説明

車両周辺監視装置

【課題】車両に備えた撮像手段により撮影された赤外線画像から、基準画像を用いた形状判定により人工構造物を除外し、残された対象物を歩行者や動物等の動く物体として検出する車両周辺監視装置を提供する。
【解決手段】車両に備える赤外線カメラ2R、2Lにより撮影した赤外線画像から、該車両の周辺に存在する物体を検出する車両周辺監視装置であって、画像処理ユニット1は、赤外線画像から赤外線を発する対象物画像を抽出する対象物抽出手段と、対象物抽出手段の抽出した対象物画像と直線パタン、あるいは直角パタンからなる基準画像との照合により、該対象物が人工構造物であるか否かを判定する人工構造物判定手段とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の周辺に存在する他車両や歩行者、更に動物等の物体を検出する車両周辺監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に備えた撮像手段により撮影された赤外線画像から、車両の周辺に存在する歩行者や動物等の動く物体を検出する周辺監視装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この周辺監視装置は、2つの赤外線カメラにより得られる画像から、車両周辺の対象物と該車両との距離を算出し、更に、時系列に求められる対象物の位置データから該対象物の移動ベクトルを算出している。そして、車両の進行方向と対象物の移動ベクトルの関係から、該車両と衝突する可能性の高い対象物を検出する。
【0003】
また、車両に備えた撮像手段により撮影された赤外線画像から、歩行者の体温とは明らかに異なる温度を示す領域を除外して対象物を検出する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。この技術では、歩行者の体温とは明らかに異なる温度を示す領域を除外した部分から抽出された対象物に対し、更にその対象物の縦横比を判定することで、該対象物が歩行者であるか否かを決定している。
【特許文献1】特開2001−6096号公報
【特許文献2】特開2001−108758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のような従来の周辺監視装置においては、赤外線を発する対象物を検出することはできるものの、自動販売機のように自ら熱を発生しているものや、日中の太陽の日差しによって暖められた電柱や街灯のポール等、自車両の走行上において重要度の低い、歩行者や動物以外の物体を検出してしまうという問題があった。
特に、歩行者の体温と同程度の温度を持ち、歩行者と同じように縦長の形状をしているような物体は、全く歩行者との見分けがつかないという問題があった。
更に、不確定な形状を持つ歩行者や動物を、それ自身の形状判別により対象物の中から抽出しようとすると、検出精度の向上が難しいという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、車両に備えた撮像手段により撮影された赤外線画像から、基準画像を用いた形状判定により人工構造物を除外し、残された対象物を歩行者や動物等の動く物体として検出する車両周辺監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、撮像手段により撮影された赤外線画像から、車両の周辺に存在する物体を検出する車両周辺監視装置であって、前記赤外線画像から赤外線を発する対象物を抽出する対象物抽出手段(例えば実施の形態のステップS1〜S7)と、前記対象物抽出手段により抽出された対象物近傍の探索範囲画像を、人工構造物を特定する要素となる予め用意されている登録された人工の道路構造物の形状を示す基準画像と照合し、該対象物近傍の探索範囲に前記基準画像と相関が高い部分が存在すると判定した場合、前記車両から前記相関が高い部分と前記対象物の距離が等しい場合、人工の道路構造物であると判定する人工構造物判定手段(例えば実施の形態のステップS25〜S28)とを設けたことを特徴とする。
以上の構成により、撮像手段により撮影した赤外線画像中に存在する複数の熱を発生する物体について、その物体の画像と基準画像との照合を行い、その物体が決まった形状を持つ人工構造物であるか、それ以外の歩行者や動物等の動く物体であるかを区別することが可能となる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両周辺監視装置において、前記人工構造物判定手段により人工構造物であると判定された対象物を、前記対象物抽出手段により抽出された対象物から除外する人工構造物除外手段(例えば実施の形態のステップS30)を含むことを特徴とする。
以上の構成により、より注意を払うべき人工構造物以外の対象物を抽出するために、赤外線画像から抽出した対象物の中から人工構造物を除外し、残った対象物を動く物体として認識することが可能となる。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1、または請求項2に記載の車両周辺監視装置において、前記基準画像は、垂直直線部位または直角部位を表す画像を含み、前記人工構造物判定手段は、垂直直線部位または直角部位を含む対象物を人工構造物と判定することを特徴とする。
以上の構成により、対象物の中に人工構造物の特徴となりやすい直線部位があるか否かを判定することで、直線部位を持つ対象物を人工構造物として除外し、人工構造物以外の対象物を認識することが可能となる。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の車両周辺監視装置において、前記人工構造物判定手段は、前記基準画像の大きさを前記車両と前記対象物との距離に合わせて変更する基準画像寸法変更手段(例えば実施の形態のステップS32、S52、S72)を含むことを特徴とする。
以上の構成により、対象物と車両との距離により発生する対象物画像と基準画像との大きさのずれを補正し、適切な大きさによって両者を照合することで、対象物が人工構造物であるか否かの検出精度を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
以上の如く、請求項1に記載の発明によれば、撮像手段により撮影した赤外線画像中に存在する複数の熱を発生する物体について、その物体の画像と基準画像との照合を行い、その物体が決まった形状を持つ人工構造物であるか、それ以外の歩行者や動物等の動く物体であるかを区別することが可能となる。
従って、赤外線画像から抽出した対象物を、人工構造物とそれ以外に区別して扱うことで、車両の走行との関係で重要、かつ細心の注意を払うべき物体を、的確に把握することができるようになるという効果が得られる。
また、不確定な形状を持つ歩行者や動物を、それ自身の形状判別により対象物の中から抽出する場合に比較して、決まった形状を持つ物体を検出するので、より少ない演算量で高い検出精度による対象物の識別ができるようになるという効果が得られる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、更に注意を払うべき人工構造物以外の対象物を抽出するために、赤外線画像から抽出した対象物の中から人工構造物を除外し、残った対象物を動く物体として認識することを可能とする。
