説明

透明膜の膜厚測定方法およびその装置

【課題】透過性を有する光学部材の表面を部分的に透明膜で被覆した測定対象物の当該透明膜の膜厚を干渉計を利用して求める。
【解決手段】表面を部分的に透明膜で被覆され、かつ、透過性を有する光学部材からなる測定対象物の裏面からの反射光と参照面からの反射光により生じる干渉縞波形のピークを検出し、当該ピークの位置情報を利用して光学部材の裏面高さを算出した後に、当該裏面高さと透明膜の既知の屈折率から透明膜の屈折率の影響を除去した物理膜厚を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明膜で覆われたプラスチック・フィルム、ガラス基板などの測定対象物の膜厚を測定する透明膜の膜厚測定方法およびその装置に係り、特に、測定対象物の表面に部分的および不均一な高さに形成された透明膜の膜厚を短時間で精度よく求める技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の手段として、干渉計を利用して測定対象物である透過性を有する多層フィルムの膜厚を求めるものが提案されている。具体的には、フィルムに光を往復透過させるため、照射装置と非透過性のバックミラーとの間にフィルムを配置し、当該ミラーで反射してフィルムを往復透過する光と、参照ミラー側から反射して戻る反射光を合せて干渉を生じさせている。このときの干渉縞波形の包絡線を求め、そのピーク位置を検出し、さらにピークの位置情報とピーク間隔の時間を計数して多層フィルムの個々の膜厚を測定している。
【0003】
【特許文献1】特開昭59−131106号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の手段では、次のような問題がある。
すなわち、従来の手段は、フィルムの膜厚を求めるためバックミラーの表面高さなどの所定条件を予め取得しておく必要がある。すなわち、フィルムをセットして測定する前にバックミラーのみの予備測定と、フィルムセット後の実測定の2回を行う必要があり、測定が煩雑になるとともに、処理時間がかかるといった問題がある。また、2回の測定の間に生じたバックミラーの位置変動が測定誤差となり、正確な測定が困難になっている。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、干渉計を利用して透過性を有する光学部材の表面に部分的に形成された透明膜の膜厚を短時間で精度よく測定することのできる透明膜の膜厚測定方法およびその装置を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、第1の発明は、干渉計を利用して測定対象物の表面に形成された透明膜の膜厚を測定する透明膜の膜厚測定方法であって、
前記測定対象物は、透過性を有する光学部材の表面に部分的に透明膜が形成された物であり、
前記測定対象物の測定面と参照面に光を照射したとき、前記光学部材の裏面と参照面からの反射光により生じる干渉縞波形のピークが発生する走査レンジを予め決定する過程と、
前記測定対象物の測定面および参照面に光を照射し、当該測定面と参照面との距離を相対的に変動させながら、両面から反射して同一光路を戻る反射光によって干渉縞の変化を生じさせながら測定面の画像を取得する過程と、
取得した複数枚の前記画像の各画素における干渉光の強度値群の変化を求める過程と、
求めた前記干渉光の強度値群から前記光学部材の裏面で生じる干渉縞波形のピークの位置情報を求める過程と、
前記位置情報から前記光学部材の裏面高さの分布を求める過程と、
前記透明膜の被覆部分と露出部分の裏面高さの偏差を求める過程と、
予め決められた前記透明膜の屈折率と前記裏面高さの偏差に基づいて透明膜の膜厚を求める過程と、
を備えたことを特徴とする。
【0007】
(作用・効果) この方法によれば、光学部材の裏面と参照面から反射して戻る両反射光によって干渉縞波形のピークが生じる走査レンジを予め決定し、その走査レンジで測定面の画像を取得することにより、画素単位で当該裏面のピーク位置情報が求められる。このピーク位置情報と撮像間隔である標本点間隔を利用することにより、測定面である光学部材の裏面の高さを求めることができる。
【0008】
また、測定対象物の所定領域において、透明膜の被覆部分と露出部分の裏面高さの偏差を求め、当該偏差を透明膜の表面高さに換算する。つまり、被覆部分は、透明膜の屈折率の影響で露出部分よりも光路長が長くなるので、被覆部分の裏面高さは、露出部分よりも低く現れる。そこで、この現象に基づいて露出部分を基準とし、被覆部分との偏差を求める。この偏差の絶対値を求めることにより、露出部分を基準として被覆部分である凸部の表面高さに換算することができる。
