説明

車輪給電装置

【課題】車載バッテリから電磁給電部を経て車輪内蔵モータへ電力を供給する場合において、車体側のDC/ACコンバータを駆動輪数よりも少なくし得るようになす。
【解決手段】強電バッテリ21から電磁給電部21L,21Rを経て左右駆動輪内蔵モータ4L,4Rへ電力を供給する給電システムにおいて、電磁給電部21L,21Rの第1コイル14L,14Rは、相互に接続した後、共通な給電回路25により強電バッテリ21に接続し、共通な給電回路25中に、共通な車体側のDC/ACコンバータ26を挿入する。よって、車体側のDC/ACコンバータ26を駆動輪数よりも少なくし得て、コスト高および重量増の問題を回避することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体側バッテリから車輪側モータへの給電が可能な電磁給電部を複数車輪に具えた車輪給電装置に関し、特にその低廉化および軽量化技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車輪給電装置は、例えば電気自動車に有用である。
電気自動車の車輪駆動方式としては様々なものが提案されており、そのうちの一つとして、車輪を内蔵モータにより直接駆動するようにした、所謂インホイールモータドライブ方式がある。
【0003】
当該インホイールモータドライブ方式を採用した電気自動車は、車室内の有効利用空間が拡大するという利点や、各輪独立駆動により、従来の一般的な自動車とは異なる運転感覚が得られるという利点がある。
【0004】
ところでインホイールモータドライブ方式を実現するには、車体側バッテリから車輪側モータへ電力を供給する必要がある。
この給電に際し、単純に車体側バッテリから車輪側モータまで給電線を配索し、この給電線を経て車体側バッテリから車輪側モータへ電力供給を行うのでは、給電線がサスペンションストロークや転舵に伴う車輪の変位で繰り返し曲げられ、疲労により断線してしまう可能性ある。
【0005】
かかる給電線の断線を低減するには、サスペンションストロークや転舵によっても、給電線が常に曲げ曲率を小さくされているよう給電線を配索することが考えられる。
しかし当該対策では、給電線の配索に大きなスペースを必要とし、その分だけ車室内空間が犠牲になり、上記したインホイールモータドライブ方式の利点の一つである、車室内有効利用空間が拡大するという利点が相殺されてしまう。
【0006】
なお、スリップリング等のブラシを用いたデバイスにより給電線の曲げを吸収することも考えられるが、この場合、機械的なブラシのメンテナンスが不可避であって維持管理にコストがかかるという問題や、ブラシが大きな設置スペースを必要として設置が困難であるという問題を生じ、実際的でない。
【0007】
そこで本願出願人は先に、特許文献1に記載のごとく、車体に対するサスペンションアームの枢支部に、車体側のコイルおよび磁性体と、サスペンションアーム側のコイルおよび磁性体とから成り、車体側コイルへの通電により発生した磁束が両磁性体を介してサスペンションアーム側コイルに鎖交し、磁束変化によってサスペンションアーム側コイルに起電力が発生するようにした電磁給電部を設け、この電磁給電部での磁気結合により車体側バッテリから車輪側モータへの給電が可能な車輪給電装置を提案済みである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−160033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に記載のような電磁誘導現象を用いた給電方式では、非接触式電磁給電部が、上記の磁束変化を惹起する交流電流しか電力を通過させることができない。
一方で、電気自動車のモータとしては同期式回転電動機を用いるのが主流であり、車両停車時に発進用のトルクを発生させるには直流電流が必要である。
【0010】
そこで、特許文献1に記載のように電磁誘導現象を利用した非接触式電磁給電部を用いる場合、車体側バッテリから電磁給電部へ交流電流を供給するために車体側のDC/ACコンバータが必要であり、また、サスペンションアーム側コイルに発生した交流起電力を直流に戻すために車輪側のAC/DCコンバータも必要であり、更に、車輪側モータを同期回転駆動しつつ出力制御するために車輪側のインバータ(DC/ACコンバータ)が必要である。
