説明

車両用減速度制御装置、車両用減速度制御方法

【課題】運転者のブレーキ操作を支援しつつ、減速度の変動を抑制する。
【解決手段】運転者がブレーキ操作を行ったときに、エンジンブレーキによる減速度をライズアップ率Rrで増加させる。そして、減速度をライズアップ率Rrで増加させてから予め定められた時間が経過したら、この時点の減速度から減速度をライズアップ率Rrよりも小さなビルドアップ率Rbで増加させる。また、エンジン被動側の動力伝達状態が、定常状態から低減し、その後、再び定常状態へと復帰したら、減速度の増加率を減少補正する。変速機の変速位置がDレンジからNレンジへ変化したことを検出したときに、動力伝達状態が定常状態から低減したと判断する。また、その後、変速位置がNレンジからDレンジへと復帰したことを検出したときに、再び定常状態へ復帰したと判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用減速度制御装置、車両用減速度制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の従来技術では、運転者によってブレーキ操作がなされるときに、ブレーキ操作に応じた前後加速度変化分を算出し、この前後加速度変化分を基準前後加速度に加算することで、エンジンブレーキを上昇させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−180645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術のように、エンジンブレーキを上昇させている状態で、例えば運転者がシフトポジションをDレンジからNレンジへと切換え、さらにNレンジからDレンジへと戻したとする。このとき、運転者がブレーキ操作を維持していると、エンジンブレーキが一旦解除されてから、再び増加することになるので、減速度の変動が大きくなってしまう。
本発明の課題は、運転者のブレーキ操作を支援しつつ、減速度の変動を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、運転者がブレーキ操作を行ったときに、車両の駆動源を被動側から駆動される状態にして車両の減速度を増加させる。また、被動側の動力伝達状態が、定常状態から低減し、その後、再び定常状態へと復帰したら、減速度の増加率を減少補正する。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る車両用減速度制御装置によれば、運転者がブレーキ操作を行ったときに、減速度を増加させるので、運転者のブレーキ操作を支援することができる。また、被動側の動力伝達状態が、定常状態から低減し、その後、再び定常状態へと復帰したら、減速度の増加率を減少補正するので、減速度の変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】減速度制御装置の構成図である。
【図2】減速度制御処理を示すブロック線図である。
【図3】減速度制御処理を示すフローチャートである。
【図4】伝達状態検出処理を示すブロック線図である。
【図5】シフト条件判定処理を示すフローチャートである。
【図6】スリップ率算出処理を示すブロック図である。
【図7】スリップ率条件判定処理を示すフローチャートである。
【図8】低減復帰フラグ設定処理を示すフローチャートである。
【図9】制御許可フラグ設定処理を示すブロック線図である。
【図10】嵩上げ率算出処理を示すフローチャートである。
【図11】ライズアップ率及びビルドアップ率の算出に用いるマップである。
【図12】ライズアップ率累計処理を示すフローチャートである。
【図13】ビルドアップ率累計処理を示すフローチャートである。
【図14】嵩上げ減速度算出処理を示すフローチャートである。
【図15】カットフラグfpのタイムチャートである。
【図16】カットフラグfsのタイムチャートである。
【図17】低減復帰フラグfrのタイムチャートである。
【図18】制御許可フラグを示すタイムチャートである。
【図19】ライズアップ率Rr及びビルドアップ率Rb、並びにライズアップ率累計値Cr及びビルドアップ率累計値Cbのタイムチャートである。
【図20】嵩上げ減速度Guのタイムチャートである。
【図21】ビルドアップのみを実行するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
《第1実施形態》
《構成》
図1は、減速度制御装置の構成図である。
減速度制御装置は、各車輪毎の速度を検出する車輪速センサ11FL〜11RRと、ドライバのブレーキ操作を検出するマスタ圧センサを内蔵したブレーキアクチュエータ12と、車両の減速度を制御する車両制御コントローラ13と、制動力を実現するパワートレインコントローラ14と、変速機15と、変速機15の変速位置を検出するシフトセンサ16と、を備える。
【0009】
車両制御コントローラ13は、CAN等の通信を利用して、各輪の車輪速センサ値、マスタ圧センサ値、及びシフトセンサ値を受信し、嵩上げ減速度Guを算出し、この嵩上げ減速度Guの指令値をパワートレインコントローラ14に送信する。
パワートレインコントローラ14は、指令値を受信し、エンジンブレーキのコントロールを行なう。エンジンブレーキのコントロールは、例えば変速機15によるギア比をコントロールすることによって実現される。
