間の地図データを複数の道路区間の地図データに分割し、分割された地図データには、分割済フラグが付加されて地図データ記憶手段に登録される。また、仮道路に接続する道路区間のもとの地図データには、分割前フラグが付加される変更が行われる。すなわち、地図データ記憶手段には、仮道路を登録した後の道路ネットワークの情報だけでなく、仮道路を登録する前の道路ネットワークの情報も記憶されている。
【0012】
従って、本発明では、道路の地図データに付加したフラグによってその地図データを選択して使用することにより、仮道路を含んだ形ででも、または、含まない形ででも誘導経路を算出することができる。そのため、利用者は、仮道路を場合に応じて誘導経路に含めたり含めなかったりすることができるので、仮道路をフレキシブルに利用し分けることができるようになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、仮道路を含んだ形ででも、または、含まない形ででも誘導経路を算出することが可能な車両ナビゲーション装置を提供することができるようになるとともに、利用者が仮道路を利用するにあたっては、そのデータの信頼性に問題があると認識した上で、場合に応じてフレキシブルに仮道路を利用することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0015】
(車両ナビゲーション装置の構成)
図1は、本実施形態の車両ナビゲーション装置に係る車載装置のブロック構成の例を示した図である。図1に示すように、車両に搭載される車両ナビゲーション装置1は、情報処理部11、センサインターフェース12、スピーカ13、タッチパネルディスプレイ14などを含んで構成される。また、車両には、GPS(Global Positioning System)受信装置2、車速センサ3、方向センサ4など車両の位置情報を測位するセンサが搭載され、これらのセンサ2〜4は、センサインターフェース12を介して情報処理部11に接続されている。
【0016】
図1において、情報処理部11は、CPU(Central Processing Unit)111、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などからなるメモリ112、ハードディスク記憶装置113などを含んで構成される。メモリ112およびハードディスク記憶装置113には、車両ナビゲーション装置1が果たすべき機能を実現するためのプログラムが格納される。そして、CPU111がハードディスク記憶装置113に格納されているプログラムを読み出し、メモリ112に格納し直して、そのプログラムを実行することによって、車両ナビゲーション装置1の機能が実現される。
【0017】
図1において、センサインターフェース12は、CPU111の指示に従い、GPS受信装置2、車速センサ3、方向センサ4からそれぞれ、緯度・経度、車両の走行速度、車両の走行方向などの情報を取得する。また、スピーカ13は、地図データの表示や各種の動作モードなどの設定に際し、利用者に注意を喚起するメッセージなどを出力するのに用いられる。また、タッチパネルディスプレイ14は、表示装置として、地図を表示したり、動作モード等の指定に際しては、動作モードの条件やボタンなどを表示したりするのに用いられる。さらに、タッチパネルディスプレイ14は、入力装置として、表示された地図における位置情報や動作モードを指定するボタンなどのオン・オフ情報を入力するのに用いられる。
【0018】
図2は、本実施形態の車両ナビゲーション装置に係る機能構成の例を示した図である。図2において、情報処理部11内の各ブロックは、メモリ112またはハードディスク記憶装置113に格納された主要なプログラムまたはデータに相当する。
【0019】
図2において、センサデータ入力部58は、例えば、所定時間ごとに、センサインターフェース12を介してGPS受信装置2、車速センサ3、方向センサ4からそれぞれ、緯度・経度、車両の走行速度、車両の走行方向などの情報を取り込み、メモリ112の所定の領域に格納する。また、ロケータ部57は、車両の現在位置を確定させる。車両の現在位置は、原則として、GPS受信装置2から得られる緯度・経路に基づき確定させるが、GPS電波が受信できない、または、GPS電波が不安定なトンネル内やビルの谷間などにおいては、車速センサ3および方向センサ4からそれぞれ得られる車両の走行速度および走行方向の情報を加味して、その現在位置を補正し、確定させる。
【0020】
図2におけるこれ以外のブロックの機能は、本発明を特徴付けるものであるので、図3以降の図を参照して、詳しく説明する。
【0021】
(地図データベースのリンクデータの構成)
図3は、本実施形態の車両ナビゲーション装置に係る地図データベースにおける道路のリンクデータの構成の例を示した図である。一般に、道路網は、交差点をノードとし、交差点によって区分された道路区間をリンクとしたネットワークとして表現されるが、図3に示した道路のリンクデータ(以下、単に、リンクデータともいう)は、そのネットワークにおける1つのリンクの情報を表現したものである。なお、この道路のリンクデータは、この明細書および特許請求の範囲でいう道路の地図データに対応する。
【0022】
図3において、リンクIDは、交差点から交差点までの道路区間、つまり、道路のリンクそれぞれにユニークに割り当てられる番号または記号であり、そのリンクを識別するために用いられる。また、ノードIDは、交差点それぞれにユニークに割り当てられる番号または記号であり、そのノードを識別するために用いられる。地図データベース65においては、リンクIDに対してその両端のノードIDが始点ノードIDおよび終点ノードIDとして対応付けられる。なお、始点ノードおよび終点ノードという場合には、そのリンクは、有向であることが多いが、ここでは、有向であっても無向であってもいいものとする。また、交差点でないところをノードとしても構わない。
【0023】
座標値1〜座標値nは、そのリンクの地図上での位置を、例えば、緯度・経度で表わしたものであり、少なくとも2つの座標値からなる。すなわち、そのリンクが直線の場合には、その座標値としては、始点ノードおよび終点ノードの座標値が記憶される。また、リンクが曲がっている場合には、その曲がっているリンクを、例えば、直線近似した折れ線における折れ点の座標値の列が記憶される。
