配線構造体の形成方法、配線構造体、半導体装置の形成方法、及び表示装置
【課題】表面凹凸が少なく電気抵抗が低い配線構造体の形成方法を提供する。
【解決手段】基体1上に金属層4を形成する第1工程と、金属層4にフラッシュランプから発せられる光を照射してアニールを行う第2工程とを含む。
【解決手段】基体1上に金属層4を形成する第1工程と、金属層4にフラッシュランプから発せられる光を照射してアニールを行う第2工程とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に代表される表示装置やULSIに代表される半導体装置等に用いて好適な配線構造体の形成方法、配線構造体、薄膜トランジスタ等の製造に適した半導体装置の形成方法、及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、LSI(Large-Scale Integrated circuit)やULSI(Ultra Large-Scale Integrated circuit)に代表される半導体装置の配線や電極に適用される金属層としては、アルミニウム(Al)層やその合金層が主流となっている。しかし、近年、LSI、ULSIに代表される半導体装置の分野においては、集積度を向上させるため、更なる微細化、細線化、動作スピードの向上等といった要求が高まっている。このため、アルミニウムよりも抵抗が低く、且つ、エレクトロマイグレーションやストレスマイグレーション等の耐性が高い銅(Cu)やその合金が、次世代の配線構造体(配線や電極等)の材料として検討されてきている。
【0003】
液晶表示装置に代表される表示装置の分野においても、近年、表示面積の拡大により配線長が増加する傾向にある。また、駆動用ドライバ回路を含む周辺回路部分のモノリシック化、画素内メモリや光センサー等といった付加機能の取り込みの開発も進んできている。したがって、半導体分野と同様に、低抵抗な配線構造体への要求が高まってきている。
【0004】
銅を主成分とする配線構造体は、従来、スパッタ法、CVD法、めっき法等で形成されている。
【特許文献1】特開2001−68679
【非特許文献1】Material Research Society Symposium Proceeding Vol.612 D.7.1.1 (2000)
【非特許文献2】Journal of Electrochemical Society Vol.148, C47−C53 (2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、スパッタ法、CVD法、めっき法等で形成され、銅を主成分とした金属層(配線構造体)の結晶粒は小さく、比抵抗が比較的大きい。このため、従来、銅を主成分とする金属層を加熱炉内でヒータ等の加熱源によりアニール(炉アニール)を施すことにより、結晶粒を大きくし、比抵抗値を低下させている。
【0006】
しかしながら、炉アニールにより銅を主成分とする金属層のアニールを行うと、結晶粒が大きくなり比抵抗は低下するものの、結晶粒成長に伴い表面凹凸が増大してしまうという課題が新たに発生した。このため、炉アニールによって結晶粒を成長させてなる金属層は、半導体装置や表示装置への適用が困難であるという課題があった。
【0007】
本発明の目的は、このような事情に基づいてなされたもので、表面凹凸が小さく、比抵抗が低い配線構造体の形成方法、配線構造体半導体装置の形成方法、及び表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に係わる配線構造体の形成方法は、基体上に金属層を形成する第1工程と、この金属層にフラッシュランプから発せられる光を照射してアニールを行うアニール工程とを具備する。
【0009】
本発明の第2の態様に係わる配線構造体の形成方法は、基体上に金属層を形成する第1工程と、前記金属層に300nm〜600nmの波長範囲に極大強度を有し、フラッシュランプから発せられる光を照射してアニールを行うアニール工程とを具備する。
【0010】
本発明の第3の態様に係わる配線構造体の形成方法は、基体上に金属層を形成する第1工程と、この金属層を配線パターン状にエッチングして配線構造体パターンを形成する第2工程と、この配線構造体パターンにフラッシュランプから発せられる光を照射してアニールを行うアニール工程とを具備する。
【0011】
本発明の第4の態様に係わる配線構造体は、絶縁体からなる基板と、この基板上に設けられ、フラッシュランプ光により照射された配線パターンとを具備する。
【0012】
本発明の第5の態様に係わる半導体装置の形成方法は、基体上に半導体層を形成する工程と、この半導体層上に絶縁膜を形成する工程と、この絶縁膜上に金属層を形成する工程と、前記金属層を加工して配線構造体を形成する工程と、前記金属層および前記配線構造体の少なくとも一方にフラッシュランプから発せられる光を照射してアニールを施す工程とを具備する。
【0013】
本発明での「配線構造体」は、配線、端子、及び電極等を含む。基体としては、一般的なガラス、石英ガラス、セラミックス、或いはシリコンウエハ等を単体もしくは組合わせて用いることができる。また、基体としては、例えば、一般的なガラス、石英ガラス、セラミックス、シリコンウエハ、或いは樹脂等からなる基板上に、絶縁膜(絶縁膜)や半導体層を一層もしくは複数層形成してなるものを用いてもよい。この複数層形成の場合には、複数の層を積層させても、並べても、またこれらの組合わせてもよい。また、上記絶縁膜や半導体層は、回路素子や回路素子の一部を形成していても良い。なお、回路素子は、薄膜トランジスタ等の半導体装置を含む。
【0014】
前記金属層としては、銅を主成分とする材料を用いるのが好ましい。
銅を主成分とする金属層とは、概ね90%以上が銅であるのが好ましい。さらに好ましくは、98%以上である。なお、銅を主成分とする金属層とは、銅単体を含む。金属層に含まれる銅以外の元素としては、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、或いは、クロム(Cr)等が挙げられる。
【0015】
本発明の第3の態様に係わる半導体装置の形成方法は、基体上に半導体層を形成する工程と、前記半導体層上に絶縁膜を形成する工程と、前記絶縁膜上に金属層を形成する工程と、前記金属層にフラッシュランプアニールを施す工程とを含む。
【0016】
本発明の第4の態様に係わる半導体装置の形成方法は、基体上に金属層を形成する工程と、前記金属層にフラッシュランプアニールを施す工程と、前記金属層上に絶縁膜を形成する工程と、前記絶縁膜上に半導体層を形成する工程とを含む。
【0017】
前記金属層としては、銅を主成分とする材料を用いるのが好ましい。
銅を主成分とする金属層とは、概ね90%以上が銅であるのが好ましい。さらに好ましくは、98%以上である。なお、銅を主成分とする金属層とは、銅単体を含む。金属層に含まれる銅以外の元素としては、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、或いは、クロム(Cr)等が挙げられる。
【0018】
上述のような配線構造体の形成方法や半導体の形成方法によれば、短時間のアニールにより、表面の凹凸の増大を抑えつつ、結晶粒径の拡大を図ることができる。
【発明の効果】
【0019】
上述のような配線構造体の形成方法、配線構造体、半導体装置の形成方法、及び表示装置によれば、表面凹凸が小さく、比抵抗が低い配線構造体及び半導体装置、表示装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の第1の実施形態を、図1乃至図3を参照して説明する。本実施形態では、本発明の配線構造体の一形態について説明する。図1及び図2は、本実施形態の配線構造体の製造工程を示している。
【0021】
まず、図1(a)に示すように、金属又は絶縁体製基板、例えば、ガラスからなる基板1を用意する。この基板1表面上に、窒化シリコン(SiNx)や酸化シリコン(SiO2)等からなり、例えば、膜厚300nmの下地絶縁層2を形成する。
【0022】
次に、図1(b)に示すように、下地絶縁層2の上に、例えば、膜厚30nmのバリアメタル層3を形成する。このバリアメタル層3は、後述する金属層4が下地絶縁層2に拡散するのを抑制するとともに密着性を改善するためのものである。本実施形態の配線構造体の形成方法では、基板1上に下地絶縁層2とバリアメタル層3とが順次形成されたものが基体5としている。この基体5上、即ち、バリアメタル層3上に、配線層として使用するための金属層4を形成する。金属層4としては、銅単体又は銅を主成分とする金属材料で形成された層を用いることができる。以下、金属層4を銅配線層という。この銅配線層4の膜厚は、任意であるが、この実施の形態では、500nmである。バリアメタル層3及び銅配線層4は、例えば、スパッタ法で連続的に形成することができる。
【0023】
次に、図1(c)に示すように、銅配線層4にフラッシュランプから発せられるフラッシュランプ光103bを照射する。このフラッシュランプとしては、種々のものが使用できるが、キセノン(Xe)フラッシュランプや、クリプトン(Kr)フラッシュランプが好ましい。この照射により、銅単体又は銅を主成分とする銅配線層4は、加熱されて、溶融、半溶融、或いは、非溶融状態となる。以下、この工程を、フラッシュランプ加熱工程(フラッシュランプアニールを施す工程)という。
【0024】
フラッシュランプ加熱工程は、図3に示すようなフラッシュランプ加熱装置100を用いて処理することができる。このフラッシュランプ加熱装置100は、処理容器としての気密容器101と、この気密容器101内に設けられ、金属層4が上に形成された基体5を支持する支持台102と、この支持台102の上方に、上記基体5と対向するようにして設けられた直管状のフラッシュランプ103と、これらフラッシュランプ103を上記基体5とは反対側から、即ち、上方から覆うリフレクタ104と、紫外線から可視領域までの波長の光に対して透過性を有する石英等で形成された透光板105とを備えている。前記気密容器101は、容器101内に、例えば、不活性ガスのようなガスを導入させるためのガス導入ポート101aと、この容器内のガスを排出するガス排出ポート101bとを有している。この透光板105は、気密容器101の内部をフラッシュランプ103が収容された上部と、基体5が配設される下部(処理空間)とに気密的に分離することにより、処理空間の容積を実質的に減じている。
【0025】
前記フラッシュランプ103は、1本又は複数本(この実施の形態では10本)が、図の面に直交する方向に互いに平行に、配設されてフラッシュランプユニットとして構成されている。そして、各フラッシュランプ103は、両端に陽極及び陰極(図示せず)が設けられた直管状のガラス管103aを有し、この中にはキセノンガスやクリプトンガス等が封入されている。前記陽極及び陰極は、夫々、駆動電源回路としてのコンデンサー(図示せず)に電気的に接続されている。かくして、このコンデンサーを介して陽極と陰極との間に瞬間的に印加される電圧により電流がガラス管103a内に流れ、その時に発せられたジュール熱でキセノンガスやクリプトンガス等が加熱されて、光が放出される。このようなフラッシュランプ103は、0.1ms〜10ms(より好ましくは、0.5ms〜5ms)のパルス幅を有するフラッシュランプ光を射出するものが好ましい。この場合には、コンデンサーに予め蓄えられた静電エネルギーが、0.1ms〜10ms(0.5ms〜5ms)という短い光パルスに変換されることから、連続点灯の光源に比べて極めて強い光を発し被処理基板を照射し、アニールすることができる。
【0026】
