説明

車体の前部構造

【課題】ラジエータを通過した後の高温風を、ダクトを用いて効率良くエンジンルーム外に排出することができるとともに、ダクトをエンジンルーム内のレイアウトを阻害することなく配置することができる車体の前部構造を提供する。
【解決手段】エンジンルーム100の前部にラジエータ21が配設され、エンジンルーム100の上部がフロントフード10で覆われている車体の前部構造において、フロントフード10に設けられた開口部10kと、開口部10kに、一端15iが接続されるとともに、他端15tがエンジンルーム100に配設されたエンジン1の前方であってラジエータ21の上部に近接する位置に開口するダクト15と、を備え、ダクト15にベンチュリ部15sが設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンルームの前部にラジエータが配設され、上記エンジンルームの上部がフロントフードで覆われている車体の前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、エンジンルームの前部には、エンジンを冷却した後の冷却水が流れるラジエータが配設されている。このラジエータを流れる冷却水は、車体の前方から導入される外気により冷却される。
【0003】
ラジエータを通過した外気(以下、高温風と称す)は、エンジンルームに排出されて、エンジンルーム内部の温度を上昇させる。このため、高温風を適切にエンジンルーム外に排出する必要がある。
【0004】
エンジンルームに導入された高温風を車体外部に排出する技術としては、例えばエンジンルームの上側を覆うフロントフードとエンジンルームの少なくとも下側の一部を覆うアンダーカバーとの少なくとも一方に開口部を設け、該開口部から高温風を排出させるものが知られている。
【0005】
しかしながら、このような高温風の排出構造は、走行中の車体の気流によって車体に生じる負圧や走行中の車体前方からの正圧を利用した、高温風の押し出しによる排出であるため、開口部は、構造上、ラジエータと所定の間隔を経て設けられる場合が多いことから、必ずしも十分な高温風の排出効果を得ることができない場合がある。
【0006】
高温風の排出効果を高めるため、開口部の開口面積を大きくすることも考えられる。しかしながら、例えば、フロントフード側に設けられた開口部の場合、該開口部の位置,形状,大きさが、フロントフードのデザインの制約になる場合があるため、開口部を高温風排出の効果のみを優先して大きく設けることは出来ない。
【0007】
同様に、アンダーカバーに設けられた開口部の場合であっても、該開口部を大きくするとアンダーカバー本来の機能であるエンジン騒音の低減に寄与しなくなるという制約が有るため、開口部を大きくするには限界がある。
【0008】
また、車両によっては、ラジエータの後方に設けられるラジエータファンの直後に、エンジンのカムカバーが配置されているものもある。よって、高温風がラジエータファンにより、カムカバーの壁に吹き付けられた結果、該壁に衝突した高温風は、車体の左右に分岐した後、バッテリを直撃し、バッテリの温度を必要以上に上昇させて、バッテリ寿命を低下させる場合がある。このため、バッテリに、別途、遮熱板を取り付ける等の対応が必要となるため、コストの増加を招いていた。
【0009】
このような事情に鑑み、エンジンルームに設けられた開口部に、ラジエータを通過した高温風を外部へ導くダクトをエンジンルーム内に設ける車体の前部構造が種々開示されている。
【0010】
例えば特許文献1には、フロントフード裏に沿ってラジエータの上部近傍に開口するダクトが設けられた車体の前部構造が開示されている。このような構成を有するダクトは、高温風をキャビン近傍のフロントフードの開口部から排出するよう案内する。
【0011】
また特許文献2には、ラジエータの後方上部を隔壁で覆うダクトが設けられた車体の前部構造が開示されている。このような構成を有するダクトは、高温風をキャビン近傍の車体下側に形成された開口部から排出するよう案内する。よって、ラジエータを通過した高温風のみならず、エンジンルーム全体の高温風を排出することができ、エンジンルーム内の温度を一定に維持することができる。
【0012】
さらに、特許文献3には、エンジンルームにインタークーラが配設された車体において、インタークーラにラジエータを通過した後の高温風を案内するダクトが設けられた車体の前部構造が開示されている。尚、この構成においても、エンジンルーム全体の高温風を排出することができる。
【特許文献1】特開2000−62475号公報