【0009】
さらに、求めた表面高さと透明膜の既知の屈折率から膜厚を求めることができる。以上のように、1回の測定で、光学部材の表面に形成された透明膜の表面高さおよび膜厚を精度よく、かつ高速に求めることができる。
【0010】
第2の発明は、第1の方法発明において、
前記参照面側の光の往復光路上に前記光学部材と同一試料からなる補償板を配備し、前記光学部材の屈折率と厚さの影響を補正することを特徴とする。
【0011】
(作用・効果) この方法によれば、測定面からの反射光と参照面からの反射光は、同じ光学部材の屈折率と厚さの影響を受ける。すなわち、測定条件が同一になるので、光学部材の屈折率と厚さの影響をキャンセルすることができる。すなわち、測定精度の向上を図ることができる。
【0012】
第3の発明は、透明膜覆われた測定対象物の測定面と参照面に光を照射する照明手段と、前記測定面と参照面との距離を変動させる変動手段と、光が照射された測定面と参照面との距離の変動に伴って両面とから反射して同一光路を戻る反射光によって干渉縞の変化を生じさせるとともに測定面を撮像する撮像手段と、撮像された測定面上の複数箇所における干渉光の強度値を取り込むサンプリング手段と、サンプリング手段によって取り込まれた箇所ごとの複数個の強度値である各干渉光強度値群を記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶された各干渉光強度値群に基づいて特定箇所の透明膜の膜厚を求める演算手段とを備えた透明膜の膜厚測定装置であって、
前記測定対象物は、透過性を有する光学部材の表面に部分的に透明膜が形成された物であり、
前記測定対象物の測定面と参照面に光を照射したとき、前記光学部材の裏面と参照面からの反射光により生じる干渉縞波形のピークが発生する走査レンジを予め決定し、
前記サンプリング手段は、前記変動手段による測定面と参照面との距離の変動に伴って両面から反射して同一光路を戻る反射光によって生じた干渉縞の変化に応じた前記走査レンジの干渉光の強度値をサンプリング間隔で順次取込み、
前記記憶手段は、取り込まれた複数個の強度値である干渉光強度値群を記憶し、
前記演算手段は、測定面の透明膜の膜厚を以下の処理にしたがって求める
(1)取得した複数枚の前記画像の各画素における干渉光の強度値群の変化を求め、
(2)求めた前記干渉光の強度値群から前記光学部材の裏面で生じる干渉縞波形のピークの位置情報を求め、
(3)前記位置情報から前記光学部材の裏面高さの分布を求め、
(4)前記透明膜の被覆部分と露出部分の裏面高さの偏差を求め、
(5)予め決められた前記透明膜の屈折率と前記偏差に基づいて透明膜の膜厚を求める
ことを特徴とする。
【0013】
(作用・効果) この構成によれば、第1の方法発明を好適に実現することができる。
【0014】
第4の発明は、第3に装置発明おいて、
前記参照面側の光の往復光路上に前記光学部材と同一試料からなる補償板を配備したことを特徴とする。
【0015】
(作用・効果) この構成によれば、第2の方法発明を好適に実現することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る透明膜の透明膜の膜厚測定方法およびその装置によると、光学部材の表面に形成された透明膜の表面高さと膜厚を、干渉計を利用して1回の測定で求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【0018】
図1は、本発明の光学部材の表面に部分的に透明膜が形成された当該透明膜の膜厚を測定可能な表面形状測定装置の概略構成を示す図である。
【0019】
この表面形状測定装置は、プラスチック・フィルム、ガラス基板などの透過性を有する測定対象物30の表面を部分的に透明膜31で覆った表面に、例えば特定周波数帯域の白色光を照射する光学系ユニット1と、光学系ユニット1を制御する制御系ユニット2とを備えて構成されている。
【0020】
