説明

重合体の製造方法、重合体およびレジスト組成物

【課題】目的とする用途において設計通りの性能を発揮できる重合体、その製造方法、およびレジスト膜に設計通りの性能を発揮させ、かつレジストパターンにおけるディフェクトの発生を抑えることができるレジスト組成物を提供する。
【解決手段】重合体の製造に用いる各容器(重合槽20、精製槽30、溶解槽50または、濃縮槽70)として、前製造ロットの重合体の貧溶媒を容器の内面に接触させた際に前製造ロットの重合体が析出しないものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体の製造方法、重合体およびレジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子、液晶素子等の製造過程において形成されるレジストパターンは、リソグラフィー技術の進歩により急速に微細化が進んでいる。レジストパターンの形成に用いられるレジスト組成物としては、放射線の照射により酸を発生する光酸発生剤と、発生した酸の作用によりアルカリ溶解性が変化する樹脂とを含有する化学増幅型レジストが知られている。
【0003】
ArFエキシマレーザー(波長193nm)を用いたレジストパターンの形成において用いられる化学増幅型レジスト組成物用の樹脂として、波長193nmの光に対して透明なアクリル系重合体が注目されている。該重合体としては、例えば、脂環式骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルと、ラクトン骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルとの重合体が知られている(特許文献1、2)。
【0004】
該重合体は、以下の工程を経て製造される(特許文献1、2の実施例)。
(i)脂環式骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル、ラクトン骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル等の単量体成分を含む単量体溶液を調製する工程。
(ii)単量体溶液に含まれる単量体成分を溶液重合法にて重合する工程。
(iii)溶液重合法にて得られた重合体溶液を貧溶媒に注いで重合体を析出させ、重合体分散液を得る工程。
(iv)重合体分散液を、フィルターを用いてろ過して重合体を回収する工程。
(v)回収された重合体を良溶媒に溶解させて重合体溶液とし、該重合体溶液を貧溶媒に注いで重合体を析出させ、重合体分散液を得る工程。
(vi)重合体分散液を、フィルターを用いてろ過して重合体を回収する工程。
(vii)必要に応じて(v)〜(vi)工程を繰り返した後、回収された重合体を乾燥させる工程。
【0005】
そして、該重合体は、工業的には、前記工程を行う調合槽、重合槽、析出槽(精製槽)、ろ過器、乾燥機等を有する製造設備を用いて製造される。
しかし、構成単位の組成の異なる複数の重合体を、同じ製造設備を用いて連続して製造した場合、以下の問題を生じることがある。
・得られる重合体を含むレジスト組成物からなるレジスト膜が、設計通りの性能(現像液への溶解性、感度、解像度等。)を発揮できず、該レジスト膜を現像して得られるレジストパターンを用いて形成される回路の精度、歩留まり等が低下する。
・レジスト膜の現像の際に、ディフェクトと呼ばれる現像欠陥が生じ、該ディフェクトがレジストパターンの抜け等の原因となり、該レジストパターンを用いて形成される回路に断線、欠陥等が発生する。
【特許文献1】特開平10−319595号公報
【特許文献2】特開平10−274852号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、目的とする用途において設計通りの性能を発揮できる重合体、その製造方法、およびレジスト膜に設計通りの性能を発揮させ、かつレジストパターンにおけるディフェクトの発生を抑えることができるレジスト組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
単量体成分を重合して重合体を製造する方法であって、
下記(b)、(c)、(h)、および(j)工程のうちの1工程以上を有し、
下記容器として、前製造ロットの重合体の貧溶媒を容器の内面に接触させた際に前製造ロットの重合体が析出しないものを用いる、重合体の製造方法。
(工程)
(b)単量体溶液に含まれる単量体成分を容器内で重合し、重合体溶液を得る工程。
(c)重合体溶液を容器内の貧溶媒に注いで重合体を析出させ、重合体分散液を得る工程。
(h)重合体を容器内で良溶媒に溶解させて重合体溶液を得る工程。
(j)容器内の重合体溶液から残存する貧溶媒を除去し、さらに重合体溶液を濃縮する工程。
【0008】
本発明の重合体は、本発明の重合体の製造方法によって得られたものである。
本発明のレジスト組成物は、本発明の重合体の製造方法により得られた重合体を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の重合体の製造方法によれば、目的とする用途において設計通りの性能を発揮できる重合体を製造できる。
本発明の重合体は、目的とする用途において設計通りの性能を発揮できる。
本発明のレジスト組成物は、レジスト膜に設計通りの性能を発揮させ、かつレジストパターンにおけるディフェクトの発生を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、式(1−1)で表される単量体を単量体(1−1)と記す。他の式で表される単量体も同様に記す。また、(メタ)アクリル酸は、メタクリル酸またはアクリル酸を意味し、(メタ)アクリル酸エステルは、メタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルを意味する。
【0011】
<重合体の製造方法>
本発明の重合体の製造方法は、単量体成分を重合して重合体を製造する方法であって、下記(b)、(c)、(h)、および(j)工程のうち1工程以上を有する。
(b)単量体溶液に含まれる単量体成分を容器内で重合し、重合体溶液を得る工程。
(c)重合体溶液を容器内の貧溶媒に注いで重合体を析出させ、重合体分散液を得る工程。
(h)重合体を容器内で良溶媒に溶解させて重合体溶液を得る工程。
(j)容器内の重合体溶液から残存する貧溶媒を除去し、さらに重合体溶液を濃縮する工程。
重合方法としては、特に制限されず、例えば、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、溶液重合等の公知の重合方法を用いることができる。中でも、レジスト用重合体の製造方法としては、単量体溶液溶液に含まれる単量体成分を容器内で重合して重合体溶液を得る溶液重合が好ましい。
【0012】
(単量体溶液)
単量体溶液は、単量体成分を必須とし、必要に応じて重合開始剤、溶媒等を含む。
単量体成分としては、公知の単量体が挙げられ、例えば、(メタ)アクリル酸エステル等のアクリル系単量体、芳香族アルケニル化合物、不飽和ジカルボン酸の無水物、オレフィン、含フッ素単量体、アクリルアミド、塩化ビニル等のビニル系単量体が挙げられる。
重合開始剤としては、公知の重合開始剤が挙げられ、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物等が挙げられる。
溶媒としては、単量体成分、重合開始剤、および得られる重合体のいずれをも溶解できる溶媒が挙げられる。溶媒としては、電子工業用グレードの溶媒が好ましい。
【0013】
(重合体溶液)
重合体としては、アクリル系重合体、スチレン系重合体(ポリスチレン等。)、塩化ビニル系重合体、ポリエステル系重合体、シクロオレフィン系重合体、ビニルエーテル系重合体、フッ素系重合体等が挙げられる。
重合体としては、用途別では、レジスト用重合体、反射防止用重合体、塗料用重合体、トナー用重合体、成形用重合体等が挙げられる。
本発明の重合体の製造方法は、不純物の混入(コンタミネーション)をできるだけ抑えることが要求されるレジスト用重合体の製造に好適である。
【0014】
(重合体分散液)
貧溶媒とは、重合体を溶解させる能力の小さい溶媒であり、重合体の組成に応じて貧溶媒が異なる。
例えば、「ポリマーハンドブック(Polymer Handbook)」、第4版、VII−497頁〜VII−545頁には、各種の重合体(Polymer)に対応する貧溶媒(Nonsolvents)が記載されている。
また、重合体がレジスト用アクリル系重合体の場合には、溶解度パラメーター(以下、単に「SP値」とも記す。)の値が、7.0(cal/cm31/2 〜9.0(cal/cm31/2[14.3MPa1/2 〜18.5MPa1/2]、または11.5(cal/cm31/2 〜23.4(cal/cm31/2[23.5MPa1/2 〜47.9MPa1/2]の範囲である溶媒が、貧溶媒として好ましい。
