説明

金属製プレスシート、エンドレスベルト又はエンボスロールの表面構造を製造する方法

【課題】少なくとも1つのレーザーを使用して、金属製プレスシート、エンドレスベルト又はエンボスロールの表面構造を製造するための方法、及びその方法を適用した装置を提供する。
【解決手段】表面構造を低費用で製造できると同時に環境を保護する処置を可能にするために、金属製プレスシート1、エンドレスベルト又はエンボスロールの加工するべき表面2の表面構造4全体を部分的に除去するレーザーの使用が提案される。ここでは用意された3Dトポグラフィによってレーザーの制御が実行され、その際深さ構造を生成するために、得られたX、Y、Z座標を使用してレーザーの制御が行われ、その結果盛り上がった範囲5及び深さのある範囲6が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのレーザーを使用して、金属製プレスシート、エンドレスベルト又は円筒形エンボスロールの表面構造を製造する方法、及びその方法を適用するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プレスシート又はエンドレスベルトは、家具産業のために適合する装飾を備えた、例えば木質材料プレートのような材料プレートの製造に必要である。別の使用可能性として、ラミネートパネル又はラミネートフロアパネルの製造がある。使用される材料プレートは、MDF製またはHDF製の芯を備え、その際少なくとも片面に異なるライニング材が取り付けられており、このライニング材は例えば1つの化粧板と1つの保護層(表張り層)から成ってよい。使用される材料プレートの反りを防止するため、一般に同じく裏面も対応するライニング材が備えられ、その結果1回のプレスで材料プレートがプレスシート又はエンドレスベルトの使用下で相互にプレス加工されることが可能になる。この場合、好ましくは加熱プレスが使用される。なぜなら異なるライニング材に熱硬化性樹脂、例えばメラミン樹脂などが浸透し、及びそれゆえに熱の影響下で芯の表面と融合する結果となるからである。ここでは、使用される装飾層は構造化されていてよく、その際に例えば木装飾又はタイル装飾が印刷され、又は各使用目的に合わせて人工的に形成された構造が使用される。特に、木装飾、タイル装飾又は自然石表面の自然に忠実な模造を改善するため、及び特定の光沢レベルを達成するため、備えられる構造の陰画を具備したプレスシート及びエンドレスベルトが使用される。製造された、装飾層とエンボス模様を備えた材料プレートの品質は、ここではデジタル化された印刷技術及びプレスシート表面をデジタル化して製造することで特別に適合させて調整したことにより、天然木パネル又はそれに匹敵する素材に非常に近づくほどの高い精度を達成している。特定の光沢レベルに調整することにより、さらに必要に応じて、観察者にとって天然の木表面または他の素材の印象に近づく、反射又は陰影付けを生じさせる手段がもたらされる。
【0003】
上述の結果に到達するため、プレスシート、エンドレスベルト又は円筒形エンボスロールの製造には高い品質基準が設けられ、この品質基準は特に、企図された化粧板とぴったり合うような製造を可能にする。プレスシート及びエンドレスベルトは、ここでは短周期プレスにおいてプレスシートで覆われる上型と下型として、又はエンドレスベルトでのダブルバンドプレスに使用され、その際同時に素材層のエンボス加工及び加熱が実行され、その結果熱硬化性樹脂が溶解と硬化によって芯と結合される。それとは逆に、エンボスロールは材料プレートの表面上を転がされ、同様に構造化のために使用される。
【0004】
プレスシート、エンドレスベルト又はエンボスロールを製造するために、従来技術ではエッチングレジストを用いて対応する構造化を前処理した金属製表面に作り、表面上に第一の構造を生成するため及びそれに続くエッチングレジストの除去のために後続してエッチング過程を行う方法が公知である。この作業過程は、希望する表面品質によって何度も前後して繰り返すことができ、その結果、プレスシート表面又はエンドレスベルト表面への特に深い侵入が得られ、及びその上に希望の構造図像の粗構造化又は微細構造化を個々に行うことができる。加えて、例えば前処理したプレート上に、洗浄完了後、スクリーン印刷法によってマスクを付け、引き続いてエッチング処理し、及び所望の表面構造を生成し、その際にシルクスクリーン印刷を大型のプレートに付け、引き続いてプレート全体にわたって表面エッチングする。盛り上がった表面構造を構成するすべての範囲は、ここでは付けられたマスクによって覆われ、その結果表面エッチングは、直接エッチング液によって腐食させることのできる範囲でのみ実行される。エッチングされた範囲は、こうして所望の構造のエッチングくぼみを形成する。エッチングの完了後、表面が洗浄されて特にマスクが除去され、その結果別の作業過程によって表面は例えば硬質クロムメッキなどの別の仕上げ過程で処理されることができる。
