車両用駆動装置
【課題】エンジンと流体伝動装置と電動機とを備えた車両用駆動装置であって、その車両用駆動装置の軸方向全長を短くすることができる車両用駆動装置を提供する。
【解決手段】エンジン10とトルクコンバータ14とがそれぞれ第1軸心RC1(一軸心)まわりに回転するように配設されている一方で、電動機MGは第1軸心RC1とは異なる回転軸心を有して配設されており、電動機MGは、トルクコンバータケース14dに対して第1軸心RC1まわりに相対回転不能に嵌合された電動機連結用回転要素66を介してそのトルクコンバータケース14dに連結されている。従って、エンジン10とトルクコンバータ14と電動機MGとが第1軸心RC1上に直列に配設される場合と比較して、駆動装置8の軸方向全長を短くすることができる。そのため、例えばFF型のエンジン10が横置きにされる車両6において駆動装置8を搭載することが容易になる。
【解決手段】エンジン10とトルクコンバータ14とがそれぞれ第1軸心RC1(一軸心)まわりに回転するように配設されている一方で、電動機MGは第1軸心RC1とは異なる回転軸心を有して配設されており、電動機MGは、トルクコンバータケース14dに対して第1軸心RC1まわりに相対回転不能に嵌合された電動機連結用回転要素66を介してそのトルクコンバータケース14dに連結されている。従って、エンジン10とトルクコンバータ14と電動機MGとが第1軸心RC1上に直列に配設される場合と比較して、駆動装置8の軸方向全長を短くすることができる。そのため、例えばFF型のエンジン10が横置きにされる車両6において駆動装置8を搭載することが容易になる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンと電動機とを備えた車両用駆動装置の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
走行用の駆動力源としてエンジンと電動機とを備えた車両用駆動装置がよく知られている。例えば、特許文献1に記載された車両用駆動装置がそれである。その特許文献1の車両用駆動装置では、一軸心上に、エンジン、流体伝動装置であるトルクコンバータ、及び電動機の順に直列に配設されている。そして、そのトルクコンバータの入力側回転部材であるポンプインペラにはエンジンが連結され、そのトルクコンバータの出力側回転部材であるタービンランナには電動機が連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−55186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の車両用駆動装置のように、エンジン、トルクコンバータ、及び電動機が直列に配設された車両用駆動装置の軸方向全長は、そのエンジン、トルクコンバータ、及び電動機の各々の軸方向長さが積算されるので、その車両用駆動装置の軸方向全長が長くなるという課題が考えられる。特に、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)型でエンジンが横置きにされる車両では、上記軸方向全長は車幅の制約を受けるので、上記軸方向全長が長くなるという課題は、FR(フロントエンジン・リヤドライブ)型の車両と比較して大きな課題である。なお、このような課題は未公知である。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、エンジンと流体伝動装置と電動機とを備えた車両用駆動装置であって、その車両用駆動装置の軸方向全長を短くすることができる車両用駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための本発明の要旨とするところは、(a)エンジンと、そのエンジンと駆動輪との間の動力伝達経路の一部を構成する流体伝動装置と、電動機とを備えた車両用駆動装置であって、(b)前記エンジンと前記流体伝動装置とがそれぞれ一軸心まわりに回転するように配設されている一方で、前記電動機はその一軸心とは異なる回転軸心を有して配設されており、(c)前記電動機は、前記流体伝動装置の動力伝達用回転部材に、その動力伝達用回転部材に対して前記一軸心まわりに相対回転不能に嵌合された電動機連結用回転要素を介して連結され、(d)その電動機連結用回転要素はその一軸心方向に移動不能且つその一軸心まわりに回転可能であり、(e)前記動力伝達用回転部材は、止め輪がその動力伝達用回転部材及びその電動機連結用回転要素の嵌合内周面および嵌合外周面の各々に形成された相対向する環状溝に嵌め入れられることによりその電動機連結用回転要素に対して前記一軸心方向に相対移動不能とされていることにある。
【発明の効果】
【0007】
このようにすれば、エンジンと流体伝動装置と電動機とがそれぞれ前記一軸心まわりに回転するように配設される場合、すなわち、そのエンジンと流体伝動装置と電動機とが直列に配設される場合と比較して、車両用駆動装置の軸方向全長を短くすることができる。そのため、例えばFF型のエンジンが横置きにされる車両で、車幅の制約によってエンジンと流体伝動装置と電動機とを直列に配設することが困難な場合においても、上記軸方向全長が短い前記車両用駆動装置であればその車両に搭載することが容易になる。また、通常のエンジン車両では前記流体伝動装置の入力側回転部材がボルト止め等によりエンジン出力軸に固定され、それにより流体伝動装置が前記一軸心方向に移動不能とされるところ、本発明の車両用駆動装置では前記止め輪の嵌合により上記流体伝動装置が前記一軸心方向に移動不能とされるので、上記流体伝動装置とエンジン出力軸との間でのボルト止め等が不要となる。そのため、例えば、流体伝動装置とエンジンとを切り離すことが容易にできるようになる。
【0008】
ここで、好適には、(a)前記流体伝動装置の動力伝達用回転部材によって回転駆動される油圧ポンプは、その油圧ポンプのロータが前記一軸心まわりに回転するように配設されており、(b)前記電動機連結用回転要素の前記動力伝達用回転部材に対する連結部の少なくとも一部は、その油圧ポンプが有するポンプカバーの前記一軸心まわりに設けられた内周穴に対して径方向内側に設けられている。このようにすれば、上記連結部が上記ポンプカバーに対し上記一軸心と直交する方向に重ねて設けられるので、そのように重ねて設けられない場合と比較して車両用駆動装置の軸方向全長を短くすることができる。また、上記油圧ポンプのロータが上記一軸心まわりに回転するように配設されているので、その油圧ポンプが例えば流体伝動装置等と全く異なる軸心上に配設される場合と比較して、前記流体伝動装置や上記一軸心上の軸受等と上記油圧ポンプとの間の管路を短くすることが可能である。そのため、その管路の流体抵抗を低減し、燃費悪化を防止できる。
【0009】
また、好適には、(a)前記電動機連結用回転要素は、前記電動機からの駆動力を受ける動力伝達部を備えており、(b)その動力伝達部は、前記電動機連結用回転要素を非回転部材に対して回転可能に支持するその電動機連結用回転要素の支持部と、前記ポンプカバーと、前記電動機連結用回転要素の連結部と、前記止め輪とのうちの何れか又は全てに対し、前記一軸心と直交する方向に重ねて設けられている。このようにすれば、上記電動機連結用回転要素の上記一軸心方向の長さを短くすることができ、その結果として、車両用駆動装置の軸方向全長を短くすることができる。
【0010】
また、好適には、(a)前記流体伝動装置の動力伝達用回転部材は、前記エンジンからの駆動力が入力される入力側回転部材である。このようにすれば、上記エンジンからの駆動力および前記電動機からの駆動力を上記流体伝動装置を介して前記駆動輪に伝達することができるので、前記駆動輪に伝達される駆動力を滑らかに変化させることが容易であり、例えば車両発進時などにおいて快適な走行を実現し易くなる。
【0011】
また、好適には、(a)前記流体伝動装置の入力側回転部材は、エンジン断続用クラッチを介して前記エンジンに連結されている。このようにすれば、車両走行中においてエンジンを停止することができ、燃費の向上を図ることが可能である。
【0012】
また、好適には、前記エンジン、前記流体伝動装置、及び前記電動機は、前記駆動輪に連結され且つその駆動輪を回転駆動する駆動車軸の軸方向と前記一軸心とが互いに平行になるように配設されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明が好適に適用される車両用駆動装置の構成を説明するための骨子図である。
【図2】図1の車両用駆動装置から駆動輪までの動力伝達経路を表した図である。
【図3】図1の車両用駆動装置の要部、すなわち、その車両用駆動装置が備える自動変速機、トルクコンバータ、及び電動機等を表した断面図である。
【図4】図1の車両用駆動装置が備える自動変速機において複数の変速段(ギヤ段)を成立させる際の係合要素の作動状態を説明する作動表である。
【図5】図1の車両用駆動装置が備える電動機連結用回転要素及びその近傍を詳細に説明するための断面図であって、図3のV部を抜き出した断面図である。
【図6】図5の第1スナップリングおよびその近傍を含む図5のVI部を抜き出した断面図である。
【図7】図5の第1スナップリングの外観を表した斜視図である。
【図8】図1の車両用駆動装置において、電動機連結用回転要素が1部材により構成された例を示す断面図であって、図5に示す電動機連結用回転要素とは別の例を示すための図5に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例】
【0015】
図1は、本発明が好適に適用される車両用駆動装置8(以下、「駆動装置8」という)の構成を説明するための骨子図である。図2は、駆動装置8から駆動輪28までの動力伝達経路を表した図である。図3は、駆動装置8の要部、すなわち、自動変速機18、トルクコンバータ14、及び電動機MG等を表した断面図である。なお、自動変速機18及びトルクコンバータ14等は中心線(第1軸心RC1)に対して略対称的に構成されており、図1,図3,図5,図8ではその中心線の下半分が省略されている。図1,図3,図5,図8において第1軸心RC1は本発明の一軸心に対応しており、第2軸心RC2は電動機MGの回転軸心である。
【0016】
図1に示すように、駆動装置8は、車体にボルト止め等によって取り付けられる非回転部材としてのトランスアクスルケース(T/Aケース)12(以下、「ケース12」という)を有し、そのケース12内において、エンジン10側から、エンジン断続用クラッチK0、トルクコンバータ14、油圧ポンプ16、及び自動変速機18を、第1軸心RC1上において順番にすなわち直列に備え、且つ、その第1軸心RC1と平行な第2軸心RC2まわりに回転駆動される電動機MGを備えている。更に、図2に示すように、駆動装置8は、ケース12内において、自動変速機18の出力回転部材である出力歯車88と噛み合うカウンタドリブンギヤ22、ファイナルギヤ対24、及び、そのファイナルギヤ対24を介してカウンタドリブンギヤ22に連結された差動歯車装置(ディファレンシャルギヤ)26を備えている。このように構成された駆動装置8は、例えば前輪駆動すなわちFF(フロントエンジン・フロントドライブ)型の車両6の前方に横置きされ、駆動輪28を駆動するために好適に用いられるものである。駆動装置8において、エンジン10の動力は、エンジン断続用クラッチK0が係合された場合に、エンジン10とエンジン断続用クラッチK0とを連結するエンジン連結軸32から、エンジン断続用クラッチK0、トルクコンバータ14、自動変速機18、カウンタドリブンギヤ22、ファイナルギヤ対24、差動歯車装置26、および1対の駆動車軸30等を順次介して1対の駆動輪28へ伝達される。
【0017】
エンジン10は、駆動装置8に備えられており、クランク軸が第1軸心RC1まわりに回転駆動されるガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関である。
【0018】
図3において、駆動装置8が有するエンジン連結軸32は、ケース12に対して第1軸心RC1まわりに回転可能で且つ第1軸心RC1方向に移動不能に設けられている。エンジン連結軸32は、その一端でエンジン10のクランク軸(エンジン出力軸)に対し相対回転不能に連結されており、他端には径方向外側に向けて突設したクラッチ連結部34を備えている。そして、そのクラッチ連結部34はバネ等を構成部品として備えた緩衝装置36を含んでおり、その緩衝装置36は、エンジントルクTeの脈動を抑制しつつエンジントルクTeをエンジン断続用クラッチK0に伝達するダンパとして機能する。
【0019】
エンジン断続用クラッチK0は、互いに重ねられた複数枚の摩擦板が油圧アクチュエータにより押圧される湿式多板型の油圧式摩擦係合装置であり、油圧ポンプ16が発生させる油圧を元圧とし駆動装置8が有する油圧制御回路によって係合解放制御される。エンジン断続用クラッチK0は、それの解放状態において第1軸心RC1まわりに相対回転可能な1対のクラッチ回転部材(クラッチハブ及びクラッチドラム)を備えており、そのクラッチ回転部材の一方(クラッチハブ)は前記クラッチ連結部34の径方向外周端部に相対回転不能に連結されている一方で、そのクラッチ回転部材の他方(クラッチドラム)はトルクコンバータ14のトルクコンバータケース14dを介してポンプ翼車14aに相対回転不能に連結されている。このような構成から、エンジン断続用クラッチK0は、係合状態では、エンジン連結軸32を介してポンプ翼車14aをエンジン10と一体的に回転させる。すなわち、エンジン断続用クラッチK0の係合状態では、エンジン10からの駆動力がポンプ翼車14aに入力される。一方で、エンジン断続用クラッチK0は解放状態では、ポンプ翼車14aとエンジン10との間の動力伝達を遮断する。
【0020】
トルクコンバータ14は、エンジン10と駆動輪28との間の動力伝達経路の一部を構成し、第1軸心RC1まわりに回転するように配設された流体伝動装置であり、ポンプ翼車14aとタービン翼車14bとステータ翼車14cとトルクコンバータケース14dとを備えている。そして、トルクコンバータ14は、ポンプ翼車14aに入力された駆動力を自動変速機18へ流体を介して伝達する。このトルクコンバータ14のポンプ翼車14aはトルクコンバータケース14dの内側に固定されており、トルクコンバータケース14dを介してエンジン断続用クラッチK0に連結されている。すなわち、ポンプ翼車14a及びトルクコンバータケース14dはエンジン断続用クラッチK0とエンジン連結軸32とを順次介してエンジン10に連結されて第1軸心RC1まわりに回転可能であり、ポンプ翼車14a及びトルクコンバータケース14dは、エンジン10からの駆動力が入力されるトルクコンバータ14の入力側回転部材(入力側回転要素)である。ポンプ翼車14a及びトルクコンバータケース14dは本発明の動力伝達用回転部材に対応する。タービン翼車14bはトルクコンバータ14の出力側回転部材(出力側回転要素)であり、自動変速機18の入力軸である変速機入力軸86にスプライン嵌合等によって相対回転不能に連結されている。ステータ翼車14cは、ケース12にボルト止めされた油圧ポンプ16のポンプボディー16aに一方向クラッチ40を介して連結されている。すなわち、ステータ翼車14cは、一方向クラッチ40を介して非回転部材に連結されている。トルクコンバータケース14dは、ポンプ翼車14a、タービン翼車14b、ステータ翼車14c、及びエンジン断続用クラッチK0を収容しており、ケース12に対して第1軸心RC1まわりに回転可能で且つ第1軸心RC1方向に移動不能に設けられている。そして、トルクコンバータケース14dは、その内側に固定されたポンプ翼車14aと共に第1軸心RC1まわりに一体回転する。なお、具体的にトルクコンバータケース14dは第1スナップリング118の嵌合等によってケース12に対して第1軸心RC1方向に移動不能とされているが、この点については図5,図6等を用いて後述する。