【0011】
そして、車輪を内蔵モータにより直接駆動するようにしたインホイールモータドライブ式電気自動車においては、上記した車体側のDC/ACコンバータ、車輪側のAC/DCコンバータ、および車輪側のインバータ(DC/ACコンバータ)が、駆動車輪ごとに、つまり駆動車輪の個数だけ必要である。
【0012】
左右後輪または左右後輪の2輪を駆動するインホイールモータドライブ式電気自動車について考察すると、非接触式電磁給電部を用いる場合、有線給電方式を用いる場合に比べて、車体側のDC/ACコンバータが2個、また車輪側のAC/DCコンバータが2個、余分に必要になり、コスト高になると共に重量も増大してしまうという問題がある。
【0013】
本発明は、車体側のDC/ACコンバータについては設置個数の削減が可能であるとの着想に基づき、この着想を実現して、非接触式電磁給電部を駆動車輪の個数だけ具えた車輪給電装置における上記のコスト高および重量増に関した問題を解消、若しくは少なくとも緩和することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的のため、本発明による車輪給電装置は、以下のようにこれを構成する。
先ず、本発明の前提となる車輪給電装置を説明するに、これは、車体側における第1コイルと、車体に懸架された車輪を含むバネ下部材側における第2コイルとの電磁結合により、車体側バッテリから、対応する車輪側モータへの給電が可能な電磁給電部を複数車輪に具えたものである。
【0015】
本発明は、かかる車輪給電装置において、
上記複数車輪に係わる上記第1コイルのうち、任意の2個以上の第1コイルと、上記車体側バッテリとの間における共通な給電回路中に、共通なDC/ACコンバータを介挿した構成に特徴づけられるものである。
【発明の効果】
【0016】
かかる本発明による車輪給電装置によれば、上記2個以上の第1コイルに対する車体側のDC/ACコンバータを、上記した共通なDC/ACコンバータで共用することとなり、当該車体側DC/ACコンバータの設置個数を削減し得て、電磁給電部を駆動車輪の個数だけ具える車輪給電装置のコスト高および重量増に関した前記の問題を解消、若しくは少なくとも緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施例になる車輪給電装置の要部を成す非接触式電磁給電部を具えたインホイールモータドライブ式電気自動車の駆動輪懸架部を示す側面図である。
【図2】図1のII−II線上で断面とし、矢の方向に見て示す非接触式電磁給電部の詳細断面図である。
【図3】図2に示す非接触式電磁給電部に係わる給電回路図である。
【図4】本発明の第2実施例になる車輪給電装置の給電回路を示す、図3と同様な回路図である。
【図5】本発明の第3実施例になる車輪給電装置の給電回路を示す、図3と同様な回路図である。
【図6】本発明の第4実施例になる車輪給電装置の給電回路を示す、図4と同様な回路図である。
【図7】本発明の第5実施例になる車輪給電装置の給電回路を示す、図6と同様な回路図である。
【図8】本発明の第6実施例になる車輪給電装置の給電回路を示す、図7と同様な回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
<第1実施例の構成>
図1〜3は、本発明の第1実施例になる車輪給電装置を示し、
図1は、車輪給電装置の要部を構成する非接触式電磁給電部を具えたインホイールモータドライブ式電気自動車の駆動輪懸架部を示す側面図、
図2は、図1のII−II線上で断面とし、矢の方向に見て示す非接触式電磁給電部の詳細断面図、
図3は、この非接触式電磁給電部に係わる給電回路図である。
【0019】
先ず図1,2により電磁給電部を説明するに、図1において、1は、インホイールモータドライブ式電気自動車の車体を示し、2Lは、インホイールモータドライブ式電気自動車の駆動輪(例えば左右前輪のうち、左前輪)を示す。
