説明

車両用操舵装置

【課題】耐久性に優れた車両用操舵装置を提供することである。
【解決手段】第1及び第2の電動モータ21,22によってボールナット34を回転駆動し、ねじ軸33を有する転舵軸6の軸方向移動に変換して、転舵する。両電動モータ21,22が共通のロータコア28を有する。ロータコア28の肉厚tが、中央部283から各端部281,282に近づくにしたがって次第に薄くなる。路面反力によるラジアル荷重F1が転舵軸6の端部61に負荷されて、ねじ軸33が撓むときに、その撓みに追従して、ロータコア28が撓み、ボールナット34を径方向に変位させる(逃がす)。ボールナット34が、ねじ軸33の撓みに抗してラジアル方向に突っ張るようなことがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用操舵装置として、近年、車室内部のステアリングホイール等の操舵部材を車室外部の転舵機構から機械的に分離して配し、この操舵部材の操作方向及び操作量の検出結果に基づいて、転舵機構のための転舵モータを駆動制御し、転舵機構に動作力を加えて操舵を行わせる構成とした操舵装置、いわゆるステアバイワイヤ式の操舵装置が提案されている。
【0003】
このようなステアバイワイヤ式の操舵装置においては、操舵部材と転舵機構との機械的な連結が絶たれていることから、転舵機構に設けられる転舵モータのフェイルセーフ対策が不可欠である。そこで、特許文献1では、転舵機構に2つの電動モータを設け、一方の電動モータに異常が生じたとき、他方の電動モータを単独にて駆動して補助的な操舵を行わせ得ることが提案されている。
【0004】
また、特許文献2では、中空のモータ軸の一側の内周面とこのモータ軸に挿通されるラック軸の外周面との間に、モータ軸の回転トルクをラック軸の軸方向における往復動に変換するボールねじ機構が介装されている。また、モータ軸の他側の外周面とモータを収容するハウジングとの間には、軸受が設けられている。このため、モータ軸は、ボールねじ機構および軸受を介してラック軸およびハウジングにより回転可能に支持されることとなる。
【0005】
また、特許文献2では、内周側からの外力に対して弾性変形可能な環状ブッシュが、モータ軸の一側の外周面に対して隙間を介して対向するようにハウジングに固定されている。これにより、操舵輪およびラック軸を介してモータ軸に過大な外力が伝達されて当該モータ軸が軸受を支点としてラジアル方向に変位する場合、環状ブッシュの内周面にモータ軸の外周面が接触し上記外力に応じて環状ブッシュが弾性変形する。この環状ブッシュの弾性変形に応じた弾性力により、モータ軸のラジアル方向への変位が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−292331号公報(図2、第14段落)
【特許文献2】特開2010−64536号公報(第8、第9段落)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、転舵用の2つの電動モータのロータのロータコアを一体化した共通のロータコアを用い、このロータコアの軸方向の両端を軸受を介してハウジングによって支持する場合を想定する。この場合、路面反力等でラック軸にラジアル負荷がかかったときに、長尺である一体ロータが撓み難いと、ロータコアの中央部に配置されたボールねじ機構のねじ嵌合部に、多大なラジアル荷重が負荷され、耐久性が低下するという問題がある。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、耐久性に優れた車両用操舵装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、筒状のハウジング(5)と、上記ハウジング内に挿通され、軸方向(X1)に移動可能な転舵軸(6)と、上記転舵軸の一部に設けられたねじ軸(33)と、ボール(35)を介して上記ねじ軸と螺合するボールナット(34)と、上記ボールナットを回転駆動する第1および第2の電動モータ(21,22)と、を備え、上記第1および第2の電動モータは、上記軸方向に並び上記ハウジングの内周面(5a)に固定された第1および第2のステータ(24,26)と、上記第1および第2のステータにそれぞれ対向する第1および第2のロータ(25,27)と、を含み、上記第1および第2のロータは、共通の筒状のロータコア(28)と、上記第1および第2のステータとそれぞれ対向し上記ロータコアの外周面(28a)に同伴回転可能に支持された第1および第2の永久磁石(29,30)と、を有し、上記ロータコアの軸方向の第1および第2の端部(281,282)が、上記ハウジングによって支持された第1および第2の軸受(31,32)によって、それぞれ回転可能に支持され、上記ボールナットは、上記ロータコアの軸方向の中央部(283)に配置され、上記ロータコアの肉厚(t1)が、上記ロータコアの上記軸方向の中央部から各端部に近づくにしたがって次第に薄くされている車両用操舵装置を提供する(請求項1)。
