車輪測定方法とそれに使用される車輪測定装置
【課題】 高価、高精度のレーザ光源、カメラを使用しても測定精度に限度があった。
【解決手段】 車輪の基準溝側端面からフランジをカバーする範囲と、車輪の踏面側端面からフランジをカバーする範囲に2方向から別々にレーザ光を照射して車輪表面に車輪の断面輪郭形状を表示し、断面輪郭形状を前記レーザ光照射方向と同方向から別々のカメラで撮影し、撮影された夫々の撮影画像を3次元処理し、両処理画像を合成し、合成画像と、寸法値が既知の車輪について前記方法で画像合成された基準画像を重ね合わせ、両画像の差分から測定箇所の寸法を測定するようにした。レーザ光源と、カメラと、カメラで撮影された画像の3次元処理、3次元処理画像の合成、合成画像と基準画像の重ね合わせ、重ね合わせ画像の差分に基づく車輪測定箇所の寸法測定、摩耗量に基づく走行キロの演算といった各種演算処理を行うCPUを設けた。車両の有無を検知する車両センサ、カメラ撮影、演算処理等のタイミングをとるタイミングセンサをも設けた。
【解決手段】 車輪の基準溝側端面からフランジをカバーする範囲と、車輪の踏面側端面からフランジをカバーする範囲に2方向から別々にレーザ光を照射して車輪表面に車輪の断面輪郭形状を表示し、断面輪郭形状を前記レーザ光照射方向と同方向から別々のカメラで撮影し、撮影された夫々の撮影画像を3次元処理し、両処理画像を合成し、合成画像と、寸法値が既知の車輪について前記方法で画像合成された基準画像を重ね合わせ、両画像の差分から測定箇所の寸法を測定するようにした。レーザ光源と、カメラと、カメラで撮影された画像の3次元処理、3次元処理画像の合成、合成画像と基準画像の重ね合わせ、重ね合わせ画像の差分に基づく車輪測定箇所の寸法測定、摩耗量に基づく走行キロの演算といった各種演算処理を行うCPUを設けた。車両の有無を検知する車両センサ、カメラ撮影、演算処理等のタイミングをとるタイミングセンサをも設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉄道車両用車輪のフランジ厚、フランジ高といった車輪各部の寸法測定、フランジや踏面の摩耗、車輪の変形、欠け、歪み等の目視確認ができる車輪測定方法とそれに使用される車輪測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両用車輪は走行によって摩耗する。摩耗すると車両の振動、ガタツキ等が大きくなって乗り心地の悪化、急カーブでの脱輪、脱線事故が発生の虞があり、人命事故に繋がる危険があるため、それらの予防、列車の安全走行確保の面から、車輪の寸法測定による摩耗の確認、車輪研削(削正)による寸法修正、車輪の交換作業といった各種点検、保守は必要不可欠である。また、一本の車軸に装備された2つの車輪の間隔変動も前記と同様の危険があるため車輪間隔の測定も必要不可欠である。これら測定により削正時期、車輪寿命の予測等の管理が可能となり、事故発生の予防が可能となる。
【0003】
図13に示すように車輪1はフランジ2、踏面3、基準溝4などを備えている。基準溝4は基準溝側端面(車輪内面)5にリング状に形成されている。車輪1の測定箇所は基準溝4からフランジ頭頂部Pまでの寸法(フランジ長)C、フランジ厚F、フランジ高H、図14のように車軸8に装着されている2つの車輪1の内面間距離BG等である。通常、基準溝4の直径は固定値780mm、基準溝側端面5から踏面側端面9までの寸法は固定値125mm、タイヤ圧基準直径Gは固定値730mm、踏面3からフランジ厚測定点までの寸法Kは固定値10mm、フランジ直径Dは(A+2C)、タイヤ厚Tは(C−H+(A−G)/2)である。
【0004】
車輪の寸法測定方法には作業員の手作業による測定、車輪測定装置(特許文献1、2)を用いた自動測定等がある。
【0005】
【特許文献1】特許第3615980号公報
【特許文献2】特開平11−83462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
手作業による測定は作業性が悪く、作業員により測定値がばらつき易く、測定精度の信頼性に劣り、車輪に測定具を当てての作業であるため安全面、労力負担面でも課題があった。
【0007】
前記特許文献1、2の車両測定装置を用いた測定方法は、手作業測定の場合の課題はないが、いずれも撮影した画像の絶対値測定であるため、測定精度は撮影画像の精度に影響される。しかし、レーザ光線の太さのばらつき、撮影画像はレーザ光源設置時に位置ズレに起因するレーザ光照射角度のズレ、カメラレンズの収差、カメラレンズの位置ずれによるピントのズレ、CCDのピクセル値(画素数)による解像度等の影響を受ける。このため撮影画像が必ずしも車輪の状態に忠実でないことが多く、測定誤差が出易く、測定精度に問題がある。これら課題を低減するためには、解像度の高いカメラを使用し、サブピクセル処理をはじめとして高度で複雑な処理をし、レーザ光源やカメラの設置精度を高めなければならないため、カメラが高価になり、CPUがコスト高になり、測定処理が面倒であり、設置作業が面倒になる。しかも、そのような措置を講じても必ずしも前記課題が完全に解消されるわけではない。近年はこれまで以上の安全走行を確保する目的から測定頻度が高まっているため、前記測定装置では実用面で多くの課題が残されている。
【0008】
本発明は前記した車輪のフランジ厚、フランジ高、フランジ直径、踏面直径といった測定箇所の寸法を、車輪に非接触で、精度の高い測定ができ、車輪の寸法に製造時の公差があっても計測車輪の製作実寸を基準にしてそれからの摩耗を測定できるようにしたものである。また、形状、寸法などの異なる各種車輪の寸法測定もできて汎用性があり、低価格で、測定操作が簡便で取り扱い易く、更には、車庫、ピット等への列車の入庫時や出庫時に車両を停止させることなく走行させたままで、多数の車輪(例えば10両編成の車両に装備されている全車輪)を順次測定できるようにした車輪測定方法と車輪測定装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の車輪測定方法は請求項1記載のように、車輪の基準溝側端面からフランジをカバーする範囲と、車輪の踏面側端面からフランジをカバーする範囲に2方向から別々にレーザ光を照射して、そのレーザ光により車輪表面に車輪の断面輪郭形状を表示し、その断面輪郭形状を前記レーザ光照射方向と同方向から別々のカメラで撮影し、両カメラで撮影された夫々の撮影画像を3次元処理し、両処理画像の高さ基準部と横基準部を位置合わせして合成画像を作成し、この合成画像と、寸法値が既知の車輪について前記方法と同じ方法でレーザ光照射され、撮影され、3次元処理され、画像合成された基準画像とを両画像の基準溝側端面同士と基準溝同士を位置合わせして重ね合わせ、両画像の差分から測定箇所の寸法を測定するようにした。この場合、請求項2記載のように、2つの3次元処理画像における車輪のフランジ頭頂部を高さ基準部、基準溝側端面と踏面側端面を横基準部とし、両処理画像の高さ基準部同士を位置合わせし、2つの横基準部を両者間の長さが所定寸法になるように位置設定して画像合成することができる。前記合成画像の基準溝と基準画像の基準溝を重ね合わせるに当り、請求項3記載のように、合成画像の基準溝の斜面と基準溝側端面とのなす角度を測定し、その角度が所定角度以内のときは、前記斜面の延長線と基準溝側端面との交点位置を基準溝の斜面角とみなし、その斜面角から基準溝側端面上をフランジ側に所定寸法離れた位置を基準溝の水平面角とみなし、この水平面角と前記斜面角を、基準画像の基準溝の水平面角と斜面角と位置合わせして重ね合わせることもできる。前記測定において、請求項4記載のように、CPUなどのディスプレイ(画面)に、重ね合わせ画像を表示することも、その画像の他に、重ね合わせ画像の差分に基づく前記測定値をも表示することができる。
【0010】
本発明の車輪測定方法では、請求項5記載のように、列車の入庫時又は/及び出庫時に、車輪が所定位置に到来したことを検出し、その検出に基づいて車両に装備されている車輪へのレーザ光の照射、カメラによる撮影、画像の3次元処理、3次元処理画像の合成、合成画像と基準画像との重ね合わせを行って、車両走行中に車輪測定箇所の寸法を測定することができる。
【0011】
本発明の車輪測定装置は前記車輪測定方法に使用される測定装置であり、請求項6記載のように、車輪の基準溝側端面からフランジをカバーする範囲にレーザ光を照射するレーザ光源と、車輪の踏面側端面からフランジをカバーする範囲にレーザ光を照射するレーザ光源と、夫々のレーザ光照射部分をレーザ光源の照射方向と同じ方向から撮影するカメラと、それらカメラで撮影された踏面側画像と、基準溝側画像の3次元処理、3次元処理画像の合成、合成画像と基準画像の重ね合わせ、重ね合わせ画像の差分に基づく車輪測定箇所の寸法測定、車輪の摩耗量、摩耗量に基づく走行キロの演算といった各種演算処理を行うCPU、前記重ね合わせ画像、又はその画像と前記測定値を表示する画面を備えたものとすることができる。本発明では請求項7記載のように前記測定装置に、車両の有無を検出する車両センサと、カメラによる車輪撮影のタイミングを検知するタイミングセンサをも備え、タイミングセンサは車両進行方向の前後双方又はいずれか一方に配置し、レーザ光源はレーザ光の出射方向及び出射角度が、所定位置に到来する車輪の中心に照射できるように設置され、前記タイミングセンサを車輪中心がレーザ光照射位置に到来すると作動する位置に設置して、車輪中心がレーザ光照射位置に到来するたびに車輪上のレーザ光を撮影できるようにすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の車輪測定方法は次のような効果がある。
