説明

車両用経路案内装置

【課題】太陽電池を搭載した車両において効率のよい蓄電を行うことができる車両用経路案内装置あるいはシステムを提供すること。
【解決手段】本発明に係る車両用経路案内装置1は、太陽電池2を搭載した車両における、ユーザが入力した目的地に至る経路を探索する探索手段3と、当該探索手段が探索した経路をユーザに表示する表示手段8とを有する車両用経路案内装置であって、
候補となる複数の特定経路を探索する経路探索手段3と、当該複数の特定経路の太陽電池発電量と消費電力量とを演算する演算手段3とを備えて、前記探索手段3が当該複数の特定経路の中から、前記太陽電池発電量と前記消費電力量との比較に基づき適切な経路を選択することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池を使用した車両に適用して好適な車両用経路案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーの要請と太陽電池の性能の向上に合わせて、車両に太陽電池を搭載することが検討されている。このような車両において、太陽電池を用いてより効率的に発電を行うためには、太陽光がより多く享受できる経路を選択して走行することが必要となる。
【0003】
このため、例えば、特許文献1に記載されたような車両用経路案内装置が提案されている。この車両用経路案内装置においては、天候情報受信器によりセンタから送信された天候情報を受信するとともに、受信した天候情報をもとに太陽光をより多く享受できる太陽光照射量の多い経路を探索して運転者に提供し太陽電池の発電量をなるべく大きくしている。
【特許文献1】特開2000−353295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、このような車両用経路案内装置においては、太陽光照射量が多い経路では必然的にエアコン等の冷却系負荷消費電力量ひいては消費電力量が大きくなるため、太陽電池の発電量を大きくできても消費電力量もその分上がってしまうため、太陽電池が発電した電力をバッテリに蓄電するにあたってはその蓄電効率が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑み、太陽電池を搭載した車両において効率のよい蓄電を行うことができる車両用経路案内装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題を解決するため、太陽電池を搭載した車両における、ユーザが入力した目的地に至る経路を探索する探索手段と、当該探索手段が探索した経路をユーザに表示する表示手段とを有する車両用経路案内装置であって、
候補となる複数の特定経路を探索する経路探索手段と、当該複数の特定経路の太陽電池発電量と消費電力量とを演算する演算手段とを備えて、前記探索手段が当該複数の特定経路の中から、前記太陽電池発電量と前記消費電力量との比較に基づき適切な経路を選択することを特徴とする。
【0007】
ここで、前記探索手段は前記太陽電池発電量が前記消費電力量よりも大きい経路を適切な経路として選択することが好ましい。
【0008】
加えて、前記消費電力量は冷却系負荷消費電力量であることが好ましい。
【0009】
さらに、前記演算手段が前記消費電力量をユーザの操作傾向情報に基づいて演算することが好ましい。
【0010】
さらに、前記演算の精度を高めるため、前記演算手段が前記太陽電池発電量および前記消費電力量をセンタが集計した他車の太陽電池発電量および消費電力量の実測値と位置情報に基づいて演算することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、太陽電池を搭載した車両において効率のよい蓄電を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る車両用経路案内装置の一実施形態を示すブロック図である。
【0013】
車両用経路案内装置1は、太陽電池2を搭載した車両において、ユーザが入力した目的地に至る経路を探索し、当該経路をユーザに案内するものであり、候補となる特定の経路を探索する経路探索手段であり、目的地に至る経路を探索する探索手段として機能するナビゲーションECU3と、ユーザが目的地を入力する入力手段としてのタッチパネル4と、車両の現在位置を把握するためのGPS5と、経路探索に用いる地図情報を格納するデータベース6と、同じく経路探索に用いる気温、太陽光照度、降水確率等の天候情報を路側のセンタから受信する受信器7と、探索した経路をユーザに表示する表示手段としてのディスプレイ8と、経路案内のための音声を出力するスピーカ9とを、備える。加えて、太陽電池2の正極側はバッテリ10の正極側と冷却系負荷11に接続され、ナビゲーションECU3には、太陽電池2の発電量と、冷却系負荷11の消費電力量が入力され、当該太陽電池発電量と冷却系負荷消費電力量と車両の現在位置とを合わせて路側のセンタに送信する送信器12が設けられる。
【0014】
太陽電池2は、例えば車両のルーフ上面に設けられ、太陽光のエネルギーを電力に変換して、バッテリ10および冷却系負荷11に供給する。
【0015】
GPS5(Global Positioning System:全地球測位システム)は、地球上空の複数の軍事衛星からの電波を受信し三角測量の原理で自車の経度と緯度を測定する。
【0016】
