説明

透明導電膜付ガスバリア性フィルムの製造方法及び有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法

【課題】透明導電膜の有する内部応力を低減し、バリア層へのダメージを抑制し、高い導電性と透明性、更には高いガスバリア性を維持できる透明導電膜付ガスバリア性フィルムの製造方法と、それを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を提供する。
【解決手段】透明樹脂フィルム上に少なくとも1層以上のセラミック膜を有する透明ガスバリア性フィルム上へ透明導電膜を真空製膜法により製膜する際、該製膜時の圧力が0.5〜2.0Paであることを特徴とする透明導電膜付ガスバリア性フィルムの製造方法及び有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の積層構造を有する透明導電膜付ガスバリア性フィルムの製造方法と、それを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法にに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プラスチック基板やフィルムの表面に酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化珪素等の金属酸化物の薄膜を形成したガスバリア性フィルムは、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする物品の包装、食品や工業用品及び医薬品等の変質を防止するための包装用途に広く用いられている。また、包装用途以外にも液晶表示素子、太陽電池、有機エレクトロルミネッセンス(EL)基板等で使用されている。
【0003】
この様な分野での包装材料としてアルミ箔等が広く用いられているが、使用後の廃棄処理が問題となっているほか、基本的には不透明であり、外から内容物を確認することができないという課題を抱えており、更に、ディスプレイ材料では透明性が求められており、全く適用することができない。
【0004】
一方、ポリ塩化ビニリデン樹脂や塩化ビニリデンと他のポリマーとの共重合体樹脂からなる樹脂フィルム、あるいはこれらの塩化ビニリデン系樹脂をポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂にコーティングしてガスバリア性を付与した材料が、特に包装材料として広く用いられているが、焼却処理過程で塩素系ガスが発生するため、環境保護の観点から現在問題となっており、更にガスバリア性が必ずしも充分ではなく、高度なバリア性が求められる分野へ適用することができない。
【0005】
特に、液晶表示素子、有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと略記する)素子などへの応用が進んでいる透明樹脂フィルムには、近年、軽量化、大型化という要求に加え、長期信頼性や形状の自由度が高いこと、曲面表示が可能であること等の高度な要求が加わり、重く割れやすく大面積化が困難なガラス基板に代わって透明プラスチック等のフィルム基材が採用され始めている。例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子の基板として、高分子フィルムを用いた例が開示されて(例えば、特許文献1、2参照。)いる。
【0006】
しかしながら、透明プラスチック等のフィルム基材はガラスに対しガスバリア性が劣るという問題がある。例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子の基板として用いた場合、ガスバリア性が劣る基材を用いると、水蒸気や空気が浸透して有機膜が劣化し、発光特性あるいは耐久性等を損なう要因となる。また、電子デバイス用基板として高分子基板を用いた場合には、酸素が高分子基板を透過して電子デバイス内に浸透、拡散し、デバイスを劣化させてしまうことや、電子デバイス内で求められる真空度を維持できないといった問題を引き起こす。
【0007】
この様な問題を解決するためにフィルム基板上に金属酸化物薄膜を形成してガスバリア性フィルム基材とすることが知られている。包装材や液晶表示素子に使用されるガスバリア性フィルムとしてはプラスチックフィルム上に酸化珪素を蒸着したもの(例えば、特許文献3参照。)や酸化アルミニウムを蒸着したもの(例えば、特許文献4参照。)が知られており、いずれも2g/m2/day程度の水蒸気バリア性、あるいは2ml/m2/day程度の酸素透過性を有するにすぎないのが現状である。近年では、さらなるガスバリア性が要求される有機ELディスプレイや、液晶ディスプレイの大型化、高精細ディスプレイ等の開発により、フィルム基板へのガスバリア性能について水蒸気バリアで10-3g/m2/day程度まで要求が上がってきている。
【0008】
これら高い水蒸気遮断性の要望に応える方法の1つとして、緻密なセラミック層と、柔軟性を有し、外部からの衝撃を緩和するポリマー層とを交互に繰り返し積層した構成のガスバリア性フィルムが提案されて(例えば、特許文献5参照。)いる。しかしながら、セラミック層とポリマー層とでは、一般に組成が異なるため、それぞれの接触界面部での密着性が劣化し、膜剥離等の品質劣化を引き起こすことがある。特に、この密着性の劣化は、高温高湿等の過酷な環境下や紫外線の照射を長期間にわたり受けた際に顕著に現れ、早急な改良が求められている。
【0009】
またこれらの積層構造を有するバリアフィルム上へITOやIZO等の透明導電膜を製膜する方法としては、真空スパッタリングや真空イオンプレーティング等の物理蒸着法が一般的である。しかしこれらの透明導電膜をバリアフィルムを構成するバリア膜上へ製膜するとその透明導電膜の有する内部応力によりバリア層が破壊されてバリア性能が劣化することが判明してきた。この内部応力は100MPaを大きく超えて発生するため、柔軟性を有するポリマー層を介して製膜しても、充分抑制できるものではない。
【特許文献1】特開平2−251429号公報 (実施例)
【特許文献2】特開平6−124785号公報 (段落番号0008〜0014)
【特許文献3】特公昭53−12953号公報 (実施例)
【特許文献4】特開昭58−217344号公報 (実施例)
【特許文献5】米国特許第6,268,695号明細書 (claim1、2−54〜3−26)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、透明導電膜の有する内部応力を低減し、バリア層へのダメージを抑制し、高い導電性と透明性、更には高いガスバリア性を維持できる透明導電膜付ガスバリア性フィルムの製造方法と、それを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0012】
(請求項1)
透明樹脂フィルムの上に少なくとも1層以上のセラミック膜を有する透明ガスバリア性フィルム上へ透明導電膜を真空製膜法により製膜する際、該製膜時の圧力が0.5〜2.0Paであることを特徴とする透明導電膜付ガスバリア性フィルムの製造方法。
【0013】
(請求項2)
前記透明導電膜付ガスバリア性フィルムの水蒸気透過率が1×10-2g/m2/day以下であることを特徴とする請求項1記載の透明導電膜付ガスバリア性フィルムの製造方法。
【0014】
(請求項3)
前記透明導電膜付ガスバリア性フィルムの酸素透過率が5×10-3ml/m2/day以下であることを特徴とする請求項1記載の透明導電膜付ガスバリア性フィルムの製造方法。
【0015】
(請求項4)
前記透明導電膜を製膜する方法が、マグネトロンスパッタ法、対向ターゲットスパッタ法及びイオンプレーティング法から選ばれる何れかであることを特徴とする請求項1記載の透明導電膜付ガスバリア性フィルムの製造方法。
【0016】
(請求項5)
前記透明導電膜を製膜する際、水蒸気の存在下で製膜することを特徴とする請求項4記載の透明導電膜付ガスバリア性フィルムの製造方法。
【0017】
(請求項6)
前記セラミック膜は、大気圧もしくはその近傍の圧力下、放電空間に薄膜形成ガスおよび放電ガスを含有するガスを供給し、該放電空間に高周波電界を印加することにより該ガスを励起し、前記透明樹脂フィルムを励起した該ガスに晒すことにより、該透明樹脂フィルム上に薄膜を形成する薄膜形成方法により形成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の透明導電膜付ガスバリア性フィルムの製造方法。
【0018】
(請求項7)
前記放電ガスが窒素ガスであり、放電空間に印加される高周波電界は、第1の高周波電界および第2の高周波電界を重畳したものであり、該第1の高周波電界の周波数ω1より該第2の高周波電界の周波数ω2が高く、該第1の高周波電界の強さV1、該第2の高周波電界の強さV2および放電開始電界の強さIVとの関係が、V1≧IV>V2またはV1>IV≧V2の関係を満たし、該第2の高周波電界の出力密度が1W/cm2以上であることを特徴とする請求項6記載の透明導電膜付ガスバリア性フィルムの製造方法。
【0019】
(請求項8)
請求項1〜7のいずれか1項記載の透明導電膜付ガスバリア性フィルムの製造方法により製造された透明導電膜付ガスバリア性フィルム上に、燐光発光有機エレクトロルミネッセンス材料及び陰極となる金属膜を設けて封止することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、透明導電膜の有する内部応力を低減し、バリア層へのダメージを抑制し、高い導電性と透明性、更には高いガスバリア性を維持できる透明導電膜付ガスバリア性フィルムの製造方法と、それを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明を更に詳しく説明する。本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、透明導電膜を製膜する際に真空度をコントロールすることで、透明導電膜の内部応力をコントロールできることを見出し、更に通常では採用しない高い圧力である0.5〜2.0Paの範囲に圧力をとることで、内部応力を圧縮応力の状態で低くでき、強いてはバリア性能を劣化させることなく、水蒸気透過率で1×10-2g/m2/day以下、酸素透過率で5×10-3ml/m2/day以下が達成できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0022】
更に、上記で規定する条件に加えて、製膜中に水蒸気を混合させることで、低抵抗でかつ表面粗度も平滑化でき、特に有機EL用途へも充分使用できることも見出した。
【0023】
またここで用いるバリア性を担うセラミック膜を、大気圧もしくはその近傍の圧力下、放電空間に薄膜形成ガスおよび放電ガスを含有するガスを供給し、放電空間に高周波電界を印加することにより該ガスを励起し、基材を励起したガスに晒すことにより、基材上に薄膜を形成する大気圧プラズマCVD法を用いることにより、本発明の上記目的効果がより一層発揮されることを見出したものである。
【0024】
<透明導電膜の製膜>
本発明で用いる透明導電膜としては、ITO及びIZO等であり、その製法としては、金属または酸化物ターゲットを用いる反応性スパッタ装置で直流マグネトロンスパッタリング装置や高周波マグネトロンスパッタリング装置及び直流に高周波のRFを重畳したマグネトロンスパッタリング装置を用いることが出来る。またターゲット同士を対向させる対向ターゲットスパッタも可能。更に酸化物ターゲットを陽極として配置し、それにプラズマビームを供給し、材料蒸発源を蒸発させることによる反応性蒸着法でも可能であり、またガスプラズマを利用して、蒸発粒子の一部をイオンもしくは励起粒子とし、活性化して蒸着するイオンプレーティング法も用いることが出来る。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係る成膜装置の全体構造を概略的に説明する図である。この成膜装置は、成膜室である真空容器110と、真空容器110中にプラズマビームPBを供給するプラズマ源であるプラズマガン130と、真空容器110内の底部に配置されてプラズマビームPBが入射する陽極部材150と、成膜の対象である基板Wを保持する基板保持部材WHを陽極部材150の上方で適宜移動させる搬送機構160とを備える。
【0026】
プラズマガン130は、特開平9−194232号公報等に開示の圧力勾配型のプラズマガンであり、その本体部分は、真空容器110の側壁に設けられた筒状部112に装着されている。この本体部分は、陰極131によって一端が閉塞されたガラス管132からなる。ガラス管132内には、モリブデンMoで形成された円筒133が陰極131に固定されて同心に配置されており、この円筒133内には、LaB6で形成された円盤134とタンタルTaで形成されたパイプ135とが内蔵されている。ガラス管132の両端部のうち陰極131とは反対側の端部と、真空容器110に設けた筒状部112の端部との間には、第1及び第2中間電極141、142が同心で直列に配置されている。一方の第1中間電極141内には、プラズマビームPBを収束するための環状永久磁石144が内蔵されている。第2中間電極142内にも、プラズマビームPBを収束するための電磁石コイル145が内蔵されている。なお、筒状部112の周囲には、陰極131側で発生して第1及び第2中間電極141、142まで引き出されたプラズマビームPBを真空容器110内に導くステアリングコイル147が設けられている。
【0027】
プラズマガン130の動作は、図示を省略するガン駆動装置によって制御されている。これにより、陰極131への給電をオン・オフしたりこれへの供給電圧等を調整することができ、さらに第1及び第2中間電極141、142、電磁石コイル145、及びステアリングコイル147への給電を調整することができる。つまり、真空容器110中に供給されるプラズマビームPBの強度や分布状態を制御することができるようになる。
【0028】
なお、プラズマガン130の最も内心側に配置されるパイプ135は、プラズマビームPBのもととなる、Ar等の不活性ガスからなるキャリアガスをプラズマガン130ひいては真空容器110中に導入するためものであり、流量計193及び流量調節弁194を介して不活性ガス源190に接続されている。
【0029】
真空容器110中の下部に配置された陽極部材150は、プラズマビームPBを下方に導く主陽極であるハース151と、その周囲に配置された環状の補助陽極152とからなる。
【0030】
前者のハース151は、導電材料で形成されるとともに、接地された真空容器110に図示を省略する絶縁物を介して支持されている。このハース151は、陽極電源装置180によって適当な正電位に制御されており、プラズマガン130から出射したプラズマビームPBを下方に吸引する。なお、ハース151は、プラズマガン130からのプラズマビームPBが入射する中央部に、材料蒸発源である棒状の材料ロッド153が装填される貫通孔151aを有している。この材料ロッド153は、膜材料として、主成分であるZnOの粉末と3族元素の酸化物Al23とを混合した粉末を焼結して固めたものであり、プラズマビームPBからの電流によって加熱されて昇華し、基板上に亜鉛酸化物を主成分とする透明導電膜を形成するための材料蒸気を発生する。真空容器110下部に設けた材料供給装置158は、材料ロッド153を次々にハース151の貫通孔151aに装填するとともに、装填した材料ロッド153を徐々に上昇させる構造を有しており、材料ロッド153の上端が蒸発して消耗しても、この上端をハース151の凹部から常に一定量だけ突出させることができる。
