説明

車高調整用ポンプ

【課題】モータへの振動入力を抑制することができる車高調整用ポンプを提供することである。
【解決手段】上記した目的を解決するために、本発明の課題解決手段は、シリンダ10と、シリンダ10内に摺動自在に挿入されるピストン11と、シリンダ10内にピストン11で区画したポンプ室Pと、ピストン11をシリンダ10に対して軸方向に駆動するモータMとを備え、自動二輪車の車軸と車体Bとの間に介装される緩衝器Dの外周に設けられて懸架バネSの一端を支持するバネ受2に対向するジャッキ室Jを配管12を通じて上記ポンプ室Pに連通し、ジャッキ室Jへの作動流体の給排によりバネ受2を懸架バネSの伸縮方向に一致する方向に駆動して車高調整を行う車高調整用ポンプ1において、緩衝器Dとは別体とされるとともに、モータMを保持するプレート30を備え、当該プレート30が防振ゴム31を介して自動二輪車の車体Bへ固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車高調整用ポンプの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
この種車高調整用ポンプとしては、たとえば、自動二輪車の車軸と車体との間に介装される緩衝器の外周に設けられて懸架バネの一端を支持するバネ受に対向するジャッキ室へ油圧を給排するものが知られている。
【0003】
この車高調整用ポンプは、具体的には、シリンダと、シリンダ内に摺動自在に挿入されるピストンで区画されるとともにジャッキ室へ連通されるポンプ室と、シリンダに対し回転不能且つ軸方向移動自在に挿入されてピストンの反ポンプ室側に当接する筒状のナットと、シリンダ内に回転自在に挿入されてナットに螺合するとともにモータによって回転駆動される螺子軸とを備えて構成されている。
【0004】
この車高調整用ポンプにあっては、油室には作動油が充満されており、モータのトルクによって螺子軸を回転駆動すると、ナットがシリンダに対して軸方向に進退し、ナットに当接するピストンをシリンダに対して軸方向に移動させることができる。このようにピストンをシリンダに対して移動させるとポンプ室容積が増減するので、上記の如くの作動によって、車高調整用ポンプは、ポンプ室に連通されるジャッキ室へ作動油を給排することができる。
【0005】
そして、ポンプ室から作動油が押し出されジャッキ室へ作動油が供給されるとジャッキ室が拡大してバネ受を油圧緩衝器に対して下方へ押し下げ、車高を上昇せしめることができ、反対に、ポンプ室の容積が拡大されると、懸架バネのバネ力によってバネ受を介してジャッキ室が圧縮されて作動油がポンプ室へと排出されるとともにバネ受が油圧緩衝器に対して上昇し、車高を下降させることができる(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−88528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の車高調整用ポンプは、シリンダの側方に張り出した二つのフランジにボルト挿通孔が設けられており、当該フランジを介して自動二輪車へ取付けるようになっている。
【0008】
ところが、自動二輪車に作用する振動における加速度が大きく、対するモータは一般的に振動入力に対して弱いため、振動がモータに伝達されるとモータに悪影響を与える可能性が有る。
【0009】
そこで、上記不具合を改善するために創案されたものであって、その目的とするところは、モータへの振動入力を抑制することができる車高調整用ポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を解決するために、本発明の課題解決手段は、シリンダと、シリンダ内に摺動自在に挿入されるピストンと、シリンダ内にピストンで区画したポンプ室と、ピストンをシリンダに対して軸方向に駆動するモータとを備え、自動二輪車の車軸と車体との間に介装される緩衝器の外周に設けられて懸架バネの一端を支持するバネ受に対向するジャッキ室を配管を通じて上記ポンプ室に連通し、ジャッキ室への作動流体の給排によりバネ受を懸架バネの伸縮方向に一致する方向に駆動して車高調整を行う車高調整用ポンプにおいて、緩衝器とは別体とされるとともに、モータを保持するプレートを備え、当該プレートが防振ゴムを介して自動二輪車の車体へ固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
