説明

過給機付きエンジン

【課題】フューエルカット時にて減速感を適正に制御できる過給機付きエンジンを提供すること。
【解決手段】この過給機付きエンジン1は、エンジン2と、このエンジン2を動力源として駆動される過給機4と、エンジン2の吸気量を調整するスロットルバルブ33とを備えている。また、この過給機付きエンジン1では、エンジン2のフューエルカット時であってエンジン2と過給機4との連結状態において、スロットルバルブ33の開度制御により車両の減速感制御が行われている。これにより、フューエルカット時における減速感制御の自由度が拡大されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、過給機付きエンジンに関し、さらに詳しくは、フューエルカット時にて減速感を適正に制御できる過給機付きエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両走行時には、車両の減速感(アクセルOFFのときの減速度)を適切に制御したいという要請がある。例えば、市街地などでの低速走行時には、減速感が大きいことが好ましく、高速道路などでの高速走行時には、減速感が小さいことが好ましい。また、例えば、傾斜路の下り走行時にて、減速感が小さ過ぎるとドライバーが強くブレーキを踏む必要があり、逆に、減速感が大き過ぎるとドライバーがアクセルペダルを踏み込む必要がある。したがって、減速感を所定の目標値(目標減速感)に制御できることが好ましい。
【0003】
しかしながら、フューエルカット時には燃料噴射制御による減速感制御ができないため、他の方法にて減速感を適正に制御する必要がある。このような課題に関する従来の過給機付きエンジンとして、特許文献1に記載される技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−257449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、フューエルカット時にて減速感を適正に制御できる過給機付きエンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明にかかる過給機付きエンジンは、エンジンと、前記エンジンを動力源として駆動される過給機と、前記エンジンの吸気量を調整するスロットルバルブとを備える過給機付きエンジンであって、前記エンジンのフューエルカット時かつ前記エンジンと前記過給機との連結状態にて、前記スロットルバルブの開度制御により減速感制御が行われることを特徴とする。
【0007】
この過給機付きエンジンでは、エンジンのフューエルカット時かつエンジンと過給機との連結状態にて、スロットルバルブの開度制御により減速感制御が行われる。減速感の制御幅(減速感制御の自由度)は、エンジンと過給機とが切り離し状態にある場合よりも、エンジンと過給機とが連結状態にある場合の方が大きい。また、スロットルバルブの開度を増減して過給機の負荷を調整することにより、エンジンの負荷が変化して車両の減速感が制御される。したがって、エンジンと過給機との連結状態にてスロットルバルブの開度制御が行われることにより、フューエルカット時における減速感制御の自由度が拡大される。これにより、車両の減速感をより適正に制御できる利点がある。
【0008】
また、この発明にかかる過給機付きエンジンは、前記エンジンから前記過給機への動力伝達をON/OFFする機構を有する。
【0009】
この過給機付きエンジンは、減速感の目標値に応じてエンジンから過給機への動力伝達をON/OFFすることにより、上記した過給機の負荷調整による減速感の制御幅が拡大される。例えば、より大きな減速感が必要なときには、エンジンと過給機とが連結されてエンジンから過給機への動力伝達がONに設定される。一方、より小さい減速感を実現したいときには、エンジンと過給機とが切り離されてエンジンから過給機への動力伝達がOFFに設定される。これにより、車両の減速感をより適正に制御できる利点がある。
【0010】
また、この発明にかかる過給機付きエンジンは、前記エンジンのフューエルカット時かつ前記エンジンと前記過給機との連結状態にて、前記スロットルバルブの開度が前記過給機の負荷の大きさに対応して増加される。
【0011】
この過給機付きエンジンでは、スロットルバルブの開度を過給機の負荷の大きさに対応して増加させることにより、減速感が大きくなることが抑制される。これにより、これにより、車両の減速感を適正に制御できる利点がある。
【発明の効果】
【0012】
この発明にかかる過給機付きエンジンでは、エンジンのフューエルカット時かつエンジンと過給機との連結状態にて、スロットルバルブの開度制御により減速感制御が行われる。減速感の制御幅(減速感制御の自由度)は、エンジンと過給機とが切り離し状態にある場合よりも、エンジンと過給機とが連結状態にある場合の方が大きい。また、スロットルバルブの開度を増減して過給機の負荷を調整することにより、エンジンの負荷が変化して車両の減速感が制御される。したがって、エンジンと過給機との連結状態にてスロットルバルブの開度制御が行われることにより、フューエルカット時における減速感制御の自由度が拡大される。これにより、車両の減速感をより適正に制御できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、この発明の実施例にかかる過給機付きエンジンを示す構成図である。
