説明

軸受機構、軸受機構を用いたスピンドルモータおよびスピンドルモータを搭載した記録ディスク駆動装置

【課題】 フランジ部を排除することによる低電流化および低価格化を実現した軸受機構、この軸受機構を使用したスピンドルモータ、およびこのスピンドルモータを搭載した記録ディスク駆動装置を提供すること。
【解決手段】 シャフト20の第一部位21および第二部位22とこれらの部位を連結する連結部23を設け、ハウジング30には抜止部33または別部材となる抜止部材50または60をスリーブ10と当接するように配置する。この抜止部33(若しくは抜止部材50、60)の内径は、連結部23の軸方向上側に配置され、シャフト20の第二部位22よりも大きく、第一部位21よりも小さいようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑流体を有する動圧軸受機構、この動圧軸受機構を用いたスピンドルモータ、およびこのスピンドルモータを搭載した記録ディスク駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のハードディスク駆動装置等の信号記録再生装置のパソコン以外の用途が増加している。特にこのハードディスク駆動装置の携帯機器への搭載の増加は顕著である。この携帯化に際してハードディスク駆動装置の低電流化が携帯機器の電池寿命に通じ、重要な課題となってきている。また携帯機器需要の増加に際し、新規参入メーカーが増加しており、競争激化による価格低下は必至である。それに伴い、ハードディスク駆動装置およびスピンドルモータの価格低下は重要な課題として挙げられる。
【0003】
図9は従来の軸受機構を示した断面図である。図9を参照して、中空円筒状のスリーブ1に回転自在に支持されるようにシャフト2が挿通されている。そしてそのシャフト2の下端部には、シャフト2の抜止かつスラスト軸受となるフランジ部2aが形成されている。またスリーブ1の下部には、このフランジ部を収容する凹部1aが形成され、その凹部1aに蓋をするようにスラストプレート3が設けられている(このような従来の軸受機構として特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】米国特許公開2003−0174914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フランジ部2aが形成されることにより、このフランジ部2a分の重さおよびフランジ部2aが回転することによって発生する流体抵抗分が増加してしまい低電流化が困難であった。またフランジ部2aによる部品点数の増加によって単価が増加していた。またこのフランジ部2aをシャフト2と一体的に作製したとしても、シャフト2の加工費の増加となってしまう。そのため、軸受機構の価格増加は避けられない問題となる。
【0006】
したがって本発明は、フランジ部2aを排除することによる低電流化および低価格化を実現した軸受機構、この軸受機構を使用したスピンドルモータ、およびこのスピンドルモータを搭載した記録ディスク駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1によれば、軸受機構であって、所定の径を有する第一部位と前記第一部位よりも径の小さい第二部位と前記第一部位の外周面および前記第二部位の外周面を連結する連結面とを中心軸に沿って有するシャフトと、前記第一部位が挿入されるとともに潤滑流体による流体動圧を利用して前記シャフトを支持する円筒形状の軸受面を有するスリーブと、前記スリーブの第一部位側を塞ぐプレートと、前記スリーブを外側から保持するスリーブ保持部と、前記連結面の軸方向上側に配置され、前記第二部位が挿通される開口穴を有する抜止部材とを備え、前記抜止部材の前記開口穴は、前記シャフトの前記第二部位が挿通され、前記連結面と軸方向に対向する内径が前記第一部位より小さい抜止部が形成され、前記抜止部より第二部位側に形成される前記開口穴の内周面と前記第二部位の外周面との間の間隙が前記第一部位に向い減少するテ−パ部が形成され、前記テ−パ部にて前記潤滑流体の界面が形成されることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2によれば、請求項1に係り、前記スリーブの少なくとも一部は含油多孔質材料にて形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3によれば、請求項1および請求項2のいずれかに係り、前記プレートと前記スリーブ保持部とは、一体的に成形されることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項4によれば、請求項1乃至請求項3のいずれかに