説明

車両用防振装置

【課題】ロードノイズの低減効果が高い車両用防振装置を提供することにある。
【解決手段】車両用防振装置10は、車両の懸架装置3に対して非接触であり、懸架装置3を介してボディ2に入力される振動と逆位相の振動が与えられる可動部52を有し、当該可動部52の軸芯が懸架装置3の軸芯と同軸芯上に設けられる加振部20と、懸架装置3をボディ2に支持する支持部材37に固定され、加振部20を収容するハウジングケース40と、支持部材37以上の剛性を備える位置に設けられ、且つ、懸架装置3からの振動が、支持部材37よりも低い剛性部分を介さずに伝達できる場所に位置する振動検出部61と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の懸架装置を介してボディに入力される振動を抑制する車両用防振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の走行状態にあっては、車両が路面の凹凸に応じて振動し、当該振動に基づくロードノイズが車内で聴こえる場合がある。このようなロードノイズは乗員にとって不快なものとなっていた。そこで、乗員に快適な車内空間を提供すべく、車両の振動を抑えてロードノイズを低減する技術について検討されてきた。この種の技術として下記に出典を示す特許文献1に記載のものがある。
【0003】
特許文献1に記載の車両の騒音低減システムは、防振装置と振動検出手段と加振装置とを備えて構成される。防振装置は車輪側部材と車体との間に夫々を連結するゴム状弾性体からなる防振基体を備えて構成される。振動検出手段は車輪側部材に取り付けられ、車輪側部材の振動を検出する。加振装置は車体に取り付けられ、車体を加振する。この騒音低減システムは、振動検出手段からの信号に基づいて加振装置を駆動制御して車体を加振することにより、車室内の空気を振動させて車室内の音を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−213734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、上述のように振動検出手段が車輪側に設けられ、加振装置が車体側に設けられる。このため、特許文献1に記載の技術では、振動検出手段と加振装置とが互いに離れた位置に設けられることになる。したがって、振動検出手段が設けられた位置では振動が抑えられたとしても、それ以外の車体の側では、ロードノイズに起因する振動と加振装置により加えられる振動との位相がずれる可能性がある。また、振動検出手段と加振装置とが互いに離れた位置に設けられる場合には、振動検出手段と加振装置との間の伝達経路が複数形成される可能性もある。係る場合、車体側の振動を完全に抑えることができるとは限らず、騒音抑制効果が低くなる可能性もある。
【0006】
また、加振装置が有する可動子としての軸部材が永久磁石を介して車体に固定されているため、当該軸部材の上下方向の動作が規制されている。このため、可動子と当該可動子を軸方向に往復移動可能に支持する固定子との間に設けられた板バネのたわみ量が小さくなるので機械共振を利用することができない。したがって、運転効率の良い状態を利用することができない。
【0007】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、ロードノイズの低減効果が高い車両用防振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る車両用防振装置の特徴構成は、車両の懸架装置に対して非接触であり、前記懸架装置を介してボディに入力される振動と逆位相の振動が与えられる可動部を有し、当該可動部の軸芯が前記懸架装置の軸芯と同軸芯上に設けられる加振部と、前記懸架装置を前記ボディに支持する支持部材に固定され、前記加振部を収容するハウジングケースと、前記支持部材以上の剛性を備える位置に設けられ、且つ、前記懸架装置からの振動が、前記支持部材よりも低い剛性部分を介さずに伝達できる場所に位置する振動検出部と、を備えている点にある。
【0009】
このような特徴構成とすれば、加振部と振動検出部とを懸架装置からの振動の伝達経路に対して同一経路上に設けることができる。したがって、可動部により懸架装置からの振動を直接、低減することが可能な振動をボディに与えることができるので、防振効果を高めることができる。また、可動部が懸架装置に対して接触せずに設けられるので、可動部の移動が懸架装置により規制されることがない。したがって、大きな振動が入力された場合であっても防振効果を維持できる。更に、加振部をハウジングケースで覆う形状であるので簡素な構造で構成できる。したがって、別途密閉するためのシール構造を形成する必要が無いので製造コストも低減できる。また、振動検出部が剛性の高い部位に設けられるので、懸架装置からの振動が振動検出部に到達するまでに減衰されること無い。したがって、振動検出部により適切に振動を検出することができる。
【0010】
また、前記振動検出部は、前記ハウジングケースで覆われた空間内に設けられると好適である。
【0011】