前記リフレクタ104は、全てのフラッシュランプ103を上記基体5とは反対側から覆うことで、フラッシュランプ光103bのうち、上記基体5とは反対側(上方)に放射されたフラッシュランプ光103bを上記基体5方向に反射させる。かくして、フラッシュランプ103から発せられる全てのフラッシュランプ光103bが、直接的又はリフレクタ104による反射によって間接的に上記基体5側に放射される。そして、このフラッシュランプ光103bは、透光板(透過窓)105を通過して上記被処理基体5上の銅配線層4を照射して、銅配線層4をアニールする。これにより、前述したように、上記基体5上に銅を主成分とする配線構造体6が形成される。
【0027】
前記フラッシュランプによる加熱工程(アニール工程)は、銅配線層4の表面酸化を抑えるためにアニール不活性ガスもしくは真空からなる雰囲気中で行うことが望ましい。
【0028】
従来行われている炉アニール又は赤外線ランプアニールは、加熱時間を長くしなければ、結晶粒を充分に成長させることができない。また、ガラス基板上に配線構造体を形成するために、炉アニール又は赤外線ランプアニールを行うと、ガラス基板自体も加熱される。また、結晶粒の成長に伴い、配線構造体の表面凹凸の増大が生じてしまう。
【0029】
これに対し、本実施形態の配線構造体の形成方法では、フラッシュランプ光103bはパルス幅が短いため、銅配線層4の加熱される期間が短時間で済む。また、フラッシュランプ光103bを使用すると、銅配線層4を直接加熱することができるので、結晶粒径の拡大を生じさせることができるが、表面凹凸の増大が生じ難い。即ち、フラッシュランプ光103bは、図10に示すように600nm以下の短波長側で反射率が低下するために、発光波長(図11に示した発光スペクトルの一例のように、キセノンのフラッシュランプは300nm〜600nmの範囲(領域)内で強い発光強度を有する)のフラッシュランプ光103bを銅配線層4は、有効に吸収してアニールされる。このため、基板1の温度の上昇をほとんど伴わない。
【0030】
また、フラッシュランプ光103bのパルス幅は、0.1ms〜10msに設定すると、高温のアニールでも銅の拡散を抑制でき、スループットを高くすることができる。
【0031】
本発明に係わるフラッシュランプ加熱工程では、フラッシュランプ103から発せられるフラッシュランプ光103bは、制御性がよいので、所定領域に対して通常1回のフラッシュ照射でよいが、複数回のフラッシュ照射でもよい。
【0032】
即ち、フラッシュランプ加熱工程は、上記基体5上の金属層4の所定の領域(本実施形態の配線構造体の形成方法では金属層4の全域)に対して一括して少なくとも1回フラッシュ照射を行う。
【0033】
また、フラッシュランプ加熱工程は、上記基体5とフラッシュランプ103とを、基体の平面方向においての相対的な位置関係を変化させるステップ送り及び/又はリピート送りしながら、上記金属層4の所定の領域を順次変更して夫々少なくとも1回フラッシュ照射を行う工程を含むようにしてもよい。上記ステップ送りする際は、照射領域(所定領域)が端部でオーバーラップするように行うことが望ましい。このようにすることにより、金属層4の広範囲の領域(全領域を含む)を全体に渡って均一にアニールすることができる。
【0034】
前記フラッシュランプ加熱装置100では、ステップ送り及び/又はリピート送りするための機構は公知のものを使用できるので省略されている。この場合に、フラッシュランプ103を上記基体5に対して移動させるよりも、フラッシュランプ103に対して上記基体5を移動させる方が容易なので、フラッシュランプユニットに対して上記基体5を金属層4の照射面と平行(実施の形態では水平)に移動させるのが好ましい。これは、フラッシュランプ加熱装置100の支持台102の基体5が位置される部分を移動可能に形成すればよいためである。しかしながら、フラッシュランプユニットを移動させたり、フラッシュランプユニットのうち所定の1もしくは複数のフラッシュランプのみを移動させるようにしてもよい。
前記フラッシュランプ103としては、電圧、電流密度、ガス圧、ランプ内径等を制御して紫外線から可視領域に強度の強い発光分光特性を有するものを用いるのが望ましい。具体的には、以下の実験(図12乃至図15参照)にて使用する際に有効な紫外線から可視領域の発光強度を得る条件範囲は、電流密度3000A/cm2〜10000A/cm2であった。フラッシュランプ加熱工程において、プラズマ温度を上昇させるとともに、短波長成分のエネルギー密度の比率を高くするためには、フラッシュランプ103の電流密度を3000A/cm2〜10000A/cm2程度の高電流密度とすることが望ましい。
【0035】
本実施形態の配線構造体の形成方法では、例えば、図1(a)ないし図1(c)を参照して説明したフラッシュランプアニール処理が行われた銅配線層4(配線構造体6)を所望のパターン例えば配線パターンに加工する方法を含んでも良い。この方法では、銅配線層4を、例えば、以下にような工程でパターンニングする。
【0036】
まず、フラッシュランプアニール処理が行われた上記配線構造体6上に、例えばPEPによりフォトレジスト膜7を形成する。そして、図1(d)に示すように、フォトレジスト膜7を所望のパターンに露光・現像処理する。
【0037】
次に、図2(e)に示すように、上記フォトレジスト膜7をマスクとして、上記配線構造体6及びバリアメタル層3を選択的にエッチングする。その後、図2(f)に示すように、剥離液等を用いてフォトレジスト膜7を配線構造体6から剥離する。このようにすることによって、所望のパターン(例えば、アイランド状)の配線構造体6を形成することができる。
【0038】
なお、本実施形態の配線構造体の形成方法では、銅もしくは銅を主成分とする銅配線層4にフラッシュランプ加熱工程した後、エッチングを施してアイルランド状の配線構造体6を形成しているが、図2(g)に示すように、銅配線層4を所望のパターンに形成した後に、これにフラッシュランプ加熱工程を行ってもよい。また、図1(c)と図2(g)とに示すように、エッチング前とエッチング後との両方でフラッシュランプ加熱工程を行ってもよい。また、エッチングして配線構造体形成後のみにフラッシュランプ加熱工程を行ってもよい。
【0039】
次に、所望のパターンに形成した配線構造体6に、下地絶縁層2上も含めて、例えば窒化シリコンや酸化シリコンで形成された保護層や絶縁膜のような付加層8を形成する。この付加層8の形成後に、図2(h)に示すように、再び、フラッシュランプ加熱工程をこの配線構造体6に対して行ってもよい。この場合には、付加層8の形成前にはフラッシュランプ加熱工程を行わず、付加層8の形成後のみに、銅配線層4にフラッシュランプ加熱工程を行って配線構造体6を形成しても良い。これに対して、銅配線層4上に窒化シリコン層を形成した後に、赤外線ランプアニールや炉アニールを行うと、結晶成長に伴いボイドが発生し易いという問題がある。これに対し、フラッシュランプ加熱工程は、上述のように、アニール時間が短いため、銅配線層4上に窒化シリコン層を形成した後にフラッシュランプアニールを行っても、ボイドが発生し難いという利点がある。
【0040】
図12(a)は、いずれのアニール処理を行っていない金属層の後方電子線散乱法で解析した結晶方位マップを示している。図12(b)は、赤外線ランプにより金属層を加熱(450℃、10分)して、形成した配線構造体の、また、図12(c)は、フラッシュランプにより加熱処理して形成した配線構造体の結晶方位マップを示している。図12(b)並びに図12(b)から、当業者であればわかるように、いずれも主結晶方位は(111)面であった。図13(a)ないし13(c)は、図12(a)ないし12(c)の双晶を夫々含む結晶粒径マップを示している。図13からわかるように、加熱処理前の平均結晶粒径は、0.2μm程度であったのに対し、加熱後は結晶粒径が拡大している。結晶粒径が拡大すると、電子の結晶粒界での散乱が低下するため、加熱処理前の比抵抗は2乃至2.4μΩcm程度だったものが、フラッシュランプアニール後は1.7乃至1.8μΩcmに低下し、ほぼバルクの比抵抗値(1.67μΩcm)に近づいている。また、結晶粒径の拡大は、エレクトロンマイグレーション耐性向上、ボイド発生の低減にも有効である。
【0041】
図14は、フラッシュランプにより加熱した銅の配線構造体表面の凹凸を観察した二次電子像(SEM)を示している。図15は、赤外線ランプにより加熱(400℃、10分)された銅配線層の表面凹凸を観察した二次電子像(SEM)を示している。図14及び図15に示すように、赤外線ランプにより加熱した配線構造体は表面凹凸が拡大しているが、フラッシュランプにより加熱した銅配線層はほとんど加熱処理前と同じであった。
【0042】
以上のように、本実施形態の配線構造体の形成方法によれば、短時間のアニールにより、表面の凹凸の増大を抑えつつ、結晶粒径の増大を図ることができる。したがって、表面凹凸が少なく電気抵抗が低い配線構造体6が得られる。
【0043】
本実施形態の配線構造体の形成方法では、銅もしくは銅を主成分とする金属層(銅配線層)4をスパッタ法で形成した場合について説明したが、金属層(銅配線層)4の形成方法は、これ銅の配線層に限定されるものではない。金属層4としては、例えばモリブデン、タンタル、チタン、タングステン、アルミニウム層、ニッケル、コバルト層などその他の金属層の製造プロセスに適用してもよい。
【0044】
以下、本発明の第2の実施形態を、図4及び図5を参照して説明する。本実施形態では、本発明の配線構造体の他の一形態について説明する。図4及び図5は、本実施形態の配線構造体の製造工程を示している。
【0045】
図4(a)の工程は、上述した第1の実施形態の図1(a)の工程と同じである。次に、図4(b)に示すように、下地絶縁層2の上にバリアメタル層3とシード層(例えば、銅や銅を主成分とする銅シード層)9とをスパッタ法で順次連続して形成する。この場合、基板1上に下地絶縁層2とバリアメタル層3とシード層9とが形成されたものが基体5となる。なお、シード層9は、後に、金属層4とともに配線構造体6をなす。
【0046】
次に、シード層9上にフォトレジスト膜7を形成し、図4(c)に示すように、所望の領域のみシード層9の表面が露出するように、レジスト溝7aをこのフォトレジスト膜7に形成する。次に、図4(d)に示すように、レジスト溝7aによって露出されたシード層9上に、無電解めっき法で金属層、例えば銅のみか銅を主成分とする金属層(以下、銅配線層という)4を形成する。そして、図5(e)に示すように、剥離液等を用いてフォトレジスト膜7をシード層9上から剥離する。
【0047】
次に、図5(f)に示すように、銅配線層4に対して、上述した第1の実施形態の図1(c)と同様に、フラッシュランプ光103bを照射して、フラッシュランプ加熱工程を行う。そして、図5(g)に示すように、銅配線層4をマスクとして、シード層9のうち配線構造体6をなす領域以外の部分をエッチングにより除去する。この結果、シード層9を構成要素の一部とした配線構造体6が形成される。
【0048】
なお、図5(g)に示すように、上記シード層9のエッチングに続いて、バリアメタル層3のうち配線構造体6をなす領域以外の部分をエッチングにより除去してもよい。また、フラッシュランプ加熱工程は、上記図5(f)に示す工程の代わりか、この工程に加えて、図4(c)の工程の前(レジスト溝7a形成前)に、シード層9に対して行って、配線構造体の一部をなすシード層9の結晶粒径の拡大を行ってもよい。シード層9にフラッシュランプ加熱工程を施した場合には、無電解めっきの成膜直後の結晶粒径が大きくすることができるので有利である。即ち、このようにして、結晶粒径の拡大を行っておくと、後で形成する銅配線層4の結晶粒径をさらに大きくすることができる。また、図5(g)に示す銅配線層4を形成のためのエッチング工程の後に、配線構造体に対してフラッシュランプ加熱工程を行っても、また、この工程を加えてもよい。
【0049】
尚、シード層9のような薄膜を赤外線ランプアニールや炉アニールで加熱処理すると、原子(分子)の凝集が生じ易いが、フラッシュランプ加熱工程ではアニール時間が短いために原子(分子)の凝集が生じ難いという利点がある。
