説明

車両状況記録装置

【課題】車両の使用の程度と関連した作動機器の作動状況を記録することができる車両状況記録装置を提供する。
【解決手段】第1プリテンショナ機構2cと、該第1プリテンショナ機構2cが作動したことを記録する記録部94及びEEPROM95と、車両Vの積算使用時間を計測する積算使用時間計測部92とを備え、記録部94は、第1プリテンショナ機構2cの作動を該第1プリテンショナ機構2cが作動したときに積算使用時間計測部92によって計測されている車両の積算使用時間と共にEEPROM95に記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された作動機器の作動状況を記録する車両状況記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より車両に搭載された作動機器の作動状況を時間情報と共に記録して保持しておくものが知られている。
【0003】
例えば、特許得文献1に係る車両状況記録装置は、作動機器としてのエアバッグ装置の作動状況を記録している。詳しくは、エアバッグ装置の点火信号の有無と点火したときの日付や時刻等の時間情報とを併せて記録するようにしている。こうすることで、この車両状況記録装置は、後日、エアバッグ装置の作動状況を日時に基づいて解析することができる。
【特許文献1】特開2001−63514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両状況記録装置においては、例えば作動機器の耐久性の解析等、作動機器の動作状況を車両の使用の程度と関連させて解析を行いたいという要望がある。
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に係る車両状況記録装置は、エアバッグが作動した日時だけしか記録していないため、かかる要望に応えることができない。つまり、同じ日時にエアバッグの作動が記録されていた車両が複数あったとしても、各車両で車両の使用の程度が異なるため、エアバッグの耐久性等、車両の使用の程度と関連する解析を正確に行うことはできない。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両の使用の程度と関連した作動機器の作動状況を記録することができる車両状況記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車両に搭載された作動機器の作動状況と共に、車両の積算使用時間を記録するようにしたものである。
【0008】
具体的には、第1の発明は、車両に搭載された作動機器と、該作動機器が作動したことを記録する作動状況記録手段と、車両の積算使用時間を計測する車両積算使用時間計測手段とを備え、前記作動状況記録手段は、前記作動機器の作動を、その作動時に前記車両積算使用時間計測手段によって計測されている車両の積算使用時間と対応付けて記録するものとする。
【0009】
前記の構成の場合、前記作動機器の作動と共にそのときの車両の積算使用時間が対応付けて記録されるため、車両の積算使用時間に対する作動機器の作動状況を解析することができる。その結果、該作動機器の耐久性等、車両の使用の程度と関連した解析を詳細に行うことができる。
【0010】
ここで、車両の積算使用時間とは、車両を実際に使用している時間の積算時間、即ち、エンジンが運転状態であるときの積算時間を意味する。
【0011】
第2の発明は、エンジンが運転状態であるときの積算時間を計測するものの一例であって、第1の発明において、前記車両積算使用時間計測手段は、車両のイグニッションスイッチがオンされてからオフされるまでの時間を積算することによって車両の積算使用時間を計測するものとする。
【0012】
前記の構成の場合、イグニッションスイッチは車両の運転を開始及び停止させるスイッチであるため、このイグニッションスイッチのオンからオフまでの時間を積算することでエンジンが運転状態であるときの積算時間、即ち車両の積算使用時間を簡単に計測することができる。
【0013】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記作動機器の故障を検知する故障状態検知手段と、前記故障状態検知手段によって検知された故障を、その検知時に前記車両積算使用時間計測手段によって計測されている車両の積算使用時間と対応付けて記録する故障状態記録手段とをさらに備えるものとする。
【0014】
