説明

透明導電フィルム

【課題】表面抵抗が小さく、充分な熱線反射機能を有する透明導電フィルムを提供しようとするものである。
【解決手段】本発明は、透明な基材フィルム2と、基材フィルム2の表面にスパッタリングにより順次積層形成された、ITO(錫ドープ酸化インジウム)からなる第1導電層31、Ag(銀)からなる第2導電層32、ITOからなる第3導電層33とを有する。第1導電層31の膜厚は5〜100nmであり、第2導電層32の膜厚は5〜50nmであり、第3導電層33の膜厚は5〜100nmであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機エレクトロルミネッセンス素子等における透明電極、電磁波遮蔽フィルム、透明フィルムヒータ等に用いられる透明導電フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
無機エレクトロルミネッセンス素子等における透明電極、電磁波遮蔽フィルム、透明フィルムヒータ等として、透明導電フィルムが用いられている。該透明導電フィルムは、PET(ポリエチレンテレフタレート)等からなる基材フィルムの表面に、ITO(錫ドープ酸化インジウム)からなる透明導電膜をスパッタリングにより形成することにより得られる(特許文献1参照)。
【0003】
例えば、上記透明導電フィルムを、携帯電話やパソコンの表示部に用いる無機エレクトロルミネッセンス素子の電極として用いる場合、無機エレクトロルミネッセンス素子の輝度向上のために、上記透明導電フィルムの低抵抗化が求められる。
また、上記透明導電フィルムを電磁波遮閉フィルムとして用いた場合にも、その機能を充分に発揮するためには低抵抗化が必要である。
【0004】
しかしながら、上記従来の透明導電フィルムは、表面抵抗が充分に低いとは言えない。
更に、透明導電フィルムの機能として、可視光を透過させつつ熱線を反射する機能が要求される場合がある。この場合においても、上記従来の透明導電フィルムにおいては、充分な熱線反射機能を得ることは困難であった。
【0005】
【特許文献1】特開2001−332134号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであり、表面抵抗が小さく、充分な熱線反射機能を有する透明導電フィルムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、透明な基材フィルムと、該基材フィルムの表面にスパッタリングにより順次積層形成された、ITO(錫ドープ酸化インジウム)からなる第1導電層、Ag(銀)からなる第2導電層、ITOからなる第3導電層とを有することを特徴とする透明導電フィルムにある(請求項1)。
【0008】
次に、本発明の作用効果につき説明する。
上記透明導電フィルムは、上述のごとく、ITOからなる第1導電層、Agからなる第2導電層、ITOからなる第3導電層とを、基材フィルムの表面に形成してなる。
そして、第3導電層のITO膜を薄くすることにより、第2導電層のAgの導電性を表面に伝達しやすくすることができ、表面抵抗を充分に小さくすることができる。
更に、導電性のよい金属膜であるAgを薄くスパッタリングすることにより、熱線反射機能を充分に発揮することができる。
【0009】
即ち、上記ITOからなる第1導電層が、高い透明導電性、選択透過性を発揮し、Agからなる第2導電層が、高い光線反射機能及び導電性を発揮し、ITOからなる第3導電層が、高い透明導電性、選択透過性を発揮する。
そのため、第1導電層と第2導電層と第3導電層とを積層した構成とすることにより、上述のごとく、透明導電フィルムの低抵抗化及び熱線反射機能の充分な発揮を実現することができる。
【0010】
以上のごとく、本発明によれば、表面抵抗が小さく、充分な熱線反射機能を有する透明導電フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明(請求項1)において、上記透明導電フィルムは、例えば、無機あるいは有機エレクトロルミネッセンス素子等における透明電極、電磁波遮蔽フィルム、透明フィルムヒータ、熱線反射フィルム等に用いることができる。
また、上記透明導電フィルムは、表面抵抗を例えば1〜10Ω/□とすることができる。
また、基材フィルムと第1導電層との間には、ポリエステル系の接着剤層を介在させてもよい。
また、基材フィルムの厚みは、例えば12〜188μmとすることが好ましい。
【0012】
また、上記第1導電層の膜厚は5〜100nmであり、上記第2導電層の膜厚は5〜50nmであり、上記第3導電層の膜厚は5〜100nmであることが好ましい(請求項2)。