【0031】
後者の補助陽極152は、ハース151の周囲にこれと同心に配置された環状の容器により構成されている。この環状容器内には、フェライト等で形成された環状の永久磁石155と、これと同心に積層されたコイル156とが収納されている。これら永久磁石155及びコイル156は、磁場制御部材であり、ハース151の直上方にカスプ状磁場を形成する。これにより、ハース151に入射するプラズマビームPBの向き等を修正することができる。
【0032】
補助陽極152内のコイル156は電磁石を構成し、陽極電源装置80から給電されて、永久磁石155により発生する中心側の磁界と同じ向きになるような付加的磁界を形成する。つまり、コイル156に供給する電流を変化させることで、ハース151に入射するプラズマビームPBの向きの微調整が可能になる。
【0033】
補助陽極152の容器も、ハース151と同様に導電性材料で形成される。この補助陽極152は、ハース151に対して図示を省略する絶縁物を介して取り付けられている。陽極電源装置80から補助陽極152に印加する電圧変化させることによってハース151の上方の電界を補的に制御できる。すなわち、補助陽極152の電位をハース151と同じにすると、プラズマビームPBもこれに引き寄せられてハース151へのプラズマビームPBの供給が減少する。一方、補助陽極152の電位を真空容器110と同じ程度に下げると、プラズマビームPBがハース151に引き寄せられて材料ロッド153が加熱される。
【0034】
搬送機構160は、基板保持手段として機能し、搬送路161内に水平方向に等間隔で配列されて基板保持部材WHの縁部を支持する複数のコロ162と、これらのコロ162を適当な速度で回転させて基板保持部材WHを一定速度で水平方向に移動させる駆動装置(図示を省略)とを備える。
【0035】
酸素ガス供給装置171は、真空容器110に適当なタイミングで適当な量の酸素ガスを雰囲気ガスとして供給するためのガス供給手段である。酸素ガスを収容する酸素ガス源171aからの供給ラインは、流量調節弁171b及び流量計171cを介して真空容器110に接続されている。
【0036】
窒素ガス供給装置172は、真空容器110に適当なタイミングで適当な量の窒素ガスを雰囲気ガスとして供給するためのガス供給手段である。窒素ガスを収容する窒素ガス源172aからの供給ラインは、流量調節弁172b及び流量計172cを介して真空容器110に接続されている。
【0037】
不活性ガス供給装置173は、Ar等の不活性ガスからなる雰囲気ガスを真空容器110に適当なタイミングで適当量供給するためのものである。不活性ガス源190から分岐された雰囲気ガスは、ガス供給装置173の流量調節弁173b及び流量計173cを介して真空容器110に直接導入される。
【0038】
なお、排気装置176は、排気ポンプ176bにより、真空ゲート176aを介して真空容器110内のガスを適宜排気する。また、真空圧測定器177は、真空容器110内の酸素ガス、Arガス等の分圧を計測することができ、この計測結果は、圧制御装置178によって監視されている。圧制御装置178は、真空圧測定器177の計測結果に基づいて、酸素ガス供給装置171、窒素ガス供給装置172、不活性ガス供給装置173、及び排気装置176の動作を制御して、真空容器110内の酸素ガス、窒素ガス、Arガス等の分圧を目標値に制御する。
【0039】
以下、図1に示す成膜装置の動作について説明する。この成膜装置による成膜時には、プラズマガン130の陰極131と真空容器110内のハース151との間で放電を生じさせ、これによりプラズマビームPBを生成する。このプラズマビームPBは、ステアリングコイル147と補助陽極152内の永久磁石155等とにより決定される磁界に案内されてハース151に到達する。ハース151の材料ロッド153は、プラズマビームPBからの電流により加熱され、材料ロッド153が昇華してここから膜材料の蒸気が出射する。この蒸気は、プラズマビームPBによりイオン化され、ハース151の電位に相当するエネルギーを持って基板Wの表面に付着して被膜を形成する。
【0040】
また上記方法によれば、ビーム修正用の磁場制御部材である永久磁石155やコイル156によってハース151上方の磁場を調整することができるので、材料ロッド153から蒸発した蒸発粒子の飛行方向を制御することができ、ハース151上方におけるプラズマの活性度分布や基板W上の反応性分布に合せて基板W上の成膜速度分布を調整でき、広い面積にわたって均一な膜質の薄膜を得ることができる。この点についてより具体的に説明すると、上述した基板W上の反応性とは、金属蒸気が基板に到達後、酸素元素と反応して酸化物膜を生成する際の基板上での酸化反応の進行し易さを意味する。この反応性は、基板温度などの他に、酸素や金属元素の活性状態を左右するプラズマの活性度にも影響されると考えられる。例えばプラズマの活性度が低く反応性が低くなりがちな基板Wの端部分などで成膜成長速度が遅くなるような成膜速度分布を採用すると、基板Wの端部分では反応性の低さを補うように時間をかけて酸素を十分に取り込んだ成膜が可能になる。つまり、基板Wの全体に亘って酸素の含有量がバランスしての膜質分布を均一にさせることができる。
【0041】
図2に示す成膜装置は、真空チャンバー203と、真空チャンバー203の側壁に取り付けられた圧力勾配型プラズマガン204と、真空チャンバー203内の底部に配置したルツボ205と、真空チャンバー203内の上部に配置した基板支持ホルダー206によって構成されている。
【0042】
ルツボ205は、カーボン製のものを使用することが望ましい。
【0043】
圧力勾配型プラズマガン204には、圧力勾配型ホロカソードプラズマガンを用いることが望ましい。圧力勾配型プラズマガン204は、Ta製のパイプ207とLaB6製の円盤208とで構成された複合陰極であり、Ta製のパイプ207の内部にArガス18を導入した際に加熱されたTa、LaB6から熱電子が放出され、プラズマビーム209を形成する。圧力勾配型プラズマガン204の内部は、真空チャンバー203より常に圧力が高く保たれており、高温に曝されたTaやLaB6が酸素などの反応性ガスによって劣化することを防ぐ構造になっている。
【0044】
基板支持ホルダー206は、モーターにより回転する機構になっている。また、基板支持ホルダー206の上部には、基板加熱用ヒーター210と温度計211が配置されている。基板加熱用ヒーター210は、成膜する基板202を所定温度に保持するために設けられるもので、温度計211の測定値をもとに基板加熱ヒーター210の出力を制御している。また、真空チャンバー203の側壁にはガス供給ノズル212が配置されており、このガス供給ノズル212には、マスフローコントローラを介して酸素ガス213が必要に応じて供給される。また、真空チャンバー203はコンダクタンスバルブ214を介して真空排気装置215に接続されており、真空チャンバー203に取り付けられた真空計216の測定値をもとに、コンダクタンスバルブ214の開度を調整して真空チャンバー3内が所定の圧力(真空度)に維持されるようになっている。
【0045】
図2に示す成膜装置を用いて、次の手順で本発明に関わるITO透明導電膜201を成膜する。
【0046】
カーボンで製造されたルツボ205に、粒状のITO原料217を充填し、このルツボ205を真空チャンバー203の底部にセットする。ITO蒸発原料217は、ルツボに入れるため粒状であることが好ましいが、その形状を特に限定するものではない。
【0047】
ITO透明導電膜を成膜する基板202は基板支持ホルダー206に取り付け、真空チャンバー203内を約2×10-4Paに排気する。この際、基板202を所定の温度に加熱して、表面に吸着したガスや内部から放出されるガスを除去する。排気後、マスフローコントローラーを用いて流量を制御(10〜40sccm)した放電用Arガス218を、圧力勾配型プラズマガン204を通して真空チャンバー203内に供給する。
【0048】
次に、酸素ガス213をガス供給ノズル212から真空チャンバー203内に所定量供給するとともに、真空排気装置215と真空チャンバー203との間に配置されたコンダクタンスバルブ214の開口の程度を調整して、真空チャンバー203内を所定の圧力に調整する。酸素ガスの流量は、成膜速度、圧力勾配型プラズマガン204の出力、真空度、基板の温度、および放電圧力によって最適値を選ぶ。
【0049】
次に、圧力勾配型プラズマガン204を作動させ、プラズマビーム209をルツボ205内のITO蒸発原料217に収束させ、原料が蒸発する温度に蒸発原料217を加熱する。プラズマビーム209をルツボ205中の蒸発原料217に集束させるために、集束コイル219や磁石220などを使用する。
【0050】
プラズマビーム209によって加熱・蒸発したITO原料217と導入された酸素ガス213は、プラズマ雰囲気221によってイオン化される。イオン化したこれらの物質は、雰囲気中のプラズマのもつプラズマポテンシャルと、基板202のもつフローティングポテンシャルとの電位差によって基板202に向かって加速され、粒子は約20eVという大きなエネルギーをもって基板202の下表面に到達・堆積し、低抵抗で緻密な本発明のITO透明導電膜201が成膜される。
【0051】
図3の対向ターゲット式スパッタ装置としての特徴は、真空容器2内に間隔をおいて平行に対向配置された一対のターゲット301、301aと、これらターゲット301、301aのスパッタ面に対して垂直な方向に磁界を発生させる磁界発生手段310、310aと、前記ターゲット301、301aにより形成される空間305に面するようにターゲット301、301aの一側方に設けられ、且つ、表面に薄膜が被着される基板313を装着した基板ホルダー314とを備える対向ターゲット式スパッタ装置において、前記ターゲット301、301aの他側方には、前記空間305に面して該磁界空間5を略完全に遮蔽するように配置された補助ターゲット322と該補助ターゲット322のスパッタ面側にこれと間隔を保って設けられた網目状のグリッド電極323とを備えた補助スパッタ電極手段320が設けられている。
【0052】
また、スパッタ方法としての特徴は、真空容器302内に間隔をおいて平行に対向配置された一対のターゲット301、301aをスパッタし、該ターゲット301、301aから飛散するスパッタ粒子を、ターゲット301、301aの一側方に配置された基板313の表面に被着させるスパッタ方法において、前記ターゲット301、301aの他側方に陰極の電圧が印加される補助ターゲット322とグリッド電極323とをを配置し、該補助ターゲット322をスパッタすることにより、該補助ターゲット322から飛散するスパッタ粒子と共に、グリッド電極323を透過して該補助ターゲット322に到達した前記ターゲット301、301aのスパッタ粒子を、再スパッタして前記基板313表面に被着させることにある。
【0053】
この対向ターゲット式スパッタ装置及びスパッタ方法において、ターゲット301、301aがスパッタされると、該ターゲット301、301aよりスパッタ粒子が放出され、その一部は基板313方向に飛散して基板313表面に被着する。
【0054】
一方、基板313と反対方向に飛散する粒子は、グリッド電極323を透過して補助ターゲット322に到達するが、該補助ターゲット322においてもスパッタされることから、補助ターゲット322の粒子と共に、基板313に到達した前記スパッタ粒子は基板313方向に飛散され該基板313に被着し、薄膜が形成される。
【0055】
図4のマグネトロンスパッタ装置は、真空槽401からなり、この真空槽には、図示していないが、真空排気システム、基板搬送・搬出手段、スパッタガス供給源等が連通して設けられている。この真空槽401には、槽内に固定配置又は運動自在に配置された基板ホルダー402に支持される基板403と対向して、カソードとして機能するバッキングプレート404が設けられている。基板ホルダー402の背面には、図示していないが、基板温度を制御するためのヒータ等の加熱手段が設けられている。上記カソード404の基板側にはターゲット405が固定されており、また、カソード404の基板側と反対側には水路406が設けられ、カソードを水冷できるように構成されている。カソード404の背面には磁気回路407が設けられ、この磁気回路は、ポールピース407aに支持された永久磁石407bから構成され、カソードカバー408によって覆われている。この磁気回路407を構成する磁石407bは、マグネトロン放電における平行磁界を発生させるためのものであり、ターゲット405の表面の漏れ磁場が600G以上となるような平行磁界強度を有し、磁石407bとターゲット405との距離を変化させることにより調整される。
【0056】
真空槽401にはまた、プラズマ放電用電源として、カソード404(ターゲット405)には直流電界を印加するための直流電源409及びこの直流電界に重畳できるように高周波電界を印加するための13.56MHz以上の高周波電源410が接続されている。この直流電源409は、高周波電界の流入を防ぐためのLCフィルタ411を介して、また、高周波電源410は、マッチングボックス412、LCフィルター411を介して、カソードカバー408ひいてはカソード404に接続されている。この場合、直流電源409のみで放電させたときに40350V以下となるように、また、13.56MHz以上、好ましくは13.56〜40MHzの高周波電源を直流電源と重畳させることで250V以下になるように構成する。
【0057】
上記したように構成した本発明の装置を用いて成膜すれば、基板/ターゲットの大型化、高速成膜の要求に伴って投入パワーを増加しても、透明導電膜用ターゲットを用いて、直流電界による放電に高周波電界を電力を変えて重畳印加してスパッタした場合、スパッタ電圧の低圧化が可能となり、異常放電を発生することなく、低抵抗の透明導電膜を作製することが出来る。
【0058】
上記透明導電膜製造装置に配置したターゲットは、In−O、Sn−O、Zn−O、Cd−Sn−O、若しくはCd−In−Oを基本構成元素としてなる、又はこの基本元素にSn、Al、Zn、B及びSbから選ばれた少なくとも一種類のドナー元素を組み合わせてなる酸化物ターゲットである。このターゲットは酸化物の焼結体ターゲットでもよい。
【0059】