【0050】
本発明に係わるフラッシュランプ加熱工程は、また、図16(a)ないし16(d)に示すようなダマシンプロセスと電解めっきプロセスで形成されたような銅を主成分とする銅配線層のような金属層にも、フラッシュランプ加熱工程は有効である。即ち、この場合でも、銅配線層を直接フラッシュラン加熱工程でアニールすることでボイドの低減を図ることができる。
【0051】
この方法を以下に簡単に説明する。
【0052】
まず、図16(a)に示すように、半導体基板又は絶縁性基板等の基板71上に、例えばCVD法により膜厚1000nmのシリコン酸化膜からなる絶縁膜12を堆積した後、絶縁膜72上に形成されたレジストパターン(図示省略)をマスクとして絶縁膜72に対してドライエッチングを行なって、絶縁膜72に例えば直径200nmのホール73及び例えば幅240nmの配線用溝74を形成する。尚、ホール73は、基板71、又は基板11上に形成されている下層配線(図示省略)に達するように形成されている。
【0053】
次に、図16(b)に示すように、ホール73及び配線用溝74を含む絶縁膜72の上に全面に亘ってスパッタリング法により、膜厚35nmの窒化タンタル膜とタンタル膜からなる積層のバリアメタル層75を、ホール73内及び配線用溝74内にそれぞれ空間部が残存するように堆積する。続いて、バリアメタル層75の上に全面に亘ってスパッタリング法により、膜厚150nmの銅膜からなるシード層76を、ホール73内及び配線用溝74内にそれぞれ空間部が残存するように堆積する。尚、バリアメタル層75は、バリア層又は密着層としての機能を有している。
【0054】
図16(c)に示すように、ホール73内及び配線用溝74内に残存するシード層76をシード層として電解めっき法により、該シード層の上に銅膜からなるめっき層77を、ホール73及び配線用溝74が完全に埋まるように成長させる。
【0055】
次に、図16(d)に示すように、前記めっき層77にフラッシュランプ光103bを照射して、フラッシュランプ加熱工程を行う。そして、図16(e)に示すように、凹所内を除く基板71のバリアメタル層75、シード層76並びにめっき層77の部分をCMPにより除去して、上面を平滑化して、配線構造体を形成する。
尚、図16(d)に示す前記フラッシュランプ加熱工程は、CMPの後で行っても、両方で行っても良い。
【0056】
以上のように、本実施形態の配線構造体の形成方法によれば、短時間のアニールにより、表面の凹凸の増大を抑えつつ、結晶粒径の増大を図ることができる。したがって、表面凹凸が小さく、比抵抗が低い配線構造体が得られる。
【0057】
以下、本発明の第3の実施形態に係わる配線構造体及び半導体の形成方法について図6乃至図8を参照して説明する。本実施形態では、半導体装置の製造方法として、ボトムゲート型のアモルファスシリコンTFTの製造方法を説明するが、半導体装置は、これに限られることはない。
【0058】
図6は、表示装置としての、アクティブマトリックス型の液晶表示装置10の等価回路の一例を示している。この液晶表示装置10は、1対の透明基板11,12と、液晶層13と、下地絶縁層14と、画素電極15と、配線構造体6により形成された走査線16と、信号線17と、対向電極18と、半導体装置としての薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下、TFTという)19と、走査線駆動回路21と、信号線駆動回路22と、液晶コントローラ23とを備えている。
【0059】
前記透明基板11,12としては、例えば、1対のガラス板を用いることができる。これら透明基板11,12は、互いに所定間隔を有して対向するようにして、図示しない枠状のシール材を介して周辺で接合されている。そして、前記液晶層13は、一対の透明基板11,12間の前記シール材により囲まれた領域に設けられている。
【0060】
前記1対の透明基板11,12のうちの一方、例えば後側(図7及び図8において下側)の透明基板12の内面には、前記下地絶縁層14、複数の画素電極15、複数の走査線16、複数の信号線17、及び複数のTFT19等が設けられている。(これら図には、通常走査線と同材料で形成される複数の補助容量は示していない)
前記下地絶縁層14は、酸化シリコンや窒化シリコン等により形成されることができる。前記複数の画素電極15は、行方向及び列方向に、マトリックス状に配設され、各々は、例えばITOで形成された透明電極により形成されている。図7に示すように、前記TFT19は、下地絶縁層14上に設けられ、各々は、ゲート電極(本実施形態では配線構造体6でもある)31と、ゲート絶縁膜32と、半導体層33と、ソース電極34と、ドレイン電極35とを備えている。また、これらTFT19は、マトリックス上に配設された前記複数の画素電極15と、ソース電極34が電気的に接続されるようにして、画素電極15に対して夫々、1対1で対応するように設けられている。
【0061】
前記走査線16は、下地絶縁層14上で、マトリックス状に設けられた画素電極15の行方向(図6において左右方向、図8において紙面に直交する方向)に互いに平行に延びるように設けられている。これら走査線16は、TFT19のゲート電極31と電気的に接続されている。また、これら走査線16の一端は、走査線駆動回路21に電気的に接続されている。
【0062】
前記信号線17は、マトリックス状に設けられた画素電極15の列方向(図6において上下方向)に沿って互いに平行に延びるように、ゲート絶縁膜32上に設けられている。これら信号線17は、対応するTFT19のドレイン電極35と電気的に接続されている。また、これら信号線17の一端は、信号線駆動回路22に電気的に接続されている。
【0063】
前記TFT19は、図7に示すようなボトムゲート型のアモルファスシリコンTFTである。このようなTFTでは、上述したように、ゲート電極31は、下地絶縁層14上に設けられ、また、ゲート絶縁膜32は、ゲート電極31、走査線16、及び下地絶縁層14を覆うように設けられている。このゲート絶縁膜32としては、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、もしくは酸化シリコン膜と窒化シリコン膜との積層膜等を用いることができる。前記半導体層33は、ノンドープアモルファスシリコン層(ノンドープa-Si層)41と、この層の両側面上に互いに所定距離を有して離間され、夫々1対のコンタクト層としてのn+型アモルファスシリコン層(n+型a-Si層)42とを有している。前記ノンドープa-Si層41は、ゲート絶縁膜32上に設けられており、前記1対のn+型アモルファスシリコン層(n+型a-Si層)42の下に夫々位置するソース領域33b並びにドレイン領域33cと、これら領域33b,33c間に位置するチャンネル領域33aとを有している。そして、このチャンネル領域33aが、ゲート電極31の上方に位置されている。
【0064】
前記ソース電極34及びドレイン電極35は、ソース領域33b及びドレイン領域33cと電気的に接続するように、これら領域33b,33c上のコンタクト層(n+型a-Si層42)上に夫々に設けられている。ソース電極34及びドレイン電極35のうちの一方、例えば、ドレイン電極35は、対応する信号線17と電気的に接続されている。
【0065】
前記画素電極15を露出させる開口部38bを有するパシベーション層38が、前記ソース電極34、ドレイン電極35、信号線17、及びゲート絶縁膜32を覆うように設けられている。
【0066】
図6に示すように、前記走査線駆動回路21及び信号線駆動回路22は、夫々液晶コントローラ23に接続されている。この液晶コントローラ23は、例えば外部から供給される画像信号及び同期信号を受け、画素映像信号Vpixを信号線17に、垂直走査制御信号YCTを走査線駆動回路21に、そして、水平走査制御信号XCTを信号線駆動回路22に、夫々供給する。
【0067】
前記前側(図7及び図8において上側)の透明基板11の内面には、複数の画素電極15に対向するようにして、1枚膜状の透明な対向電極(共通電極)18が設けられ、マトリックス状に配置された画素領域を構成している。この対向電極18は、例えばITOにより形成されている。なお、この透明基板11の内面に、前記複数の画素領域に対応させてカラーフィルタを、また、前記画素領域の間の領域に対応させて遮光膜を夫々設けてもよい。
【0068】
前記1対の透明基板11,12の外面には、図示しない偏光板が夫々設けられている。また、液晶表示装置10を透過型とする場合、後側の透明基板12の後方には、図示しない面光源が設けられている。なお、この液晶表示装置10は、反射型或いは半透過反射型であってもよい。
【0069】
前記走査線16は、銅を主成分とする配線構造体6によって形成されている。バリアメタル層39が、走査線16と下地絶縁層14との密着性向上、及び、走査線16から下地絶縁層14への銅の拡散抑制のために設けられている。走査線16上には、銅の拡散を抑制するキャッピングメタル層或いは絶縁層等を設けてもよい。走査線16は、第1の実施形態の配線構造体6と同様にして形成することができる。また、ゲート電極31は、走査線16と一体に形成することができる。
【0070】
以下、後側の透明基板12の内面への成膜工程及びTFT19の形成方法について説明する。
【0071】
まず、後側の透明基板12として、厚さ0.7mmのガラス板を用意する。この透明基板12(第1の実施形態の配線構造体の形成方法における基板1に対応)上に、下地絶縁層14(第1の実施形態の配線構造体の形成方法における下地絶縁層2に対応)としての窒化シリコンと酸化シリコン層との積層膜を形成する。本実施形態では、下地絶縁層14の層厚を400nmとしている。下地絶縁層14は、CVD法(例えば、PE−CVD法(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition))を用いて、窒化シリコン膜の厚さが200nmと酸化シリコン膜の厚さが200nmとなるように透明基板12上に連続的に堆積させて形成している。
【0072】
次に、下地絶縁層14上に、バリアメタル層39(第1の実施形態の配線構造体の形成方法におけるバリアメタル層3に対応)を形成する。このバリアメタル層39は、スパッタリング法により成膜することができる。バリアメタル層39の材料としては、Ta,TaN,TiN、Mo、MoW等を単独もしくは組合わせて使用することができる。透明基板12上に下地絶縁層14とバリアメタル層39とが形成されたものが、走査線16(配線構造体6)、ゲート電極31(配線構造体6)、ボトムゲート型TFT19を形成するための基体(図示せず、第1の実施形態の配線構造体の形成方法における基体5に対応)となる。
【0073】
次に、基体上、即ち、バリアメタル層39上に、走査線16及びゲート電極31を形成する。これは、第1の実施形態の配線構造体の形成方法と同様にして行うことができる。即ち、上記基体上(バリアメタル層39上)に、金属層として、例えば、銅を主成分とする銅配線層(図示せず、第1の実施形態の配線構造体の形成方法における銅配線層4に対応)を形成する。以下、金属層を銅配線層という。
【0074】
この銅配線層は、スパッタリング法によりバリアメタル層39の成膜後、連続的に成膜することができる。本実施形態では、銅配線層の層厚を500nmとしている。その後、銅配線層にフラッシュランプ光を照射する。これにより、銅単体又は銅を主成分とする銅配線層は、加熱されて、溶融、半溶融、或いは、非溶融状態となる。これは、第1の実施形態のフラッシュランプ加熱工程と同じである。これにより、配線構造体40が形成される。
【0075】
上述のような配線構造体40を形成した後、配線構造体40とバリアメタル層39とを所望の配線パターンにエッチング加工して、配線構造体40とバリアメタル層39とを有する配線構造体6としてのゲート電極31及び走査線16を形成する。