従って、人工構造物を除外し、赤外線画像から抽出した人工構造物以外の対象物のみを扱うことで、更に重要な物体の認識度を向上させることが可能となるという効果が得られる。
また、請求項3に記載の発明によれば、対象物の中に人工構造物の特徴となりやすい直線部位があるか否かを判定することで、直線部位を持つ対象物を人工構造物として除外し、人工構造物以外の対象物を認識することが可能となる。
従って、比較的簡単に赤外線画像の中から道路構造物を除外し、不確定な形状を持つ歩行者や動物の検出精度を向上させることができるという効果が得られる。
【0012】
更に、請求項4に記載の発明によれば、対象物と車両との距離により発生する対象物画像と基準画像との大きさのずれを補正し、適切な大きさによって両者を照合することで、対象物が人工構造物であるか否かの検出精度を向上させることが可能となる。
従って、車両と対象物との距離による検出誤動作を回避し、広範囲における車両周辺の環境監視を行うことができるという効果が得られる。
このように、歩行者や動物等の動く物体と人工の道路構造物とを区別して認識することは、例えば、これらの物体の情報を車両制御に用いたり、自車両の運転者に対して情報提供や警報として表示する場合に、物体の内容や重要度によって、情報・警報の表示方法や車両の制御方法を変更する判断材料として利用でき、かつ大変有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施の形態の車両周辺監視装置の構成を示すブロック図である。
図1において、符号1は、本実施の形態の車両周辺監視装置を制御するCPU(中央演算装置)を備えた画像処理ユニットであって、遠赤外線を検出可能な2つの赤外線カメラ2R、2Lと当該車両の車体の傾きを検出するヨーレートセンサ3、更に、当該車両の走行速度(車速)を検出する車速センサ4とブレーキの操作を検出するためのブレーキセンサ5が接続される。これにより、画像処理ユニット1は、車両の周辺の赤外線画像と車両の走行状態を示す信号から、車両前方の歩行者や動物等の動く物体を検出し、衝突の可能性が高いと判断したときに警報を発する。
【0014】
また、画像処理ユニット1には、音声で警報を発するためのスピーカ6と、赤外線カメラ2R、2Lにより撮影された画像を表示し、衝突の危険性が高い対象物を車両の運転者に認識させるための、例えば自車両の走行状態を数字で表すメータと一体化されたメータ一体Displayや自車両のコンソールに設置されるNAVIDisplay、更にフロントウィンドウの運転者の前方視界を妨げない位置に情報を表示するHUD(Head Up Display )7a等を含む画像表示装置7が接続されている。
【0015】
また、画像処理ユニット1は、入力アナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換回路、ディジタル化した画像信号を記憶する画像メモリ、各種演算処理を行うCPU(中央演算装置)、CPUが演算途中のデータを記憶するために使用するRAM(Random Access Memory)、CPUが実行するプログラムやテーブル、マップなどを記憶するROM(Read Only Memory)、スピーカ6の駆動信号、HUD7a等の表示信号などを出力する出力回路を備えており、赤外線カメラ2R、2L及びヨーレートセンサ3、車速センサ4、ブレーキセンサ5の各出力信号は、ディジタル信号に変換されてCPUに入力されるように構成されている。
【0016】
また、図2に示すように、赤外線カメラ2R、2Lは、自車両10の前部に、自車両10の車幅方向中心部に対してほぼ対象な位置に配置されており、2つの赤外線カメラ2R、2Lの光軸が互いに平行であって、かつ両者の路面からの高さが等しくなるように固定されている。なお、赤外線カメラ2R、2Lは、対象物の温度が高いほど、その出力信号レベルが高くなる(輝度が増加する)特性を有している。
また、HUD7aは、自車両10のフロントウインドウの運転者の前方視界を妨げない位置に表示画面が表示されるように設けられている。
【0017】
次に、本実施の形態の動作について図面を用いて説明する。
図3は、本実施の形態の車両周辺監視装置の画像処理ユニット1における処理手順を示すフローチャートである。
まず、画像処理ユニット1は、赤外線カメラ2R、2Lの出力信号である赤外線画像を取得して(ステップS1)、A/D変換し(ステップS2)、グレースケール画像を画像メモリに格納する(ステップS3)。なお、ここでは赤外線カメラ2Rにより右画像が得られ、赤外線カメラ2Lにより左画像が得られる。また、右画像と左画像では、同一の対象物の表示画面上の水平位置がずれて表示されるので、このずれ(視差)によりその対象物までの距離を算出することができる。
【0018】
次に、赤外線カメラ2Rにより得られた右画像を基準画像とし、その画像信号の2値化処理、すなわち、輝度閾値ITHより明るい領域を「1」(白)とし、暗い領域を「0」(黒)とする処理を行う(ステップS4)。
図4(a)は、赤外線カメラ2Rにより得られたグレースケール画像を示し、これに2値化処理を行うことにより、図4(b)に示すような画像を得る。なお、図4(b)において、例えばP1からP4の枠で囲った物体を、表示画面上に白色として表示される対象物(以下「高輝度領域」という)とする。
赤外線画像から2値化された画像データを取得したら、2値化した画像データをランレングスデータに変換する処理を行う(ステップS5)。
【0019】
図5(a)は、これを説明するための図であり、この図では2値化により白となった領域を画素レベルでラインL1〜L8として示している。ラインL1〜L8は、いずれもy方向には1画素の幅を有しており、実際にはy方向には隙間なく並んでいるが、説明のために離間して示している。またラインL1〜L8は、x方向にはそれぞれ2画素、2画素、3画素、8画素、7画素、8画素、8画素、8画素の長さを有している。ランレングスデータは、ラインL1〜L8を各ラインの開始点(各ラインの左端の点)の座標と、開始点から終了点(各ラインの右端の点)までの長さ(画素数)とで示したものである。例えばラインL3は、(x3,y5)、(x4,y5)及び(x5,y5)の3画素からなるので、ランレングスデータとしては、(x3,y5,3)となる。
【0020】
次に、ランレングスデータに変換された画像データから、対象物のラベリングをする(ステップS6)ことにより、対象物を抽出する処理を行う(ステップS7)。すなわち、ランレングスデータ化したラインL1〜L8のうち、図5(b)に示すように、y方向に重なる部分のあるラインL1〜L3を1つの対象物1とみなし、ラインL4〜L8を1つの対象物2とみなし、ランレングスデータに対象物ラベル1、2を付加する。この処理により、例えば図4(b)に示す高輝度領域が、それぞれ対象物1から4として把握されることになる。
【0021】
対象物の抽出が完了したら、次に、図5(c)に示すように、抽出した対象物の重心G、面積S及び破線で示す外接四角形の縦横比ASPECTを算出する(ステップS8)。