前記の構成の場合、前記故障状態検知手段によって前記作動機器の故障を検知することができると共に、前記故障状態記録手段によって該故障とそのときの車両の積算使用時間とを対応付けて記録することができる。その結果、作動機器の故障までの積算使用時間を解析できることに加えて、故障が検知される前後の作動機器の作動状況を解析することができ、より詳細に作動機器の解析を行うことができる。
【0015】
第4の発明は、第1〜第3の発明ににおいて、車両が物体に衝突することを予知する車両衝突予知手段をさらに備え、前記作動機器は、前記車両衝突予知手段によって衝突が予知されたときに乗員を拘束するシートベルトプリテンショナ機構であるものとする。
【0016】
前記の構成の場合、シートベルトプリテンショナ機構の作動状況を積算使用時間と共に解析することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、車両に搭載された作動機器の作動状況と共に車両の積算使用時間を対応付けて記録しておくため、車両の積算使用時間に対する作動機器の作動状況の関係を解析することができ、特に作動機器の耐久性等、車両の使用の程度と関連した解析を詳細に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る車両状況記録装置Aを搭載した車両Vを示している。この車両Vは、運転席及び助手席に設けられたシートベルト装置2(運転席側のみ図示)と、4つの車輪W(左前側のみ図示)に個別に配設された4つのブレーキ装置3(左前側のみ図示)と、車両前方の障害物を検知する障害物検知センサ4と、インストルメントパネル10に設けられたメータユニット11及び警報ブザー12と、これらを制御する制御ユニット5とを備えている。そして、車両Vは、車速を制御して自動走行するように走行制御を行うと共に、車両前方の障害物を検知して該障害物と衝突すると予知したときにシートベルト装置2やブレーキ装置3を作動させるPCS(Pre-Crash Safety System)制御を行い、さらには、シートベルト装置2等の作動機器が作動したときにはその作動を記録しておく作動状況記録を行うように構成されている。
【0020】
前記シートベルト装置2は、各座席に着座した乗員を拘束するウエビング2aと、センターピラー(図示省略)に設けられ、ウエビング2aを巻き取るガイドドラム(図示省略)を有するリトラクタ2bと、ウエビング2aに所定の張力を付与するシートベルトプリテンショナ20とを有している。上記リトラクタ2bは、ウエビング2aの巻き取り量を検知する巻き取り量検知センサ(図示省略)を有している。また、上記シートベルトプリテンショナ20は、リトラクタ2bの後面に一体的に設けられ、ウエビング2aを巻き取ってウエビング2aに通常時よりも大きな所定の第1張力を付与する第1プリテンショナ機構2cと、リトラクタ2bの前面に一体的に設けられ、ウエビング2aを巻き取ってウエビング2aに第1張力よりも大きい所定の第2張力を付与する第2プリテンショナ機構2dとを有する。この第1プリテンショナ機構2cは、電動モータ(図示省略)を備え、電動モータの駆動によりウエビング2aの巻き取りと引き出しを行う。一方、第2プリテンショナ機構2dは、インフレータ(図示省略)を備え、インフレータを作動させることによりウエビング2aを第1プリテンショナ機構2cによる巻き取り速度よりも速い速度でウエビング2aを巻き取る。
【0021】
前記ブレーキ装置3は、ディスクロータ3aと、キャリパ3bと加圧バルブ(図示省略)や減圧バルブ(図示省略)等の各バルブ等からなるブレーキアシスト機構31とを有する液圧式ブレーキであって、ブレーキペダル(図示省略)の踏み込み操作により倍力装置(図示省略)を介して発生したマスタシリンダ(図示省略)の液圧によりブレーキ装置3が作動して車輪Wにブレーキ力が付与される。
【0022】
前記ブレーキアシスト機構31は、加圧バルブや減圧バルブ等の各バルブにより構成されていて、マスタシリンダの液圧を検知する液圧センサで構成されたブレーキ圧センサ32からの検知信号に基づいてブレーキペダルの踏み込み量と踏み込み速度を算出することにより緊急時にブレーキペダルが踏み込まれたことを検知し、緊急時にブレーキペダルが踏み込まれたと検知した場合に、各バルブを制御してブレーキ装置3に供給される液圧を制御することにより所定の大きなブレーキ力を発生させる。
【0023】
前記障害物検知センサ4は、車両Vの前端の車幅方向中央部にレーダ軸が車両Vの前方正面を向くように取り付けられていて、ミリ波を前方の所定角度の範囲でスキャンしながら発信すると共に、車両Vの前方に存在する障害物からの反射波に基づいて該障害物までの距離、角度及び相対速度を検知するスキャン式のミリ波レーダである。尚、障害物検知センサはミリ波レーダに限られず、レーザレーダや超音波レーダ等のレーダを採用することもできる。