【0010】
本発明によれば、ロータコアの肉厚が、上記ロータの上記軸方向の中央部から各端部に向かうにしたがって次第に薄くされているので、ロータコアが、その端部に近づくにしたがって撓み易くなる。路面反力によって転舵軸の端部にラジアル荷重が負荷され、これに伴って、ねじ軸が撓むときに、そのねじ軸の撓みに追従して、ボールナットを支持しているロータコアが撓み、これにより、ボールナットを径方向に変位させる(逃がす)ことができる。すなわち、ボールナットが、ねじ軸の撓みに抗してラジアル方向に突っ張るようなことがないので、ボールナットに負荷されるラジアル荷重を格段に低減することができる。その結果、ボールねじ機構に負荷されるラジアル荷重を格段に低減して、耐久性を向上することができる。
【0011】
また、上記第1のロータは、上記ロータコアの外周面に嵌合された筒状の第1の弾性部材(38)と、上記第1の弾性部材の外周面(38a)に嵌合された硬質の第1の円筒部材(39)と、上記第1の円筒部材の外周面(39a)に嵌合された第1の永久磁石(29)と、を含み、上記第2のロータは、上記ロータコアの外周面に嵌合された筒状の第2の弾性部材(40)と、上記第2の弾性部材の外周面(40a)に嵌合された硬質の第2の円筒部材(41)と、上記第2の円筒部材の外周面(41a)に嵌合された第2の永久磁石(30)と、を含む場合がある(請求項2)。
【0012】
この場合、各永久磁石を対応する硬質の円筒部材で支持し、その対応する硬質の円筒部材とロータコアとの間に、対応する弾性部材を介在している。したがって、ロータコアが曲げ変形したとしても、そのロータコアの変形を各弾性部材によって吸収することができる。その結果、各永久磁石が曲げ変形しないので、耐久性を向上することができる。また、各永久磁石を対応する硬質の円筒部材で支持しているので、各永久磁石の心ずれが少なく、各電動モータの出力特性が安定している。
【0013】
なお、上記において、括弧内の数字等は、後述する実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態にかかる車両用操舵装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】転舵軸と転舵軸を駆動する機構の概略断面図である。
【図3】転舵軸を駆動する機構の要部の拡大図である。
【図4】第1のロータの概略拡大断面図である。
【図5】第2のロータの概略拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好ましい実施の形態を添付図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の一実施の形態の車両用操舵装置の概略構成を示す模式図である。図1を参照して、本車両用操舵装置1は、ステアリングホイール等の操舵部材2と転舵輪3との機械的な結合が解除された、いわゆるステアバイワイヤシステムを構成している。
操舵部材2の回転操作に応じて駆動される、例えばブラシレスの電動モータを含む転舵用アクチュエータ4の動作を、ハウジング5に支持された転舵軸6の車幅方向の直線運動に変換し、この転舵軸6の直線運動を舵取り用の左右の転舵輪3の転舵運動に変換することにより転舵が達成される。
【0016】
転舵用アクチュエータ4の駆動力(出力軸の回転力)は、転舵軸6に関連して設けられた運動変換機構(たとえば、ボールねじ機構)により、転舵軸6の軸方向X1(車幅方向)の直線運動に変換される。この転舵軸6の直線運動は、転舵軸6の両端から突出して設けられたタイロッド7に伝達され、ナックルアーム8の回動を引き起こす。これにより、ナックルアーム8に支持された転舵輪3の転舵が達成される。
【0017】
転舵軸6、タイロッド7およびナックルアーム8などにより、転舵輪3を転舵するための転舵機構50が構成されている。転舵軸6を支持するハウジング5は、図示しないブラケット等を介して車体に固定されている。
操舵部材2は、車体に対して回転可能に支持された回転シャフト9に連結されている。この回転シャフト9には、操舵部材2に操作反力を与えるための反力用アクチュエータ10が付設されている。反力用アクチュエータ10は、回転シャフト9と一体の出力シャフトを有するブラシレスモータ等の電動モータを含む。
【0018】
回転シャフト9の操作部材2とは反対側の端部には、例えば渦巻きばね等からなる弾性部材11が車体との間に結合されている。この弾性部材11は、反力用アクチュエータ10が操舵部材2にトルクを付加していないときに、その弾性力によって、操舵部材2を直進操舵位置に復帰させる。