係り、前記シャフトの前記第一部位の外周面と前記スリーブの内周面との間に動圧発生溝を有する2つのラジアル軸受部が形成され、前記シャフトの前記第一部位の端面と前記プレートとの間に動圧発生溝を有する1つのスラスト軸受部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項5によれば、請求項1乃至請求項4のいずれかに係り、前記抜止部と前記スリーブ保持部とは一体的に成形され、前記スリーブの端面と前記抜止部とが当接することを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項6によれば、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の軸受機構であって、前記抜止部材は略有蓋円筒状であり、前記スリーブ外周面に当接する円筒部と、前記スリーブ端面に当接する蓋部とを有し、該蓋部には前記シャフトの前記第二部位を挿通し、前記連結面と半径方向に対向する内径が前記第一部位よりも小さい開口穴が設けられ、前記第二部位の外周面と該開口穴内周面との間には第一間隙部が設けられ、該円筒部外周面と前記スリーブ保持部内周面との間には第二間隙が設けられ、該第一間隙部および該第二間隙部は開口側に向い漸次拡大し、該第一間隔部および該第二間隙部にて潤滑流体の界面が形成されることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項7によれば、請求項1乃至請求項6のいずれかに係り、前記シャフトの前記連結面と該連結面に対向する前記抜止部との間には、動圧発生溝を有する軸受部が設けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項8によれば、スピンドルモータは、ベースと、ベースに固定されたステータと、請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の軸受機構によってベースに対して回転自在に支持されたロータと、ステータに対向してロータ周囲に取り付けられたロータマグネット、を有することを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項9によれば、請求項1乃至請求項8のいずれかに係り、ロータマグネットと軸方向に対向して磁性体のヨークがベースに取り付けられることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項10によれば、請求項1乃至請求項8のいずれかに係り、ロータマグネットの磁気中心が、ステータの軸方向高さの中心よりも上側に位置していることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項11によれば、記録ディスク駆動装置は、請求項8乃至請求項10のいずれかに記載のスピンドルモータを搭載したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1乃至請求項6によれば、シャフトと抜止部によりシャフトの抜け止めが容易に作製することができ、またシャフトの第一部位の端面との間にスラスト軸受部が形成されることから、従来から必要であったフランジを削除することができる。そしてスリーブを略円筒状に形成することより、精度の要する軸受部を簡単な形状にて作製することができるので、安価に作製することができ、モータの低価格化に繋がる。さらに、このスリーブを含油多孔質材料にて形成することにより、さらに安価にスリーブを作製することができる。そしてモータの更なる低価格化を実現することができる。
【0019】
また回転体である軸体からフランジを削除したことにより、フランジにかかっていた潤滑流体による流体抵抗がなくなる。それにより回転による流体抵抗が減少するので、モータの低消費電力化を図ることができる。
【0020】
本発明の請求項7によれば、シャフトの第一部位と第二部位とを連結する連結部に動圧発生溝を形成することにより、抜止部と連結部との流体圧力が増加し、シャフトとスリーブ保持部との直接接触を防ぎ、また流体圧力による緩衝効果も発揮する。
【0021】
本発明の請求項8によれば、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載した軸受機構を使用することにより、安価なスピンドルモータを提供することができる。
【0022】
本発明の請求項9によれば、ロータマグネットの下側にヨークを配置することにより、ロータマグネットの引力により常に軸方向下側に作用して、スラスト軸受によるシャフト浮上を調節することができる。
【0023】