【図2】図2は、図1に記載した過給機付きエンジンの作用を示すフローチャートである。
【図3】図3は、図1に記載した過給機付きエンジンの作用を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施例の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施例に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【実施例】
【0015】
[過給機付きエンジン]
この過給機付きエンジン1は、エンジン2と、吸気系統3と、過給機4と、制御部(図示省略)とを有する(図1参照)。エンジン2は、例えば、直列四気筒のレシプロエンジンであり、燃料供給により動力を発生する。吸気系統3は、エンジン2に吸気を供給するラインである。この吸気系統3は、エアクリーナ31とインタークーラ32とスロットルバルブ33とを有し、これらが吸気通路34上に配置されて構成される。また、吸気系統3は、吸気マニホールド21を介してエンジン2の吸気ポートに接続される。なお、スロットルバルブ33は、エンジン2に供給される空気量(吸入空気量)を調整する流量調整弁であり、例えば、アクセルペダル(図示省略)の操作により駆動される。過給機(S/C:スーパー・チャージャー)4は、エンジン2に過給を行う装置である。この過給機4は、エンジン2に連結されて、エンジン2を動力源として駆動される。また、過給機4は、吸気通路34上に配置されて、吸気通路34を通る空気を圧縮する。制御部は、ECU(Electronic Control Unit)と、各種のセンサ(図示省略)とを有する。各種センサには、例えば、アクセル開度を検出するセンサ、車両の加速度を計測する加速度センサなどが含まれる。制御部は、各種のセンサの出力結果に基づいて、エンジン2の燃料噴射制御や後述する減速感制御などを行う。
【0016】
この過給機付きエンジン1では、エンジン2が稼働すると、このエンジン2を動力源として過給機4が駆動される。すると、この過給機4により吸気通路34を通る空気圧縮されて、エンジン2の過給が行われる。これにより、エンジン2の高出力化あるいは低燃費化が実現される。
【0017】
[減速感制御]
ここで、この過給機付きエンジン1では、フューエルカット時にて以下のように減速感制御が行われる(図2参照)。まず、アクセルOFFであり且つフューエルカット実行中であるか否かが判定される(ST1およびST2)。アクセルOFFか否かの判定は、制御部5のアクセル開度センサの出力値に基づいて行われる。また、フューエルカット実行中か否かの判定は、ECU51によるエンジン2の燃料噴射制御の出力結果に基づいて行われる。そして、ステップST1およびステップST2の双方が肯定判定の場合には、ステップST3に進み、ステップST1またはステップST2のいずれかが否定判定の場合(アクセルONである或いはフューエルカット実行中でないと判定された場合)には、減速感制御の処理が終了される。
【0018】
次に、ステップST1およびステップST2にてアクセルOFFであり且つフューエルカット実行中であると判定された場合(肯定判定の場合)には、減速感制御の要否が判定される(ST3)。減速感制御の要否の判定は、例えば、エンジンの燃費や車両の走行条件との関係に基づいて行われる。このステップST3が肯定判定の場合には、次のステップST4に進み、否定判定の場合(減速感制御が必要でないと判定された場合)には、減速感制御の処理が終了される。
【0019】
次に、ステップST3にて減速感制御が必要であると判定された場合(肯定判定の場合)には、減速感の目標値が算出される(ST4)。減速感の目標値は、所定のマップに基づいて算出される。
【0020】
次に、減速感の目標値を達成するにあたり過給機4が必要か否か判定される(ST5)。過給機4が必要か否かの判定は、例えば、減速感の目標値と車両の減速度の測定値との比較結果に基づいて行われる。すなわち、フューエルカット時にてスロットル開度制御により減速感を制御できる幅(減速感の制御幅)は、エンジン2のみの場合よりも、エンジン2と過給機4とが連結状態にある場合の方が大きい(図3参照)。したがって、より大きな減速感が必要な場合(例えば、減速感の目標値が所定値以上の場合)には、過給機4が必要であると判定(肯定判定)されて、エンジンと過給機との連結を維持したままステップST7に進む。一方、小さい減速感を実現したい場合(例えば、減速感の目標値が所定値以下の場合)には、過給機4が必要でないと判定(否定判定)されて、エンジン2と過給機4との切り離し(連結の解除)が行われ(ST6)、その後にステップST7に進む。なお、エンジン2と過給機4との切り離し機構には、公知のものが採用され得る。また、車両の減速度は、制御部5の加速度センサの出力値として取得される。
【0021】