1.車輪の基準溝側と踏面側から撮影した2つの撮影画像を3次元処理して画像合成し、その合成画像を、前記測定方法と同じ測定装置を使用して同じ測定環境で同じ測定方法で撮影した基準画像と重ね合わせ、その重ね合わせ画像の差分から車輪測定箇所の寸法(摩耗量)を測定するので、従来の合成画像から絶対値測定する方法に比して測定誤差が少ない。
2.2つの画像のフランジ頭頂部を高さ基準部とし、走行により摩耗しない基準溝側端面と踏面側端面を横基準部とし、その高さ基準部同士と2つの横基準部同士を位置合わせして画像合成するので合成画像は車輪の形状、寸法に忠実なものとなる。このため車輪に製造時の公差内の寸法誤差があっても、その実寸に基づいて正確な寸法測定ができる。ちなみに、2つの横基準部間の寸法を公差0の基準寸法(125mm)にして合成すると、測定車輪の実寸と不一致になって測定誤差が発生するが、本発明ではそのような測定誤差は発生しない。
3.重ね合わせ画像(車輪プロファイル)を画面に表示するため、それら画像から車輪の全体形状、部分的変形等を把握することもできる。
4.レーザ光の照射から、撮影、画像合成、合成画像と基準画像の重ね合わせ、寸法測定までの一連の作業が車輪に非接触で自動的に行うので測定操作の面倒がなく、効率の良い測定ができ、労力が軽減され、作業の安全性も確保される。
5.車庫、ピット等へ入庫する車両、或いは出庫する車両が所定位置に到来したことを車両センサで検出し、その検出に基づいて車輪を測定するので、多数の車輪、例えば、10両編成の車両の車輪を走行中に次々と(連続的に)測定することができ、走行中の車両の車輪を効率よく、安全に測定することができ、労力も軽減される。車輪寸法を入庫時に測定すれば摩耗している車輪寸法を、出庫時に測定すれば補修後の車輪寸法を確認することができる。
6.重ね合わせ画像が表示された画面に測定値をも表示もするので、車輪寸法を数値で確認することもでき、その数値に基づいて車輪を削正して適正寸法に修正できるため、車両の安全走行が確保され、乗り心地も向上する。
7.測定データを蓄積すれば、削正時期や車輪の寿命時期等の予測管理等を行うこともでき、他のデータとの併用により車輪の走行距離を管理することもできる。
【0013】
本発明の車輪測定装置は次のような効果がある。
1.レーザ光源、カメラが所定位置に設置固定されているので、多数の車輪に対するレーザ光照射、車輪におけるレーザ光による車輪断面輪郭形状の撮影を、一定位置で、一定角度で、一定方向から行うことができるため、安定した画像が得られ、測定にバラツキがなく、測定精度が向上する。
2.寸法が既知である基準画像と合成画像との重ね合わせ画像の差分に基づいて車輪の寸法測定を行うので、精度の良好な光学機器や複雑な補正処理をしなくとも誤差の少ない測定ができ、コストが低減する。
3.車両の有無を検知する車両センサと、車輪が所定位置(レーザ光が車輪中心に照射される位置)まで走行してきたときに撮影させるタイミングセンサを備えているので、それらセンサ、レーザ光源、カメラを所定位置に設置しておけば、車輪を所定位置で確実に自動測定できる。このため、前記測定機器を車庫、ピット等の入口に設置しておけば入庫してくる走行列車を、出口に設置しておけば出庫する走行列車を、停止させることなく走行させたままで連続的に自動測定でき、作業性がよく、省力化でき、作業性が向上し、車輪へ非接触で測定できるので安全性も高い。また、入庫時と出庫時の双方向で測定すれば削正前と削正後のデータ比較を容易に行うことができる。
4.重ね合わせ画像の差分に基づいて寸法測定を行うことができるため、各種データ処理を行うCPUも複雑、高度のものである必要がなく、コスト低減につながる。
5.車両に取り付けてあるICタグを読み取って車輪の種類を判別し、その判別に基づいて測定パラメータがCPUで自動的に切換えられるようにしてあるので、1台の測定装置で、異なる種類、サイズの車輪を測定することができ、汎用性があり、低コスト化が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(本発明の車輪測定方法の実施形態1)
本発明の車輪測定方法では同一軸に装備されている左右二つの車輪を同時に測定することも、走行中の車両を停止させずに測定することもできるが、この実施形態は停止中の一つの車輪を測定する場合の一例であり、図1〜図12に基づいて以下に説明する。
【0015】
図1の車輪1は既存の鉄道用(軌道用)と同じものであり、フランジ2、踏面3、基準溝4を備えている。本発明の車輪測定方法で測定するのは車輪1の基準溝4からフランジ先端(頭頂部)Pまでのフランジ長C(図13)、フランジ厚F(図13)、フランジ高H(図13)をはじめとする各部の寸法である。それら寸法測定は次のようにして行う。
【0016】
図1のように車輪1の基準溝側端面5と踏面側端面9の前方斜め下方の2箇所に車輪1を挟むようにしてレーザスリット光源(レーザ光源)10と撮影装置(カメラ:例えばCCDカメラ)11を設置しておき、両レーザ光源10から車輪1に細線状のレーザ光を照射する。この場合、レーザ光を車輪1の基準溝側端面5からフランジ2までをカバーする範囲(図1の内側斜線部分V)と、車輪1の踏面側端面9からフランジ2までをカバーする範囲(図1の外側斜線部分W)に別々に照射して、車輪1の表面にその左右の断面輪郭形状f1、f2(図2(a)、(b))をレーザ光により表示する。前記レーザ光源10とCCDカメラ11は図1のように共通のフレーム15に取り付けてユニット化しておくと両者の間隔、車輪1に対する角度が一定する。また、レーザ光源10はそれから出射されるレーザ光が図3(b)のように車輪1の中心Oに向けて照射される方向、角度になるように設定しておく。また、レール20の内側と外側には車輪1を挟むようにタイミングセンサ23を設置しておくことができる。タイミングセンサ23はレーザ方式とすることができる。レーザ方式の一例としては図3(a)〜(c)のようにレールの一方に設置したレーザ光源23aからレーザ光を常時出射し、そのレーザ光がレーザ光源23aと対向して設置してある反射板23bで反射されるようにしておき、レール20の上の車輪1が走行してきて前記レーザ光が遮断されるとカメラ11に撮影開始信号が送信されるものとすることができる。
【0017】
前記左右の断面輪郭形状f1、f2を前記のように設置された2台のCCDカメラ11でレーザ光照射方向とほぼ同方向でそれより多少下方から同時に撮影し、2つの撮影画像F1、F2(図4(a)、(b))を画面12に表示する。この撮影画像F1、F2はコンピュータの演算処理装置(CPU)で処理するだけにして画面には表示しなくともよい。
【0018】
前記撮影画像F1、F2は車輪1の前方斜め下方から撮影されているため車輪断面輪郭形状f1、f2を正面から撮影したものとはZ軸(車輪断面の高さ方向)の寸法がずれる。この寸法ずれを補正して正規の断面画像の寸法に合せるために左右の撮影画像F1、F2を3次元処理して図5(a)、(b)に示す画像にする。3次元処理は例えば次のようにして行うことができる。この処理画像もCPUで処理するだけにして画面に表示しなくともよい。
フィルタ処理(スムージング等)
スリット画像の閾値判定
スリット座標位置取得(サブピクセル)
2次元画像の3次元座標変換
【0019】
図11に車輪とレーザ光源10及びCCDカメラ11の配置関係を示す。図11においてθ、Z、b、L、C、Yは夫々以下のとおりである。
θ:レーザ光源とCCDカメラの中心とのなす角
Z:a点の求める高さ
b:レーザ光源とCCDカメラの中心線が交差する点からカメラまでの長さ
L:レーザ光源とCCDカメラの中心線が交差する点からレーザ光源までの長さ
C:レンズ中心からCCDまでの長さ
Y:CCDの結像の長さ
本発明における3次元処理は前記Zを求めることであり、図11より次式で求めることができる。
【0020】
【数1】
【0021】
YはCCD上の画素のトレースで求めることができ、C、b、θは既知である為Zを求めることができる。又、レーザ光が当たっているX方向各点(画素点)のZを同様に求め、画像を描出することができる。
【0022】
次に、3次元処理済みの左右の画像(3次元処理画像:図5(a)、(b))を合成して図6の合成画像13とする。この場合、左右の3次元データを回転、移動させて画像を水平、垂直にし、画像を上下、左右に位置調整して、車輪のフランジ頭頂部P(図5(a)、(b))を検索して高さ基準部とし、一方の画像の踏面側端面9(図5(a))と他方の画像の基準溝側端面5(図5(b))を夫々横基準部とし、図5(b)の画像中の基準溝側端面5からフランジ頭頂部Pまでの距離aと、図5(a)の画像中の踏面側端面9からフランジ頭頂部Pまでの距離bを夫々求め、両画像の高さ基準部のフランジ頭頂部P同士を合致させると共に図6の合成画面の基準溝側端面5から踏面側端面9までの距離が前記a+bの距離になるように位置合わせして画像合成する。この場合、前記a、bの距離を求めることなく、基準溝側端面5から踏面側端面9までの距離を設計基準寸法の125mmに合わせると、測定した車輪の基準溝側端面5から踏面側端面9までの距離に公差内のバラツキがある場合、合成画像の基準溝側端面5から踏面側端面9までの距離が測定車輪の実寸と合致しなくなり、それがその後の測定誤差原因となる。しかし、この実施形態では前記のようにa+bの距離にしたため、そのような誤差は発生しない。
