説明

車両制御装置

【課題】車速制御中にドライバがブレーキ操作を行ったときに受ける違和感を防止する車両制御装置を提供することを課題とする。
【解決手段】自車両の車速を制御する車両制御装置であって、自車両のドライバのブレーキ操作を検出するブレーキ操作検出手段と、車速制御中に自車両のドライバがブレーキ操作を行ったときに当該ブレーキ操作における踏力が閾値以下の場合に車速制御の解除を禁止し、通常の車速制御とは異なるブレーキ操作時の車速制御に切り替え、自車両のドライバがブレーキ操作を終了した場合にブレーキ操作時の車速制御から通常の車速制御に切り替える制御切替手段を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両の車速を制御する車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ACC[Adaptive Cruise Control]制御では、自車両前方に先行車両が存在する場合には先行車両との車間距離が目標車間距離になるように車間距離制御(先行車両追従制御)を行い、先行車両が存在しない場合には自車両の車速が目標車速になるように定速制御を行う。このようなACC制御中にドライバがブレーキ操作を行うと、ACC制御が解除され、ドライバのブレーキ操作に応じた制動力が発生する。
【0003】
特許文献1に記載のシステムでは、自車両の走行レーンにおける制限車速を決定するとともにドライバが設定した設定車速と先行車両との車間に応じて設定される追従車速のうちのいずれか小さい車速を選択してクルーズコントロール車速を決定し、制限車速とクルーズコントロール車速のうちの低い車速を目標車速として車速制御を行う。特に、このシステムでは、先行車両が検出されていない場合、ドライバが設定した設定車速と道路のカーブ形状に対応したカーブ車速に基づいてカーブ走行時車速を演算し、制限車速とカーブ走行時車速のうちの低い車速を目標車速とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−208661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ACC制御では、カーブ走行の場合には上記したシステムのように通常よりも低い目標車速を設定し、減速制動力を発生させる。このとき、ドライバは、自車両の車速が高いあるいは先行車両に近づき過ぎと感じると、軽くブレーキ操作を行う場合がある。このブレーキ操作によってACC制御が解除されると、ACC制御による減速制動力がなくなり、自車両には軽いブレーキ操作に応じた小さい制動力しか作用しなくなる。その結果、自車両に作用する制動力が小さくなり、ドライバが違和感を受ける。
【0006】
そこで、本発明は、車速制御中にドライバがブレーキ操作を行ったときに受ける違和感を防止する車両制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両制御装置は、自車両の車速を制御する車両制御装置であって、自車両のドライバのブレーキ操作を検出するブレーキ操作検出手段と、車速制御中に自車両のドライバがブレーキ操作を行ったときに当該ブレーキ操作における踏力が閾値以下の場合に車速制御の解除を禁止し、通常の車速制御とは異なるブレーキ操作時の車速制御に切り替え、自車両のドライバがブレーキ操作を終了した場合にブレーキ操作時の車速制御から通常の車速制御に切り替える制御切替手段を備えることを特徴とする。
【0008】
この車両制御装置では、定速制御や車間制御などによる車速制御を行う。また、車両制御装置では、ブレーキ操作検出手段によって、ドライバによるブレーキ操作(例えば、ブレーキ操作の有無、ブレーキ操作における踏力(踏み込み量、踏み込み速度、踏み込んでいる時間など))を検出する。そして、車速制御中にブレーキ操作検出手段でドライバによるブレーキ操作を検出した場合、車両制御装置では、制御切替手段によって、ブレーキ操作における踏力が閾値以下か否かを判定し、踏力が閾値以下の場合には車速制御の解除を禁止し、通常の車速制御とは異なるブレーキ操作時の車速制御に切り替える。このように、踏力が閾値以下の弱いブレーキ操作が行われた場合には、車速制御を解除することなく、ブレーキ操作時に対応した車速制御を継続して行い、自車両に車速制御による減速制動力を作用させ続ける。そして、ブレーキ操作時の車速制御中にブレーキ操作検出手段でドライバによるブレーキ操作がなくなったことを検出した場合、車両制御装置では、制御切替手段によって、ブレーキ操作時の車速制御から通常の車速制御に切り替える。この車両制御装置では、車速制御中にドライバがブレーキ操作を行った場合でもブレーキ操作時の車速制御を継続して行うことにより、車両制御による減速制動力を継続させることができ、ドライバが違和感を受けない。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、ドライバがブレーキ操作を行った場合でもブレーキ操作時の車速制御を継続して行うことにより、ドライバが違和感を受けない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るACCシステムの構成図である。
【図2】第1の実施の形態に係るACCECUにおけるブレーキ操作対応の制御切替処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】図2及び図5のフローチャートにおけるリスク判定処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】図2及び図5のフローチャートにおけるACC解除意志判定処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】第2の実施の形態に係るACCECUにおけるブレーキ操作対応の制御切替処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】第3の実施の形態に係るACCECUにおけるカーブ認識対応の制御切替処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明に係る車両制御装置の実施の形態を説明する。なお、各図において同一又は相当する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
本実施の形態では、本発明に係る車両制御装置を、車両に搭載されるACCシステムに適用する。本実施の形態に係るACCシステムでは、自車両前方に先行車両が存在する場合には先行車両との車間距離が目標車間距離になるように車速制御する追従制御(車間距離制御)を行い、先行車両が存在しない場合には自車両の車速が目標車速になるように車速制御する定速制御を行う。なお、先行車両が存在する場合、先行車両の車速が目標車速までは追従制御が行われるが、先行車両の車速が目標車速を超えると目標車速に基づく定速制御が行われる。
