説明

車両制御装置

【課題】編成車両間での衝動を緩和する車両制御装置を提供する。
【解決手段】複数の車両で構成され、少なくとも1両が動力車である列車による勾配の変極点の通過を検出する位置検出手段と、前記列車が前記変極点を走行する場合、前記列車のうち前記変極点を基準として通過した車両群と未通過の車両群を車両単位で区別する制御手段と、前記動力車に設けられ、前記動力車自体に対して減速制御する減速手段と、前記動力車に設けられ、前記動力車自体に対して加速制御する加速手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一編成の列車に複数車両連結される電気機関車に関する。
【背景技術】
【0002】
多数車両連結した列車は、用途に応じて様々な構成で編成されている。例えば、新幹線に代表される高速移動列車では、その編成車両の先頭及び最後尾車両以外の車両に動力車が用いられている。また、貨車を多数連結した編成長の長い貨物列車では、所望の牽引力を得るために、その編成車両の列車の先頭の車両に動力車として機関車が接続されている。
【0003】
このような動力車は、先頭車両の運転席に設けられたマスターコントローラの操作により力行、ブレーキ指令が送信されることで、その動作が制御される。
【0004】
このような編成車両では、編成車両が勾配区間に進入、または勾配区間から退出する際、その勾配が大きい場合に車両間で衝動が発生する。これは、例えば、平坦路から登り勾配に車両が進入すると、勾配上にある車両では勾配による進行方向とは逆の力が働き、平坦路の車両にはこの力は発生しないという状況になる。
【0005】
勾配区間での連結器における衝動問題は、運転士の運転技量によって改善しようとされていた。例えば、多くの貨車と連結された機関車(先頭車側)では、連結器を引っ張る側に位置するようにするために、常に機関車を力行モードに置き、登りの基点では更にその牽引力を強めて連結器の引っ張り状態を維持するようにする。この運転を怠ると連結期間で衝動が発生する。旅客車では連結器の緩衝機能がよくなり、それで運用されているのが現状である。
【0006】
また特許文献1には、勾配検知手段で検知した勾配または勾配加速度に応じて制御指令し、乗り心地を改善する構成について記載されている。
【特許文献1】特開2008−182849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1には、少なくとも1両以上の動力車でない車両が編成車両に含まれている場合についての構成は開示されていない。
【0008】
また、なんらの対策がないとすると、編成車両では複数の車両が連結器を介して繋がっているため、これが車両間での衝動となって乗り心地や連結器に対して悪影響を与えてしまう。
【0009】
この現象は平坦路から下りの勾配区間に侵入または上り勾配から下り勾配に進入するといった、勾配の変極点を編成車両が通過する際に発生する。この傾向は、長大編成車両や多くの貨車を連結している機関車では著しく、登り勾配から下り勾配に移行するような路線では連結器の大きな力が働き、連結器は破壊する等の不具合が生じることもある。旅客車の場合、連結器の衝動はそのまま乗り心地に悪さにつながり、改善が必要とされている。
【0010】
編成車両が勾配区間に進入、または勾配区間から退出する際の勾配が大きい場合、運転士の運転技量では対処できなくなり、編成車両間で衝動が発生し、乗り心地や連結器に悪影響を及ぼす。
【0011】
本発明の目的は、編成車両間の衝動を緩和する車両制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
編成車両の勾配区間に進入、または勾配区間から退出の際の車両の位置関係を検出または演算によって認識する。具体的には勾配の変極点を基準点として設定し、その基準点を通過する車両を認識する方法をとる。勾配は実路線での検出による認識でも、定められた路線情報を使用する方法でもよい。
【0013】
その上で、編成車両の基準点の通過にしたがって、基準点を通過した車両群(通過車両)と基準点に達していない車両群(未通過車両)を車両単位で区別し、通過車両の勾配により生じる進行方向と逆方向の力(上り勾配)・または進行方向と同一方向の力(下り勾配)による通過車両の1両に働く減速力または加速力と同じ力を未通過車両の総ての各車両に同じ方向で減速力、または加速力を変更トルク分として未通過車両に対して車両指令制御ラインにより指令する。
【0014】
未通過車両の総てが動力車でないときは、この動力車で発生する変更トルクの総和が未通過車両の総てが動力車であった場合と同じになるように設定する。
【発明の効果】
【0015】
動力集中に代表される機関車や動力分散である旅客車などの複数車両の編成では、勾配を通過する際、特に制御を必要とする区間で本提案の制御を使用することで、衝動による連結器の破損防止、または乗り心地の改善が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