【0024】
標準リンクコストは、そのリンクの長さまたは平均的な車両の走行時間を表わす値である。また、計算時リンクコストは、誘導経路を算出するときに用いられるリンクコストであり、例えば、高速道路を優先的に誘導経路にしたい場合などには、高速道路のリンクコストを標準リンクコストより小さく設定する。後記するように、本実施形態においては、仮道路を優先的に利用する場合や、非優先にして利用する場合などに、計算時リンクコストを、標準リンクコストより小さくまたは大きく設定する。
【0025】
道路属性情報は、高速道路、国道、県道などの道路種別や、道路の名称、愛称、道幅、車線数などの種々の情報からなる。また、道路属性情報には、その道路区間(リンク)にある地物などの名称を含むようにしてもよい。
【0026】
仮道路フラグは、そのリンクが仮道路であることを示すフラグである。また、仮道路が設けられると、仮道路に接続するもとの道路区間(リンク)は、複数のリンクに分割される。そこで、その分割されて生成された新たなリンクのデータには、分割済フラグを付加する。また、分割される前のもとのリンクのデータには、分割前フラグを付加する。これらのフラグについては、図9においてさらに詳しく説明する。
【0027】
ここで、これらフラグの値は、それぞれ0または1とするが、これらフラグをまとめ、3桁の2進数とみなした0〜7の数としてもよい。また、例えば、リンクIDの特定の桁をこれらのフラグに割り当ててもよく、さらには、リンクIDの帯域分けによってそれぞれのフラグを表わすようにしてもよい。なお、以上のリンクデータを含んで構成される地図データベース65は、通常、ハードディスク記憶装置113上に設けられる。
【0028】
(仮道路地図データの生成・登録処理)
次に、図4〜図9を参照して、車両ナビゲーション装置1において仮道路の地図データを生成し、生成した仮道路の地図データを地図データベース65に登録する処理について説明する。ここで、図4は、仮道路の地図データを生成し、登録する処理の流れの例を示した図、図5は、車両位置のマップマッチングおよび道路逸脱を説明する図、図6は、道路の粗密度を説明する図である。また、図7は、仮道路地図データの生成を説明する図で、(a)は、仮道路地図データ生成時の車両の軌跡を示した図、(b)は、仮道路地図データ生成時に使用されるメモリの作業領域を示した図である。さらに、図8は、仮道路を含めた道路のネットワークの例を示した図、図9は、図8の例におけるリンクデータの例を示した図であり、(a)は、仮道路のリンクデータの例、(b)は、仮道路により分割される前のリンクのリンクデータの例、(c)は、仮道路により分割された後のリンクのリンクデータの例である。
【0029】
まず、図5を参照して、車両位置のマップマッチングと車両の道路逸脱について説明する。図5において、黒丸は、交差点(ノード)を表わし、ノードを接続する実線は、道路区間(リンク)を表している。また、アステリスク(*印)は、ロケータ部57(図2参照)によって得られた車両の現在位置を示している。
【0030】
一般に、GPS受信機によって測位された車両位置は、10数m程度の誤差を含むので、車両ナビゲーション装置1では、その車両位置を地図にある最も近い道路上の位置(▲印の位置)にあるものとみなすマップマッチング処理を行っている(マップマッチング部54)。このとき、図5に示すように、ロケータ部57によって得られる車両の現在位置と、マップマッチングされた車両位置との離間距離dが、所定の離間距離d0以下の場合には、車両は、公式道路(以下、もとから地図データベース65にある道路を公式道路という)を走行中とみなす。また、離間距離dが、所定の離間距離d0より大きくなった場合には、その車両は、もはや公式道路を走行しているとはみなされず、地図にない道路つまり仮道路を走行中であるとみなされる。
【0031】
このようにして、車両の現在位置が公式道路から所定の距離以上に逸脱した場合には、車両ナビゲーション装置1は、仮道路地図データの生成処理を開始するが、その開始の前に、道路の粗密度を判定する。ロケータが出力する現在位置の誤差のために、道路が密集しているところでは、仮道路地図データを生成するのが困難であるか、または、生成しても良好な仮道路地図データを得ることができないからである。そこで、本実施形態においては、車両の現在位置に対する道路の粗密度を算出し、その道路の粗密度が所定の値より大きい場合には、仮道路地図データの生成を行わないようにする。
【0032】
ここで、ある地点における道路の粗密度とは、図6に示すように、例えば、半径100mの単位円にその一部が含まれるリンク数、つまり、リンク密度をいう。図6において、現在位置Aの円には、15本のリンクが含まれ、現在位置Bの円には4本のリンクが含まれる。そこで、例えば、仮道路地図データを生成するか否かの閾値を、例えば、10本としておくと、現在位置Aにおいては仮道路地図データを生成せず、現在位置Bにおいては仮道路地図データを生成する。
【0033】
次に、以上の前提のもとに図4の仮道路地図データの生成・登録の処理の流れについて説明する。なお、この仮道路地図データの生成・登録の処理は、所定の時間(例えば、1秒、5秒など)ごとに起動される処理であるとする。
【0034】
まず、CPU111は、ロケータ部57の処理として車両の現在位置座標値を取得する(ステップS10)。次に、マップマッチング部54の処理としてマップマッチングした車両位置の座標値を算出し(ステップS11)、さらに、道路粗密判定部56の処理によって、現在位置近傍(例えば、現在位置を中心とする半径100mの円内)の道路の粗密度を算出する(ステップS12)。そして、算出した道路の粗密度が所定の粗密度より大きかった場合には(ステップS13でYes)、図6で説明したように仮道路地図データを生成しないとしているので、何もしないで処理を終了する。
【0035】
一方、算出した道路の粗密度が所定の粗密度以下であった場合には(ステップS13でNo)、CPU111は、道路逸脱判定部53の処理として、ロケータ部57により得られる現在位置と、マップマッチング部54の処理により得られるマップマッチングした位置との離間距離を算出する(ステップS14)。
【0036】
