説明

透明フィルム、この透明フィルムを用いた積層フィルム、無機粒子挟持フィルム、及び、ディスプレイ用パネル

【課題】低温で強い強度の接着ができ、質量減少率が少なく、熱による着色の少ない、透明フィルム、この透明フィルムを用いた積層フィルム、無機粒子挟持フィルム、及び、ディスプレイ用パネルを提供する。
【解決手段】アクリル共重合体と、前記アクリル共重合体90質量部に対して、エポキシ樹脂1〜25質量部と、前記エポキシ樹脂のエポキシ当量に相当する量の0.4〜6倍のエポキシ硬化剤とを含み、膜厚が、1〜200μmのフィルムであって、180℃、1時間熱硬化時に、質量減少が、0〜8%であり、150℃、1時間熱硬化後に、波長400nmの光の全光線透過率が、77〜100%、熱硬化前には、ポリイミドフィルムと前記フィルムとの接着力が、0.2〜15N/m、150℃、1時間熱硬化後には、ポリイミドフィルムとの接着力が、50〜10000N/mである透明フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明フィルム、この透明フィルムを用いた積層フィルム、無機粒子挟持フィルム、及び、ディスプレイ用パネル関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル共重合体(以下、「アクリル」と言う。)とエポキシ樹脂(以下、「エポキシ」と言う。)を組成とする熱硬化型接着剤フィルムは、2つの重量部材を両面接着するために、半導体用途で広く使われてきた(非特許文献1、2参照)。
【0003】
この熱硬化型接着剤フィルムは、強い接着力があるだけでなく低弾性率であり、熱硬化による接着後に、2つの部材間の熱膨張率の差に起因する応力を、緩和できることを特徴としている。そして、応力を緩和することで、熱硬化後の反りを低減できる。
【0004】
一般の半導体用途では、フィルムが透明である必要はないため、透明性を低下させてしまう、直径1μm以上のフィラであっても、使用されることが多い。但し、フィラを抜いたとき、高温時に両面接着効果を維持できるのか、また高温に長時間置かれても透明性を確保できるのかは、明らかでない。
【0005】
また、両面接着フィルムは、基材フィルムと保護フィルムに挟まれた状態で輸送され、使用前にそれらのフィルムから剥がして使う。この時、フィルムが剥がれにくいと使いにくく、かといって、全く、接着力・粘着力がなくても、仮接着できないので使いにくい。そして、直径1μm以上のフィラなしの組成でも、適度な接着力・粘着力となるような組成となるのかは、明らかではない。
【0006】
アクリルとエポキシを用いた透明な接着フィルムの例としては、特許文献1に記載されるものがある。更に、アクリルに対するエポキシの添加量を減少させ、代わりに、ゴム成分を増やして、より弾性率を下げることが望まれる。アクリルとエポキシの混合比率を変えることで、応力緩和に影響する弾性率は、大きく変えられる可能性がある。
【0007】
アクリル、エポキシ、硬化剤、及び硬化促進剤を用いた樹脂で、組成の範囲を規定した例としては、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5及び特許文献6が、知られている。また、熱硬化性接着剤を用いて、透明性と少揮発性を有するものとしては、特許文献7、特許文献8、及び特許文献9が、知られている。ディスプレイパネルに係わる熱硬化性接着透明フィルムとしては、特許文献10が、知られている。ディスプレイパネルに係わる接着強度の検討としては、特許文献11、及び特許文献12が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−260908号公報
【特許文献2】特開昭63−084673号公報
【特許文献3】特開昭63−084674号公報
【特許文献4】特表2005−517775号公報
【特許文献5】特開2005−154687号公報
【特許文献6】特開2007−320974号公報
【特許文献7】特開平11−005964号公報
【特許文献8】特表2007−527109号公報
【特許文献9】特開2002−313104号公報
【特許文献10】特開平11−333872号公報
【特許文献11】特開2008−111046号公報
【特許文献12】特開2007−211246号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】稲田禎一ら、日立化成テクニカルレポート、47号、15−20(2006年)
【非特許文献2】Tetsuro Iwakura, Teiichi Inada, M. Abdul Kader and Takashi Inoue, e−Journal of Soft Materials, 2, 13 (2006)
【非特許文献3】A. J. Kinloch, R.J. Young: “Fracture Behaviour of Polymers”, Elsevier Applied Science (1983)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2、特許文献3及び特許文献4に記載されるものは、アクリルの分子量を増やすことで、フィルムとしての作業性を向上させることが、望まれる。また、アクリルとエポキシの最適な比率の樹脂を用いて、低弾性率であり、且つ高接着性を有するようにすることが、望まれる。
【0011】
特許文献5は、アクリルとエポキシの成分比率を最適化することで、更に透明性を高くし、また、揮発分を少なくすることが望まれる。特許文献6は、更にエポキシの添加量を減少させて、ゴム成分を増やし、弾性率を下げることが望まれる。
【0012】
特許文献7、特許文献8及び特許文献9では、更に高い接着力と低弾性率が望まれる。特許文献10では、エポキシを主成分としており、低弾性率を確保するのが難しいと思われ、アクリルを主成分として弾性率を低減することが望まれる。特許文献11では、アクリルに対するエポキシの割合を最適化することで、高接着強度と低弾性率の両立が望まれる。
【0013】
本発明は、低温で強い強度の接着ができ、質量減少率が少なく、熱による着色の少ない、透明フィルム、この透明フィルムを用いた積層フィルム、無機粒子挟持フィルム、及び、ディスプレイ用パネルを、提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、以下のものに関する。
(1) アクリル共重合体と、前記アクリル共重合体90質量部に対して、エポキシ樹脂1〜25質量部と、前記エポキシ樹脂のエポキシ当量に相当する量の0.4〜6倍のエポキシ硬化剤とを含み、膜厚が、1〜200μmのフィルムであって、180℃、1時間熱硬化時に、質量減少が、0〜8%であり、150℃、1時間熱硬化後に、波長400nmの光の全光線透過率が、77〜100%、熱硬化前には、ポリイミドフィルムと前記フィルムとの接着力が、0.2〜15N/m、150℃、1時間熱硬化後には、ポリイミドフィルムとの接着力が、50〜10000N/mである透明フィルム。
(2) アクリル共重合体90質量部に対して、エポキシ樹脂3〜7質量部と、硬化促進剤0.005〜0.5質量部とを含み、エポキシ硬化剤がフェノール化合物又は酸無水物を含む、前記の透明フィルム。
(3) 前記の透明フィルムにおいて、エポキシ硬化剤が、フェノール、酸無水物又はカルボン酸を含む化合物である透明フィルム。
(4) 前記の透明フィルムにおいて、エポキシ硬化剤が、フェノール・p−キシリレングリコールジメチルエーテル共重合樹脂又は5−(2,5−ジオキソテトラヒドロー3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物である透明フィルム。
(5) 前記の透明フィルムにおいて、硬化促進剤が、リン系又はアミン系である透明フィルム。
(6) 前記の透明フィルムにおいて、硬化促進剤が、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール又はテトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオネート若しくは第4級ホスホニウムブロマイドである透明フィルム。
(7) 前記の透明フィルムにおいて、エポキシ樹脂が、ビスフェノールA型又はF型であって、芳香環が、95〜100%水素添加されたものである透明フィルム。
(8) アクリル共重合体90質量部に対して、非プロトン性極性溶媒を360から630質量部配合したワニスから熱乾燥してなる、前記の透明フィルム。
(9) アクリル共重合体の重量平均分子量が30万以上100万以下であり、アクリル共重合体の重量平均分子量分布において、重量平均分子量1万以上10万以下の成分が5%以下であり、かつ、フィルム中の不純物が1%以下であることを特徴とする前記の透明フィルム。
(10) 前記の透明フィルムと、前記透明フィルムを挟持するフィルム1及びフィルム2とを備えた積層フィルムであって、前記透明フィルムの貯蔵弾性率が、25℃で30〜1000MPaであり、ピール強度が、前記フィルム1と前記透明フィルムの間では、0.2〜0.6N/mであり、前記フィルム2と前記透明フィルムの間では、0.1〜0.4N/mであり、前記フィルム1と前記透明フィルムの間のピール強度が、前記フィルム2と前記透明フィルムの間のピール強度よりも高いこと特徴とする積層フィルム。