第1の実施形態について、図面を用いて以下に説明する。
【0017】
図1には、第1の実施形態の一例として10両編成の車両で構成された列車100を示している。ここでは、列車100が先頭から順に車両1、車両2、・・・、車両9、車両10で編成されているとする。10両編成の車両のうち先頭車両1および最後尾車両10は、運転席が設けられているが、動力装置を有していない付随車である。また、先頭車両1と最後尾車両10の間の8つの中間車両(車両2から車両9まで)は、後述する動力装置を有した動力車である。
【0018】
ここで、図1の横軸は、列車100が走行する進行方向に沿った路線20の勾配に各車両が入るタイミングを示している。路線20では、上り勾配(または下り勾配)に入る地点を勾配の変極点として基準点30と定められている。
【0019】
図1(a)は、列車100の先頭車両1が登り勾配に入る基準点30に達した状態を示している。図1(b)は、列車100の先頭から2両目である車両1と車両2が基準点30を通過した状態を示している。図1(c)は、列車100の先頭から6両目である先頭車両1から車両6までが基準点30を通過した状態を示している。図1(d)は、列車100の先頭から8両目である先頭車両1から車両8までが基準点30を通過した状態を示している。
【0020】
ここで、図2は、列車100の車両が登り勾配に位置した場合における車両に加わる勾配抵抗を示した図である。ここで、例えば各車両の質量をW、勾配をn(‰)とする。列車100が登り勾配に入ると、車両には後退する力が働く。勾配区間上にいる各車両には、勾配によって、列車100の進行方向とは逆の力である勾配抵抗Rg=W×nが作用する。勾配抵抗によって、列車100のうち登り勾配に位置する車両には、あたかもブレーキが加わった状態となる。
【0021】
図1(a)に示す列車100では、どの車両にも勾配抵抗はかからない。図1(b)に示す列車100では、先頭車両1と車両2の2両にそれぞれ勾配抵抗としてW×nのブレーキ力が作用する。したがって、列車100のうち基準点30を通過した通過車両と未通過車両との間(車両2と車両3の間)の連結器では、未通過車両にはW×nのブレーキ力が作用していないため、衝動が発生する。
【0022】
ここで、車両2と車両3の間の連結器における衝動を回避するために、未通過車両(車両3から車両10)の8両の各車両に対して勾配区間に位置する通過車両(車両1と車両2)と同じ状況を作ることで衝動を抑制することができる。
【0023】
つまり車両1から車両10までの各車両にW×nの力を進行方向とは逆方向に発生させることになる。ここで、列車100の未通過車両(車両3から車両10まで)のうち総ての車両が動力車でないので、動力車である車両2から車両9の7両におけるブレーキ力の総和で未通過車両である8両分のブレーキ力を作用させる必要がある。つまり7両の動力車両で8W×nのブレーキ力を発生することになる。
【0024】
図1(c)に示す列車100では、先頭車両1から車両6までの6両にそれぞれ勾配抵抗としてW×nのブレーキ力が作用する。したがって、列車100のうち基準点30を通過した通過車両と未通過車両との間(車両6と車両7の間)の連結器では、未通過車両にはW×nのブレーキ力が作用していないため、衝動が発生する。
【0025】
ここで、車両6と車両7の間の連結器における衝動を回避するために、未通過車両(車両7から車両10)の4両の各車両に対して勾配区間に位置する通過車両(車両1から車両6)と同じ状況を作ることで衝動を抑制することができる。
【0026】
つまり、動力車である車両7から車両9の3両におけるブレーキ力の総和で未通過車両である4両分のブレーキ力を作用させる必要がある。つまり3両の動力車両で4W×nのブレーキ力を発生することになる。
【0027】
図1(d)に示す列車100では、先頭車両1から車両8までの8両にそれぞれ勾配抵抗としてW×nのブレーキ力が作用する。したがって、列車100のうち基準点30を通過した通過車両と未通過車両との間(車両8と車両9の間)の連結器では、未通過車両にはW×nのブレーキ力が作用していないため、衝動が発生する。
【0028】
ここで、車両8と車両9の間の連結器における衝動を回避するために、未通過車両(車両9と車両10)の2両の各車両に対して勾配区間に位置する通過車両(車両1から車両8)と同じ状況を作ることで衝動を抑制することができる。
【0029】
つまり、動力車である車両9の1両におけるブレーキ力の総和で未通過車両である2両分のブレーキ力を作用させる必要がある。つまり1両の動力車両で2W×nのブレーキ力を発生することになる。
【0030】
各動力車両は、基準点30を通過した後に、基準点30を通過前に発生させたブレーキ力を0に戻すことになる。戻しに関しては傾斜をもって行なう。
【0031】
図3は、第1の実施形態に係る列車100の制御系の構成を示すブロック図である。列車100の先頭車両1は、制御装置101を備える。
【0032】
