説明

過電流保護回路

【課題】 電路を遮断する精度が環境温度の変化によって低下しない過電流保護回路を実現する。
【解決手段】 検出抵抗R3に流れる過電流を検出するカレントミラー回路9を構成する第1および第2のトランジスタT1,T2は同じ温度特性を有する。第1および第2の制限抵抗R1,R2と、検出抵抗R3と、電流I1,I2とには、R1=R2−(I3/I1)R3の関係があり、過電流が流れる前はI1>I2、過電流が流れた瞬間以降はI2>I1となるように設定されている。上記の式には、ベースエミッタ間電圧など、温度特性によって変動するパラメータが存在しないため、環境温度が変化した場合であっても第2のトランジスタT2が第4のトランジスタT4をオンするタイミングが変動しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、過電流保護回路に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、従来の過電流保護回路を示す回路図である。従来の過電流保護回路7は、電流供給源側P1から電流供給対象側P2に供給される過電流を検出するための検出抵抗R3と、電流供給側P1から過電流が流れたときに電流供給対象側P2への電路5を遮断するためのNPN型のバイポーラトランジスタT3と、過電流が流れたときにトランジスタT3をオフするための電流カット回路8と、検出抵抗R3に流れる電流をモニタするPNP型のバイポーラトランジスタT5と、トランジスタT5の動作電流を制限する制限抵抗R7と、トランジスタT5がオンしたときにオンするNPN型のバイポーラトランジスタT6と、トランジスタT6の動作電流を制限する制限抵抗R6とを備える。
【0003】
過電流が発生しない通常時は、トランジスタT5のベース・エミッタ間電圧Vfが低くトランジスタT5がオンしないため、トランジスタT6はオフ状態を維持する。このため、電流カット回路8はハイレベル信号を出力してトランジスタT3がオン状態を維持し、電流供給対象側P2に電流が供給される。また、検出抵抗R3に過電流が流れると、トランジスタT5がオンするため、トランジスタT6がオンし、電流カット回路8がローレベル信号を出力してトランジスタT3がオフになり、電路5が遮断され、電流供給対象側P2が過電流から保護される。
【0004】
【特許文献1】特開平7−170295号公報(第9〜11段落、図1)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、トランジスタには温度特性が存在するため、過電流保護回路7が置かれている環境温度が変化すると、トランジスタT5のベース・エミッタ間電圧Vfが変動するので、過電流の検出精度が低下する。例えば、環境温度が室温(25℃)よりも上昇した場合に、室温条件下の設計時に想定した過電流よりも小さい過電流が流れたときにトランジスタT5がオンして電路5が遮断されてしまうおそれがある。また、逆に、環境温度が室温よりも低下した場合に、想定過電流よりも大きい過電流が流れたときでもトランジスタT5がオンしないで電路5が遮断されず、電流供給対象が破壊されてしまうおそれがある。
つまり、従来の過電流保護回路は、電路を遮断する精度が環境温度の変化によって低下するという問題がある。
【0006】
そこでこの発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、電路を遮断する精度が環境温度の変化によって低下しない過電流保護回路を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、電流供給源(P1)から電流供給対象(P2)に電流を供給する電路(5)に接続された、過電流を検出するための検出抵抗(R3)を備えており、前記過電流が検出されたときに前記電路を遮断する過電流保護回路(1)において、エミッタが前記検出抵抗の前記電流供給対象側に接続されており、かつ、ベースおよびコレクタが結合された第1のトランジスタ(T1)と、前記第1のトランジスタのエミッタに接続された第1の制限抵抗(R1)と、前記第1のトランジスタのコレクタに接続された第1の定電流源(10)と、エミッタが前記検出抵抗の前記電流供給源側に接続されており、前記第1のトランジスタと同一の温度特性を有する第2のトランジスタ(T2)と、前記第2のトランジスタのエミッタに接続された第2の制限抵抗(R2)と、前記第2のトランジスタのコレクタに接続された第2の定電流源(11)と、を備えており、かつ、前記第1および第2のトランジスタの各ベース間が接続されてなるカレントミラー回路(9)と、前記第2のトランジスタのコレクタに接続されており、そのコレクタに流れるコレクタ電流が所定値以上になった場合に動作して前記電路を遮断する電流遮断回路(6)と、を備えており、前