モータを保持するプレートが防振ゴムを介して自動二輪車に固定されるようになっているので、自動二輪車側からプレートへの振動入力が抑制されるだけでなく、緩衝器の揺動に起因する振動が配管側から入力されても防振ゴムで振動を減衰させることができる。
【0012】
したがって、モータへの振動入力が抑制されるとともに、モータの振動を減衰することができるので、モータを振動から保護することができ、車高調整ポンプの信頼性と実用性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態における車高調整ポンプのZZ矢視縦断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態における車高調整ポンプの平面図である。
【図3】本発明の一実施の形態における車高調整ポンプのプレートの斜視図である。
【図4】本発明の一実施の形態における車高調整ポンプを自動二輪車へ固定した状態を示した図である。
【図5】本発明の一実施の形態における車高調整ポンプの自動二輪車への取付状態を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1および図4に示すように、車高調整ポンプ1は、自動二輪車の後輪軸を軸支するスイングアームAと車体Bとの間へ介装された緩衝器Dの外周に設けられて懸架バネSの一端を支持するバネ受2に対向するジャッキ室Jへ作動流体を給排するようになっており、図示するところでは、自動二輪車の座席を支持するシートレールRに固定されている。
【0015】
そして、この車高調整ポンプ1でジャッキ室Jへ作動流体を給排することによって、バネ受2を懸架バネSの伸縮方向に一致する方向に駆動して車高調整を行うようになっている。
【0016】
また、緩衝器Dは、アウターシェル3と、アウターシェル3内に挿通されるロッド4とを備え、アウターシェル3内にロッド4が出入りする際に、所定の減衰力を発生するようになっている。
【0017】
ジャッキ室Jは、アウターシェル3の外周に装着した筒状のハウジング5と、上記アウターシェル3の外周に摺動自在に装着される環状のバネ受2で画成されている。
【0018】
詳しくは、ハウジング5は、アウターシェル3の外周に対して所定の間隔を空けて対向する筒体5aと、筒体5aの上端から内周側に突出してアウターシェル3の外周に固定されるフランジ5bとを備えて構成されている。また、バネ受2は、アウターシェル3の外周に摺動自在に装着される筒部2aと、筒部2aの下端に設けられて懸架バネSの上端を支承する環状の受部2bとを備え、アウターシェル3に対して図1中上下動可能とされている。
【0019】
そして、バネ受2の筒部2aをハウジング5の筒体5aとアウターシェル3との間の環状隙間内に摺動自在に挿入することで、バネ受2とハウジング5との間にバネ受2に対向するジャッキ室Jが形成されるようになっており、ジャッキ室Jは、バネ受2に内部の圧力を作用させている。
【0020】
なお、懸架バネSは、上記したバネ受2と、ロッド4の下端に取付けたバネ受6とによって挟持され、緩衝器本体Dに一体とされて取付けられており、バネ受2を上方へ附勢し、ジャッキ室Jには懸架バネSの附勢力がこれを圧縮するように作用している。
【0021】
したがって、ジャッキ室Jに作動流体を供給すると、ジャッキ室Jの容積が増大するのでバネ受2が図1中下方へ移動して車高を高くすることができ、反対に、ジャッキ室Jから作動流体を排出すると、ジャッキ室Jを圧縮する懸架バネSの附勢力によってバネ受2を図1中上方へ移動させジャッキ室Jの容積が減少し、車高が低くなるようになっている。
【0022】
他方、車高調整用ポンプ1は、有頂筒状のシリンダ10と、シリンダ10内に摺動自在に挿入されるピストン11で区画されるとともにジャッキ室Jへ配管としてのホース12を介して連通されるポンプ室Pと、ピストン11をシリンダ10に対して軸方向に駆動するモータMと、シリンダ10とモータMとを保持するプレート30とを備えて構成されている。