本発明の酸化物透明導電膜製造方法は、上記ターゲットを用いて、反応性スパッタ法により、真空槽401内に設けたターゲット405に対向して載置された基板403上に、磁気回路407でターゲット表面の漏れ磁場が600G以上の値の磁場強度を有するようにして、また、ターゲットに直流電界を印加するための直流電源409及びこの直流電界に重畳できるように高周波電界を印加するための13.56MHz以上の高周波電源410により、直流電源のみで放電させたときに350V以下となるようにかつ高周波電源を直流電源と重畳させることで250V以下になるようにして、さらに、上記重畳印加を高周波電源410を100Hzから300Hz未満までの逆数の周期で10%未満OFF状態としたパルス化に重畳して行って、In−O、Sn−O、Zn−O、Cd−Sn−O、又はCd−In−Oを基本構成元素としてなる、又はこの基本構成元素にSn、Al、Zn、B及びSbから選ばれた少なくとも一種類のドナー元素を組み合わせてなる酸化物透明導電膜を製造するものである。
【0060】
<バリア膜の製膜>
本発明で用いる少なくとも1層以上のセラミック膜を有するガスバリア性フィルムは、更に少なくとも1層以上のポリマー膜を有することが好ましい。またこのポリマー膜はセラミック膜との密着性の観点より、無機系のポリマー膜であることが好ましい。
【0061】
本発明のガスバリア性フィルムの製造方法においては、樹脂フィルム上に、セラミック膜及びポリマー膜を形成する方法としては、スプレー法、スピンコート法、スパッタリング法、イオンアシスト法、後述するプラズマCVD法、後述する大気圧または大気圧近傍の圧力下でのプラズマCVD法等を適用して形成することができる。
【0062】
しかしながら、スプレー法やスピンコート法等の湿式法では、分子レベル(nmレベル)の平滑性を得ることが難しく、また溶剤を使用するため、本発明で適用する樹脂フィルムにおいては、使用可能な基材または溶剤が限定されるという欠点がある。そこで、本発明においては、プラズマCVD法等で形成されたものであることが好ましく、特に大気圧プラズマCVD法は、減圧チャンバー等が不要で、高速製膜ができ生産性の高い製膜方法である点から好ましい。上記セラミック膜及びポリマー膜を大気圧プラズマCVD法で形成することにより、均一かつ表面の平滑性を有する膜を比較的容易に形成することが可能となるからである。尚、プラズマCVD法の各薄膜の形成条件の詳細については、後述する。
【0063】
上記のようなプラズマCVD法、あるいは大気圧プラズマCVD法による薄膜形成においては、薄膜形成ガスがは、主に、薄膜を形成するための原料ガス、該原料ガスを分解して薄膜形成化合物を得るための分解ガス及びプラズマ状態とするための放電ガスとから構成されている。
【0064】
本発明のガスバリア性フィルムの製造方法において、薄膜形成ガスを用い、所望の構成からなるバリア膜を形成する方法としては、特に制限はないが、最適な原材料を選択すると共に、原料ガス、分解ガス及び放電ガスの組成比、プラズマ放電発生装置への薄膜形成ガスの供給速度、あるいはプラズマ放電処理時の出力条件等を適宜選択することが好ましい。
【0065】
次いで、本発明に係るガスバリア性フィルムの構成要素に次いで説明する。
【0066】
《セラミック膜、ポリマー膜》
はじめに、本発明に係るセラミック膜及びポリマー膜について説明する。
【0067】
本発明に係るセラミック膜は、それぞれの薄膜が酸素及び水蒸気の透過を阻止する層であれば、その組成等は特に限定されるものではない。本発明に係るセラミック膜を構成する材料として具体的には、無機酸化物が好ましく、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化窒化珪素、酸化窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ等を挙げることができる。また、本発明におけるセラミック膜の厚さは、用いられる材料の種類、構成により最適条件が異なり、適宜選択されるが、1〜1000nmの範囲内であることが好ましい。セラミック膜の厚さが、上記の範囲より薄い場合には、均一な膜が得られず、ガスに対するバリア性を得ることが困難であるからである。また、セラミック膜の厚さが上記の範囲より厚い場合には、ガスバリア性フィルムにフレキシビリティを保持させることが困難であり、成膜後に折り曲げ、引っ張り等の外的要因により、ガスバリア性フィルムに亀裂が生じる等のおそれがあるからである。
【0068】
本発明に係るセラミック膜は、原材料をスプレー法、スピンコート法、スパッタリング法、イオンアシスト法、プラズマCVD法、大気圧または大気圧近傍の圧力下でのプラズマCVD法等を適用して形成することができるが、好ましくは大気圧プラズマCVD法で形成することが、均一かつ表面の平滑性を有する膜を比較的容易に形成することができる観点から好ましい。
【0069】
プラズマCVD法、大気圧または大気圧近傍の圧力下でのプラズマCVD法により得られるセラミック膜は、原材料(原料ともいう)である有機金属化合物、分解ガス、分解温度、投入電力などの条件を選ぶことで、金属炭化物、金属窒化物、金属酸化物、金属硫化物、金属ハロゲン化物、またこれらの混合物(金属酸窒化物、金属酸化ハロゲン化物、金属窒化炭化物など)も作り分けることができるため好ましい。
【0070】
例えば、珪素化合物を原料化合物として用い、分解ガスに酸素を用いれば、珪素酸化物が生成する。また、亜鉛化合物を原料化合物として用い、分解ガスに二硫化炭素を用いれば、硫化亜鉛が生成する。これはプラズマ空間内では非常に活性な荷電粒子・活性ラジカルが高密度で存在するため、プラズマ空間内では多段階の化学反応が非常に高速に促進され、プラズマ空間内に存在する元素は熱力学的に安定な化合物へと非常な短時間で変換されるためである。
【0071】
このような無機物の原料としては、典型または遷移金属元素を有していれば、常温常圧下で気体、液体、固体いずれの状態であっても構わない。気体の場合にはそのまま放電空間に導入できるが、液体、固体の場合は、加熱、バブリング、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用する。又、溶媒によって希釈して使用してもよく、溶媒は、メタノール、エタノール、n−ヘキサンなどの有機溶媒及びこれらの混合溶媒が使用できる。尚、これらの希釈溶媒は、プラズマ放電処理中において、分子状、原子状に分解されるため、影響は殆ど無視することができる。
【0072】
このような有機金属化合物としては、ケイ素化合物として、シラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(エチルアミノ)ジメチルシラン、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、ジエチルアミノトリメチルシラン、ジメチルアミノジメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ヘプタメチルジシラザン、ノナメチルトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、テトラキスジメチルアミノシラン、テトライソシアナートシラン、テトラメチルジシラザン、トリス(ジメチルアミノ)シラン、トリエトキシフルオロシラン、アリルジメチルシラン、アリルトリメチルシラン、ベンジルトリメチルシラン、ビス(トリメチルシリル)アセチレン、1,4−ビストリメチルシリル−1,3−ブタジイン、ジ−t−ブチルシラン、1,3−ジシラブタン、ビス(トリメチルシリル)メタン、シクロペンタジエニルトリメチルシラン、フェニルジメチルシラン、フェニルトリメチルシラン、プロパルギルトリメチルシラン、テトラメチルシラン、トリメチルシリルアセチレン、1−(トリメチルシリル)−1−プロピン、トリス(トリメチルシリル)メタン、トリス(トリメチルシリル)シラン、ビニルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、Mシリケート51等が挙げられる。
【0073】
チタン化合物としては、例えば、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンイソプロポキシド、チタンテトライソポロポキシド、チタンn−ブトキシド、チタンジイソプロポキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンジイソプロポキシド(ビス−2,4−エチルアセトアセテート)、チタンジ−n−ブトキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンアセチルアセトネート、ブチルチタネートダイマー等が挙げられる。
【0074】
ジルコニウム化合物としては、ジルコニウムn−プロポキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、ジルコニウムt−ブトキシド、ジルコニウムトリ−n−ブトキシドアセチルアセトネート、ジルコニウムジ−n−ブトキシドビスアセチルアセトネート、ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムヘキサフルオロペンタンジオネート等が挙げられる。
【0075】
アルミニウム化合物としては、アルミニウムエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムn−ブトキシド、アルミニウムs−ブトキシド、アルミニウムt−ブトキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、トリエチルジアルミニウムトリ−s−ブトキシド等が挙げられる。
【0076】
硼素化合物としては、ジボラン、テトラボラン、フッ化硼素、塩化硼素、臭化硼素、ボラン−ジエチルエーテル錯体、ボラン−THF錯体、ボラン−ジメチルスルフィド錯体、三フッ化硼素ジエチルエーテル錯体、トリエチルボラン、トリメトキシボラン、トリエトキシボラン、トリ(イソプロポキシ)ボラン、ボラゾール、トリメチルボラゾール、トリエチルボラゾール、トリイソプロピルボラゾール、等が挙げられる。
【0077】
錫化合物としては、テトラエチル錫、テトラメチル錫、二酢酸ジ−n−ブチル錫、テトラブチル錫、テトラオクチル錫、テトラエトキシ錫、メチルトリエトキシ錫、ジエチルジエトキシ錫、トリイソプロピルエトキシ錫、ジエチル錫、ジメチル錫、ジイソプロピル錫、ジブチル錫、ジエトキシ錫、ジメトキシ錫、ジイソプロポキシ錫、ジブトキシ錫、錫ジブチラート、錫ジアセトアセトナート、エチル錫アセトアセトナート、エトキシ錫アセトアセトナート、ジメチル錫ジアセトアセトナート等、錫水素化合物等、ハロゲン化錫としては、二塩化錫、四塩化錫等が挙げられる。
【0078】
また、その他の有機金属化合物としては、例えば、アンチモンエトキシド、ヒ素トリエトキシド、バリウム2,2,6,6−テトラメチルヘプタンジオネート、ベリリウムアセチルアセトナート、ビスマスヘキサフルオロペンタンジオネート、ジメチルカドミウム、カルシウム2,2,6,6−テトラメチルヘプタンジオネート、クロムトリフルオロペンタンジオネート、コバルトアセチルアセトナート、銅ヘキサフルオロペンタンジオネート、マグネシウムヘキサフルオロペンタンジオネート−ジメチルエーテル錯体、ガリウムエトキシド、テトラエトキシゲルマン、テトラメトキシゲルマン、ハフニウムt−ブドキシド、ハフニウムエトキシド、インジウムアセチルアセトナート、インジウム2,6−ジメチルアミノヘプタンジオネート、フェロセン、ランタンイソプロポキシド、酢酸鉛、テトラエチル鉛、ネオジウムアセチルアセトナート、白金ヘキサフルオロペンタンジオネート、トリメチルシクロペンタジエニル白金、ロジウムジカルボニルアセチルアセトナート、ストロンチウム2,2,6,6−テトラメチルヘプタンジオネート、タンタルメトキシド、タンタルトリフルオロエトキシド、テルルエトキシド、タングステンエトキシド、バナジウムトリイソプロポキシドオキシド、マグネシウムヘキサフルオロアセチルアセトナート、亜鉛アセチルアセトナート、ジエチル亜鉛、などが挙げられる。
【0079】
また、これらの金属を含む原料ガスを分解して無機化合物を得るための分解ガスとしては、水素ガス、メタンガス、アセチレンガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、窒素ガス、アンモニアガス、亜酸化窒素ガス、酸化窒素ガス、二酸化窒素ガス、酸素ガス、水蒸気、フッ素ガス、フッ化水素、トリフルオロアルコール、トリフルオロトルエン、硫化水素、二酸化硫黄、二硫化炭素、塩素ガスなどが挙げられる。
【0080】
金属元素を含む原料ガスと、分解ガスを適宜選択することで、各種の金属炭化物、金属窒化物、金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属硫化物を得ることができる。
【0081】
また、これらの金属を含む原料ガスを分解して無機化合物を得るための分解ガスとしては、水素ガス、メタンガス、アセチレンガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、窒素ガス、アンモニアガス、亜酸化窒素ガス、酸化窒素ガス、二酸化窒素ガス、酸素ガス、水蒸気、フッ素ガス、フッ化水素、トリフルオロアルコール、トリフルオロトルエン、硫化水素、二酸化硫黄、二硫化炭素、塩素ガス、などが挙げられる。
【0082】
金属元素を含む原料ガスと、分解ガスを適宜選択することで、各種の金属炭化物、金属窒化物、金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属硫化物を得ることができる。
【0083】
これらの反応性ガスに対して、主にプラズマ状態になりやすい放電ガスを混合し、プラズマ放電発生装置にガスを送りこむ。このような放電ガスとしては、窒素ガスおよび/または周期表の第18属原子、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が用いられる。これらの中でも特に、窒素、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられる。
【0084】
上記放電ガスと反応性ガスを混合し、混合ガスとしてプラズマ放電発生装置(プラズマ発生装置)に供給することで膜形成を行う。放電ガスと反応性ガスの割合は、得ようとする膜の性質によって異なるが、混合ガス全体に対し、放電ガスの割合を50%以上として反応性ガスを供給する。
【0085】
本発明に係るセラミック膜においては、セラミック膜ガ含有する無機化合物が、酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化珪素、酸化アルミナ及びそれらの混合物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、特に水分の透過性、光線透過性及び後述する大気圧プラズマCVD適性の観点から、酸化珪素であることが好ましい。
【0086】
本発明に係る無機化合物は、例えば、上記有機珪素化合物に、更に酸素ガスや窒素ガスを所定割合で組み合わせて、O原子とN原子の少なくともいずれかと、Si原子とを含む膜を得ることができる。
【0087】
よって、本発明に係るセラミック膜は、透明であることが好ましい。上記セラミック膜が透明であることにより、ガスバリア性フィルムを透明なものとすることが可能となり、有機EL素子の透明基板等の用途にも使用することが可能となるからである。
【0088】