【0021】
また、トルクコンバータ14は、ロックアップクラッチ42をトルクコンバータケース14d内に収容して備えている。そのロックアップクラッチ42は、ポンプ翼車14aとタービン翼車14bとの間に設けられた直結クラッチであり、油圧制御等により係合状態、スリップ状態、或いは解放状態とされるようになっている。ロックアップクラッチ42が係合状態とされることにより、厳密に言えば、完全係合状態とされることにより、上記ポンプ翼車14a及びタービン翼車14bが第1軸心RC1まわりに一体回転させられる。
【0022】
また、トルクコンバータ14では、トルクコンバータケース14d及びそのトルクコンバータケース14d内に収容された複数の回転部材、具体的には、ポンプ翼車14aが固定されたトルクコンバータケース14d、タービン翼車14b、ステータ翼車14c、及びエンジン連結軸32は、各々の間にローラーベアリング(スラスト軸受)142,144,146,148が介装されることにより、第1軸心RC1方向に相対移動不能にされると共に、第1軸心RC1まわりに相対回転可能とされている。具体的には、ローラーベアリング142がトルクコンバータケース14dの油圧ポンプ16側の側壁108(図5参照)のエンジン側の内面とステータ翼車14cとの間に介装されており、ローラーベアリング144がステータ翼車14cとタービン翼車14bとの間に介装されており、ローラーベアリング146がタービン翼車14bとエンジン連結軸32のクラッチ連結部34との間に介装されており、ローラーベアリング148が上記クラッチ連結部34とトルクコンバータケース14dのエンジン10側の側壁の内周部からトルクコンバータケース14d内側に向け第1軸心RC1を中心軸として円筒状に突き出たエンジン側軸受支持部150の先端部との間に介装されている。そのため、例えば、トルクコンバータケース14dがケース12に対して第1軸心RC1方向に移動不能に拘束されれば、トルクコンバータ14全体が第1軸心RC1方向に移動不能に拘束されることになる。
【0023】
電動機MGは、第1軸心RC1とは異なる第2軸心RC2を回転軸心としており、駆動力を出力するモータ機能と共に蓄電装置に充電する発電機能をも有する所謂モータジェネレータである。電動機MGは、ケース12の内側にボルト止め等により固定された電動機ステータ50と、その電動機ステータ50の内周側に設けられており電動機ステータ50に対して第2軸心RC2まわりに回転可能な電動機出力軸52と、電動機ステータ50の内周側に設けられて電動機出力軸52の外周に固定された電動機ローター54とを、備えている。
【0024】
また、駆動装置8には、第2軸心RC2方向を長手方向とする軸部56aとその軸部56aから径方向外側に円板状に突設し外周に歯車の外周歯を有するギヤ部56bとを含む電動機出力ギヤ56が、電動機MGと直列に設けられている。上記軸部56aは、その両端でケース12に対してボールベアリング58,60を介し、第2軸心RC2まわりに回転可能で且つ第2軸心RC2方向に移動不能に支持されている。そして、電動機出力軸52の一端はスプライン嵌合により上記軸部56aの一端に相対回転不能に連結されると共に、電動機出力軸52の他端はボールベアリング62を介しケース12に対して第2軸心RC2まわりに回転可能に支持されている。このような構成から、電動機出力軸52、電動機ローター54、及び電動機出力ギヤ56は、ケース12に対して第2軸心RC2方向に移動不能であり、且つ、その第2軸心RC2まわりに一体的に回転する。
【0025】
また、駆動装置8は、第1軸心RC1上において、電動機出力ギヤ56とトルクコンバータケース14dとの間を動力伝達可能に連結する電動機連結用回転要素66を備えている。電動機連結用回転要素66は、電動機出力ギヤ56と相互に噛み合い電動機MGからの駆動力をポンプ翼車14aに伝達するための外周歯122を外周に有する電動機連結ギヤ68と、その電動機連結ギヤ68とトルクコンバータケース14dとの間に介装されたフランジ状の連結部材70とを有する。その電動機連結ギヤ68は、ケース12に対してボールベアリング72を介し、第1軸心RC1まわりに回転可能で且つ第1軸心RC1方向に移動不能に支持されている。ボールベアリング72は内輪と外輪とが第1軸心RC1方向に相対移動不能な複列のアンギュラコンタクト軸受である。そして、連結部材70は、その内周端においてトルクコンバータケース14dとスプライン嵌合等により相対回転不能に連結されると共に、外周端において電動機連結ギヤ68とスプライン嵌合等により相対回転不能に連結されている。すなわち、電動機連結用回転要素66は、トルクコンバータケース14d及びそれに固定されたポンプ翼車14aに対し第1軸心RC1まわりに相対回転不能に連結されている。このようにして、電動機MGは、電動機出力ギヤ56と電動機連結用回転要素66とを介して作動的にポンプ翼車14aに連結されており、電動機MGからの駆動力は、電動機出力ギヤ56、電動機連結用回転要素66、及びトルクコンバータケース14dを順次介してポンプ翼車14aに伝達される。そして、図3から判るように、電動機出力ギヤ56のピッチ円直径は電動機連結ギヤ68のピッチ円直径よりも小さい。すなわち、電動機出力ギヤ56の歯数は電動機連結ギヤ68の歯数よりも少ないので、電動機MGの回転は減速されてポンプ翼車14aに伝達される。言い換えれば、電動機MGの出力トルクTmg(以下、「電動機トルクTmg」という)は増幅されて電動機MGからポンプ翼車14aに伝達される。なお、電動機連結ギヤ68および連結部材70の詳細な形状等については図5を用いて後述する。
【0026】
自動変速機18は、トルクコンバータ14と駆動輪28(図2参照)との間の動力伝達経路の一部を構成し、エンジン10および電動機MGからの駆動力が入力される変速機である。そして、自動変速機18は、複数の油圧式摩擦係合装置(クラッチC、ブレーキB)具体的には5つの油圧式摩擦係合装置を備え、その複数の油圧式摩擦係合装置の何れかの掴み替えにより複数の変速段(ギヤ段)が選択的に成立させられる変速機である。端的に言えば、一般的な車両によく用いられる所謂クラッチツゥクラッチ変速を行う有段変速機である。図1に示すようにその自動変速機18は、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置76を主体として構成されている第1変速部78と、ダブルピニオン型の第2遊星歯車装置80およびシングルピニオン型の第3遊星歯車装置82を主体としてラビニヨ型に構成されている第2変速部84とを同軸線上(第1軸心RC1上)に有し、変速機入力軸86の回転を変速して出力歯車88から出力する。その変速機入力軸86は自動変速機18の入力部材に相当するものであり、本実施例ではトルクコンバータ14のタービン翼車14bによって回転駆動されるタービン軸である。また、上記出力歯車88は自動変速機18の出力部材に相当するものであり、カウンタドリブンギヤ22(図2参照)と相互に噛み合いそのカウンタドリブンギヤ22と共に1対のギヤ対を構成している。また、図2に示すように、出力歯車88の回転は、カウンタドリブンギヤ22、ファイナルギヤ対24、差動歯車装置26、及び一対の駆動車軸30を順次介して一対の駆動輪(前輪)28へ伝達されるので、出力歯車88の回転速度である自動変速機18の出力回転速度Nout(rpm)が高いほど車速V(km/h)も高くなり、出力回転速度Noutは車速Vと一対一で対応する。
【0027】
上記第1変速部78を構成している第1遊星歯車装置76は、第1サンギヤS1と、第1ピニオンギヤP1と、その第1ピニオンギヤP1を自転および公転可能に支持する第1キャリヤCA1と、第1ピニオンギヤP1を介して第1サンギヤS1と噛み合う第1リングギヤR1とを備え、第1サンギヤS1、第1キャリアCA1、および第1リングギヤR1によって各々3つの回転要素が構成されている。第1遊星歯車装置76では、第1サンギヤS1が変速機入力軸86に連結されて回転駆動されるとともに、第1リングギヤR1が第3ブレーキB3を介して回転不能にケース12に固定されることにより、中間出力部材としての第1キャリアCA1が変速機入力軸86に対して減速回転させられる。
【0028】
前記第2変速部84を構成している第2遊星歯車装置80は、第2サンギヤS2と、互いに噛み合い1対を成す第2ピニオンギヤP2および第3ピニオンギヤP3と、そのピニオンギヤP2およびP3を自転および公転可能に支持する第2キャリヤCA2と、ピニオンギヤP2およびP3を介して第2サンギヤS2と噛み合う第2リングギヤR2とを備えている。また、第2変速部84を構成している第3遊星歯車装置82は、第3サンギヤS3と、第3ピニオンギヤP3と、その第3ピニオンギヤP3を自転および公転可能に支持する第3キャリヤCA3と、第3ピニオンギヤP3を介して第3サンギヤS3と噛み合う第3リングギヤR3とを備えている。そして、第2遊星歯車装置80および第3遊星歯車装置82では、一部が互いに連結されることによって4つの回転要素RM1〜RM4が構成されている。具体的には、第3遊星歯車装置82の第3サンギヤS3によって第1回転要素RM1が構成され、第2遊星歯車装置80の第2リングギヤR2および第3遊星歯車装置82の第3リングギヤR3が互いに連結されて第2回転要素RM2が構成され、第2遊星歯車装置80の第2キャリアCA2および第3遊星歯車装置82の第3キャリアCA3が互いに連結されて第3回転要素RM3が構成され、第2遊星歯車装置80の第2サンギヤS2によって第4回転要素RM4が構成されている。上記第2遊星歯車装置80および第3遊星歯車装置82は、第2、第3キャリアCA2およびCA3が共通の部材にて構成されているとともに、第2、第3リングギヤR2およびR3が共通の部材にて構成されており、且つ第3遊星歯車装置82の第3ピニオンギヤP3が第2遊星歯車装置80の一方のピニオンギヤを兼ねているラビニヨ型の遊星歯車列とされている。
【0029】
また、上記第1回転要素RM1(第3サンギヤS3)は第1クラッチC1を介して選択的に変速機入力軸86に連結される。第2回転要素RM2(リングギヤR2、R3)は第2クラッチC2を介して選択的に変速機入力軸86に連結されると共に、第2ブレーキB2によって選択的にケース12に連結されて回転停止させられる。第4回転要素RM4(第2サンギヤS2)は第1遊星歯車装置76の第1キャリアCA1に一体的に連結されており、第1ブレーキB1によって選択的にケース12に連結されて回転停止させられる。第3回転要素RM3(キャリアCA2、CA3)は出力歯車88に一体的に連結されて回転を出力するようになっている。なお、第2回転要素RM2とケース12との間には、第2回転要素RM2の正回転(変速機入力軸86と同じ回転方向)を許容しつつ逆回転を阻止する係合要素である一方向クラッチF1が第2ブレーキB2と並列に設けられている。
【0030】
上記クラッチC1、C2およびブレーキB1、B2、B3(以下、特に区別しない場合は単に「クラッチC」、「ブレーキB」という)は、湿式多板型のクラッチやブレーキなど油圧アクチュエータによって係合制御される油圧式摩擦係合装置(油圧式摩擦係合要素)であり、油圧ポンプ16が発生させる油圧を元圧とし駆動装置8が有する油圧制御回路によってそれぞれ係合解放制御される。そのクラッチCおよびブレーキBのそれぞれの係合解放制御により、運転者のアクセル操作や車速V等に応じて、図4に示すように前進6段、後進1段の各ギヤ段(各変速段)が成立させられる。図4の「1st」〜「6th」は前進の第1速ギヤ段〜第6速ギヤ段を意味しており、「R」は後進ギヤ段であり、各ギヤ段に対応する自動変速機18の変速比γ(=入力回転速度Nin/出力回転速度Nout)は、第1遊星歯車装置76、第2遊星歯車装置80、および第3遊星歯車装置82の各ギヤ比(=サンギヤの歯数/リングギヤの歯数)ρ1、ρ2、ρ3によって適宜定められる。図4の作動表は、上記各ギヤ段とクラッチC1、C2、ブレーキB1〜B3の作動状態との関係をまとめたものであり、「○」は係合、「◎」はエンジンブレーキ時のみ係合、空欄は解放を表している。上記入力回転速度Ninは変速機入力軸86の回転速度であり、上記出力回転速度Noutは出力歯車88の回転速度である。
【0031】
図4は、自動変速機18において複数の変速段(ギヤ段)を成立させる際の係合要素の作動状態を説明する作動表である。自動変速機18は、第1変速部78および第2変速部84の各回転要素(サンギヤS1〜S3、キャリアCA1〜CA3、リングギヤR1〜R3)のうちのいずれかの連結状態の組み合わせに応じて第1速ギヤ段「1st」〜第6速ギヤ段「6th」の6つの前進変速段(前進ギヤ段)が成立させられるとともに、後進変速段「R」の後進変速段が成立させられる。図4に示すように、たとえば前進ギヤ段では、(1)第1速ギヤ段がクラッチC1及びブレーキB2の係合により成立させられ、(2)その第1速ギヤ段よりも変速比γが小さい第2速ギヤ段が第1クラッチC1及び第1ブレーキB1の係合により成立させられ、(3)その第2速ギヤ段よりも変速比γが小さい第3速ギヤ段が第1クラッチC1及び第3ブレーキB3の係合により成立させられ、(4)その第3速ギヤ段よりも変速比γが小さい第4速ギヤ段が第1クラッチC1及び第2クラッチC2の係合により成立させられ、(5)その第4速ギヤ段よりも変速比γが小さい第5速ギヤ段が第2クラッチC2及び第3ブレーキB3の係合により成立させられ、(6)その第5速ギヤ段よりも変速比γが小さい第6速ギヤ段が第2クラッチC2及び第1ブレーキB1の係合により成立させられるようになっている。また、第2ブレーキB2及び第3ブレーキB3の係合により後進ギヤ段が成立させられ、クラッチC1、C2、ブレーキB1〜B3のいずれも解放されることによりニュートラル状態「N」となるように基本的に構成されている。本実施例の自動変速機18では、所定のギヤ段を達成させるために2つの油圧式摩擦係合装置が係合させられるようになっており、その2つの油圧式摩擦係合装置の一方が解放されるとその所定のギヤ段が不成立とされ、自動変速機18内の動力伝達経路が解放されてニュートラル状態となる。
【0032】
また、第1速ギヤ段「1st」を成立させるブレーキB2には並列に一方向クラッチF1が設けられているため、発進時(加速時)には必ずしもブレーキB2を係合させる必要は無い。また、第1クラッチC1および第2クラッチC2は、図4に示されるように、前進ギヤ段のいずれにおいてもそれらのうちの一方或いは他方が必ず係合させられる。すなわち、上記第1クラッチC1または第2クラッチC2の係合が前進ギヤ段の達成要件とされており、したがって、本実施例においては、第1クラッチC1または第2クラッチC2がフォワードクラッチ(前進クラッチ)に相当する。
【0033】
図5は、電動機連結用回転要素66及びその近傍を詳細に説明するための断面図であって、図3のV部を抜き出した断面図である。図5及び図3において、油圧ポンプ16は、トルクコンバータケース14dによって回転駆動される機械式のオイルポンプであり、クラッチやブレーキの油圧制御のための元圧を発生させると共に、潤滑油(作動油)を駆動装置8内のボールベアリング58,60,62,72等の各潤滑部位に供給する。油圧ポンプ16は、ケース12にボルト止めされたポンプ本体である非回転部材としてのポンプボディー16aと、そのポンプボディー16aにボルト止めされた非回転部材としてのポンプカバー16bと、第1軸心RC1まわりに回転するように配設されたポンプロータ16cとを備えている。油圧ポンプ16は、このポンプロータ16cが回転させられることにより油圧を発生する。