【0023】
以下、車高調整用ポンプ1について詳細に説明すると、シリンダ10は、有頂筒状のシリンダ本体10aと、シリンダ本体10aの開口端から外方へ広がる鍔10bとを備え、シリンダ本体10aは、開口端側が拡径されて拡径部10cを備えており、拡径部10cの内周には全長に亘って雌螺子が形成されている。
【0024】
ピストン11は、シリンダ本体10a内に摺動自在に挿入されて、シリンダ10内であってピストン11より図1中上方側にポンプ室Pを画成しており、ポンプ室Pは、シリンダ本体10aの頂部に接続されるホース12を介してジャッキ室Jへ連通されている。また、ピストン11の外周には、シールリング15が装着されており、このシールリング15は、シリンダ本体10aの内周に摺接して、ポンプ室Pからの作動流体の漏洩を防止している。
【0025】
そして、ピストン11の反ポンプ室側には、筒状のナット13が収容されており、このナット13は、内周に全長に亘って雌螺子部13aを備えるとともに、肉厚を貫いて外周側に突出するピン13bを有している。
【0026】
さらに、このナット13は、同じくシリンダ10内に挿入されて拡径部10cの内周に固定される筒状のガイド部材16内に挿入されている。ガイド部材16は、図1に示すように、シリンダ10の拡径部10cに嵌合されて固定される環状の固定部16aと、ピストン11側へ向けて伸びる筒状のガイド部16bとを備えて構成されている。
【0027】
固定部16aの肩部は、シリンダ10の拡径部10cの最深部に設けた突起10dが侵入する切欠16cが設けられており、ガイド部材16をシリンダ10の拡径部10cの内周に嵌合することで、ガイド部材16がシリンダ10に対して回り止めされる。
【0028】
また、ガイド部16bは、内周に軸方向に沿う縦溝16dを備えていて、この縦溝16d内にはピン13bが挿入され、ガイド部材16に対してナット13が回り止めされている。したがって、ナット13は、シリンダ10に回り止めされて収容されている。
【0029】
さらに、ナット13は、モータMによって回転駆動される螺子軸14の外周に螺着されており、螺子軸14を回転駆動することで、回り止めされるナット13が送り螺子機構の要領で螺子軸14上を軸方向に移動し、ピストン11をシリンダ10に対して軸方向へ駆動することができるようになっている。なお、ピストン11がポンプ室Pから常に圧力を受けて図1中下方側へ押付けられているため、ナット13とピストン11を一体化せずとも分離して作動することが無いようになっているが、これら一体化してもよい。
【0030】
この螺子軸14は、基部14bと、基部14bから立ち上がる軸部14cと、軸部14cの先端に形成した雄螺子部14aと、基部14bの外周に設けたフランジ14dと、基部14bの下端から垂下されて内側形状が円形以外の形状に設定され外側形状が円形に設定される筒状のソケット14eとを備えて構成されている。
【0031】
上述のように、シリンダ10に、ピストン11、ナット13、ガイド部材16および螺子軸14を組付けた後、螺子軸14のフランジ14dにスラスト軸受17を積層し、環状の蓋18をシリンダ10の拡径部10cの内周に螺合すると、螺子軸14が回転自在にシリンダ10内に収容される。また、蓋18の内周には、筒状のブッシュ19が装着されており、このブッシュ19は螺子軸14のソケット14eの外周に摺接して、螺子軸14が径方向に軸ぶれすることなくシリンダ10に回転自在に固定されるようになっている。なお、蓋18をシリンダ10の拡径部10cの内周に螺合すると、蓋18の図1中上端の外周に拡径部10cに螺合されるガイド部材16の下端に当接して、ガイド部材16がシリンダ10に固定されるようになっている。
【0032】
なお、上述したように、ピストン11がポンプ室Pから常に圧力を受けて図1中下方側へ押付けられているため、ナット13が螺着される螺子軸14も常に下方へ押付けられて、フランジ14dとスラスト軸受17との接触が保たれ、フランジ14dとガイド部材16の固定部16aとガイド筒16bとの境に形成される段部との間に遊び(空隙)があっても、螺子軸14がシリンダ10内で軸方向へガタ付いてしまうことがないとともに、ガイド部材16との間に遊びを設けて螺子軸14の回転を妨げる摩擦を低減している。