(11) 前記の透明フィルムと、前記透明フィルムに挟持される無機粒子とを備えた無機粒子挟持フィルムであって、前記無機粒子において、質量平均粒径が、0.01〜10μmであり、波長400nmにおける複素屈折率の実部又は虚部の絶対値が、1.6〜5.6である、無機粒子挟持フィルム。
(12) 前記の透明フィルムと、前記の積層フィルム又は前記の無機粒子挟持フィルムと、前記透明フィルム、前記積層フィルム又は前記無機粒子挟持フィルムにより接着されるディスプレイとを備えたディスプレイ用パネルであって、前記透明フィルム、前記積層フィルム又は前記無機粒子挟持フィルムにおいて、熱硬化前の全光線透過率が85〜100%であり、熱硬化後の直線透過率が0〜40%であり、全光線透過率が75%以上である、ディスプレイ用パネル。
(13) 透明フィルム、積層フィルム又は無機粒子挟持フィルムと、ディスプレイとを、硬化温度が80〜155℃、硬化時間が3分〜3時間で接着してなる、前記のディスプレイ用パネル。
(14) 前記の透明フィルムと、前記の積層フィルム又は前記の無機粒子挟持フィルムと、前記透明フィルム、前記積層フィルム又は前記無機粒子挟持フィルムにより接着されるディスプレイとを備えたディスプレイ用パネルであって、前記透明フィルム、前記積層フィルム、前記無機粒子挟持フィルムのいずれかにより、パネル面積の半分以上を構成する部材同士が接着されたことを特徴とするディスプレイ用パネル。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、熱硬化による接着可能な、低弾性率で、接着性良好で、取り扱いが容易であり、全光線透過率の高い、透明フィルム、この透明フィルムを用いた積層フィルム、無機粒子挟持フィルム、及び、ディスプレイ用パネルを提供することができる。
【0016】
ディスプレイやLED、太陽電池等の光学重量部材において、光が透過する重量部分に使われる接着剤には、波長400〜700nmでの透明性が求められる。従来、UV硬化型樹脂や粘着剤が使われることが多かった光学重量部材用接着剤において、熱硬化型の接着剤を使うことで、強固な接着力と光が当たらない重量部分についての硬化を可能にした。
また、熱硬化に際しては光学重量部材の着色と反りが問題であるが、着色を最低限に抑え、同時に反りを大きく低減させる手法を開発した。つまり、曲げることができる、曲げても接着がはがれないという特徴を付与できる。そして、このような特性は接着部分の面積が100cm以上に大きくなったときに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】アクリルゴム重量平均分子量による(溶媒重量/アクリルゴム固形分重量)と全光線透過率の関係の変化を示す図である。
【図2】全光線透過率の測定方法を示す概略図である。
【図3】全光線透過率の測定方法を示す概略図である。
【図4】重量減少率及び全光線透過率と発泡及び着色の関係を示す図である。
【図5】異なる硬化剤についての、全光線透過率と2PZ−CNの量の関係を示す図である。
【図6】異なる硬化剤についての、重量減少率と2PZ−CNの量の関係を示す図である。
【図7】本発明の透明フィルムの液晶ディスプレイでの使用方法の例を示す断面図である。
【図8】本発明の透明フィルムの薄型表示素子での使用方法の例を示す図である。
【図9】本発明の透明フィルムのLED発光素子での使用方法の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の透明フィルムは、例えば、アクリル共重合体をゴム成分とし、エポキシ樹脂を接着・硬化成分とし、更に、硬化剤、又は硬化剤及び硬化促進剤を加えた樹脂系が採用されている。アクリル共重合体、エポキシ樹脂を含む化合物で固めることで、高い接着力と低い弾性率を得ることができる。これが、他のシリコーン樹脂やEVA(エチレン酢酸ビニール共重合樹脂)にない利点である。更に、本発明の透明フィルムは、高温でも透明性を維持することができる。
【0019】
透明フィルム及びこの透明フィルムを用いた他のフィルムは、ディスプレイ、発光ダイオード、太陽電池パネル等に広く適用される。ディスプレイには、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、エレクトロクロミックディスプレイ、ツイストボールディスプレイ、電子粉流体ディスプレイ、電気泳動ディスプレイ等がある。
【0020】
ディスプレイのパネル重量部材の接着には、粘着によるタイプや、UV硬化によるタイプが多く、熱硬化型の接着剤が使われることは少ない。本発明者らが検討した結果、熱硬化型の接着剤では、熱による着色の他、接着重量部分での揮発分による空隙の発生が起こりやすいという問題があることが分かった。
【0021】
また、これとは別に、あまり高い熱をかけると、樹脂材料が多いディスプレイ重量部材の劣化を引き起こすため、低温の硬化が求められるが、その場合には、熱硬化型の接着剤では接着力が十分に発揮できない可能性がある。この結果、ディスプレイの画質の低下や接着強度の低下を引き起こすと考えられる。しかしながら、熱硬化は、粘着やUV硬化に比べ、接着強度が強い又は製造設備が簡便である、更には、光が当たらないような重量部位での未硬化重量部が少ないといった点で優れている。
【0022】
本発明者らは、接着強度、ディスプレイの接着温度・接着時間や、フィルムの光学特性、作業性に着目した。それらの条件に適合し、低揮発分・低着色となるように、最適な化学種とその組成比を検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0023】
本発明の透明フィルムにおいて、通常、アクリル共重合体をバインダとして、エポキシ樹脂を、硬化剤のフェノール又は酸無水物で硬化させる。これら硬化剤の硬化速度は遅いため、硬化促進剤を配合することができる。後述のように、発明者らは、白濁が揮発分と相関があることを明らかにしている。更に、揮発分の低減と透明性の向上には、硬化促進剤の最適化が、有効であることを示している。
【0024】
本発明の透明フィルムにおいて、水素添加されたビスフェノールA型又はF型のエポキシ樹脂は、芳香環が水素化され共役二重結合が少なくなるため、透明性に優れている。水素添加により芳香環を二重結合に換算して、95%以上が水素結合されている時、共役二重結合による光吸収は抑えられる。
【0025】
本発明の透明フィルムにおいて、硬化剤として、フェノール、酸無水物又はカルボン酸を使うことで、熱硬化時に耐着色性に優れた樹脂を得ることができる。アミン系硬化促進剤とは、分子構造の一部に1級、2級又は3級のアミンを含む硬化促進剤であり、代表的なものは、イミダゾールである。リン系硬化促進剤としては、トリオルガノホスフィンが代表的であり、その中でもトリフェニルホスフィンが、良く知られている。
【0026】
また、硬化剤が、フェノール・p−キシリレングリコールジメチルエーテル共重合樹脂又は5−(2,5−ジオキソテトラヒドロー3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物であり、硬化促進剤が1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール又はテトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオネート若しくは第4級ホスホニウムブロマイドである場合は、透明性を高くし、揮発分を抑えることができる。
【0027】
前記の透明フィルムと、前記透明フィルムを挟持するフィルム1及びフィルム2とを備えた積層フィルムでは、貯蔵弾性率が適度であり、また、フィルム1、2のピール強度が適度であり、しかも、そのピール強度の差が適度であるとき、取り扱いやすい透明フィルムとすることができる。
【0028】
前記の透明フィルムを使用した、無機粒子挟持フィルムでは、フィルムに挟持された、ベース樹脂と屈折率の異なる無機粒子により光拡散性を持たせ、更に、挟持する透明フィルムで接着性を持たせている。粒径サイズを調整して、拡散性と透過率の両立を図っている。複素屈折率をn+i×kで表すと、その実部の絶対値は|n|、虚部の絶対値は|k|である。また、前記無機粒子において、質量平均粒径が、0.01〜10μmであり、波長400nmにおける複素屈折率の実部又は虚部の絶対値が、1.6〜5.6である。
【0029】
ディスプレイ用パネルでは、硬化前に全光線透過率を高くすることで、別のUV硬化樹脂と一緒に用いて、UV露光することが可能となる。更に、ディスプレイに適用する場合、硬化後に、揮発分又は貼り付け時の気泡巻き込みによる空隙等で、拡散特性を持たせ、光拡散体としての効果がでる。また、100℃近傍という比較的温和な条件で、かつ短い時間で硬化することで、ディスプレイの重量部材への熱によるダメージを小さくできる。
【0030】