光学系ユニット1は、測定対象物30および参照面15(参照ミラー)に照射する白色光を発生させる光源10と、光源10から白色光を平行光にするコリメートレンズ11と、コリメートレンズ11からの白色光を測定対象物30の方向に反射する一方、測定対象物30の方向からの白色光を通過させるハーフミラー13と、ハーフミラー13で反射されてきた白色光を集光する対物レンズ14と、対物レンズ14を通過してきた白色光を、参照面15へ反射させる参照光と、透明膜31へ通過させる測定光とに分けるとともに、参照面15で反射してきた参照光と測定対象物30側から反射してきた測定光とを再びまとめて、干渉縞を発生させるビームスプリッタ17と、参照光と測定光とがまとめられた白色光を結像する結像レンズ18と、干渉縞とともに測定対象物30の表面を撮像するCCDカメラ19とを備えて構成されている。
【0021】
光源10は、例えば白色光ランプなどであり、比較的広い周波数帯域の白色光を発生させる。この光源10から発生された白色光は、コリメートレンズ11によって平行光とされ、ハーフミラー13に到達する。なお、光源としては、光源10に限定されるものではなく、単色光であってもよい。光源10は、本発明の照明手段に相当する。
【0022】
ハーフミラー13は、コリメータレンズ13からの平行光となった白色光を測定対象物30の方向に向けて反射する一方、測定対象物30の方向から戻ってきた白色光を通過させるものである。このハーフミラー13で反射された白色光は、対物レンズ14に入射する。
【0023】
対物レンズ14は、入射してきた白色光を焦点に向けて集光するレンズである。この対物レンズ14によって集光される白色光は、参照面15を通過し、ビームスプリッタ17に到達する。
【0024】
ビームスプリッタ17は、対物レンズ14で集光される白色光を、参照面15で反射させるために、ビームスプリッタ17の例えば上面で反射させる参照光と、測定対象物30の測定面で反射させるために、ビームスプリッタ17を通過させる測定光とに分ける。また、参照光と測定光を再びまとめることによって、干渉縞を発生させるものである。ビームスプリッタ17に達した白色光は、ビームスプリッタ17の上面で反射された参照光と、ビームスプリッタ17を通過する測定光とに分けられる。参照光は参照面15に達し、測定光は測定面に達する。
【0025】
参照面15には、参照光をビームスプリッタ17の方向に反射させるためのミラーが取り付けられており、このミラーによって反射された参照光は、ビームスプリッタ17に達し、さらに、この参照光はビームスプリッタ17によって反射される。
【0026】
ビームスプリッタ17を通過した測定光は、測定面である光学部材30の裏面30Aに向けて集光され、その裏面30Aで反射する。反射した各測定光は、ビームスプリッタ17に達して、そのビームスプリッタ17を通過する。
【0027】
ビームスプリッタ17は、参照光と測定光とを再びまとめる。このとき、参照面15とビームスプリッタ17との間の距離L1と、ビームスプリッタ17と測定対象面30Aとの間の距離L2との、距離の違いによって光路差が生じる。この光路差に応じて、参照光と測定光とは干渉し合うことで、干渉縞が生じる。この干渉縞が生じた状態の白色光は、ハーフミラー13を通過し、結像レンズ18によって結像されて、CCDカメラ19に入射する。
【0028】
CCDカメラ19は、干渉縞が生じた状態の白色光とともに、測定光によって映し出される測定面付近の画像を撮像する。この撮像した画像データは、制御系ユニット2によって収集される。また、後述で明らかになるが、本発明の変動手段に相当する制御系ユニット2の駆動部24によって、例えば光学系ユニット1が上下左右に変動される。特に、光学系ユニット1が上下方向に駆動されることによって、距離L1と距離L2との距離が変動される。これにより、距離L1と距離L2との距離の差に応じて、干渉縞が徐々に変化する。CCDカメラ19によって、後述する所定のサンプリング間隔ごとに、干渉縞の変化とともに表面の画像が撮像され、その画像データが制御系ユニット2によって収集される。CCDカメラ19は、本発明における撮像手段に相当する。
【0029】
制御系ユニット2は、表面形状測定装置の全体を統括的に制御や、所定の演算処理を行うためのCPU20と、CPU20によって逐次収集された画像データやCPU20での演算結果などの各種のデータを記憶するメモリ21と、サンプリング間隔やその他の設定情報を入力するマウスやキーボードなどの入力部22と、測定面の画像などを表示するモニタ23と、CPU20の指示に応じて光学系ユニット1を上下左右に駆動する例えば3軸駆動型のサーボモータなどの駆動機構で構成される駆動部24とを備えるコンピュータシステムで構成されている。なお、CPU20は、本発明におけるサンプリング手段および演算手段に、メモリ21は本発明における記憶手段に、駆動部25は本発明における変動手段にそれぞれ相当する。