図1に示すように、駆動輪(左前輪)2Lをサスペンション装置3により車体1に懸架し、このサスペンション装置3は、車体1および駆動輪(左前輪)2L間に車両上下方向へ架設されたストラット部材3aや、車体1および駆動輪(左前輪)2L間に車両前後方向へ架設されたサスペンションアーム3bなどの各種サスペンション部材でリンク組して構成される通常のストラット式サスペンション装置とする。
【0020】
駆動輪(左前輪)2Lはモータ4Lを内蔵し、図示せざる左右方向反対側の駆動輪(右前輪)も同様にモータ(図3に4Rで)を内蔵し、これらモータによる左右前輪の個別駆動により電気自動車の走行が行われるものとする。
【0021】
サスペンションアーム3bは、駆動輪(左前輪)2Lから遠い後端をブッシュ5により車体1に上下方向揺動可能に取り付ける。
そのためブッシュ5は、ブラケット6を介して車体1に車幅方向へ延在するよう取り付けた枢支ピン7と、サスペンションアーム3bの後端に固設した、図2に明示する円筒部8とを有し、当該円筒部8の内周を図2に示すごとく、その軸線方向両端近傍におけるベアリング9を介し枢支ピン7上に回転自在に支持して構成する。
【0022】
かくして駆動輪(左前輪)2Lは車体1に対し、上下方向へサスペンションストローク可能に取り付けられ、
駆動輪(左前輪)2Lはストラット部材3aや、サスペンションアーム3bなどの各種サスペンション部材と共にバネ下部材を構成し、車体1はバネ上部材を構成する。
【0023】
図3に符号「21」を付して示す強電バッテリ(車載バッテリ)から、駆動輪(左前輪)2Lの内蔵モータ4Lへ駆動電力を供給するための電磁給電部20Lは、図2に基づき以下に説明するごとくに構成する。
【0024】
サスペンションアーム3bの後端円筒部8には、その外周に円環状の空所を画成する筒箱11を一体に設け、円筒部8の軸線方向中程にスリットが形成されるよう切り欠いて、円筒部8および筒箱11より成るサスペンションアーム3bの後端部をC字断面形状となす。
円筒部8の軸線方向中程におけるスリット状の切り欠き内にハブ12を介在させ、ハブ12の内周を枢支ピン7上に嵌着し、ハブ12の外周に車体側における円環状の第1磁性体13Lを嵌着する。
そして円環状の第1磁性体13Lの外周には、車体側の第1コイル14Lを巻装する。
【0025】
円筒部8および筒箱11より成るサスペンションアーム3bの後端部内には、当該サスペンションアーム後端部のC字断面形状と同じ断面形状となした、車輪側(バネ下部材側)における円環状の第2磁性体15Lを収納して設ける。
円環状の第2磁性体15L内には、車体側の第1コイル14Lを挟んで軸線方向両側に同心に配置させた、車輪側(バネ下部材側)における一対の第2コイル16Lを巻装する。
【0026】
次に、上記した電磁給電部20Lに係わる給電回路を図3に基づき説明する。
第2コイル16Lは、AC/DCコンバータ22Lおよびインバータ(DC/ACコンバータ)23Lを介して駆動輪(左前輪)2Lの内蔵モータ4Lに接続する。
左右方向反対側の駆動輪(右前輪)の内蔵モータ4Rについても、図3にサフィックス「L」を「R」に置き換えた同符号で示すごとく同様に、電磁給電部21Rの第2コイル16Rを、AC/DCコンバータ22Rおよびインバータ(DC/ACコンバータ)23Rによって、反対側駆動輪(右前輪)の内蔵モータ4Rに接続する。
【0027】
左右駆動輪(左右前輪)に係わる車体側の第1コイル14L,14Rは、相互に接続した後、共通な給電回路25によりモータ駆動用の強電バッテリ(車載バッテリ)21に接続し、共通な給電回路25中にDC/ACコンバータ26を挿入する。
このDC/ACコンバータ26は、各スイッチングデバイスを、交流の基本周波数と同期したワンパルスで駆動され、矩形波状の交流電圧を生成するものとする。
【0028】
共通な給電回路25には更に、強電バッテリ(車載バッテリ)21との接続箇所よりもDC/ACコンバータ26に近い箇所に、降圧用DC/DCコンバータ27を介して、補機駆動用の弱電(12V)バッテリ28を接続して、強電バッテリ(車載バッテリ)21から弱電(12V)バッテリ28への電力供給を可能にする。
共通な給電回路25には更に、強電バッテリ(車載バッテリ)21との接続箇所よりもDC/ACコンバータ26から遠い箇所に、強電バッテリ(車載バッテリ)21用の充電器29を接続する。