硬化中の揮発分を少なくすることが、透明性の確保、接着力の維持のために要求される。従来、熱硬化型の接着フィルムでは、高透明性と低揮発分を両立するのが難しかった。揮発分を少なくする方法の1つは、硬化促進剤を入れて硬化を低温で完了させることであるが、硬化促進剤は、副反応を起こし易く、多く添加すると、着色の原因となる。また、シリカやアルミナ等の、直径1μm以上のフィラを加えることでも揮発分を抑えることができるが、光散乱により透明性が低下する。
【0031】
本発明の透明フィルムでは、高透明性と低揮発分を両立するために、アクリルとエポキシの比率を最適化する方法や、共役二重結合を減らして光吸収を抑える方法、硬化促進剤を適量とする方法等を、検討した。
【0032】
本発明の透明フィルムにおいて、アクリル共重合体としては、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル及びアクリロニトリル等の、共重合体であるアクリルゴムが挙げられる。本発明において使用されるエポキシ樹脂、エポキシ硬化剤は、硬化して接着作用を呈するものであれば特に制限はない。
【0033】
また、接着性及び耐熱性が高いことから、官能基としてグリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートを0.5〜6質量%を含み、ガラス転移温度(以下、「Tg」と言う。)が、−50〜30℃、更には、−10〜30℃で、重量平均分子量が、100000以上であるアクリル共重合体が特に好ましい。
【0034】
グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートを0.5〜6質量%含み、Tgが、−10℃以上で、重量平均分子量が、100000以上であるアクリル共重合体としては、例えば、HTR−860P−3(ナガセケムテックス株式会社製、商品名)が挙げられる。
【0035】
官能基モノマーとして用いるグリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートの量は、2〜6質量%の共重合体比であることがより好ましい。2質量%未満であると、高い接着力を得ることができない傾向があり、6質量%を超えると、ゲル化する可能性がある。
【0036】
残重量部は、メチルアクリレート、メチルメタクリレート等の、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート及びスチレンやアクリロニトリル等の混合物を用いることができる。これらの中でもエチル(メタ)アクリレート又はブチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0037】
混合比率は、共重合体のTgを考慮して調整することが好ましい。Tgが、−10℃未満であると、Bステージ状態での接着剤層又は接着フィルムのタック性が大きくなる傾向があり、取り扱い性が悪化することがある。
【0038】
重合方法については特に制限はなく、例えば、パール重合、溶液重合等が挙げられ、これらの方法により共重合体が得られる。エポキシ基含有アクリル共重合体の重量平均分子量は、300000〜3000000であることが好ましく、500000〜2000000であることがより好ましい。重量平均分子量が300000未満であると、シート状、フィルム状での強度や可とう性の低下、タック性が増大する可能性があり、一方、3000000を超えると、フロー性が小さく、凹凸部分への充填性が低下する可能性がある。
【0039】
本発明において使用されるエポキシ樹脂は、硬化して接着作用を呈するものであれば、特に制限はない。二官能基以上で、好ましくは分子量が5000未満、より好ましくは3000未満のエポキシ樹脂を使用できる。
【0040】
例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂や、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等の二官能エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂や、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂等を使用することができる。また、多官能エポキシ樹脂や、複素環含有エポキシ樹脂等、一般に知られているものを用いることもできる。
【0041】
このようなエポキシ樹脂としては、市販のものでは、例えば、エピコート807、エピコート815、エピコート825、エピコート827、エピコート828、エピコート834、エピコート1001、エピコート1002、エピコート1003、エピコート1055、エピコート1004、エピコート1004AF、エピコート1007、エピコート1009、エピコート1003F、エピコート1004F(以上、ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名)、DER−330、DER−301、DER−361、DER−661、DER−662、DER−663U、DER−664、DER−664U、DER−667、DER−642U、DER−672U、DER−673MF、DER−668、DER−669(以上、ダウケミカル株式会社製、商品名)、YD8125、YDF8170(以上、東都化成株式会社製、商品名)等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、YDF−2004(東都化成株式会社製、商品名)等のビスフェノールF型エポキシ樹脂、エピコート152、エピコート154(以上、ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名)、EPPN−201(日本化薬株式会社製、商品名)、DEN−438(ダウケミカル株式会社製、商品名)等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、エピコート180S65(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名)、アラルダイトECN1273、アラルダイトECN1280、アラルダイトECN1299(以上、チバスペシャリティーケミカルズ株式会社製、商品名)、YDCN−701、YDCN−702、YDCN−703、YDCN−704(以上、東都化成株式会社製、商品名)、EOCN−102S、EOCN−103S、EOCN−104S、EOCN−1012、EOCN−1020、EOCN−1025、EOCN−1027(以上、日本化薬株式会社製、商品名)、ESCN−195X、ESCN−200L、ESCN−220(以上、住友化学工業株式会社製、商品名)等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポン1031S、エピコート1032H60、エピコート157S70(以上、ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名)、アラルダイト0163(チバスペシャリティーケミカルズ社製、商品名)、デナコールEX−611、デナコールEX−614、デナコールEX−614B、デナコールEX−622、デナコールEX−512、デナコールEX−521、デナコールEX−421、デナコールEX−411、デナコールEX−321(以上、ナガセ化成株式会社製、商品名)、EPPN501H、EPPN502H(以上、日本化薬株式会社製、商品名)等の多官能エポキシ樹脂、エピコート604(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名)、YH−434(東都化成株式会社製、商品名)、TETRAD−X、TETRAD−C(以上、三菱ガス化学株式会社製、商品名)、ELM−120(住友化学株式会社製、商品名)等のアミン型エポキシ樹脂、アラルダイトPT810(チバスペシャリティーケミカルズ社製、商品名)等の複素環含有エポキシ樹脂、ERL4234、ERL4299、ERL4221、ERL4206(以上、UCC株式会社製、商品名)等の脂環式エポキシ樹脂等を使用することができ、これらの1種又は2種以上を併用することもできる。
【0042】
上記以外のエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールのジグリシジリエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジリエーテル化物、フェノール類のジグリシジリエーテル化物、アルコール類のジグリシジルエーテル化物及びこれらのアルキル置換体、ハロゲン化物、水素添加物等が挙げられる。これらは併用してもよく、エポキシ樹脂以外の成分が不純物として含まれていてもよい。
【0043】
尚、エポキシ樹脂は、高分子化合物と非相溶である必要があるが、エポキシ樹脂として2種類以上のエポキシ樹脂を併用した場合には、それらの混合物と高分子化合物とが非相溶であればよく、それぞれが非相溶である必要はない。
【0044】