このような構成とすれば、振動検出部の防塵処理及び防水処理を容易に行うことが可能となる。したがって、振動検出部の劣化を抑制できる。
【0012】
また、前記懸架装置と前記可動部との間に前記軸芯と直交するように前記ハウジングケース内に板状部材が設けられ、前記振動検出部は、前記板状部材と前記軸芯とが交差する位置に設けられると好適である。
【0013】
このような構成とすれば、振動検出部をハウジングケースで覆われた空間内に容易に配設することができる。また、振動供給源としての懸架装置と、振動検出センサと、加振器とを同軸芯上に設けることができる。したがって、防振効果を更に高めることが可能となる。
【0014】
また、前記可動部の軸方向両側部が、前記ハウジングケースの内壁部に固定された一対の板状バネ部材で支持されていると好適である。
【0015】
このような構成とすれば、板状バネ部材の共振を利用することができる。したがって、可動部を少ない電力で大きく振動させることができるので、防振効率を高めることが可能となる。
【0016】
また、前記懸架装置の軸芯は、スプリングの軸芯及びショックアブソーバの軸芯の少なくともいずれか一方であると好適である。
【0017】
このような構成とすれば、スプリングとショックアブソーバとが同軸芯上に形成されていない場合でも、車両用防振装置を適用することが可能となる。
【0018】
また、前記加振部は、音声信号を入力してスピーカとして使用されると好適である。
【0019】
このような構成とすれば、加振部により懸架装置からの振動を抑制しつつ、低音を重視したスピーカとして機能させることができる。したがって、低音重視のサラウンドシステムを構築することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】車両用防振装置を備えた車両を模式的に示す図である。
【図2】車両用防振装置を模式的に示した側方断面図である。
【図3】制御ユニットを模式的に示した図である。
【図4】その他の実施形態における振動検出部の配置形態について示す図である。
【図5】車両用防振装置の側方断面の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本発明に係る車両用防振装置は、車両の走行に応じて生じるロードノイズを低減する機能を備えている。以下、図面を用いて説明する。
【0022】
図1は、車両用防振装置10を備えた車両100を模式的に示した図である。車両100の車輪1には、当該車輪1を車両100のボディ2に懸架する懸架装置3が備えられる。懸架装置3は、スプリング3A及びショックアブソーバ3Bを備えて構成される。本実施形態に係る懸架装置3は、スプリング3Aの内周空間にショックアブソーバ3Bが同軸芯上に挿通されたストラット式であるとして説明する。したがって、懸架装置3の軸芯が、スプリング3Aの軸芯及びショックアブソーバ3Bの軸芯と一致する。図1においては、前輪のみを図示しているが、このような懸架装置3を全車輪に設けることも可能である。図1に示されるように、本車両用防振装置10は懸架装置3の鉛直上方に設けられる。
【0023】
図2は、本実施形態に係る車両用防振装置10の側方断面図である。なお、図2には、理解を容易にするために、懸架装置3やボディ2の一部も示される。
【0024】
懸架装置3のロッド31の軸方向上端部31Aの外径は、軸方向中央部31Bの外径よりも小さく形成される。すなわち、軸方向上端部31Aは、軸方向中央部31Bよりも細く形成される。これにより、軸方向上端部31Aと軸方向中央部31Bとの境界部に径方向壁部32が形成される。ロッド31の軸方向上端部31Aには、ロッド31と同軸芯上につば部33が挿通される。つば部33は、最外径が少なくともロッド31の軸方向中央部31Bの外径よりも大きくなるように形成される。これにより、つば部33はロッド31の軸方向中央部31Bよりも径方向に突出する径方向突出部33Aを有して構成される。また、つば部33は、内径が軸方向上端部31Aよりも大きく、且つ、軸方向中央部31Bよりも小さくなるように形成される。これにより、つば部33は軸方向端部が径方向壁部32に当接する位置まで挿通されることになる。このようなつば部33が挿通されたロッド31は、軸方向外側方向からナット34により締め付けられる。したがって、つば部33は、径方向壁部32とナット34により挟持されて固定される。
【0025】
つば部33の径方向突出部33Aは、ハウジング35に埋設固定される。このハウジング35は、円環状に形成され、径方向中央部にロッド31が挿通可能な孔部36が形成される。また、ハウジング35は支持部材37に固定される。支持部材37は、後述するハウジングケース40と共に車両100のボディ2に連結ボルト90及びナット91により固定される。これにより、懸架装置3がボディ2に連結固定されることになる。
【0026】
ハウジングケース40は、懸架装置3をボディ2に支持する支持部材37に連結ボルト90及びナット91により連結固定される。ハウジングケース40は中空碗状に形成される。ハウジングケース40は、打ち抜き加工により形成しても良いし、鋳造加工により形成しても良い。