【0033】
さらに、螺子軸14のソケット14e内には、ウォームホイール20のシャフト20aの一端が挿入され、シャフト20aの一端の外側形状は、円形以外の形状であってソケット14eの内側形状に一致させており、ウォームホイール20と螺子軸14とは一体にシリンダ10に対して回転するようになっている。
【0034】
シャフト20aの他端は、シリンダ10の鍔10bに固定されるギアケース21に設けた孔21a内に挿入されており、ウォームホイール20は、ギアケース21によってシリンダ10へ回転自在に固定されている。さらに、このウォームホイール20には、ウォーム22が歯合しており、ウォーム22はギアケース21に固定されるモータMに連結され、モータMによってウォーム22を回転駆動することができるようになっている。なお、モータMの回転を減速して螺子軸14へ伝達する必要が無い場合には、ウォームギアを省略してもよく、また、減速機構としてはウォームギア以外の歯車機構を採用することもできる。
【0035】
このようにシリンダ10とモータMは、ギアケース21によって一体化されていて、ギアケース21とシリンダ10との連結に際して使用される三つのボルト23によって、プレート30に固定されている。プレート30は、図3に示すように、樹脂製であって、矩形の本体30aと、本体30aに設けられてシリンダ10が挿通されるシリンダ挿通孔30bと、ボルト23の挿通を許容する三つのボルト挿通孔30cと、三つの角に設けた固定ボルト挿通孔30dとを備えている。
【0036】
そして、このプレート30は、防振ゴム31を介して自動二輪車のシートレールRにボルト止めされる。防振ゴム31は、円盤状とされており、図5に示すように、シートレールRにボルト締結される二輪車側ボルト32と、プレート30にボルト締結される固定ボルト34とを一体化している。
【0037】
より詳しくは、二輪車側ボルト32は、防振ゴム31が接着や溶着されて一体化される円盤状の基部32aと、基部32aから立ち上がる螺子軸32bとを備えて構成されており、シートレールRに予め設けた孔a,bに螺子軸32bを挿入し、当該螺子軸32bに螺着されるナット33と協働してシートレールRにボルト締結される。
【0038】
他方の固定ボルト34は、防振ゴム31が接着や溶着されて一体化される円盤状の基部34aと、基部34aから立ち上がる螺子軸34bとを備えて構成されており、固定ボルト挿通孔30dに螺子軸34bを挿通し、当該螺子軸34bに螺着されるナット35と協働してプレート30にボルト締結されるようになっている。
【0039】
そして、プレート30に設けた固定ボルト挿通孔30dのうち選択された二つを利用してプレート30に二つの固定ボルト34をボルト締結するとともに、シートレールRに設けた孔a,bを利用してシートレールRに二つの二輪車側ボルト32をボルト締結することで、プレート30が防振ゴム31を介して自動二輪車のシートレールRに固定される。
【0040】
なお、この場合、プレート30には三つの固定ボルト挿通孔30dが設けられているので、固定ボルト34が挿入される二つの固定ボルト挿通孔30dの選択の仕方によって、車高調整用ポンプ1の自動二輪車への取付姿勢を変更することができ便利であるが固定ボルト挿通孔30dの設置数は任意であり、上記の三つに限定されるものではない。さらに、この場合、自動二輪車のシートレールRに直接プレート30をボルト締結するようになっているが、シートレールRにステー等を取付けて、ステーを介してプレート30を間接的にシートレールRへ固定するようにしてもよく、さらには、プレート30の固定位置はシートレールRに限定されない。
【0041】
また、防振ゴム31は、径方向の振動をよく減衰することができ、自動二輪車では比較的横方向より前後上下方向の入力が多いので、防振ゴム31の径方向を自動二輪車の前後上下に一致させて自動二輪車へ取付けることで、車高調整用ポンプ1に入力される振動を効果的に減衰させることが可能である。つまり、防振ゴム31の防振方向を自動二輪車の前後上下に一致させることで、車高調整用ポンプ1に入力される振動を効果的に減衰させることが可能である。
