車両用駆動装置の制御装置
【課題】エンジンを備える車両用駆動装置において、エンジン駆動に伴うこもり音の発生を適切に抑制することができる制御装置を提供する。
【解決手段】こもり音発生域回避判断手段88によりこもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさであるか否かに基づいてこもり音発生域Nの回避が必要であると判断された場合に、システム効率に基づいて決定されたエンジントルクTEと第2電動機M2のアシストトルクTM2との分担がこもり音発生域回避手段86により変更されてこもり音発生域Nが回避されるので、エンジン駆動に伴うこもり音の発生を抑制することが可能になると共に、一律にこもり音発生域Nが回避される場合に比較してシステム効率の悪化が抑制され運転性や燃費性が向上する。
【解決手段】こもり音発生域回避判断手段88によりこもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさであるか否かに基づいてこもり音発生域Nの回避が必要であると判断された場合に、システム効率に基づいて決定されたエンジントルクTEと第2電動機M2のアシストトルクTM2との分担がこもり音発生域回避手段86により変更されてこもり音発生域Nが回避されるので、エンジン駆動に伴うこもり音の発生を抑制することが可能になると共に、一律にこもり音発生域Nが回避される場合に比較してシステム効率の悪化が抑制され運転性や燃費性が向上する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンを備える車両用駆動装置の制御装置に係り、車両用駆動装置の特性に基づいてエンジンの動作点を決定する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンと変速機とを備え、車両用駆動装置の特性に基づいてエンジンの動作点や変速機の変速比を決定する車両用駆動装置の制御装置が知られている。一方で、車両においては様々な騒音が発生する。例えば、エンジンの周期的な気筒点火(爆発)やピストンの往復運動に伴うエンジンのトルク変動による回転変動が強制源(振動強制力)となってそのエンジントルクを伝達するクランクシャフトから駆動輪までの駆動系(動力伝達系)のねじり振動が生じ、特定のエンジン回転速度で発生する駆動系のねじり共振によりその振動が増幅され、車体に伝達されたその振動によりこもり音が発生する現象であり、エンジン低回転域にてこもり音が発生する現象等が良く知られている。このようなこもり音は大きさによっては乗員に不快感等を与える可能性があり、乗員の快適性に及ぼす影響を考えると極力そのレベルを低減させることが望ましい。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された車両用駆動装置の制御装置は、燃料の燃焼で動力を発生するエンジンと変速比を自動的に変更できる自動変速機とを備え、エンジン回転速度が予め定められたこもり音発生域に入った場合には、自動変速機の変速マップ(変速条件)を変更してこもり音の発生を抑制する技術が提案されている。
【0004】
また、特許文献2に記載された車両用駆動装置の制御装置は、車両用駆動力源として内燃機関および電動機を備え、内燃機関から出力すべき目標パワーを得るための内燃機関の運転ポイントがこもり音発生域内となる場合には、その目標パワーを変更してこもり音の発生を抑制する技術が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−84830号公報
【特許文献2】特開2005−127185号公報
【特許文献3】特開2005−24071号公報
【特許文献4】特開2006−2740号公報
【特許文献5】特開平11−103501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、こもり音発生域であってもこもり音が問題とならない場合には、こもり音発生域を回避する必要はないと考えられる。そのため、一律にこもり音発生域を回避してしまっては、車両用駆動装置の特性の面で例えば燃費の面で不利になる可能性があった。
【0007】
また、エンジンと電動機と変速機とを備え、車両用駆動装置の特性(例えば電動機のエネルギー変換効率およびエンジンの燃料消費率等の駆動装置全体のシステム効率)に基づいて、エンジンの動作点および変速機の変速比が決定される車両用駆動装置の制御装置において、こもり音の発生を考慮してエンジンの動作点および変速機の変速比を決定することに関しては未だ提案されていない。
【0008】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、エンジンを備える車両用駆動装置において、エンジン駆動に伴うこもり音の発生を適切に抑制することができる制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するための請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a) エンジンと変速機とを備える車両用駆動装置において、その車両用駆動装置の特性に基づいてその変速機の変速比が決定される車両用駆動装置の制御装置であって、(b) エンジン駆動に伴うこもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさである場合に、前記変速機の変速比を変更してそのこもり音発生域を回避することにある。
【発明の効果】
【0010】
このようにすれば、エンジン駆動に伴うこもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさである場合に、車両用駆動装置の特性に基づいて決定された変速機の変速比が変更されてこもり音発生域が回避されるので、特定の変速機の変速比或いは特定のエンジンの動作点において顕著になるこもり音の発生を抑制することが可能になると共に、一律にこもり音発生域を回避する場合に比較して車両用駆動装置の特性例えばシステム効率の悪化が抑制され運転性や燃費性が向上する。
【0011】
ここで、請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の車両用駆動装置の制御装置において、前記変速機は、予め定められた変速マップに従って変速が実行される自動変速機であり、前記自動変速機の各変速を判断するために前記変速マップが有している通常時の変速点を変更することによりその自動変速機の変速比を変更して前記こもり音発生域を回避するものである。このようにすれば、こもり音発生域を簡単に回避することができる。
【0012】
また、請求項3にかかる発明は、請求項2に記載の車両用駆動装置の制御装置において、変速点を変更することにより前記自動変速機の変速比が変化しないときに、前記変更した変速点を前記通常時の変速点へ復帰させるものである。このようにすれば、例えば通常時の変速点への復帰に伴いダウンシフトが実行されて急な減速が発生することによる違和感を回避することができる。
【0013】
また、請求項4にかかる発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の車両用駆動装置の制御装置において、エンジン駆動に伴うこもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさであるか否かに基づいて、こもり音発生域の回避が必要であるか否かを判断するこもり音発生域回避判断手段を備え、そのこもり音発生域回避判断手段によりこもり音発生域の回避が必要であると判断された場合に、前記変速機の変速比を変更してそのこもり音発生域を回避するものである。このようにすれば、こもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさである場合のみこもり音発生域が回避されるので、一律にこもり音発生域を回避する場合に比較して車両用駆動装置の特性例えばシステム効率の悪化が抑制され、運転性や燃費性が向上する。
【0014】
また、請求項5にかかる発明は、請求項4に記載の車両用駆動装置の制御装置において、前記こもり音発生域回避判断手段は、前記こもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさであることが所定時間連続したときに、前記こもり音発生域の回避が必要であると判断するものである。このようにすれば、こもり音発生域の回避とその回避制御の解除とが短時間に繰り返されることが防止されるので、車両状態が安定する。
【0015】
また、前記目的を達成するための請求項6にかかる発明の要旨とするところは、(a) エンジンと電動機とを備える車両用駆動装置において、その車両用駆動装置の特性に基づいてそのエンジンの出力トルクとその電動機の出力トルクとの分担が決定される車両用駆動装置の制御装置であって、(b) エンジン駆動に伴うこもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさである場合に、前記エンジンの出力トルクと前記電動機の出力トルクとの分担を変更してそのこもり音発生域を回避することにある。
【0016】
このようにすれば、エンジン駆動に伴うこもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさである場合に、車両用駆動装置の特性に基づいて決定されたエンジンの出力トルクと電動機の出力トルクとの分担が変更されてこもり音発生域が回避されるので、特定のエンジンの動作点において顕著になるこもり音の発生を抑制することが可能になると共に、一律にこもり音発生域を回避する場合に比較して車両用駆動装置の特性例えばシステム効率の悪化が抑制され運転性や燃費性が向上する。
【0017】
また、請求項7にかかる発明は、請求項6に記載の車両用駆動装置の制御装置において、エンジン駆動に伴うこもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさであるか否かに基づいて、こもり音発生域の回避が必要であるか否かを判断するこもり音発生域回避判断手段を備え、そのこもり音発生域回避判断手段によりこもり音発生域の回避が必要であると判断された場合に、前記エンジンの出力トルクと前記電動機の出力トルクとの分担を変更してそのこもり音発生域を回避するものである。このようにすれば、こもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさである場合のみこもり音発生域が回避されるので、一律にこもり音発生域を回避する場合に比較して車両用駆動装置の特性例えばシステム効率の悪化が抑制され、運転性や燃費性が向上する。
【0018】
また、請求項8にかかる発明は、請求項7に記載の車両用駆動装置の制御装置において、前記こもり音発生域回避判断手段は、前記こもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさであることが所定時間連続したときに、前記こもり音発生域の回避が必要であると判断するものである。このようにすれば、こもり音発生域の回避とその回避制御の解除とが短時間に繰り返されることが防止されるので、車両状態が安定する。
【0019】
また、前記目的を達成するための請求項9にかかる発明の要旨とするところは、(a) エンジンと電動機と変速機とを備える車両用駆動装置において、その車両用駆動装置の特性に基づいてそのエンジンの動作点、その電動機の動作点、およびその変速機の変速比が決定される車両用駆動装置の制御装置であって、(b) 車両状態がエンジン駆動に伴うこもり音発生域にある場合は、前記変速機の変速比を変更してそのこもり音発生域を回避することにある。
【0020】
このようにすれば、車両用駆動装置の特性に基づいて決定された車両状態がエンジン駆動に伴うこもり音発生域にある場合は、変速機の変速比が変更されてこもり音発生域が回避されるので、変速機の特定の変速比において顕著になるこもり音の発生を抑制することが可能になる。また、変速機の変速比が変更されることによりエンジンの動作点が変更されてこもり音発生域が回避されるので、特定のエンジンの動作点において顕著になるこもり音の発生を抑制することが可能になる。
【0021】
また、請求項10にかかる発明は、請求項9に記載の車両用駆動装置の制御装置において、前記変速機は、予め定められた変速マップに従って変速が実行される自動変速機であり、前記自動変速機の各変速を判断するために前記変速マップが有している通常時の変速点を変更することによりその自動変速機の変速比を変更して前記こもり音発生域を回避するものである。このようにすれば、こもり音発生域を簡単に回避することができる。
【0022】
また、請求項11にかかる発明は、請求項10に記載の車両用駆動装置の制御装置において、変速点を変更することにより前記自動変速機の変速比が変化しないときに、前記変更した変速点を前記通常時の変速点へ復帰させるものである。このようにすれば、例えば通常時の変速点への復帰に伴いダウンシフトが実行されて急な減速が発生することによる違和感を回避することができる。
【0023】
また、請求項12にかかる発明は、請求項9乃至11のいずれかに記載の車両用駆動装置の制御装置において、前記こもり音発生域の回避が必要であるか否かを判断するこもり音発生域回避判断手段を備え、そのこもり音発生域回避判断手段によりこもり音発生域の回避が必要であると判断された場合にそのこもり音発生域を回避するものである。このようにすれば、一律にこもり音発生域を回避する場合に比較して車両用駆動装置の特性例えばシステム効率の悪化が抑制され、運転性や燃費性が向上する。
【0024】
また、請求項13にかかる発明は、請求項12に記載の車両用駆動装置の制御装置において、前記こもり音発生域回避判断手段は、エンジン駆動に伴うこもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさであるか否かに基づいて、前記こもり音発生域の回避が必要であるか否かを判断するものである。このようにすれば、こもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさである場合のみこもり音発生域が回避されるので、車両用駆動装置の特性例えばシステム効率の悪化が抑制され運転性や燃費性が向上する。
【0025】
また、請求項14にかかる発明は、請求項13に記載の車両用駆動装置の制御装置において、前記こもり音発生域回避判断手段は、前記こもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさであることが所定時間連続したときに、前記こもり音発生域の回避が必要であると判断するものである。このようにすれば、こもり音発生域の回避とその回避制御の解除とが短時間に繰り返されることが防止されるので、車両状態が安定する。
【0026】
ここで、好適には、請求項6に記載の車両用駆動装置の制御装置において、前記車両用駆動装置は、エンジンに連結された第1要素と第1電動機に連結された第2要素と第2電動機および伝達部材に連結された第3要素とを有してそのエンジンの出力をその第1電動機およびその伝達部材へ分配する差動機構を有する差動部を備えるものである。このようにすれば、例えば伝達部材の回転速度が車速に拘束されたとしても、その伝達部材の回転速度を変化させることなく差動機構の差動作用によってエンジンの動作点を変更して、エンジントルクと第2電動機のトルクとの分担を変更することができる。例えば、エンジンの動作点を変更したことでエンジントルクが低下した場合には、その低下分を第2電動機のトルクで補う。また、エンジントルクと第2電動機のトルクとの分担を変更する際には、エンジンの最適燃費率曲線に沿ってエンジンの動作点を変更しても良い。これによって、車両の駆動に必要なトルクがそのまま確保されることに加え、エンジンの効率の低下ができるだけ避けられる。
【0027】
また、好適には、請求項1または9に記載の車両用駆動装置の制御装置において、前記車両用駆動装置は、エンジンに連結された第1要素と第1電動機に連結された第2要素と第2電動機および伝達部材に連結された第3要素とを有してそのエンジンの出力をその第1電動機およびその伝達部材へ分配する差動機構を有する差動部を備え、その伝達部材から駆動輪への動力伝達経路に前記変速機を備えるものである。このようにすれば、差動部の変速比と変速機の変速比とに基づいて車両用駆動装置の総合変速比が形成され、変速機の変速比のみ或いは差動部の変速比のみを変更することによりエンジンの動作点を変更することができる。
【0028】
また、変速機の変速比或いは差動部の変速比を変更することにより駆動系の共振系が変化するので、これによってもこもり音を抑制する効果が期待できる。従って、総合変速比を略一定に維持するように変速機と差動部との両変速比を共に変更してエンジンを車両用駆動装置の特性例えばシステム効率に基づく動作点に略一定に維持したとしても、こもり音を抑制する効果が期待できる。
【0029】
また、好適には、前記差動機構は遊星歯車装置であり、前記第1要素はその遊星歯車装置のキャリヤであり、前記第2要素はその遊星歯車装置のサンギヤであり、前記第3要素はその遊星歯車装置のリングギヤである。このようにすれば、エンジンの動作点を変更することによってこもり音の発生を抑制することが可能になる。
【0030】
また、好適には、前記変速機は、1組または複数組の遊星歯車装置の回転要素が係合装置によって選択的に連結されることにより複数のギヤ段が択一的に達成される例えば、前進2段、前進3段、更にはそれ以上の変速段を有する等の種々の遊星歯車式多段変速機等により構成される。このようにすれば、変速機の変速段(変速比)を変更することによってこもり音の発生を抑制することが可能になる。
【0031】
また、好適には、車両用駆動装置の特性例えばシステム効率が低下してもよい車両状態であるときに、こもり音発生域を回避するものである。このようにすれば、例えば車両走行が確実に維持される。上記車両用駆動装置の特性例えばシステム効率が低下してもよい車両状態とは、例えば電動機へ電気エネルギーを供給する蓄電装置の充電容量(充電状態)が所定容量を超えており、発電効率や充電効率が低下しても、或いは蓄電装置の充電を行わずとも、電動機の駆動に支障がない車両状態が想定される。
【0032】
また、好適には、前記車両用駆動装置は、エンジンから駆動輪までの動力伝達経路を動力伝達可能状態と動力伝達遮断状態とに切り換え可能に構成されており、その動力伝達経路の動力伝達可能状態への切換えを選択するための駆動ポジションと、動力伝達経路の動力伝達遮断状態への切換えを選択するための非駆動ポジションとに選択的に切換え操作される切換装置を更に備え、その切換装置が所定のポジションであるときに、こもり音発生域を回避するものである。このようにすれば、所定のポジションに合わせた態様でこもり音発生域を回避することができる。例えば、切換装置が駆動ポジションに切換え操作されている一態様である前進走行時には、前記蓄電装置の充電容量が所定容量を超えていることを条件としてこもり音発生域を回避するように制御する。また、切換装置が非駆動ポジションに切換え操作されている一態様である駐車時には、例えばエンジンの動力によって蓄電装置が電動機による充電中であるときにこもり音発生域を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0034】
図1は、本発明が適用されるハイブリッド車両の駆動装置の一部を構成する変速機構10を説明する骨子図である。図1において、変速機構10は車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース12(以下、ケース12という)内において共通の軸心上に配設された入力回転部材としての入力軸14と、この入力軸14に直接に或いは図示しない脈動吸収ダンパー(振動減衰装置)などを介して間接に連結された無段変速部としての差動部11と、その差動部11と駆動輪34(図7参照)との間の動力伝達経路で伝達部材(伝動軸)18を介して直列に連結されている動力伝達部としての自動変速部20と、この自動変速部20に連結されている出力回転部材としての出力軸22とを直列に備えている。この変速機構10は、例えば車両において縦置きされるFR(フロントエンジン・リヤドライブ)型車両に好適に用いられるものであり、入力軸14に直接に或いは図示しない脈動吸収ダンパーを介して直接的に連結された走行用の駆動力源として例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であるエンジン8と一対の駆動輪34との間に設けられて、エンジン8からの動力を動力伝達経路の一部を構成する差動歯車装置(終減速機)32(図7参照)および一対の車軸等を順次介して一対の駆動輪34へ伝達する。
【0035】
このように、本実施例の変速機構10においてはエンジン8と差動部11とは直結されている。この直結にはトルクコンバータやフルードカップリング等の流体式伝動装置を介することなく連結されているということであり、例えば上記脈動吸収ダンパーなどを介する連結はこの直結に含まれる。なお、変速機構10はその軸心に対して対称的に構成されているため、図1の骨子図においてはその下側が省略されている。以下の各実施例についても同様である。
【0036】
差動部11は、第1電動機M1と、入力軸14に入力されたエンジン8の出力を機械的に分配する機械的機構であってエンジン8の出力を第1電動機M1および伝達部材18に分配する差動機構としての動力分配機構16と、伝達部材18と一体的に回転するように作動的に連結されている第2電動機M2とを備えている。本実施例の第1電動機M1および第2電動機M2は発電機能をも有する所謂モータジェネレータであるが、第1電動機M1は反力を発生させるためのジェネレータ(発電)機能を少なくとも備え、第2電動機M2は走行用の駆動力源として駆動力を出力するためのモータ(電動機)機能を少なくとも備える。尚、明細書全体を通して第1電動機M1と第2電動機M2とを特に区別しない場合は電動機Mと表す。
【0037】
動力分配機構16は、例えば「0.418」程度の所定のギヤ比ρ1を有するシングルピニオン型の第1遊星歯車装置24を主体として構成されている。この第1遊星歯車装置24は、第1サンギヤS1、第1遊星歯車P1、その第1遊星歯車P1を自転および公転可能に支持する第1キャリヤCA1、第1遊星歯車P1を介して第1サンギヤS1と噛み合う第1リングギヤR1を回転要素(要素)として備えている。第1サンギヤS1の歯数をZS1、第1リングギヤR1の歯数をZR1とすると、上記ギヤ比ρ1はZS1/ZR1である。
【0038】
この動力分配機構16においては、第1キャリヤCA1は入力軸14すなわちエンジン8に連結され、第1サンギヤS1は第1電動機M1に連結され、第1リングギヤR1は伝達部材18に連結されている。このように構成された動力分配機構16は、第1遊星歯車装置24の3要素である第1サンギヤS1、第1キャリヤCA1、第1リングギヤR1がそれぞれ相互に相対回転可能とされて差動作用が作動可能なすなわち差動作用が働く差動状態とされることから、エンジン8の出力が第1電動機M1と伝達部材18とに分配されるとともに、分配されたエンジン8の出力の一部で第1電動機M1から発生させられた電気エネルギで蓄電されたり第2電動機M2が回転駆動されるので、差動部11(動力分配機構16)は電気的な差動装置として機能させられて例えば差動部11は所謂無段変速状態(電気的CVT状態)とされて、エンジン8の所定回転に拘わらず伝達部材18の回転が連続的に変化させられる。すなわち、差動部11はその変速比γ0(入力軸14の回転速度NIN/伝達部材18の回転速度N18)が最小値γ0min から最大値γ0max まで連続的に変化させられる電気的な無段変速機として機能する。
【0039】
自動変速部20は、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置26、シングルピニオン型の第3遊星歯車装置28、およびシングルピニオン型の第4遊星歯車装置30を備え、有段式の自動変速機として機能する遊星歯車式の多段変速機である。第2遊星歯車装置26は、第2サンギヤS2、第2遊星歯車P2、その第2遊星歯車P2を自転および公転可能に支持する第2キャリヤCA2、第2遊星歯車P2を介して第2サンギヤS2と噛み合う第2リングギヤR2を備えており、例えば「0.562」程度の所定のギヤ比ρ2を有している。第3遊星歯車装置28は、第3サンギヤS3、第3遊星歯車P3、その第3遊星歯車P3を自転および公転可能に支持する第3キャリヤCA3、第3遊星歯車P3を介して第3サンギヤS3と噛み合う第3リングギヤR3を備えており、例えば「0.425」程度の所定のギヤ比ρ3を有している。第4遊星歯車装置30は、第4サンギヤS4、第4遊星歯車P4、その第4遊星歯車P4を自転および公転可能に支持する第4キャリヤCA4、第4遊星歯車P4を介して第4サンギヤS4と噛み合う第4リングギヤR4を備えており、例えば「0.421」程度の所定のギヤ比ρ4を有している。第2サンギヤS2の歯数をZS2、第2リングギヤR2の歯数をZR2、第3サンギヤS3の歯数をZS3、第3リングギヤR3の歯数をZR3、第4サンギヤS4の歯数をZS4、第4リングギヤR4の歯数をZR4とすると、上記ギヤ比ρ2はZS2/ZR2、上記ギヤ比ρ3はZS3/ZR3、上記ギヤ比ρ4はZS4/ZR4である。
【0040】
自動変速部20では、第2サンギヤS2と第3サンギヤS3とが一体的に連結されて第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第2キャリヤCA2は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第4リングギヤR4は第3ブレーキB3を介してケース12に選択的に連結され、第2リングギヤR2と第3キャリヤCA3と第4キャリヤCA4とが一体的に連結されて出力軸22に連結され、第3リングギヤR3と第4サンギヤS4とが一体的に連結されて第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結されている。
【0041】
このように、自動変速部20内と差動部11(伝達部材18)とは自動変速部20の変速段を成立させるために用いられる第1クラッチC1または第2クラッチC2を介して選択的に連結されている。言い換えれば、第1クラッチC1および第2クラッチC2は、伝達部材18と自動変速部20との間の動力伝達経路すなわち差動部11(伝達部材18)から駆動輪34への動力伝達経路を、その動力伝達経路の動力伝達を可能とする動力伝達可能状態と、その動力伝達経路の動力伝達を遮断する動力伝達遮断状態とに選択的に切り換える係合装置として機能している。つまり、第1クラッチC1および第2クラッチC2の少なくとの一方が係合されることで上記動力伝達経路が動力伝達可能状態とされ、或いは第1クラッチC1および第2クラッチC2が解放されることで上記動力伝達経路が動力伝達遮断状態とされる。
【0042】
また、この自動変速部20は、解放側係合装置の解放と係合側係合装置の係合とによりクラッチツウクラッチ変速が実行されて各ギヤ段(変速段)が選択的に成立させられることにより、略等比的に変化する変速比γ(=伝達部材18の回転速度N18/出力軸22の回転速度NOUT)が各ギヤ段毎に得られる。例えば、図2の係合作動表に示されるように、第1クラッチC1および第3ブレーキB3の係合により変速比γ1が最大値例えば「3.357」程度である第1速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1および第2ブレーキB2の係合により変速比γ2が第1速ギヤ段よりも小さい値例えば「2.180」程度である第2速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1および第1ブレーキB1の係合により変速比γ3が第2速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.424」程度である第3速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1および第2クラッチC2の係合により変速比γ4が第3速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.000」程度である第4速ギヤ段が成立させられる。また、第2クラッチC2および第3ブレーキB3の係合により変速比γRが第1速ギヤ段と第2速ギヤ段との間の値例えば「3.209」程度である後進ギヤ段(後進変速段)が成立させられる。また、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、および第3ブレーキB3の解放によりニュートラル「N」状態とされる。なお、図2の係合作動表に示されている第5速ギヤ段における自動変速部20の係合装置の係合作動は第4速ギヤ段と同じである。
【0043】