【0027】
ハウジングケース40の中空空間40Aには、ハウジングケース40の内壁部40Bにハウジング41が密着固定して設けられる。つまり、ハウジングケース40は、ハウジング41を覆うケースとして機能する。ハウジング41の中空空間40Aには加振部20(後述する)が収容される。
【0028】
加振部20は、電磁ソレノイド42、固定ヨーク43、永久磁石50、可動ヨーク51、センタロッド52を備えて構成される。加振部20は、センタロッド52の軸芯が懸架装置3の軸芯と同軸芯上となるように設けられる。センタロッド52の軸芯が懸架装置3の軸芯と同軸芯上に設けられるとは、センタロッド52の軸芯が、当該センタロッド52を軸方向から見て懸架装置3の軸芯と径方向に一致するように設けられることを意味する。すなわち、加振部20と懸架装置3とが、同じ軸芯上において、夫々軸方向に離間した状態で設けられる。
【0029】
電磁ソレノイド42は、表面に絶縁皮膜を有した線状の導体をコイル状に巻回して形成される。ここで、ハウジングケース40の軸芯をXとすると、電磁ソレノイド42の軸芯X側の面にはリング状の固定ヨーク43が設けられる。また、電磁ソレノイド42はボビン44に導体を巻回した構造を有し、ハウジング41はボビン44を位置決め可能に3つの部材を組み合わせた構造からなる。
【0030】
電磁ソレノイド42は、本実施形態では、ハウジングケース40の軸方向に2つ、すなわち図2の上下方向に2つ並べて設けられる。これら2つの電磁ソレノイド42は駆動電力の供給時に逆方向に電流が流れるように、互いに逆向きに巻回される(図3参照)。これにより、駆動電力の供給時には上側の電磁ソレノイド42の上側と、下側の電磁ソレノイド42の下側とに同じ極性の磁極が現れる。
【0031】
ハウジング41の径方向内側は、上面と下面とに異なる磁極(一方がN極、他方がS極)が現れる円板状の永久磁石50と、この上面と下面とに密着状態で配置される鉄等の円板状磁性体で成る可動ヨーク51と、これらを上下方向に貫通するセンタロッド52とで構成されている。センタロッド52は、本発明に係る「可動部」に相当する。このような構成により、永久磁石50と、可動ヨーク51と、ハウジング41の固定ヨーク43と、電磁ソレノイド42とで磁気回路が形成される。
【0032】
センタロッド52は、車両100の懸架装置3のロッド31に対して非接触で設けられる。すなわち、センタロッド52は、車両100の懸架装置3のロッド31から離間して設けられる。これにより、センタロッド52が、懸架装置3の上下方向の移動に対して、懸架装置3から規制を受けないようにすることができる。したがって、センタロッド52の動きをロッド31から独立したものとすることができる。このようなセンタロッド52には、懸架装置3を介してボディ2に入力される振動と逆位相の振動が与えられる。懸架装置3を介してボディ2に入力される振動とは、車両100の走行により生じる振動である。このような振動は、後述する振動検出部61により検出される。センタロッド52には、振動検出部61により検出された振動に対して、逆位相の振動が与えられる(詳細は後述する)。
【0033】
永久磁石50及び可動ヨーク51の軸方向両端には、支持バネ53が設けられる。このように設けられた支持バネ53の軸方向一端側からセンタロッド52が貫通され、軸方向他端側にナット54が締め付け固定される。したがって、永久磁石50及び可動ヨーク51は、支持バネ53(本発明に係る「板状バネ部材」に相当)で挟み込まれる状態で配置される。
【0034】
支持バネ53は、鋼板等のバネ材料を円板状に成形すると共に、弾性変形を容易に行われるためのスリット(図示せず)が渦巻き状や放射状に形成されている。尚、この支持バネ53として、帯状の板バネや、コイル状のバネを用いても良い。
【0035】
支持バネ53は、径方向外側がハウジング41に埋設して設けられる。これにより、センタロッド52の軸方向両端部が、ハウジングケース40の内壁部40Bに固定された一対の支持バネ53で支持されることになり、永久磁石50及び可動ヨーク51は、軸芯Xに沿って上下動(揺動)が可能に構成される。図示はしないが、支持バネ53及びハウジング41を軸芯Xに平行に貫通する連結ボルトと当該連結ボルトを締め付けるナットとにより一体連結することも可能である。
【0036】
振動検出部61は、支持部材37以上の剛性を備える位置に設けられ、懸架装置3からの振動が、支持部材37よりも低い剛性部分を介さずに伝達できる場所に位置する。支持部材37以上の剛性を備える位置は、支持部材37以上の剛性を有する部材で形成することにより実現できる。もちろん、部材の厚みを厚くすることにより実現することもできるし、曲げ加工を施すことにより実現することもできる。支持部材37よりも低い剛性部分を介さずに伝達できる場所とは、支持部材37と振動検出部61との間には、支持部材37よりも剛性が低い部分が無いことを意味する。このような位置に振動検出部61を設けることにより、懸架装置3からの振動が振動検出部61に到達するまでに減衰されること無い。したがって、振動検出部61により適切に振動を検出することができる。なお、振動検出部61は、公知のMEMS技術により形成された加速度センサを用いると好適である。
