説明

遮光部材、遮光部材の作製方法、紫外線吸収フィルム、赤外線吸収フィルム、フォトマスク、及び電磁波シールドフィルム

【課題】基材との密着性に優れた金属粒子含有膜を備え、種々の波長に対する遮光性に優れる遮光部材の作製方法を提供すること。
【解決手段】(a)露光によりラジカルを発生しうる基材上に、ラジカル重合可能な不飽和部位と金属イオン又は金属塩を吸着する部位とを有する化合物を接触させた後、露光を行うことにより、前記基材上に直接結合したポリマーを生成させてポリマー層を形成する工程と、(b)該ポリマー層に金属イオン又は金属塩を付与する工程と、(c)該金属イオン又は金属塩中の金属イオンを還元して、体積平均粒径が5nm以上500nm以下の金属粒子を析出させる工程と、を有することを特徴とする遮光部材の作製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮光部材、遮光部材の作製方法、紫外線吸収フィルム、赤外線吸収フィルム、フォトマスク、及び電磁波シールドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、固体表面に、種々の機能を設ける技術が注目され、特に、固体表面のポリマーによる表面修飾は、ぬれ性、汚れ性、接着性、表面摩擦、細胞親和性などの性質を変えることができるため、工業的な分野で幅広く研究されている。
その中でも、固体表面に直接結合してなるグラフトポリマーによる表面修飾は、i)固体表面とグラフトポリマーとの間に強固な結合が形成されるという利点を有すること、ii)グラフトポリマーの構造を制御することにより、グラフトポリマーに対する親和性が高い様々な物質を吸着させることが可能となり、更に、表面に種々の機能を付与することができること、が知られている。
【0003】
このような、固体表面をグラフトポリマーによる表面修飾する際には、例えば、固体表面に光を照射し活性種を生成させ、この活性種を基点として重合性化合物を重合させる表面グラフト重合法が用いられる(例えば、非特許文献1参照。)。
【0004】
一方、微粒子を含有する層を備え、紫外線、赤外線、或いは可視光を遮断する遮光部材が知られている。
紫外線を遮光する材料の一つとしてフォトマスクが挙げられる。このフォトマスクとしては、例えば、顔料を感光性層内に分散し、走査露光によりパターン状に感光性層を硬化させることにより得られ、紫外領域をパターン状に遮光する材料が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この技術は、顔料の分散状態の維持が困難であることや、有機化合物を遮光材として用いるために光堅牢性に乏しいなどの問題を有していた。
【非特許文献1】Langmuir. 2006. 22. 8571-8575
【特許文献1】特開2001−343734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の前記従来における問題点を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明の第1の目的は、基材との密着性、及び光堅牢性に優れた金属粒子含有膜を備え、種々の波長に対する遮光性に優れる遮光部材、並びに、該遮光部材を簡便な工程により作製しうる遮光部材の作製方法を提供することにある。
本発明の第2の目的は、前記遮光部材を用いた、紫外線吸収フィルム、赤外線吸収フィルム、フォトマスク、及び電磁波シールドフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、検討の結果、以下の手段にて上記問題点を解決しうることを見出した。
すなわち、本発明の遮光部材の作製方法は、(a)露光によりラジカルを発生しうる基材上に、ラジカル重合可能な不飽和部位と金属イオン又は金属塩を吸着する部位とを有する化合物を接触させた後、露光を行うことにより、前記基材上に直接結合したポリマーを生成させてポリマー層を形成する工程と、(b)該ポリマー層に金属イオン又は金属塩を付与する工程と、(c)該金属イオン又は金属塩中の金属イオンを還元して、体積平均粒径が5nm以上500nm以下の金属粒子を析出させる工程と、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明の遮光部材の作製方法は、(a)工程において、前記ラジカル重合可能な不飽和部位と金属イオン又は金属塩を吸着する部位とを有する化合物を複数種用いることが好ましい。
また、本発明の遮光部材の作製方法において、(c)工程で析出させる金属粒子の体積平均粒径が5nm以上200nm以下であることが好ましく、5nm以上30nm以下であることがより好ましい。
【0008】
本発明の遮光部材の作製方法では、(c)工程において、紫外線の照射により金属イオン又は金属塩中の金属イオンを還元することが好ましい態様の1つである。
また、(c)工程において、ホルムアルデヒド、水素化ホウ素ナトリウム、及びジアルキルアミンボランからなる群より選択される1種以上の化合物を用いて金属イオン又は金属塩中の金属イオンを還元することが好ましい態様の1つである。
更に、(c)工程において、酸化還元電位が−2.0VvsNHE以上−0.5VvsNHE以下である還元剤溶液を用いて金属イオン又は金属塩中の金属イオンを還元することが好ましい態様の1つである。
加えて、(c)工程において、150℃〜300℃の範囲の加熱により金属イオン又は金属塩中の金属イオンを還元することが好ましい態様の1つである。
【0009】
また、本発明の遮光部材は、(a)露光によりラジカルを発生しうる基材上に、ラジカル重合可能な不飽和部位と金属イオン又は金属塩を吸着する部位とを有する化合物を接触させた後、露光を行うことにより、前記基材上に直接結合したポリマーを生成させてポリマー層を形成する工程と、(b)該ポリマー層に金属イオン又は金属塩を付与する工程と、(c)該金属イオン又は金属塩中の金属イオンを還元して、体積平均粒径が5nm以上500nm以下の金属粒子を析出させる工程と、を有する作製方法から得られる。
つまり、本発明の遮光部材は、本発明の遮光部材の作製方法により得られるものである。
【0010】
本発明の紫外線吸収フィルムは、本発明の遮光部材を用いたものであることを特徴とする。
本発明の赤外線吸収フィルムは、本発明の遮光部材を用いたものであることを特徴とする。
本発明のフォトマスクは、本発明の遮光部材を用いたものであることを特徴とする。
本発明の電磁波シールドフィルム、本発明の遮光部材を用いたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基材との密着性、及び光堅牢性に優れた金属粒子含有膜を備え、種々の波長に対する遮光性に優れる遮光部材、並びに、該遮光部材を簡便な工程により作製しうる遮光部材の作製方法を提供することができる。
また、本発明によれば、前記遮光部材を用いた、紫外線吸収フィルム、赤外線吸収フィルム、フォトマスク、及び電磁波シールドフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の遮光部材の作製方法は、(a)露光によりラジカルを発生しうる基材上に、ラジカル重合可能な不飽和部位と金属イオン又は金属塩を吸着する部位とを有する化合物を接触させた後、露光を行うことにより、前記基材上に直接結合したポリマーを生成させてポリマー層を形成する工程と、(b)該ポリマー層に金属イオン又は金属塩を付与する工程と、(c)該金属イオン又は金属塩中の金属イオンを還元して、体積平均粒径が5nm以上500nm以下の金属粒子を析出させる工程と、を有することを特徴とする。
また、本発明の遮光部材は、本発明の遮光部材の作製方法により得られたものである。そのため、以下、本発明の遮光部材は、本発明の遮光部材の作製方法を通じて詳述する。
【0013】
〔(a)工程〕
本工程においては、露光によりラジカルを発生しうる基材上に、ラジカル重合可能な不飽和部位と金属イオン又は金属塩を吸着する部位とを有する化合物を接触させた後、露光を行うことにより、基材上に直接結合したポリマーを生成させてポリマー層を形成する。
つまり、本発明においては表面グラフト重合法を用いることでポリマー層を形成する。
以下、本工程について詳細に説明する。
【0014】
(基材)
本工程では、まず、露光によりラジカルを発生しうる基材を準備する。
以下、露光によりラジカルを発生しうる基材(以下、単に「基材」と称する場合がある)を説明する。
この基材は、例えば、ポリエチレンテレフタレートのように、露光によりラジカルを発生しうる材料からなるものであってもよいし、露光によりラジカルを発生する化合物を含有するものであってもよい。
より具体的には、露光によりラジカルを発生しうる基材としては、(1)低分子ラジカル発生剤を含有する基材、(2)主鎖や側鎖にラジカル発生部位を有する高分子化合物(高分子のラジカル発生剤)を含有する基材、(3)側鎖に架橋部位とラジカル発生部位とを有する高分子化合物を含有する塗布液を支持体表面に塗布、乾燥した後、塗膜内に架橋構造を形成させてなる基材、などが挙げられる。
なお、上記(1)や(2)の基材は、基材を構成する成分中にラジカル発生剤を直接含有させて構成されるものであってもよいし、また、任意の支持体上に、ラジカル発生剤を含有する層(ラジカル発生剤含有層)を設けることで構成されていてもよい。このように、基材が、支持体とラジカル発生剤含有層とから構成される場合、その間には、密着性を向上させるために、下塗り層を設けてもよい。
また、特殊な材料を用いる方法として、(4)ラジカル発生部位を有する化合物を共有結合により支持体表面に結合させてなる基材がある。これは、支持体表面に、ラジカル発生部位と支持体結合部位とを有する化合物を結合させたものである。
【0015】
まず、上記(4)の基材について説明する。
この基材に適用しうるラジカル発生部位と支持体結合部位とを有する化合物としては、例えば、光開裂によりラジカルを発生しうるラジカル発生部位(Y)と支持体結合部位(Q)とを有する化合物(以下、適宜「光開裂化合物(Q−Y)」と称する。)等が挙げられる。
ここで、光開裂によりラジカルを発生しうるラジカル発生部位(以下、単に「重合開始部位(Y)」と称する。)は、露光により開裂しうる単結合を含む構造である。
この露光により開裂する単結合としては、カルボニルのα開裂、β開裂反応、光フリース転位反応、フェナシルエステルの開裂反応、スルホンイミド開裂反応、スルホニルエステル開裂反応、N−ヒドロキシスルホニルエステル開裂反応、ベンジルイミド開裂反応、活性ハロゲン化合物の開裂反応、などを利用して開裂が可能な単結合が挙げられる。これらの反応により、露光により開裂しうる単結合が切断される。この開裂しうる単結合としては、C−C結合、C−N結合、C−O結合、C−Cl結合、N−O結合、及びS−N結合等が挙げられる。
【0016】
また、これらの露光により開裂しうる単結合を含む重合開始部位(Y)は、前述の特定重合体のグラフト重合の起点となるため、露光により開裂しうる単結合が開裂すると、その開裂反応によりラジカルを発生させる機能を有する。このように、露光により開裂しうる単結合を有し、かつ、ラジカルを発生可能な重合開始部位(Y)の構造としては、以下に挙げる基を含む構造が挙げられる。
即ち、芳香族ケトン基、フェナシルエステル基、スルホンイミド基、スルホニルエステル基、N−ヒドロキシスルホニルエステル基、ベンジルイミド基、トリクロロメチル基、ベンジルクロライド基などである。
【0017】
このような重合開始部位(Y)は、露露光により開裂して、ラジカルが発生すると、そのラジカル周辺に特定重合体が存在する場合には、このラジカルがグラフト重合反応の起点として機能し、グラフトポリマーを生成することができる。
このため、表面に光開裂化合物(Q−Y)が導入された基材を用いてグラフトポリマーを生成させる場合には、エネルギー付与手段として、重合開始部位(Y)を開裂させうる波長での露光を用いることが必要である。
【0018】
また、支持体結合部位(Q)としては、ガラスに代表される絶縁基板表面に存在する官能基(Z)と反応して結合しうる反応性基が用いられ、その反応性基としては、具体的には、以下に示すような結合基が挙げられる。
【0019】
【化1】