本発明に係わるポリマー膜は、上記セラミック膜の密度を低下させた膜を用いることによっても可能であり、また有機金属化合物を原料とする場合には、該セラミック膜に対し膜中のカーボン濃度を増大させた膜を用いることによっても可能である。具体的は、製膜速度製膜時の基材温度またはプラズマを生成させる高周波電力等を調整することで達成させる。
【0089】
また有機系のポリマー膜を用いる場合には、原料成分である有機化合物としては、公知の有機化合物を用いることができるが、その中でも、分子内に少なくとも1つ以上の不飽和結合または環状構造を有する有機化合物が好ましく用いることができ、特に(メタ)アクリル化合物、エポキシ化合物、またはオキセタン化合物のモノマーまたはオリゴマーが好ましく用いることができる。
【0090】
本発明に係る不飽和結合を有する有機化合物としては、例えば、ビニルエステル類として、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、バレリアン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、エナント酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル等、ビニルエーテル類として、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル等、スチレン類として、スチレン、4−〔(2−ブトキシエトキシ)メチル〕スチレン、4−ブトキシメトキシスチレン、4−ブチルスチレン、4−デシルスチレン、4−(2−エトキシメチル)スチレン、4−(1−エチルヘキシルオキシメチル)スチレン、4−ヒドロキシメチルスチレン、4−ヘキシルスチレン、4−ノニルスチレン、4−オクチルオキシメチルスチレン、2−オクチルスチレン、4−オクチルスチレン、4−プロポキシメチルスチレン、マレイン酸類として、ジメチルマレイン酸、ジエチルマレイン酸、ジプロピルマレイン酸、ジブチルマレイン酸、ジシクロヘキシルマレイン酸、ジ−2−エチルヘキシルマレイン酸、ジノニルマレイン酸、ジベンジルマレイン酸等を挙げることが出来るが、これらに限定されない。
【0091】
本発明で有用な(メタ)アクリル化合物としては、特に限定は無いが、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、グリセロールアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシヘキサノリドアクリレート、1,3−ジオキサンアルコールのε−カプロラクトン付加物のアクリレート、1,3−ジオキソランアクリレート等の単官能アクリル酸エステル類、或いはこれらのアクリレートをメタクリレートに代えたメタクリル酸エステル、例えば、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングルコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ハイドロキノンジアクリレート、レゾルシンジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのジアクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートのジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物のジアクリレート、2−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−5−ヒドロキシメチル−5−エチル−1,3−ジオキサンジアクリレート、トリシクロデカンジメチロールアクリレート、トリシクロデカンジメチロールアクリレートのε−カプロラクトン付加物、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテルのジアクリレート等の2官能アクリル酸エステル類、或いはこれらのアクリレートをメタクリレートに代えたメタクリル酸エステル、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのε−カプロラクトン付加物、ピロガロールトリアクリレート、プロピオン酸・ジペンタエリスリトールトリアクリレート、プロピオン酸・ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ヒドロキシピバリルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリアクリレート等の多官能アクリル酸エステル酸、或いはこれらのアクリレートをメタクリレートに代えたメタクリル酸等を挙げることができる。
【0092】
本発明に有用なエポキシ化合物は、特には限定されないが、芳香族エポキシドとして好ましいものは、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジまたはポリグリシジルエーテルであり、例えばビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、並びにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。また、脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセンまたはシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイドまたはシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましい。脂肪族エポキシドの好ましいものとしては、脂肪族多価アルコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテルまたは1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリンあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられ、2種以上組み合わせて使用することが出来る。
【0093】
本発明で有用なオキセタン化合物としては、特には限定されないが、3−ヒドロキシメチル−3−メチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−プロピルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−ノルマルブチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−フェニルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−ベンジルオキセタン、3−ヒドロキシエチル−3−メチルオキセタン、3−ヒドロキシエチル−3−エチルオキセタン、3−ヒドロキシエチル−3−プロピルオキセタン、3−ヒドロキシエチル−3−フェニルオキセタン、3−ヒドロキシプロピル−3−メチルオキセタン、3−ヒドロキシプロピル−3−エチルオキセタン、3−ヒドロキシプロピル−3−プロピルオキセタン、3−ヒドロキシプロピル−3−フェニルオキセタン、3−ヒドロキシブチル3−メチルオキセタンなどを挙げることができる。これらの化合物のうち、入手の容易性などの点から、オキセタンモノアルコール化合物として、3−ヒドロキシメチル−3−メチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタンが好ましい。
【0094】
そしてこれらの重合膜を重合し、ポリマー膜とする方法としては、紫外線照射や電子線照射を用いることができるが、前記セラミック膜を形成するに用いたプラズマ装置を用いたプラズマ重合法は、高速に重合することができ有用である。
【0095】
炭化水素としては、例えば、エタン、エチレン、メタン、アセチレン、シクロヘキサン、ベンゼン、キシレン、フェニルアセチレン、ナフタレン、プロピレン、カンフォー、メントール、トルエン、イソブチレン等を挙げることができる。
【0096】
含ハロゲン化合物としては、四フッ化メタン、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン、フロロアルキルメタクリレート等を挙げることが出来る。
【0097】
含窒素化合物としては、例えば、ピリジン、アリルアミン、ブチルアミン、アクリロニトリル、アセトニトリル、ベンゾニトリル、メタクリロニトリル、アミノベンゼン等を挙げることが出来る。
【0098】
特に大気圧プラズマ空間に導入する薄膜形成ガスの内、放電ガスとは、プラズマ放電を起こすことの出来るガスであり、それ自身がエネルギーを授受する媒体として働くガスで、プラズマ放電を発生させるに必要なガスである。放電ガスとしては、窒素、希ガス、空気などがあり、これらを単独で放電ガスとして用いても、混合して用いても構わない。希ガスとしては、周期表の第18属元素、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等を挙げることが出来る。本発明において、放電ガスとしては窒素、アルゴン、ヘリウムが好ましく、更に好ましくは窒素である。放電ガス量は、放電空間内に供給する薄膜形成ガス量に対して70〜99.99体積%含有することが好ましい。
【0099】
添加ガスとは、反応や膜質を制御するために導入される。添加ガスとしては、水素、酸素、窒素酸化物、アンモニア、炭化水素類、アルコール類、有機酸類または水分を該ガスに対して0.001体積%〜30体積%混合させて使用してもよく、中でも炭化水素類、アルコール類、有機酸類が本発明においては好ましく用いられる。炭化水素類としては、特に限定は無いが、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカンなどが挙げることができ、特にメタンが好ましく用いることができる。アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノールなどを挙げることができる。有機酸類としては、ギ酸、酢酸、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸などを挙げることができる。
【0100】
《透明樹脂フィルム》
本発明係るガスバリア性フィルムで用いられる透明樹脂フィルムは、上述したバリア性を有するガスバリア層を保持することができる透明樹脂フィルムであれば特に限定されるものではない。
【0101】
具体的には、エチレン、ポリプロピレン、ブテン等の単独重合体または共重合体または共重合体等のポリオレフィン(PO)樹脂、環状ポリオレフィン等の非晶質ポリオレフィン樹脂(APO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン2,6−ナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド系(PA)樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等のポリビニルアルコール系樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリサルホン(PS)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリビニルブチラート(PVB)樹脂、ポリアリレート(PAR)樹脂、エチレン−四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、三フッ化塩化エチレン(PFA)、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(FEP)、フッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニル(PVF)、パーフルオロエチレン−パーフロロプロピレン−パーフロロビニルエーテル−共重合体(EPA)等のフッ素系樹脂等を用いることができる。
【0102】
また、上記に挙げた樹脂以外にも、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物によりなる樹脂組成物や、上記アクリルレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物よりなる樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート等のオリゴマーを多官能アクリレートモノマーに溶解せしめた樹脂組成物等の光硬化性樹脂およびこれらの混合物等を用いることも可能である。さらに、これらの樹脂の1または2種以上をラミネート、コーティング等の手段によって積層させたものを透明樹脂フィルムとして用いることも可能である。
【0103】
これらの素材は単独であるいは適宜混合されて使用することもできる。中でもゼオネックスやゼオノア(日本ゼオン(株)製)、非晶質シクロポリオレフィン樹脂フィルムのARTON(ジェイエスアール(株)製)、ポリカーボネートフィルムのピュアエース(帝人(株)製)、セルローストリアセテートフィルムのコニカタックKC4UX、KC8UX(コニカミノルタオプト(株)製)などの市販品を好ましく使用することができる。
【0104】
また、上記に挙げた透明樹脂フィルムは、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。
【0105】
本発明に係る透明樹脂フィルムは、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の基材を製造することができる。また、未延伸の基材を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、基材の流れ(縦軸)方向、または基材の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸基材を製造することができる。この場合の延伸倍率は、基材の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向および横軸方向にそれぞれ2〜10倍が好ましい。
【0106】
また、本発明に係る透明樹脂フィルムにおいては、蒸着膜を形成する前にコロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、グロー放電処理、粗面化処理、薬品処理などの表面処理を行ってもよい。
【0107】
さらに、本発明に係る透明樹脂フィルム表面には、蒸着膜との密着性の向上を目的としてアンカーコート剤層を形成してもよい。このアンカーコート剤層に用いられるアンカーコート剤としては、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂、およびアルキルチタネート等を、1または2種以上併せて使用することができる。これらのアンカーコート剤には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記のアンカーコート剤は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法により透明樹脂フィルム上にコーティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥除去することによりアンカーコーティングすることができる。上記のアンカーコート剤の塗布量としては、0.1〜5g/m2(乾燥状態)程度が好ましい。