記第2のトランジスタのコレクタ電流が、前記検出抵抗に過電流が流れていないときには前記所定値未満を維持し、かつ、前記検出抵抗に過電流が流れたときには前記所定値以上となるように前記カレントミラー回路が構成されてなるという技術的手段を用いる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の過電流保護回路(1)において、前記第1の制限抵抗に流れる電流の電流値をI1、前記第2の制限抵抗に流れる電流の電流値をI2とした場合に、前記検出抵抗に過電流が流れていない場合にはI1>I2であり、かつ、前記検出抵抗に過電流が流れたときにはI2>I1となるように前記カレントミラー回路(9)が構成されてなるという技術的手段を用いる。
【0009】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の過電流保護回路(1)において、前記第1の制限抵抗の抵抗値をR1、前記第2の制限抵抗の抵抗値をR2、前記検出抵抗の抵抗値をR3、前記検出抵抗に流れる電流の電流値をI3とし、前記検出抵抗に過電流が流れた瞬間にI1=I2であるとした場合に、R1=R2−(I3/I1)R3の関係が成立するように前記カレントミラー回路(9)が構成されてなるという技術的手段を用いる。
【0010】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の過電流保護回路(1)において、前記電流遮断回路(6)は、前記電路(5)を遮断可能に前記電路に接続された第3のトランジスタ(T3)と、ベースが前記第2のトランジスタ(T2)のコレクタに接続されており、前記第2のトランジスタのコレクタ電流が前記所定値以上になったときにオンする第4のトランジスタ(T4)と、前記第4のトランジスタがオンしたときに前記第3のトランジスタをオフするトランジスタ駆動回路(2)と、を備えるという技術的手段を用いる。
【0011】
請求項5に記載の発明では、請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の過電流保護回路(1)において、前記第1および第2のトランジスタ(T1,T2)は、それぞれバイポーラトランジスタであるという技術的手段を用いる。
【0012】
請求項6に記載の発明では、請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の過電流保護回路(1)において、前記第1および第2のトランジスタ(T1,T2)は、それぞれMOSトランジスタであるという技術的手段を用いる。
【0013】
請求項7に記載の発明では、請求項4ないし請求項6のいずれか1つに記載の過電流保護回路(1)において、前記トランジスタ駆動回路(2)は、前記第4のトランジスタ(T4)の動作電圧と基準電圧とを比較し、その比較結果に応じた電圧を前記第3のトランジスタ(T3)のベースに印加する比較回路(4)であるという技術的手段を用いる。
【0014】
なお、上記各括弧内の符号は、後述する発明の実施形態において示す具体例との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0015】
(請求項1に係る発明の作用)
電流供給源から電流供給対象に電流を供給する電路に接続された検出抵抗に流れる電流の変化は、その検出抵抗の両端に接続されたカレントミラー回路によって検出される。そして、第2のトランジスタのコレクタに流れるコレクタ電流は、検出抵抗に過電流が流れていないときには、電流遮断回路を動作させることのできる所定値未満に維持され、かつ、検出抵抗に過電流が流れたときには所定値以上になる。
ここで、カレントミラー回路を構成する第1および第2のトランジスタの温度特性は同一である。
従って、第2のトランジスタのコレクタ電流は、検出抵抗に過電流が流れていないときには、電流遮断回路を動作させることのできる所定値未満に環境温度に関係なく維持され、かつ、検出抵抗に過電流が流れたときには環境温度に関係なく所定値以上になる。
【0016】
(請求項1に係る発明の効果)
電路を遮断する精度が環境温度の変化によって低下しない過電流保護回路を実現することができる。
【0017】
(請求項3に係る発明の効果)
カレントミラー回路は、R1=R2−(I3/I1)R3の関係が成立するように構成されているため、第1および第2のトランジスタのベースエミッタ間電圧など、温度特性によって変化するパラメータとは無関係に検出抵抗、第1および第2の制限抵抗の各抵抗値を決定してカレントミラー回路を構成することができる。
従って、電路を遮断する精度が環境温度の変化によって低下しない過電流保護回路を実現することができる。
【0018】
(請求項4に係る発明の作用)
