説明

車両用制御装置

【課題】本発明は、路面の状況の変化にかかわらず、常に先行車や障害物との距離を検出して精度の高い先行エリア状態検出制御を行い得る車両用制御装置を実現することを目的としている。
【解決手段】このため、レーダにより車両前方に先行する車両、あるいは障害物があるかどうかを検出する先行エリア状態検出手段と、この先行エリア状態検出手段により検出された先行エリアの状態に応じて車両を制御する車両制御手段とを備えた車両用制御装置において、車両に発生するピッチング量を検出するピッチング量検出手段と、このピッチング量検出手段により検出されたピッチング量に応じて、レーダの照射角を制御する照射角制御手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両用制御装置に係り、特にレーダによって先行車や障害物との距離を検出する車両用制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両には、レーダを搭載し、このレーダを用いて先行車までの距離や障害物までの距離を検出するものがある。
そして、このような車両においては、検出した距離結果から、先行車との適切な車間距離を維持するための車間距離維持制御や、先行車や障害物への接触を避けるためにブレーキを自動的に掛ける自動制動制御を行うものもある。
【0003】
【特許文献1】特開2000−353300号公報
【特許文献2】特開2003−112620号公報
【特許文献3】特開2004−347574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の車両用制御装置においては、図4(a)に示す如く、車両101の先端部位にレーダからなる先行エリア状態検出手段102を設け、この先行エリア状態検出手段102により車両前方に先行する車両、あるいは障害物103があるかどうかを検出している。
しかし、前記車両用制御装置を動作させて走行した際に、先行車が存在するにもかかわらず検知しない場合や、障害物に接近しても自動的にブレーキが掛からない場合などの状況が発生する。
そして、先行車を正しく検知できない場合には、ドライバの予期せぬ加速制御が行われ、先行車に接近し過ぎてしまうとともに、また、障害物を検知できない場合には、衝突被害の軽減効果を十分に発揮できないという本来よりも機能性が低下してしまうという不都合がある。
【0005】
その要因としては、路面のギャップや車両の加速、減速により車体がピッキングを起こすため、このピッキングに合わせてレーダからなる前記先行エリア状態検出手段102の光軸104が上下にずれることとなり、先行車や障害物を検知できなくなってしまい、いわゆるロストしてしまうためと考えられる。
つまり、このロスト状況としては、図4(b)に示す如き車体が上を向いた状態や図4(c)に示す如き車体が下を向いた状態である。
このとき、従来の車両用制御装置において、車両に搭載されるレーダからなる前記先行エリア状態検出手段は、ブラケットにて車両に固定され、先行エリア状態検出手段の光軸を調整するための1本〜4本のボルトが設けられている。
そして、停車状態で正面方向へ光軸が指向するように調整し、対象を正確に検知できるように設定されている。
この結果、上述した構造では、車両がピッチングを起こした際に光軸が上下することは避けられず、上述のロスト状況が発生してしまうという不都合がある。
【0006】
この発明の目的は、路面の状況の変化にかかわらず、常に先行車や障害物との距離を検出して精度の高い先行エリア状態検出制御を行い得る車両用制御装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、この発明は、上述不都合を除去するために、レーダにより車両前方に先行する車両、あるいは障害物があるかどうかを検出する先行エリア状態検出手段と、この先行エリア状態検出手段により検出された先行エリアの状態に応じて車両を制御する車両制御手段とを備えた車両用制御装置において、車両に発生するピッチング量を検出するピッチング量検出手段と、このピッチング量検出手段により検出されたピッチング量に応じて、レーダの照射角を制御する照射角制御手段とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上詳細に説明した如くこの本発明によれば、レーダにより車両前方に先行する車両、あるいは障害物があるかどうかを検出する先行エリア状態検出手段と、先行エリア状態検出手段により検出された先行エリアの状態に応じて車両を制御する車両制御手段とを備えた車両用制御装置において、車両に発生するピッチング量を検出するピッチング量検出手段と、ピッチング量検出手段により検出されたピッチング量に応じて、レーダの照射角を制御する照射角制御手段とを備えている。