前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、および第3ブレーキB3(以下、特に区別しない場合はクラッチC、ブレーキBと表す)は、従来の車両用自動変速機においてよく用いられている係合要素としての油圧式摩擦係合装置であって、互いに重ねられた複数枚の摩擦板が油圧アクチュエータにより押圧される湿式多板型や、回転するドラムの外周面に巻き付けられた1本または2本のバンドの一端が油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキなどにより構成され、それが介挿されている両側の部材を選択的に連結するためのものである。
【0044】
以上のように構成された変速機構10において、無段変速機として機能する差動部11と自動変速部20とで無段変速機が構成される。また、差動部11の変速比を一定となるように制御することにより、差動部11と自動変速部20とで有段変速機と同等の状態を構成することが可能とされる。
【0045】
具体的には、差動部11が無段変速機として機能し、且つ差動部11に直列の自動変速部20が有段変速機として機能することにより、自動変速部20の少なくとも1つの変速段Mに対して自動変速部20に入力される回転速度(以下、自動変速部20の入力回転速度)すなわち伝達部材18の回転速度(以下、伝達部材回転速度N18)が無段的に変化させられてその変速段Mにおいて無段的な変速比幅が得られる。したがって、変速機構10の総合変速比γT(=入力軸14の回転速度NIN/出力軸22の回転速度NOUT)が無段階に得られ、変速機構10において無段変速機が構成される。この変速機構10の総合変速比γTは、差動部11の変速比γ0と自動変速部20の変速比γとに基づいて形成される変速機構10全体としてのトータル変速比γTである。
【0046】
例えば、図2の係合作動表に示される自動変速部20の第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段や後進ギヤ段の各ギヤ段に対し伝達部材回転速度N18が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって、変速機構10全体としてのトータル変速比γTが無段階に得られる。
【0047】
また、差動部11の変速比が一定となるように制御され、且つクラッチCおよびブレーキBが選択的に係合作動させられて第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段のいずれか或いは後進ギヤ段(後進変速段)が選択的に成立させられることにより、略等比的に変化する変速機構10のトータル変速比γTが各ギヤ段毎に得られる。したがって、変速機構10において有段変速機と同等の状態が構成される。
【0048】
例えば、差動部11の変速比γ0が「1」に固定されるように制御されると、図2の係合作動表に示されるように自動変速部20の第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段や後進ギヤ段の各ギヤ段に対応する変速機構10のトータル変速比γTが各ギヤ段毎に得られる。また、自動変速部20の第4速ギヤ段において差動部11の変速比γ0が「1」より小さい値例えば0.7程度に固定されるように制御されると、図2の係合作動表の第5速ギヤ段に示されるように第4速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.705」程度であるトータル変速比γTが得られる。
【0049】
図3は、差動部11と自動変速部20とから構成される変速機構10において、ギヤ段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図を示している。この図3の共線図は、各遊星歯車装置24、26、28、30のギヤ比ρの関係を示す横軸と、相対的回転速度を示す縦軸とから成る二次元座標であり、3本の横線のうちの下側の横線X1が回転速度零を示し、上側の横線X2が回転速度「1.0」すなわち入力軸14に連結されたエンジン8の回転速度NEを示し、横線XGが伝達部材18の回転速度を示している。
【0050】
また、差動部11を構成する動力分配機構16の3つの要素に対応する3本の縦線Y1、Y2、Y3は、左側から順に第2回転要素(第2要素)RE2に対応する第1サンギヤS1、第1回転要素(第1要素)RE1に対応する第1キャリヤCA1、第3回転要素(第3要素)RE3に対応する第1リングギヤR1の相対回転速度を示すものであり、それらの間隔は第1遊星歯車装置24のギヤ比ρ1に応じて定められている。さらに、自動変速部20の5本の縦線Y4、Y5、Y6、Y7、Y8は、左から順に、第4回転要素(第4要素)RE4に対応し且つ相互に連結された第2サンギヤS2および第3サンギヤS3を、第5回転要素(第5要素)RE5に対応する第2キャリヤCA2を、第6回転要素(第6要素)RE6に対応する第4リングギヤR4を、第7回転要素(第7要素)RE7に対応し且つ相互に連結された第2リングギヤR2、第3キャリヤCA3、第4キャリヤCA4を、第8回転要素(第8要素)RE8に対応し且つ相互に連結された第3リングギヤR3、第4サンギヤS4をそれぞれ表し、それらの間隔は第2、第3、第4遊星歯車装置26、28、30のギヤ比ρ2、ρ3、ρ4に応じてそれぞれ定められている。共線図の縦軸間の関係においてサンギヤとキャリヤとの間が「1」に対応する間隔とされるとキャリヤとリングギヤとの間が遊星歯車装置のギヤ比ρに対応する間隔とされる。すなわち、差動部11では縦線Y1とY2との縦線間が「1」に対応する間隔に設定され、縦線Y2とY3との間隔はギヤ比ρ1に対応する間隔に設定される。また、自動変速部20では各第2、第3、第4遊星歯車装置26、28、30毎にそのサンギヤとキャリヤとの間が「1」に対応する間隔に設定され、キャリヤとリングギヤとの間がρに対応する間隔に設定される。
【0051】
上記図3の共線図を用いて表現すれば、本実施例の変速機構10は、動力分配機構16(差動部11)において、第1遊星歯車装置24の第1回転要素RE1(第1キャリヤCA1)が入力軸14すなわちエンジン8に連結され、第2回転要素RE2が第1電動機M1に連結され、第3回転要素(第1リングギヤR1)RE3が伝達部材18および第2電動機M2に連結されて、入力軸14の回転を伝達部材18を介して自動変速部20へ伝達する(入力させる)ように構成されている。このとき、Y2とX2の交点を通る斜めの直線L0により第1サンギヤS1の回転速度と第1リングギヤR1の回転速度との関係が示される。
【0052】
例えば、差動部11においては、第1回転要素RE1乃至第3回転要素RE3が相互に相対回転可能とされる差動状態とされており、直線L0と縦線Y3との交点で示される第1リングギヤR1の回転速度が車速Vに拘束されて略一定である場合には、第1電動機M1の回転速度を制御することによって直線L0と縦線Y1との交点で示される第1サンギヤS1の回転が上昇或いは下降させられると、直線L0と縦線Y2との交点で示される第1キャリヤCA1の回転速度すなわちエンジン回転速度NEが上昇或いは下降させられる。
【0053】
また、差動部11の変速比γ0が「1」に固定されるように第1電動機M1の回転速度を制御することによって第1サンギヤS1の回転がエンジン回転速度NEと同じ回転とされると、直線L0は横線X2と一致させられ、エンジン回転速度NEと同じ回転で第1リングギヤR1の回転速度すなわち伝達部材18が回転させられる。或いは、差動部11の変速比γ0が「1」より小さい値例えば0.7程度に固定されるように第1電動機M1の回転速度を制御することによって第1サンギヤS1の回転が零とされると、直線L0は図3に示す状態とされ、エンジン回転速度NEよりも増速された回転で伝達部材回転速度N18が回転させられる。
【0054】
また、自動変速部20において第4回転要素RE4は第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第5回転要素RE5は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第6回転要素RE6は第3ブレーキB3を介してケース12に選択的に連結され、第7回転要素RE7は出力軸22に連結され、第8回転要素RE8は第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結されている。
【0055】
自動変速部20では、差動部11において直線L0が横線X2と一致させられてエンジン回転速度NEと同じ回転速度が差動部11から第8回転要素RE8に入力されると、図3に示すように、第1クラッチC1と第3ブレーキB3とが係合させられることにより、第8回転要素RE8の回転速度を示す縦線Y8と横線X2との交点と第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6と横線X1との交点とを通る斜めの直線L1と、出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第1速の出力軸22の回転速度が示される。同様に、第1クラッチC1と第2ブレーキB2とが係合させられることにより決まる斜めの直線L2と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第2速の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第1ブレーキB1とが係合させられることにより決まる斜めの直線L3と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第3速の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第2クラッチC2とが係合させられることにより決まる水平な直線L4と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第4速の出力軸22の回転速度が示される。
【0056】
また、差動部11において直線L0が図3に示す状態とされてエンジン回転速度NEよりも高い回転速度が差動部11から第8回転要素RE8に入力されると、図3に示すように、第1クラッチC1および第2クラッチC2が係合させられることにより決まる水平な直線L5と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第5速の出力軸22の回転速度が示される。
【0057】
図4は、本実施例の変速機構10を制御するための電子制御装置80に入力される信号及びその電子制御装置80から出力される信号を例示している。この電子制御装置80は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことによりエンジン8、第1、第2電動機M1、M2に関するハイブリッド駆動制御、自動変速部20の変速制御等の駆動制御を実行するものである。
【0058】
電子制御装置80には、図4に示すような各センサやスイッチなどから、エンジン水温TEMPWを表す信号、シフトレバー52(図6参照)のシフトポジションPSHや「M」ポジションにおける操作回数等を表す信号、エンジン8の回転速度であるエンジン回転速度NEを表す信号、ギヤ比列設定値を表す信号、Mモード(手動変速走行モード)を指令する信号、エアコンの作動を表す信号、出力軸22の回転速度(以下、出力軸回転速度)NOUTに対応する車速Vを表す信号、自動変速部20の作動油温TOILを表す信号、サイドブレーキ操作を表す信号、フットブレーキ操作を表す信号、触媒温度を表す信号、運転者の出力要求量に対応するアクセルペダルの操作量であるアクセル開度Accを表す信号、カム角を表す信号、スノーモード設定を表す信号、車両の前後加速度Gを表す信号、オートクルーズ走行を表す信号、車両の重量(車重)を表す信号、各車輪の車輪速を表す信号、第1電動機M1の回転速度NM1(以下、第1電動機回転速度NM1という)を表す信号、第2電動機M2の回転速度NM2(以下、第2電動機回転速度NM2という)を表す信号、蓄電装置56(図7参照)の充電容量(充電状態)SOCを表す信号などが、それぞれ供給される。
【0059】
また、上記電子制御装置80からは、エンジン出力を制御するエンジン出力制御装置58(図7参照)への制御信号例えばエンジン8の吸気管60に備えられた電子スロットル弁62のスロットル弁開度θTHを操作するスロットルアクチュエータ64への駆動信号や燃料噴射装置66による吸気管60或いはエンジン8の筒内への燃料供給量を制御する燃料供給量信号や点火装置68によるエンジン8の点火時期を指令する点火信号、過給圧を調整するための過給圧調整信号、電動エアコンを作動させるための電動エアコン駆動信号、電動機M1およびM2の作動を指令する指令信号、シフトインジケータを作動させるためのシフトポジション(操作位置)表示信号、ギヤ比を表示させるためのギヤ比表示信号、スノーモードであることを表示させるためのスノーモード表示信号、制動時の車輪のスリップを防止するABSアクチュエータを作動させるためのABS作動信号、Mモードが選択されていることを表示させるMモード表示信号、差動部11や自動変速部20の油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータを制御するために油圧制御回路70(図5、図7参照)に含まれる電磁弁(リニアソレノイドバルブ)を作動させるバルブ指令信号、この油圧制御回路70に設けられたレギュレータバルブ(調圧弁)によりライン油圧PLを調圧するための信号、そのライン油圧PLが調圧されるための元圧の油圧源である電動油圧ポンプを作動させるための駆動指令信号、電動ヒータを駆動するための信号、クルーズコントロール制御用コンピュータへの信号等が、それぞれ出力される。
【0060】
図5は、油圧制御回路70のうちクラッチC1、C2、およびブレーキB1〜B3の各油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)AC1、AC2、AB1、AB2、AB3の作動を制御するリニアソレノイドバルブSL1〜SL5に関する回路図である。
【0061】
図5において、各油圧アクチュエータAC1、AC2、AB1、AB2、AB3には、ライン油圧PLがそれぞれリニアソレノイドバルブSL1〜SL5により電子制御装置80からの指令信号に応じた係合圧PC1、PC2、PB1、PB2、PB3に調圧されてそれぞれ直接的に供給されるようになっている。このライン油圧PLは、図示しない電動オイルポンプやエンジン30により回転駆動される機械式オイルポンプから発生する油圧を元圧として例えばリリーフ型調圧弁(レギュレータバルブ)によって、アクセル開度或いはスロットル開度で表されるエンジン負荷等に応じた値に調圧されるようになっている。
【0062】
リニアソレノイドバルブSL1〜SL5は、基本的には何れも同じ構成で、電子制御装置80により独立に励磁、非励磁され、各油圧アクチュエータAC1、AC2、AB1、AB2、AB3の油圧が独立に調圧制御されてクラッチC1〜C4、ブレーキB1、B2の係合圧PC1、PC2、PB1、PB2、PB3が制御される。そして、自動変速部20は、例えば図2の係合作動表に示すように予め定められた係合装置が係合されることによって各変速段が成立させられる。また、自動変速部20の変速制御においては、例えば変速に関与するクラッチCやブレーキBの解放と係合とが同時に制御される所謂クラッチツウクラッチ変速が実行される。
【0063】
図6は複数種類のシフトポジションPSHを人為的操作により切り換える切換装置としてのシフト操作装置50の一例を示す図である。このシフト操作装置50は、例えば運転席の横に配設され、複数種類のシフトポジションPSHを選択するために操作されるシフトレバー52を備えている。
【0064】
そのシフトレバー52は、変速機構10内つまり自動変速部20内の動力伝達経路が遮断されたニュートラル状態すなわち中立状態とし且つ自動変速部20の出力軸22をロックするための駐車ポジション「P(パーキング)」、後進走行のための後進走行ポジション「R(リバース)」、変速機構10内の動力伝達経路が遮断された中立状態とするための中立ポジション「N(ニュートラル)」、自動変速モードを成立させて差動部11の無段的な変速比幅と自動変速部20の第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段の範囲で自動変速制御される各ギヤ段とで得られる変速機構10の変速可能なトータル変速比γTの変化範囲内で自動変速制御を実行させる前進自動変速走行ポジション「D(ドライブ)」、または手動変速走行モード(手動モード)を成立させて自動変速部20の自動変速制御における高速側の変速段を制限する所謂変速レンジを設定するための前進手動変速走行ポジション「M(マニュアル)」へ手動操作されるように設けられている。
【0065】
上記シフトレバー52の各シフトポジションPSHへの手動操作に連動して図2の係合作動表に示す後進ギヤ段「R」、ニュートラル「N」、前進ギヤ段「D」における各変速段等が成立するように、例えば油圧制御回路70が電気的に切り換えられる。
【0066】
上記「P」乃至「M」ポジションに示す各シフトポジションPSHにおいて、「P」ポジションおよび「N」ポジションは、車両を走行させないときに選択される非走行ポジションであって、例えば図2の係合作動表に示されるように第1クラッチC1および第2クラッチC2のいずれもが解放されるような自動変速部20内の動力伝達経路が遮断された車両を駆動不能とする第1クラッチC1および第2クラッチC2による動力伝達経路の動力伝達遮断状態へ切換えを選択するための非駆動ポジションである。また、「R」ポジション、「D」ポジションおよび「M」ポジションは、車両を走行させるときに選択される走行ポジションであって、例えば図2の係合作動表に示されるように第1クラッチC1および第2クラッチC2の少なくとも一方が係合されるような自動変速部20内の動力伝達経路が連結された車両を駆動可能とする第1クラッチC1および/または第2クラッチC2による動力伝達経路の動力伝達可能状態への切換えを選択するための駆動ポジションでもある。
【0067】
具体的には、シフトレバー52が「P」ポジション或いは「N」ポジションから「R」ポジションへ手動操作されることで、第2クラッチC2が係合されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達遮断状態から動力伝達可能状態とされ、シフトレバー52が「N」ポジションから「D」ポジションへ手動操作されることで、少なくとも第1クラッチC1が係合されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達遮断状態から動力伝達可能状態とされる。また、シフトレバー52が「R」ポジションから「P」ポジション或いは「N」ポジションへ手動操作されることで、第2クラッチC2が解放されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達可能状態から動力伝達遮断状態とされ、シフトレバー52が「D」ポジションから「N」ポジションへ手動操作されることで、第1クラッチC1および第2クラッチC2が解放されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達可能状態から動力伝達遮断状態とされる。
【0068】
図7は、電子制御装置80による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図7において、有段変速制御手段82は、図8に示すような車速Vと自動変速部20の出力トルクTOUTとを変数として予め記憶されたアップシフト線(実線)およびダウンシフト線(一点鎖線)を有する関係(変速線図、変速マップ)から実際の車速Vおよび自動変速部20の要求出力トルクTOUTで示される車両状態に基づいて、自動変速部20の変速を実行すべきか否かを判断しすなわち自動変速部20の変速すべき変速段を判断し、その判断した変速段が得られるように自動変速部20の自動変速制御を実行する。
【0069】
このとき、有段変速制御手段82は、例えば図2に示す係合表に従って変速段が達成されるように、自動変速部20の変速に関与する油圧式摩擦係合装置を係合および/または解放させる指令(変速出力指令、油圧指令)を、すなわち自動変速部20の変速に関与する解放側係合装置を解放すると共に係合側係合装置を係合することによりクラッチツウクラッチ変速を実行させる指令を油圧制御回路70へ出力する。油圧制御回路70は、その指令に従って、例えば解放側係合装置を解放すると共に係合側係合装置を係合して自動変速部20の変速が実行されるように、油圧制御回路70内のリニアソレノイドバルブSLを作動させてその変速に関与する油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータを作動させる。
【0070】
ハイブリッド制御手段84は、エンジン8を効率のよい作動域で作動させる一方で、エンジン8と第2電動機M2との駆動力の配分や第1電動機M1の発電による反力を最適になるように変化させて差動部11の電気的な無段変速機としての変速比γ0を制御する。例えば、そのときの走行車速Vにおいて、運転者の出力要求量としてのアクセル開度Accや車速Vから車両の目標(要求)出力を算出し、その車両の目標出力と充電要求値から必要なトータル目標出力を算出し、そのトータル目標出力が得られるように伝達損失、補機負荷、第2電動機M2のアシストトルクTM2等を考慮して目標エンジン出力を算出し、その目標エンジン出力が得られるエンジン回転速度NEとエンジントルクTEとなるようにエンジン8を制御するとともに第1電動機M1の発電量を制御する。
【0071】
例えば、ハイブリッド制御手段84は、その制御を動力性能や燃費向上などのために自動変速部20の変速段を考慮して実行する。このようなハイブリッド制御では、エンジン8を効率のよい作動域で作動させるために定まるエンジン回転速度NEと車速Vおよび自動変速部20の変速段で定まる伝達部材18の回転速度とを整合させるために、差動部11が電気的な無段変速機として機能させられる。すなわち、ハイブリッド制御手段84は、エンジン回転速度NEとエンジン8の出力トルク(エンジントルク)TEとで構成される二次元座標内において無段変速走行の時に運転性と燃費性とを両立するように予め実験的に求められて記憶された図9の破線に示すようなエンジン8の最適燃費率曲線(燃費マップ、関係)に沿ってエンジン8が作動させられるように、例えば目標出力(トータル目標出力、要求駆動力)を充足するために必要なエンジン出力を発生するためのエンジントルクTEとエンジン回転速度NEとなるように、変速機構10のトータル変速比γTの目標値を定め、その目標値が得られるように自動変速部20の変速段を考慮して差動部11の変速比γ0を制御し、トータル変速比γTをその変速可能な変化範囲内で制御する。このように、変速機構10の特性例えばシステム効率に基づいてエンジン8の動作点、第1電動機M1や第2電動機M2の動作点、および自動変速部20の変速比γが決定される。言い換えれば、変速機構10の特性例えばシステム効率に基づいてエンジントルクTEと第2電動機M2のアシストトルクTM2との分担が決定される。
【0072】
このとき、ハイブリッド制御手段84は、第1電動機M1により発電された電気エネルギをインバータ54を通して蓄電装置56や第2電動機M2へ供給するので、エンジン8の動力の主要部は機械的に伝達部材18へ伝達されるが、エンジン8の動力の一部は第1電動機M1の発電のために消費されてそこで電気エネルギに変換され、インバータ54を通してその電気エネルギが第2電動機M2へ供給され、その第2電動機M2が駆動されて第2電動機M2から伝達部材18へ伝達される。この電気エネルギの発生から第2電動機M2で消費されるまでに関連する機器により、エンジン8の動力の一部を電気エネルギに変換し、その電気エネルギを機械的エネルギに変換するまでの電気パスが構成される。
【0073】
また、ハイブリッド制御手段84は、車両の停止中又は走行中に拘わらず、差動部11の電気的CVT機能によって第1電動機回転速度NM1を制御してエンジン回転速度NEを略一定に維持したり任意の回転速度に回転制御させられる。言い換えれば、ハイブリッド制御手段84は、エンジン回転速度NEを略一定に維持したり任意の回転速度に制御しつつ第1電動機回転速度NM1を任意の回転速度に回転制御することができる。
【0074】
例えば、図3の共線図からもわかるようにハイブリッド制御手段84は車両走行中にエンジン回転速度NEを引き上げる場合には、車速V(駆動輪34)に拘束される第2電動機回転速度NM2を略一定に維持しつつ第1電動機回転速度NM1の引き上げを実行する。また、ハイブリッド制御手段84は自動変速部20の変速中にエンジン回転速度NEを略一定に維持する場合には、エンジン回転速度NEを略一定に維持しつつ自動変速部20の変速や車速Vの変化に伴う第2電動機回転速度NM2の変化とは反対方向に第1電動機回転速度NM1を変化させる。
【0075】
また、ハイブリッド制御手段84は、スロットル制御のためにスロットルアクチュエータ64により電子スロットル弁62を開閉制御させる他、燃料噴射制御のために燃料噴射装置66による燃料噴射量や噴射時期を制御させ、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置68による点火時期を制御させる指令を単独で或いは組み合わせてエンジン出力制御装置58に出力して、必要なエンジン出力を発生するようにエンジン8の出力制御を実行するエンジン出力制御手段を機能的に備えている。
【0076】
例えば、ハイブリッド制御手段84は、基本的には図示しない予め記憶された関係からアクセル開度Accに基づいてスロットルアクチュエータ60を駆動し、アクセル開度Accが増加するほどスロットル弁開度θTHを増加させるようにスロットル制御を実行する。また、このエンジン出力制御装置58は、ハイブリッド制御手段84による指令に従って、スロットル制御のためにスロットルアクチュエータ64により電子スロットル弁62を開閉制御する他、燃料噴射制御のために燃料噴射装置66による燃料噴射を制御し、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置68による点火時期を制御するなどしてエンジントルク制御を実行する。
【0077】
また、ハイブリッド制御手段84は、エンジン8の停止又はアイドル状態に拘わらず、差動部11の電気的CVT機能(差動作用)によってモータ走行させることができる。
【0078】
例えば、ハイブリッド制御手段84は、図8に示すような車速Vと自動変速部20の出力トルクTOUTとを変数として予め記憶された走行用駆動力源をエンジン8と第2電動機M2とで切り換えるためのエンジン走行領域とモータ走行領域との境界線を有する関係(駆動力源切換線図、駆動力源マップ)から実際の車速Vおよび自動変速部20の要求出力トルクTOUTで示される車両状態に基づいて、モータ走行領域とエンジン走行領域との何れであるかを判断してモータ走行或いはエンジン走行を実行する。図8の実線Aに示す駆動力源マップは、例えば同じ図8中の実線および一点鎖線に示す変速マップと共に予め記憶されている。このように、ハイブリッド制御手段84によるモータ走行は、図8から明らかなように一般的にエンジン効率が高トルク域に比較して悪いとされる比較的低出力トルクTOUT域すなわち低エンジントルクTE域、或いは車速Vの比較的低車速域すなわち低負荷域で実行される。
【0079】
ハイブリッド制御手段84は、このモータ走行時には、停止しているエンジン8の引き摺りを抑制して燃費を向上させるために、第1電動機回転速度NM1を負の回転速度で制御して例えば第1電動機M1を無負荷状態とすることにより空転させて、差動部11の電気的CVT機能(差動作用)により必要に応じてエンジン回転速度NEを零乃至略零に維持する。
【0080】
また、ハイブリッド制御手段84は、エンジン走行領域であっても、上述した電気パスによる第1電動機M1からの電気エネルギおよび/または蓄電装置56からの電気エネルギを第2電動機M2へ供給し、その第2電動機M2を駆動して駆動輪34にトルクを付与することにより、エンジン8の動力を補助するための所謂トルクアシストが可能である。
【0081】
また、ハイブリッド制御手段84は、第1電動機M1を無負荷状態として自由回転すなわち空転させることにより、差動部11がトルクの伝達を不能な状態すなわち差動部11内の動力伝達経路が遮断された状態と同等の状態であって、且つ差動部11からの出力が発生されない状態とすることが可能である。すなわち、ハイブリッド制御手段84は、第1電動機M1を無負荷状態とすることにより差動部11をその動力伝達経路が電気的に遮断される中立状態(ニュートラル状態)とすることが可能である。
【0082】
ところで、車両の走行中においては様々な騒音が発生している。例えば、エンジン8の周期的な気筒点火(爆発)やピストンの往復運動に伴うエンジン8のトルク変動による回転変動を強制源(振動源、振動強制力)とする振動が発生して駆動系(すなわち動力伝達系)のねじり振動が生じ、特定のエンジン回転速度で発生する駆動系のねじり共振によりその振動が増幅され、車体に伝達されたその振動によりこもり音が発生することがある。特に、本実施例ではエンジン8と駆動輪38との間の動力伝達経路が直接的に連結されているのでトルクコンバータ等の流体伝動装置を介して連結されている場合に比較して駆動系のねじり共振例えば変速機構10のねじり共振が発生しやすい可能性がある。また、車両に搭載されるエンジンの大型化に伴うエンジントルクの増大に対応して例えば脈動吸収ダンパー等を大型化すると、こもり音がより発生しやすくなる可能性がある。