【0005】
別法として、写真法を使用する方法がある。この方法では、まず感光性の層が塗布される。この層は続いて備えられたマスクに応じて表面構造を作成するために露光される。次には写真層の現像が必要である。その間には広範囲にわたるすすぎ過程が実施され、それによって後続の作業ステップのために表面が準備され、洗浄されることができる。写真層の現像後、同じくエッチングテンプレート又はエッチングレジストと呼ばれる1つのマスクが生成される。この方法で生成されたマスクの再現性には問題がある。なぜなら、2回以上の露光過程及びエッチング過程を相前後して行わなければならない場合、感光性の層を露光するためのネガ又はポジを感光性の層に対して正確に同じ位置に位置決めしなければならないため、いっそう複雑な三次元的構造をプレスシート又はエンドレスベルトの表面上に付けなければならないからである。これに特に問題があるのは、感光性の層の露光のためのネガ又はポジが直接その上に載せられた場合であり、及びネガ又はポジがその感光性の層の上に正確で同じ間隔を空けていない場合である。ここでマスク付けの再現性は、特に写真法においては高い画像精度の達成が常に保証されるとは限らない。また、三次元的構造が複数の相前後して必要な露光過程及びエッチング過程によって達成されなければならず、その際に各マスク付けの間に1回のエッチング過程が実施される場合、その他の問題が生じる可能性がある。正確な位置決め及び対応するマスクの必要数により、プレスシート又はエンドレスベルトの製造は非常に複雑で費用が高くなる。ここでは表面構造の解像度は付けるべきマスク及び使用される方法に大きく依存し、及びさらには相当数の作業ステップが必要であり、その際特に、プレスシート又はエンドレスベルトの大きさによって手間のかかる取り扱いが必要となる。
【0006】
最近は、写真法又はスクリーン印刷法の代りに、付与すべきマスクを直接例えばインクジェットプリンタでプレスシート上に施す方法に移行しており、その際デジタルデータが使用される。この処置によって精確な図を正確に何度も同じ表面範囲に施すことが可能になり、その結果特に深い構造化が、つまり表面のエッチングが実行可能である。しかしこの方法でも、環境に優しいとは見なされ難い一連のエッチングプロセスが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、プレスシート及びエンドレスベルトの表面を加工し、及びその際に環境に優しい技術を用いることのできる、新しい方法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に従い、この方法課題を解決するために、金属製プレスシート、エンドレスベルト又は円筒形エンボスロールの表面構造を、レーザーを使用して製造することが企図され、その際この方法はあらかじめ規定可能な表面構造を複写するために以下のステップを含んでいる。
−キャプチャーした表面構造の3Dトポグラフィのデジタルデータの準備及び使用
−x座標及びy座標に張られた平面で少なくとも1つのレーザーの位置制御を行うためのデジタルデータの使用
−少なくとも1つのレーザー光線を集束するためのz座標の使用
−少なくとも1つのレーザー光線を使用して表面の一部を除去
【0009】
本発明のさらなる有利な実施形態は、従属請求項によって開示される。
【0010】
これまで使用されている技術に比べて、プレスシート、エンドレスベルト及びエンボスロールはレーザーを使用して構造化され、その際にレーザーは表面を一部除去することで直接達成するべき表面構造を生成する。この方法は多数の利点を備えている。まず、表面構造の作成後にアフターエッチングが希望されてレーザーを使用してエッジを丸める場合を除いて、この方法によってエッチング過程が放棄可能であることを指摘しなければならない。
【0011】
