説明

車両用自動変速機の制御装置

【課題】インターロック状態の締結要素を解放するときに車両を減速させて、締結要素の解放を行い易くする。
【解決手段】複数の摩擦係合要素を油圧により選択的に締結して変速段を切り換える自動変速機の制御装置であって、摩擦係合要素のうちの締結させた締結要素のインターロック状態を検知するインターロック検知手段(S1)と、車速を検知する車両状態検知手段(S3)と、インターロック検知手段がインターロック状態を検知したときに、車両状態検知手段により検知される車速を判断し、車速が規定車速以下の場合に、エンジントルクをダウンさせるトルクダウン制御手段(S5)と、を含んで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
車両に搭載される自動変速機の制御装置に関する技術が以下に開示される。
【背景技術】
【0002】
近年、複数のプラネタリギアと摩擦係合要素とを用いて変速段を構成した車両用の自動変速機が知られている。当該自動変速機は、電磁弁等による油圧制御で摩擦係合要素の締結、解放を選択的に行って適切な摩擦係合要素を締結し、この締結要素の組み合わせに従って変速を実行する。また、このような自動変速機を副変速機として備えたCVT(Continuously Variable Transmission)も開発され、実用化されている。当該副変速機付CVTは、出力側のセカンダリプーリーに、摩擦係合要素の制御によって例えば前進2段の変速と前後進切換を実行する副変速機を、備えたものである。
【0003】
この種の自動変速機においては、電磁弁の動作不良により無用なインターロック状態の発生する可能性がゼロではないので、例えば特許文献1に開示されるフェイルセーフの手法が提案されている。また、上記自動変速機において最近では、特許文献2,3,4に開示されているように、停車時に所定の摩擦係合要素をインターロックし、ブレーキのアシストとして使用することも提案されているが、この場合にも、電磁弁の動作不良で発進時にインターロックが解除されないことがあり得る。したがって、ここでもフェイルセーフ処理があると好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−092832号公報
【特許文献2】特開2009−144898号公報
【特許文献3】特開2010−006326号公報
【特許文献4】特開2010−014168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようにフェイルセーフ機能を備えた自動変速機は、予期せぬインターロック状態が発生した場合、インターロック状態となっている締結要素を特定し、これを解放する制御を実行する。このときに、車両の走行状態から見て可能であれば、車両を減速させて、微速ないしは停車の状態にした方が、締結要素の解放を行い易く、装置に係る負荷も少ない。
本発明は、この点に鑑みた車両用自動変速機の制御装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に対して提案する制御装置は、複数の摩擦係合要素を油圧により選択的に締結して変速段を切り換える車両用自動変速機の制御装置であって、
前記摩擦係合要素のうちの締結させた締結要素のインターロック状態を検知するインターロック検知手段と、
少なくとも車速を含む車両状態を検知する車両状態検知手段と、
前記インターロック検知手段がインターロック状態を検知したときに、前記車両状態検知手段により検知される車速を少なくとも判断し、車速が規定車速以下の場合に、エンジントルクをダウンさせるトルクダウン制御手段と、
を含んで構成される。
【発明の効果】
【0007】
上記提案に係る車両用自動変速機の制御装置は、インターロック状態を検知したときに、車速に応じてエンジントルクダウンを実行する。エンジンのトルクダウンによるエンジンブレーキの作用で車両を減速させるので、締結要素の解放を行い易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】車両用自動変速機の実施形態を示した図。
【図2】図1に示す車両用自動変速機の制御装置が実行するトルクダウン処理の流れを示したフローチャート。
【図3】図2に示すトルクダウン処理が実行されたときの目標変速段、車速、トルク、アクセル開度のタイムチャート。
【図4】図2中の強制トルクダウン制御のサブルーチン例を示したフローチャート。
【図5】図4に示す強制トルクダウン制御が実行されたときの目標変速段、車速、トルク、アクセル開度のタイムチャート。
【図6】図2中の強制トルクダウン制御の他のサブルーチン例を示したフローチャート。
【図7】図2中の強制トルクダウン制御の他のサブルーチン例を示したフローチャート。
【図8】図7に示す強制トルクダウン制御が実行されたときの目標変速段、車速、トルク、減少量指示値、アクセル開度のタイムチャート。
【図9】図2中の強制トルクダウン制御の他のサブルーチン例を示したフローチャート。
【図10】図9に示す強制トルクダウン制御が実行されたときの目標変速段、車速、トルク、減少量指示値、アクセル開度のタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、自動変速機の一例として副変速機付CVTを搭載した車両の要部概略を示している。なお、副変速機付CVT以外にも、いわゆるクラッチツウクラッチ制御の有段自動変速機などに本発明を適用可能である。
エンジン1の出力は、トルクコンバータ2を介して自動変速機3に伝達される。自動変速機3では、プライマリプーリー3aにトルクコンバータ2の出力が伝達され、巻回されたベルト3bからセカンダリプーリー3cへ伝達される。セカンダリプーリー3cの出力は、副変速機3dを経て減速ギアから駆動輪4へ伝達される。
