説明

金型成形品検査システム

【課題】金型成形品の品質を高精度に検査する。
【解決手段】このシステムは、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向CCDカメラユニット3X、3Y、3Z、レーザ測長器ユニット4、各種温度センサ(51)、判別手段6を備え、成形品の3次元方向の画像データ及び3次元形状の計測データと、当該成形品の良品の3次元方向の基準画像データ及び3次元形状の基準計測データとの比較、照合により、成形品の良否を多眼的に判別し、併せてプレス機械1の温度データにより、金型を含む発熱部各部の温度の適否を判別して、全数の成形品の品質を多元的に評価判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型プレス加工や金型樹脂成形による成形品の品質検査に使用する金型成形品検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、金型プレス加工に使用されるプレス機械は、本体フレームに固定のボルスタとボルスタ上で上下動可能なスライドとを備え、ボルスタ上に下型が取り付けられ、スライドの下部に上型が取り付けられて、固定側の下型と可動側の上型との協働動作によりワークにプレス加工を行うようになっている。また、金型樹脂成形では、成形機に固定側の下型とこの下型に対向する可動側の上型とを備え、型閉め時に下型と上型との間に形成されるキャビティの中で成形原料を加圧成形するようになっている。
【0003】
ところで、このようなプレス加工や樹脂成形においては、成形品の形状や寸法など、成形品の品質を検査して、成形品の良否の判定が行われている。この良否判定には種々の品質検査方法や装置が提案されており、特許文献1にその一例が記載されている。この文献1の品質検査方法及び装置では、検査対象の成形品が付着する可動側の金型又は固定側の金型に対して、可動側の金型と固定側の金型の相対移動方向より所定の斜め方向から点光源を照射し、型開きによる成形品の移動にともなって成形品の形状に沿ってできる点光源の移動軌跡をビデオカメラで撮影し、移動軌跡の画像データを予め決められた基準の移動軌跡の画像データと比較、照合して、予め決められた条件内での一致性により品質の良否を判定する。
【特許文献1】特開平6−11318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この種のプレス加工や樹脂成形においては、特に精密加工のように成形品の形状が複雑になると、成形品の形状や寸法の不良などが成形品の不特定の箇所で発生することがあり、またそれを確実に検出することは極めて難しい。また、プレス加工の場合、金型内に発生する加工熱やプレス機械から発生する機械熱などにより、プレス機械の駆動部に伸縮が生じ、被加工材料に加えるプレス圧力に変動があると、成形品の本来のスペックを実現することができない。樹脂成形の場合、型締め力が適切でないと成形品にバリが出るなど不良が発生することがある。このように成形品の不良の発生原因はさまざまで、従来のような単眼的な検査手法では、成形品の品質の実効ある十分な検査を期待することができないという問題がある。
【0005】
また、従来の成形品の品質検査では、検査装置が使用されているとはいえ、検査装置による成形品の良否判別を、検査装置に併設された表示装置に表示して、これを検査を担当する補助者が目視により確認し、人手により行われるため、成形品の全数検査は困難で、当該検査はどうしてもサンプリング検査にならざるを得ない。このため、検査されていない成形品の中には不良品が混在することがあり、不良品を確実に排除することが難しいという問題がある。また、検査を担当する補助者が表示装置で成形品の不良を確認した場合、補助者の操作によって成形機の運転を止めることになるが、補助者が成形品の不良を確認してから成形機の運転を停止するまでの間、成形機は稼動し、不良の成形品が追加的に発生するため、その結果、材料コストの浪費、金型等の損耗が拡大するという問題がある。さらに、補助者を必要とするため、検査費用は増大し、特に検査を外部委託する場合には、さらにコストが上昇するという問題がある。
【0006】