溶媒のSP値は、例えば、「ポリマーハンドブック(Polymer Handbook)」、第4版、VII−675頁〜VII−711頁に記載の方法により求めることができ、具体的には、表1(VII−683頁)、表7〜8(VII−688頁〜VII−711頁)に記載されている。
貧溶媒が複数の溶媒の混合溶媒である場合のSP値は、公知の方法により求めることができる。例えば、混合溶媒のSP値は、加成性が成立するとして、各溶媒のSP値と体積分率との積の総和として求めることができる。
前記レジスト用アクリル系重合体の貧溶媒としては、例えば、メタノール、イソプロパノール、メチル−t−ブチルエーテル、水、n−ヘキサン、n−ヘプタン等が挙げられる。貧溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
(容器)
容器としては、重合体の製造に用いられる通常の製造設備に備えられた、ガラス製や金属製の容器等が挙げられる。(b)、(c)、(h)、(j)工程に用いる容器は、それぞれ別の容器であってもよく、2以上の工程にて兼用される容器であってもよい。
【0016】
容器としては、使用前に、前製造ロットの重合体の貧溶媒を容器の内面に接触させた際に前製造ロットの重合体が析出しないものを用いる必要がある。
前製造ロットの重合体とは、同じ製造設備を用いて直前に製造された重合体である。前製造ロットの重合体の構成単位の組成は、現製造ロットの重合体の構成単位の組成と、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0017】
貧溶媒としては、前製造ロットの重合体を溶解させる能力の小さい溶媒が挙げられる。具体的には、前記重合体分散液に用いる貧溶媒が挙げられる。
貧溶媒を容器の内面に接触させる方法としては、容器の内容積の1/20〜1/1の貧溶媒を容器内に注入し、貧溶媒をジャケットにより加熱して容器内で還流させる方法;スプレー、ホース等から吐出される貧溶媒を直接、容器の内面にかける方法;容器内を貧溶媒で満たす方法等が挙げられる。
【0018】
容器として、前製造ロットの重合体の貧溶媒を容器の内面に接触させた際に前製造ロットの重合体が析出しない容器を用いることによって、レジスト膜に設計通りの性能を発揮させ、かつレジストパターンにおけるディフェクトの発生を抑えることができる重合体を製造できる。この理由は、以下の通りである。
【0019】
本発明者らは、レジスト膜が設計通りの性能を発揮できない問題、およびレジストパターンにおけるディフェクトの発生の問題は、前製造ロットの重合体のコンタミネーションによって発生することを突き止めた。すなわち、前製造ロットの重合体と現製造ロットの重合体とで、構成単位の組成が異なれば、重合体を充分に溶解できる最適な溶媒も異なる。そのため、前製造ロットの重合体が溶け残り、該溶け残りの重合体が、ディフェクトとしてレジストパターンに発生する。また、前製造ロットの重合体が現製造ロットの重合体の溶媒に溶けた場合、得られるレジスト組成物の組成が設計とは若干異なってしまい、その結果、レジスト膜が設計通りの性能を発揮できない。
【0020】
そこで、本発明者らは、該コンタミネーションを抑える検討を行った結果、重合体の製造に用いた各容器から、前製造ロットの重合体が現製造ロットの重合体に持ち込まれることを突き止め、前製造ロットの重合体の貧溶媒を容器の内面に接触させた際に前製造ロットの重合体が析出しない容器を用いることとした。
【0021】
また、レジスト用重合体以外の用途の重合体においても、前製造ロットの重合体の貧溶媒を容器の内面に接触させた際に前製造ロットの重合体が析出しない容器を用いることにより、コンタミネーションが抑えられ、目的とする用途において設計通りの性能を発揮できる重合体が得られることとなる。
【0022】
(レジスト用重合体の製造方法)
以下、レジスト用重合体の製造方法について、具体的に説明する。
レジスト用重合体は、例えば、下記工程を経て製造される。
(a)単量体成分を含む単量体溶液を容器内で調製する工程。
(b)単量体溶液に含まれる単量体成分を容器内で重合し、重合体溶液を得る工程。
(c)重合体溶液を容器内の貧溶媒に注いで重合体を析出させ、重合体分散液を得る工程。
(d)重合体分散液を、フィルターを用いてろ過して重合体を回収する工程。
(e)回収された重合体を貧溶媒に分散させ、重合体分散液を得る工程。
(f)重合体分散液を、フィルターを用いてろ過して重合体を回収する工程。
【0023】
回収された重合体は、(g)回収された重合体を乾燥させて粉体品を得る工程、または、以下の工程を経て最終的な製品となる。
(h)重合体を容器内で良溶媒に溶解させて重合体溶液を得る工程。
(i)重合体溶液を精密フィルターに通して不純物を除去する工程。
(j)容器内の重合体溶液から残存する貧溶媒を除去し、さらに重合体溶液を濃縮する工程。
(k)重合体の製造に用いた各容器を洗浄する工程。
【0024】
(a)工程:
単量体溶液を調製する方法は、(b)工程の重合法により異なる。
重合法としては、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法等の公知の重合方法が挙げられ、光線透過率を低下させないために、重合反応終了後に残存する単量体を除去する必要がある点、重合体の分子量を比較的低くする必要がある点から、溶液重合法が好ましい。溶液重合法のうち、製造ロットの違いによる平均分子量、分子量分布等のばらつきが小さく、再現性のある重合体が簡便に得られる点から、単量体成分を、所定の重合温度に加熱された重合容器中に滴下する滴下重合法と呼ばれる重合方法が好ましい。
単量体成分は、単量体成分のみで滴下してもよく、単量体成分を有機溶媒(以下、「滴下溶媒」とも記す。)に溶解させて滴下してもよい。
有機溶媒(以下、「仕込み溶媒」とも記す。)をあらかじめ重合容器に仕込んでもよく、仕込み溶媒をあらかじめ重合容器に仕込まなくてもよい。この場合、単量体成分または重合開始剤は、仕込み溶媒がない状態で重合容器中に滴下される。
重合開始剤は、単量体成分に溶解させてもよく、滴下溶媒に溶解させてもよい。
単量体成分および重合開始剤は、同じ貯槽内で混合した後、重合容器中に滴下してもよく;それぞれ独立した貯槽から重合容器中に滴下してもよく;それぞれ独立した貯槽から重合容器に供給する直前で混合し、重合容器中に滴下してもよい。
単量体成分および重合開始剤は、一方を先に滴下した後、遅れて他方を滴下してもよく、両方を同じタイミングで滴下してもよい。
滴下速度は、滴下終了まで一定であってもよく、単量体または重合開始剤の消費速度に応じて、多段階に変化させてもよい。
滴下は、連続的に行ってもよく、間欠的に行ってもよい。
【0025】
以下、(b)工程において、例えば、単量体成分を滴下重合法で重合する場合について説明する。
図1に示す攪拌機12、ジャケット(図示略)およびコンデンサ14を有する調合槽10(容器)に原料(単量体成分、重合開始剤、溶媒等。)を注入し、攪拌機12で撹拌して単量体溶液を調製する。
調合槽10としては、前製造ロットの重合体の貧溶媒を容器の内面に接触させた際に前製造ロットの重合体が析出しない容器を用いる。前製造ロットの重合体の製造に用いた単量体成分が調合槽10に残ると、該単量体成分が重合し、調合槽10にて重合体が生成することがある。
【0026】
単量体成分としては、ラクトン骨格を有する単量体(1)および酸脱離性基を有する単量体(2)を含有するものが好ましく、さらに親水性基を有する単量体(3)を含有するものが好ましい。単量体成分は、非極性脂環式骨格を有する単量体(4)を含有してもよく、他の単量体(5)を含有していてもよい。
【0027】
ラクトン骨格を有する単量体(1)は、レジスト膜の基板への密着性を向上させる成分である。また、ラクトン骨格を有する単量体(1)が酸脱離性基を有すれば、レジスト膜の密着性および感度が良好となる。また、ラクトン骨格を有する単量体(1)が親水性基を有すれば、レジスト膜の密着性およびレジストパターンの矩形性が良好となる。
ラクトン骨格を有する単量体(1)は、環内にカルボニルオキシ基(−C(O)O−)を含む環状の飽和炭化水素基を有する単量体である。
【0028】
ラクトン骨格を有する単量体(1)の量は、レジスト膜の基板への密着性の点から、単量体成分(100モル%)中、30モル%以上が好ましく、35モル%以上がより好ましい。ラクトン骨格を有する単量体(1)の量は、レジスト膜の感度および解像度の点から、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましい。ラクトン骨格を有する単量体(1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