【0010】
副変速機3dは、複数のプラネタリギア及び摩擦係合要素を用いて変速段を構成したもので、本実施形態では、前進2段(1速、2速)の変速と前後進切換の機能を有する。摩擦係合要素は、前述の特許文献にあるように、電磁弁による油圧制御で断続するクラッチであり、油圧により摩擦係合要素が選択的に締結され、該締結要素の組み合わせによって変速段が切り換わる。セカンダリプーリー3cに、前進2段の副変速機3dが接続されることによって、変速比幅が拡大することになる。
【0011】
この自動変速機3を制御する制御装置10は、エンジン1のECU(Electronic Control Unit)11及びカーナビゲーションシステム(以下、カーナビ)12とCAN(Controller Area Network)等で通信し、ECU11から車両状態情報、カーナビ12からナビゲーション情報を取得する。そして、車両状態情報として検知される、アクセル開度(又はスロットル開度)、エンジン1の回転速度、トルク、車速などに基づいて制御装置10は、プーリー3a,3c及び副変速機3dの変速を制御する。また、制御装置10は、内蔵したプログラムに従って後述のインターロック検知手段、車両状態検知手段、トルクダウン制御手段として機能し、副変速機3dにおいてインターロック状態が発生した場合に、エンジン1に対するトルクダウン処理を実行する。さらに、制御装置10は、インターロック状態が発生した場合には、そのインターロック状態となっている締結要素を特定し、解放処理を実行する。インターロック検知手段として機能する制御装置10が検知するインターロック状態は、例えば、停車時にブレーキアシストのために締結していた締結要素が、電磁弁の動作不良で発進時に締結を解除できず、他の変速段へ切り換えできないといった状態である。
【0012】
以下、図2のフローチャートに沿って、制御装置10において実行されるトルクダウン処理に関し、説明する。以下の説明では、停車中の副変速機3dにおいて、1速の変速段を構成する摩擦係合要素が締結されており、該1速の締結要素がインターロック状態になってしまったとする。そして、この状態からアクセルONとなって発車する場合を例にして説明する。
【0013】
イグニッションスイッチONやアクセルONに反応してスタートし、インターロック検知手段としての機能を実行する制御装置10は、ステップS1において、副変速機3dにインターロック状態が発生するか否かを監視する。このインターロック検知は、摩擦係合要素の動作に関連した油圧スイッチ/油圧センサがあれば、その値を利用することで検知することができる。あるいは、センサレス方式の場合は、インターロック状態にある締結要素のトルク容量を上回るエンジン1のトルクがかかって当該締結要素が引き摺られる動作から、インターロック状態を検知することができる。
【0014】
ステップS1でインターロック状態を検知した制御装置10は、ステップS2において、インストルメントパネル等に配設された警告灯やブザー、合成音声、あるいはカーナビ画面などにて、インターロック状態の発生を運転者に通知する。そして、制御装置10は、ステップS3において車両状態検知手段としての機能を実行し、ECU11から取得される車両状態情報の車速を検知する。続いて制御装置10は、トルクダウン制御手段としての機能を実行し、検知された車速が規定車速以下か否かを判断する。一例として規定車速は、減速しても支障ない10km/hをしきい値として使用する。制御装置10は、ステップS3において規定車速を超えていると判断した場合は、ステップS4へ進んで前述の特許文献にあるようなフェイルセーフ処理を実行して、車両を走行可能な状態に保つ。例えば、フェイルセーフ処理は、電磁弁に併設したフェイルセーフ弁によりインターロック状態の締結要素に対する供給圧を遮断することで実行される。
【0015】
ステップS3において規定車速以下と判断した制御装置10は、ステップS5においてトルクダウン制御手段としての機能を実行し、ECU11に指示して、規定の減少率で強制的にエンジン1のトルクをダウンさせる。このときの規定の減少率(時間当りに減少させるトルク値)は、トルクダウンによるエンジンブレーキの作用が極端な急停車につながらないような値が好ましく、現在の変速段、インターロック状態を検知してからの経過時間、車両状態情報から得られるエンジン1の回転速度、トルク、車速などに基づいて適宜算出することができる。当該減少率は、一定の傾き(ramp)を保ったトルクの暫減の他、ステップ式に減少させる、減少の度合いを逓増、逓減させるなど、そのときの状況や車種等に応じて様々である。なお、この減速時に、後続車へ減速することを知らせるために、ストップランプ(ブレーキランプ)、ハザードランプを点灯させてもよい。また、車両に後方センサが搭載されていれば、該センサが後続車接近を検知している場合に、トルクの減少率を工夫してエンジンブレーキの作用を弱くする制御を実行してもよい。
【0016】
ステップS5において強制トルクダウン制御を開始した制御装置10は、ステップS6において、インターロック状態となっている締結要素の解放を実行する。すなわち、前述の特許文献にあるように、インターロック状態の締結要素を特定し、該締結要素に対する油路の切り換え等によって締結要素が解放されるように、各部に指示を出す。そして、制御装置10は、ステップS7において、解放が完了するか否か判断する。解放が完了してインターロック状態の解除に成功すれば、制御装置10は、ステップS8でインターロック状態の通知を解除し、さらにステップS9で強制トルクダウン制御を解除して、インターロック状態の検知ステップS1へリターンする。以後、運転者のアクセルワークに従って通常どおりの変速制御が実行される。
【0017】
ここまでの処理に係る変速段、車速、エンジン1のトルク、アクセル開度のタイムチャートを、図3Aに示す。