本発明の請求項10によれば、ロータマグネットの磁気中心をステータ中心より軸方向上側に配置することにより、請求項7と同様の効果を得ることができる。
【0024】
本発明の請求項11によれば、請求項7乃至請求項9のいずれかに記載のスピンドルモータを搭載することにより、安価な記録ディスク駆動装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明に係る実施例に関して図1乃至図3を参照して説明する。
【0026】
図1a)は本発明に係る実施例における一形態を示した模式断面図であり、b)は二点鎖線部の拡大図である。図2および図3も同様な形式にて他の実施例の形態を示した模式断面図である。また図2c)は抜止部材の半円断面図である。図3c)はa)の上面図である。
【0027】
<実施例1>
図1を参照して、スリーブ10は中空円筒状であり、その中にシャフト20が回転自在に支持されるように挿通されている。このスリーブ10の内周面には、軸方向に2つ隔たった動圧発生溝11、12がそれぞれ形成され、各々がラジアル軸受部となる。
【0028】
シャフト20は、スリーブ10の内周面と微少間隙を介して対向する第一部位21と、この第一部位21より軸方向上側に位置し、第一部位21より径の小さい第二部位22とから形成される。そして第一部位21と第二部位22との境には第一部位21と第二部位22とを連結する連結部23が形成される。
【0029】
スリーブ10の外周面には、スリーブ10を外囲するように配置された円筒状のハウジング30が固定されている。このハウジング30の下端部31には、円盤状のスラストプレート40が固定されている。スラストプレート40の上面には動圧発生溝41が形成されている。スラストプレート40とシャフト20の第一部位21の下端面21aとは軸方向に微少間隙を介して対向しておりスラスト軸受部を形成する。そしてスラストプレート40の動圧発生溝41によってシャフト20を浮上させる。
【0030】
またラジアル軸受部とスラスト軸受部を実質的に途切れることなく満たすように潤滑流体が充填される。これにより、各軸受部を潤滑流体の流体圧力によりシャフト20を回転自在に支持する。
【0031】
またハウジング30は、スリーブ10の上端面13と当接するように内側に縮径する抜止部32を有する。この抜止部32の内径は、シャフト20の第二部位22の外径より大きく、第一部位21の外径より小さくなるようにする。これにより、スラスト軸受部によるシャフト20の軸方向上側への浮上してもシャフト20の連結部23がこの抜止部32と潤滑流体を介して接触することにより、浮上を制限させることができる。つまり抜け止めとなる。またシャフト20の第二部位22の外周面に対して抜止部32の内周面を半径方向外側に傾斜させることによって、これらの間隙を軸方向下側に漸次狭くすることにより、界面の安定化を実現することができる。
【0032】
スリーブ10とハウジング30、スラストプレート40および抜止部32との当接部分に少なくとも1つ連通路(図1の点線部)を設けることにより潤滑流体を循環することができる。図中の矢印の方向に動圧が発生するように各動圧発生溝は形成されているので、潤滑流体は連通路を通り一点鎖線矢印(スリーブ10中に記載)の方向に循環する。その結果、潤滑流体は回転時による流体圧力のアンバランスを補正することができ、安定した回転を実現することができる。この連通路は、図中ではスリーブ10側に設けられているが、スリーブ10と当接する部材間に連通路が設けられればよく、これに限定することはない。例えば、ハウジング30側に連通路があってもよい。
【0033】
またシャフト20の連結部23に動圧発生溝23aを形成することにより、抜止部32との軸方向間隙の流体圧力を高めることができる。特にスリーブ10の連通路(図b)における点線)から流入する潤滑流体と動圧発生溝23aとの作用によってより流体圧力を高めることができる。これは、シャフト20と抜止部32と間にて緩衝作用をもたらすことができ、外部衝撃等によってシャフト20が軸方向上側に移動してしまうことがあってもシャフト20の連結部23と抜止部32との間の流体圧力が大きいため、その移動力を減少させる効果がある。これにより、シャフト20と抜止部32との直接接触を防ぐことができ、信頼性の高い軸受機構を提供することができる。
【0034】
この抜止部33とスラストプレート40の動圧発生溝41により、フランジの代わりの役目を果たすことができるので、軸受機構からフランジを排除することができ、その分、低電流化および低価格化を実現することができる。
【0035】
<実施例2>
図2を参照して、抜止部が別部材の場合について説明する。スリーブ10およびシャフト20に関しては形状に変更ないので同番号を使用する。
【0036】