本発明は、このような従来の問題を解決するもので、この種の金型成形品の品質を高精度に検査することができ、また、全数の成形品から不良品を確実に判別、排除し、さらに不良品の発生を可及的に少なくするなど、信頼性の高い成形品の製造に資することができ、併せて検査費用、製造費用等コストの低減を図ることのできる金型成形品検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の金型成形品検査システムは、金型成形機に併設され、前記金型成形機により成形された成形品を3次元以上の多次元方向から撮像する複数の撮像手段と、前記成形品の3次元以上の多次元形状を計測する光学系の計測手段と、前記金型成形機の発熱部の温度を検出する温度検出手段と、前記各撮像手段からの画像データ及び前記計測手段からの計測データと、予め設定された成形品の良品の基準画像データ及び基準計測データとを比較、照合して前記成形品の良否を判別し、また、前記温度検出手段からの温度データと予め設定された基準温度データに基いて前記金型成形機の発熱部の温度の適否を判別する判別手段とを備え、前記成形品の品質を多元的に評価判定することを要旨とする。
【0008】
本発明の金型成形品検査システムはまた、次のように具体化される。第1に、複数の撮像手段は成形品を少なくともX軸方向から撮像する手段、Y軸方向から撮像する手段、及びZ軸方向から撮像する手段とにより構成され、前記各手段は、成形品に照明光を照射する照明装置と、前記成形品からの反射光を所定方向に導くミラーと、前記ミラーにより前記成形品を撮像し、画像データを出力するCCDカメラとを備える。第2に、ミラーを、金型成形機の金型の開動に応じて、前記金型間の内外に進退駆動するミラー移動機構を具備する。第3に、全部又は一部のCCDカメラを成形品に近接する撮像位置と前記成形品から離れた退避位置との間で移動するCCDカメラ移動機構を具備する。第4に、光学系の計測手段は、レーザ測長器と、前記レーザ測長器を垂直方向に回動可能に支持する手段、水平方向に回転可能に支持する手段、垂直方向に昇降する手段、水平方向に移動する手段、又はこれらを選択的に組み合わせた手段のうちから選択される手段とを具備するレーザ支持機構とを備える。第5に、温度検出手段は、少なくとも金型の温度変化を検出する温度センサを備える。第6に、判定部は、検査中の成形品を不良と判別したときに、又は金型成形機の発熱部の温度を不適と判別したときに、金型成形機の動作を停止する信号を出力する手段を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の金型成形品検査システムは、上記構成により、成形品の3次元以上の多次元方向の画像データ及び3次元以上の多次元形状の計測データと、当該成形品の良品の3次元以上の多次元方向の基準画像データ及び3次元以上の多次元形状の基準計測データとの比較、照合により、成形品の良否を多眼的に自動判別し、併せて金型成形機の温度データにより、発熱部の温度の適否を自動判別して、成形品の品質を多元的に評価判定するので、金型成形品の品質を全数に亘って高精度に検査することができる。また、不良品が発生したときに、又は金型成形機の発熱部が不適な温度に変化したときに、金型成形機の運転を即時、自動停止するので、全数の成形品から不良品を確実に判別、排除し、さらに不良品の発生を可及的に少なくするなど、信頼性の高い成形品の製造に資することができる。併せて検査を担当する補助者を不要とし、また材料コストの浪費、金型等の損耗を低減して、検査費用、製造費用等コストの大幅な低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る金型成形品検査システムの一実施の形態について図を用いて説明する。なお、この実施の形態では、金型プレス加工に適用する金型成形品検査システムとして例示する。図1及び図2において、1はプレス機械で、2はこのプレス機械に併設された金型成形品検査システムである。
【0011】