発車のためにアクセルが踏み込まれることでアクセル開度が徐々に上昇し、これに合わせてエンジン1のトルクが上がり、車速も増加する。しかし、上記のように、1速の締結要素にインターロック状態が発生しており、車速増加で2速へシフトアップしようとしても、1速を構成する締結要素が解放されず、ある時点でインターロック状態が検知される。インターロック状態を検知したことでトルクダウンが実行され、トルクは、規定の減少率でダウンを始める(矢示Tramp)。インターロック状態が通知されることで運転者がアクセルOFFにすると、アクセル開度は閉へ移行する(矢示Aramp)。トルクダウンに伴ってエンジンブレーキの作用により車速は減少し(矢示Sramp)、1速締結要素の解放を行うために適した速度まで落ちるか、もしくは停車すると、1速締結要素の解放が実行される。これにより、1速締結要素が解放されれば、トルクダウンが解除されると共に2速を構成する摩擦係合要素が締結される。インターロック状態の解除でアクセルが踏まれ、アクセル開度が開いていくと、トルクが上昇して2速締結要素により走行が行われる。インターロックの解除は、警告灯やブザー、合成音声により運転者に通知することができる。
【0018】
この図3Aに示すタームチャートにおいて、インターロック状態の検知時にアクセルが戻されず、これ以降踏み込まれたままであると、1速締結要素解放後の2速締結要素による発車時において、トルクの急上昇が生じて急発車する可能性がある。そこで制御装置10は、ECU11に指示して、2速締結要素による発進時にトルク規制をかけて、トルク上昇を規定の上昇率に抑える制御も可能である。また、解放された1速締結要素は、メンテナンスが行われるまで使用不可とすることも可能であるし、バルブチェック等を行って制御装置10が異常なしを確認すれば、ゴミによる一時的な油路詰まりと判断して、臨時に再使用することも可能である。
【0019】
図2のフローチャートに戻って、制御装置10は、ステップS7で解放が完了しないときは、ステップS10において、規定時間が経過するか否か判断する。この規定時間が長すぎると、インターロック状態にある締結要素が発熱するなどの可能性があるので、摩擦係合要素の種類や車速に基づいて適切な規定時間を決定する。制御装置10は、規定時間が経過しない間はステップS7に戻って、解放完了を判断する。一方、規定時間が経過した場合の制御装置10は、ステップS11において、強制トルクダウン制御を解除し、トルクの上昇を許容する。
【0020】
強制トルクダウン制御を解除した制御装置10は、ステップS12において、解放できなかった1速の締結要素を不使用として変速制御から除外し、2速を構成する摩擦係合要素を締結して変速制御を実行する。継いで制御装置10は、ステップS13において、インストルメントパネル等の警告灯、ブザー、合成音声などにより、運転者へ停車を警告する。すなわち、1速締結要素のインターロック状態が解除されないまま走行しているので、至急停車すべきことを報知する。そして、制御装置10は、シフトレンジがP(パーキング)又はN(ニュートラル)レンジに入れられるか否か判断し、停車を確認する。
【0021】
シフトレンジがP又はNレンジになったこととが確認されると、制御装置10は、ステップS15において、油路掃除処理を実行する。油路掃除処理では、インターロック状態の締結要素に関連する油路に断続的に油圧がかけられて、油路詰まりの解消が図られる。油路掃除処理によりインターロック状態が解消すれば、図2のスタートへリターンする。
【0022】
制御装置10が以上のトルクダウン処理のフローを実行することにより、インターロック状態が検知されたときには、車速に応じてエンジン1のトルクダウンが実行され、トルクダウンによるエンジンブレーキの作用で強制的に車両を減速させることができ、最終的には停車させることも可能である。車両の速度が低いほど、インターロック状態の締結要素にかかっている負荷が低い状態において解放を実行できるので、締結要素の解放を行い易い。また、インターロック状態の締結要素解放時に別の締結要素(変速後の変速段)がつながっていることで副次的に発生し得る急加速について、トルクダウンすることにより抑制できることから、この点において締結要素の解放制御ロジックを簡素化することもできるなど、より締結要素の解放を行い易くなる。さらに、トルクをダウンさせることにより、インターロック状態の締結要素が無理に引き摺られるというような装置に係る負荷も、低減される。さらに、制御装置10は、車速を判断してから強制トルクダウン制御を実行するので、停車する程度にまで減速しても支障のない車速以下の場合にトルクダウンが実行されることになり、車両の状況に合わせた制御が可能になっている。
【0023】
上記図2のフローチャートでは、発車するときの1速(ローギア)から2速(ハイギア)へのシフトアップ時を例示して説明したが、停車に向かって減速しているときの2速から1速へのシフトダウン時、あるいは、減速中にアクセルが踏み込まれて2速から1速へキックダウンするときにも、トルクダウン処理は実行され得る。この場合のタイムチャートを図3Bに示す。
【0024】
図3Bのタイムチャートにおいて、車両は停車するために減速中で、アクセル開度が閉の状態にあって、エンジン1のトルクは所定の状態を維持することとする。副変速機3は、減速に伴って2速から1速へとシフトダウンしようとしているが、2速の締結要素にインターロック状態が発生している。制御装置10は、2速締結要素のインターロック状態を検知し、車速が規定車速以下になっていれば、エンジン1のトルクをダウンさせる。トルクダウンが実行されると、トルクは規定の減少率でダウンを始める(矢示Tramp)。トルクダウンに伴ってエンジンブレーキの作用により車速は減少し(矢示Sramp)、2速締結要素の解放を行うために適した速度まで落ちるか、もしくは停車すると、2速締結要素の解放が実行される。これにより、2速締結要素が解放されれば、トルクダウンが解除されると共に1速を構成する摩擦係合要素が締結される。その後、発車のためにアクセルが踏まれ、アクセル開度が開になると、トルクが上昇して1速締結要素により走行が行われる。解放された2速締結要素は、メンテナンスが行われるまで使用不可とすることも可能であるし、バルブチェック等で制御装置10が異常なしと確認すれば、臨時に再使用することも可能である。