例えば、軟化点が、50℃以上の単独で非相溶性のエポキシ樹脂YDCN703(東都化成株式会社製、商品名)と、軟化点が50℃未満の単独で相溶性のエポキシ樹脂エピコート828(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名)を組合せた場合、それらを1:0.1〜1:10の重量比で混合したエポキシ樹脂混合物は、非相溶性となる。
アクリル共重合体、エポキシ樹脂を用いて樹脂を作製する具体的な方法は、例えば、特開2006−183020号公報の実施例のようにすればよい。
【0045】
アクリル共重合体の重量平均分子量は、好ましくは10万〜100万であり、より好ましくは30万〜100万である。分子量が10万未満であると、フィルムの耐熱性が低下する場合があり、分子量が100万を超えると、接着時の密着性が低下する場合がある。
【0046】
エポキシ樹脂の数平均分子量は、250〜2000が好ましい。分子量をある程度大きくすることで、質量減少率を抑えることができる。しかし、分子量が大きすぎると、硬化接着速度が低下する恐れがある。
【0047】
本発明の透明フィルムにおいて、硬化前の25℃での動的粘弾性測定による貯蔵弾性率は、30〜1000MPaが望ましく、50〜1000MPaがより望ましい。弾性率を小さくすることで、密着性をよくすることができる。一方、弾性率を大きくすることで、フィルムとしての作業性をよくできる。
【0048】
エポキシ硬化剤は、エポキシ樹脂のエポキシ当量に相当する量の、0.4〜6倍を含む。この範囲のエポキシ硬化剤が含まれないと、揮発分が増加する傾向がある。硬化剤は、エポキシ樹脂を硬化させることが可能なものであれば、特に制限はない。
【0049】
エポキシ硬化剤としては、例えば、多官能フェノール類などのフェノール化合物、アミン類、イミダゾール化合物、酸無水物、有機リン化合物及びこれらのハロゲン化物、ポリアミド、ポリスルフィド、三フッ化ホウ素等が挙げられる。
【0050】
多官能フェノール類の例としては、単環二官能フェノールであるヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、多環二官能フェノールであるビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフタレンジオール類、ビフェノール類及びこれらのハロゲン化物、アルキル基置換体等が挙げられる。
【0051】
また、これらのフェノール類とアルデヒド類との重縮合物であるフェノールノボラック樹脂、レゾール樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂及びクレゾールノボラック樹脂等のフェノール樹脂等が挙げられる。
【0052】
市販されている好ましいフェノール樹脂硬化剤としては、例えば、フェノライトLF2882、フェノライトLF2822、フェノライトTD−2090、フェノライトTD−2149、フェノライトVH4150、フェノライトVH4170(以上、大日本インキ化学工業株式会社製、商品名)等が挙げられる。
【0053】
カバーガラスで本発明の透明フィルムを挟んで、150℃、1時間硬化すると、白濁することがある。これを光学顕微鏡で観察すると、透明フィルムに空隙らしきものができていた。この空隙の発生は発泡であり、本発明での検討から揮発分が1つの原因と思われる。この透明フィルムが白濁すると、外観が悪くなり、著しい白濁では、全光線透過率が低下する。
【0054】
従って、揮発分は、好ましくは8質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3.5質量%以下である。揮発分が8質量%を超えると、白く濁り外観が悪化し、硬化後の接着力が低下する。また、揮発分が5質量%以上に於いても、生産工程において、ディスプレイの欠陥の原因となる異物発生の原因となることがある。
【0055】
また、別の透明フィルムでは、茶色く着色するものがある。このようなフィルムでは、直線透過率が低下するが、その結果として全光線透過率も低下する。一般に、波長400nmは、分子による吸収が大きく、波長400〜800nmの可視光域内で、全光線透過率が最も小さくなることが多い。ここでは、この波長を全光線透過率の指標とした。
400nmの全光線透過率は、好ましくは77%以上、より好ましくは80%以上である。全光線透過率が低いと、黄又は茶色に着色して、外観が悪化する。
【0056】
膜厚は、1〜200μmであり、好ましくは5〜100μmであり、より好ましくは8〜50μmである。更に好ましくは10〜30μmである。膜厚が薄すぎると、接着力・透過率が低下する傾向があり、逆に厚すぎると、散乱光が増えて透過率が低下する傾向がある。
【0057】
本発明においては、熱硬化により、接着力が変化することで、硬化前の取り扱い易さと、接着強度を両立している。熱硬化による接着力は、後述のように、ポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製 商品名:UPILEX Grade 75s)で、透明フィルムの両側を挟むことで測定した。尚、ディスプレイ用パネル等における、実際の熱硬化接着工程では、硬化温度及び時間は、150℃、1時間に制限するものではない。
【0058】
熱硬化前には、ポリイミドフィルムと前記透明フィルムの接着力は、0.2〜15N/mであり、150℃、1時間熱硬化後には、ポリイミドフィルムとの接着力が、50N/m以上である。熱硬化前には、好ましくは接着力が、0.3〜2N/mである。150℃、1時間熱硬化後の接着力は、好ましくは100N/m以上、更に好ましくは200N/m以上である。また、接着力が10000N/m以上あっても、ポリイミドの強度がそれほどないことから、10000N/mあれば十分である。
【0059】
硬化前の接着力は取り扱いが容易であり、且つ保護フィルムや基材フィルムから剥がし易い適度な接着力であることが求められる。硬化後の接着力は、熱や、熱サイクル試験で剥がれないよう、強固であることが求められる。
【0060】
透明フィルムは、アクリル共重合体90質量部に対して、エポキシ樹脂を1〜25質量部、好ましくは3〜7質量部、より好ましくは4〜6質量部、フェノール化合物又は酸無水物を、前記エポキシ樹脂のエポキシ当量に相当する量の0.4〜6倍、及び硬化促進剤を0.005〜0.5質量部含む。
【0061】
エポキシ樹脂の割合を適度にすることで、低い弾性率と、高い接着力を両立できる。またフェノール化合物又は酸無水物を、前記エポキシ樹脂のエポキシ当量に相当する量の0.4〜6倍、より好ましくは0.7〜1.1倍とすることで、揮発分を抑えることができる。
【0062】
また、硬化促進剤量は、アクリル共重合体90質量部に対して、好ましくは0.005〜0.5質量部、より好ましくは0.05〜0.3質量部、更に好ましくは、0.15〜0.3質量部である。硬化促進剤が0.5質量部より多いと、着色して、全光線透過率が低くなり、0.005質量部より少ないと、硬化が不十分で揮発分が多くなる。
【0063】
本発明に使用可能な硬化促進剤としては、例えば、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等のジアザビシクロアルケン等のシクロアミジン化合物、その誘導体;それらのフェノールノボラック塩及びこれらの化合物に無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン等のπ結合を持つ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン類及びこれらの誘導体、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール類;テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート;2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩;トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p−トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキル・アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン等の有機ホスフィン類;それら有機ホスフィン類と有機ボロン類との錯体;それら有機ホスフィン類と無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;これら有機ホスフィン類と4−ブロモフェノール、3−ブロモフェノール、2−ブロモフェノール、4−クロロフェノール、3−クロロフェノール、2−クロロフェノール、4−ヨウ化フェノール、3−ヨウ化フェノール、2−ヨウ化フェノール、4−ブロモ−2−メチルフェノール、4−ブロモ−3−メチルフェノール、4−ブロモ−2,6−ジメチルフェノール、4−ブロモ−3,5−ジメチルフェノール、4−ブロモ−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−クロロ−1−ナフトール、1−ブロモ−2−ナフトール、6−ブロモ−2−ナフトール、4−ブロモ−4’−ヒドロキシビフェニル等のハロゲン化フェノール化合物を反応させた後に、脱ハロゲン化水素して得られる分子内分極を有する化合物(特開2004−156036号公報に記載)が挙げられる。
