説明

運転支援装置

【課題】本発明は、運転支援装置に係り、運転補助を適切に行ううえで路面標示の認識精度の向上を図ることにある。
【解決手段】カメラ撮像画像に基づいて、道路路面に形成された路面標示を認識する。予め記憶されている、その認識した路面標示と目標対象物との相対位置情報に基づいて、自車両から目標対象物までの道なり残距離を算出する。そして、その道なり残距離に基づいて、目標対象物に対する支援制御を実行する。また、車外の外界状況を検出する。そして、ある一の目標対象物に対して複数の路面標示が存在するときは、そのうちから、検出される外界状況に応じた正確に認識し易い路面標示を、目標対象物までの道なり残距離を算出するうえで認識すべき路面標示として選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置に係り、特に、撮像画像から道路路面に形成された路面標示を認識して、予め定められた路面標示と目標対象物との相対位置情報を基に自車両から目標対象物までの距離を算出し、そして、その距離に基づいて制御対象物に対する車両運転の補助を行ううえで好適な運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載された車両周囲の道路を撮像するカメラの撮像画像に基づいて道路路面に形成された一時停止線などの路面標示を認識し、その認識結果に基づいて車両運転者による車両運転の補助を行う運転支援装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この運転支援装置においては、カメラの撮像した撮像画像から一時停止線が検出され、その検出結果に基づいて交差点での運転補助が実行される。
【特許文献1】特開2004−86363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、カメラを用いて路面標示を認識しようとする場合、その画像認識は車外の外界状況による影響を受け易いため、外界状況によっては認識結果の正確性が損なわれ、その認識精度が低下することがある。このため、路面標示の認識結果に基づく運転補助が適切に行われない事態が起こり得る。
【0004】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、運転補助を適切に行ううえで路面標示の認識精度の向上を図ることが可能な運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的は、車両の周辺を撮像する撮像手段による撮像画像に基づいて、道路路面に形成された路面標示を認識する路面標示認識手段と、前記路面標示と目標対象物との相対位置情報を予め記憶する位置情報記憶手段と、前記路面標示認識手段により認識された前記路面標示と目標対象物との相対位置情報に基づいて、自車両から目標対象物までの距離を算出する対象物距離算出手段と、前記対象物距離算出手段の算出結果に基づいて、車両運転者による車両運転の補助を行う運転補助手段と、を備える運転支援装置であって、車外の外界状況を検出する外界状況検出手段と、一の目標対象物に対する複数の前記路面標示のうちから、前記外界状況検出手段の検出結果に応じた認識し易い前記路面標示を、自車両から目標対象物までの距離を算出するうえで認識すべき前記路面標示として選択する路面標示選択手段と、を備える運転支援装置により達成される。
【0006】
この態様の発明においては、車外の外界状況が検出されると共に、一の目標対象物に対する複数の路面標示のうちから、その検出された外界状況に応じた認識し易い路面標示が、自車両から目標対象物までの距離を算出するうえで認識すべき路面標示として選択される。そして、その選択された路面標示が撮像手段による撮像画像に基づいて認識されて、自車両から目標対象物までの距離が算出され、車両運転が補助される。かかる構成によれば、外界状況に応じた認識し易い路面標示の認識結果に基づいて車両運転の補助を行うことができ、車両運転の補助を行ううえで認識すべき路面標示として、外界状況に応じた認識し易い路面標示を選択するため、運転補助を適切に行ううえで路面標示の認識精度の向上を図ることが可能となる。
【0007】
この場合、上記した運転支援装置において、前記外界状況検出手段は、日時に応じて、外界状況の検出手法を変更することとしてもよい。
【0008】
すなわち、上記した運転支援装置において、前記外界状況検出手段は、日射状態に基づいて外界状況を検出することとしてもよい。
【0009】
また、上記した運転支援装置において、前記外界状況検出手段は、外灯と前記路面標示との位置関係に基づいて外界状況を検出することとしてもよい。
【0010】
ところで、上記した運転支援装置において、前記路面標示ごとに、車両走行時に特定される外界状況と認識し易さの度合いとの関係を外界状況記憶手段に登録する外界状況登録手段を備え、前記路面標示選択手段は、次回以降の走行時、前記外界状況記憶手段に登録されている前記関係に基づいて前記外界状況検出手段の検出結果に応じた認識し易い前記路面標示を、自車両から目標対象物までの距離を算出するうえで認識すべき前記路面標示として選択することとすれば、車両走行中に蓄積される路面標示ごとの外界状況と認識し易さの度合いとの関係を用いて、その後に認識すべき路面標示を選択するので、路面標示の認識精度の向上を図ることが可能となる。
【0011】
尚、上記した運転支援装置において、前記外界状況検出手段は、外界状況として道路路面の照度を検出すると共に、前記路面標示選択手段は、前記外界状況検出手段により照度が規定範囲内にある道路位置に形成された前記路面標示を、自車両から目標対象物までの距離を算出するうえで認識すべき前記路面標示として選択することとすれば、照度が規定範囲内にある道路位置に形成された路面標示を車両運転の補助を行ううえで必要な路面標示として選択するため、路面標示の認識精度の向上を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、路面標示の認識精度の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明の一実施例である車両に搭載されるシステムの構成図を示す。図1に示す如く、本実施例のシステムは、自車両の位置を測位するための測位部12と、自車両の走行等を制御して車両運転者の運転を補助するための支援制御部14と、を備えており、自車両の位置を測位部12で測位すると共に、その測位される自車両の位置に応じて自車両を走行させるうえでの所定の支援制御を支援制御部14で実行するシステムである。