【0024】
前記制御ユニット5は、図2に示すように、車両Vのパワートレインを制御するPCM(PowerTrain Control Module)6と、車両Vの横滑りを抑制して車両Vの走行安定性を保つように制動力及びエンジン出力の制御を行うDSC(Dynamic Stability Control)コントローラ7と、前記PCS制御を行うと共に、前記走行制御、詳しくは車両Vの車速を制御して車両Vを定速で走行させ又は先行車両に追従させるACC(Adaptive Cruse Control)制御を行うPCS/ACCコントローラ8と、該PCS/ACCコントローラ8からの制御信号を受けて前記シートベルト装置2を制御するプリテンショナコントローラ9とを有し、これらは車両V内に構築されたCAN(Control Area Network)を介して通信可能に接続されている。
【0025】
前記PCM6は、車両Vの乗員(運転者)がアクセルペダルを踏み込んだときのアクセル開度を検知するアクセル開度センサ61からの検知信号およびPCS/ACCコントローラ8からの指示信号が入力され、該検知信号又は指示信号に基づいてスロットル62に制御信号を出力して、車両Vを加減速するように構成されている。また、PCM6には、ACC制御を行うためのACC操作スイッチ63からの操作信号が入力されており、これら操作信号はCANを介してPCS/ACCコントローラ8へ出力される。
【0026】
前記ACC操作スイッチ63は、ステアリング13に設けられていて、ACC制御を行うための複数のスイッチからなる。例えば、ACC制御の実行及び停止を行うACCメインスイッチ、定速制御の設定速度を設定するセットスイッチ、設定速度を減速させるコーストスイッチ、ACC制御を中断させるキャンセルスイッチ、ACC制御が中断された場合に再びACC制御を再開させるリジュームスイッチ、設定速度を増速させるアクセルスイッチ、及び追従制御における先行車両との目標車間距離を設定する目標車間距離設定スイッチ等からなる。
【0027】
前記DSCコントローラ7は、ブレーキペダルが操作されたことを検知するブレーキペダルスイッチ71及び、図示省略の、ステアリング13の操舵角を検知する舵角センサ、ヨーレートセンサ、横加速度センサ、スロットル開度センサ、車輪速センサ、などからの出力信号を入力して、それらの信号から得られる情報に基づいてPCM6へ制御信号を出力してエンジン出力を制御すると共に、ブレーキ装置3へ制御信号を出力してブレーキアシスト機構31を作動させて各車輪Wへのブレーキ力を制御する。こうして、車輪Wの横滑りを抑制して、走行状態を安定させる。
【0028】
前記PCS/ACCコントローラ8は、PCSオン/オフスイッチ81からの信号及び前記PCM6を介したACC操作スイッチ63からの操作信号、車速センサ82及び障害物検知センサ4からの検知信号が入力され、PCS制御及びACC制御を行う。
【0029】
PCS/ACCコントローラ8は、PCSオン/オフスイッチ81からのオン信号を受信することでPCS制御を実行する。PCS制御においては、PCS/ACCコントローラ8は、障害物検知センサ4の検知信号等に基づいて、車両Vの前方に存在する先行車両やガードレール等の障害物を検知してその衝突可能性を予知し、衝突する可能性が高いときには、プリテンショナコントローラ9へ作動信号を出力して第1プリテンショナ機構2cを作動させると共に、DSCコントローラ7へ減速指示信号を出力してブレーキアシスト機構31を作動させて、車両Vを所定の第1減速度で断続的に減速させるようにブレーキ装置3を作動させる。それに加えて、PCS/ACCコントローラ8は、衝突する可能性が高いときには、メータユニット11及び警報ブザー12を制御して衝突する可能性が高い旨を運転者に報知する。こうすることで、乗員に体感警報を行うと共に、乗員を予め拘束し且つ車速を減速しておく。
【0030】
尚、衝突可能性は、車両Vが障害物に衝突するまでの予測時間によって判断する。すなわち、PCS/ACCコントローラ8は、障害物検知センサ4からの検知信号に基づいて、障害物までの距離、角度及び相対速度から衝突までに要する時間を算出し、その時間が所定時間よりも短いことをもって衝突可能性が高いと判断する。
【0031】
また、PCS/ACCコントローラ8は、ACC操作スイッチ63のACCメインスイッチからの操作信号(ACC制御を実行する旨の信号)を受信したときにACC制御を実行し、ACC制御においては、先行車両が存在しないときには車両Vを一定の目標速度で定速走行させる定速制御を、先行車両が存在するときに車両Vを先行車両に対して一定の目標車間距離を維持した状態で追従走行させる追従制御を行う。