ラクトン骨格を有する単量体(1)としては、レジスト用重合体の製造に用いられる公知の単量体が挙げられ、ArFエキシマレーザー(波長193nm)またはKrFエキシマレーザー(波長248nm)を用いたレジストパターンの形成に好適な重合体が得られる点から、ラクトン骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
ラクトン骨格を有する単量体としては、単量体(1−1)〜(1−29)が好ましい。ただし、Rは、水素原子またはメチル基を表す。
【0030】
【化1】

【0031】
【化2】

【0032】
酸脱離性基を有する単量体(2)(ただし、ラクトン骨格を有する単量体は除く。)は、レジスト膜の感度を向上させる成分である。また、酸脱離性基を有する単量体(2)が親水性基を有すれば、レジスト膜の感度がさらに良好となる。
【0033】
酸脱離性基は、光酸発生剤から発生する酸により開裂する結合を有する基であり、該結合の開裂により酸脱離性基の一部または全部が重合体の主鎖から脱離する基である。酸脱離性基としては、例えば、カルボニルオキシ基(−C(O)O−)の酸素原子に以下の基が結合したエステル基が挙げられる。
分岐3級アルキル基、下記式で表されるアルキル置換炭化水素基(式中、R11は、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状アルキル基を表し、R12は、これが結合する炭素原子とともに炭化水素基を形成する基を表す。)、アルコキシアルキル基、−R13−O−R14−R15で表される基(式中、R13は、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状アルキレン基を表し、R14は、単結合、または炭素数1〜6の直鎖状または分岐状アルキレン基を表し、R15は、炭化水素基を表す。)、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基等。
【0034】
【化3】

【0035】
分岐3級アルキル基としては、例えば、t−ブチル基、t−ペンチル基等が挙げられる。
アルコキシアルキル基としては、メトキシメチル基、1−メトキシエチル基、エトキシメチル基、1−エトキシエチル基、イソプロポキシメチル基、1−イソプロポキシエチル基、シクロヘキソキシメチル基、1−シクロヘキソキシエチル基、シクロペントキシメチル基、1−シクロペントキシエチル基等が挙げられる。
【0036】
炭化水素基としては、レジスト用重合体とした際の光線透過性が高い点から、飽和脂環式炭化水素基が好ましい。飽和脂環式炭化水素基としては、単環性脂環式炭化水素基、多環性脂環式炭化水素基が挙げられる。
単環性脂環式炭化水素基として、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられ、レジスト用重合体とした際に感度、解像度に優れる点から、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が好ましい。
多環性脂環式炭化水素基としては、例えば、架橋環式炭化水素基、スピラン系炭化水素基、環集合型炭化水素基等が挙げられる。具体例としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5 ]ドデシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基等が挙げられる。
【0037】
酸脱離性基を有する単量体(2)の量は、レジスト膜の感度および解像度の点から、単量体成分(100モル%)中、20モル%以上が好ましく、25モル%以上がより好ましい。酸脱離性基を有する単量体(2)の量は、レジスト膜の基板への密着性の点から、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましい。酸脱離性基を有する単量体(2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
酸脱離性基を有する単量体(2)としては、レジスト用重合体の製造に用いられる公知の単量体が挙げられ、ArFエキシマレーザー(波長193nm)またはKrFエキシマレーザー(波長248nm)を用いたレジストパターンの形成に好適な重合体が得られる点から、酸脱離性基を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
酸脱離性基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、単量体(2−1)〜(2−28)が好ましい。ただし、RおよびR’は、水素原子またはメチル基を表す。
【0039】
【化4】

【0040】
【化5】

【0041】
親水性基を有する単量体(3)(ただし、ラクトン骨格を有する単量体および酸脱離性基を有する単量体は除く。)は、レジストパターンの矩形性を向上させる成分である。
親水性基は、−C(CF32−OH、ヒドロキシ基、シアノ基、メトキシ基、カルボキシ基およびアミノ基からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0042】
親水性基を有する単量体(3)の量は、レジストパターンの矩形性の点から、単量体成分(100モル%)中、5モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましい。親水性基を有する単量体(3)の量は、レジスト膜の基板への密着性、および感度の点から、30モル%以下が好ましく、25モル%以下がより好ましい。親水性基を有する単量体(3)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
親水性基を有する単量体(3)としては、レジスト用重合体の製造に用いられる公知の単量体が挙げられ、ArFエキシマレーザー(波長193nm)またはKrFエキシマレーザー(波長248nm)を用いたレジストパターンの形成に好適な重合体が得られる点から、親水性基を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
親水性基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、単量体(3−1)〜(3−15)が好ましい。ただし、Rは、水素原子またはメチル基を表す。
【0044】
【化6】

【0045】
非極性脂環式骨格を有する単量体(4)(ただし、ラクトン骨格を有する単量体、酸脱離性基を有する単量体および親水性基を有する単量体は除く。)は、レジストパターンのドライエッチング耐性を向上させる成分である。
非極性脂環式骨格を有する単量体(4)の量は、特に制限されないが、単量体成分(100モル%)中、20モル%以下が好ましい。非極性脂環式骨格を有する単量体(4)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
非極性脂環式骨格を有する単量体(4)としては、レジスト用重合体の製造に用いられる公知の単量体が挙げられ、ArFエキシマレーザー(波長193nm)またはKrFエキシマレーザー(波長248nm)を用いたレジストパターンの形成に好適な重合体が得られる点から、非極性脂環式骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
非極性脂環式骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ノルボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタジエニルが挙げられる。該非極性脂環式骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルは、脂環式骨格上に炭素数1〜6の直鎖または分岐アルキル基を有していてもよい。
非極性脂環式骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、単量体(4−1)〜(4−5)が好ましい。ただし、Rは、水素原子またはメチル基を表す。
【0047】
【化7】

【0048】