【0020】
重合開始部位(Y)と、支持体結合部位(結合基)(Q)と、は直接結合していてもよいし、連結基を介して結合していてもよい。この連結基としては、炭素、窒素、酸素、及びイオウからなる群より選択される原子を含む連結基が挙げられ、具体的には、例えば、飽和炭素基、芳香族基、エステル基、アミド基、ウレイド基、エーテル基、アミノ基、スルホンアミド基、等が挙げられる。また、この連結基は更に置換基を有していてもよく、その導入可能な置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、等が挙げられる。更に、重合開始部位(Y)と支持体結合物(Q)とが、それぞれポリマーの側鎖に存在していてもよく、その場合には、連結基はポリマーの主鎖構造を含み、重合開始部位(Y)と支持体結合物(Q)との間を連結するものとなる。
【0021】
重合開始部位(Y)と、支持体結合部位(Q)と、を有する化合物(Q−Y)の具体例〔例示化合物T1〜T10〕を、開裂部と共に以下に示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0022】
【化2】

【0023】
【化3】

【0024】
【化4】

【0025】
上記の光開裂化合物(Q−Y)を結合させる支持体として、例えば、ガラス基板を用いた場合、その材質に起因して、例えば、水酸基等の官能基(Z)が、もともと存在しているため、ガラス基板上に光開裂化合物(Q−Y)を接触させ、支持体表面に存在する官能基(Z)と、支持体結合部位(Q)と、を結合させることで、支持体表面に光開裂化合物(Q−Y)が容易に導入される。また、支持体として樹脂基板を用いる場合は、支持体表面に、コロナ処理、グロー処理、プラズマ処理などの表面処理を施し、水酸基、カルボキシル基などを発生させ、その官能基(Z)と光開裂化合物(Q−Y)の支持体結合部位(Q)とを結合させてもよい。
【0026】
光開裂化合物(Q−Y)を支持体表面に存在する官能基(Z)に結合させる具体的な方法としては、光開裂化合物(Q−Y)を、トルエン、ヘキサン、アセトンなどの適切な溶媒に溶解又は分散し、その溶液又は分散液を支持体表面に塗布する方法、又は、溶液又は分散液中に支持体を浸漬する方法などを適用すればよい。これらの方法により、光開裂化合物(Q−Y)が導入された基材表面が得られる。
このとき、溶液中又は分散液の光開裂化合物(Q−Y)の濃度としては、0.01質量%〜30質量%が好ましく、特に0.1質量%〜15質量%であることが好ましい。接触させる場合の液温としては、0℃〜100℃が好ましい。接触時間としては、1秒〜50時間が好ましく、10秒〜10時間がより好ましい。
また、このとき、ラジカル発生能を有する前記化合物と共に、後述する増感剤を共存させてもよい。
【0027】
本発明において、(4)の基材に適用しうるラジカル発生部位と支持体結合部位とを有する化合物としては、前述の光開裂化合物(Q−Y)以外にも、以下に示すような、ラジカル発生部位としてエチレン性不飽和結合を有する化合物(例示化合物T11)を用いることもできる。
【0028】
【化5】

【0029】
本発明において、前記(1)の基材において用いられる低分子ラジカル発生剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーズケトン、ベンゾイルベンゾエート、ベンゾイン類、α−アシロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、トリクロロメチルトリアジンなどのトリアジン類、及びチオキサントン等の公知のラジカル発生剤を使用できる。また、通常、光酸発生剤として用いられるスルホニウム塩やヨードニウム塩なども光照射によりラジカル発生剤として作用するため、本発明ではこれらを用いてもよい。
【0030】
また、前記(2)の基材において用いられる高分子ラジカル発生剤としては、特開平9−77891号段落番号〔0012〕〜〔0030〕や、特開平10−45927号段落番号〔0020〕〜〔0073〕に記載の活性カルボニル基を側鎖に有する高分子化合物などを使用することができる。このような高分子ラジカル発生剤のうち、側鎖にラジカル発生部位を有する高分子化合物が好ましい。
また、高分子ラジカル発生剤の分子量としては、0.1万〜30万のものが好ましく、合成上の製造コントロールの観点からは、より好ましくは、0.3万〜10万のものである。なお、本明細書において、高分子化合物の分子量とは、特に断りのない限り、重量平均分子量(Mw)を指す。
【0031】
これらの低分子ラジカル発生剤や高分子ラジカル発生剤の含有量は、基材の種類、所望のグラフトポリマーの生成量などを考慮して、適宜、選択することができる。
一般的には、低分子ラジカル発生剤の場合は、基材の全固形分又はラジカル発生剤含有層に対して、0.1質量%〜40質量%の範囲であることが好ましく、また、高分子ラジカル発生剤の場合は、基材の全固形分又はラジカル発生剤含有層に対して、1.0質量%〜50質量%の範囲であることが好ましい。
【0032】
前記(3)の基材は、具体的には、任意の支持体表面に、側鎖に重合開始能を有する官能基及び架橋性基を有するポリマーを架橋反応により固定化してなる重合開始層を形成したものである。このような重合開始層を加熱又は露光することで、ラジカルを発生させることができる。
このような重合開始層の形成方法については、例えば、特開2004−123837公報に詳細に記載され、このような重合開始層も本発明の基材に適用することができる。
【0033】
上記の各基材において、感度を高める目的で、各種のラジカル発生部位を有する化合物に加え、増感剤を併用することが好ましい。
増感剤は、露光により励起状態となり、ラジカル発生部位に作用(例えば、エネルギー移動、電子移動等)することにより、ラジカルの発生を促進することが可能である。
【0034】
本発明に使用しうる増感剤としては、特に制限はなく、公知の増感剤の中から、グラフトポリマーを生成させる際に用いられる露光波長に合わせて、適宜、選択することができる。
具体的には、例えば、公知の多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えば、インドカルボシアニン、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、アクリドン類(例えば、アクリドン、クロロアクリドン、N−メチルアクリドン、N−ブチルアクリドン、N−ブチル−クロロアクリドン等)、クマリン類(例えば、3−(2−ベンゾフロイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−ベンゾフロイル)−7−(1−ピロリジニル)クマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−メトキシベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−ジメチルアミノベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3,3'−カルボニルビス(5,7−ジ−n−プロポキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−(2−フロイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−ジエチルアミノシンナモイル)−7−ジエチルアミノクマリン、7−メトキシ−3−(3−ピリジルカルボニル)クマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジプロポキシクマリン等が挙げられ、この他に、特開平5−19475号、特開平7−271028号、特開2002−363206号、特開2002−363207号、特開2002−363208号、特開2002−363209号等の各公報に記載のクマリン化合物など)が挙げられる。
【0035】
ラジカル発生部位(重合開始剤)と増感剤との組合せとしては、例えば、特開2001−305734号公報の〔0013〕〜〔0020〕に記載の電子移動型開始系[(1)電子供与型開始剤及び増感色素、(2)電子受容型開始剤及び増感色素、(3)電子供与型開始剤、増感色素及び電子受容型開始剤(三元開始系)]などの組合せが挙げられる。
より具体的には、トリアジン系の重合開始剤と、360nm〜700nmの波長に極大吸収を有する増感剤との組合せが好ましく挙げられる。
【0036】
その他の増感剤としては、塩基性核を有する増感剤、酸性核を有する増感剤、蛍光増白剤を有する増感剤などが挙げられる。これらについて順次説明する。
塩基性核を有する増感剤は、その分子内に塩基性核を有する色素であれば特に制限はなく、グラフトポリマーを生成させる際に用いられる露光波長(例えば、可視光線、可視光レーザー等)に合わせて適宜選択することができる。
本発明においては、360nm〜700nmの波長のレーザー露光を行うため、増感剤の極大吸収波長は700nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、450nm以下であることが特に好ましい。
【0037】
前記塩基性核を有する色素としては、例えば、シアニン系色素、ヘミシアニン系色素、スチリル色素系、ストレプトシアニン系色素、などが挙げられる。前記各色素には、ビス型、トリス型、ポリマー型の色素、なども含まれるものである。また、これらの中でも、シアニン系色素、ヘミシアニン系色素、スチリル系色素が好ましく、シアニン系色素、ヘミシアニン系色素がより好ましい。
前記塩基性核を有する色素がシアニン系色素の場合は、メチン基の数は1個が好ましく、ヘミシアニン系色素の場合は、メチン基の数は5個以下が好ましい。また、スチリル系色素で、アニリン母核を有している場合には、メチン鎖の数は4個以下が好ましい。
【0038】
塩基性核とは、例えば、ジェイムス(James)編「ザ・セオリー・オブ・ザ・フォトグラフィック・プロセス(The Theory of the Photographic Process)」第4版、マクミラン出版社、1977年、第8章「増感色素と減感色素」により定義され、米国特許第3,567,719号、第3,575,869号、第3,804,634号、第3,837,862号、第4,002,480号、第4,925,777号、特開平3−167546号などに記載されているものが挙げられる。
【0039】
前記塩基性核としては、例えば、ベンゾオキサゾール核、ベンゾチアゾール核及びインドレニン核などが好ましい。
また、前記塩基性核は、芳香族基が置換した塩基性核、又は3環以上縮環した塩基性核である場合が好ましい。
ここで、塩基性核の縮環数は、例えば、ベンゾオキサゾール核は2であり、ナフトオキサゾール核は3である。また、ベンゾオキサゾール核がフェニル基で置換されても、縮環数は2である。3環以上縮環した塩基性核としては3環以上縮環した多環式縮環型複素環塩基性核であればいかなるものでも良いが、好ましくは3環式縮環型複素環、及び4環式縮環型複素環が挙げられる。
【0040】
3環式縮環型複素環としては、例えば、ナフト[2,3−d]オキサゾール、ナフト[1,2−d]オキサゾール、ナフト[2,1−d]オキサゾール、ナフト[2,3−d]チアゾール、ナフト[1,2−d]チアゾール、ナフト[2,1−d]チアゾール、ナフト[2,3−d]イミダゾール、ナフト[1,2−d]イミダゾール、ナフト[2,1−d]イミダゾール、ナフト[2,3−d]セレナゾール、ナフト[1,2−d]セレナゾール、ナフト[2,1−d]セレナゾール、インドロ[5,6−d]オキサゾール、インドロ[6,5−d]オキサゾール、インドロ[2,3−d]オキサゾール、インドロ[5,6−d]チアゾール、インドロ[6,5−d]チアゾール、インドロ[2,3−d]チアゾール、ベンゾフロ[5,6−d]オキサゾール、ベンゾフロ[6,5−d]オキサゾール、ベンゾフロ[2,3−d]オキサゾール、ベンゾフロ[5,6−d]チアゾール、ベンゾフロ[6,5−d]チアゾール、ベンゾフロ[2,3−d]チアゾール、ベンゾチエノ[5,6−d]オキサゾール、ベンゾチエノ[6,5−d]オキサゾール、ベンゾチエノ[2,3−d]オキサゾール等が挙げられる。
【0041】
また、4環式縮環型複素環としては、例えば、アントラ[2,3−d]オキサゾール、アントラ[1,2−d]オキサゾール、アントラ[2,1−d]オキサゾール、アントラ[2,3−d]チアゾール、アントラ[1,2−d]チアゾール、フェナントロ[2,1−d]チアゾール、フェナントロ[2,3−d]イミダゾール、アントラ[1,2−d]イミダゾール、アントラ[2,1−d]イミダゾール、アントラ[2,3−d]セレナゾール、フェナントロ[1,2−d]セレナゾール、フェナントロ[2,1−d]セレナゾール、カルバゾロ[2,3−d]オキサゾール、カルバゾロ[3,2−d]オキサゾール、ジベンゾフロ[2,3−d]オキサゾール、ジベンゾフロ[3,2−d]オキサゾール、カルバゾロ[2,3−d]チアゾール、カルバゾロ[3,2−d]チアゾール、ジベンゾフロ[2,3−d]チアゾール、ジベンゾフロ[3,2−d]チアゾール、ベンゾフロ[5,6−d]オキサゾール、ジベンゾチエノ[2,3−d]オキサゾール、ジベンゾチエノ[3,2−d]オキサゾール、テトラヒドロカルバゾロ[6,7−d]オキサゾール、テトラヒドロカルバゾロ[7,6−d]オキサゾール、ジベンゾチエノ[2,3−d]チアゾール、ジベンゾチエノ[3,2−d]チアゾール、テトラヒドロカルバゾロ[6,7−d]チアゾール等が挙げられる。
【0042】
3環以上縮環した塩基性核として更に好ましくは、ナフト[2,3−d]オキサゾール、ナフト[1,2−d]オキサゾール、ナフト[2,1−d]オキサゾール、ナフト[2,3−d]チアゾール、ナフト[1,2−d]チアゾール、ナフト[2,1−d]チアゾール、インドロ[5,6−d]オキサゾール、インドロ[6,5−d]オキサゾール、インドロ[2,3−d]オキサゾール、インドロ[5,6−d]チアゾール、インドロ[2,3−d]チアゾール、ベンゾフロ[5,6−d]オキサゾール、ベンゾフロ[6,5−d]オキサゾール、ベンゾフロ[2,3−d]オキサゾール、ベンゾフロ[5,6−d]チアゾール、ベンゾフロ[2,3−d]チアゾール、ベンゾチエノ[5,6−d]オキサゾール、アントラ[2,3−d]オキサゾール、アントラ[1,2−d]オキサゾール、アントラ[2,3−d]チアゾール、アントラ[1,2−d]チアゾール、カルバゾロ[2,3−d]オキサゾール、カルバゾロ[3,2−d]オキサゾール、ジベンゾフロ[2,3−d]オキサゾール、ジベンゾフロ[3,2−d]オキサゾール、カルバゾロ[2,3−d]チアゾール、カルバゾロ[3,2−d]チアゾール、ジベンゾフロ[2,3−d]チアゾール、ジベンゾフロ[3,2−d]チアゾール、ジベンゾチエノ[2,3−d]オキサゾール、ジベンゾチエノ[3,2−d]オキサゾールが挙げられ、特に好ましくは、ナフト[2,3−d]オキサゾール、ナフト[1,2−d]オキサゾール、ナフト[2,3−d]チアゾール、インドロ[5,6−d]オキサゾール、インドロ[6,5−d]オキサゾール、インドロ[5,6−d]チアゾール、ベンゾフロ[5,6−d]オキサゾール、ベンゾフロ[5,6−d]チアゾール、ベンゾフロ[2,3−d]チアゾール、ベンゾチエノ[5,6−d]オキサゾール、カルバゾロ[2,3−d]オキサゾール、カルバゾロ[3,2−d]オキサゾール、ジベンゾフロ[2,3−d]オキサゾール、ジベンゾフロ[3,2−d]オキサゾール、カルバゾロ[2,3−d]チアゾール、カルバゾロ[3,2−d]チアゾール、ジベンゾフロ[2,3−d]チアゾール、ジベンゾフロ[3,2−d]チアゾール、ジベンゾチエノ[2,3−d]オキサゾール、ジベンゾチエノ[3,2−d]オキサゾールである。
【0043】
また、前記塩基性核としては、以下に示す塩基性複素環が挙げられる。
【0044】
【化6】