データベース6は、CD−ROMやDVD−ROM等の記憶媒体により構成され、表示用の地図情報と、探索用の地図情報を格納し記憶している。
【0017】
ナビゲーションECU3は、受信器7により受信した天候情報と、データベース6内の地図情報から、複数の特定経路通過時の太陽電池発電量と消費電力量とを演算する演算手段としても機能し、当該複数の特定経路の中から、前記太陽電池発電量と前記消費電力量との比較に基づき適切な経路を選択して、当該経路をデータベース6に格納された地図情報、目的地、車両の現在位置ととともにユーザにディスプレイ8を用いて表示して案内する。
【0018】
ここで太陽電池発電量は、例えば、天候情報のうち太陽光照度を用い、地図情報中にて太陽光を遮蔽するビルやトンネル、山等の障害物が特定経路中にどの程度あるかに基づいて演算される。また、消費電力量は、例えば、天候情報のうちの気温、太陽光照度によりユーザがどの程度冷却系負荷を動作させるかどうかに基づいて演算される。後者の計算にあたってはユーザの操作傾向(設定温度等)をあらかじめ調査してユーザの操作傾向情報として記憶しておきそのユーザの操作傾向情報に基づいて消費電力量を演算する。
【0019】
あるいは、消費電力量は現在の冷却系負荷であるエアコンの設定温度と気温と太陽光照度から一義的に決めてもよい。つまり、現在の車内温度および特定地点における気温と太陽光照度からその地点における車内温度がどれだけになるかを推定し、冷却系負荷であるエアコンの設定温度の設定温度と比較することで、どれだけの消費電力でエアコンが作動するかを算出する。
【0020】
これらの太陽光発電量および消費電力量の演算は、現在位置から目的地までの特定経路のトータルで行ってもよいし、前述した天候情報の精度に基づく単位の経路を設定し、特定経路を単位経路ごとに行ってもよい。
【0021】
例えば、図2に示すように、車両の現在位置Aからユーザが入力した目的地Bに至る特定経路が存在する場合に、経路ACにおける、太陽電池発電量の演算値をGac、冷却系負荷の消費電力量の演算値をLac、経路CBにおける、太陽電池発電量の演算値をGcb、冷却系負荷の消費電力量の演算値をLcb、経路ABにおける、太陽電池発電量の演算値をGab、冷却系負荷の消費電力量の演算値をLab、経路ADにおける、太陽電池発電量の演算値をGad、冷却系負荷の消費電力量の演算値をLad、経路DBにおける、太陽電池発電量の演算値をGdb、冷却系負荷の消費電力量の演算値をLdbであるとすると、特定経路ACBの太陽電池発電量の演算値から冷却系負荷の消費電力量の演算値を減算した値はGac+Gcb−Lac−Lcbであり、特定経路ABの太陽電池発電量の演算値から冷却系負荷の消費電力量の演算値を減算した値はGab−Labであり、特定経路ADBの太陽電池発電量の演算値から冷却系負荷の消費電力量の演算値を減算した値はGad+Gdb−Lad−Ldbである。
【0022】
このように求めた特定経路通過中のトータルの太陽電池発電量からトータルの冷却系負荷の消費電力量を減算した値が一番大きい特定経路を選択する。これにより、太陽電池2の発電量を大きくするとともに、冷却系負荷の消費電力量を小さくする現在位置Aから目的地Bに至る経路を探索することができ、太陽電池2からバッテリ10への蓄電の効率を高めることができる。
【0023】
ここで、消費電力量として、冷却系負荷の消費電力量を用いているのは、冷却系負荷消費電力量は太陽光の照射量により増減が影響されやすいからである。もちろん消費電力量として、冷却系負荷以外の消費電力量を含めることもできる。この場合、特に太陽電池を搭載した車両が電気自動車である場合には、ユーザのアクセルワークなどの操作傾向情報に基づいて消費電力量を演算してもよい。また、電気自動車でない通常の車両においても、平均車速、一時停止の予測回数等から消費電力量を予測することも可能である。
【0024】
ここで、太陽電池発電量と冷却系負荷消費電力量の演算の精度を高めるため、太陽電池発電量および前記消費電力量を演算するにあたり、センタに集計された他車の太陽電池発電量および消費電力量の実測値を使用することもできる。この場合には、他社に搭載されているカーナビゲーションシステム1の太陽電池2の発電量の実測値と、冷却系負荷11の消費電力の実測値をGPS5により求めた現在位置とともに、送信器12から一旦路側のセンタに送信し、当該センタから、自車のカーナビゲーションシステム1がこれらの太陽電池2の発電量の実測値と、冷却系負荷11の消費電力の実測値をGPS5により求めた現在位置を受信することが必要である。
【0025】
これらのことをより高精度に行うため。本発明に係る車両用経路案内装置は以下に述べる形態のシステムを構築することができる。
【0026】
図3は、本発明に係る車両用検索装置により構成される車両用経路案内システムの一実施形態を示すブロック図である。
【0027】
車両用経路案内システム51は、太陽電池を搭載した車両において、ユーザが入力した目的地に至る経路を探索し、当該経路をユーザに案内するものであり、太陽電池を搭載した一以上の他車両のそれぞれの太陽電池発電量と消費電力と位置情報とを測定する車載側測定手段52と、車載側測定手段52が測定した太陽電池発電量と消費電力と位置情報とを集計して太陽電池発電量マップαおよび冷却系負荷消費電力量マップβを作成するセンタ53と、センタ53から受信した太陽電池発電量マップαと冷却系負荷消費電力量マップβとの比較に基づき、太陽電池発電量が冷却系負荷消費電力量を上回る位置γを演算して、当該位置を基準として前記経路を探索する太陽電池を搭載した自車の車載側経路探索手段54とを備える。