【0108】
透明樹脂フィルムは、ロール状に巻き上げられた長尺品が便利である。透明樹脂フィルムの厚さは、得られるガスバリア性フィルムの用途によって異なるので一概には規定できないが、ガスバリア性フィルムを包装用途とする場合には、特に制限を受けるものではなく、包装材料としての適性から、3〜400μm、中でも6〜30μmの範囲内とすることが好ましい。
【0109】
また、本発明に用いられる透明樹脂フィルムは、フィルム形状のものの膜厚としては10〜200μmが好ましく、より好ましくは50〜100μmである。
【0110】
本発明のガスバリア性フィルムの水蒸気透過率としては、有機ELディスプレイや高精彩カラー液晶ディスプレイ等の高度の水蒸気バリア性を必要とする用途に用いる場合、JIS K7129 B法に従って測定した水蒸気透過率が、1×10-3g/m2/day以下であることが好ましく、さらに有機ELディスプレイ用途の場合、極わずかであっても、成長するダークスポットが発生し、ディスプレイの表示寿命が極端に短くなる場合があるため、水蒸気透過率が、1×10-5g/m2/day未満であることが好ましい。
【0111】
《プラズマCVD法》
次いで、本発明の透明ガスバリア性フィルムの製造方法としては、本発明に係るセラミック膜及びポリマー膜の形成に好適に用いることのできるプラズマCVD法及び大気圧プラズマCVD法について、更に詳細に説明する。
【0112】
本発明に係るプラズマCVD法について説明する。
【0113】
プラズマCVD法は、プラズマ助成式化学的気相成長法、PECVD法とも称され、各種の無機物を、立体的な形状でも被覆性・密着性良く、且つ、樹脂フィルム温度をあまり高くすることなしに製膜することができる手法である。
【0114】
通常のCVD法(化学的気相成長法)では、揮発・昇華した有機金属化合物が高温の樹脂フィルム表面に付着し、熱により分解反応が起き、熱的に安定な無機物の薄膜が生成されるというものである。このような通常のCVD法(熱CVD法とも称する)では、通常500℃以上の基板温度が必要であるため、プラスチック基材への製膜には使用することができない。
【0115】
一方、プラズマCVD法は、樹脂フィルム近傍の空間に電界を印加し、プラズマ状態となった気体が存在する空間(プラズマ空間)を発生させ、揮発・昇華した有機金属化合物がこのプラズマ空間に導入されて分解反応が起きた後に樹脂フィルム上に吹きつけられることにより、無機物の薄膜を形成するというものである。プラズマ空間内では、数%の高い割合の気体がイオンと電子に電離しており、ガスの温度は低く保たれるものの、電子温度は非常な高温のため、この高温の電子、あるいは低温ではあるがイオン・ラジカルなどの励起状態のガスと接するために無機膜の原料である有機金属化合物は低温でも分解することができる。したがって、無機物を製膜する樹脂フィルムについても低温化することができ、プラスチック基材上へも十分製膜することが可能な製膜方法である。
【0116】
しかしながら、プラズマCVD法においては、ガスに電界を印加して電離させ、プラズマ状態とする必要があるため、通常は、0.101kPa〜10.1kPa程度の減圧空間で製膜していたため、大面積のフィルムを製膜する際には設備が大きく操作が複雑であり、生産性の課題を抱えている方法である。
【0117】
これに対し、大気圧近傍でのプラズマCVD法では、真空下のプラズマCVD法に比べ、減圧にする必要がなく生産性が高いだけでなく、プラズマ密度が高密度であるために製膜速度が速く、更にはCVD法の通常の条件に比較して、大気圧下という高圧力条件では、ガスの平均自由工程が非常に短いため、極めて平坦な膜が得られ、そのような平坦な膜は、光学特性、ガスバリア性共に良好である。以上のことから、本発明においては、大気圧プラズマCVD法を適用することが、真空下のプラズマCVD法よりも好ましい。
【0118】
本発明のガスバリア性フィルムの製造方法においては、大気圧もしくはその近傍の圧力下、放電空間に薄膜形成ガスおよび放電ガスを含有するガスを供給し、該放電空間に高周波電界を印加することにより該ガスを励起し、基材を励起した該ガスに晒すことにより、該基材上に薄膜を形成する薄膜形成方法により、樹脂フィルム上に、セラミック膜及びポリマー膜の少なくとも1層を形成することが好ましく、更には、大気圧もしくはその近傍の圧力下、放電空間に薄膜形成ガスおよび放電ガスを含有するガスを供給し、該放電空間に高周波電界を印加することにより該ガスを励起し、基材を励起した該ガスに晒すことにより、該基材上に薄膜を形成する薄膜形成方法により、樹脂フィルム上に、セラミック膜及びポリマー膜の全ての層を形成することが好ましい。
【0119】
また、放電ガスを窒素ガスとし、放電空間に印加される高周波電界は、第1の高周波電界および第2の高周波電界を重畳したものであり、該第1の高周波電界の周波数ω1より該第2の高周波電界の周波数ω2が高く、該第1の高周波電界の強さV1、該第2の高周波電界の強さV2および放電開始電界の強さIVとの関係が、V1≧IV>V2またはV1>IV≧V2の関係を満たし、該第2の高周波電界の出力密度が1W/cm2以上であることが、本発明の目的効果をより奏する観点から好ましい。
【0120】
以下、大気圧或いは大気圧近傍でのプラズマCVD法を用いたガスバリア層を形成する装置について詳述する。
【0121】
本発明の透明ガスバリア性フィルムの製造方法において、セラミック膜及びポリマー膜の形成に使用されるプラズマ製膜装置の一例について、図5〜図8に基づいて説明する。図中、符号Fは樹脂フィルムの一例としての長尺フィルムである。
【0122】
図5は、本発明に有用なジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示した概略図である。
【0123】
ジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置は、プラズマ放電処理装置、二つの電源を有する電界印加手段の他に、図5では図示してない(後述の図8に図示してある)が、ガス供給手段、電極温度調節手段を有している装置である。
【0124】
プラズマ放電処理装置510は、第1電極511と第2電極512から構成されている対向電極を有しており、該対向電極間に、第1電極511からは第1電源521からの周波数ω1、電界強度V1、電流I1の第1の高周波電界が印加され、また第2電極512からは第2電源522からの周波数ω2、電界強度V2、電流I2の第2の高周波電界が印加されるようになっている。第1電源521は第2電源522より高い高周波電界強度(V1>V2)を印加出来、また第1電源521の第1の周波数ω1は第2電源522の第2の周波数ω2より低い周波数を印加できる。
【0125】
第1電極511と第1電源521との間には、第1フィルタ523が設置されており、第1電源521から第1電極511への電流を通過しやすくし、第2電源522からの電流をアースして、第2電源522から第1電源521への電流が通過しにくくなるように設計されている。
【0126】
また、第2電極512と第2電源522との間には、第2フィルター524が設置されており、第2電源522から第2電極への電流を通過しやすくし、第1電源521からの電流をアースして、第1電源521から第2電源への電流を通過しにくくするように設計されている。
【0127】
更に、本発明の大気圧プラズマ放電処理装置の第1電源は、第2電源より大きな高周波電圧を印加できる能力を有していることが好ましい。
【0128】
本発明における放電条件としては、対向する第1電極511と第2電極522との間に、高周波電圧を印加し、該高周波電圧が、第1の高周波電圧V1及び第2の高周波電圧V2を重畳したものであって、放電開始電圧をIVとしたとき、V1≧IV>V2、またはV1>IV≧V2を満たす。更に好ましくは、V1>IV>V2を満たすことである。
【0129】
ここで、本発明でいう高周波電圧(印加電圧)と放電開始電圧は、下記の方法で測定されたものをいう。
【0130】
高周波電圧V1及びV2(単位:kV/mm)の測定方法: 各電極部の高周波プローブ(P6015A)を設置し、該高周波プローブをオシロスコープ(Tektronix社製、TDS3012B)に接続し、電圧を測定する。
【0131】
放電開始電圧IV(単位:kV/mm)の測定方法: 電極間に放電ガスを供給し、放電が始まる電圧を放電開始電圧IVと定義する。測定器は上記高周波電圧測定と同じである。
【0132】
なお、上記測定に使用する高周波プローブ525、526とオシロスコープ527、528の位置関係については、図5に示してある。
【0133】
このような放電条件をとることにより、例えば、窒素ガスのような放電開始電圧が高くなる放電ガスであっても、放電が開始され、高密度で安定なプラズマ状態を維持することが出来、高性能な透明導電膜形成が行うことができるのである。
【0134】
上記の測定により放電ガスを窒素ガスとした場合、その放電開始電圧IVは3.7kV/mm程度であり、従って、上記の関係において、第1の高周波電圧を、V1≧3.7kV/mmとして印加することによって窒素ガスを励起し、プラズマ状態にすることができる。
【0135】
ここで、第1電源の周波数としては、200kHz以下が好ましく用いることができる。またこの電界波形としては、サイン波でもパルスでもよい。下限は1kHz程度が望ましい。
【0136】
一方、第2電源の周波数としては、800kHz以上が好ましく用いられる。この第2電源の周波数が高い程、プラズマ密度が高くなり、緻密で良質な透明導電膜が得られる。上限は200MHz程度が望ましい。
【0137】
このような二つの電源から高周波電圧を印加することは、第1の周波数ω1側によって高い放電開始電圧を有する放電ガスの放電を開始するのに必要であり、また第2の周波数ω2側はプラズマ密度を高くして緻密で良質なガスバリア層を形成するのに必要であるということが本発明の重要な点である。
【0138】
第1電極511と第2電極512との対向電極間(放電空間)513に、後述の図6に図示してあるようなガス供給手段からガスGを導入し、第1電極511と第2電極512から高周波電界を印加して放電を発生させ、ガスGをプラズマ状態にしながら対向電極の下側(紙面下側)にジェット状に吹き出させて、対向電極下面と樹脂フィルムFとで作る処理空間をプラズマ状態のガスG°で満たし、図示してない樹脂フィルムの元巻き(アンワインダー)から巻きほぐされて搬送して来るか、あるいは前工程から搬送して来る樹脂フィルムFの上に、処理位置514付近で薄膜を形成させる。薄膜形成中、後述の図6に図示してあるような電極温度調節手段から媒体が配管を通って電極を加熱または冷却する。プラズマ放電処理の際の樹脂フィルムの温度によっては、得られる薄膜の物性や組成等は変化することがあり、これに対して適宜制御することが望ましい。温度調節の媒体としては、蒸留水、油等の絶縁性材料が好ましく用いられる。プラズマ放電処理の際、幅手方向あるいは長手方向での樹脂フィルムの温度ムラができるだけ生じないように電極の内部の温度を均等に調節することが望まれる。
【0139】
ジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置を複数基接して直列に並べて同時に同じプラズマ状態のガスを放電させることができるので、何回も処理され高速で処理することもできる。また各装置が異なったプラズマ状態のガスをジェット噴射すれば、異なった層の積層薄膜を形成することもできる。
【0140】
図6は、本発明に好ましく用いられる平板電極型の大気圧プラズマ処理装置の他の一例を示す概略構成図である。移動架台電極(第1電極)508と角形電極(第2電極)511、512により対向電極(放電空間)が形成され、該電極間に高周波電界が印加され、放電ガス及び薄膜形成ガスを含有するガスGがガス供給管を通して供給され、角形電極511、512間に形成されたスリット513を通り放電空間に流出し、ガスGを放電プラズマにより励起し、移動架台電極8上に置かれた基材Fの表面を励起されたガスG′に晒すことにより、基材表面に薄膜が形成される。
【0141】
図7は、本発明に有用な対向電極間で樹脂フィルムを処理する方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【0142】
本発明に係る大気圧プラズマ放電処理装置は、少なくとも、プラズマ放電処理装置530、二つの電源を有する電界印加手段540、ガス供給手段550、電極温度調節手段560を有している装置である。
【0143】
図7は、ロール回転電極(第1電極)535と角筒型固定電極群(第2電極)536との対向電極間(放電空間)532で、樹脂フィルムFをプラズマ放電処理して薄膜を形成するものである。図8においては、1対の角筒型固定電極群(第2電極)536とロール回転電極(第1電極)535とで、1つの電界を形成し、この1ユニットで、例えば、低密度層の形成を行う。図8においては、この様な構成からなるユニットを、計5カ所備えた構成例を示しあり、それぞれのユニットで、供給する原材料の種類、出力電圧等を任意に独立して制御することにより、本発明で規定する構成からなる積層型の透明ガスバリア層を連続して形成することができる。
【0144】
ロール回転電極(第1電極)535と角筒型固定電極群(第2電極)536との間の放電空間(対向電極間)532に、ロール回転電極(第1電極)535には第1電源541から周波数ω1、電界強度V1、電流I1の第1の高周波電界を、また角筒型固定電極群(第2電極)536にはそれぞれに対応する各第2電源542から周波数ω2、電界強度V2、電流I2の第2の高周波電界をかけるようになっている。
【0145】
ロール回転電極(第1電極)535と第1電源541との間には、第1フィルタ543が設置されており、第1フィルタ543は第1電源541から第1電極への電流を通過しやすくし、第2電源542からの電流をアースして、第2電源542から第1電源への電流を通過しにくくするように設計されている。また、角筒型固定電極群(第2電極)536と第2電源542との間には、それぞれ第2フィルタ544が設置されており、第2フィルター544は、第2電源542から第2電極への電流を通過しやすくし、第1電源541からの電流をアースして、第1電源541から第2電源への電流を通過しにくくするように設計されている。
【0146】
なお、本発明においては、ロール回転電極535を第2電極、また角筒型固定電極群536を第1電極としてもよい。何れにしろ第1電極には第1電源が、また第2電極には第2電源が接続される。第1電源は第2電源より高い高周波電界強度(V1>V2)を印加することが好ましい。また、周波数はω1<ω2となる能力を有している。
【0147】