【0083】
図10は、前記図9の燃費マップであって、曲線P1、P2はそれぞれエンジン8における等パワー線Pの一例であり、点Aはエンジン8の燃費効率(最適燃費率)に基づいて設定されたエンジン回転速度NEとエンジントルクTEとで規定されるエンジン8の動作点の一例であり、丸囲み斜線部Nはこもり音の発生が顕著になる領域として予め実験的に求められて記憶されたこもり音発生域Nの一例である。そして、上記図10に示すように、変速機構10の特性例えばシステム効率に基づいて設定されたエンジン8の動作点がこもり音発生域N内となる場合がある。
【0084】
このようなエンジン駆動に伴うこもり音は、その大きさによっては乗員に不快感等を与える可能性があり、こもり音の低減に対する要求が一層高くなってきていることや乗員の快適性に及ぼす影響等を考えると、システム効率を少々低下させたとしても極力そのこもり音のレベルを低減させることが望まれる。
【0085】
そこで、本実施例では、エンジン8の動作点がこもり音発生域Nにある場合は、エンジン8の動作点を変更してこもり音発生域Nを回避するこもり音発生域回避手段86を備える。
【0086】
エンジン8の動作点の変更としては、例えば図10の動作点Aがこもり音発生域Nを回避するように、エンジン回転速度NEとエンジントルクTEとを変化させて動作点Aから最適燃費率曲線上の動作点Bに変更する。これにより、エンジン8の最適燃費率を維持した状態で、すなわちエンジン8の効率悪化を最小限にした状態でこもり音発生域Nを回避することが可能となる。
【0087】
但し、最適燃費率を維持した状態でエンジン8の動作点を変更する場合には等パワーが維持されないので、図10に示すようにエンジントルクTEが低下するときにはそのエンジントルクTEの低下分を第2電動機M2によるトルクアシスト量を増大することにより補うようにする。
【0088】
尚、必ずしも最適燃費率を維持した状態でエンジン8の動作点を変更する必要はなく、図11に示すようにアクセル開度Accに基づいて決定される変速機構10の総トルク(トータルトルク)に対して、単にエンジントルクTEの分担分を減らし、エンジン8に比較してトルク変動が少ない第2電動機M2によるアシストトルクTM2の分担分を増やすようにしても良い。この場合には、エネルギー効率的には必ずしも得ではないが、エンジントルクTEが減ることによりエンジン8のトルク変動が減少してこもり音の発生が一層抑制される。
【0089】
このように、最適燃費率を維持した状態でエンジン8の動作点を変更するか否かに拘わらず、前記こもり音発生域回避手段86は、エンジン8の動作点がこもり音発生域Nにある場合は、システム効率に基づいて決定されているエンジントルクTEと第2電動機M2のアシストトルクTM2との分担を変更してこもり音発生域Nを回避するものである。
【0090】
エンジン8の動作点を変更する具体的な手段について以下に詳しく説明する。
【0091】
例えば、こもり音発生域回避手段86は、差動部11の差動作用を利用して第1電動機M1を制御することにより第1電動機回転速度NM1を変化させることに伴ってエンジン回転速度NEを変化させてこもり音発生域Nを回避するようにエンジン8の動作点を変更する動作点変更指令Aを前記ハイブリッド制御手段84へ出力する。言い換えれば、こもり音発生域回避手段86は、こもり音発生域Nを回避するようにエンジントルクTEと第2電動機M2のアシストトルクTM2との分担を変更するトルク分担変更指令A’を前記ハイブリッド制御手段84へ出力する。つまり、この動作点変更指令A或いはトルク分担変更指令A’は差動部11の変速比γ0のみを変化させてエンジン8の動作点を変更するものである。
【0092】
また、変速機構10は自動変速部20を備えていることから、こもり音発生域回避手段86は、自動変速部20を変速制御することによりエンジン回転速度NEを変化させてこもり音発生域Nを回避するようにエンジン8の動作点を変更する動作点変更指令Bを前記有段変速制御手段82へ出力する。つまり、この動作点変更指令Bは自動変速部20の変速比γを単独で変化させることによりトータル変速比γTを変化させてエンジン8の動作点を変更するものである。
【0093】
尚、この動作点変更指令Bにおいて、同時に差動部11の変速比γ0も変化させて最適燃費率を維持した状態でエンジン8の動作点を変更することも可能である。例えば、こもり音発生域回避手段86は、上記動作点変更指令Bを前記有段変速制御手段82へ出力することに加えて、第1電動機M1を制御することによりエンジン回転速度NEを変化させて最適燃費率を維持するようにエンジン8の動作点を変更する動作点変更指令Cを前記ハイブリッド制御手段84へ出力する。つまり、この動作点変更指令Cは自動変速部20の変速比γの変化に合わせて差動部11の変速比γ0を変化させて最適燃費率を維持するように(例えば図10に示すように)エンジン8の動作点を変更するものである。
【0094】
以上のように、本実施例では、エンジン8の動作点がこもり音発生域Nにある場合は、エンジン8の動作点を変更してこもり音発生域Nを回避した。しかしながら、たとえエンジン8の動作点がこもり音発生域Nにあるとしてもそのこもり音発生域Nの回避が必要でない場合もあり、一律にこもり音発生域Nを回避することはシステム効率の面で不利になる可能性がある。
【0095】
そこで、こもり音発生域Nの回避が必要であるか否かを判断するこもり音発生域回避判断手段88を更に備え、前記こもり音発生域回避手段86は、一律にこもり音発生域Nを回避する場合に比較してシステム効率の悪化が抑制されるように、こもり音発生域回避判断手段88によりこもり音発生域Nの回避が必要であると判断された場合にそのこもり音発生域Nを回避するようにしても良い。
【0096】
図12は、こもり音発生域Nの回避が必要であるか否かを判断する一例としてこもり音と暗騒音とを比較する場合を説明する図であって、○印Aはこもり音発生域におけるこもり音の大きさである。
【0097】
図12の○印Aに示すこもり音と暗騒音Iとの関係のようにこもり音が暗騒音に隠れるときには、或いはこもり音の大きさが暗騒音の大きさと比較して突出量が少ないときには、こもり音が目立たなくなるのですなわちこもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさではないので、こもり音発生域Nの回避が必要なくなる。一方で、○印Aに示すこもり音と暗騒音IIとの関係のようにこもり音が暗騒音に隠れないときには、或いはこもり音の大きさが暗騒音の大きさと比較して突出量が所定量多いときには、こもり音が目立つのですなわちこもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさとなるので、こもり音発生域Nの回避が必要となる。
【0098】
上記暗騒音は、例えばエアコンの作動に関連する音(以下、エアコンノイズ)、オーディオの作動に関連する音(以下、オーディオノイズ)、エンジンの作動に関連する音(以下、エンジンノイズ)、窓の開閉に関連する音、ロードノイズ等が想定される。
【0099】
具体的には、暗騒音検出手段90は、暗騒音の大きさを検出或いは推定する。例えば、暗騒音検出手段90は、こもり音発生域N以外の定常走行時に例えばマイクロホン(図4参照)等を用いて暗騒音の実際の大きさを随時検出する。或いはまた、暗騒音検出手段90は、エアコンの作動に関連する信号とエアコンノイズとの予め実験的に求められて記憶された関係(エアコンノイズマップ)からエアコンの作動を表す信号や電動エアコン駆動信号等に基づいてエアコンノイズを推定したり、オーディオの作動に関連する信号とオーディオノイズとの予め実験的に求められて記憶された関係(オーディオノイズマップ)からオーディオスイッチのオンオフを表す信号やスピーカ音量を調節するための信号等に基づいてオーディオノイズを推定したり、エンジンの作動に関連する信号とエンジンノイズとの予め実験的に求められて記憶された関係(エンジンノイズ作動マップ)からエンジンのオンオフを表す信号やエンジン回転速度NE等に基づいてエンジンノイズを推定したりして、暗騒音を随時推定する。
【0100】
前記こもり音発生域回避判断手段88は、車両状態(例えばエンジン8の動作点)とこもり音の大きさとの予め実験的に求められて記憶された関係(こもり音マップ)から実際の車両状態に基づいてこもり音の大きさを推定すると共に、予め実験的に求められて定められた判断基準に従ってその推定したこもり音が前記暗騒音検出手段90により検出或いは推定された暗騒音と比較して問題になる大きさであるか否かを判断し、その判断結果に基づいてこもり音発生域Nの回避が必要であるか否かを判断する。
【0101】
このとき、前記こもり音発生域回避判断手段88は、前記こもり音発生域回避手段86によるこもり音発生域Nの回避制御とその回避制御の解除とが短時間に繰り返されないように、こもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさであることが所定時間T連続したときに、こもり音発生域Nの回避が必要であると判断しても良い。この所定時間Tは、こもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさであると確実に判断できるための予め実験的に求められて記憶された判定期間Tである。上記こもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさとは、例えばこもり音が暗騒音よりも所定値以上となったことすなわち暗騒音に所定値を加えた値以上となったことである。この所定値は、こもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさであることを判定するために予め実験的に求められて定められた値である。
【0102】
また、前記こもり音発生域回避手段86は、システム効率が低下してもよい車両状態であるときにこもり音発生域Nを回避するようにしても良い。例えば、蓄電装置56の充電状態SOCが所定容量Aを超えているか否かを判定する充電状態判定手段92を備え、こもり音発生域回避手段86は、充電状態判定手段92により充電状態SOCが所定容量Aを超えていると判定された場合にこもり音発生域Nを回避するようにしても良い。この所定容量Aは、発電効率や充電効率が低下しても或いは蓄電装置56の充電を行わずとも、例えばモータ走行時やモータアシスト時に第2電動機M2が十分なトルクを出せる程電力があるか否かを判定するための予め実験的に求められて記憶された判定値である。充電状態SOCが所定容量Aを超えており第2電動機M2の駆動に支障がない車両状態であるときは、システム効率が低下してもよい車両状態となる。
【0103】
但し、蓄電装置56の充電状態SOCが所定容量A以下であっても、例えばシフトレバー52の位置が「P」ポジションであるときには前記こもり音発生域回避手段86はこもり音発生域Nを回避するようにしても良い。これは、「P」ポジションであるときには第2電動機M2の駆動を考慮する必要が無く、また「P」ポジションであるときに充電状態SOCが所定容量A以下となってエンジン8の動力によって蓄電装置56が第1電動機M1による充電中であるときにこもり音発生域Nを回避できるようにするためである。従って、シフトレバー52の位置が「D」ポジションや「R」ポジションのような走行ポジションへ切り換えられているときには充電状態SOCが所定容量Aを超えていることを条件としてこもり音発生域Nを回避するが、シフトレバー52の位置が「P」ポジションであるときには充電状態SOCが所定容量A以下であってもこもり音発生域Nを回避する。
【0104】
すなわち、シフトレバー52のシフトポジションPSHを表す信号に基づいてシフトレバー52の位置が所定のポジションであるか否かを判定するシフトポジション判定手段94を備え、前記こもり音発生域回避手段86は、所定のポジションに合わせた態様でこもり音発生域Nを回避する。例えば、こもり音発生域回避手段86は、シフトポジション判定手段94により所定のポジションとしての「D」ポジションであると判定された場合には、前記充電状態判定手段92により充電状態SOCが所定容量Aを超えていると判定されたことを条件としてこもり音発生域Nを回避する。また、こもり音発生域回避手段86は、シフトポジション判定手段94により所定のポジションとしての「P」ポジションであると判定された場合には、充電状態判定手段92による判定結果に拘わらずこもり音発生域Nを回避する。
【0105】
図13は、電子制御装置80の制御作動の要部すなわちエンジン駆動に伴うこもり音の発生を適切に抑制する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。また、図14は、図13のフローチャートに示す制御作動を説明するタイムチャートであって、暗騒音レベルが低下したためにこもり音発生域Nを回避する場合の一例である。
【0106】
図13において、先ず、前記シフトポジション判定手段94に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S1において、シフトレバー52のシフトポジションPSHを表す信号に基づいてシフトレバー52の位置が「D」ポジションへ切り換えられているか否かが判定される。
【0107】
前記S1の判断が肯定される場合は前記充電状態判定手段92に対応するS2において、蓄電装置56の充電状態SOCが所定容量Aを超えているか否かが判定される。例えば、第2電動機M2が十分なアシストトルクを出せる程電力があるか否かが判断される。
【0108】
前記S1の判断が否定されるか、或いは前記S2の判断が否定される場合は前記こもり音発生域回避手段86、前記有段変速制御手段82、および前記ハイブリッド制御手段84に対応するS7において、こもり音発生域Nを回避する回避制御が行われず、システム効率に基づく通常の動作点すなわち変速機構10のシステム効率に基づくエンジントルクTEと第2電動機M2のアシストトルクTM2との分担、および自動変速部20の変速比γが設定される。これによって、燃費上、システム効率が最もよい車両状態とされる。
【0109】
前記S2の判断が肯定される場合は前記暗騒音検出手段90に対応するS3において、暗騒音の大きさが検出或いは推定される。
【0110】
次いで、前記こもり音発生域回避判断手段88に対応するS4において、例えば予め実験的に求められて記憶されたこもり音マップから実際の車両状態に基づいてこもり音の大きさが推定されると共に、予め実験的に求められて定められた判断基準に従ってその推定されたこもり音が前記S3にて検出或いは推定された暗騒音と比較して問題になる大きさであるか否かが判断され、例えばこもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさであることが所定時間T連続したか否かに基づいてこもり音発生域Nの回避が必要であるか否かが判断される。
【0111】
前記S4の判断が肯定される場合は前記こもり音発生域回避手段86に対応するS5において、システム効率に基づいて決定されているエンジントルクTEと第2電動機M2のアシストトルクTM2との分担が変更されてこもり音発生域Nが回避される。例えば、図11に示すようにアクセル開度Accに基づいて決定される変速機構10の総トルク(トータルトルク)に対して、システム効率に基づいて設定されたエンジントルクTEの分担分が減らされると共に、減らされたエンジントルクTEの分担分が補われるように第2電動機M2のアシストトルクTM2の分担分が増加させられる。これによって、こもり音が暗騒音に対して目立たなくされる。このとき、例えば最適燃費率が維持されるようにエンジン8の動作点が図10に示す如く動作点Aから動作点Bに変更されてこもり音発生域Nが回避されても良い。これによって、車両の駆動に必要なトルクがそのまま確保されると共に、エンジン8の効率の低下ができるだけ避けられる。
【0112】
一方で、前記S4の判断が否定される場合は前記こもり音発生域回避手段86、前記有段変速制御手段82、および前記ハイブリッド制御手段84に対応するS6において、こもり音発生域Nであったとしてもそのこもり音発生域Nを回避する回避制御が行われず、システム効率に基づく通常の動作点すなわち変速機構10のシステム効率に基づくエンジントルクTEと第2電動機M2のアシストトルクTM2との分担、および自動変速部20の変速比γが設定される。これによって、燃費上、システム効率が最もよい車両状態とされる。
【0113】
図14において、t1時点以降にて暗騒音が小さくなり、t2時点にてこもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさであると判定され、その判定が判定期間T連続したt3時点にてシステム効率に基づくエンジントルクTEと第2電動機M2のアシストトルクTM2との分担が変更されたことを示している。このt3時点では、例えばエンジントルクTEを低下させ、且つその低下分を補うように第2電動機M2のアシストトルクTM2を増加させてこもり音発生域Nを回避するようにエンジントルクTEと第2電動機M2のアシストトルクTM2との分担が変更させられる。t4時点はトルク分担の切換えが完了したことを示している。
【0114】
上述のように、本実施例によれば、システム効率に基づいて決定された車両状態がこもり音発生域Nにある場合は、システム効率に基づいて決定されたエンジントルクTEと第2電動機M2のアシストトルクTM2との分担がこもり音発生域回避手段86により変更されてこもり音発生域Nが回避されるので、特定のエンジン8の動作点において顕著になるこもり音の発生を抑制することが可能になる、すなわちエンジン駆動に伴うこもり音の発生を抑制することが可能になる。
【0115】
また、本実施例によれば、システム効率に基づいて決定された車両状態がこもり音発生域Nにある場合は、こもり音発生域回避手段86によって自動変速部20の変速比γが変更されることによりエンジン8の動作点が変更されてこもり音発生域Nが回避されるので、エンジン駆動に伴うこもり音の発生を抑制することが可能になる。
【0116】
また、本実施例によれば、こもり音発生域回避判断手段88によりこもり音発生域Nの回避が必要であると判断された場合に、こもり音発生域回避手段86によりそのこもり音発生域Nが回避されるので、一律にこもり音発生域Nが回避される場合に比較してシステム効率の悪化が抑制され、運転性や燃費性が向上する。
【0117】
また、本実施例によれば、こもり音発生域回避判断手段88によりこもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさであるか否かに基づいてこもり音発生域Nの回避が必要であるか否かが判断されるので、こもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさである場合のみこもり音発生域Nが回避されてシステム効率の悪化が抑制され、運転性や燃費性が向上する。
【0118】
また、本実施例によれば、こもり音発生域回避判断手段88によりこもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさであることが所定時間連続したときにこもり音発生域Nの回避が必要であると判断されるので、こもり音発生域Nの回避制御とその回避制御の解除とが短時間に繰り返されることが防止されて車両状態が安定する。
【0119】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において実施例相互に共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0120】
前述の実施例では、システム効率に基づいて決定されているエンジントルクTEと第2電動機M2のアシストトルクTM2との分担を変更してこもり音発生域Nを回避する回避制御を説明したが、本実施例では、こもり音発生域回避手段86は、等パワーを維持しながらエンジン8の動作点を変更してこもり音発生域Nを回避する。
【0121】
図15は、前記図9の燃費マップであって、曲線Pはエンジン8における等パワー線Pの一例であり、点Aはエンジン8の燃費効率(最適燃費率)に基づいて設定されたエンジン回転速度NEとエンジントルクTEとで規定されるエンジン8の動作点の一例であり、丸囲み斜線部Nはこもり音発生域Nの一例である。
【0122】
そして、上記図15に示すように、システム効率に基づいて設定されたエンジン8の動作点がこもり音発生域N内となる場合には、エンジン回転速度NEとエンジントルクTEとを変化させて動作点Aから等パワー線P上の動作点Bにエンジン8の動作点を変更し、こもり音発生域Nを回避する。これにより、必要なパワーを維持した状態でこもり音発生域Nを回避することが可能となる。
【0123】
エンジン8の動作点を変更する具体的な手段については、前述の実施例と同様に、こもり音発生域回避手段86は、例えば差動部11の変速比γ0を変化させてエンジン8の動作点を変更したり、自動変速部20の変速比γを変化させることによりトータル変速比γTを変化させてエンジン8の動作点を変更する。
【0124】
図16は、電子制御装置80の制御作動の要部すなわちエンジン駆動に伴うこもり音の発生を適切に抑制する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。この図16のフローチャートは、前記図13のフローチャートに相当する別の実施例であって、図13のフローチャート中のS5乃至S7がS5’乃至S7’に変更された点が主に相違する。以下、その相違する点であるS5’乃至S7’について説明する。また、図17は、図16のフローチャートに示す制御作動を説明するタイムチャートであって、暗騒音レベルが低下したためにこもり音発生域Nを回避する場合の一例であり、前記図14のタイムチャートに相当する別の実施例である。
【0125】
図16において、前記S1の判断が否定されるか、或いは前記S2の判断が否定される場合は前記こもり音発生域回避手段86、前記有段変速制御手段82、および前記ハイブリッド制御手段84に対応するS7’において、こもり音発生域Nを回避する回避制御が行われず、システム効率に基づく通常の動作点すなわち変速機構10のシステム効率に基づくエンジン8の動作点、第2電動機M2の動作点、および自動変速部20の変速比γが設定される。これによって、燃費上、システム効率が最もよい車両状態とされる。
【0126】
前記S4の判断が肯定される場合は前記こもり音発生域回避手段86、前記有段変速制御手段82、および前記ハイブリッド制御手段84に対応するS5’において、例えば図15の動作点Aに示すようにエンジン8の動作点がこもり音発生域Nにある場合は、エンジン8の動作点が動作点Aから動作点Bの如く変更されてこもり音発生域Nが回避される。これによって、こもり音が暗騒音に対して目立たなくされる。
【0127】
一方で、前記S4の判断が否定される場合は前記こもり音発生域回避手段86、前記有段変速制御手段82、および前記ハイブリッド制御手段84に対応するS6’において、こもり音発生域Nであったとしてもそのこもり音発生域Nを回避する回避制御が行われず、システム効率に基づく通常の動作点すなわち変速機構10のシステム効率に基づくエンジン8の動作点、第2電動機M2の動作点、および自動変速部20の変速比γが設定される。これによって、燃費上、システム効率が最もよい車両状態とされる。
【0128】
図17において、t1時点以降にて暗騒音が小さくなり、t2時点にてこもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさであると判定され、その判定が判定期間T連続したt3時点にて動作点が変更されたことを示している。このt3時点では、こもり音発生域Nを回避するように例えば自動変速部20の1→2アップシフトを実行することによりエンジン回転速度NEを低下させてエンジン8の動作点が変更させられる。t4時点はエンジン8の動作点の変更が完了したことを示している。或いはまた、自動変速部20をアップシフトする以外に、こもり音発生域Nを回避するように差動部11の変速比γ0を変更することによりエンジン回転速度NEを低下させてエンジン8の動作点を変更しても良い。また、この実施例では、アップシフトを実行したがダウンシフトを実行してこもり音発生域Nを回避しても良く、この場合にはエンジン回転速度NEが増大してエンジンノイズ(暗騒音)が高くなりこもり音が一層目立たなくなる副次的な効果も得られる。
【0129】
上述のように、本実施例によれば、前述の実施例に加えて、システム効率に基づいて決定されたエンジン8の動作点がこもり音発生域Nにある場合は、こもり音発生域回避手段86により等パワーが維持されるようにエンジン8の動作点が変更されてこもり音発生域Nが回避されるので、必要なパワーを維持した状態でエンジン駆動に伴うこもり音の発生を抑制することが可能になる。
【実施例3】
【0130】
前述の実施例では、図15に示すように燃費マップ上において予め定められたこもり音発生域Nを回避する回避制御を説明したが、本実施例では、変速マップ上において予め定められたこもり音発生域Nを回避する。
【0131】
図18は、前記図8の変速マップであって、丸囲み斜線部Nはこもり音発生域Nの一例であり、破線はこもり音発生域Nを回避するためにシステム効率に基づく通常の3→4アップシフト線を変更したこもり音回避用3→4アップシフト線であり、二点鎖線はこもり音発生域Nを回避するためにシステム効率に基づく通常の4→3ダウンシフト線を変更したこもり音回避用4→3ダウンシフト線である。尚、これらアップシフト線およびダウンシフト線は変速を行うための変速点の連なりでもある。
【0132】
前記こもり音発生域回避手段86は、実際の車速Vおよび自動変速部20の要求出力トルクTOUTで示される車両状態がこもり音発生域Nにある場合には、通常のアップシフト線およびダウンシフト線をこもり音回避用アップシフト線およびこもり音回避用ダウンシフト線に変更することにより、自動変速部20の変速比γを変更する。
【0133】
前述の実施例では、自動変速部20の変速比γを変更することによりエンジン8の動作点を変更してこもり音発生域Nを回避したが、ここではエンジン8の動作点を略一定に維持したままこもり音発生域Nを回避する場合について以下に詳しく説明する。
【0134】
例えば、前記こもり音発生域回避手段86は、前記動作点変更指令Bを前記有段変速制御手段82へ出力することに加えて、第1電動機M1を制御することによりエンジン回転速度NEを略一定に維持させつつ第1電動機回転速度NM1を変化させてエンジン8の動作点を維持する動作点維持指令Cを前記ハイブリッド制御手段84へ出力する。つまり、この動作点維持指令Cはトータル変速比γTがそのまま維持されるように自動変速部20の変速比γの変化に合わせて差動部11の変速比γ0を変化させてエンジン8をシステム効率に基づく動作点に維持するものである。但し、変速機構10全体としてはシステム効率最適からはずれる。
【0135】
これによって、自動変速部20の変速比γおよび差動部11の変速比γ0がぞれぞれ変化するので、変速機構10の共振系が変化して共振域が避けられ、エンジン8の動作点を変化させずともこもり音発生域Nを回避することができる。尚、前述の実施例のようにエンジン8の動作点を変化させることによりこもり音発生域Nを回避する場合においても、自動変速部20の変速比γおよび差動部11の変速比γ0の少なくとも一方が変化させられるので、自動変速部20および差動部11の少なくとも一方の共振系が変化して共振域が避けられ、こもり音発生域Nが回避されると見ることもできる。
【0136】
ところで、こもり音発生域Nの回避制御中に前記こもり音発生域回避判断手段88によりこもり音発生域Nの回避が必要でないと判断された場合には、通常のアップシフト線およびダウンシフト線への復帰に伴い例えばダウンシフトが実行されて急な減速が発生することによる違和感を回避するように、通常のアップシフト線およびダウンシフト線へ復帰させたとしても自動変速部20の変速比γが変化しないときに(つまり自動変速部20の変速が行われないときに)、こもり音回避用アップシフト線およびこもり音回避用ダウンシフト線を通常のアップシフト線およびダウンシフト線へ復帰させる。
【0137】
図19は、電子制御装置80の制御作動の要部すなわちエンジン駆動に伴うこもり音の発生を適切に抑制する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。この図19のフローチャートは、前記図13のフローチャートに相当する別の実施例であって、図13のフローチャート中のS5乃至S7がS5”乃至S7”に変更された点が主に相違する。以下、その相違する点であるS5”乃至S7”について説明する。また、図20は、図19のフローチャートに示す制御作動を説明するタイムチャートであって、暗騒音レベルが上昇したためにこもり音発生域Nの回避制御を解除する場合の一例である。
【0138】
図19において、前記S1の判断が否定されるか、或いは前記S2の判断が否定される場合は前記こもり音発生域回避手段86、前記有段変速制御手段82、および前記ハイブリッド制御手段84に対応するS7”において、こもり音発生域Nを回避する回避制御が行われず、通常の変速点すなわち変速機構10のシステム効率に基づく通常のアップシフト線および通常のダウンシフト線が設定される。これによって、燃費上、システム効率が最もよい車両状態とされる。