制御装置101は、制御ユニット102、マスターコントローラ103、データ記憶部104、現在位置検出部105を含む。制御ユニット102は、2両目から9両目にそれぞれ設けられた交流電動機駆動装置201への力行指令およびブレーキ装置202へのブレーキ指令を制御する。マスターコントローラ103は、運転台(図示されず)から入力される乗務員(運転者)の操作信号に基づいて、力行指令およびブレーキ指令を制御ユニット102に出力する。
【0033】
データ記憶部104は、列車100総列車長および車両質量等の編成データが記録されている。また、データ記憶部104は、この列車100が走行する路線の勾配、勾配変曲点である基準点30の位置、カーブの曲率などの路線データが記録されている。
【0034】
現在位置検出部105は、例えばGPS(global positioning system)あるいは単に走行距離計である。現在位置検出部105が走行距離計の場合、制御ユニット102はデータ記憶部104から路線データを読み出し、例えば始発駅からの走行距離と路線データとを照合し、駅毎にキロ程補正がされる点を基点に現在位置および基準点30を検出する。制御ユニット102は、検出した基準点30の情報を基にして、各車両に基準点30の通過状況を演算して認識することができることができる。また、現在位置検出部105はセンサであって、現在位置検出部105が基準点30に配置された地上子等と伝送することにより、制御ユニット102が車両の基準位置30の通過状況を検出するようにしてもよい。
【0035】
そして、制御ユニット102は、現在位置検出部105が検出した列車100の各車両における基準点30の通過状況に応じて、車両指令制御の伝送ラインを用いて車両2から車両9までの各車両に設けられた交流電動機駆動装置201への力行指令およびブレーキ装置202へのブレーキ指令を生成する。
【0036】
図3では、車両2に設けられた交流電動機駆動装置201への力行指令およびブレーキ装置202へのブレーキ指令について図示しているが、車両3から車両9にも同様に交流電動機駆動装置201およびブレーキ装置202が設けられている。そして、制御ユニット102は、各車両に設けられた交流電動機駆動装置201およびブレーキ装置202に対して制御する。
【0037】
上記制御ユニット102による制御は列車100が基準点30を通過する際に行なわれる。第1の実施形態では、それぞれ同一車両長、同一質量Wの車両で編成された列車を想定する。
【0038】
図4は、図1で説明した列車100を編成する各車両における基準点30を中心とした位置での牽引力の変化を示す図である。横軸は、各動力車の基準点30の通過を示している。縦軸は、各動力車における牽引力を示している。
【0039】
はじめに、図4(a)に示すように、先頭車両1のみが基準点30を通過して勾配区間に位置し、制御ユニット102が第1動力車である車両2の先頭が基準点30に達したと検出すると、列車100のうち変極点である基準点30を通過した車両群と未通過の車両群を車両単位で区別する。そして、制御ユニット102は、先頭車両1で生じるブレーキ力相当n×Wを、未通過車両でる残り9両のうち、最後尾車両10を除いた動力車(車両2から車両9)8両で現状の牽引力から減算するように各車両に設けられたブレーキ装置202に対して制御する。
【0040】
したがって、制御ユニット102は、車両2から車両9それぞれの動力車ではn×9W/8の牽引力を減じるようにブレーキ装置202に対して制御する。つまり、先頭車両1が基準点30を通過する前の牽引力初期値F、先頭車両1が基準点30を通過した後の牽引力をFaとすると、Fa=F−n×9W/8となる。また、制御ユニット102は、第1動力車である車両2が基準点30を通過した時点で第1動力車だけは初期値牽引力Fに戻すように交流電動機駆動装置201に対して制御する。
【0041】
次に、図4(b)に示すように、先頭車両1および第1動力車である車両2が基準点30を通過して勾配区間に位置し、制御ユニット102が第2動力車である車両3の先頭が基準点30に達したと検出した場合について説明する。このとき、先頭車両1の牽引力は初期値Fに戻っているため、制御ユニット102は、車両2で生じるブレーキ力相当n×Wを、未通過車両である残り8両のうち、最後尾車両10を除いた動力車(車両3から車両9)7両で現状の牽引力から減算するように各車両に設けられたブレーキユニット202に対して制御する。
【0042】
したがって、制御ユニット102は、車両3から車両9それぞれの動力車ではn×8W/7の牽引力を減じるようにブレーキ装置202に対して制御する。また、制御ユニット102は、第2動力車である車両3が基準点30を通過した時点で第2動力車について初期値牽引力Fに戻すように交流電動機駆動装置201に対して制御する。
【0043】
以下同様であり、図4(c)は、第3動力車である車両4の先頭が基準点30に達した場合、図4(d)は、第4動力車である車両5の先頭が基準点30に達した場合、図4(e)は、第5動力車である車両6の先頭が基準点30に達した場合、図4(f)は、第6動力車である車両7の先頭が基準点30に達した場合、図4(g)は、第7動力車である車両8の先頭が基準点30に達した場合である。