続いて、CPU111は、仮道路地図データ生成部52の処理としてステップS15〜ステップS21を実行し、仮道路地図データ登録部51の処理としてステップS22〜ステップS24を実行する。これらの処理については、図7の例を交えて、以下に具体的に説明する。
【0037】
図7(a)において、車両が仮道路を走行すると、車両の現在位置は、リンクL1から離れていき、例えば、x1の地点でリンクL1から逸脱したと判定される。そして、車両は、x2、x3、x4、x5の地点を走行し、リンクL2に接近する。そして、例えば、x6の地点でリンクL2に合流したと判定される。この場合、仮道路の分岐元リンクはL1であり、合流先リンクはL2である。また、地点x1がリンクL1にマップマッチングされた位置をxbとし、地点x6がリンクL2にマップマッチングされた位置をxmとする。
【0038】
また、図7(b)は、仮道路地図データ生成用の作業領域の構成を示したものであるが、この領域は、初期状態ですべて0が設定されているものとする。そして、車両が公式道路のリンクから逸脱して走行するとともに、仮道路のデータが順次生成されていく。
【0039】
まず、車両がx1の地点でリンクL1から逸脱したと判断された場合、つまり、x1とxbとの離間距離が所定の離間距離より大きかった場合には(ステップS15でYes)、CPU111は、仮道路地図データをすでに生成中であるか否かを判定する(ステップS16)。その判定のために図7(b)の作業領域の中に仮道路生成中フラグ(図示せず)を設けておくとよい。あるいは、仮道路生成中フラグを設けずとも、この判定は、例えば、図7(b)の作業領域の分岐元リンクIDがすでに設定されているか否かを判定することによって行うこともできる。
【0040】
ステップS16における判定の結果、仮道路地図データ生成中でなかった場合には(ステップS16でNo)、初めて仮道路地図データを生成することになるので、CPU111は、図7(b)の作業領域に、分岐元リンクのID(L1)と、車両の現在位置座標値(x1)とを記憶する(ステップS17)。このとき、この作業領域に記憶した現在位置の座標値の個数およびx1がマップマッチングされた位置xbを同時に記憶しておくとよい。そして、例えば、仮道路生成中フラグを1にセットして、仮道路地図データ生成中であることを表示する(ステップS18)。なお、ここでは、座標値の個数には、マップマッチングされた位置の座標値xbを含めないものとする(後記するxmも含めない)。
【0041】
また、ステップS16における判定の結果、仮道路地図データ生成中であった場合には(ステップS16でYes)、そのときの車両の現在位置座標値(x2、x3、x4、x5のうちの一つ)を図7(b)の作業領域に順に記憶する(ステップS19)。
【0042】
また、車両がx5の地点に到り、x6とxmとの離間距離が所定の離間距離以下になった場合には(ステップS15でNo)、さらに、仮道路生成中フラグなどにより仮道路地図データ生成中であるか否かを判定する(ステップS20)。そして、その判定の結果、仮道路地図データ生成中であった場合には(ステップS20でYes)、CPU111は、仮道路がもとからあるリンクL2に合流したものと判断して、ステップS21〜ステップS24の仮道路地図データ生成の最終処理を行う。
【0043】
ステップS21では、CPU111は、車両の現在位置座標値(x6)と合流先のリンクID(L2)とを図7(b)の作業領域に記憶する。そして、ステップS22では、その作業領域に記憶された分岐元リンクID(L1)、合流先リンクID(L2)、車両の走行軌跡のデータ(x1、…、x6)に基づき、仮道路地図データデータを生成し、生成した仮道路地図データを地図データベース65へ登録する。このとき、通常は、仮道路地図データとして車両の走行軌跡のデータがすべて使用されることはなく、例えば、車両の走行軌跡を折れ線近似して、その折れ点の座標だけが記憶される。図7の例の場合、仮道路は、図8に示すように、x3とx6とを折れ点とするような折れ線に近似される。従って、地図データベース65に登録される仮道路地図データは、図9(a)のように表される。ここで、生成された仮道路には、LnewというリンクIDが割り当てられ、その仮道路が分岐元および合流先のリンクとの接続点にはそれぞれNbおよびNmというノードが新たに設けられる。そして、Lnewという仮道路のリンクのリンクデータが地図データベース65に登録されるとき、そのリンクデータの仮道路フラグの領域は、1にセットされる。
【0044】
また、図4のステップS23においては、CPU111は、分岐元リンクおよび合流先リンクそれぞれを仮道路の接続点で分割し、分割されたリンクのリンクデータを地図データベース65に登録する。図7の例の場合、図8に示すように、リンクL1は、仮道路との接続ノードNbによってリンクL11とリンクL12とに分割され、リンクL2は、仮道路との接続ノードNmによってリンクL21とリンクL22とに分割される。分割されたリンクL11およびリンクL12のリンクデータは、図9(c)のように表される。なお、この分割されたリンクのリンクデータの分割済フラグ領域は、1にセットされる。
【0045】
さらに、CPU111は、地図データベース65にもとからあるリンクL1およびリンクL2のリンクデータついては、地図データベース65から削除することはせずに、リンクデータの分割前フラグ領域を1にセットする変更を行う。その結果、変更されたリンクL1のリンクデータは、図9(b)のように表される。以上のようにして仮道路地図データの生成・登録が終了すると、CPU111は、ステップS24で、図7(b)の作業領域をクリア、つまり、仮道路生成中フラグを0にして、仮道路データ生成中の表示を消す。
【0046】
また、ステップS20において、仮道路地図データ生成中でないと判定された場合には(ステップS20でNo)、車両の現在位置は、走行中の道路から単に測位誤差によってずれているだけとみなされ、CPU111は、仮道路地図データ生成に係る処理を終了する。
【0047】
以上に説明したように、本実施形態においては、車両が地図データベース65に登録されていない仮道路を通過すると、GPS受信機などによって測位される車両の走行軌跡の位置座標に基づき、仮道路のリンクデータを生成し、生成した仮道路のリンクデータを地図データベース65に登録する。そして、その登録に際しては、仮道路のリンクデータには、仮道路フラグを付加することによって、仮道路と公式道路(地図データベース65にもともと登録されていた道路)とを識別できるようにしている。