【0139】
また、前記S4の判断が肯定される場合は前記こもり音発生域回避手段86、前記有段変速制御手段82、および前記ハイブリッド制御手段84に対応するS5”において、例えば図18に示すように車両状態がこもり音発生域Nにある場合は、通常のアップシフト線およびダウンシフト線がこもり音回避用アップシフト線およびこもり音回避用ダウンシフト線に変更されることにより自動変速部20の変速比γが変更されてこもり音発生域Nが回避される。
【0140】
一方で、前記S4の判断が否定される場合は前記こもり音発生域回避手段86、前記有段変速制御手段82、および前記ハイブリッド制御手段84に対応するS6”において、こもり音発生域Nであったとしてもそのこもり音発生域Nを回避する回避制御が行われず、通常の変速点すなわち変速機構10のシステム効率に基づく通常のアップシフト線および通常のダウンシフト線が設定される。これによって、燃費上、システム効率が最もよい車両状態とされる。
【0141】
図20において、t1時点以降にて暗騒音が大きくなり、t2時点にてこもり音が暗騒音と比較して問題とされない大きさであると判定され、その判定が判定期間T連続したt3時点にて自動変速部20の変速比γが変化しないときに(変速段非使用)、こもり音回避用変速線(変速パターン)が通常の変速線へ復帰させられたことを示している。このt3時点では、自動変速部20の変速比γが変化しないときに通常の変速線へ復帰させられたので、自動変速機20の変速は実行されない。或いはまた、t3時点にて自動変速部20の変速比γが変化するときには(変速段使用中)、このt3時点ではこもり音回避用変速線から通常の変速線へは復帰させられないことを示している。この場合には、t4時点にて変速が行われた後の自動変速部20の変速比γが変化しないと推定されるときにはt5時点に示すようにこもり音回避用変速線が通常の変速線へ復帰させられる。尚、t4時点乃至t5時点の時間は、t4時点における変速指令に対して変速が完了するまでの時間を考慮したものである。このように、自動変速部20の変速比γが変化しないときにこもり音回避用変速線が通常の変速線へ復帰させられることにより、特にダウンシフトが実行されて急な減速が発生する違和感を回避することができる。
【0142】
上述のように、本実施例によれば、前述の実施例に加えて、システム効率に基づいて決定された車両状態がこもり音発生域Nにある場合は、こもり音発生域回避手段86により自動変速部20の変速比γが変更されてこもり音発生域Nが回避されるので、すなわち変速機構10の共振系が変化させられて共振域が避けられるので、特定の自動変速部20の変速比γ或いは特定のエンジン8の動作点において顕著になるこもり音の発生を抑制することが可能になる。
【0143】
また、本実施例によれば、こもり音発生域回避手段86により通常時の変速線がこもり音回避用変速線へ変更されることにより自動変速部20の変速比γが変更されるので、こもり音発生域Nを簡単に回避することができる。
【0144】
また、本実施例によれば、変速線を変更することにより自動変速部20の変速比γが変化しないときにこもり音発生域回避手段86によりこもり音回避用変速線が通常の変速線へ復帰させられるので、例えば通常の変速線への復帰に伴いダウンシフトが実行されて急な減速が発生することによる違和感を回避することができる。
【実施例4】
【0145】
図21は本発明の他の実施例における変速機構100の構成を説明する骨子図、図22はその変速機構100の変速作動に用いられる油圧式摩擦係合装置の作動の組み合わせを示す係合表、図23はその変速機構100の変速作動を説明する共線図である。
【0146】
変速機構100は、前述の実施例と同様に第1電動機M1、動力分配機構16、および第2電動機M2を備えている差動部11と、その差動部11と出力軸22との間で伝達部材18を介して直列に連結されている前進3段の自動変速部102とを備えている。動力分配機構16は、例えば「0.418」程度の所定のギヤ比ρ1を有するシングルピニオン型の第1遊星歯車装置24を有している。自動変速部102は、例えば「0.532」程度の所定のギヤ比ρ2を有するシングルピニオン型の第2遊星歯車装置26と例えば「0.418」程度の所定のギヤ比ρ3を有するシングルピニオン型の第3遊星歯車装置28とを備えている。第2遊星歯車装置26の第2サンギヤS2と第3遊星歯車装置28の第3サンギヤS3とが一体的に連結されて第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第2遊星歯車装置26の第2キャリヤCA2と第3遊星歯車装置28の第3リングギヤR3とが一体的に連結されて出力軸22に連結され、第2リングギヤR2は第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結され、第3キャリヤCA3は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結されている。
【0147】
このように、自動変速部102内と差動部11(伝達部材18)とは自動変速部102の変速段を成立させるために用いられる第1クラッチC1または第2クラッチC2を介して選択的に連結されている。言い換えれば、第1クラッチC1および第2クラッチC2は、伝達部材18と自動変速部102との間の動力伝達経路すなわち差動部11(伝達部材18)から駆動輪34への動力伝達経路を、その動力伝達経路の動力伝達を可能とする動力伝達可能状態と、その動力伝達経路の動力伝達を遮断する動力伝達遮断状態とに選択的に切り換える係合装置として機能している。つまり、第1クラッチC1および第2クラッチC2の少なくとの一方が係合されることで上記動力伝達経路が動力伝達可能状態とされ、或いは第1クラッチC1および第2クラッチC2が解放されることで上記動力伝達経路が動力伝達遮断状態とされる。
【0148】
また、この自動変速部102は、解放側係合装置の解放と係合側係合装置の係合とによりクラッチツウクラッチ変速が実行されて各ギヤ段(変速段)が選択的に成立させられることにより、略等比的に変化する変速比γ(=伝達部材回転速度N18/出力軸22の回転速度NOUT)が各ギヤ段毎に得られる。例えば、図22の係合作動表に示されるように、第1クラッチC1および第2ブレーキB2の係合により変速比γ1が最大値例えば「2.804」程度である第1速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1および第1ブレーキB1の係合により変速比γ2が第1速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.531」程度である第2速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1および第2クラッチC2の係合により変速比γ3が第2速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.000」程度である第3速ギヤ段が成立させられる。また、第2クラッチC2および第2ブレーキB2の係合により変速比γRが第1速ギヤ段と第2速ギヤ段との間の値例えば「2.393」程度である後進ギヤ段(後進変速段)が成立させられる。また、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、および第2ブレーキB2の解放によりニュートラル「N」状態とされる。なお、図22の係合作動表に示されている第4速ギヤ段における自動変速部102の係合装置の係合作動は第3速ギヤ段と同じである。
【0149】
以上のように構成された変速機構100において、無段変速機として機能する差動部11と自動変速部102とで無段変速機が構成される。また、差動部11の変速比を一定となるように制御することにより、差動部11と自動変速部102とで有段変速機と同等の状態を構成することが可能とされる。
【0150】
具体的には、差動部11が無段変速機として機能し、且つ差動部11に直列の自動変速部102が有段変速機として機能することにより、自動変速部102の少なくとも1つの変速段Mに対して自動変速部102に入力される回転速度(以下、自動変速部102の入力回転速度)すなわち伝達部材18の回転速度が無段的に変化させられてその変速段Mにおいて無段的な変速比幅が得られる。したがって、変速機構100の総合変速比γTが無段階に得られ、変速機構100において無段変速機が構成される。
【0151】
例えば、図22の係合作動表に示される自動変速部102の第1速ギヤ段乃至第3速ギヤ段や後進ギヤ段の各ギヤ段に対し伝達部材回転速度N18が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって、変速機構100全体としてのトータル変速比γTが無段階に得られる。
【0152】
また、差動部11の変速比が一定となるように制御され、且つクラッチCおよびブレーキBが選択的に係合作動させられて第1速ギヤ段乃至第3速ギヤ段のいずれか或いは後進ギヤ段(後進変速段)が選択的に成立させられることにより、略等比的に変化する変速機構100のトータル変速比γTが各ギヤ段毎に得られる。したがって、変速機構100において有段変速機と同等の状態が構成される。
【0153】
例えば、差動部11の変速比γ0が「1」に固定されるように制御されると、図22の係合作動表に示されるように自動変速部102の第1速ギヤ段乃至第3速ギヤ段や後進ギヤ段の各ギヤ段に対応する変速機構100のトータル変速比γTが各ギヤ段毎に得られる。また、自動変速部102の第3速ギヤ段において差動部11の変速比γ0が「1」より小さい値例えば0.7程度に固定されるように制御されると、図22の係合作動表の第4速ギヤ段に示されるように第3速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.705」程度であるトータル変速比γTが得られる。
【0154】
図23は、差動部11と自動変速部102とから構成される変速機構100において、ギヤ段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図を示している。
【0155】
図23における自動変速部102の4本の縦線Y4、Y5、Y6、Y7は、左から順に、第4回転要素(第4要素)RE4に対応し且つ相互に連結された第2サンギヤS2および第3サンギヤS3を、第5回転要素(第5要素)RE5に対応する第3キャリヤCA3を、第6回転要素(第6要素)RE6に対応し且つ相互に連結された第2キャリヤCA2および第3リングギヤR3を、第7回転要素(第7要素)RE7に対応する第2リングギヤR2をそれぞれ表している。また、自動変速部102において第4回転要素RE4は第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第5回転要素RE5は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第6回転要素RE6は自動変速部102の出力軸22に連結され、第7回転要素RE7は第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結されている。
【0156】
自動変速部102では、差動部11において直線L0が横線X2と一致させられてエンジン回転速度NEと同じ回転速度が差動部11から第7回転要素RE7に入力されると、図23に示すように、第1クラッチC1と第2ブレーキB2とが係合させられることにより、第7回転要素RE7(R2)の回転速度を示す縦線Y7と横線X2との交点と第5回転要素RE5(CA3)の回転速度を示す縦線Y5と横線X1との交点とを通る斜めの直線L1と、出力軸22と連結された第6回転要素RE6(CA2,R3)の回転速度を示す縦線Y6との交点で第1速の出力軸22の回転速度が示される。同様に、第1クラッチC1と第1ブレーキB1とが係合させられることにより決まる斜めの直線L2と出力軸22と連結された第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6との交点で第2速の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第2クラッチC2とが係合させられることにより決まる水平な直線L3と出力軸22と連結された第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6との交点で第3速の出力軸22の回転速度が示される。
【0157】
また、差動部11において直線L0が図23に示す状態とされてエンジン回転速度NEよりも高い回転速度が差動部11から第7回転要素RE7に入力されると、図23に示すように、第1クラッチC1および第2クラッチC2が係合させられることにより決まる水平な直線L4と出力軸22と連結された第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6との交点で第4速の出力軸22の回転速度が示される。
【0158】
本実施例においても、変速機構100は差動部11と自動変速部102とから構成されるので、前述の実施例と同様の効果が得られる。
【0159】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明は実施例相互を組み合わせて実施可能であると共にその他の態様においても適用される。
【0160】
例えば、前述の実施例では、こもり音発生域回避手段86は、システム効率に基づいて決定されているエンジントルクTEと第2電動機M2のアシストトルクTM2との分担を変更してこもり音発生域Nを回避する際に、アクセル開度Accに基づいて決定される変速機構10の総トルクに対して、エンジントルクTEの分担分を減らすと共に第2電動機M2のアシストトルクTM2の分担分を増やしたが、反対に、エンジントルクTEの分担分を増やすと共に第2電動機M2のアシストトルクTM2の分担分を減らすか或いは第2電動機M2による回生を実施してそのエンジントルクTEの増分を相殺するようにしても良い。例えば、エンジントルクTEの分担分を減らすか或いは増やすかの使い分けを蓄電装置56の充電容量SOCに基づいてその充電容量SOCが比較的少ないときにはエンジントルクTEの分担分を増やして第2電動機M2による回生を実施するようにしても良い。
【0161】
また、前述の実施例では、本発明が適用される車両用駆動装置として変速機構10を例示したが、これに限らず、電気エネルギーで作動する電動機と燃料の燃焼によって作動するエンジンとを車両走行時の動力源として備え、システム効率に基づいてエンジンの動作点が決定される種々の車両用駆動装置であれば本発明は適用され得る。また、前記実施例3に限れば、少なくともエンジンと変速機とを備える種々の車両用駆動装置であれば本発明は適用され得る。
【0162】
また、前述の実施例の動力分配機構16では、第1キャリヤCA1がエンジン8に連結され、第1サンギヤS1が第1電動機M1に連結され、第1リングギヤR1が伝達部材18に連結されていたが、それらの連結関係は、必ずしもそれに限定されるものではなく、エンジン8、第1電動機M1、伝達部材18は、第1遊星歯車装置24の3要素CA1、S1、R1のうちのいずれと連結されていても差し支えない。
【0163】
また、前述の実施例では、エンジン8は入力軸14と直結されていたが、例えばギヤ、ベルト等を介して作動的に連結されておればよく、共通の軸心上に配置される必要もない。
【0164】
また、前述の実施例では、第1電動機M1および第2電動機M2は、入力軸14に同心に配置されて第1電動機M1は第1サンギヤS1に連結され第2電動機M2は伝達部材18に連結されていたが、必ずしもそのように配置される必要はなく、例えばギヤ、ベルト、減速機等を介して作動的に第1電動機M1は第1サンギヤS1に連結され、第2電動機M2は伝達部材18に連結されてもよい。
【0165】
また、前述の実施例では、第1クラッチC1や第2クラッチC2などの油圧式摩擦係合装置は、パウダー(磁粉)クラッチ、電磁クラッチ、噛み合い型のドグクラッチなどの磁粉式、電磁式、機械式係合装置から構成されていてもよい。例えば電磁クラッチであるような場合には、油圧制御回路70は油路を切り換える弁装置ではなく電磁クラッチへの電気的な指令信号回路を切り換えるスイッチング装置や電磁切換装置等により構成される。
【0166】
また、前述の実施例では、差動部11すなわち動力分配機構16の出力部材である伝達部材18と駆動輪34との間の動力伝達経路に、自動変速部20、102が介挿されていたが、例えば自動変速機の一種である無段変速機(CVT)、手動変速機としてよく知られた常時噛合式平行2軸型ではあるがセレクトシリンダおよびシフトシリンダによりギヤ段が自動的に切り換えられることが可能な自動変速機、手動操作により変速段が切り換えられる同期噛み合い式の手動変速機等の他の形式の動力伝達部(変速機)が設けられていてもよい。このようにしても、本発明は適用され得る。
【0167】
また、前述の実施例では、自動変速部20、102は伝達部材18を介して差動部11と直列に連結されていたが、入力軸14と平行にカウンタ軸が設けられそのカウンタ軸上に同心に自動変速部20、102が配設されてもよい。この場合には、差動部11と自動変速部20、102とは、例えば伝達部材18としてのカウンタギヤ対、スプロケットおよびチェーンで構成される1組の伝達部材などを介して動力伝達可能に連結される。
【0168】
また、前述の実施例の差動機構としての動力分配機構16は、例えばエンジンによって回転駆動されるピニオンと、そのピニオンに噛み合う一対のかさ歯車が第1電動機M1および第2電動機M2に作動的に連結された差動歯車装置であってもよい。
【0169】
また、前述の実施例の動力分配機構16は、1組の遊星歯車装置から構成されていたが、2以上の遊星歯車装置から構成されて、非差動状態(定変速状態)では3段以上の変速機として機能するものであってもよい。また、その遊星歯車装置はシングルピニオン型に限られたものではなくダブルピニオン型の遊星歯車装置であってもよい。
【0170】
また、前述の実施例のシフト操作装置50は、複数種類のシフトポジションPSHを選択するために操作されるシフトレバー52を備えていたが、そのシフトレバー52に替えて、例えば押しボタン式のスイッチやスライド式スイッチ等の複数種類のシフトポジションPSHを選択可能なスイッチ、或いは手動操作に因らず運転者の音声に反応して複数種類のシフトポジションPSHを切り換えられる装置や足の操作により複数種類のシフトポジションPSHを切り換えられる装置等であってもよい。また、シフトレバー52が「M」ポジションへ操作されることにより、変速レンジが設定されるものであったが変速段が設定されることすなわち各変速レンジの最高速変速段が変速段として設定されてもよい。この場合、自動変速部20、102では変速段が切り換えられて変速が実行される。例えば、シフトレバー52が「M」ポジションにおけるアップシフト位置「+」またはダウンシフト位置「−」へ手動操作されると、自動変速部20では第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段の何れかがシフトレバー52の操作に応じて設定される。
【0171】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0172】
【図1】本発明の一実施例であるハイブリッド車両の駆動装置の構成を説明する骨子図である。
【図2】図1の駆動装置の変速作動に用いられる油圧式摩擦係合装置の作動の組み合わせを説明する作動図表である。
【図3】図1の駆動装置における各ギヤ段の相対的回転速度を説明する共線図である。
【図4】図1の駆動装置に設けられた電子制御装置の入出力信号を説明する図である。
【図5】油圧制御回路のうちクラッチC1、C2、およびブレーキB1〜B3の各油圧アクチュエータの作動を制御するリニアソレノイドバルブに関する回路図である。
【図6】シフトレバーを備えた複数種類のシフトポジションを選択するために操作されるシフト操作装置の一例である。
【図7】図4の電子制御装置の制御作動の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図8】駆動装置の変速制御において用いられる変速マップの一例と、エンジン走行とモータ走行とを切り換える駆動力源切換制御において用いられる駆動力源マップの一例とを示す図であって、それぞれの関係を示す図でもある。
【図9】破線はエンジンの最適燃費率曲線であって燃費マップの一例である。
【図10】図9の燃費マップであって、曲線Pはエンジンにおける等パワー線の一例であり、点Aはエンジンの燃費効率に基づいて設定されたエンジンの動作点の一例であり、丸囲み斜線部Nはこもり音発生域の一例である。また、点Bはこもり音発生域を回避するために最適燃費率に沿って変更したエンジンの動作点の一例である。
【図11】アクセル開度に基づいて決定される変速機構の総トルクの一例を示す図であって、エンジントルクと第2電動機によるアシストトルクとの分担の変更を説明する図でもある。
【図12】こもり音発生域の回避が必要であるか否かを判断する一例として、こもり音と暗騒音とを比較する場合を説明する図である。
【図13】図4の電子制御装置の制御作動すなわちエンジン駆動に伴うこもり音の発生を適切に抑制する為の制御作動を説明するフローチャートである。
【図14】図13のフローチャートに示す制御作動を説明するタイムチャートであって、暗騒音レベルが低下したためにこもり音発生域を回避する場合の一例である。
【図15】図9の燃費マップであって、曲線Pはエンジンにおける等パワー線の一例であり、点Aはエンジンの燃費効率に基づいて設定されたエンジンの動作点の一例であり、丸囲み斜線部Nはこもり音発生域Nの一例である。また、点Bはこもり音発生域を回避するために等パワー線に沿って変更したエンジンの動作点の一例である。
【図16】図4の電子制御装置の制御作動すなわちエンジン駆動に伴うこもり音の発生を適切に抑制する為の制御作動を説明するフローチャートであって、図13に相当する別の実施例である。
【図17】図16のフローチャートに示す制御作動を説明するタイムチャートであって、暗騒音レベルが低下したためにこもり音発生域を回避する場合の一例であり、図14に相当する別の実施例である。
【図18】図8の変速マップであって、丸囲み斜線部Nはこもり音発生域Nの一例であり、破線は通常の3→4アップシフト線を変更したこもり音回避用3→4アップシフト線であり、二点鎖線は通常の4→3ダウンシフト線を変更したこもり音回避用4→3ダウンシフト線である。
【図19】図4の電子制御装置の制御作動すなわちエンジン駆動に伴うこもり音の発生を適切に抑制する為の制御作動を説明するフローチャートであって、図13に相当する別の実施例である。
【図20】図19のフローチャートに示す制御作動を説明するタイムチャートであって、暗騒音レベルが上昇したためにこもり音発生域の回避制御を解除する場合の一例であり、図14に相当する別の実施例である。
【図21】本発明の他の実施例におけるハイブリッド車両の駆動装置の構成を説明する骨子図であって、図1に相当する図である。
【図22】図21の駆動装置の変速作動に用いられる油圧式摩擦係合装置の作動の組み合わせを説明する作動図表であって、図2に相当する図である。
【図23】図21の駆動装置における各ギヤ段の相対的回転速度を説明する共線図であって、図3に相当する図である。
【符号の説明】
【0173】
8:エンジン
10、70:変速機構(車両用駆動装置)
20:自動変速部(変速機、自動変速機)
80:電子制御装置(制御装置)
88:こもり音発生域回避判断手段
M1:第1電動機
M2:第2電動機
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンを備える車両用駆動装置の制御装置に係り、車両用駆動装置の特性に基づいてエンジンの動作点を決定する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンと変速機とを備え、車両用駆動装置の特性に基づいてエンジンの動作点や変速機の変速比を決定する車両用駆動装置の制御装置が知られている。一方で、車両においては様々な騒音が発生する。例えば、エンジンの周期的な気筒点火(爆発)やピストンの往復運動に伴うエンジンのトルク変動による回転変動が強制源(振動強制力)となってそのエンジントルクを伝達するクランクシャフトから駆動輪までの駆動系(動力伝達系)のねじり振動が生じ、特定のエンジン回転速度で発生する駆動系のねじり共振によりその振動が増幅され、車体に伝達されたその振動によりこもり音が発生する現象であり、エンジン低回転域にてこもり音が発生する現象等が良く知られている。このようなこもり音は大きさによっては乗員に不快感等を与える可能性があり、乗員の快適性に及ぼす影響を考えると極力そのレベルを低減させることが望ましい。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された車両用駆動装置の制御装置は、燃料の燃焼で動力を発生するエンジンと変速比を自動的に変更できる自動変速機とを備え、エンジン回転速度が予め定められたこもり音発生域に入った場合には、自動変速機の変速マップ(変速条件)を変更してこもり音の発生を抑制する技術が提案されている。
【0004】
また、特許文献2に記載された車両用駆動装置の制御装置は、車両用駆動力源として内燃機関および電動機を備え、内燃機関から出力すべき目標パワーを得るための内燃機関の運転ポイントがこもり音発生域内となる場合には、その目標パワーを変更してこもり音の発生を抑制する技術が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−84830号公報
【特許文献2】特開2005−127185号公報
【特許文献3】特開2005−24071号公報
【特許文献4】特開2006−2740号公報
【特許文献5】特開平11−103501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、こもり音発生域であってもこもり音が問題とならない場合には、こもり音発生域を回避する必要はないと考えられる。そのため、一律にこもり音発生域を回避してしまっては、車両用駆動装置の特性の面で例えば燃費の面で不利になる可能性があった。
【0007】
また、エンジンと電動機と変速機とを備え、車両用駆動装置の特性(例えば電動機のエネルギー変換効率およびエンジンの燃料消費率等の駆動装置全体のシステム効率)に基づいて、エンジンの動作点および変速機の変速比が決定される車両用駆動装置の制御装置において、こもり音の発生を考慮してエンジンの動作点および変速機の変速比を決定することに関しては未だ提案されていない。
【0008】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、エンジンを備える車両用駆動装置において、エンジン駆動に伴うこもり音の発生を適切に抑制することができる制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するための請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a) エンジンと変速機とを備える車両用駆動装置において、その車両用駆動装置の特性に基づいてその変速機の変速比が決定される車両用駆動装置の制御装置であって、(b) エンジン駆動に伴うこもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさである場合に、前記変速機の変速比を変更してそのこもり音発生域を回避することにある。
【発明の効果】
【0010】
このようにすれば、エンジン駆動に伴うこもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさである場合に、車両用駆動装置の特性に基づいて決定された変速機の変速比が変更されてこもり音発生域が回避されるので、特定の変速機の変速比或いは特定のエンジンの動作点において顕著になるこもり音の発生を抑制することが可能になると共に、一律にこもり音発生域を回避する場合に比較して車両用駆動装置の特性例えばシステム効率の悪化が抑制され運転性や燃費性が向上する。
【0011】
ここで、請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の車両用駆動装置の制御装置において、前記変速機は、予め定められた変速マップに従って変速が実行される自動変速機であり、前記自動変速機の各変速を判断するために前記変速マップが有している通常時の変速点を変更することによりその自動変速機の変速比を変更して前記こもり音発生域を回避するものである。このようにすれば、こもり音発生域を簡単に回避することができる。
【0012】
また、請求項3にかかる発明は、請求項2に記載の車両用駆動装置の制御装置において、変速点を変更することにより前記自動変速機の変速比が変化しないときに、前記変更した変速点を前記通常時の変速点へ復帰させるものである。このようにすれば、例えば通常時の変速点への復帰に伴いダウンシフトが実行されて急な減速が発生することによる違和感を回避することができる。