【0044】
最後に、図4(h)に示すように、先頭車両1から第7動力車である車両8までが基準点30を通過して勾配区間に位置し、制御ユニット102が第8動力車である車両9の先頭が基準点30に達したと検出した場合について説明する。このとき、先頭車両1から車両8までの牽引力は初期値Fに戻っているため、制御ユニット102は、車両8で生じるブレーキ力相当n×Wを、未通過車両である残り2両のうち、最後尾車両10を除いた動力車(車両9)1両で現状の牽引力から減算するように各車両に設けられたブレーキユニット202に対して制御する。
【0045】
したがって、制御ユニット102は、車両9の動力車ではn×2W/1の牽引力を減じるようにブレーキユニット202に対して制御する。また、制御ユニット102は、第8動力車である車両9が基準点30を通過した時点で第8動力車にいて初期値牽引力Fに戻すように交流電動機駆動装置201に対して制御する。
【0046】
つまり、制御ユニット102は、基準点30を通過した通過車両群と基準点に達していない未通過車両群を車両の単位で区別する。そして、制御ユニット102は、、基準点30の通過車両1両に働く通過車両の上り勾配により生じる進行方向と逆方向の力(減速力)、または下り勾配により生じる進行方向と同一方向の力(加速力)と同じ力を未通過車両の総ての各車両に同じ方向で減速力、または加速力を変更トルク分として、各未通過車両を制御する。
【0047】
制御ユニット102は、未通過車両の総てが動力車ではないときは、未通過車両のうちの動力車で発生する変更トルクの総和を未通過車両が総て動力車であったと仮定した場合の値と同じになるように設定する。制御ユニット102は、未通過車両を車両数をx、未通過車両のうちの動力車の車両数をyとした場合、未通過車両のうちの動力車1両に働かせる変更トルクを加速力または減速力にx/yを乗じた値として交流電動機駆動装置201またはブレーキ装置202に対して制御する。
【0048】
以上のように、上記第1の実施形態によれば、基準点30の位置および基準点30を中心とした車両の通過状況を監視できるので、理論的に車両毎に発生する勾配抵抗Rg(車両質量Wtonに勾配n‰を掛けた加速力や減速力)を複雑な検出することなく簡単に検出できる。勾配は、制御ユニット102が実路線20でセンサによる検出による認識でも、データ記憶部104に記録された定められた路線情報を使用する方法でもよい。また、上り勾配に入っていない列車100の各車両でもn×Wの牽引力を減算したとものと同等にみなせるので、車両間の相対的な位置関係は、変わらないため、車両間の衝動を抑えることができる。
【0049】
列車100が下り勾配に入った場合は、上記説明した場合と逆であり、加速力として働く進行方向に沿った牽引力を下り勾配に入っていない各車両に加算することで、車両間の衝動を抑えることができる。
【0050】
次に、第2の実施形態について説明する。図5は、機関車とそれに牽引される複数の貨車を想定した組成の場合を示している。
【0051】
この場合、10両編成の列車100のうち機関車Aは動力車であり、残りは動力源のない貨車である場合について説明する。制御系は、図3に示すブロック図とほぼ同様であり、先頭車両の機関車Aにのみ交流電動機駆動装置201とブレーキ装置202が設けられている。
【0052】
機関車Aが路線20の走行過程で図5(a)の状態から図5(b)の状態に移行すると、機関車Aでは勾配によるブレーキ力が発生する。したがって、機関車Aとそれお連結している貨車Bの間の連結器には衝動が生じる。第2の実施形態では、列車100の2両目以下は貨車であるため、上記第1の実施形態のような制御は行えない。
【0053】
第2の実施形態では、図5(a)の状態から図5(b)の状態に移行した場合、制御ユニット102は、ブレーキ力をキャンセルする牽引力を機関車Aで発生させるように交流電動機駆動装置201を制御する。さらに、図5(c)の状態に示すように6両目の貨車までが勾配区間に侵入すると、制御ユニット102は、勾配によって貨車に発生するブレーキ力もキャンセルする牽引力を機関車Aで発生させるように交流電動機駆動装置201を制御する。このキャンセルの方法は貨車毎の階段状でも、連続的でも良い。
【0054】
さらに、車両間の衝動をより抑制するために、機関車Aの制御ユニット102が認識する勾配の基準点30よりも前の地点で惰行走行モードであるならば、力行モードまたはブレーキモードに移行し、貨車B以降を引っ張る状況におく。そして、制御ユニット102は、機関車Aが基準点30の通過する時は勾配で生じる減速力を打ち消すように減速力と同等の牽引力で勾配に進入するように制御してもよい。惰行走行モード時に上記制御を実行すると、力行モードまたはブレーキモードに切り換える間は、衝動抑制効果が十分に発揮できないためである。
【0055】