この場合には、表面抵抗が充分に小さく、熱線反射機能を充分に有する、薄くて安価な透明導電フィルムを容易に得ることができる。
第1導電層の膜厚が5nm未満の場合には、低抵抗化が困難となる、膜形成が不充分となり外観不良が生ずる、性能面にバラツキが発生するといった問題が生ずるおそれがある。一方、第1導電層の膜厚が100nmを超える場合には、透明導電フィルムのフレキシブル性が低下する、コストが高くなる、透明性が低下するといった問題が生ずるおそれがある。
【0013】
第2導電層の膜厚が5nm未満の場合には、低抵抗化が困難となる、抵抗値にバラツキが出る、光線の選択透過性が低下するといった問題が生ずるおそれがある。一方、第2導電層の膜厚が50nmを超える場合には、透明導電フィルムのフレキシブル性が低下する、コストが高くなる、光線の透過率が小さくなるといった問題が生ずるおそれがある。
【0014】
第3導電層の膜厚が5nm未満の場合には、低抵抗化が困難となる、光線の選択透過性が低下する、耐久性が低下するといった問題が生ずるおそれがある。一方、第3導電層の膜厚が100nmを超える場合には、透明導電フィルムのフレキシブル性が低下する、コストが高くなる、色が着いて透明性が低下するといった問題が生ずるおそれがある。
【0015】
また、上記基材フィルムは、PET(ポリエチレンテレフタレート)からなることが好ましい(請求項3)。
この場合には、透明度の高い透明導電フィルムを、容易かつ安価に得ることができる。
【0016】
また、上記第1導電層は、SnO2(酸化スズ)を3〜20%含むITOからなり、上記第3導電層は、SnO2を3〜10%含むITOからなることが好ましい(請求項4)。
この場合には、平滑性に優れ、外観に優れた透明導電フィルムを得ることができる。
【0017】
上記第1導電層におけるSnO2の混入割合が3%未満の場合には、ITO膜としての均一性を確保することが困難となるおそれがある。一方、上記第1導電層におけるSnO2の混入割合が20%を超える場合には、第1導電層の抵抗値が大きくなり、透明導電フィルムの機能が低下するおそれがある。
【0018】
また、上記第3導電層におけるSnO2の混入割合が3%未満の場合には、ITO膜としての均一性を確保することが困難となるおそれがある。一方、上記第3導電層におけるSnO2の混入割合が10%を超える場合には、第3導電層の比抵抗値が大きくなり、膜厚を厚くする必要が生ずるおそれがある。
【実施例】
【0019】
本発明の実施例にかかる透明導電フィルムにつき、図1、図2を用いて説明する。
本例の透明導電フィルム1は、図1に示すごとく、PETからなる透明な基材フィルム2と、該基材フィルム2の表面にスパッタリングにより順次積層形成した、ITOからなる第1導電層31、Agからなる第2導電層32、ITOからなる第3導電層33とを有する。
【0020】
第1導電層31の膜厚は5〜100nmであり、第2導電層32の膜厚は5〜50nmであり、第3導電層33の膜厚は5〜100nmである。
また、第1導電層31と第2導電層33とは、SnO2をの混入割合が互いに異なっている。即ち、第1導電層31は、SnO2を3〜20%含むITOからなり、第3導電層33は、SnO2を3〜10%含むITOからなる。
【0021】
次に、本例の透明導電フィルム1は、例えは以下のようにして製造する。
まず、厚み12〜188μmのPETからなる基材フィルム2を用意する。そして、該基材フィルム2の表面にポリエステル系の接着剤層を、ロールコーター法等の手段により、0.2μmの膜厚で形成する(図示略)。
【0022】
そして、接着剤層を設けた基材フィルム2の表面に、図2に示すごとく、ITOをスパッタリングすることにより第1導電層31を形成する。
スパッタリングに当っては、まず、スパッタ装置のチャンバ内に、基材フィルム2をセットする。即ち、図2に示すごとく、長尺の基材フィルム2を、スパッタ装置のチャンバ内の台座ドラム51に沿わせるにようにして配置する。
【0023】
スパッタ装置は、回転する台座ドラム51に対向配置された少なくとも3個のターゲット(第1導電層31形成用のITOターゲット521、第2導電層32形成用のAgターゲット522、第3導電層33形成用のITOターゲット523)を有する。ITOターゲット521はSnO2を10〜20%含むITOからなり、ITOターゲット523はSnO2を3〜10%含むITOからなる。
【0024】
そして、チャンバ内を2×10-4Paの真空度とした後、O2(酸素)を10%添加したAr(アルゴン)ガスを、チャンバ内が4×10-1Paとなるまで導入する。
次いで、図2の矢印Aに示すように基材フィルム2を0.5〜5m/分の搬送速度で移動させながら、ITOターゲット521により2〜3W/cm2の出力にて、スパッタリングを20〜30秒間行う。これにより、膜厚25nmのITOからなる第1導電層31を形成する。
