説明

車両用バッテリ装置

【課題】車両のリアシートの後方に搭載され、充放電可能なバッテリを備える車両用バッテリ装置において、車両が放置されたときでも、バッテリから漏れた電解液を容易に気化させることができるようにする。
【解決手段】車両用バッテリ装置30は、車両10の放置を検知する車両放置検知部と、バッテリ50からリアシート42の後部上方の車室へと空気が流れるように形成された流路60と、流路60を開閉するバルブ62と、を有する。車両放置検知部が車両10の放置を検知した場合、バルブ62が開く。これにより、バッテリ50で暖められた空気が上昇し、流路60を介してアッパーバック44へと流れるので、バッテリ50から漏れた電解液が気化し易くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のリアシートの後方に搭載され、充放電可能なバッテリを備える車両用バッテリ装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
モータの出力で走行する車両、例えばハイブリッド自動車及び電気自動車は、モータの電源として充放電可能なバッテリを有する車両用バッテリ装置を搭載している。
【0003】
バッテリは、電解液を封入した複数のセル(単電池)を直列に接続して構成されるモジュールを複数有し、これらのモジュールを更に直列に接続して構成される。この構成により、バッテリは、モータが必要とする高電圧を確保し、モータに電力を供給している。
【0004】
下記特許文献1には、電池から漏洩した電解液が気化することにより発生する臭気が車室内に侵入することを防止するために、電池を収容した筐体と車室内とを連通させる連通部に、空気中の臭気成分を捕集する脱臭手段を設けた脱臭システムが記載されている。
【0005】
下記特許文献2には、車室内のリアシートの後方に配置された電池と車室とをダクトで連通させ、冷却ファンにより車室内の空気を電池に送り、電池を冷却する電池の冷却装置が記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2007−223575号公報
【特許文献2】特開2006−188182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載のように、バッテリから電解液が漏洩する場合がある。例えば、車両走行時の振動などによりバッテリとこれの端子との接合部を封止しているシール部が破れ、そこから電解液がバッテリの外部に滲み出る場合がある。上記特許文献2のような冷却装置で強制的にバッテリに空気が送られるのであれば、バッテリの外部に滲み出た電解液は気化し易い。しかしながら、冷却装置が停止してしまう場合、例えば車両が放置された場合、バッテリに空気が送られなくなり、バッテリの外部に滲み出た電解液は気化し難くなり、そこに溜まってしまう。そうすると、電解液を介して正極と負極との間で短絡(液絡)が発生してしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、車両が放置されたときでも、バッテリの外部に滲み出た電解液を容易に気化させることができる車両用バッテリ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、車両のリアシートの後方に搭載され、充放電可能なバッテリを備える車両用バッテリ装置において、車両の放置を検知する車両放置検知部と、バッテリからリアシートの後部上方の車室へと空気が流れるように形成された流路と、流路を開閉するバルブと、を有し、車両放置検知部が車両の放置を検知した場合、バルブが開く、ことを特徴とする。
【0010】
また、リアシートの下部から車室の空気をバッテリに送るファンと、バッテリからこれを収容するケースへの漏電を検出する漏電検出部と、を有し、車両放置検知部が車両の放置を検知するとともに、漏電検出部が漏電を検出したことを条件として、ファンを動作させることができる。
【0011】
また、車室の温度を検出する温度検出部と、検出温度が所定値以上であるか否かを判断する温度判断部と、を有し、ファンが動作する条件として、さらに、検出温度が所定値以上であると温度判断部が判断したことを含むことができる。
【0012】
また、車室の湿度を検出する湿度検出部と、検出湿度が所定値以下であるか否かを判断する湿度判断部と、を有し、ファンが動作する条件として、さらに、検出湿度が所定値以下であると湿度判断部が判断したことを含むことができる。
【0013】