a)を参照して、ハウジング30aは有底円筒状であり、その円筒部31aの内周面には、スリーブ10が底部32aと当接するように固定されている。そしてその底部32aには、動圧発生溝が形成されており、スラスト軸受部を形成している。
【0037】
スリーブ10の内周面には、シャフト20が回転自在に支持されるように挿通され、ハウジング30aの底部32aの動圧発生溝により、回転時に浮上する。
【0038】
スリーブ10の上端面13には、円環状の抜止部材50がハウジング30aの円筒部31aの内周面とスリーブ10の上端面13に当接するように配置される。b)を参照して、この抜止部材50の内径は、シャフト20の第二部位22の外径より大きく、かつ第一部位21の外径より小さくなるようにする。これにより実施例1と同様に抜け止め効果を得ることができる。またシャフト20の第二部位22の外周面に対して、抜止部材50の内周面を半径方向外側に傾斜させることにより、実施例1と同様な効果を得ることができる。
【0039】
潤滑流体の循環に関しては、基本的に実施例1と同様である。しかしながら、スラストプレート40の代わりに、ハウジング30aの底部32aのスリーブ10との当接部に凹部を設けて連通路を形成してもよい。またc)のように抜止部材50のスリーブ10との当接部に凹部51を設けてもよい。これにより、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0040】
<実施例3>
図3は実施例2の抜止部材の変形形態である。またスリーブ10およびシャフト20の形状に変更はないので、同番号にて説明する。c)の斜線部は抜止部材を示す。
【0041】
ハウジング30bは有底円筒状であり、その円筒部31bの内周面には、スリーブ10が底部32bに当接するように固定されている。そしてその底部32bには動圧発生溝が形成されており、スラスト軸受部を形成している。また円筒部31bの上部内周面の一部は、軸方向上側にいくに従い半径方向外側に傾斜している。
【0042】
抜止部材60は、中空有蓋円筒状であり、その蓋部61がスリーブ10の上端面13に当接される。またこの抜止部材60の円筒部62はスリーブ10の外周面に固定されている。またハウジング30bは抜止部材60の円筒部62を収容する段部33bが設けられている。そしてハウジング30bの段部33bと抜止部材60の円筒部62の下端面とは軸方向に微少間隙を形成している。また抜止部材60の円筒部62とハウジング30bの段部33bとは当接しており、この当接部は溶接等にて固定されている。しかしc)を参照して、円筒部62の一部では、凹部が形成され、ハウジング30bの段部33bとの間に微少間隙62aを形成する。
【0043】
スリーブ10の内周面には、シャフト20が回転自在に支持されており、実施例1のようにラジアル軸受部とスラスト軸受部に実質的に途切れることなく、潤滑流体が充填されている。これにより、シャフト20の外周面と抜止部材60との微少間隙である第一間隙には第一界面が形成され、ハウジング30bの円筒部31bの内周面と抜止部材60の円筒部62の外周面との間隙である第二間隙には第二界面が形成される。また微少間隙62aが連絡路に連通することにより、第一界面と第二界面とは連絡路を通り連通することができる。
【0044】
潤滑流体の循環に関しては、基本的に実施例1と同様である。しかしながら、スラストプレート40の代わりにハウジング30bの底部32bのスリーブ10との当接部に凹部を設けて連通路としてもよい。また抜止部材60のスリーブ10との当接部である蓋部61および円筒部62の内周面に凹部を設けてもよい。これにより、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0045】
抜止部材60のシャフト挿通穴63の内径は、シャフト20の第二部位22の外径より大きく、第一部位21の外径より小さくなるようにする。これにより、実施例1と同様に抜け止めの効果を得ることができる。
【0046】
抜止部材60のシャフト挿通穴64の内周縁には軸方向上側にいくに従い半径方向外側に傾斜する面取り部64aが形成されているので、シャフト20の外周面と抜止部材60との第一間隙は軸方向上側に向い広がる。また第二間隙は、ハウジング30bの円筒部31bの上部内周面が軸方向上側にいくに従い半径方向外側に傾斜しているので、軸方向上側に向い広がる。したがって、これら第一間隙および第二間隙に形成される界面の安定化を図ることができる。
【0047】
<素材>
これら軸受機構を構成する素材について説明する。
【0048】