【0013】
また、請求項4にかかる発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の車両用駆動装置の制御装置において、エンジン駆動に伴うこもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさであるか否かに基づいて、こもり音発生域の回避が必要であるか否かを判断するこもり音発生域回避判断手段を備え、そのこもり音発生域回避判断手段によりこもり音発生域の回避が必要であると判断された場合に、前記変速機の変速比を変更してそのこもり音発生域を回避するものである。このようにすれば、こもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさである場合のみこもり音発生域が回避されるので、一律にこもり音発生域を回避する場合に比較して車両用駆動装置の特性例えばシステム効率の悪化が抑制され、運転性や燃費性が向上する。
【0014】
また、請求項5にかかる発明は、請求項4に記載の車両用駆動装置の制御装置において、前記こもり音発生域回避判断手段は、前記こもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさであることが所定時間連続したときに、前記こもり音発生域の回避が必要であると判断するものである。このようにすれば、こもり音発生域の回避とその回避制御の解除とが短時間に繰り返されることが防止されるので、車両状態が安定する。
【0015】
また、前記目的を達成するための請求項6にかかる発明の要旨とするところは、(a) エンジンと電動機とを備える車両用駆動装置において、その車両用駆動装置の特性に基づいてそのエンジンの出力トルクとその電動機の出力トルクとの分担が決定される車両用駆動装置の制御装置であって、(b) エンジン駆動に伴うこもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさである場合に、前記エンジンの出力トルクと前記電動機の出力トルクとの分担を変更してそのこもり音発生域を回避することにある。
【0016】
このようにすれば、エンジン駆動に伴うこもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさである場合に、車両用駆動装置の特性に基づいて決定されたエンジンの出力トルクと電動機の出力トルクとの分担が変更されてこもり音発生域が回避されるので、特定のエンジンの動作点において顕著になるこもり音の発生を抑制することが可能になると共に、一律にこもり音発生域を回避する場合に比較して車両用駆動装置の特性例えばシステム効率の悪化が抑制され運転性や燃費性が向上する。
【0017】
また、請求項7にかかる発明は、請求項6に記載の車両用駆動装置の制御装置において、エンジン駆動に伴うこもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさであるか否かに基づいて、こもり音発生域の回避が必要であるか否かを判断するこもり音発生域回避判断手段を備え、そのこもり音発生域回避判断手段によりこもり音発生域の回避が必要であると判断された場合に、前記エンジンの出力トルクと前記電動機の出力トルクとの分担を変更してそのこもり音発生域を回避するものである。このようにすれば、こもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさである場合のみこもり音発生域が回避されるので、一律にこもり音発生域を回避する場合に比較して車両用駆動装置の特性例えばシステム効率の悪化が抑制され、運転性や燃費性が向上する。
【0018】
また、請求項8にかかる発明は、請求項7に記載の車両用駆動装置の制御装置において、前記こもり音発生域回避判断手段は、前記こもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさであることが所定時間連続したときに、前記こもり音発生域の回避が必要であると判断するものである。このようにすれば、こもり音発生域の回避とその回避制御の解除とが短時間に繰り返されることが防止されるので、車両状態が安定する。
【0019】
また、前記目的を達成するための請求項9にかかる発明の要旨とするところは、(a) エンジンと電動機と変速機とを備える車両用駆動装置において、その車両用駆動装置の特性に基づいてそのエンジンの動作点、その電動機の動作点、およびその変速機の変速比が決定される車両用駆動装置の制御装置であって、(b) 車両状態がエンジン駆動に伴うこもり音発生域にある場合は、前記変速機の変速比を変更してそのこもり音発生域を回避することにある。
【0020】
このようにすれば、車両用駆動装置の特性に基づいて決定された車両状態がエンジン駆動に伴うこもり音発生域にある場合は、変速機の変速比が変更されてこもり音発生域が回避されるので、変速機の特定の変速比において顕著になるこもり音の発生を抑制することが可能になる。また、変速機の変速比が変更されることによりエンジンの動作点が変更されてこもり音発生域が回避されるので、特定のエンジンの動作点において顕著になるこもり音の発生を抑制することが可能になる。
【0021】
また、請求項10にかかる発明は、請求項9に記載の車両用駆動装置の制御装置において、前記変速機は、予め定められた変速マップに従って変速が実行される自動変速機であり、前記自動変速機の各変速を判断するために前記変速マップが有している通常時の変速点を変更することによりその自動変速機の変速比を変更して前記こもり音発生域を回避するものである。このようにすれば、こもり音発生域を簡単に回避することができる。
【0022】
また、請求項11にかかる発明は、請求項10に記載の車両用駆動装置の制御装置において、変速点を変更することにより前記自動変速機の変速比が変化しないときに、前記変更した変速点を前記通常時の変速点へ復帰させるものである。このようにすれば、例えば通常時の変速点への復帰に伴いダウンシフトが実行されて急な減速が発生することによる違和感を回避することができる。
【0023】
また、請求項12にかかる発明は、請求項9乃至11のいずれかに記載の車両用駆動装置の制御装置において、前記こもり音発生域の回避が必要であるか否かを判断するこもり音発生域回避判断手段を備え、そのこもり音発生域回避判断手段によりこもり音発生域の回避が必要であると判断された場合にそのこもり音発生域を回避するものである。このようにすれば、一律にこもり音発生域を回避する場合に比較して車両用駆動装置の特性例えばシステム効率の悪化が抑制され、運転性や燃費性が向上する。
【0024】
また、請求項13にかかる発明は、請求項12に記載の車両用駆動装置の制御装置において、前記こもり音発生域回避判断手段は、エンジン駆動に伴うこもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさであるか否かに基づいて、前記こもり音発生域の回避が必要であるか否かを判断するものである。このようにすれば、こもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさである場合のみこもり音発生域が回避されるので、車両用駆動装置の特性例えばシステム効率の悪化が抑制され運転性や燃費性が向上する。
【0025】
また、請求項14にかかる発明は、請求項13に記載の車両用駆動装置の制御装置において、前記こもり音発生域回避判断手段は、前記こもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさであることが所定時間連続したときに、前記こもり音発生域の回避が必要であると判断するものである。このようにすれば、こもり音発生域の回避とその回避制御の解除とが短時間に繰り返されることが防止されるので、車両状態が安定する。
【0026】
ここで、好適には、請求項6に記載の車両用駆動装置の制御装置において、前記車両用駆動装置は、エンジンに連結された第1要素と第1電動機に連結された第2要素と第2電動機および伝達部材に連結された第3要素とを有してそのエンジンの出力をその第1電動機およびその伝達部材へ分配する差動機構を有する差動部を備えるものである。このようにすれば、例えば伝達部材の回転速度が車速に拘束されたとしても、その伝達部材の回転速度を変化させることなく差動機構の差動作用によってエンジンの動作点を変更して、エンジントルクと第2電動機のトルクとの分担を変更することができる。例えば、エンジンの動作点を変更したことでエンジントルクが低下した場合には、その低下分を第2電動機のトルクで補う。また、エンジントルクと第2電動機のトルクとの分担を変更する際には、エンジンの最適燃費率曲線に沿ってエンジンの動作点を変更しても良い。これによって、車両の駆動に必要なトルクがそのまま確保されることに加え、エンジンの効率の低下ができるだけ避けられる。
【0027】
また、好適には、請求項1または9に記載の車両用駆動装置の制御装置において、前記車両用駆動装置は、エンジンに連結された第1要素と第1電動機に連結された第2要素と第2電動機および伝達部材に連結された第3要素とを有してそのエンジンの出力をその第1電動機およびその伝達部材へ分配する差動機構を有する差動部を備え、その伝達部材から駆動輪への動力伝達経路に前記変速機を備えるものである。このようにすれば、差動部の変速比と変速機の変速比とに基づいて車両用駆動装置の総合変速比が形成され、変速機の変速比のみ或いは差動部の変速比のみを変更することによりエンジンの動作点を変更することができる。
【0028】
また、変速機の変速比或いは差動部の変速比を変更することにより駆動系の共振系が変化するので、これによってもこもり音を抑制する効果が期待できる。従って、総合変速比を略一定に維持するように変速機と差動部との両変速比を共に変更してエンジンを車両用駆動装置の特性例えばシステム効率に基づく動作点に略一定に維持したとしても、こもり音を抑制する効果が期待できる。
【0029】
また、好適には、前記差動機構は遊星歯車装置であり、前記第1要素はその遊星歯車装置のキャリヤであり、前記第2要素はその遊星歯車装置のサンギヤであり、前記第3要素はその遊星歯車装置のリングギヤである。このようにすれば、エンジンの動作点を変更することによってこもり音の発生を抑制することが可能になる。
【0030】
また、好適には、前記変速機は、1組または複数組の遊星歯車装置の回転要素が係合装置によって選択的に連結されることにより複数のギヤ段が択一的に達成される例えば、前進2段、前進3段、更にはそれ以上の変速段を有する等の種々の遊星歯車式多段変速機等により構成される。このようにすれば、変速機の変速段(変速比)を変更することによってこもり音の発生を抑制することが可能になる。
【0031】
また、好適には、車両用駆動装置の特性例えばシステム効率が低下してもよい車両状態であるときに、こもり音発生域を回避するものである。このようにすれば、例えば車両走行が確実に維持される。上記車両用駆動装置の特性例えばシステム効率が低下してもよい車両状態とは、例えば電動機へ電気エネルギーを供給する蓄電装置の充電容量(充電状態)が所定容量を超えており、発電効率や充電効率が低下しても、或いは蓄電装置の充電を行わずとも、電動機の駆動に支障がない車両状態が想定される。
【0032】
また、好適には、前記車両用駆動装置は、エンジンから駆動輪までの動力伝達経路を動力伝達可能状態と動力伝達遮断状態とに切り換え可能に構成されており、その動力伝達経路の動力伝達可能状態への切換えを選択するための駆動ポジションと、動力伝達経路の動力伝達遮断状態への切換えを選択するための非駆動ポジションとに選択的に切換え操作される切換装置を更に備え、その切換装置が所定のポジションであるときに、こもり音発生域を回避するものである。このようにすれば、所定のポジションに合わせた態様でこもり音発生域を回避することができる。例えば、切換装置が駆動ポジションに切換え操作されている一態様である前進走行時には、前記蓄電装置の充電容量が所定容量を超えていることを条件としてこもり音発生域を回避するように制御する。また、切換装置が非駆動ポジションに切換え操作されている一態様である駐車時には、例えばエンジンの動力によって蓄電装置が電動機による充電中であるときにこもり音発生域を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0034】
図1は、本発明が適用されるハイブリッド車両の駆動装置の一部を構成する変速機構10を説明する骨子図である。図1において、変速機構10は車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース12(以下、ケース12という)内において共通の軸心上に配設された入力回転部材としての入力軸14と、この入力軸14に直接に或いは図示しない脈動吸収ダンパー(振動減衰装置)などを介して間接に連結された無段変速部としての差動部11と、その差動部11と駆動輪34(図7参照)との間の動力伝達経路で伝達部材(伝動軸)18を介して直列に連結されている動力伝達部としての自動変速部20と、この自動変速部20に連結されている出力回転部材としての出力軸22とを直列に備えている。この変速機構10は、例えば車両において縦置きされるFR(フロントエンジン・リヤドライブ)型車両に好適に用いられるものであり、入力軸14に直接に或いは図示しない脈動吸収ダンパーを介して直接的に連結された走行用の駆動力源として例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であるエンジン8と一対の駆動輪34との間に設けられて、エンジン8からの動力を動力伝達経路の一部を構成する差動歯車装置(終減速機)32(図7参照)および一対の車軸等を順次介して一対の駆動輪34へ伝達する。
【0035】
このように、本実施例の変速機構10においてはエンジン8と差動部11とは直結されている。この直結にはトルクコンバータやフルードカップリング等の流体式伝動装置を介することなく連結されているということであり、例えば上記脈動吸収ダンパーなどを介する連結はこの直結に含まれる。なお、変速機構10はその軸心に対して対称的に構成されているため、図1の骨子図においてはその下側が省略されている。以下の各実施例についても同様である。
【0036】
差動部11は、第1電動機M1と、入力軸14に入力されたエンジン8の出力を機械的に分配する機械的機構であってエンジン8の出力を第1電動機M1および伝達部材18に分配する差動機構としての動力分配機構16と、伝達部材18と一体的に回転するように作動的に連結されている第2電動機M2とを備えている。本実施例の第1電動機M1および第2電動機M2は発電機能をも有する所謂モータジェネレータであるが、第1電動機M1は反力を発生させるためのジェネレータ(発電)機能を少なくとも備え、第2電動機M2は走行用の駆動力源として駆動力を出力するためのモータ(電動機)機能を少なくとも備える。尚、明細書全体を通して第1電動機M1と第2電動機M2とを特に区別しない場合は電動機Mと表す。
【0037】
動力分配機構16は、例えば「0.418」程度の所定のギヤ比ρ1を有するシングルピニオン型の第1遊星歯車装置24を主体として構成されている。この第1遊星歯車装置24は、第1サンギヤS1、第1遊星歯車P1、その第1遊星歯車P1を自転および公転可能に支持する第1キャリヤCA1、第1遊星歯車P1を介して第1サンギヤS1と噛み合う第1リングギヤR1を回転要素(要素)として備えている。第1サンギヤS1の歯数をZS1、第1リングギヤR1の歯数をZR1とすると、上記ギヤ比ρ1はZS1/ZR1である。
【0038】
この動力分配機構16においては、第1キャリヤCA1は入力軸14すなわちエンジン8に連結され、第1サンギヤS1は第1電動機M1に連結され、第1リングギヤR1は伝達部材18に連結されている。このように構成された動力分配機構16は、第1遊星歯車装置24の3要素である第1サンギヤS1、第1キャリヤCA1、第1リングギヤR1がそれぞれ相互に相対回転可能とされて差動作用が作動可能なすなわち差動作用が働く差動状態とされることから、エンジン8の出力が第1電動機M1と伝達部材18とに分配されるとともに、分配されたエンジン8の出力の一部で第1電動機M1から発生させられた電気エネルギで蓄電されたり第2電動機M2が回転駆動されるので、差動部11(動力分配機構16)は電気的な差動装置として機能させられて例えば差動部11は所謂無段変速状態(電気的CVT状態)とされて、エンジン8の所定回転に拘わらず伝達部材18の回転が連続的に変化させられる。すなわち、差動部11はその変速比γ0(入力軸14の回転速度NIN/伝達部材18の回転速度N18)が最小値γ0min から最大値γ0max まで連続的に変化させられる電気的な無段変速機として機能する。
【0039】
自動変速部20は、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置26、シングルピニオン型の第3遊星歯車装置28、およびシングルピニオン型の第4遊星歯車装置30を備え、有段式の自動変速機として機能する遊星歯車式の多段変速機である。第2遊星歯車装置26は、第2サンギヤS2、第2遊星歯車P2、その第2遊星歯車P2を自転および公転可能に支持する第2キャリヤCA2、第2遊星歯車P2を介して第2サンギヤS2と噛み合う第2リングギヤR2を備えており、例えば「0.562」程度の所定のギヤ比ρ2を有している。第3遊星歯車装置28は、第3サンギヤS3、第3遊星歯車P3、その第3遊星歯車P3を自転および公転可能に支持する第3キャリヤCA3、第3遊星歯車P3を介して第3サンギヤS3と噛み合う第3リングギヤR3を備えており、例えば「0.425」程度の所定のギヤ比ρ3を有している。第4遊星歯車装置30は、第4サンギヤS4、第4遊星歯車P4、その第4遊星歯車P4を自転および公転可能に支持する第4キャリヤCA4、第4遊星歯車P4を介して第4サンギヤS4と噛み合う第4リングギヤR4を備えており、例えば「0.421」程度の所定のギヤ比ρ4を有している。第2サンギヤS2の歯数をZS2、第2リングギヤR2の歯数をZR2、第3サンギヤS3の歯数をZS3、第3リングギヤR3の歯数をZR3、第4サンギヤS4の歯数をZS4、第4リングギヤR4の歯数をZR4とすると、上記ギヤ比ρ2はZS2/ZR2、上記ギヤ比ρ3はZS3/ZR3、上記ギヤ比ρ4はZS4/ZR4である。
【0040】
自動変速部20では、第2サンギヤS2と第3サンギヤS3とが一体的に連結されて第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第2キャリヤCA2は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第4リングギヤR4は第3ブレーキB3を介してケース12に選択的に連結され、第2リングギヤR2と第3キャリヤCA3と第4キャリヤCA4とが一体的に連結されて出力軸22に連結され、第3リングギヤR3と第4サンギヤS4とが一体的に連結されて第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結されている。
【0041】
このように、自動変速部20内と差動部11(伝達部材18)とは自動変速部20の変速段を成立させるために用いられる第1クラッチC1または第2クラッチC2を介して選択的に連結されている。言い換えれば、第1クラッチC1および第2クラッチC2は、伝達部材18と自動変速部20との間の動力伝達経路すなわち差動部11(伝達部材18)から駆動輪34への動力伝達経路を、その動力伝達経路の動力伝達を可能とする動力伝達可能状態と、その動力伝達経路の動力伝達を遮断する動力伝達遮断状態とに選択的に切り換える係合装置として機能している。つまり、第1クラッチC1および第2クラッチC2の少なくとの一方が係合されることで上記動力伝達経路が動力伝達可能状態とされ、或いは第1クラッチC1および第2クラッチC2が解放されることで上記動力伝達経路が動力伝達遮断状態とされる。
【0042】
また、この自動変速部20は、解放側係合装置の解放と係合側係合装置の係合とによりクラッチツウクラッチ変速が実行されて各ギヤ段(変速段)が選択的に成立させられることにより、略等比的に変化する変速比γ(=伝達部材18の回転速度N18/出力軸22の回転速度NOUT)が各ギヤ段毎に得られる。例えば、図2の係合作動表に示されるように、第1クラッチC1および第3ブレーキB3の係合により変速比γ1が最大値例えば「3.357」程度である第1速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1および第2ブレーキB2の係合により変速比γ2が第1速ギヤ段よりも小さい値例えば「2.180」程度である第2速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1および第1ブレーキB1の係合により変速比γ3が第2速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.424」程度である第3速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1および第2クラッチC2の係合により変速比γ4が第3速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.000」程度である第4速ギヤ段が成立させられる。また、第2クラッチC2および第3ブレーキB3の係合により変速比γRが第1速ギヤ段と第2速ギヤ段との間の値例えば「3.209」程度である後進ギヤ段(後進変速段)が成立させられる。また、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、および第3ブレーキB3の解放によりニュートラル「N」状態とされる。なお、図2の係合作動表に示されている第5速ギヤ段における自動変速部20の係合装置の係合作動は第4速ギヤ段と同じである。
【0043】
前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、および第3ブレーキB3(以下、特に区別しない場合はクラッチC、ブレーキBと表す)は、従来の車両用自動変速機においてよく用いられている係合要素としての油圧式摩擦係合装置であって、互いに重ねられた複数枚の摩擦板が油圧アクチュエータにより押圧される湿式多板型や、回転するドラムの外周面に巻き付けられた1本または2本のバンドの一端が油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキなどにより構成され、それが介挿されている両側の部材を選択的に連結するためのものである。
【0044】
以上のように構成された変速機構10において、無段変速機として機能する差動部11と自動変速部20とで無段変速機が構成される。また、差動部11の変速比を一定となるように制御することにより、差動部11と自動変速部20とで有段変速機と同等の状態を構成することが可能とされる。
【0045】
具体的には、差動部11が無段変速機として機能し、且つ差動部11に直列の自動変速部20が有段変速機として機能することにより、自動変速部20の少なくとも1つの変速段Mに対して自動変速部20に入力される回転速度(以下、自動変速部20の入力回転速度)すなわち伝達部材18の回転速度(以下、伝達部材回転速度N18)が無段的に変化させられてその変速段Mにおいて無段的な変速比幅が得られる。したがって、変速機構10の総合変速比γT(=入力軸14の回転速度NIN/出力軸22の回転速度NOUT)が無段階に得られ、変速機構10において無段変速機が構成される。この変速機構10の総合変速比γTは、差動部11の変速比γ0と自動変速部20の変速比γとに基づいて形成される変速機構10全体としてのトータル変速比γTである。
【0046】
例えば、図2の係合作動表に示される自動変速部20の第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段や後進ギヤ段の各ギヤ段に対し伝達部材回転速度N18が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって、変速機構10全体としてのトータル変速比γTが無段階に得られる。
【0047】
また、差動部11の変速比が一定となるように制御され、且つクラッチCおよびブレーキBが選択的に係合作動させられて第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段のいずれか或いは後進ギヤ段(後進変速段)が選択的に成立させられることにより、略等比的に変化する変速機構10のトータル変速比γTが各ギヤ段毎に得られる。したがって、変速機構10において有段変速機と同等の状態が構成される。
【0048】
例えば、差動部11の変速比γ0が「1」に固定されるように制御されると、図2の係合作動表に示されるように自動変速部20の第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段や後進ギヤ段の各ギヤ段に対応する変速機構10のトータル変速比γTが各ギヤ段毎に得られる。また、自動変速部20の第4速ギヤ段において差動部11の変速比γ0が「1」より小さい値例えば0.7程度に固定されるように制御されると、図2の係合作動表の第5速ギヤ段に示されるように第4速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.705」程度であるトータル変速比γTが得られる。
【0049】
図3は、差動部11と自動変速部20とから構成される変速機構10において、ギヤ段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図を示している。この図3の共線図は、各遊星歯車装置24、26、28、30のギヤ比ρの関係を示す横軸と、相対的回転速度を示す縦軸とから成る二次元座標であり、3本の横線のうちの下側の横線X1が回転速度零を示し、上側の横線X2が回転速度「1.0」すなわち入力軸14に連結されたエンジン8の回転速度NEを示し、横線XGが伝達部材18の回転速度を示している。
【0050】
また、差動部11を構成する動力分配機構16の3つの要素に対応する3本の縦線Y1、Y2、Y3は、左側から順に第2回転要素(第2要素)RE2に対応する第1サンギヤS1、第1回転要素(第1要素)RE1に対応する第1キャリヤCA1、第3回転要素(第3要素)RE3に対応する第1リングギヤR1の相対回転速度を示すものであり、それらの間隔は第1遊星歯車装置24のギヤ比ρ1に応じて定められている。さらに、自動変速部20の5本の縦線Y4、Y5、Y6、Y7、Y8は、左から順に、第4回転要素(第4要素)RE4に対応し且つ相互に連結された第2サンギヤS2および第3サンギヤS3を、第5回転要素(第5要素)RE5に対応する第2キャリヤCA2を、第6回転要素(第6要素)RE6に対応する第4リングギヤR4を、第7回転要素(第7要素)RE7に対応し且つ相互に連結された第2リングギヤR2、第3キャリヤCA3、第4キャリヤCA4を、第8回転要素(第8要素)RE8に対応し且つ相互に連結された第3リングギヤR3、第4サンギヤS4をそれぞれ表し、それらの間隔は第2、第3、第4遊星歯車装置26、28、30のギヤ比ρ2、ρ3、ρ4に応じてそれぞれ定められている。共線図の縦軸間の関係においてサンギヤとキャリヤとの間が「1」に対応する間隔とされるとキャリヤとリングギヤとの間が遊星歯車装置のギヤ比ρに対応する間隔とされる。すなわち、差動部11では縦線Y1とY2との縦線間が「1」に対応する間隔に設定され、縦線Y2とY3との間隔はギヤ比ρ1に対応する間隔に設定される。また、自動変速部20では各第2、第3、第4遊星歯車装置26、28、30毎にそのサンギヤとキャリヤとの間が「1」に対応する間隔に設定され、キャリヤとリングギヤとの間がρに対応する間隔に設定される。
【0051】
上記図3の共線図を用いて表現すれば、本実施例の変速機構10は、動力分配機構16(差動部11)において、第1遊星歯車装置24の第1回転要素RE1(第1キャリヤCA1)が入力軸14すなわちエンジン8に連結され、第2回転要素RE2が第1電動機M1に連結され、第3回転要素(第1リングギヤR1)RE3が伝達部材18および第2電動機M2に連結されて、入力軸14の回転を伝達部材18を介して自動変速部20へ伝達する(入力させる)ように構成されている。このとき、Y2とX2の交点を通る斜めの直線L0により第1サンギヤS1の回転速度と第1リングギヤR1の回転速度との関係が示される。
【0052】
例えば、差動部11においては、第1回転要素RE1乃至第3回転要素RE3が相互に相対回転可能とされる差動状態とされており、直線L0と縦線Y3との交点で示される第1リングギヤR1の回転速度が車速Vに拘束されて略一定である場合には、第1電動機M1の回転速度を制御することによって直線L0と縦線Y1との交点で示される第1サンギヤS1の回転が上昇或いは下降させられると、直線L0と縦線Y2との交点で示される第1キャリヤCA1の回転速度すなわちエンジン回転速度NEが上昇或いは下降させられる。
【0053】