【0023】
画像合成は次のようにして行うこともできる。図5(a)、(b)の3次元処理と同じ方法で3次元処理された図5(c)、(d)の両画像のフランジ頭頂部Pを高さ基準部とし、図5(d)の画像中の基準溝側端面5から撮影画像の左端(踏面傾斜内角)Qまでの距離aと、図5(c)の画像中の踏面側端面9から踏面傾斜内側角Qまでの距離bを夫々求め、両画像の高さ基準部のフランジ頭頂部P同士を合致させると共に図6の合成画面の基準溝側端面5から踏面側端面9までの距離が前記a+bの距離になるように位置合わせして合成する。この場合も前記のような誤差はない。
【0024】
得られた図6の合成画像13と図7の基準画像14とを図8のように重ね合わせる。重ね合わせは両画像13、14の基準溝側端面5と基準溝4の基準点X(図6、図7の水平面角部)同士を位置合わせして行う。基準画像14は寸法が既知である基準車輪(例えば、新品車輪、樹脂等で擬似的に製作した車輪等)を本発明の車輪測定装置を使用して同じ測定条件で同じ測定方法で測定された画像である。重ね合わせ画像は画面12に表示する。重ね合わせた両画像は色違いにして目視で比較し易くすることもできる。本発明ではこの重ね合わせ画像の差分から車輪測定箇所であるフランジ長C(図13)、フランジ厚F(図13)、フランジ高H(図13)の摩耗量をCPUで演算処理して測定する。測定値は前記重ね合わせ画像が表示された画面上に重ね合わせ画像と共に、又はそれとは別の画面に表示することができる。測定値はデジタル値、グラフ、その他の形式で表示することができる。
【0025】
車輪1の基準溝4には図9(c)、(d)のように油、塵芥などの汚れ30が付着して、基準溝4の基準点Xを合成画像上で確認することができない場合がある。この場合は次のようにして基準点を求め、それを見做し基準点X1として、図7の基準画像14の基準溝4の基準点Xと重ね合わせる。基準溝4は図9(a)、(b)のように幅4mm、深さ2mmと定められており、基準側端面5と基準溝4の傾斜面4aのなす外角θと基準側端面5と基準溝4の傾斜面4aのなす内角αとは次の関係にある。
2/4=tanα
α=tan-11/2
θ=180度−α
【0026】
前記関係を前提にして、図9(c)、(d)の合成画像の基準溝4の傾斜面4aのうち部分的に確認できる部分(確認部)4bの延長線Sと基準溝側端面5とのなす角度θを測定し、その角度θが基準溝本来の傾斜面4aと基準溝側端面5とのなす角度(前記θ=180度−α)が所定範囲内にあるときは、前記延長線Sと基準溝側端面5との交点位置Yを基準溝4の斜面角部とみなし、この見做し基準点Yから基準溝側端面5上のフランジ2側に所定寸法(4mm)離れた位置を基準溝4の水平面角部(基準点)とみなし、この見做し基準点X1を、基準画像14の基準溝4の基準点X(図7)と位置合わせして重ね合わせる。
【0027】
車輪の基準溝4の汚れがひどく、図9(e)のように基準溝4の傾斜面4aを全く確認できないときは、測定不能と判断して画面上に図9(f)のようにMと表示する。
【0028】
前記CPUは通常のコンピュータのCPUと同様にプリンタや外部記憶装置などの外部装置との間でデータ送受信を行うことができる。測定データはコンピュータの内部メモリや外部メモリに保存することができる。前記撮影画像、合成画像、重ね合せ画像や、測定条件、測定データ等の任意のものはプリントアウトしたり、外部のデータ処理装置に伝送したりすることができる。これら処理も前記CPUで行うことができる。
【0029】
(本発明の車輪測定方法の実施形態2)
本発明では同一軸に装備されている二つの車輪を同時に測定する場合こともできる。この場合は図1のように2つの車輪1の夫々を外側と内側から挟むように設置したレーザ光源10(4つのレーザ光源)から、夫々の車輪1に実施形態1と同様にレーザ光を照射して車輪表面にその断面輪郭形状f1、f2(図2(a)、(b))を表示し、その輪郭断面形状を4つのCCDカメラ11で撮影し、夫々の車輪1の左右の撮影画像を3次元処理して、夫々の車輪別に画像合成し、夫々の合成画像13を基準画像14と重ね合わせ、両者画像の差分に基づいて夫々の車輪の寸法をCPUで演算処理して絶対値測定する。
【0030】
(本発明の車輪測定方法の実施形態3)
本発明の車輪測定方法では、例えば10両編成の車両が車庫、ピットなどに入庫するときに、車両走行中にその車両の多数本の車軸8に装備されている車輪1を順次測定することもできる。そのためには車庫、ピットなどの入口側にレーザ光源10及びカメラ11と共に車両センサ22(図3(a))及びタイミングセンサ23(図3(a))を設置しておき、入庫のために所定位置まで走行してきた列車を車両センサ22で検出し、その検出に基づいてレーザ光源10からレーザ光を出射させ、車両が更に走行して車輪中心部O(図3(b))に前記レーザ光が照射される位置まで到来すると、その車輪をタイミングセンサ23が検知してカメラ11に撮影信号を出力し、その信号に基づいてカメラ11が車輪上のレーザ光による車輪断面輪郭形状f1、f2を撮影し、以後、前記した撮影画像の3次元処理、3次元処理後の画像合成、合成画像13と基準画像14の重ね合わせ等をCPUで行って車輪の寸法測定が行われるようにしてある。この測定方法によれば列車の入庫時に車輪1の摩耗寸法を測定し、その測定データに基づいて車庫やピット内で車輪の削正、歪の補修等を行うことができる。
【0031】
本発明の車輪測定方法では車庫、ピットなどから出庫する車両の車輪を測定することもできる。そのためには車庫、ピットなど出口側にタイミングセンサ23を設けておき、出庫する車両の車輪中心部O(図3(b))にレーザ光が照射されたときに前記タイミングセンサ23が作動してカメラに撮影信号を送信するようにしておくことにより、カメラ11での車輪1の撮影、撮影画像の3次元処理、画像合成、合成画像13と基準画像14の重ね合わせ等が行われ、車輪の寸法測定が行われるようにする。この測定方法によれば補修後の車輪の寸法、形状等を出庫時に自動的に測定することができる。
【0032】
本発明の車輪測定方法では車庫、ピットなどの入口側と出口側の双方にタイミングセンサを前記のように設置しておくことにより、入庫時と出庫時の双方で車輪測定をすることができる。この測定方法によれば、測定データに基づいて入庫時に車輪1の寸法や形状を把握して削正し、出庫時に車輪寸法を測定して前記削正状態を確認することができる。
【0033】
(本発明の車輪測定方法の実施形態4)
本発明の車輪測定方法では、車軸8に装備された2つの車輪の間隔を測定することもできる。その場合は前記実施形態1の測定方法と同様にして左右の車輪を同時に撮影し、その撮影画像を3次元処理した左右の車輪の画像(図10)の画像間隔(固定値)Nと、左側の画像の基準溝側端面5と画像端面R1、右側の画像の基準溝側端面5と画像端面R2との間の距離Z1、Z2の合計値をCPUで演算処理して測定し、その合計値を2つの車輪間隔とする。この場合、図10の画像を、左右の基準車輪の基準溝側を本発明の車輪測定方法と同じ装置で、同じ条件で、同じ測定方法で撮影した基準画像と重ね合わせ、その差分に基づいてCPUで演算処理して測定することもできる。
【0034】
(本発明の車輪測定装置の実施形態1)
本発明の車輪測定装置の一例を図1及び図3(a)〜(c)に、その測定装置と測定データ処理部とのシステム構成の一例を図12に示す。この測定装置は、例えば10両編成の車両が車庫、ピットなどに次から次へと入庫してくるときに、それら車両の多数本の車軸8(図1)の夫々に装備されている2つの車輪1を走行中(停止させず)に同時に、順次測定する場合の例であり、図3(a)に示すように1台の車両センサ22と、一つの車輪1に対して2つのレーザ光源10と2つのカメラ11と、タイミングセンサ23を備えている。また、図12に示すように前記カメラ11で撮影された夫々の画像の3次元処理、3次元処理画像の合成、合成画像13と基準画像14の重ね合わせ、重ね合わせ画像の差分に基づく寸法測定といった各種処理を行うコンピュータ(CPU)を備えている。コンピュータは夫々の車輪用に1台ずつ計2台用意することもできるが1台にすることもできる。また、ICタグ読み取りセンサ26をも備えている。
【0035】
前記車両センサ22はレーザ方式であり、図3(a)に示すレーザ光源22aからレーザ光を出射し、レーザ光源22aと対向位置に設置してある反射体22bで反射させ、そのレーザ光が走行してくる車両25により遮断されると車両25を検知するものである。車両センサ22は反射式であるが、反射体22bの代わりに受光体を設けた透過式とすることもできる。また、レーザ方式以外のセンサ、例えば、近接センサとか、メカ式のセンサ等とすることもできる。