【0034】
上記ポンプカバー16bは、その内側にポンプロータ16cを収容してそのポンプロータ16cを覆うカバーとして機能する部材である。ポンプカバー16bは、ポンプボディー16aのトルクコンバータ14側側面であるカバー取付面98からトルクコンバータ14側(エンジン10側)に向けて第1軸心RC1方向に突き出すようにしてポンプボディー16aに取り付けられており、ポンプカバー16bの内側すなわちポンプボディー16a側の壁面99と上記カバー取付面98とでポンプロータ16cを収容するための空間を形成している。ポンプカバー16bは、第1軸心RC1を中心軸とする例えば円形断面のポンプカバー貫通穴100を径方向内側に備えている。ポンプカバー16bがカバー取付面98から第1軸心RC1方向に突き出した突出量は、径方向内側が最も大きく、径方向外側に向かうに従って小さくなっている。
【0035】
上記ポンプロータ16cは、ポンプカバー16bのポンプボディー16a側の壁面99とカバー取付面98とで形成された空間内にポンプボディー16aから第1軸心RC1方向に突き出している。すなわち、ポンプロータ16cは、カバー取付面98から第1軸心RC1方向にトルクコンバータ14側に向けて突き出して配設されているが、そのポンプロータ16cのカバー取付面98からの突出量はポンプカバー16bの突出量と比較して小さくされている。
【0036】
図5に示すように、トルクコンバータ14と油圧ポンプ16との間には、第1軸心RC1上において、変速機入力軸86が挿通された円筒状の非回転連結部材102が配設されている。その非回転連結部材102は、変速機入力軸86に対しては第1軸心RC1まわりに相対回転可能である。また、非回転連結部材102は、一端がトルクコンバータ14のステータ翼車14cに一方向クラッチ40を介して連結されており、その一方向クラッチ40の非回転連結部材102側の要素に対しては第1軸心RC1まわりに相対回転不能とされている。その一方で、非回転連結部材102の他端は、ポンプボディー16aの第1軸心RC1まわりに形成された内径穴104に嵌め入れられており、ケース12に固定されたポンプボディー16aに対して第1軸心RC1まわりに回転不能で且つ第1軸心RC1方向に移動不能に固定されている。このように非回転連結部材102がポンプボディー16aと一方向クラッチ40との間に介装されることにより、ステータ翼車14cは、前述したように一方向クラッチ40を介して非回転部材に連結されることになる。なお、ポンプロータ16cには、非回転連結部材102と干渉しないようにその非回転連結部材102が挿通された貫通穴が設けられている。
【0037】
また、トルクコンバータケース14dは、ポンプロータ16cに連結され且つ前述したように連結部材70に連結されているが、詳細には、それらに連結されるためにトルクコンバータ側連結部106を備えている。そのトルクコンバータ側連結部106は、第1軸心RC1を中心軸とした円筒状であり、トルクコンバータケース14dの油圧ポンプ16側の側壁108の内周端から第1軸心RC1方向にポンプロータ16cに至るまで突き出して設けられている。そのトルクコンバータ側連結部106の内周側には前記非回転連結部材102が挿通されており、トルクコンバータ側連結部106すなわちトルクコンバータケース14dはその非回転連結部材102に対し第1軸心RC1まわりに相対回転可能である。トルクコンバータ側連結部106は、上記側壁108につながる基端部とは反対側すなわち先端部においてポンプロータ16cと共に第1軸心RC1まわりに回転するように連結されている。すなわち、トルクコンバータ側連結部106は、ポンプカバー貫通穴100内にポンプカバー16bと干渉しないように挿通されてポンプロータ16cに連結されている。これにより、トルクコンバータケース14dの回転がポンプロータ16cに伝達される。
【0038】
前述した連結部材70は、電動機連結ギヤ68とトルクコンバータケース14dとの間に介装されそれらを第1軸心RC1まわりに相対回転不能に連結するための部材であるが、詳細には、径方向内側から外側に向けて順に連設された電動機連結用回転要素側連結部110と第1フランジ部111と第2フランジ部112と第3フランジ部113とを備えている。そして、連結部材70は、例えば鋼板をプレス加工で成形したものであり略一定の肉厚を有している。連結部材70は、駆動装置8の軸方向長さを短くするため、油圧ポンプ16具体的にはポンプカバー16bに近接して設けられているが、非回転部材であるポンプカバー16bによって回転が妨げられないように、連結部材70の全体にわたってポンプカバー16bとの間に所定程度以上の間隔を有して配置されている。電動機連結用回転要素側連結部110は、前記入力側回転部材の一部を構成するトルクコンバータケース14dに対する連結部として機能するので、本発明の連結部に対応する。電動機連結用回転要素側連結部110は、トルクコンバータ側連結部106と同軸上(第1軸心RC1上)であってそのトルクコンバータ側連結部106の外周側に設けられた円筒状のものであり、トルクコンバータ側連結部106に対してスプライン嵌合により第1軸心RC1まわりに相対回転不能に連結されている。更に、図6の拡大断面図に示すように、電動機連結用回転要素側連結部110の嵌合内周面114には第1軸心RC1まわりに内周面環状溝(スナップリング嵌合溝)115が形成されると共に、トルクコンバータ側連結部106の嵌合外周面116にはその内周面環状溝115に相対向する外周面環状溝(スナップリング嵌合溝)117が形成されている。そして、トルクコンバータ側連結部106すなわちトルクコンバータケース14dは、第1スナップリング118がそれら内周面環状溝115及び外周面環状溝117の両方に嵌め入れられることにより、電動機連結用回転要素側連結部110すなわち電動機連結用回転要素66に対して第1軸心RC1方向に相対移動不能とされている。第1スナップリング118は図7に示すように円環形状の一部が途切れたC字形状であって長方形断面を有しており、本発明の止め輪に対応する。その第1スナップリング118の取付けに関しては、良く知られたスナップリングの取付方法と同様であり、例えば、第1スナップリング118を外周面環状溝117に嵌め入れて第1スナップリング118の直径を小さくするようにその外周面環状溝117内で撓ませ、その撓ませた状態で、トルクコンバータ側連結部106に対して電動機連結用回転要素側連結部110を上記外周面環状溝117と内周面環状溝115とが相対向する軸方向位置にまでスプライン嵌合させ、次に、その外周面環状溝117と内周面環状溝115とが相対向した状態で第1スナップリング118の撓みを解放する。これにより、第1スナップリング118は外周面環状溝117と内周面環状溝115との双方に嵌め入れられることになる。
【0039】
図5に戻り、上記電動機連結用回転要素側連結部110の先端は、ポンプカバー貫通穴100の内側においてポンプロータ16cから第1軸心RC1方向に所定間隔を空けた位置にあり、電動機連結用回転要素側連結部110の基端は、ポンプカバー貫通穴100からトルクコンバータ14側(エンジン10側)に外れた位置にある。すなわち、電動機連結用回転要素側連結部110は、その先端側ではトルクコンバータ側連結部106及び第1スナップリング118と共にポンプカバー貫通穴100内に挿入されており、その一方で、基端側ではポンプカバー貫通穴100からトルクコンバータ14側に突き出している。表現を変えれば、電動機連結用回転要素側連結部110は、その一部が、ポンプカバー16bに対し、第1軸心RC1と直交する方向に重ねて設けられている。更に別の表現をすれば、電動機連結用回転要素側連結部110の一部は、ポンプカバー16bの第1軸心RC1まわりに設けられた内周穴であるポンプカバー貫通穴100に対して径方向内側に設けられている。具体的には、図5の軸方向範囲W1において、電動機連結用回転要素側連結部110は、ポンプカバー16bに対し、第1軸心RC1と直交する方向に重ねて設けられている。
【0040】
連結部材70の第1フランジ部111は、ポンプカバー16bのトルクコンバータ14側(エンジン10側)の側面120に対し空隙を有して、電動機連結用回転要素側連結部110の前記基端から径方向外側に突き出された円板状をしている。第2フランジ部112は、第1フランジ部111の外周端から径方向外側に向かうほど第1軸心RC1方向の油圧ポンプ16側に張り出すテーパ状であり、ポンプカバー16bのトルクコンバータ14側の側面120に対し空隙を有してそのトルクコンバータ14側の側面120のテーパ角度に略沿った形状をしている。第3フランジ部113は、ポンプカバー16bのトルクコンバータ14側の側面120に対し空隙を有して、第2フランジ部112の外周端から径方向外側に突き出された円板状をしている。第3フランジ部113は、第2フランジ部112が上記のようなテーパ状であるため、電動機連結用回転要素側連結部110に対しポンプカバー16bの一部を挟んで径方向外側に配設されることになる。
【0041】
前述した電動機連結ギヤ68は、第1軸心RC1を中心軸として、電動機出力ギヤ56と噛み合う前記外周歯122の他に、連結部材70と嵌合する円環状の嵌合部124と、その嵌合部124から第1軸心RC1方向のトルクコンバータ14側(エンジン10側)に延設された支持部126と、嵌合部124及び支持部126よりも径方向外側に設けられた外周歯122と支持部126とを連結する中間フランジ部128とを備えている。嵌合部124は、その内周部で連結部材70の第3フランジ部113の外周端に対しスプライン嵌合しており、それにより、電動機連結ギヤ68は連結部材70に対して第1軸心RC1まわりに相対回転不能に連結されている。そして、第2スナップリング130が第3フランジ部113の油圧ポンプ16側の側面に当接して、嵌合部124の内周部に形成された環状のスナップリング嵌合溝に嵌め入れられている。なお、電動機連結ギヤ68の外周歯122は、電動機MGからの駆動力を受ける本発明の動力伝達部に対応する。
【0042】
電動機連結ギヤ68の支持部126は第1軸心RC1を中心軸とする円筒状をしており、電動機連結用回転要素66(電動機連結ギヤ68、連結部材70)を非回転部材であるケース12に対し第1軸心RC1まわりに回転可能に支持する。また、支持部126はその一部が、ポンプカバー16bに対し、第1軸心RC1と直交する方向すなわち径方向に重ねて設けられている。前記ボールベアリング72は、その支持部126の径方向内側であって且つ連結部材70の電動機連結用回転要素側連結部110乃至第2フランジ部112よりも径方向外側に配設されている。そして、支持部126の内周には上記ボールベアリング72の外輪が嵌め入れており、その外輪と支持部126とは第1軸心RC1まわりに一体的に回転する。支持部126は、嵌合部124に対して反対側の端部から径方向内側に向けて、ボールベアリング72の外輪のトルクコンバータ14側(エンジン10側)の端面に沿って突き出した環状のベアリング係止部132を備えている。図5に示すように第1軸心RC1方向において、連結部材70の第3フランジ部113及びボールベアリング72の外輪はベアリング係止部132と第2スナップリング130との間に挟まれて設けられているので、電動機連結ギヤ68と連結部材70とボールベアリング72とは互いに第1軸心RC1方向に相対移動不能となっている。
【0043】
電動機連結ギヤ68の中間フランジ部128は、支持部126の外周から径方向外側に向けて円板状に突き出されたものであり、中間フランジ部128の外周端には外周歯122が設けられている。このような電動機連結ギヤ68および連結部材70の構成から、電動機連結ギヤ68の外周歯(動力伝達部)122は、支持部126とポンプカバー16bと連結部材70の電動機連結用回転要素側連結部110と第1スナップリング118との全てに対し、第1軸心RC1と直交する方向すなわち径方向に重ねて設けられている。例えば、上記外周歯122は、支持部126に対し図5の軸方向範囲W2において径方向に重ねて設けられ、ポンプカバー16bに対し図5の軸方向範囲W3において径方向に重ねて設けられ、電動機連結用回転要素側連結部110に対し図5の軸方向範囲W4において径方向に重ねて設けられている。
【0044】
ケース12は、トルクコンバータケース14dの油圧ポンプ16側の側壁108と電動機連結用回転要素66との間に設けられ第1軸心RC1方向を厚み方向とする隔壁134と、その隔壁134から油圧ポンプ16側に向けて第1軸心RC1方向に突き出た円筒状のベアリング支持部136とを備えている。そのベアリング支持部136の外周にはボールベアリング72の内輪が嵌め入れられている。そのボールベアリング72の内輪の内周面とベアリング支持部136の外周面とのそれぞれには相対向する環状のスナップリング嵌合溝が形成されており、第3スナップリング138が双方のスナップリング嵌合溝に嵌め入れられている。この第3スナップリング138の嵌合により、ボールベアリング72はケース12に対して第1軸心RC1方向に移動不能とされている。すなわち、前述したスナップリング118,130,138及びベアリング係止部132は協働して、ケース12に対しトルクコンバータ14及び電動機連結用回転要素66を第1軸心RC1方向に移動不能とするように機能している。
【0045】
以上のように構成された駆動装置8では、例えば、エンジン10を走行用の駆動力源とするエンジン走行を行う場合には、エンジン断続用クラッチK0を係合させ、それによりエンジン10からの駆動力をポンプ翼車14aに伝達させる。また、電動機MGは電動機出力ギヤ56および電動機連結用回転要素66等を介してポンプ翼車14aに連結されているので、上記エンジン走行においては、必要に応じて電動機MGにアシストトルクを出力させる。一方で、エンジン10を停止させ電動機MGを走行用の駆動力源とするEV走行(モータ走行)を行う場合には、エンジン断続用クラッチK0を解放させ、それによりエンジン10とトルクコンバータ14との間の動力伝達経路を遮断すると共に、電動機MGに走行用の駆動力を出力させる。
【0046】
また、走行中の車両6が一時的に停車する等の車両停止中では、例えば、エンジン断続用クラッチK0を解放させてエンジン10を停止させ、電動機MGに油圧ポンプ16を回転駆動させると共にクリープトルクを出力させる。このクリープトルクを出力させる際には、電動機MGからの駆動力はトルクコンバータ14を介して駆動輪28に伝達されることになるので、乗員の違和感を抑制するようにそのクリープトルクを出力させる制御が容易である。
【0047】
また、車両6の制動時には、例えば電動機MGに回生作動をさせて、車両制動力により電動機MGに発電させ、その発電した電力が蓄電装置に充電される。
【0048】
また、エンジン10を始動させる際には、例えば、エンジン断続用クラッチK0を係合させて電動機トルクTmgによりエンジン10を回転させエンジン始動を行う。EV走行中にエンジン10を始動させる場合も同様であり、その場合には、車両走行のための出力にエンジン始動のための出力を上乗せした電動機出力を電動機MGに出力させる。
【0049】