【0010】
次に、車両制御コントローラ13で実行される減速度制御処理について説明する。
図2は、減速度制御処理を示すブロック線図である。
伝達状態検出部21は、CAN等により、車輪速を検出する車輪速センサ値、及び変速機の変速位置を検出するシフトセンサ値に基づいて、エンジン(駆動源)の被動側、つまりエンジンからタイヤ接地面に至るまでの動力伝達状態を検出する。具体的には、変速機15の動力伝達状態や、路面に対する車輪の接地状態である。
【0011】
制御許可フラグ設定部22では、CAN等により、ドライバのブレーキ操作を検出するマスタ圧センサ値、及び車両の状態を検知する車輪速センサ値、及び伝達状態検出部22からの検出結果に基づいて、減速度嵩上げ制御の可否を判断し、制御許可フラグfcを設定する。
嵩上げ率算出部23では、マスタ圧センサ値に基づいてドライバ要求減速度Gdを算出し、制御許可フラグfc、動力伝達状態の検出結果、及びドライバ要求減速度Gdに基づいて、ライズアップ率Rrと、ビルドアップ率Rbとを算出する。ライズアップ率Rrとは、エンジンブレーキを立ち上げる(ライズアップ)際の減速度の増加率であり、ビルドアップ率Rbとは、エンジンブレーキを立ち上げた後に更に漸増させる(ビルドアップ)際の減速度の増加率である。
【0012】
ライズアップ率累計部24では、制御許可フラグfc、及びライズアップ率Rrに基づいて、ライズアップ率の累計値Crを算出する。
ビルドアップ率累計部25では、制御許可フラグfc、及びビルドアップ率Rbに基づいて、ビルドアップ率の累計値Cbを算出する。
嵩上げ減速度算出部26では、ライズアップ率累計値Cr、ビルドアップ率累計値Cb、及びドライバ要求減速度Gdに基づいて、エンジンブレーキによる嵩上げ減速度Guを算出し、算出された嵩上げ減速度Guは、CAN等によってパワートレインコントローラへ送信される。
【0013】
図3は、減速度制御処理を示すフローチャートである。
この減速度制御処理は、予め定められた時間(例えば10msec)毎に実行される。
続くステップS11では、後述する伝達状態検出処理を実行し、車輪速センサ値とシフトセンサ値とに基づいて、エンジン(駆動源)の被動側、つまりエンジンからタイヤ接地面に至るまでの動力伝達状態を検出する。具体的には、変速機15の動力伝達状態や、路面に対する車輪の接地状態である。
【0014】
先ずステップS12では、後述する制御許可フラグ設定処理を実行し、マスタ圧センサ値、車輪速センサ値、動力伝達状態に基づいて、減速度嵩上げ制御の可否を判断し、制御許可フラグfcを設定する。
続くステップS13では、後述する嵩上げ率算出処理を実行し、マスタ圧センサ値に基づいてドライバ要求減速度を算出し、制御許可フラグfc、ドライバ要求減速度Gd、及び動力伝達状態に基づいて、ライズアップ率Rrとビルドアップ率Rbとを算出する。
【0015】
続くステップS14では、後述するライズアップ率累計処理を実行し、制御許可フラグfc、及びライズアップ率Rrに基づいて、ライズアップ率Rrの累計値Crを算出する。
続くステップS15では、後述するビルドアップ率累計処理を実行し、制御許可フラグfc、及びビルドアップ率Rbに基づいて、ビルドアップ率Rbの累計値Cbを算出する。
続くステップS16では、後述する嵩上げ減速度算出処理を実行し、ライズアップ率累計値Cr、ビルドアップ率累計値Cb、及びドライバ要求減速度Gdに基づいて、嵩上げ減速度Guを算出し、パワートレインコントローラ14へ出力する。
【0016】
次に、伝達状態検出処理について説明する。
図4は、伝達状態検出処理を示すブロック線図である。
シフト条件判定部41では、変速機の変速位置を検出するシフトセンサ値に応じて、カットフラグfpを設定する。
スリップ率算出部42では、車輪速を検出する車輪速センサ値に応じて、車輪のスリップ率Sを算出する。
スリップ率条件判定部43では、スリップ率Sに応じて、カットフラグfsを設定する。
状態フラグ設定部44では、カットフラグfp、及びカットフラグfsに応じて、低減復帰フラグfrを設定する。
【0017】
次に、シフト条件判定処理について説明する。
図5は、シフト条件判定処理を示すフローチャートである。
ステップS61では、変速機15の変速位置が駆動レンジ(Dレンジ)に設定してあるか否かを判定する。ここで、駆動レンジに設定してあるときには、動力伝達状態が定常状態にあると判断してステップS62に移行する。一方、変速機15の変速位置が非駆動レンジ(Nレンジ)に設定してあるときには、動力伝達状態が遮断状態にあると判断してステップS63に移行する。
【0018】
ステップS62では、カットフラグをfp=0にリセットしてから、このシフト条件判定処理を終了する。エンブレカットカットフラグがfp=0のときは、動力伝達状態が定常状態にあることを指す。
ステップS63では、カットフラグをfp=1にセットしてから、このシフト条件判定処理を終了する。カットフラグがfp=1のときは、動力伝達状態が遮断状態にあることを指す。
【0019】
次に、スリップ率算出処理について説明する。
図6は、スリップ率算出処理を示すブロック図である。
前輪平均車輪速算出部51は、前左輪の車輪速センサ値と、前右輪の車輪速センサ値との平均車輪速を算出する。
後輪平均車輪速算出部52は、後左輪の車輪速センサ値と、後右輪の車輪速センサ値との平均車輪速を算出する。