【0036】
前記タイミングセンサ23は図3(a)〜(c)のように、車庫、ピット等の入口側と出口側の双方に、車輪1を挟む対象位置に設置されている。このタイミングセンサ23もレーザ方式であり、図3(a)に示すレーザ光源23aからレーザ光を出射し、レーザ光源23aと対向位置に設置してある反射体23bで反射させ、そのレーザ光が走行してくる車輪により遮断されると車両を検知するものである。タイミングセンサ23は前記反射体23bの代わりに受光体を設けた透過式とすることもできる。また、レーザ方式以外のセンサ、例えば、近接センサとか、メカ式のセンサ等とすることもできる。
【0037】
前記レーザ光源10、カメラ11は共通のフレーム15(図1)に装備してセンサユニット17とし、そのレーザ光源10とカメラ11との相互間隔、車輪1に対する角度等を固定し、このセンサユニット17を車輪1の前方斜め下方に車輪1を挟むように設置固定しておくことにより、車輪1の測定箇所の寸法を前記のように測定できるようにしてある。レーザ光源10の向き及び角度はそれから出射されるレーザ光が、入庫又は出庫のために所定位置に到来した車輪の中心部O(図3(b))に照射されるように設定されており、カメラの向き及び角度はその車輪上に照射されているレーザ光による車輪断面輪郭f1、f2の画像F1、F2を撮影できるように設定してある。このように設定することにより、常に一定位置から、一定方向に、一定角度でレーザ光を照射し、一定位置から、一定角度でカメラ撮影して、それら多数の車輪1を同一条件で測定することができる。この場合は多数の車輪1の測定に測定誤差が発生しにくくなる。また、同一条件で撮影される画像に基づいて多数の車輪の寸法、摩耗量、形状、部分的変形等を比較することができ、比較精度も向上する。
【0038】
前記レーザ光源10、カメラ11には汎用のものとか本発明の車輪測定方法のために開発した専用のものを使用することができる。前記3次元処理も汎用の3次元処理ソフトとか本発明の車輪測定方法のために開発した専用のものを使用することができる。
【0039】
図12に示すシステム構成は、2台のパソコン(PC)、夫々のパソコン用の2台のキーボード(KB)、夫々のパソコン用の液晶ディスプレー(LCD)、左車輪用、右車輪用のセンサユニット17、車両の有無を検知する車両センサ22、左右の車両を位置検出するタイミングセンサ23、前記各種センサ、各種機器を制御するためのコントロールユニット31、ICタグ読み取りセンサ26を備えている。ICタグ読み取りセンサ26はICタグ読み取りセンサ26は車両に取り付けられているICタグに記憶されている情報を読み取るものである。ICタグ読み取りセンサ26で読み取られた情報に基づいてCPUが読み取った車輪の種類を判別し、その判別に合わせてCPUで測定パラメータが自動的に切替えられて、寸法の異なる各種車輪を一台の測定装置で測定できるようにしてある。
【0040】
前記測定装置では、車両センサ22で車両が検出される(車両有り)と夫々のセンサユニット17のレーザ光源10からレーザ光が出射され、車輪が進行して前記レーザ光が車輪中心部Oに照射される位置まで到来すると左右のタイミングセンサ23が作動して、夫々のセンサユニット17のカメラ11が車輪1を撮影するようにしてある。前記車両センサ22で車両が検出されない(車両なし)ときは車両センサ22のレーザ光源22aからレーザ光が車輪1に照射されず、夫々のセンサユニット17のカメラ11で車輪1が撮影されないようにしてある。
【0041】
図3(a)に示す車輪測定装置により入庫時(車輪が図3の右側に走行するとき)に車輪測定する場合は、図3の右側のタイミングセンサ23からの信号をカメラ撮影、画像取り込み、画像処理のタイミング信号とし、出庫時(車輪が図3の左側に走行するとき)に車輪測定する場合は、図3の左側のタイミングセンサ23からの信号をカメラ撮影、画像取り込み、画像処理のタイミング信号として使用する。これら信号はコントロールユニットで制御され、前記測定方法に従ってCPUにより3次元処理、画像合成、基準画像との重ね合わせ、寸法測定が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の車輪測定方法及び車輪測定装置の一例を示す説明図。
【図2】(a)、(b)は本発明の車輪測定方法におけるレーザ光照射による車輪断面輪郭形状の説明図。
【図3】(a)は本発明の車輪測定方法及び車輪測定装置の全体概要説明図、(b)は車輪中心へのレーザ光照射説明図、(c)はタイミングセンサの配置を示す平面図。
【図4】(a)、(b)は本発明におけるCCDカメラで撮影した左右の画像の説明図。
【図5】(a)、(b)は本発明における左右の3次元処理画像の説明図、(c)、(d)は(a)、(b)の画像を使用した画像合成方法の説明図。
【図6】本発明における合成画像の説明図。
【図7】本発明における基準画像の説明図。
【図8】合成画像と基準画像の重ね合わせ画像の説明図。
【図9】(a)〜(f)は基準溝が汚れている場合の基準点確認方法の説明図。
【図10】車軸に装備されている2つの車輪間隔測定方法の説明図。
【図11】撮影画像の3次元処理の原理説明図。
【図12】本発明の車輪測定装置のシステム構成の一例を示す説明図。
【図13】車輪説明図。
【図14】車軸への車輪装備説明図。
【符号の説明】
【0043】
1 車輪
2 フランジ
3 踏面
4 基準溝
5 基準溝側端面
8 車軸
9 踏面側端面
10 レーザ光源
11 撮影装置(CCDカメラ)
12 画面
13 合成画像
14 基準画像
15 フレーム
17 センサユニット
22 車両センサ
23 タイミングセンサ
25 車両
26 ICタグ読み取りセンサ
31 コントロールユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は鉄道車両用車輪のフランジ厚、フランジ高といった車輪各部の寸法測定、フランジや踏面の摩耗、車輪の変形、欠け、歪み等の目視確認ができる車輪測定方法とそれに使用される車輪測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両用車輪は走行によって摩耗する。摩耗すると車両の振動、ガタツキ等が大きくなって乗り心地の悪化、急カーブでの脱輪、脱線事故が発生の虞があり、人命事故に繋がる危険があるため、それらの予防、列車の安全走行確保の面から、車輪の寸法測定による摩耗の確認、車輪研削(削正)による寸法修正、車輪の交換作業といった各種点検、保守は必要不可欠である。また、一本の車軸に装備された2つの車輪の間隔変動も前記と同様の危険があるため車輪間隔の測定も必要不可欠である。これら測定により削正時期、車輪寿命の予測等の管理が可能となり、事故発生の予防が可能となる。
【0003】
図13に示すように車輪1はフランジ2、踏面3、基準溝4などを備えている。基準溝4は基準溝側端面(車輪内面)5にリング状に形成されている。車輪1の測定箇所は基準溝4からフランジ頭頂部Pまでの寸法(フランジ長)C、フランジ厚F、フランジ高H、図14のように車軸8に装着されている2つの車輪1の内面間距離BG等である。通常、基準溝4の直径は固定値780mm、基準溝側端面5から踏面側端面9までの寸法は固定値125mm、タイヤ圧基準直径Gは固定値730mm、踏面3からフランジ厚測定点までの寸法Kは固定値10mm、フランジ直径Dは(A+2C)、タイヤ厚Tは(C−H+(A−G)/2)である。
【0004】
車輪の寸法測定方法には作業員の手作業による測定、車輪測定装置(特許文献1、2)を用いた自動測定等がある。
【0005】
【特許文献1】特許第3615980号公報
【特許文献2】特開平11−83462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
手作業による測定は作業性が悪く、作業員により測定値がばらつき易く、測定精度の信頼性に劣り、車輪に測定具を当てての作業であるため安全面、労力負担面でも課題があった。
【0007】
前記特許文献1、2の車両測定装置を用いた測定方法は、手作業測定の場合の課題はないが、いずれも撮影した画像の絶対値測定であるため、測定精度は撮影画像の精度に影響される。しかし、レーザ光線の太さのばらつき、撮影画像はレーザ光源設置時に位置ズレに起因するレーザ光照射角度のズレ、カメラレンズの収差、カメラレンズの位置ずれによるピントのズレ、CCDのピクセル値(画素数)による解像度等の影響を受ける。このため撮影画像が必ずしも車輪の状態に忠実でないことが多く、測定誤差が出易く、測定精度に問題がある。これら課題を低減するためには、解像度の高いカメラを使用し、サブピクセル処理をはじめとして高度で複雑な処理をし、レーザ光源やカメラの設置精度を高めなければならないため、カメラが高価になり、CPUがコスト高になり、測定処理が面倒であり、設置作業が面倒になる。しかも、そのような措置を講じても必ずしも前記課題が完全に解消されるわけではない。近年はこれまで以上の安全走行を確保する目的から測定頻度が高まっているため、前記測定装置では実用面で多くの課題が残されている。
【0008】