【0037】
ここで、センタロッド52とロッド31とは、同軸芯で設けられる。また、センタロッド52とロッド31とは、互いに離間して設けられる。このようなロッド31とセンタロッド52との間には、軸芯Xと直交するようにハウジングケース40内に板状部材60が設けられる。板状部材60は、ハウジングケース40の内壁部40Bに固定しても良いし、図2に示されるようにボディ2の一部に固定しても良い。この板状部材60は、上述の支持バネ53とは異なり、支持部材37以上の剛性を備えて形成される。例えば、板状部材60は、変形が起こらないように厚みを厚くして形成しても良いし、立体形状に曲げ加工を施しても良い。
【0038】
このような板状部材60と軸芯Xとが交差する位置に振動検出部61が設けられる。本発明においては、振動検出部61は、ハウジングケース40で覆われた空間内に設けられる。
【0039】
次に、電磁ソレノイド42への通電について説明する。電磁ソレノイド42への通電は、制御ユニット70により行われる。図3は、制御ユニット70を模式的に示した図である。制御ユニット70は、振動判定部71と通電部72とを備えて構成される。振動判定部71には、振動検出部61の検出結果が伝達される。振動判定部71は、振動検出部61の検出結果に基づいて、振動の周波数、振動の位相、振動のレベルが判定される。この判定結果は、通電部72に伝達される。
【0040】
通電部72は、振動判定部71の判定結果に基づいて電磁ソレノイド42に供給する駆動信号を設定する。駆動信号は、駆動電力と供給周期とからなる。したがって、通電部72は、駆動信号生成手段として機能する。また、通電部72は、設定した駆動信号を増幅する。この増幅は、公知の増幅器により行うことができる。したがって、通電部72は、増幅手段としても機能する。より、具体的には、通電部72は、駆動電力として交流のように流れる方向が正逆に切り換わる電流を通電する。この駆動電力により電磁ソレノイド42が交互に作り出す磁極との引力と斥力とが順次切り換わり、結果として、駆動電力の周波数と同期した周期で、駆動電力に対応した振幅で振動軸線の方向に沿ってセンタロッド52(図2参照)が往復作動し、この振動によって外部の振動源からの振動を抑制する。
【0041】
このように、本車両用防振装置10によれば、加振部20と振動検出部61とを懸架装置3からの振動の伝達経路に対して同一経路上に設けることができる。したがって、センタロッド52により懸架装置3からの振動を直接、低減することが可能な振動をボディ2に与えることができるので、防振効果を高めることができる。また、センタロッド52が懸架装置3に対して接触せずに設けられるので、センタロッド52の移動が懸架装置3により規制されることがない。したがって、大きな振動が入力された場合であっても防振効果を維持できる。更に、加振部20をハウジングケース40で覆う形状であるので簡素な構造で構成できる。したがって、別途密閉するためのシール構造を形成する必要が無いので製造コストも低減できる。また、振動検出部61が剛性の高い部位に設けられるので、懸架装置3からの振動が振動検出部61に到達するまでに減衰されること無い。したがって、振動検出部61により適切に振動を検出することができる。
【0042】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、振動検出部61は、ハウジングケース40で覆われた空間内に設けられるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。振動検出部61を、ハウジングケース40で覆われた空間外に設けることも当然に可能である。係る場合、例えばハウジングケース40の外周面や、連結ボルト90の付近に設けると好適である。
【0043】
ここで、支持部材37は、上述のように連結ボルト90及びナット91によりボディ2に固定される。以下では、連結ボルト90及びナット91が配置される部分(ボディ2、支持部材37、及びハウジングケース40に設けられた連結ボルト90を挿入するボルト孔を含む部分)を固定部77として説明する。図5には、連結ボルト90及びナット91の近傍を拡大した図が示される。なお、図5においては、理解を容易にするために、連結ボルト90及びナット91は破線で示されている。
【0044】
ここで、ハウジングケース40は支持部材37以上の剛性を有する部材から構成される。一方、ボディ2は、図5に示されるように、ハウジングケース40から離間するように曲げ加工が施された第1曲部78、及び当該第1曲部78の曲げ方向に対して逆方向に曲げ加工を施した第2曲部79を有する。第1曲部78と第2曲部79との間が近接している場合には、ボディ2が比較的薄くても、第2曲部79において第1曲部78と同程度の剛性を維持できる。よって、振動検出部61は、固定部77から第2曲部79までの範囲Tで示されるいずれかの位置に設けることが可能である。もちろん、範囲Tの裏側にあたる範囲Uのいずれかの位置に設けても良い。このような位置は、本発明に係る「支持部材37以上の剛性を備える位置に設けられ、且つ、懸架装置3からの振動が、支持部材37よりも低い剛性部分を介さずに伝達できる場所」に含まれる。