【0013】
目標車速としては、例えば、ドライバによる操作によって設定された車速、ドライバがACCシステムを起動したときの車速がある。目標車速は、カーブなどでは安全に走行するための通常よりも低い車速が設定される。また、目標車間距離としては、例えば、ドライバによる操作よって設定された車間距離、車速毎に予め設定された車間距離がある。なお、追従制御では、車間距離ではなく、車間時間(=車間距離/車速)で制御を行ってもよい。
【0014】
本実施の形態には、3つの形態があり、第1の実施の形態及び第2の実施の形態がドライバのブレーキ操作に対応して制御を切り替える形態であり、第3の実施の形態が車両におけるカーブ認識に対応して制御切替の形態である。
【0015】
図1を参照して、第1の実施の形態に係るACCシステム1について説明する。図1は、本実施の形態に係るACCシステムの構成図である。
【0016】
ACCシステム1は、ACC制御中にドライバがブレーキ操作を行ったときに、ACC制御を解除するとドライバにとってリスクが高いかつドライバがACC制御を解除する意志がないと判断した場合にはACC制御を禁止し、通常のACC制御とは異なるブレーキ操作時のACC制御に切り替えて制御を継続し、ACC制御を解除してもドライバにとってリスクが低い又はドライバがACCを解除する意志が強いと判断した場合にはACC制御を解除する。ACCシステム1では、ブレーキ操作時のACC制御として、ACC制御による制御制動力とドライバのブレーキ操作による要求制動力のうちの大きな制動力を自車両に作用させて減速する。
【0017】
ACCシステム1は、ミリ波レーダ10、カメラ11、車速センサ12、ブレーキペダルセンサ13、GPS[Global Positioning System]受信装置14、地図データベース15、ブレーキECU[Electronic Control Unit]20、エンジンECU21、HMI[HumanMachine Interface]装置22及びACCECU31を備えている。なお、本実施の形態ではブレーキペダルセンサ13が特許請求の範囲に記載するブレーキ操作検出手段に相当する。
【0018】
ミリ波レーダ10は、ミリ波を利用して自車両前方の物体を検出するためのレーダである。ミリ波レーダ10は、自車両の前側の中央に取り付けられる。ミリ波レーダ10では、ミリ波を左右方向にスキャンしながら自車両から前方に向けて送信し、反射してきたミリ波を受信する。そして、ミリ波レーダ10では、そのミリ波の送受信情報(受信できた各反射点(検出点)についての左右方向のスキャン角、送信時刻、受信時刻、受信強度など)をレーダ信号としてACCECU31に送信する。なお、ミリ波レーダ10による検出は、カメラ11に比べて長距離の検出が可能である。
【0019】
カメラ11は、自車両前方の画像を取得するためのカメラである。カメラ11は、自車両の前方に取り付けられる。カメラ11では、自車両の前方を撮像し、その撮像した画像を取得する。カメラ11では、その撮像画像のデータを画像信号としてACCECU31に送信する。なお、カメラ11による検出は、ミリ波レーダ10に比べて短距離の検出であるが、物体の形状などの詳細な情報を取得できる。
【0020】
車速センサ12は、車輪の回転速度を検出する車輪速センサである。車速センサ12では、その回転速度を車速信号としてACCECU31に送信する。なお、ACCECU31では、この車輪の回転速度から自車速を演算する。車速センサとしては、車輪速センサ以外の車速センサでもよい。
【0021】
ブレーキペダルセンサ13は、ブレーキペダル(図示せず)の踏み込み量を検出するセンサである。ブレーキペダルセンサ13では、ブレーキペダルの踏み込み量を検出し、その検出した踏み込み量をブレーキペダル信号としてACCECU31に送信する。
【0022】
GPS受信装置14は、GPSアンテナや処理装置などを備えており、自車両の現在位置などを検出する。GPS受信装置14では、GPSアンテナでGPS衛星からのGPS信号を受信する。そして、GPS受信装置14では、処理装置でそのGPS信号を復調し、その復調された各GPS衛星からの情報に基づいて自車両の現在位置(緯度、経度)などを演算する。そして、GPS受信装置14では、自車両の現在位置などを現在位置信号としてACCECU31に送信する。なお、自車両にナビゲーションシステムが搭載される場合、ナビゲーションシステムのGPS受信装置を共有するか、あるいは、ナビゲーションシステムから現在位置を取得する。
【0023】
地図データベース15は、地図に関する各種情報を格納したデータベースである。格納される情報としては、道路形状情報、道路幅、道路勾配、交差点情報、道路種別情報(高速道路、国道、県道、市町村道など)などがある。特に、道路形状情報にはカーブ情報が含まれており、カーブ情報にはカーブ半径(曲率半径)、カーブの開始位置や終了位置などの情報がある。
【0024】
ブレーキECU20は、各輪のブレーキ(ひいては、制動力)を制御する制御装置である。ブレーキECU20では、ドライバによるブレーキ操作に基づいて要求制動力(目標制動力)を演算する。そして、ブレーキECU20では、その目標制動力になるために必要な各輪のホイールシリンダ(図示せず)のブレーキ油圧を設定し、そのブレーキ油圧を目標油圧信号としてブレーキアクチュエータ(図示せず)に送信する。特に、ブレーキECU20では、ACCECU31からブレーキ制御信号を受信すると、ブレーキ制御信号に示される目標制動力となるための目標油圧信号をブレーキアクチュエータに送信する。
【0025】
ブレーキアクチュエータは、各輪のホイールシリンダのブレーキ油圧を調整するアクチュエータである。ブレーキアクチュエータでは、ブレーキECU20からの目標油圧信号に応じて作動し、ホイールシリンダのブレーキ油圧を調整する。目標油圧になると、自車両には、目標制動力が発生する。
【0026】
エンジンECU21は、エンジン(ひいては、駆動力)を制御する制御装置である。エンジンECU21では、ドライバによるアクセル操作に基づいて要求駆動力(目標駆動力)を演算する。そして、エンジンECU21では、その目標駆動力になるために必要なスロットルバルブの目標開度を設定し、その目標開度を目標スロットル開度信号としてスロットルアクチュエータ(図示せず)に送信する。特に、エンジンECU21では、ACCECU31からエンジン制御信号を受信すると、エンジン制御信号に示される目標駆動力となるための目標スロットル開度信号をスロットルアクチュエータに送信する。
【0027】