次に、スロットルバルブ33の開度制御(スロットル開度制御)により車両の減速感が制御される(ST7)。例えば、エンジン2と過給機4との連結状態では、以下のように減速感が制御される。まず、減速感を大きくする場合には、スロットル開度を減少させる。すると、吸気通路34の抵抗が増加して過給機4の負荷が増加する。これにより、過給機4に連結されたエンジン2の負荷が増加して、車両の減速感が大きくなる。一方、減速感を小さくする場合には、スロットル開度を増加させる。すると、吸気通路34の抵抗が減少して過給機4の負荷が減少する。これにより、過給機4に連結されたエンジン2の負荷が減少して、車両の減速感が小さくなる。また、エンジン2と過給機4との切り離し状態においても、スロットル開度制御により車両の減速感が制御され得る。
【0022】
次に、減速感制御を終了するか否かの判定が行われる(ST8)。このステップST8では、例えば、ドライバーがアクセルペダルをONにした場合、限界エンジン回転数にて燃料噴射制御が行われた場合などに、減速感制御を終了すると判定される。そして、このステップST8が肯定判定の場合には、減速感制御が終了され、否定判定の場合には、ステップST4に戻る。
【0023】
[効果]
以上説明したように、この過給機付きエンジン1では、エンジン2のフューエルカット時かつエンジン2と過給機4との連結状態にて、スロットルバルブ33の開度制御により減速感制御が行われる(図1および図2参照)。減速感の制御幅(減速感制御の自由度)は、エンジンと過給機とが切り離し状態にある場合よりも、エンジン2と過給機4とが連結状態にある場合の方が大きい(図3参照)。また、スロットルバルブ33の開度を増減して過給機4の負荷を調整することにより、エンジン2の負荷が変化して車両の減速感が制御される。したがって、エンジン2と過給機4との連結状態にてスロットルバルブ33の開度制御が行われることにより、フューエルカット時における減速感制御の自由度が拡大される。これにより、車両の減速感をより適正に制御できる利点がある。
【0024】
また、この過給機付きエンジン1は、エンジン2から過給機4への動力伝達をON/OFFする機構を有する。動力伝達のON/OFF機構は、エンジン2と過給機4とを連結/切り離しできる機構であり、公知のものが採用され得る。かかる構成では、減速感の目標値に応じてエンジン2から過給機4への動力伝達をON/OFFすることにより、上記した過給機4の負荷調整による減速感の制御幅が拡大される。例えば、より大きな減速感が必要なときには、エンジンと過給機とが連結されてエンジン2から過給機4への動力伝達がONに設定される。一方、より小さい減速感を実現したいときには、エンジン2と過給機4とが切り離されてエンジン2から過給機4への動力伝達がOFFに設定される。これにより、車両の減速感をより適正に制御できる利点がある。
【0025】
また、この過給機付きエンジン1では、エンジン2のフューエルカット時かつエンジン2と過給機4との連結状態にて、スロットルバルブ33の開度が過給機4の負荷の大きさに対応して増加されることが好ましい。すなわち、過給機4の連結状態におけるスロットルバルブ33の開度と、過給機4の分離状態におけるスロットルバルブ33の開度とが同じ場合には、過給機4がエンジン2に連結されたときに、過給機4の負荷により減速感が大きくなる。そこで、スロットルバルブ33の開度を過給機4の負荷の大きさに対応して増加させることにより、減速感が大きくなることが抑制される。これにより、これにより、車両の減速感を適正に制御できる利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上のように、この発明にかかる過給機付きエンジンは、フューエルカット時にて減速感を適正に制御できる点で有用である。
【符号の説明】
【0027】
1 過給機付きエンジン
2 エンジン
21 吸気マニホールド
3 吸気系統
31 エアクリーナ
32 インタークーラ
33 スロットルバルブ
34 吸気通路
4 過給機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンを動力源として駆動される過給機と、前記エンジンの吸気量を調整するスロットルバルブとを備える過給機付きエンジンであって、
前記エンジンのフューエルカット時かつ前記エンジンと前記過給機との連結状態にて、前記スロットルバルブの開度制御により減速感制御が行われることを特徴とする過給機付きエンジン。
【請求項2】
前記エンジンから前記過給機への動力伝達をON/OFFする機構を有する請求項1に記載の過給機付きエンジン。
【請求項3】
前記エンジンのフューエルカット時かつ前記エンジンと前記過給機との連結状態にて、前記スロットルバルブの開度が前記過給機の負荷の大きさに対応して増加される請求項1または2に記載の過給機付きエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−209800(P2010−209800A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57028(P2009−57028)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】