さらに、レーザービームはデジタルデータを使用して精確に制御することができ、その結果ほとんど同じ表面構造の再製造を繰り返して行うことができる。そのために必要なことは、キャプチャーした表面構造を複製した3Dトポグラフィのデジタルデータを用意することだけである。このデータは、レーザーおよび/またはレーザースライドの制御のためにx座標及びy座標に張られた1つのレベルで使用され、その結果データを使用してレーザーを決まった位置に動かすことができる。希望の深さ構造に達成可能にするため、さらにレーザービームの合焦を絶え間なく変化させるためのデータ(z座標)が使用され、その結果選択した表面構造に応じて盛り上がった部分と掘り下げられた部分が形成される。これによって、レーザーを使用して表面の一部除去を行い、及びそれを同じに保たれた高い精度で、非常に優れた解像度で、平面のx方向及びy方向でも、また高さでも(z座標)行う手段が形成される。本発明に従った方法により、ここでは表面の粗構造化が、しかし同様に表面の微細構造化も実施され、その結果エッチング過程が不要になり、エッチング過程の実施が必要になるのは、例えばエッジや稜を追加的に丸める必要がある場合である。
【0012】
その他の重要な利点は、デジタルデータによって表面の再現が任意の頻度で、及び複雑な制御措置なしで可能であることである。その際操作人員の監視作業を最小に限定することができる。
【0013】
さらに別の利点として、手間がかかり環境にも負荷のかかるエッチング過程を省略することができることが挙げられる。
【0014】
表面加工の速度を上げるため、ここでは加工のために複数のレーザーを平面の1つの座標方向で使用してよく、これらのレーザーはこの平面のもう1つの座標の方向に一緒に移動させられる。こうして、大型のプレスシート及びエンドレスベルトの場合に加工時間が格段に削減される。これに対してエンボスロールでは、必要に応じて複数のレーザーをロール縦軸の方向に配置することで十分である
【0015】
使用されるレーザーに応じて、及びそこから生じるレーザー出力に応じて、レーザービームの合焦は最大で表面から深さ250μmまで行われる。通例、プレスシート、エンドレスベルト及びエンボスロールのための深部構造化は100μmで十分である。レーザービームの、相応して高いパルス繰り返し周波数により、ここでは表面層の一部除去を伴う連続的な作業プロセスを中断することなく可能にし、その際レーザービームのガイドはレーザー光学素子を使用して、高い調整速度で実行することができ、それによって加工時間が低減される。
【0016】
本発明の別の実施形態では、少なくとも1つのレーザーの合焦は、表面とレーザー光学素子間に生じた距離変化によってもたらされる。通常、加工するべきプレスシート又はエンドレスベルトは加工装置上に置かれ、その加工装置は例えば幅2.3m、長さ6mという大きさがあるため、面全体にわたってわずかな差異しか生じない。これにより、レーザー光学素子と表面の間の距離を同時に計ることで、合焦に関して絶え間なく補償することができる。この処置により、加工するべき構造は、場合によってプレスシート又はエンドレスベルトの起伏がわずかな場合でも、高い精度で実施可能得あることが保証される。ここで特に有利には、生じた深さ構造の精確な加工が保証されるように、1つまたは複数のレーザービームが直角(z座標)に対してある角度をもって表面に当たる。類似の利点は、エンボスロールの加工においても達成される。その際、距離変化は既存の湾曲によってもたらされ、それを考慮に入れることができる。
【0017】
レーザービームの合焦は、ここでは直径2nmから10nmで行われ、通常50Wから500W、好ましくは10Wから100W、特に好ましくは20Wから40Wのエネルギーを備えたファイバーレーザーが使用される。出力20Wから40W、波長532nm又は1064nm、及びパルス持続時間100ナノ秒でパルスエネルギー1mJ、及び繰り返し周波数20kHzから80kHzのパルス状のファイバーレーザーが特に有利である。このレーザーを使用して、連続的な表面除去が精確な方法で、表面に許容できない模写不具合が生じることなく、又は作業速度が落ちることなく、同時に高速レーザービーム制御が可能になる。
【0018】
使用するレーザーは、ビームスプレッダーと合焦装置から成る1つのレーザーアセンブリから構成されている。まず、レーザーから出るビームはビームスプレッダーによって拡張され、続いて合焦装置を使って改めて合焦され、その結果制御された加工は面全体でも深さでも行うことができる。最初に実施されるビーム拡張およびそれに続く合焦の方法は、ここでは特に実用的であることが判明している。なぜなら、このようにして、より大きな面及び深さを、固定されたレーザー位置で捉えることができるからである。