検出抵抗に過電流が流れると、第2のトランジスタのコレクタ電流のうち、第2の定電流源によって吸収されない分のコレクタ電流が第4のトランジスタのベースに流れ、そのベース電流が所定値以上になると、第4のトランジスタがオンし、電路に接続された第3のトランジスタがトランジスタ駆動回路によってオフされ、電路が遮断される。
【0019】
(請求項4に係る発明の効果)
検出抵抗に過電流が流れたときに初めて第4のトランジスタがオンし、電路が遮断されるため、検出抵抗に過電流が流れていないときに電路が遮断されるおそれがない。
しかも、カレントミラー回路を構成する第1および第2のトランジスタの温度特性が同一であるため、第4のトランジスタのベース電流が流れ始めるタイミングは環境温度の影響を受けて変動しないので、電路を遮断するタイミングの精度を高めることができる。
【0020】
(請求項5に係る発明の効果)
第1および第2のトランジスタは、それぞれバイポーラトランジスタであるため、カレントミラー回路の耐圧を高めることができる。
【0021】
(請求項6に係る発明の効果)
第1および第2のトランジスタは、それぞれMOSトランジスタであるため、カレントミラー回路の応答速度を速くすることができる。
【0022】
(請求項7に係る発明の効果)
比較回路の出力によって第3のトランジスタをオンまたはオフすることができるため、電路を応答性良くかつ瞬時に遮断することができる。また、この過電流保護回路をICまたはLSIにて製造する場合は、比較回路を同じ半導体基板上に作り込むことができるため、製造効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
<第1実施形態>
この発明に係る実施形態について図1を参照して説明する。図1は、この実施形態に係る過電流保護回路の概略構成を示す回路図である。
【0024】
(概略構成)
過電流保護回路1は、電流供給源側P1から電流供給対象側P2へ電流を供給する電路5に直列に接続され、過電流を検出するための検出抵抗R3と、この検出抵抗R3の両端電圧を検出するカレントミラー回路9と、このカレントミラー回路9の動作によって電路5を遮断する電流遮断回路6とを備える。過電流保護回路1は、例えば、車両に備えられたECU(電気制御装置)の電源を過電流から保護するために用いられ、電流供給源側P1は車両のバッテリに接続され、電流供給対象側P2はECUの電源に接続される。
【0025】
カレントミラー回路9は、検出抵抗R3の電流供給対象側に一端が接続された第1の制限抵抗R1と、この第1の制限抵抗R2の他端にエミッタが接続され、ベースおよびコレクタが結合された第1のバイポーラトランジスタT1と、この第1のバイポーラトランジスタT1のコレクタに一端が接続され、他端が接地された第1の定電流源10と、検出抵抗R3の電流供給源側に一端が接続された第2の制限抵抗R2と、この第2の制限抵抗R2の他端にエミッタが接続された第2のバイポーラトランジスタT2と、この第2のバイポーラトランジスタのコレクタに一端が接続され、他端が接地された第2の定電流源11とを備える。第1および第2のバイポーラトランジスタT1,T2の各ベースは相互に接続されている。
【0026】
過電流保護回路1は、同一の半導体基板に形成されたモノリシックICまたはLSIであり、第1および第2のバイポーラトランジスタT1,T2は、モノリシック・デュアルタイプである。このため、第1および第2のバイポーラトランジスタT1,T2は、同じ温度特性を有する。
【0027】
電流遮断回路6は、電路5において検出抵抗R3の電流供給源側にコレクタが接続され、電流供給対象側にエミッタが接続された第3のバイポーラトランジスタT3と、この第3のバイポーラトランジスタT3のベースに出力が接続された電流カット回路2と、第2のバイポーラトランジスタT2のコレクタにベースが接続され、エミッタが接地された第4のバイポーラトランジスタT4と、この第4のバイポーラトランジスタT4のベースに一端が接続され、他端が接地されたプルダウン抵抗R5と、第4のバイポーラトランジスタT4のコレクタに直列に接続された制限抵抗R4とを備える。
【0028】
なお、この実施形態では、第1および第2のバイポーラトランジスタT1,T2はそれぞれPNP型であり、第3および第4のバイポーラトランジスタT3,T4はそれぞれNPN型である。
【0029】
図2は、図1に示す電流カット回路2の回路構成の一例である。この実施形態では、電流カット回路2は、比較回路(コンパレータ)を用いる。比較回路4の非反転入力は、第4のバイポーラトランジスタT4のコレクタと接続されており、反転入力には参照電圧Vrefが与えられている。比較回路4の出力は、第3のバイポーラトランジスタT3のベースに接続されている。また、過電流保護回路1をICまたはLSIにて製造する場合は、比較回路4を同じ半導体基板上に作り込むことができるため、製造効率を高めることができる。
