説明

車両

【課題】回路構成が複雑でなく、位相差信号に対する応答性が良好で、かつ、熱により信号変動が小さいモーター制御回路を提供する。
【解決手段】モーターの回転制御回路において、前記モーターのPWM制御回路と、前記モーターの回転速度センサと、基準信号発生回路10と、位相比較回路と、前記モーターの検出回転速度信号を分周する分周器とを備え、この分周器からの信号と前記基準信号に基づく信号との位相差を位相比較器で求め、この位相差信号を前記PWM制御回路に供給するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモーターのPWM制御回路に係わり、特にPLL制御回路とPWM制御回路を組み合わせたモーターの回転制御回路に関し、さらに、この制御回路を、駆動体を駆動するための駆動用モーターの制御に利用した発明に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のPWM制御回路として、例えば、特開平5−30602号公報に記載された電動車両用モーター制御回路が存在する。
【0003】
この従来技術は、アクセル電圧と三角波とを比較してアクセル電圧に応じて変化するパルス幅の駆動信号を発生し、該駆動信号によってパワートランジスタ(TR1〜TR4)をPWM制御しモーターMに通電するモーター回路(CP1,TR1〜TR4)を有している。また、モーターMに供給されるバッテリ電流を検出し基準値を超えたときに駆動信号を低下させる電流制限回路(Rs ,CP2)と,モーターMの回転数を検出しこれに基づいてアクセル電圧を変化させてモーターMを定速制御する回転数制御回路(2〜4)とを備えている。
【0004】
一方、モーターの回転数を正確に制御するために、PLL制御回路をこのPWM制御回路に組み合わせることが考えられる。この回路として考えられる図1に示す制御システムのように、基準信号発生回路10と、この基準信号から三角波を形成する回路12と、モーター14と、モーターのスイッチング回路16と、モーターの回転数を検出するためのエンコーダ18と、エンコーダからの検出パルス信号をN分周するN分周器20と、N分周信号と基準パルス信号との位相差を検出する位相比較器22と、ローパスフィルタ24と、電圧比較器25とを備え、ローパスフィルタからのアナログ信号26と三角波からスイッチ信号を形成してこれをモーターのスイッチング回路(PWM制御回路)のトランジスタのゲートに供給する。
【0005】
すなわち、アナログ信号と三角波信号とが比較されて、アナログ信号が三角波より高い期間、「H」の信号が増幅器16Aに、アナログ信号が三角波信号以下の期間「L」の信号が増幅器16Aに出力される。この増幅器からの出力は、直列に接続された二つのトランジスタのゲートにそれぞれ入力される。したがって、モーター14に供給される電圧のデューティ比を変化させることができる。
【0006】
しかしながら、図1の回路ではアナログ信号からデューティ比制御信号を得ているために、アナログ回路の部分において、次の問題点がある。回路構成が複雑になるばかりか、位相差信号に対する応答性が悪く、かつ、熱により信号変動も大きいという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−30602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、回路構成が複雑でなく、位相差信号に対する応答性が良く、熱による信号変動が少ない、モーターの回転制御回路を提供することを目的とする。
【0009】
また、本願の発明者は、このモーターの制御回路を利用して駆動体の駆動時の姿勢を安定的に維持するためのシステムについてさらに検討した。この検討の過程で、駆動体の本体の重心に駆動部の加重点を相対的に移動させることによって駆動体の駆動時の姿勢を安定的に維持することができるのを見出した。さらにこの検討の中で、このような姿勢制御のための制御回路として、駆動体の位置を検出し、これを迅速に利用するシステム、すなわち、CPUの演算速度以上のスピードで姿勢制御を可能にするシステムが有用であることがわかった。このシステムとして、既述のモーター制御回路を応用するのが好適である。なお、駆動部とは本体を走行などさせるための駆動輪などをいう。駆動部の加重点とは、本体の重量が加わる点をいい、例えば、駆動輪に対する車軸である。
【0010】