【0048】
すなわち、本実施形態においては、仮道路と公式道路とを識別することができるので、後記するように車両が仮道路を通過するに際しては、車両ナビゲーション装置1は、利用者に対し種々のメッセージを出力することができる。
【0049】
また、仮道路との接続点により分割された公式道路については、分割されたリンクのリンクデータを地図データベース65に登録するとともに、そのリンクデータには、分割フラグを付加して、それが仮道路により分割されて登録されたリンクデータであることを判定できるようにしている。さらに、分割されて通常なら不要となる分割前のリンクのリンクデータについては、地図データベース65から削除せずに、分割前フラグを付加する変更をするにとどめている。
【0050】
すなわち、本実施形態の地図データベース65は、仮道路を含む道路網と、仮道路を含まない道路網とを同時に含んでいるので、車両ナビゲーション装置1は、利用者の求めに応じて、仮道路を含んで誘導経路を算出することもできるし、仮道路を除外して誘導経路を算出することもできるようになる。
【0051】
(車両ナビゲーション処理)
以下、図10〜図17を参照しながら、利用者に仮道路の存在を認知させた上で車両の経路誘導を行う車両ナビゲーション処理について説明する。ここで、図10は、仮道路利用モード設定の表示画面の例を示した図である。また、図11は、車両ナビゲーション初期化処理の流れの例を示した図、図12は、誘導経路算出処理の処理の流れの例を示した図、図13は、車両ナビゲーション処理の流れの例を示した図である。また、図14は、経路誘導開始時に誘導経路全体を表示した表示画面の例を示した図、図15は、車両が地図にない道路を走行しているとき(仮道路地図データ生成中)に表示される表示画面の例、図16は、車両が仮道路を走行しているときに表示される表示画面の例を示した図、図17は、誘導経路に仮道路を含み車両が仮道路の1つ手前のリンクにさしかかったときに表示される表示画面の例を示した図である。
【0052】
《仮道路利用モードの設定》
一般に、利用者が車両ナビゲーション装置1には、その種々の動作モードを設定するために、それに対応するように種々の設定画面が用意されている。本実施形態においては、動作モード設定部61(図2参照)の一つの処理として、例えば、図10に示すような仮道路利用モードの設定画面が用意されおり、利用者は、その表示画面により仮道路利用モードを自由に設定することができる。
【0053】
まず、図10の第1の設定項目で、利用者は、仮道路とマップマッチング「する」または「しない」の設定を行うことができる。その画面で、利用者が仮道路とマップマッチング「する」を設定した場合には、CPU111は、マップマッチング部54の処理において、車両の現在位置を地図データベース65のリンクデータとその仮道路フラグの値を考慮しないでマップマッチングする。一方、利用者が仮道路とマップマッチング「しない」を設定した場合には、CPU111は、地図データベース65から仮道路フラグが1のリンクデータを除外してマップマッチング部54の処理を実行する。
【0054】
次に、図10の第2の設定項目では、利用者は、仮道路を誘導経路に「含む」または「含めない」を設定することができる。利用者が仮道路を誘導経路に「含む」を設定したときには、CPU111は、地図データベース65において分割前フラグが1のリンクデータを除外して誘導経路を算出する。また、利用者が仮道路を誘導経路に「含まない」を設定したときには、CPU111は、地図データベース65において仮道路フラグが1または分割済フラグが1のリンクデータを除外して誘導経路を算出する。このような動作モードの設定により、利用者は、仮道路を含めた道路網ででも、または、仮道路を含めない道路網ででもその誘導経路を得ることができるようになる。
【0055】
また、図10の第3の設定項目では、利用者は、仮道路を誘導経路に含める場合、その仮道路を誘導経路として優先的に「使用する」または「使用しない」を設定することができる。ここで、利用者が仮道路を誘導経路として優先的に「使用する」を設定したときには、CPU111は、誘導経路を算出するに当たって、地図データベース65における仮道路(仮道路フラグが1のリンク)のリンクコストを標準のリンクコストよりも小さく設定することによって、仮道路が誘導経路に組み込まれ易いようにする。また、利用者が仮道路を誘導経路として優先的に「使用しない」を設定したときには、CPU111は、誘導経路を算出するに当たって、地図データベース65における仮道路(仮道路フラグが1のリンク)のリンクコストを標準のリンクコストよりも大きく設定することによって、仮道路が誘導経路に組み込まれにくいようにする。
【0056】
なお、本実施形態における表示は、タッチパネルディスプレイ14によって行われるので、利用者は、仮道路利用モードを指示する表示項目部分を触れることによってその利用モードを設定することができる。例えば、「する」または「しない」の表示部分を指などで触れることによって、マップマッチング「する」または「しない」を選択することができる。
【0057】
また、以上に説明した仮道路の利用モード設定は、例えば、車両ナビゲーション装置1の初期設定のときなどに、基本動作モード設定の一部として行うものとするが、図10に示した少なくとも第2および第3の設定項目については、誘導経路の算出を行うときにその都度設定できるものとしてもよい。
【0058】
この場合、例えば、目的地設定または誘導経路計算指示の表示画面に、図10に示した表示画面と同様の画面を呼び出すためのボタンを設けておくとよい。そして、その呼び出した表示画面により、仮道路の利用モードが設定された場合には、その設定は、そのときの誘導経路算出だけに有効であるとする。こうしておけば、利用者は、誘導経路ごとに、仮道路を誘導経路に「含める」/「含めない」、または、仮道路を誘導経路として優先的に「使用する」/「使用しない」を設定することができる。なお、この場合、仮道路のリンクコストは、地図データベース65(図3参照)の計算時リンクコストを変更するまでもなく、誘導経路算出部5の実行時にメモリ113上に読み出された標準リンクコストに基づき設定された利用モードに合わせて調整すればよい。