【0025】
図2のフローチャートにおいて、ステップS5の強制トルクダウン制御は、図4に示すサブルーチンで実行することもできる。図4に示すフローチャートは、エンジントルクの規定減少率について、アクセル開度に応じた異なる減少率を採用する例である。すなわち、図4のフローチャートにおいて、トルクダウン制御手段としての制御装置10は、車速が規定車速以下の場合に、検知されるアクセル開度を規定アクセル開度と比較し、該比較結果に応じてエンジントルクの減少率を変化させる。
【0026】
この場合において車両状態検知手段としての機能を実行する制御装置10は、ECU11がら取得される車両状態情報のアクセル開度も検知する。そして、トルクダウン制御手段としての機能を実行して強制トルクダウン制御を開始した制御装置10は、まず、図2のステップS5で説明したような規定の減少率でトルクダウンを実行する。あるいは、後述のステップS22において設定する緩慢な減少率でトルクダウンを実行してもよい。続けて制御装置10は、ステップS20において、検知したアクセル開度を規定アクセル開度と比較する。規定アクセル開度は、運転者に加速の意思がないことを判断できるしきい値とし、閉状態を示す値(開度=0)でもよいが、必ずしも全閉を示す値でなくともよい。すなわち、ステップS20で、検知したアクセル開度が規定アクセル開度を上回っていると一旦判断した後に、後述のステップを実行した結果ステップS20へ戻ってきて再度比較を行うときに、この再比較の時点で検知したアクセル開度が規定アクセル開度以下になっていれば、アクセルは緩められている(つまり加速されていない)ことを判断できる。
【0027】
検知したアクセル開度が規定アクセル開度以下になっていれば、制御装置10は、ステップS21において急速トルクダウンを実行し、ECU11に指示して急速な減少率でエンジン1のトルクをダウンさせる。この急速トルクダウンは、締結要素解放のためにできるだけ早く停車させることを目的としたものなので、例えばECU11に目標トルク値=0(トルクダウンの限界値)とする指示を出してトルクを急落させ、エンジンブレーキの作用を高めるようにする。また、急速なトルクダウンにより所定の車速まで落ちたところで減少率を緩めることによって、停車前に減速感を緩和することもできる。ステップS21の急速トルクダウン実行後の制御装置10は、図2のステップS6へ進む。
【0028】
この急速トルクダウンを実行した場合のタイムチャートを、図5Aに示している。
図3A同様の発車時にインターロック状態が検知され、車速を規定値以下と判断することにより、トルクダウンが開始される。そして、運転者がアクセルOFFすることによりアクセル開度が閉へ移行し(矢示Aramp)、アクセル開度が規定値以下と判断されると、急速な減少率を適用してトルクを急速にダウンさせる(矢示Tramp1)。該トルクダウンに追従して、車速も急落する(Sramp1)。所定の車速まで減速するとトルクの減少率が緩められ(矢示Tramp2)、これに従って車速の落ち方も緩やかになり(矢示Sramp2)、最終的に停車する。1速締結要素の解放を行うために適した速度まで車速が落ちるか、もしくは停車したところで、1速締結要素の解放が指示される。締結要素の解放に際し、上述のように車速が低いほど締結要素の負荷が低いので解放し易い(最も車速が低いのが停車時である)。また、停車する前に締結要素が解放されると、解放時点でエンジンブレーキが一時的に抜ける感覚を運転者に与える可能性があるが、停車してからであればこの違和感を与えずにすむ。1速締結要素が解放されれば、トルクダウンが解除されると共に2速を構成する摩擦係合要素が締結される。インターロック状態の解除でアクセルが踏まれ、アクセル開度が開になると、トルクが上昇して2速締結要素により走行が行われる。
【0029】
図4に戻って、ステップS20において規定アクセル開度を上回っている場合、制御装置10は、ステップS22において緩慢トルクダウンを実行する。緩慢トルクダウンで制御装置10は、ECU11に指示して緩慢な減少率でエンジン1のトルクをダウンさせる。この緩慢トルクダウンは、交差点や踏切などの停車禁止区域に車両が位置している場合を想定したトルクダウンであり、停車禁止区域を脱出するまでは車両が走り続けられるようにする。このために、トルクの緩慢な減少率は、例えば現在の車速から10m以内ではエンジンブレーキによって停車することのない値を算出する。ステップS22で緩慢トルクダウンを実行した制御装置10は、ステップS23において、規定時間が経過するか否か判断する。その結果、規定時間が過ぎれば制御装置10は、ステップS21において急速トルクダウンを実行し、締結要素解放のためにできるだけ早く車速を落とす。
【0030】
この判断に使用する規定時間は、車両を停車禁止区域から脱出させるための猶予時間として設定される。すなわち、規定時間は、緩慢トルクダウンの走行で停車禁止区域を脱出するのに十分な長さが必要である一方、長すぎると締結要素の発熱、摩耗につながるので、両者を加味した適切な値とする。例えば、規定時間は、車速5km/h程度で10mの走行が可能な時間というように決めることができる。
【0031】