駆動輪スリップ率算出部53は、従動輪の平均車輪速(ここでは前輪)から駆動輪の平均車輪速(ここでは後輪)を減じた値を、従動輪の平均車輪で除して、スリップ率Sを算出する。
【0020】
次に、スリップ率条件判定処理について説明する。
図7は、スリップ率条件判定処理を示すフローチャートである。
ステップS71では、スリップ率Sが予め設定した設定値SHよりも高いか否かを判定する。判定結果がS≧SHであるときには、駆動輪がスリップ傾向にあり、動力伝達状態が定常状態から低減した状態にあると判断してステップS72に移行する。一方、判定結果がS<SHであるときにはステップS73に移行する。
ステップS72では、カットフラグをfs=1にセットしてから、このスリップ率条件判定処理を終了する。カットフラグがfs=1のときは、動力伝達状態が定常状態から低減した状態にあることを指す。
【0021】
ステップS73では、スリップ率Sが予め設定した設定値SL(SL<SH)以下であるか否かを判定する。判定結果がS≦SLであるときには、駆動輪はスリップ傾向にない、又は駆動輪のスリップ傾向が収束しており、動力伝達状態が定常状態にあると判断してステップS74に移行する。一方、判定結果がS>SLであるときにはステップS74に移行する。
ステップS74では、カットフラグをfs=0にリセットしてから、このスリップ率条件判定処理を終了する。エンブレカットカットフラグがfs=0のときは、動力伝達状態が定常状態にあることを指す。
【0022】
次に、低減復帰フラグ設定処理について説明する。
図8は、低減復帰フラグ設定処理を示すフローチャートである。
ステップS81では、後述するドライバ要求フラグがfd=1にセットしてあるか否かを判定する。判定結果がfd=1であるときには、運転者が減速を望んでいると判断してステップS82に移行する。一方、判定結果がfd=0であるときには、運転者は減速を望んでいないと判断してステップS86に移行する。
【0023】
ステップS82では、カットフラグの前回値がfp(n-1)=1で、且つ今回値がfp(n)=0であるか否かを判定する。判定結果がfp(n-1)=1で、且つfp(n)=0であるときには、変速位置が非駆動レンジ(Nレンジ)から駆動レンジ(Dレンジ)に戻されたことで、動力伝達状態が遮断状態から定常状態に復帰したと判断してステップS83に移行する。一方、判定結果がfp(n-1)=0、又はfp(n)=1であるときには、変速位置が駆動レンジ(Dレンジ)のままであり、動力伝達状態が定常状態のままである、又は変速位置が非駆動レンジ(Nレンジ)にあり、動力伝達状態が遮断状態にあると判断してステップS84に移行する。
ステップS83では、低減復帰フラグをfr=1にセットしてから、この低減復帰フラグ設定処理を終了する。低減復帰フラグがfr=1のときは、動力伝達状態が遮断状態から定常状態に復帰したことを指す。
【0024】
ステップS84では、カットフラグの前回値がfs(n-1)=1で、且つ今回値がfs(n)=0であるか否かを判定する。判定結果がfs(n-1)=1で、且つfs(n)=0であるときには、スリップ傾向が収束したことで、動力伝達状態が低減した状態から定常状態に復帰したと判断して前記ステップS83に移行する。一方、判定結果がfs(n-1)=0、又はfs(n)=1であるときには、スリップ傾向がないままであり、動力伝達状態が定常状態のままである、又はスリップ傾向が収束しておらず、動力伝達状態が低減した状態にあると判断してステップS85に移行する。
ステップS85では、低減復帰フラグの前回値fr(n-1)を今回値fs(n)として設定してから(維持)、この低減復帰フラグ設定処理を終了する。
ステップS86では、低減復帰フラグをfr=0にリセットしてから、この低減復帰フラグ設定処理を終了する。
【0025】
次に、制御許可フラグ設定処理について説明する。
図9は、制御許可フラグ設定処理を示すブロック線図である。
ドライバ要求減速度算出部31では、マスタ圧センサ値に応じて、ドライバ要求減速度を算出する。
減速要求判定フラグ設定部32では、ドライバ要求減速度Gdが予め定められた閾値Gt1(例えば0.05G)以上であるか否かを判定し、Gd≧Gt1であれば、運転者が減速を望んでいると判断して減速要求判定フラグを『fd=1』にセットする。一方、Gd<Gt1であれば、運転者は減速を望んでいないと判断して減速要求判定フラグを『fd=0』にリセットする。なお、減速要求判定フラグのハンチングを防ぐために、減速要求判定フラグが『fd=1』にセットされた後は、ドライバ要求減速度Gdが前記閾値Gt1よりも小さな予め定められた閾値Gt2(例えば0.02G)以下となるときに、減速要求判定フラグを『fd=0』にリセットする。
【0026】
車速算出部33では、例えば従動輪に対応する車輪速センサ値を読込み、二輪分の車輪速センサ値の平均値を車速として算出する。
車速判定フラグ設定部34では、車速Vが予め定められた閾値Vt1(例えば40km/h)以上であるか否かを判定し、V≧Vt1であれば、運転者の減速要求があれば減速度を嵩上げする必要があると判断して、車速判定フラグを『fv=1』にセットする。一方、V<Vt1であれば、運転者の減速要求があっても減速度を嵩上げする必要はないと判断して、車速判定フラグを『fv=0』にリセットする。なお、車速判定フラグのハンチングを防ぐために、車速判定フラグが『fv=1』にセットされた後は、車速Vが前記閾値Vt1よりも小さな予め定められた閾値Vt2(例えば30km/h)以下となるときに、車速判定フラグを『fv=0』にリセットする。