【0030】
(抵抗値および電流値の決定)
第1の制限抵抗R1、第2の制限抵抗R2および検出抵抗R3の各抵抗値をそれぞれR1、R2、R3とし、各抵抗を流れる各電流値をそれぞれI1、I2、I3とする。
また、検出抵抗R3に過電流が流れていないときは、I1>I2、過電流が流れた瞬間は、I1=I2、過電流が流れた後は、I2>I1となるように各抵抗値を決定する。
I1、I2は、それぞれ周知の次式(1)、(2)によって求めることができる。
【0031】
I1=Is・exp(q・VBE1/kT) ・・・(1)
【0032】
I2=Is・exp(q・VBE2/kT) ・・・(2)
【0033】
ここで、Isは飽和電流、qは電荷量、VBE1は第1のバイポーラトランジスタT1のベースエミッタ間電圧、VBE2は第2のバイポーラトランジスタT2のベースエミッタ間電圧、kはボルツマン定数、Tは絶対温度である。
また、図1から、次式(3)が成立する。
【0034】
R3・I3+R1・I1+VBE1=R2・I2+VBE2 ・・・(3)
【0035】
ここで、過電流検出時は、I1=I2と設定するため、式(1)および式(2)から、次式(4)が成立する。
【0036】
VBE1=VBE2 ・・・(4)
【0037】
式(4)を式(3)に代入し、I2にI1を代入すると、次式(5)が成立する。
【0038】
R3・I3+R1・I1=R2・I1 ・・・(5)
【0039】
この式(5)からR1を求めると、次式(6)が成立する。
【0040】
R1=R2−(I3/I1)R3 ・・・(6)
【0041】
つまり、カレントミラー回路9を構成する第1および第2の制限抵抗R1,R2の各抵抗値R1,R2は、上記の式(6)を満足するように決定すればよい。また、式(6)には、ベースエミッタ間電圧VBEが含まれていないため、各抵抗値R1,R2は、トランジスタの温度特性などに影響を受けることなく決定することができる。
【0042】
(主な動作)
検出抵抗R3に過電流が流れていないときは、I1がI2よりも大きくなるため、電流I2はバイポーラトランジスタT2を通じて定電流源11に吸収され、第4のバイポーラトランジスタT4のベース電流(I2−I)は流れないので(I2−I=0)、第4のバイポーラトランジスタT4はオフの状態を維持する。
【0043】
このため、第4のバイポーラトランジスタT4はオフの状態を維持し、比較回路4の非反転入力に与えられる電圧は参照電圧Vrefよりも低いため、比較回路4はハイレベル信号を第3のバイポーラトランジスタT3のベースに出力する。これにより、第3のバイポーラトランジスタT3はオン状態を維持し、電流I3が電流供給対象側P2へ供給される。
【0044】
また、過電流保護回路1が置かれている環境温度が変化した場合であっても、第4のバイポーラトランジスタT4のベース電流は流れないので、過電流が流れていないときに環境温度の変化によって電路5が遮断されてしまうという事態が発生するおそれがない。
【0045】
次に、検出抵抗R3に過電流が流れた瞬間は、I1=I2となるが、第4のトランジスタT4のベース電流(I2−I)は流れないため、第4のトランジスタT4はオンせず、電路5は遮断されない。
【0046】
そして、検出抵抗R3に過電流が流れた瞬間以降は、I2がI1よりも大きくなり、第2のトランジスタT2のコレクタ電流が、第4のトランジスタT4をオンさせることのできる大きさ(本願の請求項1に記載の所定値に対応)以上に増加する。このため、第4のバイポーラトランジスタT4のベース電流(I2−I)が増加し、第4のバイポーラトランジスタT4がオンする。
【0047】
このため、比較回路4の非反転入力に与えられる電圧が参照電圧Vrefよりも高くなり、比較回路4がローレベル信号を第3のバイポーラトランジスタT3のベースに出力する。これにより、第3のバイポーラトランジスタT3がオフし、電路5が遮断され、過電流が電流供給対象側P2へ供給されない。また、比較回路4の出力は、2値的(デジタル的)であるため、電路5を応答性良くかつ瞬時に遮断することができる。
【0048】
また、過電流保護回路1が置かれている環境温度が変化した場合であっても、第4のバイポーラトランジスタT4のベース電流の変化は極めて小さいので、過電流が流れているときに環境温度の変化によって電路5が遮断されないという事態が発生するおそれがない。
【0049】
なお、検出抵抗R3に過電流が流れていないときに、第2のバイポーラトランジスタT2のコレクタ電流が第4のバイポーラトランジスタT4のベースに漏れても、その漏れ電流は、第4のバイポーラトランジスタT4のベースに接続されたプルダウン抵抗R5に吸収される。このため、検出抵抗R3に過電流が流れていないときに第4のバイポーラトランジスタT4が誤動作して電路5が遮断されてしまうおそれはない。