ステップS23において規定時間内である場合、制御装置10は、ステップS24において、アクセル開度が増加するか否か判断する。そして、アクセル開度が増加しなければ、制御装置10は、ステップS20からやり直す。一方、アクセル開度が増加する場合は、何らかの事情によって車両の走行を維持したいために運転者がアクセルを踏み込んだということであるから、制御装置10は、ステップS25においてトルクダウンを抑止し、ステップS20へ戻ってアクセル開度が規定アクセル開度以下になるか否かを判断し直す。
【0032】
この緩慢トルクダウンを実行した場合のタイムチャートを、図5Bに示している。
図3A同様の発車時にインターロック状態が検知され、車速を規定値以下と判断することにより、トルクダウンが開始される。そして、アクセルが緩められなければ(矢示Aramp1)、あるいは逆に踏み込まれたりすると、アクセル開度が規定値を上回ると判断され、緩慢な減少率を適用してトルクを緩慢にダウンさせる(矢示Tramp1)。該トルクダウンに追従して、車速も緩やかに減速する(矢示Sramp1)。この緩慢トルクダウンを実行中に、アクセルの踏み込みがあってアクセル開度が上昇すると(矢示Aramp2)、一時的にトルクダウンが抑止され(矢示Tramp2)、これに伴って車速も一時的に上がる(矢示Sramp2)。この後に再度、アクセル開度が規定値と比較されるときも規定値を上回ると判断されるので(矢示Aramp3)、再び緩慢トルクダウンが実行される(矢示Tramp3)。これにより、車速も緩やかに減速する(矢示Sramp3)。
【0033】
続いて緩慢トルクダウンを実行している間に規定時間が経過すると、このときには、急速トルクダウンが実行され、急速な減少率を適用してトルクを急速にダウンさせる(矢示Tramp4)。該トルクダウンに追従して、車速も急落する(Sramp4)。そして、運転者がアクセルを緩めることによりアクセル開度も閉へ移行する(矢示Aramp4)。最終的に、1速締結要素の解放を行うために適した速度まで車速が落ちるか、もしくは停車したところで、1速締結要素の解放が指示される。これにより、1速締結要素が解放されれば、トルクダウンが解除されると共に2速を構成する摩擦係合要素が締結される。インターロック状態の解除でアクセルが踏まれ、アクセル開度が開になると、トルクが上昇して2速締結要素により走行が行われる。
【0034】
以上のように、図4の強制トルクダウン制御によれば、インターロック状態にある締結要素を解放するべく停車する場合であっても、周辺状況による運転者の意思に応じて、締結要素解放のために緊急に停車するか、又は、ある程度の距離を走行してから停車するか、が選択される。したがって、車両が交差点や踏切内に位置しているときであれば、当該区域を脱出する猶予が与えられるなど、状況に応じた走行を許容しつつ、インターロック状態の解消を図ることができる。
【0035】
図6は、図2のフローチャートにおけるステップS5の強制トルクダウン制御に関する別のサブルーチンである。図6に示すフローチャートは、エンジントルクの規定減少率について、カーナビ12から得られるナビゲーション情報に基づいて異なる減少率を採用する例である。すなわち、図6のフローチャートにおいて、トルクダウン制御手段としての制御装置10は、車速が規定車速以下の場合に、検知されるナビゲーション情報に基づいて自車周辺状況を判断し、該自車周辺状況に応じてエンジントルクの減少率を変化させる。
【0036】
この場合において車両状態検知手段としての機能を実行する制御装置10は、カーナビ12から取得されるナビゲーション情報も検知する。そして、トルクダウン制御手段としての機能を実行して強制トルクダウン制御を開始した制御装置10は、まず、図2のステップS5で説明したような規定の減少率でトルクダウンを実行する。あるいは、上記の緩慢な減少率でトルクダウンを実行してもよい。続けて制御装置10は、ステップS30において、検知したナビゲーション情報に基づき、自車周辺状況の判断として短距離停車が可能か否か判断する。例えば、自車位置が、4車線以上の道路など大きな通りでないか否か、停車禁止区域(踏切、交差点等)から離れているか否かを判断する。具体的には、例えば、自車位置が踏切や交差点から30m以上離れているか否かという判断を行う。すなわち、自車位置が大きな通りではなく且つ停車禁止区域から離れていれば、停車禁止区域に近づく前に短距離で停車させた方がよいので、これを判断する。その結果、短距離停車可能であれば、制御装置10は、ステップS31において、上記同様の急速トルクダウンを実行し(図5A参照)、図2のステップS6へ進む。
【0037】
ステップS30で短距離停車不可であった場合の制御装置10は、ステップS32において、ナビゲーション情報に基づき、自車周辺状況の判断として今度は停車禁止区域近傍か否か判断する。例えば、自車位置が、大きな通りか否か、停車禁止区域として踏切及び交差点の5m以内か否かを判断する。すなわち、自車位置が大きな通りであるか、又は停車禁止区域に近ければ、ある程度走行して当該位置から脱出した方がよいので、これを判断する。その結果、停車禁止区域近傍であれば、制御装置10は、ステップS33において上記同様の緩慢トルクダウンを実行し、ステップS34において上記同様の規定時間経過判断を行う。そして、規定時間内である場合、制御装置10は、ステップS35において上記同様にアクセル開度が増加するか否か判断し、アクセル開度が増加しなければ、ステップS30からやり直す。一方、アクセル開度が増加する場合は、上記同様に制御装置10は、ステップS36においてトルクダウンを抑止し、ステップS30へ戻る(図5B参照)。
【0038】