また、電流はI1<I2となることが好ましい。第1の高周波電界の電流I1は、好ましくは0.3mA/cm2〜20mA/cm2、さらに好ましくは1.0mA/cm2〜20mA/cm2である。また、第2の高周波電界の電流I2は、好ましくは10mA/cm2〜100mA/cm2、さらに好ましくは20mA/cm2〜100mA/cm2である。
【0148】
ガス供給手段50のガス発生装置51で発生させたガスGは、流量を制御して給気口よりプラズマ放電処理容器531内に導入する。
【0149】
樹脂フィルムFを、図示されていない元巻きから巻きほぐして搬送されて来るか、または前工程から搬送されて来て、ガイドロール564を経てニップロール565で樹脂フィルムに同伴されて来る空気等を遮断し、ロール回転電極535に接触したまま巻き回しながら角筒型固定電極群536との間に移送し、ロール回転電極(第1電極)535と角筒型固定電極群(第2電極)536との両方から電界をかけ、対向電極間(放電空間)532で放電プラズマを発生させる。樹脂フィルムFはロール回転電極535に接触したまま巻き回されながらプラズマ状態のガスにより薄膜を形成する。樹脂フィルムFは、ニップロール566、ガイドロール567を経て、図示してない巻き取り機で巻き取るか、次工程に移送する。
【0150】
放電処理済みの処理排ガスG′は排気口553より排出する。
【0151】
薄膜形成中、ロール回転電極(第1電極)535及び角筒型固定電極群(第2電極)536を加熱または冷却するために、電極温度調節手段560で温度を調節した媒体を、送液ポンプPで配管561を経て両電極に送り、電極内側から温度を調節する。なお、568及び569はプラズマ放電処理容器531と外界とを仕切る仕切板である。
【0152】
図8は、図7に示したロール回転電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【0153】
図8において、ロール電極535aは導電性の金属質母材535Aとその上に誘電体535Bが被覆されたものである。プラズマ放電処理中の電極表面温度を制御するため、温度調節用の媒体(水もしくはシリコンオイル等)が循環できる構造となっている。
【0154】
図9、角筒型電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【0155】
図9において、角筒型電極536aは、導電性の金属質母材536Aに対し、図8同様の誘電体536Bの被覆を有しており、該電極の構造は金属質のパイプになっていて、それがジャケットとなり、放電中の温度調節が行えるようになっている。
【0156】
なお、角筒型固定電極の数は、上記ロール電極の円周より大きな円周上に沿って複数本設置されていおり、該電極の放電面積はロール回転電極535に対向している全角筒型固定電極面の面積の和で表される。
【0157】
図9に示した角筒型電極536aは、円筒型電極でもよいが、角筒型電極は円筒型電極に比べて、放電範囲(放電面積)を広げる効果があるので、本発明に好ましく用いられる。
【0158】
図8及び図9において、ロール電極535a及び角筒型電極536aは、それぞれ導電性の金属質母材535A及び536Aの上に誘電体535B及び536Bとしてのセラミックスを溶射後、無機化合物の封孔材料を用いて封孔処理したものである。セラミックス誘電体は片肉で1mm程度被覆あればよい。溶射に用いるセラミックス材としては、アルミナ・窒化珪素等が好ましく用いられるが、この中でもアルミナが加工し易いので、特に好ましく用いられる。また、誘電体層が、ライニングにより無機材料を設けたライニング処理誘電体であってもよい。
【0159】
導電性の金属質母材535A及び536Aとしては、チタン金属またはチタン合金、銀、白金、ステンレススティール、アルミニウム、鉄等の金属等や、鉄とセラミックスとの複合材料またはアルミニウムとセラミックスとの複合材料を挙げることができるが、後述の理由からはチタン金属またはチタン合金が特に好ましい。
【0160】
対向する第1電極および第2の電極の電極間距離は、電極の一方に誘電体を設けた場合、該誘電体表面ともう一方の電極の導電性の金属質母材表面との最短距離のことを言う。双方の電極に誘電体を設けた場合、誘電体表面同士の距離の最短距離のことを言う。電極間距離は、導電性の金属質母材に設けた誘電体の厚さ、印加電界強度の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定されるが、いずれの場合も均一な放電を行う観点から0.1〜20mmが好ましく、特に好ましくは0.5〜2mmである。
【0161】
本発明に有用な導電性の金属質母材及び誘電体についての詳細については後述する。
【0162】
プラズマ放電処理容器531はパイレックス(登録商標)ガラス製の処理容器等が好ましく用いられるが、電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能である。例えば、アルミニウムまたは、ステンレススティールのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けても良く、該金属フレームにセラミックス溶射を行い絶縁性をとってもよい。図8において、平行した両電極の両側面(樹脂フィルム面近くまで)を上記のような材質の物で覆うことが好ましい。
【0163】
本発明の大気圧プラズマ放電処理装置に設置する第1電源(高周波電源)としては、
印加電源記号 メーカー 周波数 製品名
A1 神鋼電機 3kHz SPG3−4500
A2 神鋼電機 5kHz SPG5−4500
A3 春日電機 15kHz AGI−023
A4 神鋼電機 50kHz SPG50−4500
A5 ハイデン研究所 100kHz* PHF−6k
A6 パール工業 200kHz CF−2000−200k
A7 パール工業 400kHz CF−2000−400k
等の市販のものを挙げることが出来、何れも使用することができる。
【0164】
また、第2電源(高周波電源)としては、
印加電源記号 メーカー 周波数 製品名
B1 パール工業 800kHz CF−2000−800k
B2 パール工業 2MHz CF−2000−2M
B3 パール工業 13.56MHz CF−5000−13M
B4 パール工業 27MHz CF−2000−27M
B5 パール工業 150MHz CF−2000−150M
等の市販のものを挙げることが出来、何れも好ましく使用できる。
【0165】
なお、上記電源のうち、*印はハイデン研究所インパルス高周波電源(連続モードで100kHz)である。それ以外は連続サイン波のみ印加可能な高周波電源である。
【0166】
本発明においては、このような電界を印加して、均一で安定な放電状態を保つことができる電極を大気圧プラズマ放電処理装置に採用することが好ましい。
【0167】
本発明において、対向する電極間に印加する電力は、第2電極(第2の高周波電界)に1W/cm2以上の電力(出力密度)を供給し、放電ガスを励起してプラズマを発生させ、エネルギーを薄膜形成ガスに与え、薄膜を形成する。第2電極に供給する電力の上限値としては、好ましくは50W/cm2、より好ましくは20W/cm2である。下限値は、好ましくは1.2W/cm2である。なお、放電面積(cm2)は、電極において放電が起こる範囲の面積のことを指す。
【0168】
また、第1電極(第1の高周波電界)にも、1W/cm2以上の電力(出力密度)を供給することにより、第2の高周波電界の均一性を維持したまま、出力密度を向上させることができる。これにより、更なる均一高密度プラズマを生成出来、更なる製膜速度の向上と膜質の向上が両立できる。好ましくは5W/cm2以上である。第1電極に供給する電力の上限値は、好ましくは50W/cm2である。
【0169】
ここで高周波電界の波形としては、特に限定されない。連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードと、パルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モード等があり、そのどちらを採用してもよいが、少なくとも第2電極側(第2の高周波電界)は連続サイン波の方がより緻密で良質な膜が得られるので好ましい。
【0170】
また、本発明で膜質をコントロールする際には、第2電源側の電力を制御することによっても達成できる。
【0171】
このような大気圧プラズマによる薄膜形成法に使用する電極は、構造的にも、性能的にも過酷な条件に耐えられるものでなければならない。このような電極としては、金属質母材上に誘電体を被覆したものであることが好ましい。
【0172】
本発明に使用する誘電体被覆電極においては、様々な金属質母材と誘電体との間に特性が合うものが好ましく、その一つの特性として、金属質母材と誘電体との線熱膨張係数の差が10×10-6/℃以下となる組み合わせのものである。好ましくは8×10-6/℃以下、更に好ましくは5×10-6/℃以下、更に好ましくは2×10-6/℃以下である。なお、線熱膨張係数とは、周知の材料特有の物性値である。
【0173】
線熱膨張係数の差が、この範囲にある導電性の金属質母材と誘電体との組み合わせとしては、
1:金属質母材が純チタンまたはチタン合金で、誘電体がセラミックス溶射被膜
2:金属質母材が純チタンまたはチタン合金で、誘電体がガラスライニング
3:金属質母材がステンレススティールで、誘電体がセラミックス溶射被膜
4:金属質母材がステンレススティールで、誘電体がガラスライニング
5:金属質母材がセラミックスおよび鉄の複合材料で、誘電体がセラミックス溶射被膜
6:金属質母材がセラミックスおよび鉄の複合材料で、誘電体がガラスライニング
7:金属質母材がセラミックスおよびアルミの複合材料で、誘電体がセラミックス溶射皮膜
8:金属質母材がセラミックスおよびアルミの複合材料で、誘電体がガラスライニング
等がある。線熱膨張係数の差という観点では、上記1項または2項および5〜8項が好ましく、特に1項が好ましい。
【0174】
本発明において、金属質母材は、上記の特性からはチタンまたはチタン合金が特に有用である。金属質母材をチタンまたはチタン合金とすることにより、誘電体を上記とすることにより、使用中の電極の劣化、特にひび割れ、剥がれ、脱落等がなく、過酷な条件での長時間の使用に耐えることができる。
【0175】
本発明に適用できる大気圧プラズマ放電処理装置としては、上記説明した以外に、例えば、特開2004−68143号公報、同2003−49272号公報、国際特許第02/48428号パンフレット等に記載されている大気圧プラズマ放電処理装置を挙げることができる。
【0176】
次いで、上記方法により作製した本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子用樹脂基材(以下、有機EL用樹脂基板ともいう)を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法について説明する。
【0177】
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法においては、上記の方法に従って作製した本発明の有機エレクトロルミネッセンス用樹脂基材上に、燐光発光有機エレクトロルミネッセンス材料と、その上に陰極となる金属膜を設けて封止して有機エレクトロルミネッセンス素子を製造することを特徴とする。
【0178】
以下、本発明に係る有機EL素子の構成層について詳細に説明する。
【0179】
本発明において、有機EL素子を構成する燐光発光有機エレクトロルミネッセンス材料(正孔輸送層、燐光発光層、正孔阻止層、電子輸送層、陽極バッファー層、陰極バッファー層)及び陰極の層構成の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0180】
(1)陽極を含む有機EL用樹脂基板/燐光発光層/電子輸送層/陰極
(2)陽極を含む有機EL用樹脂基板/正孔輸送層/燐光発光層/電子輸送層/陰極
(3)陽極を含む有機EL用樹脂基板/正孔輸送層/燐光発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極
(4)陽極を含む有機EL用樹脂基板/正孔輸送層/燐光発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
(5)陽極を含む有機EL用樹脂基板/陽極バッファー層/正孔輸送層/燐光発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極 (陽極)
前述の方法で作製された有機エレクトロルミネッセンス用樹脂基材の最表層に設けられた透明導電膜が陽極として作用する。
【0181】
有機EL素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられ、この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を60%以上とすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。さらに膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
【0182】
(陰極)
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光した光を透過させるため、有機EL素子の陽極または陰極のいずれか一方が、透明または半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
【0183】
また、陰極に上記金属を1〜20nmの膜厚で作製した後に、陽極の説明で挙げた導電性透明材料をその上に作製することで、透明または半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
【0184】
本発明においては、金属膜からなる陰極は、有機EL素子の封止材料としても機能する。
【0185】
次に、本発明の有機EL素子の構成層として用いられる、注入層、阻止層、電子輸送層等について説明する。
【0186】
(注入層:電子注入層、正孔注入層)
注入層は必要に応じて設け、電子注入層と正孔注入層があり、上記の如く陽極と発光層または正孔輸送層の間、及び陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。
【0187】
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、正孔注入層(陽極バッファー層)と電子注入層(陰極バッファー層)とがある。
【0188】
陽極バッファー層(正孔注入層)は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。
【0189】
陰極バッファー層(電子注入層)は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。上記バッファー層(注入層)はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるがその膜厚は0.1nm〜5μmの範囲が好ましい。