プレス機械1は、公知の精密加工用のプレス機械で、本体フレームに、固定のボルスタ11と、このボルスタ11上で上下動されるスライド12とを備え、ボルスタ11の上部に(固定側の)下型が取り付けられるとともに、スライド12の下部に(可動側の)上型が取り付けられ、プレス機械1のコントローラ13に予め格納された制御プログラムに基いて、スライド12が駆動され、ワークにプレス加工を行う。また、このプレス機械1の場合、プレス機械1のプレス面上にワークの送り方向fがプレス機械1の長手方向(プレス面のY軸方向)に向けて設定され、ワークが送り手段により下型と上型との開動に合わせた所定のタイミングで当該プレス面上に送られて、プレス加工が繰り返される。
【0012】
金型成形品検査システム2は、成形品を3次元方向から撮像する複数の撮像手段3と、成形品の3次元形状を計測する光学系の計測手段4と、プレス機械1の発熱部各部の温度を検出する温度検出手段5と、成形品の良否を判別し、また、プレス機械1の発熱部各部の温度の適否を判別する判別手段6とを備える。なお、成形品の検査は成形品の移動中でも停止中でもよいが、このシステム2では、撮像手段、計測手段で動く成形品を捕らえて、良否を判定する。
【0013】
複数の撮像手段3は、成形品をX軸方向から撮像するX軸方向CCDカメラユニット3Xと、Y軸方向から撮像するY軸方向CCDカメラユニット3Yと、Z軸方向から撮像するZ軸方向CCDカメラユニット3Zとにより構成される。これらのCCDカメラユニット3X、3Y、3Zは、成形品に照明光を照射する照明装置と、成形品からの反射光を所定の方向(CCDカメラ32)に導くミラー31と、ミラー31により成形品を撮像し、画像データを出力するCCDカメラ32とを備える。この場合、CCDカメラ32には、10mmの視野で10μmの評価が可能な1.4MピクセルのCCDカメラが採用され、像の歪みをなくすためにテレセントリックレンズが使用される。
【0014】
これらのCCDカメラユニット3X、3Y、3Zを各別に見ていくと、X軸方向CCDカメラユニット3Xの場合、照明装置はプレス面に対して適宜の位置に設置される。なお、照明装置は各CCDカメラユニット3X、3Y、3Z共通のものとして設置されてもよい。ミラー31はプレス面に対してX軸方向(言い換えれば、ワークの送り方向fに対して(水平方向に)直角方向)の片側一方に、支持部材301を介して、所定の高さに所定の方向(角度)に向けて設置される。この場合、支持部材301は、ミラー31を垂直方向に回動可能にかつ水平方向に回転可能に支持する角度調整部と、ミラー31を上下方向に昇降可能に支持する高さ調整部とを具備し、これらの調整部により、ミラー31の向き(角度)及び高さがプレス面における成形品の位置、成形品の大きさ及び形状に合わせて適宜調整される。なお、このミラー31の調整方式は手動式、自動式のいずれでもよい。自動式にする場合は、ミラー31を駆動するためのモータ又はシリンダ駆動のアクチュエータを併せて備える。さらに、ミラー31を水平方向に移動する機構を備えてもよい(この機構は、後の段落0016で説明する。)。これらの駆動部はプレス機械1のコントローラ13により制御される。CCDカメラ32はプレス面のX軸方向の片側他方にミラー31に対向して、支持装置302を介して、所定の高さに所定の角度で据え付けられる。この場合、支持装置302は、CCDカメラ32を垂直方向に回動可能にかつ水平方向に回転可能に支持する角度調整部と、CCDカメラ32を上下方向に昇降可能に支持する高さ調整部とを具備し、これらの調整部により、CCDカメラ32の向き(角度)及び高さがミラー31の向き(角度)及び高さに合わせて適宜調整される。なお、このCCDカメラ32の調整方式は手動式、自動式のいずれでもよい。自動式にする場合は、既述の支持部材301と同様の構成を採用すればよい。また、このCCDカメラ32の場合、金型の手前に設置される関係上、作業性を考慮して、CCDカメラ32の据え付け面にCCDカメラ移動機構が設置され、CCDカメラ32がこのCCDカメラ移動機構上に搭載されて、成形品に近接して成形品を撮像する撮像位置と成形品から離れた任意の退避位置との間で移動可能に配置される。このCCDカメラ移動機構は、図示を省略するが、プレス面のX軸方向片側一方の平面上に、移動レールがプレス面のY軸方向と平行に、少なくとも成形品に近接して撮像可能な所定の撮像位置と成形品から離れた任意に設定された退避位置との間に敷設され、この移動レール上に台座がスライド可能に組み付けられて構成される。台座には移動レール上の任意の位置に固定できるように、ストッパが設けられる。台座の駆動方式は手動式でも、自動式でもよい。自動式にする場合は、移動レールに近接してモータ駆動のボールねじ機構や、モータシリンダ、油圧シリンダなど各種シリンダが設置され、これらの駆動装置に台座が作動連結される。この駆動装置はプレス機械1のコントローラ13により制御される。台座上にCCDカメラ32が支持装置302とともに搭載される。この場合、CCDカメラ32の支持装置302を台座上にマグネットを介して(着脱可能に)固定することで、CCDカメラ32の取り付け、取り外しを簡易にすることができる。