一方、ステップS32において停車禁止区域近傍でなかった場合、制御装置10は、ステップS37において、停車禁止区域が車両前方にあるか否か判断する。ステップS30で短距離停車不可であり且つステップS32で停車禁止区域近傍でなかった場合は、具体例で言うと、大きな通りではなく、停車禁止区域から5m以上離れ且つ30m以内に自車位置があるということを意味する。したがってこの場合は、車両が停車禁止区域へ向かっているのか、あるいは、停車禁止区域から遠ざかっているのか、に応じて、急速トルクダウンと緩慢トルクダウンを選択する。つまり、制御装置10は、ステップS37において停車禁止区域が車両前方にある場合は、車両が停車禁止区域へ向かっているので、ステップS31において急速トルクダウンを実行し、停車禁止区域に近づく前に停車させる。一方、ステップS37において停車禁止区域が車両前方になければ、車両は停車禁止区域から遠ざかっているので、ステップS33において緩慢トルクダウンを実行し、停車禁止区域からできるだけ離れて停車させる。
【0039】
図7は、図2のフローチャートにおけるステップS5の強制トルクダウン制御に関するさらに別のサブルーチンである。図7に示すフローチャートは、できるだけ速やかに車両を減速、停車させて変速を実施するべく、エンジントルクの規定減少率について、アクセル開度の変更に応じて変化させる例である。すなわち、図7のフローチャートにおいて、トルクダウン制御手段としての制御装置10は、車速が規定車速以下の場合に、規定の減少率でエンジントルクをダウンさせると共に、検知されるアクセル開度が増加しているか否か判断し、アクセル開度が増加している場合は、エンジントルクの減少率を増加させる。
【0040】
この場合において車両状態検知手段としての機能を実行する制御装置10は、ECU11から取得される車両状態情報のアクセル開度も検知する。そして、トルクダウン制御手段としての機能を実行して強制トルクダウン制御を開始した制御装置10は、ステップS40において、初期トルクダウンを実行する。この初期トルクダウン時に制御装置10は、暫減ではなく一気に数%〜数十%だけエンジン1のトルクをステップ状に落とすトルクの減少量を、ECU11に指示する。これにより例えば、車速は5km/hまで減速する。あるいは、このときに指示するトルクの減少量指示値は、ナビゲーション情報から判断される自車周囲の交通状況に応じてその都度決定してもよい。
【0041】
初期トルクダウンで減速を実行した制御装置10は、ステップS41において、図2のステップS5で説明したような規定の減少率でトルクダウンを実行する。つまり、制御装置10は、図2のステップS3で車速が規定車速以下であった場合に、初期トルクダウンとこれよりも緩やかな減少率のトルクダウンとの二段階で、エンジン1のトルクダウンを実行する。そして、制御装置10は、規定の減少率でトルクダウンを実行しつつ、ステップS42において、検知したアクセル開度の増加を判断する。
【0042】
検知したアクセル開度が増加していなければ、制御装置10は、ステップS43において、エンジン1のトルクダウンが限界に達したか否か、又は停車したか否か判断する。一方、ステップS42においてアクセル開度が増加していれば、制御装置10は、ステップS43においてトルクの減少率を増加させ、そして、ステップS43において、トルクダウンの限界か否か又は停車したか否かを判断する。制御装置10は、トルクダウンの結果、ステップS43において、トルクの減少量指示値が上限に達するか、あるいは、車両状態情報に含まれた車速がゼロとなれば、図2のステップS6へ進む。
【0043】
このアクセル開度の変更に応じたトルクダウンを実行した場合のタイムチャートを、図8に示している。
図3A同様の発車時にインターロック状態が検知され、車速を規定値以下と判断することにより、トルクダウンが開始される。インターロック状態の検知でまず初期トルクダウンが指示され(矢示Iramp1)、トルクがステップ状にダウンする(矢示Tramp1)。これに追従して、車速が急落する(矢示Sramp1)。続いて、より緩やかな減少率が指示され(矢示Iramp2)、当該減少率に従ってトルクがダウンし(矢示Tramp2)、これに伴って車速も緩やかに落ちていく(矢示Sramp2)。この途中、運転者がアクセルを踏み込むことでアクセル開度が増加すると(矢示Aramp1)、トルク減少率の増加が指示され(矢示Iramp3)、トルクの減少率が急になり(矢示Tramp3)、車速も急落する(矢示Sramp3)。トルクダウンの限界まで指示されるか(矢示Iramp4,Tramp4)、又はその前に停車すると(矢示Sramp4)、1速締結要素の解放が指示される。1速締結要素が解放されれば、トルクダウンが解除されると共に2速を構成する摩擦係合要素が締結される。
【0044】
このトルクダウンの解除時(ステップS9)、1速から2速への切り換えに伴いトルクアップするときに、制御装置10は、アクセル開度に応じてトルクの上昇率を決定し(矢示Iramp5,Tramp5)、急発進とならないように制御する。あるいは、制御装置10は、トルクアップの目標時間を設定し、この間は規定の上昇率でトルクアップさせてもよい。また、制御装置10は、2速へ切り換わって車両が加速することを、警告灯やブザー等で運転者に通知することもできる。
【0045】
図7に示す強制トルクダウン制御が実行される結果、運転者が加速の意思を示した場合には、速やかに減速、停車させてインターロック状態の締結要素を解放して変速することができる。結果的に、運転者の加速の意思に迅速に対応してインターロック状態に対処し、加速に応じることができ、変速機保護にもなる。ただしこの場合、一時的に運転者の意思と異なる減速が生じ、トルク引きの違和感を与えることになる。
【0046】
図9は、図2のフローチャートにおけるステップS5の強制トルクダウン制御に関するさらに別のサブルーチンである。図9に示すフローチャートも、できるだけ速やかに車両を減速、停車させて変速を実施するべく、エンジントルクの規定減少率について、アクセル開度の変更に応じて変化させる例であり、減速中に運転者がアクセルOFFした場合のフローである。