【0190】
(阻止層:正孔阻止層、電子阻止層)
阻止層は、上記の如く、有機化合物薄膜の基本構成層の他に必要に応じて設けられるものである。例えば、特開平11−204258号公報、同11−204359号公報、及び「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の237頁等に記載されている正孔阻止(ホールブロック)層がある。
【0191】
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有し、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい正孔阻止材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、後述する電子輸送層の構成を必要に応じて、本発明に係わる正孔阻止層として用いることができる。
【0192】
一方、電子阻止層とは広い意味では正孔輸送層の機能を有し、正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、後述する正孔輸送層の構成を必要に応じて電子阻止層として用いることができる。
【0193】
(発光層)
本発明に係る発光層は、電極または電子輸送層、正孔輸送層から注入されてくる電子及び正孔が再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接層との界面であってもよい。
【0194】
本発明の有機EL素子の発光層には、以下に示すホスト化合物とドーパント化合物が含有されることが好ましい。これにより、より一層発光効率を高くすることができる。
【0195】
発光ドーパントは、大きく分けて、蛍光を発光する蛍光性ドーパントとリン光を発光するリン光性ドーパントの2種類がある。
【0196】
前者(蛍光性ドーパント)の代表例としては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素、または希土類錯体系蛍光体等が挙げられる。
【0197】
後者(リン光性ドーパント)の代表例としては、好ましくは元素の周期表で8属、9属、10属の金属を含有する錯体系化合物であり、さらに好ましくは、イリジウム化合物、オスミウム化合物であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。具体的には以下の特許公報に記載されている化合物である。
【0198】
国際公開第00/70655号パンフレット、特開2002−280178号公報、同2001−181616号公報、同2002−280179号公報、同2001−181617号公報、同2002−280180号公報、同2001−247859号公報、同2002−299060号公報、同2001−313178号公報、同2002−302671号公報、同2001−345183号公報、同2002−324679号公報、国際公開第02/15645号パンフレット、特開2002−332291号公報、同2002−50484号公報、同2002−332292号公報、同2002−83684号公報、特表2002−540572号公報、特開2002−117978号公報、同2002−338588号公報、同2002−170684号公報、同2002−352960号公報、国際公開第01/93642号パンフレット、特開2002−50483号公報、同2002−100476号公報、同2002−173674号公報、同2002−359082号公報、同2002−175884号公報、同2002−363552号公報、同2002−184582号公報、同2003−7469号公報、特表2002−525808号公報、特開2003−7471号公報、特表2002−525833号公報、特開2003−31366号公報、同2002−226495号公報、同2002−234894号公報、同2002−235076号公報、同2002−241751号公報、同2001−319779号公報、同2001−319780号公報、同2002−62824号公報、同2002−100474号公報、同2002−203679号公報、同2002−343572号公報、同2002−203678号公報等。
【0199】
【化1】

【0200】
【化2】

【0201】
【化3】

【0202】
発光ドーパントは複数種の化合物を混合して用いてもよい。
【0203】
〈発光ホスト〉
発光ホスト(単にホストともいう)とは、2種以上の化合物で構成される発光層中にて混合比(質量)の最も多い化合物のことを意味し、それ以外の化合物については「ドーパント化合物(単に、ドーパントともいう)」という。例えば、発光層を化合物A、化合物Bという2種で構成し、その混合比がA:B=10:90であれば化合物Aがドーパント化合物であり、化合物Bがホスト化合物である。さらに、発光層を化合物A、化合物B、化合物Cの3種から構成し、その混合比がA:B:C=5:10:85であれば、化合物A、化合物Bがドーパント化合物であり、化合物Cがホスト化合物である。
【0204】
本発明に用いられる発光ホストとしては、構造的には特に制限はないが、代表的にはカルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体、芳香族ボラン誘導体、含窒素複素環化合物、チオフェン誘導体、フラン誘導体、オリゴアリーレン化合物等の基本骨格を有するもの、または、カルボリン誘導体やジアザカルバゾール誘導体(ここで、ジアザカルバゾール誘導体とは、カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の少なくとも一つの炭素原子が窒素原子で置換されているものを表す。)等が挙げられる。
【0205】
中でもカルボリン誘導体、ジアザカルバゾール誘導体等が好ましく用いられる。
【0206】
以下に、カルボリン誘導体、ジアザカルバゾール誘導体等の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0207】
【化4】

【0208】
【化5】

【0209】
また、本発明に用いられる発光ホストは低分子化合物でも、繰り返し単位をもつ高分子化合物でもよく、ビニル基やエポキシ基のような重合性基を有する低分子化合物(蒸着重合性発光ホスト)でもいい。
【0210】
発光ホストとしては、正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、かつ、発光の長波長化を防ぎ、高Tg(ガラス転移温度)である化合物が好ましい。
【0211】
発光ホストの具体例としては、以下の文献に記載されている化合物が好適である。例えば、特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報等。
【0212】
さらに公知のホスト化合物を複数種併用して用いてもよい。また、ドーパント化合物を複数種用いることで、異なる発光を混ぜることが可能となり、これにより任意の発光色を得ることができる。リン光性化合物の種類、ドープ量を調整することで白色発光が可能であり、照明、バックライトへの応用もできる。
【0213】
本発明の有機EL素子の発光する色は、「新編色彩科学ハンドブック」(日本色彩学会編、東京大学出版会、1985)の108頁の図4.16において、分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタセンシング社製)で測定した結果をCIE色度座標に当てはめたときの色で決定される。
【0214】
発光層は上記化合物を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェット法等の公知の薄膜化法により成膜して形成することができる。発光層としての膜厚は特に制限はないが、通常は5nm〜5μm、好ましくは5〜200nmの範囲で選ばれる。この発光層はこれらのリン光性化合物やホスト化合物が1種または2種以上からなる一層構造であってもよいし、あるいは同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0215】
(正孔輸送層)
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。
【0216】
正孔輸送材料としては、正孔の注入または輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。
【0217】
正孔輸送材料としては上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。
【0218】
芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、さらには米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
【0219】
さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。また、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。
【0220】
正孔輸送層は上記正孔輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。正孔輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmである。この正孔輸送層は上記材料の1種または2種以上からなる一層構造であってもよい。
【0221】
また、不純物をドープしたp性の高い正孔輸送層を用いることもできる。その例としては、特開平4−297076号、特開2000−196140号、特開2001−102175号、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
【0222】
(電子輸送層)
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
【0223】
従来、単層の電子輸送層、及び複数層とする場合は発光層に対して陰極側に隣接する電子輸送層に用いられる電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができ、例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0224】
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、GaまたはPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。その他、メタルフリーもしくはメタルフタロシアニン、またはそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、発光層の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様に、n型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
【0225】
電子輸送層は上記電子輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。電子輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmである。電子輸送層は上記材料の1種または2種以上からなる一層構造であってもよい。
【0226】
また、不純物をドープしたn性の高い電子輸送層を用いることもできる。その例としては、特開平4−297076号、特開2000−196140号、特開2001−102175号、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
【0227】
本発明の有機EL素子の発光の室温における外部取り出し効率は1%以上であることが好ましく、より好ましくは5%以上である。ここに、外部取り出し量子効率(%)=有機EL素子外部に発光した光子数/有機EL素子に流した電子数×100である。
【0228】
また、カラーフィルター等の色相改良フィルター等を併用しても、有機EL素子からの発光色を蛍光体を用いて多色へ変換する色変換フィルターを併用してもよい。色変換フィルターを用いる場合においては、有機EL素子の発光のλmaxは480nm以下が好ましい。
【0229】
このようにして得られた有機EL素子を用いた多色の表示装置に、直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として電圧2〜40V程度を印加すると、発光が観測できる。また交流電圧を印加してもよい。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
【0230】
本発明の有機EL素子を用いた表示装置は、表示デバイス、ディスプレイ、各種発光光源として用いることができる。表示デバイス、ディスプレイにおいて、青、赤、緑発光の3種の有機EL素子を用いることにより、フルカラーの表示が可能となる。
【0231】
表示デバイス、ディスプレイとしてはテレビ、パソコン、モバイル機器、AV機器、文字放送表示、自動車内の情報表示等が挙げられる。特に静止画像や動画像を再生する表示装置として使用してもよく、動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は単純マトリックス(パッシブマトリックス)方式でもアクティブマトリックス方式でもどちらでもよい。
【0232】
本発明に係る有機EL素子を用いた照明装置は家庭用照明、車内照明、時計や液晶用のバックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるがこれに限定するものではない。
【0233】
また、本発明に係る有機EL素子に共振器構造を持たせた有機EL素子として用いてもよい。このような共振器構造を有した有機EL素子の使用目的としては、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるが、これらに限定されない。また、レーザ発振をさせることにより、上記用途に使用してもよい。
【実施例】
【0234】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0235】
実施例1
《ガスバリア性フィルムの作製》
透明樹脂フィルムとして、厚さ100μmのポリエチレンナフタレートフィルム(帝人・デュポン社製フィルム、以下、PENと略記する)上に、下記の大気圧プラズマ放電処理装置及び放電条件で、密着層、セラミック層、保護層を積層したガスバリア性フィルムを作製した。
【0236】
(大気圧プラズマ放電処理装置)
図7の大気圧プラズマ放電処理装置を用い、誘電体で被覆したロール電極及び複数の角筒型電極のセットを以下のように作製した。
【0237】