次いで、第2のAgターゲット522により、2〜3W/cm2の出力にて、スパッタリングを20〜30秒間行う。これにより、膜厚10nmのAgからなる第2導電層32を形成する。
【0025】
次いで、第3のITOターゲット523により、2〜3W/cm2の出力にて、スパッタリングを20〜30秒間行う。これにより、膜厚45nmのITOからなる第3導電層33を形成する。
以上により、図1に示すごとく、基材フィルム2の表面に第1導電層31と第2導電層32と第3導電層33とが順次積層された透明導電フィルム1が得られる。
なお、上記各条件等は単なる一例であり、本発明は、これに限定されない。
【0026】
次に、本例の作用効果につき説明する。
上記透明導電フィルム1は、上述のごとく、ITOからなる第1導電層31、Agからなる第2導電層32、ITOからなる第3導電層33とを、基材フィルム2の表面に形成してなる。そして、第3導電層33のITO膜が5〜100nmと薄いため、第2導電層32のAgの導電性を表面に伝達しやすくすることができ、表面抵抗を充分に小さくすることができる。即ち、従来の透明導電フィルムにおいては、表面抵抗を30Ω/□程度までしか低減することができなかったのに対し、本発明によれば、表面抵抗を1〜10Ω/□とすることができる。
更に、導電性のよい金属膜であるAgを薄くスパッタリングすることにより、熱線反射機能を充分に発揮することができる。
【0027】
即ち、上記ITOからなる第1導電層31が、高い透明導電性、選択透過性を発揮し、Agからなる第2導電層32が、高い光線反射機能及び導電性を発揮し、ITOからなる第3導電層33が、高い透明導電性、選択透過性を発揮する。
そのため、第1導電層31と第2導電層32と第3導電層33とを積層した構成とすることにより、上述のごとく、透明導電フィルム1の低抵抗化及び熱線反射機能の充分な発揮を実現することができる。
【0028】
また、上述のごとく、第1導電層31の膜厚は5〜100nmであり、第2導電層32の膜厚は5〜50nmであり、第3導電層33の膜厚は5〜100nmである。そのため、表面抵抗が充分に小さく、熱線反射機能を充分に有する、薄くて安価な透明導電フィルム1を容易に得ることができる。
【0029】
また、基材フィルム2は、PETからなるため、透明度の高い透明導電フィルムを、容易かつ安価に得ることができる。
また、第1導電層31は、SnO2を3〜20%含むITOからなり、第3導電層33は、SnO2を3〜10%含むITOからなるため、表面平滑性に優れ、かつ光線選択透過性(可視光を透過して紫外線と赤外線とをカットする性能)に優れ、かつ低抵抗な膜を得ることができる。
【0030】
以上のごとく、本例によれば、表面抵抗が小さく、充分な熱線反射機能を有する透明導電フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例における、透明導電フィルムの断面図。
【図2】実施例における、スパッタリング方法の説明図。
【符号の説明】
【0032】
1 透明導電フィルム
2 基材フィルム
31 第1導電層
32 第2導電層
33 第3導電層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な基材フィルムと、該基材フィルムの表面にスパッタリングにより順次積層形成した、ITOからなる第1導電層、Agからなる第2導電層、ITOからなる第3導電層とを有することを特徴とする透明導電フィルム。
【請求項2】
請求項1において、上記第1導電層の膜厚は5〜100nmであり、上記第2導電層の膜厚は5〜50nmであり、上記第3導電層の膜厚は5〜100nmであることを特徴とする透明導電フィルム。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記基材フィルムは、PETからなることを特徴とする透明導電フィルム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、上記第1導電層は、SnO2を3〜20%含むITOからなり、上記第3導電層は、SnO2を3〜10%含むITOからなることを特徴とする透明導電フィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−216266(P2006−216266A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−25405(P2005−25405)
【出願日】平成17年2月1日(2005.2.1)
【出願人】(000242231)北川工業株式会社 (268)
【Fターム(参考)】