本実施例によれば、エンジン10とトルクコンバータ14とがそれぞれ第1軸心RC1(一軸心)まわりに回転するように配設されている一方で、電動機MGは第1軸心RC1とは異なる回転軸心を有して配設されている。具体的には、エンジン10およびトルクコンバータ14は第1軸心RC1上に直列に配設されており、電動機MGはそれらエンジン10およびトルクコンバータ14と並列に配設されている。そして、電動機MGは、トルクコンバータ14の動力伝達用回転部材(ポンプ翼車14a及びトルクコンバータケース14d)に、その動力伝達用回転部材に対して第1軸心RC1まわりに相対回転不能に嵌合された電動機連結用回転要素66を介して連結されている。従って、エンジン10とトルクコンバータ14と電動機MGとが第1軸心RC1上に直列に配設される場合と比較して、駆動装置8の軸方向全長を短くすることができる。そのため、例えばFF型のエンジン10が横置きにされる本実施例ような車両6で、車幅の制約によってエンジン10とトルクコンバータ14と電動機MGとを直列に配設することが困難な場合においても、上記軸方向全長が短い駆動装置8であればその車両6に搭載することが容易になる。また、エンジン10とトルクコンバータ14と電動機MGとが第1軸心RC1上に直列に配設される場合には、ケース12が、第1軸心RC1方向を厚み方向とする電動機MGを支持するための電動機支持用壁を備える必要があるところ、本実施例の駆動装置8においてはそのような電動機支持用壁を設ける必要がなく、この点も駆動装置8の軸方向全長を短くすることに寄与している。
【0050】
また、通常のエンジン車両ではトルクコンバータ14のトルクコンバータケース14dがボルト止め等によりエンジン出力軸に固定され、それによりトルクコンバータ14が第1軸心RC1方向に移動不能とされるところ、本実施例によれば、トルクコンバータケース14dは電動機連結用回転要素66に対して第1軸心RC1まわりに相対回転不能に嵌合されており、且つ、第1スナップリング118が電動機連結用回転要素66(連結部材70)及びトルクコンバータケース14dの嵌合内周面114及び嵌合外周面116の各々に形成された相対向する環状溝115,117に嵌め入れられることにより電動機連結用回転要素66に対して第1軸心RC1方向に相対移動不能とされている。そして、その電動機連結用回転要素66はケース12に対して第1軸心RC1方向に移動不能且つ第1軸心RC1まわりに回転可能とされている。そのため、第1スナップリング118の嵌合によりトルクコンバータ14がケース12に対して第1軸心RC1方向に移動不能とされるので、トルクコンバータ14と上記エンジン出力軸との間でのボルト止め等が不要となる。
【0051】
また、本実施例によれば、電動機出力ギヤ56の歯数は電動機連結ギヤ68の歯数よりも少ないので、電動機MGの出力トルクTmgは増幅されて電動機MGからポンプ翼車14aに伝達される。従って、電動機MGの回転が減速されずにポンプ翼車14aに伝達される場合と比較して、電動機トルクTmgの最大値を低くすることが可能である。そのため、電動機MGの小型化を図り、電動機MGを安価なものとすることが容易である。また、電動機MGが第1軸心RC1とは異なる回転軸心(第2軸心RC2)を有して配設されているので、電動機出力ギヤ56及び電動機連結ギヤ68から構成される減速機を設けることが容易であるという利点がある。
【0052】
また、本実施例によれば、トルクコンバータケース14dによって回転駆動される油圧ポンプ16はポンプロータ16cが第1軸心RC1まわりに回転するように配設されており、電動機連結用回転要素側連結部110の少なくとも一部は、ポンプカバー16bの第1軸心RC1まわりに設けられた内周穴であるポンプカバー貫通穴100に対して径方向内側に設けられている。従って、電動機連結用回転要素側連結部110がポンプカバー16bに対し第1軸心RC1と直交する方向(径方向)に重ねて設けられるので、そのように重ねて設けられない場合と比較して駆動装置8の軸方向全長を短くすることができる。また、ポンプロータ16cが第1軸心RC1まわりに回転するように配設されているので、油圧ポンプ16が例えばトルクコンバータ14等と全く異なる軸心上に配設される場合と比較して、油圧ポンプ16からの油圧供給先たとえばトルクコンバータ14や第1軸心RC1上のボールベアリング72等と油圧ポンプ16との間の管路を短くすることが可能である。そのため、その管路の流体抵抗を低減し、燃費悪化を防止できる。
【0053】
また、本実施例によれば、電動機連結用回転要素66は、電動機MGからの駆動力を受ける動力伝達部としての外周歯122を備えており、その外周歯122は、支持部126とポンプカバー16bと連結部材70の電動機連結用回転要素側連結部110と第1スナップリング118との全てに対し、第1軸心RC1と直交する方向すなわち径方向に重ねて設けられている。従って、上記電動機連結用回転要素66の第1軸心RC1方向の長さを短くすることができ、その結果として、駆動装置8の軸方向全長を短くすることができる。
【0054】
また、本実施例によれば、電動機MGからの駆動力は、トルクコンバータ14の入力側回転部材であるポンプ翼車14a及びトルクコンバータケース14dに入力される。従って、エンジン10からの駆動力および電動機MGからの駆動力をトルクコンバータ14を介して駆動輪28に伝達することができるので、駆動輪28に伝達される駆動力を滑らかに変化させることが容易であり、例えば車両発進時などにおいて快適な走行を実現し易くなる。
【0055】
また、本実施例によれば、トルクコンバータ14の入力側回転部材の一部を構成するトルクコンバータケース14dは、エンジン断続用クラッチK0を介してエンジン10に連結されている。従って、車両走行中においてエンジン10を停止することができ、燃費の向上を図ることが可能である。すなわち、前記EV走行をすることが可能である。
【0056】
また、本実施例によれば、電動機連結用回転要素側連結部110は、ポンプカバー16bに対し、第1軸心RC1と直交する方向に重ねて設けられている。従って、電動機連結用回転要素側連結部110をポンプカバー16bに対し第1軸心RC1と直交する方向に重ねない場合と比較して、駆動装置8の軸方向全長を短くすることができる。
【0057】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【0058】
例えば、前述の実施例において、電動機連結用回転要素側連結部110は、その一部がポンプカバー貫通穴100に対して径方向内側に設けられているが、トルクコンバータ側連結部106とスプライン嵌合する電動機連結用回転要素側連結部110の全部がポンプカバー貫通穴100に対して径方向内側に設けられていても差し支えない。
【0059】
また、前述の実施例において、電動機連結ギヤ68の外周歯122は、支持部126とポンプカバー16bと連結部材70の電動機連結用回転要素側連結部110と第1スナップリング118との全てに対し、第1軸心RC1と直交する方向すなわち径方向に重ねて設けられているが、それらの全てではなく、外周歯122は、それら支持部126とポンプカバー16bと電動機連結用回転要素側連結部110と第1スナップリング118との何れかとだけ上記径方向に重ねて設けられていても差し支えない。
【0060】
また、前述の実施例において、電動機MGは、電動機連結用回転要素66と電動機出力ギヤ56とによって構成された1対のギヤ対により、トルクコンバータケース14dに連結されているが、そのようなギヤ対に限らず、伝動ベルトやチェーンによってトルクコンバータケース14dに連結されていても差し支えない。なお、電動機MGが伝動ベルトによってトルクコンバータケース14dに連結されるのであれば、電動機連結用回転要素66は上記伝動ベルトが巻き掛けられるベルト巻掛部を外周歯122に替えて有することになり、そのベルト巻掛部が本発明の動力伝達部に対応する。また、電動機MGがチェーンによってトルクコンバータケース14dに連結されるのであれば、電動機連結用回転要素66は上記チェーンが巻き掛けられるチェーン噛合部を外周歯122に替えて有することになり、そのチェーン噛合部が本発明の動力伝達部に対応する。
【0061】
また、前述の実施例の図5において、互いにスプライン嵌合するトルクコンバータ側連結部106と電動機連結用回転要素側連結部110との関係に関し、トルクコンバータ側連結部106が内周側の軸に相当する一方で電動機連結用回転要素側連結部110が外周側の穴に相当するが、その軸と穴との関係は逆であってもよく、すなわち、トルクコンバータ側連結部106が外周側である一方で電動機連結用回転要素側連結部110が内周側であっても差し支えない。
【0062】
また、前述の実施例の図1、図3において、電動機MGは、電動機連結用回転要素66と電動機出力ギヤ56とによって構成された1対のギヤ対を介してトルクコンバータ14のポンプ翼車14aに連結されているが、ポンプ翼車14aではなくタービン翼車14bに連結されていても差し支えない。そのように電動機MGがタービン翼車14bに連結されているのであれば、そのタービン翼車14bが本発明の動力伝達用回転部材に対応する。
【0063】
また、前述の実施例において、エンジン10はエンジン断続用クラッチK0を介してトルクコンバータ14のポンプ翼車14aに連結されているが、そのエンジン断続用クラッチK0が設けられておらず、エンジン10とポンプ翼車14aとの間の動力伝達経路が遮断できない構成であっても差し支えない。
【0064】
また、前述の実施例において、第1軸心RC1と第2軸心RC2とは互いに平行な軸心であるが、それらが平行である必要はない。
【0065】
また、前述の実施例において、駆動装置8は、FF型の車両6において横置きにされるものであるが、車両6はFR型であってもよいし、駆動装置8は縦置きにされてもよい。
【0066】
また、前述の実施例において、エンジン断続用クラッチK0は湿式多板型の油圧式摩擦係合装置であるが、乾式であってもよいし、電磁クラッチ等の他の作動方式のクラッチであっても差し支えない。
【0067】
また、前述の実施例において、ロックアップクラッチ42が設けられているが、ロックアップクラッチ42は必須ではない。
【0068】
また、前述の実施例において、自動変速機18は有段の自動変速機であるが、無段階に変速比γを変更できるCVTであってもよいし、手動変速機に置き換えられても差し支えない。また、自動変速機18を備えない駆動装置8も考え得る。
【0069】
また、前述の実施例において、油圧ポンプ16は第1軸心RC1上に配設されているが、第2軸心RC2上に配設されることも考え得る。
【0070】
また、前述の実施例において、油圧ポンプ16は機械式のオイルポンプであるが、電動オイルポンプであっても差し支えない。油圧ポンプ16が電動オイルポンプであれば、油圧ポンプ16は第1軸心RC1上とは別個に設けられても差し支えない。
【0071】
また、前述の実施例において、トルクコンバータ14が流体伝動装置として用いられているが、そのトルクコンバータ14のトルク増幅作用は必ずしも必要ではなく、例えば、そのトルクコンバータ14がトルク増幅作用のないフルードカップリングに置き換わっていても差し支えない。
【0072】
また、前述の実施例において、電動機連結用回転要素66は、電動機連結ギヤ68および連結部材70である複数の部材から構成されているが、1部材により構成されていても差し支えない。図8は、前述の実施例とは異なり、電動機連結用回転要素が1部材により構成された例を示す断面図であって、図5に相当する図である。図8では、図5の電動機連結用回転要素66すなわち電動機連結ギヤ68及び連結部材70が電動機連結用回転要素166に置き換わった例が示されている。図8の符号168は電動機連結用回転要素166の支持部であって、電動機連結用回転要素166をケース12に対して第1軸心RC1まわりに回転可能に支持するものであり、図5の支持部126に対応する。図8の符号170は電動機連結用回転要素166の連結部であって、電動機連結用回転要素166をトルクコンバータケース14dに対してスプライン嵌合により第1軸心RC1まわりに相対回転不能に連結するものであり、図5の電動機連結用回転要素側連結部110に対応する。なお、ボールベアリング72の内輪と外輪との何れがケース12に嵌め入れられても差し支えないが、前述の図5では、ボールベアリング72の内輪はケース12に嵌め入れられる一方で、外輪は電動機連結用回転要素66(電動機連結ギヤ68)に嵌め入れられるが、図8ではそれとは逆に、ボールベアリング72の内輪は電動機連結用回転要素166に嵌め入れられている一方で、外輪はケース12に嵌め入れられている。また、図8の電動機連結用回転要素166は、第3スナップリング138の嵌合及びスナップリング172の嵌合により、図5の電動機連結用回転要素66と同様にして、ケース12に対して第1軸心RC1方向に移動不能とされている。
【符号の説明】
【0073】
8:車両用駆動装置
10:エンジン
12:トランスアクスルケース
14:トルクコンバータ(流体伝動装置)
14a:ポンプ翼車(動力伝達用回転部材、入力側回転部材)
14d:トルクコンバータケース(動力伝達用回転部材、入力側回転部材)
16:油圧ポンプ
16b:ポンプカバー
16c:ポンプロータ(ロータ)
28:駆動輪
66,166:電動機連結用回転要素
100:ポンプカバー貫通穴(内周穴)
110:電動機連結用回転要素側連結部(連結部)
114:嵌合内周面
115:内周面環状溝(環状溝)
116:嵌合外周面
117:外周面環状溝(環状溝)
118:第1スナップリング(止め輪)
122:外周歯(動力伝達部)
126:支持部
MG:電動機
K0:エンジン断続用クラッチ
RC1:第1軸心(一軸心)
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンと電動機とを備えた車両用駆動装置の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
走行用の駆動力源としてエンジンと電動機とを備えた車両用駆動装置がよく知られている。例えば、特許文献1に記載された車両用駆動装置がそれである。その特許文献1の車両用駆動装置では、一軸心上に、エンジン、流体伝動装置であるトルクコンバータ、及び電動機の順に直列に配設されている。そして、そのトルクコンバータの入力側回転部材であるポンプインペラにはエンジンが連結され、そのトルクコンバータの出力側回転部材であるタービンランナには電動機が連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−55186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の車両用駆動装置のように、エンジン、トルクコンバータ、及び電動機が直列に配設された車両用駆動装置の軸方向全長は、そのエンジン、トルクコンバータ、及び電動機の各々の軸方向長さが積算されるので、その車両用駆動装置の軸方向全長が長くなるという課題が考えられる。特に、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)型でエンジンが横置きにされる車両では、上記軸方向全長は車幅の制約を受けるので、上記軸方向全長が長くなるという課題は、FR(フロントエンジン・リヤドライブ)型の車両と比較して大きな課題である。なお、このような課題は未公知である。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、エンジンと流体伝動装置と電動機とを備えた車両用駆動装置であって、その車両用駆動装置の軸方向全長を短くすることができる車両用駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための本発明の要旨とするところは、(a)エンジンと、そのエンジンと駆動輪との間の動力伝達経路の一部を構成する流体伝動装置と、電動機とを備えた車両用駆動装置であって、(b)前記エンジンと前記流体伝動装置とがそれぞれ一軸心まわりに回転するように配設されている一方で、前記電動機はその一軸心とは異なる回転軸心を有して配設されており、(c)前記電動機は、前記流体伝動装置の動力伝達用回転部材に、その動力伝達用回転部材に対して前記一軸心まわりに相対回転不能に嵌合された電動機連結用回転要素を介して連結され、(d)その電動機連結用回転要素はその一軸心方向に移動不能且つその一軸心まわりに回転可能であり、(e)前記動力伝達用回転部材は、止め輪がその動力伝達用回転部材及びその電動機連結用回転要素の嵌合内周面および嵌合外周面の各々に形成された相対向する環状溝に嵌め入れられることによりその電動機連結用回転要素に対して前記一軸心方向に相対移動不能とされていることにある。