【0027】
制御許可フラグ設定部35では、減速要求判定フラグが『fd=1』であり、且つ車速判定フラグが『fv=1』であり、且つカットフラグが『fp=0』でれば、減速度を嵩上げする必要があると判断して制御許可フラグを『fc=1』にセットする。一方、減速要求判定フラグが『fd=0』である、車速判定フラグが『fv=0』である、又はカットフラグが『fp=1』の何れかを満たしたときには、減速度を嵩上げする必要はないと判断して制御許可フラグを『fc=0』にリセットする。
【0028】
次に、嵩上げ率算出処理について説明する。
図10は、嵩上げ率算出処理を示すフローチャートである。
先ずステップS21では、制御許可フラグが『fc=1』にセットされているか否かを判定する。判定結果が『fc=0』であれば、減速度の嵩上げは不要であると判断してステップS22に移行する。一方、判定結果が『fc=1』であれば、減速度の嵩上げが必要であると判断してステップS24に移行する。
ステップS22では、下記に示すように、ライズアップ率Rr及びビルドアップ率Rbをリセットする。
Rr=0
Rb=0
【0029】
続くステップS23では、設定フラグを『fs=0』にリセットしてから、この嵩上げ率算出処理を終了する。
ステップS24では、設定フラグが『fs=0』にリセットされているか否かを判定する。判定結果が『fs=1』であれば、ライズアップ率Rr及びビルドアップ率Rbが設定済みであると判断して、そのまま嵩上げ率算出処理を終了する。一方、設定フラグが『fs=0』であれば、ライズアップ率Rr及びビルドアップ率Rbが未設定であると判断してステップS25に移行する。
ステップS25では、マップを参照し、ドライバ要求減速度Gd、及び低減復帰フラグdrに応じて、ライズアップ率Rr及びビルドアップ率Rbを算出する。
【0030】
図11は、ライズアップ率及びビルドアップ率の算出に用いるマップである。
ドライバ要求減速度Gdが0のときには、ライズアップ率Rr及びビルドアップ率Rbは共に0よりも大きな範囲で同一の値となる。そして、ドライバ要求減速度Gdが大きいほど、ライズアップ率Rrは大きくなり、ビルドアップ率Rbは0よりも大きな範囲で小さくなる。そして、低減復帰フラグが『fr=1』のときには、『fr=0』のときよりも、ライズアップ率Rr及びビルドアップ率Rbの夫々が小さくなる。
続くステップS26では、設定フラグを『fs=1』にセットしてから、この嵩上げ率算出処理を終了する。
【0031】
次に、ライズアップ率累計処理について説明する。
図12は、ライズアップ率累計処理を示すフローチャートである。
先ずステップS31では、制御許可フラグが『fc=1』にセットされているか否かを判定する。判定結果が『fc=0』であれば、減速度の嵩上げは不要であると判断してステップS32に移行する。一方、判定結果が『fc=1』であれば、減速度の嵩上げが必要であると判断してステップS33に移行する。
【0032】
ステップS32では、下記に示すように、ライズアップ率累計値Crを0にリセットしてから、このライズアップ累計処理を終了する。
Cr=0
ステップS33では、下記に示すように、ライズアップ率の累積値(Rr+Cr(n-1))か、又はライズアップ率の最大値(Rr×Tr)のうち、小さい方をライズアップ率の累積値Crとして設定してから、このライズアップ率累計処理を終了する。
Cr=min[(Rr+Cr(n-1)),(Rr×Tr)]
ここで、Trは予め設定されたライズアップ時間である。ライズアップ時間Trは、ライズアップできる、つまり演算周期毎にRrずつ累積してゆける最大時間(最大回数)である。
【0033】
次に、ビルドアップ率累計処理について説明する。
図13は、ビルドアップ率累計処理を示すフローチャートである。
先ずステップS41では、制御許可フラグが『fc=1』にセットされているか否かを判定する。判定結果が『fc=0』であれば、減速度の嵩上げは不要であると判断してステップS42に移行する。一方、判定結果が『fc=1』であれば、減速度の嵩上げが必要であると判断してステップS43に移行する。
ステップS42では、下記に示すように、ビルドアップ率累計値Cbを0にリセットしてから、このビルドアップ累計処理を終了する。
Cb=0
【0034】
一方、ステップS43では、ライズアップが完了したか否かを判定する。具体的には、ライズアップ累積値Crが最大値(Rr×Tr)に達しているときに、ライズアップが完了したと判断する。ここで、ライズアップが完了していなければ、前記ステップS42に移行する。一方、ライズアップが完了していれば、ステップS44に移行する。
【0035】
ステップS44では、下記に示すように、ビルドアップ率の累積値(Rb+Cb(n-1))か、又はビルドアップ率の最大値(Rb×Tb)のうち、小さい方をビルドアップ率の累積値Cbとして設定してから、このビルドアップ率累計処理を終了する。
Cb=min[(Rb+Cb(n-1)),(Rb×Tb)]
ここで、Tbは予め設定されたビルドアップ時間である。ビルドアップ時間Tbは、ビルドアップできる、つまり演算周期毎にBbずつ累積してゆける最大時間(最大回数)である。
【0036】
次に、嵩上げ減速度算出処理について説明する。
図14は、嵩上げ減速度算出処理を示すフローチャートである。