スロットルアクチュエータは、スロットルバルブ(図示せず)の開度を調整するアクチュエータである。スロットルアクチュエータでは、エンジンECU21からの目標スロットル開度信号に応じて作動し、スロットルバルブの開度を調整する。目標スロットル開度になると、自車両には、目標駆動力が発生する。
【0028】
HMI装置22は、ドライバに対して注意喚起や情報提供を行う際に用いる装置であり、ディスプレイ、スピーカなどがある。ディスプレイは、各種システムで共用される車載ディスプレイである。ディスプレイでは、ACCECU31からの表示信号を受信すると、その表示信号に応じて画像を表示する。スピーカは、各種システムで共用される車載スピーカである。スピーカでは、ACCECU31から音声信号を受信すると、その音声信号に応じて音声を出力する。
【0029】
ACCECU31は、CPU[CentralProcessing Unit]、各種メモリなどからなる電子制御ユニットであり、ACCシステム1を統括制御する。ACCECU31は、ミリ波レーダ10、カメラ11、車速センサ12、ブレーキペダルセンサ13、GPS受信装置14からの各信号を受信するとともに、地図データベース15から現在位置周辺の地図データを読み出す。そして、ACCECU31では、受信した各信号や地図データを用いて先行車両認識処理、通常ACC制御処理、カーブ認識処理、制御切替処理、リスク判定処理、ACC解除意志判定処理、ブレーキ操作時ACC制御処理などを行い、必要に応じてブレーキECU20又はエンジンECU21やHMI装置22に制御信号を送信する。第1の実施の形態ではACCECU31における制御切替処理が特許請求の範囲に記載する制御切替手段に相当する。
【0030】
なお、以下で用いる加減速度はプラス値/マイナス値であり、プラス値が加速度であり、マイナス値が減速度である。また、駆動力はプラス値であり、制動力はマイナス値である。加速度と駆動力はプラス値で表されるので、その値が大きいほど車両に作用する加速度や駆動力は大きい。減速度と制動力はマイナス値で表されるので、その値が小さいほど(絶対値は大きくなるので)車両に作用する減速度や制動力は大きい。
【0031】
先行車両認識処理について説明する。ACCECU31では、一定時間毎に、ミリ波レーダ10からのミリ波の送受信情報やカメラ11からの画像情報に基づいて、自車両の前方を走行している車両(先行車両)の有無を判定する。この際、操舵角、ヨーレートなどから自車両の進行方向を推定し、自車両の進行走行方向も考慮して先行車両の有無を判定するとよい。先行車両が存在する場合、ACCECU31では、ミリ波の送受信情報や画像情報に基づいて、自車両と先行車両との相対距離、相対速度、相対方向などを演算する。この車両の検出方法や各情報の演算方法については、従来の方法を適用する。
【0032】
通常ACC制御処理について説明する。先行車両認識処理で先行車両が存在すると判定した場合、ACCECU31では、一定時間毎に、先行車両認識処理で演算した先行車両との車間距離と目標車間距離との差に基づいて、先行車両との車間距離が目標車間距離になるために必要な目標加減速度を演算する。目標加減速度がプラス値の場合、ACCECU31では、その目標加速度から制御駆動力(プラス値)を演算し、その制御駆動力(目標駆動力)をエンジン制御信号としてエンジンECU21に送信する。目標加減速度がマイナス値の場合、ACCECU31では、その目標減速度から制御制動力(マイナス値)を演算し、その制御制動力(目標制動力)をブレーキ制御信号としてブレーキECU20に送信する。
【0033】
先行車両認識処理で先行車両が存在しないと判定した場合、ACCECU31では、一定時間毎に、自車両の車速と目標車速との差に基づいて、自車速が目標車速になるために必要な目標加減速度を演算する。目標加減速度がプラス値の場合、ACCECU31では、目標加速度から制御駆動力(プラス値)を演算し、その制御駆動力(目標駆動力)をエンジン制御信号としてエンジンECU21に送信する。目標加減速度がマイナス値の場合、ACCECU31では、その目標減速度から制御制動力を演算し、その制御制動力(目標制動力)をブレーキ制御信号としてブレーキECU20に送信する。
【0034】
カーブ認識処理について説明する。ACCECU31では、一定時間毎に、GPS受信装置14からの現在位置に基づいて地図データベース15から現在位置周辺の道路形状情報やカーブ情報を抽出し、現在位置がカーブ(開始位置、カーブ内、終了位置)か否かを判断し、カーブ半径や曲率半径を取得する。また、ACCECU31では、一定時間毎に、ミリ波レーダ10からのミリ波の送受信情報やカメラ11からの画像情報に基づいて、道路形状認識を行い、現在位置がカーブか否かを判断し、カーブ半径や曲率半径を演算する。この道路形状認識方法については、従来の方法を適用する。そして、ACCECU31では、この2つの方法によるカーブ認識結果を総合的に判断して現在位置がカーブか否かを判断し、カーブ半径や曲率半径を取得する。特に、カーブと判断した場合、ACCECU31では、カーブ半径などに応じて通常の目標速度よりも低い目標速度を設定する。なお、ミリ波レーダ10やカメラ11を用いた道路形状認識のほうがカーブの開始位置などを正確に検出することができ、GPSによる現在位置と地図データベース15のデータを用いることにより正確なカーブ半径などを取得できる。
【0035】
制御切替処理について説明する。ACCECU31では、一定時間毎に、ブレーキペダルセンサ13からのブレーキペダルの踏み込み量に基づいて、ドライバがブレーキ操作を行っているか否かを判定する。ブレーキ操作を行っていない場合、ACCECU31では、通常ACC制御処理を継続して行う。
【0036】
ブレーキ操作を行っている場合、ACCECU31では、リスク判定処理を行い、ACCを解除するとドライバにとってリスクが高いか否かを判定する。ACCを解除するとリスクが高いと判定した場合、ACCECU31では、ACC解除意志判定処理を行い、ドライバがACCを解除する意志があるか否かを判定する。ACCを解除してもリスクが低い又はドライバがACCを解除する意志がある場合、ACCECU31では、ACC制御をOFFする。そして、ACCECU31では、一定時間毎に、上記の通常ACC制御処理と同様の処理で制御制動力を演算するとともに、ブレーキペダルセンサ13からのブレーキペダルの踏み込み量に基づいてドライバの要求制動力を演算する。さらに、ACCECU31では、そのACC制御による制御制動力からドライバの要求制動力へ徐々に変更する目標制動力を演算し、その目標制動力をブレーキ制御信号としてブレーキECU20に送信する。一方、ACCを解除するとリスクが高いかつドライバがACCを解除する意志がない場合、ACCECU31では、ACC制御をOFFすることを禁止し、ブレーキ操作時ACC制御処理を行う。