【発明の効果】
【0007】
このようにすれば、エンジンと流体伝動装置と電動機とがそれぞれ前記一軸心まわりに回転するように配設される場合、すなわち、そのエンジンと流体伝動装置と電動機とが直列に配設される場合と比較して、車両用駆動装置の軸方向全長を短くすることができる。そのため、例えばFF型のエンジンが横置きにされる車両で、車幅の制約によってエンジンと流体伝動装置と電動機とを直列に配設することが困難な場合においても、上記軸方向全長が短い前記車両用駆動装置であればその車両に搭載することが容易になる。また、通常のエンジン車両では前記流体伝動装置の入力側回転部材がボルト止め等によりエンジン出力軸に固定され、それにより流体伝動装置が前記一軸心方向に移動不能とされるところ、本発明の車両用駆動装置では前記止め輪の嵌合により上記流体伝動装置が前記一軸心方向に移動不能とされるので、上記流体伝動装置とエンジン出力軸との間でのボルト止め等が不要となる。そのため、例えば、流体伝動装置とエンジンとを切り離すことが容易にできるようになる。
【0008】
ここで、好適には、(a)前記流体伝動装置の動力伝達用回転部材によって回転駆動される油圧ポンプは、その油圧ポンプのロータが前記一軸心まわりに回転するように配設されており、(b)前記電動機連結用回転要素の前記動力伝達用回転部材に対する連結部の少なくとも一部は、その油圧ポンプが有するポンプカバーの前記一軸心まわりに設けられた内周穴に対して径方向内側に設けられている。このようにすれば、上記連結部が上記ポンプカバーに対し上記一軸心と直交する方向に重ねて設けられるので、そのように重ねて設けられない場合と比較して車両用駆動装置の軸方向全長を短くすることができる。また、上記油圧ポンプのロータが上記一軸心まわりに回転するように配設されているので、その油圧ポンプが例えば流体伝動装置等と全く異なる軸心上に配設される場合と比較して、前記流体伝動装置や上記一軸心上の軸受等と上記油圧ポンプとの間の管路を短くすることが可能である。そのため、その管路の流体抵抗を低減し、燃費悪化を防止できる。
【0009】
また、好適には、(a)前記電動機連結用回転要素は、前記電動機からの駆動力を受ける動力伝達部を備えており、(b)その動力伝達部は、前記電動機連結用回転要素を非回転部材に対して回転可能に支持するその電動機連結用回転要素の支持部と、前記ポンプカバーと、前記電動機連結用回転要素の連結部と、前記止め輪とのうちの何れか又は全てに対し、前記一軸心と直交する方向に重ねて設けられている。このようにすれば、上記電動機連結用回転要素の上記一軸心方向の長さを短くすることができ、その結果として、車両用駆動装置の軸方向全長を短くすることができる。
【0010】
また、好適には、(a)前記流体伝動装置の動力伝達用回転部材は、前記エンジンからの駆動力が入力される入力側回転部材である。このようにすれば、上記エンジンからの駆動力および前記電動機からの駆動力を上記流体伝動装置を介して前記駆動輪に伝達することができるので、前記駆動輪に伝達される駆動力を滑らかに変化させることが容易であり、例えば車両発進時などにおいて快適な走行を実現し易くなる。
【0011】
また、好適には、(a)前記流体伝動装置の入力側回転部材は、エンジン断続用クラッチを介して前記エンジンに連結されている。このようにすれば、車両走行中においてエンジンを停止することができ、燃費の向上を図ることが可能である。
【0012】
また、好適には、前記エンジン、前記流体伝動装置、及び前記電動機は、前記駆動輪に連結され且つその駆動輪を回転駆動する駆動車軸の軸方向と前記一軸心とが互いに平行になるように配設されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明が好適に適用される車両用駆動装置の構成を説明するための骨子図である。
【図2】図1の車両用駆動装置から駆動輪までの動力伝達経路を表した図である。
【図3】図1の車両用駆動装置の要部、すなわち、その車両用駆動装置が備える自動変速機、トルクコンバータ、及び電動機等を表した断面図である。
【図4】図1の車両用駆動装置が備える自動変速機において複数の変速段(ギヤ段)を成立させる際の係合要素の作動状態を説明する作動表である。
【図5】図1の車両用駆動装置が備える電動機連結用回転要素及びその近傍を詳細に説明するための断面図であって、図3のV部を抜き出した断面図である。
【図6】図5の第1スナップリングおよびその近傍を含む図5のVI部を抜き出した断面図である。
【図7】図5の第1スナップリングの外観を表した斜視図である。
【図8】図1の車両用駆動装置において、電動機連結用回転要素が1部材により構成された例を示す断面図であって、図5に示す電動機連結用回転要素とは別の例を示すための図5に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例】
【0015】
図1は、本発明が好適に適用される車両用駆動装置8(以下、「駆動装置8」という)の構成を説明するための骨子図である。図2は、駆動装置8から駆動輪28までの動力伝達経路を表した図である。図3は、駆動装置8の要部、すなわち、自動変速機18、トルクコンバータ14、及び電動機MG等を表した断面図である。なお、自動変速機18及びトルクコンバータ14等は中心線(第1軸心RC1)に対して略対称的に構成されており、図1,図3,図5,図8ではその中心線の下半分が省略されている。図1,図3,図5,図8において第1軸心RC1は本発明の一軸心に対応しており、第2軸心RC2は電動機MGの回転軸心である。
【0016】
図1に示すように、駆動装置8は、車体にボルト止め等によって取り付けられる非回転部材としてのトランスアクスルケース(T/Aケース)12(以下、「ケース12」という)を有し、そのケース12内において、エンジン10側から、エンジン断続用クラッチK0、トルクコンバータ14、油圧ポンプ16、及び自動変速機18を、第1軸心RC1上において順番にすなわち直列に備え、且つ、その第1軸心RC1と平行な第2軸心RC2まわりに回転駆動される電動機MGを備えている。更に、図2に示すように、駆動装置8は、ケース12内において、自動変速機18の出力回転部材である出力歯車88と噛み合うカウンタドリブンギヤ22、ファイナルギヤ対24、及び、そのファイナルギヤ対24を介してカウンタドリブンギヤ22に連結された差動歯車装置(ディファレンシャルギヤ)26を備えている。このように構成された駆動装置8は、例えば前輪駆動すなわちFF(フロントエンジン・フロントドライブ)型の車両6の前方に横置きされ、駆動輪28を駆動するために好適に用いられるものである。駆動装置8において、エンジン10の動力は、エンジン断続用クラッチK0が係合された場合に、エンジン10とエンジン断続用クラッチK0とを連結するエンジン連結軸32から、エンジン断続用クラッチK0、トルクコンバータ14、自動変速機18、カウンタドリブンギヤ22、ファイナルギヤ対24、差動歯車装置26、および1対の駆動車軸30等を順次介して1対の駆動輪28へ伝達される。
【0017】
エンジン10は、駆動装置8に備えられており、クランク軸が第1軸心RC1まわりに回転駆動されるガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関である。
【0018】
図3において、駆動装置8が有するエンジン連結軸32は、ケース12に対して第1軸心RC1まわりに回転可能で且つ第1軸心RC1方向に移動不能に設けられている。エンジン連結軸32は、その一端でエンジン10のクランク軸(エンジン出力軸)に対し相対回転不能に連結されており、他端には径方向外側に向けて突設したクラッチ連結部34を備えている。そして、そのクラッチ連結部34はバネ等を構成部品として備えた緩衝装置36を含んでおり、その緩衝装置36は、エンジントルクTeの脈動を抑制しつつエンジントルクTeをエンジン断続用クラッチK0に伝達するダンパとして機能する。
【0019】
エンジン断続用クラッチK0は、互いに重ねられた複数枚の摩擦板が油圧アクチュエータにより押圧される湿式多板型の油圧式摩擦係合装置であり、油圧ポンプ16が発生させる油圧を元圧とし駆動装置8が有する油圧制御回路によって係合解放制御される。エンジン断続用クラッチK0は、それの解放状態において第1軸心RC1まわりに相対回転可能な1対のクラッチ回転部材(クラッチハブ及びクラッチドラム)を備えており、そのクラッチ回転部材の一方(クラッチハブ)は前記クラッチ連結部34の径方向外周端部に相対回転不能に連結されている一方で、そのクラッチ回転部材の他方(クラッチドラム)はトルクコンバータ14のトルクコンバータケース14dを介してポンプ翼車14aに相対回転不能に連結されている。このような構成から、エンジン断続用クラッチK0は、係合状態では、エンジン連結軸32を介してポンプ翼車14aをエンジン10と一体的に回転させる。すなわち、エンジン断続用クラッチK0の係合状態では、エンジン10からの駆動力がポンプ翼車14aに入力される。一方で、エンジン断続用クラッチK0は解放状態では、ポンプ翼車14aとエンジン10との間の動力伝達を遮断する。
【0020】
トルクコンバータ14は、エンジン10と駆動輪28との間の動力伝達経路の一部を構成し、第1軸心RC1まわりに回転するように配設された流体伝動装置であり、ポンプ翼車14aとタービン翼車14bとステータ翼車14cとトルクコンバータケース14dとを備えている。そして、トルクコンバータ14は、ポンプ翼車14aに入力された駆動力を自動変速機18へ流体を介して伝達する。このトルクコンバータ14のポンプ翼車14aはトルクコンバータケース14dの内側に固定されており、トルクコンバータケース14dを介してエンジン断続用クラッチK0に連結されている。すなわち、ポンプ翼車14a及びトルクコンバータケース14dはエンジン断続用クラッチK0とエンジン連結軸32とを順次介してエンジン10に連結されて第1軸心RC1まわりに回転可能であり、ポンプ翼車14a及びトルクコンバータケース14dは、エンジン10からの駆動力が入力されるトルクコンバータ14の入力側回転部材(入力側回転要素)である。ポンプ翼車14a及びトルクコンバータケース14dは本発明の動力伝達用回転部材に対応する。タービン翼車14bはトルクコンバータ14の出力側回転部材(出力側回転要素)であり、自動変速機18の入力軸である変速機入力軸86にスプライン嵌合等によって相対回転不能に連結されている。ステータ翼車14cは、ケース12にボルト止めされた油圧ポンプ16のポンプボディー16aに一方向クラッチ40を介して連結されている。すなわち、ステータ翼車14cは、一方向クラッチ40を介して非回転部材に連結されている。トルクコンバータケース14dは、ポンプ翼車14a、タービン翼車14b、ステータ翼車14c、及びエンジン断続用クラッチK0を収容しており、ケース12に対して第1軸心RC1まわりに回転可能で且つ第1軸心RC1方向に移動不能に設けられている。そして、トルクコンバータケース14dは、その内側に固定されたポンプ翼車14aと共に第1軸心RC1まわりに一体回転する。なお、具体的にトルクコンバータケース14dは第1スナップリング118の嵌合等によってケース12に対して第1軸心RC1方向に移動不能とされているが、この点については図5,図6等を用いて後述する。
【0021】
また、トルクコンバータ14は、ロックアップクラッチ42をトルクコンバータケース14d内に収容して備えている。そのロックアップクラッチ42は、ポンプ翼車14aとタービン翼車14bとの間に設けられた直結クラッチであり、油圧制御等により係合状態、スリップ状態、或いは解放状態とされるようになっている。ロックアップクラッチ42が係合状態とされることにより、厳密に言えば、完全係合状態とされることにより、上記ポンプ翼車14a及びタービン翼車14bが第1軸心RC1まわりに一体回転させられる。
【0022】
また、トルクコンバータ14では、トルクコンバータケース14d及びそのトルクコンバータケース14d内に収容された複数の回転部材、具体的には、ポンプ翼車14aが固定されたトルクコンバータケース14d、タービン翼車14b、ステータ翼車14c、及びエンジン連結軸32は、各々の間にローラーベアリング(スラスト軸受)142,144,146,148が介装されることにより、第1軸心RC1方向に相対移動不能にされると共に、第1軸心RC1まわりに相対回転可能とされている。具体的には、ローラーベアリング142がトルクコンバータケース14dの油圧ポンプ16側の側壁108(図5参照)のエンジン側の内面とステータ翼車14cとの間に介装されており、ローラーベアリング144がステータ翼車14cとタービン翼車14bとの間に介装されており、ローラーベアリング146がタービン翼車14bとエンジン連結軸32のクラッチ連結部34との間に介装されており、ローラーベアリング148が上記クラッチ連結部34とトルクコンバータケース14dのエンジン10側の側壁の内周部からトルクコンバータケース14d内側に向け第1軸心RC1を中心軸として円筒状に突き出たエンジン側軸受支持部150の先端部との間に介装されている。そのため、例えば、トルクコンバータケース14dがケース12に対して第1軸心RC1方向に移動不能に拘束されれば、トルクコンバータ14全体が第1軸心RC1方向に移動不能に拘束されることになる。
【0023】
電動機MGは、第1軸心RC1とは異なる第2軸心RC2を回転軸心としており、駆動力を出力するモータ機能と共に蓄電装置に充電する発電機能をも有する所謂モータジェネレータである。電動機MGは、ケース12の内側にボルト止め等により固定された電動機ステータ50と、その電動機ステータ50の内周側に設けられており電動機ステータ50に対して第2軸心RC2まわりに回転可能な電動機出力軸52と、電動機ステータ50の内周側に設けられて電動機出力軸52の外周に固定された電動機ローター54とを、備えている。
【0024】
また、駆動装置8には、第2軸心RC2方向を長手方向とする軸部56aとその軸部56aから径方向外側に円板状に突設し外周に歯車の外周歯を有するギヤ部56bとを含む電動機出力ギヤ56が、電動機MGと直列に設けられている。上記軸部56aは、その両端でケース12に対してボールベアリング58,60を介し、第2軸心RC2まわりに回転可能で且つ第2軸心RC2方向に移動不能に支持されている。そして、電動機出力軸52の一端はスプライン嵌合により上記軸部56aの一端に相対回転不能に連結されると共に、電動機出力軸52の他端はボールベアリング62を介しケース12に対して第2軸心RC2まわりに回転可能に支持されている。このような構成から、電動機出力軸52、電動機ローター54、及び電動機出力ギヤ56は、ケース12に対して第2軸心RC2方向に移動不能であり、且つ、その第2軸心RC2まわりに一体的に回転する。