ここで、面積Sは、ランレングスデータの長さを同一対象物について積算することにより算出する。また、重心Gの座標は、面積Sをx方向に2等分する線のx座標と、y方向に2等分する線のy座標として算出する。更に、縦横比APECTは、図5(c)に示すDyとDxとの比Dy/Dxとして算出する。なお、重心Gの位置は、外接四角形の重心位置で代用してもよい。
【0022】
対象物の重心、面積、外接四角形の縦横比が算出できたら、次に、対象物の時刻間追跡、すなわちサンプリング周期毎の同一対象物の認識を行う(ステップS9)。時刻間追跡は、アナログ量としての時刻tをサンプリング周期で離散化した時刻をkとし、図6(a)に示すように時刻kで対象物A、Bを抽出した場合、時刻(k+1)で抽出した対象物C、Dと、対象物A、Bとの同一性判定を行う。具体的には、以下の同一性判定条件1)〜3)を満たすときに、対象物A、Bと対象物C、Dとは同一であると判定し、対象物C、Dをそれぞれ対象物A、Bというラベルに変更することにより、時刻間追跡が行われる。
【0023】
1)時刻kにおける対象物i(=A,B)の画像上での重心位置座標を、それぞれ(xi(k),yi(k))とし、時刻(k+1)における対象物j(=C,D)の画像上での重心位置座標を、(xj(k+1),yj(k+1))としたとき、|xj(k+1)−xi(k)|<Δx|yj(k+1)−yi(k)|<Δyであること。ただし、Δx、Δyは、それぞれx方向及びy方向の画像上の移動量の許容値である。
2)時刻kにおける対象物i(=A,B)の画像上での面積をSi(k)とし、時刻(k+1)における対象物j(=C,D)の画像上での面積をSj(k+1)としたとき、Sj(k+1)/Si(k)<1±ΔSであること。ただし、ΔSは面積変化の許容値である。
3)時刻kにおける対象物i(=A,B)の外接四角形の縦横比をASPECTi(k)とし、時刻(k+1)における対象物j(=C,D)の外接四角形の縦横比をASPECTj(k+1)としたとき、ASPECTj(k+1)/ASPECTi(k)<1±ΔASPECTであること。ただし、ΔASPECTは縦横比変化の許容値である。
【0024】
例えば、図6(a)と(b)とを対比すると、各対象物は画像上での大きさが大きくなっているが、対象物Aと対象物Cとが上記同一性判定条件を満たし、対象物Bと対象物Dとが上記同一性判定条件を満たすので、対象物C、Dはそれぞれ対象物A、Bと認識される。このようにして認識された各対象物の(重心の)位置座標は、時系列位置データとしてメモリに格納され、後の演算処理に使用される。
なお、以上説明したステップS4〜S9の処理は、2値化した基準画像(本実施形態では、右画像)ついて実行する。
次に、車速センサ4により検出される車速VCAR及びヨーレートセンサ3より検出されるヨーレートYRを読み込み、ヨーレートYRを時間積分することより、図7に示すように自車両10の回頭角θrを算出する(ステップS10)。
【0025】
一方、ステップS9とステップS10の処理に平行して、ステップS11〜S13では、対象物と自車両10との距離zを算出する処理を行う。この演算はステップS9、及びステップS10より長い時間を要するため、ステップS9、S10より長い周期(例えばステップS1〜S10の実行周期の3倍程度の周期)で実行される。
まず、基準画像(右画像)の2値化画像によって追跡される対象物の中の1つを選択することにより、図8(a)に示すように右画像から探索画像R1(ここでは、外接四角形で囲まれる領域全体を探索画像とする)を抽出する(ステップS11)。
【0026】
次に、左画像中から探索画像に対応する画像(以下「対応画像」という)を探索する探索領域を設定し、相関演算を実行して対応画像を抽出する(ステップS12)。具体的には、図8(b)に示すように、探索画像R1の各頂点座標に応じて、左画像中に探索領域R2を設定し、探索領域R2内で探索画像R1との相関の高さを示す輝度差分総和値C(a,b)を下記式(1)により算出し、この総和値C(a,b)が最小となる領域を対応画像として抽出する。なお、この相関演算は、2値化画像ではなくグレースケール画像を用いて行う。
また同一対象物についての過去の位置データがあるときは、その位置データに基づいて探索領域R2より狭い領域R2a(図8(b)に破線で示す)を探索領域として設定する。
【0027】
【数1】

【0028】
ここで、IR(m,n)は、図9に示す探索画像R1内の座標(m,n)の位置の輝度値であり、IL(a+m−M,b+n−N)は、探索領域内の座標(a,b)を基点とした、探索画像R1と同一形状の局所領域R3内の座標(m,n)の位置の輝度値である。基点の座標(a,b)を変化させて輝度差分総和値C(a,b)が最小となる位置を求めることにより、対応画像の位置が特定される。
【0029】
ステップS12の処理により、図10に示すように探索画像R1と、この対象物に対応する対応画像R4とが抽出されるので、次に、探索画像R1の重心位置と、画像中心線LCTRとの距離dR(画素数)及び対応画像R4の重心位置と画像中心線LCTRとの距離dL(画素数)を求め、下記式(2)に適用して、自車両10と、対象物との距離zを算出する(ステップS13)。
【0030】
【数2】

【0031】
ここで、Bは基線長、赤外線カメラ2Rの撮像素子の中心位置と、赤外線カメラ2Lの撮像素子の中心位置との水平方向の距離(両赤外線カメラの光軸の間隔)、Fは赤外線カメラ2R、2Lのレンズの焦点距離、pは赤外線カメラ2R、2Lの撮像素子内の画素間隔であり、Δd(=dR+dL)が視差量である。
【0032】
ステップS10における回頭角θrの算出と、ステップS13における対象物との距離算出が完了したら、画像内の座標(x,y)及び式(2)により算出した距離zを下記式(3)に適用し、実空間座標(X,Y,Z)に変換する(ステップS14)。
ここで、実空間座標(X,Y,Z)は、図2に示すように、赤外線カメラ2R、2Lの取り付け位置の中点の位置(自車両10に固定された位置)を原点Oとして、図示のように定め、画像内の座標は、画像の中心を原点として水平方向をx、垂直方向をyと定めている。
【0033】
【数3】

【0034】
ここで、(xc,yc)は、右画像上の座標(x,y)を、赤外線カメラ2Rの取り付け位置と、実空間原点Oとの相対位置関係に基づいて、実空間原点Oと画像の中心とを一致させた仮想的な画像内の座標に変換したものである。またfは、焦点距離Fと画素間隔pとの比である。
【0035】
また、実空間座標が求められたら、自車両10が回頭することによる画像上の位置ずれを補正するための回頭角補正を行う(ステップS15)。
回頭角補正は、図7に示すように、時刻kから(k+1)までの期間中に自車両10が例えば左方向に回頭角θrだけ回頭すると、カメラによって得られる画像上では、図11に示すようにΔxだけx方向にずれるので、これを補正する処理である。具体的には、下記式(4)に実空間座標(X,Y,Z)を適用して、補正座標(Xr,Yr,Zr)を算出する。算出した実空間位置データ(Xr,Yr,Zr)は、対象物毎に対応づけてメモリに格納する。なお、以下の説明では、回頭角補正後の座標を(X,Y,Z)と表示する。