【0032】
前記定速制御では、PCS/ACCコントローラ8は、ACC操作スイッチ63からの操作信号及び車速センサ82からの検知信号に基づいて、車両Vの車速が乗員が設定した目標車速となるように、PCM6へ加速/減速指示信号を、DSCコントローラ7へ減速指示信号を出力し、スロットル62及びブレーキ装置3を制御して車両Vを目標車速で走行させる。
【0033】
前記追従制御では、PCS/ACCコントローラ8は、ACC操作スイッチ63からの操作信号、車速センサ82からの検知信号及び障害物検知センサ4からの検知信号に基づいて、車両Vと先行車両との車間距離が乗員が設定した目標車間距離となるように、PCM6へ加速/減速指示信号を、DSCコントローラ7へ減速指示信号を出力し、スロットル62及びブレーキ装置3を制御して車両Vを先行車両と目標車間距離を維持した状態で追従走行させる。
【0034】
尚、前記定速制御は、車両Vの前方に先行車両が存在しないときにのみ行うことができ、先行車両が存在する場合は、前記追従制御へ自動的に切り替わる。
【0035】
前記プリテンショナコントローラ9は、シートベルト装置2の第1プリテンショナ機構2c及び第2プリテンショナ機構2dを作動させるものであって、該第1プリテンショナ機構2c及び第2プリテンショナ機構2dを作動制御する作動制御部91と、車両Vの積算使用時間を計測する積算使用時間計測部92と、第1プリテンショナ機構2c等の車両Vに搭載した作動機器の故障状態を検知する故障状態検知部93と、該第1プリテンショナ機構2c及び第2プリテンショナ機構2dの作動と該故障状態検知部93によって検知された第1プリテンショナ機構2c等の故障とをEEPROM95に記録する記録部94とを有する。
【0036】
前記作動制御部91は、前記PCS/ACCコントローラ8からの作動信号に基づいてシートベルト装置2の第1プリテンショナ機構2cを作動させると共に、衝突検知センサ98によって車両Vが障害物等に衝突したことが検知されたときにシートベルト装置2の第2プリテンショナ機構2dを作動させる。
【0037】
詳しくは、作動制御部91は、PCS/ACCコントローラ8からの作動信号を受信すると、電源96から供給される電流を制御して第1プリテンショナ機構2cの電動モータに通電することによって第1プリテンショナ機構2cを作動させて、ウエビング2aを所定の第1張力で巻き取らせる。
【0038】
また、作動制御部91は、衝突検知センサ98からの衝突検知信号を受信すると、第2プリテンショナ機構2dのインフレータに起動信号を出力することによって該インフレータを起動させてウエビング2aを所定の第2張力で巻き取らせる。こうすることで、乗員への衝突時の衝撃力を低減している。
【0039】
前記積算使用時間計測部92は、詳しくは後述するが、イグニッションスイッチ97がオンされてからオフされるまでの時間を計測している。このイグニッションスイッチ97のオンからオフまでの時間を積算することによって、車両Vが使用されている、即ちエンジンが運転状態であるときの積算使用時間を計測している。この積算使用時間計測部92が車両積算使用時間計測手段を構成する。
【0040】
前記故障状態検知部93は、プリテンショナコントローラ9に接続された前記PCM6、DSCコントローラ7、PCS/ACCコントローラ8、電源96、第1プリテンショナ機構2c及び第2プリテンショナ機構2dの故障状態を検知する。例えば、第1プリテンショナ機構2cであれば、電動モータに微弱電流を流して、通電状態を確認することで断線していないかを、突入電流が流れるか否かを確認することでモータの接点が固着していないかを検知している。電源96や第2プリテンショナ機構2dも断線していないかを検知している。またPCM6、DSCコントローラ7及びPCS/ACCコントローラ8は、それぞれが自己診断により故障の有無を検知している。すなわち、それぞれに接続された機器との通電状態や通信状態を確認したり、内部回路の通電状態を確認することで故障を検知している。そして、PCM6等は故障が検知されたときには故障信号を出力し、該故障信号を故障状態検知部93が受信することによってPCM6等の故障状態を検知するようになっている。この故障状態検知部93が故障状態検知手段を構成する。
【0041】