【0029】
降圧用DC/DCコンバータ27は、インバータ27a、絶縁トランス27b、整流器27cおよびDC/DCコンバータ27dにより構成する。
また充電器29は、地上電源31に適宜プラグインして、地上電源31の電力により強電バッテリ(車載バッテリ)21を充電するためのもので、整流器29a、絶縁トランス29b、インバータ29c、力率改善型コンバータ29d、整流器29eおよびフィルタ29fにより構成する。
【0030】
<第1実施例の作用>
上記した第1実施例の構成において、強電バッテリ(車載バッテリ)21から供給される電力は、DC/ACコンバータ26により交流に変換された後、左右駆動輪(左右前輪)に係わる車体側の第1コイル14L,14Rにそれぞれ供給される。
【0031】
第1コイル14L,14Rは、交流電流の供給により、図2に矢印で示すような磁束を発生し、これら第1コイル14L,14Rで発生した磁束は、車体側の第1磁性体13L,13Rおよび車輪側の第2磁性体15L,15Rを介して、左右駆動輪(左右前輪)に係わる車輪側の第2コイル16L,16Rに鎖交する。
そのため、交流に起因した磁束の変化により左右駆動輪側の第2コイル16L,16Rに交流の起電力が発生する。
【0032】
これら交流起電力はそれぞれ、対応するAC/DCコンバータ22L,22Rにより直流に変換される。
AC/DCコンバータ22L,22Rにより直流に変換された電力はそれぞれ、左右駆動輪(左右前輪)の内蔵モータ4L,4Rを個々に同期回転駆動しつつ出力制御し得るよう、対応するインバータ(DC/ACコンバータ)23L,23Rにより交流に変換され、アクセル操作に応答した制御下で左右駆動輪(左右前輪)の駆動に供され、電気自動車を制御下に走行させることができる。
【0033】
よって、車体側の第1コイル14L,14Rおよび第1磁性体13L,13Rと、車輪側の第2コイル16L,16Rおよび第2磁性体15L,15Rとで構成される電磁給電部での磁気結合により、車体1上における強電バッテリ(車載バッテリ)21から左右駆動輪(左右前輪)の内蔵モータ4L,4Rへの給電を行うことができる。
【0034】
なお、車輪側のAC/DCコンバータ22L,22Rおよび車体側のDC/ACコンバータ26をそれぞれ、双方向に通電が可能な構成にすれば、電気自動車の減速時に左右駆動輪(左右前輪)の内蔵モータ4L,4Rで発生した回生電力を強電バッテリ(車載バッテリ)21に蓄電することができ、エネルギー効率が向上する。
【0035】
<第1実施例の効果>
上述したような車体側の第1コイル14L,14Rおよび第1磁性体13L,13Rと、車輪側の第2コイル16L,16Rおよび第2磁性体15L,15Rとで構成される電磁給電部での磁気結合により、車体1上における強電バッテリ(車載バッテリ)21から左右駆動輪(左右前輪)の内蔵モータ4L,4Rへの給電を行う場合、
サスペンションアーム3bの揺動(サスペンションストローク)によっても、図2に示す磁束の磁路長が変化せず、車体側の第1コイル14L,14Rと、車輪側の第2コイル16L,16Rとの間の相互インダクタンスが一定で、強電バッテリ(車載バッテリ)21から車輪内蔵モータ4L,4Rへの安定した給電が可能となる。
【0036】
しかしその反面、電磁給電部を用いる場合、車体側のDC/ACコンバータが駆動輪の数(第1実施例では2個)だけ必要になって、コスト高になると共に重量も増大してしまうところながら、
本実施例においては、左右駆動輪(左右前輪)に係わる車体側の第1コイル14L,14Rを相互に接続した後、共通な給電回路25によりモータ駆動用の強電バッテリ(車載バッテリ)21に接続し、共通な給電回路25中にDC/ACコンバータ26を挿入したため、車体側のDC/ACコンバータ26が駆動輪の数(2個)よりも少なくて、上記コスト高および重量増の問題を回避することができる。
【0037】
また本実施例においては、上記のDC/ACコンバータ26が前記した通り、各スイッチングデバイスを、交流の基本周波数と同期したワンパルスで駆動され、矩形波状の交流電圧を生成するものであるため、
DC/ACコンバータ26のスイッチング周波数を低減でき、一層低価格の半導体素子で構成可能であり、車輪給電システム全体のコストを低減することができる。