そこで、本発明は、この回転制御回路によって駆動源としてのモーターが回転制御される駆動体、及びこの駆動体の一例としての車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は係る課題を解決するために、モーターの回転制御回路において、前記モーターのPWM制御回路と、前記モーターの回転速度センサと、基準信号発生回路と、位相比較回路と、前記モーターの検出回転速度信号を分周する分周器と、を備え、この分周器からの信号と前記基準信号に基づく信号の位相差を前記位相比較器で求め、この位相差信号を前記PWM制御回路に供給するように構成したことを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、位相差信号をPWM制御回路に供給するように構成されているために、アナログ回路を省略したモーターの回転制御システムが提供でき、既述の課題を解決することが可能となる。
【0013】
本発明の一つの形態において、本発明に係わるモーターの回転制御回路は、さらに、前記モーターの回転指令手段を備え、当該指令手段は、前記モーターへの回転速度変化要求内容に応じて、前記分周器の分周率を変化させるように構成されてなる。さらに、本発明は、既述のモーターの回転制御回路を備え、この制御回路によって制御されるモーターを駆動機構の駆動源として用いた駆動体であることを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明は、モーターの回転制御回路において、前記モーターのPWM制御回路と、前記モーターへの回転指示信号出力手段と、基準信号発生回路と、位相比較回路と、前記モーターへの指示信号を分周する分周器と、を備え、この分周器からの信号と前記基準信号に基づく信号の位相差を前記位相比較器で求め、この位相差信号を前記PWM制御回路に供給するように構成したことを特徴とする。
【0015】
さらに本発明は、車体と、駆動輪と、補助輪と、第1の駆動源とを有し、この第1の駆動源によって前記駆動輪を回転させて前記車体を走行させるようにした車両であって、前記車体の位置センサと、当該車体の駆動制御手段と、当該車体の姿勢制御手段とを備え、この姿勢制御手段は、前記位置センサと前記駆動制御手段からの信号によって前記駆動輪の車体に対する位置を移動させる第2の駆動源と、前記補助輪を路面から浮上させるための第3の駆動源を備えるように構成された車両であることを特徴とする。
【0016】
この発明の形態に依れば、前記位置センサは前記姿勢制御手段に、検出信号としての周波数信号を出力し、当該姿勢制御手段は、基準信号と前記周波数信号との位相差に基づいて前記駆動輪の車体に対する位置の移動量を決定してなる発明が提供される。
【0017】
前記姿勢制御手段は、基準信号発生回路と、位相比較回路と、前記パルス波信号を分周する分周器と、PWM制御回路と、を備え、この分周器からの信号と前記基準信号に基づく信号の位相差を前記位相比較器で比較し、この位相差信号を前記PWM制御回路に供給し、PWM制御回路の出力を前記第2駆動源に供給してなる。
【0018】
前記第1及び第2駆動源は、電動モーターである。前記位置センサは、前記車体と路面との距離センサ、又は車体の傾斜を検出する傾斜センサである。
【0019】
さらに本発明は、本体部と、駆動部と、前記駆動部を動作させて前記本体部を移動させる駆動制御部と、前記本体部の位置センサと、前記本体部の重心に対して前記駆動部の加重点を相対的に移動させる移動手段と、前記位置センサの出力値に応じて前記相対的移動量を決定する決定手段とを備え、前記本体部の重心に対して前記駆動部の加重点をX―Y方向に移動可能である駆動体の姿勢制御システムであることを特徴とする。
【0020】
決定手段は、好適には、既述のとおり、位置センサの出力値をPLL制御回路に供給することによって、既述の相対的移動量を得る。駆動部を本体に対して相対的に移動させるための移動機構として、電動モーター、電動モーターの動力を駆動部の移動のための機構に伝達する機械的伝達手段、駆動部の移動機構としての例えば、リニアガイドやボールねじなどがある。位置センサの出力値をPLL制御回路に供給して電動モーターを制御すれば、駆動部の位置を迅速に定めることができる。
【0021】
PLL回路の位相比較部の出力を直接PMW制御回路に供給して、PWM回路がデューティ比を変化させながら電動モーターに供給される電力を変化させて、電動モーターの回転量を制御することができる。
【0022】
駆動部の加重点を本体部の重心に対して相対的に移動させることにより、本体部の駆動時における姿勢を安定にでき、かつ、安定的な姿勢制御に対する外乱を補償して姿勢を安定状態に維持できる。このような外乱として、駆動体が電動自動車や電動車椅子、あるいは電動カートの場合は、車体に対して加わる正又は負の加速度、あるいは傾斜路の走行である。