【0014】
測位部12は、GPS(Global Positioning System)衛星から送信されるGPS信号を受信して自車両の存在する位置の緯度及び経度を検知するGPS受信機16、旋回角や地磁気を用いて自車両のヨー角(方位)を検知する方位センサ18、加減速度を検知するGセンサ20、車速を検知する車速センサ22、並びに、それら各受信機やセンサ16〜22の出力が接続されている主にマイクロコンピュータにより構成された推測航法部24を有している。各受信機やセンサ16〜22の出力信号はそれぞれ、推測航法部24に供給される。推測航法部24は、GPS受信機16からの情報に基づいて自車両の位置の緯度及び経度(初期座標)を検出すると共に、センサ18〜22からの情報に基づいて自車両の進行方位、車速、及び加減速度の走行状態を検出して、自車両位置の初期座標からの車両の走行軌跡(推測軌跡)を作成する。
【0015】
測位部12は、また、上記した推測航法部24に接続されている主にマイクロコンピュータにより構成されたマップマッチング部28を有している。マップマッチング部28には、また、地図データベース30が接続されている。地図データベース30は、車両に搭載され或いはセンタに設けられたハードディスク(HDD)やDVD,CDなどにより構成されており、経路案内や地図表示に必要な道路自体のリンクデータ等や道路に描かれ或いは設置される路面標示や車線レーンの位置情報などを格納している。マップマッチング部28は、適宜地図データベース30にアクセスしてその地図データベース30に格納されているデータを読み出す。
【0016】
具体的には、この地図データベース30には、道路を表す緯度・経度や曲率,勾配,車線数,車線幅,コーナー有無などのレーン形状や道路種別のデータや、各交差点やノード点に関する情報、地図表示を行うための建物などに関する情報などが格納されると共に、道路路面上に描かれる横断歩道や一時停止線,進行方向矢印,「横断歩道あり」の菱形標示,最高速度標示,回転禁止標示などの路面標示ごとに、形状データやペイントデータ,位置データ,特徴量の大きさ,前後にある他の路面標示との距離データ,測定時における標示擦れ度を示すデータ,標示擦れ易さの度合いを示すデータなどが格納される。また、この地図データベース30は、ディスクの交換や更新条件の成立により格納する地図データを最新のものに更新可能である。
【0017】
マップマッチング部28には、推測航法部24において検出・作成された自車両位置の初期座標及びその初期座標からの推測軌跡の情報が供給される。マップマッチング部28は、推測航法部24から情報供給される自車両のGPSに基づく初期座標および推測軌跡に基づいて、自車両の位置を地図データベース30に格納されている道路自体のリンク情報を利用してその道路リンク上に補正するマップマッチング(第1マップマッチング)を行うと共に、その第1マップマッチングの結果として検出された自車両の位置の精度を示す位置精度レベルを算出する機能を有している。
【0018】
マップマッチング部28は、上記の如く第1マップマッチングの結果得られた自車両の現在位置から所定範囲内の道路路面上にある路面標示のデータを地図データベース30から読み出すと共に、その自車位置から所定道路範囲内にある路面標示を自車両において認識すべき路面標示として設定する。そして、その設定後、測位検出される自車両の位置に基づいて、後述のバックカメラ32による撮像画像を用いてその設定された路面標示を認識すべきタイミングであるか否かを判別すると共に、路面標示を認識すべきときに後述の如きその認識処理を行う。
【0019】
測位部12は、また、マップマッチング部28に接続するバックカメラ32を有している。バックカメラ32は、たとえばCCDなどの電荷結合素子を用いたものであり、車両後部バンパなどに配設されており、その配設位置から車両後方の道路路面を含む所定領域の外界を撮影することができる。バックカメラ32の撮像画像は、マップマッチング部28に供給される。
【0020】
マップマッチング部28は、バックカメラ32による撮像画像から路面標示の認識を行うべきと判別する場合において、バックカメラ32から撮像画像が供給されると、その撮像画像についてエッジ抽出などの画像処理を行うことにより、道路路面に描かれる上記の路面標示や走行レーンを検出すると共に、それら路面標示や走行レーンと自車両との相対位置関係を把握する。
【0021】
マップマッチング部28は、バックカメラ32の撮像画像からの走行レーンの検出結果に基づいて、自車両が現に走行する道路上における自レーンの位置を算出する。また、路面標示の検出結果に基づいて、自車両と自車両の道路後方に存在する認識した路面標示との相対関係(具体的には、自車両からその認識路面標示までの距離)を測定すると共に、その測定結果と地図データベース30に格納されているその認識路面標示の位置データとに基づいて、自車両の位置(特に車両前後方向の位置)を認識路面標示に対してその相対位置関係にある位置に補正するマップマッチング(第2マップマッチング)を行う。
【0022】
このように、マップマッチング部28は、上記の如く、推測航法部24から推測軌跡の情報が供給されるごとに自車両の現在位置を地図データベース30に格納されている道路リンク上に補正する第1マップマッチングを行うと共に、バックカメラ32の撮像画像から認識すべき路面標示が認識された際にその認識結果による認識路面標示に基づく位置へ自車両の位置を補正する第2マップマッチングを行う。マップマッチング部28は、マップマッチングの結果として測位される自車両の現在位置の精度を示す正確性を算出する。
【0023】
マップマッチング部28は、また、マップマッチングにより測位した自車両の位置を地図データベース30に格納されている地図データと照合した結果、自車両の進行方向の所定範囲前方に支援制御を実行するのに必要な制御対象である目標の対象物(例えば、一時停止線や交差点,カーブ進入口等)が存在することとなるときは、以後、測位ごとに、その測位した自車両の位置と地図データベース30に格納されているその目標対象物の位置との関係に基づいて、自車両から進行方向前方の目標対象物までの走行レーンの中心線に沿った距離(以下、道なり残距離と称す)を算出する。