【0047】
ステップS50からステップS51までの流れは、図7のステップS40〜S41と同じで、制御装置10は、初期トルクダウンとこれよりも緩やかな減少率のトルクダウンとの二段階で、エンジン1のトルクダウンを実行する。そして、制御装置10は、規定の減少率でトルクダウンを実行しつつ、ステップS52において、アクセルOFFが発生するか否か、アクセル開度から判断する。
【0048】
アクセルOFFが発生しなければ、制御装置10は、ステップS53において、エンジン1のトルクダウンが限界に達したか否か、又は停車したか否か判断する。制御装置10は、ステップS53においてトルクの減少量指示値が上限に達するか又は車速=0になった場合、図2のステップS6へ進む。一方、ステップS52においてアクセルOFFが発生すれば、制御装置10は、ステップS54において、暫減ではなく一気にトルクの減少量指示値を限界(最大)に設定し、エンジン1のトルクをステップ状に一気に落とす。そして、制御装置10は、図2のステップS6へ進む。
【0049】
このアクセルOFFに応じるトルクダウンを実行した場合のタイムチャートを、図10に示している。
図3A同様の発車時にインターロック状態が検知され、車速を規定値以下と判断することにより、トルクダウンが開始される。インターロック状態の検知でまず初期トルクダウンが指示され(矢示Iramp1)、トルクがステップ状にダウンする(矢示Tramp1)。これに追従して、車速が急落する(矢示Sramp1)。続いて、より緩やかな減少率が指示され(矢示Iramp2)、当該減少率に従ってトルクがダウンし(矢示Tramp2)、これに伴って車速も緩やかに落ちていく(矢示Sramp2)。この途中、運転者がアクセルOFFすると(矢示Aramp1)、トルク減少量の限界値が指示され(矢示Iramp3)、トルクがステップ状に限界値までダウンし(矢示Tramp3)、車速も急落する(矢示Sramp3)。1速締結要素の解放に適した車速まで減速するか又は停車したところで、1速締結要素の解放が指示される。1速締結要素が解放されれば、トルクダウンが解除されると共に2速を構成する摩擦係合要素が締結される。
【0050】
この場合のトルクダウンの限界値指示は、1速から2速への切り換えが終了するまで維持され、この間は、運転者がアクセルを踏み込んだとしても、発車しない。また、当該トルクダウンは、1速から2速への切り換えに伴い解除され、この後は運転者のアクセルワークに従って車両は発車、加速する。このときに制御装置10は、2速へ切り換わって車両が加速することを、警告灯やブザー等で運転者に通知することもできる。
【0051】
なお、図7及び図9の制御は並行して実行することができる。
【0052】
上記実施形態から把握し得る請求項以外の技術的思想について、以下に効果と共に記載する。
【0053】
(イ)請求項1に記載の制御装置において、
前記車両状態検知手段は、検知する車両状態にアクセル開度を含み、
前記トルクダウン制御手段は、車速が前記規定車速以下の場合に、前記車両状態検知手段により検知されるアクセル開度を規定アクセル開度と比較し、該比較結果に応じてエンジントルクの減少率を変化させる、制御装置。
この制御装置によると、インターロック状態にある締結要素を解放するべく停車する場合であっても、周辺状況による運転者の意思に応じて、締結要素解放のために緊急に停車するか、又は、ある程度の距離を走行してから停車するか、が選択される。
【0054】
(ロ)請求項1〜3又は(イ)のいずれかに記載の制御装置において、
前記インターロック検知手段がインターロック状態を検知したときに、該インターロック状態の発生を運転者に通知する、制御装置。
この制御装置によると、インターロック状態が発生したことを運転者が把握することができ、その後のトルクダウンに伴う“トルク引き感”といった違和感を軽減することができる。
【0055】
(ハ)請求項1〜3又は(イ)のいずれかに記載の制御装置において、
前記トルクダウン制御手段がエンジントルクのダウンを開始した後に、前記インターロック状態の締結要素の解放を実行する、制御装置。
この制御装置によると、トルクダウンによって十分に車速が低下した状態ないしは停車した状態で締結要素解放を実行できるので、解放の制御を行い易い。
【0056】
(ニ)請求項(ハ)記載の制御装置において、
前記インターロック状態の締結要素の解放を実行した後、エンジントルクが上昇するときに規定の上昇率に抑える、制御装置。
この制御装置によれば、インターロック状態解除後の最初の発進時に急発進を防止することができる。
【0057】
(ホ)請求項(ハ)記載の制御装置において、
前記インターロック状態の締結要素の解放を実行し、規定時間が経過しても解放されない場合は、前記トルクダウン制御手段によるエンジントルクのダウンを解除し、前記インターロック状態の締結要素を除外して変速制御を実行する、制御装置。
この制御装置によると、インターロック状態の締結要素が解放できない場合、応急的措置として、取りあえず車両を走行できる状態とし、パーキングゾーン等の駐車可能な場所までの走行を許容する。
【0058】
(ヘ)請求項(ホ)記載の制御装置において、
前記インターロック状態の締結要素を除外して変速制御を実行すると共に、運転者へ停車警告する、制御装置。
この制御装置によると、締結要素のインターロック状態が解除されないまま走行していることを運転者に警告し、速やかに停車することを促す。
【0059】
(ト)請求項(ホ)記載の制御装置において、
前記インターロック状態の締結要素を除外して変速制御を実行した後、シフトレンジがP又はNレンジになったときに、油路掃除処理を実行する、制御装置。