【0019】
より高いエネルギーを備えたレーザーを使用する場合、そのようなレーザーアセンブリにはレーザーとビームスプレッダーの間にレーザーレデューサを補足配置し、その結果ビームスプレッダー及び合焦装置の後で表面に当たるレーザービームを適切な形に弱めることができる。この処置によって、加工のために最適だと判明した希望のレベルにレーザーエネルギーを弱めることが可能になる。
【0020】
レーザーアセンブリのために使用されている合焦装置は、ここでは表面から10cmから100cmの距離に配置されており、その際により大きな距離の場合、より大きな面が、同じ合焦装置を備えたレーザービームによって、レーザーの配置が固定した配置で把握可能である。ただ1つのレーザーを使用するか、又は必要に応じて複数のレーザーを使用するかどうかに応じて、レーザーは表面のそれぞれただ1つの一部を捉え、その結果レーザーアセンブリを固定した状態で加工するべきワークピース、この場合はプレスシート又はエンドレスベルトに対してレーザーアセンブリを移動させるかは又は必要に応じてワークピース自体を移動させることが必要になる。こうして、エンドレスベルト又はプレスシートを大面積で構造化することを可能にするために、複数の部分範囲を連続して加工する手段が形成される。前述したように、ここでは選択可能な部分面は特に表面に対する合焦装置の高さに依存しおり、その結果特定の間隔を規定した後にレーザーの最適化を実行可能であり、その際同時にそのような部分範囲のベース面を合焦装置によって固定することができる。
【0021】
このような理由から、プレスシートの表面全体を幅約2.3m、長さ約6mに分離することが、又はエンドレスベルトを場合によって繰り返される表面構造のリピートとは無関係に多数の部分範囲に分離することが必要である。各部分範囲は、ここでは順次1つのレーザーによって加工されるか又は複数のレーザーが使用され、それによって同時に複数の部分範囲が平行して加工可能である。このために、レーザーアセンブリの固定位置が選択され、各合焦装置を使用して各部分範囲が走査され、その際に3Dトポグラフィのデジタルデータが使用され、そのような部分範囲のx座標及びy座標がデジタルデータからフィルタリングされ、合焦装置の制御のために使用される。こうして選択された部分範囲のx座標及びy座標が完全にカバーされ、その際にそれに続く部分範囲に応じて同じ形で制御が可能である。これに対して高さ構造は深さでの合焦によって達成され、その結果z座標の模写がキャプチャーした表面構造に従って可能になる。ここで規定された部分範囲は、レーザー光学素子の高さ及び使用するレーザーに依存して、10cmから800cm、好ましくは50cmから500cmのエッジ長さを備える。規定部分範囲のそれぞれは、これにより1つのレーザー及びそれに属するレーザー光学素子の1つによって加工され、その際に個々が1つ1つのレーザーによって順に、規定された部分範囲全体で加工可能である。別法として、1つの座標方向にある複数のレーザーを、及び必要に応じて間隔をあけて複数のアセンブリを同じ座標方向に追加して使用することができる。
【0022】
例えばプレスシート又はエンドレスベルトの支持又はレーザーアセンブリのスライドガイドが原因で生じる各部分範囲の境界範囲での問題を、部分範囲が互いに直角に並んでおらず場合によって縁部分が曲線形状の場合に回避するため、好ましくはレーザーによって全く加工されないか又はわずかに加工されるプレスシート又はエンドレスベルトの表面のこの範囲が接するように最適化されて仕上げられるよう企図される。こうして部分範囲全体において考えられるエッジ問題が回避でき、細部まで忠実な表面構造の再現がもたらされる。この方法は、プレスシート又はエンドレスベルトの主な範囲に渡るか、又は異なる個々の部分範囲に分離しなければならない大面積の構造を加工する場合に実行する価値がある。
【0023】
本発明の別の実施形態では、表面上にレーザー装置位置及び/又は合焦装置位置の連続制御が可能な測定ポイントがあり、その結果制御によってレーザービームの適合及び修正が可能になる。表面にある測定ポイントは、補助レーザーを使用して、又は別の測定過程で把握することができ、レーザービームガイドの修正に援用することができる。こうして、大型のプレスシート、エンドレスベルト及びエンボスロールの場合でも、いつでもレーザービームを常時修正でき、大きな面でも正確な位置を守ることのできる手段が得られる。