操舵部材2の操作入力値を検出するために、回転シャフト9に関連して、操舵部材2の操舵角θh を検出するための操舵角センサ12が設けられている。また、回転シャフト9には、操舵部材2に加えられた操舵トルクTを検出するためのトルクセンサ13が設けられている。一方、転舵軸6に関連して、転舵輪3の転舵角δW (タイヤ角)を検出するための転舵角センサ14が設けられている。
【0019】
これらのセンサの他にも、車速Vを検出する車速センサ15と、車体60の上下加速度GZ を検出する悪路状態検出センサとしての上下加速度センサ16と、車両の横加速度Gy を検出する横加速度センサ17と、車両のヨーレートγを検出するヨーレートセンサ18とが設けられている。
上記のセンサ類12〜18の各検出信号は、マイクロコンピュータを含む構成の電子制御ユニット(ECU)からなる車両制御手段としての制御装置19に入力されるようになっている。
【0020】
制御装置19は、操舵角センサ12によって検出された操舵角θh および車速センサ15によって検出された車速Vに基づいて、目標転舵角を設定し、この目標転舵角と転舵角センサ14によって検出された転舵角δW との偏差に基づいて、駆動回路20Aを介し、転舵用アクチュエータ4を駆動制御(転舵制御)する。
一方、制御装置19は、センサ類12〜18が出力する検出信号に基づいて、操舵部材2の操舵方向と逆方向の適当な反力が発生されるように、駆動回路20Bを介して、反力用アクチュエータ10を駆動制御(反力制御)する。
【0021】
図2を参照して、転舵軸6の途中部は、筒状のハウジング5内に挿入されている。ハウジング5の両端部に支持された第1および第2のブッシュ51,52によって、転舵軸6が軸方向X1に移動可能に支持されている。ハウジング5の内周面5aとハウジング5内に挿入された転舵軸6との間に、転舵用アクチュエータ4を構成する第1および第2の電動モータ21,22と、これら電動モータ21,22の出力回転を転舵軸6の軸方向移動に変換する運動変換機構としてのボールねじ機構23とが配置されている。
【0022】
転舵用アクチュエータ4を構成する第1の電動モータ21および第2の電動モータ22は、ハウジング5内に、軸方向X1に並んで配置されている。第1の電動モータ21は、ハウジング5の内周面5aに固定された第1のステータ24と、第1のステータ24に対向する第1のロータ25とを備えている。第2の電動モータ22は、ハウジング5の内周面5aに固定された第2のステータ26と、第2のステータ26に対向する第2のロータ27とを備えている。
【0023】
第1のロータ25および第2のロータ27は、転舵軸6の周囲を取り囲む共通の筒状のロータコア28を有している。第1のロータ25は、共通のロータコア28の円筒状の外周面28aを取り囲んで配置された第1の永久磁石29を有している。第2のロータ27は、共通のロータコア28の外周面28aを取り囲んで配置された第2の永久磁石30を有している。
【0024】
ハウジング5は、第1および第2の軸受31,32を介して、ロータコア28の軸方向の両端部を回転可能に支持している。具体的には、ロータコア28は軸方向に関して第1および第2の端部281,282を有している。第1および第2の端部281,282は、それぞれ、断面L字形形状をなしている。ハウジング5は、第1の軸受31を介して、ロータコア28の第1の端部281を回転可能に支持している。また、ハウジング5は、第2の軸受32を介して、ロータコア28の第2の端部282を回転可能に支持している。第1の軸受31および第2の軸受32の各外輪は、ハウジング5に対する軸方向移動が規制され、また、第1の軸受31および第2の軸受32の各内輪は、ロータコア28に対する軸方向移動が規制されている。これにより、ハウジング5に対するロータコア28の軸方向移動が規制されている。
【0025】
ボールねじ機構23は、転舵軸6の一部に形成されたねじ軸33と、ねじ軸33の周囲を取り囲み、上記ロータコア28と同伴回転するボールナット34と、列をなす多数のボール35とを備えている。上記ボール35は、ボールナット34の内周に形成された螺旋状のねじ溝36(雌ねじ溝)と、ねじ軸33の外周に形成されたらせん状のねじ溝37(雄ねじ溝)との間に介在している。
【0026】
ボールナット34は、ロータコア28の軸方向の中央部283において、ロータコア28の内周面28bに同伴回転可能に嵌合されている。また、ロータコア28の内周溝(図示せず)に係止された止め輪(図示せず)等を用いて、ボールナット34とロータコア28の軸方向相対移動が規制されている。