【0064】
酸無水物系硬化剤としては、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコール無水トリメリット酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物等の芳香族カルボン酸無水物、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族カルボン酸の無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、ナジック酸無水物、ヘット酸無水物、ハイミック酸無水物等の脂環式カルボン酸無水物が挙げられ、これらの中でも、透明性の観点から、二重結合の少ないテトラヒドロフタル酸無水物やヘキサヒドロフタル酸無水物が好ましい。
【0065】
また、フェノール化合物又は酸無水物を、前記エポキシ樹脂のエポキシ当量に相当する量の0.4〜6倍とすることが好ましい。この範囲から外れていると、硬化時に未反応のエポキシ又は硬化剤が、揮発分となりやすい。フェノール化合物に関しては、1〜6倍がより好ましく、さらに好ましくは1.5〜3倍である。フェノール化合物が多すぎると着色しやすく、少なすぎると、揮発分が多くなる。酸無水物に関しては、0.8〜1.5倍がより好ましい。酸無水物が多すぎると酸無水物の揮発分が多くなり、少なすぎると、エポキシの揮発分が多くなる。
【0066】
また、これらの成分をワニス状にするための溶剤としては、シクロヘキサノン、トルエン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の高沸点極性溶媒が挙げられる。溶剤を含む樹脂の固形分は、10〜40質量%が好ましい。より好ましくは、15〜25質量%である。
【0067】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型に比べ、ビスフェノールF型が、安全性の観点からは好ましい。硬化促進剤としては、速い硬化速度と長いポットライフが期待できるアミン系硬化促進剤が好ましい。アミン系硬化促進剤のうち、二重結合を持つ5員環に、窒素を含む化合物、例えば、2PZ−CN(四国化成工業株式会社製の1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、商品名)が高透明性と低揮発分の両立のために好ましい。
【0068】
透明フィルムの硬化剤は、フェノール・p−キシリレングリコールジメチルエーテル共重合樹脂又は5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物であり、硬化促進剤は、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール又は、テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオネート、第4級ホスホニウムブロマイドであることが好ましい。これらの硬化剤は、高透明性と低揮発分の両立に有効である。
【0069】
また、本発明の透明フィルムは、アクリル共重合体90質量部に対して、非プロトン性極性溶媒を360から630質量部配合したワニスから熱乾燥してなることが好ましい。
【0070】
また、本発明の透明フィルムは、好ましくは、アクリル共重合体の重量平均分子量が30万以上100万以下であり、アクリル共重合体の重量平均分子量分布において重量平均分子量1万以上10万以下の成分が5%以下であり、かつ、フィルム中の不純物が1%以下である。より好ましくは、アクリル共重合体の重量平均分子量が50万以上である。分子量が小さいと、熱硬化時に、着色しやすくなる。
【0071】
積層フィルムは、フィルム間の接着に際し、透明フィルムが被着体に完全に密着するよう、真空ラミネータを適宜使用することができる。
【0072】
積層フィルムに使用する透明フィルムの貯蔵弾性率は、25℃において、好ましくは30〜1000MPaの間であり、より好ましくは100〜500MPaである。貯蔵弾性率が低すぎると、伸びやすくなり、取り扱いが難しいことが多く、貯蔵弾性率が高すぎると粘着性が落ちやすい。
【0073】
フィルム1を基材フィルム、フィルム2を保護フィルムとしたときに、保護フィルムよりも、基材フィルムの方が、透明フィルムとの粘着力を高くすることで、保護フィルムを透明フィルムから剥がし易くなる。
【0074】
また、基材フィルムと透明フィルムの粘着性を抑えることで、透明フィルムを基材フィルムから剥がし易くなる。但し、あまり、粘着性が小さいと、輸送中に保護フィルムが剥がれる恐れがあり、絶対値はある程度大きい方がよい。フィルム1としては、PETフィルム、フィルム2としては、ポリエチレンフィルムを使用することができる。尚、PETフィルムは、離型し易いよう表面処理されたものであってもよい。
【0075】
更に、硬化後の低応力を実現するために、透明フィルムを150℃、1時間硬化した後に、20℃での貯蔵弾性率が、300〜3000MPaであることが好ましい。取り扱い易い最低の弾性率を維持した上で、低弾性率であれば、接着される光学重量部材の反りの低減、埋め込み性の向上に役に立つ。
【0076】
無機粒子挟持フィルムに用いる無機粒子の質量平均粒径は、SEMの断面写真で、粒子の長径を体積加重で平均した値である。体積加重の体積は、粒子の断面積から、粒子が長径を中心軸とする楕円体であると仮定して算出した値である。
【0077】
本発明において、光拡散性とは、全光線透過率/直線透過率が、2以上であることである。無機粒子の例としては、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、銀、白金等が挙げられる。
【0078】
酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、窒化ホウ素については、質量平均粒径は、好ましくは0.5〜8μmである。
【0079】
銀、白金等の導電性金属については、質量平均粒径は、好ましくは0.01〜0.3μmである。光を散乱するには、ある程度の大きさが必要であり、透明性を確保するには、ある程度小さくなくてはならない。
【0080】
光拡散性の積層フィルムを作る1つの方法は、透明フィルムと同じベース樹脂で、ワニスの状態で無機粒子と混練され、乾燥後に透明フィルム2枚と重ねられるのが好ましい。光拡散性の積層フィルムを作るもう1つの方法は、無機粒子の成分を透明フィルムに蒸着する方法である。この方法では、透明フィルムの弾性率が低いために、表面の蒸着層にひび割れが入り、結果として無機粒子相当物ができる。
【0081】
無機粒子の含有量は、3層の透明フィルムの全質量に対して、0.5〜10質量%が好ましい。多すぎると透過率が減少し、少なすぎると、拡散光が得られない。
【0082】
また、本発明は、透明フィルム、積層フィルム又は無機粒子挟持フィルムのいずれかにより、パネル面積の半分以上を構成する部材同士が接着されたことを特徴とするディスプレイ用パネルである。
本発明のフィルムをディスプレイ用パネルに適用することで、耐熱性に優れ、未硬化部が少なく、曲げに強いパネルを得ることができる。エポキシが熱硬化性であることから、耐熱性がありまた、UV硬化のみの場合に比べ未硬化部をすくなくできる。また、ゴム成分であるアクリル共重合体が透明フィルム中60%以上と多いために、曲げに強い。フィルムのアクリル共重合体含有率は好ましくは85%以上95%以下である。
【0083】
ディスプレイ用パネルに用いられるフィルムの熱硬化前の全光線透過率は、好ましくは85〜100%であり、より好ましくは90〜100%以上である。
また、熱硬化後の全光線透過率は、75%以上であり、より好ましくは80%以上である。透過率が高い方が、硬化前のUV硬化がし易くなり、熱硬化後においても、外観に優れたフィルムとなる。
【0084】
ディスプレイに熱硬化で接着するときには、他の光学フィルムに悪影響を与えないよう、低い温度で接着するのが好ましい。このために、硬化温度と硬化時間は、十分な接着強度を得られるよう必要十分な温度・時間を選択する。硬化温度は、通常、80〜155℃であり、好ましくは100〜150℃、硬化時間は、通常、3分〜3時間であり、好ましくは、45〜90分である。
【0085】
硬化温度は、110℃で5時間、130℃で3時間、150℃で1時間のように、硬化時間が短いほど温度を高くするのが好ましい。また、生産性を上げるために、短い時間で熱硬化接着することが好ましい。熱硬化に必要な熱をかける方法としては、IRリフロー又はオーブンを、用いることができる。
【実施例】
【0086】
以下、本発明の好適な実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
透明フィルムの評価方法については、以下に示す方法を採用した。