この制御装置によると、油路掃除処理は走行中にできないので、シフトレンジがP又はNレンジに入って確実に停車が確認された後に、油路掃除処理を実行し、インターロック原因の解消を図ることができる。
【0060】
(チ)請求項(イ)記載の制御装置において、
前記トルクダウン制御手段は、前記車両状態検知手段により検知されるアクセル開度を規定アクセル開度と比較した結果、規定アクセル開度以下の場合は急速な減少率とし、規定アクセル開度を上回る場合は緩慢な減少率とする、制御装置。
この制御装置によると、自車周辺状況に応じた運転者の意思に従って、停車までの距離を変えることができる。
【0061】
(リ)請求項(チ)記載の制御装置において、
前記トルクダウン制御手段は、前記急速な減少率としたエンジントルクのダウンによって所定の車速まで減速すると、該減少率を緩める、制御装置。
この制御装置によると、停車前に減速感が緩和される。
【0062】
(ヌ)請求項(チ)記載の制御装置において、
前記トルクダウン制御手段は、前記緩慢な減少率としたエンジントルクのダウンを実行した場合、規定時間が経過したときには急速な減少率でエンジントルクをダウンさせる、制御装置。
この制御装置によると、規定時間の間の緩慢な減少率のトルクダウンで、必要な距離を走行した後、急速な減少率のトルクダウンを実行し、締結要素解放のために早く車速を落とす。
【0063】
(ル)請求項(チ)記載の制御装置において、
前記トルクダウン制御手段は、前記緩慢な減少率としたエンジントルクのダウンを実行しているときに、アクセル開度が増加すると、エンジントルクのダウンを抑止する、制御装置。
この制御装置によると、運転者が何らかの事情で走行を続けたい場合に対応することができる。
【0064】
(ヲ)請求項3記載の制御装置において、
前記トルクダウン制御手段は、前記自車周辺状況として短距離停車が可能か否か判断し、短距離停車が可能であれば、急速な減少率とする、制御装置。
この制御装置によると、停車禁止区域に近づく前に短距離で停車させることができる。
【0065】
(ワ)請求項(ヲ)記載の制御装置において、
前記トルクダウン制御手段は、短距離停車が不可であれば、前記自車周辺状況として停車禁止区域近傍か否かを判断し、停車禁止区域近傍であれば、緩慢な減少率とする、制御装置。
この制御装置によると、停車禁止区域に近ければ、ある程度走行して当該位置から脱出した後に停車させることができる。
【0066】
(カ)請求項(ワ)記載の制御装置において、
前記トルクダウン制御手段は、停車禁止区域近傍でなければ、停車禁止区域が車両前方にあるか否か判断し、停車禁止区域が車両前方にある場合は急速な減少率とし、停車禁止区域が車両前方にない場合は緩慢な減少率とする、制御装置。
この制御装置によると、停車禁止区域が車両前方にあるときは近づく前に停車させ、停車禁止区域が車両前方にないときは離れてから停車させることができる。
【0067】
(ヨ)請求項2記載の制御装置において、
前記トルクダウン制御手段は、車速が前記規定車速以下の場合に、初期トルクダウンとこれよりも緩やかな減少率のトルクダウンとの二段階で、エンジントルクをダウさせる、制御装置。
この制御装置によると、初期トルクダウンにより車両を大きく減速させ、できるだけ短距離で停車させることができる。
【0068】
(タ)請求項1記載の制御装置において、
前記車両状態検知手段は、検知する車両状態にアクセル開度を含み、
前記トルクダウン制御手段は、車速が前記規定車速以下の場合に、規定の減少率でエンジントルクをダウンさせると共に、前記車両状態検知手段により検知されるアクセル開度から、アクセルOFFになるか否か判断し、アクセルOFFになった場合に、エンジントルクの減少量を限界値にする。
この制御装置によると、運転者が停止の意思でアクセルOFFしたときに、できるだけ短距離で車両を停車させられる。
【符号の説明】
【0069】
1 エンジン
2 トルクコンバータ
3 自動変速機
3a,3c プーリー
3b ベルト
3d 副変速機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の摩擦係合要素を油圧により選択的に締結して変速段を切り換える車両用自動変速機の制御装置であって、
前記摩擦係合要素のうちの締結させた締結要素のインターロック状態を検知するインターロック検知手段と、
少なくとも車速を含む車両状態を検知する車両状態検知手段と、
前記インターロック検知手段がインターロック状態を検知したときに、前記車両状態検知手段により検知される車速を少なくとも判断し、車速が規定車速以下の場合に、エンジントルクをダウンさせるトルクダウン制御手段と、
を含んで構成される、制御装置。
【請求項2】
前記車両状態検知手段は、検知する車両状態にアクセル開度を含み、
前記トルクダウン制御手段は、車速が前記規定車速以下の場合に、規定の減少率でエンジントルクをダウンさせると共に、前記車両状態検知手段により検知されるアクセル開度が増加しているか否か判断し、アクセル開度が増加している場合に、エンジントルクの減少率を増加させる、
請求項1記載の制御装置。
【請求項3】
前記車両状態検知手段は、検知する車両状態にナビゲーション情報を含み、
前記トルクダウン制御手段は、車速が前記規定車速以下の場合に、前記車両状態検知手段により検知されるナビゲーション情報に基づいて自車周辺状況を判断し、該自車周辺状況に応じてエンジントルクの減少率を変化させる、
請求項1記載の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−196348(P2011−196348A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66922(P2010−66922)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】