【0015】
Y軸方向CCDカメラユニット3Yの場合、照明装置はプレス面に対して適宜の位置に設置される。ミラー31はプレス面に対してY軸方向(言い換えれば、ワークの送り方向f)の片側一方に、X軸方向CCDカメラユニット3Xの場合と同じ設置形式で、(ミラー31の)向き(角度)及び高さをプレス面における成形品の位置、成形品の大きさ及び形状に合わせて設置される。CCDカメラ32はプレス面のY軸方向の片側他方にミラー31に対向して、支持装置302により、所定の高さに所定の角度で設置される。この場合、支持装置302はX軸方向CCDカメラユニット3Xの場合と同様のもので、CCDカメラ32の向き(角度)及び高さがミラー31の向き(角度)及び高さに合わせて調整される。なお、このCCDカメラ32においても、X軸方向CCDカメラユニット3Xと同じ駆動形式で設置されてもよい。
【0016】
Z軸方向CCDカメラユニット3Zの場合、照明装置はプレス面に対して適宜の位置に設置される。ミラー31は、プレス面に対してX軸方向の片側一方に設置されたミラー移動機構33上に搭載される。このミラー移動機構33は、プレス面に対してX軸方向の片側一方にプレス面に向けて設置された直動ガイドレール331と、この直動ガイドレール331上に移動可能に配置された直動ガイドプレート332と、直動ガイドプレート332を駆動する駆動部333とを備える。この場合、直動ガイドレール331は所定の長さを有し、一端がプレス機械1の外側に突出され、他端がプレス機械1のプレス面の直近所定の位置(手前)に置かれる。直動ガイドプレート332は直動ガイドレール331に比べて短い平面状のプレートで、下面に直動ガイドレール331上を摺動可能な摺動部材を有し、直動ガイドレール331上にその一端と他端との間を移動可能に、かつプレス面側の他端でプレス面上に突出可能に組み付けられる。駆動部333は、モータ駆動のボールねじ機構や、モータシリンダ、油圧シリンダその他の各種シリンダなどが採用され、この駆動部333が直動ガイドレール331の下部(又は近接位置)に設置され、直動ガイドプレート332に作動連結される。この駆動部333はプレス機械1のコントローラ13により制御され、直動ガイドプレート332がプレス機械1の下型と上型との間に進退可能に構成される。ミラー31はこの直動ガイドプレート332の先端側に支持部材301を介して、プレス面上の成形品の位置、成形品の大きさ及び形状に合わせて所定の高さに所定の方向(角度)に向けて支持される。なお、支持部材301は、X軸方向CCDカメラユニット3Xの場合と同様である。このようにしてプレス機械1のコントローラ13の制御により、直動ガイドプレート332が直動ガイドレール331上で、上型の開動に合わせてプレス機械1の下型と上型との間に進退駆動され、ミラー31が下型と上型との間の内外に進退可能に構成される。このミラー移動機構はプレス機械1の毎分40回のプレスに対応可能である。CCDカメラ32はプレス面のX軸方向の片側一方に、ミラー移動機構33に隣接して、下型・上型間に移動されたミラー31に対向可能に、支持装置302により、所定の高さに所定の角度で据え付けられる。この場合、支持装置302はX軸方向CCDカメラユニット3Xと同様のもので、CCDカメラ32の向き(角度)及び高さが下型・上型間のミラー31の向き(角度)及び高さに合わせて調整される。なお、このCCDカメラ32においても、X軸方向CCDカメラユニット3Xの場合と同じ駆動形式で設置されてもよい。
【0017】