先ずステップS51では、下記に示すように、ライズアップ率の累積値Crと、ビルドアップ率の累積値Cbとを加算して、嵩上げ率累計値Cを算出する。
C=Cr+Cb
続くステップS52では、下記に示すように、ドライバ要求減速度Gdに嵩上げ率累計値Cを乗算して、嵩上げ減速度Guを算出する。
Gu=Gd×C
続くステップS53では、嵩上げ減速度Guをパワートレインコントローラ14へ出力してから、この嵩上げ減速度算出処理を終了する。
なお、嵩上げ減速度Guを0に戻すときには、その解除速度にレートリミッタ処理を施す。
【0037】
《作用》
本実施形態では、変速機15の動力伝達状態や路面に対する車輪の接地状態に応じて、エンジン(駆動源)の被動側、つまりエンジンからタイヤ接地面に至るまでの動力伝達状態を検出する。具体的には、変速機15の変速位置に応じてカットフラグfpを設定すると共に、駆動輪のスリップ率Sに応じてカットフラグfsを設定し、これらカットフラグfp及びfsの設定状態に応じて、低減復帰フラグfrを設定する。
【0038】
図15は、カットフラグfpのタイムチャートである。
先ず変速位置が駆動レンジ(Dレンジ)にあるときには、動力伝達状態が定常状態にあり、エンジンブレーキの作動が可能なので、カットフラグをfp=0にリセットする。この状態から、変速位置が非駆動レンジ(Nレンジ)に切り替わると、動力伝達状態が遮断状態となり、エンジンブレーキの作動が不可能なので、カットフラグをfp=1にセットする。そして、変速位置が再び駆動レンジ(Dレンジ)に戻されると、カットフラグをfp=0にリセットする。
【0039】
図16は、カットフラグfsのタイムチャートである。
駆動輪にスリップ傾向がなければ、駆動輪の平均車輪速と従動輪の平均車輪速とは略等しいので、スリップ率Sは略0である。このとき、動力伝達状態は定常状態にあり、エンジンブレーキの作動が可能なので、カットフラグをfs=0にリセットする。この状態から、駆動輪のスリップ傾向が強まってくると、駆動輪の平均車輪速が従動輪の平均車輪速よりも高まってくるので、スリップ率Sが上昇する。そして、スリップ率Sが設定値SHを超えたときに、スリップ傾向であると判断する。このとき、動力伝達状態は定常状態から低減した状態にあり、エンジンブレーキの作動が抑制されるので、カットフラグをfs=1にセットする。そして、スリップ率Sが再び低下し、設定値SLを下回ったときに、スリップ傾向が収束したと判断する。カットフラグをfs=1に切換えるときと、fs=0に切換えるときとで、設定値を異ならせているので、ハンチングを抑制できる。
【0040】
図17は、低減復帰フラグfrのタイムチャートである。
ブレーキペダルが非操作状態であれば、ドライバ要求フラグはfd=0となり(S81の判定が“No”)、このときは低減復帰フラグは常にfr=0となる(S86)。この状態から、ブレーキペダルが操作状態となると、ドライバ要求フラグがfd=1となる(S81の判定が“Yes”)。そして、変速位置が非駆動レンジ(Nレンジ)から駆動レンジ(Dレンジ)に切り替わると、カットフラグがfp=1からfp=0へと切り替わるので(S82の判定が“Yes”)、低減復帰フラグがfr=0からfr=1へと切り替わる(S83)。
このようにして、カットフラグfp及びfsの設定状態に応じて、低減復帰フラグfrを設定する。
一方、ドライバ要求フラグfd、車速判定フラグfv、及びカットフラグfpの設定状態に応じて、制御許可フラグfcを設定する。
【0041】
図18は、制御許可フラグを示すタイムチャートである。
先ず車速Vが閾値Vt1(例えば40km/h)以上になると、車速判定フラグが『fv=1』にセットされる。そして、マスタ圧センサ値に基づいて、摩擦ブレーキの諸元等からドライバ要求減速度Gdを算出し、このドライバ要求減速度Gdが予め定められた閾値Gt1(例えば0.05G)以上になると、減速要求判定フラグが『fd=1』にセットされる。
【0042】
これら車速判定フラグが『fv=1』で、且つ減速要求判定フラグが『fd=1』で、且つカットフラグが『fp=0』あるときに、エンジンブレーキによって減速度を増加させるライズアップとビルドアップを許容するための制御許可フラグが『fc=1』にセットされる(ステップS12)。すなわち、ある程度の車速で走行しており、運転者が減速を要求しており、且つ動力伝達状態が定常状態にある状態で、本実施形態のライズアップとビルドアップは実行される。
【0043】
図19は、ライズアップ率Rr及びビルドアップ率Rb、並びにライズアップ率累計値Cr及びビルドアップ率累計値Cbのタイムチャートである。
先ずドライバ要求減速度Gdに応じて、ライズアップ率Rrとビルドアップ率Rbとを設定する(ステップS13、図11)。ライズアップ率Rrはビルドアップ率Rbよりも大きく、ドライバ要求減速度Gdが大きいほど、ライズアップ率Rrが大きくなると共に、一方のビルドアップ率Rbが小さくなる。さらに、低減復帰フラグがfr=1のときには、fr=0のときよりも、ライズアップ率Rr及びビルドアップ率Rbが共に小さくなる。
【0044】
これにより、運転者によるブレーキ操作の初期に増加率が高くなり、中期から後期にかけて増加率が小さくなるので、ブレーキ操作の初期に制動力の食い付きが良く、中期から後期にかけては減速度が漸増するので、運転者に違和感を与えることがなく、安心感を与える。
さらに、ドライバ要求減速度Gdの変化量に対するライズアップ率の変化量(傾き)が、ドライバ要求減速度Gdの変化量に対するビルドアップ率の変化量(傾き)よりも大きくなる。