本発明は前記した車輪のフランジ厚、フランジ高、フランジ直径、踏面直径といった測定箇所の寸法を、車輪に非接触で、精度の高い測定ができ、車輪の寸法に製造時の公差があっても計測車輪の製作実寸を基準にしてそれからの摩耗を測定できるようにしたものである。また、形状、寸法などの異なる各種車輪の寸法測定もできて汎用性があり、低価格で、測定操作が簡便で取り扱い易く、更には、車庫、ピット等への列車の入庫時や出庫時に車両を停止させることなく走行させたままで、多数の車輪(例えば10両編成の車両に装備されている全車輪)を順次測定できるようにした車輪測定方法と車輪測定装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の車輪測定方法は請求項1記載のように、車輪の基準溝側端面からフランジをカバーする範囲と、車輪の踏面側端面からフランジをカバーする範囲に2方向から別々にレーザ光を照射して、そのレーザ光により車輪表面に車輪の断面輪郭形状を表示し、その断面輪郭形状を前記レーザ光照射方向と同方向から別々のカメラで撮影し、両カメラで撮影された夫々の撮影画像を3次元処理し、両処理画像の高さ基準部と横基準部を位置合わせして合成画像を作成し、この合成画像と、寸法値が既知の車輪について前記方法と同じ方法でレーザ光照射され、撮影され、3次元処理され、画像合成された基準画像とを両画像の基準溝側端面同士と基準溝同士を位置合わせして重ね合わせ、両画像の差分から測定箇所の寸法を測定するようにした。この場合、請求項2記載のように、2つの3次元処理画像における車輪のフランジ頭頂部を高さ基準部、基準溝側端面と踏面側端面を横基準部とし、両処理画像の高さ基準部同士を位置合わせし、2つの横基準部を両者間の長さが所定寸法になるように位置設定して画像合成することができる。前記合成画像の基準溝と基準画像の基準溝を重ね合わせるに当り、請求項3記載のように、合成画像の基準溝の斜面と基準溝側端面とのなす角度を測定し、その角度が所定角度以内のときは、前記斜面の延長線と基準溝側端面との交点位置を基準溝の斜面角とみなし、その斜面角から基準溝側端面上をフランジ側に所定寸法離れた位置を基準溝の水平面角とみなし、この水平面角と前記斜面角を、基準画像の基準溝の水平面角と斜面角と位置合わせして重ね合わせることもできる。前記測定において、請求項4記載のように、CPUなどのディスプレイ(画面)に、重ね合わせ画像を表示することも、その画像の他に、重ね合わせ画像の差分に基づく前記測定値をも表示することができる。
【0010】
本発明の車輪測定方法では、請求項5記載のように、列車の入庫時又は/及び出庫時に、車輪が所定位置に到来したことを検出し、その検出に基づいて車両に装備されている車輪へのレーザ光の照射、カメラによる撮影、画像の3次元処理、3次元処理画像の合成、合成画像と基準画像との重ね合わせを行って、車両走行中に車輪測定箇所の寸法を測定することができる。
【0011】
本発明の車輪測定装置は前記車輪測定方法に使用される測定装置であり、請求項6記載のように、車輪の基準溝側端面からフランジをカバーする範囲にレーザ光を照射するレーザ光源と、車輪の踏面側端面からフランジをカバーする範囲にレーザ光を照射するレーザ光源と、夫々のレーザ光照射部分をレーザ光源の照射方向と同じ方向から撮影するカメラと、それらカメラで撮影された踏面側画像と、基準溝側画像の3次元処理、3次元処理画像の合成、合成画像と基準画像の重ね合わせ、重ね合わせ画像の差分に基づく車輪測定箇所の寸法測定、車輪の摩耗量、摩耗量に基づく走行キロの演算といった各種演算処理を行うCPU、前記重ね合わせ画像、又はその画像と前記測定値を表示する画面を備えたものとすることができる。本発明では請求項7記載のように前記測定装置に、車両の有無を検出する車両センサと、カメラによる車輪撮影のタイミングを検知するタイミングセンサをも備え、タイミングセンサは車両進行方向の前後双方又はいずれか一方に配置し、レーザ光源はレーザ光の出射方向及び出射角度が、所定位置に到来する車輪の中心に照射できるように設置され、前記タイミングセンサを車輪中心がレーザ光照射位置に到来すると作動する位置に設置して、車輪中心がレーザ光照射位置に到来するたびに車輪上のレーザ光を撮影できるようにすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の車輪測定方法は次のような効果がある。
1.車輪の基準溝側と踏面側から撮影した2つの撮影画像を3次元処理して画像合成し、その合成画像を、前記測定方法と同じ測定装置を使用して同じ測定環境で同じ測定方法で撮影した基準画像と重ね合わせ、その重ね合わせ画像の差分から車輪測定箇所の寸法(摩耗量)を測定するので、従来の合成画像から絶対値測定する方法に比して測定誤差が少ない。
2.2つの画像のフランジ頭頂部を高さ基準部とし、走行により摩耗しない基準溝側端面と踏面側端面を横基準部とし、その高さ基準部同士と2つの横基準部同士を位置合わせして画像合成するので合成画像は車輪の形状、寸法に忠実なものとなる。このため車輪に製造時の公差内の寸法誤差があっても、その実寸に基づいて正確な寸法測定ができる。ちなみに、2つの横基準部間の寸法を公差0の基準寸法(125mm)にして合成すると、測定車輪の実寸と不一致になって測定誤差が発生するが、本発明ではそのような測定誤差は発生しない。
3.重ね合わせ画像(車輪プロファイル)を画面に表示するため、それら画像から車輪の全体形状、部分的変形等を把握することもできる。
4.レーザ光の照射から、撮影、画像合成、合成画像と基準画像の重ね合わせ、寸法測定までの一連の作業が車輪に非接触で自動的に行うので測定操作の面倒がなく、効率の良い測定ができ、労力が軽減され、作業の安全性も確保される。
5.車庫、ピット等へ入庫する車両、或いは出庫する車両が所定位置に到来したことを車両センサで検出し、その検出に基づいて車輪を測定するので、多数の車輪、例えば、10両編成の車両の車輪を走行中に次々と(連続的に)測定することができ、走行中の車両の車輪を効率よく、安全に測定することができ、労力も軽減される。車輪寸法を入庫時に測定すれば摩耗している車輪寸法を、出庫時に測定すれば補修後の車輪寸法を確認することができる。
6.重ね合わせ画像が表示された画面に測定値をも表示もするので、車輪寸法を数値で確認することもでき、その数値に基づいて車輪を削正して適正寸法に修正できるため、車両の安全走行が確保され、乗り心地も向上する。
7.測定データを蓄積すれば、削正時期や車輪の寿命時期等の予測管理等を行うこともでき、他のデータとの併用により車輪の走行距離を管理することもできる。
【0013】
本発明の車輪測定装置は次のような効果がある。
1.レーザ光源、カメラが所定位置に設置固定されているので、多数の車輪に対するレーザ光照射、車輪におけるレーザ光による車輪断面輪郭形状の撮影を、一定位置で、一定角度で、一定方向から行うことができるため、安定した画像が得られ、測定にバラツキがなく、測定精度が向上する。
2.寸法が既知である基準画像と合成画像との重ね合わせ画像の差分に基づいて車輪の寸法測定を行うので、精度の良好な光学機器や複雑な補正処理をしなくとも誤差の少ない測定ができ、コストが低減する。
3.車両の有無を検知する車両センサと、車輪が所定位置(レーザ光が車輪中心に照射される位置)まで走行してきたときに撮影させるタイミングセンサを備えているので、それらセンサ、レーザ光源、カメラを所定位置に設置しておけば、車輪を所定位置で確実に自動測定できる。このため、前記測定機器を車庫、ピット等の入口に設置しておけば入庫してくる走行列車を、出口に設置しておけば出庫する走行列車を、停止させることなく走行させたままで連続的に自動測定でき、作業性がよく、省力化でき、作業性が向上し、車輪へ非接触で測定できるので安全性も高い。また、入庫時と出庫時の双方向で測定すれば削正前と削正後のデータ比較を容易に行うことができる。
4.重ね合わせ画像の差分に基づいて寸法測定を行うことができるため、各種データ処理を行うCPUも複雑、高度のものである必要がなく、コスト低減につながる。
5.車両に取り付けてあるICタグを読み取って車輪の種類を判別し、その判別に基づいて測定パラメータがCPUで自動的に切換えられるようにしてあるので、1台の測定装置で、異なる種類、サイズの車輪を測定することができ、汎用性があり、低コスト化が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(本発明の車輪測定方法の実施形態1)
本発明の車輪測定方法では同一軸に装備されている左右二つの車輪を同時に測定することも、走行中の車両を停止させずに測定することもできるが、この実施形態は停止中の一つの車輪を測定する場合の一例であり、図1〜図12に基づいて以下に説明する。
【0015】
図1の車輪1は既存の鉄道用(軌道用)と同じものであり、フランジ2、踏面3、基準溝4を備えている。本発明の車輪測定方法で測定するのは車輪1の基準溝4からフランジ先端(頭頂部)Pまでのフランジ長C(図13)、フランジ厚F(図13)、フランジ高H(図13)をはじめとする各部の寸法である。それら寸法測定は次のようにして行う。
【0016】