【0023】
駆動体の駆動姿勢が安定にできるとすると、補助輪などを車両から浮上させて車両を走行させることができる。この結果、摩擦力が低減するために、駆動体の消費エネルギーを低減して車両の走行効率や駆動体の駆動効率を向上させることが可能となる。
【0024】
なお、X方向とは例えば、本体の移動方向(前進・後進方向)をいい、Y方向とは例えば車軸の方向をいう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】モーターの回転制御のための、PLL回路とPWM回路とを組み合わせてなる制御回路の一例である。
【図2】本発明に係わるPLL回路とPWM回路とを組み合わせたモーターの制御回路のブロック図である。
【図3】当該回路を車両の姿勢制御機構に応用した、車両の姿勢制御回路のブロック図である。
【図4】車両の姿勢制御動作を示す模式図である。
【図5】位相比較部における位相比較動作を説明する波形図である。
【図6】車両の加速走行状態における車体の姿勢制御動作を説明する模式図である。
【図7】車両の減速走行状態における車体の姿勢制御動作を説明する模式図である。
【図8】車両の傾斜路走行状態における車体の姿勢制御動作を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図2には、本発明の一実施例に係わる回転制御モーターが示されている。この実施例が図1に示す回路と異なるのは、先ず第1に基準信号である基準パルス10が位相比較器22に入力され、N分周器20からの信号と基準信号との位相差が比較された結果の信号が直接PWM制御回路16に供給されている点である。16はモーターをスイッチングするPWM回路である。なお、基準信号発生回路10は、例えば、基準周波数発生回路とこれをM分周するM分周回路とから構成される。
【0027】
図5は位相比較器22における位相比較動作を示す波形図である。(1)は水晶発信器からの基本周波数信号である。(2)はエンコーダ18からの出力パルス波形である。(3)は基本周波数信号をM分周して得られた基準比較周波数信号の波形である。(4)はエンコーダからのパルス信号をN分周して得られた検出周波数信号の波形である。(5)は位相比較器22での位相比較の結果出力された、二つの周波数信号の位相差に基づく位相差信号の波形である。
【0028】
図2において、例えば、位相差信号が「L」インピーダンスの期間はTR1がオンとなり、かつ、TR2がオフとなって、モーターには正転電流が流れる。一方、位相差信号が「H」インピーダンスの期間は、TR1及びTR2がどちらもオフとなる。このとき、モーター14は逆転するか、あるいはモーターを負荷(蓄電部)に接続することにより、モーターを発電制動機として使用することが可能となる。
【0029】
この制御回路によれば、アナログ回路を備えることなくモーターの回転制御回路を実現可能であるために、既述の問題が解消される。また、この回路によれば、モーターに回転数差を生じさせる場合には、位相差に応じてモーターをデューティ制御することが可能となる。
【0030】
このモーターは電動モーターであり、例えば、DCモーター、ブラシレスモーター、パルスモーター等各種のモーターが該当する。このモーター及びこのモーターの回転制御回路を用いることにより、この駆動源によって駆動される駆動体を広く提供することができる。このような駆動体の例として、電気自動車、電動車椅子、電動カートなどを例示することができる。
【0031】
図3は、図2の制御回路を車両の姿勢制御に応用した場合の制御回路を示したものである。この実施形態における車両の姿勢制御とは、2輪走行を可能とするために車両の姿勢を安定的に維持するための制御を意味する。例えば、既述のとおり、車体の重心点に駆動輪の加重点を合致させることである。以下、詳しく説明する。
【0032】
図3の制御回路の説明に先立って、図4を利用して2輪走行可能な車両100について説明する。この車両100は左右一対の駆動輪102と同じく左右一対(又は中央一つの)補助輪106とを備えている。
【0033】
この車両の重心点110は駆動輪102の前側にあり、車両の補助輪106は、車両が駐停車状態では路面104に接地している。駆動輪102は、車両の進行方向に回転或いは後退方向に回転できるようになっており、図4の(1)〜(3)に示すように、車両は、駆動輪102を車体の重心位置まで移動させた後、補助輪106を路面104から浮上させた状態で駆動輪102のみで車両を支えて走行ができるように構成されている。補助輪106は図示しない電動機構(第3の駆動源)によって、車体内に収容することができる(図4(3)参照)。