【0024】
測位部12と支援制御部14とは、互いに接続されている。測位部12で測位検知された自車両の位置や道なり残距離の情報は、例えば車内に設けられた乗員の視認可能な表示ディスプレイに供給されて、画面上に映し出されている道路地図に模式的に重畳表示されると共に、支援制御部14に供給される。
【0025】
支援制御部14は、マイクロコンピュータを主体に構成された電子制御ユニット(以下、支援ECUと称す)40を備えており、支援ECU40により自車両を道路上で走行させるうえでの運転者の操作を支援するための支援制御を実行する。この支援制御は、自車両の位置に応じて具体的には上記した自車両から目標対象物までの道なり残距離に応じて実行される例えば、特に運転者によるブレーキ操作が行われていないときや遅れているときなどに自車両を道路上の目標対象物である一時停止線や踏み切り線などの手前で停車させるための運転支援制御である一時停止制御、自車両を道路上の目標対象物となる交差点で交差すると予測される他車両と交錯させないための運転支援制御である交差点制御、自車両を対象物であるカーブコーナーに対して適切な速度で走行させるための速度制御、目標対象物までの相対距離について音声による経路案内を行うための案内制御などである。
【0026】
支援ECU40には、自車両に適当な制動力を発生させるためのブレーキアクチュエータ42、自車両に適当な駆動力を付与するためのスロットルアクチュエータ44、自車両の自動変速機の変速段を切り替えるためのシフトアクチュエータ46、自車両に適当な操舵角を付与するためのステアアクチュエータ48、及び車室内に向けてブザー吹鳴や警報出力,スピーカ出力を行うためのブザー警報器50が接続されている。支援ECU40は、上記した支援制御を実行すべく、測位部12で測位された自車両の位置や自車両と目標対象物との相対関係に基づいて、各アクチュエータ42〜50に対して適当な駆動指令を行う。各アクチュエータ42〜50は、支援ECU40から供給される駆動指令に従って駆動される。
【0027】
次に、本実施例のシステムにおける具体的な動作について説明する。車両運転者は、自車位置のディスプレイへの表示や支援制御部14による支援制御の実行を希望する場合、所定のスイッチ操作により本実施例のシステムを作動可能な状態に起動させる。
【0028】
本実施例のシステムにおいて、起動後、測位部12は、推測航法部24において、所定時間ごとに、各受信機やセンサ16〜22の出力信号に基づいて、自車両の初期座標からの走行軌跡を作成する。そして、マップマッチング部28において、推測航法部24による自車両の初期座標位置および推測軌跡を、地図データベース30に地図データとして格納されている道路のリンク情報と照らし合わせることにより、自車両の位置をその道路リンク上に補正する第1マップマッチングを行う。
【0029】
マップマッチング部28は、自車位置を検出した場合、その自車位置を乗員の視認可能な表示ディスプレイの表示画面上に道路地図に重ねて表示させる。また、その自車位置から自車両が今後所定時間若しくは所定距離だけ走行したときの位置まで又は支援制御の制御対象である目標対象物の位置までの道路範囲(複数レーンのときはすべてのレーン)内の路面標示の位置や形状などのデータを地図データベース30から読み出し、その所定道路範囲内に位置する路面標示から、後に詳述する如く、バックカメラ32により認識すべき路面標示を抽出する。そして、その抽出した認識すべき路面標示の位置と常時更新される自車両の位置とに基づいて、自車位置がその認識すべき路面標示の位置近傍に達したか否かを判別することにより、バックカメラ32の撮像画像を処理してその設定された認識すべき路面標示の認識を行うべきタイミングか否かを判別する。
【0030】
マップマッチング部28は、上記タイミングの判別の結果、認識すべき路面標示の認識を行うべきときは、バックカメラ32により撮像される車両後方の撮像画像の供給を受けて、その撮像画像についてエッジ抽出などの画像処理を行う。そして、その画像処理の結果と認識すべき路面標示の形状データや位置データなどの特徴データとを比較して、その認識すべき路面標示が認識されるかを判定する。
【0031】
マップマッチング部28は、上記の判定の結果として認識すべき路面標示を認識したときは、その画像処理により特定される自車両と認識路面標示との相対関係に基づいて、自車両からその車両後方に存在する認識路面標示までの相対位置及び距離を検出すると共に、地図データベース30に格納されたその認識路面標示の位置データを読み出す。そして、認識路面標示までの相対距離とその認識路面標示の位置データとに基づいて、自車両の位置(特に車両前後方向の位置)を認識路面標示の位置と検出相対関係にある位置へ補正する第2マップマッチングを行う。
【0032】
マップマッチング部28は、上記の第2マップマッチングを行って自車位置を補正すると、地図データベース30にアクセスして、その地図データベース30に格納されているその認識路面標示から支援制御の対象である目標対象物までの道路走行上の距離を取得し、その取得した認識路面標示から目標対象物までの距離と自車両の位置とに基づいて、自車両から目標対象物までの道なり残距離の初期値を算出する。
【0033】
また、マップマッチング部28は、所定道路範囲内の認識すべき路面標示を認識したときは、バックカメラ32からの撮像画像の画像処理を行うことで道路上の走行レーンの情報を取得・認識して、その走行レーンの自車両に対する相対関係を把握する。そして、地図データベース30にアクセスして自車位置近傍での走行レーンのレーン幅やレーン数,形状等を取得して、自車両に対する走行レーンの相対関係や地図データベース30から取得したレーン数等に基づいて、自車両が現時点で走行する道路での自レーンの位置を特定する。目標対象物は走行レーンごとに異なることがあるが、上記の如く自レーンの位置が特定されると、自レーン上に存在する自車両が通過すべき進行方向前方の目標対象物が具体的に特定されるので、自レーン上の目標対象物を基準にした上記の道なり算距離を算出することが可能となる。
【0034】