【0045】
これにより、運転者の制動力が大きいほど、制動初期の食い付きが大きくなるので、運転者に安心感を与える。
また、ライズアップ率Rrに上限値を設けている。
これにより、過大なエンジンブレーキが作用することを抑制できるので、エンジン音の上昇が抑制される。
こうして、ライズアップ率Rrとビルドアップ率Rbとを設定したら、ライズアップ率累計値Crを算出する(ステップS14)。
具体的には、制御許可フラグが『fc=1』であるときに(ステップS31の判定が“Yes”)、演算周期毎にRrずつ累計することで、ライズアップ率累計値Crを算出する(ステップS35)。
【0046】
ライズアップ累計値Crは、最大値(Rr×Tr)で制限される。Trはライズアップ時間であり、演算周期毎にRrずつ累計してゆける最大時間を表す。これにより、ライズアップ累計値Crが不必要に増大することを防げる。したがって、過大なエンジンブレーキが作用することを抑制できるので、エンジン音の上昇が抑制される。
こうして、ライズアップ率累計値Crを算出したら、ビルドアップ率累計値Cbを算出する(ステップS15)。
【0047】
具体的には、制御許可フラグが『fc=1』で、ライズアップが完了しているときに(ステップS41、S43の判定が共に“Yes”)、演算周期毎にRbずつ累計することで、ビルドアップ率累計値Cbを算出する(ステップS44)。一方、ライズアップが完了していなければ(ステップS43の判定が“No”)、ライズアップ率累計値Cbを0に設定する(ステップS42)。
【0048】
ビルドアップ累計値Cbは、最大値(Rb×Tb)で制限される。Tbはビルドアップ時間であり、演算周期毎にRbずつ累計してゆける最大時間を表す。これにより、ビルドアップ累計値Cbが不必要に増大することを防げる。
こうして、ビルドアップ率累計値Cbを算出したら、ライズアップ累計値Crとビルドアップ率累計値Cbとを加算し、最終的な嵩上げ率累計値Cを算出する(ステップS51)。そして、この嵩上げ累計値Cをドライバ要求減速度Gdに乗算することで、嵩上げ減速度Guを算出し、出力する(ステップS52、53)。
【0049】
図20は、嵩上げ減速度Guのタイムチャートである。
ライズアップ中は、ライズアップ率累計値Crが増加してゆき、ビルドアップ率累計値Cbが0を維持する。一方、ライズアップが終了した後に開始されるビルドアップ中は、ビルドアップ率累計値Cbが増加しゆき、ライズアップ累計値Crが(Rr×Tr)を維持する。
【0050】
嵩上げ率累計値Cの最大値は、ライズアップ率累計値の最大値(Rr×Tr)と、ビルドアップ率累計値の最大値(Rb×Tb)とを加算した値となる。
上記のように、車両の駆動源を被動側から駆動される状態にして車両に減速度を与えるエンジンブレーキを備え、エンジンブレーキによる減速度をライズアップ率Rrで増加させる。そして、減速度をライズアップ率Rrで増加させてから予め定められた時間が経過したら、この時点の減速度から減速度をライズアップ率Rrよりも小さなビルドアップ率Rbで増加させる。
【0051】
すなわち、運転者がブレーキ操作量を保持したときに、減速度を先ずライズアップ率Rrで増加させているので、ブレーキ操作の初期には、制動力の効き(食い付き)の良さを運転者に実感させることができる。
次いで、減速度をライズアップ率Rrよりも小さなビルドアップRb率で増加させているので、ブレーキ操作の中期から後期にかけて制動力が漸増する。これにより、例えば先行車両や停止線に近づくにつれて、運転者がブレーキペダルを踏み増すような修正操作量の増加を抑制することができる。
【0052】
このように、運転者のブレーキ操作を支援し、操作負担を軽減することができる。
ところで、エンジンブレーキを上昇させている状態で、例えば運転者がシフトポジションをDレンジからNレンジへと切換え、さらにNレンジからDレンジへと戻したとする。このとき、運転者がブレーキ操作を維持していると、エンジンブレーキが一旦解除されてから、再び増加することになるので、減速度の変動が大きくなってしまう。
【0053】
そこで、エンジンの被動側の動力伝達状態が、定常状態から低減し、その後、再び定常状態へと復帰したら、低減復帰フラグを『fr=0』から『fr=1』へと切り替える。これにより、低減復帰フラグが『fr=0』のときよりも、ライズアップ率Rr及びビルドアップ率Rbは小さくなる。これにより、エンジンブレーキが一時的に解除され、再び増加するときに、減速度の変動が大きくなることを抑制できる。すなわち、エンジンブレーキを再び増加させるときの、減速度の増加勾配を緩やかになる。
【0054】
制御許可フラグがfc=0にリセットされたときに、嵩上げ減速度Guを急に0に戻すと、運転者に違和感を与えるので、嵩上げ減速度Guを解除するときには、その解除速度(減少勾配)にレートリミッタ処理を施す。これにより、減速度の消失感を与えることを防げる。
動力伝達状態は、先ず変速機15の変速位置から検出する。すなわち、変速位置が駆動レンジ(Dレンジ)から非駆動レンジ(Nレンジ)へ変化したときに、動力伝達状態が定常状態から遮断されたと判断する。また、その後、変速位置が非駆動レンジ(Nレンジ)から駆動レンジ(Dレンジ)へと復帰したときに、再び動力伝達状態が定常状態へと復帰したと判断する。このように、変速機15の変速位置に基づく検出なので、動力伝達状態の遮断と、その復帰を、容易に、且つ正確に検出することができる。