【0025】
また、駆動装置8は、第1軸心RC1上において、電動機出力ギヤ56とトルクコンバータケース14dとの間を動力伝達可能に連結する電動機連結用回転要素66を備えている。電動機連結用回転要素66は、電動機出力ギヤ56と相互に噛み合い電動機MGからの駆動力をポンプ翼車14aに伝達するための外周歯122を外周に有する電動機連結ギヤ68と、その電動機連結ギヤ68とトルクコンバータケース14dとの間に介装されたフランジ状の連結部材70とを有する。その電動機連結ギヤ68は、ケース12に対してボールベアリング72を介し、第1軸心RC1まわりに回転可能で且つ第1軸心RC1方向に移動不能に支持されている。ボールベアリング72は内輪と外輪とが第1軸心RC1方向に相対移動不能な複列のアンギュラコンタクト軸受である。そして、連結部材70は、その内周端においてトルクコンバータケース14dとスプライン嵌合等により相対回転不能に連結されると共に、外周端において電動機連結ギヤ68とスプライン嵌合等により相対回転不能に連結されている。すなわち、電動機連結用回転要素66は、トルクコンバータケース14d及びそれに固定されたポンプ翼車14aに対し第1軸心RC1まわりに相対回転不能に連結されている。このようにして、電動機MGは、電動機出力ギヤ56と電動機連結用回転要素66とを介して作動的にポンプ翼車14aに連結されており、電動機MGからの駆動力は、電動機出力ギヤ56、電動機連結用回転要素66、及びトルクコンバータケース14dを順次介してポンプ翼車14aに伝達される。そして、図3から判るように、電動機出力ギヤ56のピッチ円直径は電動機連結ギヤ68のピッチ円直径よりも小さい。すなわち、電動機出力ギヤ56の歯数は電動機連結ギヤ68の歯数よりも少ないので、電動機MGの回転は減速されてポンプ翼車14aに伝達される。言い換えれば、電動機MGの出力トルクTmg(以下、「電動機トルクTmg」という)は増幅されて電動機MGからポンプ翼車14aに伝達される。なお、電動機連結ギヤ68および連結部材70の詳細な形状等については図5を用いて後述する。
【0026】
自動変速機18は、トルクコンバータ14と駆動輪28(図2参照)との間の動力伝達経路の一部を構成し、エンジン10および電動機MGからの駆動力が入力される変速機である。そして、自動変速機18は、複数の油圧式摩擦係合装置(クラッチC、ブレーキB)具体的には5つの油圧式摩擦係合装置を備え、その複数の油圧式摩擦係合装置の何れかの掴み替えにより複数の変速段(ギヤ段)が選択的に成立させられる変速機である。端的に言えば、一般的な車両によく用いられる所謂クラッチツゥクラッチ変速を行う有段変速機である。図1に示すようにその自動変速機18は、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置76を主体として構成されている第1変速部78と、ダブルピニオン型の第2遊星歯車装置80およびシングルピニオン型の第3遊星歯車装置82を主体としてラビニヨ型に構成されている第2変速部84とを同軸線上(第1軸心RC1上)に有し、変速機入力軸86の回転を変速して出力歯車88から出力する。その変速機入力軸86は自動変速機18の入力部材に相当するものであり、本実施例ではトルクコンバータ14のタービン翼車14bによって回転駆動されるタービン軸である。また、上記出力歯車88は自動変速機18の出力部材に相当するものであり、カウンタドリブンギヤ22(図2参照)と相互に噛み合いそのカウンタドリブンギヤ22と共に1対のギヤ対を構成している。また、図2に示すように、出力歯車88の回転は、カウンタドリブンギヤ22、ファイナルギヤ対24、差動歯車装置26、及び一対の駆動車軸30を順次介して一対の駆動輪(前輪)28へ伝達されるので、出力歯車88の回転速度である自動変速機18の出力回転速度Nout(rpm)が高いほど車速V(km/h)も高くなり、出力回転速度Noutは車速Vと一対一で対応する。
【0027】
上記第1変速部78を構成している第1遊星歯車装置76は、第1サンギヤS1と、第1ピニオンギヤP1と、その第1ピニオンギヤP1を自転および公転可能に支持する第1キャリヤCA1と、第1ピニオンギヤP1を介して第1サンギヤS1と噛み合う第1リングギヤR1とを備え、第1サンギヤS1、第1キャリアCA1、および第1リングギヤR1によって各々3つの回転要素が構成されている。第1遊星歯車装置76では、第1サンギヤS1が変速機入力軸86に連結されて回転駆動されるとともに、第1リングギヤR1が第3ブレーキB3を介して回転不能にケース12に固定されることにより、中間出力部材としての第1キャリアCA1が変速機入力軸86に対して減速回転させられる。
【0028】
前記第2変速部84を構成している第2遊星歯車装置80は、第2サンギヤS2と、互いに噛み合い1対を成す第2ピニオンギヤP2および第3ピニオンギヤP3と、そのピニオンギヤP2およびP3を自転および公転可能に支持する第2キャリヤCA2と、ピニオンギヤP2およびP3を介して第2サンギヤS2と噛み合う第2リングギヤR2とを備えている。また、第2変速部84を構成している第3遊星歯車装置82は、第3サンギヤS3と、第3ピニオンギヤP3と、その第3ピニオンギヤP3を自転および公転可能に支持する第3キャリヤCA3と、第3ピニオンギヤP3を介して第3サンギヤS3と噛み合う第3リングギヤR3とを備えている。そして、第2遊星歯車装置80および第3遊星歯車装置82では、一部が互いに連結されることによって4つの回転要素RM1〜RM4が構成されている。具体的には、第3遊星歯車装置82の第3サンギヤS3によって第1回転要素RM1が構成され、第2遊星歯車装置80の第2リングギヤR2および第3遊星歯車装置82の第3リングギヤR3が互いに連結されて第2回転要素RM2が構成され、第2遊星歯車装置80の第2キャリアCA2および第3遊星歯車装置82の第3キャリアCA3が互いに連結されて第3回転要素RM3が構成され、第2遊星歯車装置80の第2サンギヤS2によって第4回転要素RM4が構成されている。上記第2遊星歯車装置80および第3遊星歯車装置82は、第2、第3キャリアCA2およびCA3が共通の部材にて構成されているとともに、第2、第3リングギヤR2およびR3が共通の部材にて構成されており、且つ第3遊星歯車装置82の第3ピニオンギヤP3が第2遊星歯車装置80の一方のピニオンギヤを兼ねているラビニヨ型の遊星歯車列とされている。
【0029】
また、上記第1回転要素RM1(第3サンギヤS3)は第1クラッチC1を介して選択的に変速機入力軸86に連結される。第2回転要素RM2(リングギヤR2、R3)は第2クラッチC2を介して選択的に変速機入力軸86に連結されると共に、第2ブレーキB2によって選択的にケース12に連結されて回転停止させられる。第4回転要素RM4(第2サンギヤS2)は第1遊星歯車装置76の第1キャリアCA1に一体的に連結されており、第1ブレーキB1によって選択的にケース12に連結されて回転停止させられる。第3回転要素RM3(キャリアCA2、CA3)は出力歯車88に一体的に連結されて回転を出力するようになっている。なお、第2回転要素RM2とケース12との間には、第2回転要素RM2の正回転(変速機入力軸86と同じ回転方向)を許容しつつ逆回転を阻止する係合要素である一方向クラッチF1が第2ブレーキB2と並列に設けられている。
【0030】
上記クラッチC1、C2およびブレーキB1、B2、B3(以下、特に区別しない場合は単に「クラッチC」、「ブレーキB」という)は、湿式多板型のクラッチやブレーキなど油圧アクチュエータによって係合制御される油圧式摩擦係合装置(油圧式摩擦係合要素)であり、油圧ポンプ16が発生させる油圧を元圧とし駆動装置8が有する油圧制御回路によってそれぞれ係合解放制御される。そのクラッチCおよびブレーキBのそれぞれの係合解放制御により、運転者のアクセル操作や車速V等に応じて、図4に示すように前進6段、後進1段の各ギヤ段(各変速段)が成立させられる。図4の「1st」〜「6th」は前進の第1速ギヤ段〜第6速ギヤ段を意味しており、「R」は後進ギヤ段であり、各ギヤ段に対応する自動変速機18の変速比γ(=入力回転速度Nin/出力回転速度Nout)は、第1遊星歯車装置76、第2遊星歯車装置80、および第3遊星歯車装置82の各ギヤ比(=サンギヤの歯数/リングギヤの歯数)ρ1、ρ2、ρ3によって適宜定められる。図4の作動表は、上記各ギヤ段とクラッチC1、C2、ブレーキB1〜B3の作動状態との関係をまとめたものであり、「○」は係合、「◎」はエンジンブレーキ時のみ係合、空欄は解放を表している。上記入力回転速度Ninは変速機入力軸86の回転速度であり、上記出力回転速度Noutは出力歯車88の回転速度である。
【0031】
図4は、自動変速機18において複数の変速段(ギヤ段)を成立させる際の係合要素の作動状態を説明する作動表である。自動変速機18は、第1変速部78および第2変速部84の各回転要素(サンギヤS1〜S3、キャリアCA1〜CA3、リングギヤR1〜R3)のうちのいずれかの連結状態の組み合わせに応じて第1速ギヤ段「1st」〜第6速ギヤ段「6th」の6つの前進変速段(前進ギヤ段)が成立させられるとともに、後進変速段「R」の後進変速段が成立させられる。図4に示すように、たとえば前進ギヤ段では、(1)第1速ギヤ段がクラッチC1及びブレーキB2の係合により成立させられ、(2)その第1速ギヤ段よりも変速比γが小さい第2速ギヤ段が第1クラッチC1及び第1ブレーキB1の係合により成立させられ、(3)その第2速ギヤ段よりも変速比γが小さい第3速ギヤ段が第1クラッチC1及び第3ブレーキB3の係合により成立させられ、(4)その第3速ギヤ段よりも変速比γが小さい第4速ギヤ段が第1クラッチC1及び第2クラッチC2の係合により成立させられ、(5)その第4速ギヤ段よりも変速比γが小さい第5速ギヤ段が第2クラッチC2及び第3ブレーキB3の係合により成立させられ、(6)その第5速ギヤ段よりも変速比γが小さい第6速ギヤ段が第2クラッチC2及び第1ブレーキB1の係合により成立させられるようになっている。また、第2ブレーキB2及び第3ブレーキB3の係合により後進ギヤ段が成立させられ、クラッチC1、C2、ブレーキB1〜B3のいずれも解放されることによりニュートラル状態「N」となるように基本的に構成されている。本実施例の自動変速機18では、所定のギヤ段を達成させるために2つの油圧式摩擦係合装置が係合させられるようになっており、その2つの油圧式摩擦係合装置の一方が解放されるとその所定のギヤ段が不成立とされ、自動変速機18内の動力伝達経路が解放されてニュートラル状態となる。
【0032】
また、第1速ギヤ段「1st」を成立させるブレーキB2には並列に一方向クラッチF1が設けられているため、発進時(加速時)には必ずしもブレーキB2を係合させる必要は無い。また、第1クラッチC1および第2クラッチC2は、図4に示されるように、前進ギヤ段のいずれにおいてもそれらのうちの一方或いは他方が必ず係合させられる。すなわち、上記第1クラッチC1または第2クラッチC2の係合が前進ギヤ段の達成要件とされており、したがって、本実施例においては、第1クラッチC1または第2クラッチC2がフォワードクラッチ(前進クラッチ)に相当する。
【0033】
図5は、電動機連結用回転要素66及びその近傍を詳細に説明するための断面図であって、図3のV部を抜き出した断面図である。図5及び図3において、油圧ポンプ16は、トルクコンバータケース14dによって回転駆動される機械式のオイルポンプであり、クラッチやブレーキの油圧制御のための元圧を発生させると共に、潤滑油(作動油)を駆動装置8内のボールベアリング58,60,62,72等の各潤滑部位に供給する。油圧ポンプ16は、ケース12にボルト止めされたポンプ本体である非回転部材としてのポンプボディー16aと、そのポンプボディー16aにボルト止めされた非回転部材としてのポンプカバー16bと、第1軸心RC1まわりに回転するように配設されたポンプロータ16cとを備えている。油圧ポンプ16は、このポンプロータ16cが回転させられることにより油圧を発生する。
【0034】
上記ポンプカバー16bは、その内側にポンプロータ16cを収容してそのポンプロータ16cを覆うカバーとして機能する部材である。ポンプカバー16bは、ポンプボディー16aのトルクコンバータ14側側面であるカバー取付面98からトルクコンバータ14側(エンジン10側)に向けて第1軸心RC1方向に突き出すようにしてポンプボディー16aに取り付けられており、ポンプカバー16bの内側すなわちポンプボディー16a側の壁面99と上記カバー取付面98とでポンプロータ16cを収容するための空間を形成している。ポンプカバー16bは、第1軸心RC1を中心軸とする例えば円形断面のポンプカバー貫通穴100を径方向内側に備えている。ポンプカバー16bがカバー取付面98から第1軸心RC1方向に突き出した突出量は、径方向内側が最も大きく、径方向外側に向かうに従って小さくなっている。
【0035】
上記ポンプロータ16cは、ポンプカバー16bのポンプボディー16a側の壁面99とカバー取付面98とで形成された空間内にポンプボディー16aから第1軸心RC1方向に突き出している。すなわち、ポンプロータ16cは、カバー取付面98から第1軸心RC1方向にトルクコンバータ14側に向けて突き出して配設されているが、そのポンプロータ16cのカバー取付面98からの突出量はポンプカバー16bの突出量と比較して小さくされている。
【0036】
図5に示すように、トルクコンバータ14と油圧ポンプ16との間には、第1軸心RC1上において、変速機入力軸86が挿通された円筒状の非回転連結部材102が配設されている。その非回転連結部材102は、変速機入力軸86に対しては第1軸心RC1まわりに相対回転可能である。また、非回転連結部材102は、一端がトルクコンバータ14のステータ翼車14cに一方向クラッチ40を介して連結されており、その一方向クラッチ40の非回転連結部材102側の要素に対しては第1軸心RC1まわりに相対回転不能とされている。その一方で、非回転連結部材102の他端は、ポンプボディー16aの第1軸心RC1まわりに形成された内径穴104に嵌め入れられており、ケース12に固定されたポンプボディー16aに対して第1軸心RC1まわりに回転不能で且つ第1軸心RC1方向に移動不能に固定されている。このように非回転連結部材102がポンプボディー16aと一方向クラッチ40との間に介装されることにより、ステータ翼車14cは、前述したように一方向クラッチ40を介して非回転部材に連結されることになる。なお、ポンプロータ16cには、非回転連結部材102と干渉しないようにその非回転連結部材102が挿通された貫通穴が設けられている。
【0037】