【0036】
【数4】

【0037】
実空間座標に対する回頭角補正が完了したら、次に、同一対象物について、ΔTのモニタ期間内に得られた、回頭角補正後のN個の実空間位置データ(例えばN=10程度)、すなわち時系列データから、対象物と自車両10との相対移動ベクトルに対応する近似直線LMVを求める(ステップS16)。
具体的には、近似直線LMVの方向を示す方向ベクトルL=(lx,ly,lz)(|L|=1)とすると、下記式(5)で表される直線を求める。
【0038】
【数5】

【0039】
ここでuは、任意の値をとる媒介変数であり、Xav、Yav、及びZavは、それぞれ実空間位置データ列のX座標の平均値、Y座標の平均値、及びZ座標の平均値である。
なお、式(5)は媒介変数uを消去すれば下記式(5a)のようになる。
(X−Xav)/lx=(Y−Yav)/ly=(Z−Zav)/lz・・・(5a)
【0040】
また、例えばP(0),P(1),P(2),…,P(N−2),P(N−1)が回頭角補正後の時系列データを示す場合、近似直線LMVは、この時系列データの平均位置座標Pav=(Xav,Yav,Zav)を通り、各データ点からの距離の2乗の平均値が最小となるような直線として求められる。
ここで、各データ点の座標を示すPに付した()内の数値はその値が増加するほど過去のデータであることを示す。例えば、P(0)は最新の位置座標、P(1)は1サンプル周期前の位置座標、P(2)は2サンプル周期前の位置座標を示す。
【0041】
次いで、最新の位置座標P(0)=(X(0),Y(0),Z(0))と、(N−1)サンプル前(時間ΔT前)の位置座標P(Nー1)=(X(N−1),Y(N−1),Z(N−1))を近似直線LMV上の位置に補正する。具体的には、前記式(5a)にZ座標Z(0)、Z(N−1)を適用することにより、すなわち下記式(6)により、補正後の位置座標Pv(0)=(Xv(0),Yv(0),Zv(0))及びPv(N−1)=(Xv(N−1),Yv(N−1),Zv(N−1))を求める。
【0042】
【数6】

【0043】
式(8)で算出された位置座標Pv(N−1)からPv(0)に向かうベクトルとして、相対移動ベクトルが得られる。
このようにモニタ期間ΔT内の複数(N個)のデータから対象物の自車両10に対する相対移動軌跡を近似する近似直線を算出して相対移動ベクトルを求めることにより、位置検出誤差の影響を軽減して対象物との衝突の可能性をより正確に予測することが可能となる。
また、ステップS16において、相対移動ベクトルが求められたら、次に、検出した対象物との衝突の可能性を判定し、その可能性が高いときに警報を発する警報判定処理を実行する(ステップS17)。
なお、警報判定処理を終了したら、ステップS1へ戻り、上述の処理を繰り返す。
【0044】
次に、図12に示すフローチャートを用いて、図3に示したフローチャートのステップS17における警報判定処理について説明する。
ここでは、図14に示すように、自車両10の進行方向に対してほぼ90°の方向から、速度Vpで進行してくる動物20がいる場合を例に取って説明する。
まず、画像処理ユニット1は、動物20が時間ΔTの間に距離Zv(N−1)から距離Zv(0)に接近したことにより、下記式(7)を用いてZ方向の相対速度Vsを算出し、衝突判定処理を行う(ステップS21)。衝突判定処理は、下記式(8)及び(9)が成立するとき、衝突の可能性があると判定する処理である。
ステップS21において、動物20との衝突の可能性があると判定した場合(ステップS21のYES)、次のステップS22に進む。
【0045】
また、ステップS21において、式(8)及び/または式(9)が不成立のときは、動物20との衝突の可能性がないと判定し(ステップS21のNO)、警報判定処理を終了する。
Vs=(Zv(N−1)−Zv(0))/ΔT ・・・(7)
Zv(0)/Vs≦T ・・・(8)
|Yv(0)|≦H ・・・(9)
【0046】
ここで、Zv(0)は最新の距離検出値(vは近似直線LMVによる補正後のデータであることを示すために付しているが、Z座標は補正前と同一の値である)であり、Zv(N−1)は、時間ΔT前の距離検出値である。またTは、余裕時間であり、衝突の可能性を予測衝突時刻より時間Tだけ前に判定することを意図したものであり、例えば2〜5秒程度に設定される。またHは、Y方向、すなわち高さ方向の範囲を規定する所定高さであり、例えば自車両10の車高の2倍程度に設定される。
【0047】
衝突判定処理が完了したら、次に、対象物が接近領域判定内か否かを判定する(ステップS22)。例えば、図13は、赤外線カメラ2R、2Lで監視可能な領域を太い実線で示す外側の三角形の領域AR0で示し、更に領域AR0内の、Z1=Vs×Tより自車両10に近い領域AR1、AR2、AR3を、警報判定領域としている。
ここで、領域AR1は、自車両10の車幅αの両側に余裕β(例えば50〜100cm程度とする)を加えた範囲に対応する領域、換言すれば自車両10の車幅方向中心部の軸の両側に(α/2+β)の幅を有する領域であって、対象物がそのまま存在し続ければ衝突の可能性がきわめて高いので、接近判定領域と呼ぶ。領域AR2、AR3は、接近判定領域よりX座標の絶対値が大きい(接近判定領域の横方向外側の)領域であり、この領域内にある対象物については、後述する侵入衝突判定を行うので、侵入判定領域と呼ぶ。なおこれらの領域は、前記式(9)に示したようにY方向には、所定高さHを有する。
【0048】
前記ステップS21の答が肯定(YES)となるのは、対象物が接近判定領域AR1または侵入判定領域AR2,AR3のいずれかに存在する場合である。
続くステップS22では、対象物が接近判定領域AR1内にあるか否かを判別し、対象物が接近判定領域AR1内にあると判定された場合(ステップS22のYES)、直ちにステップS24に進む。一方、対象物が接近判定領域AR1内にないと判定された場合(ステップS22のNO)、侵入衝突判定処理を行う(ステップS23)。
【0049】
ステップS23の侵入衝突判定処理は、具体的には、画像上での最新のx座標であるxc(0)(文字cは前述したように画像の中心位置を実空間原点Oに一致させる補正を行った座標であることを示すために付している)と、時間ΔT前のx座標であるxc(N−1)との差が下記式(10)を満たすか否かを判別し、満たす場合に衝突の可能性が高いと判定する。
【0050】
【数7】

【0051】
なお、図14に示すように、自車両10の進行方向に対してほぼ90°の方向から進行してくる動物20がいた場合、Xv(Nー1)/Zv(N−1)=Xv(0)/Zr(0)であるとき、換言すれば動物の速度Vpと相対速度Vsの比Vp/Vs=Xr(Nー1)/Zr(N−1)であるとき、自車両10から動物20を見る方位角θdは一定となり、衝突の可能性が高い。式(10)は、この可能性を自車両10の車幅αを考慮して判定するものである。
ステップS23において、衝突の可能性が高いと判定した場合(ステップS23のYES)、ステップS24に進む。一方、衝突の可能性が低いと判定した場合(ステップS23のNO)、警報判定処理を終了する。
【0052】