【0030】
CPU20は、いわゆる中央処理装置であって、CCDカメラ19、メモリ21および駆動部24を制御するとともに、CCDカメラ19で撮像した干渉縞を含む測定面の画像データに基づいて、光学部材30の裏面30A、透明膜31の膜厚などを求める種々の演算処理を行う。この処理については後で詳細に説明する。
【0031】
さらに、CPU20には、モニタ23と、キーボードやマウスなどの入力部22とが接続されており、操作者は、モニタ23に表示される操作画面を観察しながら、入力部22から各種の設定情報の入力を行う。また、モニタ23には、透明膜31の測定終了後に、光学部材30の表面に形成され段差(凹凸形状)などを数値や画像として表示される。
【0032】
駆動部24は、光学系ユニット1内の参照面15とビームスプリッタ17との間の固定された距離L1と、ビームスプリッタ17と測定対象面30Aとの間の可変の距離L2との距離の差を変化させるために、光学系ユニット1を直交3軸方向に変動させる装置であり、CPU20からの指示によって光学系ユニット1をX,Y,Z軸方向に駆動する例えば3軸駆動型のサーボモータを備える駆動機構で構成されている。なお、駆動部24は、本発明における変動手段に相当し、本発明における相対的距離とは、参照面15から測定対象面30Aまでの距離すなわち距離L1および距離L2を示す。本実施例では、光学系ユニット1を動作させるが、例えば測定対象物30が載置される図示していないテーブルを直交3軸方向に変動させるようにしてもよい。
【0033】
以下、本実施例の表面形状測定装置全体で行なわれる処理を図2のフローチャートを参照しながら具体的に説明する。なお、本実施例では、ガラス基板である測定対象物30の表面に透明膜31としてレジスト膜を形成したものを用いたものとする。
【0034】
<ステップS1> 条件設定
光学系ユニットを図1に示すz軸方向に移動させるための走査速度や走査レンジなどの種々の条件を設定する。本実施例の場合、例えば、走査速度、図3および図4に示す標本点間隔、走査レンジ、およびCCDカメラ19で取得する画像枚数などを設定する。なお、走査レンジは、光学部材30の厚み、および変動距離L1,L2に基づいて、光学部材30の裏面30Aからの反射光によって生じる干渉縞波形のピークを検出できるレンジに設定する。
【0035】
<ステップS2> 測定データ取得
光学系ユニット1は、光源10から発生される白色光を測定対象物30および参照面15に向けて照射する。
【0036】
また、CPU20は、予め所定の測定場所に移動された光学系ユニット1をz軸方向に移動を開始させるための変動開始の指示を駆動部24に与える。駆動部24は、図示しないステッピングモータなどの駆動系を駆動して、光学系ユニット1をz軸方向に予め決められた距離だけ移動させる。これにより、参照面15と測定対象物側の両表面との距離L1,L2が変動される。
【0037】
CPU20は、光学系ユニット1がサンプリング間隔だけ移動するたびに、CCDカメラ19で撮像される干渉縞を含む測定対象物30の表面および透明膜31の表面の両方を含む所定領域の測定面の画像データを収集してメモリ21に順次記憶する。光学系ユニット1が予め決められた操作レンジだけ移動することで、メモリ21には光学系ユニット1の移動距離およびサンプリング間隔によって決まる複数枚の画像データが記憶される。
【0038】
<ステップS3> 特定箇所の干渉光強度値群を取得
例えば、操作者がモニタ23に表示される測定対対象の透明膜31を観察しながら、その透明膜31の膜厚を測定したい複数の特定箇所または全面を入力部22から入力設定する。CPU20は、入力設定された複数の特定箇所を把握して、複数の特定箇所に相当する画素の濃度値、すなわち特定箇所における干渉光の強度値を、ステップS2で記憶された複数枚の画像データからそれぞれ取込む。これにより、各特定箇所における複数個の強度値(干渉光強度値群)が得られる。
【0039】
<ステップS4> 強度値からピーク位置を求める
CPU20は、図3に示すように、離散的に取得した特定箇所における干渉光強度値群に基づいて、干渉光の強度値の平均値を求める。さらに、干渉光強度値群の各強度値から平均値を減算した各値(調整値群)を求める。
【0040】
調整値をさらに2乗し、図4に示すように、強度値をプラス側に強調した特性値を求める。
【0041】