【0038】
<第2実施例の構成>
図4は、本発明の第2実施例になる車輪給電装置の給電回路を示し、図3に対応する図で、図3におけると同様な部分に同一符号を付して示す。
本実施例においては、共通なDC/ACコンバータ26を、強電バッテリ(車載バッテリ)21から遠い交流側が三相のものとする(三相より多相でもよい)。
【0039】
そして電磁給電部20L,20Rは、車体側における第1コイル14L,14Rの各相をΔ結線とし、多相交流の各相が通電されるものとし、車輪側における第2コイル16L,16Rの各相をY結線とし、多相交流の各相が通電されるものとする。
【0040】
また、共通なDC/ACコンバータ26の交流側を多相化(図4では三相化)したのに呼応して、車輪側のAC/DCコンバータ22L,22Rも多相化(三相化)し、
これらAC/DCコンバータ22L,22Rと、インバータ(DC/ACコンバータ)23L,23Rとを、対応するもの同士、相互接続してAC/ACコンバータユニット32L,32Rとなし、これらAC/ACコンバータユニット32L,32Rを介し車輪内蔵モータ4L,4Rの各相を車輪側における第2コイル16L,16Rの各相に接続する。
【0041】
<第2実施例の作用・効果>
上記した本実施例の車輪給電装置も、第1実施例の車輪給電装置と同様に作用し、また車体側のDC/ACコンバータ26が駆動輪の数(2個)よりも少なくて、前記コスト高および重量増の問題を回避することができる。
【0042】
加えて本実施例では、共通なDC/ACコンバータ26の交流側および車輪側のAC/DCコンバータ22L,22Rを多相化(三相化)したことにより、伝送電力脈動を低減することができ、平滑デバイスの小型化およびコスト低減が可能である。
【0043】
また、車体側における第1コイル14L,14Rの各相をΔ結線とし、車輪側における第2コイル16L,16Rの各相をY結線としたため、
Δ結線の第1コイル14L,14RよりもY結線の第2コイル16L,16R側における端子電圧を高くすることができ、電磁給電部20L,20Rの二次側での昇圧が可能となる。
かかる昇圧による高電圧化は、バネ下部材である車輪内蔵モータ4L,4R、インバータ23L,23RおよびAC/DCコンバータ22L,22Rの小型化を可能ならしめ、バネ下質量の低下によるサスペンション特性の改善、および車輪給電システム全体のコスト低減が可能である。
【0044】
更に、バネ下部材に設置するAC/DCコンバータ22L,22Rおよびインバータ23L,23Rを、対応するもの同士、相互接続してAC/ACコンバータユニット32L,32Rとなしたため、AC/DCコンバータ22L,22Rとインバータ23L,23Rとの間で共通部品(コンデンサなど)を削減し得ると共に、ケースの共通化を実現し得て、これらによりコスト低減を実現することができる。
【0045】
<第3実施例の構成>
図5は、本発明の第3実施例になる車輪給電装置の給電回路を示し、図3に対応する図で、図3におけると同様な部分に同一符号を付して示す。
本実施例においては、共通なDC/ACコンバータ26を共通な給電回路25中に挿入するに当たり、強電バッテリ(車載バッテリ)21の直近に配置し、DC/ACコンバータ26の交流側に降圧用DC/DCコンバータ27および充電器29が接続されるようにする。
【0046】
この場合、降圧用DC/DCコンバータ27および充電器29を接続された給電回路25の箇所における電力が交流であることから、整合をとるため、降圧用DC/DCコンバータ27と給電回路25との接続部に整流器33を介在させ、充電器29と給電回路25との接続部にインバータ34を介在させる。
【0047】
<第3実施例の作用・効果>
上記した本実施例の車輪給電装置も、第1実施例の車輪給電装置と同様に作用し、また車体側のDC/ACコンバータ26が駆動輪の数(2個)よりも少なくて、前記コスト高および重量増の問題を回避することができる。
【0048】
加えて本実施例では、共通なDC/ACコンバータ26の交流側および車輪側のAC/DCコンバータ22L,22Rを多相化(三相化)したことにより、伝送電力脈動を低減することができ、平滑デバイスの小型化およびコスト低減が可能である。