【0045】
ここで、Rは、水素原子、脂肪族基、又は、芳香族基を表す。
【0046】
次に、酸性核を有する増感剤について説明する。この増感剤は、酸性核を有する色素であれば特に制限はなく、露光波長に合わせて適宜選択することができる。
具体的には、例えば、メロシアニン色素、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、オキソノール色素などが挙げられ、これらの中でも、メロシアニン色素、ロダシアニン色素が好ましく、メロシアニン色素がより好ましい。
【0047】
前記酸性核とは、例えば、ジェイムス(James)編「ザ・セオリー・オブ・ザ・フォトグラフィック・プロセス(The Theory of the Photographic Process)」第4版、マクミラン出版社、1977年、第8章「増感色素と減感色素」により定義され、米国特許第3,567,719号、第3,575,869号、第3,804,634号、第3,837,862号、第4,002,480号、第4,925,777号、特開平3−167546号などに記載されているものが挙げられる。
前記酸性核が、非環式であるとき、メチン結合の末端は、マロノニトリル、アルカンスルフォニルアセトニトリル、シアノメチルベンゾフラニルケトン、シアノメチルフェニルケトン、マロン酸エステル、及びアシルアミノメチル置換したケトン類等の活性メチレン化合物などの基であることが好ましい。
【0048】
前記酸性核を形成するために必要な原子群が環式であるとき、炭素、窒素、及びカルコゲン(典型的には酸素、硫黄、セレン、及びテルル)原子からなる5員又は6員の含窒素複素環が形成されることが好ましく、前記含窒素複素環としては、例えば、2−ピラゾリン−5−オン、ピラゾリジン−3、5−ジオン、イミダゾリン−5−オン、ヒダントイン、2−チオヒダントイン、4−チオヒダントイン、2−イミノオキサゾリジン−4−オン、2−オキサゾリン−5−オン、2−チオオキサゾリン−2、4−ジオン、イソオキサゾリン−5−オン、2−チアゾリン−4−オン、チアゾリジン−4−オン、チアゾリジン−2,4−ジオン、ローダニン、チアゾリジン−2,4−ジチオン、イソローダニン、インダン−1,3−ジオン、チオフェン−3−オン、チオフェン−3−オン−1,1−ジオキシド、インドリン−2−オン、インドリン−3−オン、2−オキソインダゾリニウム、3−オキソインダゾリニウム、5,7−ジオキソ−6,7−ジヒドロチアゾロ[3,2−a]ピリミジン、シクロヘキサン−1,3−ジオン、3,4−ジヒドロイソキノリン−4−オン、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸、クロマン−2,4−ジオン、インダゾリン−2−オン、ピリド[1,2−a]ピリミジン−1,3−ジオン、ピラゾロ[1,5−b]キナゾロン、ピラゾロ[1,5−a]ベンゾイミダゾール、ピラゾロピリドン、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−2,4−ジオン、3−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾ[d]チオフェン−1,1−ジオキサイド、3−ジシアノメチン−2,3−ジヒドロベンゾ[d]チオフェン−1,1−ジオキサイドの核などが挙げられる。
【0049】
また、前記酸性核としては、以下に示すもの(酸性複素環など)が挙げられる。
【0050】
【化7】

【0051】
ここで、Rは、水素原子、脂肪族基、又は、芳香族基を表す。
【0052】
次に、蛍光増白剤を有する増感剤について説明する。
「蛍光性白化剤」("fluorescent whitening agent")としても知られる前記蛍光増白剤は、紫外〜短波可視である300nm〜450nm付近の波長を有する光を吸収可能であり、かつ400nm〜500nm付近の波長を有する蛍光を発光可能な無色ないし弱く着色した化合物である。蛍光増白剤の物理的原理及び化学性の記述は、Ullmann'sEncyclopedia of Industrial Chemistry, Sixth Edition, Electronic Release, Wiley-VCH 1998に示されている。基本的には、適する蛍光増白剤は炭素環式又は複素環式核を含んでなるπ−電子系を含有する。
【0053】
本態様の増感剤としては、蛍光増白剤であれば特に制限はなく、グラフトポリマーを生成させる際に用いられる露光波長、露光手段(例えば、可視光線や紫外光・可視光レーザー等)に合わせて適宜選択することができる。
蛍光増白剤としては、非イオン性核を有する化合物が好ましい。前記非イオン性核としては、例えば、スチルベン核、ジスチリルベンゼン核、ジスチリルビフェニル核、及びジビニルスチルベン核から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
前記非イオン性核を有する化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば、ピラゾリン類、トリアジン類、スチルベン類、ジスチリルベンゼン類、ジスチリルビフェニル類、ジビニルスチルベン類、トリアジニルアミノスチルベン類、スチルベニルトリアゾール類、スチルベニルナフトトリアゾール類、ビス−トリアゾールスチルベン類、ベンゾキサゾール類、ビスフェニルベンゾキサゾール類、スチルベニルベンゾキサゾール類、ビス−ベンゾキサゾール類、フラン類、ベンゾフラン類、ビス−ベンズイミダゾール類、ジフェニルピラゾリン類、ジフェニルオキサジアゾール類、ナフタルイミド類、キサンテン類、カルボスチリル類、ピレン類及び1,3,5−トリアジニル−誘導体などが挙げられる。これらの中でも、スチリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基から選択される少なくとも1種を有するものが好ましく、更にジスチリルベンゼン類、ジスチリルビフェニル類、又はエテニル基、芳香環基、複素環基からなる2価の連結基で連結されたビスベンゾオキサゾール類、ビスベンゾチアゾール類、などが特に好ましい。
【0054】
また、前記蛍光増白剤は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、脂肪族基、芳香族基、複素環基、カルボキシル基、スルホ基、シアノ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、ヒドロキシ基、炭素数30以下のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基)、炭素数30以下のアルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、炭素数30以下のアシルアミノスルホニル基、炭素数30以下のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、ベンジルオキシ基、フェノキシエトキシ基、フェネチルオキシ基等)、炭素数30以下のアルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、メチルチオエチルチオエチル基等)、炭素数30以下のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、p−トリルオキシ基、1−ナフトキシ基、2−ナフトキシ基等)、ニトロ基、炭素数30以下のアルキル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、炭素数30以下のアシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等)、炭素数30以下のアシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等)、カルバモイル基(例えば、カルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、モルホリノカルボニル基、ピペリジノカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、モルホリノスルホニル基、ピペリジノスルホニル基等)、炭素数30以下のアリール基(例えば、フェニル基、4−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基、α−ナフチル基等)、置換アミノ基(例えば、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アシルアミノ基等)、置換ウレイド基、置換ホスホノ基、などが挙げられる。
【0055】
前記のそれぞれの代表的な蛍光増白剤の例は、例えば、大河原編「色素ハンドブック」、講談社、84〜145頁、432〜439頁に記載されているものを挙げることができる。
前記トリアジン類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば、エチレンビスメラミン、プロピレン−1,3−ビスメラミン、N,N’−ジシクロヘキシルエチレンビスメラミン、N,N’−ジメチルエチレンビスメラミン、N,N’−ビス[4,6−ジ−(ジメチルアミノ)−1,3,5−トリアジニル]エチレンジアミン、N,N’−ビス(4,6−ジピペリジノ−1,3,5−トリアジニル)エチレンジアミン、N,N’−ビス[4,6−ジ−(ジメチルアミノ)−1,3,5−トリアジニル]−N,N’−ジメチルエチレンジアミン、などが挙げられる。代表的な蛍光増白剤の例を下記構造式(1)〜(7)に挙げる。
【0056】
【化8】