スリーブ10は多孔質材料(例えば、焼結部材)、シャフト20はステンレス鋼、ハウジング30、30a、30bはステンレス鋼をプレス加工等の塑性加工、抜止部材50、60は銅系材料にて形成されている。またハウジング30、30a、30bおよび抜止部材50、60に関しては樹脂材料にて成形してもよい。樹脂材料は低価格にて成形できるので好適である。これら軸受機構の素材は、各実施例に関して共通である。特にスリーブ10に使用される多孔質材料、特に焼結部材は、削りと比較して、寸法精度が出しにくいので本構造のような単純な形状であることが好ましい。
【0049】
<スピンドルモータ>
図4は本発明に係るスピンドルモータの実施例における一形態の模式断面図である。このスピンドルモータに使用する軸受機構は実施例1とする。実施例2以降については、このスピンドルモータの軸受機構を換えれば同様であるので省略する。
【0050】
シャフト20の第二部位22の上部には、有蓋円筒状のロータハブ70が取付けられている。ロータハブ70は、3段階の円筒部を有する。このロータハブ70の第一円筒部71はシャフト20と固定し、第二円筒部72の内周面はハウジング30の円筒部外周面と半径方向に微少間隙を介して対向してラビリンス構造を形成しており、第三円筒部73の軸方向下側にはヨーク80が固定されており、そのヨーク80の内周面にはロータマグネット90が固定されている。
【0051】
ハウジング30の円筒部下側外周面は、ベース100の突部101の内周面と当接固定しており、この突部101の外周面にはステータ110がロータマグネット90と半径方向に微少間隙を介して対向するように配置されている。
【0052】
ロータマグネット90の軸方向下側には、磁性体のスラストヨーク120がベース100上に配置されている。このスラストヨーク120とロータマグネット90とが互いに引き合い下側への力を常にかけさせる。本実施例の軸受機構は、スラスト軸受部が1つであるのでシャフト20は回転時に常に浮上する。この浮上量を調節するためにこのスラストヨーク120は配置されている。
【0053】
このステータ110は、周方向に複数の放射状に伸びるティース111とこれを巻回する巻線112とからなり、巻線112に通電することにより磁場を発生させ、この磁場とロータマグネット90との相互作用により回転力を発生させる。
【0054】
また図5は本発明に係るスピンドルモータの他の実施例を示した模式断面図である。
【0055】
図5を参照して、これはハウジング30とロータハブ70とを一体型にしたスピンドルモータであり、図4における軸受機構を軸方向に180度回転させた構成となっている。尚、ロータハブ以外の部材は基本形状に変更はないので同図番にて説明する。
【0056】
ハウジングと一体となったロータハブ130は、中空円筒状であり、その中空部131の軸方向下端側には、内径を小さくした円環状の突部132を有する。この突部132および中空部131内周面とスリーブ10とは当接し、固定される。
【0057】
スリーブ10の内周面には、シャフト20が回転自在に支持されるように挿通される。そしてロータハブ130の上端側には凹部133が形成されており、この凹部133にスラストプレート40を固定することにより、ロータハブ130の中空部131は蓋をされるように覆われる。
【0058】
ロータハブ130の下側には、半径方向外側に伸びる円板状の略円筒部134を有し、その略円筒部134の半径方向外側下面134aには、ヨーク80が固定されている。そしてヨーク80の内周面には、ロータマグネット90が固定されている。またロータマグネット90の軸方向下側には、スラストヨークがベース100上に配置されており、常に軸方向下側に力が作用するようにしている。
【0059】
ベース100に固定されているステータ110はロータマグネット90と半径方向に間隙を介して対向するように配置されている。
【0060】
シャフト20の下部はベース100と固定されており、ステータ110に通電することにより磁場が発生し、この磁場とロータマグネット90との相互作用により回転力が発生してロータハブ130が回転する。
【0061】
ハウジングとロータハブを一体化させることにより部品点数を削減することができるのでスピンドルモータの低価格化を図ることができる。
【0062】
このスピンドルモータは作製工程においても容易化でき、工程におけるタクトを縮めることができる。すなわち、ロータハブ130にヨーク80およびマグネット90を取付け、これにスリーブ10を突部132に当接させるように固定させる。そしてシャフト20を突部132に当接させるようにスリーブ10に挿通し、シャフト20とロータハブ130との間より潤滑流体を注入し、スラストプレート40をロータハブ130の凹部133に当接し固定させる。そしてシャフト20とベース100とをベース100の下面と合わせるように固定する。
【0063】
これは、全ての組立が部品の当接によって固定できるので、組立における寸法管理が容易である。また組立が積み上げ式であるため、手作業の組立から機械式の組立に移行することができる。その結果、前述のように工程タクトを短縮することができ、スピンドルモータの低価格化を図ることができる。