【0024】
本発明に従った方法のために、好ましくは、例えば木表面などの自然に成長する材料、自然石表面などの天然鉱物、又はセラミック表面などの人造の構造を複製した表面構造のデジタルデータが使用される。ここでは、この表面構造を該当する材料から型取りし、デジタルデータに変換する手段が得られ、その結果これをレーザー制御に提供することができる。
【0025】
表面構造の検知には、デジタルデータを生成する3Dスキャナーが提案され、その際第一の実施態様では、偏向可能なミラーを使用して見本の表面全体を実物どおりに把握できるか、又は少なくとも1つのミラーで偏向されたレーザービーム及びそこから受け取った反射から表面構造の模写が可能である。別法として、デジタルデータの計算のために3Dトポグラフィの固定を使用することができる、表面構造のグレースケール画像の使用がある。その場合は表面レベル及び各グレースケールのために定められた最低段階を決定した状態で、スケーリングを実行し、その結果グレースケール画像を使用して3Dトポグラフィを生成することができ、この3Dトポグラフィはデジタルデータに変換され、再度レーザー制御のために使用される。ここで得られたデータは、必要に応じて他のデータフォーマットに変換でき、その際にインターポレーション及びデータ編集により、多数のデータを適切な数に減らすことができ、その結果合焦装置の制御を最適化することができる。グレースケール画像が使用できる場合、これを例えばデジタルカメラなどの画像撮影によって作成し、続いて画像ノイズを除去し、手動又はコンピュータ情報処理支援の後処置によってグレースケール画像の8ビットマップを得る。
【0026】
本発明に従った方法は、プレスシート、エンドレスベルト又はエンボスロールを事前処理することで完全なものに仕上げられる。ここで事前処理とは機械的な清掃及びイソプロパノール、エタノール又はエチルアルコールによる浄化である。さらに、特に続いてレーザービームを使用して加工することのできる清浄な表面を得るために、例えば有機シリル化合物などのプライマーを使用した処理を行ってよい。さらに、レーザービームを使用した加工の前にプレスシート、エンドレスベルト又はエンボスロールの表面に化学的な前処理を行うという方法があり、それによって反射が防止される。
【0027】
プレスシート、エンドレスベルト又はエンボスロールの構造化が完了した後、後処理のために1つ又は複数のコーティングを施してよい。例えばプレスシート、エンドレスベルト又はエンボスロールの全面をクロムメッキしてよく、好ましくは硬質クロムメッキ又はダイヤモンド型カーボン又はホウ化チタンでコーティングしてよく、これによってプレスシート、エンドレスベルト及びエンボスロールの耐用年数が延びる。特別な方法では、さらに別の処置によって所望の表面光沢レベルがクロムメッキされた表面を後処理することによって得られる。それは例えば機械研摩、サンドブラスト又は類似の方法であり、又は別の層、特にさまざまな光沢レベルをもたらすクロム層に施してよい。
【0028】
プレスシート、エンドレスベルト又はエンボスロールの加工は、ここではほぼ水平の、しかし同様に垂直の位置で実施してよく、これはどのレーザーアセンブリを使用するか、及びどの加工方法を好都合な方法と見るかで異なる。
【0029】
本発明に従った方法を実施するために、さらに1つの装置が提案される。この装置は、加工するべき素材のための支持装置、ビーム拡張装置及び合焦装置を備えた少なくとも1つのレーザー、及びx座標及びy座標に張られた平面上の任意の位置にレーザーアセンブリを動かすためのスライドガイド、並びにその位置まで移動するための独立した駆動エレメント及びレーザー光学素子の位置移動と合焦のための制御装置を含み、その結果レーザービームが目標に合わせてプレスシート又はエンドレスベルトの表面に向けられることができ、所与の3Dトポグラフィに従って表面構造を複製することができる。
【0030】
本発明に従った装置は、ここでは複数のレーザーアセンブリを備えており、これらのアセンブリは詳細には、ビーム拡張装置 及び合焦装置を備えた少なくとも1つのレーザーから構成され、及び1つの座標方向に平面上に配置されている。これらのレーザーアセンブリは、ここではプレスシート又はエンドレスベルトの加工のために平面の1つの座標方向に配置されており、一緒に平面の別の座標方向に向かって移動し、その結果、表面全体の加工が可能になっている。移動の速度を上げるため、別のレーザーアセンブリが互いに間隔をあけて配置されてよく、これらのアセンブリは平行して動かされる。