また、第4のバイポーラトランジスタT4がオンするために必要なベース電流値を上記の漏れ電流の電流値よりも十分大きな値に設定しておくことにより、プルダウン抵抗R5を省略することもできる。
【0050】
(実施形態の効果)
(1)上述したように、上記実施形態の過電流保護回路1によれば、環境温度の変化に関係なく過電流の検出精度を高めることができるため、電流供給対象を過電流から確実に保護することができる。
【0051】
(2)しかも、カレントミラー回路9を構成する第1および第2のトランジスタT1,T2の温度特性が同一であるため、第4のトランジスタT4のベース電流が流れ始めるタイミングは環境温度の影響を受けて変動しないので、電路5を遮断するタイミングの精度を高めることができる。
【0052】
(3)また、第1および第2のトランジスタT1,T2は、それぞれバイポーラトランジスタであるため、カレントミラー回路9の耐圧を高めることができる。
【0053】
<第2実施形態>
次に、この発明の第2実施形態について図3を参照して説明する。
図3は、この第2実施形態に係る過電流保護回路を示す回路図である。図3に示す過電流保護回路3は、バイポーラトランジスタに代えてMOSトランジスタ(Metal Oxide Semiconductor FET)を用いたことを特徴とする。過電流保護回路3は、第1実施形態の過電流保護回路1の各バイポーラトランジスタをMOSトランジスタに代えた以外は、同一の構成であるため、同一の構成および動作については説明を省略する。
【0054】
カレントミラー回路9を構成する第1のMOSトランジスタT1のソースは第1の制限抵抗R1に接続されており、ドレインは第1の定電流源10に接続されており、ゲートおよびドレインが結合されている。第2のMOSトランジスタT2のソースは第2の制限抵抗R2に接続されており、ドレインは第2の定電流源11に接続されている。また、第1および第2のMOSトランジスタT1,T2のゲートが相互に接続されている。
【0055】
第3のMOSトランジスタT3のソースは検出抵抗R3に接続されており、ドレインは電流供給対象側P2に接続されており、ゲートは電流カット回路2の出力に接続されている。第4のMOSトランジスタT4のベースは第2のMOSトランジスタT2のドレインに接続されており、ソースは電流カット回路2に接続されている。第1および第2のMOSトランジスタT1,T2は同じ温度特性を有する。
【0056】
以上のように、過電流保護回路3は、各トランジスタがMOSトランジスタである以外は第1実施形態の過電流保護回路1と同じ構成であり、同じ動作をするため、第1実施形態の効果(1)および(2)と同じ効果を奏することができる。また、各トランジスタがMOSトランジスタであるため、過電流の検出から電路5の遮断までの応答性をバイポーラトランジスタで構成した場合よりも良くすることができる。
【0057】
<第3実施形態>
次に、この発明の第3実施形態について図4を参照して説明する。
図4は、この第3実施形態に係る過電流保護回路を示す回路図である。図4に示す過電流保護回路1は、第1実施形態の過電流保護回路1を構成する各PNP型のバイポーラトランジスタに代えてNPN型のバイポーラトランジスタを用いたことを特徴とする。過電流保護回路1は、第1実施形態の過電流保護回路1の各PNP型のバイポーラトランジスタをNPN型のバイポーラトランジスタに代えた以外は、同一の構成であるため、同一の構成および動作については説明を省略する。
【0058】
カレントミラー回路9は、検出抵抗R3の電流供給対象側に一端が接続された第1の制限抵抗R1と、この第1の制限抵抗R2の他端にエミッタが接続され、ベースおよびコレクタが結合された第1のバイポーラトランジスタT1と、この第1のバイポーラトランジスタT1のコレクタに一端が接続され、他端が電流供給源側に接続された第1の定電流源10と、検出抵抗R3の接地側に一端が接続された第2の制限抵抗R2と、この第2の制限抵抗R2の他端にエミッタが接続された第2のバイポーラトランジスタT2と、この第2のバイポーラトランジスタのコレクタに一端が接続され、他端が電流供給源側に接続された第2の定電流源11とを備える。第1および第2のバイポーラトランジスタT1,T2の各ベースは相互に接続されている。
【0059】
各トランジスタT1〜T4は、それぞれNPN型のトランジスタである。トランジスタT1,T2は同じ温度特性を有する。
以上のように、過電流保護回路1は、各トランジスタがNPN型のバイポーラトランジスタである以外は第1実施形態の過電流保護回路1と同じ構成であり、同じ動作をするため、第1実施形態の効果(1)ないし(3)と同じ効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】この発明の実施形態に係る過電流保護回路の概略構成を示す回路図である。