さらに、バッテリをリチウムイオン二次電池とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の車両用バッテリ装置によれば、車両が放置されたときでも、セルの外部に滲み出た電解液を容易に気化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る車両用バッテリ装置の実施形態について、図面に従って説明する。なお、本発明に係る実施形態では、モータの出力により走行する車両の一例としてハイブリッド車両を挙げ、これに搭載される車両用バッテリ装置について説明する。
【0016】
まず、本実施形態に車両用バッテリ装置を搭載するハイブリッド車両(以下、単に、車両と記す)10の構成について、図1を用いて説明する。車両10は、原動機として内燃機関(以下、エンジンと記す)12と、第一のモータ(以下、第一MGと記す)14と、第二のモータ(以下、第二MGと記す)16とを有する。原動機12,14,16には、これらの動力を分配、統合する動力分配統合機構18が接続されている。動力分配統合機構18には、減速機構20を介して駆動輪22が接続されている。各原動機12,14,16の動力は、動力分配統合機構18により統合された後、減速機構20を介して駆動輪22に伝達され、車両10が走行する。
【0017】
車両10は、エンジン12と第一及び第二MG14,16の出力を制御することにより、様々な態様の走行を行うことができる。例えば、エンジン12または第二MG16のどちらか一方で走行する、エンジン12と第二MG16とを協調して走行する、またエンジン12の出力の一部により第一MG14で発電を行うなど様々な態様の走行を行うことができる。さらに、減速時において、駆動輪22から入力される車両10の運動エネルギにより第二MG16で回生発電を行うこともできる。
【0018】
第一及び第二MG14,16は、発電機として機能するとともに、電動機として機能する同期モータである。第一及び第二MG14,16は、第一及び第二インバータ24,26を介して車両用バッテリ装置(以下、単にバッテリ装置と記す)30に接続される。バッテリ装置30は、充放電可能なバッテリを有し、バッテリは、例えばニッケル水素二次電池またはリチウムイオン二次電池などで構成される。バッテリ装置30に蓄えられる電力は、第一及び第二インバータ24,26により直流電流から三相交流電流に変換された後に、第一及び第二MG14,16に供給されて、これらのMG14,16を駆動する。また、回生時に第一及び第二MG14,16で発電された電力は、第一及び第二インバータ24,26により三相交流電流から直流電流に変換された後に、バッテリ装置30に送られて蓄えられる。このように、第一及び第二MG14,16は、電動機および発電機として機能することができる。
【0019】
車両10は、車両の状態と運転者の要求とに基づき運転を行なうよう制御する電子制御装置(ECU)40を有する。電子制御装置40は、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUのほかに処理プログラムを記憶するROM(図示せず)と、データを一時的に記憶するRAM(図示せず)とを備える。
【0020】
電子制御装置40には、エンジン12、第一及び第二MG14,16、第一及び第二インバータ24,26、そしてバッテリ装置30が接続されている。エンジン12には、このエンジン12の運転状態を検出するセンサ、例えば回転速度センサ(図示せず)が設けられており、このセンサから信号が電子制御装置40に入力される。第一及び第二MG14,16には、これらのMG14,16の運転状態を検出するセンサ、例えば回転速度センサ(図示せず)が設けられており、このセンサから信号が電子制御装置40に入力される。バッテリ装置30には、この装置30の状態を検出する各種センサが設けられている。各種センサから信号が電子制御装置40に入力される。
【0021】
電子制御装置40は、上述した信号に基づき車両10の状態を判断する。そして、電子制御装置40は、この車両10の状態と運転者の要求とを総合して、原動機の駆動力を決定し、エンジン12と第一及び第二インバータ24,26に制御信号を出力する。これにより、エンジン12と第一及び第二MG14,16の出力配分が最適に制御される。なお、運転者の要求は、運転者が操作する入力手段、例えばイグニッションスイッチ、アクセルペダル、ブレーキペダル、およびシフトレバーから送られる信号に基づき判断される。
【0022】
次に、バッテリ装置30の概略構成について図2を用いて説明する。図2は本実施形態に係る車両10を示す後部側面図である。
【0023】
車両10は、車室にリアシート42と、リアシート42の後部上方にアッパーバック44と、車両10の後部にトランクルーム46とを有する。リアシート42とトランクルーム46との間であって、アッパーバック44の下方にバッテリ装置30が搭載されている。
【0024】
バッテリ装置30は、バッテリ50と、バッテリ50を収容する金属製のケース52とを有する。
【0025】