【0059】
以上のようにして、仮道路利用モードの設定を行うことによって、利用者は、仮道路のデータに信頼をもてないと思ったときには、仮道路を無視することができ、一方、仮道路のデータを信頼できると思ったり、仮道路は便利だと思ったりしたときには、仮道路を経路誘導などに十二分に活用することができる。
【0060】
《車両ナビゲーション処理の初期化》
次に、車両ナビゲーション装置1における車両ナビゲーション処理の初期化に係る処理について説明する。車両が走行を開始し、経路誘導を始めるにあたって、図11に示すような処理が実行される。まず、車両のエンジンが起動され、車両ナビゲーション装置1に電源が投入されると、CPU111は、初期化処理の一つとして、図10の仮道路利用モード設定の表示画面を表示し、その表示画面によって入力される情報に基づき、仮道路利用モードを設定する(ステップS31)。そして、CPU111は、図示しない目的地設定の表示画面を表示し、その表示画面により入力される目的地の情報を読み取り、経路誘導のための目的地を設定する(ステップS32)。
【0061】
続いて、CPU111は、設定された仮道路利用モードおよび目的地の情報に基づき、誘導経路を算出する(ステップS33)。なお、この誘導経路の算出の処理については、別途、図12によって詳しく説明する。誘導経路が算出されると、CPU111は、算出された誘導経路の全体を表示する(ステップS34)。この表示においては、仮道路部分の表示は、公式道路の表示とは、表示色を変えたり、破線表示をしたりすることにより、識別可能なように表示する。さらに、CPU111は、誘導経路に仮道路が含まれるか否かを判定する(ステップS35)。そして、誘導経路に仮道路が含まれていた場合には(ステップS35でYes)、図14に示すように「誘導経路に仮道路を含む」旨のメッセージを出力する(ステップS36)。
【0062】
なお、図14において、太線は、誘導経路を示し、破線は、仮道路を示している。また、図14においては、「誘導経路に仮道路を含む」旨のメッセージを、タッチパネルディスプレイ14の表示画面中に文字情報として出力しているが、スピーカ13により音声のメッセージとして出力してもよい。このように、本実施形態における車両ナビゲーション装置1では、仮道路を識別可能なように表示し、誘導経路に仮道路が含まれるときには、その旨を利用者に告知する。
【0063】
従って、本実施形態の車両ナビゲーション装置においては、利用者が図14のような誘導経路の表示画面を見て、誘導経路として利用者が通過したくないような仮道路が含まれていたような場合には、利用者は、図10に示した仮道路利用モード設定で仮道路を誘導経路に含まないようにして、再度、誘導経路を求めることもできる。
【0064】
次に、図12を参照して、誘導経路の算出処理の詳細について説明する。まず、CPU111は、動作モード設定部61の処理で設定された仮道路利用モードを判定する(ステップS41)。その判定の結果、その仮道路利用モードが「誘導経路に仮道路を含む」であった場合には(ステップS41でYes)、地図データベース65から分割前フラグが1のリンクデータを一時的に除外する(ステップS42)。さらに、仮道路利用モードが「仮道路を誘導経路として優先的に使用する」であった場合には(ステップS43でYes)、仮道路のリンクコスト係数を1.0未満に設定する(ステップS44)。また、仮道路利用モードが「仮道路を誘導経路として優先的に使用する」でなかった場合には(ステップS43でNo)、仮道路のリンクコスト係数を1.0以上に設定する(ステップS45)。
【0065】
次に、設定された仮道路のリンクコスト係数に基づき、仮道路のリンクコストを修正する(ステップS46)。なお、修正されたリンクコストは、地図データベース65におけるリンクデータの計算時リンクコストの欄に記憶される。そして、CPU111は、リンクデータの計算時リンクコストに基づき、例えば、ダイクストラ法などを用いて現在位置から目的地までの誘導経路を求める(ステップS48)。求められた誘導経路は、メモリ112またはハードディスク記憶装置113の所定の領域に誘導経路データ66として記憶される。その後、ステップS42またはステップS47で一時的に除外したリンクデータをもとに戻す(ステップS49)。
【0066】
一方、ステップS41の判定において、仮道路利用モードが「誘導経路に仮道路を含む」でなかった場合には(ステップS41でNo)、地図データベース65から仮道路フラグが1、または、分割済フラグが1のリンクデータを一時的に除外する(ステップS47)。すなわち、仮道路を含まないもとの地図データベースに戻す。そして、ステップ48へ進んで、仮道路を含まない道路網における誘導経路を求める。
【0067】
《車両ナビゲーション処理》
以上に説明した車両ナビゲーション初期化処理によって、利用者の要求に基づく誘導経路が求められると、車両ナビゲーション装置1において、CPU111は、誘導経路表示部60の処理として、通常の車両ナビゲーション処理のほかに、図13に示す車両ナビゲーション処理を実行する。なお、この処理は、所定の時間(例えば、1秒、5秒など)ごとに起動される処理であるとする。
【0068】
図13において、CPU111は、ロケータ部57の処理として車両の現在位置座標値を取得する(ステップS51)。次に、マップマッチング部54の処理として車両の位置を近傍の道路にマップマッチングする(ステップS52)。次に、仮道路地図データ生成中であるか否かを判定する(ステップS53)。この判定は、図4のステップS14とステップS15と同様の処理を実行することによって行う。あるいは、図4の処理に続けて図13の処理を実行するようにしておいた場合には、図4のステップS18でセットされる仮道路地図データ生成中を表示するフラグによって判定してもよい。
【0069】