【0057】
【化9】

【0058】
これらの増感剤は、各種のラジカル発生部位を有する化合物に対して、5質量%〜200質量%程度の量で含有させることが好ましい。
【0059】
本発明に適用される基材を構成する材料としては、遮光部材に応じた物性や、前記(1)〜(4)のラジカルの発生機構に応じた材料を用いていれば、特に制限されるものではなく、その構成材料としては、有機材料、無機材料、或いは有機材料と無機材料とのハイブリッド材料のいずれでもよい。
前記(1)及び(2)の基材の材料としては、PET、ポリプロピレン、ポリイミド、アクリルなどのプラスチック材料が用いられる。
また、前記(1)、(2)、及び(3)の基材において用いられる支持体の材料としては、PET、ポリプロピレン、ポリイミド、アクリルなどのプラスチック材料や、ガラス、石英、ITO等の無機材料が用いられる。
更に、上記(4)の基材の場合、ラジカル発生部位と支持体結合部位とを有する化合物を結合する支持体として、ガラス、石英、ITO、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の表面水酸基を有する各種の支持体を用いることが好ましい。また、コロナ処理などの表面処理により表面に水酸基やカルボキシル基などを発生させた、PET、ポリプロピレン、ポリイミド、エポキシ、アクリル、ウレタンなどのプラスチック材料も好ましい支持体として挙げられる。
【0060】
また、支持体がガラス基板である場合、例えば、ケイ素ガラス基板、無アルカリガラス基板、石英ガラス基板、ガラス基材表面にITO膜を形成してなる基板等が用いられる。
基材(支持体)の厚みは、使用目的に応じて選択され、特に限定はないが、一般的には、10μm〜10cm程度である。
【0061】
(ラジカル重合可能な不飽和部位と金属イオン又は金属塩を吸着する部位とを有する化合物(特定重合性化合物))
次に、上記の露光によりラジカルを発生しうる基材上に、ラジカル重合可能な不飽和部位と金属イオン又は金属塩を吸着する部位とを有する化合物を接触させる。
以下、本発明におけるラジカル重合可能な不飽和部位と金属イオン又は金属塩を吸着する部位とを有する化合物(以下、単に、「特定重合性化合物」と称する場合がある。)について説明する。
【0062】
本発明において用いられる特定重合性化合物は、ラジカル重合可能な不飽和部位と金属イオン又は金属塩を吸着する部位とを有する化合物であれば、その形態は限定されず、モノマー、マクロモノマー、或いは重合性基を有する高分子化合物のいずれも用いることができる。
ここで、金属イオン又は金属塩を吸着する部位(以下、適宜、金属吸着部位と称する。)としては、例えば、極性基が挙げられる。この極性基の中でも、親水性基が好ましく、より具体的には、アンモニウム、ホスホニウなどの正の荷電を有する官能基、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基などの負の荷電を有する官能基、その他にも、例えば、水酸基、アミド基、スルホンアミド基、アルコキシ基、シアノ基などの非イオン性基が挙げられる。
【0063】
本発明に用いうる特定重合性化合物の1つとしてのモノマーは、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、イタコン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、スチレンスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−スルホエチル(メタ)アクリレート若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アリルアミン若しくはそのハロゲン化水素酸塩、N−ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、ビニルチオフェン、スチレン、エチル(メタ)アクリル酸エステル、n-ブチル(メタ)アクリル酸エステルなど炭素数1〜24までのアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどを挙げることができる。
【0064】
本発明に用いうる特定重合性化合物の1つとしてのマクロモノマーは、前記モノマーを用いて公知の方法にて作製することができる。本態様に用いられるマクロモノマーの製造方法は、例えば、平成1年9月20日にアイピーシー出版局発行の「マクロモノマーの化学と工業」(編集者 山下雄也)の第2章「マクロモノマーの合成」に各種の製法が提案されている。
このようなマクロモノマーの有用な重量平均分子量は、500〜50万の範囲であり、特に好ましい範囲は1000〜5万である。
【0065】
本発明に用いうる特定重合性化合物の1つとしての高分子化合物とは、金属吸着部位と、ラジカル重合可能な不飽和部位(重合性基)と、を導入したポリマーを指す。このポリマーは、少なくとも末端又は側鎖に重合性基を有するものであり、側鎖に重合性基を有するものがより好ましく、末端及び側鎖に重合性基を有するものが更に好ましい。
このような高分子化合物の有用な重量平均分子量は、500〜50万の範囲で、特に好ましい範囲は1000〜5万である。
【0066】
金属吸着部位と重合性基とを有する高分子化合物の合成方法としては、i)金属吸着部位を有するモノマーと重合性基を有するモノマーとを共重合する方法、ii)金属吸着部位を有するモノマーと重合性基前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、iii)金属吸着部位を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、重合性基を導入する方法が挙げられる。
好ましい合成方法は、合成適性の観点から、ii)金属吸着部位を有するモノマーと重合性基前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により重合性基を導入する方法、iii)金属吸着部位を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、重合性基を導入する方法である。
【0067】
上記i)及びii)の合成方法に用いられる金属吸着部位を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、イタコン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、より具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アリルアミン若しくはそのハロゲン化水素酸塩、3−ビニルプロピオン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、ビニルスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン(下記構造)、スチレンスルホン酸ナトリウム、ビニル安息香酸等が挙げられ、一般的には、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基若しくはそれらの塩、水酸基、アミド基、ホスフィン基、イミダゾール基、ピリジン基、若しくはそれらの塩、及びエーテル基などの官能基を有するモノマーが使用できる。
【0068】
【化10】

【0069】
上記金属吸着部位を有するモノマーと共重合する重合性基を有するモノマーとしては、アリル(メタ)アクリレート、2−アリルオキシエチルメタクリレートが挙げられる。
また、上記ii)の合成方法に用いられる重合性基前駆体を有するモノマーとしては、2−(3−クロロ−1−オキソプロポキシ)エチルメタクリレー卜や、特開2003−335814号公報に記載の化合物(i−1〜i−60)が使用することができ、これらの中でも、特に下記化合物(i−1)が好ましい。
【0070】
【化11】

【0071】
更に、上記iii)の合成方法に用いられる金属吸着部位を有するポリマー中の、カルボキシル基、アミノ基若しくはそれらの塩、水酸基、及びエポキシ基などの官能基との反応を利用して、重合性基を導入するために用いられる重合性基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートなどがある。
【0072】
上記ii)の合成方法における、金属吸着部位を有するモノマーと重合性基前駆体を有するモノマーとを共重合させた後の、塩基などの処理により重合性基を導入する方法については、例えば、特開2003−335814号公報に記載の手法を用いることができる。
【0073】
(a)工程においては、露光感度の向上や、膜物性を制御することを目的に、前記特定重合性化合物を複数種用いたり、また、該特定重合性化合物とは異なるラジカル重合可能な不飽和部位を有する化合物(以下、「他の重合性化合物」と称する。)を併用してもよい。この際、併用する化合物の組み合わせは特に限定されず、目的に応じて、適宜、決定すればよい。
【0074】
本発明においては、特定重合性化合物である金属吸着部位と重合性基とを有する高分子化合物を主たる重合性化合物とし、これに対し、他の重合性化合物として、低分子モノマーを併用することが好ましい態様である。
本発明における「低分子モノマー」とは、分子量600以下のものを意味する。
低分子モノマーとしては、ラジカル重合可能な不飽和部位(重合性基)を1つ以上有し、且つ、分子量が上記の範囲を満たしていればよく、前述の、特定重合性化合物の1つであるモノマーであってもよいし、汎用のラジカル重合性化合物であってもよい。
【0075】
低分子モノマーについて、より具体的に説明する。
低分子モノマー中の重合性基については、特に制限は無く、汎用のラジカル重合性化合物中の重合性基であればいずれも使用可能であるが、例えば、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、スチリル基などが挙げられる。これらの中でも、主たる重合性化合物とラジカル重合性が近いものを選択することが好ましい。例えば、主たる重合性化合物が(メタ)アクリロイル基を有している場合は、(メタ)アクリロイル基を有する低分子モノマーを用いることが望ましい。
【0076】
また、低分子モノマー中の重合性基は、分子内に1つ以上有していればよいが、汎用性、安全性、ラジカル重合性の観点から2〜6の範囲が望ましく、2〜4の範囲が更に望ましい。
【0077】
更に、低分子モノマーの重合性基以外の構造は特に制限はなくが、分子長を調整する、又は、導入する官能基を選択することにより、低分子モノマーの物性を制御しうる部位である。低分子モノマーの選択は、併用する主たる重合性化合物(金属吸着部位と重合性基とを有する高分子化合物)との相溶性を考慮し、極性、親疎水性などが似通った構造を選択することが好ましい。
例えば、前述のように、金属吸着部位と重合性基とを有する高分子化合物を使用する際には、低分子モノマー中にも、前述のような金属吸着部位を有することが好ましい。金属吸着部位の例としては、極性基が挙げられる。この極性基の中でも、酸基や水酸基などの親水性基が好ましく、より具体的には、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基などの負の荷電を有する官能基が挙げられる。中でも、金属イオン又は金属塩に対する吸着能の観点から、カルボキシル基、ホスホン酸基が好ましい。このような金属吸着部位を導入することにより、吸着可能な金属量を増加させることができるため、得られた遮光部材の遮光能向上に繋がる。
【0078】
本発明における低分子モノマーの具体例を以下に示すが、本発明はこれらの限定されるものではない。
【0079】
【化12】