図1のように車輪1の基準溝側端面5と踏面側端面9の前方斜め下方の2箇所に車輪1を挟むようにしてレーザスリット光源(レーザ光源)10と撮影装置(カメラ:例えばCCDカメラ)11を設置しておき、両レーザ光源10から車輪1に細線状のレーザ光を照射する。この場合、レーザ光を車輪1の基準溝側端面5からフランジ2までをカバーする範囲(図1の内側斜線部分V)と、車輪1の踏面側端面9からフランジ2までをカバーする範囲(図1の外側斜線部分W)に別々に照射して、車輪1の表面にその左右の断面輪郭形状f1、f2(図2(a)、(b))をレーザ光により表示する。前記レーザ光源10とCCDカメラ11は図1のように共通のフレーム15に取り付けてユニット化しておくと両者の間隔、車輪1に対する角度が一定する。また、レーザ光源10はそれから出射されるレーザ光が図3(b)のように車輪1の中心Oに向けて照射される方向、角度になるように設定しておく。また、レール20の内側と外側には車輪1を挟むようにタイミングセンサ23を設置しておくことができる。タイミングセンサ23はレーザ方式とすることができる。レーザ方式の一例としては図3(a)〜(c)のようにレールの一方に設置したレーザ光源23aからレーザ光を常時出射し、そのレーザ光がレーザ光源23aと対向して設置してある反射板23bで反射されるようにしておき、レール20の上の車輪1が走行してきて前記レーザ光が遮断されるとカメラ11に撮影開始信号が送信されるものとすることができる。
【0017】
前記左右の断面輪郭形状f1、f2を前記のように設置された2台のCCDカメラ11でレーザ光照射方向とほぼ同方向でそれより多少下方から同時に撮影し、2つの撮影画像F1、F2(図4(a)、(b))を画面12に表示する。この撮影画像F1、F2はコンピュータの演算処理装置(CPU)で処理するだけにして画面には表示しなくともよい。
【0018】
前記撮影画像F1、F2は車輪1の前方斜め下方から撮影されているため車輪断面輪郭形状f1、f2を正面から撮影したものとはZ軸(車輪断面の高さ方向)の寸法がずれる。この寸法ずれを補正して正規の断面画像の寸法に合せるために左右の撮影画像F1、F2を3次元処理して図5(a)、(b)に示す画像にする。3次元処理は例えば次のようにして行うことができる。この処理画像もCPUで処理するだけにして画面に表示しなくともよい。
フィルタ処理(スムージング等)
スリット画像の閾値判定
スリット座標位置取得(サブピクセル)
2次元画像の3次元座標変換
【0019】
図11に車輪とレーザ光源10及びCCDカメラ11の配置関係を示す。図11においてθ、Z、b、L、C、Yは夫々以下のとおりである。
θ:レーザ光源とCCDカメラの中心とのなす角
Z:a点の求める高さ
b:レーザ光源とCCDカメラの中心線が交差する点からカメラまでの長さ
L:レーザ光源とCCDカメラの中心線が交差する点からレーザ光源までの長さ
C:レンズ中心からCCDまでの長さ
Y:CCDの結像の長さ
本発明における3次元処理は前記Zを求めることであり、図11より次式で求めることができる。
【0020】
【数1】
【0021】
YはCCD上の画素のトレースで求めることができ、C、b、θは既知である為Zを求めることができる。又、レーザ光が当たっているX方向各点(画素点)のZを同様に求め、画像を描出することができる。
【0022】
次に、3次元処理済みの左右の画像(3次元処理画像:図5(a)、(b))を合成して図6の合成画像13とする。この場合、左右の3次元データを回転、移動させて画像を水平、垂直にし、画像を上下、左右に位置調整して、車輪のフランジ頭頂部P(図5(a)、(b))を検索して高さ基準部とし、一方の画像の踏面側端面9(図5(a))と他方の画像の基準溝側端面5(図5(b))を夫々横基準部とし、図5(b)の画像中の基準溝側端面5からフランジ頭頂部Pまでの距離aと、図5(a)の画像中の踏面側端面9からフランジ頭頂部Pまでの距離bを夫々求め、両画像の高さ基準部のフランジ頭頂部P同士を合致させると共に図6の合成画面の基準溝側端面5から踏面側端面9までの距離が前記a+bの距離になるように位置合わせして画像合成する。この場合、前記a、bの距離を求めることなく、基準溝側端面5から踏面側端面9までの距離を設計基準寸法の125mmに合わせると、測定した車輪の基準溝側端面5から踏面側端面9までの距離に公差内のバラツキがある場合、合成画像の基準溝側端面5から踏面側端面9までの距離が測定車輪の実寸と合致しなくなり、それがその後の測定誤差原因となる。しかし、この実施形態では前記のようにa+bの距離にしたため、そのような誤差は発生しない。
【0023】
画像合成は次のようにして行うこともできる。図5(a)、(b)の3次元処理と同じ方法で3次元処理された図5(c)、(d)の両画像のフランジ頭頂部Pを高さ基準部とし、図5(d)の画像中の基準溝側端面5から撮影画像の左端(踏面傾斜内角)Qまでの距離aと、図5(c)の画像中の踏面側端面9から踏面傾斜内側角Qまでの距離bを夫々求め、両画像の高さ基準部のフランジ頭頂部P同士を合致させると共に図6の合成画面の基準溝側端面5から踏面側端面9までの距離が前記a+bの距離になるように位置合わせして合成する。この場合も前記のような誤差はない。
【0024】
得られた図6の合成画像13と図7の基準画像14とを図8のように重ね合わせる。重ね合わせは両画像13、14の基準溝側端面5と基準溝4の基準点X(図6、図7の水平面角部)同士を位置合わせして行う。基準画像14は寸法が既知である基準車輪(例えば、新品車輪、樹脂等で擬似的に製作した車輪等)を本発明の車輪測定装置を使用して同じ測定条件で同じ測定方法で測定された画像である。重ね合わせ画像は画面12に表示する。重ね合わせた両画像は色違いにして目視で比較し易くすることもできる。本発明ではこの重ね合わせ画像の差分から車輪測定箇所であるフランジ長C(図13)、フランジ厚F(図13)、フランジ高H(図13)の摩耗量をCPUで演算処理して測定する。測定値は前記重ね合わせ画像が表示された画面上に重ね合わせ画像と共に、又はそれとは別の画面に表示することができる。測定値はデジタル値、グラフ、その他の形式で表示することができる。
【0025】
車輪1の基準溝4には図9(c)、(d)のように油、塵芥などの汚れ30が付着して、基準溝4の基準点Xを合成画像上で確認することができない場合がある。この場合は次のようにして基準点を求め、それを見做し基準点X1として、図7の基準画像14の基準溝4の基準点Xと重ね合わせる。基準溝4は図9(a)、(b)のように幅4mm、深さ2mmと定められており、基準側端面5と基準溝4の傾斜面4aのなす外角θと基準側端面5と基準溝4の傾斜面4aのなす内角αとは次の関係にある。
2/4=tanα
α=tan-11/2
θ=180度−α
【0026】
前記関係を前提にして、図9(c)、(d)の合成画像の基準溝4の傾斜面4aのうち部分的に確認できる部分(確認部)4bの延長線Sと基準溝側端面5とのなす角度θを測定し、その角度θが基準溝本来の傾斜面4aと基準溝側端面5とのなす角度(前記θ=180度−α)が所定範囲内にあるときは、前記延長線Sと基準溝側端面5との交点位置Yを基準溝4の斜面角部とみなし、この見做し基準点Yから基準溝側端面5上のフランジ2側に所定寸法(4mm)離れた位置を基準溝4の水平面角部(基準点)とみなし、この見做し基準点X1を、基準画像14の基準溝4の基準点X(図7)と位置合わせして重ね合わせる。
【0027】
車輪の基準溝4の汚れがひどく、図9(e)のように基準溝4の傾斜面4aを全く確認できないときは、測定不能と判断して画面上に図9(f)のようにMと表示する。
【0028】
前記CPUは通常のコンピュータのCPUと同様にプリンタや外部記憶装置などの外部装置との間でデータ送受信を行うことができる。測定データはコンピュータの内部メモリや外部メモリに保存することができる。前記撮影画像、合成画像、重ね合せ画像や、測定条件、測定データ等の任意のものはプリントアウトしたり、外部のデータ処理装置に伝送したりすることができる。これら処理も前記CPUで行うことができる。
【0029】
(本発明の車輪測定方法の実施形態2)
本発明では同一軸に装備されている二つの車輪を同時に測定する場合こともできる。この場合は図1のように2つの車輪1の夫々を外側と内側から挟むように設置したレーザ光源10(4つのレーザ光源)から、夫々の車輪1に実施形態1と同様にレーザ光を照射して車輪表面にその断面輪郭形状f1、f2(図2(a)、(b))を表示し、その輪郭断面形状を4つのCCDカメラ11で撮影し、夫々の車輪1の左右の撮影画像を3次元処理して、夫々の車輪別に画像合成し、夫々の合成画像13を基準画像14と重ね合わせ、両者画像の差分に基づいて夫々の車輪の寸法をCPUで演算処理して絶対値測定する。
【0030】
(本発明の車輪測定方法の実施形態3)