光学系の計測手段4はレーザ測長器ユニットにより構成される。このレーザ測長器ユニット4は、プレス面上の成形品にレーザ光を照射してその形状(この場合、3次元形状)を計測し、計測データを出力するレーザ測長器41と、レーザ測長器41を多方向に駆動するレーザ支持機構42とを備える。この場合、レーザ測長器41は、測長範囲が最大180mmの範囲を最小分解能10μmの測定が可能になっている。レーザ支持機構42は、レーザ測長器41を垂直方向に回動可能に支持する支持手段、水平方向に回転可能に支持する支持手段、垂直方向に昇降する支持手段、水平方向に移動する支持手段、又はこれらを選択的に組み合わせた支持手段のうちから選択されて組み立てられる。この場合、レーザ支持機構42は、レーザ測長器41を垂直方向に回動可能に支持する支持手段と、水平方向に移動する支持手段と、垂直方向に昇降する支持手段とにより組み立てられ、レーザ測長器41を垂直方向に傾動する傾動駆動部421と、レーザ測長器41を水平方向に駆動する水平方向駆動部422と、レーザ測長器41を垂直方向に駆動する垂直方向駆動部423とを具備する。これら駆動部421、422、423により、レーザ測長器41の稼動範囲は、水平方向に50mm、垂直方向に50mm、レーザの許容入射角度が、垂直方向から最大85度までになっている。このレーザ支持機構42はプレス面に対してY軸方向(言い換えれば、ワークの送り方向f)の片側一方に、Y軸方向のCCDカメラ32に近接して設置され、このレーザ支持機構42に支持されたレーザ測長器41はY軸方向のCCDカメラ32の上方に配置される。このレーザ測長器ユニット4の場合、特に、各CCDカメラユニット3X、3Y、3Zでは十分に計測できない成形品の高さ方向の計測を担当する。
【0018】
温度検出手段5は、各種の温度センサが採用され、プレス機械1の発熱部各部に取り付けられて、各温度センサから各部の温度データが出力される。特に、金型の温度は成形品の品質に大きく影響するため、その管理は重要である。この場合、金型に熱電対を用いた温度センサ51が採用される。この温度センサ51は感温部がアルミニウム製のスリーブに保持されて、金型に取り付けられる。このスリーブにより、温度センサ51がプレス機械1のオイルや溶剤による汚れを防止でき、また、温度センサ51の取付作業に際して、温度センサ51を落としたり、レンチや金属部品に衝突させたりしたときに保護することができる。この温度センサ51を金型に取り付けるに当たり、金型の測温部分に温度センサ51を取り付けるための治具が用意される。この治具にはねじ式又は直付け式が使用される。ねじ式の場合、温度センサ51の感温部が金型にねじ締結により取り付けられ、直付け式の場合、温度センサ51の感温部が金型に直接圧接されて取り付けられる。
【0019】
判別手段6はマルチプロセッサが搭載されたマイクロコンピュータで構成され、プレス機械1のコントローラ13により制御される。この判別手段6に、複数の撮像手段(X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の各CCDカメラユニット3X、3Y、3Zの各部)、光学系の計測手段(レーザ測長器ユニット4の各部)、温度検出手段(温度センサ51)が接続されて、各種の判定処理を行う。この場合、マイクロプロセッサのメモリ部には、各CCDカメラ32からの画像データに基いて成形品の良否を判別する画像データ判別プログラム、レーザ測長器41からの計測データに基いて成形品の良否を判別する計測データ判別プログラム、及び温度センサ51からの温度データに基いてプレス機械1の発熱部各部の温度を管理する温度管理プログラムが格納され、これらのプログラムに必要な画像データ、計測データ、及びプレス機械1の発熱部各部の適正な温度データが記憶される。ここでは特に、画像データ判別プログラムに、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の各CCDカメラ32からの画像データと良品の画像データとを比較、照合して成形品の形状及び寸法の良否を判別する形状及び寸法判別プログラムを備え、これに必要な画像データとして、良品の基準画像データを備える。計測データ判別プログラムに、レーザ測長器41からの計測データと良品の計測データとを比較、照合して成形品の3次元形状の良否を判別する3次元形状判別プログラムを備え、これに必要な計測データとして、良品の基準計測データを備える。