【0080】
本発明において、金属吸着部位と重合性基とを有する高分子化合物を主たる重合性化合物とし、これに対し、低分子モノマーを併用する場合、低分子モノマーの添加量は、主たる重合性化合物に対して、1質量%〜100質量%が望ましく、10質量%〜80質量%が更に望ましく、30質量%〜70質量%が更に望ましい。
【0081】
これらの重合性化合物(特定重合性化合物及び低分子モノマーを含む)を用いてポリマー層を形成する際には、重合性化合物を単体で、又は、溶媒に分散或いは溶解させた状態で基材表面に接触させることが必要である。この接触方法としては、基材を、重合性化合物を含有する液状組成物中に浸漬することで行ってもよいが、取り扱い性や製造効率の観点からは、基材表面に、該重合性化合物をそのまま接触させるか、重合性化合物を含有する液状組成物を塗布して塗膜を形成する方法、更には、その塗膜を乾燥して、基材表面に重合性化合物を含有する層(グラフトポリマー前駆体層)を形成することにより行うことが好ましい。
【0082】
ここで、重合性化合物を含有する液状組成物に用いられる溶剤としては、重合性化合物を溶解或いは分散することが可能であれば特に制限はないが、水、水溶性溶剤などの水性溶剤が好ましく、これらの混合物や、溶剤に更に界面活性剤を添加してもよい。
使用できる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテルの如きアルコール系溶剤、酢酸の如き酸、アセトン、シクロヘキサノンの如きケトン系溶剤、ホルムアミド、ジメチルアセトアミドの如きアミド系溶剤、などが挙げられる。
【0083】
また、この液状組成物に対し、必要に応じて添加することのできる界面活性剤は、溶剤に溶解するものであればよく、そのような界面活性剤としては、例えば、n−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの如きアニオン性界面活性剤や、n−ドデシルトリメチルアンモニウムクロライドの如きカチオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル(市販品としては、例えば、エマルゲン910、花王(株)製など)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(市販品としては、例えば、商品名「ツイーン20」など)、ポリオキシエチレンラウリルエーテルの如き非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0084】
更に、重合性化合物を含有する液状組成物にはラジカル発生剤を含有させてもよい。このラジカル発生剤としては、前述の基材中に含まれるラジカル発生剤と同様のものが用いられる。
また、所望により、重合性化合物を含有する液状組成物に増感剤を含有させることもできる。この増感剤としては、前述の基材中に含まれる増感剤と同様のものが用いられる。
【0085】
基材表面に重合性化合物を含有する液状組成物を塗布して塗膜を形成する方法を用いた場合には、その塗布量としては、充分な塗布膜を得る観点からは、固形分換算で0.1g/m〜10g/mが好ましく、特に0.5g/m〜5g/mが好ましい。
また、グラフトポリマー前駆体層を形成する場合、その厚みは、0.01μm〜20μmの範囲であることが好ましく、0.05μm〜10μmの範囲であることがより好ましく、0.1μm〜5μmの範囲であることが更に好ましい。
【0086】
(露光)
続いて、上述のようにして、基材表面に特定重合性化合物を接触させた後、露光を行うことにより、基材上に直接結合したポリマー(グラフトポリマー)を生成させる。
なお、基材の露光領域にグラフトポリマーが生成するため、例えば、基材に対して全面露光を行うことにより、基材の表面全面にグラフトポリマーが生成し、また、基材に対してパターン露光を行うことにより、基材のそのパターンに応じた領域にのみグラフトポリマーが生成する。このことから、本工程における露光は、作製される遮光部材の遮光部の形状に応じて行えばよい。
以下、全面露光及びパターン露光について説明する。
【0087】
全面露光及びパターン露光において、基材に結合したポリマー(グラフトポリマー)を生成させるための露光は、いずれも、基材中のラジカル発生剤やラジカル発生部位等に作用し、ラジカルを発生させることができればよく、具体的には、360nm〜700nmの波長の光であることが好ましい。増感剤の選択、また、レーザー露光装置などの製造の観点から、より好ましくは360nm〜550nmの範囲である。
全面露光には、レーザー光源による全面走査露光、若しくは高圧水銀灯などの定常光を用いることができる。
【0088】
また、パターン露光には、レーザーによる走査露光又はフォトマスクを通しての像様露光が用いられることが好ましい。また、例えば、陰極線管(CRT)を用いた走査露光をも用いることができる。この像様露光に用いる陰極線管には、必要に応じてスペクトル領域に発光を示す各種発光体が用いられる。例えば、赤色発光体、緑色発光体、青色発光体のいずれか1種又は2種以上が混合されて用いられる。スペクトル領域は、上記の赤色、緑色及び青色に限定されず、黄色、橙色、紫色に発光する蛍光体も用いられる。
【0089】
パターン露光には種々のレーザービームを用いて行うことができる。例えば、パターン露光としては、ガスレーザー、発光ダイオード、半導体レーザーなどのレーザー、半導体レーザー又は半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーと非線形光学結晶を組み合わせた第二高調波発光光源(SHG)、等の単色高密度光を用いた走査露光方式を好ましく用いることができる。更に、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、F2レーザー等も用いることができる。
【0090】
本発明により形成されるパターン解像度は露光条件に左右される。つまり、基材に結合したポリマーを生成させるためのパターン露光において、高精細のパターン露光を施すことにより、露光に応じた高精細パターンが形成される。高精細パターン形成のための露光方法としては、光学系を用いた光ビーム走査露光、マスクを用いた露光などが挙げられ、所望のパターンの解像度に応じた露光方法をとればよい。
高精細パターン露光としては、具体的には、i線ステッパー、g線ステッパー、KrFステッパー、ArFステッパーのようなステッパー露光などが挙げられる。
【0091】
本発明における「パターン」とは、基材上の任意の位置にエネルギーを付与することにより形成されたレリーフ像のことである。そのパターンは、用途に応じて、適宜、決定されればよい。
【0092】
以上のようにしてポリマーが結合した基材は、溶剤浸漬や溶剤洗浄などの処理が行われ、残存するホモポリマー等を除去して、精製する。具体的には、水やアセトンによる洗浄、乾燥などが挙げられる。ホモポリマー等の除去性の観点からは、超音波などの手段をとってもよい。精製後の基材は、その表面に残存するホモポリマーが完全に除去され、基材と強固に結合したポリマーのみが存在することになる。
【0093】
なお、本発明においては、上記の方法以外に、以下の方法を用いることで、基材の所望の領域に結合したポリマーを生成させることができる。
即ち、基材が、光開裂によりラジカルを発生しうるラジカル発生部位と基材結合部位とを有する化合物を支持体に結合させたもの(前述の(d)の基材)である場合に、この基材に対しパターン露光を行い、露光領域の該ラジカル発生部位を失活させる工程(以下、失活工程と称する。)と、該基材上に特定重合性化合物を接触させた後、全面露光を行い、前記パターン露光時における未露光領域に残存した該ラジカル発生部位に光開裂を生起させ、ラジカル重合を開始させることで、前記基材上に直接結合したポリマーを生成させてポリマー層を形成する工程(以下、ポリマー層形成工程と称する。)と、を行うことを特徴とする。
【0094】
前記失活工程では、光開裂化合物(Q−Y)が導入された基材に対し、予め、基材に結合したポリマーを生成させたくない領域に沿ってパターン露光を行い、露光領域のラジカル発生部位(Y)を光開裂させてラジカル発生能を失活させることで、基材表面に、ラジカル発生領域とラジカル発生能失活領域とを形成する。
ここで、失活工程におけるパターン露光は、前述のパターン露光を適用することができる。
【0095】
そして、ポリマー層形成工程において、ラジカル発生領域とラジカル発生能失活領域とが形成された基材表面に、特定重合性化合物を接触させた後、全面露光することで、ラジカル発生領域にのみに基材に結合したポリマーが生成し、結果的に、パターン状のポリマー層が形成される。
なお、基材表面に特定重合性化合物を接触させる方法としては、基材を、特定重合性化合物を含有する液状組成物中に浸漬することで行ってもよいが、取り扱い性や製造効率の観点からは、基材表面に特定重合性化合物をそのまま接触させるか、特定重合性化合物を含有する液状組成物を塗布して塗膜を形成する方法、更には、その塗膜を乾燥して、基材表面にグラフトポリマー前駆体層を形成することにより行うことが好ましい。
【0096】
以上のことから、基材に直接結合したポリマー(グラフトポリマー)が生成し、このポリマーからなるポリマー層が形成される。
ポリマー層の膜厚(塗布量)は、0.1g/m〜2.0g/mの範囲にあることが好ましく、0.3g/m〜1.0g/mが更に好ましく、最も好ましくは0.5g/m〜1.0g/mの範囲である。
【0097】
〔(b)工程〕
本工程では、前述の(a)工程で形成されたポリマー層に金属イオン又は金属塩を付与する。
より具体的には、本工程では、以下に説明する金属イオン又は金属塩を、ポリマー層を構成するポリマーが有する金属吸着部位、特に好ましくはイオン性基に対し、その極性に応じて、イオン的に吸着させる。
【0098】
(金属イオン及び金属塩)
まず、本工程において用いられる金属イオン及び金属塩について説明する。
本発明において、金属塩としては、グラフトポリマーの生成領域に付与するために、適切な溶媒に溶解して、金属イオンと塩基(陰イオン)に解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO、MCl、M2/n(SO)、M3/n(PO)(Mは、n価の金属原子を表す)、塩化金酸ナトリウムなどが挙げられる。
また、金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、例えば、Ag、Au、Cu、Al、Ni、Co、Fe、Pd、Crが挙げられ、中でも、Ag、Cu、Crが好ましい。
金属塩や金属イオンは1種のみならず、必要に応じて複数種を併用することができる。また、所望の遮光性を得るため、予め複数の材料を混合して用いることもできる。
【0099】
(金属イオン及び金属塩の付与方法)
金属イオン又は金属塩をポリマー層に付与する際、(1)ポリマーがイオン性基を有する場合には、そのイオン性基に金属イオンを吸着させる方法を用いる。この場合、上記の金属塩を適切な溶媒で溶解し、解離した金属イオンを含むその溶液を、ポリマー層の形成領域に塗布するか、或いは、その溶液中にポリマー層が形成された基材を浸漬すればよい。金属イオンを含有する溶液を接触させることで、前記イオン性基には、金属イオンがイオン的に吸着することができる。これら吸着を充分に行なわせるという観点からは、接触させる溶液の金属イオン濃度は1質量%〜50質量%の範囲であることが好ましく、1質量%〜20質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、10秒から24時間程度であることが好ましく、1分から180分程度であることが更に好ましい。
【0100】
金属イオン又は金属塩をポリマー層に付与する際、(2)ポリマーがポリビニルピロリドンなどのように金属塩に対し親和性の高い構造を含む場合は、上記の金属塩を微粒子状にして直接付着させる、又は、金属塩が分散し得る適切な溶媒を用いて分散液を調製し、その分散液を、ポリマー層の形成領域に塗布するか、或いは、その溶液中にポリマー層が形成された基材を浸漬すればよい。
ポリマー層を構成するポリマーが金属吸着部位として親水性基を有する場合には、ポリマー層は高い保水性を有するため、その高い保水性を利用して、金属塩が分散した分散液をグラフトポリマー膜中に含浸させることが好ましい。分散液の含浸を充分に行なわせるという観点からは、接触させる分散液の金属塩濃度は1質量%〜50質量%の範囲であることが好ましく、1質量%〜20質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、10秒から24時間程度であることが好ましく、1分から180分程度であることが更に好ましい。
【0101】
金属イオン又は金属塩をポリマー層に付与する際、(3)ポリマーが親水性基を有する場合、金属塩が分散している分散液、又は、金属塩が溶解した溶液をポリマー層の形成領域に塗布するか、或いは、その分散液や溶液中にポリマー層が形成された基材を浸漬すればよい。