その判定の結果、仮道路地図データ生成中であったときには(ステップS53でYes)、CPU111は、タッチパネルディスプレイ14に、例えば、図15に示すように、車両の現在位置座標の位置を自車位置として、自車位置近隣の地図を表示する(ステップS54)。図15の表示画面において、▲印は、自車位置を表わし、アステリスク(*印)は、過去の自車位置、すなわち、走行軌跡を表わす。また、CPU111は、同時に、図15の表示画面に「地図にない道路を走行中」または「仮道路地図データ生成中」である旨のメッセージを出力する(ステップS55)。なお、このメッセージ出力は、音声メッセージ出力部55の処理としてスピーカ13により音声メッセージ出力として行ってもよい。
【0070】
一方、ステップS53の判定において、仮道路地図データ生成中でなかったときには(ステップS53でNo)、CPU111は、タッチパネルディスプレイ14に、例えば、図16に示すように、マップマッチングされた位置を自車位置として自車位置近隣の地図を表示する(ステップS56)。図16において、▲印は自車位置、太い実線は誘導経路、破線の道路は仮道路を表わす。次に、CPU111は、マップマッチングされたリンクが仮道路であるか否かを判定する(ステップS57)。なお、この判定は、マップマッチングされたリンクのリンクデータの仮道路フラグが1であるか否かを判定することによって行うことができる。その判定の結果、マップマッチングされたリンクが仮道路であったときには(ステップS57でYes)、図16の表示画面に、「仮道路走行中」である旨のメッセージを出力する(ステップS58)。なお、このメッセージ出力は、音声メッセージ出力部55の処理としてスピーカ13により音声のメッセージ出力として行ってもよい。
【0071】
また、ステップS57の判定において、仮道路でなかったときには(ステップS57でNo)、CPU111は、さらに、マップマッチングされたリンクが誘導経路上にあり、その誘導経路上の次のリンクが仮道路であるか否かを判定する(ステップS59)。その結果、誘導経路上の次のリンクが仮道路であったときには(ステップS59でYes)、CPU111は、タッチパネルディスプレイ14に、例えば、図17に示すように、マップマッチングされた位置を自車位置として自車位置近隣の地図を表示するとともに、「次の交差点を過ぎると、仮道路を通過する」旨のメッセージを出力する。なお、図17において、▲印は自車位置、太い実線は誘導経路、破線の道路は仮道路を表わす。また、メッセージ出力は、音声メッセージ出力部55の処理としてスピーカ13により音声のメッセージ出力として行ってもよい。
【0072】
なお、図13において、ステップS59の判定でNoであった場合、ならびに、ステップS55、ステップS58またはステップS60を実行した後には、ステップS51で取得した現在位置における車両ナビゲーション処理を終了する。
【0073】
以上のように、本実施形態においては、利用者は、車両を運転を開始するときに、仮道路の利用モードを設定しておけば、車両の運転中に、誘導経路に仮道路が含まれたり、仮道路を通過したり、仮道路にさしかかろうとするときには、その旨を告知するメッセージが出力される。そのため、利用者は、仮道路を仮道路と認識、つまり、仮道路のデータの信頼性が低いことを認識した上で、仮道路を活用することができるようになる。
【0074】
(その他の実施形態)
以上に説明した実施形態においては、情報処理部11は、車両に搭載されたコンピュータによって実現されるとしているが、情報処理部11を車両に搭載されたコンピュータ(車載装置)とそのコンピュータに無線のネットワークを介して接続され、通常、地上のセンタ局に配置されるサーバコンピュータ(サーバ装置)とによって構成してもよい。この場合、サーバコンピュータには、少なくとも、図2おける地図データベース65、仮道路地図データ登録部51、誘導経路算出部59などの処理を分担させる。
【0075】
そして、車両搭載のコンピュータおよびサーバコンピュータには、それぞれ、例えば、携帯電話を利用した無線通信装置を設け、携帯電話の通信ネットワークを介して相互に通信することができるようにしておく。そして、車両搭載のコンピュータによって、仮道路の地図データを生成し、生成した仮道路の地図データをサーバコンピュータへ送信し、その地図データベース65に登録する。また、サーバコンピュータは、仮道路を含む地図データベース65に基づき、誘導経路を算出し、算出した誘導経路に係る地図データを車両搭載のコンピュータへ送信する。このとき、その地図データに仮道路フラグ、分割済フラグおよび分割前フラグを付しておけば、車両搭載のコンピュータは、誘導経路表示部60の処理として、誘導経路を単に表示するだけでなく、図14〜図17に示したような利用者に仮道路の走行を認識させるような表示を行うことができる。
【0076】
以上のように情報処理部11を車両搭載のコンピュータとサーバコンピュータとに分割した構成にすることによって、サーバコンピュータが分担する機能は、複数の車両搭載コンピュータで共有することができるようにもなる。その場合には、複数の車両ナビゲーション装置1は、地図データベース65、つまり、各々の車両ナビゲーション装置1が生成した仮道路地図データを共有することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施形態の車両ナビゲーション装置に係る車載装置のブロック構成の例を示した図である。
【図2】本発明の実施形態の車両ナビゲーション装置に係る機能構成の例を示した図である。
【図3】本発明の実施形態の車両ナビゲーション装置に係る地図データベースにおける道路のリンクデータの構成の例を示した図である。
【図4】本発明の実施形態の車両ナビゲーション装置において、仮道路地図データを生成し、登録する処理の流れの例を示した図である。
【図5】本発明の実施形態において、車両位置のマップマッチングおよび道路逸脱を説明する図である。
【図6】本発明の実施形態において、道路の粗密度を説明する図である。
【図7】本発明の実施形態において、仮道路地図データの生成を説明する図で、(a)は、仮道路地図データ生成時の車両の軌跡を示した図、(b)は、仮道路地図データ生成時に使用されるメモリの作業領域を示した図である。
【図8】本発明の実施形態において、仮道路を含めた道路のネットワークの例を示した図である。
【図9】図8の例におけるリンクデータの例を示した図であり、(a)は、仮道路のリンクデータの例、(b)は、仮道路により分割される前のリンクのリンクデータの例、(c)は、仮道路により分割された後のリンクのリンクデータの例である。