【0055】
また、駆動輪のスリップ率Sからも動力伝達状態を検出する。すなわち、スリップ率Sが設定値SHを超えたときに、動力伝達状態が定常状態から低減したと判断する。また、その後、スリップ率Sが設定値SLを下回ったときに、再び動力伝達状態が定常状態へと復帰したと判断する。このように、駆動輪のスリップ率Sに基づく検出なので、動力伝達状態の低減と、その復帰を、容易に、且つ正確に検出することができる。
【0056】
なお、車輪に制動力を発生させる油圧などの摩擦ブレーキ機構では、運転者のブレーキ操作に応じて、通常の制動力が発生する。したがって、運転者のブレーキ操作に応じて制動力が増減するので、車両の減速度を運転者がコントロールすることができる。つまり、操作性は確保されるので、運転者に違和感を与えることはない。
【0057】
《変形例》
本実施形態では、エンジン車両について説明したが、勿論、ハイブリッド車両(HEV)や電気自動車(EV)に適用してもよい。すなわち、車両の駆動源を被動側から駆動される状態にして車両に減速作用を及ぼすものには適用できる。
本実施形態では、低減復帰フラグが『fr=1』のときには、『fr=0』のときよりも、嵩上げ減速度Guの増加率を減少補正するために、ライズアップ率Rr及びビルドアップ率Rbの双方を減少補正しているが、これに限定されるものではない。すなわち、ライズアップ率Rr及びビルドアップ率Rbの少なくとも一方を減少補正するだけでも、本実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0058】
さらに、ライズアップ率Rrを0に設定すると共に、この時点からビルドアップ率Rbで増加させてもよい。すなわち、ライズアップを省略し、且つビルドアップのみを実行してもよい。
図21は、ビルドアップのみを実行するタイムチャートである。
このように、ライズアップ率Rrを0に設定すると共に、この時点からビルドアップ率Rbで増加させても、嵩上げ減速度Guの増加率を減少補正することができ、本実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0059】
《効果》
以上より、パワートレインコントローラ14、ステップS53の処理が「減速手段」に対応し、ライズアップ累計部24、及びステップS14の処理が「第一の増加制御手段」に対応する。ビルドアップ累計部25、及びステップS15の処理が「第二の増加制御手段」に対応し、伝達状態検出部21、ステップS11の処理が「伝達状態検出手段」し、図11のマップが「増加率補正手段」に対応する。
【0060】
(1)本実施形態の車両用減速度制御装置によれば、運転者がブレーキ操作を行ったときに、エンジンブレーキによる減速度をライズアップ率Rrで増加させる。このライズアップ率Rrで予め定められた時間Trだけ増加させたときに、この時点の減速度からエンジンブレーキによる減速度をライズアップ率Rrよりも小さなビルドアップ率Rbで増加させる。エンジン被動側の動力伝達状態が定常状態から低減したことを検出し、その後、再び定常状態へ復帰したことを検出したときに、エンジンブレーキによる減速度の増加率を減少補正する。
【0061】
このように、運転者がブレーキ操作を行ったときに、減速度を増加させるので、運転者のブレーキ操作を支援することができる。また、エンジン被動側の動力伝達状態が、定常状態から低減し、その後、再び定常状態へと復帰したら、減速度の増加率を減少補正するので、減速度の変動を抑制することができる。
【0062】
(2)本実施形態の車両用減速度制御装置によれば、変速機15の変速位置がDレンジからNレンジへ変化したことを検出したときに、動力伝達状態が定常状態から低減したと判断する。また、その後、変速位置がNレンジからDレンジへと復帰したことを検出したときに、再び定常状態へ復帰したと判断する。
このように、変速機15の変速位置に基づいて検出するので、動力伝達状態の低減と、その復帰を、容易に、且つ正確に検出することができる。
【0063】
(3)本実施形態の車両用減速度制御装置によれば、駆動輪のスリップ傾向を検出したときに、動力伝達状態が定常状態から低減したと判断する。また、その後、スリップ傾向が収束したことを検出したときに、再び定常状態へ復帰したと判断する。
このように、駆動輪のスリップ傾向に基づいて検出するので、動力伝達状態の低減と、その復帰を、容易に、且つ正確に検出することができる。
【0064】
(4)本実施形態の車両用減速度制御装置によれば、ライズアップ率Rrを減少補正することで、エンジンブレーキによる減速度の増加率を減少補正する。
このように、ライズアップ率Rrを減少補正することで、減速度の増加率を減少補正しているので、演算が容易である。
【0065】
(5)本実施形態の車両用減速度制御装置によれば、ビルドアップ率Rbを減少補正することで、エンジンブレーキによる減速度の増加率を減少補正する。
このように、ビルドアップ率Rbを減少補正することで、減速度の増加率を減少補正しているので、演算が容易である。
(6)本実施形態の車両用減速度制御装置によれば、ライズアップ率Rrを0に設定すると共に、この時点から減速度をビルドアップ率Rbで増加させることで、エンジンブレーキによる減速度の増加率を減少補正する。
このように、ライズアップを省略し、ビルドアップのみを実行することで、減速度の増加率を減少補正しているので、演算が容易である。