推測航法部24は、所定時間ごとに、GPS受信機16並びに各種センサ18〜22を用いて自車位置の推測軌跡を作成し、その軌跡情報をマップマッチング部28に対して送信する。マップマッチング部28は、上記の如く路面標示認識に伴う第2マップマッチングを行うと、以後、推測航法部24からの推測軌跡情報を受信するごとに、まず、その第2マップマッチング時点からの推測軌跡と自レーンの位置とに基づいて自レーンの中心線上での認識路面標示の位置座標に対する自車両の位置(特に前後方向の距離)を算出する。そして、その前後方向距離、及び、自レーン上での上記した認識路面標示と目標対象物との距離に基づいて、自車両の現在位置からその目標対象物までの道なり残距離を算出する。
【0035】
測位部12において検知された自車位置の情報および道なり残距離の情報は、表示ディスプレイに供給されると共に、支援制御部14に供給される。表示ディスプレイは、測位部12からの情報に従って、表示画面上に映し出された道路地図に重畳してその自車位置や道なり残距離を模式的に表示する。
【0036】
支援制御部14の支援ECU40は、測位部12から供給される支援制御の制御対象である一時停止線や交差点などの目標対象物までの道路走行上の道なり残距離に基づいて、支援制御ごとにその制御に定められている制御開始条件が成立するか否かをそれぞれ判別する。そして、制御開始条件が成立した場合はその支援制御を開始する。
【0037】
例えば一時停止制御においては、測位される自車両から目標対象物である一時停止線までの距離が例えば30メートル(自車速に応じて変化する距離であってもよい。)になった時点でブレーキアクチュエータ42による自動ブレーキを開始して、自車両をその一時停止線で停車させる。尚、この際、ブレーキアクチュエータ42による自動的な制動ブレーキを開始する前に、運転者に対してその自動的な制動ブレーキが行われることを知らせる音声案内などを行うこととしてもよい。また、音声による経路案内制御においては、測位される自車両から交差点などの目標対象物までの距離が例えば100メートルになった時点でブザー警報器50によるスピーカ出力によって、運転者に車両前方に目標対象物が存在することを知らせる案内を行う。
【0038】
このように、本実施例のシステムにおいては、GPS受信機16に受信されるGPS信号や各種センサ18〜22の出力を用いた推測軌跡に基づいて自車両の位置を地図データベース30に格納されている地図データの道路リンク上に測位する第1マップマッチングを行うことができる。また、バックカメラ32の撮影する画像の処理により道路に描かれる路面標示を認識すると共に、その認識路面標示の地図データベース30に予め情報格納されている位置および認識時点での自車両とその認識路面標示との相対関係に基づいて自車両の位置を測位する第2マップマッチングを行うことができる。
【0039】
一般に、車両の移動距離が長くなるほど自車位置の測位誤差は大きくなり、その測位精度は低下する。一方、地図データベース30に格納されている路面標示の位置情報は一般に実測されたものであって高い精度を有するので、かかる路面標示の位置データを用いれば、自車位置を測位するうえでの測位誤差は小さくなり、その測位精度は高くなる。従って、本実施例のシステムによれば、通常はGPSやセンサ出力を用いた車両の推測軌跡に基づいて第1マップマッチングを行い、一方、カメラ撮像画像を用いた路面標示の認識時はその認識結果に基づいて第2マップマッチングを行うことで、道路に描かれる路面標示をバックカメラ32による撮像画像により認識する前においては自車両の移動距離が長くなるほど自車位置の測位精度は低下するが、路面標示を認識するごとに自車位置の測位精度を向上させることができる。
【0040】
また、本実施例のシステムにおいては、測位部12で測位された自車位置(具体的には、自車両から支援制御の対象である目標対象物までの道なり残距離)に応じて支援制御を実行することができる。測位結果として自車両が目標対象物に対して所定の相対位置関係に至る前は支援制御を行わないが、その相対位置関係に至った場合は支援制御を実行することができる。このため、本実施例のシステムによれば、自車両の測位結果に応じて一時停止制御や交差点制御,速度制御,案内制御を実施して、自車両を道路上で走行させるうえでの運転者の操作を支援することで、自車両を安全かつ適切に走行させることが可能である。
【0041】
ところで、バックカメラ32を用いて道路路面上に形成された路面標示を認識しようとする場合、その画像認識は車外の外界状況による影響を受け易いため、外界状況によっては認識結果の正確性が損なわれ、その認識精度が低下することがある。このため、路面標示の認識結果に基づく自車位置補正や目標対象物までの道なり残距離の測定が正確に行われず、車両運転者の運転を補助する支援制御が適切に行われない事態が起こり得る。
【0042】
一般に、道路路面上に形成される路面標示は、例えば、周囲の暗い夜間や光の届かない高架下では認識され難くなるが、かかる状況でも外灯の光などが適当に照射されているときは通常どおりに正確に認識されることがある。また逆に、真夏などに太陽光が直接に道路路面に照射される周囲の極端に明るいときにも認識され難いことがある。この点、支援制御の目標である目標対象物の手前の道路路面上には複数の路面標示が存在することが多いが、路面標示の認識精度の低下を抑制するうえでは、目標対象物までのすべての路面標示について認識処理を行う必要はなく、実際の通行時にその位置を正確に認識し易い路面標示のみについて認識処理を行うことが効果的である。
【0043】
そこで、本実施例のシステムは、支援制御の実行時、目標対象物の手前の道路路面に形成された路面標示のうちから、その際の外界状況に合致した位置を正確に認識し易い路面標示を選択して、その選択した路面標示を認識する処理を実行して自車位置の補正並びに目標対象物までの道なり残距離の算出を行う点に特徴を有している。以下、図2乃至図5を参照して、本実施例の特徴部について説明する。
【0044】
図2は、本実施例のシステムにおいてマップマッチング部28が外界状況と認識し易い路面標示との関係を地図データベース30に登録すべく実行する制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。図3は、本実施例のシステムにおいてマップマッチング部28が外界状況に合致した認識し易い路面標示を選択すべく実行する制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。図4は、本実施例のシステムにおいて地図データベース30に登録される目標対象物ごとの外界状況と認識し易い路面標示との関係を表した図を示す。また、図5は、本実施例のシステムにおける効果を説明するための図を示す。