【特許文献2】特開平5−169986号公報
【特許文献3】特開平5−301528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、近年、エンジンルーム内の過密化に伴い、エンジンルーム内に、ラジエータとエンジンとが近接して配設される場合が多い。このような場合、ダクトをエンジンルーム内に配置すると、エンジンルーム内のレイアウトを阻害してしまう場合がある。
【0014】
仮に、レイアウトを考慮してダクトを配置できたとしても、ダクト内の流路が十分確保できないため、必ずしも所望の排出効果を得ることができないといった問題があった。また、近年のエンジンの高出力化に伴い、ラジエータ通過後の高温風を効率良く排出する手段が求められていた。
【0015】
しかしながら、特許文献1に開示されたダクトを有する車体の前部構造においては、該ダクトは、フロントフード裏に沿って、ラジエータからキャビン近傍まで設けられるため、高温風の移動距離が長くなることから高温風の排出効率が悪くなるとともに、エンジンルーム内において配置し難く、さらには、フロントフードのデザインの制約となるといった問題ある。
【0016】
また、特許文献2及び特許文献3に開示されたダクトを有する車体の前部構造においては、あくまでもエンジンルーム全体の温度を一定に維持することが目的であることから、ラジエータの直近からの高温風を積極的に排出することは、何ら考慮がなされておらず、ラジエータ通過後の高温風を効率良く排出できるか否かが定かではない。
【0017】
本発明の目的は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ラジエータを通過した後の高温風を、ダクトを用いて効率良くエンジンルーム外に排出することができるとともに、ダクトをエンジンルーム内のレイアウトを阻害することなく配置することができる車体の前部構造を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために本発明による車体の前部構造は、エンジンルームの前部にラジエータが配設され、上記エンジンルームの上部がフロントフードで覆われている車体の前部構造において、上記フロントフードに設けられた開口部と、上記開口部に、一端が接続されるとともに、他端が上記エンジンルームに配設されたエンジンの前方であって上記ラジエータの上部に近接する位置に開口するダクトと、を備え、上記ダクトに絞り部が設けられていることを特徴とする。
【0019】
また、エンジンルームの前部にラジエータが配設され、上記エンジンルームの上部がフロントフードで覆われている車体の前部構造において、上記エンジンルームの下側の少なくとも一部を覆うアンダーカバーに設けられた開口部と、上記開口部に、一端が接続されるとともに、他端が上記エンジンルームに配設されたエンジンの前方であって上記ラジエータの下部に近接する位置に開口するダクトと、を備え、上記ダクトに絞り部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の車体の前部構造によれば、ラジエータを通過した後の高温風を、ダクトを用いて効率良くエンジンルーム外に排出することができるとともに、ダクトをエンジンルーム内のレイアウトを阻害することなく配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施の形態を示す車体の前部構造を示す断面図、図2は、図1のフロントフードに接続されたダクトの斜視図、図3は、図1のアンダーカバーに接続されたダクトをアンダーカバーとともに示す斜視図、図4は、車体走行の際、図1のフロントフード上に作用する圧力分布を示す図である。
【0022】
図1に示すように、エンジンルーム100に、エンジン1が配設されており、該エンジン1の車体前方に、ラジエータ21が配設されている。詳しくは、エンジンルーム100の下部には、車体の前後方向に延出する、図示しない既知の2本のサイドフレームが配設されており、該両サイドフレームの前部にラジエータパネル2が固定されている。
【0023】
ラジエータパネル2は、車幅方向に延在するラジエータパネルロア2Lと、該ラジエータパネルロア2Lの上方に離間して平行配置されるラジエータパネルアッパ2uとを具備しており、ラジエータパネルロア2Lの両端に、上記2本のサイドフレームがそれぞれ固設されている。尚、ラジエータパネルアッパ2uは、ラジエータパネルロア2Lと図示しないフレームを介して連結されている。
【0024】