【0034】
図4の(2)は、駆動輪102が車両100の前進方向に相対移動して、駆動輪102が車両の重心位置110に向けて移動している状態を示している。この過程において、補助輪106を路面104から浮上させ、かつ車両を左右の駆動輪102の2輪のみで支えることができる。
【0035】
符号108は車両の先端または後端に設置された距離センサである。また、車両には、距離センサに代えて、或いは距離センサとともに傾斜センサを備えてもよい。これらセンサの検出値は、車両走行中の姿勢を安定に維持するために図3の姿勢制御回路において利用される。
【0036】
図3の回路について説明すると、符号30は車両の駆動制御部(各駆動源への指令手段)であり、左右の駆動機構102A,102Bのそれぞれの電動モーターBのドライバーAを制御するとともに、車体に対する左右の駆動輪の位置を移動させて2輪走行を可能とするために車両姿勢制御部を制御する。車両姿勢制御部は、次のように構成されている。
【0037】
符号38は基準周波数信号10をM分周するM分周器、符号34は、PMW制御信号を増幅してモーターに供給される電圧信号を得るための電力変換部である。符号36は、駆動制御部30からの制御によって電圧の極性を変化させるためのベクトル制御部であって、モーターの回転方向を制御することが可能となる。
【0038】
距離センサ108としては、路面との距離に応じた周波数信号を出力できるものであれば良く、例えば、路面との距離に応じたアナログ値(例えば電圧値)を出力する機構と、このアナログ信号から周波数信号を得るための要素(例えば電圧制御発信回路)とから構成される。
【0039】
距離センサからの周波数信号がデバイダ部20でN分周されたN分周信号と、基準周波数信号がM分周器38によってM分周されたM分周信号との位相が位相比較部22で比較される。
【0040】
比較された後の「H」インピーダンス又は「L」インピーダンスの信号がPMW制御部に入力されて、「H」インピーダンス又は「L」インピーダンスの期間に応じてPWMから出力されるパルス信号のデューティ比が変化される。このデューティ比の変化は、電力変換部において電力差となってモーター14に供給される。
【0041】
このモーター14は、車体に対して駆動輪102を移動させるための駆動源(第2の駆動源)となるものである。駆動輪を車両の重心点110に向けて移動させて、駆動輪の車軸(加重点)を重心点110からの鉛直線に合致するようにさせると、車体を駆動輪によってのみ支え、車両は2輪走行が可能となる。この時補助輪108を路面から浮上させることにより、補助輪と路面との摩擦を無くして車両を走行させることが可能となる。
【0042】
このように車両の姿勢を制御するためのモーター14(第2の駆動源)は距離センサ108の出力に合わせてPLL制御下で駆動されるために、CPUによる制御と比較して、姿勢制御が迅速確実に行われる利点がある。
【0043】
車体の前方下端にある路面センサと路面との距離は、次の場合に変化する。第1に、補助輪が路面から浮上して、駆動輪のみで車体を支える状態になるとき。第2に車体が補助輪を浮上させて、駆動輪で走行している状態であって、車体に加速度が加わった状態。第3に、車体が補助輪を浮上させて駆動輪で走行している状態であって、車体が傾斜路を走行している状態。
【0044】
第1の場合、駆動制御部30は、車体の開始動作、例えば、電動モーターがONされた状態を検出して、M分周率及びN分周率を適宜変化させて、位相比較部22においてより大きな位相差が出るようにする。この結果、駆動輪102を車体に対して相対的に移動させる指令がモーター14に供給される。
【0045】
第2及び第3の場合、加速度や傾斜路によって、距離センサからのパルス信号の周波数に変化が発生する。駆動制御部30は、距離センサと路面との距離が一定な値を保つ側に、駆動輪を車体に対して移動できるようにするため、N分周率とM分周率とを制御する。
【0046】
駆動輪102を車体に対して移動させるための既述の距離センサに限らず、車体の傾斜を検出する傾斜センサ32を使用しても良い。
【0047】
図4において、符号200はガイドであり、符号202はこのガイドに沿って進退するスライダである。このスライダは駆動輪と一体に構成されており、電動モーター14の回転を図示しない伝達機構を介してスライダ又はガイドに伝達して駆動輪の車体に対する相対位置を変化させることが可能となる。例えば、スライダとガイドとをボールねじ或いはリニアガイドによって駆動輪の移動機構を構成することができる。