図5(d)は、機関車Aが基準点30を通過後の牽引力の基本パターンを示している。つまり、制御ユニット102は、現在位置検出部105により現在位置を特定し、路線20における位置関係から基準点30を検出し、勾配で生じる減速力を打ち消すように交流電動機駆動装置201へ力行指令を出力する。この場合、貨車B以降の通過に応じてこの牽引力を増加し続けると、連結器を引っ張り状態に維持することができるため衝動をなくすことができる。機関車Aでは牽引力を増加する方向の制御になるため勾配の基準点30への進入時には、最大の牽引力に対してまたは最大のブレーキ力に対して車両抑制性制御に必要な補足する牽引力(最大牽引力に対して充分余裕を持った小さな牽引力)または補足するブレーキ力を持たすようにする。
【0056】
上記第1の実施形態および第2の実施形態は、2台の縦列走行する自動車のうち先頭の自動車がブレーキをかければ、後続の自動車も同時に同じ減速度のブレーキを作用させ、先頭の自動車が加速すれば、同じように後続の自動車も同じ加速度で加速するという作用になり、車間がほぼ一定に保たれることになるのと等価である。したがって、基準点30を境に編成車両を通過車両と未通過車両との2つの車両群に分けて、未通過車両が、通過車両が勾配で発生する減速力または加速力と同等の同一方向の力で減速または加速することで、車両間の衝動を抑えることができる。
【0057】
本発明は、前記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る列車の構成を示す図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る列車に加わる勾配抵抗を示す図。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る列車の制御系の構成を示すブロック図。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る列車の基準点を中心とした位置での牽引力の変化を示す図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る機関車と複数の貨車の構成を示した図。
【符号の説明】
【0059】
20…路線、30…基準点、100…列車、101…制御装置、102…制御ユニット、103…マスターコントローラ、104…データ記憶部、105…現在位置検出部、201…交流電動機駆動装置、202…ブレーキ装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1両が動力車である複数の車両で構成された列車による勾配の変極点の通過を検出する位置検出手段と、
前記列車が前記変極点を走行する場合、前記列車のうち前記変極点を基準として通過した車両群と未通過の車両群を車両単位で区別する制御手段と、
前記動力車に設けられ、前記動力車自体に対して減速動作する減速手段と、
前記動力車に設けられ、前記動力車自体に対して加速動作する加速手段と、
を備えることを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記変極点が上り勾配である場合、進行方向と逆方向に前記通過車両に対して働く減速力と同じトルクが前記未通過車両の各車両に働くように前記減速手段を制御し、前記変極点が下り勾配である場合、進行方向と同一方向に前記通過車両に対して働く加速力と同じトルクが前記未通過車両の各車両に働くように前記加速手段を制御することを特徴とする請求項1記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記未通過車の総ての車両が前記動力車ではない場合、前記未通過車の総てが前記動力車とした場合に前記動力車の各々に働かせるトルクの総和と同じになるように、前記動力車の前記加速手段または前記減速手段を制御することを特徴とする請求項2記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記未通過車両の車両数をx、前記未通過車両のうち前記動力車の車両数をyと検出した場合、前記未通過車両のうちの前記動力車1両に働かせるトルクを前記減速力または前記加速力にx/yを乗じた値とするように前記減速手段または前記加速手段を制御することを特徴とする請求項3記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記未通過車両の前記動力車に働かせたトルクを所定時間経過後に解除することを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の車両制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−130855(P2010−130855A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−305288(P2008−305288)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】