【0076】
続けて、ゲート電極31及び走査線16を覆うように、ゲート絶縁膜32を形成する。なお、銅配線層とバリアメタル層39とを所望の配線パターンにエッチング加工するとともに、その上にゲート絶縁膜32を形成した後、フラッシュランプ103(図3)によるアニール処理を行って、配線構造体6としてのゲート電極31及び走査線16を形成してもよい。その際は、ゲート絶縁膜32の少なくとも一部に、窒化シリコン等の銅の拡散防止能を有するものを用いることが望ましい。
【0077】
次に、ゲート絶縁膜32上に、半導体層33を形成する。詳しくは、ゲート絶縁膜32上にノンドープa−Si層を、また、このノンドープa−Si層41の上にn+型a-Si層を順次成膜する。そして、これら膜をパターニングして、ノンドープa−Si層41及びn+型a-Si層42を同じ形状に形成した後、n+型a-Si層42上にソース電極34及びドレイン電極35を夫々形成する。これら電極の形成は、ソース電極34及びドレイン電極35となるアルミニウム層をn+型a-Si層42成膜し、次に、このアルミニウム層を所定のパターンにエッチングすることにより実現できる。この後、ソース電極34及びドレイン電極35をマスクとし、これら電極間に位置するn+型a-Si層の部分をエッチングにより除去して、チャンネル領域33aを露出させて、TFT19を完成させる。
【0078】
次に、前記ドレイン電極35と電気的に接続するようにして、ゲート絶縁膜32上に信号線17を形成するとともに、ソース電極34と電気的に接続するようにして画素電極15を形成する。そして、前記TFT19、ゲート絶縁膜32、及び画素電極15を覆うようにパシベーション層38を成膜し、このパシベーション層38に、画素電極15を露出させる開口部38bを形成する。以上により、後側の透明基板12への成膜工程が完了する。
【0079】
本実施形態の配線構造体の形成方法及び半導体の形成方法によれば、短時間のアニールにより、表面の凹凸の増大を抑えつつ、結晶粒径の拡大を図ることができる。したがって、表面凹凸が少なく電気抵抗が低い配線構造体6(走査線16、ゲート電極31)及び半導体装置(TFT)19が得られる。
【0080】
本実施形態の配線構造体の形成方法及び半導体の形成方法では、第1の実施形態の配線構造体の形成方法のように、バリアメタル層の上に銅配線層をスパッタ法で連続成膜したが、第2の実施形態の配線構造体の形成方法のようにしてもよい。即ち、バリアメタル層の上にシード層を形成し、その上にフォトレジスト膜を形成して所定のパターンに露光・現像処理する。形成されたフォトレジスト膜のレジスト溝に銅配線層を無電解めっき法で形成し、フォトレジスト膜を剥離する。その後、フラッシュランプによるアニール処理を行い、シード層をエッチングする。そして、銅配線層をマスクとしてバリアメタル層をエッチングする。この場合、フラッシュランプによるアニール処理を、バリアメタル層をエッチングした後に行うようにしてもよい。さらに、バリアメタル層をエッチングした後、銅の拡散防止のために、少なくとも銅配線層の表面を覆うようにCoB,CoWBようなキャッピングメタル層を無電解めっき法によって形成し、フラッシュランプによるアニール処理を行うようにしてもよい。
【0081】
以下、本発明の第4の実施形態を、半導体の形成方法の他の一形態について、図9を参照して説明する。本実施形態では、半導体装置19の製造方法として、トップゲート型のポリシリコンTFT(LDD構造を有するn型のTFT)の製造方法を説明する。
【0082】
本実施形態では、半導体装置19としてのTFTが、配線構造体6としてのソース電極34及びドレイン電極35を有している。これらソース電極34及びドレイン電極35は、第1及び第2の実施形態における配線構造体6の形成方法と同様の方法で形成することが可能である。この実施形態では、ゲート絶縁膜32及び層間絶縁層52を選択的にエッチングして、ソース領域33b及びドレイン領域33cの表面まで開口するコンタクトホール32a,52a,32b,52bを形成した状態のものが基体となる。なお、他の構成は、図示しない構成も含めて、上述した第3の実施形態と同じであるから、重複する説明は図に同符号を付して省略する。
【0083】
前記銅配線層62にフラッシュランプ加熱工程を施す。フラッシュランプ加熱工程は加熱時間が短いために、銅配線層62のアニール時の銅拡散を抑制できるという利点もある。
【0084】
上述のようにすることにより、表面凹凸が小さく、気比抵抗が低い半導体装置19(TFT20b)が得られる。
【0085】
上記の実施形態では、下地絶縁層と銅層との間に密着性向上、拡散防止のためにバリアメタル層を設けたが、銅層にマグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、或いは、クロム(Cr)等を含むものを用いることにより、バリアメタル層を設けることなく下地絶縁層との密着性改善、熱処理後に下地界面との間に形成される酸化物バリア層による拡散防止を行うようにしてもよい。
【0086】
なお、本発明の配線構造体の形成方法及び半導体装置の形成方法は、液晶表示装置の製造過程における配線構造体の形成方法及び半導体装置の形成方法に限定されるものではない。本発明は、例えば、無機ELD装置或いは有機ELD装置等の表示装置の製造過程における配線構造体の形成方法及び半導体装置の形成方法としても適用することができる。
【0087】
上記実施形態は、配線構造体6として走査線16、ゲート電極31、ソース電極34、ドレイン電極35を例にとって説明したが、本発明の配線構造体の形成方法は、これらの形成方法に限定されるものではない。本発明の配線構造体の形成方法は、信号線17やその他の種々の配線、電極、端子等の形成方法に広く適用することができる。
【0088】
また、上記実施形態では、半導体装置19としてTFT20a,20bを例にとって説明したが、本発明の半導体装置の形成方法は、種々の半導体装置の製造方法として広く適用することができる。
【0089】
さらに、上記実施形態では、金属層として銅を主成分とする銅配線層を例にとって説明したが、金属層は、銅を主成分とする銅配線層に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】(a)〜(d)は、本発明の第1の実施形態にかかる配線構造体の形成方法の前半部分を説明するための工程図。
【図2】(e)〜(h)は、図1に続き、本発明の第1の実施形態にかかる配線構造体の形成方法の後半部分を説明するための工程図。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る配線構造体の形成方法に用いられるフラッシュランプ加熱装置の一例を示す断面図。
【図4】(a)〜(d)は、本発明の第2の実施形態にかかる配線構造体の形成方法の前半部分を説明するための工程図。
【図5】(e)〜(g)は、図4に続き、本発明の第2の実施形態にかかる配線構造体の形成方法の後半部分を説明するための工程図。
【図6】本発明の第3の実施形態の半導体装置の形成方法によって形成した半導体装置としての薄膜トランジスタを備える表示装置を示す平面図。
【図7】図6中VII-VII線に沿って切断して示す断面図。
【図8】図6中VIII−VIII線に沿って切断して示す断面図。
【図9】半導体装置としての薄膜トランジスタの他の一例を備える表示装置の断面図。
【図10】フラッシュランプ光の波長と反射率との関係を示す図。
【図11】キセノンのフラッシュランプの発光スペクトルを示す図。
【図12】(a)は、アニール処理を行っていない金属層の後方電子線散乱法で解析した結晶方位マップ、(b)は、赤外線ランプにより金属層を加熱して形成した配線構造体の後方電子線散乱法で解析した結晶方位マップ、及び(c)は、フラッシュランプにより加熱処理して形成した配線構造体の結晶方位マップ。
【図13】(a)ないし13(c)は、図12(a)ないし12(c)の双晶を夫々含む結晶粒径マップ。
【図14】フラッシュランプにより加熱した銅の配線構造体表面の凹凸を観察した二次電子像(SEM)を示す。
【図15】赤外線ランプにより加熱した銅配線層の表面凹凸を観察した二次電子像(SEM)を示す。
【図16】(a)ないし(e)は、本発明の変形例に係わるダマシンプロセスと電解めっきプロセスとを説明するための工程図。
【符号の説明】
【0091】
5,70,80…基体、 4…銅配線層(金属層)、 6…配線構造体、 20a,20b…TFT(半導体装置)、 32…ゲート絶縁膜(絶縁膜)、 33…半導体層、 103…フラッシュランプ、 103b…フラッシュランプ光
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に代表される表示装置やULSIに代表される半導体装置等に用いて好適な配線構造体の形成方法、配線構造体、薄膜トランジスタ等の製造に適した半導体装置の形成方法、及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、LSI(Large-Scale Integrated circuit)やULSI(Ultra Large-Scale Integrated circuit)に代表される半導体装置の配線や電極に適用される金属層としては、アルミニウム(Al)層やその合金層が主流となっている。しかし、近年、LSI、ULSIに代表される半導体装置の分野においては、集積度を向上させるため、更なる微細化、細線化、動作スピードの向上等といった要求が高まっている。このため、アルミニウムよりも抵抗が低く、且つ、エレクトロマイグレーションやストレスマイグレーション等の耐性が高い銅(Cu)やその合金が、次世代の配線構造体(配線や電極等)の材料として検討されてきている。
【0003】
液晶表示装置に代表される表示装置の分野においても、近年、表示面積の拡大により配線長が増加する傾向にある。また、駆動用ドライバ回路を含む周辺回路部分のモノリシック化、画素内メモリや光センサー等といった付加機能の取り込みの開発も進んできている。したがって、半導体分野と同様に、低抵抗な配線構造体への要求が高まってきている。
【0004】
銅を主成分とする配線構造体は、従来、スパッタ法、CVD法、めっき法等で形成されている。
【特許文献1】特開2001−68679
【非特許文献1】Material Research Society Symposium Proceeding Vol.612 D.7.1.1 (2000)
【非特許文献2】Journal of Electrochemical Society Vol.148, C47−C53 (2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、スパッタ法、CVD法、めっき法等で形成され、銅を主成分とした金属層(配線構造体)の結晶粒は小さく、比抵抗が比較的大きい。このため、従来、銅を主成分とする金属層を加熱炉内でヒータ等の加熱源によりアニール(炉アニール)を施すことにより、結晶粒を大きくし、比抵抗値を低下させている。
【0006】
しかしながら、炉アニールにより銅を主成分とする金属層のアニールを行うと、結晶粒が大きくなり比抵抗は低下するものの、結晶粒成長に伴い表面凹凸が増大してしまうという課題が新たに発生した。このため、炉アニールによって結晶粒を成長させてなる金属層は、半導体装置や表示装置への適用が困難であるという課題があった。
【0007】
本発明の目的は、このような事情に基づいてなされたもので、表面凹凸が小さく、比抵抗が低い配線構造体の形成方法、配線構造体半導体装置の形成方法、及び表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に係わる配線構造体の形成方法は、基体上に金属層を形成する第1工程と、この金属層にフラッシュランプから発せられる光を照射してアニールを行うアニール工程とを具備する。
【0009】