【0045】
本実施例のシステムにおいて、測位部12のマップマッチング部28には、車外の外界状況を検出すべく、車両に搭載された各種のセンサが接続されている。これらのセンサとしては、車両への日射の有無に応じた信号を出力する日射センサ60、ワイパーの作動状態に応じた信号を出力するワイパーセンサ62、ウィンドシールドガラスに付着する雨滴の量に応じた信号を出力するレインセンサ64、外気温に応じた信号を出力する外気温センサ66がある。マップマッチング部28は、日射センサ60の出力に基づいて車両に対する日射の有無を判定し、ワイパーセンサ62の出力に基づいてワイパーの作動状態を検知し、レインセンサ64の出力に基づいて雨滴量を検出し、また、外気温センサ66の出力に基づいて車外の外気温を検出する。
【0046】
本実施例のシステムにおいては、まず、マップマッチング部28にて、支援制御の対象である目標対象物ごとに、その手前の道路路面上に形成される路面標示のうちで外界状況に応じた正確に認識し易いものの登録処理が実施される。具体的には、目標対象物の手前所定範囲内の道路にあるすべての路面標示についてその通過時に認識処理を行い、各路面標示の認識精度を互いに比較することにより、その認識処理時における外界状況と関連付けて認識精度のより高い路面標示の登録処理が行われる。
【0047】
この登録処理としては、まず、例えばある一つの目標対象物Aの手前所定範囲内に2つの路面標示B,Cが存在する場合においては、それら2つの路面標示B,Cを通過して目標対象物Aへ向けて自車両が走行する際に、目標対象物Aから遠い側にある路面標示Cをバックカメラ32の撮像画像から認識する処理が行われる(ステップ100)。そして、かかる認識処理が行われると、上記した各種センサ60〜66の出力に基づいて、路面標示Cの認識処理時点における日射の有無やワイパー作動状態,雨滴量,外気温などの車外における外界状況が検出される(ステップ102)。これらの外界状況が検出されれば、その検出した外界パラメータに基づいて、路面標示Cの認識処理時点における、日射の有無、日射がある場合の日時に基づく日射方向(太陽位置)、降雨,降雪などの天候、季節などが把握される。
【0048】
また、上記ステップ100において認識処理が行われると、認識した路面標示Cの位置データが地図データベース30から読み出されて、自車位置がその路面標示Cの位置に対して路面標示Cと自車両との相対関係にある位置へ補正されると共に、自車両から目標対象物Aまでの道なり残距離Dcが算出される(ステップ104)。かかる算出が行われると、以後、自車両が目標対象物Aに達するまで、その道なり残距離Dcから、推測航法部24において作成される推測軌跡に基づく走行距離dcを減算する処理が実行される(|Dc−dc|;ステップ106)。
【0049】
また、路面標示Cの認識処理後、目標対象物Aから近い側にある路面標示Bをバックカメラ32の撮像画像から認識する処理が行われる(ステップ108)。そして、かかる認識処理が行われると、また、上記した各種センサ60〜66の出力に基づいて、路面標示Bの認識処理時点における日射の有無やワイパー作動状態,雨滴量,外気温などの車外における外界状況が検出される(ステップ110)。これらの外界状況が検出されれば、その検出した外界パラメータに基づいて、路面標示Bの認識処理時点における、日射の有無、日射がある場合の日時に基づく日射方向(太陽位置)、降雨,降雪などの天候などが把握される。
【0050】
また、上記ステップ108において認識処理が行われると、認識した路面標示Bの位置データが地図データベース30から読み出されて、自車位置がその路面標示Bの位置に対して路面標示Bと自車両との相対関係にある位置へ補正されると共に、自車両から目標対象物Aまでの道なり残距離Dbが算出される(ステップ112)。かかる算出が行われると、以後、自車両が目標対象物Aに達するまで、その道なり残距離Dbから、推測航法部24において作成される推測軌跡に基づく走行距離dbを減算する処理が実行される(|Db−db|;ステップ114)。
【0051】
そして、上記ステップ112の処理後、バックカメラ32の撮像画像の処理などにより自車両が目標対象物Aを通過したと判定されると(ステップ116)、その通過時点での上記2つの路面標示B,Cの画像認識に基づく減算処理の結果を互いに比較する処理が実行される(ステップ118)。
【0052】
路面標示の画像認識に伴う第2マップマッチングによる自車位置の補正が自車両の正確な位置に行われた場合は、その後の測位誤差を考慮しなければ、上記した目標対象物の通過時点での減算処理の結果は何れもゼロとなる筈である。一方、カメラ撮像画像が高コントラストでないことなどに起因して路面標示の画像認識が適切に行われず第2マップマッチングによる自車位置の補正が自車両の正確な位置に行われなかった場合は、上記した目標対象物の通過時点での減算処理の結果はゼロにならない。そして、路面標示の画像認識の精度が低いときほど、その減算処理の結果がゼロから大きく乖離する。従って、減算処理の結果としてゼロからの乖離が比較的大きい側の画像認識ほどより精度の低いものであり、また、ゼロからの乖離が比較的小さい側の画像認識ほどより精度の高いものであると判断できる。
【0053】
そこで、上記ステップ118の処理の結果としてゼロからの乖離が比較的小さい側の画像認識による路面標示B又はCを、上記ステップ100とステップ110とでそれぞれ検出された外界状況のうち共通の外界状況(例えば、昼間の時間帯や降雨時など)においてより認識し易くてより位置精度の高い第2マップマッチングを行うことのできる路面標示として地図データベース30に登録する処理が実行される(ステップ120)。この登録は、目標対象物ごとに、共通の外界状況と関連付けて認識し易い路面標示について行われる。
【0054】
また、上記ステップ100〜120の処理は、同じ目標対象物Aに対して、異なる外界状況が検出される毎に行われる。例えば、昼間の時間帯と夜間の時間帯とではそれらの双方で、それぞれ認識し易い路面標示が登録処理される。この際、両時間帯間で同じ路面標示がそれぞれ認識し易い路面標示として登録されることも起こり得るが、両時間帯間で異なる路面標示がそれぞれ認識し易い路面標示として登録されることが起こり得る。