【0048】
次に車体の運転状態の具体例に合わせて制御態様を説明する。第1は車両の運転開始時である。乗員が車両に乗り込んで、電動モーターをオンすると、駆動制御部30はこのオン信号を検出して、図4にあるように、スライダをガイドに沿って相対移動させる。このとき、駆動輪は接地しているために、本体は駆動輪に対して僅かに後進方向に移動する。この結果、駆動輪の加重点を車体の重心位置に一致させることができる。
【0049】
車両の停車状態では、補助輪106は接地されており、車両の重心点は駆動輪より前方側に存在する。車両の停車状態から前記ガイド202を車体に対して移動させると、車両の重心点110の直下に駆動輪が到達することによって、車両は2基の駆動輪によってのみ支持できる状態になる。この際の駆動輪の回転距離は、駆動輪が車両に対して移動した距離にほぼ相当すると考えて良い。
【0050】
次に、車両が加速された場合について説明する。車両にその進行方向に正の加速度が加えられると、車両の先端は駆動輪の車軸を中心に反時計方向に回転しようとする。
【0051】
すなわち、図6に示すように、定速度時から加速開始時には、車軸から加速量Fが発生し、このFにより重心点には後方ベクトルGが生じる。この結果、定速度走行をしている2輪走行の車両姿勢が崩れる。
【0052】
この回転(車両姿勢の崩れ)によって、距離センサ108によって検出される車体と路面との間の距離が大きくなる。駆動制御部30は、N分周率及びM分周率を、車両の運転状態から定め、位相比較部22において、二つの信号に位相差が表れるようにする。N値及びM値は、例えば、車両速度や車両加速度との関係において適切な値が予め決定され、駆動制御部内のメモリ内に記憶テーブルの形で保存されている。
【0053】
位相比較部22において位相差が発生すると、この位相差信号に基づいてPWM制御部16によってデューティ比が決定され、このデューティ比に依るパルス信号が電力変換部34に送られる。電力変換部34は、パルス信号をモーター14に印加される電力値に変換する。駆動制御部30は電圧値の極性を決定し、これをベクトル制御部36に指令する。
【0054】
車両に正の加速度が加わった際、図6の加速補正の図に示すように、駆動輪102、すなわちスライダ202をガイド200に沿って、車体に対してその後進方向に相対移動させると、車軸150と重心110とがずれ、車軸を中心に時計方向に車体を回転させるベクトルが発生して、車体の浮き上がりの姿勢崩れを補正・補償することができる。
【0055】
次に、車両が定速走行状態に復帰する過程では、距離センサ108からの出力によって位相比較部22で発生した二つの信号の位相差に基づいて車両の位置が重心点110まで復帰する。
【0056】
次に車両の減速方向の加速度が加わった場合には、図6とは反対に車両には車軸を中心として時計方向に回転しようとする。すなわち、図7に示すように、車軸150に減速ベクトルが発生すると、この減速ベクトルにより重心点には前方ベクトルIが発生して車軸150を中心にした車体の姿勢崩れが起きる。
【0057】
このとき、駆動輪102が車両の前進方向に対して移動して、車軸150が重心点より前に来るように、図3の制御回路はモーター14を制御する。その結果、距離センサの変化量に応じて重心ベクトルJが車軸に収束する(向かう)ようにPLL制御される。
【0058】
次いで車両が停止した場合には、車両は既述のとおり二つの駆動輪102で車体を支持するように直立し、電動モーターをオフする際、補助輪106が車両前部から露出しつつ、駆動輪を車両の後進方向に移動させながら駆動輪を僅かに車両の後進方向に回転させて、車両を補助輪106で支持して車両の駐車が完了する。
【0059】
次に、車両が傾斜路を走行する場合について説明する。車両が定速度走行状態から上り傾斜に進入すると、傾斜路走行時の車両姿勢を安定させるため、距離センサと路面との間の距離が平坦路走行の場合の通常時の距離と比較して、上り傾斜路の場合は小さく、下り傾斜路の場合は大きくなるようにされる。図8の(1)は距離センサと路面との間が通常時の距離にある場合を示し、図8の(2)は距離センサと路面との間がこれより小さい場合を示し、(3)は距離センサと路面との間が通常距離より大きくなるようになっている。
【0060】