本発明の第2の態様に係わる配線構造体の形成方法は、基体上に金属層を形成する第1工程と、前記金属層に300nm〜600nmの波長範囲に極大強度を有し、フラッシュランプから発せられる光を照射してアニールを行うアニール工程とを具備する。
【0010】
本発明の第3の態様に係わる配線構造体の形成方法は、基体上に金属層を形成する第1工程と、この金属層を配線パターン状にエッチングして配線構造体パターンを形成する第2工程と、この配線構造体パターンにフラッシュランプから発せられる光を照射してアニールを行うアニール工程とを具備する。
【0011】
本発明の第4の態様に係わる配線構造体は、絶縁体からなる基板と、この基板上に設けられ、フラッシュランプ光により照射された配線パターンとを具備する。
【0012】
本発明の第5の態様に係わる半導体装置の形成方法は、基体上に半導体層を形成する工程と、この半導体層上に絶縁膜を形成する工程と、この絶縁膜上に金属層を形成する工程と、前記金属層を加工して配線構造体を形成する工程と、前記金属層および前記配線構造体の少なくとも一方にフラッシュランプから発せられる光を照射してアニールを施す工程とを具備する。
【0013】
本発明での「配線構造体」は、配線、端子、及び電極等を含む。基体としては、一般的なガラス、石英ガラス、セラミックス、或いはシリコンウエハ等を単体もしくは組合わせて用いることができる。また、基体としては、例えば、一般的なガラス、石英ガラス、セラミックス、シリコンウエハ、或いは樹脂等からなる基板上に、絶縁膜(絶縁膜)や半導体層を一層もしくは複数層形成してなるものを用いてもよい。この複数層形成の場合には、複数の層を積層させても、並べても、またこれらの組合わせてもよい。また、上記絶縁膜や半導体層は、回路素子や回路素子の一部を形成していても良い。なお、回路素子は、薄膜トランジスタ等の半導体装置を含む。
【0014】
前記金属層としては、銅を主成分とする材料を用いるのが好ましい。
銅を主成分とする金属層とは、概ね90%以上が銅であるのが好ましい。さらに好ましくは、98%以上である。なお、銅を主成分とする金属層とは、銅単体を含む。金属層に含まれる銅以外の元素としては、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、或いは、クロム(Cr)等が挙げられる。
【0015】
本発明の第3の態様に係わる半導体装置の形成方法は、基体上に半導体層を形成する工程と、前記半導体層上に絶縁膜を形成する工程と、前記絶縁膜上に金属層を形成する工程と、前記金属層にフラッシュランプアニールを施す工程とを含む。
【0016】
本発明の第4の態様に係わる半導体装置の形成方法は、基体上に金属層を形成する工程と、前記金属層にフラッシュランプアニールを施す工程と、前記金属層上に絶縁膜を形成する工程と、前記絶縁膜上に半導体層を形成する工程とを含む。
【0017】
前記金属層としては、銅を主成分とする材料を用いるのが好ましい。
銅を主成分とする金属層とは、概ね90%以上が銅であるのが好ましい。さらに好ましくは、98%以上である。なお、銅を主成分とする金属層とは、銅単体を含む。金属層に含まれる銅以外の元素としては、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、或いは、クロム(Cr)等が挙げられる。
【0018】
上述のような配線構造体の形成方法や半導体の形成方法によれば、短時間のアニールにより、表面の凹凸の増大を抑えつつ、結晶粒径の拡大を図ることができる。
【発明の効果】
【0019】
上述のような配線構造体の形成方法、配線構造体、半導体装置の形成方法、及び表示装置によれば、表面凹凸が小さく、比抵抗が低い配線構造体及び半導体装置、表示装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の第1の実施形態を、図1乃至図3を参照して説明する。本実施形態では、本発明の配線構造体の一形態について説明する。図1及び図2は、本実施形態の配線構造体の製造工程を示している。
【0021】
まず、図1(a)に示すように、金属又は絶縁体製基板、例えば、ガラスからなる基板1を用意する。この基板1表面上に、窒化シリコン(SiNx)や酸化シリコン(SiO2)等からなり、例えば、膜厚300nmの下地絶縁層2を形成する。
【0022】
次に、図1(b)に示すように、下地絶縁層2の上に、例えば、膜厚30nmのバリアメタル層3を形成する。このバリアメタル層3は、後述する金属層4が下地絶縁層2に拡散するのを抑制するとともに密着性を改善するためのものである。本実施形態の配線構造体の形成方法では、基板1上に下地絶縁層2とバリアメタル層3とが順次形成されたものが基体5としている。この基体5上、即ち、バリアメタル層3上に、配線層として使用するための金属層4を形成する。金属層4としては、銅単体又は銅を主成分とする金属材料で形成された層を用いることができる。以下、金属層4を銅配線層という。この銅配線層4の膜厚は、任意であるが、この実施の形態では、500nmである。バリアメタル層3及び銅配線層4は、例えば、スパッタ法で連続的に形成することができる。
【0023】
次に、図1(c)に示すように、銅配線層4にフラッシュランプから発せられるフラッシュランプ光103bを照射する。このフラッシュランプとしては、種々のものが使用できるが、キセノン(Xe)フラッシュランプや、クリプトン(Kr)フラッシュランプが好ましい。この照射により、銅単体又は銅を主成分とする銅配線層4は、加熱されて、溶融、半溶融、或いは、非溶融状態となる。以下、この工程を、フラッシュランプ加熱工程(フラッシュランプアニールを施す工程)という。
【0024】
フラッシュランプ加熱工程は、図3に示すようなフラッシュランプ加熱装置100を用いて処理することができる。このフラッシュランプ加熱装置100は、処理容器としての気密容器101と、この気密容器101内に設けられ、金属層4が上に形成された基体5を支持する支持台102と、この支持台102の上方に、上記基体5と対向するようにして設けられた直管状のフラッシュランプ103と、これらフラッシュランプ103を上記基体5とは反対側から、即ち、上方から覆うリフレクタ104と、紫外線から可視領域までの波長の光に対して透過性を有する石英等で形成された透光板105とを備えている。前記気密容器101は、容器101内に、例えば、不活性ガスのようなガスを導入させるためのガス導入ポート101aと、この容器内のガスを排出するガス排出ポート101bとを有している。この透光板105は、気密容器101の内部をフラッシュランプ103が収容された上部と、基体5が配設される下部(処理空間)とに気密的に分離することにより、処理空間の容積を実質的に減じている。
【0025】
前記フラッシュランプ103は、1本又は複数本(この実施の形態では10本)が、図の面に直交する方向に互いに平行に、配設されてフラッシュランプユニットとして構成されている。そして、各フラッシュランプ103は、両端に陽極及び陰極(図示せず)が設けられた直管状のガラス管103aを有し、この中にはキセノンガスやクリプトンガス等が封入されている。前記陽極及び陰極は、夫々、駆動電源回路としてのコンデンサー(図示せず)に電気的に接続されている。かくして、このコンデンサーを介して陽極と陰極との間に瞬間的に印加される電圧により電流がガラス管103a内に流れ、その時に発せられたジュール熱でキセノンガスやクリプトンガス等が加熱されて、光が放出される。このようなフラッシュランプ103は、0.1ms〜10ms(より好ましくは、0.5ms〜5ms)のパルス幅を有するフラッシュランプ光を射出するものが好ましい。この場合には、コンデンサーに予め蓄えられた静電エネルギーが、0.1ms〜10ms(0.5ms〜5ms)という短い光パルスに変換されることから、連続点灯の光源に比べて極めて強い光を発し被処理基板を照射し、アニールすることができる。
【0026】
前記リフレクタ104は、全てのフラッシュランプ103を上記基体5とは反対側から覆うことで、フラッシュランプ光103bのうち、上記基体5とは反対側(上方)に放射されたフラッシュランプ光103bを上記基体5方向に反射させる。かくして、フラッシュランプ103から発せられる全てのフラッシュランプ光103bが、直接的又はリフレクタ104による反射によって間接的に上記基体5側に放射される。そして、このフラッシュランプ光103bは、透光板(透過窓)105を通過して上記被処理基体5上の銅配線層4を照射して、銅配線層4をアニールする。これにより、前述したように、上記基体5上に銅を主成分とする配線構造体6が形成される。
【0027】
前記フラッシュランプによる加熱工程(アニール工程)は、銅配線層4の表面酸化を抑えるためにアニール不活性ガスもしくは真空からなる雰囲気中で行うことが望ましい。
【0028】
従来行われている炉アニール又は赤外線ランプアニールは、加熱時間を長くしなければ、結晶粒を充分に成長させることができない。また、ガラス基板上に配線構造体を形成するために、炉アニール又は赤外線ランプアニールを行うと、ガラス基板自体も加熱される。また、結晶粒の成長に伴い、配線構造体の表面凹凸の増大が生じてしまう。
【0029】
これに対し、本実施形態の配線構造体の形成方法では、フラッシュランプ光103bはパルス幅が短いため、銅配線層4の加熱される期間が短時間で済む。また、フラッシュランプ光103bを使用すると、銅配線層4を直接加熱することができるので、結晶粒径の拡大を生じさせることができるが、表面凹凸の増大が生じ難い。即ち、フラッシュランプ光103bは、図10に示すように600nm以下の短波長側で反射率が低下するために、発光波長(図11に示した発光スペクトルの一例のように、キセノンのフラッシュランプは300nm〜600nmの範囲(領域)内で強い発光強度を有する)のフラッシュランプ光103bを銅配線層4は、有効に吸収してアニールされる。このため、基板1の温度の上昇をほとんど伴わない。
【0030】
また、フラッシュランプ光103bのパルス幅は、0.1ms〜10msに設定すると、高温のアニールでも銅の拡散を抑制でき、スループットを高くすることができる。
【0031】
本発明に係わるフラッシュランプ加熱工程では、フラッシュランプ103から発せられるフラッシュランプ光103bは、制御性がよいので、所定領域に対して通常1回のフラッシュ照射でよいが、複数回のフラッシュ照射でもよい。
【0032】
即ち、フラッシュランプ加熱工程は、上記基体5上の金属層4の所定の領域(本実施形態の配線構造体の形成方法では金属層4の全域)に対して一括して少なくとも1回フラッシュ照射を行う。
【0033】
また、フラッシュランプ加熱工程は、上記基体5とフラッシュランプ103とを、基体の平面方向においての相対的な位置関係を変化させるステップ送り及び/又はリピート送りしながら、上記金属層4の所定の領域を順次変更して夫々少なくとも1回フラッシュ照射を行う工程を含むようにしてもよい。上記ステップ送りする際は、照射領域(所定領域)が端部でオーバーラップするように行うことが望ましい。このようにすることにより、金属層4の広範囲の領域(全領域を含む)を全体に渡って均一にアニールすることができる。
【0034】
前記フラッシュランプ加熱装置100では、ステップ送り及び/又はリピート送りするための機構は公知のものを使用できるので省略されている。この場合に、フラッシュランプ103を上記基体5に対して移動させるよりも、フラッシュランプ103に対して上記基体5を移動させる方が容易なので、フラッシュランプユニットに対して上記基体5を金属層4の照射面と平行(実施の形態では水平)に移動させるのが好ましい。これは、フラッシュランプ加熱装置100の支持台102の基体5が位置される部分を移動可能に形成すればよいためである。しかしながら、フラッシュランプユニットを移動させたり、フラッシュランプユニットのうち所定の1もしくは複数のフラッシュランプのみを移動させるようにしてもよい。