ロータコア28の内周面28bは、上記中央部283においては、円筒面に形成されている。ロータコア28の内周面28bは、中央部283から、断面L字形の第1の端部281側へ近づくにしたがって、湾曲状に或いはテーパ状に次第に拡径されている。また、ロータコア28の内周面28bは、中央部283から、断面L字形の第2の端部282側へ近づくにしたがって、湾曲状に或いはテーパ状に次第に拡径されている。これにより、ロータコア28の肉厚t1は、中央部283から各端部281,282に近づくにしたがって、次第に薄くなっている。その結果、ロータコア28が、各端部281,282に近づくにしたがって、撓み易くなっている。
【0027】
これは、例えば、転舵軸6の端部61に路面反力によるラジアル荷重F1が負荷されたときに、ボールねじ機構23に負荷されるラジアル荷重を低減するためである。具体的には、第1のブッシュ51に、上記ラジアル荷重F1とは反対方向のラジアル荷重G1が発生する。また、第1のブッシュ51を中心とする力のモーメントの釣り合いから、ロータコア28からボールナット34を介してねじ軸33に、ラジアル荷重F1と同方向のラジアル荷重H1が負荷されることになる。
【0028】
図2の拡大図である図3に示すように、第1のロータ25の第1の永久磁石29は、ロータコア28の外周面28aに、筒状の第1の弾性部材38および硬質の第1の円筒部材39を介して同伴回転可能に支持されている。また、第2のロータ27の第2の永久磁石30は、ロータコア28の外周面28aに、筒状の第2の弾性部材40および硬質の第2の円筒部材41を介して同伴回転可能に支持されている。第1および第2の円筒部材39,41としては、例えば非磁性体であるアルミニウム板を用いることができる。
【0029】
第1および第2の弾性部材38,40としては、変形し易いが復元し易いシート状のゴム材を用いることが好ましく、ゴム材としては、例えば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ハロゲン化ブチレンゴム(塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴムなど)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレーンブタジエンゴム(SBR)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)などを用いることができる。
【0030】
図4に示すように、ロータコア28の外周面28aに、筒状の第1の弾性部材38が同伴回転可能に嵌合されている。その第1の弾性部材38の外周面38aに、硬質の第1の円筒部材39が同伴回転可能に嵌合されている。その第1の円筒部材39の外周面39aに、第1の永久磁石29が同伴回転可能に嵌合されている。第1の弾性部材38は、ロータコア28および第1の円筒部材39の少なくとも一方に、接着されていてもよい。
【0031】
無負荷の状態では、ロータコア28、第1の弾性部材38、第1の円筒部材39および第1の永久磁石29は、同心に配置されている。第1の円筒部材39および第1の永久磁石29は、第1の弾性部材38によって、径方向に変位可能(ロータコア28に対して偏心可能)に弾性支持されている。
図5に示すように、ロータコア28の外周面28aに、筒状の第2の弾性部材40が同伴回転可能に嵌合されている。その第2の弾性部材40の外周面40aに、硬質の第2の円筒部材41が同伴回転可能に嵌合されている。その第2の円筒部材41の外周面41aに、第2の永久磁石30が同伴回転可能に嵌合されている。第2の弾性部材40は、ロータコア28および第2の円筒部材41の少なくとも一方に、接着されていてもよい。
【0032】
無負荷の状態では、ロータコア28、第2の弾性部材40、第2の円筒部材41および第2の永久磁石30は、同心に配置されている。第2の円筒部材41および第2の永久磁石30は、第2の弾性部材40によって、径方向に変位可能(ロータコア28に対して偏心可能)に弾性支持されている。
本実施の形態によれば、ロータコア28の肉厚t1が、軸方向の中央部283から各端部281,282に近づくにしたがって次第に薄くされているので、ロータコア28の剛性を、その端部281,282に近づくにしたがって低下させることができる。すなわち、端部281,282に近づくにしたがってロータコア28が撓み易くなる。
【0033】
したがって、図2に示すように、路面反力によるラジアル荷重F1が転舵軸6の端部61に負荷され、これに起因して、ねじ軸33の中央部が撓むときに、ねじ軸33の撓みに追従して、ボールナット34のハウジングとなるロータコア28が撓むので、ボールナット34を径方向に変位させる(逃がす)ことができる。