他の単量体(5)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸n−プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸iso−プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸n−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸iso−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸tert−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−n−プロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシ−n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸1−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル、(メタ)アクリル酸2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸メチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸エチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸2−エチルヘキシル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸n−プロピル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸iso−プロピル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸n−ブチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸iso−ブチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸tert−ブチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸メトキシメチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸エトキシエチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸n−プロポキシエチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸iso−プロポキシエチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸n−ブトキシエチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸iso−ブトキシエチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸tert−ブトキシエチル等の直鎖もしくは分岐構造を持つ(メタ)アクリル酸エステル;
2−メチル−2,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(1−(メタ)アクリロイルオキシ)エチルエーテル、1,4−ブタンジオールジ(1−(メタ)アクリロイルオキシ)メチルエーテル、(メタ)アクリロイルオキシエチレングリコールダイマー(1−(メタ)アクリロイルオキシ)エチルエーテル、(メタ)アクリロイルオキシエチレングリコールダイマー(1−(メタ)アクリロイルオキシ)メチルエーテル等の酸分解性基を有する多官能(メタ)アクリル酸エステル;
スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−ヒドロキシスチレン、p−tert−ブトキシカルボニルヒドロキシスチレン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシスチレン、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシスチレン、p−tert−ペルフルオロブチルスチレン、p−(2−ヒドロキシ−iso−プロピル)スチレン等の芳香族アルケニル化合物;
(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸およびカルボン酸無水物;
エチレン、プロピレン、ノルボルネン、テトラフルオロエチレン、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、塩化ビニル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、ビニルピロリドン;
単量体(5−1)〜(5−15)等が挙げられる。ただし、Rは、水素原子またはメチル基を表す。
【0049】
【化8】

【0050】
【化9】

【0051】
他の単量体(5)の量は、特に制限されないが、単量体成分(100モル%)中、20モル%以下が好ましい。他の単量体(5)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
重合開始剤としては、熱により効率的にラジカルを発生するものが好ましい。このような重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等のアゾ化合物;2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等の有機過酸化物等が挙げられる。
本発明の製造方法で得られた重合体をArFエキシマレーザー(波長:193nm)リソグラフィー用途に用いる場合には、光線透過率(波長193nmの光に対する透過率)をできるだけ低下させない点から、重合開始剤としては、分子構造中に芳香環を有しないものが好ましい。また、重合時の安全性等を考慮すると、重合開始剤としては、10時間半減期温度が60℃以上のものが好ましい。
重合開始剤の量は、特に限定されないが、重合体の収率を高くさせる点から、単量体成分100モル部に対して0.3モル部以上が好ましく、1モル部以上がより好ましい。また、重合体の分子量分布を狭くさせる点から、単量体成分100モル部に対して30モル部以下が好ましい。
【0053】
溶媒としては、単量体成分、重合開始剤、得られる重合体、連鎖移動剤を併用する場合はその連鎖移動剤のいずれをも溶解できる溶媒が好ましい。該溶媒としては、例えば、エーテル(ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の鎖状エーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等の環状エーテル等。)、エステル(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等。)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等。)、アミド(N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等。)、スルホキシド(ジメチルスルホキシド等。)、炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素等。)、これらの混合溶媒等が挙げられる。また、溶媒としては、電子工業用グレードの溶媒が好ましい。溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
溶媒の量は、滴下溶媒および仕込み溶媒の合計量で、単量体成分(100質量部)に対して30〜700質量部が好ましい。
滴下重合法において溶媒を2種以上用いる場合、滴下溶媒および仕込み溶媒における溶媒の混合比は、任意の割合で設定できる。
調合槽10における単量体溶液の単量体濃度は、特に限定されないが、5〜50質量%が好ましい。
【0054】
単量体溶液は、レジスト組成物の保存安定性を妨げない範囲で連鎖移動剤を含んでいてもよい。連鎖移動剤を用いることにより、低分子量で分子量分布の小さい重合体を製造できる。連鎖移動剤としては、例えば、1−ブタンチオール、2−ブタンチオール、1−オクタンチオール、1−デカンチオール、1−テトラデカンチオール、シクロヘキサンチオール、2−メチル−1−プロパンチオール、2−メルカプトエタノール、メルカプト酢酸、1−チオグリセロール等が挙げられる。連鎖移動剤としては、光線透過率(波長193nmの光に対する透過率)をできるだけ低下させない点から、芳香環を有しないものが好ましい。
連鎖移動剤の量は、単量体成分(100モル部)に対して1〜20モル部が好ましい。
【0055】
(b)工程:
攪拌機22、ジャケット(図示略)およびコンデンサ24を有する重合槽20(容器)に溶媒を注入し、一定温度に保持する。調合槽10の単量体溶液を重合槽20に供給し、一定温度に保持された溶媒中に滴下し、単量体成分を重合させ、重合体溶液を得る。
重合槽20としては、前製造ロットの重合体の貧溶媒を容器の内面に接触させた際に前製造ロットの重合体が析出しない容器を用いる。
【0056】
溶媒としては、単量体成分、重合開始剤、得られる重合体、連鎖移動剤を併用する場合はその連鎖移動剤のいずれをも溶解できる溶媒であれば、(a)工程にて用いた溶媒と同じでもよく、違っていてもよい。