従って、路面の状況が変化(例えば、段差の連続やうねりがある場合など)しても、常に先行車や障害物との距離を検出することができる。
これにより、精度の高い先行エリア状態検出制御を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下図面に基づいてこの発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例】
【0010】
図1〜図3はこの発明の実施例を示すものである。
図1において、1は車両用制御装置である。
この車両用制御装置1は、レーダにより車両前方に先行する車両、あるいは障害物があるかどうかを検出する先行エリア状態検出手段2と、この先行エリア状態検出手段2により検出された先行エリアの状態に応じて車両を制御する車両制御手段3とを備えている。
このとき、前記先行エリア状態検出手段2は、レーダにより車両前方に先行する車両、あるいは障害物があるかどうかを検出し、先行する車両、あるいは障害物がある場合には、車両、あるいは障害物までの距離および相対速度などを測定し、後述する加減速量・タイミング検出手段6へ出力する。方式としては、レーザ、ミリ波等がある。
また、前記車両制御手段3は、先行車との車間距離維持制御、あるいは先行車や障害物への接触を避けるための自動制動制御の少なくともどちらか一方から構成されている。
【0011】
前記車両用制御装置1は、車両に発生するピッチング量を検出するピッチング量検出手段4と、このピッチング量検出手段4により検出されたピッチング量に応じて、レーダの照射角を制御する照射角制御手段5とを備えている。
詳述すれば、前記車両用制御装置1は、図1に示す如く、前記車両制御手段3を有するとともに、この車両制御手段3に例えば照射角制御手段5を内蔵して設ける。
そして、車両制御手段3の入力側には、図1に示す如く、前記ピッチング量検出手段4と、加減速量・タイミング検出手段6と、変動要因検出手段7と、加重センサ8と、回転角センサ9とを接続する。
このとき、前記ピッチング量検出手段4は、車両に発生するピッチング量(「ピッチング角」とも換言可能である。)を検出し、検出したピッチング量を前記車両制御手段3の照射角制御手段5に出力する。
また、前記加減速量・タイミング検出手段6は、「ACC、衝突軽減ブレーキコントローラ」とも称されるものであり、加減速タイミングや加減速量を前記車両制御手段3の照射角制御手段5に出力する。
更に、前記変動要因検出手段7は、乗員数や着座位置を検出し、この検出結果を前記車両制御手段3の照射角制御手段5に出力する。
更にまた、前記加重センサ8は、サスペンションダンパの加重状態を検出するものであり、各ホイルへの加重や加重バランスを前記車両制御手段3の照射角制御手段5に出力する。
前記回転角センサ9は、前記先行エリア状態検出手段2の回転角を検出し、この検出結果を前記車両制御手段3の照射角制御手段5に出力する。
【0012】
また、前記車両制御手段3の出力側には、図1に示す如く、モータドライバ10を接続する。
そして、このモータドライバ10にモータ11を接続するとともに、モータ11を前記先行エリア状態検出手段2に設け、この先行エリア状態検出手段2には前記回転角センサ9を設ける。
このとき、前記モータドライバ10は、前記照射角制御手段5からの制御信号を入力し、前記モータ11に駆動信号を出力する。
また、このモータ11は、前記先行エリア状態検出手段2に取り付けられており、この先行エリア状態検出手段2、つまりレーダを上下方向に動作させて調整する。
【0013】
そして、前記照射角制御手段5による照射角制御は、車両制御手段3が動作することによる車両が加減速するタイミングに合わせて行う。
また、前記照射角制御手段5は、前記ピッチング量検出手段4により検出されたピッチング量と、少なくとも乗員数、乗車位置、積載量などを検出する前記変動要因検出手段7により検出された変動要因とを用いて算出されたピッチング量算出値に応じて制御される。
【0014】
次に、図2の単独で走行している場合のフローチャートに沿って作用を説明する。
【0015】
単独で走行している場合に制御用プログラムがスタート(A01)すると、前記変動要因検出手段7により乗員数、乗車位置、積載量などを検出する処理(A02)に移行する。
追記すれば、走行した際のピッチング量は、乗員数、乗車位置、荷物の積載量などによって異なる。
そこで、ドライバ1人状態を基本とし、サスペンションダンパにかかる圧力や座席毎の乗員検知により荷物の積載量、乗員数、前後軸重のパランス等を検知し、これらが基本の状態に対してどの程度車体のピッチングに影響するかを予め求め、検出された乗員数、乗車位置、積載量などを反映させるべく前記車両制御手段3によって制御する。