[評価項目]
(a)熱硬化前の弾性率
Bステージ状態のフィルムの20℃の弾性率を、粘弾性測定装置(セイコーインスツルメンツ株式会社製、商品名:DMS6100)を用いて測定した(サンプルサイズ:長さ15mm、幅10mm、温度範囲−60〜100℃、昇温速度5℃/分、引張りモード、10Hz、自動静荷重)。測定は、3回実施して、その平均を測定結果とした。
【0087】
(b)PETフィルム又はポリエチレンフィルムとの熱硬化前の接着力
ホットロールラミネータ(60℃、0.3m/分、0.3MPa)で、幅10mmの透明フィルムを用い、その両面にPETとポリエチレンを貼り合わせた。その後、貼り合わせたフィルムを、引張試験器(株式会社オリエンテック製、商品名:RTM−100)を用いて、25℃の雰囲気中で、180°の角度で、50mm/分の引張り速度で剥がした時の、T字ピール強度を求めた。最初にPET又はポリエチレンが剥がれる。次に、10mm幅のニチバン株式会社製セロテープ(ニチバン株式会社登録商標)を、透明フィルム側に測定長さ分貼り付け、引っ張り試験の手がかりとした。測定は、5回実施して、その平均を測定結果とする。
【0088】
(c)ポリイミドフィルムとの熱硬化前の接着力
貼り合わせ時に、気泡が入らないように、空気を押し出して、2枚のポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製、商品名:UPILEX Grade 75s)と、幅10mmの透明フィルムとを密着させる。貼り合わせは、ホットロールラミネータ(60℃、0.3m/分、0.3MPa)で行った。その後、貼り合わせたフィルムを引張試験器(株式会社オリエンテック製、商品名:RTM−100)を用いて、25℃の雰囲気中で、180°の角度で、50mm/分の引張り速度で剥がした時の、T字ピール強度を求めた。測定は、5回実施して、その平均を測定結果とした。
【0089】
(d)ポリイミドフィルムとの熱硬化後の接着力
貼り合わせ時に、気泡が入らないように、空気を押し出して、2枚のポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製、商品名:UPILEX Grade 75s)と、幅10mmの透明フィルムとを密着させる。貼り合わせは、ホットロールラミネータ(60℃、0.3m/分、0.3MPa)で行い、150℃、1時間硬化させた。その後、貼り合わせたフィルムを、引張試験器(株式会社オリエンテック製、商品名:RTM−100)を用いて、25℃の雰囲気中で、180°の角度で、50mm/分の引張り速度で剥がした時の、T字ピール強度を求めた。測定は、5回実施して、その平均を測定結果とした。
【0090】
(e)全光線透過率
全光線透過率の測定には、エドモンド・オプティクス・ジャパン株式会社製、400nmの広帯域干渉フィルター(中心波長:400nm、半値全幅:50nm)と、株式会社エーディーシー製の光センサ及びパワーメータ(商品名:8230E)を用いた。平行光露光機(大日本スクリーン製造株式会社製、商品名:MAP1200L)の光線(高圧水銀灯)を光源として、パワーメータで測定する。図2に示すように、パワーメータ本体18に接続された光センサの受光素子16に、透明フィルム12を貼り付ける。光源からの光10を、広帯域干渉フィルタ14を通して、受光素子16に当てるが、この際、透明フィルム12を、広帯域干渉フィルタ14と受光素子16との間に挟んだ場合のパワーを、何も挟まない条件のパワーで割って、全光線透過率とする。測定は、試料を変えて、3回実施し、その平均を測定結果とした。
試料の粘着力が高い場合には、測定の作業性向上のために、図3のように、レンズ15とアイリス絞り13で平行光11を作製してもよい。光源10は、MORITEX製ハロゲン光源、MHF−150−Lからの光をフレキシブルライトガイドに通して作成できる。広帯域干渉フィルタ14と透明フィルム12の距離17は5cmである。
【0091】
(f)直線透過率
分光光度計の400nmでの測定値をもって、直線透過率とする。分光光度計は、株式会社日立製作所製、商品名:U−3310を用いた。
【0092】
(g)質量減少率
数百mgの透明フィルムについて、オーブンで熱硬化させ、質量減少を測定する。フィルム厚みが、10μmの場合には、5cm角のアルミ箔に4cm角の透明フィルムを密着させ、防爆型オーブン(エスペック株式会社製、商品名:SPHH−100)で180℃、1時間硬化させる。この時の透明フィルムの質量減少を硬化前の透明フィルムの質量で割って、質量減少率とする。この質量減少率を揮発分量の指標とした。測定は、異なる試料を用い時間を変えて、5回実施し、その平均を測定結果とした。
(h)分子量分布および平均分子量
GPC分析装置として、Shodex GPC SYSTEM−21H、カラムShodex GPC AD806MSを用いる。検出をRIカラム、温度を40℃、圧力を6.8MPa、流速を1.1ml/min、溶媒をTHFとする。サンプル注入条件は、1.0gのフィルムをTHF10mlに溶かし、溶かした液100μlを注入する。検量線式は3次式であり、標準試料は、Shodex STANDARDを用いる。
【0093】
(i)フィルム中の不純物
フィルム40mgをNMRのサンプルチューブに入れる。さらに、重アセトン0.4mlをサンプルチューブに入れ、24時間放置する。24時間放置後、13CのNMRを測定する。NMR装置はBruker製AV300を用いる。測定手法はinverse−gated decouplingを使う。測定時間は1日以上とする。この結果をスペクトル1とする。
次に、粉状にすりつぶしたフィルム1gをイソプロパノール10mlにいれ、24時間放置する。炉液をろ紙で濾して捨てる。次に、濾過物をエタノール10mlにいれ、24時間放置する。再び、炉液をろ紙で濾して捨てる。残った固形分を、デシケータ中で24時間乾燥する。固形分40mgについて、フィルム40mgと同様にして測定する。この結果をスペクトル2とする。
スペクトル1とスペクトル2を比較して、硬化剤以外で、ピークの面積が倍以上異なるピークについて、すべての13Cのピーク面積に対する割合の変化を調べる。ここで基準ピークの面積を、重アセトンのメチル部分の面積とする。上記のピークについての変化率を、不純物の濃度とする。
【0094】
<実施例1>
アクリル共重合体として、アクリル酸エステル共重合樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、商品名:HTR−860P−3、溶剤:シクロヘキサノン 固形分NV 20質量%、重量平均分子量60万):450質量部、水素添加ビスフェノ−ルA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名:EPICLON EXA−7015、エポキシ当量:212g/eq):5.89質量部、硬化剤としてフェノール・p−キシリレングリコールジメチルエーテル共重合樹脂のXLC−LL(三井化学株式会社製、商品名、水酸基当量:174):4.51質量部、硬化促進剤として、1−シアノ−1−フェニルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、商品名:キュアゾール2PZ−CN):0.242質量部及びシクロヘキサノン(和光純薬工業株式会社製、特級):64質量部加え、株式会社シンキー製攪拌脱泡装置で、3分攪拌混合して樹脂組成物を得た。
【0095】
樹脂組成物を離型層のあるPET面に、アプリケータを用い100μm厚で塗工し、110℃、15分オーブンで乾燥させ、10μm厚の透明フィルムAを得た。尚、Bステージとは、透明フィルムAのように、溶媒をとばして乾燥した状態のことをいう。PETは、帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名:ピューレックスA53を用いた。
【0096】
透明フィルムAを挟んで、PET離型面とポリエチレンフィルムを張り合わせ、ホットロールラミネータをかけた。張り合わせたフィルムBの、T字ピールを測定すると、最初にポリエチレンが剥がれ、強度は、0.9N/mであった。更に、PETと透明フィルムのT字ピール強度は、2.1N/mであった。
【0097】
次に、透明フィルムAを、PETから剥がして評価した。アルミ箔に転写した後、折り曲げて、厚さ160μmとした。透明フィルムAの弾性率を測定したところ、貯蔵弾性率が、210MPa、損失弾性率が、50MPaであった。
さらに、別途、透明フィルムAを150℃、1時間硬化させた後、PETから剥がして評価した。アルミ箔に転写した後、折り曲げて、厚さ160μmとした。硬化後の透明フィルムAの弾性率を測定したところ、20℃では、貯蔵弾性率が、1000MPa、損失弾性率が、160MPaであった。また、−20℃では、貯蔵弾性率が、2000MPa、損失弾性率が、100MPaであった。このように、150℃で硬化することで、貯蔵弾性率が4倍以上となるが、まだ、低い弾性率である。例えば、熱硬化性のエポキシ樹脂は、室温で、貯蔵弾性率が3500MPa程度である(非特許文献3参照)。
【0098】