【0049】
<第4実施例の構成>
図6は、本発明の第4実施例になる車輪給電装置の給電回路を示し、図4に対応する図で、図4におけると同様な部分に同一符号を付して示す。
本実施例においては、共通なDC/ACコンバータ26を、図4におけると同様に交流側を多相化(三相化)するが、このDC/ACコンバータ26を共通な給電回路25中に挿入するに当たり、強電バッテリ(車載バッテリ)21の直近に配置し、DC/ACコンバータ26の多相(三相)交流側に降圧用DC/DCコンバータ27および充電器29が接続されるようにする。
【0050】
この場合、降圧用DC/DCコンバータ27および充電器29を接続された給電回路25の箇所における電力が多相(三相)交流であることから、降圧用DC/DCコンバータ27と給電回路25との接続部に絶縁トランス35を介在させ、充電器29と給電回路25との接続部に絶縁トランス36を介在させ、
これにより、図4において必要であった降圧用DC/DCコンバータ27内のインバータ27aおよび絶縁トランス27bと、充電器29内の整流器29aおよび絶縁トランス29bとを不要にした。
【0051】
<第4実施例の作用・効果>
上記した本実施例の車輪給電装置も、前記各実施例の車輪給電装置と同様に作用し、また車体側のDC/ACコンバータ26が駆動輪の数(2個)よりも少なくて、前記コスト高および重量増の問題を回避することができる。
【0052】
加えて本実施例では、交流側を多相化(三相化)した共通な車体側DC/ACコンバータ26を強電バッテリ(車載バッテリ)21の直近に配置して、DC/ACコンバータ26の多相(三相)交流側に降圧用DC/DCコンバータ27および充電器29が接続されるようにし、降圧用DC/DCコンバータ27と給電回路25との接続部に絶縁トランス35を介在させ、充電器29と給電回路25との接続部に絶縁トランス36を介在させたため、
図4において必要であった降圧用DC/DCコンバータ27内のインバータ27aおよび絶縁トランス27bと、充電器29内の整流器29aおよび絶縁トランス29bとが不要になり、降圧用DC/DCコンバータ27および充電器29の小型化によって、車輪給電システム全体の小型化および低廉化を実現することができる。
【0053】
<第5実施例の構成>
図7は、本発明の第5実施例になる車輪給電装置の給電回路を示し、図6に対応する図で、図6におけると同様な部分に同一符号を付して示す。
本実施例においては、基本的には図6におけると同様に構成するが、図6における車輪側のAC/DCコンバータ22L,22Rと、インバータ(DC/ACコンバータ)23L,23Rとの相互接続になるAC/ACコンバータユニット32L,32Rに代えて、マトリックスコンバータ37L,37Rを用いる。
【0054】
<第5実施例の作用・効果>
上記した本実施例の車輪給電装置も、前記各実施例の車輪給電装置と同様に作用し、また車体側のDC/ACコンバータ26が駆動輪の数(2個)よりも少なくて、前記コスト高および重量増の問題を回避することができる。
【0055】
更に、図6のAC/ACコンバータユニット32L,32Rに代えマトリックスコンバータ37L,37Rを用いるため、素子耐圧が低減すると共に、大容量コンデンサを省略可能であって、コスト低減および低損失化を実現することができる。
【0056】
<第6実施例の構成>
図8は、本発明の第6実施例になる車輪給電装置の給電回路を示し、図7に対応する図で、図7におけると同様な部分に同一符号を付して示す。
本実施例は、図7に示すと同様な左右前輪内蔵モータ4L,4Rの給電回路に、左右後輪内蔵モータ4L´,4R´の同等な給電回路(モータ4L,4Rの給電回路構成部品に対応する部分を、「´」付きの同符号で示し、説明を省略する)を付加し、四輪駆動可能にしたインホイールモータドライブ式電気自動車の車輪給電装置として構成したものである。
【0057】
<第6実施例の作用・効果>
上記した本実施例の車輪給電装置も、前記各実施例の車輪給電装置と同様に作用し、また車体側のDC/ACコンバータ26が駆動輪の数(2個)よりも少なくて、前記コスト高および重量増の問題を回避することができる。
【0058】