【0055】
このように本実施例のシステムによれば、同じ目標対象物について、複数の互いに異なる外界状況ごとに正確に認識し易い路面標示を地図データベース30に登録すること、すなわち、外界状況と正確に認識し易い路面標示との関係を地図データベース30に登録することが可能となっており、地図データベース30への認識し易い路面標示の登録を、同じ目標対象物のある道路を車両が走行すればするほど多くの外界状況にそれぞれ対応しつつ行うことが可能となっている。
【0056】
また、本実施例のシステムにおいては、上記の如く目標対象物ごとの外界状況に応じた認識し易い路面標示の登録処理が行われると、以後、その登録された外界状況と認識し易い路面標示との関係を基に、支援制御の実行直前に、マップマッチング部28にて、自車両から目標対象物までの距離を算出するうえで認識すべき路面標示の選択処理が実施される。
【0057】
この選択処理としては、まず、例えばある一つの目標対象物Aの手前所定範囲内に2つの路面標示B,Cが存在する場合において、それら2つの路面標示B,Cを通過して目標対象物Aに対して支援制御を実行しつつその目標対象物Aへ向けて自車両が走行する際に、目標対象物Aから遠い側にある路面標示Cをバックカメラ32の撮像画像から認識する処理が行われる(ステップ150)。そして、かかる認識処理が行われると、上記した各種センサ60〜66の出力に基づいて、路面標示Cの認識処理時点における日射の有無やワイパー作動状態,雨滴量,外気温などの車外における外界状況が検出される(ステップ152)。これらの外界状況が検出されれば、その検出した外界パラメータに基づいて、路面標示Cの認識処理時点における、日射の有無、日射がある場合の日時に基づく日射方向(太陽位置)、降雨,降雪などの天候、季節などが把握される。
【0058】
上記の如く外界状況が検出されると、次に、地図データベース30に登録されている外界状況と認識し易い路面標示との関係に基づいて、その認識される路面標示Cが、その検出された外界状況において認識し易い路面標示として登録されたものであるか否かが判別されることにより、第2マップマッチングを行いかつ自車両から目標対象物までの道なり残距離を算出するうえで認識すべき路面標示であるか否かが判別される(ステップ154)。
【0059】
例えば図4に示す如く、目標対象物Aから近い側にある路面標示Bが昼間の晴天時に認識し易いものとして登録され、かつ、目標対象物Aから遠い側にある路面標示Cが夜間や降雨・降雪時に認識し易いものとして登録されている状況において、外界状況として昼間の晴天が検出されたときは、路面標示Cは昼間の晴天時に認識し易い路面標示として登録されたものではないため、上記ステップ154において否定判定がなされる。一方、外界状況として夜間や降雨・降雪が検出されたときは、路面標示Cは夜間や降雨・降雪時に認識し易い路面標示として登録されたものであるため、上記ステップ154において肯定判定がなされる。
【0060】
ステップ154で肯定判定がなされたときは、次に、認識された路面標示Cの位置データが地図データベース30から読み出されて、自車位置がその路面標示Cの位置に対して路面標示Cと自車両との相対関係にある位置へ補正されると共に、自車両から目標対象物Aまでの道なり残距離Dcが算出される(ステップ156)。
【0061】
一方、ステップ154で否定判定がなされたときは、次に、目標対象物Aから近い側にある路面標示Bをバックカメラ32の撮像画像から認識する処理が行われる(ステップ158)。そして、かかる認識処理が行われると、また、上記した各種センサ60〜66の出力に基づいて、路面標示Bの認識処理時点における日射の有無やワイパー作動状態,雨滴量,外気温などの車外における外界状況が検出される(ステップ160)。これらの外界状況が検出されれば、その検出した外界パラメータに基づいて、路面標示Bの認識処理時点における、日射の有無、日射がある場合の日時に基づく日射方向(太陽位置)、降雨,降雪などの天候などが把握される。
【0062】
上記の如く外界状況が検出されると、次に、地図データベース30に登録されている外界状況と認識し易い路面標示との関係に基づいて、その認識される路面標示Bが、その検出された外界状況において認識し易い路面標示として登録されたものであるか否かが判別されることにより、第2マップマッチングを行いかつ自車両から目標対象物までの道なり残距離を算出するうえで認識すべき路面標示であるか否かが判別される(ステップ162)。
【0063】
例えば図4に示す如き状況において外界状況として昼間の晴天が検出されたときは、路面標示Bは昼間の晴天時に認識し易い路面標示として登録されたものであるため、上記ステップ162において肯定判定がなされる。一方、外界状況として夜間や降雨・降雪が検出されたときは、路面標示Bは夜間や降雨・降雪時に認識し易い路面標示として登録されたものではないため、上記ステップ162において否定判定がなされる。
【0064】
ステップ162で否定判定がなされたときは、次に、何ら処理が進められることなく今回のルーチンが終了される。一方、ステップ162で肯定判定がなされたときは、次に、認識された路面標示Bの位置データが地図データベース30から読み出されて、自車位置がその路面標示Bの位置に対して路面標示Bと自車両との相対関係にある位置へ補正されると共に、自車両から目標対象物Aまでの道なり残距離Dbが算出される(ステップ164)。
【0065】
上記ステップ156又は164において路面標示の認識時点における目標対象物Aまでの道なり残距離Dc又はDbが算出されると、以後、その算出された何れか一方の道なり残距離Dc,Dbを基に、車両走行中での目標対象物Aまでの道なり残距離が算出される。そして、その道なり残距離に基づいて支援制御の制御開始条件が成立するか否かが判別されて、条件成立の場合にその支援制御が開始される(ステップ168)。
【0066】
このように本実施例のシステムによれば、日射の有無や方向,雨滴量,外気温などの現実の外界状況を各種センサ60〜66の出力に基づいて検出すると共に、地図データベース30に登録されている外界状況と認識し易い路面標示との関係を参照して、第2マップマッチングにより自車位置を補正して自車両から目標対象物までの道なり残距離を算出するうえで認識すべき路面標示として、現実に検出される外界状況に応じた認識し易い路面標示を選択することができる。そして、その選択された路面標示のカメラ撮像画像に基づく認識結果に基づいて自車両から目標対象物までの道なり残距離を算出し、その道なり残距離に基づいて支援制御の実行処理を行うことができる。
