説明

道路交通情報の受信装置

【課題】運転者にとって煩わしくなくて安全運転に専念できる道路交通情報の受信装置を提供する。
【解決手段】対象電波を受信する受信器170と、道路交通情報を報知する報知部192と、受信器120が対象電波を受信したとき報知部192に報知させる制御を行うCPU130と、自動車の現在位置と走行方向を演算するGPSモジュール120と、取締機の設置位置と取締機の検出車線と制限速度とを登録している位置登録データメモリ150とを有し、受信器170が対象電波を受信したとき、GPSモジュール120から受信した現在位置および走行方向データと位置登録データメモリ150から得た現在位置に存在するスピード違反取締機の検出車線情報とを比較し、走行方向データの走行方向と検出車線情報の検出車線とが一致するとき報知部に報知させ、不一致のときは制限速度を超えているとき報知させ、制限速度以下のときは報知させないようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の速度違反を監視するための監視電波を受信してその旨を自動車の運転手に報知して速度遵守を促す機能を備えた道路交通情報の受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の道路交通情報の受信装置には、自動車の速度違反を監視するための各種監視ポイントの接近を、自動車の運転手に報知する機能を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−318371号公報
【0004】
特許文献1記載の装置によれば、運転手は、走行地点毎に定められている制限速度に、走行中、変化があったことに気付かず、自車が、制限速度オーバーをしたままに不用意に走行を続けることがあり、このような場合に、不幸にして不測の事故を引き起こしてしまうことが多いが、かかる事故の発生を未然に防止するものである。
【0005】
図3は特許文献1記載の車載用ナビゲーション装置の基本構成を示すブロック図である。この車載用ナビゲーション装置300には、GPS衛星からの電波を受信してGPS測位データを出力するGPSレシーバ301が備えられ、GPSレシーバ301からの測位データに基づいてナビゲーション装置全体の制御を行うシステムコントローラ304と、各種データを入力するための入力手段としてのキーボード305と、システムコントローラ304の制御下でCD−ROMディスク306から地図データおよび現在地点に存在する各種道路交通情報を読み出し、これを出力するCD−ROMドライブ装置307と、システムコントローラ304の制御下で各種表示データを表示する表示手段としての表示ユニット308と、システムコントローラ304の制御下で各種音声データを再生して出力する音声再生手段としての音声再生ユニット309より構成されている。
【0006】
上記の各種監視ポイントは、一般にはオービス(通称:ネズミ捕り機)と呼ばれ、これには固定式のものと移動式のものとが含まれる。固定式のものには、レーダー式のものや、速度計測機(計測用カメラ)と速度警告板を備えたものがある。
また、計測センサーとしてカメラとループセンサーを備えたループコイル式のものがある。また、次世代型として、走行車両をデジタルカメラで撮影した時の写真画像のブレ等から車速を割り出す「NHシステム」と呼ばれるものが検討されている。なお、レーダー式のものには、瞬間しかレーダー波(レーダ波)を照射しないステルス型と呼ばれるものがある。
さらに、光電管式や赤外線式の計測センサーを使用し、車が一定区間を通過する時間を計測して車速を割り出すものがある。
また、レーダー式の取締機からの電波を受信する受信器を搭載して、対象電波を受信したときに、これを報知するようにしている。
【0007】
図4はスピード違反取締機からの電波を受信してこれを報知する受信装置の動作フローチャートを示している。
受信装置をスタートさせると、ステップ41でスピード違反取締機からの電波を受信したかどうか調べ、受信したら報知させていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、スピード違反取締機を検出する従来の受信装置1では、スピード違反取締機は道路の車線を走行する自動車を対象にしているので、上り車線の自動車の場合は上り車線の方向に向け、下り車線の場合は下り車線の方向に向けて電波を発振している。そして、自動車からの反射電波を受信することで自動車の速度を測定しているのであるが、しかしながら電波は反射・回折する特性があるので、道路の環境によっては上り車線方向に向けて発振した電波であっても反射・回折によって下り車線に達し、その電波を下り車線の自動車が受信することがおき、受信した自動車において警報が発せられることが生じた。このように、従来の受信装置には無駄な警報が行われたので、運転者にはとても煩わしかった。