【0064】
<記録ディスク駆動装置>
本発明に係る記録ディスク駆動装置200の実施例の一形態に関して図6を参照して説明する。図6は記録ディスク駆動装置200の断面図である。
【0065】
記録ディスク駆動装置200は、矩形状をしたハウジング210からなり、ハウジング210の内部は、塵・埃等が極度に少ないクリーンな空間を形成しており、その内部には、情報を記録する円板状のハードディスク220が装着されたスピンドルモータ230が配設されている。またこのハウジング210とベース100とは一体的に成形されていてもよい。
【0066】
また、ハウジング210の内部には、ハードディスク220に対して情報を読み書きするヘッド移動機構240が配置され、このヘッド移動機構240は、ハードディスク220上の情報を読み書きする磁気ヘッド241、この磁気ヘッド241を支えるアーム242および磁気ヘッド241およびアーム242をハードディスク220上の所要の位置に移動させるアクチュエータ部243により構成される。
【0067】
このような記録ディスク駆動装置200のスピンドルモータ230として、本願発明のスピンドルモータを適用することで、十分な機能を確保した上で記録ディスク駆動装置200の小型且つ薄型化を実現できると共に、信頼性並びに耐久性の高い記録ディスク駆動装置を提供することができる。
【0068】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこれに限定されることなく種々の変形が可能である。
【0069】
例えば、本発明の各実施例はスラスト軸受部を1つ設けていたがこれに限定されることなく、図7a)のようにシャフト30の下端面を略球面にするか、もしくはb)のように対向する面を球面にする、且つ対向する面の動圧軸受部をなくすことによって、点接触にて支持をしてもよい。
【0070】
また本発明の軸受機構の抜止部33および抜止部材50、60とシャフト20との間隙は抜止部および抜止部材50、60の内周面を半径方向外側に傾斜させることによって軸方向上側に広がる間隙を形成していたがこれに限定されることなく、図7のようにシャフト20の第二部位22の外周面を軸方向上側に向い漸次縮径させることによっても同様の効果を得ることができる。
【0071】
また本発明のスピンドルモータは、ロータマグネット90の下側にスラストヨーク120を配置していたが、これに限定されることはない。例えば図8のようにロータマグネット90の磁気中心をステータ110のティース111の軸方向中心より上側に配置することによって軸方向下側の力を得てもよい(図8のb)におけるロータマグネット90とステータ110とに描かれている一点鎖線はそれぞれの中心を示し、それらの軸方向の差をWにて示す)。
【0072】
また本発明のスピンドルモータは、シャフト20の連結部23が軸方向垂直となっているが、これに限定されることはない。抜止部33および抜支部材50、60は、シャフト20を連結部23にて軸方向に重なる部分があればよいので、連結部23がシャフト20の第二部位22に向い縮径するテ−パ状であり、抜止部33および抜止部材50,60がその連結部23に軸方向に対向していればよい。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】a)は本発明に係る軸受機構における第1の実施例の模式断面図であり、b)はa)の二点鎖線部の拡大図である
【図2】a)は本発明に係る軸受機構における第2の実施例の模式断面図であり、b)はa)の二点鎖線部の拡大図であり、c)は抜止部材の半円断面図である
【図3】a)は本発明に係る軸受機構における第3の実施例の模式断面図であり、b)はa)の二点鎖線部の拡大図であり、c)はa)の上面図である
【図4】本発明に係るスピンドルモータにおける実施例の模式断面図である
【図5】本発明に係るスピンドルモータにおける他の実施例の模式断面図である
【図6】本発明に係る記録ディスク駆動装置の模式断面図である
【図7】本発明に係る軸受機構における他の実施例の模式断面図である
【図8】a)は本発明に係るスピンドルモータにおける他の実施例の模式断面図であり、b)は点線部の拡大図であり磁気中心とステータ中心を示す
【図9】従来例における軸受機構の模式断面図である
【符号の説明】
【0074】
10 スリーブ
11、12 動圧発生溝
20 シャフト
21 第一部位
22 第二部位
23 連結部
23a 動圧発生溝
30、30a、30b ハウジング
31 下端部
32 抜止部
40 スラストプレート
41 動圧発生溝
50 抜止部
60 抜止部
70 ロータハブ
80 ヨーク