換言すると、ボールナット34が、ねじ軸33の撓みに抗してラジアル方向に突っ張るようなことがない。したがって、ボールナット34に負荷されるラジアル荷重H1を格段に低減することができる。その結果、ボールねじ機構23に負荷されるラジアル荷重を格段に低減して、耐久性を向上することができる。
【0034】
また、第1および第2の永久磁石29,30のそれぞれを、対応する硬質の円筒部材39,41で支持し、その対応する硬質の円筒部材39,41とロータコア28との間に、対応する弾性部材38,40を介在している。したがって、路面反力により転舵軸6に追従してロータコア28が曲げ変形したとしても、そのロータコア28の変形を各弾性部材38,40によって吸収することができる。その結果、第1および第2の永久磁石29,30が曲げ変形しないので、耐久性を向上することができる。また、第1および第2の永久磁石29,30を対応する硬質の円筒部材39,41で支持しているので、第1および第2の永久磁石29,30の心ずれが少なく、第1および第2の電動モータ21,22の出力特性が安定している。
【0035】
上述の実施形態では、本発明が、操舵部材と転舵輪との機械的な連結が解除されたステア・バイ・ワイヤ式の車両用操舵装置に適用された例について説明したが、これに限らない。例えば、電動モータの出力を操舵補助力として出力する電動パワーステアリング装置に本発明を適用してもよい。また、操舵部材の操舵角に対する転舵輪の転舵角の比を変更可能な伝達比可変機構を備え、伝達比可変機構を駆動するために電動モータの出力を用いる伝達比可変式の車両用操舵装置に、本発明を適用してもよい。その他、請求項記載の範囲内で種々の変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0036】
1…車両用操舵装置、2…操舵部材、3…転舵輪、4…転舵用アクチュエータ、5…ハウジング、5a…内周面、6…転舵軸、21…第1の電動モータ、22…第2の電動モータ、23…ボールねじ機構、24…第1のステータ、25…第1のロータ、26…第2のステータ、27…第2のロータ、28…ロータコア、28a…外周面、28b…内周面、281…第1の端部、282…第2の端部、283…中央部、29…第1の永久磁石、30…第2の永久磁石、31…第1の軸受、32…第2の軸受、33…ねじ軸、34…ボールナット、35…ボール、38…第1の弾性部材、38a…外周面、39…第1の円筒部材、39a…外周面、40…第2の弾性部材、40a…外周面、41…第2の円筒部材、…外周面、t1…肉厚、X1…軸方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のハウジングと、
上記ハウジング内に挿通され、軸方向に移動可能な転舵軸と、
上記転舵軸の一部に設けられたねじ軸と、
ボールを介して上記ねじ軸と螺合するボールナットと、
上記ボールナットを回転駆動する第1および第2の電動モータと、を備え、
上記第1および第2の電動モータは、上記軸方向に並び上記ハウジングの内周面に固定された第1および第2のステータと、上記第1および第2のステータにそれぞれ対向する第1および第2のロータと、を含み、
上記第1および第2のロータは、共通の筒状のロータコアと、上記第1および第2のステータとそれぞれ対向し上記ロータコアの外周面に同伴回転可能に支持された第1および第2の永久磁石と、を有し、
上記ロータコアの軸方向の第1および第2の端部が、上記ハウジングによって支持された第1および第2の軸受によって、それぞれ回転可能に支持され、
上記ボールナットは、上記ロータコアの軸方向の中央部に配置され、
上記ロータコアの肉厚が、上記ロータコアの上記軸方向の中央部から各端部に近づくにしたがって次第に薄くされている車両用操舵装置。
【請求項2】
請求項1において、上記第1のロータは、上記ロータコアの外周面に嵌合された筒状の第1の弾性部材と、上記第1の弾性部材の外周面に嵌合された硬質の第1の円筒部材と、上記第1の円筒部材の外周面に嵌合された第1の永久磁石と、を含み、
上記第2のロータは、上記ロータコアの外周面に嵌合された筒状の第2の弾性部材と、上記第2の弾性部材の外周面に嵌合された硬質の第2の円筒部材と、上記第2の円筒部材の外周面に嵌合された第2の永久磁石と、を含む車両用操舵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−20646(P2012−20646A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159734(P2010−159734)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】