前記記録部94は、第1プリテンショナ機構2c及び第2プリテンショナ機構2dが作動したとき、ブレーキ装置3がPCS制御によって作動したとき及びエアバッグ(図示省略)が作動したときに、その作動を前記積算使用時間計測部92によって計測されている積算使用時間と対応付けてEEPROM95に記録する。詳しくは、作動制御部91からの作動信号及び起動信号が記録部94にも出力されており、記録部94はこれら作動信号及び起動信号を受けたときに、第1プリテンショナ機構2c及び第2プリテンショナ機構2dの作動を記録する。また、記録部94は、PCS/ACCコントローラ8がPCS制御においてDSCコントローラ7へ減速指示信号を出力するときに同時に出力される作動信号を受信することによって、PCS制御によるブレーキ装置3の作動を記録する。さらに、記録部94は、エアバッグの作動を検知するエアバッグセンサ99からの作動信号を受信することによって、エアバッグの作動を記録する。
【0042】
さらにまた、記録部94は、前記故障状態検知部93により各機器の故障が検知されたときに、その故障の発生を前記積算使用時間計測部92によって計測されている積算使用時間と対応付けてEEPROM95に記録する。
【0043】
つまり、この記録部94及びEEPROM95は作動状況記録手段及び故障状態記録手段を構成する。
【0044】
以下に、プリテンショナコントローラ9による作動状況記録について図3のフローチャートを用いて説明する。
【0045】
まず、ステップS1において、イグニッションスイッチがオンされたか否かを判定する。イグニッションスイッチがオンされたときには、前記積算使用時間計測部92が、EEPROM95に記録されている読み出し用の積算使用時間を読み込む(ステップS2)。この読み出し用の積算使用時間は、前回の作動状況記録が終了したときの車両Vの積算使用時間であって、作動状況記録を再開するときに読み出されるものである。つまり、後述する作動機器の作動及びそのときの積算使用時間の記録とは別に、次回の作動状況記録のために予め記録しておく積算使用時間である。尚、車両Vを購入後初めてイグニッションをオンにしたときには、EEPROM95には読み出し用の積算使用時間が記録されていないため、積算使用時間は零となる。
【0046】
続いて、ステップS3において、積算使用時間計測部92が積算使用時間の計測を開始する。詳しくは、イグニッションスイッチがオンとなってからの時間を読み込んだ前回までの積算使用時間に加算することで、積算使用時間を計測していく。
【0047】
そして、ステップS4において、積算使用時間計測部92は、ステップS3で積算使用時間の計測を始めてから所定の更新時間が経過したか否かを判定する。そして、更新時間が経過したとき(YES)には、ステップS5へ進んで、現在の積算使用時間をもってEEPROM95に記録されている読み出し用の積算使用時間を更新する。更新後は、ステップS3へ戻る。尚、更新時間を1度経過した後は、経過したときから再度、更新時間を経過するか判定する。つまり、ステップS3〜S5を繰り返すことで積算使用時間の計測を開始した後は、所定の更新時間が経過する毎にEEPROM95の読み出し用の積算使用時間が更新されていく。このように、積算使用時間を定期的に更新しておくことによって、イグニッションスイッチがオフされ、オフされるときに同時に積算使用時間が更新されていなかったとしても、オフされる直前に更新された積算使用時間を用いて次回以降も略正確な積算使用時間を計測し続けることができる。また、積算使用時間の更新を例えば制御周期毎に頻繁に行うのではなく、所定の更新時間毎に行うことによって、EEPROM95の積算使用時間を頻繁に書き換えることを防止して、EEPROM95の耐久性を向上させることができる。
【0048】
そして、ステップS6においては、第1プリテンショナ機構2c、第2プリテンショナ機構2d、ブレーキ装置3、エアバッグが作動したか否かを判定する(ただし、ブレーキ装置3は、PCS制御により作動したか否かを判定する)。作動したとき(YES)には、ステップS7において、各作動機器が作動したことをEEPROM95に記録すると共に、ステップS8において、その作動時に積算使用時間計測部92で計測されている積算使用時間を該作動と対応付けてEEPROM95に記録する。
【0049】
こうして、第1プリテンショナ機構2c等の作動機器が作動したことと、そのときの積算使用時間とが記録されると、ステップS9において、EEPROM95に記録されている読み出し用の積算使用時間を更新する。つまり、第1プリテンショナ機構2c等の作動機器が作動したときには、前記ステップS4の更新時間が経過したか否かに拘わらず、作動したときの積算使用時間をもってEEPROM95に記録されている読み出し用の積算使用時間を更新する。
【0050】