【0067】
かかるシステムによれば、支援制御の実行処理時に検出される外界状況に応じて、第2マップマッチングを行いかつ道なり残距離を算出するうえで認識すべき路面標示を変更することができ、例えば図4に示す如き状況では、その認識すべき路面標示として、昼間の晴天時には目標対象物Aから近い側にある路面標示Bを設定し、一方、夜間や降雨・降雪時には目標対象物Aから遠い側にある路面標示Cを設定することができる。この外界状況に従って設定される路面標示は、地図データベース30に登録された外界状況と認識し易い路面標示との関係に基づくものであり、現実の外界状況に応じた比較的認識し易い路面標示である。尚、より詳細には、この設定される路面標示は、外界状況による影響だけでなく、路面標示自体の道路路面上におけるかすれによるそもそもの認識精度を考慮したものとなる。
【0068】
この点、支援制御の実行処理時に現実に検出される外界状況下において比較的認識し難い路面標示が認識すべき路面標示として設定されることは回避される。従って、本実施例のシステムによれば、第2マップマッチングや道なり残距離の算出に必要な認識すべき路面標示の認識精度の向上を図ることが可能となっている。また、現実の外界状況において認識し難い路面標示を認識することは不要である。従って、本実施例のシステムによれば、認識すべき路面標示の数を減らすことができるので、認識処理に伴う負担の軽減を図ることが可能となっている。
【0069】
夜間は昼間に比して総じて道路路面上に形成された路面標示を正確には認識し難くなるが、例えば図5に示す如く、目標対象物Aから路面標示Bに比べて比較的遠い路面標示Cが外灯の光により照射されているときは、その路面標示Cは外灯の光により照射されていない路面標示Bよりも正確に認識され易くなる。そして、かかる状況では路面標示Cが認識すべき路面標示として設定されてその認識処理が行われる。また、日時(季節や時間)によって逆光の状態で自車両が走行する状況や降雨時でも、路面標示が歩道下や高架下に存在することにより逆光に晒されていないときや雨の影響を受けないときは、その路面標示は逆光や雨に晒されている路面標示よりも正確に認識され易くなる。そして、自車両が路面標示の描かれた歩道下や高架下の道路を走行したときにその路面標示が認識すべき路面標示として設定されてその認識処理が行われる。
【0070】
このため、本実施例のシステムによれば、認識精度の比較的高い路面標示のみを認識して第2マップマッチングを行いかつ自車両から目標対象物までの道なり残距離を算出することができるので、認識路面標示に基づく自車位置の補正が大きな誤差を伴うのを回避させることができ、その誤差を低減することができ、これにより、目標対象物に対する支援制御を精度よく行うことが可能となっている。
【0071】
尚、上記の実施例においては、測位部12が特許請求の範囲に記載した「運転支援装置」に、対象物の位置データを格納する地図データベース30が特許請求の範囲に記載した「位置情報記憶手段」及び「外界状況記憶手段」に、バックカメラ32が特許請求の範囲に記載した「撮像手段」に、それぞれ相当している。また、マップマッチング部28が、図3に示すルーチン中ステップ150,158の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した「路面標示認識手段」が、ステップ156,164の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した「対象物距離算出手段」が、ステップ168の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した「運転補助手段」が、ステップ152,160の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した「外界状況検出手段」が、ステップ154,162の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した「路面標示選択手段」が、それぞれ実現されている。
【0072】
ところで、上記の実施例においては、車両の後部に配設されたバックカメラ32の撮像画像を用いて道路上の路面標示を認識することとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、かかる路面標示の認識を、車両の前部に配設されたカメラの撮像画像に基づいて行うこととしてもよい。
【0073】
また、上記の実施例においては、事前に道路走行中に得られる外界状況と正確に認識し易い路面標示との関係を地図データベース30に登録した上で、その関係に基づいて、目標対象物までの道なり残距離を算出するうえで認識すべき路面標示として、現実に検出される外界状況に応じた認識し易い路面標示を選択することとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、予め実験的に求めた外界状況と正確に認識し易い路面標示との一般的な関係を地図データベース30に登録した上で、その関係に基づいて上記の選択を行うこととしてもよい。
【0074】
また、上記の実施例においては、外界状況を各種センサ60〜66の出力に基づいて検出する。しかし、外灯の光が照射される路面標示は夜間等においても正確に認識することが可能でありその認識精度が低下することは抑制されるので、外灯の光が照射されない路面標示に比べて認識し易い。そこで、予め外灯と路面標示との位置関係を地図データベース30に登録しておき、車両において路面標示の認識処理が行われる時点における自車両に対する外灯の位置に基づいて、その路面標示が外灯の光が照射されるものであるか或いは外灯の光が照射されないものであるかを判別して、その路面標示を認識し易い外界状況にあるか否かを検出することとしてもよい。そして、路面標示が認識し易い外界状況であれば、その路面標示を目標対象物までの道なり残距離を算出するうえで認識すべき路面標示として選択することとすればよい。かかる構成においても、現実の外界状況に応じた認識し易い路面標示を目標対象物までの道なり残距離を算出するうえで認識すべき路面標示として選択するので、道なり残距離の算出に必要な認識すべき路面標示の認識精度の向上を図ることが可能となり、目標対象物に対する支援制御を精度よく行うことが可能となる。