本発明の車輪測定方法では、例えば10両編成の車両が車庫、ピットなどに入庫するときに、車両走行中にその車両の多数本の車軸8に装備されている車輪1を順次測定することもできる。そのためには車庫、ピットなどの入口側にレーザ光源10及びカメラ11と共に車両センサ22(図3(a))及びタイミングセンサ23(図3(a))を設置しておき、入庫のために所定位置まで走行してきた列車を車両センサ22で検出し、その検出に基づいてレーザ光源10からレーザ光を出射させ、車両が更に走行して車輪中心部O(図3(b))に前記レーザ光が照射される位置まで到来すると、その車輪をタイミングセンサ23が検知してカメラ11に撮影信号を出力し、その信号に基づいてカメラ11が車輪上のレーザ光による車輪断面輪郭形状f1、f2を撮影し、以後、前記した撮影画像の3次元処理、3次元処理後の画像合成、合成画像13と基準画像14の重ね合わせ等をCPUで行って車輪の寸法測定が行われるようにしてある。この測定方法によれば列車の入庫時に車輪1の摩耗寸法を測定し、その測定データに基づいて車庫やピット内で車輪の削正、歪の補修等を行うことができる。
【0031】
本発明の車輪測定方法では車庫、ピットなどから出庫する車両の車輪を測定することもできる。そのためには車庫、ピットなど出口側にタイミングセンサ23を設けておき、出庫する車両の車輪中心部O(図3(b))にレーザ光が照射されたときに前記タイミングセンサ23が作動してカメラに撮影信号を送信するようにしておくことにより、カメラ11での車輪1の撮影、撮影画像の3次元処理、画像合成、合成画像13と基準画像14の重ね合わせ等が行われ、車輪の寸法測定が行われるようにする。この測定方法によれば補修後の車輪の寸法、形状等を出庫時に自動的に測定することができる。
【0032】
本発明の車輪測定方法では車庫、ピットなどの入口側と出口側の双方にタイミングセンサを前記のように設置しておくことにより、入庫時と出庫時の双方で車輪測定をすることができる。この測定方法によれば、測定データに基づいて入庫時に車輪1の寸法や形状を把握して削正し、出庫時に車輪寸法を測定して前記削正状態を確認することができる。
【0033】
(本発明の車輪測定方法の実施形態4)
本発明の車輪測定方法では、車軸8に装備された2つの車輪の間隔を測定することもできる。その場合は前記実施形態1の測定方法と同様にして左右の車輪を同時に撮影し、その撮影画像を3次元処理した左右の車輪の画像(図10)の画像間隔(固定値)Nと、左側の画像の基準溝側端面5と画像端面R1、右側の画像の基準溝側端面5と画像端面R2との間の距離Z1、Z2の合計値をCPUで演算処理して測定し、その合計値を2つの車輪間隔とする。この場合、図10の画像を、左右の基準車輪の基準溝側を本発明の車輪測定方法と同じ装置で、同じ条件で、同じ測定方法で撮影した基準画像と重ね合わせ、その差分に基づいてCPUで演算処理して測定することもできる。
【0034】
(本発明の車輪測定装置の実施形態1)
本発明の車輪測定装置の一例を図1及び図3(a)〜(c)に、その測定装置と測定データ処理部とのシステム構成の一例を図12に示す。この測定装置は、例えば10両編成の車両が車庫、ピットなどに次から次へと入庫してくるときに、それら車両の多数本の車軸8(図1)の夫々に装備されている2つの車輪1を走行中(停止させず)に同時に、順次測定する場合の例であり、図3(a)に示すように1台の車両センサ22と、一つの車輪1に対して2つのレーザ光源10と2つのカメラ11と、タイミングセンサ23を備えている。また、図12に示すように前記カメラ11で撮影された夫々の画像の3次元処理、3次元処理画像の合成、合成画像13と基準画像14の重ね合わせ、重ね合わせ画像の差分に基づく寸法測定といった各種処理を行うコンピュータ(CPU)を備えている。コンピュータは夫々の車輪用に1台ずつ計2台用意することもできるが1台にすることもできる。また、ICタグ読み取りセンサ26をも備えている。
【0035】
前記車両センサ22はレーザ方式であり、図3(a)に示すレーザ光源22aからレーザ光を出射し、レーザ光源22aと対向位置に設置してある反射体22bで反射させ、そのレーザ光が走行してくる車両25により遮断されると車両25を検知するものである。車両センサ22は反射式であるが、反射体22bの代わりに受光体を設けた透過式とすることもできる。また、レーザ方式以外のセンサ、例えば、近接センサとか、メカ式のセンサ等とすることもできる。
【0036】
前記タイミングセンサ23は図3(a)〜(c)のように、車庫、ピット等の入口側と出口側の双方に、車輪1を挟む対象位置に設置されている。このタイミングセンサ23もレーザ方式であり、図3(a)に示すレーザ光源23aからレーザ光を出射し、レーザ光源23aと対向位置に設置してある反射体23bで反射させ、そのレーザ光が走行してくる車輪により遮断されると車両を検知するものである。タイミングセンサ23は前記反射体23bの代わりに受光体を設けた透過式とすることもできる。また、レーザ方式以外のセンサ、例えば、近接センサとか、メカ式のセンサ等とすることもできる。
【0037】
前記レーザ光源10、カメラ11は共通のフレーム15(図1)に装備してセンサユニット17とし、そのレーザ光源10とカメラ11との相互間隔、車輪1に対する角度等を固定し、このセンサユニット17を車輪1の前方斜め下方に車輪1を挟むように設置固定しておくことにより、車輪1の測定箇所の寸法を前記のように測定できるようにしてある。レーザ光源10の向き及び角度はそれから出射されるレーザ光が、入庫又は出庫のために所定位置に到来した車輪の中心部O(図3(b))に照射されるように設定されており、カメラの向き及び角度はその車輪上に照射されているレーザ光による車輪断面輪郭f1、f2の画像F1、F2を撮影できるように設定してある。このように設定することにより、常に一定位置から、一定方向に、一定角度でレーザ光を照射し、一定位置から、一定角度でカメラ撮影して、それら多数の車輪1を同一条件で測定することができる。この場合は多数の車輪1の測定に測定誤差が発生しにくくなる。また、同一条件で撮影される画像に基づいて多数の車輪の寸法、摩耗量、形状、部分的変形等を比較することができ、比較精度も向上する。
【0038】
前記レーザ光源10、カメラ11には汎用のものとか本発明の車輪測定方法のために開発した専用のものを使用することができる。前記3次元処理も汎用の3次元処理ソフトとか本発明の車輪測定方法のために開発した専用のものを使用することができる。
【0039】
図12に示すシステム構成は、2台のパソコン(PC)、夫々のパソコン用の2台のキーボード(KB)、夫々のパソコン用の液晶ディスプレー(LCD)、左車輪用、右車輪用のセンサユニット17、車両の有無を検知する車両センサ22、左右の車両を位置検出するタイミングセンサ23、前記各種センサ、各種機器を制御するためのコントロールユニット31、ICタグ読み取りセンサ26を備えている。ICタグ読み取りセンサ26はICタグ読み取りセンサ26は車両に取り付けられているICタグに記憶されている情報を読み取るものである。ICタグ読み取りセンサ26で読み取られた情報に基づいてCPUが読み取った車輪の種類を判別し、その判別に合わせてCPUで測定パラメータが自動的に切替えられて、寸法の異なる各種車輪を一台の測定装置で測定できるようにしてある。
【0040】
前記測定装置では、車両センサ22で車両が検出される(車両有り)と夫々のセンサユニット17のレーザ光源10からレーザ光が出射され、車輪が進行して前記レーザ光が車輪中心部Oに照射される位置まで到来すると左右のタイミングセンサ23が作動して、夫々のセンサユニット17のカメラ11が車輪1を撮影するようにしてある。前記車両センサ22で車両が検出されない(車両なし)ときは車両センサ22のレーザ光源22aからレーザ光が車輪1に照射されず、夫々のセンサユニット17のカメラ11で車輪1が撮影されないようにしてある。
【0041】
図3(a)に示す車輪測定装置により入庫時(車輪が図3の右側に走行するとき)に車輪測定する場合は、図3の右側のタイミングセンサ23からの信号をカメラ撮影、画像取り込み、画像処理のタイミング信号とし、出庫時(車輪が図3の左側に走行するとき)に車輪測定する場合は、図3の左側のタイミングセンサ23からの信号をカメラ撮影、画像取り込み、画像処理のタイミング信号として使用する。これら信号はコントロールユニットで制御され、前記測定方法に従ってCPUにより3次元処理、画像合成、基準画像との重ね合わせ、寸法測定が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の車輪測定方法及び車輪測定装置の一例を示す説明図。
【図2】(a)、(b)は本発明の車輪測定方法におけるレーザ光照射による車輪断面輪郭形状の説明図。
【図3】(a)は本発明の車輪測定方法及び車輪測定装置の全体概要説明図、(b)は車輪中心へのレーザ光照射説明図、(c)はタイミングセンサの配置を示す平面図。
【図4】(a)、(b)は本発明におけるCCDカメラで撮影した左右の画像の説明図。
【図5】(a)、(b)は本発明における左右の3次元処理画像の説明図、(c)、(d)は(a)、(b)の画像を使用した画像合成方法の説明図。
【図6】本発明における合成画像の説明図。
【図7】本発明における基準画像の説明図。
【図8】合成画像と基準画像の重ね合わせ画像の説明図。
【図9】(a)〜(f)は基準溝が汚れている場合の基準点確認方法の説明図。
【図10】車軸に装備されている2つの車輪間隔測定方法の説明図。
【図11】撮影画像の3次元処理の原理説明図。
【図12】本発明の車輪測定装置のシステム構成の一例を示す説明図。
【図13】車輪説明図。
【図14】車軸への車輪装備説明図。
【符号の説明】
【0043】
1 車輪