また、トルクコンバータケース14dは、ポンプロータ16cに連結され且つ前述したように連結部材70に連結されているが、詳細には、それらに連結されるためにトルクコンバータ側連結部106を備えている。そのトルクコンバータ側連結部106は、第1軸心RC1を中心軸とした円筒状であり、トルクコンバータケース14dの油圧ポンプ16側の側壁108の内周端から第1軸心RC1方向にポンプロータ16cに至るまで突き出して設けられている。そのトルクコンバータ側連結部106の内周側には前記非回転連結部材102が挿通されており、トルクコンバータ側連結部106すなわちトルクコンバータケース14dはその非回転連結部材102に対し第1軸心RC1まわりに相対回転可能である。トルクコンバータ側連結部106は、上記側壁108につながる基端部とは反対側すなわち先端部においてポンプロータ16cと共に第1軸心RC1まわりに回転するように連結されている。すなわち、トルクコンバータ側連結部106は、ポンプカバー貫通穴100内にポンプカバー16bと干渉しないように挿通されてポンプロータ16cに連結されている。これにより、トルクコンバータケース14dの回転がポンプロータ16cに伝達される。
【0038】
前述した連結部材70は、電動機連結ギヤ68とトルクコンバータケース14dとの間に介装されそれらを第1軸心RC1まわりに相対回転不能に連結するための部材であるが、詳細には、径方向内側から外側に向けて順に連設された電動機連結用回転要素側連結部110と第1フランジ部111と第2フランジ部112と第3フランジ部113とを備えている。そして、連結部材70は、例えば鋼板をプレス加工で成形したものであり略一定の肉厚を有している。連結部材70は、駆動装置8の軸方向長さを短くするため、油圧ポンプ16具体的にはポンプカバー16bに近接して設けられているが、非回転部材であるポンプカバー16bによって回転が妨げられないように、連結部材70の全体にわたってポンプカバー16bとの間に所定程度以上の間隔を有して配置されている。電動機連結用回転要素側連結部110は、前記入力側回転部材の一部を構成するトルクコンバータケース14dに対する連結部として機能するので、本発明の連結部に対応する。電動機連結用回転要素側連結部110は、トルクコンバータ側連結部106と同軸上(第1軸心RC1上)であってそのトルクコンバータ側連結部106の外周側に設けられた円筒状のものであり、トルクコンバータ側連結部106に対してスプライン嵌合により第1軸心RC1まわりに相対回転不能に連結されている。更に、図6の拡大断面図に示すように、電動機連結用回転要素側連結部110の嵌合内周面114には第1軸心RC1まわりに内周面環状溝(スナップリング嵌合溝)115が形成されると共に、トルクコンバータ側連結部106の嵌合外周面116にはその内周面環状溝115に相対向する外周面環状溝(スナップリング嵌合溝)117が形成されている。そして、トルクコンバータ側連結部106すなわちトルクコンバータケース14dは、第1スナップリング118がそれら内周面環状溝115及び外周面環状溝117の両方に嵌め入れられることにより、電動機連結用回転要素側連結部110すなわち電動機連結用回転要素66に対して第1軸心RC1方向に相対移動不能とされている。第1スナップリング118は図7に示すように円環形状の一部が途切れたC字形状であって長方形断面を有しており、本発明の止め輪に対応する。その第1スナップリング118の取付けに関しては、良く知られたスナップリングの取付方法と同様であり、例えば、第1スナップリング118を外周面環状溝117に嵌め入れて第1スナップリング118の直径を小さくするようにその外周面環状溝117内で撓ませ、その撓ませた状態で、トルクコンバータ側連結部106に対して電動機連結用回転要素側連結部110を上記外周面環状溝117と内周面環状溝115とが相対向する軸方向位置にまでスプライン嵌合させ、次に、その外周面環状溝117と内周面環状溝115とが相対向した状態で第1スナップリング118の撓みを解放する。これにより、第1スナップリング118は外周面環状溝117と内周面環状溝115との双方に嵌め入れられることになる。
【0039】
図5に戻り、上記電動機連結用回転要素側連結部110の先端は、ポンプカバー貫通穴100の内側においてポンプロータ16cから第1軸心RC1方向に所定間隔を空けた位置にあり、電動機連結用回転要素側連結部110の基端は、ポンプカバー貫通穴100からトルクコンバータ14側(エンジン10側)に外れた位置にある。すなわち、電動機連結用回転要素側連結部110は、その先端側ではトルクコンバータ側連結部106及び第1スナップリング118と共にポンプカバー貫通穴100内に挿入されており、その一方で、基端側ではポンプカバー貫通穴100からトルクコンバータ14側に突き出している。表現を変えれば、電動機連結用回転要素側連結部110は、その一部が、ポンプカバー16bに対し、第1軸心RC1と直交する方向に重ねて設けられている。更に別の表現をすれば、電動機連結用回転要素側連結部110の一部は、ポンプカバー16bの第1軸心RC1まわりに設けられた内周穴であるポンプカバー貫通穴100に対して径方向内側に設けられている。具体的には、図5の軸方向範囲W1において、電動機連結用回転要素側連結部110は、ポンプカバー16bに対し、第1軸心RC1と直交する方向に重ねて設けられている。
【0040】
連結部材70の第1フランジ部111は、ポンプカバー16bのトルクコンバータ14側(エンジン10側)の側面120に対し空隙を有して、電動機連結用回転要素側連結部110の前記基端から径方向外側に突き出された円板状をしている。第2フランジ部112は、第1フランジ部111の外周端から径方向外側に向かうほど第1軸心RC1方向の油圧ポンプ16側に張り出すテーパ状であり、ポンプカバー16bのトルクコンバータ14側の側面120に対し空隙を有してそのトルクコンバータ14側の側面120のテーパ角度に略沿った形状をしている。第3フランジ部113は、ポンプカバー16bのトルクコンバータ14側の側面120に対し空隙を有して、第2フランジ部112の外周端から径方向外側に突き出された円板状をしている。第3フランジ部113は、第2フランジ部112が上記のようなテーパ状であるため、電動機連結用回転要素側連結部110に対しポンプカバー16bの一部を挟んで径方向外側に配設されることになる。
【0041】
前述した電動機連結ギヤ68は、第1軸心RC1を中心軸として、電動機出力ギヤ56と噛み合う前記外周歯122の他に、連結部材70と嵌合する円環状の嵌合部124と、その嵌合部124から第1軸心RC1方向のトルクコンバータ14側(エンジン10側)に延設された支持部126と、嵌合部124及び支持部126よりも径方向外側に設けられた外周歯122と支持部126とを連結する中間フランジ部128とを備えている。嵌合部124は、その内周部で連結部材70の第3フランジ部113の外周端に対しスプライン嵌合しており、それにより、電動機連結ギヤ68は連結部材70に対して第1軸心RC1まわりに相対回転不能に連結されている。そして、第2スナップリング130が第3フランジ部113の油圧ポンプ16側の側面に当接して、嵌合部124の内周部に形成された環状のスナップリング嵌合溝に嵌め入れられている。なお、電動機連結ギヤ68の外周歯122は、電動機MGからの駆動力を受ける本発明の動力伝達部に対応する。
【0042】
電動機連結ギヤ68の支持部126は第1軸心RC1を中心軸とする円筒状をしており、電動機連結用回転要素66(電動機連結ギヤ68、連結部材70)を非回転部材であるケース12に対し第1軸心RC1まわりに回転可能に支持する。また、支持部126はその一部が、ポンプカバー16bに対し、第1軸心RC1と直交する方向すなわち径方向に重ねて設けられている。前記ボールベアリング72は、その支持部126の径方向内側であって且つ連結部材70の電動機連結用回転要素側連結部110乃至第2フランジ部112よりも径方向外側に配設されている。そして、支持部126の内周には上記ボールベアリング72の外輪が嵌め入れており、その外輪と支持部126とは第1軸心RC1まわりに一体的に回転する。支持部126は、嵌合部124に対して反対側の端部から径方向内側に向けて、ボールベアリング72の外輪のトルクコンバータ14側(エンジン10側)の端面に沿って突き出した環状のベアリング係止部132を備えている。図5に示すように第1軸心RC1方向において、連結部材70の第3フランジ部113及びボールベアリング72の外輪はベアリング係止部132と第2スナップリング130との間に挟まれて設けられているので、電動機連結ギヤ68と連結部材70とボールベアリング72とは互いに第1軸心RC1方向に相対移動不能となっている。
【0043】
電動機連結ギヤ68の中間フランジ部128は、支持部126の外周から径方向外側に向けて円板状に突き出されたものであり、中間フランジ部128の外周端には外周歯122が設けられている。このような電動機連結ギヤ68および連結部材70の構成から、電動機連結ギヤ68の外周歯(動力伝達部)122は、支持部126とポンプカバー16bと連結部材70の電動機連結用回転要素側連結部110と第1スナップリング118との全てに対し、第1軸心RC1と直交する方向すなわち径方向に重ねて設けられている。例えば、上記外周歯122は、支持部126に対し図5の軸方向範囲W2において径方向に重ねて設けられ、ポンプカバー16bに対し図5の軸方向範囲W3において径方向に重ねて設けられ、電動機連結用回転要素側連結部110に対し図5の軸方向範囲W4において径方向に重ねて設けられている。
【0044】
ケース12は、トルクコンバータケース14dの油圧ポンプ16側の側壁108と電動機連結用回転要素66との間に設けられ第1軸心RC1方向を厚み方向とする隔壁134と、その隔壁134から油圧ポンプ16側に向けて第1軸心RC1方向に突き出た円筒状のベアリング支持部136とを備えている。そのベアリング支持部136の外周にはボールベアリング72の内輪が嵌め入れられている。そのボールベアリング72の内輪の内周面とベアリング支持部136の外周面とのそれぞれには相対向する環状のスナップリング嵌合溝が形成されており、第3スナップリング138が双方のスナップリング嵌合溝に嵌め入れられている。この第3スナップリング138の嵌合により、ボールベアリング72はケース12に対して第1軸心RC1方向に移動不能とされている。すなわち、前述したスナップリング118,130,138及びベアリング係止部132は協働して、ケース12に対しトルクコンバータ14及び電動機連結用回転要素66を第1軸心RC1方向に移動不能とするように機能している。
【0045】
以上のように構成された駆動装置8では、例えば、エンジン10を走行用の駆動力源とするエンジン走行を行う場合には、エンジン断続用クラッチK0を係合させ、それによりエンジン10からの駆動力をポンプ翼車14aに伝達させる。また、電動機MGは電動機出力ギヤ56および電動機連結用回転要素66等を介してポンプ翼車14aに連結されているので、上記エンジン走行においては、必要に応じて電動機MGにアシストトルクを出力させる。一方で、エンジン10を停止させ電動機MGを走行用の駆動力源とするEV走行(モータ走行)を行う場合には、エンジン断続用クラッチK0を解放させ、それによりエンジン10とトルクコンバータ14との間の動力伝達経路を遮断すると共に、電動機MGに走行用の駆動力を出力させる。
【0046】
また、走行中の車両6が一時的に停車する等の車両停止中では、例えば、エンジン断続用クラッチK0を解放させてエンジン10を停止させ、電動機MGに油圧ポンプ16を回転駆動させると共にクリープトルクを出力させる。このクリープトルクを出力させる際には、電動機MGからの駆動力はトルクコンバータ14を介して駆動輪28に伝達されることになるので、乗員の違和感を抑制するようにそのクリープトルクを出力させる制御が容易である。
【0047】
また、車両6の制動時には、例えば電動機MGに回生作動をさせて、車両制動力により電動機MGに発電させ、その発電した電力が蓄電装置に充電される。
【0048】
また、エンジン10を始動させる際には、例えば、エンジン断続用クラッチK0を係合させて電動機トルクTmgによりエンジン10を回転させエンジン始動を行う。EV走行中にエンジン10を始動させる場合も同様であり、その場合には、車両走行のための出力にエンジン始動のための出力を上乗せした電動機出力を電動機MGに出力させる。
【0049】
本実施例によれば、エンジン10とトルクコンバータ14とがそれぞれ第1軸心RC1(一軸心)まわりに回転するように配設されている一方で、電動機MGは第1軸心RC1とは異なる回転軸心を有して配設されている。具体的には、エンジン10およびトルクコンバータ14は第1軸心RC1上に直列に配設されており、電動機MGはそれらエンジン10およびトルクコンバータ14と並列に配設されている。そして、電動機MGは、トルクコンバータ14の動力伝達用回転部材(ポンプ翼車14a及びトルクコンバータケース14d)に、その動力伝達用回転部材に対して第1軸心RC1まわりに相対回転不能に嵌合された電動機連結用回転要素66を介して連結されている。従って、エンジン10とトルクコンバータ14と電動機MGとが第1軸心RC1上に直列に配設される場合と比較して、駆動装置8の軸方向全長を短くすることができる。そのため、例えばFF型のエンジン10が横置きにされる本実施例ような車両6で、車幅の制約によってエンジン10とトルクコンバータ14と電動機MGとを直列に配設することが困難な場合においても、上記軸方向全長が短い駆動装置8であればその車両6に搭載することが容易になる。また、エンジン10とトルクコンバータ14と電動機MGとが第1軸心RC1上に直列に配設される場合には、ケース12が、第1軸心RC1方向を厚み方向とする電動機MGを支持するための電動機支持用壁を備える必要があるところ、本実施例の駆動装置8においてはそのような電動機支持用壁を設ける必要がなく、この点も駆動装置8の軸方向全長を短くすることに寄与している。
【0050】
また、通常のエンジン車両ではトルクコンバータ14のトルクコンバータケース14dがボルト止め等によりエンジン出力軸に固定され、それによりトルクコンバータ14が第1軸心RC1方向に移動不能とされるところ、本実施例によれば、トルクコンバータケース14dは電動機連結用回転要素66に対して第1軸心RC1まわりに相対回転不能に嵌合されており、且つ、第1スナップリング118が電動機連結用回転要素66(連結部材70)及びトルクコンバータケース14dの嵌合内周面114及び嵌合外周面116の各々に形成された相対向する環状溝115,117に嵌め入れられることにより電動機連結用回転要素66に対して第1軸心RC1方向に相対移動不能とされている。そして、その電動機連結用回転要素66はケース12に対して第1軸心RC1方向に移動不能且つ第1軸心RC1まわりに回転可能とされている。そのため、第1スナップリング118の嵌合によりトルクコンバータ14がケース12に対して第1軸心RC1方向に移動不能とされるので、トルクコンバータ14と上記エンジン出力軸との間でのボルト止め等が不要となる。
【0051】
また、本実施例によれば、電動機出力ギヤ56の歯数は電動機連結ギヤ68の歯数よりも少ないので、電動機MGの出力トルクTmgは増幅されて電動機MGからポンプ翼車14aに伝達される。従って、電動機MGの回転が減速されずにポンプ翼車14aに伝達される場合と比較して、電動機トルクTmgの最大値を低くすることが可能である。そのため、電動機MGの小型化を図り、電動機MGを安価なものとすることが容易である。また、電動機MGが第1軸心RC1とは異なる回転軸心(第2軸心RC2)を有して配設されているので、電動機出力ギヤ56及び電動機連結ギヤ68から構成される減速機を設けることが容易であるという利点がある。
【0052】