【0042】
ところで、車体Bに対してスイングアームAが揺動するために、スイングアームAと車体Bとの間へ介装された緩衝器Dは、伸縮に伴って車体Bとの取付部を支点として自動二輪車の前後方向へ遥動する動作を呈する。
【0043】
この緩衝器Dの揺動は、配管としてのホース12を介して振動として車高調整ポンプ1に伝達されるので、緩衝器Dの揺動に起因する振動がモータMにも作用することになる。
【0044】
しかしながら、モータMを保持するプレート30が防振ゴム31を介して自動二輪車に固定されるので、シートレールR側からプレート30への振動入力が抑制されるだけでなく、緩衝器Dの揺動に起因する振動がホース12側から入力されても防振ゴム31で振動を減衰させることができる。
【0045】
そして、モータMを駆動すると、ウォーム22とウォームホイール20でなるウォームギアによって、モータMの回転が減速されて螺子軸14に伝達され、螺子軸14が回転すると、雌螺子部13aと雄螺子部14aでなる送り螺子機構によって、シリンダ10に対して回り止めされたナット13がピストン11を伴って図1中上下方向となる軸方向に移動する。
【0046】
このように、モータMを駆動することで、ピストン11をシリンダ10に対して軸方向に移動させることができ、ポンプ室P内の容積を増減することができるようになっている。
【0047】
ここで、ピストン11を図1中上方へ移動せしめると、ポンプ室Lの容積が減じられ、ポンプ室P内の減少容積に見合った量の作動流体を車高調整用ポンプ1から排出してジャッキ室Jへ供給して車高を上昇させることができ、反対に、ピストン11を図1中下方へ移動せしめると、ポンプ室Pの容積が増大して、懸架バネSによって圧縮方向に附勢されているジャッキ室Jの容積がポンプ室Pの増大容積に見合って減少して、ジャッキ室Jから量の作動流体が排出されてポンプ室Pでこれを吸収して車高を下降させることができる。
【0048】
そして、モータMを保持するプレート30が防振ゴム31を介して自動二輪車に固定されるようになっているので、自動二輪車側からプレート30への振動入力が抑制されるだけでなく、緩衝器Dの揺動に起因する振動がホース12側から入力されても防振ゴム31で振動を減衰させることができる。
【0049】
したがって、モータMへの振動入力が抑制されるとともに、モータMの振動を減衰することができるので、モータMを振動から保護することができ、車高調整ポンプ1の信頼性と実用性が向上する。
【0050】
さらに、プレート30が樹脂材料で形成される場合には、防振ゴム31による振動の低減に加えてプレート30によっても自動二輪車側からの振動入力を抑制することができるので、防振効果が高く、また、配管としてのホース12を介して作用する緩衝器Dの揺動に起因する振動に対してプレート30の弾性変形によって振動を吸収できるので振動減衰効果も高くなる。加えて、配管としてのホース12からの振動入力の際に、プレート30が弾性変形するので、ホース12のシリンダ本体10aへの取付部に過度に曲げ力が作用してしまうことを避けることができ、ホース12の疲労を抑制することができる。
【0051】
そしてさらに、防振ゴム31は、径方向の振動を効果的に抑制するので、シートレールRに対してプレート30の前後上下方向の振動をも抑制することができる。
【0052】
また、プレート30が自動二輪車のシートレールRに固定される場合、シートレールRはエンジンを支持しているフレームFから分岐しており、エンジン振動の伝達が少ないので、モータMの振動をより一層低減することができる。
【0053】
この実施の形態の場合、プレート30をシートレールRに設けた孔a,bを利用して固定しているが、自動二輪車のプレート30を固定したい箇所、たとえば、シートレールRへの固定に当たり、シートレールRの背面側にプレート30と対向してプレート30にボルト締結されるプレートを設けておき、プレート30と背面側のプレートとでシートレールRを挟持してもよい。この場合には、防振ゴムをシートレールRの正面側と背面側に設けてプレート30とシートレールRとの間および背面側のプレートとシートレールRとの間にそれぞれ防振ゴムを介装してこれら防振ゴムでシートレールRを挟み込むようにすればよい。