温度管理プログラムに、各温度センサからの温度データとプレス機械1の発熱部各部の適正な温度データとを比較、照合して、発熱部各部の適否を判別する温度データ判別プログラムを備え、これに必要な温度データとして、プレス機械1の金型を含む発熱部各部の適正な基準温度データを備える。なお、これらのプログラムやデータの入力及び各種の設定はプレス機械1のコントローラ13に付帯される図示されない入力装置及び表示装置により行う。この判別手段6にはまた、検査中の成形品を不良と判別したときに、又はプレス機械1の発熱部各部の温度を不適と判別し、特に金型の温度が予め設定された基準値を超えたときに、プレス機械1の動作を停止する信号を出力する手段(停止信号出力手段)が併せて設けられる。
【0020】
このように金型成形品検査システム2は、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の各CCDカメラユニット3X、3Y、3Z、レーザ測長器ユニット4、温度センサ51、及び判別手段6を備え、これら各部により、成形品の全数を検査対象としてその品質を多元的に評価判定する。次に、図1を参照しながら、このシステム2による成形品の評価判定方法について説明する。
【0021】
このシステム2では、プレス機械1の固定側の下型と可動側の上型との協働動作により、ワークにプレス加工を行い、上型を開動する毎に、(移動中の)成形品の検査を自動的に行い、成形品の全数を評価判定する。まず、上型の開動に応じて、下型と上型との間にZ軸方向のミラー31をミラー移動機構33により駆動する。ミラー31を支持する直動ガイドプレート332を直動ガイドレール331上で下型と上型との間に直進駆動し、このミラー31を下型と上型との間に進入して、プレス面上の成形品のZ軸上に配置する。同時に、照明装置により照明光を成形品に照射し、その反射光を3次元方向の各CCDカメラユニット3X、3Y、3Zにより撮像する。この場合、成形品のX軸方向の外形状(反射光)を、X軸方向のミラー31によりX軸方向のCCDカメラ32で撮像し、成形品のX方向の画像データを得る。同様にして、成形品のY軸方向の外形状(反射光)を、Y軸方向のミラー31によりY軸方向のCCDカメラ32で撮像し、成形品のY方向の画像データを得るとともに、成形品のZ軸方向の外形状(反射光)を、Z軸方向のミラー31によりZ軸方向のCCDカメラ32で撮像し、成形品のZ方向の画像データを得る。
【0022】
また、これら3次元方向のCCDカメラユニット3X、3Y、3Zと並行して、レーザ測長器ユニット4を駆動し、成形品の3次元形状を計測する。この場合、レーザ測長器41をレーザ支持機構42により成形品に向けて垂直方向及び水平方向に移動しながら、レーザ光を照射し、その反射光を受光して距離を測長し、成形品の3次元形状を計測する。このレーザ測長器ユニット4により、成形品の3次元形状の計測データを得る。
【0023】
この間、プレス機械1の金型を含む発熱部各部の各温度センサにより、金型を含む発熱部各部の温度を検出し、温度データを得る。
【0024】
判別手段6は、3次元方向の各CCDカメラ32から得た成形品の3次元方向の各画像データと、良品の成形品の基準画像データとを比較、照合して、成形品の形状及び寸法の良否を判別し、併せてレーザ測長器41から得た成形品の3次元形状の計測データと、良品の成形品の基準計測データとを比較、照合して、成形品の3次元形状の良否を判別し、併せて、各温度センサから得たプレス機械1の発熱部各部の温度データと、プレス機械1の発熱部各部の適正な基準温度データとを比較、照合して、発熱部各部の適否を判別して、成形品を多元的に評価判定する。なお、この評価判定の結果を、図示されない表示装置の表示画面上に表示し、また図示されない記憶装置に記録する。この良否の判別において、検査中の成形品を不良と判別したときに、又は金型の温度が予め設定された基準値を超えたときに、プレス機械1の動作を停止する信号を出力し、プレス機械1の運転を即時、自動停止する。なお、成形品の不良原因又は金型温度の上昇原因を除去した後、プレス機械1の運転を再開し、この検査システム2により同様にして成形品の品質検査を行う。
【0025】