また、本実施例によれば、トルクコンバータケース14dによって回転駆動される油圧ポンプ16はポンプロータ16cが第1軸心RC1まわりに回転するように配設されており、電動機連結用回転要素側連結部110の少なくとも一部は、ポンプカバー16bの第1軸心RC1まわりに設けられた内周穴であるポンプカバー貫通穴100に対して径方向内側に設けられている。従って、電動機連結用回転要素側連結部110がポンプカバー16bに対し第1軸心RC1と直交する方向(径方向)に重ねて設けられるので、そのように重ねて設けられない場合と比較して駆動装置8の軸方向全長を短くすることができる。また、ポンプロータ16cが第1軸心RC1まわりに回転するように配設されているので、油圧ポンプ16が例えばトルクコンバータ14等と全く異なる軸心上に配設される場合と比較して、油圧ポンプ16からの油圧供給先たとえばトルクコンバータ14や第1軸心RC1上のボールベアリング72等と油圧ポンプ16との間の管路を短くすることが可能である。そのため、その管路の流体抵抗を低減し、燃費悪化を防止できる。
【0053】
また、本実施例によれば、電動機連結用回転要素66は、電動機MGからの駆動力を受ける動力伝達部としての外周歯122を備えており、その外周歯122は、支持部126とポンプカバー16bと連結部材70の電動機連結用回転要素側連結部110と第1スナップリング118との全てに対し、第1軸心RC1と直交する方向すなわち径方向に重ねて設けられている。従って、上記電動機連結用回転要素66の第1軸心RC1方向の長さを短くすることができ、その結果として、駆動装置8の軸方向全長を短くすることができる。
【0054】
また、本実施例によれば、電動機MGからの駆動力は、トルクコンバータ14の入力側回転部材であるポンプ翼車14a及びトルクコンバータケース14dに入力される。従って、エンジン10からの駆動力および電動機MGからの駆動力をトルクコンバータ14を介して駆動輪28に伝達することができるので、駆動輪28に伝達される駆動力を滑らかに変化させることが容易であり、例えば車両発進時などにおいて快適な走行を実現し易くなる。
【0055】
また、本実施例によれば、トルクコンバータ14の入力側回転部材の一部を構成するトルクコンバータケース14dは、エンジン断続用クラッチK0を介してエンジン10に連結されている。従って、車両走行中においてエンジン10を停止することができ、燃費の向上を図ることが可能である。すなわち、前記EV走行をすることが可能である。
【0056】
また、本実施例によれば、電動機連結用回転要素側連結部110は、ポンプカバー16bに対し、第1軸心RC1と直交する方向に重ねて設けられている。従って、電動機連結用回転要素側連結部110をポンプカバー16bに対し第1軸心RC1と直交する方向に重ねない場合と比較して、駆動装置8の軸方向全長を短くすることができる。
【0057】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【0058】
例えば、前述の実施例において、電動機連結用回転要素側連結部110は、その一部がポンプカバー貫通穴100に対して径方向内側に設けられているが、トルクコンバータ側連結部106とスプライン嵌合する電動機連結用回転要素側連結部110の全部がポンプカバー貫通穴100に対して径方向内側に設けられていても差し支えない。
【0059】
また、前述の実施例において、電動機連結ギヤ68の外周歯122は、支持部126とポンプカバー16bと連結部材70の電動機連結用回転要素側連結部110と第1スナップリング118との全てに対し、第1軸心RC1と直交する方向すなわち径方向に重ねて設けられているが、それらの全てではなく、外周歯122は、それら支持部126とポンプカバー16bと電動機連結用回転要素側連結部110と第1スナップリング118との何れかとだけ上記径方向に重ねて設けられていても差し支えない。
【0060】
また、前述の実施例において、電動機MGは、電動機連結用回転要素66と電動機出力ギヤ56とによって構成された1対のギヤ対により、トルクコンバータケース14dに連結されているが、そのようなギヤ対に限らず、伝動ベルトやチェーンによってトルクコンバータケース14dに連結されていても差し支えない。なお、電動機MGが伝動ベルトによってトルクコンバータケース14dに連結されるのであれば、電動機連結用回転要素66は上記伝動ベルトが巻き掛けられるベルト巻掛部を外周歯122に替えて有することになり、そのベルト巻掛部が本発明の動力伝達部に対応する。また、電動機MGがチェーンによってトルクコンバータケース14dに連結されるのであれば、電動機連結用回転要素66は上記チェーンが巻き掛けられるチェーン噛合部を外周歯122に替えて有することになり、そのチェーン噛合部が本発明の動力伝達部に対応する。
【0061】
また、前述の実施例の図5において、互いにスプライン嵌合するトルクコンバータ側連結部106と電動機連結用回転要素側連結部110との関係に関し、トルクコンバータ側連結部106が内周側の軸に相当する一方で電動機連結用回転要素側連結部110が外周側の穴に相当するが、その軸と穴との関係は逆であってもよく、すなわち、トルクコンバータ側連結部106が外周側である一方で電動機連結用回転要素側連結部110が内周側であっても差し支えない。
【0062】
また、前述の実施例の図1、図3において、電動機MGは、電動機連結用回転要素66と電動機出力ギヤ56とによって構成された1対のギヤ対を介してトルクコンバータ14のポンプ翼車14aに連結されているが、ポンプ翼車14aではなくタービン翼車14bに連結されていても差し支えない。そのように電動機MGがタービン翼車14bに連結されているのであれば、そのタービン翼車14bが本発明の動力伝達用回転部材に対応する。
【0063】
また、前述の実施例において、エンジン10はエンジン断続用クラッチK0を介してトルクコンバータ14のポンプ翼車14aに連結されているが、そのエンジン断続用クラッチK0が設けられておらず、エンジン10とポンプ翼車14aとの間の動力伝達経路が遮断できない構成であっても差し支えない。
【0064】
また、前述の実施例において、第1軸心RC1と第2軸心RC2とは互いに平行な軸心であるが、それらが平行である必要はない。
【0065】
また、前述の実施例において、駆動装置8は、FF型の車両6において横置きにされるものであるが、車両6はFR型であってもよいし、駆動装置8は縦置きにされてもよい。
【0066】
また、前述の実施例において、エンジン断続用クラッチK0は湿式多板型の油圧式摩擦係合装置であるが、乾式であってもよいし、電磁クラッチ等の他の作動方式のクラッチであっても差し支えない。
【0067】
また、前述の実施例において、ロックアップクラッチ42が設けられているが、ロックアップクラッチ42は必須ではない。
【0068】
また、前述の実施例において、自動変速機18は有段の自動変速機であるが、無段階に変速比γを変更できるCVTであってもよいし、手動変速機に置き換えられても差し支えない。また、自動変速機18を備えない駆動装置8も考え得る。
【0069】
また、前述の実施例において、油圧ポンプ16は第1軸心RC1上に配設されているが、第2軸心RC2上に配設されることも考え得る。
【0070】
また、前述の実施例において、油圧ポンプ16は機械式のオイルポンプであるが、電動オイルポンプであっても差し支えない。油圧ポンプ16が電動オイルポンプであれば、油圧ポンプ16は第1軸心RC1上とは別個に設けられても差し支えない。
【0071】
また、前述の実施例において、トルクコンバータ14が流体伝動装置として用いられているが、そのトルクコンバータ14のトルク増幅作用は必ずしも必要ではなく、例えば、そのトルクコンバータ14がトルク増幅作用のないフルードカップリングに置き換わっていても差し支えない。
【0072】
また、前述の実施例において、電動機連結用回転要素66は、電動機連結ギヤ68および連結部材70である複数の部材から構成されているが、1部材により構成されていても差し支えない。図8は、前述の実施例とは異なり、電動機連結用回転要素が1部材により構成された例を示す断面図であって、図5に相当する図である。図8では、図5の電動機連結用回転要素66すなわち電動機連結ギヤ68及び連結部材70が電動機連結用回転要素166に置き換わった例が示されている。図8の符号168は電動機連結用回転要素166の支持部であって、電動機連結用回転要素166をケース12に対して第1軸心RC1まわりに回転可能に支持するものであり、図5の支持部126に対応する。図8の符号170は電動機連結用回転要素166の連結部であって、電動機連結用回転要素166をトルクコンバータケース14dに対してスプライン嵌合により第1軸心RC1まわりに相対回転不能に連結するものであり、図5の電動機連結用回転要素側連結部110に対応する。なお、ボールベアリング72の内輪と外輪との何れがケース12に嵌め入れられても差し支えないが、前述の図5では、ボールベアリング72の内輪はケース12に嵌め入れられる一方で、外輪は電動機連結用回転要素66(電動機連結ギヤ68)に嵌め入れられるが、図8ではそれとは逆に、ボールベアリング72の内輪は電動機連結用回転要素166に嵌め入れられている一方で、外輪はケース12に嵌め入れられている。また、図8の電動機連結用回転要素166は、第3スナップリング138の嵌合及びスナップリング172の嵌合により、図5の電動機連結用回転要素66と同様にして、ケース12に対して第1軸心RC1方向に移動不能とされている。
【符号の説明】
【0073】
8:車両用駆動装置
10:エンジン
12:トランスアクスルケース
14:トルクコンバータ(流体伝動装置)
14a:ポンプ翼車(動力伝達用回転部材、入力側回転部材)
14d:トルクコンバータケース(動力伝達用回転部材、入力側回転部材)
16:油圧ポンプ
16b:ポンプカバー
16c:ポンプロータ(ロータ)
28:駆動輪
66,166:電動機連結用回転要素
100:ポンプカバー貫通穴(内周穴)
110:電動機連結用回転要素側連結部(連結部)
114:嵌合内周面
115:内周面環状溝(環状溝)
116:嵌合外周面
117:外周面環状溝(環状溝)
118:第1スナップリング(止め輪)
122:外周歯(動力伝達部)
126:支持部
MG:電動機
K0:エンジン断続用クラッチ
RC1:第1軸心(一軸心)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、該エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路の一部を構成する流体伝動装置と、電動機とを備えた車両用駆動装置であって、
前記エンジンと前記流体伝動装置とがそれぞれ一軸心まわりに回転するように配設されている一方で、前記電動機は該一軸心とは異なる回転軸心を有して配設されており、
前記電動機は、前記流体伝動装置の動力伝達用回転部材に、該動力伝達用回転部材に対して前記一軸心まわりに相対回転不能に嵌合された電動機連結用回転要素を介して連結され、
該電動機連結用回転要素は該一軸心方向に移動不能且つ該一軸心まわりに回転可能であり、
前記動力伝達用回転部材は、止め輪が該動力伝達用回転部材及び該電動機連結用回転要素の嵌合内周面および嵌合外周面の各々に形成された相対向する環状溝に嵌め入れられることにより該電動機連結用回転要素に対して前記一軸心方向に相対移動不能とされている
ことを特徴とする車両用駆動装置。
【請求項2】
前記流体伝動装置の動力伝達用回転部材によって回転駆動される油圧ポンプは、該油圧ポンプのロータが前記一軸心まわりに回転するように配設されており、
前記電動機連結用回転要素の前記動力伝達用回転部材に対する連結部の少なくとも一部は、該油圧ポンプが有するポンプカバーの前記一軸心まわりに設けられた内周穴に対して径方向内側に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記電動機連結用回転要素は、前記電動機からの駆動力を受ける動力伝達部を備えており、
該動力伝達部は、前記電動機連結用回転要素を非回転部材に対して回転可能に支持する該電動機連結用回転要素の支持部と、前記ポンプカバーと、前記電動機連結用回転要素の連結部と、前記止め輪とのうちの何れか又は全てに対し、前記一軸心と直交する方向に重ねて設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記流体伝動装置の動力伝達用回転部材は、前記エンジンからの駆動力が入力される入力側回転部材である
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記流体伝動装置の入力側回転部材は、エンジン断続用クラッチを介して前記エンジンに連結されている
ことを特徴とする請求項4に記載の車両用駆動装置。
【請求項1】
エンジンと、該エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路の一部を構成する流体伝動装置と、電動機とを備えた車両用駆動装置であって、
前記エンジンと前記流体伝動装置とがそれぞれ一軸心まわりに回転するように配設されている一方で、前記電動機は該一軸心とは異なる回転軸心を有して配設されており、
前記電動機は、前記流体伝動装置の動力伝達用回転部材に、該動力伝達用回転部材に対して前記一軸心まわりに相対回転不能に嵌合された電動機連結用回転要素を介して連結され、
該電動機連結用回転要素は該一軸心方向に移動不能且つ該一軸心まわりに回転可能であり、
前記動力伝達用回転部材は、止め輪が該動力伝達用回転部材及び該電動機連結用回転要素の嵌合内周面および嵌合外周面の各々に形成された相対向する環状溝に嵌め入れられることにより該電動機連結用回転要素に対して前記一軸心方向に相対移動不能とされている
ことを特徴とする車両用駆動装置。
【請求項2】
前記流体伝動装置の動力伝達用回転部材によって回転駆動される油圧ポンプは、該油圧ポンプのロータが前記一軸心まわりに回転するように配設されており、
前記電動機連結用回転要素の前記動力伝達用回転部材に対する連結部の少なくとも一部は、該油圧ポンプが有するポンプカバーの前記一軸心まわりに設けられた内周穴に対して径方向内側に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記電動機連結用回転要素は、前記電動機からの駆動力を受ける動力伝達部を備えており、
該動力伝達部は、前記電動機連結用回転要素を非回転部材に対して回転可能に支持する該電動機連結用回転要素の支持部と、前記ポンプカバーと、前記電動機連結用回転要素の連結部と、前記止め輪とのうちの何れか又は全てに対し、前記一軸心と直交する方向に重ねて設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記流体伝動装置の動力伝達用回転部材は、前記エンジンからの駆動力が入力される入力側回転部材である
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記流体伝動装置の入力側回転部材は、エンジン断続用クラッチを介して前記エンジンに連結されている
ことを特徴とする請求項4に記載の車両用駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2012−35680(P2012−35680A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175706(P2010−175706)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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