【0054】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の車高調整用ポンプは、自動二輪車の車高調整用ジャッキに利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 車高調整用ポンプ
2 バネ受
2a バネ受における筒部
2b バネ受における受部
3 アウターシェル
4 ロッド
5 ハウジング
5a ハウジングにおける筒体
5b ハウジングにおけるフランジ
6 下方側のばね受
10 シリンダ
10a シリンダ本体
10b 鍔
10c 拡径部
10d 突起
11 ピストン
12 配管としてのホース
13 ナット
13a ナットにおける雌螺子部
13b ナットにおけるピン
14 螺子軸
14a 螺子軸における雄螺子部
14b 螺子軸における基部
14c 螺子軸における軸部
14d 螺子軸におけるフランジ
14e 螺子軸におけるソケット
15 シールリング
16 ガイド部材
16a ガイド部材における固定部
16b ガイド部材におけるガイド筒
16c ガイド部材における切欠
16d ガイド部材における縦溝
17 スラスト軸受
18 蓋
19 ブッシュ
20 ウォームホイール
20a ウォームホイールにおけるシャフト
21 ギアケース
21a ギアケースにおける孔
22 ウォーム
30 プレート
30a プレートにおける本体
30b プレートにおけるシリンダ挿通孔
30c プレートにおけるボルト挿通孔
30d プレートにおける固定ボルト挿通孔
31 防振ゴム
32 二輪車側ボルト
32a 基部
32b 螺子軸
33 ナット
34 固定ボルト
34a 基部
34b 螺子軸
35 ナット35
A スイングアーム
a,b 孔
B 車体
D 緩衝器
F フレーム
J ジャッキ室
M モータ
P ポンプ室
R シートレール
S 懸架バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、シリンダ内に摺動自在に挿入されるピストンと、シリンダ内にピストンで区画したポンプ室と、ピストンをシリンダに対して軸方向に駆動するモータとを備え、自動二輪車の車軸と車体との間に介装される緩衝器の外周に設けられて懸架バネの一端を支持するバネ受に対向するジャッキ室を配管を通じて上記ポンプ室に連通し、ジャッキ室への作動流体の給排によりバネ受を懸架バネの伸縮方向に一致する方向に駆動して車高調整を行う車高調整用ポンプにおいて、緩衝器とは別体とされるとともに、モータを保持するプレートを備え、当該プレートが防振ゴムを介して自動二輪車の車体へ固定されることを特徴とする車高調整用ポンプ。
【請求項2】
プレートが弾性を備えた樹脂で形成されることを特徴とする請求項1に記載の車高調整用ポンプ。
【請求項3】
防振ゴムの防振方向を自動二輪車の前後上下に一致させたことを特徴とする請求項1または2に記載の車高調整用ポンプ。
【請求項4】
プレートが自動二輪車のシートレールに固定されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車高調整用ポンプ。
【請求項5】
プレートに設けた固定ボルト挿通孔に挿入されてプレートにボルト締結される固定ボルトと、自動二輪車に設けた孔に挿入されて自動二輪車にボルト締結される二輪車側ボルトとを備え、固定ボルトと二輪車側ボルトが防振ゴムを介して一体化されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の車高調整用ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−11683(P2011−11683A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158957(P2009−158957)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】