【0037】
リスク判定処理について説明する。このリスク判定指標としては、急減速の必要性があるか否かで判断する。具体的には、ACCECU31では、カーブ認識処理で取得した現在位置でのカーブ半径が規定カーブ半径より小さいか否かを判定する。規定カーブ半径は、急減速が必要な急なカーブを判定するための閾値であり、実車実験などに基づいて設定される。ちなみに、直線路の場合、カーブ半径は無限大である。また、ACCECU31では、先行車両認識処理で演算した先行車両との車間距離が規定距離より短いか否かを判定する。規定距離は、急減速が必要な短い車間距離を判定するための閾値であり、実車実験などに基づいて設定される。ちなみに、先行車両が存在しない場合、車間距離は無限大である。カーブ半径が規定カーブ半径より小さい場合又は先行車両との車間距離が規定距離より短い場合、ACCECU31では、ACCを解除するとドライバにとってリスクが高い(ACCによる減速が必要)と判定する。この場合、ドライバが軽いブレーキ操作を行っていると、ACC制御による減速制動力がなくなるとリスクが高くなるので、ACC制御による減速制動力を継続させる必要がある。一方、カーブ半径が規定カーブ半径以上の場合かつ先行車両との車間距離が規定距離以上の場合、ACCECU31では、ACCを解除してもドライバにとってリスクが低い(ACCによる減速が不要)と判定する。
【0038】
ACC解除意志判定処理について説明する。ドライバがACC解除したいという意志を判断する指標としては、ドライバのブレーキ操作における踏力で判断する。ACCECU31では、ブレーキペダルセンサ13からのブレーキペダルの踏み込み量の時系列データからブレーキ操作が継続している操作時間を計測し、そのブレーキ操作時間が規定時間より長いか否かを判定する。規定距離は、ドライバがACCを解除するために長くブレーキペダルを踏み込んでいるかを判定するための閾値であり、実車実験などに基づいて設定される。また、ACCECU31では、ブレーキペダルセンサ13からのブレーキペダルの踏み込み量が規定量より大きいか否かを判定する。規定量は、ドライバがACCを解除するために大きくブレーキペダルを踏み込んでいるかを判定するための閾値であり、実車実験などに基づいて設定される。ブレーキ操作時間が規定時間より長い場合又はブレーキペダルの踏み込み量が規定量より大きい場合、ACCECU31では、ドライバがACCを解除する意志がある(ドライバがACCを解除するためにブレーキ操作を行っている)と判定する。この場合、ドライバは強いブレーキ操作を行っており、ドライバによるブレーキ操作によって減速する意志が強い。一方、ブレーキ操作時間が規定時間以下の場合かつブレーキペダルの踏み込み量が規定量以下の場合、ACCECU31では、ドライバがACCを解除する意志がない(ドライバが少し減速するために軽くブレーキ操作を行っている)と判定する。この場合、ACC制御による減速制動力があるので、ドライバは軽いブレーキ操作を行っており、ACC制御による減速制動力も必要としている。
【0039】
ブレーキ操作時ACC制御処理について説明する。制御切替処理でACCを解除するとリスクが高いかつドライバがACCを解除する意志がないと判定した場合、ACCECU31では、一定時間毎に、上記の通常ACC制御処理と同様の処理で制御制動力(マイナス値)を演算するとともに、ブレーキペダルセンサ13からのブレーキペダルの踏み込み量に基づいてドライバの要求制動力(マイナス値)を演算する。そして、ACCECU31では、そのACC制御による制御制動力とドライバによる要求制動力を比較し、小さいほうの制動力を選択し、その選択した制動力(目標制動力)をブレーキ制御信号としてブレーキECU20に送信する。なお、制動力はマイナス値なので、選択される小さいほうの制動力は車両には大きな制動力として作用することになる。なお、このブレーキ操作時ACC制御処理では、必要な場合には通常ACC制御と同様に制御駆動力を設定し、加速制御も行う。
【0040】
さらに、ACCECU31では、ドライバがブレーキ操作を行っているにもかかわらずACC制御を継続している理由をドライバに提示するために、その理由(例えば、ACCを解除するとドライバにとってリスクが高く、ドライバもACCを解除するために強いブレーキ操作を行っていない)を表示するための画像を生成し、その画像情報からなる表示信号をHMI装置22(特に、ディスプレイ)に送信する。なお、従来のACCシステムではドライバがブレーキ操作を行うとACC制御を解除していたので、そのようなACCシステムを搭載した車両に乗っていたドライバに対してはこのような表示することは特に有用となる。
【0041】
図1を参照して、ACCシステム1における動作について説明する。特に、ACCECU31における制御切替処理、リスク判定処理、ACC解除意志判定処理について図2、図3、図4のフローチャートに沿って説明する。図2は、第1の実施の形態に係るACCECUにおけるブレーキ操作対応の制御切替処理の流れを示すフローチャートである。図3は、図2及び図5のフローチャートにおけるリスク判定処理の流れを示すフローチャートである。図4は、図2及び図5のフローチャートにおけるACC解除意志判定処理の流れを示すフローチャートである。
【0042】
ミリ波レーダ10では、一定時間毎に、ミリ波を左右方向にスキャンしながら送受信し、その送受信した情報をレーダ信号としてACCECU31に送信している。カメラ11では、一定時間毎に、自車両の前方を撮像し、その撮像画像を画像信号としてACCECU31に送信している。車速センサ12では、一定時間毎に、車輪の回転速度を検出し、その回転速度を車速信号としてACCECU31に送信している。ブレーキペダルセンサ13では、一定時間毎に、ブレーキペダルの踏み込み量を検出し、その検出した踏み込み量をブレーキペダル信号としてACCECU31に送信している。GPS受信装置14では、GPSアンテナでGPS衛星からのGPS信号を受信する毎に、そのGPS信号を復調し、その復調された各GPS衛星からの情報に基づいて自車両の現在位置などを演算し、その現在位置などを現在位置信号としてACCECU31に送信している。ACCECU31では、各センサ10,11,12,13やGPS受信装置14から各種信号を受信する。
【0043】
ACCECU30では、レーダ信号や画像信号に基づいて、先行車両の有無を判定するとともに先行車両が存在する場合には先行車両との車間距離などを演算する。また、ACCECU31では、車速信号に基づいて自車両の車速を演算する。
【0044】