【0031】
各レーザーの合焦装置は、ここでは表面に対して10cmから100cmの距離を空けて配置されており、及びそれゆえにエッジ長さ10cmから800cm、好ましくは50cmから500cmの平面を合焦装置を使用して把握できる。こうして、レーザーアセンブリ全体、又は必要に応じてただ1つの単独レーザーアセンブリを、プレスシート又はエンドレスベルトに対して決まった位置に移動させ、続いて企図された部分範囲の加工を実施することが可能になる。この加工が終了した後、プレスシート又はエンドレスベルトの表面全体が加工されるまで、レーザーアセンブリ全体は段階的に移動することができる。表面加工に使用されるレーザーアセンブリが多くなればなるほど、表面加工を実施する方法が効率的に実施でき、その際1つ又は複数のレーザーアセンブリが1つの座標方向上に配置され、これらが段階的に別の座標方向へ移動される。
【0032】
載せられたプレスシート又はエンドレスベルトに起伏が生じることを防止するため、多数の部分面が支持面上に形成され、その際に部分面内には真空装置用の吸引開口部が備えられている。こうしてプレスシートは吸引開口部で吸引され、最適な保持及び各位置への固定がもたらされ、その際同時に必要に応じてはプレスシート又はエンドレスベルトの起伏をわずかな差異になるよう均一にすることが保証される。わずかな差異が存在する場合は、表面に対する距離制御及び適切な合焦装置制御を使用して差異が検知されて調整される。加工のためにここではプレスシート又はエンドレスベルトが水平又は垂直の位置で加工され、この平らな位置で真空吸引装置を使用して保持される。ここで使用される作業台はそれゆえに、生じる可能性のある高さの不正確さが最初から排除できるよう、表面研削された表面を備えている。
【0033】
最後に本発明は、本発明による方法に従い、材料プレートを精確な構造が要求される構造化された表面プレス加工及び/又はエンボス加工するための、本発明による装置を使用して製造されるプレスシート、エンドレスベルト又は円筒形のエンボスロールの使用に関する。
【0034】
本発明は以下に1つの実施例を使用して再度説明され、及び本発明に従った方法を実施するための1つの装置が示される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】未加工のプレスシート、及びその下の、レーザービームによって加工された後の構造化されたプレスシートの横断面平面図である
【図2】本発明に従った方法を実施するための装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、上側が通常金属製のプレスシート1の部分断面図である。加工するべき表面2は加工前に製造方法に応じて普通の表面粗さ3を備えている。プレスシート1の事前洗浄完了後、発明に従ったレーザー方法で表面構造4が生成され、この表面構造の盛り上がった範囲5及び深さのある範囲6は下側の部分図に示されている。盛り上がった範囲5も深さのある範囲6も、さらに微細構造化7を備えている。プレスシート1の表面の全体の構造化は、発明に従ったレーザー方法を使用して生成され、その際合焦装置 (レーザー光学素子)を適切に制御することによってレーザービームが深みで合焦される。その上、レーザーアセンブリがプレスシート1に対して移動される前に、合焦装置を使用してプレスシートの特定の部分範囲の把握が加工のために行われる。図1は、微細構造化7及び粗構造化を示している。これらの構造化は明確化のために模式的に示されるが、その際に深さプロフィルは最大250μm、好ましくは100μmの寸法で形成されることを前提としている。
【0037】
図2は本発明の方法を適用するための装置101の平面図である。この装置は、多数の個々の平坦面103から作られた支持面104を備えた1つの支持台102から構成されており、支持台の上にはプレスシート105が載せられる。平坦面103にはそれぞれ1つの吸引開口部106が形成されており、吸引開口部106が図示していない真空ポンプを使用してプレスシート105を平坦面103上に引きつけ、それによって作業プロセス中にプレスシート105の位置がずれないよう確保している。