かかる方法においても、上述と同様に、ポリマー層が有する高い保水性を利用して、分散液又は溶液をそのグラフトポリマー膜中に含浸させることができる。分散液又は溶液の含浸を充分に行なわせるという観点からは、接触させる分散液の金属イオン濃度、或いは金属塩濃度は1質量%〜50質量%の範囲であることが好ましく、1質量%〜20質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、10秒から24時間程度であることが好ましく、1分から180分程度であることが更に好ましい。
特に、この(3)の方法によれば、ポリマーの有する金属吸着部位の特性に関わらず、所望の金属イオン又は金属塩を付与させることができる。
【0102】
〔(c)工程〕
本工程では、前述の(b)工程で形成された金属イオン又は金属塩中の金属イオンを還元して、体積平均粒径が5nm以上500nm以下の金属粒子を析出させる。
このように金属イオン又は金属塩中の金属イオンを還元させて金属単体(金属粒子)を析出させることで、ポリマー層の内部及び上部に金属粒子が分散した金属粒子含有膜が形成される。
ここで、析出した金属粒子は、ポリマーの金属吸着部位と吸着しているため、基材と金属粒子(金属粒子含有膜)との密着性に優れることになる。また、析出した金属粒子は、有機化合物からなる遮光材のように光による劣化が見られないことから、光堅牢性にも優れることになる。
【0103】
(還元剤)
続いて、ポリマー層中に存在する金属イオン又は金属塩中の金属イオンを還元するために用いられる還元剤について説明する。
本発明において用いられる還元剤は、金属イオンを還元し、体積平均粒径が5nm以上500nm以下の金属粒子を析出させることができれば、特に制限はなく、例えば、ホルムアルデヒド、水素化ホウ素ナトリウム(テトラヒドロホウ素酸ナトリウム)、ジアルキルアミンボラン、グリオキシル酸、次亜リン酸塩、ヒドラジン類などが挙げられる。
中でも、析出させる金属粒子の粒径を均一に制御しうる点から、ホルムアルデヒド、水素化ホウ素ナトリウム、及びジアルキルアミンボランからなる群より選択される1種以上の化合物を用いることが好ましい。また、ジアルキルアミンボランの中でも、ジメチルアミンボランが特に好ましい。
【0104】
上記還元剤の付与方法としては、例えば、ポリマー層が形成された基材表面に金属イオンや金属塩を付与させた後、水洗して余分な金属塩、金属イオンを除去した後、該表面を備えた基材をイオン交換水などの水中に浸漬し、そこに還元剤を添加する方法や、該基材表面上に所定の濃度の還元剤水溶液を直接塗布或いは滴下する方法等が挙げられる。また、還元剤の添加量としては、金属イオンに対して、等量以上の過剰量用いるのが好ましく、10倍当量以上であることが更に好ましい。
また、本工程においては、金属イオンに対する還元力が高い状態で還元剤を使用することが好ましい。具体的には、前述の還元剤は、酸化還元電位が負に大きな値を示す強アルカリ水溶液中での使用が好ましく、特に、pHが12以上の強アルカリ水溶液中で使用されることが好ましい。
更に、同様の理由から、本工程では、酸化還元電位が−2.0VvsNHE以上−0.5VvsNHE以下である還元剤溶液を用いて金属イオン又は金属塩中の金属イオンを還元することが好ましい。
【0105】
ここで、ポリマー層を構成するポリマーの金属吸着部位と金属イオン又は金属塩との関係について説明する。
ポリマーの金属吸着部位が、負の電荷を有する極性基や、カルボキシル基、スルホン酸基、若しくはホスホン酸基などの如きアニオン性のイオン性基である場合は、グラフトポリマー膜が選択的に負の電荷を有するようになることから、ここに正の電荷を有する金属イオンを吸着させ、その吸着した金属イオンを還元させることで金属単体を析出される。
また、ポリマーの金属吸着部位が、特開平10−296895号公報に記載のアンモニウム基などの如きカチオン性基のイオン性基である場合は、グラフトポリマー膜が選択的に正の電荷を有するようになり、金属イオンはそのままの形状では吸着しない。そのため、金属吸着部位のイオン性基に起因する親水性を利用して、ポリマー層に金属塩が分散した分散液、又は、金属塩が溶解した溶液を含浸させ、その含浸させた溶液の中の金属イオン又は金属塩中の金属イオンを還元させることで金属単体を析出させる。
以上のように、金属単体(金属粒子)が析出することで、金属微粒子含有膜が形成される。
【0106】
(紫外線露光)
本発明においては、ポリマー層中に存在する金属イオン又は金属塩中の金属イオンを還元するための紫外線露光を用いることもできる。
より短波の光を発するという点から、高圧水銀灯を用いることが好ましい。
また、紫外線照射の際の露光波長は300nm以下であることが好ましく、露光量は、金属イオンが還元され、体積平均粒径が5nm以上500nm以下の金属粒子を析出させることができれば、特に制限はないが、ポリマー層に与える影響の点から、500mJ/cm〜1000mJ/cmの範囲であることが好ましい。
【0107】
(加熱による還元)
本発明において、ポリマー層中に存在する金属イオン又は金属塩中の金属イオンを還元させる方法として、加熱による還元も適応できる。
加熱条件は、ポリマー層中に存在する金属イオン又は金属塩種に依存するが、一般的に加熱温度は150℃以上が望ましく、ポリマー層の耐性の観点より、300℃以下であることが望ましい。加熱時間も、金属種、加熱温度に依存するが、一般的に0.5時間以上、24時間以内が望ましく、1時間以上10時間以内であることが更に望ましい。
この際、加熱方法は、バーナーなどによる直火への接触の他、高温オーブンなどに設置する方法が適応可能である。還元の程度のムラを無くすという観点からは、高温オーブンによる加熱方法が望ましい。
また、金属イオン又は金属塩種が、金、白金、銀などイオン化傾向が小さい金属であれば、ポリマー層内の炭素、酸素原子と加熱とにより還元が可能であるが、イオン化傾向が大きいものに関しては、その金属種より更にイオン化傾向の大きい金属単体など還元を促進するような化合物を、予めポリマー層内に導入しておくことにより効果的に還元を行うことが可能である。
【0108】
金属微粒子含有膜中の析出された金属単体(金属粒子)の存在は、表面の金属光沢により目視でも確認することができるが、透過型電子顕微鏡、或いは、AFM(原子間力顕微鏡)を用いて表面を観察することで、その構造(形態)を確認することができる。また、金属パターンの膜厚は、常法、例えば、切断面を電子顕微鏡で観察するなどの方法により、容易に行なうことができる。
このように、金属単体が析出した状態を上記の顕微鏡で観察すると、ポリマー層中にぎっしりと金属粒子が分散していること確認される。
【0109】
このようにして形成された金属粒子含有膜は、含有される金属粒子の粒径や形状、金属種によって、その光吸収が変化する。そのため、これらを制御することで、金属粒子含有膜には、所望の光に対する遮光性を付与することができる。
金属粒子(金属ナノ粒子)と吸収との関係については、例えば、J.Phys.Chem.B., 103, 1999, 3073、J.Phys.Chem.B., 103, 1999, 8410、Opt.Lett., 30, 2005, 2158などに記載されており、この関係は本願にも適用することができる。
【0110】
以上のようにして得られた遮光部材は、ポリマー層の内部及び上部に、体積平均粒径が5nm以上500nm以下の金属粒子を含有する金属粒子含有膜が存在するため、その金属粒子の密着性に優れ、更に、遮光性に優れるものとなる。
また、前述の(a)工程において、ポリマー層が基材全面に形成されていれば、微粒子含有膜も全面に形成され、また、ポリマー層が基材の所望の領域に形成されていれば、微粒子含有膜もその領域に応じて形成されることになる。このことから、本発明の遮光部材の作製方法によれば、遮光部の形状を任意に形成することが可能であることから、得られた遮光部材の用途の幅を拡げることができる。
【0111】
−めっき処理−
本発明においては、ポリマー層の内部及び上部に含有する金属粒子に対してめっき処理を施してもよい。
めっき処理を施すことにより、特定波長に対する遮光性能が不足している際に、その遮光性を補完することができる。例えば、ポリマー層の厚さが著しく制限される場合(20nm以下など)には、層中に吸着させた金属粒子のみでは遮光性能が不十分になるため、このめっき処理を行うことが好ましい。このめっき処理は、フォトマスクなど、可視光の透過の必要のない材料に対して有効である。
【0112】
本発明におけるめっき処理としては、無電解めっき処理が用いられる。
この無電解めっき処理としては、めっきを行う金属種に特に限定はなく、また、無電解めっき処理液の種類に関しても、市販されている無電解めっき液を含む、金属源、還元剤、安定化剤、pH調製剤の要素を含む溶液であれば適応可能である。めっき液の選択範囲の広さ、汎用性の観点から、金属種は、Ag、Cuが好ましい。
【0113】
〔遮光部材の応用〕
上記のようにして得られた、遮光部材(本発明の遮光部材)は、遮光性を必要とする種々の用途に応用することができる。
例えば、本発明の遮光部材が、紫外線を吸収しうる金属粒子含有膜を備える場合には紫外線吸収フィルム(本発明の紫外線吸収フィルム:波長400nm以下の紫外光透過率が1%以下のもの)として用いられ、また、赤外線を吸収しうる金属粒子含有膜を備える場合には赤外線吸収フィルム(本発明の赤外線吸収フィルム:800nm以上の波長の光の透過率が10%以下のもの)として用いられる。
また、本発明の遮光部材が、所望の領域にのみ金属粒子含有膜を備える場合、その金属粒子含有膜の存在領域(遮光部)と非存在領域とを用い、フォトマスク(本発明のフォトマスク:用いる露光機の露光波長に対し、パターン部(遮光部)の透過率が0.1%以下のもの)や電磁波シールドフィルム(本発明の電磁波シールドフィルム:30MHz以上の周波数の電波に対し、90%以上遮蔽するもの)として用いることもできる。
その他、色材としての利用、金属粒子の耐久性を利用したカラーフィルターなどとしても用いることができる。
なお、本発明における光の透過率は、UV−VIS−NIR SPECTROPHOTOMETER UV−3600(SHIMADZU社製)により測定することができる。
また、本発明における電波の遮蔽については、一例として、トリフィールドメーター(電磁波測定器:マックコーポレーション製)により測定することができる。
【実施例】
【0114】
以下、実施例により本発明を説明する。本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0115】
(合成例1:重合開始部位と支持体結合部位とを有する化合物(Q−Y)の例示化合物T1の合成)
4−シアノ−4’−ヒドロキシビフェニル29.3gをN,N−ジメチルアセトアミド75mLに溶解し、炭酸カリウム22.8gを添加した。80℃の加温し、11−ブロモ−1−ウンデセン38.8gを滴下、全量を滴下後に100℃に昇温し、3時間反応させた。その後、反応用液に蒸留水250mLを加え、析出した固体を濾取、アセトニトリルで再結晶を行い、白黄色固体を得た。
この白黄色固体20.0gをトリクロロアセトニトリル150mLに溶解し、臭化アルミニウム1.54gを添加した。ここへ塩化水素ガスを4時間バブリングし、更に4時間静置した。溶媒を減圧除去し、酢酸エチルで抽出、シリカゲルカラムで精製し、黄色固体を得た。
この黄色固体10.0gをTHF20mLに溶解、氷浴を用い0℃に冷却、ヘキサクロロ白金酸六水和物1.0mgを添加、トリクロロシラン30mLを加えた。室温で12時間撹拌、その後溶媒を減圧除去し、黄色固体(重合開始部位と支持体結合部位とを有する化合物(Q−Y)の例示化合物T1(前記構造)を得た。
【0116】
(合成例2:重合開始部位と支持体結合部位とを有する化合物(Q−Y)の例示化合物T2の合成)
N−[4−[4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]フェニル]−4−ヒドロキシベンズアミド(富士フイルム製)40.0gをTHF200mLに溶解。トリエチルアミン15.8mL、ピリジン0.60mLを添加し、氷浴にて0℃に冷却。無水メタクリル酸12.3gを滴下、室温で12時間撹拌、その後溶媒を減圧除去し、油状物を得た。この油状物をヘキサンで晶出、アセトニトリルで洗浄し、黄色固体を得た。
次に、この黄色固体8gをN,N−ジメチルアセトアミド67.4mLに溶解、グリシジルメタクリレート1.91g、ベンジルメタクリレート7.12g、AIBN116mg添加し、70℃に加温、6時間反応させた。その後、反応溶液にTHF50mLを加え、ヘキサンで最沈殿することにより、重合開始部位と支持体結合部位とを有する化合物(Q−Y)の例示化合物T2(前記構造)を得た。
【0117】
(合成例3:親水性ポリマーP1の合成)
ポリアクリル酸(平均分子量25,000)30gをN,N−ジメチルアセトアミド200mLに溶解し、2−エチル−4−エチル−イミダゾール0.9g、ジターシャリーペンチルハイドロキノン50mg、下記構造のモノマーA27gを添加し、窒素気流下、100℃、5時間反応させた。
その後、反応液を50gとり、氷浴中で4N NaOHを11.6mL加え、酢酸エチルで再沈を行い、濾取後に水で洗浄、乾燥し、下記構造の親水性ポリマーP1を得た。
【0118】
【化13】