一般的なバッテリは、高温になると寿命が短くなる性質がある。そこで、バッテリ装置30は、バッテリ50が高温になることを抑制するために、バッテリ50を冷却することができる構造を有している。すなわち、バッテリ装置30は、車室側のリアシート42の下部からバッテリ30へと連通し、車室の空気をバッテリ30に導入する導入路54と、バッテリ30から車両10の外部に連通し、バッテリ30で暖まった空気を車両10の外部へ輩出する排出路56とを有する。そして、排出路56には、ファン58が設けられている。ファン58の動作により、図中の実線の矢印のように、導入路54を介して車室の空気が強制的にバッテリ50に送りこまれ、バッテリ50で暖まった空気が排出路56を介して強制的に車両10の外部に排出される。
【0026】
従来技術で述べたように、バッテリ50から電解液が漏洩する場合がある。ファン58が動作しているのであれば、バッテリ50に強制的に送られた空気により、漏洩した電解液は気化し易くなり、電解液を介して発生する短絡を抑制することができる。しかしながら、車両10が放置された場合、ファン58は停止してしまう。そうすると、バッテリ50から漏洩した電解液を介して短絡が発生してしまうという問題があった。この問題を解決するため、本実施形態に係るバッテリ装置30は、以下のような構成を有する。
【0027】
本実施形態に係るバッテリ装置30は、バッテリ50からアッパーバック44へと空気が流れるように形成された流路60を有する。流路60は2本形成されている。一方の流路60は、一端が導入路54に接続し、他端がアッパーバック44に開放している。他方の流路60は、一端が排出路56に接続し、他端がアッパーバック44に開放している。これらの流路60の他端側には、流路60を開閉するバルブ62がそれぞれ設けられている。バルブ62の開閉動作は、車両10が運転中であるか放置されているかに基づいて行われる。すなわち、バッテリ装置30は、車両10の放置を検知する車両放置検知部(図示せず)を有し、この車両放置検知部が車両10の放置を検知した場合、バルブ62が開く。一方、車両放置検知部が車両10の放置を検知しない場合、すなわち運転中の場合、バルブ62は閉じた状態である。車両放置検知部は、イグニッションスイッチがオフになると、車両10の放置を検知する。
【0028】
この構成によれば、車両10が放置されているとき、バルブ62が開いて流路60の他端がアッパーバック44に開放する。車両10が放置された直後は、まだバッテリ50の温度が高い。そうすると、図中の破線の矢印のように、バッテリ50で暖められた空気が上昇し、流路60を介してアッパーバック44へと流れる。そうすると、従来技術で述べたように、バッテリ50の外部に電解液が滲み出たとしても、バッテリ50の表面では空気が流れているので、その電解液が気化し易くなる。したがって、バッテリ50の外部に漏洩し溜まる電解液が減るため、電解液を介して発生する短絡の要因を減らすことができる。
【0029】
次に、確実に短絡を防止することに重点をおいた別の態様のバッテリ装置30について図3及び4を用いて説明する。図3は、別の態様の車両10を示す後部側面図である。図4は、バッテリ50の回路図である。なお、上記実施形態と同様の構成要素には同一の記号を付し、詳細な説明は省略する。
【0030】
この実施形態においては、ファン58が導入路54に設けられる。そして、排出路56には、排出路56を開閉する切換バルブ64が設けられる。切換バルブ64の開閉動作は、車両10が運転中であるか放置されているかに基づいて行われる。
【0031】
すなわち、車両放置検知部が車両10の放置を検知しない場合、言い換えれば運転中の場合、バルブ62は開いた状態である。車両10の運転中の場合、ファン58が動作するので、車室から導入路54を介してバッテリ50に導入された空気は、排出路56を介して車両10の外部に放出される。これにより、バッテリ50は冷却される。
【0032】
一方、車両放置検知部が車両10の放置を検知した場合、バルブ62が閉じてバッテリ50と車両10の外部とが遮断される。なお、車両10が放置されている場合のファン58の動作については後述する。
【0033】
車両10が放置された場合について詳述する。車両10が放置された場合、バルブ62が開き、切換バルブ64が閉じる。そうすると、上記実施形態において述べたように、バッテリ50で暖められた空気が流路60を介してアッパーバック44へと流れるので、バッテリ50から漏れた電解液が気化し易くなる。
【0034】