前記フラッシュランプ103としては、電圧、電流密度、ガス圧、ランプ内径等を制御して紫外線から可視領域に強度の強い発光分光特性を有するものを用いるのが望ましい。具体的には、以下の実験(図12乃至図15参照)にて使用する際に有効な紫外線から可視領域の発光強度を得る条件範囲は、電流密度3000A/cm2〜10000A/cm2であった。フラッシュランプ加熱工程において、プラズマ温度を上昇させるとともに、短波長成分のエネルギー密度の比率を高くするためには、フラッシュランプ103の電流密度を3000A/cm2〜10000A/cm2程度の高電流密度とすることが望ましい。
【0035】
本実施形態の配線構造体の形成方法では、例えば、図1(a)ないし図1(c)を参照して説明したフラッシュランプアニール処理が行われた銅配線層4(配線構造体6)を所望のパターン例えば配線パターンに加工する方法を含んでも良い。この方法では、銅配線層4を、例えば、以下にような工程でパターンニングする。
【0036】
まず、フラッシュランプアニール処理が行われた上記配線構造体6上に、例えばPEPによりフォトレジスト膜7を形成する。そして、図1(d)に示すように、フォトレジスト膜7を所望のパターンに露光・現像処理する。
【0037】
次に、図2(e)に示すように、上記フォトレジスト膜7をマスクとして、上記配線構造体6及びバリアメタル層3を選択的にエッチングする。その後、図2(f)に示すように、剥離液等を用いてフォトレジスト膜7を配線構造体6から剥離する。このようにすることによって、所望のパターン(例えば、アイランド状)の配線構造体6を形成することができる。
【0038】
なお、本実施形態の配線構造体の形成方法では、銅もしくは銅を主成分とする銅配線層4にフラッシュランプ加熱工程した後、エッチングを施してアイルランド状の配線構造体6を形成しているが、図2(g)に示すように、銅配線層4を所望のパターンに形成した後に、これにフラッシュランプ加熱工程を行ってもよい。また、図1(c)と図2(g)とに示すように、エッチング前とエッチング後との両方でフラッシュランプ加熱工程を行ってもよい。また、エッチングして配線構造体形成後のみにフラッシュランプ加熱工程を行ってもよい。
【0039】
次に、所望のパターンに形成した配線構造体6に、下地絶縁層2上も含めて、例えば窒化シリコンや酸化シリコンで形成された保護層や絶縁膜のような付加層8を形成する。この付加層8の形成後に、図2(h)に示すように、再び、フラッシュランプ加熱工程をこの配線構造体6に対して行ってもよい。この場合には、付加層8の形成前にはフラッシュランプ加熱工程を行わず、付加層8の形成後のみに、銅配線層4にフラッシュランプ加熱工程を行って配線構造体6を形成しても良い。これに対して、銅配線層4上に窒化シリコン層を形成した後に、赤外線ランプアニールや炉アニールを行うと、結晶成長に伴いボイドが発生し易いという問題がある。これに対し、フラッシュランプ加熱工程は、上述のように、アニール時間が短いため、銅配線層4上に窒化シリコン層を形成した後にフラッシュランプアニールを行っても、ボイドが発生し難いという利点がある。
【0040】
図12(a)は、いずれのアニール処理を行っていない金属層の後方電子線散乱法で解析した結晶方位マップを示している。図12(b)は、赤外線ランプにより金属層を加熱(450℃、10分)して、形成した配線構造体の、また、図12(c)は、フラッシュランプにより加熱処理して形成した配線構造体の結晶方位マップを示している。図12(b)並びに図12(b)から、当業者であればわかるように、いずれも主結晶方位は(111)面であった。図13(a)ないし13(c)は、図12(a)ないし12(c)の双晶を夫々含む結晶粒径マップを示している。図13からわかるように、加熱処理前の平均結晶粒径は、0.2μm程度であったのに対し、加熱後は結晶粒径が拡大している。結晶粒径が拡大すると、電子の結晶粒界での散乱が低下するため、加熱処理前の比抵抗は2乃至2.4μΩcm程度だったものが、フラッシュランプアニール後は1.7乃至1.8μΩcmに低下し、ほぼバルクの比抵抗値(1.67μΩcm)に近づいている。また、結晶粒径の拡大は、エレクトロンマイグレーション耐性向上、ボイド発生の低減にも有効である。
【0041】
図14は、フラッシュランプにより加熱した銅の配線構造体表面の凹凸を観察した二次電子像(SEM)を示している。図15は、赤外線ランプにより加熱(400℃、10分)された銅配線層の表面凹凸を観察した二次電子像(SEM)を示している。図14及び図15に示すように、赤外線ランプにより加熱した配線構造体は表面凹凸が拡大しているが、フラッシュランプにより加熱した銅配線層はほとんど加熱処理前と同じであった。
【0042】
以上のように、本実施形態の配線構造体の形成方法によれば、短時間のアニールにより、表面の凹凸の増大を抑えつつ、結晶粒径の増大を図ることができる。したがって、表面凹凸が少なく電気抵抗が低い配線構造体6が得られる。
【0043】
本実施形態の配線構造体の形成方法では、銅もしくは銅を主成分とする金属層(銅配線層)4をスパッタ法で形成した場合について説明したが、金属層(銅配線層)4の形成方法は、これ銅の配線層に限定されるものではない。金属層4としては、例えばモリブデン、タンタル、チタン、タングステン、アルミニウム層、ニッケル、コバルト層などその他の金属層の製造プロセスに適用してもよい。
【0044】
以下、本発明の第2の実施形態を、図4及び図5を参照して説明する。本実施形態では、本発明の配線構造体の他の一形態について説明する。図4及び図5は、本実施形態の配線構造体の製造工程を示している。
【0045】
図4(a)の工程は、上述した第1の実施形態の図1(a)の工程と同じである。次に、図4(b)に示すように、下地絶縁層2の上にバリアメタル層3とシード層(例えば、銅や銅を主成分とする銅シード層)9とをスパッタ法で順次連続して形成する。この場合、基板1上に下地絶縁層2とバリアメタル層3とシード層9とが形成されたものが基体5となる。なお、シード層9は、後に、金属層4とともに配線構造体6をなす。
【0046】
次に、シード層9上にフォトレジスト膜7を形成し、図4(c)に示すように、所望の領域のみシード層9の表面が露出するように、レジスト溝7aをこのフォトレジスト膜7に形成する。次に、図4(d)に示すように、レジスト溝7aによって露出されたシード層9上に、無電解めっき法で金属層、例えば銅のみか銅を主成分とする金属層(以下、銅配線層という)4を形成する。そして、図5(e)に示すように、剥離液等を用いてフォトレジスト膜7をシード層9上から剥離する。
【0047】
次に、図5(f)に示すように、銅配線層4に対して、上述した第1の実施形態の図1(c)と同様に、フラッシュランプ光103bを照射して、フラッシュランプ加熱工程を行う。そして、図5(g)に示すように、銅配線層4をマスクとして、シード層9のうち配線構造体6をなす領域以外の部分をエッチングにより除去する。この結果、シード層9を構成要素の一部とした配線構造体6が形成される。
【0048】
なお、図5(g)に示すように、上記シード層9のエッチングに続いて、バリアメタル層3のうち配線構造体6をなす領域以外の部分をエッチングにより除去してもよい。また、フラッシュランプ加熱工程は、上記図5(f)に示す工程の代わりか、この工程に加えて、図4(c)の工程の前(レジスト溝7a形成前)に、シード層9に対して行って、配線構造体の一部をなすシード層9の結晶粒径の拡大を行ってもよい。シード層9にフラッシュランプ加熱工程を施した場合には、無電解めっきの成膜直後の結晶粒径が大きくすることができるので有利である。即ち、このようにして、結晶粒径の拡大を行っておくと、後で形成する銅配線層4の結晶粒径をさらに大きくすることができる。また、図5(g)に示す銅配線層4を形成のためのエッチング工程の後に、配線構造体に対してフラッシュランプ加熱工程を行っても、また、この工程を加えてもよい。
【0049】
尚、シード層9のような薄膜を赤外線ランプアニールや炉アニールで加熱処理すると、原子(分子)の凝集が生じ易いが、フラッシュランプ加熱工程ではアニール時間が短いために原子(分子)の凝集が生じ難いという利点がある。
【0050】
本発明に係わるフラッシュランプ加熱工程は、また、図16(a)ないし16(d)に示すようなダマシンプロセスと電解めっきプロセスで形成されたような銅を主成分とする銅配線層のような金属層にも、フラッシュランプ加熱工程は有効である。即ち、この場合でも、銅配線層を直接フラッシュラン加熱工程でアニールすることでボイドの低減を図ることができる。
【0051】
この方法を以下に簡単に説明する。
【0052】
まず、図16(a)に示すように、半導体基板又は絶縁性基板等の基板71上に、例えばCVD法により膜厚1000nmのシリコン酸化膜からなる絶縁膜12を堆積した後、絶縁膜72上に形成されたレジストパターン(図示省略)をマスクとして絶縁膜72に対してドライエッチングを行なって、絶縁膜72に例えば直径200nmのホール73及び例えば幅240nmの配線用溝74を形成する。尚、ホール73は、基板71、又は基板11上に形成されている下層配線(図示省略)に達するように形成されている。
【0053】
次に、図16(b)に示すように、ホール73及び配線用溝74を含む絶縁膜72の上に全面に亘ってスパッタリング法により、膜厚35nmの窒化タンタル膜とタンタル膜からなる積層のバリアメタル層75を、ホール73内及び配線用溝74内にそれぞれ空間部が残存するように堆積する。続いて、バリアメタル層75の上に全面に亘ってスパッタリング法により、膜厚150nmの銅膜からなるシード層76を、ホール73内及び配線用溝74内にそれぞれ空間部が残存するように堆積する。尚、バリアメタル層75は、バリア層又は密着層としての機能を有している。
【0054】
図16(c)に示すように、ホール73内及び配線用溝74内に残存するシード層76をシード層として電解めっき法により、該シード層の上に銅膜からなるめっき層77を、ホール73及び配線用溝74が完全に埋まるように成長させる。
【0055】
次に、図16(d)に示すように、前記めっき層77にフラッシュランプ光103bを照射して、フラッシュランプ加熱工程を行う。そして、図16(e)に示すように、凹所内を除く基板71のバリアメタル層75、シード層76並びにめっき層77の部分をCMPにより除去して、上面を平滑化して、配線構造体を形成する。
尚、図16(d)に示す前記フラッシュランプ加熱工程は、CMPの後で行っても、両方で行っても良い。
【0056】
以上のように、本実施形態の配線構造体の形成方法によれば、短時間のアニールにより、表面の凹凸の増大を抑えつつ、結晶粒径の増大を図ることができる。したがって、表面凹凸が小さく、比抵抗が低い配線構造体が得られる。
【0057】
以下、本発明の第3の実施形態に係わる配線構造体及び半導体の形成方法について図6乃至図8を参照して説明する。本実施形態では、半導体装置の製造方法として、ボトムゲート型のアモルファスシリコンTFTの製造方法を説明するが、半導体装置は、これに限られることはない。
【0058】
図6は、表示装置としての、アクティブマトリックス型の液晶表示装置10の等価回路の一例を示している。この液晶表示装置10は、1対の透明基板11,12と、液晶層13と、下地絶縁層14と、画素電極15と、配線構造体6により形成された走査線16と、信号線17と、対向電極18と、半導体装置としての薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下、TFTという)19と、走査線駆動回路21と、信号線駆動回路22と、液晶コントローラ23とを備えている。
【0059】
前記透明基板11,12としては、例えば、1対のガラス板を用いることができる。これら透明基板11,12は、互いに所定間隔を有して対向するようにして、図示しない枠状のシール材を介して周辺で接合されている。そして、前記液晶層13は、一対の透明基板11,12間の前記シール材により囲まれた領域に設けられている。