仕込み溶媒の量は、特に限定されず、適宜決めればよい。通常は、単量体成分の全量100質量部に対して30〜700質量部である。
【0057】
重合温度は、50℃以上が好ましく、150℃以下が好ましい。
重合時間は、1時間以上が好ましく、24時間以下が好ましい。
【0058】
(c)工程:
図1に示す重合槽20の重合体溶液を、必要に応じて、良溶媒で適当な溶液粘度に希釈する。
攪拌機32、ジャケット(図示略)およびコンデンサ34を有する精製槽30(容器)に貧溶媒を注入する。重合槽20の重合体溶液を精製槽30に供給し、攪拌機32で撹拌しながら貧溶媒中に滴下し、重合体を析出させ、重合体分散液を得る。
精製槽30としては、前製造ロットの重合体の貧溶媒を容器の内面に接触させた際に前製造ロットの重合体が析出しない容器を用いる。
【0059】
良溶媒としては、(a)〜(b)工程にて用いた溶媒が挙げられる。
貧溶媒としては、前記レジスト重合体用の貧溶媒が挙げられる。
貧溶媒の量は、重合体溶液100質量部に対して300〜3000質量部が好ましい。
【0060】
(d)工程:
図1に示す精製槽30の重合体分散液を、フィルター42を有する真空式ろ過器40に供給し、重合体分散液を、フィルター42を用いてろ過して重合体の湿粉を回収する。
【0061】
フィルター42としては、ろ布、ろ紙、ガラスフィルター、メンブレンフィルター、カートリッジフィルター、フェルト等が挙げられ、工業的にはろ布が好ましい。ろ布は、長繊維を織った布である。長繊維の材料としては、例えば、合成樹脂(ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン等。)、羊毛、木綿、セラミック、ガラス、セルロース、炭素、アスベスト、金属(ステンレス等。)が挙げられる。
フィルター42は、前製造ロットで用いたフィルターを洗浄したものであってもよく、一度もろ過に用いられていない新品のフィルターであってもよい。
【0062】
真空式ろ過器の代わりに、加圧式ろ過器、重力式ろ過、圧搾式ろ過器、遠心分離機等を用いてもよい。また、2種以上を併用してもよい。
【0063】
(e)工程:
図1に示す精製槽30に貧溶媒を注入する。真空式ろ過器40にて回収された重合体の湿粉を精製槽30に投入し、攪拌機32で撹拌して貧溶媒に分散させ、重合体分散液を得る。
貧溶媒としては、(c)工程にて用いた貧溶媒が挙げられる。
貧溶媒の量は、重合体湿粉100質量部に対して300〜3000質量部が好ましい。
【0064】
(f)工程:
(d)工程と同様にして、重合体分散液をフィルター42を用いてろ過して重合体の湿粉を回収する。
フィルター42としては、(d)工程で用いたフィルターをそのまま用いてもよく、(d)工程で用いたフィルターに代えて、別のフィルターを新たに用意し、これを用いてもよい。
【0065】
(g)工程:
(f)工程にて回収された重合体の湿粉を乾燥機(図示略)に移送し、該乾燥機にて湿粉を乾燥させて、最終製品である粉体品を得る。
乾燥機としては、間接加熱方式箱型乾燥装置(真空)、間接加熱方式箱型乾燥装置(凍結真空)、間接加熱方式撹拌乾燥装置(皿形、丸形、みぞ形)、間接加熱方式回転乾燥装置、間接過熱方式ドラム型乾燥装置、直接過熱方式箱型乾燥装置(並行、通気、流動層)、直接加熱方式トンネル型乾燥装置、直接加熱方式バンド型乾燥装置(並行、通気)、直接加熱方式シート乾燥装置、直接過熱方式多段円板乾燥装置、直接過熱方式縦型ターボ乾燥装置、直接過熱方式縦型通気乾燥装置、直接過熱方式回転乾燥装置(直接、通気)、直接加熱方式振動乾燥装置、直接加熱方式流動乾燥装置、直接加熱方式気流乾燥装置、直接加熱方式噴霧乾燥装置、直接加熱方式泡沫層乾燥装置、赤外線乾燥装置、高周波乾燥装置、超音波乾燥装置等が挙げられる。
乾燥温度は、20〜100℃が好ましい。
乾燥時間は、2〜200時間が好ましい。
【0066】
(h)工程:
図1に示す攪拌機52、ジャケット(図示略)およびコンデンサ54を有する溶解槽50(容器)に良溶媒を注入する。(f)工程にて回収された重合体の湿粉を溶解槽50に投入し、攪拌機52で撹拌して良溶媒に溶解させ、重合体溶液を得る。
溶解槽50としては、前製造ロットの重合体の貧溶媒を容器の内面に接触させた際に前製造ロットの重合体が析出しない容器を用いる。
良溶媒としては、後述のレジスト組成物用の溶媒が挙げられる。
良溶媒の量は、重合体100質量部に対して100〜5000質量部が好ましい。
【0067】
(i)工程:
図1に示す溶解槽50の重合体溶液を精密フィルターを有する精密ろ過器60に供給し、重合体溶液を精密フィルターに通して不純物を除去する。
精密フィルターとしては、メンブランフィルター、カートリッジフィルター等が挙げられる。
【0068】
(j)工程:
図1に示す攪拌機72、ジャケット(図示略)およびコンデンサ74を有する濃縮槽70(容器)に、精密フィルターを通過した重合体溶液を注入する。濃縮槽70の重合体溶液を攪拌機72にて撹拌しながらジャケットにて加熱し、重合体溶液から残存する貧溶媒を減圧下で除去し、さらに重合体溶液を所定の重合体濃度になるまで濃縮し、最終製品である重合体溶液を得る。
濃縮槽70から排出される貧溶媒および良溶媒の蒸気は、コンデンサ74にて液体に凝集され、回収タンク80に送られる。
濃縮槽70としては、前製造ロットの重合体の貧溶媒を容器の内面に接触させた際に前製造ロットの重合体が析出しない容器を用いる。
【0069】
(k)工程:
調合槽10、重合槽20、精製槽30、溶解槽50および濃縮槽70の内面を溶媒にて洗浄する。
(a)〜(k)工程における容器の洗浄方法としては、容器の内容積の1/20〜1/1の溶媒を容器内に注入し、溶媒をジャケットにより加熱して容器内で還流させる方法;スプレー、ホース等から吐出される溶媒を直接、容器の内面にかける方法;容器内を溶媒で満たす方法等が挙げられる。
溶媒としては、(a)〜(c)、(e)工程にて用いた溶媒、貧溶媒が挙げられる。溶媒、貧溶媒としては、電子工業用グレードの溶媒、純水が好ましい。
洗浄は、前製造ロットの重合体の貧溶媒を容器の内面に接触させた際に前製造ロットの重合体が析出しなくなるまで行う。
【0070】
<重合体、レジスト組成物>
本発明の製造方法で得られた重合体の質量平均分子量は、レジスト用重合体の場合、1000以上が好ましく、また、1000000以下が好ましい。レジスト用重合体をポジ型レジスト組成物に用いる場合には、レジスト用重合体の質量平均分子量は、エッチング耐性およびレジストパターン形状の点から、1000以上が好ましく、2000以上であることがより好ましく、5000以上であることが特に好ましい。また、レジスト用重合体をポジ型レジスト組成物として用いる場合には、レジスト用重合体の質量平均分子量は、溶媒に対する溶解性および解像度の点から、100000以下であることが好ましく、50000以下であることがより好ましく、20000以下であることが特に好ましい。
本発明の製造方法で得られた重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、特に限定されないが、レジスト用重合体として用いる場合には、レジスト溶液に対する溶解性および解像度の点から、2.5以下が好ましく、2.3以下がより好ましく、2.0以下が特に好ましい。
【0071】
レジスト用重合体は、レジスト組成物の原料として好適に用いられる。レジスト組成物は、レジスト用重合体を溶媒に溶解したものである。また、化学増幅型レジスト組成物は、レジスト用重合体および光酸発生剤を溶媒に溶解したものである。レジスト用重合体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、レジスト組成物は、本発明の製造方法で得られたレジスト用重合体以外の重合体を含んでいてもよい。
【0072】
レジスト組成物用の溶媒は、使用条件等に応じて任意に選択される。
溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン等の直鎖もしくは分岐鎖ケトン類;シクロペンタノン、シクロヘキサノン等の環状ケトン類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のジエチレングリコールアルキルエーテル類;酢酸エチル、乳酸エチル等のエステル類;n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、シクロヘキサノール、1−オクタノール等のアルコール類;1,4−ジオキサン、炭酸エチレン、γ−ブチロラクトン;ペンタン、2−メチルブタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジブチルブタン、2,3−ジブチルブタン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、n−ノナン、2,2,5−トリメチルヘキサン、n−デカン、n−ドデカン等の炭素数5〜11の脂肪族炭化水素系溶媒等が挙げられる。溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