仮に、第1プリテンショナ機構2c等の作動機器が作動しても読み出し用の積算使用時間を更新せず、一律に、ステップS4の更新時間が経過したときのみ読み出し用の積算使用時間を更新するように構成すると、EEPROM95に記録される第1プリテンショナ機構2c等の作動が時系列上で逆転する虞がある。つまり、EEPROM95に読み出し用の積算使用時間tが記録されているとし、そこから所定の更新時間が経過する前の積算使用時間t+Δt1において第1プリテンショナ機構2cの1回目の作動があったとすると、EEPROM95には、第1プリテンショナ機構2cの1回目の作動と共に作動したときの積算使用時間t+Δt1が記録される。このとき、読み出し用の積算使用時間は時間tのままである。その後、読み出し用の積算使用時間tが更新されることなくイグニッションスイッチがオフされ、再びイグニッションスイッチがオンされると、EEPROM95から読み出し用の積算使用時間tが読み込まれて、該積算使用時間tから積算使用時間の計測が開始される(ステップS3参照)。ここで、積算使用時間t+Δt2において第1プリテンショナ機構2cの2回目の作動があったとすると、EEPROM95には第1プリテンショナ機構2cの2回目の作動と共に作動したときの積算使用時間t+Δt2が記録される。ここで、Δt2<Δt1であったとすると、t+Δt2<t+Δt1となり、実際には第1プリテンショナ機構2cの1回目の作動の後に2回目の作動があったにも拘わらず、EEPROM95においては1回目の作動よりも2回目の作動の方が積算使用時間上、先に発生したものとして記録されることになる。
【0051】
そこで、第1プリテンショナ機構2c等が作動したときにはEEPROM95の読み出し用の積算使用時間を必ず更新することによって、イグニッションスイッチが一旦オフになった後、再度オンになって積算使用時間の計測が再開されるときに、第1プリテンショナ機構2c等が作動した積算使用時間(例えば、前述のt+Δt1やt+Δt2)よりも前の時間(例えば、前述のt)から積算使用時間の計測が再開されることを防止し、第1プリテンショナ機構2c等の作動を時系列上で順番通りに記録することができる。
【0052】
ステップS9において読み出し用の積算使用時間の更新が完了したとき、又はステップS6において第1プリテンショナ機構2c等の作動機器が作動していない(NO)ときにはステップS10へ進む。
【0053】
ステップS10においては、故障状態検知部93によってシステムや各作動機器の故障が検知されたか否かを判定する。そして、故障が検知されたとき(YES)には、ステップS11において、故障が検知されたことをEEPROM95に記録すると共に、ステップS12において、故障が検知時に積算使用時間計測部92で計測されている積算使用時間を該故障の検知と対応付けてEEPROM95に記録する。
【0054】
こうして、システムや各作動機器の故障が検知されたことと、そのときの積算使用時間とが記録されると、ステップS5へ進み、EEPROM95の読み出し用の積算使用時間を更新する。つまり、システムや各作動機器の故障が検知されたときには、前記ステップS4の更新時間が経過したか否かに拘わらず、故障が検知されたときの積算使用時間をもってEEPROM95に記録されている読み出し用の積算使用時間を更新する。こうすることで、前記第1プリテンショナ機構2c等の作動と同様に、イグニッションスイッチがいつオフにされても、システムや作動機器の故障の検知がEEPROM95において時系列上で逆転して記録されることを防止することができる。
【0055】
一方、ステップS10においてシステムの故障が検知されていないときには、ステップS3へ戻り、前記のステップを繰り返す。
【0056】
そして、イグニッションスイッチがオフされたときに、前記の作動状況記録は停止する。
【0057】
このように、イグニションスイッチがオン状態である間は、車両Vの積算使用時間を計測すると共に、第1プリテンショナ機構2c等の作動機器の作動及び故障をそのときの積算使用時間と対応付けてEEPROM95に記録していく。こうすることで、車両Vの積算使用時間に対する第1プリテンショナ機構2c等の作動機器の作動状況及び故障状態を記録することができ、その作動状況等から第1プリテンショナ機構2c等の耐久性を解析することができる。また、併せて各作動機器の故障を積算使用時間と対応付けてEEPROM95に記録しているため、各作動機器の故障が発生する前後において第1プリテンショナ機構2c等の作動機器がどのような作動状況にあったかを解析することもできる。尚、これら耐久性のみに限られず、積算使用時間と関連した種々の解析を行うことができる。
【0058】