【0075】
尚、一般的に、路面標示に外灯の光が照射されるのは日没後の夜間である。従って、外灯と路面標示との位置関係に基づく路面標示が認識し易い外界状況にあるか否かの検出は、日時に基づいて夜間(季節に応じてその期間は変動し得る。)と判定されるときにのみ行うこととすればよい。
【0076】
また、この変形例の構成においては、日時に応じて車外の外界状況の検出手法を変更するものとし、夜間のときは外灯と路面標示との位置関係に基づいて路面標示が認識し易い外界状況にあるか否かを検出する一方、昼間のときは上記の各種センサ60〜66の出力に基づいて日射の有無や方向,雨滴量,外気温などの現実の外界状況を検出することとしてもよい。
【0077】
更に、上記の実施例においては、外界状況として日射の有無や方向,雨滴量,外気温を検出することとし、それら外界状況と関連付けて正確に認識し易い路面標示を選択することとしている。一般に、道路路面の照度が高過ぎると、カメラ撮像画像からの道路上に描かれた路面標示の認識が困難となり、また、道路路面の照度が低すぎても、同様にカメラ撮像画像からの路面標示の認識が困難となる。そこで、外界状況として道路路面の照度を検出することとし、検出された照度が、予め路面標示の認識が比較的容易となるとして定められた下限値と上限値との間の規定範囲内にある道路の位置に形成された路面標示を、目標対象物までの道なり残距離を算出するうえで認識すべき路面標示として選択することとしてもよい。かかる構成においても、正確に認識し易い照度で照らされている路面標示を目標対象物までの道なり残距離を算出するうえで認識すべき路面標示として選択するので、道なり残距離の算出に必要な認識すべき路面標示の認識精度の向上を図ることが可能となり、目標対象物に対する支援制御を精度よく行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の一実施例である車両に搭載されるシステムの構成図である。
【図2】本実施例のシステムにおいて外界状況と認識し易い路面標示との関係を地図データベースに登録すべく実行される制御ルーチンの一例のフローチャートである。
【図3】本実施例のシステムにおいて外界状況に合致した認識し易い路面標示を選択すべく実行される制御ルーチンの一例のフローチャートである。
【図4】本実施例のシステムにおいて地図データベースに登録される目標対象物ごとの外界状況と認識し易い路面標示との関係を表した図である。
【図5】本実施例のシステムにおける効果を説明するための図である。
【符号の説明】
【0079】
12 測位部
16 GPS受信機
18 方位センサ
20 Gセンサ
22 車速センサ
24 推測航法部
28 マップマッチング部
30 地図データベース
32 バックカメラ
60 日射センサ
62 ワイパーセンサ
64 レインセンサ
66 外気温センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周辺を撮像する撮像手段による撮像画像に基づいて、道路路面に形成された路面標示を認識する路面標示認識手段と、前記路面標示と目標対象物との相対位置情報を予め記憶する位置情報記憶手段と、前記路面標示認識手段により認識された前記路面標示と目標対象物との相対位置情報に基づいて、自車両から目標対象物までの距離を算出する対象物距離算出手段と、前記対象物距離算出手段の算出結果に基づいて、車両運転者による車両運転の補助を行う運転補助手段と、を備える運転支援装置であって、
車外の外界状況を検出する外界状況検出手段と、
一の目標対象物に対する複数の前記路面標示のうちから、前記外界状況検出手段の検出結果に応じた認識し易い前記路面標示を、自車両から目標対象物までの距離を算出するうえで認識すべき前記路面標示として選択する路面標示選択手段と、
を備えることを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記外界状況検出手段は、日時に応じて、外界状況の検出手法を変更することを特徴とする請求項1記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記外界状況検出手段は、日射状態に基づいて外界状況を検出することを特徴とする請求項1又は2記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記外界状況検出手段は、外灯と前記路面標示との位置関係に基づいて外界状況を検出することを特徴とする請求項1又は2記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記路面標示ごとに、車両走行時に特定される外界状況と認識し易さの度合いとの関係を外界状況記憶手段に登録する外界状況登録手段を備え、
前記路面標示選択手段は、次回以降の走行時、前記外界状況記憶手段に登録されている前記関係に基づいて前記外界状況検出手段の検出結果に応じた認識し易い前記路面標示を、自車両から目標対象物までの距離を算出するうえで認識すべき前記路面標示として選択することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記外界状況検出手段は、外界状況として道路路面の照度を検出すると共に、
前記路面標示選択手段は、前記外界状況検出手段により照度が規定範囲内にある道路位置に形成された前記路面標示を、自車両から目標対象物までの距離を算出するうえで認識すべき前記路面標示として選択することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項記載の運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−129867(P2008−129867A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−314540(P2006−314540)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】