また、差動部11の変速比γ0が「1」に固定されるように第1電動機M1の回転速度を制御することによって第1サンギヤS1の回転がエンジン回転速度NEと同じ回転とされると、直線L0は横線X2と一致させられ、エンジン回転速度NEと同じ回転で第1リングギヤR1の回転速度すなわち伝達部材18が回転させられる。或いは、差動部11の変速比γ0が「1」より小さい値例えば0.7程度に固定されるように第1電動機M1の回転速度を制御することによって第1サンギヤS1の回転が零とされると、直線L0は図3に示す状態とされ、エンジン回転速度NEよりも増速された回転で伝達部材回転速度N18が回転させられる。
【0054】
また、自動変速部20において第4回転要素RE4は第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第5回転要素RE5は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第6回転要素RE6は第3ブレーキB3を介してケース12に選択的に連結され、第7回転要素RE7は出力軸22に連結され、第8回転要素RE8は第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結されている。
【0055】
自動変速部20では、差動部11において直線L0が横線X2と一致させられてエンジン回転速度NEと同じ回転速度が差動部11から第8回転要素RE8に入力されると、図3に示すように、第1クラッチC1と第3ブレーキB3とが係合させられることにより、第8回転要素RE8の回転速度を示す縦線Y8と横線X2との交点と第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6と横線X1との交点とを通る斜めの直線L1と、出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第1速の出力軸22の回転速度が示される。同様に、第1クラッチC1と第2ブレーキB2とが係合させられることにより決まる斜めの直線L2と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第2速の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第1ブレーキB1とが係合させられることにより決まる斜めの直線L3と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第3速の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第2クラッチC2とが係合させられることにより決まる水平な直線L4と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第4速の出力軸22の回転速度が示される。
【0056】
また、差動部11において直線L0が図3に示す状態とされてエンジン回転速度NEよりも高い回転速度が差動部11から第8回転要素RE8に入力されると、図3に示すように、第1クラッチC1および第2クラッチC2が係合させられることにより決まる水平な直線L5と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第5速の出力軸22の回転速度が示される。
【0057】
図4は、本実施例の変速機構10を制御するための電子制御装置80に入力される信号及びその電子制御装置80から出力される信号を例示している。この電子制御装置80は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことによりエンジン8、第1、第2電動機M1、M2に関するハイブリッド駆動制御、自動変速部20の変速制御等の駆動制御を実行するものである。
【0058】
電子制御装置80には、図4に示すような各センサやスイッチなどから、エンジン水温TEMPWを表す信号、シフトレバー52(図6参照)のシフトポジションPSHや「M」ポジションにおける操作回数等を表す信号、エンジン8の回転速度であるエンジン回転速度NEを表す信号、ギヤ比列設定値を表す信号、Mモード(手動変速走行モード)を指令する信号、エアコンの作動を表す信号、出力軸22の回転速度(以下、出力軸回転速度)NOUTに対応する車速Vを表す信号、自動変速部20の作動油温TOILを表す信号、サイドブレーキ操作を表す信号、フットブレーキ操作を表す信号、触媒温度を表す信号、運転者の出力要求量に対応するアクセルペダルの操作量であるアクセル開度Accを表す信号、カム角を表す信号、スノーモード設定を表す信号、車両の前後加速度Gを表す信号、オートクルーズ走行を表す信号、車両の重量(車重)を表す信号、各車輪の車輪速を表す信号、第1電動機M1の回転速度NM1(以下、第1電動機回転速度NM1という)を表す信号、第2電動機M2の回転速度NM2(以下、第2電動機回転速度NM2という)を表す信号、蓄電装置56(図7参照)の充電容量(充電状態)SOCを表す信号などが、それぞれ供給される。
【0059】
また、上記電子制御装置80からは、エンジン出力を制御するエンジン出力制御装置58(図7参照)への制御信号例えばエンジン8の吸気管60に備えられた電子スロットル弁62のスロットル弁開度θTHを操作するスロットルアクチュエータ64への駆動信号や燃料噴射装置66による吸気管60或いはエンジン8の筒内への燃料供給量を制御する燃料供給量信号や点火装置68によるエンジン8の点火時期を指令する点火信号、過給圧を調整するための過給圧調整信号、電動エアコンを作動させるための電動エアコン駆動信号、電動機M1およびM2の作動を指令する指令信号、シフトインジケータを作動させるためのシフトポジション(操作位置)表示信号、ギヤ比を表示させるためのギヤ比表示信号、スノーモードであることを表示させるためのスノーモード表示信号、制動時の車輪のスリップを防止するABSアクチュエータを作動させるためのABS作動信号、Mモードが選択されていることを表示させるMモード表示信号、差動部11や自動変速部20の油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータを制御するために油圧制御回路70(図5、図7参照)に含まれる電磁弁(リニアソレノイドバルブ)を作動させるバルブ指令信号、この油圧制御回路70に設けられたレギュレータバルブ(調圧弁)によりライン油圧PLを調圧するための信号、そのライン油圧PLが調圧されるための元圧の油圧源である電動油圧ポンプを作動させるための駆動指令信号、電動ヒータを駆動するための信号、クルーズコントロール制御用コンピュータへの信号等が、それぞれ出力される。
【0060】
図5は、油圧制御回路70のうちクラッチC1、C2、およびブレーキB1〜B3の各油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)AC1、AC2、AB1、AB2、AB3の作動を制御するリニアソレノイドバルブSL1〜SL5に関する回路図である。
【0061】
図5において、各油圧アクチュエータAC1、AC2、AB1、AB2、AB3には、ライン油圧PLがそれぞれリニアソレノイドバルブSL1〜SL5により電子制御装置80からの指令信号に応じた係合圧PC1、PC2、PB1、PB2、PB3に調圧されてそれぞれ直接的に供給されるようになっている。このライン油圧PLは、図示しない電動オイルポンプやエンジン30により回転駆動される機械式オイルポンプから発生する油圧を元圧として例えばリリーフ型調圧弁(レギュレータバルブ)によって、アクセル開度或いはスロットル開度で表されるエンジン負荷等に応じた値に調圧されるようになっている。
【0062】
リニアソレノイドバルブSL1〜SL5は、基本的には何れも同じ構成で、電子制御装置80により独立に励磁、非励磁され、各油圧アクチュエータAC1、AC2、AB1、AB2、AB3の油圧が独立に調圧制御されてクラッチC1〜C4、ブレーキB1、B2の係合圧PC1、PC2、PB1、PB2、PB3が制御される。そして、自動変速部20は、例えば図2の係合作動表に示すように予め定められた係合装置が係合されることによって各変速段が成立させられる。また、自動変速部20の変速制御においては、例えば変速に関与するクラッチCやブレーキBの解放と係合とが同時に制御される所謂クラッチツウクラッチ変速が実行される。
【0063】
図6は複数種類のシフトポジションPSHを人為的操作により切り換える切換装置としてのシフト操作装置50の一例を示す図である。このシフト操作装置50は、例えば運転席の横に配設され、複数種類のシフトポジションPSHを選択するために操作されるシフトレバー52を備えている。
【0064】
そのシフトレバー52は、変速機構10内つまり自動変速部20内の動力伝達経路が遮断されたニュートラル状態すなわち中立状態とし且つ自動変速部20の出力軸22をロックするための駐車ポジション「P(パーキング)」、後進走行のための後進走行ポジション「R(リバース)」、変速機構10内の動力伝達経路が遮断された中立状態とするための中立ポジション「N(ニュートラル)」、自動変速モードを成立させて差動部11の無段的な変速比幅と自動変速部20の第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段の範囲で自動変速制御される各ギヤ段とで得られる変速機構10の変速可能なトータル変速比γTの変化範囲内で自動変速制御を実行させる前進自動変速走行ポジション「D(ドライブ)」、または手動変速走行モード(手動モード)を成立させて自動変速部20の自動変速制御における高速側の変速段を制限する所謂変速レンジを設定するための前進手動変速走行ポジション「M(マニュアル)」へ手動操作されるように設けられている。
【0065】
上記シフトレバー52の各シフトポジションPSHへの手動操作に連動して図2の係合作動表に示す後進ギヤ段「R」、ニュートラル「N」、前進ギヤ段「D」における各変速段等が成立するように、例えば油圧制御回路70が電気的に切り換えられる。
【0066】
上記「P」乃至「M」ポジションに示す各シフトポジションPSHにおいて、「P」ポジションおよび「N」ポジションは、車両を走行させないときに選択される非走行ポジションであって、例えば図2の係合作動表に示されるように第1クラッチC1および第2クラッチC2のいずれもが解放されるような自動変速部20内の動力伝達経路が遮断された車両を駆動不能とする第1クラッチC1および第2クラッチC2による動力伝達経路の動力伝達遮断状態へ切換えを選択するための非駆動ポジションである。また、「R」ポジション、「D」ポジションおよび「M」ポジションは、車両を走行させるときに選択される走行ポジションであって、例えば図2の係合作動表に示されるように第1クラッチC1および第2クラッチC2の少なくとも一方が係合されるような自動変速部20内の動力伝達経路が連結された車両を駆動可能とする第1クラッチC1および/または第2クラッチC2による動力伝達経路の動力伝達可能状態への切換えを選択するための駆動ポジションでもある。
【0067】
具体的には、シフトレバー52が「P」ポジション或いは「N」ポジションから「R」ポジションへ手動操作されることで、第2クラッチC2が係合されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達遮断状態から動力伝達可能状態とされ、シフトレバー52が「N」ポジションから「D」ポジションへ手動操作されることで、少なくとも第1クラッチC1が係合されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達遮断状態から動力伝達可能状態とされる。また、シフトレバー52が「R」ポジションから「P」ポジション或いは「N」ポジションへ手動操作されることで、第2クラッチC2が解放されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達可能状態から動力伝達遮断状態とされ、シフトレバー52が「D」ポジションから「N」ポジションへ手動操作されることで、第1クラッチC1および第2クラッチC2が解放されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達可能状態から動力伝達遮断状態とされる。
【0068】
図7は、電子制御装置80による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図7において、有段変速制御手段82は、図8に示すような車速Vと自動変速部20の出力トルクTOUTとを変数として予め記憶されたアップシフト線(実線)およびダウンシフト線(一点鎖線)を有する関係(変速線図、変速マップ)から実際の車速Vおよび自動変速部20の要求出力トルクTOUTで示される車両状態に基づいて、自動変速部20の変速を実行すべきか否かを判断しすなわち自動変速部20の変速すべき変速段を判断し、その判断した変速段が得られるように自動変速部20の自動変速制御を実行する。
【0069】
このとき、有段変速制御手段82は、例えば図2に示す係合表に従って変速段が達成されるように、自動変速部20の変速に関与する油圧式摩擦係合装置を係合および/または解放させる指令(変速出力指令、油圧指令)を、すなわち自動変速部20の変速に関与する解放側係合装置を解放すると共に係合側係合装置を係合することによりクラッチツウクラッチ変速を実行させる指令を油圧制御回路70へ出力する。油圧制御回路70は、その指令に従って、例えば解放側係合装置を解放すると共に係合側係合装置を係合して自動変速部20の変速が実行されるように、油圧制御回路70内のリニアソレノイドバルブSLを作動させてその変速に関与する油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータを作動させる。
【0070】
ハイブリッド制御手段84は、エンジン8を効率のよい作動域で作動させる一方で、エンジン8と第2電動機M2との駆動力の配分や第1電動機M1の発電による反力を最適になるように変化させて差動部11の電気的な無段変速機としての変速比γ0を制御する。例えば、そのときの走行車速Vにおいて、運転者の出力要求量としてのアクセル開度Accや車速Vから車両の目標(要求)出力を算出し、その車両の目標出力と充電要求値から必要なトータル目標出力を算出し、そのトータル目標出力が得られるように伝達損失、補機負荷、第2電動機M2のアシストトルクTM2等を考慮して目標エンジン出力を算出し、その目標エンジン出力が得られるエンジン回転速度NEとエンジントルクTEとなるようにエンジン8を制御するとともに第1電動機M1の発電量を制御する。
【0071】
例えば、ハイブリッド制御手段84は、その制御を動力性能や燃費向上などのために自動変速部20の変速段を考慮して実行する。このようなハイブリッド制御では、エンジン8を効率のよい作動域で作動させるために定まるエンジン回転速度NEと車速Vおよび自動変速部20の変速段で定まる伝達部材18の回転速度とを整合させるために、差動部11が電気的な無段変速機として機能させられる。すなわち、ハイブリッド制御手段84は、エンジン回転速度NEとエンジン8の出力トルク(エンジントルク)TEとで構成される二次元座標内において無段変速走行の時に運転性と燃費性とを両立するように予め実験的に求められて記憶された図9の破線に示すようなエンジン8の最適燃費率曲線(燃費マップ、関係)に沿ってエンジン8が作動させられるように、例えば目標出力(トータル目標出力、要求駆動力)を充足するために必要なエンジン出力を発生するためのエンジントルクTEとエンジン回転速度NEとなるように、変速機構10のトータル変速比γTの目標値を定め、その目標値が得られるように自動変速部20の変速段を考慮して差動部11の変速比γ0を制御し、トータル変速比γTをその変速可能な変化範囲内で制御する。このように、変速機構10の特性例えばシステム効率に基づいてエンジン8の動作点、第1電動機M1や第2電動機M2の動作点、および自動変速部20の変速比γが決定される。言い換えれば、変速機構10の特性例えばシステム効率に基づいてエンジントルクTEと第2電動機M2のアシストトルクTM2との分担が決定される。
【0072】
このとき、ハイブリッド制御手段84は、第1電動機M1により発電された電気エネルギをインバータ54を通して蓄電装置56や第2電動機M2へ供給するので、エンジン8の動力の主要部は機械的に伝達部材18へ伝達されるが、エンジン8の動力の一部は第1電動機M1の発電のために消費されてそこで電気エネルギに変換され、インバータ54を通してその電気エネルギが第2電動機M2へ供給され、その第2電動機M2が駆動されて第2電動機M2から伝達部材18へ伝達される。この電気エネルギの発生から第2電動機M2で消費されるまでに関連する機器により、エンジン8の動力の一部を電気エネルギに変換し、その電気エネルギを機械的エネルギに変換するまでの電気パスが構成される。
【0073】
また、ハイブリッド制御手段84は、車両の停止中又は走行中に拘わらず、差動部11の電気的CVT機能によって第1電動機回転速度NM1を制御してエンジン回転速度NEを略一定に維持したり任意の回転速度に回転制御させられる。言い換えれば、ハイブリッド制御手段84は、エンジン回転速度NEを略一定に維持したり任意の回転速度に制御しつつ第1電動機回転速度NM1を任意の回転速度に回転制御することができる。
【0074】
例えば、図3の共線図からもわかるようにハイブリッド制御手段84は車両走行中にエンジン回転速度NEを引き上げる場合には、車速V(駆動輪34)に拘束される第2電動機回転速度NM2を略一定に維持しつつ第1電動機回転速度NM1の引き上げを実行する。また、ハイブリッド制御手段84は自動変速部20の変速中にエンジン回転速度NEを略一定に維持する場合には、エンジン回転速度NEを略一定に維持しつつ自動変速部20の変速や車速Vの変化に伴う第2電動機回転速度NM2の変化とは反対方向に第1電動機回転速度NM1を変化させる。
【0075】
また、ハイブリッド制御手段84は、スロットル制御のためにスロットルアクチュエータ64により電子スロットル弁62を開閉制御させる他、燃料噴射制御のために燃料噴射装置66による燃料噴射量や噴射時期を制御させ、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置68による点火時期を制御させる指令を単独で或いは組み合わせてエンジン出力制御装置58に出力して、必要なエンジン出力を発生するようにエンジン8の出力制御を実行するエンジン出力制御手段を機能的に備えている。
【0076】
例えば、ハイブリッド制御手段84は、基本的には図示しない予め記憶された関係からアクセル開度Accに基づいてスロットルアクチュエータ60を駆動し、アクセル開度Accが増加するほどスロットル弁開度θTHを増加させるようにスロットル制御を実行する。また、このエンジン出力制御装置58は、ハイブリッド制御手段84による指令に従って、スロットル制御のためにスロットルアクチュエータ64により電子スロットル弁62を開閉制御する他、燃料噴射制御のために燃料噴射装置66による燃料噴射を制御し、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置68による点火時期を制御するなどしてエンジントルク制御を実行する。
【0077】
また、ハイブリッド制御手段84は、エンジン8の停止又はアイドル状態に拘わらず、差動部11の電気的CVT機能(差動作用)によってモータ走行させることができる。
【0078】
例えば、ハイブリッド制御手段84は、図8に示すような車速Vと自動変速部20の出力トルクTOUTとを変数として予め記憶された走行用駆動力源をエンジン8と第2電動機M2とで切り換えるためのエンジン走行領域とモータ走行領域との境界線を有する関係(駆動力源切換線図、駆動力源マップ)から実際の車速Vおよび自動変速部20の要求出力トルクTOUTで示される車両状態に基づいて、モータ走行領域とエンジン走行領域との何れであるかを判断してモータ走行或いはエンジン走行を実行する。図8の実線Aに示す駆動力源マップは、例えば同じ図8中の実線および一点鎖線に示す変速マップと共に予め記憶されている。このように、ハイブリッド制御手段84によるモータ走行は、図8から明らかなように一般的にエンジン効率が高トルク域に比較して悪いとされる比較的低出力トルクTOUT域すなわち低エンジントルクTE域、或いは車速Vの比較的低車速域すなわち低負荷域で実行される。
【0079】
ハイブリッド制御手段84は、このモータ走行時には、停止しているエンジン8の引き摺りを抑制して燃費を向上させるために、第1電動機回転速度NM1を負の回転速度で制御して例えば第1電動機M1を無負荷状態とすることにより空転させて、差動部11の電気的CVT機能(差動作用)により必要に応じてエンジン回転速度NEを零乃至略零に維持する。
【0080】
また、ハイブリッド制御手段84は、エンジン走行領域であっても、上述した電気パスによる第1電動機M1からの電気エネルギおよび/または蓄電装置56からの電気エネルギを第2電動機M2へ供給し、その第2電動機M2を駆動して駆動輪34にトルクを付与することにより、エンジン8の動力を補助するための所謂トルクアシストが可能である。
【0081】
また、ハイブリッド制御手段84は、第1電動機M1を無負荷状態として自由回転すなわち空転させることにより、差動部11がトルクの伝達を不能な状態すなわち差動部11内の動力伝達経路が遮断された状態と同等の状態であって、且つ差動部11からの出力が発生されない状態とすることが可能である。すなわち、ハイブリッド制御手段84は、第1電動機M1を無負荷状態とすることにより差動部11をその動力伝達経路が電気的に遮断される中立状態(ニュートラル状態)とすることが可能である。
【0082】
ところで、車両の走行中においては様々な騒音が発生している。例えば、エンジン8の周期的な気筒点火(爆発)やピストンの往復運動に伴うエンジン8のトルク変動による回転変動を強制源(振動源、振動強制力)とする振動が発生して駆動系(すなわち動力伝達系)のねじり振動が生じ、特定のエンジン回転速度で発生する駆動系のねじり共振によりその振動が増幅され、車体に伝達されたその振動によりこもり音が発生することがある。特に、本実施例ではエンジン8と駆動輪38との間の動力伝達経路が直接的に連結されているのでトルクコンバータ等の流体伝動装置を介して連結されている場合に比較して駆動系のねじり共振例えば変速機構10のねじり共振が発生しやすい可能性がある。また、車両に搭載されるエンジンの大型化に伴うエンジントルクの増大に対応して例えば脈動吸収ダンパー等を大型化すると、こもり音がより発生しやすくなる可能性がある。
【0083】
図10は、前記図9の燃費マップであって、曲線P1、P2はそれぞれエンジン8における等パワー線Pの一例であり、点Aはエンジン8の燃費効率(最適燃費率)に基づいて設定されたエンジン回転速度NEとエンジントルクTEとで規定されるエンジン8の動作点の一例であり、丸囲み斜線部Nはこもり音の発生が顕著になる領域として予め実験的に求められて記憶されたこもり音発生域Nの一例である。そして、上記図10に示すように、変速機構10の特性例えばシステム効率に基づいて設定されたエンジン8の動作点がこもり音発生域N内となる場合がある。
【0084】
このようなエンジン駆動に伴うこもり音は、その大きさによっては乗員に不快感等を与える可能性があり、こもり音の低減に対する要求が一層高くなってきていることや乗員の快適性に及ぼす影響等を考えると、システム効率を少々低下させたとしても極力そのこもり音のレベルを低減させることが望まれる。
【0085】
そこで、本実施例では、エンジン8の動作点がこもり音発生域Nにある場合は、エンジン8の動作点を変更してこもり音発生域Nを回避するこもり音発生域回避手段86を備える。
【0086】
エンジン8の動作点の変更としては、例えば図10の動作点Aがこもり音発生域Nを回避するように、エンジン回転速度NEとエンジントルクTEとを変化させて動作点Aから最適燃費率曲線上の動作点Bに変更する。これにより、エンジン8の最適燃費率を維持した状態で、すなわちエンジン8の効率悪化を最小限にした状態でこもり音発生域Nを回避することが可能となる。
【0087】
但し、最適燃費率を維持した状態でエンジン8の動作点を変更する場合には等パワーが維持されないので、図10に示すようにエンジントルクTEが低下するときにはそのエンジントルクTEの低下分を第2電動機M2によるトルクアシスト量を増大することにより補うようにする。
【0088】
尚、必ずしも最適燃費率を維持した状態でエンジン8の動作点を変更する必要はなく、図11に示すようにアクセル開度Accに基づいて決定される変速機構10の総トルク(トータルトルク)に対して、単にエンジントルクTEの分担分を減らし、エンジン8に比較してトルク変動が少ない第2電動機M2によるアシストトルクTM2の分担分を増やすようにしても良い。この場合には、エネルギー効率的には必ずしも得ではないが、エンジントルクTEが減ることによりエンジン8のトルク変動が減少してこもり音の発生が一層抑制される。
【0089】
このように、最適燃費率を維持した状態でエンジン8の動作点を変更するか否かに拘わらず、前記こもり音発生域回避手段86は、エンジン8の動作点がこもり音発生域Nにある場合は、システム効率に基づいて決定されているエンジントルクTEと第2電動機M2のアシストトルクTM2との分担を変更してこもり音発生域Nを回避するものである。
【0090】
エンジン8の動作点を変更する具体的な手段について以下に詳しく説明する。
【0091】
例えば、こもり音発生域回避手段86は、差動部11の差動作用を利用して第1電動機M1を制御することにより第1電動機回転速度NM1を変化させることに伴ってエンジン回転速度NEを変化させてこもり音発生域Nを回避するようにエンジン8の動作点を変更する動作点変更指令Aを前記ハイブリッド制御手段84へ出力する。言い換えれば、こもり音発生域回避手段86は、こもり音発生域Nを回避するようにエンジントルクTEと第2電動機M2のアシストトルクTM2との分担を変更するトルク分担変更指令A’を前記ハイブリッド制御手段84へ出力する。つまり、この動作点変更指令A或いはトルク分担変更指令A’は差動部11の変速比γ0のみを変化させてエンジン8の動作点を変更するものである。
【0092】
また、変速機構10は自動変速部20を備えていることから、こもり音発生域回避手段86は、自動変速部20を変速制御することによりエンジン回転速度NEを変化させてこもり音発生域Nを回避するようにエンジン8の動作点を変更する動作点変更指令Bを前記有段変速制御手段82へ出力する。つまり、この動作点変更指令Bは自動変速部20の変速比γを単独で変化させることによりトータル変速比γTを変化させてエンジン8の動作点を変更するものである。
【0093】
尚、この動作点変更指令Bにおいて、同時に差動部11の変速比γ0も変化させて最適燃費率を維持した状態でエンジン8の動作点を変更することも可能である。例えば、こもり音発生域回避手段86は、上記動作点変更指令Bを前記有段変速制御手段82へ出力することに加えて、第1電動機M1を制御することによりエンジン回転速度NEを変化させて最適燃費率を維持するようにエンジン8の動作点を変更する動作点変更指令Cを前記ハイブリッド制御手段84へ出力する。つまり、この動作点変更指令Cは自動変速部20の変速比γの変化に合わせて差動部11の変速比γ0を変化させて最適燃費率を維持するように(例えば図10に示すように)エンジン8の動作点を変更するものである。
【0094】
以上のように、本実施例では、エンジン8の動作点がこもり音発生域Nにある場合は、エンジン8の動作点を変更してこもり音発生域Nを回避した。しかしながら、たとえエンジン8の動作点がこもり音発生域Nにあるとしてもそのこもり音発生域Nの回避が必要でない場合もあり、一律にこもり音発生域Nを回避することはシステム効率の面で不利になる可能性がある。
【0095】
そこで、こもり音発生域Nの回避が必要であるか否かを判断するこもり音発生域回避判断手段88を更に備え、前記こもり音発生域回避手段86は、一律にこもり音発生域Nを回避する場合に比較してシステム効率の悪化が抑制されるように、こもり音発生域回避判断手段88によりこもり音発生域Nの回避が必要であると判断された場合にそのこもり音発生域Nを回避するようにしても良い。
【0096】
図12は、こもり音発生域Nの回避が必要であるか否かを判断する一例としてこもり音と暗騒音とを比較する場合を説明する図であって、○印Aはこもり音発生域におけるこもり音の大きさである。
【0097】
図12の○印Aに示すこもり音と暗騒音Iとの関係のようにこもり音が暗騒音に隠れるときには、或いはこもり音の大きさが暗騒音の大きさと比較して突出量が少ないときには、こもり音が目立たなくなるのですなわちこもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさではないので、こもり音発生域Nの回避が必要なくなる。一方で、○印Aに示すこもり音と暗騒音IIとの関係のようにこもり音が暗騒音に隠れないときには、或いはこもり音の大きさが暗騒音の大きさと比較して突出量が所定量多いときには、こもり音が目立つのですなわちこもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさとなるので、こもり音発生域Nの回避が必要となる。
【0098】