ステップS24では、以下のようにして警報出力判定処理、すなわち警報出力を行うか否かの判定を行う(ステップS24)。
警報出力判定処理は、まずブレーキセンサ5の出力BRから自車両10の運転者がブレーキ操作を行っているか否かを判別する。
もし、自車両10の運転者がブレーキ操作を行っている場合には、それによって発生する加速度Gs(減速方向を正とする)を算出し、この加速度Gsが所定閾値GTHより大きいときは、ブレーキ操作により衝突が回避されると判定して警報判定処理を終了する。これにより、適切なブレーキ操作が行われているときは、警報を発しないようにして、運転者に余計な煩わしさを与えないようにすることができる。
また、加速度Gsが所定閾値GTH以下であるとき、または自車両10の運転者がブレーキ操作を行っていなければ、直ちにステップS25以降の処理に進んで、対象物の形状判定を行う。
なお、所定閾値GTHは、下記式(11)のように定める。これは、ブレーキ操作中の加速度Gsがそのまま維持された場合に、距離Zv(0)以下の走行距離で自車両10が停止する条件に対応する値である。
【0053】
【数8】

【0054】
ステップS25以降の対象物の形状判定には、対象物の画像に直線部位を示す部分が含まれるか否か(ステップS25)、対象物の画像の角が直角であるか否か(ステップS26)、対象物の画像が予め登録された人工構造物の形状と一致するか否か(ステップS27)、対象物の画像に同じ形状のものが複数含まれているか否か(ステップS28)がある。
最初に、対象物の画像に直線部位を示す部分が含まれるか否かを判定する(ステップS25)。
ステップS25において、対象物の画像に直線部位を示す部分が含まれない場合(ステップS25のNO)、対象物の画像の角が直角であるか否かを判定する(ステップS26)。
【0055】
ステップS26において、対象物の画像の角が直角でない場合(ステップS26のNO)、対象物の画像が予め登録された人工構造物の形状と一致するか否かを判定する(ステップS27)。
ステップS27において、対象物の画像が予め登録された人工構造物の形状と一致しない場合(ステップS27のNO)、対象物の画像に同じ形状のものが複数含まれているか否かを判定する(ステップS28)。
また、ステップS28において、対象物の画像に同じ形状のものが複数含まれていない場合(ステップS28のNO)、対象物が歩行者や動物である可能性が高いので、スピーカ3を介して音声による警報を発するとともに、画像表示装置7により、例えば赤外線カメラ2Rにより得られる画像を表示し、接近してくる対象物を強調表示(例えば枠で囲んで強調する)する(ステップS29)。
【0056】
一方、ステップS25において対象物の画像に直線部位を示す部分が含まれる場合(ステップS25のYES)、あるいはステップS26において対象物の画像の角が直角である場合(ステップS26のYES)、あるいはステップS27において対象物の画像が予め登録された人工構造物の形状と一致する場合(ステップS27のYES)、更にステップS28において対象物の画像に同じ形状のものが複数含まれている場合(ステップS28のYES)のいずれかである場合は、対象物が人工構造物であるとして、図3のステップS7において抽出した対象物から除外し(ステップS30)、警報を発することなく警報判定処理を終了する。
【0057】
次に、上述の図12における対象物の形状判定、特にステップS25とステップS26、ステップS28、更にステップS30における直線部位、及び直角部位の探索処理について、その方法を図面を用いて詳細に説明する。
図15と図16、及び図17、更に図23は、図12におけるステップS25、ステップS26、ステップS28の処理とステップS30の一部の処理を、更に詳細に示すフローチャートである。
直線部位の探索において、画像処理ユニット1は、垂直直線部位の検出(垂直直線部位判定)から開始する。図15は、垂直直線部位判定を示すフローチャートである。
従って、まず垂直直線部位を探索するために、対象物の画像と相関演算を行うための基準画像である右直線部映像パタンを選択し(ステップS31)、図3に示したフローチャートのステップS13において求めた自車両10と対象物との距離に応じて、表示画面上に投影された実空間の画像の大きさと釣り合うように、基準画像のパタンサイズを決定する(ステップS32)。
【0058】
ここで、基準画像のパタンサイズの決定は、以下のように行う。すなわち、自車両10と対象物との距離が前記式(2)よりz=L[m]と算出された場合、実空間で距離L[m]の位置にある高さA[m」、幅B[m]の対象物は、表示画面上でa×b[pixel]の大きさで投影される。
a=f×A/L ・・・(12)b=f×B/L ・・・(13)
従って、図18(a)に示すように、例えば予め用意されている右直線部映像パタンから、a×b[pixel]の直線部位パタンを切り出し、右直線部切り出しパタン「Pat_Line_R」を基準パタンとする。同様に、予め用意されている左直線部映像パタンから切り出した、a×b[pixel]の左直線部切り出しパタン「Pat_Line_L」を図18(b)に示す。
【0059】
相関演算のための基準パタンサイズが求められたら、次に、対象物近傍に探索領域を設定する(ステップS33)
ここで、探索領域の設定は、以下のように行う。すなわち、図19に示すように、2値化で抽出された対象物の輪郭(2値化対象物画像100)は、対象物101の輪郭を正確に表現しているとは限らない。従って、2値化対象物画像(OBJ)100の外接四角形の中心102に対して、幅と高さが2値化対象物画像100の幅と高さの上下にそれぞれa[pixel]の範囲を設定し、これを相関演算による探索範囲103とする。
【0060】
次に、対象物近傍の探索範囲103内から、相関演算により、右直線部切り出しパタン「Pat_Line_R」と相関度が高い部分(OBJ_Pat)104を探索する(ステップS34)。
そして、右直線部切り出しパタン「Pat_Line_R」と相関度が高い部分が存在するか否かを判定する(ステップS35)。
ステップS35において、右直線部切り出しパタン「Pat_Line_R」と相関度が高い部分が存在する場合(ステップS35のYES)、相関度が高い部分と対象物101とが同一物体であるか否かを判定するために、前記式(2)による対象物の距離算出と同様に、OBJ_Pat104の距離を算出する(ステップS36)。
【0061】
なお、実際は、自車両10と対象物101との距離が、自車両10と相関度が高い部分OBJ_Pat104との距離に等しい場合、対象物101とOBJ_Pat104は同一の物体であると判定できるので、距離を比較する代わりに算出された視差ΔdとΔd_Pを比較することで、対象物101とOBJ_Pat104が同一の物体であるか否かを判定する(ステップS37)。具体的には下記式(14)を用いて、視差誤差が許容値THより小さいか否かを判定する。|Δd−Δd_P|<TH ・・・(14)
ステップS37において、対象物101とOBJ_Pat104が同一の物体であると判定された場合(ステップS37のYES)、対象物101には垂直直線部位有りと判定し(ステップS38)、垂直直線部位を持つということは人工の道路構造物であるとして(ステップS39)、垂直直線部位判定を終了する。