【0016】
そして、上述の前記変動要因検出手段7により乗員数、乗車位置、積載量などを検出する処理(A02)の後には、前記ピッチング量検出手段4によりピッチング発生の有無を検出する判断(A03)に移行する。
この判断(A03)がNOの場合には、判断(A03)がYESとなるまで判断(A03)を繰り返し行う。
また、判断(A03)がYESの場合には、前記車両制御手段3の照射角制御手段5が、前記ピッチング量検出手段4により検出されたピッチング量から前記モータ11の駆動量を算出する処理(A04)に移行する。
そして、この処理(A04)の後には、モータ駆動の処理(A05)に移行する。
このモータ駆動の処理(A05)は、前記車両制御手段3の照射角制御手段5から前記モータドライバ10へ制御信号を出力し、このモータドライバ10によって前記モータ11を駆動させ、前記先行エリア状態検出手段2、つまりレーダが正面方向に指向するように制御するものである。
上述のモータ駆動の処理(A05)の後には、制御用プログラムのエンド(A06)に移行する。
【0017】
また、図3の車間距離制御を行っている場合のフローチャートに沿って作用を説明する。
【0018】
なお、この図3においては、車間距離制御を行っている場合について説明するが、追突軽減ブレーキが作動するように制御している場合、つまり、前記車両制御手段3によって、先行車や障害物への接触を避けるための自動制動制御を行っている場合として勘案することも可能である。
【0019】
車間距離制御を行っている場合に制御用プログラムがスタート(B01)すると、前記変動要因検出手段7により乗員数、乗車位置、積載量などを検出する処理(B02)に移行する。
そして、上述の前記変動要因検出手段7により乗員数、乗車位置、積載量などを検出する処理(B02)の後には、先行車・障害物との状態を計算する処理(B03)に移行する。
この処理(B03)は、レーダからなる前記先行エリア状態検出手段2からの車間距離や相対速度の入力により、前記加減速量・タイミング検出手段6が先行車や障害物に対して加減速制御の必要、衝突の可能性を計算するものである。
【0020】
また、先行車・障害物との状態を計算する処理(B03)の後には、加減速制御を行うか否かの判断(B04)に移行する。
この判断(B04)は、上述の(B03)の計算結果により加減速制御を行う必要があるか否かを判断するものである。
更に、判断(B04)がNOの場合には、判断(B04)がYESとなるまで判断(B04)を繰り返し行う。
また、判断(B04)がYESの場合には、加減速量・タイミング算出の処理(B05)に移行する。
この処理(B05)は、前記加減速量・タイミング検出手段6が加減速量とタイミングとを計算するものである。
【0021】
そして、処理(B05)の後には、ピッチング量・モータ駆動量算出の処理(B06)に移行する。
この処理(B06)は、前記車両制御手段3の照射角制御手段5が、加減速量や乗員数、着座位置、積載量の情報からピッチング量を計算し、この計算したピッチング量に応じて前記モータ11の駆動量を算出するものである。
【0022】
この処理(B06)の後には、加減速タイミングか否かの判断(B07)に移行する。
そして、判断(B07)がNOの場合には、判断(B07)がYESとなるまで判断(B07)を繰り返し行う。
また、判断(B07)がYESの場合には、モータ駆動の処理(B08)に移行する。
このモータ駆動の処理(B08)は、前記車両制御手段3の照射角制御手段5から前記モータドライバ10へ制御信号を出力し、このモータドライバ10によって前記モータ11を駆動させ、前記先行エリア状態検出手段2、つまりレーダが正面方向に指向するように制御するものである。
上述のモータ駆動の処理(B08)の後には、制御用プログラムのエンド(B09)に移行する。
【0023】
上述した図3の車間距離制御を行っている場合のフローチャートについては、車体がピッチングしてからレーダからなる前記先行エリア状態検出手段2の傾きを制御するフィードバック制御ではなく、システム自体の推定による予測制御である。
また、追突軽減ブレーキが作動するように制御している場合、つまり、前記車両制御手段3によって、先行車や障害物への接触を避けるための自動制動制御を行っている場合には、大きな減速度を発生させることとなるため、ピッチング速度も速く、通常にフィードバック制御を行うだけでは遅れが生じてしまう。
このとき、予測制御であれば、ピッチングに遅れが生ずることなく、制御することが可能であるので、障害物のロストを防止するのに非常に効果的である。