<ステップS5> 裏面高さ分布の算出
CPU20は、図4に示すピーク位置Pから光学部材30の裏面高さを算出する。つまり、裏面高さをSとすると、S=P×標本点間隔の式で画素ごとに裏面高さSが算出される。画素単位で算出した裏面高さSを、CCDカメラ19の撮像した所定範囲での分布データとして作成する。
【0042】
例えば、図5に示すように右側の略半分が透明膜31で被覆されている場合、図6に示す裏面高さSのプロファイルが作成される。つまり、透明膜31の被覆部分S2は、その屈折率nと膜厚tの影響で露出部分S1の領域に比べて(n−1)*tだけ光路長が長くなり、光路差が生じる。したがって、被覆部分S2の裏面高さSは、図5の二点鎖線に示すように、露出部分S2よりも低く現れる。
【0043】
<ステップS6> 光路差分布の算出
裏面高さSの分布が作成されると、露出部分S1を基準とし、当該露出部分S1と被覆部分S2の偏差(以下、適宜「段差」という)を算出し、その絶対値を求める。すなわち、図7に示すように、露出部分S1を基準としたときの被覆部分S2で生じる光路差に換算される。
【0044】
<ステップS7> 膜厚の算出
算出された光路差は、透明膜31の屈折率nの影響を含むので、当該光学膜厚を既知の屈折率n(n=1.66)を利用してn−1で除算し、図8に示す屈折率の影響を除去した物理膜厚tを算出する。
【0045】
<ステップS8> 表示
CPU20は、図9に示すように、モニタ23に測定対象の透明膜31の物理膜厚の情報などを3次元画像で表示したりする。操作者は、これらの表示を観察することで、透明膜31の膜厚分布を把握することができる。
【0046】
上述した実施例によれば、透過性を有する光学部材である測定対象物30を部分的に透明膜31が形成されている場合、干渉計を利用して両領域の画素ごとに光学部材の裏面30Aで生じる干渉縞波形のピークの位置情報のみを検出し、当該位置情報を利用することにより、光学部材の裏面高さSを求めることができる。また、透明膜31の被覆部分S2の裏面高さSは、透明膜31の屈折率の影響で露出部分S1よりも光路長が長くなるので、露出部分S1よりも低く現れる。この現象に基づいて、裏面高さSの値から光路差(偏差)を求めることができる。さらに、透明膜31の既知の屈折率と求めた光路差から透明膜31の屈折率の影響を除去した物理膜厚を求めることができる。
【0047】
すなわち、光学部材の表面に形成された透明膜31の膜厚を1回の測定で精度よく求めることができる。
【0048】
なお、本発明は上述した実施例に限らず、次のように変形実施することができる。
【0049】
(1)上記実施例は、光学部材の厚さと屈折率の影響を除去するために、図10に示すように、ビームスプリッタ17と参照面15の間の光路上に測定対象物30の光学部材と同じ部材の補償板40を挿入して測定することが好ましい。
【0050】
この構成によれば、測定対象物側の光学部材の厚さと屈折率の影響を除去した高精度な透明膜31の膜厚を測定することができる。
【0051】
(2)上記実施例では、撮像手段としてCCDカメラ19を用いたが、例えば、特定箇所の干渉光の強度値のみを撮像(検出)することに鑑みれば、一列または平面状に構成された受光素子など撮像手段を構成することもできる。
【0052】
(3)上記実施例は、光学系ユニット1の光源に単色光を出力可能な光源を利用してもよい。この場合には、干渉光強度値群から裏面高さ分布を求めるに際し、干渉波形の位相情報を検出し、より高精度な裏面高さ測定を実施することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本実施例に係る表面形状測定装置の概略構成を示す図である。
【図2】表面形状測定装置における処理を示すフローチャートである。
【図3】特定関数のピーク位置を求める処理を説明するための説明図である。
【図4】特定関数のピーク位置を求める処理を説明するための説明図である。
【図5】測定対象物の測定領域の横断面図である。
【図6】光学部材の裏面高さの分布を示す図である。
【図7】算出した透明膜の表面高さの分布を示す図である。
【図8】算出した透明膜の膜厚を示す図である。
【図9】測定対象物の表面段差の3次元画像を示す図である。
【図10】変形例装置の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1 … 光学系ユニット
2 … 制御系ユニット
10 … 光源
11 … コリメートレンズ
13 … ハーフミラー