溶媒としては、安全性が高く、汎用的に用いられている点から、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトンが好ましい。
【0073】
レジスト組成物(溶液)中の重合体の濃度(固形分濃度)は、特に制限されないが、レジスト組成物の粘度の点から、レジスト組成物(100質量%)中50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。また、レジスト組成物中の重合体の濃度は、レジスト膜厚の点から、2質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、8質量%以上がさらに好ましい。
【0074】
レジスト用重合体を化学増幅型レジスト組成物に用いる場合、光酸発生剤を用いることが必要である。
光酸発生剤は、化学増幅型レジスト組成物の酸発生剤として用いることができるものの中から任意に選択することができる。光酸発生剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0075】
光酸発生剤としては、例えば、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、キノンジアジド化合物、ジアゾメタン化合物等が挙げられる。これらのうち、光酸発生剤としては、スルスルホニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等のオニウム塩化合物が好ましく、具体的には、トリフェニルスルホニウムトリフレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムナフタレンスルホネート、(ヒドロキシフェニル)ベンジルメチルスルホニウムトルエンスルホネート、ジフェニルヨードニウムトリフレート、ジフェニルヨードニウムピレンスルホネート、ジフェニルヨードニウムドデシルベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、p−メチルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート、トリ(tert−ブチルフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート等が挙げられる。
【0076】
光酸発生剤の量は、選択された光酸発生剤の種類により適宜決められ、通常、レジスト用重合体100質量部に対して0.1質量部以上であり、0.5質量部以上がより好ましい。光酸発生剤の量をこの範囲にすることにより、露光により発生した酸の触媒作用による化学反応を充分に生起させることができる。また、光酸発生剤の量は、通常、レジスト用重合体100質量部に対して20質量部以下であり、10質量部以下がより好ましい。光酸発生剤の量をこの範囲にすることにより、レジスト組成物の安定性が向上し、組成物を塗布する際の塗布むら、現像時のスカム等の発生が充分に少なくなる。
【0077】
さらに、化学増幅型レジスト組成物には、含窒素化合物を配合することもできる。含窒素化合物を含有させることにより、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等がさらに向上する。つまり、レジストパターンの断面形状が矩形により近くなり、また、レジスト膜を露光し、露光後ベーク(PEB)して、次の現像処理までの間に数時間放置されることが半導体の量産ラインではあり、そのような放置(経時)したときにレジストパターンの断面形状の劣化の発生がより抑制される。
【0078】
含窒素化合物としては、公知のものいずれも用いることができ、これらのうち、アミンが好ましく、第2級低級脂肪族アミン、第3級低級脂肪族アミンがより好ましい。低級脂肪族アミンとは、炭素数5以下のアルキルまたはアルキルアルコールのアミンを意味する。
第2級低級脂肪族アミン、第3級低級脂肪族アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリペンチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。これらのうち、含窒素化合物としては、トリエタノールアミン等の第3級アルカノールアミンがより好ましい。
含窒素化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0079】
含窒素化合物の量は、選択された含窒素化合物の種類等により適宜決められ、通常、レジスト用重合体100質量部に対して0.01質量部以上が好ましい。含窒素化合物の量をこの範囲にすることにより、レジストパターン形状をより矩形にすることができる。また、含窒素化合物の量は、通常、レジスト用重合体100質量部に対して2質量部以下が好ましい。含窒素化合物の量をこの範囲にすることにより、感度の劣化を小さくすることができる。
【0080】
また、化学増幅型レジスト組成物には、有機カルボン酸、リンのオキソ酸、または、その誘導体を配合することもできる。これらの化合物を含有させることにより、含窒素化合物の配合による感度劣化を防止することができ、また、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等がさらに向上する。
有機カルボン酸としては、例えば、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸等が好ましい。
リンのオキソ酸、または、その誘導体としては、例えば、リン酸、リン酸ジ−n−ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステル等のリン酸およびそれらのエステルのような誘導体;ホスホン酸、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸ジ−n−ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステル等のホスホン酸およびそれらのエステルのような誘導体;ホスフィン酸、フェニルホスフィン酸等のホスフィン酸およびそれらのエステルのような誘導体等が挙げられる。これらのうち、ホスホン酸が好ましい。
これらの化合物(有機カルボン酸、リンのオキソ酸、または、その誘導体)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0081】
これらの化合物(有機カルボン酸、リンのオキソ酸、または、その誘導体)の量は、選択された化合物の種類等により適宜決められ、通常、レジスト用重合体100質量部に対して0.01質量部以上が好ましい。これらの化合物の量をこの範囲にすることにより、レジストパターン形状をより矩形にすることができる。また、これらの化合物(有機カルボン酸、リンのオキソ酸、または、その誘導体)の量は、通常、レジスト用重合体100質量部に対して5質量部以下が好ましい。これらの化合物の量をこの範囲にすることにより、レジストパターンの膜減りを小さくすることができる。
【0082】
含窒素化合物と、有機カルボン酸、リンのオキソ酸およびその誘導体からなる群から選ばれる1種以上との両方を化学増幅型レジスト組成物に含有させてもよいし、いずれか一方のみを含有させてもよい。
さらに、レジスト組成物には、必要に応じて、界面活性剤、前記含窒素化合物以外のクエンチャー、増感剤、ハレーション防止剤、保存安定剤、消泡剤等の各種添加剤を配合してもよい。これらの添加剤は、当該分野で公知のものであればいずれも用いることができる。また、これらの添加剤の添加量は、特に限定されず、適宜決めればよい。
【0083】
本発明のレジスト組成物は、金属エッチング用、フォトファブリケーション用、製版用、ホログラム用、カラーフィルター用、位相差フィルム用等のレジスト組成物として用いてもよい。
【0084】
本発明のレジスト組成物を用いて、レジストパターンを形成できる。レジスト組成物を用いたレジストパターンの形成方法の一例について説明する。
まず、パターンを形成するシリコンウエハー等の被加工基板の表面に、レジスト組成物をスピンコート等により塗布する。そして、このレジスト組成物が塗布された被加工基板をベーキング処理(プリベーク)等で乾燥し、基板上にレジスト膜を形成する。
【0085】
ついで、このようにして得られたレジスト膜に、フォトマスクを介して、250nm以下の波長の光を照射する(露光)。露光に用いる光は、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、またはF2 エキシマレーザーが好ましく、ArFエキシマレーザーが特に好ましい。また、電子線で露光してもよい。
【0086】