以上説明したように、この金型成形品検査システム2によれば、成形品の3次元方向の画像データ及び3次元形状の計測データと、当該成形品の良品の3次元方向の基準画像データ及び3次元形状の基準計測データとの比較、照合により、成形品の良否を多眼的に判別し、併せてプレス機械1の発熱部各部の温度データにより、プレス機械1の発熱部各部の温度の適否を判別して、成形品の品質を多元的に評価判定するので、金型成形品の品質を全数に亘って高精度に検査することができる。したがって、精密加工のように成形品の形状が複雑でも、その良否を確実に評価判定することができる。そして、この良否の判別において、不良品が発生したときに、プレス機械1の運転を即時、自動停止するので、引き続き不良品が発生するのを確実に防止することができる。また、金型内に発生する加工熱やプレス機械から発生する機械熱の温度を管理して、温度が予め設定した基準値を超えたときに、プレス機械1の動作を停止するので、これらの熱に起因するプレス機械の駆動部の伸縮を未然に防止することができ、ワークを安定したプレス圧力で加工して、成形品の本来のスペックを実現することができる。したがって、全数の成形品から不良品を確実に判別、排除し、さらに不良品の発生を可及的に少なくするなど、信頼性の高い成形品の製造に資することができる。併せて検査を担当する補助者を不要とし、また材料コストの浪費、金型等の損耗を低減して、検査費用、製造費用等コストの大幅な低減を図ることができる。
【0026】
また、このシステム2では、特にZ軸方向CCDカメラユニット3Zにミラー移動機構33を備え、プレス機械1の金型の開動に応じて、Z軸方向のミラー31を金型間の内外に進退駆動するので、ミラー31をプレス面上の成形品に対して垂直方向に配置して、又は成形品に可及的に近接させて、成形品の反射光をプレス面外部のCCDカメラ32へ導くことができ、成形品の外形状を高精度に撮像することができる。なお、このミラー移動機構33はX軸方向及びY軸方向の各CCDカメラユニット3X、3Yにも同様に適用することができ、X軸方向及びY軸方向においても、ミラー31をプレス面上の成形品に可及的に近接させて、成形品の反射光をプレス面外部のCCDカメラ32へ導くことができる。
【0027】
さらに、このシステム2では、特にX軸方向CCDカメラユニット3XにCCDカメラ移動機構を備え、CCDカメラ32を成形品に近接する撮像位置と成形品から離れた任意の退避位置との間で移動できるようにしたので、CCDカメラ32を任意に移動して、その据え付け位置を変更することができ、また、プレス面の一方向を開放して、金型の交換や段取り時の作業性を向上させることができる。なお、このCCDカメラ移動機構はY軸方向及びZ軸方向の各CCDカメラユニット3Y、3Zにも同様に適用することができ、Y軸方向及びZ軸方向においても各CCDカメラ32を任意に移動して、その据え付け位置を変更することができる。
【0028】
なお、上記実施の形態では、複数の撮像手段3は、X軸方向CCDカメラユニット3X、Y軸方向CCDカメラユニット3Y、Z軸方向CCDカメラユニット3Zの3軸により構成されているが、さらにCCDカメラユニットを追加して、又はその他の撮像手段により、例えばセンサの増加により5軸、6軸などさらに多軸で構成されてもよい。この場合、各撮像手段3の設置位置は必要に応じて適宜選定される。また、光学系の計測手段4は1基のレーザ測長器ユニットにより構成されているが、さらにレーザ測長器ユニットを追加して、又はその他の計測手段により、複数基の計測手段で構成されてもよい。この場合も、各計測手段4の設置位置は必要に応じて適宜選定される。このようにして成形品をさらに多次元の方向から撮像、計測することにより、成形品の品質をさらに高精度に検査することができる。
【0029】
また、上記実施の形態では、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向の各CCDカメラユニット3X、3Y、3Zは、(共通の)照明装置と、ミラー31と、CCDカメラ32とを備えているが、ミラーを省略し、(共通の)照明装置と、CCDカメラ又はその他の撮像手段とにより構成して、CCDカメラ又はその他の撮像手段を、ミラー移動機構と同様の構成を有するCCDカメラ又はその他の撮像手段移動機構に搭載して、プレス機械の金型の開動に応じて、金型間の内外に進退駆動するようにしてもよい。このようにしても上記実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0030】