第1電極となるロール電極は、冷却水による冷却手段を有するチタン合金T64製ジャケットロール金属質母材に対して、大気プラズマ法により高密度、高密着性のアルミナ溶射膜を被覆し、ロール径1000mmφとなるようにした。一方、第2電極の角筒型電極は、中空の角筒型のチタン合金T64に対し、上記同様の誘電体を同条件にて方肉で1mm被覆し、対向する角筒型固定電極群とした。
【0238】
この角筒型電極をロール回転電極のまわりに、対向電極間隙を1mmとして10本配置した。角筒型固定電極群の放電総面積は、150cm(幅手方向の長さ)×4cm(搬送方向の長さ)×10本(電極の数)=6000cm2であった。なお、何れもフィルターは適切なものを設置した。
【0239】
プラズマ放電中、第1電極(ロール回転電極)は120℃、第2電極(角筒型固定電極群)は80℃になるように調節保温し、ロール回転電極はドライブで回転させて薄膜形成を行った。上記10本の角筒型固定電極中、上流側より2本を下記第1層(密着層)の製膜用に、次の6本を下記第2層(セラミック層)の製膜用に、次の2本を第3層(保護層)の製膜用に使用し、各条件を設定して1パスで3層を積層した。
【0240】
(第1層:密着層)
下記の条件で、プラズマ放電を行って、厚さ約50nmの密着層を形成した。
【0241】
〈ガス条件〉
放電ガス:窒素ガス 94.5体積%
薄膜形成性ガス:ヘキサメチルジシロキサン
(リンテック社製気化器にて窒素ガスに混合して気化) 0.5体積%
添加ガス:酸素ガス 5.0体積%
〈電源条件:第1電極側の電源のみを使用した〉
第1電極側 電源種類 応用電機社製高周波電源
周波数 80kHz
出力密度 10W/cm2
上記形成した第1層(低密度層)の密度は、前述のマックサイエンス社製MXP21を用いたX線反射率法で測定した結果、1.95であった。
【0242】
(第2層:セラミック膜)
下記の条件で、プラズマ放電を行って、厚さ約30nmのセラミック層を形成した。
【0243】
〈ガス条件〉
放電ガス:窒素ガス 94.9体積%
薄膜形成性ガス:ヘキサメチルジシロキサン
(リンテック社製気化器にて窒素ガスに混合して気化) 0.1体積%
添加ガス:酸素ガス 5.0体積%
〈電源条件〉
第1電極側 電源種類 応用電機社製高周波電源
周波数 80kHz
出力密度 10W/cm2
第2電極側 電源種類 パール工業社製高周波電源
周波数 13.56MHz
出力密度 10W/cm2
上記形成した第2層(セラミック膜)の密度は、前述のマックサイエンス社製MXP21を用いたX線反射率法で測定した結果、2.20であった。
【0244】
(第3層:ポリマー膜)
下記の条件で、プラズマ放電を行って、厚さ約200nmの保護層を形成した。
【0245】
〈ガス条件〉
放電ガス:窒素ガス 94.0体積%
薄膜形成性ガス:ヘキサメチルジシロキサン
(リンテック社製気化器にて窒素ガスに混合して気化) 1.0体積%
添加ガス:酸素ガス 5.0体積%
〈電源条件:第1電極側の電源のみを使用した〉
第1電極側 電源種類 応用電機社製高周波電源
周波数 80kHz
出力密度 10W/cm2
上記形成した第3層(保護層)の密度は、前述のマックサイエンス社製MXP21を用いたX線反射率法で測定した結果、1.90であった。
【0246】
《透明導電膜の作製》
図4に概念図を示すアルバック社製直流マグネトロンスパッタリング装置SRV150にて、ITOを製膜。製膜条件としては、Arガス中にH2Oを所定量添加し、スパッタ電圧250Vにて製膜を行った。この時の基材温度は100℃となるように保持し、ガス圧を表1に示すように変化させ透明導電膜付ガスバリア性フィルム1〜7を作製した。製膜した膜厚は、100nmである。
【0247】
ITO製膜前のバリアフィルムの水蒸気透過率は、1×10-3g/m2/dayであった。
【0248】
得られた、透明導電膜付ガスバリア性フィルム1〜7について、水蒸気透過率、表面比抵抗及び表面粗度を下記の方法で測定し結果を表1に示す。
【0249】
(水蒸気透過率の測定)
水蒸気透過率は、クリエテック(株)社製WOPET−003型を使用して測定した。なお、10-2オーダーまでは、モコン社製PERMARTRAN−W3/33Gタイプにより基準サンプルを比較評価した後、モコン社製装置を基準に校正を行い、シミュレーションにより10-7オーダーまで外挿した。
【0250】
(表面比抵抗の測定)
JIS−R−1637に従い、四端子法により、測定器として三菱化学製ロレスタ−GP、MCP−T600を用いて求めた。
【0251】
(表面粗度の測定)
原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy:AFM)として、セイコーインスツルメンツ社製SPI3800NプローブステーションおよびSPA400多機能型ユニットを使用し、約1cm角の大きさに切り取った試料を、ピエゾスキャナー上の水平な試料台上にセットし、カンチレバーを試料表面にアプローチし、原子間力が働く領域に達したところで、XY方向にスキャンし、その際の試料の凹凸をZ方向のピエゾの変位でとらえる。ピエゾスキャナーは、XY20μm、Z2μmが走査可能なものを使用する。カンチレバーは、セイコーインスツルメンツ社製シリコンカンチレバーSI−DF20で、共振周波数120〜150kHz、バネ定数12〜20N/mのものを用い、DFMモード(Dynamic Force Mode)で測定する。測定領域2μm角を、1(or2)視野、走査周波数1Hzで測定する。また、得られた三次元データを最小二乗近似することにより、試料のわずかな傾きを補正し、基準面を求める。
【0252】
表面粗さの解析は、解析ソフトSPIwin(ver.2.05D2、セイコーインスツルメント社製)の「解析」メニューより表面粗さ解析を呼び出し、得られた三次元データより平均面粗さとして求めた。
【0253】
【表1】

【0254】
表1から、本発明の方法により作製した透明導電膜付ガスバリア性フィルムは、水蒸気透過率が低く、表面比抵抗が低く、表面粗度も低いことが判る。
【0255】
実施例2
引き続き、実施例1で得られた透明導電膜付ガスバリア性フィルム1〜7を用い、その100mm×100mmを基板とし、これにパターニングを行った後、このITO透明電極を設けた有機エレクトロルミネッセンス用樹脂基材をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥した。この透明支持基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、一方、モリブデン製抵抗加熱ボートにα−NPDを200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにホスト化合物としてCBPを200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにバソキュプロイン(BCP)を200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにIr−1を100mg入れ、さらに別のモリブデン製抵抗加熱ボートにAlq3を200mg入れ、真空蒸着装置に取付けた。
【0256】
次いで真空槽を4×10-4Paまで減圧した後、α−NPDの入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で透明支持基板に蒸着し、正孔輸送層を設けた。さらにCBPとIr−1の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、それぞれ蒸着速度0.2nm/秒、0.012nm/秒で前記正孔輸送層上に共蒸着して発光層を設けた。なお、蒸着時の基板温度は室温であった。さらにBCPの入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で前記発光層の上に蒸着して膜厚10nmの正孔阻止層を設けた。その上に、さらにAlq3の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で前記正孔阻止層の上に蒸着して、さらに膜厚40nmの電子輸送層を設けた。なお、蒸着時の基板温度は室温であった。引き続き、フッ化リチウム0.5nm及びアルミニウム110nmを蒸着して陰極を形成し、それぞれ対応する有機EL素子の試料1〜7を作製した。
【0257】
【化6】

【0258】
《有機EL素子の評価》
以下のようにして作製した各有機EL素子について、温度60℃、相対湿度90%の環境下に3ヶ月保管し、その後、温度25℃、相対湿度45%の雰囲気下の測定条件下において、10V直流電圧を印加した時の発光状態の観察を行った。
【0259】
【表2】

【0260】
表2より、本発明の試料はダークスポットもなく、安定した発光をすることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0261】
【図1】本発明に有用な反応性蒸着装置の全体構造を説明する図である。
【図2】本発明に有用なプラズマガンを用いたイオンプレーティング法(圧力勾配型プラズマガンを使用する活性化反応蒸着法)の装置概略図である。
【図3】本発明に有用なスパッタ装置を示す概略図である。
【図4】本発明に有用な透明導電膜製造装置の構成例を示す断面図である。
【図5】本発明に有用なジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示した概略図である。
【図6】本発明に好ましく用いられる平板電極型の大気圧プラズマ処理装置の他の一例を示す概略構成図である。
【図7】本発明に有用な対向電極間で樹脂フィルムを処理する方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【図8】ロール回転電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【図9】角筒型電極の導電性の金属質母材とその上に被覆されている誘電体の構造の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0262】
110 真空容器
130 プラズマガン
150 陽極部材
151 ハース
153 材料ロッド
158 材料供給装置
160 搬送機構
171 酸素ガス供給装置
172 窒素ガス供給装置
173 不活性ガス供給装置
176 排気装置
177 真空圧測定器
178 圧制御装置
180 陽極電源装置
PB プラズマビーム
W 基板
201 ITO透明導電膜
202 基板
203 真空チャンバー
204 圧力勾配型プラズマガン
205 ルツボ
206 基板支持ホルダー
207 Ta製のパイプ
208 LaB6製の円盤
209 プラズマビーム
210 基板加熱用ヒーター
211 温度計
212 酸素ガス導入ノズル
213 酸素ガス
214 コンダクタンスバルブ
215 真空排気装置
216 真空計
217 ITO蒸発原料
218 放電用アルゴンガス
219 収束コイル
220 磁石
221 プラズマ雰囲気
301,301a ターゲット
302 真空容器
305 空間
310,310a 永久磁石(磁界発生手段)
313 基板
320 補助スパッタ電極手段
322 補助ターゲット
323 グリッド電極
401 真空槽
403 基板
404 カソード
405 ターゲット
407 磁気回路
407b 永久磁石
408 カソードカバー
409 直流電源
410 高周波電源
411 LCフィルタ
412 マッチングボックス
414 パルス電源
510 プラズマ放電処理装置
511 第1電極
512 第2電極
520 電界印加手段
521 第1電源
522 第2電源
530 プラズマ放電処理室
525、535 ロール電極
536 電極
541、542 電源
551 ガス供給装置
555 電極冷却ユニット
F 元巻き樹脂フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂フィルムの上に少なくとも1層以上のセラミック膜を有する透明ガスバリア性フィルム上へ透明導電膜を真空製膜法により製膜する際、該製膜時の圧力が0.5〜2.0Paであることを特徴とする透明導電膜付ガスバリア性フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記透明導電膜付ガスバリア性フィルムの水蒸気透過率が1×10-2g/m2/day以下であることを特徴とする請求項1記載の透明導電膜付ガスバリア性フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記透明導電膜付ガスバリア性フィルムの酸素透過率が5×10-3ml/m2/day以下であることを特徴とする請求項1記載の透明導電膜付ガスバリア性フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記透明導電膜を製膜する方法が、マグネトロンスパッタ法、対向ターゲットスパッタ法及びイオンプレーティング法から選ばれる何れかであることを特徴とする請求項1記載の透明導電膜付ガスバリア性フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記透明導電膜を製膜する際、水蒸気の存在下で製膜することを特徴とする請求項4記載の透明導電膜付ガスバリア性フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記セラミック膜は、大気圧もしくはその近傍の圧力下、放電空間に薄膜形成ガスおよび放電ガスを含有するガスを供給し、該放電空間に高周波電界を印加することにより該ガスを励起し、前記透明樹脂フィルムを励起した該ガスに晒すことにより、該透明樹脂フィルム上に薄膜を形成する薄膜形成方法により形成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の透明導電膜付ガスバリア性フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記放電ガスが窒素ガスであり、放電空間に印加される高周波電界は、第1の高周波電界および第2の高周波電界を重畳したものであり、該第1の高周波電界の周波数ω1より該第2の高周波電界の周波数ω2が高く、該第1の高周波電界の強さV1、該第2の高周波電界の強さV2および放電開始電界の強さIVとの関係が、V1≧IV>V2またはV1>IV≧V2の関係を満たし、該第2の高周波電界の出力密度が1W/cm2以上であることを特徴とする請求項6記載の透明導電膜付ガスバリア性フィルムの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載の透明導電膜付ガスバリア性フィルムの製造方法により製造された透明導電膜付ガスバリア性フィルム上に、燐光発光有機エレクトロルミネッセンス材料及び陰極となる金属膜を設けて封止することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−23304(P2007−23304A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−202682(P2005−202682)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】