【0119】
(合成例4:親水性ポリマーP2の合成)
ポリアクリル酸(平均分子量25,000)18gをN,N−ジメチルアセトアミド300mLに溶解し、ハイドロキノン0.41gと2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート3.53gとジブチルチンジラウレート0.25gを添加し、窒素気流下、65℃、4時間反応させた。
その後、反応液を1N水酸化ナトリウム水溶液でカルボキシル基を中和し、酢酸エチルで再沈を行い、濾取後に洗浄、乾燥し、下記構造の親水性ポリマーP2を得た。
【0120】
【化14】

【0121】
(合成例5:モノマーBの合成)
2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(東京化成製)10.2gをTHF200mLに溶解した。そこへ、トリエチルアミン31.6mL、ピリジン1.20mLを添加し、氷浴にて0℃に冷却した。続いて、無水メタクリル酸24.6gを滴下して、室温で12時間撹拌し、その後、溶媒を減圧除去し、得られた油状物をシリカゲルカラムを用いて精製し、下記構造のモノマーB14.3gを得た。
【0122】
【化15】

【0123】
〔実施例1〕
(基材の作製)
ガラス基板(日本板硝子製)に、UVオゾンクリーナー(UV42、日本レーザー電子社製)を用いて5分間UVオゾン処理を行った。その基板表面に前記例示化合物T1のメチルエチルケトン1質量%溶液をスピンコートした。スピンコーターは、まず300rpmで5秒間、次に750rpmで20秒間回転させた。その後、ガラス基板を100℃で10分間加熱し、表面をメチルエチルケトンで洗浄、エアーガンで乾燥した。例示化合物T1が結合したガラス基板を基材A1とした。
【0124】
(ポリマー層の形成)
前述の方法で合成した親水性ポリマーP1:0.5gを、蒸留水4.2mL、N,N−ジメチルアセトアミド0.05mL、アセトニトリル1.5mL、炭酸水素ナトリウム0.3gの混合溶液に溶解し、塗布液を調製した。この塗布液を、基材A1の例示化合物T1が結合した面にスピンコートした。スピンコーターは、まず300rpmで5秒間、次に750rpmで20秒間回転させた。その後この基板を80℃で5分間乾燥した。
このようにしてグラフトポリマー前駆体層が形成されたガラス基板を基材A2とした。
【0125】
−露光−
グラフトポリマー前駆体層を備えた基材A2を、露光機(UVX−02516S1LP01、ウシオ電機社製)を用い、フォトマスクを介して1分間で露光した。露光後、1質量%炭酸ナトリウム水溶液に1分間浸漬し現像を行い、エアーガンで乾燥した。
これにより、ポリマーが基材表面にパターン状に結合した基材A3を得た。
【0126】
(金属イオンの吸着)
得られた基材A3を、硝酸銀10質量%水溶液に1分間浸漬し、その後、水で洗浄してエアーガンで乾燥した。
【0127】
(金属イオンの還元)
続いて、基材A3を、下記組成のホルムアルデヒド水溶液(pH=13.0)中に1分間浸漬し、銀イオンを還元して金属粒子を析出させた。その後、基材A3は水で洗浄して、エアーガンで乾燥させた。
このようにして、ポリマー層と金属粒子含有膜とからなる遮光層を有する基材A4を得た。
【0128】
<ホルムアルデヒド水溶液の組成>
・水 100mL
・水酸化ナトリウム 1.4g
・ホルムアルデヒド 1.5g
【0129】
基材A4の金属粒子が析出した表面について、原子間力顕微鏡(Nanopix1000:セイコーインスルメンツ社製)を使用して観察したところ、L/S(Line/Space)=10/10μm、膜厚0.9μm(ポリマー層+金属粒子含有膜の厚さ)のパターンが形成されていることが確認された。
また、金属粒子含有膜について、日立高分解能電界放出型走査電子顕微鏡(FESEM)S−4700(日立ハイテク社製)を用いて表面観察(倍率50000倍)を行い、2μm以上の粒径(粒子が楕円径である場合は短軸と長軸の平均値)を有する、体積平均粒径25nmの金属粒子が存在することが確認された。
【0130】
更に、UV−VIS−NIR SPECTROPHOTOMETER UV−3600(SHIMADZU社製)により、金属粒子含有膜が波長365nmの光に対する吸収が3以上あり、250nm〜900nmに吸収を有することが確認された。
また、この金属粒子含有膜の365nmの透過率は0.05%であり、紫外領域に強い吸収を示しており、この微細パターンは、フォトマスクとして利用することができることが分かる。
【0131】
[実施例2]
(基材の作製)
ガラス基板(日本板硝子製)に、UVオゾンクリーナー(NL−UV42:日本レーザー電子社製)を用いて5分間UVオゾン処理を行い、その基板表面に前記例示化合物T2のメチルエチルケトン1質量%溶液をスピンコートした。スピンコーターは、まず300rpmで5秒間、次に750rpmで20秒間回転させた。その後、ガラス基板を170℃で1時間加熱し、表面をメチルエチルケトンで洗浄、エアーガンで乾燥した。例示化合物T2が結合したガラス基板を基材B1とした。
【0132】
(ポリマー層の形成)
前述の方法で得られた親水性ポリマーP2:0.5gを、蒸留水4.2mL、N,N−ジメチルアセトアミド0.05mL、アセトニトリル1.5mL、炭酸水素ナトリウム0.3gの混合溶液に溶解し、更に、増感剤である下記化合物S1:0.03gを加え、塗布液を調製した。この塗布液を、基材B1の例示化合物T2が結合した面にスピンコートした。スピンコーターは、まず300rpmで5秒間、次に750rpmで20秒間回転させた。その後この基板を80℃で5分間乾燥した。
このようにしてグラフトポリマー前駆体層が形成されたガラス基板を基材B2とした。
【0133】
【化16】

【0134】
−露光−
グラフトポリマー前駆体層を備えた基材B2(積層体)を、405nmの発信波長を有するレーザー露光機で所定のパターンに従って光量20mJ/cmで露光した。露光後、1質量%炭酸ナトリウム水溶液に1分間浸漬し現像を行い、エアーガンで乾燥した。
これにより、ポリマーが基材表面にパターン状に結合した基材B3を得た。
【0135】
(金属イオンの吸着)
得られた基材B3を、硝酸銀1質量%水溶液に1分間浸漬し、その後、水で洗浄してエアーガンで乾燥した。
【0136】
(金属イオンの還元)
続いて、基材B3を、下記組成のジメチルアミンボラン水溶液(pH=12.1)中に1分間浸漬し、銀イオンを還元して金属粒子を析出させた。その後、基材B3は水で洗浄して、エアーガンで乾燥させた。
このようにして、ポリマー層と金属粒子含有膜とからなる遮光層を有する基材B4を得た。
【0137】
<ジメチルアミンボラン水溶液の組成>
・水 100mL
・水酸化ナトリウム 400mg
・ジメチルアミンボラン 295mg
【0138】
基材B4の金属粒子が析出した表面について、原子間力顕微鏡(Nanopix1000:セイコーインスルメンツ社製)を使用して観察したところ、L/S(Line/Space)=10/10μm、膜厚0.9μm(ポリマー層+金属粒子含有膜の厚さ)のパターンが形成されていることが確認された。
また、金属粒子含有膜について、日立高分解能電界放出型走査電子顕微鏡(FESEM)S−4700(日立ハイテク社製)を用いて表面観察(倍率50000倍)を行い、2μm以上の粒径(粒子が楕円径である場合は短軸と長軸の平均値)を有する、体積平均粒径30nmの金属粒子が存在することが確認された。
更に、UV−VIS−NIR SPECTROPHOTOMETER UV−3600(SHIMADZU社製)により、金属粒子含有膜が波長365nmの光に対する吸収が3以上あり、250nm〜900nmに吸収を有することが確認された。
【0139】
[実施例3]
(金属イオンの吸着)
実施例2で得られたポリマーが基材表面にパターン状に結合した基材B3を、塩化金酸ナトリウム0.01質量%水溶液に10分間浸漬し、その後、水で洗浄してエアーガンで乾燥した。
【0140】
(金属イオンの還元)
続いて、基材B3を、下記組成のホルムアルデヒド水溶液(pH=13.0)中に1分間浸漬し、金イオンを還元して金属粒子を析出させた。その後、基材B3は水で洗浄して、エアーガンで乾燥させた。
このようにして、ポリマー層と金属粒子含有膜とからなる遮光層を有する基材B5を得た。
【0141】
<ホルムアルデヒド水溶液の組成>
・水 100mL
・水酸化ナトリウム 1.4g
・ホルムアルデヒド 1.5g
【0142】
基材B5の金属粒子が析出した表面について、原子間力顕微鏡(Nanopix1000:セイコーインスルメンツ社製)を使用して観察したところ、L/S(Line/Space)=10/10μm、膜厚0.9μm(ポリマー層+金属粒子含有膜の厚さ)のパターンが形成されていることが確認された。
また、金属粒子含有膜について、日立高分解能電界放出型走査電子顕微鏡(FESEM)S−4700(日立ハイテク社製)を用いて表面観察(倍率50000倍)を行い、2μm以上の粒径(粒子が楕円径である場合は短軸と長軸の平均値)を有する、体積平均粒径50nmの金属粒子が存在することが確認された。
更に、UV−VIS−NIR SPECTROPHOTOMETER UV−3600(SHIMADZU社製)により、金属粒子含有膜が波長365nmの光に対する吸収が3以上あり、250nm〜1500nmに吸収を有することが確認された。
【0143】
[実施例4]
(金属イオンの吸着)
実施例1で得られたポリマーが基材表面にパターン状に結合した基材A3を、硝酸銀1質量%水溶液に1分間浸漬し、その後、水で洗浄してエアーガンで乾燥した。
【0144】
(金属イオンの還元)
続いて、基材A3を、下記組成のジメチルアミンボラン水溶液(pH=12.1)中に1分間浸漬し、銀イオンを還元して金属粒子を析出させた。その後、基材A3は水で洗浄して、エアーガンで乾燥させた。
このようにして、ポリマー層と金属粒子含有膜とからなる遮光層を有する基材A5を得た。
【0145】
<ジメチルアミンボラン水溶液の組成>
・水 100mL
・水酸化ナトリウム 400mg
・ジメチルアミンボラン 295mg
【0146】
基材A5の金属粒子が析出した表面について、原子間力顕微鏡(Nanopix1000:セイコーインスルメンツ社製)を使用して観察したところ、L/S(Line/Space)=10/10μm、膜厚0.9μm(ポリマー層+金属粒子含有膜の厚さ)のパターンが形成されていることが確認された。
また、金属粒子含有膜について、日立高分解能電界放出型走査電子顕微鏡(FESEM)S−4700(日立ハイテク社製)を用いて表面観察(倍率50000倍)を行い、2μm以上の粒径(粒子が楕円径である場合は短軸と長軸の平均値)を有する、体積平均粒径40nmの金属粒子が存在することが確認された。
更に、UV−VIS−NIR SPECTROPHOTOMETER UV−3600(SHIMADZU社製)により、金属粒子含有膜が波長365nmの光に対する吸収が3以上あり、250nm〜900nmに吸収を有することが確認された。
【0147】
[実施例5]
(無電解めっき)
実施例1で得られたポリマー層と金属粒子含有膜とからなる遮光層を有する基材A4を、下記組成の市販の無電解めっき浴ATSアドカッパーIW(pH:12.7)に90分間浸漬して無電解めっきを行った。無電解めっき後、水で洗浄してエアーガンで乾燥した。
【0148】
<無電解めっき浴の組成>
水 258mL
ATSアドカッパーIW−A 15mL
ATSアドカッパーIW−M 24mL
ATSアドカッパーIW−C 3mL
【0149】
この表面を原子間力顕微鏡で観察したところ、L/S(Line/Space)=12/8μm、膜厚3.0μmの金属パターンが形成されていることが確認された。
この金属パターンの365nmにおける透過率は0.001%であり、優れた遮光性能を有する。
【0150】
[実施例6]
(無電解めっき)
実施例1で得られたポリマー層と金属粒子含有膜とからなる遮光層を有する基材A4を、下記組成の無電解めっき浴(pH:7.0)に20分間浸漬して無電解めっきを行った。無電解めっき後、水で洗浄してエアーガンで乾燥した。
【0151】
<無電解めっき浴の組成>
水 988mL
硝酸銀 2.0g
コハク酸イミド 5.9g
グリオキシル酸 3.7g
水酸化ナトリウム−硝酸緩衝溶液 0.4g
【0152】
この表面を原子間力顕微鏡で観察したところ、L/S(Line/Space)=10/10μm、膜厚0.9μmの金属パターンが形成されていることが確認された。
この金属パターンの365nmにおける透過率は0.001%であり、優れた遮光性能を有する。
【0153】
[実施例7]
(金属イオンの吸着)
実施例2で得られたポリマーが基材表面にパターン状に結合した基材B3を、硝酸銀11質量%水溶液に1分間浸漬し、その後、水で洗浄してエアーガンで乾燥した。
【0154】
(金属イオンの還元)
続いて、基材B3を、下記組成のテトラヒドロホウ素酸ナトリウム水溶液(pH=12.1)中に1分間浸漬し、銀イオンを還元して金属粒子を析出させた。その後、基材B3は水で洗浄して、エアーガンで乾燥させた。
このようにして、ポリマー層と金属粒子含有膜とからなる遮光層を有する基材B6を得た。
【0155】
<テトラヒドロホウ素酸ナトリウム水溶液の組成>
・水 100mL
・水酸化ナトリウム 200mg
・テトラヒドロホウ素酸ナトリウム 100mg
【0156】
基材B6の金属粒子が析出した表面について、原子間力顕微鏡(Nanopix1000:セイコーインスルメンツ社製)を使用して観察したところ、L/S(Line/Space)=10/10μm、膜厚0.9μm(ポリマー層+金属粒子含有膜の厚さ)のパターンが形成されていることが確認された。
また、金属粒子含有膜について、日立高分解能電界放出型走査電子顕微鏡(FESEM)S−4700(日立ハイテク社製)を用いて表面観察(倍率10000倍)を行い、2μm以上の粒径(粒子が楕円径である場合は短軸と長軸の平均値)を有する、体積平均粒径500nmの金属粒子が存在することが確認された。
【0157】
更に、UV−VIS−NIR SPECTROPHOTOMETER UV−3600(SHIMADZU社製)を用いて吸収を測定したところ、金属粒子含有膜が800nm以上の波長に吸収を示すこと分かった。
また、金属粒子含有膜の10MHz〜1000MHzの周波数の電波に対する遮断性は、90%であり、この微細グリッドパターンは、電磁波シールドフィルムとして利用できることが分かる。
また、金属粒子含有膜の800nm以上の波長の光の透過率が1%であるため、この金属粒子含有膜が基材の全面に形成されていた場合、赤外線吸収フィルムとして利用できることが分かる。
【0158】
〔実施例8〕
(基材の作製)
ガラス基板(日本板硝子製)に、UVオゾンクリーナー(UV42、日本レーザー電子社製)を用いて5分間UVオゾン処理を行った。その基板表面に前記例示化合物T11のメチルエチルケトン10質量%溶液をスピンコートした。スピンコーターは、まず300rpmで5秒間、次に750rpmで20秒間回転させた。その後、ガラス基板を80℃で20分間加熱し、表面をメチルエチルケトンで洗浄、エアーガンで乾燥した。例示化合物T3が結合したガラス基板を基材C1とした。
【0159】
(ポリマー層の形成)
前述の方法で合成した親水性ポリマーP1:0.5gを、1−メトキシ−2−プロパノール:3.1gに溶解し、更に、メチルエチルケトン:3.0g添加した。次に増感剤(前記化合物S1):0.03g、光重合開始剤である下記化合物S2:0.03g、1,3−ジメタクリル酸グリセロール(和光純薬製):0.25gを添加し、塗布液を調製した。この塗布液を、基材C1の例示化合物T11が結合した面にスピンコートした。スピンコーターは、まず300rpmで5秒間、次に750rpmで20秒間回転させた。その後この基板を80℃で5分間乾燥した。
このようにしてグラフトポリマー前駆体層が形成されたガラス基板を基材C2とした。
【0160】
【化17】