露光後、適宜熱処理(露光後ベーク、PEB)し、基板をアルカリ現像液に浸漬し、露光部分を現像液に溶解させ、除去する(現像)。アルカリ現像液としては、公知のものいずれを用いてもよい。そして、現像後、基板を純水等で適宜リンス処理する。このようにして被加工基板上にレジストパターンが形成される。
【0087】
通常、レジストパターンが形成された被加工基板は、適宜熱処理(ポストベーク)してレジストパターンを強化し、レジストパターンのない部分を選択的にエッチングする。エッチングを行った後、レジストパターンは、通常、剥離剤を用いて除去される。
【0088】
以上説明した本発明の重合体の製造方法にあっては、製造に用いる各容器として、前製造ロットの重合体の貧溶媒を容器の内面に接触させた際に前製造ロットの重合体が析出しない容器を用いるため、前製造ロットの単量体成分または重合体のコンタミネーションが抑えられる。その結果、目的とする用途において設計通りの性能を発揮できる重合体を得ることができる。
【0089】
また、本発明の重合体は、本発明の製造方法によって得られた重合体であるため、目的とする用途において設計通りの性能を発揮できる。
また、本発明のレジスト組成物は、本発明の製造方法によって得られた重合体を含有するため、レジスト膜に設計通りの性能を発揮させ、かつレジストパターンにおけるディフェクトの発生を抑えることができる。
【実施例】
【0090】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0091】
〔実施例1〕
(レジスト用重合体の製造)
(k)工程:
前ロットの製造(単量体(1−12)(ただし、Rは水素原子。)37.0質量%(40モル%)、単量体(2−2)(ただし、Rはメチル基。)41.4質量%(40モル%)、単量体(3−7)(ただし、Rはメチル基。)21.6質量%(20モル%)からなる重合体の製造)で用いた、ガラス製の調合槽、重合槽および精製槽、ステンレス製の溶解槽および濃縮槽(各容器)の内面をテトラヒドロフラン(関東化学(株)製、電子工業用グレード)、メタノール(関東化学(株)製、電子工業用グレード)でよく洗浄した。
【0092】
各容器に、前製造ロットの重合体の貧溶媒であるメタノール(関東化学(株)製、電子工業用グレード)を容器の内容積の1/3まで注入し、貧溶媒をジャケットにより加熱して容器内で還流させた。貧溶媒を容器から排出した後、容器の内面を目視で観察し、内面に重合体の白色の析出物がないことを確認した。
【0093】
(a)工程:
攪拌機、ジャケットおよびコンデンサを有する調合槽に、単量体(1−1)(ただし、Rはメチル基。)2.31kg、単量体(2−10)(ただし、Rはメチル基。)2.67kg、単量体(3−4)(ただし、Rはメチル基。)1.61kg、乳酸エチル98.7kg、および重合開始剤(和光純薬工業(株)製、V601(商品名))196gを注入し、撹拌して単量体溶液を調製した。
【0094】
(b)工程:
窒素導入口、攪拌機、ジャケットおよびコンデンサを有する重合槽に、窒素雰囲気下で、乳酸エチル5.49kgを注入し、攪拌しながら温度を80℃に保持した。調合槽の単量体溶液を重合槽に供給し、80℃に保持された乳酸エチル中に一定速度で6時間かけて滴下した。その後、溶液を80℃で1時間保持し、重合体溶液を得た。
【0095】
(c)工程:
攪拌機、ジャケットおよびコンデンサを有する精製槽にメタノール107.8kgおよび水34kgを注入した。重合槽の重合体溶液22kgを精製槽に供給し、メタノールおよび水の混合溶媒中に撹拌しながら滴下し、重合体を析出させ、重合体分散液を得た。
【0096】
(d)工程:
精製槽の重合体分散液を、フィルターを有する真空式ろ過器に供給し、重合体分散液を該フィルターを用いてろ過して重合体の湿粉を回収した。
【0097】
(e)工程:
精製槽にメタノール144.5kgおよび水25.5kgを注入した。真空式ろ過器にて回収された重合体の湿粉14kgを精製槽に投入し、攪拌機で撹拌してメタノールおよび水の混合溶媒に分散させ、重合体分散液を得た。
【0098】
(f)工程:
精製槽の重合体分散液を、フィルターを有する真空式ろ過器に供給し、重合体分散液を該フィルターを用いてろ過して重合体の湿粉を回収した。フィルターとしては、(d)工程で用いたフィルターを洗浄することなくそのまま用いた。
【0099】
(h)工程:
攪拌機、ジャケットおよびコンデンサを有する溶解槽にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート49kgを注入した。(f)工程にて回収された重合体の湿粉14kgを溶解槽に投入し、攪拌機で撹拌してプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解させ、重合体溶液を得た。
【0100】
(i)工程:
溶解槽の重合体溶液を精密フィルター(日本ポール(株)製、P−NYLON N66FILTER0.04M(商品名))を有する精密ろ過器に供給し、重合体溶液を精密フィルターに通して不純物を除去した。
【0101】
(j)工程:
攪拌機、ジャケットおよびコンデンサを有する濃縮槽に、精密フィルターを通過した重合体溶液を注入した。濃縮槽の重合体溶液を攪拌機にて撹拌しながらジャケットにて加熱し、重合体溶液から残存するメタノールおよび水を減圧下で除去し、さらに重合体溶液を重合体濃度が25質量%になるまで濃縮し、重合体溶液を得た。
【0102】
(重合体の質量平均分子量、分子量分布)
約20mgの重合体を5mLのテトラヒドロフランに溶解し、孔径0.5μmメンブランフィルターでろ過して試料溶液を調製した。この試料溶液を、東ソー(株)製ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)に導入し、質量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を測定した。また、質量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)から分子量分布(Mw/Mn)を求めた。結果を表1に示す。
分離カラムとしては、昭和電工(株)製、Shodex GPC K−805L(商品名)を3本直列にしたものを用い、溶媒としては、テトラヒドロフラン(流量1.0mL/min)を用い、検出器としては示差屈折計を用いた。測定条件は、測定温度40℃、注入量0.1mLであった。標準ポリマーとして東ソー(株)製標準ポリスチレンF−80(Mw=706000)、F−20(Mw=190000)、F−4(Mw=37900)、F−1(Mw=10200)、A−2500(Mw=2630)、A−500(Mw=682、578、474、370、260の混合物)(商品名)を用いた。
【0103】
(レジスト組成物の調製)
重合体溶液400質量部(固形分100質量部)と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート400質量部と、光酸発生剤であるトリフェニルスルホニウムトリフレート2質量部とを混合して均一溶液とした後、孔径0.1μmのメンブランフィルターでろ過し、レジスト組成物を調製した。
【0104】
(レジストパターンの形成)
レジスト組成物をシリコンウエハー上にスピンコートし、ホットプレートを用いて120℃、60秒間プリベークを行い、膜厚0.3μmのレジスト膜を形成した。ついで、ArFエキシマレーザー露光機(波長:193nm)を用いて露光した後、ホットプレートを用いて120℃、60秒間露光後ベークを行った。ついで、2.38質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を用いて室温で現像し、純水で洗浄し、乾燥してレジストパターンを形成した。
【0105】
(感度)
ライン・アンド・スペース(L/S=1/1)を1/1の線幅に形成する露光量(mJ/cm2 )を測定し、これを感度とした。結果を表1に示す。
【0106】
(解像度)
前記露光量で露光したときに解像されるレジストパターンの最小寸法(μm)を解像度とした。結果を表1に示す。
【0107】
(レジストパターン)
日本電子製、JSM−6340F型電界放射形走査型電子顕微鏡(商品名)によりレジストパターンを観察し、ディフェクトが発生していないものを良好、ディフェクトが発生しているものを不良として評価した。結果を表1に示す。
【0108】
〔実施例2〕
実施例1で用いた、調合槽、重合槽、精製槽、溶解槽および濃縮槽の内面をテトラヒドロフラン(関東化学(株)製、電子工業用グレード)、メタノール(関東化学(株)製、電子工業用グレード)でよく洗浄した。
各容器に、実施例1の重合体の貧溶媒であるメタノール(関東化学(株)製、電子工業用グレード)を容器の内容積の1/3まで注入し、貧溶媒をジャケットにより加熱して容器内で還流させた。貧溶媒を容器から排出した後、容器の内面を目視で観察し、内面に重合体の白色の析出物がないことを確認した。