【図2】図1に示す電流カット回路2の回路構成の一例である。
【図3】第2実施形態に係る過電流保護回路を示す回路図である。
【図4】第3実施形態に係る過電流保護回路を示す回路図である。
【図5】従来の過電流保護回路を示す回路図である。
【符号の説明】
【0061】
1・・過電流保護回路、2・・電流カット回路、5・・電路、6・・電流遮断回路、
9・・カレントミラー回路、10・・第1の定電流源、11・・第2の定電流源、
P1・・電流供給源側、P2・・電流供給対象側、R1・・第1の制限抵抗、
R2・・第2の制限抵抗、R3・・検出抵抗、T1・・第1のトランジスタ、
T2・・第2のトランジスタ、T3・・第3のトランジスタ、
T4・・第4のトランジスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流供給源から電流供給対象に電流を供給する電路に接続された、過電流を検出するための検出抵抗を備えており、前記過電流が検出されたときに前記電路を遮断する過電流保護回路において、
エミッタが前記検出抵抗の前記電流供給対象側に接続されており、かつ、ベースおよびコレクタが結合された第1のトランジスタと、前記第1のトランジスタのエミッタに接続された第1の制限抵抗と、前記第1のトランジスタのコレクタに接続された第1の定電流源と、エミッタが前記検出抵抗の前記電流供給源側に接続されており、前記第1のトランジスタと同一の温度特性を有する第2のトランジスタと、前記第2のトランジスタのエミッタに接続された第2の制限抵抗と、前記第2のトランジスタのコレクタに接続された第2の定電流源と、を備えており、かつ、前記第1および第2のトランジスタの各ベース間が接続されてなるカレントミラー回路と、
前記第2のトランジスタのコレクタに接続されており、そのコレクタに流れるコレクタ電流が所定値以上になった場合に動作して前記電路を遮断する電流遮断回路と、を備えており、
前記第2のトランジスタのコレクタ電流が、前記検出抵抗に過電流が流れていないときには前記所定値未満を維持し、かつ、前記検出抵抗に過電流が流れたときには前記所定値以上となるように前記カレントミラー回路が構成されてなることを特徴とする過電流保護回路。
【請求項2】
前記第1の制限抵抗に流れる電流の電流値をI1、前記第2の制限抵抗に流れる電流の電流値をI2とした場合に、
前記検出抵抗に過電流が流れていないときにはI1>I2であり、かつ、前記検出抵抗に過電流が流れたときにはI2>I1となるように前記カレントミラー回路が構成されてなることを特徴とする請求項1に記載の過電流保護回路。
【請求項3】
前記第1の制限抵抗の抵抗値をR1、前記第2の制限抵抗の抵抗値をR2、前記検出抵抗の抵抗値をR3、前記検出抵抗に流れる電流の電流値をI3とし、前記検出抵抗に過電流が流れた瞬間にI1=I2であるとした場合に、
R1=R2−(I3/I1)R3
の関係が成立するように前記カレントミラー回路が構成されてなることを特徴とする請求項2に記載の過電流保護回路。
【請求項4】
前記電流遮断回路は、
前記電路を遮断可能に前記電路に接続された第3のトランジスタと、
ベースが前記第2のトランジスタのコレクタに接続されており、前記第2のトランジスタのコレクタ電流が前記所定値以上になったときにオンする第4のトランジスタと、
前記第4のトランジスタがオンしたときに前記第3のトランジスタをオフするトランジスタ駆動回路と、を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の過電流保護回路。
【請求項5】
前記第1および第2のトランジスタは、それぞれバイポーラトランジスタであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の過電流保護回路。
【請求項6】
前記第1および第2のトランジスタは、それぞれMOSトランジスタであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の過電流保護回路。
【請求項7】
前記トランジスタ駆動回路は、前記第4のトランジスタの動作電圧と基準電圧とを比較し、その比較結果に応じた電圧を前記第3のトランジスタのベースに印加する比較回路であることを特徴とする請求項4ないし請求項6のいずれか1つに記載の過電流保護回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−225087(P2009−225087A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67062(P2008−67062)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】