【0066】
(7)本実施形態の車両用減速度制御方法によれば、運転者がブレーキ操作を行ったときには、エンジンブレーキによる減速度をライズアップ率Rrで増加させる。エンジンブレーキによる減速度をライズアップ率Rrで予め定められた時間だけ増加させたときには、この時点の減速度からエンジンブレーキによる減速度をライズアップ率Rrよりも小さなビルドアップ率Rbで増加させる。そして、エンジン被動側の動力伝達状態が、定常状態から低減し、その後、再び定常状態へと復帰した場合には、エンジンブレーキによる減速度の増加率を減少補正する。
このように、運転者がブレーキ操作を行ったときに、減速度を増加させるので、運転者のブレーキ操作を支援することができる。また、エンジン被動側の動力伝達状態が、定常状態から低減し、その後、再び定常状態へと復帰したら、減速度の増加率を減少補正するので、減速度の変動を抑制することができる。
【符号の説明】
【0067】
11FL-11RR 車輪速センサ
12 ブレーキアクチュエータ
13 車両制御コントローラ
14 パワートレインコントローラ
21 伝達状態検出部
22 制御許可フラグ設定部
23 嵩上げ率算出部
24 ライズアップ率累計部
25 ビルドアップ率累計部
26 減速度算出部
31 ドライバ要求減速度算出部
32 減速要求判定フラグ設定部
33 車速算出部
34 車速判定フラグ設定部
35 制御許可フラグ設定部
41 シフト条件判定部
42 スリップ率算出部
43 スリップ率条件判定部
44 低減復帰フラグ設定部
51 前輪平均車輪速算出部
52 後輪平均車輪速算出部
53 駆動輪スリップ率算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動源を被動側から駆動される状態にして車両に減速度を与える減速手段と、
運転者がブレーキ操作を行ったときに、前記減速手段による減速度を第一の増加率で増加させる第一の増加制御手段と、
前記第一の増加制御手段が前記減速手段による減速度を予め定められた時間だけ増加させたときに、この時点の減速度から前記減速手段による減速度を前記第一の増加率よりも小さな第二の増加率で増加させる第二の増加制御手段と、
前記被動側の動力伝達状態を検出する伝達状態検出手段と、
前記伝達状態検出手段で動力伝達状態が定常状態から低減したことを検出し、その後、再び定常状態へ復帰したことを検出したときに、前記減速手段による減速度の増加率を減少補正する増加率補正手段と、を備えることを特徴とする車両用減速度制御装置。
【請求項2】
前記伝達状態検出手段は、
変速機の変速位置が駆動位置から非駆動位置へ変化したことを検出したときに、動力伝達状態が定常状態から低減したと判断し、
その後、前記変速位置が非駆動位置から駆動位置へと復帰したことを検出したときに、再び前記定常状態へ復帰したと判断することを特徴とする請求項1に記載の車両用減速度制御装置。
【請求項3】
前記伝達状態検出手段は、
駆動輪のスリップ傾向を検出したときに、動力伝達状態が定常状態から低減したと判断し、
その後、前記スリップ傾向が収束したことを検出したときに、再び前記定常状態へ復帰したと判断することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用減速度制御装置。
【請求項4】
前記増加率補正手段は、
前記第一の増加率を減少補正することで、前記減速手段による減速度の増加率を減少補正することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の車両用減速度制御装置。
【請求項5】
前記増加率補正手段は、
前記第二の増加率を減少補正することで、前記減速手段による減速度の増加率を減少補正することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の車両用減速度制御装置。
【請求項6】
前記増加率補正手段は、
前記第一の増加率を0に設定すると共に、この時点から前記第二の増加制御手段によって減速度を前記第二の増加率で増加させることで、前記減速手段による減速度の増加率を減少補正することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の車両用減速度制御装置。
【請求項7】
車両の駆動源を被動側から駆動される状態にして車両に減速度を与えることを駆動源減速とし、
運転者がブレーキ操作を行ったときには、前記駆動源減速による減速度を第一の増加率で増加させ、
前記駆動源減速による減速度を前記第一の増加率で予め定められた時間だけ増加させたときには、この時点の減速度から前記駆動源減速による減速度を前記第一の増加率よりも小さな第二の増加率で増加させ、
前記被動側の動力伝達状態が、定常状態から低減し、その後、再び定常状態へと復帰した場合には、前記駆動源減速による減速度の増加率を減少補正することを特徴とする車両用減速度制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−11307(P2013−11307A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144470(P2011−144470)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】