一方、透明フィルムAを用いてポリイミドフィルム2枚を密着させ、ホットロールラミネータで貼り合わせた。このT字ピール強度は、3N/mであった。その後、150℃、1時間硬化させた。これを引張試験器で測定したところ、T字ピール強度は、206N/mであった。
【0099】
また、透明フィルムAを松浪硝子工業株式会社製のスライドガラスで気泡が入らないよう挟んで、圧力2Kg重/平方センチメータ、温度150℃で1時間熱圧着した。このガラスが貼りついた状態で、透明フィルムAの全光線透過率及び直線透過率を測定した。全光線透過率は88%、直線透過率は82%となった。
他方で、透明フィルムAの180℃、1時間における質量減少率を測定したところ、4.3%となった。
さらに、溶媒量およびアクリル共重合体の分子量の影響を検討した。本発明の透明フィルムの作成法のひとつは、溶媒を含むワニスから熱乾燥させてつくる方法である。硬化剤に水素添加ビスフェノ−ルA型エポキシ樹脂を、硬化促進剤にイミダゾールを用いた場合、溶媒量が多くなるか、あるいは分子量が低下すると、図1のように、透過率が減少する。図1の横軸は、ワニスの全溶媒量/アクリル共重合体固形分である。ここでは、溶媒としてシクロヘキサノンを用いている。アクリル共重合体の重量平均分子量が39万から61万の場合、シクロヘキサノンの量は、アクリル共重合体90質量部に対して、360から630質量部であればよいことが分かる。例えば、重量平均分子量60万では、透過率80%以上となるためのシクロヘキサノンの量は、アクリル共重合体90質量部に対して、600質量部以下であることがわかる。
また、実施例1の配合において、重量平均分子量が、61万、60万、48万、39万のアクリル共重合体それぞれを、220℃で1時間加熱すると、透明フィルムが着色しないのは61万と60万だけであった。
【0100】
<実施例2>
張り合わせたフィルムBについて、PETに帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名:ピューレックスA31を用いた以外は、実施例1と同様に行った。その結果、最初にPETが剥がれ、T字ピール強度は、0.3N/mであった。
【0101】
(実施例3〜15及び比較例1〜6の配合と評価結果)
表1及び表2に、硬化剤をフェノールとし、硬化促進剤の種類と量を変えた配合を示す。アクリル共重合体、エポキシ樹脂及び硬化剤は、実施例1と同様のものを使用した。また、溶媒量はアクリル酸エステル共重合樹脂(商品名:HTR−860P−3、溶剤:シクロヘキサノン 固形分NV 20質量%、重量平均分子量60万):450質量部に対して、シクロヘキサノンを64質量部とした。硬化促進剤は、四国化成工業株式会社製の商品名:キュアダクトP−0505、四国化成工業株式会社製の商品名:1B2PZ、サンアプロ株式会社製の第4級ホスホニウムブロマイド、商品名:U−CAT5003、日本化学工業株式会社製のテトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオネート、商品名:ヒシコーリンPX−4ETをそれぞれ用いた。また、保存安定性向上剤(安定化剤)として、L−07N(四国化成工業株式会社製、キュアダクト;2,2−オキシビス‐5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサボナリン)を用いた。表1において実施例は、C−4、比較例は、C−1、C−2及びC−3である。表2は全てが実施例である。配合をしてフィルムをつくる工程や評価は実施例1と同様に行った。
【0102】
【表1】

(表中の配合単位は質量部である。)
【0103】
【表2】

(表中の配合単位は質量部である。)
【0104】
表3は、硬化剤を酸無水物とし、その種類を変えた配合である。
エポキシ樹脂として、ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名:YX8000を使用し、また酸無水物として、日立化成工業株式会社製のメチルヘキサヒドロ無水フタル酸、商品名:HN−7000、新日本理化株式会社製のヘキサヒドロ無水フタル酸、商品名:リカシッド HH、新日本理化株式会社製のオクテニルコハク酸無水物、商品名:リカシッド OSA、新日本理化株式会社製のテトラプロペニル無水コハク酸(3−ドデセニル無水コハク酸)、商品名:リカシッド DDSA、ジャパンエポキシレジン株式会社製のメチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、商品名:jERキュア YH306、DIC株式会社製の5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、商品名:EPICLON B−4400のそれぞれを使用した。エポキシ当量1が酸無水物当量1に相当する。酸無水物当量(g/eq)は以下の数値を使用した。
【0105】
HN−7000 メチルヘキサヒドロ無水フタル酸無水物 164
リカシッド HH ヘキサヒドロ無水フタル酸無水物 154
リカシッド OSA オクテニルコハク酸無水物 209
リカシッド DDSA テトラプロペニル無水コハク酸 271
YH306 メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸 238
B−4400 ジカルボン酸無水物 132
尚、表3では、酸無水物は、AH−1、AH−2、A−3、AH−4、AH−5及びAH−6の順に、0.44、0.5、2.6、1.5、0.5及び1.0当量分配合されている。
【0106】
【表3】

(表中の配合単位は質量部である。)
【0107】
表4は、硬化促進剤を変えた配合である。配合は、表3におけるAH−1のように配合し、エポキシ樹脂をジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名:YX8000、7.4質量部、硬化剤を日立化成工業株式会社製のメチルヘキサヒドロ無水フタル酸、商品名:HN−7000、2.6質量部及び硬化促進剤を0.242質量部で統一した。硬化促進剤は、DMP−30(アミン系)、1B2PZ(アミン系)、U−CAT5003(リン系)、PX−4ET(リン系)及び2PZ−CN(アミン系)のときの揮発分・透明性を調べた。
それぞれ、エアープロダクツジャパン株式会社製のトリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、商品名:DMP−30、四国化成工業株式会社製の(1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール)商品名:1B2PZ、サンアプロ株式会社製の第4級ホスホニウムブロマイド、商品名:U−CAT5003、日本化学工業株式会社製のテトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオネート、商品名:ヒシコーリンPX−4ET、四国化成工業株式会社製の1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、商品名:2PZ−CNを使用した。
【0108】
【表4】

【0109】
表4に示されるように、DMP−30とU−CAT5003及び2PZ−CNの3種類は、質量減少が8%以下、しかも、全光線透過率が77%以上の条件を満たした。
【0110】
図4は、配合表1、2に加え、様々なアクリルとエポキシを基本組成とした配合について、質量減少率と全光線透過率を評価した結果である。膜厚10μm、波長400nmで評価したものである。アクリルゴムとエポキシ樹脂と硬化促進剤の合計が、100質量部となるよう調整した。表には乾燥重量で示してある。
透明性と外観は目視で、蛍光灯に透かしてみて、茶色又は黄色に着色しているか確認した。発泡は、目視で、白く濁っていることを確認した。横軸重量減少率で縦軸全光線透過率である。発泡を▲、着色を■、発泡かつ着色を×として表し比較例とした。発泡も着色もなしを○とし、実施例とした(図4参照)。揮発分と発泡の関係は揮発分が多いと発泡し、全光線透過率が低いと着色しやすい傾向にある。
【0111】
硬化促進剤の量が変化したときに、質量減少率及び全光線透過率はどのように変化するのか、図5及び図6に、硬化剤を、リカシッド OSA(新日本理化株式会社製、商品名)、リカシッド DDSA(新日本理化株式会社製、商品名)、YH306(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名)、B−4400(DIC株式会社製、商品名)、XLC−LL(三井化学株式会社製、商品名)及びHN−7000(日立化成工業株式会社製、商品名)の何れかとし、アクリル90質量部に対する硬化促進剤2PZ−CN(四国化成工業株式会社製、商品名)の量を変えた結果を示す。その結果、硬化促進剤以外の配合は、XLC−LLが表2に、それ以外が、表3に対応している。
また、実施例6,7のように、イミダゾールの量がアクリル共重合体90質量部に対して、0.24質量部から0.48質量部に増えると、透過率が約4%悪化するが、この量が1質量部になると、さらに約5%悪化することがわかった。