先行車両が存在する場合、通常のACC制御の先行車両追従制御により、ACCECU31では、一定時間毎に、先行車両との車間距離が目標車間距離となるために必要な目標加減速度を設定する。目標加減速度がプラス値の場合、ACCECU31では、目標加速度から制御駆動力を演算し、その制御駆動力(目標駆動力)をエンジン制御信号としてエンジンECU21に送信する。このエンジン制御信号を受信すると、エンジンECU21では、目標駆動力となるための目標スロットル開度信号をスロットルアクチュエータに送信する。この目標スロットル開度信号を受信すると、スロットルアクチュエータでは、目標スロットル開度に応じて作動し、スロットルバルブの開度を調整する。目標スロットル開度になると、自車両では、目標駆動力が発生し、目標加速度となり、目標車速となる。目標加減速度がマイナス値の場合、ACCECU31では、目標減速度から制御制動力を演算し、その制御制動力(目標制動力)を示すブレーキ制御信号をブレーキECU20に送信する。このブレーキ制御信号を受信すると、ブレーキECU20では、目標制動力となるための目標油圧信号をブレーキアクチュエータに送信する。この目標油圧信号を受信すると、ブレーキアクチュエータでは、目標油圧に応じて作動し、ホイールシリンダのブレーキ油圧を調整する。目標油圧になると、自車両では、目標制動力が発生し、目標減速度となり、目標車速となる。これによって、自車両では、先行車両との車間距離が目標車間距離になるように調整される。
【0045】
先行車両が存在しない場合、通常のACC制御の定速制御により、ACCECU31では、一定時間毎に、自車速が目標車速となるために必要な目標加減速度を設定する。この目標加減速度に基づいて、ACCECU31、エンジンECU21(スロットルアクチュエータ、スロットルバルブ)、ブレーキECU20(ブレーキアクチュエータ、ホイールシリンダ)において上記した先行車両追従制御と同様の動作が行われる。これによって、自両車では、車速が目標車速になるように調整される。
【0046】
ACCECU31では、一定時間毎に、GPS信号の現在位置に基づいて地図データベース15から現在位置周辺の道路形状情報やカーブ情報を抽出し、現在位置がカーブか否かを判断し、カーブ半径や曲率半径を取得する。また、ACCECU31では、一定時間毎に、レーダ信号と画像信号に基づいて、道路形状認識を行い、現在位置がカーブか否かを判断し、カーブ半径や曲率半径を演算する。そして、ACCECU31では、この2つの方法によるカーブ認識結果を総合的に判断してカーブか否かを判断し、カーブ半径や曲率半径を取得する。カーブと判断した場合、ACCECU31では、カーブ半径などに応じて通常よりも低い目標速度を設定する。
【0047】
ACCECU31では、ブレーキペダル信号に基づいて、ドライバがブレーキ操作を行ったか否かを判定する(S10)。S10にてドライバがブレーキ操作を行っていないと判定した場合、ACCECU31では、上記の通常のACC制御を継続して行う(S11)。
【0048】
S10にてドライバがブレーキ操作を行っていると判定した場合、ACCECU31では、リスク判定処理に移行し、ACCを解除するとリスクが高いか否かを判定する(S12)。リスク判定処理に移行すると、ACCECU31では、カーブ半径が規定カーブ半径よりも小さいか否かを判定する(S20)。S20にてカーブ半径が規定カーブ半径以上と判定した場合、ACCECU31では、先行車両との車間距離が規定距離より短いか否かを判定する(S21)。S21にて先行車両との車間距離が規定距離以上と判定した場合、ACCECU31では、ACCを解除してもリスクが低いと判定する(S22)。一方、S20にてカーブ半径が規定カーブ半径より小さいと判定した場合又はS21にて先行車両との車間距離が規定距離より短いと判定した場合、ACCECU31では、ACCを解除するとリスクが高いと判定する(S23)。
【0049】
S12にてACCを解除するとリスクが高いと判定した場合、ACCECU31では、ACC解除意図判定処理に移行し、ドライバにACC解除意志があるか否かを判定する(S13)。ACC解除意図判定処理に移行すると、ACCECU31では、ブレーキペダル信号に基づいて、ドライバによるブレーキ操作時間が規定時間よりも長いか否かを判定する(S30)。S30にてブレーキ操作時間が規定時間以下と判定した場合、ACCECU31では、ブレーキペダル信号に基づいて、ドライバによるブレーキ踏み込み量が規定量りも大きいか否かを判定する(S31)。S31にてブレーキ踏み込み量が規定量以下と判定した場合、ACCECU31では、ドライバにACC解除意志がないと判定する(S32)。一方、S30にてブレーキ操作時間が規定時間より長いと判定した場合又はS31にてブレーキ踏み込み量が規定量より大きいと判定した場合、ACCECU31では、ドライバにACC解除意志があると判定する(S33)。
【0050】
S13にてドライバにACC解除意志がないと判定した場合、ACCECU31では、上記の通常ACC制御処理と同様に制御制動力(マイナス値)を演算するとともにブレーキペダル信号に基づいてドライバの要求制動力(マイナス値)を演算し、そのACCの制御制動力とドライバの要求制動力のうち小さいほうの制動力を選択し、その選択した制動力(目標制動力)をブレーキ制御信号としてブレーキECU20に送信する(S14)。このブレーキ制御信号を受信すると、ブレーキECU20では上記した同様の動作が行われる。これによって、自両車では、ACC制御とドライバ要求のうちの大きなほうの制動力を発生し、減速する。さらに、ACCECU31では、ACC継続の理由を表示するための画像を生成し、その画像情報からなる表示信号をHMI装置22(ディスプレイ)に送信する(S15)。この表示信号を受信すると、ディスプレイでは、そのACC継続理由を表示する。
【0051】
S12にてACCを解除してもリスクが低いと判定した場合又はS13にてドライバにACC解除意志があると判定した場合、ACCECU31では、ACC制御をOFFする(S16)。そして、ACCECU31では、上記の通常ACC制御処理と同様に制御制動力を演算するとともにブレーキペダル信号に基づいてドライバの要求制動力を演算し、ACCの制御制動力からドライバの要求制動力へ徐々に変更する目標制動力を演算し、その目標制動力をブレーキ制御信号としてブレーキECU20に送信する(S17)。このブレーキ制御信号を受信すると、ブレーキECU20では上記した同様の動作が行われる。これによって、自両車では、ACC制御による制動力からドライバのブレーキ操作に応じた制動力に徐々に変化する制動力が発生して、減速する。
【0052】