そこで、この煩わしさを解消するため、従来の受信装置2では、自動車の走行方向とスピード違反取締機の設置位置データの方向が一致した場合には報知するが、一致しない(すなわち、対向車線の)場合は、報知しないようにしていた。
【0009】
図4は従来の受信装置2の動作フローを説明する図で、受信装置が動作開始すると、主制御部(CPU)130(図1)は、GPSモジュール120から常に現在位置と自動車の走行方向(上り車線/下り車線)のデータを受け取り(ステップ41)、ステップ42で、スピード違反取締機からの電波を受信したかどうか調べ、対象電波を受信したら、主制御部(CPU)130は位置登録データメモリ150からそのスピード違反取締機の検出車線情報を得る(ステップ43)。
この検出車線情報とGPSモジュール120から得た自動車走行方向とを比較し(ステップ44)、走行方向データの走行方向と検出車線情報の検出車線とが一致したとき報知し(ステップ45)、また一致しないとき(すなわち、対向車線のとき)報知せずにステップ41へ戻る。
このように、自動車の走行方向とスピード違反取締機の設置位置データの方向が一致した場合には報知するが、一致しない場合は、報知しないようにしていた。
【0010】
ところが、スピード違反取締機がなくても制限速度以上で走行しているとやはり危険なことに変わりはないので、対象電波を受信したら、制限速度以上で走行していた場合は同じく報知するようにし、制限速度以下で走行していた場合にのみ報知しないようにして、運転者に優しい報知を行うようにすることが望まれるようになった。
【0011】
本発明は、かかる要望に答えるためになされたもので、反対(対向)車線に向けられた対象電波を受信しても、制限速度以上で走行していた場合は報知するようにし、制限速度以下で走行していた場合にのみ報知しないようにできる受信装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、道路交通情報の受信装置に係り、スピード違反取締機から発する電波を受信する受信器と、運転者に道路交通情報を聴覚的または視覚的に運転者に報知する報知部と、前記受信器が対象電波を受信したとき前記報知部に報知させる制御を行うCPUと、を備えた道路交通情報の受信装置において、さらに、自動車の現在位置と前記自動車の走行方向を演算するGPSモジュールと、前記スピード違反取締機の設置位置と該スピード違反取締機の検出車線と各位置の制限速度とを登録している位置登録データメモリとを有し、前記受信器が対象電波を受信したとき、前記CPUが、前記GPSモジュールから受信した自動車の現在位置および走行方向データと前記位置登録データメモリから得た前記現在位置に存在するスピード違反取締機の検出車線情報とを比較し、前記走行方向データの走行方向と前記検出車線情報の検出車線とが一致するとき前記報知部に報知させ、不一致のときは制限速度を超えているとき報知させ、制限速度以下のときは報知させない制御を行うことを特徴としている。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の道路交通情報の受信装置において、前記走行方向データの走行方向と前記検出車線情報の検出車線とが一致する場合は、制限速度を超えているときの報知と制限速度以下のときの報知とを異ならせたことを特徴としている。
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の道路交通情報の受信装置において、前記走行方向データの走行方向と前記検出車線情報の検出車線とが一致する場合であって制限速度を超えているときの報知は、スピードを落とすように促す内容の報知であることを特徴と前記制限速度を超えているときの報知がスピードを落とすように促す内容の報知であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
以上の構成により、反対(対向)車線に向けられたスピード違反検知用の対象電波を受信しても、制限速度以上で走行していた場合は報知するようにし、制限速度以下で走行していた場合にのみ報知しないようにして、運転者に優しい受信装置を得ることができる。
また、制限速度を超えているときの報知はスピードを落とすように促すので、運転者はスピードを落とす切っ掛けが与えられ、運転者に優しい受信装置となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について、図面を参考に説明する。
図1は本発明に係る道路交通情報の受信装置のブロック図である。