【0112】
また、質量減少が、8%以下、しかも、全光線透過率が77%以上の条件を満たす可能性のある配合は、すべての硬化剤について硬化促進剤量が、1質量部以下で満たされることが分かる。より好ましい条件である質量減少率が5%以下、しかも、全光線透過率が80%以上では、B−4400(DIC株式会社製、商品名)とXLC−LL(三井化学株式会社製、商品名)のみが条件を満たし、B−4400(DIC株式会社製、商品名)の場合、硬化促進剤量が、アクリル共重合体90質量部に対して、0.05〜0.5質量部、XLC−LL(三井化学株式会社製、商品名)の場合、硬化促進剤量が、0.001〜0.5質量部であればよいことが分かる。
【0113】
XLC−LL(三井化学株式会社製、商品名)であれば、硬化促進剤が、0.005〜0.5質量部のとき、質量減少率と全光線透過率が共に、より好ましい条件に入ることが分かる。また、B−4400(DIC株式会社製、商品名)においても、硬化促進剤が、0.05〜0.5質量部であれば、質量減少率と全光線透過率が共に、より好ましい条件に入る。
【0114】
更に、XLC−LL(三井化学株式会社製、商品名)とB−4400(DIC株式会社製、商品名)においては、特に、質量変化率の2PZ−CN(四国化成工業株式会社製、商品名)量依存性が明確である。XLC−LL(三井化学株式会社製、商品名)とB−4400(DIC株式会社製、商品名)は、硬化剤がエポキシ当量比1配合されてことから、当量比1近傍で揮発分が抑えられることが分かる。
透明フィルムは、一般の薄型表示素子や、液晶ディスプレイや、LEDの発光素子等で、どのようなところに使われるか、図7、図8及び図9に示す。
【0115】
図7に示すように、導光板28から斜めに出た光を上向きに曲げる、下向きのこぎり歯型回折格子22と、液晶パネルとを接着している。このように、ビーズスペーサー20と回折格子22を一体型にすることで、組立工程における、ビーズスペーサー20の挿入を省略することができる。
【0116】
図8は、汎用的な薄型表示素子において、ガラス板42とプラスチック板46を接着するために使われる透明フィルム44を示している。このように100cm以上の接着面積がある場合、硬化後の弾性率が低くないとそりが生じやすい。
本発明の透明フィルムは、ディスプレイ用パネルに限定されず、LEDに代表される発光素子の封止や太陽電池パネルの貼り合わせなどに広く用いることができる。図9は、光学フィルム50に透明フィルム52を貼り付け、発光素子54及びワイヤボンディングのワイヤ56の封止フィルムとして、使う方法を示している。
【符号の説明】
【0117】
10…光源からの光(光源)、11…平行光、12…透明フィルム、13…アイリス絞り、14…広帯域干渉フィルタ、15…レンズ、16…パワーメータの受光素子(受光素子)、17…広帯域干渉フィルタから透明フィルムまでの距離、18…パワーメータ本体、20…ビーズスペーサー、21…透明フィルム、22…回折格子(下向きのこぎり歯型回折格子)、24…透過光、26…冷陰極蛍光ランプ、28…導光板、30…偏光板、32…透過の光制御フィルム、34…カラーフィルタ、36…液晶、40…TFT層、42…ガラス板、44…透明フィルム、46…プラスチック板、48…カバーフィルム、50…光学フィルム、52…透明フィルム、54…発光素子、56…ワイヤボンディングのワイヤ、58…導電ペースト、60…インターポーザ、64…位相差板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル共重合体と、前記アクリル共重合体90質量部に対して、エポキシ樹脂1〜25質量部と、前記エポキシ樹脂のエポキシ当量に相当する量の0.4〜6倍のエポキシ硬化剤とを含み、膜厚が、1〜200μmのフィルムであって、180℃、1時間熱硬化時に、質量減少が、0〜8%であり、150℃、1時間熱硬化後に、波長400nmの光の全光線透過率が、77〜100%、熱硬化前には、ポリイミドフィルムと前記フィルムとの接着力が、0.2〜15N/m、150℃、1時間熱硬化後には、ポリイミドフィルムとの接着力が、50〜10000N/mである透明フィルム。
【請求項2】
アクリル共重合体90質量部に対して、エポキシ樹脂3〜7質量部と、硬化促進剤0.005〜0.5質量部とを含み、エポキシ硬化剤がフェノール化合物又は酸無水物を含む、請求項1記載の透明フィルム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の透明フィルムにおいて、エポキシ硬化剤が、フェノール、酸無水物又はカルボン酸を含む化合物である透明フィルム。
【請求項4】
請求項1又は2記載の透明フィルムにおいて、エポキシ硬化剤が、フェノール・p−キシリレングリコールジメチルエーテル共重合樹脂又は5−(2,5−ジオキソテトラヒドロー3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物である透明フィルム。
【請求項5】
請求項2乃至4の何れかに記載の透明フィルムにおいて、硬化促進剤が、リン系又はアミン系である透明フィルム。
【請求項6】
請求項2乃至4の何れかに記載の透明フィルムにおいて、硬化促進剤が、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール又はテトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオネート若しくは第4級ホスホニウムブロマイドである透明フィルム。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載の透明フィルムにおいて、エポキシ樹脂が、ビスフェノールA型又はF型であって、芳香環が、95〜100%水素添加されたものである透明フィルム。
【請求項8】
アクリル共重合体90質量部に対して、非プロトン性極性溶媒を360から630質量部配合したワニスから熱乾燥してなる、請求項1乃至7の何れかに記載の透明フィルム。
【請求項9】
アクリル共重合体の重量平均分子量が30万以上100万以下であり、アクリル共重合体の重量平均分子量分布において、重量平均分子量1万以上10万以下の成分が5%以下であり、かつ、フィルム中の不純物が1%以下であることを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の透明フィルム。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れかに記載の透明フィルムと、前記透明フィルムを挟持するフィルム1及びフィルム2とを備えた積層フィルムであって、前記透明フィルムの貯蔵弾性率が、25℃で30〜1000MPaであり、ピール強度が、前記フィルム1と前記透明フィルムの間では、0.2〜0.6N/mであり、前記フィルム2と前記透明フィルムの間では、0.1〜0.4N/mであり、前記フィルム1と前記透明フィルムの間のピール強度が、前記フィルム2と前記透明フィルムの間のピール強度よりも高いこと特徴とする積層フィルム。
【請求項11】
請求項1乃至9の何れかに記載の透明フィルムと、前記透明フィルムに挟持される無機粒子とを備えた無機粒子挟持フィルムであって、前記無機粒子において、質量平均粒径が、0.01〜10μmであり、波長400nmにおける複素屈折率の実部又は虚部の絶対値が、1.6〜5.6である、無機粒子挟持フィルム。
【請求項12】
請求項1乃至9の何れかに記載の透明フィルムと、請求項10に記載の積層フィルム又は請求項11に記載の無機粒子挟持フィルムと、前記透明フィルム、前記積層フィルム又は前記無機粒子挟持フィルムにより接着されるディスプレイとを備えたディスプレイ用パネルであって、前記透明フィルム、前記積層フィルム又は前記無機粒子挟持フィルムにおいて、熱硬化前の全光線透過率が85〜100%であり、熱硬化後の直線透過率が0〜40%であり、全光線透過率が75%以上である、ディスプレイ用パネル。
【請求項13】
透明フィルム、積層フィルム又は無機粒子挟持フィルムと、ディスプレイとを、硬化温度が80〜155℃、硬化時間が3分〜3時間で接着してなる、請求項12記載のディスプレイ用パネル。
【請求項14】
請求項1乃至9の何れかに記載の透明フィルムと、請求項10に記載の積層フィルム又は請求項11に記載の無機粒子挟持フィルムと、前記透明フィルム、前記積層フィルム又は前記無機粒子挟持フィルムにより接着されるディスプレイとを備えたディスプレイ用パネルであって、前記透明フィルム、前記積層フィルム、前記無機粒子挟持フィルムのいずれかにより、パネル面積の半分以上を構成する部材同士が接着されたことを特徴とするディスプレイ用パネル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−168525(P2010−168525A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66088(P2009−66088)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】