【図10】本発明の実施形態の車両ナビゲーション装置における仮道路利用モード設定の表示画面の例を示した図である。
【図11】本発明の実施形態の車両ナビゲーション装置における車両ナビゲーション初期化処理の流れの例を示した図である。
【図12】本発明の実施形態の車両ナビゲーション装置における誘導経路算出処理の処理の流れの例を示した図である。
【図13】本発明の実施形態の車両ナビゲーション装置における車両ナビゲーション処理の流れの例を示した図である。
【図14】本発明の実施形態の車両ナビゲーション装置において、経路誘導開始時に誘導経路全体を表示した表示画面の例を示した図の例を示した図である。
【図15】本発明の実施形態の車両ナビゲーション装置において、車両が地図にない道路を走行しているとき(仮道路地図データ生成中)に表示される表示画面の例を示した図である。
【図16】本発明の実施形態の車両ナビゲーション装置において、車両が仮道路を走行しているときに表示される表示画面の例を示した図である。
【図17】本発明の実施形態の車両ナビゲーション装置において、誘導経路に仮道路を含み車両が仮道路の一つ手前のリンクにさしかかったときに表示される表示画面の例を示した図である。
【符号の説明】
【0078】
1 車両ナビゲーション装置
2 GPS受信装置
3 車速センサ
4 方向センサ
11 情報処理部
12 センサインターフェース
13 スピーカ
14 タッチパネルディスプレイ
51 仮道路地図データ登録部(仮道路地図データ登録手段)
52 仮道路地図データ生成部(仮道路地図データ生成手段)
53 道路逸脱判定部(道路逸脱判定手段)
54 マップマッチング部(マップマッチング手段)
55 音声メッセージ出力部
56 道路粗密判定部(道路粗密判定手段)
57 ロケータ部(測位手段)
58 センサデータ入力部
59 誘導経路算出部(誘導経路算出手段)
60 誘導経路表示部(地図データ表示手段)
61 動作モード設定部
65 地図データベース(地図データ記憶手段)
111 CPU
112 メモリ
113 ハードディスク記憶装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の現在位置を測位する測位手段と、道路の地図データを記憶した地図データ記憶手段と、前記地図データ記憶手段に記憶されている地図データに基づき目的地までの誘導経路を算出する誘導経路算出手段と、前記車両の現在位置を前記地図データに含まれる近傍の道路位置に一致するように修正するマップマッチング手段と、前記車両の現在位置近隣の地図データを表示する地図データ表示手段とを備え、
前記地図データ表示手段に、さらに、前記誘導経路を表示して、車両の走行経路を誘導する車両ナビゲーション装置であって、
前記測位手段により得られる前記車両の現在位置と前記マップマッチング手段によりマップマッチングされた車両位置との距離を算出し、その算出された距離が所定距離以上になったときに、前記車両が前記地図データ記憶手段に記憶されている道路から逸脱して走行していると判定する道路逸脱判定手段と、
前記道路逸脱判定手段により前記車両が前記地図データ記憶手段に記憶されている道路から逸脱して走行していると判定されたときには、その車両が前記地図データ記憶手段に記憶されている道路から逸脱しないで走行していると判定されるまで、前記測位手段により得られる前記車両の走行軌跡の位置データに基づき仮道路の地図データを生成する仮道路地図データ生成手段と、
前記仮道路地図データ生成手段により生成された仮道路地図データに仮道路地図データであることを示す仮道路フラグを付し、前記仮道路フラグを付した仮道路地図データを前記地図データ記憶手段に登録する仮道路地図データ登録手段と
を備えたことを特徴とする車両ナビゲーション装置。
【請求項2】
前記地図データ記憶手段に記憶されている地図データのうち、前記車両の現在位置を中心にした所定の区域内の地図データから前記車両の現在位置近傍の道路の粗密度を取得する道路粗密度取得手段を、さらに、備え、
前記道路逸脱判定手段は、
前記道路粗密度取得手段により得られる道路の粗密度が所定の値より大きいときに、前記車両が前記地図データ記憶手段に記憶されている道路から逸脱して走行しているか否かの判定を行うこと
を特徴とする請求項1に記載の車両ナビゲーション装置。
【請求項3】
前記道路逸脱判定手段により、前記車両が前記地図データ記憶手段に記憶されている道路から逸脱して走行していると判定されたときには、「地図にない道路を走行中で、仮道路の地図データ作成中」である旨のメッセージを出力する第1のメッセージ出力手段を、さらに、備えること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両ナビゲーション装置。
【請求項4】
前記地図表示手段は、
前記仮道路を表示するときには、他の道路と識別可能なように表示すること
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の車両ナビゲーション装置。
【請求項5】
前記マップマッチング手段が前記車両の現在位置を前記仮道路にマップマッチングしたときには、「仮道路を通過中」である旨のメッセージを出力する第2のメッセージ出力手段を、さらに、備えること
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の車両ナビゲーション装置。
【請求項6】
前記マップマッチング手段が前記車両の現在位置をマップマッチングするとき、前記仮道路を含めてマップマッチングするか、または、前記仮道路を含めずにマップマッチングするか、を選択するための動作モードを設定する仮道路マップマッチングモード設定手段を、さらに、備えること
を特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の車両ナビゲーション装置。
【請求項7】
前記仮道路地図データ登録手段は、さらに、
前記仮道路に接続する道路区間が前記仮道路との接続点により複数の道路区間に分割される場合には、前記仮道路に接続する道路区間の地図データを前記接続点により複数の道路区間の地図データに分割し、前記分割した複数の道路区間の地図データに分割済フラグを付し、前記分割済フラグを付した道路区間の地図データを前記地図データ記憶手段に登録するとともに、前記地図データ記憶手段において前記分割した道路区間の分割前の道路区間の地図データに分割前フラグを付す変更を行うこと