距離センサと路面との距離は正又は負の傾斜角毎にメモリに記憶テーブルの形で保存されている。傾斜角は傾斜角センサによって検出可能である。姿勢制御回路は、距離センサと路面との間の距離が、傾斜路において設定値になるように駆動輪を車体に対して前後方向に移動させる。
【0061】
図8の(2)及び(3)とも、重心点に加わる重心ベクトルJは車軸に収束するように駆動輪の位置が制御される。車両の姿勢制御は、前後方向または左右方向に行われる。既述の実施例では、2輪(2軸)の場合を例示したが、これに限定されず、本発明は1輪(1軸)の場合にも適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モーターの回転制御回路において、
前記モーターのPWM制御回路と、
前記モーターの回転速度センサと、
基準信号発生回路と、
位相比較回路と、
前記モーターの検出回転速度信号を分周する分周器と、
を備え、
この分周器からの信号と前記基準信号に基づく信号の位相差を前記位相比較器で求め、この位相差信号を前記PWM制御回路に供給するように構成した、モーターの回転制御回路。
【請求項2】
前記モーターの回転指令手段をさらに備え、当該指令手段は、前記モーターへの回転速度変化要求内容に応じて、前記分周器の分周率を変化させる、請求項1記載のモーターの回転制御回路。
【請求項3】
請求項1又は2記載のモーターの回転制御回路を備え、この制御回路によって制御されるモーターを駆動機構の駆動源として用いた、駆動体。
【請求項4】
モーターの回転制御回路において、
前記モーターのPWM制御回路と、
前記モーターへの回転指示信号出力手段と、
基準信号発生回路と、
位相比較回路と、
前記モーターへの指示信号を分周する分周器と、
を備え、
この分周器からの信号と前記基準信号に基づく信号の位相差を前記位相比較器で求め、この位相差信号を前記PWM制御回路に供給するように構成した、モーターの回転制御回路。
【請求項5】
車体と、駆動輪と、補助輪と、第1の駆動源とを有し、この第1の駆動源によって前記駆動輪を回転させて前記車体を走行させるようにした車両であって、
前記車体の位置センサと、
前記車体の駆動制御手段と、
前記車体の姿勢制御手段と、
を備え、
前記姿勢制御手段は、前記位置センサと前記駆動制御手段からの信号によって前記駆動輪の車体に対する位置を移動させる第2の駆動源と、前記補助輪を路面から浮上させるための第3の駆動源を備える、車両。
【請求項6】
前記位置センサは前記姿勢制御手段に、検出信号としての周波数信号を出力し、当該姿勢制御手段は、前記基準信号と前記周波数信号との位相差に基づいて前記駆動輪の車体に対する位置の移動量を決定してなる請求項5記載の車両。
【請求項7】
前記姿勢制御手段は、基準信号発生回路と、位相比較回路と、前記パルス波信号を分周する分周器と、PWM制御回路と、を備え、この分周器からの信号と前記基準信号に基づく信号の位相差を前記位相比較器で比較し、この位相差信号を前記PWM制御回路に供給し、前記PWM制御回路の出力を前記第2駆動源に供給してなる請求項6記載の車両。
【請求項8】
前記第1及び第2駆動源が電動モーターである請求項5乃至7の何れか1項記載の車両。
【請求項9】
前記位置センサは、前記車体と路面との距離センサ、又は車体の傾斜を検出する傾斜センサである請求項5乃至8の何れか1項記載の車両。
【請求項10】
本体部と、
駆動部と、
前記駆動部を動作させて前記本体部を移動させる駆動制御部と、
前記本体部の位置センサと、
前記本体部の重心に対して前記駆動部の加重点を相対的に移動させる移動手段と、
前記位置センサの出力値に応じて前記相対的移動量を決定する決定手段と、
を備え、
前記本体部の重心に対して前記駆動部の加重点が移動可能である、駆動体の姿勢制御システム。
【請求項11】
前記本体部の重心に対して前記駆動部の加重点をX―Y方向に移動可能である、請求項10に記載の駆動体の姿勢制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−226948(P2010−226948A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106304(P2010−106304)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【分割の表示】特願2004−548074(P2004−548074)の分割
【原出願日】平成15年10月29日(2003.10.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】