また、図7の場合と同じく車輪側にマトリックスコンバータ37L,37R,37L´,37R´を用いるため、素子耐圧が低減すると共に、大容量コンデンサを省略可能であって、コスト低減および低損失化を実現することができる。
更に、各モータ駆動系はΔ−Y接続で昇圧し、弱電(12V)バッテリ28や充電器29に対してはY−Δ接続で降圧する構成のため、車輪給電システム全体として電圧変換をスムーズに行うことができる。
【符号の説明】
【0059】
1 車体
2L 左駆動輪(左前輪:バネ下部材)
3 サスペンション装置
3a ストラット部材(サスペンション部材:バネ下部材)
3b サスペンションアーム(サスペンション部材:バネ下部材)
4L,4R 左右駆動輪(左右前輪)内蔵モータ
4L´,4R´ 左右駆動輪(左右後輪)内蔵モータ
5 ブッシュ
6 ブラケット
7 枢支ピン
8 サスペンションアーム後端円筒部
9 ベアリング
11 筒箱
12 ハブ
13L,13R 第1磁性体
14L,14R,14L´,14R´ 第1コイル
15L,15R 第2磁性体
16L,16R,16L´,16R´ 第2コイル
20L,20R,20L´,20R´ 電磁給電部
21 強電バッテリ(車載バッテリ)
22L AC/DCコンバータ
23L,22R インバータ(DC/ACコンバータ)
25 共通な給電回路
26 共通なDC/ACコンバータ
27 降圧用DC/DCコンバータ
27a インバータ
27b 絶縁トランス
27c 整流器
27d DC/DCコンバータ
28 弱電(12V)バッテリ
29 充電器
29a 整流器
29b 絶縁トランス
29c インバータ
29d 力率改善型コンバータ
29e 整流器
29f フィルタ
31 地上電源
32L,32R AC/ACコンバータユニット
33 整流器
34 インバータ
35,36 絶縁トランス
37L,37R,37L´,37R´ マトリックスコンバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側における第1コイルと、車体に懸架された車輪を含むバネ下部材側における第2コイルとの電磁結合により、車体側バッテリから、対応する車輪側モータへの給電が可能な電磁給電部を複数車輪に具えた車輪給電装置において、
前記複数車輪に係わる前記第1コイルのうち、任意の2個以上の第1コイルと、前記車体側バッテリとの間における共通な給電回路中に、共通なDC/ACコンバータを介挿したことを特徴とする車輪給電装置。
【請求項2】
請求項1に記載された車輪給電装置において、
前記DC/ACコンバータは、交流側が三相以上であり、前記第1コイルおよび第2コイルは、多相交流の各相が通電されるものであることを特徴とする車輪給電装置。
【請求項3】
請求項2に記載された車輪給電装置において、
前記第1コイルの各相をΔ結線とし、前記第2コイルの各相をY結線としたものであることを特徴とする車輪給電装置。
【請求項4】
請求項1に記載された車輪給電装置において、
前記DC/ACコンバータは、各スイッチングデバイスを、交流の基本周波数と同期したワンパルスで駆動され、矩形波状の交流電圧を生成するものであることを特徴とする車輪給電装置。
【請求項5】
前記車輪側モータが同期式回転電動機である、請求項1〜4のいずれか1項に記載された車輪給電装置において、
前記同期式回転電動機の各相は、対応車輪に係わる前記バネ下部材に固設された、AC/DCコンバータおよびDC/ACコンバータの相互接続に成るAC/ACコンバータユニットを介し、対応車輪に係わる前記第2コイルの各相に接続したものであることを特徴とする車輪給電装置。
【請求項6】
請求項5に記載された車輪給電装置において、
前記AC/ACコンバータユニットに代え、マトリックスコンバータを用いたことを特徴とする車輪給電装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−157083(P2012−157083A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11099(P2011−11099)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】