また、上記実施の形態では、このシステム2を金型プレス加工に適用しているが、金型樹脂成形にも同様に適用して、同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施の形態における金型成形品検査システムの平面図
【図2】同システムの斜視図
【符号の説明】
【0032】
1 プレス機械
11 ボルスタ
12 スライド
13 コントローラ
2 金型成形品検査システム
3 撮像手段
3X X軸方向CCDカメラユニット
3Y Y軸方向CCDカメラユニット
3Z Z軸方向CCDカメラユニット
31 ミラー
301 支持部材
32 CCDカメラ
302 支持装置
33 ミラー移動機構
331 直動ガイドレール
332 直動ガイドプレート
333 駆動部
4 計測手段(レーザ測長器ユニット)
41 レーザ測長器
42 レーザ支持機構
421 傾動駆動部
422 水平方向駆動部
423 垂直方向駆動部
5 温度検出手段
51 温度センサ
6 判別手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型成形機に併設され、
前記金型成形機により成形された成形品を3次元以上の多次元方向から撮像する複数の撮像手段と、
前記成形品の3次元以上の多次元形状を計測する光学系の計測手段と、
前記金型成形機の発熱部の温度を検出する温度検出手段と、
前記各撮像手段からの画像データ及び前記計測手段からの計測データと、予め設定された成形品の良品の基準画像データ及び基準計測データとを比較、照合して前記成形品の良否を判別し、また、前記温度検出手段からの温度データと予め設定された基準温度データに基いて前記金型成形機の発熱部の温度の適否を判別する判別手段とを備え、
前記成形品の品質を多元的に評価判定することを特徴とする金型成形品検査システム。
【請求項2】
複数の撮像手段は成形品を少なくともX軸方向から撮像する手段、Y軸方向から撮像する手段、及びZ軸方向から撮像する手段とにより構成され、前記各手段は、成形品に照明光を照射する照明装置と、前記成形品からの反射光を所定方向に導くミラーと、前記ミラーにより前記成形品を撮像し、画像データを出力するCCDカメラとを備える請求項1に記載の金型成形品検査システム。
【請求項3】
ミラーを、金型成形機の金型の開動に応じて、前記金型間の内外に進退駆動するミラー移動機構を具備する請求項2に記載の金型成形品検査システム。
【請求項4】
全部又は一部のCCDカメラを成形品に近接する撮像位置と前記成形品から離れた退避位置との間で移動するCCDカメラ移動機構を具備する請求項2又は3に記載の金型成形品検査システム。
【請求項5】
光学系の計測手段は、レーザ測長器と、前記レーザ測長器を垂直方向に回動可能に支持する手段、水平方向に回転可能に支持する手段、垂直方向に昇降する手段、水平方向に移動する手段、又はこれらを選択的に組み合わせた手段のうちから選択される手段とを具備するレーザ支持機構とを備える請求項1乃至4のいずれかに記載の金型成形品検査システム。
【請求項6】
温度検出手段は、少なくとも金型の温度変化を検出する温度センサを備える請求項1乃至5のいずれかに記載の金型成形品検査システム。
【請求項7】
判定部は、検査中の成形品を不良と判別したときに、又は金型成形機の発熱部の温度を不適と判別したときに、金型成形機の動作を停止する信号を出力する手段を備える請求項1乃至6のいずれかに記載の金型成形品検査システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−237667(P2007−237667A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−65863(P2006−65863)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(591117413)株式会社菊池製作所 (33)
【Fターム(参考)】