【0062】
一方、ステップS35において、右直線部切り出しパタン「Pat_Line_R」と相関度が高い部分が存在しない場合(ステップS35のNO)、あるいはステップS37において、対象物101とOBJ_Pat104が同一の物体であると判定されなかった場合(ステップS37のNO)、ステップS40へ進み、相関演算に用いた基準パタンが左直線部映像パタンであるか否かを判定する(ステップS40)。
ステップS40において、相関演算に用いた基準パタンが左直線部映像パタンでなかった場合(ステップS40のNO)、予め用意されている左直線部映像パタンを選択し(ステップS41)、ステップS32へ戻る。
【0063】
そして、上述のステップS32とステップS33において、右直線部映像パタンに対して行った操作と同じことを左直線部映像パタンに対して行い、図18(b)に示す左直線部映像パタンから切り出した、a×b[pixel]の左直線部切り出しパタン「Pat_Line_L」を基準パタンとする。更に、ステップS34において、対象物近傍の探索範囲103内から、相関演算により、左直線部切り出しパタン「Pat_Line_L」と相関度が高い部分(OBJ_Pat)104を探索する。
左直線部切り出しパタンによる相関演算の結果、上述のステップS35からステップS39までの動作を行い、対象物101に垂直直線部位有りと判定されると、対象物101は人工の道路構造物であるとして、垂直直線部位判定を終了する。
また、左直線部切り出しパタンによる相関演算の結果、再度ステップS40の判定へ進むと、既に右直線部切り出しパタンと左直線部切り出しパタンの両方による垂直直線部位の探索が終了しているので(ステップS40のYES)、垂直直線部位無しと判定し(ステップS42)、水平直線部位判定へ進む。
【0064】
なお、上述の垂直直線部位判定において、右直線部切り出しパタンと左直線部切り出しパタンの両方によって相関演算を行い、それぞれの相関度の高い部分の自車両10との距離を、対象物の自車両10との距離と比較するのは、対象物が複数重なって1つの対象物として認識されている場合、垂直直線部位判定において検出された対象物の右、あるいは左の直線部位は、衝突判定された対象物の部位ではない可能性があるためである。従って、対象物の自車両10との距離を、検出された対象物の右、あるいは左の直線部位の自車両10との距離と比較して、両者が同一の物体であるか否かを判断する。
【0065】
次に、図16に示すフローチャートを用いて、水平直線部位判定について説明する。
水平直線部位判定では、まず水平直線部位を探索するために、対象物の画像と相関演算を行うための基準画像である上端直線部映像パタンを選択し(ステップS51)、図3に示したフローチャートのステップS13において求めた自車両10と対象物との距離に応じて、表示画面上に投影された実空間の画像の大きさと釣り合うように、基準画像のパタンサイズを決定する(ステップS52)。
ここで、基準画像のパタンサイズの決定は、上述の垂直直線部位判定と同じように行う。すなわち、自車両10と対象物との距離が前記式(2)よりz=L[m]と算出された場合、実空間で距離L[m]の位置にある高さB[m」、幅A[m]の対象物は、表示画面上でb×a[pixel]の大きさで投影される。
b=f×B/L ・・・(15)a=f×A/L ・・・(16)
【0066】
従って、図20(a)に示すように、例えば予め用意されている上端直線部映像パタンから、b×a[pixel]の直線部位パタンを切り出し、上端直線部切り出しパタン「Pat_Line_U」を基準パタンとする。同様に、予め用意されている下端直線部映像パタンから切り出した、b×a[pixel]の下端直線部切り出しパタン「Pat_Line_D」を図20(b)に示す。
相関演算のための基準パタンサイズが求められたら、次に、対象物近傍に探索領域を設定する(ステップS53)
なお、探索領域の設定も、上述の垂直直線部位判定と同じように行う。すなわち、2値化対象物画像(OBJ)の外接四角形の中心に対して、幅と高さが2値化対象物画像の幅と高さの上下にそれぞれa[pixel]の範囲を設定し、これを相関演算による探索範囲とする。
【0067】
次に、対象物近傍の探索範囲内から、相関演算により、上端直線部切り出しパタン「Pat_Line_U」と相関度が高い部分(OBJ_Pat)を探索する(ステップS54)。
そして、上端直線部切り出しパタン「Pat_Line_U」と相関度が高い部分が存在するか否かを判定する(ステップS55)。
ステップS55において、上端直線部切り出しパタン「Pat_Line_U」と相関度が高い部分が存在する場合(ステップS55のYES)、対象物には水平直線部位有りと判定し(ステップS56)、水平直線部位を持つということは人工の道路構造物であるとして(ステップS57)、水平直線部位判定を終了する。
【0068】
一方、ステップS55において、上端直線部切り出しパタン「Pat_Line_U」と相関度が高い部分が存在しない場合(ステップS55のNO)、相関演算に用いた基準パタンが下端直線部映像パタンであるか否かを判定する(ステップS58)。
ステップS58において、相関演算に用いた基準パタンが下端直線部映像パタンでなかった場合(ステップS58のNO)、予め用意されている下端直線部映像パタンを選択し(ステップS59)、ステップS52へ戻る。
【0069】
そして、上述のステップS52とステップS53において、上端直線部映像パタンに対して行った操作と同じことを下端直線部映像パタンに対して行い、図20(b)に示す下端直線部映像パタンから切り出した、b×a[pixel]の下端直線部切り出しパタン「Pat_Line_D」を基準パタンとする。更に、ステップS54において、対象物近傍の探索範囲内から、相関演算により、下端直線部切り出しパタン「Pat_Line_D」と相関度が高い部分(OBJ_Pat)を探索する。
下端直線部切り出しパタンによる相関演算の結果、上述のステップS55からステップS57までの動作を行い、対象物に水平直線部位有りと判定されると、対象物は人工の道路構造物であるとして、水平直線部位判定を終了する。
また、下端直線部切り出しパタンによる相関演算の結果、再度ステップS58の判定へ進むと、既に上端直線部切り出しパタンと下端直線部切り出しパタンの両方による水平直線部位の探索が終了しているので(ステップS58のYES)、水平直線部位無しと判定し(ステップS60)、直角部位判定へ進む。
【0070】
なお、上述の水平直線部位判定において、上端線部切り出しパタンと下端直線部切り出しパタンの両方によって相関演算を行った後、それぞれの相関度の高い部分と自車両10との距離を求めないのは、左右のカメラを用いた2眼立体視の原理から、水平直線部位の距離は算出できないからである。従って、垂直直線部位判定と場合と違い、水平直線部位判定では、直線のパタンの相関度のみから判定を行うものとする。
【0071】
次に、図17に示すフローチャートを用いて、直角部位判定について説明する。