図において、100は本発明に係る受信装置、110はソーラバッテリー、111は電源制御部、112は自動車のエンジンで発電機を回転させて発電した電気エネルギを充電する充電式電池である。120はGPSモジュールで、GPS受信器121と位置検出/速度演算部122から成り、GPS受信器121の受信信号が位置検出/速度演算部122で処理されて、その結果を距離・位置・速度データ受信部130に送信する。主制御部(CPU)130では、距離・位置・速度データ受信部140と、演算部および位置・登録データメモリ150が信号の授受を行なっている。
位置・登録データメモリ150の内容としては、(1)緯度・経度、(2)報知をしなければならないエリア情報(扇形のエリア)、(3)制限速度、検出車線情報等を記憶している。「スピード違反取締機が近くにある」ということを判断するために、各位置データについて上記の内容が含まれており、後述するように、位置データと自分の走行状態の情報(GPSからの情報)とを比較し、合致した場合近くである(報知するもの)と判断したら、報知をする、合致しない場合にはもちろん報知しない。
ここで言う「道路交通情報」とは、上述のスピード違反取締機(オービス)として、固定式のレーダー式、速度計測機(計測用カメラ)、速度警告板、計測センサーとしてカメラとループセンサーを備えたループコイル式のもの、「NHシステム」、ステルス型、光電管式や赤外線式の計測センサーを使用して車が一定区間を通過する時間を計測して車速を割り出すもの、移動式のものにはパトロールカーの屋根に積載されるレーダー式の取締り機等の信号および設置位置を示す情報を言う。
また、「検出車線情報」とは、スピード違反取締機(オービス)である固定式のレーダー発振器が発信しかつ受信する対象の自動車が走行する車線を言う。
【0015】
X・Kバンドのレーダー受信部160としての高周波受信器161からの受信信号を信号処理部161aで処理して主制御部130に入力している。
【0016】
また、無線受信部170として、350MHz高周波受信器171からの受信信号を信号レベル検出・検波器171aへ送り、所定の信号レベルのものを検波して主制御部130に入力している。
また、407MHz高周波受信器172の受信した信号を信号レベル検出器172aで検出して所定の信号レベル以上のものを主制御部130に入力している。
同じく、160MHz帯高周波受信器173の受信した信号を信号レベル検出器73aで検出して所定の信号レベル以上のものを主制御部130に入力している。
【0017】
また、赤外線検知部180として赤外線受信部181があり、ここで受信した赤外線信号を主制御部30に入力している。
【0018】
主制御部130は、聴覚的警報信号をアナウンス・音声出力部191へ出力し、スピーカ192で知らせる。また、視覚的警報信号をワーニングランプ・設定状態LED表示部193へ出力する。
【0019】
次に、図1の受信装置の動作について図2のフローチャートを用いて説明する。
受信装置が動作開始すると、主制御部(CPU)130(図1)は、GPSモジュール120から常に現在位置と自動車の走行方向(上り車線/下り車線)のデータを受け取り(ステップ21)、ステップ22で、スピード違反取締機からの電波を受信したかどうか調べる(なお、図ではステップ22とステップ21の後となっているが、ステップ21と入れ替わって先になったもよい。)、対象電波を受信しなければステップ21へ戻る。一方、対象電波を受信したら、主制御部(CPU)130は位置登録データメモリ150からそのスピード違反取締機の検出車線情報(同一車線か対向車線か)とその位置の制限速度情報を得る(ステップ23)。
この検出車線情報とGPSモジュール120から得た自動車走行方向とを比較し(ステップ24)、走行方向データの走行方向と検出車線情報の検出車線とが一致しないとき(すなわち、対向車線のとき)ステップ25へ行く。
一方、検出車線情報の検出車線とが一致するとき、ステップ26へ行く。
ステップ25では、制限速度を超えて走行しているか調べ、制限速度を超えて走行していない場合は報知せずに(ステップ251)、ステップ21へ戻り、制限速度を超えて走行していた場合はパターン3で報知する(ステップ252)。
一方、ステップ26でも同じく制限速度を超えて走行しているか調べ、制限速度を超えて走行していた場合はパターン2で報知し(ステップ261)、制限速度を超えて走行していない場合はパターン1で報知する(ステップ262)。
報知が終了したら、ステップ21へ戻る。
【0020】
ステップ252のパターン3の報知は、例えば、
(1)STEP1:「1キロ先、対向車線にLHシステムあり、制限速度は60キロ以下です。危険です、スピード落として。」と報知する。
【0021】
ステップ24でYes(すなわち、走行方向と位置データとが一致した)の場合には、制限速度に関係なく報知を行なって運転者にその情報提供を行うようにしている。ただし、その報知内容は、(イ)制限速度以下の時と、(ロ)超えている時とではアナウンスを変えるようにしている。