このACCシステム1によれば、ACC作動中にドライバがブレーキ操作を行った場合でも、ACCを解除するとリスクが高くかつドライバにACC解除意志がないと判断したときにはACC制御をOFFせずに、ACC制御を継続することにより、自車両にACC制御による減速制動力を作用させ続けことができ、ACC制御による減速制動力抜けによる違和感をドライバが受けない。このACC制御の継続によって、ドライバが軽くブレーキペダルを踏むような減速が必要な走行シーンで、先行車両がいたとしてもACC制御によって安全な車間距離を確保でき、カーブなどでより安全な速度まで低下させることができる。さらに、ACCの作動時間が延びるので、安全性や燃費も向上する。
【0053】
ACCシステム1によれば、カーブ半径や先行車両との車間距離に基づいて急減速の必要性を判断することにより、ACCを解除した場合のリスクを高精度に判定することができる。また、ACCシステム1によれば、ブレーキ操作時間とブレーキ踏み込み量に基づいてドライバによるブレーキ操作度合いを判断することにより、ドライバがACCを解除して自らのブレーキ操作によって減速したいのか否かを高精度に判定することができる。
【0054】
ACCシステム1によれば、ACC作動中にドライバがブレーキ操作を行ったときにACC制御を継続して行う場合にはその理由をドライバに提示することにより、ドライバがシステムが誤作動したなどと誤解することがなくなり、オートメーションサプライズを回避することができる。
【0055】
ACCシステム1によれば、ACC制御を継続して行う場合にACC制御制動力とドライバ要求制動力のうちの大きな制動力を車両に発生させることにより、より大きな制動力で減速でき、確実に、先行車両との安全な車間距離を確保できたり、カーブなどで安全な速度まで低下させることができる。
【0056】
図1を参照して、第2の実施の形態に係るACCシステム2について説明する。ACCシステム2は、第1の実施の形態に係るACCシステム1と比較すると、ドライバがACCを解除したほうがドライバにとってリスクが高いかつドライバがACCを解除する意志がないと判断した場合に行う通常のACC制御とは異なるブレーキ操作時のACC制御だけが異なる。ACCシステム2では、ブレーキ操作時のACC制御として、減速に限定したACC制御を行う。
【0057】
ACCシステム2は、ミリ波レーダ10、カメラ11、車速センサ12、ブレーキペダルセンサ13、GPS受信装置14、地図データベース15、ブレーキECU20、エンジンECU21、HMI装置22及びACCECU32を備えている。ACCシステム2では、ACCシステム1と比較するとACCECU32の処理だけが異なるので、ACCECU32についてのみ説明する。
【0058】
ACCECU32は、CPU、各種メモリなどからなる電子制御ユニットであり、ACCシステム2を統括制御する。ACCECU32は、ミリ波レーダ10、カメラ11、車速センサ12、ブレーキペダルセンサ13、GPS受信装置14からの各信号を受信するとともに、地図データベース15からの現在位置周辺の地図データを読み出す。そして、ACCECU32では、受信した各信号や地図データを用いて先行車両認識処理、通常ACC制御処理、カーブ認識処理、制御切替処理、リスク判定処理、ACC解除意志判定処理、ブレーキ操作時ACC制御処理を行い、必要に応じてブレーキECU20又はエンジンECU21やHMI装置22に制御信号を送信する。ACCECU32では、この各処理のうちブレーキ操作時ACC制御処理だけ、第1の実施の形態に係るACCECU31と異なる処理を行う。そこで、ブレーキ操作時ACC制御処理についてのみ説明する。第2の実施の形態ではACCECU32における制御切替処理が特許請求の範囲に記載する制御切替手段に相当する。
【0059】
ブレーキ操作時ACC制御処理(減速限定ACC制御処理)について説明する。先行車両認識処理で先行車両が存在すると判定した場合、ACCECU32では、一定時間毎に、先行車両との車間距離と目標車間距離との差に基づいて、先行車両との車間距離が目標車間距離になるために必要な目標減速度(マイナス値)を演算し、その目標減速度から制御制動力(マイナス値)を演算し、その制御制動力(目標制動力)をブレーキ制御信号としてブレーキECU20に送信する。先行車両認識処理で先行車両が存在しないと判定した場合、ACCECU32では、一定時間毎に、自車両の車速と目標車速との差に基づいて、自車速が目標車速になるために必要な目標減速度(マイナス値)を演算し、その目標減速度から制御制動力(マイナス値)を演算し、その制御制動力(目標制動力)をブレーキ制御信号としてブレーキECU20に送信する。特に、ACCECU32では、ドライバがアクセル操作を行っていない場合、エンジンブレーキ相当の制動力以上の制動力を車両に発生させることができる制御制動力を演算する。なお、このブレーキ操作時ACC制御処理では、通常ACC制御で行う制御駆動力を設定しての加速制御は行わない。
【0060】
さらに、ACCECU32では、ドライバがブレーキ操作を行っているにもかかわらずACC制御を継続している理由及び減速限定のACC制御へ遷移したことをドライバに提示するために、そのACC継続の理由及び減速限定のACC制御へ遷移(例えば、加速しないACC制御を行います)を表示するための画像を生成し、その画像情報からなる表示信号をHMI装置22(特に、ディスプレイ)に送信する。
【0061】
図1を参照して、ACCシステム2における動作について説明する。特に、ACCECU32における制御切替処理、リスク判定処理、ACC解除意志判定処理について図5、図3、図4のフローチャートに沿って説明する。図5は、第2の実施の形態に係るACCECUにおけるブレーキ操作対応の制御切替処理の流れを示すフローチャートである。なお、ミリ波レーダ10、カメラ11、車速センサ12、ブレーキペダルセンサ13、GPS受信装置14、ブレーキECU20、エンジンECU21、HMI装置22については、第1の実施の形態と同様の動作を行うので、説明を省略する。
【0062】
ACCECU32では、S40〜S43の各処理については、第1の実施の形態に係るACCECU31のS10〜S13の各処理と同様の処理を行う。
【0063】
S42にてACCを解除するとリスクが高いと判定しかつS43にてドライバにACC解除意志がないと判定した場合、ACCECU32では、減速に限定したACC制御により、先行車両が存在する場合には先行車両と安全な車間を維持するための制御制動力(マイナス値)を演算し、先行車両が存在しない場合には安全な速度まで減速するための制御制動力(マイナス値)を演算し、その制御制動力(目標制動力)をブレーキ制御信号としてブレーキECU20に送信する(S44)。このブレーキ制御信号を受信すると、ブレーキECU20では第1の実施の形態と同様の動作が行われる。これによって、自両車では、ACC制御による制動力を発生して、減速する。さらに、ACCECU32では、ACC継続の理由及び減速限定ACC制御への遷移を表示するための画像を生成し、その画像情報からなる表示信号をHMI装置22(ディスプレイ)に送信する(S45)。この表示信号を受信すると、ディスプレイでは、そのACC継続理由及び減速限定ACC制御への遷移を表示する。