直角部位判定では、まず直角部位を探索するために、対象物の画像と相関演算を行うための基準画像である右上直角部映像パタンを選択し(ステップS71)、図3に示したフローチャートのステップS13において求めた自車両10と対象物との距離に応じて、表示画面上に投影された実空間の画像の大きさと釣り合うように、基準画像のパタンサイズを決定する(ステップS72)。
ここで、基準画像のパタンサイズの決定は、上述の垂直直線部位判定や水平直線部位判定と同じように行う。すなわち、自車両10と対象物との距離が前記式(2)よりz=L[m]と算出された場合、実空間で距離L[m]の位置にある高さA[m」、幅A[m]の対象物は、表示画面上でa×a[pixel]の大きさで投影される。
a=f×A/L ・・・(17)
【0072】
従って、図21(a)に示すように、例えば予め用意されている右上直角部映像パタンから、a×a[pixel]の直角部位パタンを切り出し、右上直角部切り出しパタン「Pat_Corner_R」を基準パタンとする。同様に、予め用意されている左上直角部映像パタンから切り出した、a×a[pixel]の左上直角部切り出しパタン「Pat_Corner_L」を図21(b)に示す。
相関演算のための基準パタンサイズが求められたら、次に、対象物近傍に探索領域を設定する(ステップS73)。
なお、探索領域の設定も、上述の垂直直線部位判定や水平直線部位判定と同じように行う。すなわち、2値化対象物画像(OBJ)の外接四角形の中心に対して、幅と高さが2値化対象物画像の幅と高さの上下にそれぞれa[pixel]の範囲を設定し、これを相関演算による探索範囲とする。
【0073】
次に、対象物近傍の探索範囲内から、相関演算により、右上直角部切り出しパタン「Pat_Corner_R」と相関度が高い部分(OBJ_Pat)を探索する(ステップS74)。
そして、右上直角部切り出しパタン「Pat_Corner_R」と相関度が高い部分が存在するか否かを判定する(ステップS75)。
ステップS75において、右上直角部切り出しパタン「Pat_Corner_R」と相関度が高い部分が存在する場合(ステップS75のYES)、相関度が高い部分と対象物とが同一物体であるか否かを判定するために、前記式(2)による対象物の距離算出と同様に、OBJ_Patの距離を算出する(ステップS76)。
【0074】
なお、実際は、自車両10と対象物との距離が、自車両10と相関度が高い部分OBJ_Patとの距離に等しい場合、対象物とOBJ_Patは同一の物体であると判定できるので、距離を比較する代わりに算出された視差ΔdとΔd_Pを比較することで、対象物とOBJ_Patが同一の物体であるか否かを判定する(ステップS77)。具体的には前記式(14)を用いて、視差誤差が許容値THより小さいか否かを判定する。
ステップS77において、対象物とOBJ_Patが同一の物体であると判定された場合(ステップS77のYES)、対象物には直角部位有りと判定し(ステップS78)、直角部位を持つということは人工の道路構造物であるとして(ステップS79)、直角部位判定を終了する。
【0075】
一方、ステップS75において、右上直角部切り出しパタン「Pat_Corner_R」と相関度が高い部分が存在しない場合(ステップS75のNO)、あるいはステップS77において、対象物とOBJ_Patが同一の物体であると判定されなかった場合(ステップS77のNO)、ステップS80へ進み、相関演算に用いた基準パタンが左上直角部映像パタンであるか否かを判定する(ステップS80)。
ステップS80において、相関演算に用いた基準パタンが左上直角部映像パタンでなかった場合(ステップS80のNO)、予め用意されている左上直角部映像パタンを選択し(ステップS81)、ステップS72へ戻る。
【0076】
そして、上述のステップS72とステップS73において、右上直角部映像パタンに対して行った操作と同じことを左上直角部映像パタンに対して行い、図21(b)に示す左上直角部映像パタンから切り出した、a×a[pixel]の左上直角部切り出しパタン「Pat_Corner_L」を基準パタンとする。
更に、ステップS74において、対象物近傍の探索範囲内から、相関演算により、左直線部切り出しパタン「Pat_Corner_L」と相関度が高い部分(OBJ_Pat)を探索する。
【0077】
左上直角部切り出しパタンによる相関演算の結果、上述のステップS75からステップS79までの動作を行い、対象物に直角部位有りと判定されると、対象物101は人工の道路構造物であるとして、直角部位判定を終了する。
また、左上直角部切り出しパタンによる相関演算の結果、再度ステップS80の判定へ進むと、既に右上直角部切り出しパタンと左上直角部切り出しパタンの両方による直角部位の探索が終了しているので(ステップS80のYES)、直角部位無しと判定する(ステップS82)。
従って、対象物は人工の道路構造物ではないと判定して(ステップS83)、直角部位判定を終了し、上述の図12における対象物の形状判定のステップS27の処理を実行する。
【0078】
なお、上述の直角部位判定において、右上直角部切り出しパタンと左上直角部切り出しパタンの両方によって相関演算を行い、それぞれの相関度の高い部分の自車両10との距離を、対象物の自車両10との距離と比較する理由は、垂直直線部位判定の場合と同様である。
【0079】
次に、図面を用いて、同一形状判定について説明する。
同一形状判定は、例えば図22に示すように、同一の形状を持つ複数の物体から構成される道路構造物50(この例では、丸いレンズが上下に配置された信号機)を、赤外線カメラにより得られた赤外線画像の中から探索する処理である。
図23に示すフローチャートを用いて説明すると、まず同一形状を探索するために、対象物の画像と相関演算を行うための基準画像である対象物パタン「Pat」を設定する(ステップS91)。
ここで、対象物パタン「Pat」は、図24(a)に示すように、例えば熱を持った道路構造物50のレンズの部分が、2値化対象物画像(OBJ)200として抽出されている場合、図24(b)に示すように、2値化対象物画像(OBJ)200よりひとまわり大きい領域を設定した基準画像である。
【0080】
相関演算のための対象物パタンが求められたら、次に、対象物近傍に探索領域を設定する(ステップS92)。
ここで、探索領域の設定は、以下のように行う。すなわち、図24(a)に示すように、高さが2値化対象物画像200の高さの上下にそれぞれa[pixel]、幅が2値化対象物画像200の中心に対して左右にb/2[pixel]の範囲を設定し、これをそれぞれ相関演算による上部探索範囲202、下部探索範囲203とする。
【0081】
次に、対象物近傍の上部探索範囲202、及び下部探索範囲203内から、相関演算により、対象物パタン「Pat」と相関度が高い部分(OBJ_Pat)204を探索する(ステップS93)。
そして、対象物パタン「Pat」と相関度が高い部分が存在するか否かを判定する(ステップS94)。
ステップS94において、対象物パタン「Pat」と相関度が高い部分が存在する場合(ステップS94のYES)、対象物には同一形状物有りと判定し(ステップS95)、同一形状を持つということは人工の道路構造物であるとして(ステップS96)、同一形状判定を終了する。なお、図22に示した例では、赤外線画像の中から、同一の物体(丸いレンズ)を複数(2個)持っている道路構造物(信号機)が検出されることになる。