該容器を用いた以外は、実施例1と同様にして重合体を製造し、レジスト組成物を調製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0109】
〔実施例3〕
単量体成分を、単量体(1−12)(ただし、Rは水素原子。)3.37kg、単量体(2−2)(ただし、Rはメチル基。)3.77kg、および単量体(3−7)(ただし、Rはメチル基。)1.97kgに変更し;滴下溶媒をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート13.67kgに変更し;仕込み溶媒をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート3.34kgおよびγ−ブチロラクトン4.25kgの混合溶媒に変更し;重合開始剤であるジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(和光純薬工業(株)製、V601(商品名))の量を350gに変更し;(b)工程で用いる貧溶媒をメタノール182.4kgに変更し;(d)工程で用いる貧溶媒をメタノール182.4kgに変更し;各容器として、前製造ロットの重合体である単量体(1−1)(ただし、Rはメチル基。)37.0質量%(40モル%)、単量体(2−8)(ただし、Rはメチル基。)41.4質量%(40モル%)、単量体(3−4)(ただし、Rはメチル基。)21.6質量%(20モル%)からなる重合体の貧溶媒であるメタノール(関東化学(株)製、電子工業用グレード)を容器の内面に接触させた際に前製造ロットの重合体が析出しない容器を用いた以外は、実施例1と同様にして重合体を製造し、レジスト組成物を調製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0110】
〔実施例4〕
実施例3で用いた、調合槽、重合槽、精製槽、溶解槽および濃縮槽の内面をテトラヒドロフラン(関東化学(株)製、電子工業用グレード)、メタノール(関東化学(株)製、電子工業用グレード)でよく洗浄した。
各容器に、実施例3の重合体の貧溶媒であるメタノール(関東化学(株)製、電子工業用グレード)を容器の内容積の1/3まで注入し、貧溶媒をジャケットにより加熱して容器内で還流させた。貧溶媒を容器から排出した後、容器の内面を目視で観察し、内面に重合体の白色の析出物がないことを確認した。
該容器を用いた以外は、実施例3と同様にして重合体を製造し、レジスト組成物を調製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0111】
〔実施例5〕
単量体成分を、単量体(1−1)(ただし、Rはメチル基。)2.86kg、単量体(2−8)(ただし、Rはメチル基。)3.06kg、および単量体(3−4)(ただし、Rはメチル基。)1.98kgに変更し;滴下溶媒である乳酸エチルの量を11.84kgに変更し;仕込み溶媒である乳酸エチルの量を6.58kgに変更し;重合開始剤であるジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(和光純薬工業(株)製、V601(商品名))の量を232gに変更し;(b)工程で用いる貧溶媒をメタノール119.0kgおよび水50.0kgに変更し;(d)工程で用いる貧溶媒をメタノール126.9kgおよび水40.0kgに変更し;各容器として、前製造ロットの重合体である単量体(1−1)(ただし、Rはメチル基。)35.1質量%(40モル%)、単量体(2−10)(ただし、Rはメチル基。)40.5質量%(40モル%)、単量体(3−4)(ただし、Rはメチル基。)24.4質量%(20モル%)からなる重合体の貧溶媒であるメタノール(関東化学(株)製、電子工業用グレード)を容器の内面に接触させた際に前製造ロットの重合体が析出しない容器を用いた以外は、実施例1と同様にして重合体を製造し、レジスト組成物を調製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0112】
〔実施例6〕
実施例5で用いた、調合槽、重合槽、精製槽、溶解槽および濃縮槽の内面をテトラヒドロフラン(関東化学(株)社製、電子工業用グレード)、メタノール(関東化学(株)製、電子工業用グレード)でよく洗浄した。
各容器に、実施例5の重合体の貧溶媒であるメタノール(関東化学(株)製、電子工業用グレード)を容器の内容積の1/3まで注入し、貧溶媒をジャケットにより加熱して容器内で還流させた。貧溶媒を容器から排出した後、容器の内面を目視で観察し、内面に重合体の白色の析出物がないことを確認した。
該容器を用いた以外は、実施例5と同様にして重合体を製造し、レジスト組成物を調製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0113】
〔比較例1〕
各容器として、前製造ロットの重合体の貧溶媒を容器の内面に接触させた際に前製造ロットの重合体が析出した容器を用いた以外は、実施例1と同様にして重合体を製造し、レジスト組成物を調製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0114】
〔比較例2〕
各容器として、前製造ロットの重合体の貧溶媒を容器の内面に接触させた際に前製造ロットの重合体が析出した容器を用いた以外は、実施例3と同様にして重合体を製造し、レジスト組成物を調製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0115】
〔比較例3〕
各容器として、前製造ロットの重合体の貧溶媒を容器の内面に接触させた際に前製造ロットの重合体が析出した容器を用いた以外は、実施例5と同様にして重合体を製造し、レジスト組成物を調製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0116】
【表1】

【0117】
実施例1、2のレジスト組成物においては、レジスト膜の性能(感度、解像度)にばらつきが少なく、設計通りの性能を発揮していることが確認された。また、レジストパターンも良好であった。実施例3〜6のレジスト組成物についても、同様の結果が得られた。
一方、比較例1のレジスト組成物は、レジスト膜の性能が実施例1、2から大きくはずれ、設計通りの性能を発揮できなかった。比較例2のレジスト組成物についても、レジスト膜の性能が実施例3、4から大きくはずれ、設計通りの性能を発揮できなかった。比較例3のレジスト組成物についても、レジスト膜の性能が実施例5、6から大きくはずれ、設計通りの性能を発揮できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明の重合体の製造方法によれば、目的とする用途において設計通りの性能を発揮できる重合体およびレジスト組成物を製造でき、該レジスト組成物からなるレジストパターンを用いて形成される回路の精度、歩留まり等の低下が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】重合体の製造設備の一例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0120】
10 調合槽(容器)
20 重合槽(容器)
30 精製槽(容器)
50 溶解槽(容器)
70 濃縮槽(容器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単量体成分を重合して重合体を製造する方法であって、
下記(b)、(c)、(h)、および(j)工程のうちの1工程以上を有し、
下記容器として、前製造ロットの重合体の貧溶媒を容器の内面に接触させた際に前製造ロットの重合体が析出しないものを用いる、重合体の製造方法。
(工程)
(b)単量体溶液に含まれる単量体成分を容器内で重合し、重合体溶液を得る工程。
(c)重合体溶液を容器内の貧溶媒に注いで重合体を析出させ、重合体分散液を得る工程。
(h)重合体を容器内で良溶媒に溶解させて重合体溶液を得る工程。
(j)容器内の重合体溶液から残存する貧溶媒を除去し、さらに重合体溶液を濃縮する工程。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法により得られた、重合体。
【請求項3】
請求項1に記載の製造方法により得られた重合体を含有する、レジスト組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2008−38025(P2008−38025A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−214644(P2006−214644)
【出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】