【0038】
示された実施例には装置101が水平位置に配置されているが、プレスシート105を加工するためにこれを垂直位置又は垂直に対して傾いた位置に配置することが簡単にできる。プレスシート105の最も長い伸長部に沿ってガイドレール107、108が形成され、その上を駆動モータ111、112を使用してスライドガイド109、110に沿って移動可能であり、駆動モータ111、112は制御装置113、好ましくはコンピュータ情報処理支援の制御装置によって制御可能である。駆動モータ111、112を使用して、レーザーアセンブリがX軸及びY軸方向に移動させられる。レーザーアセンブリ114は、1つのレーザー、1つのビームスプレッダー及び1つの合焦装置から構成され、その際必要に応じて、使用されるレーザーの種類によって1つのレーザーレデューサが追加で投入されてよい。レーザーアセンブリ又は必要に応じて1つの座標方向に隣り合って配置されている複数のレーザーを使用して、プレスシート105の表面加工が行われる。本方法をの速度を上げるため、複数のレーザーアセンブリを一列に、つまり1つの座標方向に必要に応じてあらかじめ定義された間隔を空けてこの列上に配置され、レーザーアセンブリはそれぞれ同時にその対応するプレスシート105の表面の部分範囲を加工でき、その結果これに対応した作業時間の時間短縮を伴う最適化を行うことができる。
【符号の説明】
【0039】
1 プレスシート
2 表面
3 表面粗さ
4 表面構造
5 盛り上がった範囲
6 深さのある範囲
7 微細構造化
101 装置
102 支持台
103 平坦面
104 支持台
105 プレスシート
107 ガイドレール
108 ガイドレール
109 スライドガイド
110 スライドガイド
111 駆動モータ
112 駆動モータ
113 制御装置
114 レーザーアセンブリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのレーザーを使用して金属製プレスシート(1)、エンドレスベルト又は円筒形エンボスロールの表面構造を製造するための方法において、あらかじめ規定可能な表面構造を複製するために以下の工程、
キャプチャーした表面構造の3Dトポグラフィのデジタルデータの準備及び使用
x座標及びy座標に張られた平面で少なくとも1つのレーザーの位置制御を行うための前記デジタルデータの使用
少なくとも1つのレーザー光線を集束するためのz座標の使用
少なくとも1つのレーザービームを使用して前記表面構造の一部除去、
を含む方法。
【請求項2】
複数のレーザーが加工のために1つの座標方向に並んで平面上に投入され、一緒に別の座標の1つの方向に移動させられることを特徴とする、表面構造を製造するための方法。
【請求項3】
少なくとも1つのレーザービームの合焦が前記表面に対して最大で250μmの深さで行われることを特徴とする、表面構造を製造するための方法。
【請求項4】
少なくとも1つのレーザーの合焦が、前記表面及びレーザー光学素子の間に生じた距離変化に応じてもたらされることを特徴とする、表面構造を製造するための方法。
【請求項5】
1つまたは複数のレーザービームが垂直(z座標)に対して角度を付けた状態で前記表面に当てることを特徴とする、表面構造を製造するための方法。
【請求項6】
レーザービームの合焦が、2nmから10nmの直径で行われることを特徴とする、表面構造を製造するための方法。
【請求項7】
エネルギーが5Wから500W、好ましくは10Wから100W、特に好ましくは20Wから40Wのファイバーレーザーを使用することを特徴とする、表面構造を製造するための方法。
【請求項8】
出力20Wから40W、波長532nm又は1064nm、及びパルス持続時間100ナノ秒でパルスエネルギー1mJ、及び繰り返し周波数20kHzから80kHzのパルス状のファイバーレーザーを使用することを特徴とする、表面構造を製造するための方法。
【請求項9】
レーザーアセンブリが1つのレーザー、1つのビームスプレッダー及び1つの合焦装置(レーザー光学素子)から構成されていることを特徴とする、表面構造を製造するための方法。
【請求項10】
1つ又は複数のレーザーのエネルギーが1つのレーザーレデューサによって低減されることを特徴とする、表面構造を製造するための方法。
【請求項11】
前記合焦装置が前記表面に対して10cmから100cmの間隔を空けて配置されていることを特徴とする、表面構造を製造するための方法。