2 フランジ
3 踏面
4 基準溝
5 基準溝側端面
8 車軸
9 踏面側端面
10 レーザ光源
11 撮影装置(CCDカメラ)
12 画面
13 合成画像
14 基準画像
15 フレーム
17 センサユニット
22 車両センサ
23 タイミングセンサ
25 車両
26 ICタグ読み取りセンサ
31 コントロールユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪の基準溝側端面からフランジをカバーする範囲と、車輪の踏面側端面からフランジをカバーする範囲に2方向から別々にレーザ光を照射して、そのレーザ光により車輪表面に車輪の断面輪郭形状を表示し、その断面輪郭形状を前記レーザ光照射方向と同方向から別々のカメラで撮影し、両カメラで撮影された夫々の撮影画像を3次元処理し、両処理画像の高さ基準部と横基準部を位置合わせして合成画像を作成し、この合成画像と、寸法値が既知の車輪について前記方法と同じ方法でレーザ光照射され、撮影され、3次元処理され、画像合成された基準画像とを両画像の基準溝側端面同士と基準溝同士を位置合わせして重ね合わせ、両画像の差分から測定箇所の寸法を測定することを特徴とする車輪測定方法。
【請求項2】
請求項1記載の車輪測定方法において、2つの3次元処理画像における車輪のフランジ頭頂部を高さ基準部、基準溝側端面と踏面側端面を横基準部とし、両処理画像の高さ基準部同士を位置合わせし、2つの横基準部を両者間の長さが所定寸法になるように位置設定して画像合成することを特徴とする車輪測定方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の車輪測定方法において、合成画像の基準溝と基準画像の基準溝を重ね合わせるに当り、合成画像の基準溝の斜面と基準溝側端面とのなす角度を測定し、その角度が所定角度以内のときは、前記斜面の延長線と基準溝側端面との交点位置を基準溝の斜面角とみなし、その斜面角から基準溝側端面上をフランジ側に所定寸法離れた位置を基準溝の水平面角とみなし、この水平面角と前記斜面角を、基準画像の基準溝の水平面角と斜面角と位置合わせして重ね合わせることを特徴とする車輪測定方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の車輪測定方法において、重ね合わせ画像を、又は重ね合わせ画像とその差分に基づく測定値とを同一画面に表示することを特徴とする車輪測定方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の車輪測定方法において、列車が入庫時又は/及び出庫時に所定位置に到来したことを検出し、その検出に基づいて車両に装備されている車輪へのレーザ光の照射、カメラによる撮影、画像の3次元処理、3次元処理画像の合成、合成画像と基準画像との重ね合わせを行って、入庫時又は/及び出庫時の車輪測定箇所の寸法を測定することを特徴とする車輪測定方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5記載の車輪測定方法に使用される測定装置であり、車輪の基準溝側端面からフランジをカバーする範囲にレーザ光を照射するレーザ光源と、車輪の踏面側端面からフランジをカバーする範囲にレーザ光を照射するレーザ光源と、夫々のレーザ光照射部分をレーザ光源の照射方向と同じ方向から撮影するカメラと、それらカメラで撮影された踏面側画像と、基準溝側画像の3次元処理、3次元処理画像の合成、合成画像と基準画像の重ね合わせ、重ね合わせ画像の差分に基づく車輪測定箇所の寸法測定、車輪の摩耗量、摩耗量に基づく走行キロの演算といった各種演算処理を行うCPU、前記重ね合わせ画像、又はその画像と前記測定値を表示する画面を備えたことを特徴とする車輪測定装置。
【請求項7】
請求項6記載の車輪測定装置において、車両の有無を検出する車両センサと、カメラによる車輪撮影のタイミングを検知するタイミングセンサをも備え、タイミングセンサは車両進行方向の前後双方又はいずれか一方に配置され、レーザ光源から出射されるレーザ光の出射方向及び出射角度は車輪が所定位置に到来すると車輪中心に照射されるように設置され、前記タイミングセンサは車輪中心がレーザ光照射位置に到来すると作動する位置に設置されたことを特徴とする車輪測定装置。
【請求項1】
車輪の基準溝側端面からフランジをカバーする範囲と、車輪の踏面側端面からフランジをカバーする範囲に2方向から別々にレーザ光を照射して、そのレーザ光により車輪表面に車輪の断面輪郭形状を表示し、その断面輪郭形状を前記レーザ光照射方向と同方向から別々のカメラで撮影し、両カメラで撮影された夫々の撮影画像を3次元処理し、両処理画像の高さ基準部と横基準部を位置合わせして合成画像を作成し、この合成画像と、寸法値が既知の車輪について前記方法と同じ方法でレーザ光照射され、撮影され、3次元処理され、画像合成された基準画像とを両画像の基準溝側端面同士と基準溝同士を位置合わせして重ね合わせ、両画像の差分から測定箇所の寸法を測定することを特徴とする車輪測定方法。
【請求項2】
請求項1記載の車輪測定方法において、2つの3次元処理画像における車輪のフランジ頭頂部を高さ基準部、基準溝側端面と踏面側端面を横基準部とし、両処理画像の高さ基準部同士を位置合わせし、2つの横基準部を両者間の長さが所定寸法になるように位置設定して画像合成することを特徴とする車輪測定方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の車輪測定方法において、合成画像の基準溝と基準画像の基準溝を重ね合わせるに当り、合成画像の基準溝の斜面と基準溝側端面とのなす角度を測定し、その角度が所定角度以内のときは、前記斜面の延長線と基準溝側端面との交点位置を基準溝の斜面角とみなし、その斜面角から基準溝側端面上をフランジ側に所定寸法離れた位置を基準溝の水平面角とみなし、この水平面角と前記斜面角を、基準画像の基準溝の水平面角と斜面角と位置合わせして重ね合わせることを特徴とする車輪測定方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の車輪測定方法において、重ね合わせ画像を、又は重ね合わせ画像とその差分に基づく測定値とを同一画面に表示することを特徴とする車輪測定方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の車輪測定方法において、列車が入庫時又は/及び出庫時に所定位置に到来したことを検出し、その検出に基づいて車両に装備されている車輪へのレーザ光の照射、カメラによる撮影、画像の3次元処理、3次元処理画像の合成、合成画像と基準画像との重ね合わせを行って、入庫時又は/及び出庫時の車輪測定箇所の寸法を測定することを特徴とする車輪測定方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5記載の車輪測定方法に使用される測定装置であり、車輪の基準溝側端面からフランジをカバーする範囲にレーザ光を照射するレーザ光源と、車輪の踏面側端面からフランジをカバーする範囲にレーザ光を照射するレーザ光源と、夫々のレーザ光照射部分をレーザ光源の照射方向と同じ方向から撮影するカメラと、それらカメラで撮影された踏面側画像と、基準溝側画像の3次元処理、3次元処理画像の合成、合成画像と基準画像の重ね合わせ、重ね合わせ画像の差分に基づく車輪測定箇所の寸法測定、車輪の摩耗量、摩耗量に基づく走行キロの演算といった各種演算処理を行うCPU、前記重ね合わせ画像、又はその画像と前記測定値を表示する画面を備えたことを特徴とする車輪測定装置。
【請求項7】
請求項6記載の車輪測定装置において、車両の有無を検出する車両センサと、カメラによる車輪撮影のタイミングを検知するタイミングセンサをも備え、タイミングセンサは車両進行方向の前後双方又はいずれか一方に配置され、レーザ光源から出射されるレーザ光の出射方向及び出射角度は車輪が所定位置に到来すると車輪中心に照射されるように設置され、前記タイミングセンサは車輪中心がレーザ光照射位置に到来すると作動する位置に設置されたことを特徴とする車輪測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−180619(P2008−180619A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−14611(P2007−14611)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(000101101)アクト電子株式会社 (5)
【出願人】(391016299)名古屋鉄道株式会社 (4)
【出願人】(502418907)有限会社エムエスジェイ創研 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(000101101)アクト電子株式会社 (5)
【出願人】(391016299)名古屋鉄道株式会社 (4)
【出願人】(502418907)有限会社エムエスジェイ創研 (3)
【Fターム(参考)】
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