【0060】
前記1対の透明基板11,12のうちの一方、例えば後側(図7及び図8において下側)の透明基板12の内面には、前記下地絶縁層14、複数の画素電極15、複数の走査線16、複数の信号線17、及び複数のTFT19等が設けられている。(これら図には、通常走査線と同材料で形成される複数の補助容量は示していない)
前記下地絶縁層14は、酸化シリコンや窒化シリコン等により形成されることができる。前記複数の画素電極15は、行方向及び列方向に、マトリックス状に配設され、各々は、例えばITOで形成された透明電極により形成されている。図7に示すように、前記TFT19は、下地絶縁層14上に設けられ、各々は、ゲート電極(本実施形態では配線構造体6でもある)31と、ゲート絶縁膜32と、半導体層33と、ソース電極34と、ドレイン電極35とを備えている。また、これらTFT19は、マトリックス上に配設された前記複数の画素電極15と、ソース電極34が電気的に接続されるようにして、画素電極15に対して夫々、1対1で対応するように設けられている。
【0061】
前記走査線16は、下地絶縁層14上で、マトリックス状に設けられた画素電極15の行方向(図6において左右方向、図8において紙面に直交する方向)に互いに平行に延びるように設けられている。これら走査線16は、TFT19のゲート電極31と電気的に接続されている。また、これら走査線16の一端は、走査線駆動回路21に電気的に接続されている。
【0062】
前記信号線17は、マトリックス状に設けられた画素電極15の列方向(図6において上下方向)に沿って互いに平行に延びるように、ゲート絶縁膜32上に設けられている。これら信号線17は、対応するTFT19のドレイン電極35と電気的に接続されている。また、これら信号線17の一端は、信号線駆動回路22に電気的に接続されている。
【0063】
前記TFT19は、図7に示すようなボトムゲート型のアモルファスシリコンTFTである。このようなTFTでは、上述したように、ゲート電極31は、下地絶縁層14上に設けられ、また、ゲート絶縁膜32は、ゲート電極31、走査線16、及び下地絶縁層14を覆うように設けられている。このゲート絶縁膜32としては、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、もしくは酸化シリコン膜と窒化シリコン膜との積層膜等を用いることができる。前記半導体層33は、ノンドープアモルファスシリコン層(ノンドープa-Si層)41と、この層の両側面上に互いに所定距離を有して離間され、夫々1対のコンタクト層としてのn+型アモルファスシリコン層(n+型a-Si層)42とを有している。前記ノンドープa-Si層41は、ゲート絶縁膜32上に設けられており、前記1対のn+型アモルファスシリコン層(n+型a-Si層)42の下に夫々位置するソース領域33b並びにドレイン領域33cと、これら領域33b,33c間に位置するチャンネル領域33aとを有している。そして、このチャンネル領域33aが、ゲート電極31の上方に位置されている。
【0064】
前記ソース電極34及びドレイン電極35は、ソース領域33b及びドレイン領域33cと電気的に接続するように、これら領域33b,33c上のコンタクト層(n+型a-Si層42)上に夫々に設けられている。ソース電極34及びドレイン電極35のうちの一方、例えば、ドレイン電極35は、対応する信号線17と電気的に接続されている。
【0065】
前記画素電極15を露出させる開口部38bを有するパシベーション層38が、前記ソース電極34、ドレイン電極35、信号線17、及びゲート絶縁膜32を覆うように設けられている。
【0066】
図6に示すように、前記走査線駆動回路21及び信号線駆動回路22は、夫々液晶コントローラ23に接続されている。この液晶コントローラ23は、例えば外部から供給される画像信号及び同期信号を受け、画素映像信号Vpixを信号線17に、垂直走査制御信号YCTを走査線駆動回路21に、そして、水平走査制御信号XCTを信号線駆動回路22に、夫々供給する。
【0067】
前記前側(図7及び図8において上側)の透明基板11の内面には、複数の画素電極15に対向するようにして、1枚膜状の透明な対向電極(共通電極)18が設けられ、マトリックス状に配置された画素領域を構成している。この対向電極18は、例えばITOにより形成されている。なお、この透明基板11の内面に、前記複数の画素領域に対応させてカラーフィルタを、また、前記画素領域の間の領域に対応させて遮光膜を夫々設けてもよい。
【0068】
前記1対の透明基板11,12の外面には、図示しない偏光板が夫々設けられている。また、液晶表示装置10を透過型とする場合、後側の透明基板12の後方には、図示しない面光源が設けられている。なお、この液晶表示装置10は、反射型或いは半透過反射型であってもよい。
【0069】
前記走査線16は、銅を主成分とする配線構造体6によって形成されている。バリアメタル層39が、走査線16と下地絶縁層14との密着性向上、及び、走査線16から下地絶縁層14への銅の拡散抑制のために設けられている。走査線16上には、銅の拡散を抑制するキャッピングメタル層或いは絶縁層等を設けてもよい。走査線16は、第1の実施形態の配線構造体6と同様にして形成することができる。また、ゲート電極31は、走査線16と一体に形成することができる。
【0070】
以下、後側の透明基板12の内面への成膜工程及びTFT19の形成方法について説明する。
【0071】
まず、後側の透明基板12として、厚さ0.7mmのガラス板を用意する。この透明基板12(第1の実施形態の配線構造体の形成方法における基板1に対応)上に、下地絶縁層14(第1の実施形態の配線構造体の形成方法における下地絶縁層2に対応)としての窒化シリコンと酸化シリコン層との積層膜を形成する。本実施形態では、下地絶縁層14の層厚を400nmとしている。下地絶縁層14は、CVD法(例えば、PE−CVD法(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition))を用いて、窒化シリコン膜の厚さが200nmと酸化シリコン膜の厚さが200nmとなるように透明基板12上に連続的に堆積させて形成している。
【0072】
次に、下地絶縁層14上に、バリアメタル層39(第1の実施形態の配線構造体の形成方法におけるバリアメタル層3に対応)を形成する。このバリアメタル層39は、スパッタリング法により成膜することができる。バリアメタル層39の材料としては、Ta,TaN,TiN、Mo、MoW等を単独もしくは組合わせて使用することができる。透明基板12上に下地絶縁層14とバリアメタル層39とが形成されたものが、走査線16(配線構造体6)、ゲート電極31(配線構造体6)、ボトムゲート型TFT19を形成するための基体(図示せず、第1の実施形態の配線構造体の形成方法における基体5に対応)となる。
【0073】
次に、基体上、即ち、バリアメタル層39上に、走査線16及びゲート電極31を形成する。これは、第1の実施形態の配線構造体の形成方法と同様にして行うことができる。即ち、上記基体上(バリアメタル層39上)に、金属層として、例えば、銅を主成分とする銅配線層(図示せず、第1の実施形態の配線構造体の形成方法における銅配線層4に対応)を形成する。以下、金属層を銅配線層という。
【0074】
この銅配線層は、スパッタリング法によりバリアメタル層39の成膜後、連続的に成膜することができる。本実施形態では、銅配線層の層厚を500nmとしている。その後、銅配線層にフラッシュランプ光を照射する。これにより、銅単体又は銅を主成分とする銅配線層は、加熱されて、溶融、半溶融、或いは、非溶融状態となる。これは、第1の実施形態のフラッシュランプ加熱工程と同じである。これにより、配線構造体40が形成される。
【0075】
上述のような配線構造体40を形成した後、配線構造体40とバリアメタル層39とを所望の配線パターンにエッチング加工して、配線構造体40とバリアメタル層39とを有する配線構造体6としてのゲート電極31及び走査線16を形成する。
【0076】
続けて、ゲート電極31及び走査線16を覆うように、ゲート絶縁膜32を形成する。なお、銅配線層とバリアメタル層39とを所望の配線パターンにエッチング加工するとともに、その上にゲート絶縁膜32を形成した後、フラッシュランプ103(図3)によるアニール処理を行って、配線構造体6としてのゲート電極31及び走査線16を形成してもよい。その際は、ゲート絶縁膜32の少なくとも一部に、窒化シリコン等の銅の拡散防止能を有するものを用いることが望ましい。
【0077】
次に、ゲート絶縁膜32上に、半導体層33を形成する。詳しくは、ゲート絶縁膜32上にノンドープa−Si層を、また、このノンドープa−Si層41の上にn+型a-Si層を順次成膜する。そして、これら膜をパターニングして、ノンドープa−Si層41及びn+型a-Si層42を同じ形状に形成した後、n+型a-Si層42上にソース電極34及びドレイン電極35を夫々形成する。これら電極の形成は、ソース電極34及びドレイン電極35となるアルミニウム層をn+型a-Si層42成膜し、次に、このアルミニウム層を所定のパターンにエッチングすることにより実現できる。この後、ソース電極34及びドレイン電極35をマスクとし、これら電極間に位置するn+型a-Si層の部分をエッチングにより除去して、チャンネル領域33aを露出させて、TFT19を完成させる。
【0078】
次に、前記ドレイン電極35と電気的に接続するようにして、ゲート絶縁膜32上に信号線17を形成するとともに、ソース電極34と電気的に接続するようにして画素電極15を形成する。そして、前記TFT19、ゲート絶縁膜32、及び画素電極15を覆うようにパシベーション層38を成膜し、このパシベーション層38に、画素電極15を露出させる開口部38bを形成する。以上により、後側の透明基板12への成膜工程が完了する。
【0079】
本実施形態の配線構造体の形成方法及び半導体の形成方法によれば、短時間のアニールにより、表面の凹凸の増大を抑えつつ、結晶粒径の拡大を図ることができる。したがって、表面凹凸が少なく電気抵抗が低い配線構造体6(走査線16、ゲート電極31)及び半導体装置(TFT)19が得られる。
【0080】
本実施形態の配線構造体の形成方法及び半導体の形成方法では、第1の実施形態の配線構造体の形成方法のように、バリアメタル層の上に銅配線層をスパッタ法で連続成膜したが、第2の実施形態の配線構造体の形成方法のようにしてもよい。即ち、バリアメタル層の上にシード層を形成し、その上にフォトレジスト膜を形成して所定のパターンに露光・現像処理する。形成されたフォトレジスト膜のレジスト溝に銅配線層を無電解めっき法で形成し、フォトレジスト膜を剥離する。その後、フラッシュランプによるアニール処理を行い、シード層をエッチングする。そして、銅配線層をマスクとしてバリアメタル層をエッチングする。この場合、フラッシュランプによるアニール処理を、バリアメタル層をエッチングした後に行うようにしてもよい。さらに、バリアメタル層をエッチングした後、銅の拡散防止のために、少なくとも銅配線層の表面を覆うようにCoB,CoWBようなキャッピングメタル層を無電解めっき法によって形成し、フラッシュランプによるアニール処理を行うようにしてもよい。
【0081】
以下、本発明の第4の実施形態を、半導体の形成方法の他の一形態について、図9を参照して説明する。本実施形態では、半導体装置19の製造方法として、トップゲート型のポリシリコンTFT(LDD構造を有するn型のTFT)の製造方法を説明する。
【0082】