【0064】
S42にてACCを解除するとリスクが低いと判定した場合又はS43にてドライバにACC解除意志があると判定した場合、ACCECU32では、S46、S47の各処理については、第1の実施の形態に係るACCECU31のS16、S17の各処理と同様の処理を行う。
【0065】
このACCシステム2によれば、第1の実施の形態に係るACCシステム1と同様の効果を有する上に、以下の効果も有する。ACCシステム2によれば、ACC制御を継続して行う場合に減速限定のACC制御を行うことにより、ドライバがブレーキ操作を行うような走行シーンで加速を行うことはなく、確実に、先行車両との安全な車間距離を確保できたり、カーブなどで安全な速度まで低下させることができる。
【0066】
図1を参照して、第3の実施の形態に係るACCシステム3について説明する。ACCシステム3は、GPSによる現在位置と地図データベースを用いたカーブ認識及びミリ波レーダとカメラを用いたカーブ認識を行い、2つのカーブ認識結果に応じてACC制御を切り替える。
【0067】
ACCシステム3は、ミリ波レーダ10、カメラ11、車速センサ12、ブレーキペダルセンサ13、GPS受信装置14、地図データベース15、ブレーキECU20、エンジンECU21、HMI装置22及びACCECU33を備えている。ACCシステム3では、ACCシステム1と比較するとACCECU33の処理だけが異なるので、ACCECU33についてのみ説明する。
【0068】
ACCECU33は、CPU、各種メモリなどからなる電子制御ユニットであり、ACCシステム3を統括制御する。ACCECU33は、ミリ波レーダ10、カメラ11、車速センサ12、ブレーキペダルセンサ13、GPS受信装置14からの各信号を受信するとともに、地図データベース15から現在位置周辺の地図データを読み出す。そして、ACCECU33では、受信した各信号や地図データを用いて先行車両認識処理、カーブ認識処理、制御切替処理、カーブ減速制御処理、エンジンブレーキ減速制御処理、通常ACC制御処理を行い、必要に応じてブレーキECU20又はエンジンECU21やHMI装置22に制御信号を送信する。ACCECU33では、この各処理のうち先行車両認識処理、カーブ認識処理、通常ACC制御処理について、第1の実施の形態に係るACCECU31と同様の処理を行う。そこで、制御切替処理、カーブ減速制御処理、エンジンブレーキ減速制御処理についてのみ説明する。
【0069】
制御切替処理について説明する。ACCECU33では、GPS受信装置14での現在位置と地図データベース15の現在位置周辺の道路形状情報やカーブ情報に基づくカーブ認識でカーブを認識したか否かを判定する。また、ACCECU33では、ミリ波レーダ10のミリ波の送受信情報とカメラ11の画像情報に基づくカーブ認識でカーブを認識できたか否かを判定する。両方のカーブ認識でカーブを認識できている場合(2つのカーブ認識での各精度を補間してカーブを認識できている場合)、カーブである信頼性が高いので、ACCECU33では、そのカーブに対する通常の減速制御を許可し、カーブ減速処理を行う。いずれか一方のカーブ認識だけでカーブを認識できている場合(一方のカーブ認識での精度でしかカーブを認識できない場合)、カーブである信頼性が低いので、ACCECU33では、そのカーブに対するエンジンブレーキ相当の減速制御を許可し、エンジンブレーキ減速制御処理を行う。両方のカーブ認識でカーブを認識できていない場合(2つのカーブ認識での各精度を補間してカーブを認識できていない場合)、カーブでない信頼性が高いので、ACCECU33では、通常のACC制御を許可し、通常ACC制御処理を行う。
【0070】
カーブ減速制御処理について説明する。ACCECU33では、先行車両認識処理で先行車両が存在すると判定した場合、ACCECU33では、一定時間毎に、先行車両との車間距離と目標車間距離との差に基づいて、先行車両との車間距離が目標車間距離になるために必要な目標減速度(マイナス値)を演算し、その目標減速度から制御制動力(マイナス値)を演算し、その制御制動力(目標制動力)をブレーキ制御信号としてブレーキECU20に送信する。先行車両認識処理で先行車両が存在しないと判定した場合、ACCECU33では、一定時間毎に、自車両の車速と目標車速との差に基づいて、自車速が目標車速になるために必要な目標減速度(マイナス値)を演算し、その目標減速度から制御制動力(マイナス値)を演算し、その制御制動力(目標制動力)をブレーキ制御信号としてブレーキECU20に送信する。さらに、ACCECU33では、カーブに対する通常の減速制御を行うことをドライバに提示するために、そのカーブ減速制御を表示するための画像を生成し、その画像情報からなる表示信号をHMI装置22(特に、ディスプレイ)に送信する。
【0071】
エンジンブレーキ減速制御処理について説明する。ACCECU33では、エンジンブレーキ相当の制動力を発生させることができる制御制動力(マイナス値)を演算し、その制御制動力(目標制動力)をブレーキ制御信号としてブレーキECU20に送信する。さらに、ACCECU33では、カーブおいてエンジンブレーキ相当の減速制御しか行わないので、カーブ減速に対する注意喚起をするための画像や音声を生成し、その画像情報からなる表示信号や音声情報からなる音声信号をHMI装置22(ディスプレイ、スピーカ)に送信する。
【0072】
図1を参照して、ACCシステム3における動作について説明する。特に、ACCECU33における制御切替処理について図6のフローチャートに沿って説明する。図6は、第3の実施の形態に係るACCECUにおけるカーブ認識対応の制御切替処理の流れを示すフローチャートである。なお、ミリ波レーダ10、カメラ11、車速センサ12、ブレーキペダルセンサ13、GPS受信装置14、ブレーキECU20、エンジンECU21、HMI装置22については、第1の実施の形態と同様の動作を行うので、説明を省略する。
【0073】
ACCECU33では、第1の実施の形態で説明したカーブ認識処理を行う。そして、ACCECU33では、一定時間毎に、GPS受信装置14での現在位置と地図データベース15のデータを利用したカーブ認識処理でカーブを認識しているか否かを判定する(S50)。S50にてカーブを認識していると判定した場合、ACCECU33では、ミリ波レーダ10のレーダ情報とカメラ11での画像情報を利用したカーブ認識処理でカーブを認識しているか否かを判定する(S51)。また、S50にてカーブを認識していないと判定した場合、ACCECU33では、ミリ波レーダ10のレーダ情報とカメラ11での画像情報を利用したカーブ認識処理でカーブを認識しているか否かを判定する(S52)。