を特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の車両ナビゲーション装置。
【請求項8】
前記誘導経路算出手段が誘導経路を算出するとき、前記仮道路を含めて誘導経路を算出するか、または、前記仮道路を含めずに誘導経路を算出するか、を選択するための動作モードを設定する誘導経路算出モード設定手段を、さらに、備えること
を特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の車両ナビゲーション装置。
【請求項9】
前記誘導経路算出手段が前記仮道路を含めて誘導経路を算出するとき、前記仮道路の走行コストを通常の走行コストより小さな値に設定して誘導経路を算出するか、または、前記仮道路の走行コストを通常の走行コストより大きな値に設定して誘導経路を算出するか、を選択するための動作モードを設定する仮道路優先モード設定手段を、さらに、備えること
を特徴とする請求項8に記載の車両ナビゲーション装置。
【請求項10】
前記誘導経路算出手段が誘導経路を算出したとき、前記算出した誘導経路に前記仮道路が含まれるか否かを判定し、前記仮道路が含まれる場合には、「誘導経路に仮道路が含まれる」旨のメッセージを出力する第3のメッセージ出力手段を、さらに、備えること
を特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載の車両ナビゲーション装置。
【請求項11】
前記マップマッチング手段が前記車両の現在位置をマップマッチングした道路区間が、前記誘導経路における前記仮道路の1つ手前の道路区間であるときには、利用者に「次の道路区間が仮道路である」旨のメッセージを出力する第4のメッセージ出力手段を、さらに、備えること
を特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載の車両ナビゲーション装置。
【請求項12】
請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載の車両ナビゲーション装置であって、
前記車両ナビゲーション装置は、車両に搭載される車載端末装置と車両に搭載されないサーバ装置とから構成され、
前記サーバ装置は、
前記地図データ記憶手段と前記仮道路地図データ登録手段と前記誘導経路算出手段と無線通信手段とを少なくとも備え、
前記車載端末装置は、
前記地図データ表示手段と無線通信手段とを少なくとも備え、前記サーバ装置において算出された誘導経路の情報を、前記車載端末装置および前記サーバ装置それぞれが備える前記無線通信手段を介して取得し、前記地図データ表示手段に表示すること
を特徴とする車両ナビゲーション装置。
【請求項13】
車両の現在位置を測位する測位手段と、道路の地図データを記憶した地図データ記憶手段と、前記地図データ記憶手段に記憶されている地図データに基づき目的地までの誘導経路を算出する誘導経路算出手段と、前記車両の現在位置を前記地図データに含まれる近傍の道路位置に一致するように修正するマップマッチング手段と、前記車両の現在位置近隣の地図データを表示する地図データ表示手段とを備え、
前記地図データ表示手段に、さらに、前記誘導経路を表示して、車両の走行経路を誘導する車両ナビゲーション装置における仮道路地図データ登録方法であって、
前記車両ナビゲーション装置は、
前記測位手段により得られる前記車両の現在位置と前記マップマッチング手段によりマップマッチングされた車両位置との距離を算出し、その算出された距離が所定距離以上になったときに、前記車両が前記地図データに記憶されている道路から逸脱して走行していると判定する道路逸脱判定ステップと、
前記道路逸脱判定ステップにより前記車両が前記地図データ記憶手段に記憶されている道路から逸脱して走行していると判定されたときには、その車両が前記地図データ記憶手段に記憶されている道路から逸脱しないで走行していると判定されるまで、前記測位手段により得られる前記車両の走行軌跡の位置データに基づき仮道路の地図データを生成する仮道路地図データ生成ステップと、
前記仮道路地図データ生成手段により生成された仮道路地図データに仮道路地図データであることを示す仮道路フラグを付し、前記仮道路フラグを付した仮道路地図データを前記地図データ記憶手段に登録する仮道路地図データ登録ステップと
を含んで実行することを特徴とする仮道路地図データ登録方法。
【請求項14】
前記車両ナビゲーション装置は、さらに、
前記地図データ記憶手段に記憶されている地図データのうち、前記車両の現在位置を中心にした所定の区域内の地図データから前記車両の現在位置近傍の道路の粗密度を取得する道路粗密度取得ステップを、さらに、実行し、
前記道路逸脱判定ステップにおいては、前記道路粗密度取得ステップで得られた道路の粗密度が所定の値より大きいときに、前記車両が前記地図データ記憶手段に記憶されている道路から逸脱して走行しているか否かの判定を行うこと
を特徴とする請求項13に記載の仮道路地図データ登録方法。
【請求項15】
前記車両ナビゲーション装置は、さらに、
前記仮道路地図データ登録ステップにおいて、
前記仮道路に接続する道路区間が前記仮道路との接続点により複数の道路区間に分割される場合には、前記仮道路に接続する道路区間の地図データを前記接続点により複数の道路区間の地図データに分割し、前記分割した複数の道路区間の地図データに分割済フラグを付し、前記分割済フラグを付した道路区間の地図データを前記地図データ記憶手段に登録するとともに、前記地図データ記憶手段において前記分割した道路区間の分割前の道路区間の地図データに分割前フラグを付す変更を行うこと
を特徴とする請求項13または請求項14に記載の仮道路地図データ登録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−242754(P2006−242754A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−58949(P2005−58949)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】