90 ロータマグネット
100 ベース
110 ステータ
120 スラストヨーク
130 ロータハブ























【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受機構であって、
所定の径を有する第一部位と前記第一部位よりも径の小さい第二部位と前記第一部位の外周面および前記第二部位の外周面を連結する連結面とを中心軸に沿って有するシャフトと、
前記第一部位が挿入されるとともに潤滑流体による流体動圧を利用して前記シャフトを支持する円筒形状の軸受面を有するスリーブと、
前記スリーブの第一部位側を塞ぐプレートと、
前記スリーブを外側から保持するスリーブ保持部と、
前記連結面の軸方向上側に配置され、前記第二部位が挿通される開口穴を有する抜止部材と、
を備え、
前記抜止部材の前記開口穴は、前記シャフトの前記第二部位が挿通され、前記連結面と軸方向に対向する内径が前記第一部位より小さい抜止部が形成され、前記抜止部より第二部位側に形成される前記開口穴の内周面と前記第二部位の外周面との間の間隙が前記第一部位に向い減少するテ−パ部が形成され、前記テ−パ部にて前記潤滑流体の界面が形成されることを特徴とする軸受装置。
【請求項2】
前記スリーブの少なくとも一部は含油多孔質材料にて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の軸受装置。
【請求項3】
前記プレートと前記スリーブ保持部とは、一体的に成形されることを特徴とする請求項1および請求項2のいずれかに記載の軸受装置。
【請求項4】
前記シャフトの前記第一部位の外周面と前記スリーブの内周面との間に動圧発生溝を有する2つのラジアル軸受部が形成され、
前記シャフトの前記第一部位の端面と前記プレートとの間に動圧発生溝を有する1つのスラスト軸受部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の軸受機構。
【請求項5】
前記抜止部材と前記スリーブ保持部とは一体的に成形され、前記スリーブの端面と前記抜止部とが当接することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の軸受機構。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の軸受機構であって、
前記抜止部は略有蓋円筒状であり、前記スリーブ外周面に当接する円筒部と、前記スリーブ端面に当接する蓋部とを有し、該蓋部には前記シャフトの前記第二部位を挿通し、前記連結面と半径方向に対向する内径が前記第一部位よりも小さい開口穴が設けられ、前記第二部位の外周面と該開口穴内周面との間には第一間隙部が設けられ、該円筒部外周面と前記スリーブ保持部内周面との間には第二間隙が設けられ、該第一間隙部および該第二間隙部は開口側に向い漸次拡大し、該第一間隔部および該第二間隙部にて潤滑流体の界面が形成されることを特徴とする軸受機構。
【請求項7】
前記シャフトの前記連結面と該連結面に対向する前記抜止部との間には、動圧発生溝を有する軸受部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の軸受機構。
【請求項8】
ベースと、
ベースに固定されたステータと、
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の軸受機構によってベースに対して回転自在に支持されたロータと、ステータに対向してロータ周囲に取り付けられたロータマグネット、を有することを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項9】
ロータマグネットと軸方向に対向して磁性体のヨークがベースに取り付けられることを特徴とする請求項8に記載のスピンドルモータ。
【請求項10】
ロータマグネットの磁気中心が、ステータの軸方向高さの中心よりも上側に位置していることを特徴とする請求項8に記載のスピンドルモータ。
【請求項11】
請求項8乃至請求項10のいずれかに記載のスピンドルモータを搭載したことを特徴とする記録ディスク駆動装置。


























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−226388(P2006−226388A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−40186(P2005−40186)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(000232302)日本電産株式会社 (697)
【Fターム(参考)】