本実施形態に係るバッテリ装置30は、図4に示すように、バッテリ50の電気回路とケース52と車両10とをそれぞれ電気的に接続し、バッテリ50からケース52への漏電を検出する漏電検出部70を有する。漏電検出部70が漏電を検出したときは、バッテリ50から漏れた電解液が原因で漏電が発生した場合と推定される。よって、車両放置検知部が車両10の放置を検知するとともに、漏電検出部70が漏電を検出したことを条件として、ファン58を動作させる。これにより、図3中の実線の矢印のように、空気がバッテリ50に強制的に送られ、その空気がアッパーバック44へと流れる。そうすると、バッテリ50の表面に空気が流れるので、バッテリ50から漏れた電解液を確実に気化させることができる。
【0035】
なお、漏電検出部70で漏電が検出されなくなった場合、ファン58は停止する。バッテリ50から漏れた電解液が気化してしまい、バッテリ50の表面が乾いたと推定することができるからである。また、ファン58の動力源である電力の消費を抑制することもできる。
【0036】
また、バッテリ装置30は、車室の温度を検出する温度検出部(図示せず)と、検出温度が所定値以上であるか否かを判断する温度判断部(図示せず)とを有する。車室の温度が高い方が、バッテリ50から漏れた電解液が気化し易い。よって、車両10の放置時にファン58が動作する条件として、検出温度が所定値以上であること温度判断部が判断したことを含むことができる。これにより、少ない電力で効率よく電解液を気化させることができる。
【0037】
さらに、バッテリ装置30は、車室の湿度を検出する湿度検出部(図示せず)と、検出湿度が所定値以下であるか否かを判断する湿度判断部(図示せず)とを有する。車室の湿度が低い方が、バッテリ50から漏れた電解液が気化し易い。よって、車両10の放置時にファン58が動作する条件として、検出湿度が所定値以下であること湿度判断部が判断したことを含むことができる。これにより、少ない電力で効率よく電解液を気化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本実施形態に係るハイブリッド車両の構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係る車両を示す後部側面図である。
【図3】別の態様の車両を示す後部側面図である。
【図4】バッテリの回路図である。
【符号の説明】
【0039】
10 ハイブリッド車両、30 車両用バッテリ装置、42 リアシート、44 アッパーバック、50 バッテリ、52 ケース、54 導入路、56 排出路、58 ファン、60 流路、62 バルブ、70 漏電検出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のリアシートの後方に搭載され、充放電可能なバッテリを備える車両用バッテリ装置において、
車両の放置を検知する車両放置検知部と、
バッテリからリアシートの後部上方の車室へと空気が流れるように形成された流路と、
流路を開閉するバルブと、
を有し、
車両放置検知部が車両の放置を検知した場合、バルブが開く、
ことを特徴とする車両用バッテリ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用バッテリ装置において、
リアシートの下部から車室の空気をバッテリに送るファンと、
バッテリからこれを収容するケースへの漏電を検出する漏電検出部と、
を有し、
車両放置検知部が車両の放置を検知するとともに、漏電検出部が漏電を検出したことを条件として、ファンが動作する、
ことを特徴とする車両用バッテリ装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用バッテリ装置において、
車室の温度を検出する温度検出部と、
検出温度が所定値以上であるか否かを判断する温度判断部と、
を有し、
ファンが動作する条件として、さらに、検出温度が所定値以上であると温度判断部が判断したことを含む、
ことを特徴とする車両用バッテリ装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の車両用バッテリ装置において、
車室の湿度を検出する湿度検出部と、
検出湿度が所定値以下であるか否かを判断する湿度判断部と、
を有し、
ファンが動作する条件として、さらに、検出湿度が所定値以下であると湿度判断部が判断したことを含む、
ことを特徴とする車両用バッテリ装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の車両用バッテリ装置において、
バッテリはリチウムイオン二次電池である、
ことを特徴とする車両用バッテリ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−69990(P2010−69990A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237903(P2008−237903)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】