【0024】
これにより、レーダにより車両前方に先行する車両、あるいは障害物があるかどうかを検出する先行エリア状態検出手段2と、この先行エリア状態検出手段2により検出された先行エリアの状態に応じて車両を制御する車両制御手段3とを備えた車両用制御装置1において、車両に発生するピッチング量を検出するピッチング量検出手段4と、このピッチング量検出手段4により検出されたピッチング量に応じて、レーダの照射角を制御する照射角制御手段5とを備えている。
従って、路面の状況が変化(例えば、段差の連続やうねりがある場合など)しても、常に先行車や障害物との距離を検出することができる。
これにより、精度の高い先行エリア状態検出制御を実現することができる。
【0025】
また、前記車両制御手段3は、先行車との車間距離維持制御、あるいは先行車や障害物への接触を避けるための自動制動制御の少なくともどちらか一方から構成されている。
従って、精度の高い車間距離維持制御や、自動制動制御を実現することができる。
【0026】
更に、前記照射角制御手段5による照射角制御は、車両制御手段3が動作することによる車両が加減速するタイミングに合わせて行っている。
従って、前記車両制御手段3により制御される量(例えば、加減速の量、タイミング)に基づいて、レーダの照射方向が正常な状態に維持できる制御量を予め算出しているので、直ちに前記車両制御手段3による車両の変化に追従するように制御することが可能である。
【0027】
更にまた、前記照射角制御手段5は、ピッチング量検出手段4により検出されたピッチング量と、少なくとも乗員数、乗車位置、積載量などを検出する変動要因検出手段7により検出された変動要因とをを用いて算出されたピッチング量算出値に応じて制御されている。
従って、乗員数、乗車位置、荷物の積載量に応じて、車両の上下方向の傾きが変化しても、この変化に追従できるような補正手段を備えているので、精度の高いレーダの照射角制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の実施例を示す車両用制御装置のシステム図である。
【図2】単独で走行している場合のフローチャートである。
【図3】車間距離制御を行っている場合のフローチャートである。
【図4】この発明の従来技術のピッチングによる先行車・障害物のロストを示し、(a)は平坦な路面の場合の説明図、(b)は車体が上を向いた状態の説明図、(c)は車体が下を向いた状態の説明図である。
【符号の説明】
【0029】
1 車両用制御装置
2 先行エリア状態検出手段
3 車両制御手段
4 ピッチング量検出手段
5 照射角制御手段
6 加減速量・タイミング検出手段
7 変動要因検出手段
8 加重センサ
9 回転角センサ
10 モータドライバ
11 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダにより車両前方に先行する車両、あるいは障害物があるかどうかを検出する先行エリア状態検出手段と、この先行エリア状態検出手段により検出された先行エリアの状態に応じて車両を制御する車両制御手段とを備えた車両用制御装置において、車両に発生するピッチング量を検出するピッチング量検出手段と、このピッチング量検出手段により検出されたピッチング量に応じて、レーダの照射角を制御する照射角制御手段とを備えていることを特徴とする車両用制御装置。
【請求項2】
前記車両制御手段は、先行車との車間距離維持制御、あるいは先行車や障害物への接触を避けるための自動制動制御の少なくともどちらか一方から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記照射角制御手段による照射角制御は、車両制御手段が動作することによる車両が加減速するタイミングに合わせて行っていることを特徴とする請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項4】
前記照射角制御手段は、ピッチング量検出手段により検出されたピッチング量と、少なくとも乗員数、乗車位置、積載量などを検出する変動要因検出手段により検出された変動要因とを用いて算出されたピッチング量算出値に応じて制御されていることを特徴とする請求項3に記載の車両用制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−292271(P2008−292271A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−137547(P2007−137547)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】