このような構成を有するラジエータパネル2に、ラジエータ21が固定されている。具体的には、ラジエータパネルアッパ2u及びラジエータパネルロア2Lの後部に、フック等の既知の固定手段が用いられることにより、ラジエータ21が固定される。
【0025】
また、ラジエータ21の後部近傍に、ラジエータファン5が配設されており、さらにラジエータ21の後部であってラジエータファン5の外周近傍に、ラジエータ21から排出された高温風Nをラジエータファン5の前側に案内する、例えば短管状の案内部材7が接続されている。
【0026】
さらに、上記2本のサイドフレームの先端に、即ち、ラジエータ21の前方に、バンパビーム17が固設されている。このバンパビーム17は、車幅方向に延在するロアビーム17Lと、該ロアビーム17Lの上方に離間して平行配置されるアッパビーム17uとを具備しており、ロアビーム17Lの両端に、上記2本のサイドフレームの先端がそれぞれ固設されている。尚、アッパビーム17uは、ロアビーム17Lと図示しないフレームを介して連結されている。
【0027】
また、アッパビーム17uに、車幅方向に延在し所定の高さを有するバンパ40の上部が、例えばクリップ等の固定部材により固定されている。尚、ロアビーム17Lにも、バンパ40の下部がクリップ等の固定部材により固定されている。
【0028】
また、バンパ40の高さ方向の面(グリル面)の一部に、ラジエータ21を冷却する外気Aをエンジンルーム100内に取り入れる複数の吸気口40kが、車幅方向に沿ってバンパ40を貫通するよう、例えばメッシュ状に開口されている。
【0029】
エンジンルーム100の上方に、該エンジンルーム100の上部を覆うフロントフード10が配設されている。フロントフード10の車体の車幅方向外側であって、車体走行の際の空力上、フロントフード10に負圧が発生する部位に、エンジンルーム100内のラジエータ21からの高温風Nを車体上側から車体外方に排出する開口部10kが形成されている。
【0030】
詳しくは、図4に示すように、車体走行の際、フロントフード10の前半部は、空気がフロントフード10から外へ吸い出される負圧発生領域70となり、フロントフード10の後半部は、空気が車体に向かって押し込む正圧発生領域80となっている。よって、開口部10kは、負圧発生領域70の任意の部位に形成されている。尚、負圧発生領域70の圧力は、エンジンルーム100内の圧力よりも低くなっている。
【0031】
開口部10kに、ダクトである上側ダクト15が接続されている。上側ダクト15は、内部に流路15rを有し、一端15iと他端15tに、流路15rの開口15k1,15k2が形成されている。
【0032】
具体的には、開口部10kのエンジンルーム100側の面に、上側ダクト15の一端15iの外周が、該一端15iの開口15k1と開口部10kが連通するよう緊密に接続されている。
【0033】
また、上側ダクト15の他端15tの開口15k2は、ラジエータ21,案内部材7,ラジエータファン15の上側の近傍に位置して開口されている。尚、上側ダクト15は、フロントフード10と一体的に形成されていてもよい。
【0034】
図2に示すように、上側ダクト15は、直方体の高さ方向の中途位置を中心軸方向に緩やかに絞った絞り部であるベンチュリ部15sが形成された高さ方向に短軸な形状に、薄板により形成されている。よって、上側ダクト15は、薄板が任意の形状に折り曲げられることにより、エンジンルーム100内にコンパクトに配設される。
【0035】
ベンチュリ部15sは、上側ダクト15の中途位置の流路15rの径S1を、一端15i側の流路15rの径、即ち開口15k1の開口径S2及び他端15t側の流路15rの径、即ち開口15k2の開口径S3よりも小さくするよう形成されている。
【0036】
具体的には、中途位置の流路15rの径S1は、吸入口となる開口15k2に生じる圧力損失が所定以上に増加しない程度の径、さらに具体的には、開口15k1の開口径S2及び開口15k2の開口径S3の1/2以下となる径に形成されている。
【0037】
ベンチュリ部15sは、上側ダクト15の一端15iから他端15tまで流路15rを通過する高温風Nの流速を、上側ダクト15の中途位置の流路15rの径S1を小さくすることによって、所謂ベンチュリ効果により高めるものである。
【0038】
上側ダクト15は、エンジンルーム100内のラジエータ21からの高温風を車体上側から車体外方に排出するものであり、他端15t側の開口15k2は、吸引口を構成し、開口部10kと連通する一端側の開口15k1は、排出口を構成している。よって、以下、吸引口にも符号15k2を付すとともに、排出口にも符号15k1を付す。