14 … 対物レンズ
15 … 参照面
17 … ビームスプリッタ
18 … 結像レンズ
19 … CCDカメラ
20 … CPU
21 … メモリ
24 … 駆動部
30 … 測定対象物(光学部材)
31 … 透明膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
干渉計を利用して測定対象物の表面に形成された透明膜の膜厚を測定する透明膜の膜厚測定方法であって、
前記測定対象物は、透過性を有する光学部材の表面に部分的に透明膜が形成された物であり、
前記測定対象物の測定面と参照面に光を照射したとき、前記光学部材の裏面と参照面からの反射光により生じる干渉縞波形のピークが発生する走査レンジを予め決定する過程と、
前記測定対象物の測定面および参照面に光を照射し、当該測定面と参照面との距離を相対的に変動させながら、両面から反射して同一光路を戻る反射光によって干渉縞の変化を生じさせながら測定面の画像を取得する過程と、
取得した複数枚の前記画像の各画素における干渉光の強度値群の変化を求める過程と、
求めた前記干渉光の強度値群から前記光学部材の裏面で生じる干渉縞波形のピークの位置情報を求める過程と、
前記位置情報から前記光学部材の裏面高さの分布を求める過程と、
前記透明膜の被覆部分と露出部分の裏面高さの偏差を求める過程と、
予め決められた前記透明膜の屈折率と前記裏面高さの偏差に基づいて透明膜の膜厚を求める過程と、
を備えたことを特徴とする透明膜の膜厚測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の透明膜の膜厚測定方法において、
前記参照面側の光の往復光路上に前記光学部材と同一試料からなる補償板を配備し、前記光学部材の屈折率と厚さの影響を補正する
ことを特徴とする透明膜の膜厚測定方法。
【請求項3】
透明膜覆われた測定対象物の測定面と参照面に光を照射する照明手段と、前記測定面と参照面との距離を変動させる変動手段と、光が照射された測定面と参照面との距離の変動に伴って両面とから反射して同一光路を戻る反射光によって干渉縞の変化を生じさせるとともに測定面を撮像する撮像手段と、撮像された測定面上の複数箇所における干渉光の強度値を取り込むサンプリング手段と、サンプリング手段によって取り込まれた箇所ごとの複数個の強度値である各干渉光強度値群を記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶された各干渉光強度値群に基づいて特定箇所の透明膜の膜厚を求める演算手段とを備えた透明膜の膜厚測定装置であって、
前記測定対象物は、透過性を有する光学部材の表面に部分的に透明膜が形成された物であり、
前記測定対象物の測定面と参照面に光を照射したとき、前記光学部材の裏面と参照面からの反射光により生じる干渉縞波形のピークが発生する走査レンジを予め決定し、
前記サンプリング手段は、前記変動手段による測定面と参照面との距離の変動に伴って両面から反射して同一光路を戻る反射光によって生じた干渉縞の変化に応じた前記走査レンジの干渉光の強度値をサンプリング間隔で順次取込み、
前記記憶手段は、取り込まれた複数個の強度値である干渉光強度値群を記憶し、
前記演算手段は、測定面の透明膜の膜厚を以下の処理にしたがって求める
(1)取得した複数枚の前記画像の各画素における干渉光の強度値群の変化を求め、
(2)求めた前記干渉光の強度値群から前記光学部材の裏面で生じる干渉縞波形のピークの位置情報を求め、
(3)前記位置情報から前記光学部材の裏面高さの分布を求め、
(4)前記透明膜の被覆部分と露出部分の裏面高さの偏差を求め、
(5)予め決められた前記透明膜の屈折率と前記偏差に基づいて透明膜の膜厚を求める
ことを特徴とする透明膜の膜厚測定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の透明膜の膜厚測定装置において、
前記参照面側の光の往復光路上に前記光学部材と同一試料からなる補償板を配備した
ことを特徴とする透明膜の膜厚測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−292296(P2008−292296A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−137967(P2007−137967)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】