そこで、ステップ261では、制限速度以下の時の1例として、通常に情報提供した場合、下記の通り3ステップでアナウンスをする。
(1)STEP1:「1キロ先、LHシステムに注意、制限速度は60キロ以下です。」
(2)STEP2:「500メートル先、LHシステムに注意してください。」
(3)STEP3:「カメラは正面です。通過速度は50キロ以下です。」
【0022】
また、ステップ262での制限速度を超えている時は、例えば、ステップ1のみ、
(1)STEP1:「1キロ先、LHシステムに注意、制限速度は60キロ以下です。危険です、スピード落として。」
というようにスピードダウンを促す内容の報知をする。
【0023】
このようにすることにより、運転者に優しい状況に応じた報知を行うようにできると共に、スピード違反を回避することができる。
【0024】
また、技術の進歩により、対向で取締を行っていた場合であっても制限速度以上で走行している車が摘発されるということも最近生じているが、本発明により安全運転を運転者に促すことで、このような場合にも役立つこととなる。
【0025】
このように、本発明によれば、反対(対向)車線に向けられたスピード違反検知用の電波を受信した場合は受信制限速度を超えて走行していたとき報知し、制限速度以下で走行していた場合に報知しないようにしたので、運転者にとって安全運転に専念でき、交通事故の予防にも寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る道路交通情報の受信装置のブロック図である。
【図2】本発明に係る受信装置の動作を説明するフローチャートである。
【図3】従来の道路交通情報の受信装置のブロック図である。
【図4】従来の受信装置の動作を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0027】
100 本発明に係る受信装置
110 ソーラバッテリー
111 電源制御部
112 充電式電池
120 GPSモジュール
121 GPS受信器
122 位置検出/速度演算部
130 主制御部(CPU)
130 距離・位置・速度データ受信部
150 位置・登録データメモリ
160 X・Kバンドのレーダー受信部
161 高周波受信器
161a 信号処理部
170 無線受信部
171 350MHz高周波受信器
171a 信号レベル検出・検波器
172 307MHz高周波受信器
172a 信号レベル検出器
173 160MHz帯高周波受信器
173a 信号レベル検出器
180 赤外線検知部
181 赤外線受信部
191 アナウンス・音声出力部
192 スピーカ
193 ワーニングランプ・設定状態LED表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピード違反取締機から発する電波を受信する受信器と、運転者に道路交通情報を聴覚的または視覚的に運転者に報知する報知部と、前記受信器が対象電波を受信したとき前記報知部に報知させる制御を行うCPUと、を備えた道路交通情報の受信装置において、
さらに、自動車の現在位置と前記自動車の走行方向を演算するGPSモジュールと、前記スピード違反取締機の設置位置と該スピード違反取締機の検出車線と各位置の制限速度とを登録している位置登録データメモリとを有し、
前記受信器が対象電波を受信したとき、前記CPUが、前記GPSモジュールから受信した自動車の現在位置および走行方向データと前記位置登録データメモリから得た前記現在位置に存在するスピード違反取締機の検出車線情報とを比較し、前記走行方向データの走行方向と前記検出車線情報の検出車線とが一致するとき前記報知部に報知させ、不一致のときは制限速度を超えているとき報知させ、制限速度以下のときは報知させない制御を行うことを特徴とする道路交通情報の受信装置。
【請求項2】
前記走行方向データの走行方向と前記検出車線情報の検出車線とが一致する場合は、制限速度を超えているときの報知と制限速度以下のときの報知とを異ならせたことを特徴とする請求項1記載の道路交通情報の受信装置。
【請求項3】
前記制限速度を超えているときの報知は、スピードを落とすように促す内容の報知であることを特徴とする請求項1または2記載の道路交通情報の受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−257457(P2007−257457A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−82935(P2006−82935)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(593026627)セルスター工業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】