【0039】
エンジンルーム100の下方に、該エンジンルーム100の下側の少なくとも一部、具体的には、少なくともエンジン1の下側を覆うアンダーカバー20が配設されている。尚、アンダーカバー20は、エンジンルーム100の下側の全部を覆っていてもよい。
【0040】
アンダーカバー20の車体の車幅方向外側であって、車体走行の際のアンダーカバー20に、空力上負圧が発生する部位に、エンジンルーム100内のラジエータ21からの高温風を車体下側から車体外方に排出する開口部20kが形成されている。尚、アンダーカバー20にも、図4において上述したフロントフード10と同様、車体走行の際の負圧発生領域が存在する。
【0041】
開口部20kに、ダクトである下側ダクト25が接続されている。下側ダクト25は、内部に流路25rを有し、該流路25rの開口25k1,25k2が一端25iと他端25tに形成されている。
【0042】
具体的には、開口部20kのエンジンルーム100側の面に、下側ダクト25の一端25iが、該一端25iの開口25k1と開口部20kとが連通するよう緊密に接続されている。
【0043】
尚、一端25iの開口25k1は、前半部が、アンダーカバー20で覆われている。即ち、開口25k1は、開口部20kよりも開口径が小さく形成されている。また、開口部20kの前側の開口端に、即ち、開口25k1の前半部を覆うアンダーカバー20の後端に、エンジンルーム100内のラジエータ21からの高温風Nの排出を促進する案内部材35が接続されている。尚、案内部材35は、アンダーカバー20と一体に形成されていてもよい。
【0044】
また、下側ダクト25の他端25tの開口25k2は、ラジエータ21,案内部材7,ラジエータファン15の下側の近傍に位置して開口されている。下側ダクト25のラジエータ21,案内部材7,ラジエータファン15に近接する部位25fは、所謂エアダムスカート形状に形成されている。よって、下側ダクト25の部位25fは、エンジンルーム100に導入された外気Aを、車体に対するダウンフォースへと変換する。尚、下側ダクト25も、アンダーカバー20と一体的に形成されていてもよい。
【0045】
図3に示すように、下側ダクト25は、断面形状が略L字状に薄板により形成されており、より具体的には、高さ方向の中途位置を中心軸方向に緩やかに絞った、絞り部であるベンチュリ部25sが形成された高さ方向に短軸な形状に形成されている。よって、下側ダクト25は、薄板が任意の形状に折り曲げられることにより、エンジンルーム100内にコンパクトに配設される。
【0046】
ベンチュリ部25sは、下側ダクト25の中途位置の流路25rの径S4を、一端25i側の流路25rの径、即ち開口25k1の開口径S5、及び他端25t側の流路25rの径、即ち開口25k2の開口径S6より小さくするよう形成されている。
【0047】
具体的には、中途位置の流路25rの径S4は、吸入口となる開口25k2に生じる圧力損失が所定以上に増加しない程度の径、さらに具体的には、開口25k1の開口径S5及び開口25k2の開口径S6の1/2以下となる径に形成されている。
【0048】
ベンチュリ部25sは、下側ダクト25の一端25iから他端25tまで流路25rを通過する高温風Nの流速を、下側ダクト25の中途位置の流路25rの径S4を小さくすることによって、所謂ベンチュリ効果により高めるものである。
【0049】
下側ダクト25は、エンジンルーム100内のラジエータ21からの高温風を車体下側から車体外方に排出するものであり、他端25t側の開口25k2は、吸引口を構成し、開口部20kと連通する一端側の開口25k1は、排出口を構成している。よって、以下、吸引口にも符号25k2を付すとともに、排出口にも符号25k1を付す。
【0050】
次に、このように構成された車体の前部構造の作用について、図1〜図4、図5を用いて説明する。図5は、本実施の形態の作用を説明するエンジンルームの断面図である。
【0051】
先ず、エンジン1が駆動された後、車体が走行を始めると、図5に示すように、ラジエータ21を冷却する外気Aが、バンパ40に複数開口された吸気口40kからエンジンルーム100内に取り入れられる。その後エンジンルーム100に取り入れられた外気Aは、ラジエータ21を通過し、熱交換により、ラジエータ21を流れる冷却水を冷却する。
【0052】
尚、この際、フロントフード10の上方に車体の前方から後方に流れる走行流Dが発生するとともに、さらに、下側ダクト25の部位25fにより、エンジンルーム100に取り入れられた外気Aは、車体に対し、ダウンフォースとなるよう変換される。