【0161】
−露光−
グラフトポリマー前駆体層を備えた基材C2を、405nmの発信波長を有するレーザー露光機で所定のパターンに従って光量100mJ/cmで露光した。露光後、1質量%炭酸ナトリウム水溶液に1分間浸漬し現像を行い、エアーガンで乾燥した。
これにより、ポリマーが基材表面にパターン状に結合した基材C3を得た。
【0162】
得られた基材C3を原子間力顕微鏡(Nanopix1000:セイコーインスルメンツ社製)を使用して観察した。その結果、L/S(Line/Space)=10/10μm、膜厚1.2μmのパターン状のポリマー層が形成されていることが確認された。
【0163】
(金属イオンの吸着)
次に、基材C3を、硝酸銀1質量%水溶液に2分間浸漬し、その後、水で洗浄してエアーガンで乾燥した。
【0164】
(金属イオンの還元)
続いて、基材C3を、下記組成のジメチルアミンボラン水溶液(pH=12.1)中に1分間浸漬し、銀イオンを還元して金属粒子を析出させた。その後、基材C3は水で洗浄して、エアーガンで乾燥させた。
このようにして、ポリマー層と金属粒子含有膜とからなる遮光層を有する基材C4を得た。
【0165】
<ジメチルアミンボラン水溶液の組成>
・水 100mL
・水酸化ナトリウム 400mg
・ジメチルアミンボラン 295mg
【0166】
基材C4の金属粒子が析出した表面について、原子間力顕微鏡(Nanopix1000:セイコーインスルメンツ社製)を使用して観察したところ、L/S(Line/Space)=10/10μm、膜厚1.3μm(ポリマー層+金属粒子含有膜の厚さ)のパターン(遮光層)が形成されていることが確認された。
また、金属粒子含有膜について、日立高分解能電界放出型走査電子顕微鏡(FESEM)S−4700(日立ハイテク社製)を用いて表面観察(倍率50000倍)を行い、2μm以上の粒径(粒子が楕円径である場合は短軸と長軸の平均値)を有する、体積平均粒径20nmの金属粒子が存在することが確認された。この金属粒子含有膜は250nm〜600nmに強い吸収を有し、遮光部材への利用が可能である。
【0167】
〔実施例9〕
まず、実施例9における基材D1として、実施例1で使用した、例示化合物T1が結合したガラス基板(基材A1)を用いた。
【0168】
(ポリマー層の形成)
前述の方法で合成した親水性ポリマーP2:0.5gを、1−メトキシ−2−プロパノール:3.1gに溶解し、更に、メチルエチルケトン:3.0g添加した。次に増感剤(前記化合物S1):0.03g、光重合開始剤(前記化合物S2):0.03g、前記合成例にて示したモノマーB:0.25gを添加し、塗布液を調製した。この塗布液を、基材D1の例示化合物T1が結合した面にスピンコートした。スピンコーターは、まず300rpmで5秒間、次に750rpmで20秒間回転させた。その後この基板を80℃で5分間乾燥した。
このようにしてグラフトポリマー前駆体層が形成されたガラス基板を基材D2とした。
【0169】
−露光−
グラフトポリマー前駆体層を備えた基材D2を、405nmの発信波長を有するレーザー露光機で所定のパターンに従って光量100mJ/cmで露光した。露光後、1質量%炭酸ナトリウム水溶液に1分間浸漬し現像を行い、エアーガンで乾燥した。
これにより、ポリマーが基材表面にパターン状に結合した基材D3を得た。
【0170】
得られた基材D3を原子間力顕微鏡(Nanopix1000:セイコーインスルメンツ社製)を使用して観察した。その結果、L/S(Line/Space)=10/10μm、膜厚1.0μmのパターン状のポリマー層が形成されていることが確認された。
【0171】
(金属イオンの吸着)
次に基材D3を、硝酸銀10質量%水溶液に1分間浸漬し、その後、水で洗浄してエアーガンで乾燥した。
【0172】
(金属イオンの還元)
次に、200℃のオーブンに基材D3を入れ、4時間加熱を行い、銀イオンを還元し金属粒子を析出させた。
このようにして、ポリマー層と金属粒子含有膜とからなる遮光層を有する基材D4を得た。
【0173】
基材D4の金属粒子が析出した表面について、原子間力顕微鏡(Nanopix1000:セイコーインスルメンツ社製)を使用して観察したところ、L/S(Line/Space)=10/10μm、膜厚1.1μm(ポリマー層+金属粒子含有膜の厚さ)のパターン(遮光層)が形成されていることが確認された。
また、金属粒子含有膜について、日立高分解能電界放出型走査電子顕微鏡(FESEM)S−4700(日立ハイテク社製)を用いて表面観察(倍率50000倍)を行い、2μm以上の粒径(粒子が楕円径である場合は短軸と長軸の平均値)を有する、体積平均粒径50nmの金属粒子が存在することが確認された。この金属粒子含有膜は250nm〜900nmに強い吸収を有し、遮光部材への利用が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)露光によりラジカルを発生しうる基材上に、ラジカル重合可能な不飽和部位と金属イオン又は金属塩を吸着する部位とを有する化合物を接触させた後、露光を行うことにより、前記基材上に直接結合したポリマーを生成させてポリマー層を形成する工程と、
(b)該ポリマー層に金属イオン又は金属塩を付与する工程と、
(c)該金属イオン又は金属塩中の金属イオンを還元して、体積平均粒径が5nm以上500nm以下の金属粒子を析出させる工程と、
を有することを特徴とする遮光部材の作製方法。
【請求項2】
前記(a)工程において、前記ラジカル重合可能な不飽和部位と金属イオン又は金属塩を吸着する部位とを有する化合物を複数種用いることを特徴とする請求項1に記載の遮光部材の作製方法。
【請求項3】
前記(c)工程で析出させる金属粒子の体積平均粒径が5nm以上200nm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の遮光部材の作製方法。
【請求項4】
前記(c)工程で析出させる金属粒子の体積平均粒径が5nm以上30nm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の遮光部材の作製方法。
【請求項5】
前記(c)工程において、紫外線の照射により金属イオン又は金属塩中の金属イオンを還元することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の遮光部材の作製方法。
【請求項6】
前記(c)工程において、ホルムアルデヒド、水素化ホウ素ナトリウム、及びジアルキルアミンボランからなる群より選択される1種以上の化合物を用いて金属イオン又は金属塩中の金属イオンを還元することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の遮光部材の作製方法。
【請求項7】
前記(c)工程において、酸化還元電位が−2.0VvsNHE以上−0.5VvsNHE以下である還元剤溶液を用いて金属イオン又は金属塩中の金属イオンを還元することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の遮光部材の作製方法。
【請求項8】
前記(c)工程において、150℃〜300℃の範囲の加熱により金属イオン又は金属塩中の金属イオンを還元することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の遮光部材の作製方法。
【請求項9】
(a)露光によりラジカルを発生しうる基材上に、ラジカル重合可能な不飽和部位と金属イオン又は金属塩を吸着する部位とを有する化合物を接触させた後、露光を行うことにより、前記基材上に直接結合したポリマーを生成させてポリマー層を形成する工程と、
(b)該ポリマー層に金属イオン又は金属塩を付与する工程と、
(c)該金属イオン又は金属塩中の金属イオンを還元して、体積平均粒径が5nm以上500nm以下の金属粒子を析出させる工程と、
を有する作製方法から得られる遮光部材。
【請求項10】
請求項9に記載の遮光部材を用いた紫外線吸収フィルム。
【請求項11】
請求項9に記載の遮光部材を用いた赤外線吸収フィルム。
【請求項12】
請求項9に記載の遮光部材を用いたフォトマスク。
【請求項13】
請求項9に記載の遮光部材を用いた電磁波シールドフィルム。

【公開番号】特開2009−230094(P2009−230094A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−175029(P2008−175029)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】