上記暗騒音は、例えばエアコンの作動に関連する音(以下、エアコンノイズ)、オーディオの作動に関連する音(以下、オーディオノイズ)、エンジンの作動に関連する音(以下、エンジンノイズ)、窓の開閉に関連する音、ロードノイズ等が想定される。
【0099】
具体的には、暗騒音検出手段90は、暗騒音の大きさを検出或いは推定する。例えば、暗騒音検出手段90は、こもり音発生域N以外の定常走行時に例えばマイクロホン(図4参照)等を用いて暗騒音の実際の大きさを随時検出する。或いはまた、暗騒音検出手段90は、エアコンの作動に関連する信号とエアコンノイズとの予め実験的に求められて記憶された関係(エアコンノイズマップ)からエアコンの作動を表す信号や電動エアコン駆動信号等に基づいてエアコンノイズを推定したり、オーディオの作動に関連する信号とオーディオノイズとの予め実験的に求められて記憶された関係(オーディオノイズマップ)からオーディオスイッチのオンオフを表す信号やスピーカ音量を調節するための信号等に基づいてオーディオノイズを推定したり、エンジンの作動に関連する信号とエンジンノイズとの予め実験的に求められて記憶された関係(エンジンノイズ作動マップ)からエンジンのオンオフを表す信号やエンジン回転速度NE等に基づいてエンジンノイズを推定したりして、暗騒音を随時推定する。
【0100】
前記こもり音発生域回避判断手段88は、車両状態(例えばエンジン8の動作点)とこもり音の大きさとの予め実験的に求められて記憶された関係(こもり音マップ)から実際の車両状態に基づいてこもり音の大きさを推定すると共に、予め実験的に求められて定められた判断基準に従ってその推定したこもり音が前記暗騒音検出手段90により検出或いは推定された暗騒音と比較して問題になる大きさであるか否かを判断し、その判断結果に基づいてこもり音発生域Nの回避が必要であるか否かを判断する。
【0101】
このとき、前記こもり音発生域回避判断手段88は、前記こもり音発生域回避手段86によるこもり音発生域Nの回避制御とその回避制御の解除とが短時間に繰り返されないように、こもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさであることが所定時間T連続したときに、こもり音発生域Nの回避が必要であると判断しても良い。この所定時間Tは、こもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさであると確実に判断できるための予め実験的に求められて記憶された判定期間Tである。上記こもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさとは、例えばこもり音が暗騒音よりも所定値以上となったことすなわち暗騒音に所定値を加えた値以上となったことである。この所定値は、こもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさであることを判定するために予め実験的に求められて定められた値である。
【0102】
また、前記こもり音発生域回避手段86は、システム効率が低下してもよい車両状態であるときにこもり音発生域Nを回避するようにしても良い。例えば、蓄電装置56の充電状態SOCが所定容量Aを超えているか否かを判定する充電状態判定手段92を備え、こもり音発生域回避手段86は、充電状態判定手段92により充電状態SOCが所定容量Aを超えていると判定された場合にこもり音発生域Nを回避するようにしても良い。この所定容量Aは、発電効率や充電効率が低下しても或いは蓄電装置56の充電を行わずとも、例えばモータ走行時やモータアシスト時に第2電動機M2が十分なトルクを出せる程電力があるか否かを判定するための予め実験的に求められて記憶された判定値である。充電状態SOCが所定容量Aを超えており第2電動機M2の駆動に支障がない車両状態であるときは、システム効率が低下してもよい車両状態となる。
【0103】
但し、蓄電装置56の充電状態SOCが所定容量A以下であっても、例えばシフトレバー52の位置が「P」ポジションであるときには前記こもり音発生域回避手段86はこもり音発生域Nを回避するようにしても良い。これは、「P」ポジションであるときには第2電動機M2の駆動を考慮する必要が無く、また「P」ポジションであるときに充電状態SOCが所定容量A以下となってエンジン8の動力によって蓄電装置56が第1電動機M1による充電中であるときにこもり音発生域Nを回避できるようにするためである。従って、シフトレバー52の位置が「D」ポジションや「R」ポジションのような走行ポジションへ切り換えられているときには充電状態SOCが所定容量Aを超えていることを条件としてこもり音発生域Nを回避するが、シフトレバー52の位置が「P」ポジションであるときには充電状態SOCが所定容量A以下であってもこもり音発生域Nを回避する。
【0104】
すなわち、シフトレバー52のシフトポジションPSHを表す信号に基づいてシフトレバー52の位置が所定のポジションであるか否かを判定するシフトポジション判定手段94を備え、前記こもり音発生域回避手段86は、所定のポジションに合わせた態様でこもり音発生域Nを回避する。例えば、こもり音発生域回避手段86は、シフトポジション判定手段94により所定のポジションとしての「D」ポジションであると判定された場合には、前記充電状態判定手段92により充電状態SOCが所定容量Aを超えていると判定されたことを条件としてこもり音発生域Nを回避する。また、こもり音発生域回避手段86は、シフトポジション判定手段94により所定のポジションとしての「P」ポジションであると判定された場合には、充電状態判定手段92による判定結果に拘わらずこもり音発生域Nを回避する。
【0105】
図13は、電子制御装置80の制御作動の要部すなわちエンジン駆動に伴うこもり音の発生を適切に抑制する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。また、図14は、図13のフローチャートに示す制御作動を説明するタイムチャートであって、暗騒音レベルが低下したためにこもり音発生域Nを回避する場合の一例である。
【0106】
図13において、先ず、前記シフトポジション判定手段94に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S1において、シフトレバー52のシフトポジションPSHを表す信号に基づいてシフトレバー52の位置が「D」ポジションへ切り換えられているか否かが判定される。
【0107】
前記S1の判断が肯定される場合は前記充電状態判定手段92に対応するS2において、蓄電装置56の充電状態SOCが所定容量Aを超えているか否かが判定される。例えば、第2電動機M2が十分なアシストトルクを出せる程電力があるか否かが判断される。
【0108】
前記S1の判断が否定されるか、或いは前記S2の判断が否定される場合は前記こもり音発生域回避手段86、前記有段変速制御手段82、および前記ハイブリッド制御手段84に対応するS7において、こもり音発生域Nを回避する回避制御が行われず、システム効率に基づく通常の動作点すなわち変速機構10のシステム効率に基づくエンジントルクTEと第2電動機M2のアシストトルクTM2との分担、および自動変速部20の変速比γが設定される。これによって、燃費上、システム効率が最もよい車両状態とされる。
【0109】
前記S2の判断が肯定される場合は前記暗騒音検出手段90に対応するS3において、暗騒音の大きさが検出或いは推定される。
【0110】
次いで、前記こもり音発生域回避判断手段88に対応するS4において、例えば予め実験的に求められて記憶されたこもり音マップから実際の車両状態に基づいてこもり音の大きさが推定されると共に、予め実験的に求められて定められた判断基準に従ってその推定されたこもり音が前記S3にて検出或いは推定された暗騒音と比較して問題になる大きさであるか否かが判断され、例えばこもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさであることが所定時間T連続したか否かに基づいてこもり音発生域Nの回避が必要であるか否かが判断される。
【0111】
前記S4の判断が肯定される場合は前記こもり音発生域回避手段86に対応するS5において、システム効率に基づいて決定されているエンジントルクTEと第2電動機M2のアシストトルクTM2との分担が変更されてこもり音発生域Nが回避される。例えば、図11に示すようにアクセル開度Accに基づいて決定される変速機構10の総トルク(トータルトルク)に対して、システム効率に基づいて設定されたエンジントルクTEの分担分が減らされると共に、減らされたエンジントルクTEの分担分が補われるように第2電動機M2のアシストトルクTM2の分担分が増加させられる。これによって、こもり音が暗騒音に対して目立たなくされる。このとき、例えば最適燃費率が維持されるようにエンジン8の動作点が図10に示す如く動作点Aから動作点Bに変更されてこもり音発生域Nが回避されても良い。これによって、車両の駆動に必要なトルクがそのまま確保されると共に、エンジン8の効率の低下ができるだけ避けられる。
【0112】
一方で、前記S4の判断が否定される場合は前記こもり音発生域回避手段86、前記有段変速制御手段82、および前記ハイブリッド制御手段84に対応するS6において、こもり音発生域Nであったとしてもそのこもり音発生域Nを回避する回避制御が行われず、システム効率に基づく通常の動作点すなわち変速機構10のシステム効率に基づくエンジントルクTEと第2電動機M2のアシストトルクTM2との分担、および自動変速部20の変速比γが設定される。これによって、燃費上、システム効率が最もよい車両状態とされる。
【0113】
図14において、t1時点以降にて暗騒音が小さくなり、t2時点にてこもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさであると判定され、その判定が判定期間T連続したt3時点にてシステム効率に基づくエンジントルクTEと第2電動機M2のアシストトルクTM2との分担が変更されたことを示している。このt3時点では、例えばエンジントルクTEを低下させ、且つその低下分を補うように第2電動機M2のアシストトルクTM2を増加させてこもり音発生域Nを回避するようにエンジントルクTEと第2電動機M2のアシストトルクTM2との分担が変更させられる。t4時点はトルク分担の切換えが完了したことを示している。
【0114】
上述のように、本実施例によれば、システム効率に基づいて決定された車両状態がこもり音発生域Nにある場合は、システム効率に基づいて決定されたエンジントルクTEと第2電動機M2のアシストトルクTM2との分担がこもり音発生域回避手段86により変更されてこもり音発生域Nが回避されるので、特定のエンジン8の動作点において顕著になるこもり音の発生を抑制することが可能になる、すなわちエンジン駆動に伴うこもり音の発生を抑制することが可能になる。
【0115】
また、本実施例によれば、システム効率に基づいて決定された車両状態がこもり音発生域Nにある場合は、こもり音発生域回避手段86によって自動変速部20の変速比γが変更されることによりエンジン8の動作点が変更されてこもり音発生域Nが回避されるので、エンジン駆動に伴うこもり音の発生を抑制することが可能になる。
【0116】
また、本実施例によれば、こもり音発生域回避判断手段88によりこもり音発生域Nの回避が必要であると判断された場合に、こもり音発生域回避手段86によりそのこもり音発生域Nが回避されるので、一律にこもり音発生域Nが回避される場合に比較してシステム効率の悪化が抑制され、運転性や燃費性が向上する。
【0117】
また、本実施例によれば、こもり音発生域回避判断手段88によりこもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさであるか否かに基づいてこもり音発生域Nの回避が必要であるか否かが判断されるので、こもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさである場合のみこもり音発生域Nが回避されてシステム効率の悪化が抑制され、運転性や燃費性が向上する。
【0118】
また、本実施例によれば、こもり音発生域回避判断手段88によりこもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさであることが所定時間連続したときにこもり音発生域Nの回避が必要であると判断されるので、こもり音発生域Nの回避制御とその回避制御の解除とが短時間に繰り返されることが防止されて車両状態が安定する。
【0119】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において実施例相互に共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0120】
前述の実施例では、システム効率に基づいて決定されているエンジントルクTEと第2電動機M2のアシストトルクTM2との分担を変更してこもり音発生域Nを回避する回避制御を説明したが、本実施例では、こもり音発生域回避手段86は、等パワーを維持しながらエンジン8の動作点を変更してこもり音発生域Nを回避する。
【0121】
図15は、前記図9の燃費マップであって、曲線Pはエンジン8における等パワー線Pの一例であり、点Aはエンジン8の燃費効率(最適燃費率)に基づいて設定されたエンジン回転速度NEとエンジントルクTEとで規定されるエンジン8の動作点の一例であり、丸囲み斜線部Nはこもり音発生域Nの一例である。
【0122】
そして、上記図15に示すように、システム効率に基づいて設定されたエンジン8の動作点がこもり音発生域N内となる場合には、エンジン回転速度NEとエンジントルクTEとを変化させて動作点Aから等パワー線P上の動作点Bにエンジン8の動作点を変更し、こもり音発生域Nを回避する。これにより、必要なパワーを維持した状態でこもり音発生域Nを回避することが可能となる。
【0123】
エンジン8の動作点を変更する具体的な手段については、前述の実施例と同様に、こもり音発生域回避手段86は、例えば差動部11の変速比γ0を変化させてエンジン8の動作点を変更したり、自動変速部20の変速比γを変化させることによりトータル変速比γTを変化させてエンジン8の動作点を変更する。
【0124】
図16は、電子制御装置80の制御作動の要部すなわちエンジン駆動に伴うこもり音の発生を適切に抑制する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。この図16のフローチャートは、前記図13のフローチャートに相当する別の実施例であって、図13のフローチャート中のS5乃至S7がS5’乃至S7’に変更された点が主に相違する。以下、その相違する点であるS5’乃至S7’について説明する。また、図17は、図16のフローチャートに示す制御作動を説明するタイムチャートであって、暗騒音レベルが低下したためにこもり音発生域Nを回避する場合の一例であり、前記図14のタイムチャートに相当する別の実施例である。
【0125】
図16において、前記S1の判断が否定されるか、或いは前記S2の判断が否定される場合は前記こもり音発生域回避手段86、前記有段変速制御手段82、および前記ハイブリッド制御手段84に対応するS7’において、こもり音発生域Nを回避する回避制御が行われず、システム効率に基づく通常の動作点すなわち変速機構10のシステム効率に基づくエンジン8の動作点、第2電動機M2の動作点、および自動変速部20の変速比γが設定される。これによって、燃費上、システム効率が最もよい車両状態とされる。
【0126】
前記S4の判断が肯定される場合は前記こもり音発生域回避手段86、前記有段変速制御手段82、および前記ハイブリッド制御手段84に対応するS5’において、例えば図15の動作点Aに示すようにエンジン8の動作点がこもり音発生域Nにある場合は、エンジン8の動作点が動作点Aから動作点Bの如く変更されてこもり音発生域Nが回避される。これによって、こもり音が暗騒音に対して目立たなくされる。
【0127】
一方で、前記S4の判断が否定される場合は前記こもり音発生域回避手段86、前記有段変速制御手段82、および前記ハイブリッド制御手段84に対応するS6’において、こもり音発生域Nであったとしてもそのこもり音発生域Nを回避する回避制御が行われず、システム効率に基づく通常の動作点すなわち変速機構10のシステム効率に基づくエンジン8の動作点、第2電動機M2の動作点、および自動変速部20の変速比γが設定される。これによって、燃費上、システム効率が最もよい車両状態とされる。
【0128】
図17において、t1時点以降にて暗騒音が小さくなり、t2時点にてこもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさであると判定され、その判定が判定期間T連続したt3時点にて動作点が変更されたことを示している。このt3時点では、こもり音発生域Nを回避するように例えば自動変速部20の1→2アップシフトを実行することによりエンジン回転速度NEを低下させてエンジン8の動作点が変更させられる。t4時点はエンジン8の動作点の変更が完了したことを示している。或いはまた、自動変速部20をアップシフトする以外に、こもり音発生域Nを回避するように差動部11の変速比γ0を変更することによりエンジン回転速度NEを低下させてエンジン8の動作点を変更しても良い。また、この実施例では、アップシフトを実行したがダウンシフトを実行してこもり音発生域Nを回避しても良く、この場合にはエンジン回転速度NEが増大してエンジンノイズ(暗騒音)が高くなりこもり音が一層目立たなくなる副次的な効果も得られる。
【0129】
上述のように、本実施例によれば、前述の実施例に加えて、システム効率に基づいて決定されたエンジン8の動作点がこもり音発生域Nにある場合は、こもり音発生域回避手段86により等パワーが維持されるようにエンジン8の動作点が変更されてこもり音発生域Nが回避されるので、必要なパワーを維持した状態でエンジン駆動に伴うこもり音の発生を抑制することが可能になる。
【実施例3】
【0130】
前述の実施例では、図15に示すように燃費マップ上において予め定められたこもり音発生域Nを回避する回避制御を説明したが、本実施例では、変速マップ上において予め定められたこもり音発生域Nを回避する。
【0131】
図18は、前記図8の変速マップであって、丸囲み斜線部Nはこもり音発生域Nの一例であり、破線はこもり音発生域Nを回避するためにシステム効率に基づく通常の3→4アップシフト線を変更したこもり音回避用3→4アップシフト線であり、二点鎖線はこもり音発生域Nを回避するためにシステム効率に基づく通常の4→3ダウンシフト線を変更したこもり音回避用4→3ダウンシフト線である。尚、これらアップシフト線およびダウンシフト線は変速を行うための変速点の連なりでもある。
【0132】
前記こもり音発生域回避手段86は、実際の車速Vおよび自動変速部20の要求出力トルクTOUTで示される車両状態がこもり音発生域Nにある場合には、通常のアップシフト線およびダウンシフト線をこもり音回避用アップシフト線およびこもり音回避用ダウンシフト線に変更することにより、自動変速部20の変速比γを変更する。
【0133】
前述の実施例では、自動変速部20の変速比γを変更することによりエンジン8の動作点を変更してこもり音発生域Nを回避したが、ここではエンジン8の動作点を略一定に維持したままこもり音発生域Nを回避する場合について以下に詳しく説明する。
【0134】
例えば、前記こもり音発生域回避手段86は、前記動作点変更指令Bを前記有段変速制御手段82へ出力することに加えて、第1電動機M1を制御することによりエンジン回転速度NEを略一定に維持させつつ第1電動機回転速度NM1を変化させてエンジン8の動作点を維持する動作点維持指令Cを前記ハイブリッド制御手段84へ出力する。つまり、この動作点維持指令Cはトータル変速比γTがそのまま維持されるように自動変速部20の変速比γの変化に合わせて差動部11の変速比γ0を変化させてエンジン8をシステム効率に基づく動作点に維持するものである。但し、変速機構10全体としてはシステム効率最適からはずれる。
【0135】
これによって、自動変速部20の変速比γおよび差動部11の変速比γ0がぞれぞれ変化するので、変速機構10の共振系が変化して共振域が避けられ、エンジン8の動作点を変化させずともこもり音発生域Nを回避することができる。尚、前述の実施例のようにエンジン8の動作点を変化させることによりこもり音発生域Nを回避する場合においても、自動変速部20の変速比γおよび差動部11の変速比γ0の少なくとも一方が変化させられるので、自動変速部20および差動部11の少なくとも一方の共振系が変化して共振域が避けられ、こもり音発生域Nが回避されると見ることもできる。
【0136】
ところで、こもり音発生域Nの回避制御中に前記こもり音発生域回避判断手段88によりこもり音発生域Nの回避が必要でないと判断された場合には、通常のアップシフト線およびダウンシフト線への復帰に伴い例えばダウンシフトが実行されて急な減速が発生することによる違和感を回避するように、通常のアップシフト線およびダウンシフト線へ復帰させたとしても自動変速部20の変速比γが変化しないときに(つまり自動変速部20の変速が行われないときに)、こもり音回避用アップシフト線およびこもり音回避用ダウンシフト線を通常のアップシフト線およびダウンシフト線へ復帰させる。
【0137】
図19は、電子制御装置80の制御作動の要部すなわちエンジン駆動に伴うこもり音の発生を適切に抑制する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。この図19のフローチャートは、前記図13のフローチャートに相当する別の実施例であって、図13のフローチャート中のS5乃至S7がS5”乃至S7”に変更された点が主に相違する。以下、その相違する点であるS5”乃至S7”について説明する。また、図20は、図19のフローチャートに示す制御作動を説明するタイムチャートであって、暗騒音レベルが上昇したためにこもり音発生域Nの回避制御を解除する場合の一例である。
【0138】
図19において、前記S1の判断が否定されるか、或いは前記S2の判断が否定される場合は前記こもり音発生域回避手段86、前記有段変速制御手段82、および前記ハイブリッド制御手段84に対応するS7”において、こもり音発生域Nを回避する回避制御が行われず、通常の変速点すなわち変速機構10のシステム効率に基づく通常のアップシフト線および通常のダウンシフト線が設定される。これによって、燃費上、システム効率が最もよい車両状態とされる。
【0139】
また、前記S4の判断が肯定される場合は前記こもり音発生域回避手段86、前記有段変速制御手段82、および前記ハイブリッド制御手段84に対応するS5”において、例えば図18に示すように車両状態がこもり音発生域Nにある場合は、通常のアップシフト線およびダウンシフト線がこもり音回避用アップシフト線およびこもり音回避用ダウンシフト線に変更されることにより自動変速部20の変速比γが変更されてこもり音発生域Nが回避される。
【0140】
一方で、前記S4の判断が否定される場合は前記こもり音発生域回避手段86、前記有段変速制御手段82、および前記ハイブリッド制御手段84に対応するS6”において、こもり音発生域Nであったとしてもそのこもり音発生域Nを回避する回避制御が行われず、通常の変速点すなわち変速機構10のシステム効率に基づく通常のアップシフト線および通常のダウンシフト線が設定される。これによって、燃費上、システム効率が最もよい車両状態とされる。
【0141】
図20において、t1時点以降にて暗騒音が大きくなり、t2時点にてこもり音が暗騒音と比較して問題とされない大きさであると判定され、その判定が判定期間T連続したt3時点にて自動変速部20の変速比γが変化しないときに(変速段非使用)、こもり音回避用変速線(変速パターン)が通常の変速線へ復帰させられたことを示している。このt3時点では、自動変速部20の変速比γが変化しないときに通常の変速線へ復帰させられたので、自動変速機20の変速は実行されない。或いはまた、t3時点にて自動変速部20の変速比γが変化するときには(変速段使用中)、このt3時点ではこもり音回避用変速線から通常の変速線へは復帰させられないことを示している。この場合には、t4時点にて変速が行われた後の自動変速部20の変速比γが変化しないと推定されるときにはt5時点に示すようにこもり音回避用変速線が通常の変速線へ復帰させられる。尚、t4時点乃至t5時点の時間は、t4時点における変速指令に対して変速が完了するまでの時間を考慮したものである。このように、自動変速部20の変速比γが変化しないときにこもり音回避用変速線が通常の変速線へ復帰させられることにより、特にダウンシフトが実行されて急な減速が発生する違和感を回避することができる。
【0142】
上述のように、本実施例によれば、前述の実施例に加えて、システム効率に基づいて決定された車両状態がこもり音発生域Nにある場合は、こもり音発生域回避手段86により自動変速部20の変速比γが変更されてこもり音発生域Nが回避されるので、すなわち変速機構10の共振系が変化させられて共振域が避けられるので、特定の自動変速部20の変速比γ或いは特定のエンジン8の動作点において顕著になるこもり音の発生を抑制することが可能になる。
【0143】
また、本実施例によれば、こもり音発生域回避手段86により通常時の変速線がこもり音回避用変速線へ変更されることにより自動変速部20の変速比γが変更されるので、こもり音発生域Nを簡単に回避することができる。
【0144】
また、本実施例によれば、変速線を変更することにより自動変速部20の変速比γが変化しないときにこもり音発生域回避手段86によりこもり音回避用変速線が通常の変速線へ復帰させられるので、例えば通常の変速線への復帰に伴いダウンシフトが実行されて急な減速が発生することによる違和感を回避することができる。
【実施例4】
【0145】
図21は本発明の他の実施例における変速機構100の構成を説明する骨子図、図22はその変速機構100の変速作動に用いられる油圧式摩擦係合装置の作動の組み合わせを示す係合表、図23はその変速機構100の変速作動を説明する共線図である。
【0146】
変速機構100は、前述の実施例と同様に第1電動機M1、動力分配機構16、および第2電動機M2を備えている差動部11と、その差動部11と出力軸22との間で伝達部材18を介して直列に連結されている前進3段の自動変速部102とを備えている。動力分配機構16は、例えば「0.418」程度の所定のギヤ比ρ1を有するシングルピニオン型の第1遊星歯車装置24を有している。自動変速部102は、例えば「0.532」程度の所定のギヤ比ρ2を有するシングルピニオン型の第2遊星歯車装置26と例えば「0.418」程度の所定のギヤ比ρ3を有するシングルピニオン型の第3遊星歯車装置28とを備えている。第2遊星歯車装置26の第2サンギヤS2と第3遊星歯車装置28の第3サンギヤS3とが一体的に連結されて第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第2遊星歯車装置26の第2キャリヤCA2と第3遊星歯車装置28の第3リングギヤR3とが一体的に連結されて出力軸22に連結され、第2リングギヤR2は第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結され、第3キャリヤCA3は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結されている。
【0147】
このように、自動変速部102内と差動部11(伝達部材18)とは自動変速部102の変速段を成立させるために用いられる第1クラッチC1または第2クラッチC2を介して選択的に連結されている。言い換えれば、第1クラッチC1および第2クラッチC2は、伝達部材18と自動変速部102との間の動力伝達経路すなわち差動部11(伝達部材18)から駆動輪34への動力伝達経路を、その動力伝達経路の動力伝達を可能とする動力伝達可能状態と、その動力伝達経路の動力伝達を遮断する動力伝達遮断状態とに選択的に切り換える係合装置として機能している。つまり、第1クラッチC1および第2クラッチC2の少なくとの一方が係合されることで上記動力伝達経路が動力伝達可能状態とされ、或いは第1クラッチC1および第2クラッチC2が解放されることで上記動力伝達経路が動力伝達遮断状態とされる。
【0148】
また、この自動変速部102は、解放側係合装置の解放と係合側係合装置の係合とによりクラッチツウクラッチ変速が実行されて各ギヤ段(変速段)が選択的に成立させられることにより、略等比的に変化する変速比γ(=伝達部材回転速度N18/出力軸22の回転速度NOUT)が各ギヤ段毎に得られる。例えば、図22の係合作動表に示されるように、第1クラッチC1および第2ブレーキB2の係合により変速比γ1が最大値例えば「2.804」程度である第1速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1および第1ブレーキB1の係合により変速比γ2が第1速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.531」程度である第2速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1および第2クラッチC2の係合により変速比γ3が第2速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.000」程度である第3速ギヤ段が成立させられる。また、第2クラッチC2および第2ブレーキB2の係合により変速比γRが第1速ギヤ段と第2速ギヤ段との間の値例えば「2.393」程度である後進ギヤ段(後進変速段)が成立させられる。また、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、および第2ブレーキB2の解放によりニュートラル「N」状態とされる。なお、図22の係合作動表に示されている第4速ギヤ段における自動変速部102の係合装置の係合作動は第3速ギヤ段と同じである。