また、積算使用時間として、イグニッションスイッチ97がオンされてからオフされるまでの間の時間を積算することによって、エンジンが停止中の時間も積算使用時間として積算するのではなく、エンジンが運転状態である時間だけを積算使用時間として簡単に計測することができる。
【0059】
さらに、次回の作動状況記録で用いるための読み出し用の積算使用時間は、所定の更新時間毎に更新されていくため、EEPROM95に過度な負荷を与えることなく、EEPROM95の耐久性を向上させることができる。また、第1プリテンショナ機構2c等の作動機器の作動や故障が検知されたときには、そのときの積算使用時間をもって読み出し用の積算使用時間を更新するようにしているため、作動機器の作動や故障を時系列上で順番通りに記録することができる。
【0060】
尚、前記実施形態では、作動機器として前記第1プリテンショナ機構2c、第2プリテンショナ機構2d、ブレーキ装置3、エアバッグの作動状況を記録するように構成されているがこれに限られるものではない。すなわち、その他の車載作動機器の作動状況を記録するように構成してもよい。
【0061】
また、故障状態についても、前記第1プリテンショナ機構2cや前記PCM6以外の機器の故障状態を検知し且つ記録するように構成してもよい。また、前記故障状態検知部93による故障状態の検知も前記の方法に限られるものではなく、作動機器等の故障が検知できる方法であれば任意の方法を採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上説明したように、本発明は、作動機器の作動状況を車両の積算使用時間と共に記録することができるため、作動機器の耐久性等、車両の使用の程度と関連した解析を行う上で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施形態に係る車両状況記録装置を搭載した車両を示す概略図である。
【図2】車両状況記録装置の制御系を示すブロック図である。
【図3】作動状況記録のフローチャートである。
【符号の説明】
【0064】
2c 第1プリテンショナ機構(作動機器)
2d 第2プリテンショナ機構(作動機器)
3 ブレーキ装置(作動機器)
6 PCS/ACCコントローラ(車両衝突予知手段)
92 積算使用時間計測部(車両積算使用時間計測手段)
93 故障状態検知部(故障状態検知手段)
94 記録部(作動状況記録手段、故障状態記録手段)
95 EEPROM(作動状況記録手段、故障状態記録手段)
97 イグニッションスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された作動機器と、
該作動機器が作動したことを記録する作動状況記録手段と、
車両の積算使用時間を計測する車両積算使用時間計測手段とを備え、
前記作動状況記録手段は、前記作動機器の作動を、その作動時に前記車両積算使用時間計測手段によって計測されている車両の積算使用時間と対応付けて記録することを特徴とする車両状況記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両状況記録装置において、
前記車両積算使用時間計測手段は、車両のイグニッションスイッチがオンされてからオフされるまでの時間を積算することによって車両の積算使用時間を計測することを特徴とする車両状況記録装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両状況記録装置において、
前記作動機器の故障を検知する故障状態検知手段と、
前記故障状態検知手段によって検知された故障を、その検知時に前記車両積算使用時間計測手段によって計測されている車両の積算使用時間と対応付けて記録する故障状態記録手段とをさらに備えることを特徴とする車両状況記録装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1つに記載の車両状況記録装置において、
車両が物体に衝突することを予知する車両衝突予知手段をさらに備え、
前記作動機器は、前記車両衝突予知手段によって衝突が予知されたときに乗員を拘束するシートベルトプリテンショナ機構であることを特徴とする車両状況記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−237772(P2007−237772A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−59326(P2006−59326)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】