【0028】
車載側測定手段52は図1に示した車両用経路案内装置1で構成することができ、当該装置1のナビゲーションECU3には、それぞれの他車の太陽電池2の発電量と、冷却系負荷11の消費電力量が入力され、太陽電池発電量と冷却系負荷消費電力量と車両の現在位置とを合わせた情報をセンタ53に送信器12により送信する。
【0029】
センタ53は、車載側測定手段52が測定した太陽電池発電量と消費電力と位置情報とを受信し集計して例えば図4に示すような太陽電池発電量マップαおよび冷却系負荷消費電力量マップβを作成し、車載側経路探索手段54に送信する。
【0030】
車載側経路探索手段54も図1に示した車両用経路案内装置1で構成することができ、当該装置1のナビゲーションECU3は、受信器7によりセンタ53から受信した太陽電池発電量マップαおよび冷却系負荷消費電力量マップβに基づき、太陽電池発電量が冷却系負荷消費電力量を上回る位置γを演算して、位置γを多く含むように経路を探索して、当該経路をユーザにディスプレイ8を用いて表示し案内する。
【0031】
これらのことにより、太陽電池がバッテリに蓄電するに当たり効率がよい経路を、リアルタイムで測定した他車の太陽電池発電量および冷却系消費電力量に基づいて探索することができるので、さらに精度の高い経路の探索を行うことができる。加えて、探索手段としてのナビゲーションECU3があらかじめ候補となる複数の特定経路を探索する必要がないので、経路案内の処理内容を簡略化することができる。
【0032】
以上本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明は上述した実施例に制限されることなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形および置換を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、太陽電池を搭載した車両のバッテリへの蓄電の効率を高める車両用経路案内装置に関するものであり、大幅な変更を加えることなく、太陽電池によるバッテリの蓄電の効率を高めることができるので、太陽電池を搭載した車両であれば、乗用車、トラック、バス等の様々な車両に適用可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る車両用経路案内装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る車両用経路案内装置の一実施形態の経路探索方法を説明する模式図である。
【図3】本発明に係る車両用経路案内システムの他の実施形態を示すブロック図である。
【図4】本発明に係る車両用経路案内システムの他の実施形態の経路探索方法を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0035】
1 車両用経路案内装置
2 太陽電池
3 ナビゲーションECU
4 タッチパネル
5 GPS
6 データベース
7 受信器
8 ディスプレイ
9 スピーカ
10 バッテリ
11 冷却系負荷
51 車両用経路案内システム
52 車載側測定手段
53 センタ
54 車載側経路探索手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池を搭載した車両における、ユーザが入力した目的地に至る経路を探索する探索手段と、当該探索手段が探索した経路をユーザに表示する表示手段とを有する車両用経路案内装置であって、
候補となる複数の特定経路を探索する経路探索手段と、当該複数の特定経路の太陽電池発電量と消費電力量とを演算する演算手段とを備えて、前記探索手段が当該複数の特定経路の中から、前記太陽電池発電量と前記消費電力量との比較に基づき適切な経路を選択することを特徴とする車両用経路案内装置。
【請求項2】
前記探索手段は前記太陽電池発電量が前記消費電力量よりも大きい経路を適切な経路として選択することを特徴とする請求項1に記載の車両用経路案内装置。
【請求項3】
前記消費電力量は冷却系負荷消費電力量であることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用経路案内装置。
【請求項4】
前記演算手段が前記消費電力量をユーザの操作傾向情報に基づいて演算することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両用経路案内装置。
【請求項5】
前記演算手段が前記太陽電池発電量および前記消費電力量をセンタが集計した他車の太陽電池発電量および消費電力量の実測値と位置情報に基づいて演算することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車両用経路案内装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−199034(P2007−199034A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−20959(P2006−20959)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】