【請求項12】
繰り返される表面構造のリピートとは無関係に前記表面構造が多数の部分範囲に分離され、前記部分範囲がそれぞれ順に1つのレーザーによって加工され、又は少なくとも部分的に複数のレーザーによって平行して加工されることを特徴とする、表面構造を製造するための方法。
【請求項13】
前記部分範囲の境界が自由に選択可能であり、好ましくは前記境界が表面の未加工範囲と一致するに決められることを特徴とする、表面構造を製造するための方法。
【請求項14】
前記決められた部分範囲が、使用されるレーザーに依存してエッジ長さ10cmから800cm、好ましくは50cmから500cmであることを特徴とする、表面構造を製造するための方法。
【請求項15】
前記決められた部分範囲が、1つのレーザー及び1つの付属するレーザー光学素子によって加工されることを特徴とする、表面構造を製造するための方法。
【請求項16】
前記表面上に前記レーザー装置位置及び/又は合焦装置位置の連続制御が可能な測定ポイントを具備し、その結果制御によってレーザービームの適合及び修正が可能であることを特徴とする、表面構造を製造するための方法。
【請求項17】
例えば木表面などの自然に成長する材料、又は特に自然石表面などの天然鉱物、又はセラミック表面などの人造の構造を複製した表面構造のデジタルデータを使用することを特徴とする、表面構造を製造するための方法。
【請求項18】
デジタルデータを得るために、偏向可能なミラーを使用して見本の表面全体を実物どおりに把握するか又は少なくとも1つのミラーで偏向されたレーザービーム及びそこから受け取った反射から表面構造の模写が可能である3Dスキャナーを使用するか、あるいは3Dトポグラフィを決定するためのデジタルデータを計算するために表面構造のグレースケール画像を使用することを特徴とする、表面構造を製造するための方法。
【請求項19】
捕捉したデジタルデータの変換、特にレーザー光学素子を制御するためのインターポレーション及びデータ整理を特徴とする、表面構造を製造するための方法。
【請求項20】
加工するべき素材のための支持装置、ビーム拡張装置及び合焦装置を備えた少なくとも1つのレーザー、及びx座標及びy座標に張られた平面上の任意の位置に前記レーザーアセンブリを動かすためのスライドガイド、並びに前記位置まで移動するための独立した駆動エレメント、及び前記レーザー光学素子の位置移動と合焦のための制御装置を含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法を適用するための装置。
【請求項21】
1つ又は複数のレーザーアセンブリ(114)がビーム拡張装置及び合焦装置を備えた少なくとも1つのレーザーから構成され、及び1つの座標方向に並んで平面上に配置されていることを特徴とする、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法を適用するための装置。
【請求項22】
前記合焦装置が表面に対して10cmから100cmの間隔で配置されており、1つの面がエッジ長さ10cmから800cm、好ましくは50cmから500cmを備えていることを特徴とする、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法を適用するための装置。
【請求項23】
前記支持装置が複数の部分面に分割された平らな平坦面(103)を備え、前記部分面内に真空装置用の吸引開口部が備えられていることを特徴とする、請求項20、21又は22に記載の装置。
【請求項24】
構造化された表面によって材料プレートをプレス加工及び/又はエンボス加工するために、請求項1から19又は20から23のいずれか一項に従って製造されたプレスシート(1)、エンドレスベルト又は円筒形エンボスロールの使用。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−79300(P2011−79300A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−187911(P2010−187911)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(510230241)ヒューク ライニッシェ ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】