【0053】
ラジエータ21を冷却して熱交換された高温風Nは、案内部材7により、ラジエータファン5に案内された後、該ラジエータファン5により、車体の外部により効率良く排出される。
【0054】
具体的には、高温風Nは、一方、図2,図5に示すように、上側ダクト15の吸入口15k2から上側ダクト15の流路15rに進入した後、上側ダクト15のベンチュリ部15sにより、流速が高められ、ベンチュリ効果により圧力が低下された後、フロントフード10の負圧発生領域70の開口部10kに連通する排出口15k1からエンジンルーム100の外部に排出される。これは、開口部10kは、負圧発生領域70に設けられているため、高温風Nは、開口部10kとエンジンルーム100内との圧力差により排出されるのである。
【0055】
この際、ベンチュリ部15sにより流路15rを流れる高温風Nの圧力が低下されることにより、ベンチュリ部15sのみならず、吸入口15k2を流れる高温風Nの圧力、即ちラジエータファン5の上部近傍の圧力をも低下されることから、ラジエータを通過した高温風Nは、効果的に吸引口15k2に誘引される。
【0056】
尚、ベンチュリ部15s及び吸入口15k2を流れる高温風Nの圧力は、上側ダクト15の形状を最適化することにより、フロントフード10の負圧発生部となる開口部10k、即ち排出口15k1の圧力よりも低下させることが可能である。
【0057】
よって、高温風Nは、通常のストレート管形状のダクトよりも効果的に、上側ダクト15により、エンジンルーム100の外部に排出される。
【0058】
高温風Nは、他方、図3,図5に示すように、下側ダクト25の吸入口25k2から下側ダクト25の流路25rに進入した後、下側ダクト25のベンチュリ部25sにより、流速が高められ、ベンチュリ効果により圧力が低下された後、アンダーカバー20に負圧が発生する部位の開口部20kに連通する排出口25k1から案内部材35に案内されてエンジンルーム100の外部に排出される。これは、開口部20kは、負圧発生領域に設けられているため、高温風Nは、開口部20kとエンジンルーム100内との圧力差により排出されるのである。
【0059】
この際、ベンチュリ部25sにより流路25rを流れる高温風Nの圧力が低下されることにより、ベンチュリ部25sのみならず、吸入口25k2を流れる高温風Nの圧力、即ちラジエータファン5の下部近傍の圧力をも低下されることから、ラジエータを通過した高温風Nは、効果的に吸引口25k2に誘引される。
【0060】
尚、ベンチュリ部25s及び吸入口25k2を流れる高温風Nの圧力は、下側ダクト25の形状を最適化することにより、アンダーカバー20の負圧発生部となる開口部20k、即ち排出口25k1の圧力よりも低下させることが可能である。
【0061】
よって、この場合であっても、高温風Nは、通常のストレート管形状のダクトよりも効果的に、下側ダクト25により、エンジンルーム100の外部に排出される。
【0062】
このように、本発明の一実施の形態を示す車体の前部構造においては、エンジンルーム100に設けた上側ダクト15及び下側ダクト25の中途位置に、該中途位置の各ダクト15,25内の流路15r,25rの径S1,S4を、排出口15k1,25k1の開口径S2,S5及び吸入口15k2,25k2の開口径S3,S6よりも小さくするベンチュリ部15s,25sを設けた。
【0063】
このことにより、各ダクト15,25の流路15r,25rを流れる高温風Nは、ベンチュリ部15s,25sにより、流速が高められることにより、ベンチュリ効果により、高温風Nの圧力が低下される。
【0064】
その結果、吸入口15k2,25k2を流れる高温風Nの圧力、即ち、ラジエータファン5の近傍の圧力をも低下される。即ち、大きな負圧がラジエータファン5の近傍に発生される。
【0065】
このことから、各ダクト15,25により発生した負圧の各吸引口15k2,25k2への誘引効果を用いて、ラジエータファン5後方の気流の乱れた高温風Nを、各ダクト15,25を用いて効率良くエンジンルーム100の外部に排出することができる。
【0066】
また、本実施の形態においては、各ダクト15,25は、薄板により高さ方向に短軸状に形成されると示した。このことにより、エンジンルーム100内のレイアウトを阻害することなくエンジンルーム100に配設することができる。
【0067】
さらに、各ダクト15,25は、薄板を折り曲げて形成しても良いため、ベンチュリ部15s,25sが形成される形状であれば、エンジンルーム100内のレイアウトに合わせて、各ダクト15,25を形成、配置することができる。