【0149】
以上のように構成された変速機構100において、無段変速機として機能する差動部11と自動変速部102とで無段変速機が構成される。また、差動部11の変速比を一定となるように制御することにより、差動部11と自動変速部102とで有段変速機と同等の状態を構成することが可能とされる。
【0150】
具体的には、差動部11が無段変速機として機能し、且つ差動部11に直列の自動変速部102が有段変速機として機能することにより、自動変速部102の少なくとも1つの変速段Mに対して自動変速部102に入力される回転速度(以下、自動変速部102の入力回転速度)すなわち伝達部材18の回転速度が無段的に変化させられてその変速段Mにおいて無段的な変速比幅が得られる。したがって、変速機構100の総合変速比γTが無段階に得られ、変速機構100において無段変速機が構成される。
【0151】
例えば、図22の係合作動表に示される自動変速部102の第1速ギヤ段乃至第3速ギヤ段や後進ギヤ段の各ギヤ段に対し伝達部材回転速度N18が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって、変速機構100全体としてのトータル変速比γTが無段階に得られる。
【0152】
また、差動部11の変速比が一定となるように制御され、且つクラッチCおよびブレーキBが選択的に係合作動させられて第1速ギヤ段乃至第3速ギヤ段のいずれか或いは後進ギヤ段(後進変速段)が選択的に成立させられることにより、略等比的に変化する変速機構100のトータル変速比γTが各ギヤ段毎に得られる。したがって、変速機構100において有段変速機と同等の状態が構成される。
【0153】
例えば、差動部11の変速比γ0が「1」に固定されるように制御されると、図22の係合作動表に示されるように自動変速部102の第1速ギヤ段乃至第3速ギヤ段や後進ギヤ段の各ギヤ段に対応する変速機構100のトータル変速比γTが各ギヤ段毎に得られる。また、自動変速部102の第3速ギヤ段において差動部11の変速比γ0が「1」より小さい値例えば0.7程度に固定されるように制御されると、図22の係合作動表の第4速ギヤ段に示されるように第3速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.705」程度であるトータル変速比γTが得られる。
【0154】
図23は、差動部11と自動変速部102とから構成される変速機構100において、ギヤ段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図を示している。
【0155】
図23における自動変速部102の4本の縦線Y4、Y5、Y6、Y7は、左から順に、第4回転要素(第4要素)RE4に対応し且つ相互に連結された第2サンギヤS2および第3サンギヤS3を、第5回転要素(第5要素)RE5に対応する第3キャリヤCA3を、第6回転要素(第6要素)RE6に対応し且つ相互に連結された第2キャリヤCA2および第3リングギヤR3を、第7回転要素(第7要素)RE7に対応する第2リングギヤR2をそれぞれ表している。また、自動変速部102において第4回転要素RE4は第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第5回転要素RE5は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第6回転要素RE6は自動変速部102の出力軸22に連結され、第7回転要素RE7は第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結されている。
【0156】
自動変速部102では、差動部11において直線L0が横線X2と一致させられてエンジン回転速度NEと同じ回転速度が差動部11から第7回転要素RE7に入力されると、図23に示すように、第1クラッチC1と第2ブレーキB2とが係合させられることにより、第7回転要素RE7(R2)の回転速度を示す縦線Y7と横線X2との交点と第5回転要素RE5(CA3)の回転速度を示す縦線Y5と横線X1との交点とを通る斜めの直線L1と、出力軸22と連結された第6回転要素RE6(CA2,R3)の回転速度を示す縦線Y6との交点で第1速の出力軸22の回転速度が示される。同様に、第1クラッチC1と第1ブレーキB1とが係合させられることにより決まる斜めの直線L2と出力軸22と連結された第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6との交点で第2速の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第2クラッチC2とが係合させられることにより決まる水平な直線L3と出力軸22と連結された第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6との交点で第3速の出力軸22の回転速度が示される。
【0157】
また、差動部11において直線L0が図23に示す状態とされてエンジン回転速度NEよりも高い回転速度が差動部11から第7回転要素RE7に入力されると、図23に示すように、第1クラッチC1および第2クラッチC2が係合させられることにより決まる水平な直線L4と出力軸22と連結された第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6との交点で第4速の出力軸22の回転速度が示される。
【0158】
本実施例においても、変速機構100は差動部11と自動変速部102とから構成されるので、前述の実施例と同様の効果が得られる。
【0159】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明は実施例相互を組み合わせて実施可能であると共にその他の態様においても適用される。
【0160】
例えば、前述の実施例では、こもり音発生域回避手段86は、システム効率に基づいて決定されているエンジントルクTEと第2電動機M2のアシストトルクTM2との分担を変更してこもり音発生域Nを回避する際に、アクセル開度Accに基づいて決定される変速機構10の総トルクに対して、エンジントルクTEの分担分を減らすと共に第2電動機M2のアシストトルクTM2の分担分を増やしたが、反対に、エンジントルクTEの分担分を増やすと共に第2電動機M2のアシストトルクTM2の分担分を減らすか或いは第2電動機M2による回生を実施してそのエンジントルクTEの増分を相殺するようにしても良い。例えば、エンジントルクTEの分担分を減らすか或いは増やすかの使い分けを蓄電装置56の充電容量SOCに基づいてその充電容量SOCが比較的少ないときにはエンジントルクTEの分担分を増やして第2電動機M2による回生を実施するようにしても良い。
【0161】
また、前述の実施例では、本発明が適用される車両用駆動装置として変速機構10を例示したが、これに限らず、電気エネルギーで作動する電動機と燃料の燃焼によって作動するエンジンとを車両走行時の動力源として備え、システム効率に基づいてエンジンの動作点が決定される種々の車両用駆動装置であれば本発明は適用され得る。また、前記実施例3に限れば、少なくともエンジンと変速機とを備える種々の車両用駆動装置であれば本発明は適用され得る。
【0162】
また、前述の実施例の動力分配機構16では、第1キャリヤCA1がエンジン8に連結され、第1サンギヤS1が第1電動機M1に連結され、第1リングギヤR1が伝達部材18に連結されていたが、それらの連結関係は、必ずしもそれに限定されるものではなく、エンジン8、第1電動機M1、伝達部材18は、第1遊星歯車装置24の3要素CA1、S1、R1のうちのいずれと連結されていても差し支えない。
【0163】
また、前述の実施例では、エンジン8は入力軸14と直結されていたが、例えばギヤ、ベルト等を介して作動的に連結されておればよく、共通の軸心上に配置される必要もない。
【0164】
また、前述の実施例では、第1電動機M1および第2電動機M2は、入力軸14に同心に配置されて第1電動機M1は第1サンギヤS1に連結され第2電動機M2は伝達部材18に連結されていたが、必ずしもそのように配置される必要はなく、例えばギヤ、ベルト、減速機等を介して作動的に第1電動機M1は第1サンギヤS1に連結され、第2電動機M2は伝達部材18に連結されてもよい。
【0165】
また、前述の実施例では、第1クラッチC1や第2クラッチC2などの油圧式摩擦係合装置は、パウダー(磁粉)クラッチ、電磁クラッチ、噛み合い型のドグクラッチなどの磁粉式、電磁式、機械式係合装置から構成されていてもよい。例えば電磁クラッチであるような場合には、油圧制御回路70は油路を切り換える弁装置ではなく電磁クラッチへの電気的な指令信号回路を切り換えるスイッチング装置や電磁切換装置等により構成される。
【0166】
また、前述の実施例では、差動部11すなわち動力分配機構16の出力部材である伝達部材18と駆動輪34との間の動力伝達経路に、自動変速部20、102が介挿されていたが、例えば自動変速機の一種である無段変速機(CVT)、手動変速機としてよく知られた常時噛合式平行2軸型ではあるがセレクトシリンダおよびシフトシリンダによりギヤ段が自動的に切り換えられることが可能な自動変速機、手動操作により変速段が切り換えられる同期噛み合い式の手動変速機等の他の形式の動力伝達部(変速機)が設けられていてもよい。このようにしても、本発明は適用され得る。
【0167】
また、前述の実施例では、自動変速部20、102は伝達部材18を介して差動部11と直列に連結されていたが、入力軸14と平行にカウンタ軸が設けられそのカウンタ軸上に同心に自動変速部20、102が配設されてもよい。この場合には、差動部11と自動変速部20、102とは、例えば伝達部材18としてのカウンタギヤ対、スプロケットおよびチェーンで構成される1組の伝達部材などを介して動力伝達可能に連結される。
【0168】
また、前述の実施例の差動機構としての動力分配機構16は、例えばエンジンによって回転駆動されるピニオンと、そのピニオンに噛み合う一対のかさ歯車が第1電動機M1および第2電動機M2に作動的に連結された差動歯車装置であってもよい。
【0169】
また、前述の実施例の動力分配機構16は、1組の遊星歯車装置から構成されていたが、2以上の遊星歯車装置から構成されて、非差動状態(定変速状態)では3段以上の変速機として機能するものであってもよい。また、その遊星歯車装置はシングルピニオン型に限られたものではなくダブルピニオン型の遊星歯車装置であってもよい。
【0170】
また、前述の実施例のシフト操作装置50は、複数種類のシフトポジションPSHを選択するために操作されるシフトレバー52を備えていたが、そのシフトレバー52に替えて、例えば押しボタン式のスイッチやスライド式スイッチ等の複数種類のシフトポジションPSHを選択可能なスイッチ、或いは手動操作に因らず運転者の音声に反応して複数種類のシフトポジションPSHを切り換えられる装置や足の操作により複数種類のシフトポジションPSHを切り換えられる装置等であってもよい。また、シフトレバー52が「M」ポジションへ操作されることにより、変速レンジが設定されるものであったが変速段が設定されることすなわち各変速レンジの最高速変速段が変速段として設定されてもよい。この場合、自動変速部20、102では変速段が切り換えられて変速が実行される。例えば、シフトレバー52が「M」ポジションにおけるアップシフト位置「+」またはダウンシフト位置「−」へ手動操作されると、自動変速部20では第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段の何れかがシフトレバー52の操作に応じて設定される。
【0171】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0172】
【図1】本発明の一実施例であるハイブリッド車両の駆動装置の構成を説明する骨子図である。
【図2】図1の駆動装置の変速作動に用いられる油圧式摩擦係合装置の作動の組み合わせを説明する作動図表である。
【図3】図1の駆動装置における各ギヤ段の相対的回転速度を説明する共線図である。
【図4】図1の駆動装置に設けられた電子制御装置の入出力信号を説明する図である。
【図5】油圧制御回路のうちクラッチC1、C2、およびブレーキB1〜B3の各油圧アクチュエータの作動を制御するリニアソレノイドバルブに関する回路図である。
【図6】シフトレバーを備えた複数種類のシフトポジションを選択するために操作されるシフト操作装置の一例である。
【図7】図4の電子制御装置の制御作動の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図8】駆動装置の変速制御において用いられる変速マップの一例と、エンジン走行とモータ走行とを切り換える駆動力源切換制御において用いられる駆動力源マップの一例とを示す図であって、それぞれの関係を示す図でもある。
【図9】破線はエンジンの最適燃費率曲線であって燃費マップの一例である。
【図10】図9の燃費マップであって、曲線Pはエンジンにおける等パワー線の一例であり、点Aはエンジンの燃費効率に基づいて設定されたエンジンの動作点の一例であり、丸囲み斜線部Nはこもり音発生域の一例である。また、点Bはこもり音発生域を回避するために最適燃費率に沿って変更したエンジンの動作点の一例である。
【図11】アクセル開度に基づいて決定される変速機構の総トルクの一例を示す図であって、エンジントルクと第2電動機によるアシストトルクとの分担の変更を説明する図でもある。
【図12】こもり音発生域の回避が必要であるか否かを判断する一例として、こもり音と暗騒音とを比較する場合を説明する図である。
【図13】図4の電子制御装置の制御作動すなわちエンジン駆動に伴うこもり音の発生を適切に抑制する為の制御作動を説明するフローチャートである。
【図14】図13のフローチャートに示す制御作動を説明するタイムチャートであって、暗騒音レベルが低下したためにこもり音発生域を回避する場合の一例である。
【図15】図9の燃費マップであって、曲線Pはエンジンにおける等パワー線の一例であり、点Aはエンジンの燃費効率に基づいて設定されたエンジンの動作点の一例であり、丸囲み斜線部Nはこもり音発生域Nの一例である。また、点Bはこもり音発生域を回避するために等パワー線に沿って変更したエンジンの動作点の一例である。
【図16】図4の電子制御装置の制御作動すなわちエンジン駆動に伴うこもり音の発生を適切に抑制する為の制御作動を説明するフローチャートであって、図13に相当する別の実施例である。
【図17】図16のフローチャートに示す制御作動を説明するタイムチャートであって、暗騒音レベルが低下したためにこもり音発生域を回避する場合の一例であり、図14に相当する別の実施例である。
【図18】図8の変速マップであって、丸囲み斜線部Nはこもり音発生域Nの一例であり、破線は通常の3→4アップシフト線を変更したこもり音回避用3→4アップシフト線であり、二点鎖線は通常の4→3ダウンシフト線を変更したこもり音回避用4→3ダウンシフト線である。
【図19】図4の電子制御装置の制御作動すなわちエンジン駆動に伴うこもり音の発生を適切に抑制する為の制御作動を説明するフローチャートであって、図13に相当する別の実施例である。
【図20】図19のフローチャートに示す制御作動を説明するタイムチャートであって、暗騒音レベルが上昇したためにこもり音発生域の回避制御を解除する場合の一例であり、図14に相当する別の実施例である。
【図21】本発明の他の実施例におけるハイブリッド車両の駆動装置の構成を説明する骨子図であって、図1に相当する図である。
【図22】図21の駆動装置の変速作動に用いられる油圧式摩擦係合装置の作動の組み合わせを説明する作動図表であって、図2に相当する図である。
【図23】図21の駆動装置における各ギヤ段の相対的回転速度を説明する共線図であって、図3に相当する図である。
【符号の説明】
【0173】
8:エンジン
10、70:変速機構(車両用駆動装置)
20:自動変速部(変速機、自動変速機)
80:電子制御装置(制御装置)
88:こもり音発生域回避判断手段
M1:第1電動機
M2:第2電動機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと変速機とを備える車両用駆動装置において、該車両用駆動装置の特性に基づいて該変速機の変速比が決定される車両用駆動装置の制御装置であって、
エンジン駆動に伴うこもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさである場合に、前記変速機の変速比を変更して該こもり音発生域を回避することを特徴とする車両用駆動装置の制御装置。
【請求項2】
前記変速機は、予め定められた変速マップに従って変速が実行される自動変速機であり、
前記自動変速機の各変速を判断するために前記変速マップが有している通常時の変速点を変更することにより該自動変速機の変速比を変更して前記こもり音発生域を回避するものである請求項1の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項3】
変速点を変更することにより前記自動変速機の変速比が変化しないときに、前記変更した変速点を前記通常時の変速点へ復帰させるものである請求項2の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項4】
エンジン駆動に伴うこもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさであるか否かに基づいて、こもり音発生域の回避が必要であるか否かを判断するこもり音発生域回避判断手段を備え、
該こもり音発生域回避判断手段によりこもり音発生域の回避が必要であると判断された場合に、前記変速機の変速比を変更して該こもり音発生域を回避するものである請求項1乃至3のいずれかの車両用駆動装置の制御装置。
【請求項5】
前記こもり音発生域回避判断手段は、前記こもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさであることが所定時間連続したときに、前記こもり音発生域の回避が必要であると判断するものである請求項4の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項6】
エンジンと電動機とを備える車両用駆動装置において、該車両用駆動装置の特性に基づいて該エンジンの出力トルクと該電動機の出力トルクとの分担が決定される車両用駆動装置の制御装置であって、
エンジン駆動に伴うこもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさである場合に、前記エンジンの出力トルクと前記電動機の出力トルクとの分担を変更して該こもり音発生域を回避することを特徴とする車両用駆動装置の制御装置。
【請求項7】
エンジン駆動に伴うこもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさであるか否かに基づいて、こもり音発生域の回避が必要であるか否かを判断するこもり音発生域回避判断手段を備え、
該こもり音発生域回避判断手段によりこもり音発生域の回避が必要であると判断された場合に、前記エンジンの出力トルクと前記電動機の出力トルクとの分担を変更して該こもり音発生域を回避するものである請求項6の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項8】
前記こもり音発生域回避判断手段は、前記こもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさであることが所定時間連続したときに、前記こもり音発生域の回避が必要であると判断するものである請求項7の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項9】
エンジンと電動機と変速機とを備える車両用駆動装置において、該車両用駆動装置の特性に基づいて該エンジンの動作点、該電動機の動作点、および該変速機の変速比が決定される車両用駆動装置の制御装置であって、
車両状態がエンジン駆動に伴うこもり音発生域にある場合は、前記変速機の変速比を変更して該こもり音発生域を回避することを特徴とする車両用駆動装置の制御装置。
【請求項10】
前記変速機は、予め定められた変速マップに従って変速が実行される自動変速機であり、
前記自動変速機の各変速を判断するために前記変速マップが有している通常時の変速点を変更することにより該自動変速機の変速比を変更して前記こもり音発生域を回避するものである請求項9の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項11】
変速点を変更することにより前記自動変速機の変速比が変化しないときに、前記変更した変速点を前記通常時の変速点へ復帰させるものである請求項10の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項12】
前記こもり音発生域の回避が必要であるか否かを判断するこもり音発生域回避判断手段を備え、
該こもり音発生域回避判断手段によりこもり音発生域の回避が必要であると判断された場合に該こもり音発生域を回避するものである請求項9乃至11のいずれかの車両用駆動装置の制御装置。
【請求項13】
前記こもり音発生域回避判断手段は、エンジン駆動に伴うこもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさであるか否かに基づいて、前記こもり音発生域の回避が必要であるか否かを判断するものである請求項12の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項14】
前記こもり音発生域回避判断手段は、前記こもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさであることが所定時間連続したときに、前記こもり音発生域の回避が必要であると判断するものである請求項13の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項1】
エンジンと変速機とを備える車両用駆動装置において、該車両用駆動装置の特性に基づいて該変速機の変速比が決定される車両用駆動装置の制御装置であって、
エンジン駆動に伴うこもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさである場合に、前記変速機の変速比を変更して該こもり音発生域を回避することを特徴とする車両用駆動装置の制御装置。
【請求項2】
前記変速機は、予め定められた変速マップに従って変速が実行される自動変速機であり、
前記自動変速機の各変速を判断するために前記変速マップが有している通常時の変速点を変更することにより該自動変速機の変速比を変更して前記こもり音発生域を回避するものである請求項1の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項3】
変速点を変更することにより前記自動変速機の変速比が変化しないときに、前記変更した変速点を前記通常時の変速点へ復帰させるものである請求項2の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項4】
エンジン駆動に伴うこもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさであるか否かに基づいて、こもり音発生域の回避が必要であるか否かを判断するこもり音発生域回避判断手段を備え、
該こもり音発生域回避判断手段によりこもり音発生域の回避が必要であると判断された場合に、前記変速機の変速比を変更して該こもり音発生域を回避するものである請求項1乃至3のいずれかの車両用駆動装置の制御装置。
【請求項5】
前記こもり音発生域回避判断手段は、前記こもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさであることが所定時間連続したときに、前記こもり音発生域の回避が必要であると判断するものである請求項4の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項6】
エンジンと電動機とを備える車両用駆動装置において、該車両用駆動装置の特性に基づいて該エンジンの出力トルクと該電動機の出力トルクとの分担が決定される車両用駆動装置の制御装置であって、
エンジン駆動に伴うこもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさである場合に、前記エンジンの出力トルクと前記電動機の出力トルクとの分担を変更して該こもり音発生域を回避することを特徴とする車両用駆動装置の制御装置。
【請求項7】
エンジン駆動に伴うこもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさであるか否かに基づいて、こもり音発生域の回避が必要であるか否かを判断するこもり音発生域回避判断手段を備え、
該こもり音発生域回避判断手段によりこもり音発生域の回避が必要であると判断された場合に、前記エンジンの出力トルクと前記電動機の出力トルクとの分担を変更して該こもり音発生域を回避するものである請求項6の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項8】
前記こもり音発生域回避判断手段は、前記こもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさであることが所定時間連続したときに、前記こもり音発生域の回避が必要であると判断するものである請求項7の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項9】
エンジンと電動機と変速機とを備える車両用駆動装置において、該車両用駆動装置の特性に基づいて該エンジンの動作点、該電動機の動作点、および該変速機の変速比が決定される車両用駆動装置の制御装置であって、
車両状態がエンジン駆動に伴うこもり音発生域にある場合は、前記変速機の変速比を変更して該こもり音発生域を回避することを特徴とする車両用駆動装置の制御装置。
【請求項10】
前記変速機は、予め定められた変速マップに従って変速が実行される自動変速機であり、
前記自動変速機の各変速を判断するために前記変速マップが有している通常時の変速点を変更することにより該自動変速機の変速比を変更して前記こもり音発生域を回避するものである請求項9の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項11】
変速点を変更することにより前記自動変速機の変速比が変化しないときに、前記変更した変速点を前記通常時の変速点へ復帰させるものである請求項10の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項12】
前記こもり音発生域の回避が必要であるか否かを判断するこもり音発生域回避判断手段を備え、
該こもり音発生域回避判断手段によりこもり音発生域の回避が必要であると判断された場合に該こもり音発生域を回避するものである請求項9乃至11のいずれかの車両用駆動装置の制御装置。
【請求項13】
前記こもり音発生域回避判断手段は、エンジン駆動に伴うこもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさであるか否かに基づいて、前記こもり音発生域の回避が必要であるか否かを判断するものである請求項12の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項14】
前記こもり音発生域回避判断手段は、前記こもり音が暗騒音と比較して問題になる大きさであることが所定時間連続したときに、前記こもり音発生域の回避が必要であると判断するものである請求項13の車両用駆動装置の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2008−144859(P2008−144859A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−332634(P2006−332634)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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