【0045】
上記実施形態では、振動検出部61は、ハウジングケース40内に設けられた板状部材60上であって、当該板状部材60と軸芯Xとが交差する位置に設けられるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。振動検出部61は、板状部材60上であって、当該板状部材60と軸芯Xとが交差しない位置(軸芯Xからずれた位置)に設けることも当然に可能である。また、ハウジングケース40内に板状部材60を設けず、図4に示されるように、振動検出部61をハウジングケース40の内壁部40Bに設けることも可能である。
【0046】
上記実施形態では、センタロッド52の軸方向両側部が、ハウジングケース40の内壁部40Bに固定された一対の支持バネ53で支持されているとして説明した。しかしながら本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。センタロッド52の軸方向の一方の端部のみを支持バネ53で支持する構成とすることも当然に可能である。また、センタロッド52の軸方向中央部を支持バネ53で支持する構成とすることも当然に可能である。
【0047】
上記実施形態では、懸架装置3の軸芯は、スプリング3Aの軸芯及びショックアブソーバ3Bの軸芯と一致するように構成されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。懸架装置3の軸芯は、スプリング3Aの軸芯及びショックアブソーバ3Bの軸芯のいずれか一方と一致するようにすることも当然に可能である。すなわち、スプリング3Aの軸芯と、ショックアブソーバ3Bの軸芯とが、同軸芯上で構成されていない懸架装置3であっても、本発明に係る車両用防振装置10を適用することは当然に可能である。
【0048】
上記実施形態では、加振部20が懸架装置3から伝達される振動を抑制するとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば、加振部は、音声信号を入力してスピーカとして使用することも可能である。係る場合、加振部20により懸架装置3からの振動を抑制しつつ、低音を重視したスピーカとして機能させることができる。したがって、低音重視のサラウンドシステムを構築することができる。
【0049】
本発明は、車両の懸架装置を介してボディに入力される振動を抑制する車両用防振装置に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0050】
2:ボディ
3:懸架装置
3A:スプリング
3B:ショックアブソーバ
10:車両用防振装置
20:加振部
37:支持部材
40:ハウジングケース
40B:内壁部
52:センタロッド(可動部)
53:支持バネ(板状バネ部材)
60:板状部材
61:振動検出部
77:固定部
100:車両
X:軸芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の懸架装置に対して非接触であり、前記懸架装置を介してボディに入力される振動と逆位相の振動が与えられる可動部を有し、当該可動部の軸芯が前記懸架装置の軸芯と同軸芯上に設けられる加振部と、
前記懸架装置を前記ボディに支持する支持部材に固定され、前記加振部を収容するハウジングケースと、
前記支持部材以上の剛性を備える位置に設けられ、且つ、前記懸架装置からの振動が、前記支持部材よりも低い剛性部分を介さずに伝達できる場所に位置する振動検出部と、
を備える車両用防振装置。
【請求項2】
前記振動検出部は、前記ハウジングケースで覆われた空間内に設けられる請求項1に記載の車両用防振装置。
【請求項3】
前記懸架装置と前記可動部との間に前記軸芯と直交するように前記ハウジングケース内に板状部材が設けられ、
前記振動検出部は、前記板状部材と前記軸芯とが交差する位置に設けられる請求項2に記載の車両用防振装置。
【請求項4】
前記可動部の軸方向両側部が、前記ハウジングケースの内壁部に固定された一対の板状バネ部材で支持されている請求項2又は3に記載の車両用防振装置。
【請求項5】
前記懸架装置の軸芯は、スプリングの軸芯及びショックアブソーバの軸芯の少なくともいずれか一方である請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用防振装置。
【請求項6】
前記加振部は、音声信号を入力してスピーカとして使用される請求項1から5のいずれか一項に記載の車両用防振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−210835(P2012−210835A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76571(P2011−76571)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】