【0068】
尚、以下変形例を示す。
本実施の形態においては、エンジンルーム100に、上側ダクト15及び下側ダクト25の2つのダクトを配設すると示した。これに限らず、ダクトは、いずれか一方のみをエンジンルーム100に配設してもよいということは勿論である。
【0069】
また、本実施の形態においては、上側ダクト15及び下側ダクト25の両方に、ベンチュリ部15s,25sを設けると示した。これに限らず、ベンチュリ部は、上側ダクト15と下側ダクト25のいずれか一方のみに設けても良いということは云うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一実施の形態を示す車体の前部構造を示す断面図。
【図2】図1のフロントフードに接続されたダクトの斜視図。
【図3】図1のアンダーカバーに接続されたダクトをアンダーカバーとともに示す斜視図。
【図4】車体走行の際、図1のフロントフード上に作用する圧力分布を示す図
【図5】本実施の形態の作用を説明するエンジンルームの断面図。
【符号の説明】
【0071】
1…エンジン
10…フロントフード
10k…開口部
15…上側ダクト
15i…上側ダクトの一端
15k1…排出口
15k2…吸入口
15t…上側ダクトの他端
15r…流路
15s…ベンチュリ部
20…アンダーカバー
20K…開口部
21…ラジエータ
25…下側ダクト
25f…下側ダクトのラジエータ近接部位
25i…下側ダクトの一端
25k1…排出口
25k2…吸入口
25t…下側ダクトの他端
25r…流路
25s…ベンチュリ部
70…負圧発生領域
100…エンジンルーム
S1…上側ダクトのベンチュリ部の径
S2…上側ダクトの排出口の開口径
S3…上側ダクトの吸入口の開口径
S4…下側ダクトのベンチュリ部の径
S5…下側ダクトの排出口の開口径
S6…下側ダクトの吸入口の開口径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルームの前部にラジエータが配設され、上記エンジンルームの上部がフロントフードで覆われている車体の前部構造において、
上記フロントフードに設けられた開口部と、
上記開口部に、一端が接続されるとともに、他端が上記エンジンルームに配設されたエンジンの前方であって上記ラジエータの上部に近接する位置に開口するダクトと、
を備え、
上記ダクトに絞り部が設けられていることを特徴とする車体の前部構造。
【請求項2】
上記開口部が、上記車体走行の際の上記フロントフードの負圧発生部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車体の前部構造。
【請求項3】
上記ダクトは、上記フロントフードと一体に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車体の前部構造。
【請求項4】
エンジンルームの前部にラジエータが配設され、上記エンジンルームの上部がフロントフードで覆われている車体の前部構造において、
上記エンジンルームの下側の少なくとも一部を覆うアンダーカバーに設けられた開口部と、
上記開口部に、一端が接続されるとともに、他端が上記エンジンルームに配設されたエンジンの前方であって上記ラジエータの下部に近接する位置に開口するダクトと、
を備え、
上記ダクトに絞り部が設けられていることを特徴とする車体の前部構造。
【請求項5】
上記開口部が、上記車体走行の際の上記アンダーカバーの負圧発生部に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の車体の前部構造。
【請求項6】
上記ダクトは、上記アンダーカバーと一体に形成されていることを特徴とする請求項4または5に記載の車体の前部構造。
【請求項7】
上記ダクトの上記ラジエータの下部に近接する部位は、エアダムスカート形状に形成されていることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の車体の前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−347385(P2006−347385A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−176643(P2005−176643)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】