【0082】
一方、ステップS94において、対象物パタン「Pat」と相関度が高い部分が存在しない場合(ステップS94のNO)、対象物には同一形状物無しと判定し(ステップS97)、同一形状を持たないということは人工の道路構造物でないとして(ステップS98)、同一形状判定を終了する。
【0083】
なお、上述の同一形状判定において、対象物パタンを探索する探索領域の設定は、2値化対象物画像(OBJ)200の上下方向としたが、同一形状の物体が左右に並んでいる場合もあるので、上下方向を探索した後、探索領域を左右に設定して対象物パタンを探索しても良い。
【0084】
また、本実施の形態では、画像処理ユニット1が、対象物抽出手段と、人工構造物判定手段と、人工構造物除外手段と、基準画像寸法変更手段とを構成する。
より具体的には、図3のS1〜S7が対象物抽出手段に相当し、図12のS25〜S28が人工構造物判定手段に相当し、図12のS30が人工構造物除外手段に相当する。更に、図15のS32、図16のS52、図17のS72が基準画像寸法変更手段に相当する。
【0085】
また、上述の実施の形態では、撮像手段として赤外線カメラ2R、2Lを用いた場合を説明したが、例えば特開平9−226490号公報に示されるように通常の可視光線のみ検出可能なテレビカメラを使用してもよい。ただし、赤外線カメラを用いることにより、動物あるいは走行中の他車両などの抽出処理を簡略化することができ、演算装置の演算能力が比較的低いものでも実現できる。また上述した実施の形態では、自車両の前方を監視する例を示したが、自車両の後方など、いずれの方向を監視するようにしてもよい。
【0086】
以上説明したように、自車両の周辺の環境を監視した結果を、歩行者や動物等の動く物体と人工の道路構造物とに分類して扱うことで、例えば自車両の運転者に自車両の周辺の環境を表示するような場合、例えばこれらの物体の表示方法を区別し、より細心の注意を払うべき物体に関して、運転者に適切に通知できるようになる。
また、例えばこれらの物体の情報を車両制御に用いる場合、物体の種類や重要度によって、車両制御の順序を変更する等の判断材料として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の一実施の形態による車両周辺監視装置の構成を示すブロック図である。
【図2】車両における赤外線カメラやセンサ、ディスプレイ等の取り付け位置を示す図である。
【図3】同実施の形態の車両周辺監視装置の画像処理ユニットにおける全体動作の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】赤外線カメラにより得られるグレースケール画像とその2値化画像を示す図である。
【図5】ランレングスデータへの変換処理及びラベリングを示す図である。
【図6】対象物の時刻間追跡を示す図である。
【図7】対象物画像の回頭角補正を示す図である。
【図8】右画像中の探索画像と、左画像に設定する探索領域を示す図である。
【図9】探索領域を対象とした相関演算処理を示す図である。
【図10】対象物の距離算出における対象物視差の算出方法を示す図である。
【図11】車両の回頭により発生する画像上の対象物位置のずれを示す図である。
【図12】同実施の形態の車両周辺監視装置の画像処理ユニットにおける警報判定処理の詳細を示すフローチャートである。
【図13】車両前方の領域区分を示す図である。
【図14】衝突が発生しやすい場合を示す図である。
【図15】同実施の形態の車両周辺監視装置の画像処理ユニットにおける垂直直線部位の検出処理の詳細を示すフローチャートである。
【図16】同実施の形態の車両周辺監視装置の画像処理ユニットにおける水平直線部位の検出処理の詳細を示すフローチャートである。
【図17】同実施の形態の車両周辺監視装置の画像処理ユニットにおける直角部位の検出処理の詳細を示すフローチャートである。
【図18】画像の探索における垂直直線部切り出しパタンの詳細を示す図である。
【図19】垂直直線部位検出のための基準パタンの探索を示す図である。
【図20】画像の探索における水平直線部切り出しパタンの詳細を示す図である。
【図21】画像の探索における直角部切り出しパタンの詳細を示す図である。
【図22】赤外線カメラにより得られる道路構造物の一例を示す図である。
【図23】同実施の形態の車両周辺監視装置の画像処理ユニットにおける同一形状の検出処理の詳細を示すフローチャートである。
【図24】同一形状検出のための対象物パタンの探索を示す図である。
【符号の説明】
【0088】
1 画像処理ユニット
2R、2L 赤外線カメラ
3 ヨーレートセンサ
4 車速センサ
5 ブレーキセンサ
6 スピーカ
7 画像表示装置
10 自車両
S1〜S7 対象物抽出手段
S25〜S28 人工構造物判定手段
S30 人工構造物除外手段
S32、S52、S72 基準画像寸法変更手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像手段により撮影された赤外線画像から、車両の周辺に存在する物体を検出する車両周辺監視装置であって、
前記赤外線画像から赤外線を発する対象物を抽出する対象物抽出手段と、
前記対象物抽出手段により抽出された対象物近傍の探索範囲画像を、人工構造物を特定する要素となる予め用意されている登録された人工の道路構造物の形状を示す基準画像と照合し、該対象物近傍の探索範囲に前記基準画像と相関が高い部分が存在すると判定した場合、前記車両から前記相関が高い部分と前記対象物の距離が等しい場合、人工の道路構造物であると判定する人工構造物判定手段と、
を設けたことを特徴とする車両周辺監視装置。
【請求項2】
前記人工構造物判定手段により人工構造物であると判定された対象物を、前記対象物抽出手段により抽出された対象物から除外する人工構造物除外手段
を含むことを特徴とする請求項1に記載の車両周辺監視装置。
【請求項3】
前記基準画像は、直線部位を表す画像を含み、
前記人工構造物判定手段は、垂直直線部位または直角部位を含む対象物を人工構造物と判定する
ことを特徴とする請求項1、または請求項2に記載の車両周辺監視装置。
【請求項4】
前記人工構造物判定手段は、
前記基準画像の大きさを前記車両と前記対象物との距離に合わせて変更する基準画像寸法変更手段
を含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の車両周辺監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2008−276787(P2008−276787A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−127718(P2008−127718)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【分割の表示】特願2001−197312(P2001−197312)の分割
【原出願日】平成13年6月28日(2001.6.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】