【0074】
S51にてカーブを認識していると判定した場合、ACCECU33では、通常のカーブに対する減速制御により、先行車両が存在する場合には先行車両と安全な車間を維持するための制御制動力を演算し、先行車両が存在しない場合には安全な速度まで減速するための制御制動力を演算し、その制御制動力(目標制動力)をブレーキ制御信号としてブレーキECU20に送信する(S53)。このブレーキ制御信号を受信すると、ブレーキECU20では第1の実施の形態と同様の動作が行われる。これによって、自両車では、カーブの状況に応じた制動力を発生して、減速する。さらに、ACCECU33では、カーブ制御減速への遷移を表示するための画像を生成し、その画像情報からなる表示信号をHMI装置22(ディスプレイ)に送信する(S54)。この表示信号を受信すると、ディスプレイでは、カーブ制御減速への遷移を表示する。
【0075】
S51にてカーブを認識していないと判定した場合又はS52にてカーブを認識していると判定した場合、ACCECU33では、エンジンブレーキ相当の制御制動力を演算し、その制御制動力(目標制動力)をブレーキ制御信号としてブレーキECU20に送信する(S55)。このブレーキ制御信号を受信すると、ブレーキECU20では第1の実施の形態と同様の動作が行われる。これによって、自両車では、エンジンブレーキ相当の弱い制動力を発生して、緩やかに減速する。さらに、ACCECU33では、カーブ減速に対する注意喚起をするための画像や音声を生成し、その画像情報からなる表示信号や音声情報からなる音声信号をHMI装置22(ディスプレイ、スピーカ)に送信する(S56)。この表示信号を受信すると、ディスプレイでは、カーブに対する注意喚起を表示する。また、この音声信号を受信すると、スピーカでは、カーブに対する注意喚起を音声出力する。
【0076】
S52にてカーブを認識していないと判定した場合、ACCECU33では、通常のACC制御を行う(S57)。この通常のACC制御については、第1の実施の形態で説明した同様の処理を行う。
【0077】
このACCシステム3によれば、異なるセンサを用いて2つの方法でカーブ認識を行い、その2つのカーブ認識結果に応じて制御を切り替えることにより、カーブ認識の信頼性に応じた減速制御を行うことができる。また、ACCシステム3によれば、異なるセンサを用いて2つの方法でカーブ認識を行うことにより、カーブの認識精度を向上させることができる。ちなみに、GPSによる現在位置には位置誤差があり、その精度を向上させるためにはRTK−GPSなどによって高コストとなり、電子地図データについても精度を向上させるためにはメンテナンスなどで高コストとなる。しかし、ACCシステムで必要なレーダやカメラを用いた道路形状認識によるカーブ認識処理も併用することにより、そのようなコストアップ無しで、カーブ認識の精度を向上させることができる。
【0078】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
【0079】
例えば、本実施の形態では先行車両追従制御(車間距離制御)と定速制御を行うACCシステムに適用したが、いずれか一方の制御だけを行うシステムにも適用可能である。
【0080】
また、本実施の形態では先行車両を検出する手段としてミリ波レーダやカメラを適用したが、レーザレーダなどの他のレーダでもよいし、自車両周辺の車両から情報を取得する車車間通信装置でもよいし、その他の検出手段でもよい。
【0081】
また、本実施の形態ではGPS受信装置と地図データベースを備え、GPSによる現在位置と地図データによるカーブ情報からカーブを認識する構成としたが、ナビゲーションシステムを搭載する車両の場合にはこのようなカーブ認識をナビゲーションシステムに行わせてもよい。
【0082】
また、本実施の形態ではエンジンECU及びブレーキECUを利用してエンジン制御及びブレーキ制御を行う構成としたが、ACCECUによって各アクチュエータを制御し、エンジン制御及びブレーキ制御を直接行う構成としてもよい。
【0083】
また、本実施の形態ではACCを解除したときのリスクの判定方法の一例を示したが、他の方法でリスクを判定してもよい。また、本実施の形態ではブレーキ操作によるドライバのACC解除意志の判定方法の一例を示したが、他の方法でACC解除意志を判定してもよい。
【0084】
また、本実施の形態ではGPSによる現在位置と地図データベースを利用したカーブ認識とミリ波レーダとカメラを利用して道路形状認識によるカーブ認識を行い、その2つのカーブ認識結果を統合してカーブ認識を行ったが、いずれか一方だけの方法でカーブ認識を行ってもよいし、道路形状認識によるカーブ認識では一方のセンサだけ又はレーザレーダなどの他のセンサを用いてもよいし、あるいは、他の方法によってカーブ認識を行ってもよい。
【0085】
また、本実施の形態では車両制御で制動力を発生させる場合にはブレーキアクチュエータを用いてメカブレーキによって制御制動力を発生させる構成としたが、エンジンブレーキも用いて制御制動力を発生させてもよい。また、モータを駆動源として持つ車両の場合、回生ブレーキも用いて制御制動力を発生させてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1,2,3…ACCシステム、10…ミリ波レーダ、11…カメラ、12…車速センサ、13…ブレーキペダルセンサ、14…GPS受信装置、15…地図データベース、20…ブレーキECU、21…エンジンECU、22…HMI装置、31,32,33…ACCECU。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の車速を制御する車両制御装置であって、
自車両のドライバのブレーキ操作を検出するブレーキ操作検出手段と、
車速制御中に自車両のドライバがブレーキ操作を行ったときに当該ブレーキ操作における踏力が閾値以下の場合に車速制御の解除を禁止し、通常の車速制御とは異なるブレーキ操作時の車速制御に切り替え、自車両のドライバがブレーキ操作を終了した場合にブレーキ操作時の車速制御から通常の車速制御に切り替える制御切替手段
を備えることを特徴とする車両制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−183983(P2011−183983A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53336(P2010−53336)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】