本実施形態では、半導体装置19としてのTFTが、配線構造体6としてのソース電極34及びドレイン電極35を有している。これらソース電極34及びドレイン電極35は、第1及び第2の実施形態における配線構造体6の形成方法と同様の方法で形成することが可能である。この実施形態では、ゲート絶縁膜32及び層間絶縁層52を選択的にエッチングして、ソース領域33b及びドレイン領域33cの表面まで開口するコンタクトホール32a,52a,32b,52bを形成した状態のものが基体となる。なお、他の構成は、図示しない構成も含めて、上述した第3の実施形態と同じであるから、重複する説明は図に同符号を付して省略する。
【0083】
前記銅配線層62にフラッシュランプ加熱工程を施す。フラッシュランプ加熱工程は加熱時間が短いために、銅配線層62のアニール時の銅拡散を抑制できるという利点もある。
【0084】
上述のようにすることにより、表面凹凸が小さく、気比抵抗が低い半導体装置19(TFT20b)が得られる。
【0085】
上記の実施形態では、下地絶縁層と銅層との間に密着性向上、拡散防止のためにバリアメタル層を設けたが、銅層にマグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、或いは、クロム(Cr)等を含むものを用いることにより、バリアメタル層を設けることなく下地絶縁層との密着性改善、熱処理後に下地界面との間に形成される酸化物バリア層による拡散防止を行うようにしてもよい。
【0086】
なお、本発明の配線構造体の形成方法及び半導体装置の形成方法は、液晶表示装置の製造過程における配線構造体の形成方法及び半導体装置の形成方法に限定されるものではない。本発明は、例えば、無機ELD装置或いは有機ELD装置等の表示装置の製造過程における配線構造体の形成方法及び半導体装置の形成方法としても適用することができる。
【0087】
上記実施形態は、配線構造体6として走査線16、ゲート電極31、ソース電極34、ドレイン電極35を例にとって説明したが、本発明の配線構造体の形成方法は、これらの形成方法に限定されるものではない。本発明の配線構造体の形成方法は、信号線17やその他の種々の配線、電極、端子等の形成方法に広く適用することができる。
【0088】
また、上記実施形態では、半導体装置19としてTFT20a,20bを例にとって説明したが、本発明の半導体装置の形成方法は、種々の半導体装置の製造方法として広く適用することができる。
【0089】
さらに、上記実施形態では、金属層として銅を主成分とする銅配線層を例にとって説明したが、金属層は、銅を主成分とする銅配線層に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】(a)〜(d)は、本発明の第1の実施形態にかかる配線構造体の形成方法の前半部分を説明するための工程図。
【図2】(e)〜(h)は、図1に続き、本発明の第1の実施形態にかかる配線構造体の形成方法の後半部分を説明するための工程図。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る配線構造体の形成方法に用いられるフラッシュランプ加熱装置の一例を示す断面図。
【図4】(a)〜(d)は、本発明の第2の実施形態にかかる配線構造体の形成方法の前半部分を説明するための工程図。
【図5】(e)〜(g)は、図4に続き、本発明の第2の実施形態にかかる配線構造体の形成方法の後半部分を説明するための工程図。
【図6】本発明の第3の実施形態の半導体装置の形成方法によって形成した半導体装置としての薄膜トランジスタを備える表示装置を示す平面図。
【図7】図6中VII-VII線に沿って切断して示す断面図。
【図8】図6中VIII−VIII線に沿って切断して示す断面図。
【図9】半導体装置としての薄膜トランジスタの他の一例を備える表示装置の断面図。
【図10】フラッシュランプ光の波長と反射率との関係を示す図。
【図11】キセノンのフラッシュランプの発光スペクトルを示す図。
【図12】(a)は、アニール処理を行っていない金属層の後方電子線散乱法で解析した結晶方位マップ、(b)は、赤外線ランプにより金属層を加熱して形成した配線構造体の後方電子線散乱法で解析した結晶方位マップ、及び(c)は、フラッシュランプにより加熱処理して形成した配線構造体の結晶方位マップ。
【図13】(a)ないし13(c)は、図12(a)ないし12(c)の双晶を夫々含む結晶粒径マップ。
【図14】フラッシュランプにより加熱した銅の配線構造体表面の凹凸を観察した二次電子像(SEM)を示す。
【図15】赤外線ランプにより加熱した銅配線層の表面凹凸を観察した二次電子像(SEM)を示す。
【図16】(a)ないし(e)は、本発明の変形例に係わるダマシンプロセスと電解めっきプロセスとを説明するための工程図。
【符号の説明】
【0091】
5,70,80…基体、 4…銅配線層(金属層)、 6…配線構造体、 20a,20b…TFT(半導体装置)、 32…ゲート絶縁膜(絶縁膜)、 33…半導体層、 103…フラッシュランプ、 103b…フラッシュランプ光
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に金属層を形成する第1工程と、
この金属層にフラッシュランプから発せられる光を照射してアニールを行うアニール工程とを具備することを特徴とする配線構造体の形成方法。
【請求項2】
基体上に金属層を形成する第1工程と、
前記金属層に300nm〜600nmの波長範囲に極大強度を有し、フラッシュランプから発せられる光を照射してアニールを行うアニール工程とを具備することを特徴とする配線構造体の形成方法。
【請求項3】
基体上に金属層を形成する第1工程と、
この金属層を配線パターン状にエッチングして配線構造体パターンを形成する第2工程と、
この配線構造体パターンにフラッシュランプから発せられる光を照射してアニールを行うアニール工程とを具備することを特徴とする配線構造体の形成方法。
【請求項4】
前記光は、パルス幅が0.1ms〜10msに設定されたパルス光であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の配線構造体の形成方法。
【請求項5】
前記金属層は、銅を主成分とすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の配線構造体の形成方法。
【請求項6】
前記アニール工程は、前記基体と前記フラッシュランプとの相対的な位置関係を変化させるステップ送り及び/又はリピート送りしながら、光を照射することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の配線構造体の形成方法。
【請求項7】
前記アニール工程は、前記金属層上に保護絶縁膜を形成する工程と、不活性ガスもしくは真空中の雰囲気で、前記保護絶縁膜上から光を照射する工程とを含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の配線構造体の形成方法。
【請求項8】
絶縁体からなる基板と、
この基板上に設けられ、フラッシュランプ光により照射された配線パターンとを
具備することを特徴とする配線構造体。
【請求項9】
基体上に半導体層を形成する工程と、
この半導体層上に絶縁膜を形成する工程と、
この絶縁膜上に金属層を形成する工程と、
前記金属層を加工して配線構造体を形成する工程と、
前記金属層および前記配線構造体の少なくとも一方にフラッシュランプから発せられる光を照射してアニールを施す工程とを具備することを特徴とする半導体装置の形成方法。
【請求項10】
基体上に金属層を形成する工程と、
この金属層を加工して配線構造体を形成する工程と、
前記金属層および前記配線構造体の少なくとも一方にフラッシュランプアニールを施す工程と、
前記金属層上に絶縁膜を形成する工程と、
この絶縁膜上に半導体層を形成する工程とを具備することを特徴とする半導体装置の形成方法。
【請求項11】
前記金属層は、銅を主成分とすることを特徴とする請求項9又は10に記載の半導体装置の形成方法。
【請求項12】
請求項9乃至11の半導体装置の形成方法により製造された半導体装置をスイッチング回路に設けてなることを特徴とする表示装置。
【請求項1】
基体上に金属層を形成する第1工程と、
この金属層にフラッシュランプから発せられる光を照射してアニールを行うアニール工程とを具備することを特徴とする配線構造体の形成方法。
【請求項2】
基体上に金属層を形成する第1工程と、
前記金属層に300nm〜600nmの波長範囲に極大強度を有し、フラッシュランプから発せられる光を照射してアニールを行うアニール工程とを具備することを特徴とする配線構造体の形成方法。
【請求項3】
基体上に金属層を形成する第1工程と、
この金属層を配線パターン状にエッチングして配線構造体パターンを形成する第2工程と、
この配線構造体パターンにフラッシュランプから発せられる光を照射してアニールを行うアニール工程とを具備することを特徴とする配線構造体の形成方法。
【請求項4】
前記光は、パルス幅が0.1ms〜10msに設定されたパルス光であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の配線構造体の形成方法。
【請求項5】
前記金属層は、銅を主成分とすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の配線構造体の形成方法。
【請求項6】
前記アニール工程は、前記基体と前記フラッシュランプとの相対的な位置関係を変化させるステップ送り及び/又はリピート送りしながら、光を照射することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の配線構造体の形成方法。
【請求項7】
前記アニール工程は、前記金属層上に保護絶縁膜を形成する工程と、不活性ガスもしくは真空中の雰囲気で、前記保護絶縁膜上から光を照射する工程とを含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の配線構造体の形成方法。
【請求項8】
絶縁体からなる基板と、
この基板上に設けられ、フラッシュランプ光により照射された配線パターンとを
具備することを特徴とする配線構造体。
【請求項9】
基体上に半導体層を形成する工程と、
この半導体層上に絶縁膜を形成する工程と、
この絶縁膜上に金属層を形成する工程と、
前記金属層を加工して配線構造体を形成する工程と、
前記金属層および前記配線構造体の少なくとも一方にフラッシュランプから発せられる光を照射してアニールを施す工程とを具備することを特徴とする半導体装置の形成方法。
【請求項10】
基体上に金属層を形成する工程と、
この金属層を加工して配線構造体を形成する工程と、
前記金属層および前記配線構造体の少なくとも一方にフラッシュランプアニールを施す工程と、
前記金属層上に絶縁膜を形成する工程と、
この絶縁膜上に半導体層を形成する工程とを具備することを特徴とする半導体装置の形成方法。
【請求項11】
前記金属層は、銅を主成分とすることを特徴とする請求項9又は10に記載の半導体装置の形成方法。
【請求項12】
請求項9乃至11の半導体装置の形成方法により製造された半導体装置をスイッチング回路に設けてなることを特徴とする表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−95913(P2007−95913A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−281894(P2005−281894)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(501286657)株式会社 液晶先端技術開発センター (161)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(501286657)株式会社 液晶先端技術開発センター (161)
【Fターム(参考)】
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